説明

低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法および供給装置

【課題】 マグネットポンプ等の、低温流体を移液する車載用のポンプに、軽量で大きなスペースを占有することなく、簡便かつ確実に乾燥空気を供給する装置及び該装置を用いた乾燥空気の供給方法を提供する。
【解決手段】 マグネットポンプ1と、このマグネットポンプ1に接続されている低温流体用配管2と、この低温流体用配管2の外表面を覆うジャケット3と、このジャケット3に接続されジャケット3内に空気を送り込む空気用配管8と、この空気用配管8に接続されたエアーポンプ4と、ジャケット3とマグネットポンプ1を接続するパージガス用配管10とを備えるパージガス供給装置であり、ジャケット3内で、空気中の水分を凝結させて乾燥空気を生成し、この乾燥空気をマグネットポンプ1へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移液用ポンプ、特にタンクローリー等へ積載する車載用の、低温流体移液用ポンプへのパージガス供給方法および供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクローリーから貯蔵タンク等へ、低温液化ガス等の低温流体を移液する際には、車載用の移液用ポンプが使用される。このようなものとして、例えば、車載用の遠心ポンプが挙げられ、その軸封には、ほとんどの場合メカニカルシールやドライガスシールが採用されている。
メカニカルシールやドライガスシールを備える低温流体移液用ポンプは、軸封部に生じた氷結によってシール面を傷める場合があり、このような氷結の発生を防止する方法として、軸封部へ窒素ガス等の不活性ガスを供給する方法(特許文献1参照)、加熱装置を設ける方法(特許文献2参照)が開示されている。
【0003】
しかし、メカニカルシールによる軸封は、一般にシール面の片側にカーボン材を使用し、そのシール面の接触を常に保つため、磨耗しやすく、傷みが酷くなると、低温流体が外部にリークしてしまう。この場合、メカニカルシールの交換が必要になり、メンテナンス費用も掛かる上、低温流体の計画配送に支障をきたす。更に、低温流体が液化酸素の場合は、特に安全上の理由から、そのリークが起こることは望ましくない。
また、ドライガスシールによる軸封は、停止中や起動・停止中の短時間だけシール面が接触するため、メカニカルシールに比べればシール面が傷みにくい利点がある。しかし、傷みが酷くなれば、メカニカルシールの場合と同様の不具合を生じる。
【0004】
これらに対し、低温液化ガスの移液には、マグネットポンプも用いることができる。その構造の一例を、図4に示す。モーター軸36に固定された駆動側マグネット37でポンプ主軸38に固定された従動側マグネット39を非接触状態で回転させることによって、軸動力を伝達するマグネットポンプを低温流体の移液に用いた場合は、軸封部が無いためメンテナンスの手間が減り、その分の費用を低減できる。その上、外部リークを起こさないため、安全上からも望ましい。
ただし、ポンプのケーシング31内に通じているキャン32の内側が低温流体で冷やされるため、駆動側マグネットカップリング33の隙間を通して大気と接触するキャン32の外側に、空気中の水分が結露あるいは着霜し、その結果、キャン32と保持筒34との隙間35に氷結が生じて、ポンプの運転が妨げられる恐れがある。その対策としては、隙間35へ乾燥したパージ用ガスを導入し、キャン32の外側付近の水分を低減することが考えられる。
【0005】
一方、マグネットカップリング周辺で氷結が生じて駆動不能にならないように、ポンプのバックケーシングとモータブラケットおよびモータケーシングを連結して駆動マグネットを収容する気密な密閉空間を形成し、駆動マグネットの氷結を防ぐ方法が開示されている(特許文献3参照)。しかし、この場合は、汎用モーターを用いることが出来なくなる。
【0006】
したがって、低温流体移液用のマグネットポンプ、およびメカニカルシールやドライガスシールを備えるポンプについては、ポンプの運転を妨げるような軸封部の凍結を防止するために、乾燥したパージ用ガスを導入することが望まれ、窒素ガス等の不活性ガスや計装用乾燥空気を用いる方法が、一般に採用されてきた。
【特許文献1】特開平5−215099号公報
【特許文献2】特許第2612673号公報
【特許文献3】特開2002−155883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、計装用乾燥空気を用いる方法は、吸着乾燥装置等を必要とするため、その分のコストが増加する。その上、小流量を必要とする場合も、該装置の主要な構成機器である吸着器本体は、軽量、コンパクトにできるが、切換弁や再生用ヒーター等の形状や重量、およびそれらの接続配管や制御機器等が、吸着乾燥装置全体の小型化や軽量化を妨げることになる。したがって、特に徹底した省スペースや軽量化が必要とされるタンクローリー等に設置される車載用の低温流体移液用ポンプに対しては、この方法の適用は困難である。
【0008】
実際に、マグネットポンプ或いはメカニカルシールやドライガスシールを備えるポンプで凍結防止用として必要なパージガス量は、毎分数リットル程度である。よって、窒素ボンベをタンクローリー等に載せて、このボンベ中の窒素ガスをパージ用ガスとして用いる場合、例えば、内容積が10L(リットル)のボンベに14.7MPaの圧力(ゲージ圧力)で充填した窒素ガスを、3NL/minずつ消費するとして、8時間程度の供給が可能である。なお、ここでNLとは、0℃、1気圧に換算した容積を表す。
また、設計圧力1MPa(ゲージ圧力)未満の50L(リットル)程度のボンベを車載し、タンクローリーに低温流体をチャージするたびに、そのボンベにも窒素ガスを充填する方法も考えられる。この場合、例えば、3NL/minずつ消費するとして、2時間程度の供給が可能となる。
【0009】
しかし、窒素ボンベの交換あるいはボンベへの窒素ガスの充填が日常的に必要な方法は、作業の煩雑さとコストアップの観点から現実的ではない。また、ボンベの車載に伴うスペースの問題も生じる。したがって、窒素ボンベ中の窒素ガスを、パージ用ガスとして導入する方法は、採用が困難である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、マグネットポンプ等の、低温流体を移液する車載用のポンプに、軽量で大きなスペースを占有することなく、簡便かつ確実に乾燥空気を供給する装置及び該装置を用いた乾燥空気の供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、予冷とともに温度が低下し、停止とともに温度が上昇する低温流体移液用ポンプもしくは該ポンプに接続された配管の外表面に空気を送り込み、この空気中の水分を、低温流体の冷熱により凝結させて空気を乾燥させ、この乾燥空気を、低温流体移液用ポンプにパージガスとして供給することを特徴とする低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記低温流体移液用ポンプもしくは前記配管の外表面の一部をジャケットで覆い、このジャケット内に空気を送り込むことにより乾燥空気を得ることを特徴とする請求項1に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記空気を、エアーポンプで低温流体移液用ポンプもしくは配管の外表面に送り込むことを特徴とする請求項1または2に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記低温流体移液用ポンプ、前記ジャケット、あるいは該ジャケット近傍の配管の温度、もしくは前記乾燥空気の露点温度を検知して、これらの温度もしくは露点温度が設定値以下の時にエアーポンプを自動的に作動させ、設定値以上の時にエアーポンプを自動的に停止させることを特徴とする請求項3に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記ジャケット内に溜まった水分を、前記エアーポンプで送りこむ空気の圧力で、ジャケット外に強制排出することを特徴とする請求項3または4に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記低温流体移液用ポンプが、マグネットポンプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記低温流体移液用ポンプが、メカニカルシール或いはドライガスシールを備えたポンプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、予冷とともに温度が低下し、停止とともに温度が上昇する低温流体移液用ポンプおよび該ポンプに接続された配管と、この配管もしくは移液用ポンプの外表面を覆うジャケットと、このジャケットに接続されジャケット内に空気を送り込む空気用配管と、前記ジャケットと前記移液用ポンプを接続するパージガス用配管を備えることを特徴とする低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記空気用配管に、エアーポンプが接続されていることを特徴とする請求項8に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、前記低温流体移液用ポンプ、ジャケット、あるいは該ジャケット近傍の配管に温度計または露点計を設け、この温度計または露点計で計測した温度あるいは露点温度に基づいて、エアーポンプを自動的に作動あるいは停止する制御部を備えることを特徴とする請求項9に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置である。
【0021】
請求項11に記載の発明は、前記空気用配管が、この空気用配管よりも大きい内径からなる接続部を介して、前記ジャケットに接続されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、2および6〜8の発明によれば、大きなスペースを占有することなく、簡便かつ確実に、乾燥空気をパージ用ガスとして低温流体移液用ポンプに供給することができる。
【0023】
請求項3〜5および9〜11の発明によれば、低温流体移液用ポンプに、パージ用ガスをより確実に、供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、低温流体移液用ポンプとしてマグネットポンプを例に採り、本発明を詳しく説明するが、本発明は、ここに示す例に何ら限定されるものではない。
図1は、本発明の、マグネットポンプへのパージガス供給装置の一例を示す概略構成図である。
符号1は、低温流体を移液するマグネットポンプであり、低温流体を吸入する低温流体用配管2に連結され、低温流体用配管2の下流側には、マグネットポンプ1の手前部分に、該配管2を包み込むように円筒形状のジャケット3が設けられている。このジャケット3には、入口管9および出口部が設けられ、ジャケット3への空気の出入りは、この入口管9および出口部を通してのみ行われるようにされている。
【0025】
入口管9は、空気用配管8を介してエアーポンプ4に連結され、エアーポンプ4から送り込まれた空気が、これらの内部を通過できるようにされている。入口管9の内部近傍が、水分により閉塞することがないよう、入口管9の内径は、空気用配管8の内径よりも大きくされていることが望ましく、ジャケット3の内径Dに対し、0.5D程度の内径とされていることが特に好ましい。
【0026】
通常、低温流体を流す配管は、外気との温度差により生じるヒートロスを少なくするため、断熱施工を施すことが多いが、タンクローリー等からの低温流体の移液では、低温流体を流す時間が短いため、低温流体用配管2は裸配管とされている。
また、マグネットポンプ1および低温流体用配管2は、マグネットポンプ1の予冷とともに温度が低下し、停止とともに温度が上昇する。
【0027】
図1において、符号31はケーシング、符号32はキャン、符号33は駆動側マグネットカップリング、符号34は保持筒をそれぞれ示す。前記の通り、低温流体によりキャン32の内側が冷やされるため、キャン32と保持筒34の隙間35に氷結が生じないように、この部分にパージガスを供給すべく、マグネットポンプ1は、ジャケット3の出口部とパージガス用配管10で接続されている。
【0028】
一方、符号5は、マグネットポンプ1のケーシング31あるいはその近傍に取り付けた温度計であり、ケーシング31、あるいはその近傍の内部、もしくは表面温度を検知できるようにされている。
さらに、符号6は、ジャケット3あるいはその近傍の配管等に設けられた温度計であり、ジャケット3、あるいはその近傍の配管等の内部温度を検知できるようにされている。
また、ジャケット3の下部には、ジャケット3内で溜まった水を外部へ排出するための、配管26および電磁弁7が設けられている。
【0029】
このような構成の装置により、マグネットポンプへの乾燥空気の供給は、以下のように行われる。
まず、マグネットポンプ1と低温流体用配管2は、その部位や材質によって冷却の速度が違うため、低温流体と温度平衡に達して運転時の温度分布に近づくまで十分に予冷し、ポンプ内部の回転部品のクリアランス等を適正な状態にするとともに、ケーシング内部を低温流体で満たすことで、運転開始時にキャビテーションが起こりにくいようにする。
【0030】
マグネットポンプ1と低温流体用配管2の、低温流体による予冷の完了は、マグネットポンプ1に取り付けた温度計5で確認する。予め設定した温度以下になると予冷完了をランプ等で表示するようにしても良い。マグネットポンプ1は、予冷が完了すれば任意に運転を開始して良い。
【0031】
低温流体用配管2内に低温流体が流れると、該配管2の外表面に空気中の水分が着霜し、その周辺の空気が乾燥される。
【0032】
同様に、ジャケット3内では、低温流体用配管2の外表面に、ジャケット3内の水分が結露もしくは着霜することにより、乾燥空気が発生する。この乾燥空気を、ジャケット3内からパージガス用配管10を通じて、マグネットポンプ1のキャン32の外側空間、すなわち隙間35に流入させることにより、パージ用ガスとして用いる。
【0033】
隙間35とジャケット3内は、低温流体による冷熱で外気に対して負圧になるため、空気用配管8の一端は大気開放状態にしておいても、ジャケット3内に外気を自然に吸気することができる。しかし、より確実に乾燥空気を供給するためには、空気用配管8にエアーポンプ4を接続して用いることが好ましい。この時、パージガスとして供給に必要な空気流量は少ないので、搭載するエアーポンプ4はダイヤフラム式で代表されるような小型のもので充分である。
【0034】
エアーポンプ4は、マグネットポンプ1と配管2の予冷開始とともに運転を開始すれば良い。また、自動運転にするならば、ジャケット3に設けた温度計6によって、ジャケット3内が乾燥空気を供給可能な状態と判断できる温度より低温の時に、エアーポンプ4が自動的に運転されるように設定することが好ましい。
【0035】
エアーポンプ4の運転中は、ジャケット3内の乾燥空気が、マグネットポンプ1内の、マグネットカップリングのキャン32と保持筒34との隙間35に強制的に供給される。なお、マグネットポンプ1が冷える間に、隙間35に侵入する外気の水分量やその影響が無視できる程度であれば、エアーポンプ4は設けなくてもよい。
【0036】
マグネットポンプ1を停止してそのまま放置すると、マグネットポンプ1と低温流体用配管2への低温流体の流入が停止して、マグネットカップリングは外部からの熱侵入によってマグネットポンプ1の本体とともに、徐々に外気温度に近くなるまで昇温し続ける。昇温する間、隙間35の空気は、徐々に膨張し続けて、モーター軸の間隙から外へと逃げる。したがって、外気の侵入はほとんど無く、隙間35での結露や着霜が防止できるため、エアーポンプ4は、マグネットポンプ1の停止とともに停止しても良い。
【0037】
エアーポンプ4が自動運転ならば、マグネットポンプ1の停止後も、ジャケット3に設けた温度計6によって、ジャケット3内が、乾燥空気を供給可能な状態の温度以下であれば、エアーポンプ4の運転を継続してよい。そして、乾燥空気を供給可能な状態の温度より高温になった時は、エアーポンプ4が自動的に運転を停止するように設定し、過分な水分が、隙間35に流入することを、防止することが好ましい。
【0038】
ジャケット3内に溜まった水は、ジャケット3下部に設けられた電磁弁7を通じて、外部へ排出することができ、この例のようにエアーポンプ4を用いる場合は、エアーポンプ4で送り込まれる空気の圧力を利用して、適宜水分を排出することができる。また、エアーポンプ4の運転開始直後に、強制的に排出するようにしても良い。
【0039】
本発明のパージガス供給方法および供給装置により、ジャケット3内で乾燥空気を生成させ、これをパージ用ガスとして、マグネットポンプ1に安定的に供給することができる。
またこの時、吸着乾燥装置や窒素ガスを用いる必要がないため、軽量で大きなスペースを占有することなく、簡便かつ確実にパージガスを供給することができるため、特にタンクローリー等に積載する場合など、徹底した省スペースや軽量化をはかる必要がある時に、本発明は有用なものである。
【0040】
なお、ここでは、低温流体移液用ポンプとして、マグネットポンプを用いる例を挙げたが、本発明はこれに限定されず、例えば、メカニカルシールあるいはドライガスシールを備えたポンプ等も用いることができる。
また、ジャケット3は、低温流体用配管2の外表面の一部を覆うように設けられているが、本発明はこれに限定されず、マグネットポンプ1の外表面の一部を覆うように設けても良い。
さらに、本発明においては、前記温度計に代えて露点計を設けて乾燥空気の露点を計測し、その測定値が設定値より低く、乾燥空気として供給することが適当と判断された時に、該乾燥空気を供給するようにしても良い。
【0041】
本発明のパージガス供給方法の効果を確認するために行ったモデル実験の結果を、以下に示す。
本モデル実験に用いた装置の概略構成図を図2に示す。なお、図2中のLN2とは、液体窒素のことであり、図3でも同様である。
マグネットポンプに連結する配管と同程度の内径を有する配管材(50A)をU字型に成型した低温流体用配管11に対して、その下流側の垂直部に、ジャケット12が設けられている。低温流体用配管11の内径をD、ジャケット12の長さをLとした場合、このジャケット12は、1.5D程度の内径と、L/Dが8程度の長さを有するものである。ジャケット12の下部には、エアーポンプ15からの圧縮空気を導入する入口管13が設けらており、この入口管13の内径は、ジャケット12の入口近辺で配管が閉塞するのを防止するため、0.5D程度が好ましい。
また、ジャケット12の上部には、圧縮空気の出口管14が、ジャケット12の底部には、水を外部へ排出するための排出弁23がそれぞれ設けられている。
【0042】
エアーポンプ15と入口管13は、空気用配管24で連結されており、空気用配管24には上流側から下流側へかけて、加湿タンク16、温度計17、圧力計18がこの順番で設けられている。
また、出口管14は、パージガス用配管25を介してフロート式流量計22と連結されており、パージガス用配管25には上流側から下流側へかけて、温度計19、加温用コイル20、露点計21がこの順番で設けられている。
【0043】
このような装置を用いて、本モデル実験を以下のように行った。まずエアーポンプ15から毎分5リットルの空気を加湿タンク16に導入し、そこで飽和の状態まで加湿された空気を、空気用配管24を介して入口管13からジャケット12に導入し、それを出口管14から導出し、パージガス用配管25を介してフロート式流量計22から系外に放出した。次に、低温流体用配管11に液体窒素を溜め、ジャケット12内を通過する加湿空気を、低温流体用配管11の外表面に接触させた。
【0044】
なお、液体窒素および空気の供給は、実験終了時まで続け、供給停止後は、そのまま放置し、ジャケット12内が室温に戻った後、ジャケット12の底部に溜まった水は、排出弁13から外部へ排出した。
【0045】
一方、実験中にジャケット12から導出した空気の温度および露点を、温度計19および露点計21で計測し、時間ごとの変化を記録した。結果を図3に示す。
LN2冷却開始から約45分後に、露点計21の出口露点が約−50℃に達した。ただし、温度計19の出口温度は、LN2冷却開始から5分間で−70℃までの急激な温度低下を示しており、空気は短時間で充分に冷却されていること、また、露点計は一般に応答速度が遅いため、定常となるのに時間が掛かることから、実際には、もっと短時間で露点−50℃以下に到達していると考えられる。
【0046】
またこの時、配管11が液体窒素で満たされていることにより、入口管13の内部からジャケット12の内部にかけて、常温から極低温までの急激な温度勾配が生じ、ジャケット12に導入する空気中の水分の多くがここで結露あるいは着霜することが観察された。
すなわちこれらの結果から、ジャケット12から導出された空気は、充分に乾燥されていて、マグネットポンプへ送るパージガスとして適したものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、軽量で大きなスペースを占有することなく、簡便かつ確実にパージ用乾燥空気を低温流体移液用ポンプの軸封部に供給し、ポンプの運転を妨げるような氷結を防止することができるため、低温流体を扱うような産業分野では幅広く有用である。特に、タンクローリー等に積載した低温流体を、貯蔵タンクに移液する場合などに適したものである。さらに、本発明の方法および装置をマグネットポンプに適用することで、メンテナンスの手間が減り、その分の費用を低減できる上に、配送面でもより一層の安定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の、マグネットポンプへのパージガス供給装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明のモデル実験に用いた、パージガス供給装置の概略構成図である。
【図3】本発明のモデル実験の結果を示すグラフである。
【図4】マグネットポンプの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・マグネットポンプ、 2・・・低温流体用配管、 3・・・ジャケット、 4・・・エアーポンプ、 5,6・・・温度計、 7・・・電磁弁、 8・・・空気用配管、 9・・・入口管、 10・・・パージガス用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予冷とともに温度が低下し、停止とともに温度が上昇する低温流体移液用ポンプもしくは該ポンプに接続された配管の外表面に空気を送り込み、この空気中の水分を、低温流体の冷熱により凝結させて空気を乾燥させ、この乾燥空気を、低温流体移液用ポンプにパージガスとして供給することを特徴とする低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項2】
前記低温流体移液用ポンプもしくは前記配管の外表面の一部をジャケットで覆い、このジャケット内に空気を送り込むことにより乾燥空気を得ることを特徴とする請求項1に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項3】
前記空気を、エアーポンプで低温流体移液用ポンプもしくは配管の外表面に送り込むことを特徴とする請求項1または2に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項4】
前記低温流体移液用ポンプ、前記ジャケット、あるいは該ジャケット近傍の配管の温度、もしくは前記乾燥空気の露点温度を検知して、これらの温度もしくは露点温度が設定値以下の時にエアーポンプを自動的に作動させ、設定値以上の時にエアーポンプを自動的に停止させることを特徴とする請求項3に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項5】
前記ジャケット内に溜まった水分を、前記エアーポンプで送りこむ空気の圧力で、ジャケット外に強制排出することを特徴とする請求項3または4に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項6】
前記低温流体移液用ポンプが、マグネットポンプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項7】
前記低温流体移液用ポンプが、メカニカルシールあるいはドライガスシールを備えたポンプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給方法。
【請求項8】
予冷とともに温度が低下し、停止とともに温度が上昇する低温流体移液用ポンプおよび該ポンプに接続された配管と、この配管もしくは移液用ポンプの外表面を覆うジャケットと、このジャケットに接続されジャケット内に空気を送り込む空気用配管と、前記ジャケットと前記移液用ポンプを接続するパージガス用配管を備えることを特徴とする低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置。
【請求項9】
前記空気用配管に、エアーポンプが接続されていることを特徴とする請求項8に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置。
【請求項10】
前記低温流体移液用ポンプ、ジャケット、あるいは該ジャケット近傍の配管に温度計または露点計を設け、この温度計または露点計で計測した温度あるいは露点温度に基づいて、エアーポンプを自動的に作動あるいは停止する制御部を備えることを特徴とする請求項9に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置。
【請求項11】
前記空気用配管が、この空気用配管よりも大きい内径からなる接続部を介して、前記ジャケットに接続されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の低温流体移液用ポンプのパージガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−348877(P2006−348877A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177594(P2005−177594)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】