説明

位置計測システム、位置計測方法

【課題】被計測点が計測点から不可視であったり、被計測点と計測点との距離が長い場合であっても、計測点から土留壁等に設けられた被計測点の位置ひいては変位を正確に計測可能な位置計測システム等を提供する。
【解決手段】測定器Sが設けられる計測点Pから所定の被計測点Oへと至る経路上で、計測点Pの次に計測点Pを配置し、測定器Sを設ける。測定器Sは計測点Pを基準とする次の計測点Pの位置を測定し、計測点Pの測定器Sは、計測点Pを基準とする被計測点Oの位置を測定する。PC2は、これらの測定結果に基づき、計測点P1の位置を基準とする被計測点Oの位置またはその変化を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置計測システム、位置計測方法に関する。より詳しくは、土留壁等の位置等を計測管理する位置計測システム、位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下構造物を構築する際、地盤を掘削するために土留壁が設置される。土留壁は掘削に伴い変形する場合があるため、安全性確保のために各点の位置の計測管理が行われる。
【0003】
従来の土留壁の変位計測では、図8に示すように、土留壁100の表面に複数の被計測点O(計測用プリズム等のターゲットT)を設置し、計測点Pに設けたトータルステーションやレーザー変位計、またはデジタルカメラ等の光学式の測定器Sを用いて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの3次元位置を定期的に取得し、土留壁100の各点の変位を監視している。
【0004】
また、光学式の測定器を用いて変位を計測するものとしては、例えば特許文献1に、地盤内に先端を固定した鋼棒の露出端に地中変位ターゲットを取り付け、また切羽の表面に表面変位ターゲットを取り付け、地中変位ターゲットと表面変位ターゲットの移動量をレーザー変位測定器によって測定し、トンネルの崩壊を予知する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−287948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように光学式の測定器Sを用いた変位計測では、被計測点Oと計測点P(測定器S)との間に障害物が存在すると、計測点Pに対して被計測点Oが遮られ不可視となり、計測ができないという問題があった。例えば土留壁100には崩壊を防ぐための支保工が設けられたり、支保工施工のための各種機械が壁の近傍に据えられることが度々あるが、これらは測定器Sによる変位計測の障害となることがあった。
【0007】
加えて、計測点Pと被計測点Oとの距離があまりに長い場合には、計測精度が低下し、安全性管理の上で支障をきたす問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、被計測点が計測点から不可視であったり、被計測点と計測点との距離が長い場合であっても、計測点から土留壁等に設けられた被計測点の位置ひいては変位を正確に計測可能な位置計測システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するための第1の発明は、計測点Pを基準とした複数の被計測点Oの位置またはその変化を計測する位置計測システムであって、計測点Pから所定の被計測点Oへと至る経路上で順に配置されたn(nは2以上の正整数)箇所の計測点P〜Pにそれぞれ1つずつ設けられ、位置測定を行うn個の光学式測定器S〜Sと、前記光学式測定器S〜Sの測定結果に基づいて、前記計測点Pを基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出する算出手段と、を備え、計測点P1〜Pn-1にそれぞれ設けられる光学式測定器S1〜Sn-1は、計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置をそれぞれ測定し、計測点Pnに設けられる光学式測定器Snは、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を測定し、前記算出手段は、前記計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置と、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を用いて、計測点P1を基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出することを特徴とする位置計測システムである。
【0010】
前記光学式測定器は、例えば、トータルステーション、レーザー変位計、デジタルカメラのいずれかである。
【0011】
前記計測点P〜Pは、例えば、前記計測点Pから前記所定の被計測点Oに至る経路が障害物を避けるように配置される。
【0012】
前記被計測点Oと、前記光学式測定器S〜Sには、光学式測定器により位置計測を行うためのターゲットがそれぞれ設けられる。
【0013】
また、第1の発明の位置計測システムにおいて、少なくとも1つの被計測点Oについて、前記計測点Pから前記被計測点Oへと至る経路を複数備えていてもよい。このとき、前記算出手段は、各経路にて算出された前記計測点Pを基準とする前記被計測点Oの位置またはその変化に基づいて、その統計値を算出することができる。
【0014】
第1の発明の位置計測システムは、例えば土留壁またはトンネル内壁に生じる変位の計測に適用される。
【0015】
前述した目的を達するための第2の発明は、計測点Pを基準とした複数の被計測点Oの位置またはその変化を計測する位置計測方法であって、計測点Pから所定の被計測点Oへと至る経路上で、順に配置されたn(nは2以上の正整数)箇所の計測点P〜Pにそれぞれ1つずつ設けられるn個の光学式測定器S〜Sにより位置測定を行う工程(a)と、前記光学式測定器S〜Sの測定結果に基づいて、前記計測点Pを基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出する工程(b)と、を備え、前記工程(a)では、計測点P1〜Pn-1にそれぞれ設けられる光学式測定器S1〜Sn-1で、計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置をそれぞれ測定するとともに、計測点Pnに設けられる光学式測定器Snで、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を測定し、前記工程(b)では、前記計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置と、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を用いて、計測点P1を基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出することを特徴とする位置計測方法である。
【0016】
上記の構成により、例えば土留壁またはトンネル内壁に設けられた、複数の被計測点の位置を、トータルステーション、レーザー変位計、デジタルカメラ等の光学式測定器を用いて測定する際に、ある被計測点(ターゲット)が障害物により遮られ不可視となっていたり、遠方にあったりして、計測点Pの測定器Sの測定範囲にない場合でも、別の測定器S等により測定した被計測点の位置データを用いて計測点Pの位置を基準とする被計測点の位置を計測できる。測定器Sの測定範囲にある被計測点については、測定器Sにより測定した位置データを用いればよい。各被計測点の位置は、計測点Pを基準として計測するので、統一的な精度の高い計測管理が可能になる。
【0017】
また、中継用の測定器を増やすことにより、測定器から被計測点が遮られ計測できない可能性を低下させてより確実な計測管理を行うことや、より遠方の被計測点の計測が可能である。さらに、被計測点を複数の経路で計測することにより、被計測点の位置の計測精度を向上させることもできる。
【0018】
そして、所定の時間間隔で計測したこのような位置データを用いて被計測点の変位を算出し、土留壁やトンネル内壁等の変位管理を行うことができる。
【0019】
これにより、計測点Pの測定器Sの測定範囲にない被計測点の計測管理も可能になり、障害物の有無等にかかわらず、土留壁等の変形挙動を恒常的に監視することができ、施工上の安全性を確保することが容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、被計測点が計測点から不可視であったり、被計測点と計測点との距離が長い場合であっても、計測点から土留壁等に設けられた被計測点の位置ひいては変位を正確に計測可能な位置計測システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る位置計測システム1の構成を示す図
【図2】PC2のハードウェア構成の一例を示す図
【図3】位置計測システム1における位置計測方法の流れを示すフローチャート
【図4】位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの位置関係を示す図(障害物9がある場合)
【図5】位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの位置関係を示す図(被計測点Oが遠方にある場合)
【図6】位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの位置関係を示す図(中継用の複数の測定器を用いる場合)
【図7】位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの位置関係を示す図(複数の経路で被計測点Oの位置を計測する場合)
【図8】従来の土留壁100の変位計測を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の位置計測システム1の実施形態について説明する。まず、図1、図2を参照しながら、位置計測システム1の構成について説明する。
【0023】
図1は、位置計測システム1の構成を示す図である。図1に示すように、位置計測システム1は、計測点P〜P(nは2以上の正整数)にそれぞれ設けられる測定器S〜Sと、PC2(算出手段)とを備える。
【0024】
測定器S〜Sは、例えばトータルステーション、レーザー変位計、デジタルカメラ等の光学式測定器であり、操作部、測定部、制御部、通信部、メディア入出力部、表示部等を備え、計測用プリズム等のターゲットが設けられた対象位置の3次元座標位置を自位置を基準として測定し、測定した位置データを通信部等を介してPC2に送信、入力する。
【0025】
また、測定器S〜Sはターゲットが比較的小さな障害物で遮られている場合、これを自動探知する機能を備えてもよい。即ち、測定器S〜Sは、例えば三脚に支持された測定器本体を回転させる回転駆動装置を備え、測定器本体を鉛直軸方向と水平軸方向に回転可能とする。そして、ターゲットが小さな障害物で遮られている場合は、測定器本体を回転させつつ、ターゲットを検知すると停止して、位置測定を開始する。
【0026】
測定器S〜Sは、計測点Pから被計測点Oの位置を計測する経路に順に配置された計測点P〜Pにそれぞれ設けられる。
【0027】
PC2(算出手段)は、例えばデスクトップPC、ノート型PC等の汎用的なPCで、入力された位置データを用いて、計測点Pの位置を基準とした被計測点Oの位置を算出し求める。
【0028】
図2に示すように、PC2は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、記憶装置14、メディア入出力部15、入力部16、印刷部17、表示部18、通信部19がバス20を介して接続される。
【0029】
CPU11は、ROM12、記憶装置14、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM13上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス20を介して接続された各装置を駆動制御し、PC2が行う処理を実現する。
ROM12は、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS(Basic Input/Output System)等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAM13は、揮発性メモリであり、ROM12、記憶装置14、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
記憶装置14は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、CPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されてRAM13に移され、後述する処理等に係る各種の手段として実行される。
【0030】
メディア入出力部15(ドライブ装置)は、記録媒体のデータの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
入力部16は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
印刷部17は例えばプリンタで、ユーザからの要求により必要な情報等の印刷を行う。
表示部18は、CRT(Cathode Ray Tube)モニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有し、後述の処理等に係る画面を表示する。
【0031】
通信部19は、通信制御装置、通信ポート等を有し、測定器S〜S等との通信制御を行う。
バス20は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
尚、図2のハードウェア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0032】
次に、本発明に係る位置計測システム1における位置計測方法の概要について、図3を参照しながら説明する。図3は、位置計測システム1における位置計測方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
まず、各測定器S〜Sにより所定の計測点の位置を測定する(ステップS101)。この際、計測点P〜Pn-1に設けられる測定器S〜Sn−1は、それぞれ計測点P〜Pの位置を測定し、計測点Pに設けられる測定器Sは、被計測点Oの位置を測定する。測定した各位置データは、通信部を介して有線、あるいは無線で送信するなどして、各測定器S〜SからPC2に入力される(ステップS102)。なお、位置データを各測定器S〜Sのメディア入出力部等を介して記憶媒体に出力し、これをPC2のメディア入出力部15から読み取ることにより入力してもよい。PC2に入力された位置データは、記憶装置14等に格納される。そして、PC2は、各位置データを用いて、被計測点Oの位置を計測する(ステップS103)。即ち、各測定器S〜Sで測定した位置データを用いて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を経路P→…→P→Oにより算出する。上記の処理に係るプログラムは、PC2の記憶装置14等に格納されており、CPU11がこのプログラムを実行することにより、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置が算出される。
【0034】
次に、位置計測システム1の第1の実施形態における計測点(測定器)と被計測点との位置関係について、図4を用いて説明する。図4は、計測点Pと被計測点Oとの間に障害物がある場合の、位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの平面的な位置関係を示す図である。
【0035】
図4に示す第1の実施形態の位置計測システム1では、計測点Pから障害物9により遮られ、測定器Sの測定範囲にない土留壁100の被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として計測する。
【0036】
図4に示すように、土留壁100には、複数の被計測点O〜Oが配置される。これらの被計測点O〜Oには、位置測定の対象となる計測用プリズム等のターゲットT〜Tがそれぞれ設けられる。
【0037】
計測点Pの測定器Sは、計測範囲にある被計測点O、Oについて、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置を経路P→O、P→Oにより直接測定可能である。しかし、測定器Sは、障害物9により遮られ不可視となり、測定範囲にない被計測点Oの位置を直接測定することができない。
【0038】
ここで、測定範囲は、測定器とその測定の対象となる点を結ぶ直線(光路)上に障害物がなく、かつ測定器の測定精度が損なわれない測定距離の範囲をいう。測定距離については、例えばトータルステーションの測定精度は一般に100〜150m程度の測定距離で低下し始めるが、この距離範囲に限定されるものではなく、個々の測定器の性能に応じて決定することができる。
【0039】
本実施形態では、測定器Sと、計測点Pの測定器Sを用いて、被計測点Oの位置を計測する。計測点Pは、計測点Pから被計測点Oに至る経路上で、計測点Pの次に配置される。経路P→P→Oは、障害物9の位置を避けるように設けられる。
【0040】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。このため、測定器Sには位置測定の対象となる計測用プリズム等のターゲットTが設けられる。
【0041】
測定器S(計測点P)は、測定器Sの測定範囲に、被計測点Oを測定範囲とするように設ける。この位置は、土留壁100の支保工の施工計画等に応じて予め定めておくことができる。なお、測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置も測定可能である。
【0042】
位置計測システム1における位置計測方法では、まず、各測定器S、Sにより位置測定を行う(図3のステップS101)。この際、計測点Pの測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置を直接測定するとともに、被計測点Oの位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置を測定する。この位置(ベクトル)データを、a(x、y、z)とする。
【0043】
また、計測点Pの測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置を測定するとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。この位置(ベクトル)データを、b(x、y、z)とする。
【0044】
各位置データは、通信部等を介して各測定器S、SからPC2に送信され、PC2に入力される(図3のステップS102)。
【0045】
PC2は、各位置データを用いて、被計測点O〜Oの位置を計測する(図3のステップS103)。この際、経路P→O、Oにより測定器Sが直接測定した被計測点O、Oの位置データを、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置とする。また、測定器Sの測定範囲にない被計測点Oについて、測定器S、Sが測定した位置データa、bを用いて、a、bの(ベクトル)和を以下の式(1)
a+b=(x+x、y+y、z+z)…(1)
により算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置とする。つまり、経路P→P→Oにより被計測点Oの位置を計測する。
【0046】
このようにして、各測定器S、Sは、所定の時間間隔で計測点ならびに被計測点の位置データの測定を行い、PC2は、これをもとに被計測点O〜Oの位置データを求め、測定時点間の差をとり、被計測点O〜Oの変位とする。
【0047】
また、例えば被計測点Oが障害物9により新たに遮られ、測定器Sから被計測点Oが直接測定できなくなった場合では、PC2は、上記の位置データaと、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置データをもとに、新たに被計測点Oの位置を算出することもできる。即ち、障害物9を避ける別の経路により位置や変位の計測を継続して行うことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、計測点Pから遮られ不可視の被計測点Oについて、計測点Pの測定器Sにて計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置を測定し、計測点Pの測定器Sにて計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定し、この計測点Pの位置と被計測点Oの位置に基づいて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を算出し求める。
【0049】
従って、例えば土留壁100を計測点Pの測定器Sから変位計測する際に、被計測点が障害物9により遮られていたとしても、測定器Sにより測定した被計測点の位置データを用いて被計測点の位置を計測できる。障害物9により遮られていない被計測点については、測定器Sにより測定した位置データを用いればよい。被計測点の位置は、計測点Pを基準として計測するので、統一的な精度の高い計測管理が可能になる。
【0050】
これにより、測定範囲にない被計測点の計測管理も可能になり、障害物の有無にかかわらず、土留壁等の変形挙動を恒常的に監視することができ、施工上の安全性を確保することが容易になる。
【0051】
次に、位置計測システム1の第2の実施形態における計測点(測定器)と被計測点との位置関係について、図5を用いて説明する。図5は、計測点Pから遠方に被計測点Oがある場合の、位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの平面的な位置関係を示す図である。第1の実施形態と同様の機能構成を有する要素については同じ符号を付し、説明を一部省略する。
【0052】
図5に示す第2の実施形態の位置計測システム1では、計測点Pから遠方に設けられ、測定器Sの測定範囲内にないトンネル内壁200の被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として計測する。
【0053】
図5に示すように、トンネル内壁200には、複数の被計測点O、O等が配置される。これらの被計測点O、O等には、ターゲットT、T等がそれぞれ設けられる。
【0054】
計測点Pの測定器Sは、測定範囲にある被計測点Oについて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を経路P→Oにより直接測定可能である。しかし、測定器Sは、計測点Pから遠方に設けられ、測定範囲にない被計測点Oの位置を直接測定することができない。
【0055】
このため、本実施形態でも、測定器Sと、計測点Pに設けられる測定器Sを用いて、経路P→P→Oにより被計測点Oの位置を計測する。計測点Pは、計測点Pから被計測点Oに至る経路上で、計測点Pの次に配置される。
【0056】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。このため、測定器Sには位置測定の対象となる計測用プリズム等のターゲットTが設けられる。
【0057】
測定器S(計測点P)は、測定器Sの測定範囲に、被計測点Oを測定範囲とするように設ける。この位置は、測定器の測定精度等に応じて予め定めておくことができる。
【0058】
第1の実施形態と同様、各測定器S、Sによる位置測定の際(図3のステップS101)、計測点Pの測定器Sは、被計測点O等の、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として直接測定するとともに、測定範囲にない被計測点O等の位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データa(x、y、z)を測定する。
【0059】
また、計測点Pの測定器Sは、被計測点Oの位置データb(x、y、z)等、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として測定する。
【0060】
各位置データは、通信部等を介して各測定器S、SからPC2に送信され、PC2に入力される(図3のステップS102)。
【0061】
PC2は、各位置データを用いて、被計測点O、O等の位置を計測する(図3のステップS103)。この際、経路P→Oにより測定器Sが直接測定した被計測点Oの位置データを、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置とする。また、測定器Sの測定範囲にない被計測点Oについて、測定器S、Sが測定した位置データa、bを用いて、式(1)によりa+bを算出し、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置とする。つまり、経路P→P→Oにより被計測点Oの位置を計測する。
【0062】
このようにして、各測定器S、Sは、所定の時間間隔で計測点ならびに被計測点の位置データの測定を行い、PC2は、これをもとに被計測点O、O等の位置データを求め、測定時点間の差をとり、被計測点O、O等の変位とする。
【0063】
以上のように、本実施形態では、計測点Pから遠方にある被計測点Oについて、計測点Pの測定器Sにて計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置を測定し、計測点Pの測定器Sにて計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定し、この計測点Pの位置と被計測点Oの位置に基づいて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を算出し求める。
【0064】
従って、例えばトンネル内壁200を計測点Pの測定器Sから変位計測する際に、被計測点が遠方にあったとしても、測定器Sにより測定した被計測点の位置データを用いて被計測点の位置を計測できる。測定器Sの測定範囲にある被計測点については、測定器Sにより測定した位置データを用いればよい。被計測点の位置は、計測点Pを基準として計測するので、統一的な精度の高い計測管理が可能になる。
【0065】
これにより、測定範囲にない被計測点の計測管理も可能になり、被計測点との距離にかかわらず、トンネル内壁等の変形挙動を恒常的に監視することができ、施工上の安全性を確保することが容易になる。
【0066】
次に、位置計測システム1の第3の実施形態における計測点(測定器)と被計測点との位置関係について、図6を用いて説明する。図6(a)は、計測点Pと被計測点Oとの間に障害物がある場合の、位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの平面的な位置関係を示す図、図6(b)は、計測点Pから遠方に被計測点Oがある場合の、位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの平面的な位置関係を示す図である。第1、第2の実施形態と同様の機能構成を有する要素については同じ符号を付し、説明を一部省略する。
【0067】
図6(a)、図6(b)に示す第3の実施形態では、中継用の複数の測定器を用いて、計測点Pの位置を基準とした被計測点の位置の計測を行う。即ち、計測点Pの測定器Sに加え、複数の計測点P、Pにそれぞれ設けられた測定器S、Sを用いて、被計測点の位置を計測する。
【0068】
図6(a)に示す位置計測システム1では、計測点P、Pから障害物9により遮られ、測定器S、Sの測定範囲にない土留壁100の被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として計測する。
【0069】
図6(a)に示すように、土留壁100には、複数の被計測点O〜O(ターゲットT〜T)が配置されるが、被計測点O、Oは計測点Pの測定器Sの測定範囲になく、被計測点Oは計測点Pの測定器Sの測定範囲にない。
【0070】
そこで、本実施形態では、測定器S、Sと、計測点Pに設けられる測定器Sを用いて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を計測する。計測点Pは計測点Pから被計測点Oに至る経路上で、計測点P、Pに続いて配置される。経路P→P→P→Oは、障害物9の位置を避けるように設けられる。
【0071】
第1の実施形態と同様、被計測点Oの位置は測定器Sにより直接(経路P→O)測定し、被計測点Oの位置は、測定器S、Sを用いて経路P→P→Oにより計測する。さらに、被計測点Oの位置を、測定器S〜Sを用いて経路P→P→P→Oにより計測する。
【0072】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、計測点Pの位置を測定する。このため、測定器SにはターゲットTが設けられ、測定器Sの測定範囲に、被計測点O2、計測点Pを測定範囲とするように設置される。なお、測定器Sは計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置も測定可能である。
【0073】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。このため、測定器Sには位置測定の対象となる計測用プリズム等のターゲットTが設けられ、測定器Sの測定範囲に、被計測点Oを測定範囲とするように設置される。なお、測定器Sは計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置も測定可能である。
【0074】
各測定器S〜Sによる位置測定の際(図3のステップS101)、計測点Pの測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を直接測定するとともに、被計測点O、Oの位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データa(x、y、z)を測定する。
【0075】
また、計測点Pの測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置データと、被計測点Oの位置データb(x、y、z)を測定するとともに、被計測点Oの位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データc(x、y、z)を測定する。
【0076】
さらに、計測点Pの測定器Sは、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、Oの位置データを測定するとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置データd(x、y、z)を測定する。
【0077】
各位置データは、通信部等を介して各測定器S〜SからPC2に送信され、PC2に入力される(図3のステップS102)。
【0078】
PC2は、各位置データを用いて、被計測点O〜Oの位置を計測する(図3のステップS103)。この際、経路P→Oにより測定器Sが直接測定した被計測点Oの位置データを、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置とする。また、被計測点Oについて、式(1)によりa+bを算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P→Oにより計測する。
【0079】
また、測定器S、Sの測定範囲にない被計測点Oについて、測定器S〜Sが測定した位置データa、c、dを用いて、a、c、dの(ベクトル)和を以下の式(2)
a+c+d=(x+x+x、y+y+y、z+z+z)…(2)
により算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P→P→Oにより計測する。
【0080】
このようにして、各測定器S〜Sは、所定の時間間隔で計測点ならびに被計測点の位置データの測定を行い、PC2は、これをもとに被計測点O〜Oの位置データを求め、測定時点間の差をとり、被計測点O〜Oの変位とする。
【0081】
図6(b)に示す位置計測システム1では、計測点P、Pから遠方に設けられ、測定器S、Sの測定範囲にないトンネル内壁200の被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として計測する。
【0082】
図6(b)に示すように、トンネル内壁200には、複数の被計測点O〜O(ターゲットT〜T)等が配置されるが、被計測点O、Oは計測点Pの測定器Sの遠方にありその測定範囲になく、被計測点Oは計測点Pの測定器Sの遠方にありその測定範囲にない。
【0083】
そこで、図6(a)と同様、測定器S、Sと、計測点Pに設けられる測定器Sを用いて、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を計測する。計測点Pは計測点Pから被計測点Oに至る経路上で、計測点P、Pに続いて配置される。
【0084】
第2の実施形態と同様、被計測点Oの位置は測定器Sにより直接(経路P→O)測定し、被計測点Oの位置は、測定器S、Sを用いて経路P→P→Oにより計測する。さらに、被計測点Oの位置を、測定器S〜Sを用いて経路P→P→P→Oにより計測する。
【0085】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点O、計測点Pの位置を測定する。このため、測定器SにはターゲットTが設けられ、測定器Sの測定範囲に、被計測点O2、計測点Pを測定範囲とするように設置される。
【0086】
測定器S(計測点P)は、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。このため、測定器SにはターゲットTが設けられ、測定器Sの測定範囲に、被計測点Oを測定範囲とするように設置される。
【0087】
各測定器S〜Sによる位置測定の際(図3のステップS101)、計測点Pの測定器Sは、被計測点O等の、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として直接測定するとともに、測定範囲にない被計測点O、O等の位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データa(x、y、z)を測定する。
【0088】
また、計測点Pの測定器Sは、被計測点Oの位置データb(x、y、z)等の、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として測定するとともに、測定範囲にない被計測点O等の位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データc(x、y、z)を測定する。
【0089】
さらに、計測点Pの測定器Sは、被計測点Oの位置データd(x、y、z)等の、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として測定する。
【0090】
各位置データは、通信部等を介して各測定器S〜SからPC2に送信され、PC2に入力される(図3のステップS102)。
【0091】
PC2は、各位置データを用いて、被計測点O〜O等の位置を計測する(ステップS103)。この際、経路P→Oにより測定器Sが直接測定した被計測点Oの位置データを、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置とする。また、被計測点Oについて、式(1)によりa+bを算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P→Oにより計測する。
【0092】
また、測定器S、Sの測定範囲にない被計測点Oについて、測定器S〜Sが測定した位置データa、c、dを用いて、式(2)によりa+c+dを算出し、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P→P→Oにより計測する。
【0093】
このようにして、各測定器S〜Sは、所定の時間間隔で計測点ならびに被計測点の位置データの測定を行い、PC2は、これをもとに被計測点O〜O等の位置データを求め、測定時点間の差をとり、被計測点O〜O等の変位とする。
【0094】
従って、位置計測システムの第3の実施形態によれば、例えば土留壁100やトンネル内壁200を計測点Pの測定器Sから変位計測する際に、被計測点が障害物9により遮られており、または遠方にあり、測定器S、Sを用いて計測できない場合でも、測定器Sにより測定した被計測点の位置データを用いて被計測点の位置を計測できる。即ち、中継用の測定器を増やすことにより、測定器から被計測点が遮られ計測できない可能性を低下させてより確実な計測管理を行うことや、より遠方の被計測点の計測が可能である。測定器SやSを用いて計測できる被計測点については、前述のように、これらにより測定した位置データを用いればよい。また、被計測点の位置は、計測点Pを基準として計測するので、統一的な精度の高い計測管理が可能になる。
【0095】
次に、位置計測システム1の第4の実施形態における計測点(測定器)と被計測点との位置関係について、図7を用いて説明する。図7は、計測点Pと被計測点Oとの間に障害物がある場合の、位置計測システム1における計測点Pと被計測点Oの平面的な位置関係を示す図である。第1〜3の実施形態と同様の機能構成を有する要素については同じ符号を付し、説明を一部省略する。
【0096】
図7に示す第4の実施形態の位置計測システム1では、計測点Pの測定器Sから障害物9により遮られ、測定器Sの測定範囲にない土留壁100の被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として複数の経路により計測する。
【0097】
図7に示すように、土留壁100には、複数の被計測点O(ターゲットT)等が配置されるが、被計測点Oは障害物9により遮られ不可視となり、計測点Pの測定器Sの測定範囲にない。
【0098】
本実施形態では、測定器Sに加え、計測点P、P’にそれぞれ設けられた測定器S、S’を用いて、障害物9を避ける複数の経路P→P→O、P→P’→Oにより、被計測点Oの位置を計測点Pの位置を基準として計測する。
【0099】
測定器S(計測点P)、測定器S’(計測点P’)はそれぞれ、計測点Pの測定器Sの測定対象となるとともに、計測点P、計測点P’の位置を基準とする被計測点Oの位置を測定する。このため、測定器S、S’には位置測定の対象となる計測用プリズム等のターゲットT、T’がそれぞれ設けられ、測定器Sから測定範囲に、被計測点Oを測定範囲とするようにそれぞれ設置される。
【0100】
各測定器S、S、S’による位置測定の際(図3のステップS101)、計測点Pの測定器Sは、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として直接測定するとともに、測定範囲にない被計測点Oの位置を計測するため、計測点Pの位置を基準とする計測点Pの位置データa(x、y、z)と、計測点P’の位置データa’(xa’、ya’、za’)を測定する。
【0101】
計測点Pの測定器Sは、被計測点Oの位置データb(x、y、z)等、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点Pの位置を基準として測定する。
【0102】
計測点P’の測定器S’も、被計測点Oの位置データb’(xb’、yb’、zb’)等、測定範囲にある被計測点の位置データを計測点P’を基準として測定する。
【0103】
各位置データは、通信部等を介して各測定器からPC2に送信され、PC2に入力される(図3のステップS102)。
【0104】
PC2は、各位置データを用いて、被計測点O等の位置を計測する(図3のステップS103)。この際、測定器Sの測定範囲にある被計測点の位置については、測定器Sが直接測定した位置データを計測点Pの位置を基準とする被計測点の位置とする。また、測定器Sの測定範囲にない被計測点Oについて、位置データa、bの和を式(1)により算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P→Oにより計測する。また、位置データa’、b’の和を式(3)
a’+b’=(xa’+xb’、ya’+yb’、za’+zb’)…(3)
により算出して求め、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、経路P→P’→Oにより計測する。
【0105】
そして、計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの位置を、a+bとa’+b’の平均値(統計値)により求める。
【0106】
このようにして、各測定器S、S、S’は、所定の時間間隔で計測点ならびに被計測点の位置データの測定を行い、PC2は、これをもとに複数の経路で計測した被計測点Oの位置データの平均値を求め、測定時点間の差をとり、被計測点Oの変位とする。
【0107】
あるいは、先に計測点Pの位置を基準とする被計測点Oの変位を両経路について計測し、その後平均値(統計値)を求め、被計測点Oの変位としてもよい。
【0108】
このように、被計測点を複数の経路で計測し、位置または変位について平均値等の統計値をとることにより、計測精度を向上させることができる。
【0109】
なお、例えば図4に示す場合でも、被計測点は複数の経路(例えば経路P→Oと経路P→P→O)で計測することができる。多くの経路で被計測点の位置を計測し、計測した位置データについて、統計値の算出、あるいは異常値の排除等行うことで位置データの計測精度を高めることもできる。
【0110】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、例えば土留壁またはトンネル内壁に設けられた、複数の被計測点の位置を、トータルステーション、レーザー変位計、デジタルカメラ等の光学式測定器を用いて測定する際に、ある被計測点(ターゲット)が障害物により遮られ不可視となっていたり、遠方にあったりして、計測点Pの測定器Sの測定範囲にない場合でも、別の測定器S等により測定した被計測点の位置データを用いて計測点Pの位置を基準とする被計測点の位置を計測できる。測定器Sの測定範囲にある被計測点については、測定器Sにより測定した位置データを用いればよい。各被計測点の位置は、計測点Pを基準として計測するので、統一的な精度の高い計測管理が可能になる。
【0111】
また、中継用の測定器を増やすことにより、測定器から被計測点が遮られ計測できない可能性を低下させてより確実な計測管理を行うことや、より遠方の被計測点の計測が可能である。さらに、被計測点の位置を複数の経路で計測することにより、被計測点の位置の計測精度を向上させることもできる。
【0112】
そして、所定の時間間隔で計測したこのような位置データを用いて被計測点の変位を算出し、土留壁やトンネル内壁等の変位管理を行うことができる。
【0113】
これにより、計測点Pの測定器Sの測定範囲にない被計測点の計測管理も可能になり、障害物の有無等にかかわらず、土留壁等の変形挙動を恒常的に監視することができ、施工上の安全性を確保することが容易になる。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る位置計測システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0115】
1………位置計測システム
2………PC
9………障害物
100………土留壁
200………トンネル内壁
O………被計測点
P………計測点
S………測定器
T………ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測点Pを基準とした複数の被計測点Oの位置またはその変化を計測する位置計測システムであって、
計測点Pから所定の被計測点Oへと至る経路上で順に配置されたn(nは2以上の正整数)箇所の計測点P〜Pにそれぞれ1つずつ設けられ、位置測定を行うn個の光学式測定器S〜Sと、
前記光学式測定器S〜Sの測定結果に基づいて、前記計測点Pを基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出する算出手段と、
を備え、
計測点P1〜Pn-1にそれぞれ設けられる光学式測定器S1〜Sn-1は、計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置をそれぞれ測定し、
計測点Pnに設けられる光学式測定器Snは、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を測定し、
前記算出手段は、前記計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置と、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を用いて、計測点P1を基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出することを特徴とする位置計測システム。
【請求項2】
前記光学式測定器は、トータルステーション、レーザー変位計、デジタルカメラのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の位置計測システム。
【請求項3】
前記計測点P〜Pは、前記計測点Pから前記所定の被計測点Oに至る経路が障害物を避けるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の位置計測システム。
【請求項4】
前記被計測点Oと、前記光学式測定器S〜Sには、光学式測定器により位置測定を行うためのターゲットがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載の位置計測システム。
【請求項5】
少なくとも1つの被計測点Oについて、前記計測点Pから前記被計測点Oへと至る経路を複数備えることを特徴とする請求項1記載の位置計測システム。
【請求項6】
前記算出手段は、各経路にて算出された前記計測点Pを基準とする前記被計測点Oの位置またはその変化に基づいて、その統計値を算出することを特徴とする請求項5に記載の位置計測システム。
【請求項7】
土留壁またはトンネル内壁に生じる変位の計測に適用されることを特徴とする請求項1記載の位置計測システム。
【請求項8】
計測点Pを基準とした複数の被計測点Oの位置またはその変化を計測する位置計測方法であって、
計測点Pから所定の被計測点Oへと至る経路上で、順に配置されたn(nは2以上の正整数)箇所の計測点P〜Pにそれぞれ1つずつ設けられるn個の光学式測定器S〜Sにより位置測定を行う工程(a)と、
前記光学式測定器S〜Sの測定結果に基づいて、前記計測点Pを基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出する工程(b)と、
を備え、
前記工程(a)では、計測点P1〜Pn-1にそれぞれ設けられる光学式測定器S1〜Sn-1で、計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置をそれぞれ測定するとともに、計測点Pnに設けられる光学式測定器Snで、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を測定し、
前記工程(b)では、前記計測点P1〜Pn-1を基準とする次の計測点P2〜Pnの位置と、計測点Pnを基準とする前記所定の被計測点Oの位置を用いて、計測点P1を基準とする前記所定の被計測点Oの位置またはその変化を算出することを特徴とする位置計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−247677(P2011−247677A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119272(P2010−119272)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【Fターム(参考)】