低熱変形シリコーン複合体モールド
本発明は、低熱変形モールドを形成するために使用することができる組成物及び方法を提供する。組成物は、揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成された硬化性弾性シリコーン組成物を含んでもよい。本方法の一実施形態は、エラストマーの第2の側面の近くで繊維性材料で含浸されたエラストマーの第1の側面にパターンを形成するステップを含んでもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してソフトリソグラフィーに関し、より詳細にはソフトリソグラフィーにおいて使用可能な低熱変形モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトリソグラフィー又はスタンプリソグラフィーは、マスターモールドから基板にパターンを転写するための技術である。ある従来のソフトリソグラフィー技術では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び適切な架橋剤を含む組成物等の硬化性シリコーン組成物を、所望のパターンのネガ像を表す形状を含むマスターに対しキャスティングすることにより、スタンプ又はモールドが製造される。硬化性シリコーン組成物は、硬化させ、マスターから剥がし、次いで基板上に所望のパターンを形成するために使用することができる。例えば、インクをスタンプに吸収させ、次いでインクを吸収させたスタンプを基板上に押し付けることにより基板上に堆積させることができる。他の例として、スタンプを液状樹脂中に押し付け、該樹脂を硬化させて、硬化したらスタンプから分離することができる。さらに他の例として、スタンプを表面と接触させ、スタンプと表面との間の領域に液状樹脂を浸透させてもよい。樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からスタンプを剥離すると、所望のパターンを後に残すことができる。
【0003】
ソフトリソグラフィーにおける進歩により、この技術は、フォトリソグラフィー等の他のリソグラフィー技術に匹敵する程となった。例えば、ソフトリソグラフィー技術を使用して、ケイ素基板上に0.1μから1μの範囲の形状を形成することができる。また、ソフトリソグラフィー技術は、リソグラフィー技術に比べ、比較的広面積を有し、比較的大きな形状を含むことができるスタンプ又はモールドを形成するために使用することもできる。このように、ソフトリソグラフィー技術は、伝統的なフォトリソグラフィーに比べ、比較的低価格での製造の選択を提供することができる。さらに、ソフトリソグラフィー技術を使用して形成されたパターンは通常柔軟であり、したがってソフトリソグラフィー技術は湾曲表面上へのパターン形成の自由度を提供することができる。
【0004】
ソフトリソグラフィーモールド又はスタンプを形成するために使用される材料は、典型的に、一連の厳しい要件を満たす必要がある。例えば、モールドやスタンプを形成するために使用される硬化材料は、モールドに形成された微細で複雑な形状を損傷又は改変することなくマスターモールドから剥離されなければならない。また、モールド又はスタンプを形成するために使用される硬化材料は、パターンが形成又は塗布されるべき表面と密接できることが必要な場合もあり、また該表面と接着することが必要な場合もある。さらに、モールド又はスタンプの一部は、パターン転写プロセスの終了時に表面上に形成されたパターンから剥離できることが必要な場合もある。パターンの形成又は塗布にインクが使用される場合、モールド又はスタンプを形成するために使用される硬化材料は、インクを吸収することができ、次いでインクの一部を表面上に堆積させることができなければならない。これらの要件の1つ又は複数を満たすことができる硬化性材料の一例は、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)から市販されているヒドロシリル化硬化性液状シリコーンゴムである、Sylgard184である。Sylgard184は、ソフトリソグラフィーにおいて使用されるモールド又はスタンプの形成に広く用いられている。
【0005】
しかし、ソフトリソグラフィーにおいて使用される従来の硬化性材料には、いくつもの欠点及び/又は制限がある。例えば、ポリジメチルシロキサンは、比較的架橋密度が低く、柔軟な骨格鎖を有し、また鎖間の物理的相互作用が比較的弱い。結果的に、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された硬化シリコーン組成物は比較的低い弾性率及び/又は強度を示す可能性があり、これにより、モールド又はスタンプに形成された形状のサイズが閾値を下回ると、該形状が崩壊することになる可能性がある。したがって、比較的低い弾性率及び/又は強度が、モールド又はスタンプに形成された形状の形状サイズ及び/又はアスペクト比を制限する可能性がある。
【0006】
また、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された硬化シリコーン組成物は、比較的高い熱膨張率を示すことができる。例えば、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された従来の硬化シリコーン組成物は、約250ppm/℃から約300ppm/℃の熱膨張率を有することができる。熱膨張は、硬化材料の寸法収縮を引き起こす可能性がある硬化反応により増大される可能性がある。温度変動及び硬化収縮は、モールド及び/又はスタンプに形成される形状を歪める可能性のある寸法変化を誘発し得る。ある場合には、寸法変化により、モールド又はスタンプに形成された形状を他の層内又は層上に形成された形状と一致させることが困難となる可能性がある。この問題は、比較的広領域のモールド又はスタンプにおいて特に深刻となり得る。
【0007】
Biebuyck(国際公開番号:WO97/06012)は、1μ未満の典型的な寸法を有する形状を形成するために使用することができるリソグラフィー処理のためのハイブリッド型スタンプ構造を説明している。ハイブリッド型スタンプ構造は、基板及び/又はスタンプ構造の表面の不均一性に対応するための変形可能層と、リソグラフィーパターンが刻印されるパターン層と、負荷が作用したときにスタンプの変形を防止することができる硬質支持層とを含む。しかし、ハイブリッド型スタンプの三層構造はいくつもの技術的課題を示し、そのためこの技術の実装は経済的に実行不可能となり得る。例えば、硬質支持層はガラス又は石英等の硬質材料で形成されるため、非常に脆く、適合性がなく、高価で取扱いが困難である。
【0008】
Brunoら(米国特許出願公開番号2001/0013294)は、Biebuyckにより説明された技術に関する他のいくつもの課題を指摘している。例えば、接触面中に気泡が混入する可能性(これはスタンプと表面との間の接触の欠損に起因した印刷失敗部分につながる可能性がある)、また化学的又は物理的収縮に起因した薄膜ハイブリッド型スタンプの厚さの不均質性や、印刷ツールにおける許容誤差の不均質性(これはスタンプの異なる領域への不均一な負荷を引き起こす可能性がある)による、パターンの崩壊及び/又は弛みの可能性がある。従来の技術におけるこれらの課題及び他の課題に対処するために、Brunoは、一方の面にパターン層が塗布され、反対の面にソフトパターンが取り付けられた、金属箔、薄膜ガラス、又は石英板から作製されたキャリア層を含む複数層スタンプ構造を提案している。しかし、Brunoにより説明されたスタンプの三層構造はまだいくつもの技術的課題を示し、そのためこの技術の実装は経済的に実行不可能となり得る。例えば、キャリア層は非常に脆く、適合性がなく、高価で取扱いが困難となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題の1つ又は複数の影響に対処することを目的とする。以下は、本発明のいくつかの態様の基本的理解を提供するための、本発明の簡潔な概要を示す。この概要は、本発明の網羅的な総括ではない。本発明の主要又は重大な要素を特定することも、本発明の範囲を画定することも意図されない。後述のより詳細な説明への導入部として、いくつかの概念を簡潔な形態で提示することを唯一の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な実施形態において、本発明は、低熱変形モールドを形成するために使用することができる組成物及び方法を含む。組成物は、揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成される硬化性弾性シリコーン組成物を含んでもよい。方法の一実施形態は、エラストマーの第2の側面の近くで繊維性材料で含浸されたエラストマーの第1の側面にパターンを形成するステップを含んでもよい。
【0011】
本発明は添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより理解することができ、図面において同様の参照番号は同様の要素を指している。
【0012】
本発明は様々な修正を受け代替的形態となり得るが、例示を目的として具体的な実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、本明細書における具体的な実施形態の説明は、開示される特定の形態に本発明を限定することを意図せず、逆に、添付の請求項により定義される本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての修正、等価物、及び代替を包含することが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を以下に説明する。明確にするために述べると、実際の実装における全ての特徴が本明細書に説明されるわけではない。当然ながら、そのような実際の実施形態のいずれの開発においても、システム関連及びビジネス関連の制約への適合性等、実装ごとに異なる開発者の特定の目標を達成するために数々の実装特定の決定がなされる必要があることが理解される。さらに、そのような開発努力は複雑で時間を要する可能性があるが、それでも本開示の利益を得る当業者にとって日常的な作業である。
【0014】
次に添付の図面を参照しながら本発明を説明する。説明のみを目的として、また当業者に周知の詳細により本発明を不明確としないように、様々な構造、システム及びデバイスを図面に概略的に示す。しかし、添付の図面は、本発明の具体例を解説し説明するために含まれている。本明細書で使用される単語及び語句は、関連技術における当業者によるそのような用語及び語句の理解と一致する意味を有すると理解され解釈されるべきである。本明細書における用語又は語句の一貫した使用により、用語又は語句の特別な定義、すなわち、当業者により理解される通常且つ慣例的な意味とは異なる定義を暗示することは意図されない。用語又は語句が特別な意味、すなわち当業者により理解される意味以外の意味を有するように意図される場合は、用語又は語句の特別な定義を直接的且つ明白に述べる定義的な形式で、そのような特別な定義が明細書中に明示的に記載される。
【0015】
図1A、1B及び1Cは、ソフトリソグラフィーモールド105を形成する方法の第1の例示的実施形態100を概念的に示す。図示された実施形態において、硬化性弾性ケイ素含有組成物がマスターパターン110の上に堆積される。例えば、硬化性弾性ケイ素含有組成物は、揮発成分除去ビニル官能性シロキサンポリマー、SiH官能基を有する揮発成分除去メチル水素シロキサンポリマー、及び阻害剤である2−フェニル−3−ブチン−2−オール(PBO)を組み合わせることにより形成することができる。様々な代替実施形態において、揮発成分除去ポリマーは、ポリマーから揮発成分を取り除くことができる真空及び/又は高温への曝露により揮発成分を除去することができる。したがって、揮発成分除去ポリマー、及び硬化性弾性ケイ素含有組成物は、揮発成分を実質的に含まない。本開示の利益を得る当業者には、「実質的に含まない」という用語が、揮発成分除去ポリマー及び/又は硬化性弾性ケイ素含有組成物中に微量の揮発成分が存在する可能性があることを示すよう意味することが理解される。しかし、これらの微量は、後に詳述されるように、モールド105の収縮にはほとんど又は全く寄与しない。また、揮発成分除去組成物は、無機充填剤(最終モールドの光学的透明度が望ましい場合、サイズは約50nm未満である必要がある)を含んでもよい。無機充填剤の組込みは概して熱収縮を低減する。また、揮発成分除去組成物は、硬質粒子の形態で、又はネットワーク構造中の共重合セグメントの形態で硬質樹脂を含有することができる。これらの樹脂の例はシリコーン樹脂である。揮発成分除去組成物はまた、過酸化物開始フリーラジカル硬化、UV、電子ビーム又は他の放射線硬化、マイクロ波硬化等の他のメカニズムによって硬化されてもよい。
【0016】
硬化性弾性ケイ素含有組成物は、図1Aに示されるように、次いで硬化されてモールド105を形成する。様々な代替実施形態において、硬化プロセスは、1種又は複数種の触媒の添加と、硬化性弾性ケイ素含有組成物の高温への曝露を含んでもよい。例えば、硬化性弾性ケイ素含有組成物はPt触媒及び阻害剤を使用して硬化されてもよく、また硬化性弾性ケイ素含有組成物を室温でマスターパターンと接触したままとしてもよい。触媒の濃度は通常0.1ppmから1000ppmである。阻害剤と触媒とのモル比は通常0.5から500である。例えば、阻害剤は約0wt.%から10wt.%の濃度であってもよい。
【0017】
硬化性弾性ケイ素含有組成物が揮発成分を実質的に含まないため、硬化中のモールド105の線収縮は少なくとも部分的に低減され得る。一実施形態において、触媒レベル及び阻害剤濃度、並びにそれらの組合せは、硬化中のモールド110の寸法収縮をさらに低減するために最適化することができる。例えば、触媒の濃度を約0.5ppmから約100ppmに増加させることができ、或いは、触媒に対する阻害剤の比率を100から3に減少させることができる。上述の硬化性弾性ケイ素含有組成物を使用して形成されたモールド105の線収縮は、室温硬化後約0.01%と測定されている。一方、Sylgard184等の従来の硬化性ケイ素含有組成物は、室温硬化後約1%の線収縮を示す。
【0018】
硬化したモールド105は、図1Bに示されるようにマスターパターン110から剥離され、次いで、図1Cに示されるように基板115上にパターンの複製を形成又は塗布するために使用することができる。例えば、インクをモールド105に吸収させ、次いでインクを吸収させたスタンプを基板115上に押し付けることにより基板115上に堆積させることができる。他の例として、モールド105を液状樹脂(図示せず)中に押し付け、該樹脂を硬化させて、硬化したらモールド105から分離することができる。さらに他の例として、モールド105を基板115と接触させ、モールド105と基板115との間の領域に液状樹脂を浸透させてもよい。樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からモールド105を剥離すると、所望のパターンを後に残すことができる。しかし、パターンを基板115に形成、転写、又は塗布する具体的方法は、設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。
【0019】
図2A、2B、2C、2D、2E、2F、及び2Gは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態200を概念的に示す。図示された実施形態において、基板205は、後に形成される層の基板205に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板205から剥離できるようにすることを目的とした剥離層210を形成するように処理される。剥離層210は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板205は、剥離層210を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm,Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板205及び/又は剥離層210を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層205は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0020】
次いで硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215が、図2Aに示されるように基板205の上に、また(存在する場合は)剥離層210上に堆積される。硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、スピンコーティング、浸漬、噴霧、はけ塗り、又はスクリーン印刷等の従来のコーティング技術を使用して堆積することができる。一実施形態において、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、トルエンで希釈した樹脂、1種又は複数種の架橋剤、及び触媒を含む。例えば、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、シリコーン樹脂10g、1種又は複数種の架橋剤9.3g、及びPt触媒0.1g(ダウコーニング社(Dow Corning Corporation、ミシガン州ミッドランド)より入手可能なPt/(ViMe2Si)2O錯体から1000ppm Ptとなるようトルエンで希釈)を使用して形成された無溶剤硬化性シリコーン樹脂であってもよい。
【0021】
硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215に使用されるシリコーン樹脂は、(MeSiO3/2)0.4(ViMe2SiO1/2)0.6の平均組成を有するシリコーン樹脂であってもよく、これは、MeSi(OMe)3を100g及び(ViMe2Si)2Oを100.4gを、温度計、凝縮装置、Dean Starkトラップ及び撹拌器を備えた500mlの三口フラスコ中に加えることにより形成することができる。次いでトリフルオロメタンスルホン酸約0.2gを加え、混合物を加熱せずに30分間撹拌することができる。このステップの後、脱イオン水約40gを加え、混合物を60℃に40分間加熱することができる。混合物を40℃未満まで冷却した後、CaCO3約0.2gを加えて混合物を2時間撹拌することができる。次いでトルエン約16gを加え、混合物を加熱還流することができる。温度が85℃に達するまでメタノールを除去することができる。混合物を40℃未満まで冷却した後、KOH水溶液約0.1gを加えることができる。混合物を加熱還流することができ、水が実質的に留出しなくなるまで濃縮装置の底から水を継続的に除去することができる。次いで混合物を40℃未満まで冷却することができ、ビニルジメチルクロロシラン約0.11gを加えることができる。30分間撹拌した後、生成物を濾過して沈殿物を除去することができる。残留トルエンは、ロータリーエバポレータを用い、80℃、5mmHgで除去することができる。
【0022】
架橋剤は、Me3SiO(HMeSiO)2SiMe3を含む組成物を含んでもよい。粗架橋剤は、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)から提供されているものを得ることができる。しかし、市販されている架橋剤は、典型的には関連成分Me3SiO(HMeSiO)nSiMe3(nは1から10の範囲)を含有する。したがって、一実施形態において、真空及び分取用カラムを備えた研究用蒸留ユニットを使用して成分を分離することができる。例えば、有用な主成分であるMe3SiO(HMeSiO)2SiMe3は、蒸留プロセスの主生成物となり得る。ある実施形態において、より高い重合度を有する他の成分Me3SiO(HMeSiO)nSiMe3もまた架橋剤として使用することができる。
【0023】
上述の硬化性ケイ素含有組成物は、層215を形成するために使用可能な組成物の一例に過ぎない。代替実施形態において、硬化性ケイ素含有組成物は、シリコーン樹脂を含むいかなるヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物となり得る、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物であってもよい。そのような組成物は、典型的には、ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を有するシリコーン樹脂、該樹脂中のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子と反応することができるケイ素結合水素原子又はケイ素結合アルケニル基を有する架橋剤、及びヒドロシリル化触媒を含有する。シリコーン樹脂は、典型的には、M及び/又はDシロキサン単位と組み合わされたT及び/又はQシロキサン単位を含有するコポリマーである。さらに、シリコーン樹脂は、シリコーン組成物の第5及び第6の実施形態として後述するゴム変性シリコーン樹脂であってもよい。
【0024】
第1の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)Z(I)で表されるシリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)、(B)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0025】
成分(A)は、式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂である。
【0026】
R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、脂肪族不飽和を含まず、典型的には1個から10個の炭素原子、或いは1個から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環状ヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐構造又は非分岐構造を有することができる。R1で表されるヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等のアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル及びナフチル等のアリール;トリル及びキシリル等のアルカリル;並びにベンジル及びフェネチル等のアラルキルが含まれるが、これらに限定されない。R1で表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、及び2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
R2により表される同じでも異なっていてもよいアルケニル基は、典型的には2個から約10個の炭素原子、或いは2個から6個の炭素原子を有し、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、及びオクテニルで例示されるが、これらに限定されない。
【0028】
シリコーン樹脂の式(I)において、下付き文字w、x、y、及びzはモル分率である。下付き文字wは、典型的には0から0.8、或いは0.02から0.75、或いは0.05から0.3の値を有し;下付き文字xは、典型的には0から0.6、或いは0から0.45、或いは0から0.25の値を有し;下付き文字yは、典型的には0から0.99、或いは0.25から0.8、或いは0.5から0.8の値を有し;下付き文字zは、典型的には0から0.35、或いは0から0.25、或いは0から0.15の値を有する。また、比率y+z/(w+x+y+z)は、典型的には0.2から0.99、或いは0.5から0.95、或いは0.65から0.9である。さらに、比率w+x/(w+x+y+z)は、典型的には0.01から0.80、或いは0.05から0.5、或いは0.1から0.35である。
【0029】
典型的には、シリコーン樹脂におけるR2基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%はアルケニルである。
【0030】
シリコーン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0031】
シリコーン樹脂の25℃における粘度は、典型的には0.01Pa・sから100,000Pa・s、或いは0.1Pa・sから10,000Pa・s、或いは1Pa・sから100Pa・sである。
【0032】
シリコーン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0033】
シリコーン樹脂は、R1R22SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR22SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR1SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する(式中、R1及びR2は上で説明され例示された通りである)。例えば、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0034】
シリコーン樹脂の例には、
(Vi2MeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(MeSiO3/2)0.25(PhSiO3/2)0.50、(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.1、及び(Vi2MeSiO1/2)0.15(ViMe2SiO1/2)0.1(PhSiO3/2)0.75の式(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、また括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0035】
成分(A)は、単一のシリコーン樹脂であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0036】
シリコーン樹脂の調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、トルエン等の有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより調製される。例えば、本質的にR1R22SiO1/2単位及びR1SiO3/2単位から構成されるシリコーン樹脂は、式R1R22SiClで表される化合物及び式R1SiCl3で表される化合物(式中、R1及びR2は上で定義され例示された通りである)をトルエン中で共加水分解することにより調製することができる。塩酸水溶液及びシリコーン加水分解物を分離し、加水分解物を水で洗浄して残留した酸を除去し、弱い縮合触媒の存在下で加熱して樹脂を必要な粘度まで「調整」する。必要に応じて、有機溶媒中で樹脂をさらに縮合触媒で処理し、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を減少させることができる。或いは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH3、−OC(O)CH3、−N(CH3)2、NHCOCH3、及び−SCH3等を含有するシランを共加水分解反応における出発材料として利用することができる。樹脂生成物の性質は、シランの種類、シランのモル比、縮合度、及び処理条件に依存する。
【0037】
成分(B)は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。
【0038】
有機ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、或いは1分子あたり少なくとも平均3個のケイ素結合水素原子を有する。成分(A)における1分子あたりの平均アルケニル基数と、成分(B)における1分子あたりの平均ケイ素結合水素原子数の和が4より大きい場合に架橋が生じることが一般に理解されている。
【0039】
有機ケイ素化合物は、有機水素シラン又は有機水素シロキサンであってもよい。有機水素シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機水素シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、環状又は樹脂状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0040】
有機水素シランの例には、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、及びポリ(メチルシリレン)メチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
また、有機水素シランは、式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R3は脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビレン基であり、
【化1】
(gは1から6である)から選択される式で表される)で表すことができる。R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂に対して上で定義され例示された通りである。
【0042】
式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)で表される有機水素シランの例には、
【化2】
の式で表されるシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
有機水素シロキサンの例には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、及び本質的にHMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位及びSiO4/2単位(Meはメチルである)から構成される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
また、有機水素シロキサンは、式(R1R42SiO1/2)w(R42SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(II)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R4はR1又は少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有する有機シリルアルキル基であり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしR4基の少なくとも50mol%が有機シリルアルキルである)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂であってもよい。
【0045】
R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂に対して上で説明され例示された通りである。R4で表される有機シリルアルキル基の例には、
【化3】
−CH2CH2SiMe2H、
−CH2CH2SiMe2CnH2nSiMe2H、
−CH2CH2SiMe2CnH2nSiMePhH、
−CH2CH2SiMePhH、
−CH2CH2SiPh2H、
−CH2CH2SiMePhCnH2nSiPh2H、
−CH2CH2SiMePhCnH2nSiMe2H、
−CH2CH2SiMePhOSiMePhH、及び
−CH2CH2SiMePhOSiPh(OSiMePhH)2の式(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き文字nは2から10の値を有する)で表される基が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
有機水素ポリシロキサン樹脂の式(II)において、下付き文字w、x、y、及びzはモル分率である。下付き文字wは、典型的には0から0.8、或いは0.02から0.75、或いは0.05から0.3の値を有し;下付き文字xは、典型的には0から0.6、或いは0から0.45、或いは0から0.25の値を有し;下付き文字yは、典型的には0から0.99、或いは0.25から0.8、或いは0.5から0.8の値を有し;下付き文字zは、典型的には0から0.35、或いは0から0.25、或いは0から0.15の値を有する。また、比率y+z/(w+x+y+z)は、典型的には0.2から0.99、或いは0.5から0.95、或いは0.65から0.9である。さらに、比率w+x/(w+x+y+z)は、典型的には0.01から0.80、或いは0.05から0.5、或いは0.1から0.35である。
【0047】
典型的には、有機水素ポリシロキサン樹脂におけるR4基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有する有機シリルアルキル基である。
【0048】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0049】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0050】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、R1R42SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR42SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR1SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する(式中、R1及びR4は上で説明され例示された通りである)。例えば、有機水素ポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0051】
有機水素ポリシロキサン樹脂の例には、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.12(PhSiO3/2)0.88、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(PhSiO3/2)0.83、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.17(PhSiO3/2)0.66、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10、及び
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.08((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)Me2SiO1/2)0.06(PhSiO3/2)0.86の式(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、C6H4はパラ−フェニレン基を指し、また括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0052】
成分(B)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B)は単一の有機水素シラン、2種の異なる有機水素シランの混合物、単一の有機水素シロキサン、2種の異なる有機水素シロキサンの混合物、又は有機水素シラン及び有機水素シロキサンの混合物であってもよい。特に、成分(B)は、成分(B)の総重量を基準として、少なくとも0.5%(w/w)、或いは少なくとも50%(w/w)、或いは少なくとも75%(w/w)の式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂、並びに有機水素シラン及び/又は有機水素シロキサン(後者は有機水素ポリシロキサン樹脂とは異なる)を含む混合物であってもよい。
【0053】
成分(B)の濃度は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B)の正確な量は所望の硬化度に依存し、該硬化度は一般に成分(A)におけるアルケニル基のモル数に対する成分(B)におけるケイ素結合水素原子のモル数の比率が増加するにつれて増加する。成分(B)の濃度は、典型的には、成分(A)におけるアルケニル基1モルあたり、0.4モルから2モルのケイ素結合水素原子、或いは0.8モルから1.5モルのケイ素結合水素原子、或いは0.9モルから1.1モルのケイ素結合水素原子を提供するために十分な濃度である。
【0054】
ケイ素結合水素原子を含有する有機ケイ素化合物の調製方法は、当技術分野では周知である。例えば、有機水素シランは、グリニャール試薬とハロゲン化アルキル又はアリールとの反応により調製することができる。特に、式HR12Si−R3−SiR12Hで表される有機水素シランは、式R3X2で表されるジハロゲン化アリールをエーテル中のマグネシウムで処理して対応するグリニャール試薬を生成し、該グリニャール試薬を式HR12SiClで表されるクロロシランで処理することにより調製することができる(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)。
【0055】
有機ハロシランの加水分解及び縮合等の有機水素シロキサンの調製方法も、当技術分野では周知である。
【0056】
さらに、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂は、(a)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂と、(b)1分子あたり平均2個から4個のケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000未満である有機ケイ素化合物を、(c)ヒドロシリル化触媒、及び任意選択で(d)有機溶媒の存在下で反応させることにより調製することができる(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(a)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、(b)におけるケイ素結合水素原子の(a)におけるアルケニル基に対するモル比は1.5から5である)。
【0057】
シリコーン樹脂(a)は、シリコーン組成物の成分(A)に対して上で説明され例示された通りである。シリコーン樹脂(a)は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物における成分(A)として使用されるシリコーン樹脂と同じでも異なっていてもよい。
【0058】
有機ケイ素化合物(b)は、1分子あたり平均2個から4個のケイ素結合水素原子を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。或いは、有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均2個から3個のケイ素結合水素原子を有する。有機ケイ素化合物は、典型的には1,000未満、或いは750未満、或いは500未満の分子量を有する。有機ケイ素化合物におけるケイ素結合有機基は、両方とも脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基から選択され、また成分(A)のシリコーン樹脂の式におけるR1に対して上で説明され例示された通りである。
【0059】
有機ケイ素化合物(b)は、有機水素シラン又は有機水素シロキサンであってもよい。有機水素シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機水素シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、又は環状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0060】
有機水素シランの例には、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、及び1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシランが含まれるが、これらに限定されない。また、有機水素シランは式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)で表すことができる。
【0061】
有機水素シロキサンの例には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、及び1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
有機ケイ素化合物(b)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B)は単一の有機水素シラン、2種の異なる有機水素シランの混合物、単一の有機水素シロキサン、2種の異なる有機水素シロキサンの混合物、又は有機水素シラン及び有機水素シロキサンの混合物であってもよい。
【0063】
上述のグリニャール試薬とハロゲン化アルキル又はアリールとの反応等の有機水素シランの調製方法は、当技術分野では周知である。同様に、有機ハロシランの加水分解及び縮合等の有機水素シロキサンの調製方法も、当技術分野では周知である。
【0064】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム)、又は白金族金属を含有する化合物を含む周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0065】
ヒドロシリル化触媒は、米国特許第3419593号(参照することにより本明細書に組み入れられる)においてWillingにより開示された、塩化白金酸とあるビニル含有有機シロキサンとの錯体を含む。この種類の触媒は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0066】
また、ヒドロシリル化触媒は、表面上に白金族金属を有する固体担体を含む担持ヒドロシリル化触媒であってもよい。担持触媒は、例えば反応混合物の濾過により、有機水素ポリシロキサン樹脂生成物から都合よく分離することができる。担持触媒の例には、白金担持炭素、パラジウム担持炭素、ルテニウム担持炭素、ロジウム担持炭素、白金担持シリカ、パラジウム担持シリカ、白金担持アルミナ、パラジウム担持アルミナ、及びルテニウム担持アルミナが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
有機溶媒(d)は、少なくとも1種の有機溶媒である。有機溶媒は、シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、又は有機水素ポリシロキサン樹脂と本方法の条件下で反応しない、また成分(a)、(b)、及び有機水素ポリシロキサン樹脂と相溶性である、いかなる非プロトン性有機溶媒又は非プロトン性極性有機溶媒であってもよい。
【0068】
有機溶媒の例には、n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン及びドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等の環状エーテル;メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;トリクロロエタン等のハロゲン化アルカン;並びにブロモベンゼン及びクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒(d)は、単一の有機溶媒であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機溶媒を含む混合物であってもよい。
【0069】
反応は、ヒドロシリル化反応に適したいかなる標準的反応炉でも行うことができる。適した反応炉には、ガラス反応炉及びテフロン(登録商標)で内張りしたガラス反応炉が含まれる。好ましくは、反応炉は撹拌等のかき混ぜ手段を備える。また、好ましくは、湿気がない状態で、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中で反応が行われる。
【0070】
シリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒、及び、任意選択の有機溶媒は、いかなる順番でも組み合わせることができる。典型的には、有機ケイ素化合物(b)及びヒドロシリル化触媒(c)は、シリコーン樹脂(a)及び任意選択で有機溶媒(d)を導入する前に組み合わされる。
【0071】
反応は、典型的には0℃から150℃の温度で、或いは室温(約23±2℃)から115℃の温度で行われる。温度が0℃未満の場合、典型的には反応速度が非常に遅い。
【0072】
反応時間は、シリコーン樹脂及び有機ケイ素化合物の構造並びに温度等、いくつかの要因に依存する。反応時間は、典型的には室温(約23±2℃)から150℃の温度で1時間から24時間である。最適反応時間は、慣例的な試験により決定することができる。
【0073】
シリコーン樹脂(a)におけるアルケニル基に対する有機ケイ素化合物(b)におけるケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には1.5から5、或いは1.75から3、或いは2から2.5である。
【0074】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)の有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)及び有機ケイ素化合物(b)の総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属、或いは1ppmから500ppmの白金族金属、或いは5ppmから150ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。白金族金属が0.1ppm未満では反応速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属を使用すると、認め得るほどの反応速度の増加は見られなくなり、したがって非経済的である。
【0075】
有機溶媒(d)の濃度は、反応混合物の総重量を基準として、典型的には0%から99%(w/w)、或いは30%から80%(w/w)、或いは45%から60%(w/w)である。
【0076】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態においては、単離若しくは精製せずに使用することができ、又は、樹脂は従来の蒸発法により溶媒のほとんどから分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、有機水素ポリシロキサン樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒が上述の担持触媒である場合、反応混合物を濾過することにより樹脂をヒドロシリル化触媒から容易に分離することができる。しかし、有機水素ポリシロキサン樹脂が樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、触媒は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態の成分(C)として使用されてもよい。
【0077】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の成分(C)は、成分(A)の成分(B)との付加反応を促進する少なくとも1種のヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒は、白金族金属、白金族金属を含有する化合物、又はマイクロカプセル化白金族金属含有触媒を含む、周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0078】
好ましいヒドロシリル化触媒は、米国特許第3419593号(参照することにより本明細書に組み入れられる)においてWillingにより開示された、塩化白金酸とあるビニル含有有機シロキサンとの錯体を含む。この種類の好ましい触媒は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0079】
また、ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂中に白金族金属を含むマイクロカプセル化白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒を含有する組成物は、長期間、典型的には周囲条件で数ヶ月以上安定であるが、熱可塑性樹脂の融点又は軟化点を超える温度で比較的急速に硬化する。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒及びその調製方法は当技術分野では周知であり、米国特許第4766176号及びその中で引用されている参考文献、並びに米国特許第5017654号に例示される。
【0080】
成分(C)は、単一のヒドロシリル化触媒であっても、又は、構造、形態、白金族金属、錯化配位子、及び熱可塑性樹脂等の少なくとも1つの性質が異なる2種以上の異なる触媒を含む混合物であってもよい。
【0081】
成分(C)の濃度は、成分(A)の成分(B)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、成分(C)の濃度は、成分(A)及び(B)の総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属、好ましくは1ppmから500ppmの白金族金属、さらに好ましくは5ppmから150ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。白金族金属が0.1ppm未満では硬化速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属を使用すると、認め得るほどの硬化速度の増加は見られなくなり、したがって非経済的である。
【0082】
第2の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R5はR1又は−Hであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)、(B’)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0083】
成分(A’)は、式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R5はR1又は−Hであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂である。式(III)中、R1、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、式(I)で表されるシリコーン樹脂に対して上で説明され例示された通りである。
【0084】
典型的には、シリコーン樹脂におけるR5基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%は水素である。
【0085】
シリコーン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0086】
シリコーン樹脂の25℃における粘度は、典型的には0.01Pa・sから100,000Pa・s、或いは0.1Pa・sから10,000Pa・s、或いは1Pa・sから100Pa・sである。
【0087】
シリコーン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0088】
シリコーン樹脂は、R1R52SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR52SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR5SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する。例えば、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0089】
成分(A’)としての使用に適したシリコーン樹脂の例には、
(HMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(HMeSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.6(MeSiO3/2)0.1、及び(Me3SiO1/2)0.1(H2SiO2/2)0.1(MeSiO3/2)0.4(PhSiO3/2)0.4(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)の式で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0090】
成分(A’)は、単一のシリコーン樹脂であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0091】
ケイ素結合水素原子を含有するシリコーン樹脂の調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、トルエン等の有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより調製される。例えば、本質的にR1R52SiO1/2単位及びR5SiO3/2単位から構成されるシリコーン樹脂は、式R1R52SiClで表される化合物及び式R5SiCl3で表される化合物(式中、R1及びR5は上で定義され例示された通りである)をトルエン中で共加水分解することにより調製することができる。塩酸水溶液及びシリコーン加水分解物を分離し、加水分解物を水で洗浄して残留した酸を除去し、弱い非塩基性縮合触媒の存在下で加熱して樹脂を必要な粘度まで「調整」する。必要に応じて、有機溶媒中で樹脂をさらに非塩基性縮合触媒で処理し、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を減少させることができる。或いは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH3、−OC(O)CH3、−N(CH3)2、NHCOCH3、及び−SCH3等を含有するシランを共加水分解反応における出発材料として利用することができる。樹脂生成物の性質は、シランの種類、シランのモル比、縮合度、及び処理条件に依存する。
【0092】
成分(B’)は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。
【0093】
有機ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基、又は1分子あたり少なくとも平均3個のケイ素結合アルケニル基を含有する。成分(A’)における1分子あたりの平均ケイ素結合水素原子数と、成分(B’)における1分子あたりの平均ケイ素結合アルケニル基数の和が4より大きい場合に架橋が生じることが一般に理解されている。
【0094】
有機ケイ素化合物は、有機シラン又は有機シロキサンであってもよい。有機シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、環状又は樹脂状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合アルケニル基は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0095】
成分(B’)としての使用に適した有機シランの例には、
Vi4Si、PhSiVi3、MeSiVi3、PhMeSiVi2、Ph2SiVi2、及びPhSi(CH2CH=CH2)3(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである)の式で表されるシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
成分(B’)としての使用に適した有機シロキサンの例には、
PhSi(OSiMe2H)3、Si(OSiMe2H)4、MeSi(OSiMe2H)3、及びPh2Si(OSiMe2H)2(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)の式で表されるシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
成分(B’)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B’)は単一の有機シラン、2種の異なる有機シランの混合物、単一の有機シロキサン、2種の異なる有機シロキサンの混合物、又は有機シラン及び有機シロキサンの混合物であってもよい。
【0098】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B’)の正確な量は所望の硬化度に依存し、該硬化度は成分(A’)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する成分(B’)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の比率が増加するにつれて増加する。成分(B’)の濃度は、典型的には、成分(A’)におけるケイ素結合水素原子1モルあたり、0.4モルから2モルのケイ素結合アルケニル基、或いは0.8モルから1.5モルのケイ素結合アルケニル基、或いは0.9モルから1.1モルのケイ素結合アルケニル基を提供するために十分な濃度である。
【0099】
ケイ素結合アルケニル基を含有する有機シラン及び有機シロキサンの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0100】
シリコーン組成物の第2の実施形態の成分(C)は、第1の実施形態の成分(C)に対して上で説明され例示された通りである。
【0101】
第3の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂、(B)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、並びに(D)(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムを含む(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂及びシリコーンゴム(D)(i)はそれぞれ、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(A)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)。
【0102】
シリコーン組成物の第3の実施形態の成分(A)、(B)、及び(C)は、第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0103】
成分(B)の濃度は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)及び成分(D)(i)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和に対する、成分(B)におけるケイ素結合水素原子のモル数の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数に対する、成分(B)及び成分(D)(ii)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0104】
成分(D)は、(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムである(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)。
【0105】
成分(D)(i)は、式R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)(式中、R1及びR2は上で説明され例示された通りであり、下付き文字aは1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムである。或いは、下付き文字aは2から4又は2から3の値を有する。
【0106】
成分(D)(i)としての使用に適したシリコーンゴムの例には、
ViMe2SiO(Me2SiO)aSiMe2Vi、ViMe2SiO(Ph2SiO)aSiMe2Vi、及びViMe2SiO(PhMeSiO)aSiMe2Vi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字aは1から4の値を有する)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
成分(D)(i)は、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(IV)で表される2種又はそれ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0108】
成分(D)(ii)は、式R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)(式中、R1及びR5は上で説明され例示された通りであり、下付き文字bは1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムである。或いは、下付き文字bは2から4又は2から3の値を有する。
【0109】
成分(D)(ii)としての使用に適したシリコーンゴムの例には、
HMe2SiO(Me2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(Ph2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(PhMeSiO)bSiMe2H及びHMe2SiO(Ph2SiO)2(Me2SiO)2SiMe2H(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き文字bは1から4の値を有する)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
成分(D)(ii)は、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(V)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0111】
シリコーン樹脂(A)におけるケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0112】
ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0113】
第4の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂、(B’)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、並びに(D)(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムを含む(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂及びシリコーンゴム(D)(ii)はそれぞれ、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーンゴム(D)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーン樹脂(A’)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)。
【0114】
シリコーン組成物の第4の実施形態の成分(A’)、(B’)及び(C)は、第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りであり、第4の実施形態の成分(D)は、第3の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0115】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する、成分(B’)及び成分(D)(i)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)及び成分(D)(ii)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和に対する、成分(B’)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0116】
シリコーン樹脂(A’)におけるケイ素結合水素原子に対する、シリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0117】
第5の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’’)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂と、式R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5(VI)で表されるシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、cは4より大きく1,000までの値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(I)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(VI)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)、(B)ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0118】
シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(B)及び(C)は、第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0119】
成分(B)の濃度は、ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B)の濃度は、シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数に対する、成分(B)及びシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和の比が、典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0120】
成分(A’’)は、式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂と、式R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5(VI)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂である(式中、R1、R2、R5、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、上で説明され例示された通りであり、下付き文字cは4より大きく1,000までの値を有する)。
【0121】
式(I)で表されるシリコーン樹脂は、シリコーン組成物の第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。また、ヒドロシリル化触媒及び有機溶媒は、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂の調製方法において上で説明され例示された通りである。本明細書で使用される場合、「可溶性反応生成物」という用語は、有機溶媒が存在する場合、成分(A’’)の調製のための反応の生成物が有機溶媒と相溶性であり、沈殿物又は懸濁液を形成しないことを意味する。
【0122】
シリコーンゴムの式(VI)中、R1及びR5は上で説明され例示された通りであり、下付き文字cは、典型的には4より大きく1,000までの値、或いは10から500までの値、或いは10から50までの値を有する。
【0123】
式(VI)で表されるシリコーンゴムの例には、
HMe2SiO(Me2SiO)50SiMe2H、HMe2SiO(Me2SiO)10SiMe2H、HMe2SiO(PhMeSiO)25SiMe2H、及びMe3SiO(MeHSiO)10SiMe3(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き数字はシロキサン単位の各種類の数を示す)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
式(VI)で表されるシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(VI)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0125】
ケイ素結合水素原子を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0126】
シリコーン樹脂(I)、シリコーンゴム(VI)、ヒドロシリル化触媒、及び有機溶媒は、いかなる順番でも組み合わせることができる。典型的には、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、及び有機溶媒が、ヒドロシリル化触媒を導入する前に組み合わされる。
【0127】
反応は、典型的には室温(約23±2℃)から150℃の温度で、或いは室温から100℃の温度で行われる。
【0128】
反応時間は、シリコーン樹脂及びシリコーンゴムの構造並びに温度等、いくつかの要因に依存する。典型的には、ヒドロシリル化反応が完了するために十分な期間、成分を反応させる。これは、典型的には、シリコーンゴム中に元来存在するケイ素結合水素原子の少なくとも95mol%、或いは少なくとも98mol%、或いは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応で消費されるまで(FTIRスペクトルで決定される)、成分を反応させることを意味する。反応時間は、典型的には室温(約23±2℃)から100℃の温度で0.5時間から24時間である。最適反応時間は、後述の実験の項に記載される方法を使用して、慣例的な試験により決定することができる。
【0129】
シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0130】
ヒドロシリル化触媒の濃度は、シリコーン樹脂(I)のシリコーンゴム(VI)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒の濃度は、樹脂及びゴムの総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。
【0131】
有機溶媒の濃度は、反応混合物の総重量を基準として、典型的には0%から95%(w/w)、或いは10%から75%(w/w)、或いは40%から60%(w/w)である。
【0132】
ゴム変性シリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態においては、単離若しくは精製せずに使用することができ、又は、樹脂は従来の蒸発法により溶媒のほとんどから分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、ヒドロシリル化触媒が上述の担持触媒である場合、反応混合物を濾過することによりゴム変性シリコーン樹脂をヒドロシリル化触媒から容易に分離することができる。しかし、ゴム変性シリコーン樹脂が樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、触媒は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(C)として使用されてもよい。
【0133】
第6の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’’’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂と、式R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1(VII)で表されるシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字dは4より大きく1,000までの値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(III)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーンゴム(VII)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル比が0.01から0.5である)、(B’)ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0134】
シリコーン組成物の第6の実施形態の成分(B’)及び(C)は、第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0135】
成分(B’)の濃度は、ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B’)の濃度は、シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する、成分(B’)及びシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和の比が、典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0136】
成分(A’’’)は、式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂と、式R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1(VII)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂である(式中、R1、R2、R5、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、上で説明され例示された通りであり、下付き文字dは4より大きく1,000までの値を有する)。
【0137】
式(III)で表されるシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。また、ヒドロシリル化触媒及び有機溶媒は、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂の調製方法において上で説明され例示された通りである。シリコーン組成物の前述の実施形態でのように、「可溶性反応生成物」という用語は、有機溶媒が存在する場合、成分(A’’’)の調製のための反応の生成物が有機溶媒と相溶性であり、沈殿物又は懸濁液を形成しないことを意味する。
【0138】
シリコーンゴムの式(VII)中、R1及びR2は上で説明され例示された通りであり、下付き文字dは、典型的には4より大きく1,000までの値、或いは10から500までの値、或いは10から50までの値を有する。
【0139】
式(VII)で表されるシリコーンゴムの例には、
ViMe2SiO(Me2SiO)50SiMe2Vi、ViMe2SiO(Me2SiO)10SiMe2Vi、ViMe2SiO(PhMeSiO)25SiMe2Vi、及びVi2MeSiO(PhMeSiO)25SiMe2Vi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き数字はシロキサン単位の各種類の数を示す)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
式(VII)で表されるシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(VII)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0141】
ケイ素結合アルケニル基を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0142】
成分(A’’’)の調製のための反応は、シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(A’’)の調製に対して上で説明された手法で行うことができるが、ただし式(I)で表されるシリコーン樹脂及び式(VI)で表されるシリコーンゴムは、それぞれ式(III)で表される樹脂及び式(VII)で表されるゴムで置き換えられる。シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル比は、0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。さらに、典型的には、ヒドロシリル化反応が完了するために十分な期間、シリコーン樹脂及びシリコーンゴムを反応させる。これは、典型的には、ゴム中に元来存在するケイ素結合アルケニル基の少なくとも95mol%、或いは少なくとも98mol%、或いは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応で消費されるまで(FTIRスペクトルで決定される)、成分を反応させることを意味する。
【0143】
本方法のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は追加の要素を含んでもよいが、ただし該要素は、シリコーン組成物が硬化して、後述するように低い熱膨張率、高い引っ張り強さ、及び高い弾性率を有する硬化シリコーン樹脂を形成するのを妨げない。追加の要素の例には、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン、及びトリフェニルホスフィン等のヒドロシリル化触媒阻害剤;米国特許第4087585号及び第5194649に教示される接着促進剤等の接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;UV安定剤;難燃剤;流動調整添加剤;並びに、有機溶媒及び反応性希釈剤等の希釈剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
例えば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(E)(i)1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する有機シロキサン((E)(i)の粘度は、シリコーン組成物の上記成分(A)、(A’)、(A’’)、又は(A’’’)等のシリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、有機シロキサンは、式(R1R22SiO1/2)m(R22SiO2/2)n(R1SiO3/2)p(SiO4/2)q(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、mは0から0.8であり、n=0から1であり、p=0から0.25であり、q=0から0.2であり、m+n+p+q=1であり、m+nは0と等しくなく、ただし、p+q=0の場合nは0と等しくなく、アルケニル基の全てが末端とは限らない)で表される)、並びに(ii)(E)(i)におけるアルケニル基1モルあたり(E)(ii)におけるケイ素結合水素原子0.5モルから3モルを提供するために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する有機水素シロキサン(有機水素シロキサンは、式(HR12SiO1/2)S(R1SiO3/2)t(SiO4/2)v(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、sは0.25から0.8であり、tは0から0.5であり、vは0から0.3であり、s+t+v=1であり、t+vは0と等しくない)で表される)を含む反応性希釈剤を含有することができる。
【0145】
成分(E)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のアルケニル基、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する少なくとも1種の有機シロキサンである((E)(i)の粘度は、シリコーン組成物のシリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、有機シロキサンは、式(R1R22SiO1/2)m(R22SiO2/2)n(R1SiO3/2)p(SiO4/2)q(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、mは0から0.8であり、n=0から1であり、p=0から0.25であり、q=0から0.2であり、m+n+p+q=1であり、m+nは0と等しくなく、ただし、p+q=0の場合nは0と等しくなく、アルケニル基の全てが末端とは限らない(すなわち、有機シロキサンにおける全てのアルケニル基がR1R22SiO1/2単位にあるわけではない))で表される)。さらに、有機シロキサン(E)(i)は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造であってもよい。例えば、有機シロキサン(E)(i)の式中の下付き文字m、p、及びqがそれぞれ0と等しい場合、有機シロキサンは有機環状シロキサンである。
【0146】
有機シロキサン(E)(i)の25℃における粘度は、典型的には0.001Pa・sから2Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.1Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.05Pa・sである。さらに、有機シロキサン(E)(i)の25℃における粘度は、典型的にはヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物におけるシリコーン樹脂の粘度の20%以下、或いは10%以下、或いは1%以下である。
【0147】
有機シロキサン(E)(i)としての使用に適した有機シロキサンの例には、
(ViMeSiO)3、(ViMeSiO)4、(ViMeSiO)5、(ViMeSiO)6、(ViPhSiO)3、(ViPhSiO)4、(ViPhSiO)5、(ViPhSiO)6、ViMe2SiO(ViMeSiO)nSiMe2Vi、Me3SiO(ViMeSiO)nSiMe3、及び(ViMe2SiO)4Si(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字nは、有機シロキサンが25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有するような値を有する)の式で表される有機シロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
成分(E)(i)は、単一の有機シロキサンであってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機シロキサンを含む混合物であってもよい。アルケニル官能性有機シロキサンの作製方法は、当技術分野では周知である。
【0149】
成分(E)(ii)は、(E)(i)におけるアルケニル基のモルに対し(E)(ii)におけるケイ素結合水素原子0.5モルから3モルを提供するために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する、少なくとも1種の有機水素シロキサン(有機水素シロキサンは、式(HR12SiO1/2)s(R1SiO3/2)t(SiO4/2)v(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、sは0.25から0.8であり、tは0から0.5であり、vは0から0.3であり、s+t+v=1であり、t+vは0と等しくない)で表される)である。
【0150】
有機水素シロキサン(E)(ii)の25℃における粘度は、典型的には0.001Pa・sから2Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.1Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.05Pa・sである。
【0151】
有機水素シロキサン(E)(ii)としての使用に適した有機水素シロキサンの例には、
PhSi(OSiMe2H)3、Si(OSiMe2H)4、MeSi(OSiMe2H)3、(HMe2SiO)3SiOSi(OSiMe2H)3、及び(HMe2SiO)3SiOSi(Ph)(OSiMe2H)2(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)の式で表される有機水素シロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
成分(E)(ii)は、単一の有機水素シロキサンであってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機水素シロキサンを含む混合物であってもよい。有機水素シロキサンの作製方法は、当技術分野では周知である。
【0153】
成分(E)(ii)の濃度は、成分(E)(i)におけるアルケニル基1モルあたり、0.5モルから3モルのケイ素結合水素原子、或いは0.6モルから2モルのケイ素結合水素原子、或いは0.9モルから1.5モルのケイ素結合水素原子を提供するために十分な濃度である。
【0154】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物中の反応性希釈剤(E)、つまり成分(E)(i)及び(E)(ii)の組合せの濃度は、上述の実施形態におけるシリコーン樹脂、つまり成分(A)、(A’)、(A’’)、又は(A’’’)、並びに有機ケイ素化合物、つまり成分(B)又は(B’)の総合重量を基準として、典型的には0%から90%(w/w)、或いは0%から50%(w/w)、或いは0%から20%(w/w)、或いは0%から10%(w/w)である。
【0155】
シリコーン組成物は、シリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、及びヒドロシリル化触媒を単一構成要素中に含む、単一構成要素型組成物であっても、或いはこれらの成分を2つ以上の構成要素中に含む複数構成要素型組成物であってもよい。例えば、複数構成要素型シリコーン組成物は、シリコーン樹脂の一部とヒドロシリル化触媒の全てとを含有する第1の構成要素と、シリコーン樹脂の残りの部分と有機ケイ素化合物の全てとを含有する第2の構成要素とを含んでもよい。
【0156】
単一構成要素型シリコーン組成物は、典型的には、周囲温度において、有機溶媒を使用して、又は使用せずに、主成分と任意選択のあらゆる要素とを規定の割合で組み合わせることにより調製される。シリコーン組成物が即時に使用される場合は様々な成分の添加の順番は重要ではないが、組成物の早すぎる硬化を防ぐために、ヒドロシリル化触媒は好ましくは約30℃未満の温度で最後に添加される。また、複数構成要素型シリコーン組成物は、それぞれの構成要素中の成分を組み合わせることにより調製することができる。
【0157】
混合は、バッチ式でも連続プロセスでも、粉砕、ブレンド、撹拌等、当技術分野において既知であるいかなる技術によっても達成することができる。成分の粘度及び最終シリコーン組成物の粘度によって特定の機器が決定される。
【0158】
次に図2Bを参照すると、繊維性材料220を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内又はその上に設置することができる。挿入図225に示されるように、繊維性材料220は、すきま235により隔てられた個々の繊維230を含んでもよい。したがって、繊維230は、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内、上、又は上方にあってもよく、すきま235は、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215の一部で含浸されてもされなくてもよい。一実施形態において、繊維性材料220はガラス布である。例えば、8″×8″の寸法のStyle106ガラス布片(BGFインダストリーズ社(BGF Industries)から供給)を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内又はその上に設置することができる。しかし、当業者には、本発明がガラス布に限定されないことが理解される。
【0159】
代替の実施形態において、繊維性材料220は、材料が高い弾性率及び高い引っ張り強さを有する限り、繊維225を含むいかなる材料であってもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有してもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で3GPaから1,000GPa、或いは3GPaから200GPa、或いは10GPaから100GPaのヤング率を有してもよい。さらに、繊維性材料220は、25℃で少なくとも50MPaの引っ張り強さを有してもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で50MPaから10,000MPa、或いは50MPaから1,000MPa、或いは50MPaから500MPaの引っ張り強さを有してもよい。
【0160】
繊維性材料220は、布等の織物;マットやロービング等の不織物;又は解れた(個々の)繊維であってもよい。繊維性材料220中の繊維は、典型的には円筒形状であり、1μmから100μm、或いは1μmから20μm、或いは1μmから10μmの直径を有する。解れた繊維は連続的、つまり繊維が概して断裂していない状態で強化シリコーン樹脂フィルム全体に延在してもよく、又は切断されていてもよい。繊維性材料220は、有機不純物を除去するために、使用前に熱処理されてもよい。例えば、繊維性材料220は、適した時間(例えば2時間)、高温(例えば575℃)で空気中で加熱されてもよい。繊維性材料220の例には、ガラス繊維;石英繊維;グラファイト繊維;ナイロン繊維;ポリエステル繊維;Kevlar(登録商標)やNomex(登録商標)等のアラミド繊維;ポリエチレン繊維;ポリプロピレン繊維;及び炭化ケイ素繊維を含む強化材が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
繊維性材料220は、単純に繊維性材料220を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215上に置き、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215のシリコーン組成物を繊維性材料220に染み込ませることにより、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215中に埋め込むことができる。一実施形態において、埋め込まれた繊維性材料220は脱気される。埋め込まれた繊維性材料220は、室温(約23±2℃)から60℃の温度で、埋め込まれた強化材料中に取り込まれた空気を除去するために十分な期間真空下に置くことにより脱気することができる。例えば、埋め込まれた繊維性材料220は、典型的には、室温で5分から60分間、1,000Paから20,000Paの圧力下に置くことにより脱気することができる。
【0162】
次に図2Cを参照すると、次いで硬化性ケイ素含有組成物のフィルム245をフィルム215及び含浸された繊維性材料220に塗布することができる。フィルム245は、上述の従来の技術を用いて塗布することができる。フィルム215、含浸された繊維材料220、及びフィルム245は、集合的に支持層250と呼ばれる場合がある。一実施形態において、支持層250は、過剰のシリコーン組成物及び/又は取り込まれた空気を除去し、支持層250の厚さを減らすために圧縮されてもよい。支持層250は、ステンレススチールローラ、液圧プレス、ゴムローラ、又はラミネートロールセット等の従来の機器を用いて圧縮することができる。支持層250は、典型的に、室温(約23±2℃)から50℃の温度で1,000Paから10MPaの圧力で圧縮される。一実施形態において、支持層250は、次いで上述の技術のいずれかを用いて硬化又は部分的に硬化されてもよい。
【0163】
次いでパターニングされたモールド255を支持層250に隣接して形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド255は、層215及び245の組成物と同じでも異なってもよい硬化性ケイ素含有組成物を支持層250に隣接して堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。部分的に硬化した支持層250の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド255の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側すきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0164】
次いで、モールド255を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター260を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター260の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター260の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0165】
モールド255及び支持層250を含んでいてもよい硬化モールド組立体265は、マスター260及び処理済基板205から分離することができる。図示された実施形態において、図2Eに示されるようにマスター260をまずモールド255から取り外し、次いで図2Fに示されるように、モールド組立体265を処理済基板205から剥離する。例えば、モールド組立体265は、処理済基板205から剥がし取ることができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体265から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体265をマスターパターン260及び処理済基板205(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体265を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0166】
モールド組立体265の熱膨張率は、繊維強化支持層250の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体265の線熱膨張(CTE)率は、熱機械分析(TMA)法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体265のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体265の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0167】
次いで、図2Gに示されるように、マスターパターン260に対応するパターンを基板270上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体265を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー270上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム275にパターンが転写される。モールド組立体265をアクリレートフィルム275上に設置する。UV光をモールド組立体265を通して照射し、その下のアクリレートコーティング275を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体265上のパターンが硬化アクリレートモールド275に転写されるように、モールド組立体265をフィルム275から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板270又はフィルム275中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0168】
図2A〜Gを参照して上で説明した硬化性ケイ素含有組成物はSylgard184及び適した架橋剤であってもよいが、本発明はこの硬化性ケイ素含有組成物に限定されない。使用可能な他の硬化性シリコーン組成物の例には、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、過酸化物硬化性シリコーン組成物、縮合硬化性シリコーン組成物、エポキシ硬化性シリコーン組成物、紫外線硬化性シリコーン組成物、高エネルギー放射線硬化性シリコーン組成物、及び同じ機能性を有する有機シリコーン組成物が含まれるが、これらに限定されない。硬化性ケイ素組成物は、硬化又は架橋機能性を有するモノマー又はポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、ポリシロキサン(直鎖、分岐鎖、樹脂等)、シロキサン反復単位及び有機反復単位セグメントを含有するブロックコポリマー、及びケイ素変性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
硬化性シリコーン組成物及びその調製法は、当技術分野では周知である。例えば、適したヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を含有する有機ポリシロキサン、(ii)組成物を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を含有する有機水素シロキサン、及び(iii)ヒドロシリル化触媒を含む。ヒドロシリル化触媒は、白金族金属、白金族金属を含有する化合物、又はマイクロカプセル化白金族金属含有触媒を含む、周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0170】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物であっても、又は2つ以上の構成要素中に成分を含む複数構成要素型組成物であってもよい。室温加硫(RTV)組成物は、典型的には2つの構成要素を含み、1つの構成要素は有機ポリシロキサン及び触媒を含み、もう1つの構成要素は有機水素シロキサン及び任意選択の要素を含む。高温で硬化するヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物又は複数構成要素型組成物として配合することができる。例えば、液状シリコーンゴム(LSR)組成物は、典型的には2構成要素系として配合される。単一構成要素型組成物は、典型的には、適正な保存期間を確実とするために白金触媒阻害剤を含有する。
【0171】
適した過酸化物硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)有機ポリシロキサン及び(ii)有機過酸化物を含む。有機過酸化物の例には、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジ−p−クロロベンゾイル、及び過酸化ビス−2,4−ジクロロベンゾイル等の過酸化ジアロイル;過酸化ジ−t−ブチル及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペロキシ)ヘキサン等の過酸化ジアルキル;過酸化ジクミル等の過酸化ジアラルキル;過酸化t−ブチルクミル及び1,4−ビス(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン等の過酸化アルキルアラルキル;並びに過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、及びt−ブチルパーオクトエート等の過酸化アルキルアロイルが含まれる。
【0172】
縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のヒドロキシ基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)加水分解性Si−O又はSi−N結合を含有する三官能性又は四官能性シランを含む。シランの例には、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH3)3、CH3Si[O(CH2)3CH3]3、CH3CH2Si(OCH2CH3)3、C6H5Si(OCH3)3、C6H5CH2Si(OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH3)3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH2OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH2CH2OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH2OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、及びSi(OC3H7)4等のアルコキシシラン;CH3Si(OCOCH3)3、CH3CH2Si(OCOCH3)3、及びCH2=CHSi(OCOCH3)3等の有機アセトキシシラン;CH3Si[O−N=C(CH3)CH2CH3]3、Si[O−N=C(CH3)CH2CH3]4、及びCH2=CHSi[O−N=C(CH3)CH2CH3]3等の有機イミノオキシシラン;CH3Si[NHC(=O)CH3]3及びC6H5Si[NHC(=O)CH3]3等の有機アセトアミドシラン;CH3Si[NH(s−C4H9)]3及びCH3Si(NHC6H11)3等のアミノシラン;並びに有機アミノオキシシランが含まれる。
【0173】
また、縮合硬化性シリコーン組成物は、縮合反応を開始し促進するための縮合触媒を含有することができる。縮合触媒の例には、アミン;並びに鉛、スズ、亜鉛、及び鉄とカルボン酸の錯体が含まれるが、これらに限定されない。スズ(II)オクトエート、ラウレート、及びオレエート、並びにジブチルスズの塩が特に有用である。縮合硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物であっても、又は2つ以上の構成要素中に成分を含む複数構成要素型組成物であってもよい。例えば、室温加硫(RTV)組成物を単一構成要素型又は2構成要素型組成物として配合することができる。2構成要素型組成物において、1つの構成要素は典型的には少量の水を含む。
【0174】
適したエポキシ硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のエポキシ官能基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)硬化剤を含む。エポキシ官能基の例には、2−グリシドキシエチル、3−グリシドキシプロピル、4−グリシドキシブチル、2,(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル、2,3−エポキシプロピル、3,4−エポキシブチル、及び4,5−エポキシペンチルが含まれる。硬化剤の例には、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、及びドデセニル無水コハク酸等の無水物;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレンプロピルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、m−フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、アミノエチルピペラジン、4,4−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジシアンジアミド、及び2−メチルイミダゾール、及びトリエチルアミン等のポリアミン;三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸;ポリカルボン酸;ポリメルカプタン;ポリアミド;及びアミドアミンが含まれる。
【0175】
適した紫外線硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)放射線感受性官能基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)光開始剤を含む。放射線感受性官能基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、メルカプト、エポキシ、及びアルケニルエーテル基が含まれる。光開始剤の種類は、有機ポリシロキサンにおける放射線感受性基の性質に依存する。光開始剤の例には、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、アセトフェノン、ベンゾフェノン、並びにベンゾイン及びその誘導体が含まれる。
【0176】
適した高エネルギー放射線硬化性シリコーン組成物は、有機ポリシロキサンポリマーを含む。有機ポリシロキサンポリマーの例には、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、及び有機水素ポリシロキサンが含まれる。高エネルギー放射線には、γ線及び電子ビームが含まれる。
【0177】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、追加の要素を含むことができる。追加の要素の例には、接着促進剤、溶媒、無機充填剤、感光剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、及び界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。無機充填剤の例には、結晶シリカ、粉末結晶シリカ、及び珪藻シリカ等の天然シリカ;溶融石英、シリカゲル、焼成シリカ、及び沈降シリカ等の合成シリカ;雲母、珪灰石、長石、及び霞石閃長岩等のケイ酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ベリリウム、酸化クロム、及び酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化チタン、及び炭化ケイ素等の金属炭化物;カーボンブラック;炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸バリウム等のアルカリ土類金属硫酸塩;二硫化モリブデン;硫酸亜鉛;カオリン;タルク;ガラス繊維;中空ガラスミクロスフェア及び中実ガラスミクロスフェア等のガラスビーズ;三水和アルミニウム;アスベスト;並びに、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末、鉄粉末、及び銀粉末等の金属粉末が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
シリコーン組成物は、特定の硬化メカニズムに依存して、周囲温度、高温、水分、又は放射線への曝露により硬化することができる。例えば、単一構成要素型ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には高温で硬化する。2構成要素型ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温又は高温で硬化する。単一構成要素型縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、室温で大気中の水分に曝されることにより硬化するが、加熱及び/又は高い湿度への曝露により硬化を促進することができる。2構成要素型縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温で硬化するが、加熱により硬化を促進することができる。過酸化物硬化性シリコーン組成物は、典型的には高温で硬化する。エポキシ硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温又は高温で硬化する。特定の配合に依存して、放射線硬化性シリコーン組成物は、典型的には、紫外線、ガンマ線、又は電子ビーム等の放射線への曝露により硬化する。
【0179】
図3A、3B及び3Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態300を概念的に示す。図示された実施形態において、基板305は、後に形成される層の基板305に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板305から剥離できるようにすることを目的とした剥離層310を形成するように処理される。剥離層310は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板305は、剥離層310を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm, Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板305及び/又は剥離層310を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層310は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0180】
繊維性材料315は、基板305内又はその上、又は図3Aに示されるように、存在する場合は剥離層310内又はその上に設置することができる。挿入図320に示されるように、繊維性材料315は、すきま330により隔てられた個々の繊維325を含んでもよい。したがって、繊維325は、基板305内、上、若しくは上方、又は、存在する場合は剥離層310内、上、若しくは上方にあってもよい。一実施形態において、繊維性材料315はガラス布である。例えば、8″×8″の寸法のStyle106ガラス布片(BGFインダストリーズ社(BGF Industries)から供給)を基板305内若しくはその上、又は、存在する場合は剥離層310内若しくはその上に設置することができる。しかし、当業者には、本発明がガラス布に限定されないことが理解される。代替の実施形態において、繊維性材料315は、繊維325を含むいかなる材料であってもよい。代替の繊維性材料315の例は、上で詳細に議論されている。
【0181】
次いで、パターニングされたモールド335を、繊維性材料315、基板305上、及び、存在する場合は剥離層310の上に形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド335は、上述の堆積法を用いて、繊維性材料315、基板305上、及び、存在する場合は剥離層310の上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させることにより形成される。次いで、上で詳細に議論されたように、硬化性ケイ素含有組成物を繊維性材料315に含浸させることができる。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。図3A〜Cを参照して説明した硬化性ケイ素含有組成物はSylgard184及び適した架橋剤であってもよいが、本発明はこの硬化性ケイ素含有組成物に限定されない。使用可能な他の硬化性シリコーン組成物の例は上に示されている。
【0182】
Sylgard184及び1つ又は複数の架橋剤を含む硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるために、繊維性材料315、基板305、及び、存在する場合は剥離層310の上に四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド255の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側すきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0183】
次いで、モールド335を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター340を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター340の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター340の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0184】
次いで、含浸された繊維性材料315を含む硬化モールド組立体335をマスター340及び処理済基板305から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体335から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体335をマスターパターン340及び処理済基板305(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体335を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0185】
モールド組立体335の熱膨張率は含浸された繊維性材料315の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体335の線熱膨張(CTE)率は、TMA法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体335のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体335の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0186】
次いで、図3Cに示されるように、マスターパターン340に対応するパターンを基板345上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体335を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー345上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム350にパターンが転写される。モールド組立体335をアクリレートフィルム350上に設置する。UV光をモールド組立体335を通して照射し、その下のアクリレートコーティング350を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体335上のパターンが硬化アクリレートモールド350に転写されるように、モールド組立体335をフィルム350から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板345又はフィルム350中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0187】
図4A、4B及び4Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態400を概念的に示す。図示された実施形態において、基板405は、後に形成される層の基板405に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板405から剥離できるようにすることを目的とした剥離層410を形成するように処理される。剥離層410は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板405は、剥離層410を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm, Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板405及び/又は剥離層410を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層410は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0188】
次いで、硬化性無溶剤樹脂の層415を、基板405の上、又は存在する場合は剥離層410の上に堆積させる。層415を形成するために使用可能な樹脂の例は上述されており、層415は本明細書で説明されるいかなる技術を用いて堆積されてもよい。様々な実施形態において、硬化性無溶剤樹脂は、モールド若しくは剥離基板にキャストされても、又は表面上にコーティングされてもよい。次いで層415を少なくとも部分的に硬化させる。例えば、層415は、空気循環炉中で、5℃/分で100℃まで昇温、100℃で1時間保持、5℃/分で160℃まで昇温、160℃で1時間保持、5℃/分で200℃まで昇温、及び200℃で2時間保持というプロセスで加熱されてもよい。また、樹脂層415は、基板405上、又は、存在する場合は剥離コーティング層410上に設けられた予備硬化済樹脂フィルムであってもよい。
【0189】
図4Bに示された実施形態では、次いでパターニングされたモールド420を硬化又は部分硬化層415に隣接して形成することができる。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板405、又は、存在する場合は剥離層410に隣接して硬化又は部分硬化層415が存在したままパターニングされたモールド420が形成される実施形態に、本発明が限定されないことが理解される。代替の実施形態において、硬化又は部分硬化層415は、硬化又は部分硬化層415に隣接してパターニングされたモールド420を形成する前に、基板405、又は、存在する場合は剥離層410から取り除かれてもよい。
【0190】
図示された実施形態において、パターニングされたモールド420は、隣接層415に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。部分硬化層415の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド420の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側のすきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0191】
次いで、モールド420を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター425を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター425の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター425の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0192】
次いで、モールド420及び層415を含んでいてもよい硬化モールド組立体430は、マスター425及び処理済基板405から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体430から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体430をマスターパターン425及び処理済基板405(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体430を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0193】
モールド組立体430の熱膨張率は層415の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体430の線熱膨張(CTE)率は、TMA法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体430のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体430の熱膨張率は、1℃あたり約50ppmから約180ppmの範囲であることが判明した。
【0194】
次いで、図4Cに示されるように、マスターパターン425に対応するパターンを基板435上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体430を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー435上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム440にパターンが転写される。モールド組立体440をアクリレートフィルム435上に設置する。UV光をモールド組立体430を通して照射し、その下のアクリレートコーティング440を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体430上のパターンが硬化アクリレートモールド440に転写されるように、モールド組立体430をフィルム440から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板435又はフィルム440中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0195】
図5A、5B及び5Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態500を概念的に示す。図示された実施形態において、繊維性材料510で強化された予備硬化シリコーン樹脂フィルム505が基板として設けられている。繊維強化シリコーン樹脂フィルム505は、上述の技術の1つ又は複数に従って形成することができる。例えば、硬化性ケイ素含有組成物の第1のフィルムを、第2のフィルムと、該第2のフィルムで含浸されている繊維性材料510とに塗布してもよい。2枚のフィルムは、上述の従来の技術を用いて塗布することができる。次いで、フィルム及び繊維性材料510を上述の技術のいずれかを使用して硬化させ、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を形成することができる。
【0196】
次いでパターニングされたモールド515を繊維強化ケイ素樹脂フィルム505に隣接して形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド515は、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を形成するために使用される組成物と同じでも異なってもよい硬化性ケイ素含有組成物を繊維強化ケイ素樹脂フィルム505に隣接して堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。
【0197】
一実施形態において、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド515の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側のすきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0198】
次いで、モールド515を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター520を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター520の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター520の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0199】
モールド515及び繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を含んでいてもよい硬化モールド組立体525は、マスター520から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体525から取り外すことができる。繊維強化ケイ素樹脂フィルム505は基板として機能するため、第5の例示的実施形態は、硬化モールド組立体525を基板から分離する必要がないという追加の利点を有することができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体525をマスターパターン520、及び、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体525を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0200】
モールド組立体525の熱膨張率は、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体525の線熱膨張(CTE)率は、熱機械分析(TMA)法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体525のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体525の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0201】
次いで、図5Cに示されるように、マスターパターン520に対応するパターンを基板530上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体525を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー530上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム535にパターンが転写される。モールド組立体525をアクリレートフィルム535上に設置する。UV光をモールド組立体525を通して照射し、その下のアクリレートコーティング535を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体525上のパターンが硬化アクリレートモールド535に転写されるように、モールド組立体525をフィルム535から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板530又はフィルム535中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0202】
ソフトリソグラフィーモールドを形成するための上述の技術の実施形態は、従来の実践に勝るいくつもの利点を有することができる。例えば、ガラス繊維強化シリコーン樹脂フィルムは、室温より高い温度では熱膨張率がわずか5ppm/℃から10ppm/℃である。ポリジメチルシロキサンPDMSは上述の強化樹脂フィルムに強固に接着し、微細な形状を複製し印刷するPDMSの能力が影響を受けることなく、上述の強化樹脂フィルムを含む複合構造の熱膨張率は強化シリコーン樹脂フィルムにより支配されることが可能である。さらに、絶対透過は繊維による散乱によってやや低下し得るものの、強化メチルT樹脂ベースのフィルムを含む複合モールドのUV透過スペクトルの形状はPDMSモールドの場合と類似している。したがって、上述の技術は、柔軟で熱膨張率が非常に低く、また非常に良好な接着性を有するソフトリソグラフィーモールドを形成することができる。また、複合モールド−マスクは、PMMAベースのモールドよりもずっとUVに安定であると予想される。さらに、裏打ち層の選択は、非強化シリコーン樹脂フィルムだけでなく、他の無機及び有機ポリマーフィルムにも拡張することができる。
【0203】
本発明は修正することができ、また本明細書における教示の利益を得る当業者には明らかな、異なるが同等の手法により実践することができるため、上で開示された具体的な実施形態は例示のみを目的としている。さらに、請求項に記載される事項以外は、本明細書で示された構造又は設計の詳細に限定する意図はない。したがって、上で開示された具体的な実施形態は改変又は修正可能であり、そのような変型例は本発明の範囲及び精神に含まれるものとみなされる。それに応じて、本発明において要求される保護は請求項に記載される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図1B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図1C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2D】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2E】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2F】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2G】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してソフトリソグラフィーに関し、より詳細にはソフトリソグラフィーにおいて使用可能な低熱変形モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトリソグラフィー又はスタンプリソグラフィーは、マスターモールドから基板にパターンを転写するための技術である。ある従来のソフトリソグラフィー技術では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び適切な架橋剤を含む組成物等の硬化性シリコーン組成物を、所望のパターンのネガ像を表す形状を含むマスターに対しキャスティングすることにより、スタンプ又はモールドが製造される。硬化性シリコーン組成物は、硬化させ、マスターから剥がし、次いで基板上に所望のパターンを形成するために使用することができる。例えば、インクをスタンプに吸収させ、次いでインクを吸収させたスタンプを基板上に押し付けることにより基板上に堆積させることができる。他の例として、スタンプを液状樹脂中に押し付け、該樹脂を硬化させて、硬化したらスタンプから分離することができる。さらに他の例として、スタンプを表面と接触させ、スタンプと表面との間の領域に液状樹脂を浸透させてもよい。樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からスタンプを剥離すると、所望のパターンを後に残すことができる。
【0003】
ソフトリソグラフィーにおける進歩により、この技術は、フォトリソグラフィー等の他のリソグラフィー技術に匹敵する程となった。例えば、ソフトリソグラフィー技術を使用して、ケイ素基板上に0.1μから1μの範囲の形状を形成することができる。また、ソフトリソグラフィー技術は、リソグラフィー技術に比べ、比較的広面積を有し、比較的大きな形状を含むことができるスタンプ又はモールドを形成するために使用することもできる。このように、ソフトリソグラフィー技術は、伝統的なフォトリソグラフィーに比べ、比較的低価格での製造の選択を提供することができる。さらに、ソフトリソグラフィー技術を使用して形成されたパターンは通常柔軟であり、したがってソフトリソグラフィー技術は湾曲表面上へのパターン形成の自由度を提供することができる。
【0004】
ソフトリソグラフィーモールド又はスタンプを形成するために使用される材料は、典型的に、一連の厳しい要件を満たす必要がある。例えば、モールドやスタンプを形成するために使用される硬化材料は、モールドに形成された微細で複雑な形状を損傷又は改変することなくマスターモールドから剥離されなければならない。また、モールド又はスタンプを形成するために使用される硬化材料は、パターンが形成又は塗布されるべき表面と密接できることが必要な場合もあり、また該表面と接着することが必要な場合もある。さらに、モールド又はスタンプの一部は、パターン転写プロセスの終了時に表面上に形成されたパターンから剥離できることが必要な場合もある。パターンの形成又は塗布にインクが使用される場合、モールド又はスタンプを形成するために使用される硬化材料は、インクを吸収することができ、次いでインクの一部を表面上に堆積させることができなければならない。これらの要件の1つ又は複数を満たすことができる硬化性材料の一例は、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)から市販されているヒドロシリル化硬化性液状シリコーンゴムである、Sylgard184である。Sylgard184は、ソフトリソグラフィーにおいて使用されるモールド又はスタンプの形成に広く用いられている。
【0005】
しかし、ソフトリソグラフィーにおいて使用される従来の硬化性材料には、いくつもの欠点及び/又は制限がある。例えば、ポリジメチルシロキサンは、比較的架橋密度が低く、柔軟な骨格鎖を有し、また鎖間の物理的相互作用が比較的弱い。結果的に、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された硬化シリコーン組成物は比較的低い弾性率及び/又は強度を示す可能性があり、これにより、モールド又はスタンプに形成された形状のサイズが閾値を下回ると、該形状が崩壊することになる可能性がある。したがって、比較的低い弾性率及び/又は強度が、モールド又はスタンプに形成された形状の形状サイズ及び/又はアスペクト比を制限する可能性がある。
【0006】
また、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された硬化シリコーン組成物は、比較的高い熱膨張率を示すことができる。例えば、ポリジメチルシロキサンを使用して形成された従来の硬化シリコーン組成物は、約250ppm/℃から約300ppm/℃の熱膨張率を有することができる。熱膨張は、硬化材料の寸法収縮を引き起こす可能性がある硬化反応により増大される可能性がある。温度変動及び硬化収縮は、モールド及び/又はスタンプに形成される形状を歪める可能性のある寸法変化を誘発し得る。ある場合には、寸法変化により、モールド又はスタンプに形成された形状を他の層内又は層上に形成された形状と一致させることが困難となる可能性がある。この問題は、比較的広領域のモールド又はスタンプにおいて特に深刻となり得る。
【0007】
Biebuyck(国際公開番号:WO97/06012)は、1μ未満の典型的な寸法を有する形状を形成するために使用することができるリソグラフィー処理のためのハイブリッド型スタンプ構造を説明している。ハイブリッド型スタンプ構造は、基板及び/又はスタンプ構造の表面の不均一性に対応するための変形可能層と、リソグラフィーパターンが刻印されるパターン層と、負荷が作用したときにスタンプの変形を防止することができる硬質支持層とを含む。しかし、ハイブリッド型スタンプの三層構造はいくつもの技術的課題を示し、そのためこの技術の実装は経済的に実行不可能となり得る。例えば、硬質支持層はガラス又は石英等の硬質材料で形成されるため、非常に脆く、適合性がなく、高価で取扱いが困難である。
【0008】
Brunoら(米国特許出願公開番号2001/0013294)は、Biebuyckにより説明された技術に関する他のいくつもの課題を指摘している。例えば、接触面中に気泡が混入する可能性(これはスタンプと表面との間の接触の欠損に起因した印刷失敗部分につながる可能性がある)、また化学的又は物理的収縮に起因した薄膜ハイブリッド型スタンプの厚さの不均質性や、印刷ツールにおける許容誤差の不均質性(これはスタンプの異なる領域への不均一な負荷を引き起こす可能性がある)による、パターンの崩壊及び/又は弛みの可能性がある。従来の技術におけるこれらの課題及び他の課題に対処するために、Brunoは、一方の面にパターン層が塗布され、反対の面にソフトパターンが取り付けられた、金属箔、薄膜ガラス、又は石英板から作製されたキャリア層を含む複数層スタンプ構造を提案している。しかし、Brunoにより説明されたスタンプの三層構造はまだいくつもの技術的課題を示し、そのためこの技術の実装は経済的に実行不可能となり得る。例えば、キャリア層は非常に脆く、適合性がなく、高価で取扱いが困難となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題の1つ又は複数の影響に対処することを目的とする。以下は、本発明のいくつかの態様の基本的理解を提供するための、本発明の簡潔な概要を示す。この概要は、本発明の網羅的な総括ではない。本発明の主要又は重大な要素を特定することも、本発明の範囲を画定することも意図されない。後述のより詳細な説明への導入部として、いくつかの概念を簡潔な形態で提示することを唯一の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な実施形態において、本発明は、低熱変形モールドを形成するために使用することができる組成物及び方法を含む。組成物は、揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成される硬化性弾性シリコーン組成物を含んでもよい。方法の一実施形態は、エラストマーの第2の側面の近くで繊維性材料で含浸されたエラストマーの第1の側面にパターンを形成するステップを含んでもよい。
【0011】
本発明は添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより理解することができ、図面において同様の参照番号は同様の要素を指している。
【0012】
本発明は様々な修正を受け代替的形態となり得るが、例示を目的として具体的な実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、本明細書における具体的な実施形態の説明は、開示される特定の形態に本発明を限定することを意図せず、逆に、添付の請求項により定義される本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての修正、等価物、及び代替を包含することが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を以下に説明する。明確にするために述べると、実際の実装における全ての特徴が本明細書に説明されるわけではない。当然ながら、そのような実際の実施形態のいずれの開発においても、システム関連及びビジネス関連の制約への適合性等、実装ごとに異なる開発者の特定の目標を達成するために数々の実装特定の決定がなされる必要があることが理解される。さらに、そのような開発努力は複雑で時間を要する可能性があるが、それでも本開示の利益を得る当業者にとって日常的な作業である。
【0014】
次に添付の図面を参照しながら本発明を説明する。説明のみを目的として、また当業者に周知の詳細により本発明を不明確としないように、様々な構造、システム及びデバイスを図面に概略的に示す。しかし、添付の図面は、本発明の具体例を解説し説明するために含まれている。本明細書で使用される単語及び語句は、関連技術における当業者によるそのような用語及び語句の理解と一致する意味を有すると理解され解釈されるべきである。本明細書における用語又は語句の一貫した使用により、用語又は語句の特別な定義、すなわち、当業者により理解される通常且つ慣例的な意味とは異なる定義を暗示することは意図されない。用語又は語句が特別な意味、すなわち当業者により理解される意味以外の意味を有するように意図される場合は、用語又は語句の特別な定義を直接的且つ明白に述べる定義的な形式で、そのような特別な定義が明細書中に明示的に記載される。
【0015】
図1A、1B及び1Cは、ソフトリソグラフィーモールド105を形成する方法の第1の例示的実施形態100を概念的に示す。図示された実施形態において、硬化性弾性ケイ素含有組成物がマスターパターン110の上に堆積される。例えば、硬化性弾性ケイ素含有組成物は、揮発成分除去ビニル官能性シロキサンポリマー、SiH官能基を有する揮発成分除去メチル水素シロキサンポリマー、及び阻害剤である2−フェニル−3−ブチン−2−オール(PBO)を組み合わせることにより形成することができる。様々な代替実施形態において、揮発成分除去ポリマーは、ポリマーから揮発成分を取り除くことができる真空及び/又は高温への曝露により揮発成分を除去することができる。したがって、揮発成分除去ポリマー、及び硬化性弾性ケイ素含有組成物は、揮発成分を実質的に含まない。本開示の利益を得る当業者には、「実質的に含まない」という用語が、揮発成分除去ポリマー及び/又は硬化性弾性ケイ素含有組成物中に微量の揮発成分が存在する可能性があることを示すよう意味することが理解される。しかし、これらの微量は、後に詳述されるように、モールド105の収縮にはほとんど又は全く寄与しない。また、揮発成分除去組成物は、無機充填剤(最終モールドの光学的透明度が望ましい場合、サイズは約50nm未満である必要がある)を含んでもよい。無機充填剤の組込みは概して熱収縮を低減する。また、揮発成分除去組成物は、硬質粒子の形態で、又はネットワーク構造中の共重合セグメントの形態で硬質樹脂を含有することができる。これらの樹脂の例はシリコーン樹脂である。揮発成分除去組成物はまた、過酸化物開始フリーラジカル硬化、UV、電子ビーム又は他の放射線硬化、マイクロ波硬化等の他のメカニズムによって硬化されてもよい。
【0016】
硬化性弾性ケイ素含有組成物は、図1Aに示されるように、次いで硬化されてモールド105を形成する。様々な代替実施形態において、硬化プロセスは、1種又は複数種の触媒の添加と、硬化性弾性ケイ素含有組成物の高温への曝露を含んでもよい。例えば、硬化性弾性ケイ素含有組成物はPt触媒及び阻害剤を使用して硬化されてもよく、また硬化性弾性ケイ素含有組成物を室温でマスターパターンと接触したままとしてもよい。触媒の濃度は通常0.1ppmから1000ppmである。阻害剤と触媒とのモル比は通常0.5から500である。例えば、阻害剤は約0wt.%から10wt.%の濃度であってもよい。
【0017】
硬化性弾性ケイ素含有組成物が揮発成分を実質的に含まないため、硬化中のモールド105の線収縮は少なくとも部分的に低減され得る。一実施形態において、触媒レベル及び阻害剤濃度、並びにそれらの組合せは、硬化中のモールド110の寸法収縮をさらに低減するために最適化することができる。例えば、触媒の濃度を約0.5ppmから約100ppmに増加させることができ、或いは、触媒に対する阻害剤の比率を100から3に減少させることができる。上述の硬化性弾性ケイ素含有組成物を使用して形成されたモールド105の線収縮は、室温硬化後約0.01%と測定されている。一方、Sylgard184等の従来の硬化性ケイ素含有組成物は、室温硬化後約1%の線収縮を示す。
【0018】
硬化したモールド105は、図1Bに示されるようにマスターパターン110から剥離され、次いで、図1Cに示されるように基板115上にパターンの複製を形成又は塗布するために使用することができる。例えば、インクをモールド105に吸収させ、次いでインクを吸収させたスタンプを基板115上に押し付けることにより基板115上に堆積させることができる。他の例として、モールド105を液状樹脂(図示せず)中に押し付け、該樹脂を硬化させて、硬化したらモールド105から分離することができる。さらに他の例として、モールド105を基板115と接触させ、モールド105と基板115との間の領域に液状樹脂を浸透させてもよい。樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からモールド105を剥離すると、所望のパターンを後に残すことができる。しかし、パターンを基板115に形成、転写、又は塗布する具体的方法は、設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。
【0019】
図2A、2B、2C、2D、2E、2F、及び2Gは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態200を概念的に示す。図示された実施形態において、基板205は、後に形成される層の基板205に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板205から剥離できるようにすることを目的とした剥離層210を形成するように処理される。剥離層210は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板205は、剥離層210を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm,Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板205及び/又は剥離層210を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層205は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0020】
次いで硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215が、図2Aに示されるように基板205の上に、また(存在する場合は)剥離層210上に堆積される。硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、スピンコーティング、浸漬、噴霧、はけ塗り、又はスクリーン印刷等の従来のコーティング技術を使用して堆積することができる。一実施形態において、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、トルエンで希釈した樹脂、1種又は複数種の架橋剤、及び触媒を含む。例えば、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215は、シリコーン樹脂10g、1種又は複数種の架橋剤9.3g、及びPt触媒0.1g(ダウコーニング社(Dow Corning Corporation、ミシガン州ミッドランド)より入手可能なPt/(ViMe2Si)2O錯体から1000ppm Ptとなるようトルエンで希釈)を使用して形成された無溶剤硬化性シリコーン樹脂であってもよい。
【0021】
硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215に使用されるシリコーン樹脂は、(MeSiO3/2)0.4(ViMe2SiO1/2)0.6の平均組成を有するシリコーン樹脂であってもよく、これは、MeSi(OMe)3を100g及び(ViMe2Si)2Oを100.4gを、温度計、凝縮装置、Dean Starkトラップ及び撹拌器を備えた500mlの三口フラスコ中に加えることにより形成することができる。次いでトリフルオロメタンスルホン酸約0.2gを加え、混合物を加熱せずに30分間撹拌することができる。このステップの後、脱イオン水約40gを加え、混合物を60℃に40分間加熱することができる。混合物を40℃未満まで冷却した後、CaCO3約0.2gを加えて混合物を2時間撹拌することができる。次いでトルエン約16gを加え、混合物を加熱還流することができる。温度が85℃に達するまでメタノールを除去することができる。混合物を40℃未満まで冷却した後、KOH水溶液約0.1gを加えることができる。混合物を加熱還流することができ、水が実質的に留出しなくなるまで濃縮装置の底から水を継続的に除去することができる。次いで混合物を40℃未満まで冷却することができ、ビニルジメチルクロロシラン約0.11gを加えることができる。30分間撹拌した後、生成物を濾過して沈殿物を除去することができる。残留トルエンは、ロータリーエバポレータを用い、80℃、5mmHgで除去することができる。
【0022】
架橋剤は、Me3SiO(HMeSiO)2SiMe3を含む組成物を含んでもよい。粗架橋剤は、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)から提供されているものを得ることができる。しかし、市販されている架橋剤は、典型的には関連成分Me3SiO(HMeSiO)nSiMe3(nは1から10の範囲)を含有する。したがって、一実施形態において、真空及び分取用カラムを備えた研究用蒸留ユニットを使用して成分を分離することができる。例えば、有用な主成分であるMe3SiO(HMeSiO)2SiMe3は、蒸留プロセスの主生成物となり得る。ある実施形態において、より高い重合度を有する他の成分Me3SiO(HMeSiO)nSiMe3もまた架橋剤として使用することができる。
【0023】
上述の硬化性ケイ素含有組成物は、層215を形成するために使用可能な組成物の一例に過ぎない。代替実施形態において、硬化性ケイ素含有組成物は、シリコーン樹脂を含むいかなるヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物となり得る、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物であってもよい。そのような組成物は、典型的には、ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を有するシリコーン樹脂、該樹脂中のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子と反応することができるケイ素結合水素原子又はケイ素結合アルケニル基を有する架橋剤、及びヒドロシリル化触媒を含有する。シリコーン樹脂は、典型的には、M及び/又はDシロキサン単位と組み合わされたT及び/又はQシロキサン単位を含有するコポリマーである。さらに、シリコーン樹脂は、シリコーン組成物の第5及び第6の実施形態として後述するゴム変性シリコーン樹脂であってもよい。
【0024】
第1の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)Z(I)で表されるシリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)、(B)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0025】
成分(A)は、式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂である。
【0026】
R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、脂肪族不飽和を含まず、典型的には1個から10個の炭素原子、或いは1個から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環状ヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐構造又は非分岐構造を有することができる。R1で表されるヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等のアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル及びナフチル等のアリール;トリル及びキシリル等のアルカリル;並びにベンジル及びフェネチル等のアラルキルが含まれるが、これらに限定されない。R1で表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、及び2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
R2により表される同じでも異なっていてもよいアルケニル基は、典型的には2個から約10個の炭素原子、或いは2個から6個の炭素原子を有し、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、及びオクテニルで例示されるが、これらに限定されない。
【0028】
シリコーン樹脂の式(I)において、下付き文字w、x、y、及びzはモル分率である。下付き文字wは、典型的には0から0.8、或いは0.02から0.75、或いは0.05から0.3の値を有し;下付き文字xは、典型的には0から0.6、或いは0から0.45、或いは0から0.25の値を有し;下付き文字yは、典型的には0から0.99、或いは0.25から0.8、或いは0.5から0.8の値を有し;下付き文字zは、典型的には0から0.35、或いは0から0.25、或いは0から0.15の値を有する。また、比率y+z/(w+x+y+z)は、典型的には0.2から0.99、或いは0.5から0.95、或いは0.65から0.9である。さらに、比率w+x/(w+x+y+z)は、典型的には0.01から0.80、或いは0.05から0.5、或いは0.1から0.35である。
【0029】
典型的には、シリコーン樹脂におけるR2基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%はアルケニルである。
【0030】
シリコーン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0031】
シリコーン樹脂の25℃における粘度は、典型的には0.01Pa・sから100,000Pa・s、或いは0.1Pa・sから10,000Pa・s、或いは1Pa・sから100Pa・sである。
【0032】
シリコーン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0033】
シリコーン樹脂は、R1R22SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR22SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR1SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する(式中、R1及びR2は上で説明され例示された通りである)。例えば、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0034】
シリコーン樹脂の例には、
(Vi2MeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(MeSiO3/2)0.25(PhSiO3/2)0.50、(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.1、及び(Vi2MeSiO1/2)0.15(ViMe2SiO1/2)0.1(PhSiO3/2)0.75の式(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、また括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0035】
成分(A)は、単一のシリコーン樹脂であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0036】
シリコーン樹脂の調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、トルエン等の有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより調製される。例えば、本質的にR1R22SiO1/2単位及びR1SiO3/2単位から構成されるシリコーン樹脂は、式R1R22SiClで表される化合物及び式R1SiCl3で表される化合物(式中、R1及びR2は上で定義され例示された通りである)をトルエン中で共加水分解することにより調製することができる。塩酸水溶液及びシリコーン加水分解物を分離し、加水分解物を水で洗浄して残留した酸を除去し、弱い縮合触媒の存在下で加熱して樹脂を必要な粘度まで「調整」する。必要に応じて、有機溶媒中で樹脂をさらに縮合触媒で処理し、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を減少させることができる。或いは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH3、−OC(O)CH3、−N(CH3)2、NHCOCH3、及び−SCH3等を含有するシランを共加水分解反応における出発材料として利用することができる。樹脂生成物の性質は、シランの種類、シランのモル比、縮合度、及び処理条件に依存する。
【0037】
成分(B)は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。
【0038】
有機ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、或いは1分子あたり少なくとも平均3個のケイ素結合水素原子を有する。成分(A)における1分子あたりの平均アルケニル基数と、成分(B)における1分子あたりの平均ケイ素結合水素原子数の和が4より大きい場合に架橋が生じることが一般に理解されている。
【0039】
有機ケイ素化合物は、有機水素シラン又は有機水素シロキサンであってもよい。有機水素シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機水素シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、環状又は樹脂状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0040】
有機水素シランの例には、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、及びポリ(メチルシリレン)メチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
また、有機水素シランは、式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R3は脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビレン基であり、
【化1】
(gは1から6である)から選択される式で表される)で表すことができる。R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂に対して上で定義され例示された通りである。
【0042】
式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)で表される有機水素シランの例には、
【化2】
の式で表されるシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
有機水素シロキサンの例には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、及び本質的にHMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位及びSiO4/2単位(Meはメチルである)から構成される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
また、有機水素シロキサンは、式(R1R42SiO1/2)w(R42SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(II)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R4はR1又は少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有する有機シリルアルキル基であり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしR4基の少なくとも50mol%が有機シリルアルキルである)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂であってもよい。
【0045】
R1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂に対して上で説明され例示された通りである。R4で表される有機シリルアルキル基の例には、
【化3】
−CH2CH2SiMe2H、
−CH2CH2SiMe2CnH2nSiMe2H、
−CH2CH2SiMe2CnH2nSiMePhH、
−CH2CH2SiMePhH、
−CH2CH2SiPh2H、
−CH2CH2SiMePhCnH2nSiPh2H、
−CH2CH2SiMePhCnH2nSiMe2H、
−CH2CH2SiMePhOSiMePhH、及び
−CH2CH2SiMePhOSiPh(OSiMePhH)2の式(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き文字nは2から10の値を有する)で表される基が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
有機水素ポリシロキサン樹脂の式(II)において、下付き文字w、x、y、及びzはモル分率である。下付き文字wは、典型的には0から0.8、或いは0.02から0.75、或いは0.05から0.3の値を有し;下付き文字xは、典型的には0から0.6、或いは0から0.45、或いは0から0.25の値を有し;下付き文字yは、典型的には0から0.99、或いは0.25から0.8、或いは0.5から0.8の値を有し;下付き文字zは、典型的には0から0.35、或いは0から0.25、或いは0から0.15の値を有する。また、比率y+z/(w+x+y+z)は、典型的には0.2から0.99、或いは0.5から0.95、或いは0.65から0.9である。さらに、比率w+x/(w+x+y+z)は、典型的には0.01から0.80、或いは0.05から0.5、或いは0.1から0.35である。
【0047】
典型的には、有機水素ポリシロキサン樹脂におけるR4基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有する有機シリルアルキル基である。
【0048】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0049】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0050】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、R1R42SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR42SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR1SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する(式中、R1及びR4は上で説明され例示された通りである)。例えば、有機水素ポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0051】
有機水素ポリシロキサン樹脂の例には、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.12(PhSiO3/2)0.88、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(PhSiO3/2)0.83、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.17(PhSiO3/2)0.66、
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10、及び
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.08((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)Me2SiO1/2)0.06(PhSiO3/2)0.86の式(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、C6H4はパラ−フェニレン基を指し、また括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0052】
成分(B)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B)は単一の有機水素シラン、2種の異なる有機水素シランの混合物、単一の有機水素シロキサン、2種の異なる有機水素シロキサンの混合物、又は有機水素シラン及び有機水素シロキサンの混合物であってもよい。特に、成分(B)は、成分(B)の総重量を基準として、少なくとも0.5%(w/w)、或いは少なくとも50%(w/w)、或いは少なくとも75%(w/w)の式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂、並びに有機水素シラン及び/又は有機水素シロキサン(後者は有機水素ポリシロキサン樹脂とは異なる)を含む混合物であってもよい。
【0053】
成分(B)の濃度は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B)の正確な量は所望の硬化度に依存し、該硬化度は一般に成分(A)におけるアルケニル基のモル数に対する成分(B)におけるケイ素結合水素原子のモル数の比率が増加するにつれて増加する。成分(B)の濃度は、典型的には、成分(A)におけるアルケニル基1モルあたり、0.4モルから2モルのケイ素結合水素原子、或いは0.8モルから1.5モルのケイ素結合水素原子、或いは0.9モルから1.1モルのケイ素結合水素原子を提供するために十分な濃度である。
【0054】
ケイ素結合水素原子を含有する有機ケイ素化合物の調製方法は、当技術分野では周知である。例えば、有機水素シランは、グリニャール試薬とハロゲン化アルキル又はアリールとの反応により調製することができる。特に、式HR12Si−R3−SiR12Hで表される有機水素シランは、式R3X2で表されるジハロゲン化アリールをエーテル中のマグネシウムで処理して対応するグリニャール試薬を生成し、該グリニャール試薬を式HR12SiClで表されるクロロシランで処理することにより調製することができる(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)。
【0055】
有機ハロシランの加水分解及び縮合等の有機水素シロキサンの調製方法も、当技術分野では周知である。
【0056】
さらに、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂は、(a)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂と、(b)1分子あたり平均2個から4個のケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000未満である有機ケイ素化合物を、(c)ヒドロシリル化触媒、及び任意選択で(d)有機溶媒の存在下で反応させることにより調製することができる(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(a)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、(b)におけるケイ素結合水素原子の(a)におけるアルケニル基に対するモル比は1.5から5である)。
【0057】
シリコーン樹脂(a)は、シリコーン組成物の成分(A)に対して上で説明され例示された通りである。シリコーン樹脂(a)は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物における成分(A)として使用されるシリコーン樹脂と同じでも異なっていてもよい。
【0058】
有機ケイ素化合物(b)は、1分子あたり平均2個から4個のケイ素結合水素原子を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。或いは、有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均2個から3個のケイ素結合水素原子を有する。有機ケイ素化合物は、典型的には1,000未満、或いは750未満、或いは500未満の分子量を有する。有機ケイ素化合物におけるケイ素結合有機基は、両方とも脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基から選択され、また成分(A)のシリコーン樹脂の式におけるR1に対して上で説明され例示された通りである。
【0059】
有機ケイ素化合物(b)は、有機水素シラン又は有機水素シロキサンであってもよい。有機水素シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機水素シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、又は環状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0060】
有機水素シランの例には、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、及び1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシランが含まれるが、これらに限定されない。また、有機水素シランは式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1及びR3は上で説明され例示された通りである)で表すことができる。
【0061】
有機水素シロキサンの例には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、及び1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
有機ケイ素化合物(b)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B)は単一の有機水素シラン、2種の異なる有機水素シランの混合物、単一の有機水素シロキサン、2種の異なる有機水素シロキサンの混合物、又は有機水素シラン及び有機水素シロキサンの混合物であってもよい。
【0063】
上述のグリニャール試薬とハロゲン化アルキル又はアリールとの反応等の有機水素シランの調製方法は、当技術分野では周知である。同様に、有機ハロシランの加水分解及び縮合等の有機水素シロキサンの調製方法も、当技術分野では周知である。
【0064】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム)、又は白金族金属を含有する化合物を含む周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0065】
ヒドロシリル化触媒は、米国特許第3419593号(参照することにより本明細書に組み入れられる)においてWillingにより開示された、塩化白金酸とあるビニル含有有機シロキサンとの錯体を含む。この種類の触媒は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0066】
また、ヒドロシリル化触媒は、表面上に白金族金属を有する固体担体を含む担持ヒドロシリル化触媒であってもよい。担持触媒は、例えば反応混合物の濾過により、有機水素ポリシロキサン樹脂生成物から都合よく分離することができる。担持触媒の例には、白金担持炭素、パラジウム担持炭素、ルテニウム担持炭素、ロジウム担持炭素、白金担持シリカ、パラジウム担持シリカ、白金担持アルミナ、パラジウム担持アルミナ、及びルテニウム担持アルミナが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
有機溶媒(d)は、少なくとも1種の有機溶媒である。有機溶媒は、シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、又は有機水素ポリシロキサン樹脂と本方法の条件下で反応しない、また成分(a)、(b)、及び有機水素ポリシロキサン樹脂と相溶性である、いかなる非プロトン性有機溶媒又は非プロトン性極性有機溶媒であってもよい。
【0068】
有機溶媒の例には、n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン及びドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等の環状エーテル;メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;トリクロロエタン等のハロゲン化アルカン;並びにブロモベンゼン及びクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒(d)は、単一の有機溶媒であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機溶媒を含む混合物であってもよい。
【0069】
反応は、ヒドロシリル化反応に適したいかなる標準的反応炉でも行うことができる。適した反応炉には、ガラス反応炉及びテフロン(登録商標)で内張りしたガラス反応炉が含まれる。好ましくは、反応炉は撹拌等のかき混ぜ手段を備える。また、好ましくは、湿気がない状態で、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中で反応が行われる。
【0070】
シリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒、及び、任意選択の有機溶媒は、いかなる順番でも組み合わせることができる。典型的には、有機ケイ素化合物(b)及びヒドロシリル化触媒(c)は、シリコーン樹脂(a)及び任意選択で有機溶媒(d)を導入する前に組み合わされる。
【0071】
反応は、典型的には0℃から150℃の温度で、或いは室温(約23±2℃)から115℃の温度で行われる。温度が0℃未満の場合、典型的には反応速度が非常に遅い。
【0072】
反応時間は、シリコーン樹脂及び有機ケイ素化合物の構造並びに温度等、いくつかの要因に依存する。反応時間は、典型的には室温(約23±2℃)から150℃の温度で1時間から24時間である。最適反応時間は、慣例的な試験により決定することができる。
【0073】
シリコーン樹脂(a)におけるアルケニル基に対する有機ケイ素化合物(b)におけるケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には1.5から5、或いは1.75から3、或いは2から2.5である。
【0074】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)の有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)及び有機ケイ素化合物(b)の総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属、或いは1ppmから500ppmの白金族金属、或いは5ppmから150ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。白金族金属が0.1ppm未満では反応速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属を使用すると、認め得るほどの反応速度の増加は見られなくなり、したがって非経済的である。
【0075】
有機溶媒(d)の濃度は、反応混合物の総重量を基準として、典型的には0%から99%(w/w)、或いは30%から80%(w/w)、或いは45%から60%(w/w)である。
【0076】
有機水素ポリシロキサン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態においては、単離若しくは精製せずに使用することができ、又は、樹脂は従来の蒸発法により溶媒のほとんどから分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、有機水素ポリシロキサン樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒が上述の担持触媒である場合、反応混合物を濾過することにより樹脂をヒドロシリル化触媒から容易に分離することができる。しかし、有機水素ポリシロキサン樹脂が樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、触媒は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態の成分(C)として使用されてもよい。
【0077】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の成分(C)は、成分(A)の成分(B)との付加反応を促進する少なくとも1種のヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒は、白金族金属、白金族金属を含有する化合物、又はマイクロカプセル化白金族金属含有触媒を含む、周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0078】
好ましいヒドロシリル化触媒は、米国特許第3419593号(参照することにより本明細書に組み入れられる)においてWillingにより開示された、塩化白金酸とあるビニル含有有機シロキサンとの錯体を含む。この種類の好ましい触媒は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0079】
また、ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂中に白金族金属を含むマイクロカプセル化白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒を含有する組成物は、長期間、典型的には周囲条件で数ヶ月以上安定であるが、熱可塑性樹脂の融点又は軟化点を超える温度で比較的急速に硬化する。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒及びその調製方法は当技術分野では周知であり、米国特許第4766176号及びその中で引用されている参考文献、並びに米国特許第5017654号に例示される。
【0080】
成分(C)は、単一のヒドロシリル化触媒であっても、又は、構造、形態、白金族金属、錯化配位子、及び熱可塑性樹脂等の少なくとも1つの性質が異なる2種以上の異なる触媒を含む混合物であってもよい。
【0081】
成分(C)の濃度は、成分(A)の成分(B)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、成分(C)の濃度は、成分(A)及び(B)の総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属、好ましくは1ppmから500ppmの白金族金属、さらに好ましくは5ppmから150ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。白金族金属が0.1ppm未満では硬化速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属を使用すると、認め得るほどの硬化速度の増加は見られなくなり、したがって非経済的である。
【0082】
第2の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R5はR1又は−Hであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)、(B’)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0083】
成分(A’)は、式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R5はR1又は−Hであり、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂である。式(III)中、R1、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、式(I)で表されるシリコーン樹脂に対して上で説明され例示された通りである。
【0084】
典型的には、シリコーン樹脂におけるR5基の少なくとも50mol%、或いは少なくとも65mol%、或いは少なくとも80mol%は水素である。
【0085】
シリコーン樹脂は、典型的には500から50,000、或いは500から10,000、或いは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有する(分子量は、小角レーザ光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準試料を使用したゲル透過クロマトグラフィーにより決定される)。
【0086】
シリコーン樹脂の25℃における粘度は、典型的には0.01Pa・sから100,000Pa・s、或いは0.1Pa・sから10,000Pa・s、或いは1Pa・sから100Pa・sである。
【0087】
シリコーン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、或いは5%(w/w)未満、或いは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する(29Si NMRで測定)。
【0088】
シリコーン樹脂は、R1R52SiO1/2単位(すなわちM単位)及び/又はR52SiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わされたR5SiO3/2単位(すなわちT単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する。例えば、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、及びMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であってもよい。
【0089】
成分(A’)としての使用に適したシリコーン樹脂の例には、
(HMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(HMeSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.6(MeSiO3/2)0.1、及び(Me3SiO1/2)0.1(H2SiO2/2)0.1(MeSiO3/2)0.4(PhSiO3/2)0.4(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を指す)の式で表される樹脂が含まれるが、これらに限定されない。また、上記式において、単位の順番は不特定である。
【0090】
成分(A’)は、単一のシリコーン樹脂であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0091】
ケイ素結合水素原子を含有するシリコーン樹脂の調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、トルエン等の有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより調製される。例えば、本質的にR1R52SiO1/2単位及びR5SiO3/2単位から構成されるシリコーン樹脂は、式R1R52SiClで表される化合物及び式R5SiCl3で表される化合物(式中、R1及びR5は上で定義され例示された通りである)をトルエン中で共加水分解することにより調製することができる。塩酸水溶液及びシリコーン加水分解物を分離し、加水分解物を水で洗浄して残留した酸を除去し、弱い非塩基性縮合触媒の存在下で加熱して樹脂を必要な粘度まで「調整」する。必要に応じて、有機溶媒中で樹脂をさらに非塩基性縮合触媒で処理し、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を減少させることができる。或いは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH3、−OC(O)CH3、−N(CH3)2、NHCOCH3、及び−SCH3等を含有するシランを共加水分解反応における出発材料として利用することができる。樹脂生成物の性質は、シランの種類、シランのモル比、縮合度、及び処理条件に依存する。
【0092】
成分(B’)は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物である。
【0093】
有機ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基、又は1分子あたり少なくとも平均3個のケイ素結合アルケニル基を含有する。成分(A’)における1分子あたりの平均ケイ素結合水素原子数と、成分(B’)における1分子あたりの平均ケイ素結合アルケニル基数の和が4より大きい場合に架橋が生じることが一般に理解されている。
【0094】
有機ケイ素化合物は、有機シラン又は有機シロキサンであってもよい。有機シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであってもよい。同様に、有機シロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分岐鎖、環状又は樹脂状であってもよい。環状シラン及び環状シロキサンは、典型的には3個から12個のケイ素原子、或いは3個から10個のケイ素原子、或いは3個から4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合アルケニル基は、末端位置、懸垂位置、又は末端位置及び懸垂位置の両方に位置することができる。
【0095】
成分(B’)としての使用に適した有機シランの例には、
Vi4Si、PhSiVi3、MeSiVi3、PhMeSiVi2、Ph2SiVi2、及びPhSi(CH2CH=CH2)3(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである)の式で表されるシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
成分(B’)としての使用に適した有機シロキサンの例には、
PhSi(OSiMe2H)3、Si(OSiMe2H)4、MeSi(OSiMe2H)3、及びPh2Si(OSiMe2H)2(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)の式で表されるシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
成分(B’)は、単一の有機ケイ素化合物であってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。例えば、成分(B’)は単一の有機シラン、2種の異なる有機シランの混合物、単一の有機シロキサン、2種の異なる有機シロキサンの混合物、又は有機シラン及び有機シロキサンの混合物であってもよい。
【0098】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B’)の正確な量は所望の硬化度に依存し、該硬化度は成分(A’)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する成分(B’)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の比率が増加するにつれて増加する。成分(B’)の濃度は、典型的には、成分(A’)におけるケイ素結合水素原子1モルあたり、0.4モルから2モルのケイ素結合アルケニル基、或いは0.8モルから1.5モルのケイ素結合アルケニル基、或いは0.9モルから1.1モルのケイ素結合アルケニル基を提供するために十分な濃度である。
【0099】
ケイ素結合アルケニル基を含有する有機シラン及び有機シロキサンの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0100】
シリコーン組成物の第2の実施形態の成分(C)は、第1の実施形態の成分(C)に対して上で説明され例示された通りである。
【0101】
第3の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂、(B)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、並びに(D)(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムを含む(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂及びシリコーンゴム(D)(i)はそれぞれ、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(A)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)。
【0102】
シリコーン組成物の第3の実施形態の成分(A)、(B)、及び(C)は、第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0103】
成分(B)の濃度は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)及び成分(D)(i)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和に対する、成分(B)におけるケイ素結合水素原子のモル数の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数に対する、成分(B)及び成分(D)(ii)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0104】
成分(D)は、(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムである(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)。
【0105】
成分(D)(i)は、式R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)(式中、R1及びR2は上で説明され例示された通りであり、下付き文字aは1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムである。或いは、下付き文字aは2から4又は2から3の値を有する。
【0106】
成分(D)(i)としての使用に適したシリコーンゴムの例には、
ViMe2SiO(Me2SiO)aSiMe2Vi、ViMe2SiO(Ph2SiO)aSiMe2Vi、及びViMe2SiO(PhMeSiO)aSiMe2Vi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字aは1から4の値を有する)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
成分(D)(i)は、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(IV)で表される2種又はそれ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0108】
成分(D)(ii)は、式R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)(式中、R1及びR5は上で説明され例示された通りであり、下付き文字bは1から4の値を有し、ただしシリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムである。或いは、下付き文字bは2から4又は2から3の値を有する。
【0109】
成分(D)(ii)としての使用に適したシリコーンゴムの例には、
HMe2SiO(Me2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(Ph2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(PhMeSiO)bSiMe2H及びHMe2SiO(Ph2SiO)2(Me2SiO)2SiMe2H(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き文字bは1から4の値を有する)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
成分(D)(ii)は、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(V)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0111】
シリコーン樹脂(A)におけるケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0112】
ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0113】
第4の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂、(B’)シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、並びに(D)(i)R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1(IV)及び(ii)R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5(V)から選択される式で表されるシリコーンゴムを含む(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字a及びbはそれぞれ1から4の値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂及びシリコーンゴム(D)(ii)はそれぞれ、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーンゴム(D)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーン樹脂(A’)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)。
【0114】
シリコーン組成物の第4の実施形態の成分(A’)、(B’)及び(C)は、第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りであり、第4の実施形態の成分(D)は、第3の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0115】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する、成分(B’)及び成分(D)(i)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)及び成分(D)(ii)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和に対する、成分(B’)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の比が典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0116】
シリコーン樹脂(A’)におけるケイ素結合水素原子に対する、シリコーンゴム(D)におけるケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0117】
第5の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’’)式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表されるシリコーン樹脂と、式R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5(VI)で表されるシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、cは4より大きく1,000までの値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(I)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(VI)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である)、(B)ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0118】
シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(B)及び(C)は、第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0119】
成分(B)の濃度は、ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B)の濃度は、シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数に対する、成分(B)及びシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル数の和の比が、典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0120】
成分(A’’)は、式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R1SiO3/2)y(SiO4/2)z(I)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂と、式R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5(VI)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂である(式中、R1、R2、R5、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、上で説明され例示された通りであり、下付き文字cは4より大きく1,000までの値を有する)。
【0121】
式(I)で表されるシリコーン樹脂は、シリコーン組成物の第1の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。また、ヒドロシリル化触媒及び有機溶媒は、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂の調製方法において上で説明され例示された通りである。本明細書で使用される場合、「可溶性反応生成物」という用語は、有機溶媒が存在する場合、成分(A’’)の調製のための反応の生成物が有機溶媒と相溶性であり、沈殿物又は懸濁液を形成しないことを意味する。
【0122】
シリコーンゴムの式(VI)中、R1及びR5は上で説明され例示された通りであり、下付き文字cは、典型的には4より大きく1,000までの値、或いは10から500までの値、或いは10から50までの値を有する。
【0123】
式(VI)で表されるシリコーンゴムの例には、
HMe2SiO(Me2SiO)50SiMe2H、HMe2SiO(Me2SiO)10SiMe2H、HMe2SiO(PhMeSiO)25SiMe2H、及びMe3SiO(MeHSiO)10SiMe3(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、下付き数字はシロキサン単位の各種類の数を示す)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
式(VI)で表されるシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(VI)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0125】
ケイ素結合水素原子を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0126】
シリコーン樹脂(I)、シリコーンゴム(VI)、ヒドロシリル化触媒、及び有機溶媒は、いかなる順番でも組み合わせることができる。典型的には、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、及び有機溶媒が、ヒドロシリル化触媒を導入する前に組み合わされる。
【0127】
反応は、典型的には室温(約23±2℃)から150℃の温度で、或いは室温から100℃の温度で行われる。
【0128】
反応時間は、シリコーン樹脂及びシリコーンゴムの構造並びに温度等、いくつかの要因に依存する。典型的には、ヒドロシリル化反応が完了するために十分な期間、成分を反応させる。これは、典型的には、シリコーンゴム中に元来存在するケイ素結合水素原子の少なくとも95mol%、或いは少なくとも98mol%、或いは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応で消費されるまで(FTIRスペクトルで決定される)、成分を反応させることを意味する。反応時間は、典型的には室温(約23±2℃)から100℃の温度で0.5時間から24時間である。最適反応時間は、後述の実験の項に記載される方法を使用して、慣例的な試験により決定することができる。
【0129】
シリコーン樹脂(I)におけるケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)におけるケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。
【0130】
ヒドロシリル化触媒の濃度は、シリコーン樹脂(I)のシリコーンゴム(VI)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒の濃度は、樹脂及びゴムの総合重量を基準として、0.1ppmから1000ppmの白金族金属を提供するために十分な濃度である。
【0131】
有機溶媒の濃度は、反応混合物の総重量を基準として、典型的には0%から95%(w/w)、或いは10%から75%(w/w)、或いは40%から60%(w/w)である。
【0132】
ゴム変性シリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態においては、単離若しくは精製せずに使用することができ、又は、樹脂は従来の蒸発法により溶媒のほとんどから分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、ヒドロシリル化触媒が上述の担持触媒である場合、反応混合物を濾過することによりゴム変性シリコーン樹脂をヒドロシリル化触媒から容易に分離することができる。しかし、ゴム変性シリコーン樹脂が樹脂の調製に使用されるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、触媒は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(C)として使用されてもよい。
【0133】
第6の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’’’)式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表されるシリコーン樹脂と、式R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1(VII)で表されるシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択で可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、R5はR1又は−Hであり、下付き文字dは4より大きく1,000までの値を有し、wは0から0.8であり、xは0から0.6であり、yは0から0.99であり、zは0から0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.2から0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01から0.8であり、ただしシリコーン樹脂(III)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーンゴム(VII)は、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル比が0.01から0.5である)、(B’)ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、及び(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む。
【0134】
シリコーン組成物の第6の実施形態の成分(B’)及び(C)は、第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。
【0135】
成分(B’)の濃度は、ゴム変性シリコーン樹脂を硬化させる(架橋する)ために十分な濃度である。成分(B’)の濃度は、シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子のモル数に対する、成分(B’)及びシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル数の和の比が、典型的には0.4から2、或いは0.8から1.5、或いは0.9から1.1となるような濃度である。
【0136】
成分(A’’’)は、式(R1R52SiO1/2)w(R52SiO2/2)x(R5SiO3/2)y(SiO4/2)z(III)で表される少なくとも1種のシリコーン樹脂と、式R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1(VII)で表される少なくとも1種のシリコーンゴムとを、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また可溶性反応生成物を形成するために有機溶媒の存在下で反応させることにより調製されるゴム変性シリコーン樹脂である(式中、R1、R2、R5、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)、及びw+x/(w+x+y+z)は、上で説明され例示された通りであり、下付き文字dは4より大きく1,000までの値を有する)。
【0137】
式(III)で表されるシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態に対して上で説明され例示された通りである。また、ヒドロシリル化触媒及び有機溶媒は、式(II)で表される有機水素ポリシロキサン樹脂の調製方法において上で説明され例示された通りである。シリコーン組成物の前述の実施形態でのように、「可溶性反応生成物」という用語は、有機溶媒が存在する場合、成分(A’’’)の調製のための反応の生成物が有機溶媒と相溶性であり、沈殿物又は懸濁液を形成しないことを意味する。
【0138】
シリコーンゴムの式(VII)中、R1及びR2は上で説明され例示された通りであり、下付き文字dは、典型的には4より大きく1,000までの値、或いは10から500までの値、或いは10から50までの値を有する。
【0139】
式(VII)で表されるシリコーンゴムの例には、
ViMe2SiO(Me2SiO)50SiMe2Vi、ViMe2SiO(Me2SiO)10SiMe2Vi、ViMe2SiO(PhMeSiO)25SiMe2Vi、及びVi2MeSiO(PhMeSiO)25SiMe2Vi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き数字はシロキサン単位の各種類の数を示す)の式で表されるシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
式(VII)で表されるシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよく、又はそれぞれ式(VII)で表される2種以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0141】
ケイ素結合アルケニル基を含有するシリコーンゴムの調製方法は当技術分野では周知であり、またこれらの化合物の多くは市販されている。
【0142】
成分(A’’’)の調製のための反応は、シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(A’’)の調製に対して上で説明された手法で行うことができるが、ただし式(I)で表されるシリコーン樹脂及び式(VI)で表されるシリコーンゴムは、それぞれ式(III)で表される樹脂及び式(VII)で表されるゴムで置き換えられる。シリコーン樹脂(III)におけるケイ素結合水素原子に対するシリコーンゴム(VII)におけるケイ素結合アルケニル基のモル比は、0.01から0.5、或いは0.05から0.4、或いは0.1から0.3である。さらに、典型的には、ヒドロシリル化反応が完了するために十分な期間、シリコーン樹脂及びシリコーンゴムを反応させる。これは、典型的には、ゴム中に元来存在するケイ素結合アルケニル基の少なくとも95mol%、或いは少なくとも98mol%、或いは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応で消費されるまで(FTIRスペクトルで決定される)、成分を反応させることを意味する。
【0143】
本方法のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は追加の要素を含んでもよいが、ただし該要素は、シリコーン組成物が硬化して、後述するように低い熱膨張率、高い引っ張り強さ、及び高い弾性率を有する硬化シリコーン樹脂を形成するのを妨げない。追加の要素の例には、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン、及びトリフェニルホスフィン等のヒドロシリル化触媒阻害剤;米国特許第4087585号及び第5194649に教示される接着促進剤等の接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;UV安定剤;難燃剤;流動調整添加剤;並びに、有機溶媒及び反応性希釈剤等の希釈剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
例えば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(E)(i)1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する有機シロキサン((E)(i)の粘度は、シリコーン組成物の上記成分(A)、(A’)、(A’’)、又は(A’’’)等のシリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、有機シロキサンは、式(R1R22SiO1/2)m(R22SiO2/2)n(R1SiO3/2)p(SiO4/2)q(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、mは0から0.8であり、n=0から1であり、p=0から0.25であり、q=0から0.2であり、m+n+p+q=1であり、m+nは0と等しくなく、ただし、p+q=0の場合nは0と等しくなく、アルケニル基の全てが末端とは限らない)で表される)、並びに(ii)(E)(i)におけるアルケニル基1モルあたり(E)(ii)におけるケイ素結合水素原子0.5モルから3モルを提供するために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する有機水素シロキサン(有機水素シロキサンは、式(HR12SiO1/2)S(R1SiO3/2)t(SiO4/2)v(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、sは0.25から0.8であり、tは0から0.5であり、vは0から0.3であり、s+t+v=1であり、t+vは0と等しくない)で表される)を含む反応性希釈剤を含有することができる。
【0145】
成分(E)(i)は、1分子あたり少なくとも平均2個のアルケニル基、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する少なくとも1種の有機シロキサンである((E)(i)の粘度は、シリコーン組成物のシリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、有機シロキサンは、式(R1R22SiO1/2)m(R22SiO2/2)n(R1SiO3/2)p(SiO4/2)q(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、R2はR1又はアルケニルであり、mは0から0.8であり、n=0から1であり、p=0から0.25であり、q=0から0.2であり、m+n+p+q=1であり、m+nは0と等しくなく、ただし、p+q=0の場合nは0と等しくなく、アルケニル基の全てが末端とは限らない(すなわち、有機シロキサンにおける全てのアルケニル基がR1R22SiO1/2単位にあるわけではない))で表される)。さらに、有機シロキサン(E)(i)は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造であってもよい。例えば、有機シロキサン(E)(i)の式中の下付き文字m、p、及びqがそれぞれ0と等しい場合、有機シロキサンは有機環状シロキサンである。
【0146】
有機シロキサン(E)(i)の25℃における粘度は、典型的には0.001Pa・sから2Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.1Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.05Pa・sである。さらに、有機シロキサン(E)(i)の25℃における粘度は、典型的にはヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物におけるシリコーン樹脂の粘度の20%以下、或いは10%以下、或いは1%以下である。
【0147】
有機シロキサン(E)(i)としての使用に適した有機シロキサンの例には、
(ViMeSiO)3、(ViMeSiO)4、(ViMeSiO)5、(ViMeSiO)6、(ViPhSiO)3、(ViPhSiO)4、(ViPhSiO)5、(ViPhSiO)6、ViMe2SiO(ViMeSiO)nSiMe2Vi、Me3SiO(ViMeSiO)nSiMe3、及び(ViMe2SiO)4Si(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字nは、有機シロキサンが25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有するような値を有する)の式で表される有機シロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
成分(E)(i)は、単一の有機シロキサンであってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機シロキサンを含む混合物であってもよい。アルケニル官能性有機シロキサンの作製方法は、当技術分野では周知である。
【0149】
成分(E)(ii)は、(E)(i)におけるアルケニル基のモルに対し(E)(ii)におけるケイ素結合水素原子0.5モルから3モルを提供するために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、及び25℃で0.001Pa・sから2Pa・sの粘度を有する、少なくとも1種の有機水素シロキサン(有機水素シロキサンは、式(HR12SiO1/2)s(R1SiO3/2)t(SiO4/2)v(式中、R1はC1からC10ヒドロカルビル又はC1からC10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両方とも脂肪族不飽和を含まず、sは0.25から0.8であり、tは0から0.5であり、vは0から0.3であり、s+t+v=1であり、t+vは0と等しくない)で表される)である。
【0150】
有機水素シロキサン(E)(ii)の25℃における粘度は、典型的には0.001Pa・sから2Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.1Pa・s、或いは0.001Pa・sから0.05Pa・sである。
【0151】
有機水素シロキサン(E)(ii)としての使用に適した有機水素シロキサンの例には、
PhSi(OSiMe2H)3、Si(OSiMe2H)4、MeSi(OSiMe2H)3、(HMe2SiO)3SiOSi(OSiMe2H)3、及び(HMe2SiO)3SiOSi(Ph)(OSiMe2H)2(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)の式で表される有機水素シロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
成分(E)(ii)は、単一の有機水素シロキサンであってもよく、又はそれぞれ上述したような2種以上の異なる有機水素シロキサンを含む混合物であってもよい。有機水素シロキサンの作製方法は、当技術分野では周知である。
【0153】
成分(E)(ii)の濃度は、成分(E)(i)におけるアルケニル基1モルあたり、0.5モルから3モルのケイ素結合水素原子、或いは0.6モルから2モルのケイ素結合水素原子、或いは0.9モルから1.5モルのケイ素結合水素原子を提供するために十分な濃度である。
【0154】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物中の反応性希釈剤(E)、つまり成分(E)(i)及び(E)(ii)の組合せの濃度は、上述の実施形態におけるシリコーン樹脂、つまり成分(A)、(A’)、(A’’)、又は(A’’’)、並びに有機ケイ素化合物、つまり成分(B)又は(B’)の総合重量を基準として、典型的には0%から90%(w/w)、或いは0%から50%(w/w)、或いは0%から20%(w/w)、或いは0%から10%(w/w)である。
【0155】
シリコーン組成物は、シリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、及びヒドロシリル化触媒を単一構成要素中に含む、単一構成要素型組成物であっても、或いはこれらの成分を2つ以上の構成要素中に含む複数構成要素型組成物であってもよい。例えば、複数構成要素型シリコーン組成物は、シリコーン樹脂の一部とヒドロシリル化触媒の全てとを含有する第1の構成要素と、シリコーン樹脂の残りの部分と有機ケイ素化合物の全てとを含有する第2の構成要素とを含んでもよい。
【0156】
単一構成要素型シリコーン組成物は、典型的には、周囲温度において、有機溶媒を使用して、又は使用せずに、主成分と任意選択のあらゆる要素とを規定の割合で組み合わせることにより調製される。シリコーン組成物が即時に使用される場合は様々な成分の添加の順番は重要ではないが、組成物の早すぎる硬化を防ぐために、ヒドロシリル化触媒は好ましくは約30℃未満の温度で最後に添加される。また、複数構成要素型シリコーン組成物は、それぞれの構成要素中の成分を組み合わせることにより調製することができる。
【0157】
混合は、バッチ式でも連続プロセスでも、粉砕、ブレンド、撹拌等、当技術分野において既知であるいかなる技術によっても達成することができる。成分の粘度及び最終シリコーン組成物の粘度によって特定の機器が決定される。
【0158】
次に図2Bを参照すると、繊維性材料220を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内又はその上に設置することができる。挿入図225に示されるように、繊維性材料220は、すきま235により隔てられた個々の繊維230を含んでもよい。したがって、繊維230は、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内、上、又は上方にあってもよく、すきま235は、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215の一部で含浸されてもされなくてもよい。一実施形態において、繊維性材料220はガラス布である。例えば、8″×8″の寸法のStyle106ガラス布片(BGFインダストリーズ社(BGF Industries)から供給)を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215内又はその上に設置することができる。しかし、当業者には、本発明がガラス布に限定されないことが理解される。
【0159】
代替の実施形態において、繊維性材料220は、材料が高い弾性率及び高い引っ張り強さを有する限り、繊維225を含むいかなる材料であってもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有してもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で3GPaから1,000GPa、或いは3GPaから200GPa、或いは10GPaから100GPaのヤング率を有してもよい。さらに、繊維性材料220は、25℃で少なくとも50MPaの引っ張り強さを有してもよい。例えば、繊維性材料220は、25℃で50MPaから10,000MPa、或いは50MPaから1,000MPa、或いは50MPaから500MPaの引っ張り強さを有してもよい。
【0160】
繊維性材料220は、布等の織物;マットやロービング等の不織物;又は解れた(個々の)繊維であってもよい。繊維性材料220中の繊維は、典型的には円筒形状であり、1μmから100μm、或いは1μmから20μm、或いは1μmから10μmの直径を有する。解れた繊維は連続的、つまり繊維が概して断裂していない状態で強化シリコーン樹脂フィルム全体に延在してもよく、又は切断されていてもよい。繊維性材料220は、有機不純物を除去するために、使用前に熱処理されてもよい。例えば、繊維性材料220は、適した時間(例えば2時間)、高温(例えば575℃)で空気中で加熱されてもよい。繊維性材料220の例には、ガラス繊維;石英繊維;グラファイト繊維;ナイロン繊維;ポリエステル繊維;Kevlar(登録商標)やNomex(登録商標)等のアラミド繊維;ポリエチレン繊維;ポリプロピレン繊維;及び炭化ケイ素繊維を含む強化材が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
繊維性材料220は、単純に繊維性材料220を硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215上に置き、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215のシリコーン組成物を繊維性材料220に染み込ませることにより、硬化性ケイ素含有組成物のフィルム215中に埋め込むことができる。一実施形態において、埋め込まれた繊維性材料220は脱気される。埋め込まれた繊維性材料220は、室温(約23±2℃)から60℃の温度で、埋め込まれた強化材料中に取り込まれた空気を除去するために十分な期間真空下に置くことにより脱気することができる。例えば、埋め込まれた繊維性材料220は、典型的には、室温で5分から60分間、1,000Paから20,000Paの圧力下に置くことにより脱気することができる。
【0162】
次に図2Cを参照すると、次いで硬化性ケイ素含有組成物のフィルム245をフィルム215及び含浸された繊維性材料220に塗布することができる。フィルム245は、上述の従来の技術を用いて塗布することができる。フィルム215、含浸された繊維材料220、及びフィルム245は、集合的に支持層250と呼ばれる場合がある。一実施形態において、支持層250は、過剰のシリコーン組成物及び/又は取り込まれた空気を除去し、支持層250の厚さを減らすために圧縮されてもよい。支持層250は、ステンレススチールローラ、液圧プレス、ゴムローラ、又はラミネートロールセット等の従来の機器を用いて圧縮することができる。支持層250は、典型的に、室温(約23±2℃)から50℃の温度で1,000Paから10MPaの圧力で圧縮される。一実施形態において、支持層250は、次いで上述の技術のいずれかを用いて硬化又は部分的に硬化されてもよい。
【0163】
次いでパターニングされたモールド255を支持層250に隣接して形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド255は、層215及び245の組成物と同じでも異なってもよい硬化性ケイ素含有組成物を支持層250に隣接して堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。部分的に硬化した支持層250の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド255の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側すきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0164】
次いで、モールド255を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター260を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター260の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター260の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0165】
モールド255及び支持層250を含んでいてもよい硬化モールド組立体265は、マスター260及び処理済基板205から分離することができる。図示された実施形態において、図2Eに示されるようにマスター260をまずモールド255から取り外し、次いで図2Fに示されるように、モールド組立体265を処理済基板205から剥離する。例えば、モールド組立体265は、処理済基板205から剥がし取ることができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体265から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体265をマスターパターン260及び処理済基板205(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体265を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0166】
モールド組立体265の熱膨張率は、繊維強化支持層250の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体265の線熱膨張(CTE)率は、熱機械分析(TMA)法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体265のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体265の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0167】
次いで、図2Gに示されるように、マスターパターン260に対応するパターンを基板270上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体265を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー270上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム275にパターンが転写される。モールド組立体265をアクリレートフィルム275上に設置する。UV光をモールド組立体265を通して照射し、その下のアクリレートコーティング275を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体265上のパターンが硬化アクリレートモールド275に転写されるように、モールド組立体265をフィルム275から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板270又はフィルム275中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0168】
図2A〜Gを参照して上で説明した硬化性ケイ素含有組成物はSylgard184及び適した架橋剤であってもよいが、本発明はこの硬化性ケイ素含有組成物に限定されない。使用可能な他の硬化性シリコーン組成物の例には、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、過酸化物硬化性シリコーン組成物、縮合硬化性シリコーン組成物、エポキシ硬化性シリコーン組成物、紫外線硬化性シリコーン組成物、高エネルギー放射線硬化性シリコーン組成物、及び同じ機能性を有する有機シリコーン組成物が含まれるが、これらに限定されない。硬化性ケイ素組成物は、硬化又は架橋機能性を有するモノマー又はポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、ポリシロキサン(直鎖、分岐鎖、樹脂等)、シロキサン反復単位及び有機反復単位セグメントを含有するブロックコポリマー、及びケイ素変性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
硬化性シリコーン組成物及びその調製法は、当技術分野では周知である。例えば、適したヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を含有する有機ポリシロキサン、(ii)組成物を硬化させるために十分な量の、1分子あたり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を含有する有機水素シロキサン、及び(iii)ヒドロシリル化触媒を含む。ヒドロシリル化触媒は、白金族金属、白金族金属を含有する化合物、又はマイクロカプセル化白金族金属含有触媒を含む、周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってもよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。白金はヒドロシリル化反応において高い活性を有するため、好ましくは白金族金属は白金である。
【0170】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物であっても、又は2つ以上の構成要素中に成分を含む複数構成要素型組成物であってもよい。室温加硫(RTV)組成物は、典型的には2つの構成要素を含み、1つの構成要素は有機ポリシロキサン及び触媒を含み、もう1つの構成要素は有機水素シロキサン及び任意選択の要素を含む。高温で硬化するヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物又は複数構成要素型組成物として配合することができる。例えば、液状シリコーンゴム(LSR)組成物は、典型的には2構成要素系として配合される。単一構成要素型組成物は、典型的には、適正な保存期間を確実とするために白金触媒阻害剤を含有する。
【0171】
適した過酸化物硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)有機ポリシロキサン及び(ii)有機過酸化物を含む。有機過酸化物の例には、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジ−p−クロロベンゾイル、及び過酸化ビス−2,4−ジクロロベンゾイル等の過酸化ジアロイル;過酸化ジ−t−ブチル及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペロキシ)ヘキサン等の過酸化ジアルキル;過酸化ジクミル等の過酸化ジアラルキル;過酸化t−ブチルクミル及び1,4−ビス(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン等の過酸化アルキルアラルキル;並びに過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、及びt−ブチルパーオクトエート等の過酸化アルキルアロイルが含まれる。
【0172】
縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のヒドロキシ基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)加水分解性Si−O又はSi−N結合を含有する三官能性又は四官能性シランを含む。シランの例には、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH3)3、CH3Si[O(CH2)3CH3]3、CH3CH2Si(OCH2CH3)3、C6H5Si(OCH3)3、C6H5CH2Si(OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH3)3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH2OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH2CH2OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH2OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、及びSi(OC3H7)4等のアルコキシシラン;CH3Si(OCOCH3)3、CH3CH2Si(OCOCH3)3、及びCH2=CHSi(OCOCH3)3等の有機アセトキシシラン;CH3Si[O−N=C(CH3)CH2CH3]3、Si[O−N=C(CH3)CH2CH3]4、及びCH2=CHSi[O−N=C(CH3)CH2CH3]3等の有機イミノオキシシラン;CH3Si[NHC(=O)CH3]3及びC6H5Si[NHC(=O)CH3]3等の有機アセトアミドシラン;CH3Si[NH(s−C4H9)]3及びCH3Si(NHC6H11)3等のアミノシラン;並びに有機アミノオキシシランが含まれる。
【0173】
また、縮合硬化性シリコーン組成物は、縮合反応を開始し促進するための縮合触媒を含有することができる。縮合触媒の例には、アミン;並びに鉛、スズ、亜鉛、及び鉄とカルボン酸の錯体が含まれるが、これらに限定されない。スズ(II)オクトエート、ラウレート、及びオレエート、並びにジブチルスズの塩が特に有用である。縮合硬化性シリコーン組成物は、単一構成要素型組成物であっても、又は2つ以上の構成要素中に成分を含む複数構成要素型組成物であってもよい。例えば、室温加硫(RTV)組成物を単一構成要素型又は2構成要素型組成物として配合することができる。2構成要素型組成物において、1つの構成要素は典型的には少量の水を含む。
【0174】
適したエポキシ硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)1分子あたり少なくとも平均2個のエポキシ官能基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)硬化剤を含む。エポキシ官能基の例には、2−グリシドキシエチル、3−グリシドキシプロピル、4−グリシドキシブチル、2,(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル、2,3−エポキシプロピル、3,4−エポキシブチル、及び4,5−エポキシペンチルが含まれる。硬化剤の例には、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、及びドデセニル無水コハク酸等の無水物;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレンプロピルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、m−フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、アミノエチルピペラジン、4,4−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジシアンジアミド、及び2−メチルイミダゾール、及びトリエチルアミン等のポリアミン;三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸;ポリカルボン酸;ポリメルカプタン;ポリアミド;及びアミドアミンが含まれる。
【0175】
適した紫外線硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(i)放射線感受性官能基を含有する有機ポリシロキサン及び(ii)光開始剤を含む。放射線感受性官能基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、メルカプト、エポキシ、及びアルケニルエーテル基が含まれる。光開始剤の種類は、有機ポリシロキサンにおける放射線感受性基の性質に依存する。光開始剤の例には、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、アセトフェノン、ベンゾフェノン、並びにベンゾイン及びその誘導体が含まれる。
【0176】
適した高エネルギー放射線硬化性シリコーン組成物は、有機ポリシロキサンポリマーを含む。有機ポリシロキサンポリマーの例には、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、及び有機水素ポリシロキサンが含まれる。高エネルギー放射線には、γ線及び電子ビームが含まれる。
【0177】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、追加の要素を含むことができる。追加の要素の例には、接着促進剤、溶媒、無機充填剤、感光剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、及び界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。無機充填剤の例には、結晶シリカ、粉末結晶シリカ、及び珪藻シリカ等の天然シリカ;溶融石英、シリカゲル、焼成シリカ、及び沈降シリカ等の合成シリカ;雲母、珪灰石、長石、及び霞石閃長岩等のケイ酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ベリリウム、酸化クロム、及び酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化チタン、及び炭化ケイ素等の金属炭化物;カーボンブラック;炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸バリウム等のアルカリ土類金属硫酸塩;二硫化モリブデン;硫酸亜鉛;カオリン;タルク;ガラス繊維;中空ガラスミクロスフェア及び中実ガラスミクロスフェア等のガラスビーズ;三水和アルミニウム;アスベスト;並びに、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末、鉄粉末、及び銀粉末等の金属粉末が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
シリコーン組成物は、特定の硬化メカニズムに依存して、周囲温度、高温、水分、又は放射線への曝露により硬化することができる。例えば、単一構成要素型ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には高温で硬化する。2構成要素型ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温又は高温で硬化する。単一構成要素型縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、室温で大気中の水分に曝されることにより硬化するが、加熱及び/又は高い湿度への曝露により硬化を促進することができる。2構成要素型縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温で硬化するが、加熱により硬化を促進することができる。過酸化物硬化性シリコーン組成物は、典型的には高温で硬化する。エポキシ硬化性シリコーン組成物は、典型的には室温又は高温で硬化する。特定の配合に依存して、放射線硬化性シリコーン組成物は、典型的には、紫外線、ガンマ線、又は電子ビーム等の放射線への曝露により硬化する。
【0179】
図3A、3B及び3Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態300を概念的に示す。図示された実施形態において、基板305は、後に形成される層の基板305に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板305から剥離できるようにすることを目的とした剥離層310を形成するように処理される。剥離層310は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板305は、剥離層310を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm, Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板305及び/又は剥離層310を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層310は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0180】
繊維性材料315は、基板305内又はその上、又は図3Aに示されるように、存在する場合は剥離層310内又はその上に設置することができる。挿入図320に示されるように、繊維性材料315は、すきま330により隔てられた個々の繊維325を含んでもよい。したがって、繊維325は、基板305内、上、若しくは上方、又は、存在する場合は剥離層310内、上、若しくは上方にあってもよい。一実施形態において、繊維性材料315はガラス布である。例えば、8″×8″の寸法のStyle106ガラス布片(BGFインダストリーズ社(BGF Industries)から供給)を基板305内若しくはその上、又は、存在する場合は剥離層310内若しくはその上に設置することができる。しかし、当業者には、本発明がガラス布に限定されないことが理解される。代替の実施形態において、繊維性材料315は、繊維325を含むいかなる材料であってもよい。代替の繊維性材料315の例は、上で詳細に議論されている。
【0181】
次いで、パターニングされたモールド335を、繊維性材料315、基板305上、及び、存在する場合は剥離層310の上に形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド335は、上述の堆積法を用いて、繊維性材料315、基板305上、及び、存在する場合は剥離層310の上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させることにより形成される。次いで、上で詳細に議論されたように、硬化性ケイ素含有組成物を繊維性材料315に含浸させることができる。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。図3A〜Cを参照して説明した硬化性ケイ素含有組成物はSylgard184及び適した架橋剤であってもよいが、本発明はこの硬化性ケイ素含有組成物に限定されない。使用可能な他の硬化性シリコーン組成物の例は上に示されている。
【0182】
Sylgard184及び1つ又は複数の架橋剤を含む硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるために、繊維性材料315、基板305、及び、存在する場合は剥離層310の上に四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド255の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側すきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0183】
次いで、モールド335を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター340を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター340の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター340の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0184】
次いで、含浸された繊維性材料315を含む硬化モールド組立体335をマスター340及び処理済基板305から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体335から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体335をマスターパターン340及び処理済基板305(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体335を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0185】
モールド組立体335の熱膨張率は含浸された繊維性材料315の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体335の線熱膨張(CTE)率は、TMA法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体335のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体335の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0186】
次いで、図3Cに示されるように、マスターパターン340に対応するパターンを基板345上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体335を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー345上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム350にパターンが転写される。モールド組立体335をアクリレートフィルム350上に設置する。UV光をモールド組立体335を通して照射し、その下のアクリレートコーティング350を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体335上のパターンが硬化アクリレートモールド350に転写されるように、モールド組立体335をフィルム350から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板345又はフィルム350中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0187】
図4A、4B及び4Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態400を概念的に示す。図示された実施形態において、基板405は、後に形成される層の基板405に対する接着を軽減し、後に形成される層が基板405から剥離できるようにすることを目的とした剥離層410を形成するように処理される。剥離層410は、後述するように、シリコーン樹脂の硬化後に層剥離による損傷なしにそこから強化シリコーン樹脂フィルムを除去することができる表面を有するいかなる硬質又は軟質材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板405は、剥離層410を形成するためにナノフィルム社(Nanofilm, Inc、オハイオ州バレービュー)製Relisse(登録商標)2520で処理された、6″×6″の寸法を有するガラス板であってもよい。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板405及び/又は剥離層410を形成するためにいかなる材料も使用可能であることが理解される。さらに、剥離層410は任意選択であり、本発明の実践には必須ではない。
【0188】
次いで、硬化性無溶剤樹脂の層415を、基板405の上、又は存在する場合は剥離層410の上に堆積させる。層415を形成するために使用可能な樹脂の例は上述されており、層415は本明細書で説明されるいかなる技術を用いて堆積されてもよい。様々な実施形態において、硬化性無溶剤樹脂は、モールド若しくは剥離基板にキャストされても、又は表面上にコーティングされてもよい。次いで層415を少なくとも部分的に硬化させる。例えば、層415は、空気循環炉中で、5℃/分で100℃まで昇温、100℃で1時間保持、5℃/分で160℃まで昇温、160℃で1時間保持、5℃/分で200℃まで昇温、及び200℃で2時間保持というプロセスで加熱されてもよい。また、樹脂層415は、基板405上、又は、存在する場合は剥離コーティング層410上に設けられた予備硬化済樹脂フィルムであってもよい。
【0189】
図4Bに示された実施形態では、次いでパターニングされたモールド420を硬化又は部分硬化層415に隣接して形成することができる。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板405、又は、存在する場合は剥離層410に隣接して硬化又は部分硬化層415が存在したままパターニングされたモールド420が形成される実施形態に、本発明が限定されないことが理解される。代替の実施形態において、硬化又は部分硬化層415は、硬化又は部分硬化層415に隣接してパターニングされたモールド420を形成する前に、基板405、又は、存在する場合は剥離層410から取り除かれてもよい。
【0190】
図示された実施形態において、パターニングされたモールド420は、隣接層415に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。部分硬化層415の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド420の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側のすきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0191】
次いで、モールド420を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター425を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター425の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター425の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0192】
次いで、モールド420及び層415を含んでいてもよい硬化モールド組立体430は、マスター425及び処理済基板405から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体430から取り外すことができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体430をマスターパターン425及び処理済基板405(また、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体)から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体430を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0193】
モールド組立体430の熱膨張率は層415の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体430の線熱膨張(CTE)率は、TMA法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体430のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体430の熱膨張率は、1℃あたり約50ppmから約180ppmの範囲であることが判明した。
【0194】
次いで、図4Cに示されるように、マスターパターン425に対応するパターンを基板435上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体430を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー435上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム440にパターンが転写される。モールド組立体440をアクリレートフィルム435上に設置する。UV光をモールド組立体430を通して照射し、その下のアクリレートコーティング440を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体430上のパターンが硬化アクリレートモールド440に転写されるように、モールド組立体430をフィルム440から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板435又はフィルム440中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0195】
図5A、5B及び5Cは、ソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態500を概念的に示す。図示された実施形態において、繊維性材料510で強化された予備硬化シリコーン樹脂フィルム505が基板として設けられている。繊維強化シリコーン樹脂フィルム505は、上述の技術の1つ又は複数に従って形成することができる。例えば、硬化性ケイ素含有組成物の第1のフィルムを、第2のフィルムと、該第2のフィルムで含浸されている繊維性材料510とに塗布してもよい。2枚のフィルムは、上述の従来の技術を用いて塗布することができる。次いで、フィルム及び繊維性材料510を上述の技術のいずれかを使用して硬化させ、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を形成することができる。
【0196】
次いでパターニングされたモールド515を繊維強化ケイ素樹脂フィルム505に隣接して形成することができる。図示された実施形態において、パターニングされたモールド515は、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を形成するために使用される組成物と同じでも異なってもよい硬化性ケイ素含有組成物を繊維強化ケイ素樹脂フィルム505に隣接して堆積させ、該組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより形成される。例えば、ダウコーニング社(Dow Corning Corporation)からキットとして供給可能なSylgard184及び適切な架橋剤を混合して、硬化性ケイ素含有組成物を形成することができる。
【0197】
一実施形態において、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505の上に、四角形金属枠(図示せず)を設置してもよい。一実施形態において、枠の厚さは2.0mmである。厚さはモールド515の弾性層の所望の厚さにより決定することができるが、枠の厚さは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。一実施形態では、枠の内側のすきまは、6″×6″の寸法の正方形である。すきまのサイズは、後の印刷又は他のパターニングのステップにおけるパターニング領域の所望のサイズ及び形状により決定することができるが、枠のすきまのサイズは設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではない。触媒入りのSylgard184を枠のすきまに注ぎ込み、自然脱気させるために30分間室温で放置することができる。
【0198】
次いで、モールド515を形成するために使用される硬化性ケイ素含有組成物に、マスター520を接触させることができる。例えば、片面にパターンが刻印されたシリコンウエハーを、刻印されたパターンが硬化性ケイ素含有組成物に向くように硬化性ケイ素含有組成物に接触して設置することができる。一実施形態において、マスター520の背面に若干の圧力を加えることができるが、マスター520の1つ又は複数の端部が上述の金属枠上に載置されていてもよい。例えば空気循環炉中で10分間、150℃で組立体全体を硬化させることができる。
【0199】
モールド515及び繊維強化ケイ素樹脂フィルム505を含んでいてもよい硬化モールド組立体525は、マスター520から分離することができる。金属枠が存在する場合は、金属枠もモールド組立体525から取り外すことができる。繊維強化ケイ素樹脂フィルム505は基板として機能するため、第5の例示的実施形態は、硬化モールド組立体525を基板から分離する必要がないという追加の利点を有することができる。本開示の利益を得る当業者には、モールド組立体525をマスターパターン520、及び、存在する場合は金属枠又は他のあらゆる構造体から分離するために用いられる事象の具体的な順序は、本発明では重要ではなく、モールド組立体525を分離するためのいかなる順序又は技術をも使用することができることが理解される。
【0200】
モールド組立体525の熱膨張率は、繊維強化ケイ素樹脂フィルム505の存在により低下し得る。例えば、上述の複合ケイ素エラストマーモールド組立体525の線熱膨張(CTE)率は、熱機械分析(TMA)法により測定することができる。例えば、マクロ膨張プローブを備えたTA Instruments 2940 TMAを使用してモールド組立体525のサンプルの線熱膨張率を検査した。サンプルを切断してTMAサンプルステージに載置し、−50℃未満まで冷却し、次いでHe雰囲気下で5℃/分で200℃まで加熱した。1gの負荷でサンプル上に設置されたマクロ膨張プローブの鉛直変位により、寸法変化を測定した。面内CTE値のみを測定した。複合モールド組立体525の熱膨張率は、1℃あたり約5ppmから約55ppmの範囲であることが判明した。
【0201】
次いで、図5Cに示されるように、マスターパターン520に対応するパターンを基板530上に塗布、転写、又は他の方法で形成するためにモールド組立体525を使用することができる。一実施形態では、シリコンウエハー530上にスピンコートされたUV硬化性アクリレートフィルム535にパターンが転写される。モールド組立体525をアクリレートフィルム535上に設置する。UV光をモールド組立体525を通して照射し、その下のアクリレートコーティング535を硬化させた。UV硬化後、モールド組立体525上のパターンが硬化アクリレートモールド535に転写されるように、モールド組立体525をフィルム535から剥離した。しかし、本開示の利益を得る当業者には、基板530又はフィルム535中又はその上にパターンを塗布、転写、又は形成するために使用される技術は設計上の選択の問題であり、本発明では重要ではないことが理解される。
【0202】
ソフトリソグラフィーモールドを形成するための上述の技術の実施形態は、従来の実践に勝るいくつもの利点を有することができる。例えば、ガラス繊維強化シリコーン樹脂フィルムは、室温より高い温度では熱膨張率がわずか5ppm/℃から10ppm/℃である。ポリジメチルシロキサンPDMSは上述の強化樹脂フィルムに強固に接着し、微細な形状を複製し印刷するPDMSの能力が影響を受けることなく、上述の強化樹脂フィルムを含む複合構造の熱膨張率は強化シリコーン樹脂フィルムにより支配されることが可能である。さらに、絶対透過は繊維による散乱によってやや低下し得るものの、強化メチルT樹脂ベースのフィルムを含む複合モールドのUV透過スペクトルの形状はPDMSモールドの場合と類似している。したがって、上述の技術は、柔軟で熱膨張率が非常に低く、また非常に良好な接着性を有するソフトリソグラフィーモールドを形成することができる。また、複合モールド−マスクは、PMMAベースのモールドよりもずっとUVに安定であると予想される。さらに、裏打ち層の選択は、非強化シリコーン樹脂フィルムだけでなく、他の無機及び有機ポリマーフィルムにも拡張することができる。
【0203】
本発明は修正することができ、また本明細書における教示の利益を得る当業者には明らかな、異なるが同等の手法により実践することができるため、上で開示された具体的な実施形態は例示のみを目的としている。さらに、請求項に記載される事項以外は、本明細書で示された構造又は設計の詳細に限定する意図はない。したがって、上で開示された具体的な実施形態は改変又は修正可能であり、そのような変型例は本発明の範囲及び精神に含まれるものとみなされる。それに応じて、本発明において要求される保護は請求項に記載される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図1B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図1C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第1の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2D】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2E】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2F】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図2G】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第2の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図3C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第3の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図4C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第4の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5A】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5B】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【図5C】本発明によるソフトリソグラフィーモールドを形成する方法の第5の例示的実施形態を概念的に示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成される硬化性弾性シリコーン組成物を含む、組成物。
【請求項2】
前記揮発成分除去ポリマーが、ポリマーから揮発成分を除去するために真空及び熱のうち少なくとも1つに曝露されたポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記揮発成分除去ポリマーが、揮発成分除去ビニル官能性シロキサンポリマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記揮発成分除去架橋剤が、架橋剤から揮発成分を除去するために真空及び熱のうち少なくとも1つに曝露された架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤が、SiH官能基を有する揮発成分除去メチル水素シロキサンポリマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の阻害剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の阻害剤が、2−フェニル−3−ブチン−2−オール(PBO)を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の触媒を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記触媒が0.1ppmから1000ppmの濃度を有し、前記阻害剤が約0wt.%から10wt.%の濃度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
エラストマーの第1の側面にパターンを形成するステップであって、前記エラストマーは、前記エラストマーの第2の側面の近くで繊維性材料で含浸されているステップを含む方法。
【請求項11】
前記エラストマーを前記繊維性材料で含浸するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エラストマーを含浸するステップが、前記繊維性材料中又は該材料上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維性材料中又は該材料上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、その間の複数のすきまに複数のガラス繊維を含むガラス布中又は該ガラス布上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記エラストマーを形成するために、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物を硬化させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エラストマーに形成された前記パターンを使用して基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも部分的に硬化された繊維強化フィルムを形成するステップと、
エラストマーにパターンを形成するステップであって、前記エラストマーの一部は前記繊維強化フィルムに隣接しているステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記繊維強化フィルムを形成するステップが、
ケイ素含有組成物の第1の層を形成するステップと、
繊維性材料の第1の側面が前記第1の層に隣接するように前記繊維性材料を配置するステップと、
前記繊維性材料の第2の側面に隣接してケイ素含有組成物の第2の層を形成するステップであって、前記第2の側面は前記第1の側面に対置するステップと、
前記第1及び第2の層を少なくとも部分的に硬化させるステップと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層を形成するステップが、シリコーン樹脂を使用して前記第1の層を形成するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層を形成するステップが、揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成された硬化性弾性シリコーン組成物を使用して前記第1の層を形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記繊維性材料を配置するステップが、複数のガラス繊維とその間の複数のすきまとを含むガラス布を配置するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、前記繊維強化フィルムの一部に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、前記繊維強化フィルムの一部に隣接して、シリコーン樹脂と架橋剤とを含む組成物を堆積させるステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記繊維強化フィルムと前記エラストマーとを硬化させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記硬化されたエラストマーに形成された前記パターンを使用して、基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
硬質シリコーン樹脂フィルムを形成するステップと、
エラストマーにパターンを形成するステップであって、前記エラストマーの一部は前記硬質シリコーン樹脂フィルムに隣接しているステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記硬質シリコーン樹脂フィルムを形成するステップが、基板の上に硬化性組成物を堆積させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記硬化性組成物を堆積させるステップが、シリコーン樹脂を含む硬化性組成物を堆積させるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記硬化性組成物を硬化させるステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、前記硬質シリコーン樹脂フィルムの一部に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、前記硬質シリコーン樹脂フィルムの一部に隣接して、シリコーン樹脂と架橋剤とを含む組成物を堆積させるステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記エラストマーに形成された前記パターンを使用して基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項1】
揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成される硬化性弾性シリコーン組成物を含む、組成物。
【請求項2】
前記揮発成分除去ポリマーが、ポリマーから揮発成分を除去するために真空及び熱のうち少なくとも1つに曝露されたポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記揮発成分除去ポリマーが、揮発成分除去ビニル官能性シロキサンポリマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記揮発成分除去架橋剤が、架橋剤から揮発成分を除去するために真空及び熱のうち少なくとも1つに曝露された架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤が、SiH官能基を有する揮発成分除去メチル水素シロキサンポリマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の阻害剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の阻害剤が、2−フェニル−3−ブチン−2−オール(PBO)を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の触媒を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記触媒が0.1ppmから1000ppmの濃度を有し、前記阻害剤が約0wt.%から10wt.%の濃度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
エラストマーの第1の側面にパターンを形成するステップであって、前記エラストマーは、前記エラストマーの第2の側面の近くで繊維性材料で含浸されているステップを含む方法。
【請求項11】
前記エラストマーを前記繊維性材料で含浸するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エラストマーを含浸するステップが、前記繊維性材料中又は該材料上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維性材料中又は該材料上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、その間の複数のすきまに複数のガラス繊維を含むガラス布中又は該ガラス布上に硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記エラストマーを形成するために、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物を硬化させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エラストマーに形成された前記パターンを使用して基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも部分的に硬化された繊維強化フィルムを形成するステップと、
エラストマーにパターンを形成するステップであって、前記エラストマーの一部は前記繊維強化フィルムに隣接しているステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記繊維強化フィルムを形成するステップが、
ケイ素含有組成物の第1の層を形成するステップと、
繊維性材料の第1の側面が前記第1の層に隣接するように前記繊維性材料を配置するステップと、
前記繊維性材料の第2の側面に隣接してケイ素含有組成物の第2の層を形成するステップであって、前記第2の側面は前記第1の側面に対置するステップと、
前記第1及び第2の層を少なくとも部分的に硬化させるステップと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層を形成するステップが、シリコーン樹脂を使用して前記第1の層を形成するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層を形成するステップが、揮発成分除去ポリマーと少なくとも1種の揮発成分除去架橋剤とを使用して形成された硬化性弾性シリコーン組成物を使用して前記第1の層を形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記繊維性材料を配置するステップが、複数のガラス繊維とその間の複数のすきまとを含むガラス布を配置するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、前記繊維強化フィルムの一部に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、前記繊維強化フィルムの一部に隣接して、シリコーン樹脂と架橋剤とを含む組成物を堆積させるステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記繊維強化フィルムと前記エラストマーとを硬化させるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記硬化されたエラストマーに形成された前記パターンを使用して、基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
硬質シリコーン樹脂フィルムを形成するステップと、
エラストマーにパターンを形成するステップであって、前記エラストマーの一部は前記硬質シリコーン樹脂フィルムに隣接しているステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記硬質シリコーン樹脂フィルムを形成するステップが、基板の上に硬化性組成物を堆積させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記硬化性組成物を堆積させるステップが、シリコーン樹脂を含む硬化性組成物を堆積させるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記硬化性組成物を硬化させるステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、前記硬質シリコーン樹脂フィルムの一部に隣接して硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化性ケイ素含有組成物を堆積させるステップが、前記硬質シリコーン樹脂フィルムの一部に隣接して、シリコーン樹脂と架橋剤とを含む組成物を堆積させるステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エラストマーに前記パターンを形成するステップが、
前記硬化性ケイ素含有組成物の一部をマスターパターンに接触させるステップと、
少なくとも部分的に前記ケイ素含有組成物を硬化させるステップと、
前記マスターパターンを、前記少なくとも部分的に硬化されたケイ素含有組成物との接触から解除するステップと
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記エラストマーに形成された前記パターンを使用して基板上にパターンを形成するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【公表番号】特表2009−533531(P2009−533531A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505523(P2009−505523)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063651
【国際公開番号】WO2007/121006
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505425317)ダウ コーニング コーポレイシヨン (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063651
【国際公開番号】WO2007/121006
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505425317)ダウ コーニング コーポレイシヨン (9)
【Fターム(参考)】
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