説明

低誘電損失樹脂組成物、その硬化物およびそれを用いた電子部品

【課題】優れた誘電特性を持ち、かつ物理強度に優れた硬化物を与えるような低誘電損失樹脂組成物を提供すること。また、それを用いた高周波信号に対応できる電子部品を提供すること。
【解決手段】架橋成分を持つ多官能スチレン化合物と、ポリフェニレンエーテル樹脂の側鎖および末端に不飽和結合を含む熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体との混合物含む熱硬化性の低誘電損失樹脂組成物、プリプレグ、積層板、及びそれらを用いた電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波用実装材料に適した低誘電損失樹脂組成物、その硬化物およびそれを用いた電子部品等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域が高くなる傾向を示している。また、コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯が主流になり、さらなる高周波化が進められている。
【0003】
電気信号の伝送損失は誘電正接及び周波数の積に比例する。そのため使用される信号の周波数が高いほど伝送損失は大きくなる。伝送損失の増大は信号の減衰を招き、信号伝送の信頼性低下が生じる。また、信号の伝送損失は熱に変換されるため、発熱などの問題も挙げられる。そのため、高周波領域では誘電正接の極めて小さい絶縁材料が強く望まれる。
【0004】
絶縁材料の低誘電正接(誘電損失)化には分子構造中の極性基の除去が有効であり、フッ素樹脂、硬化性ポリオレフィン、シアネートエステル系樹脂、硬化性ポリフェニレンエーテル、ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等数多くの構造が提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率および誘電正接が共に低く、高周波信号を扱う基板材料に使用されている。
【0005】
これに対し、有機溶剤に可溶で取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率、低誘電正接の樹脂も種々検討されてきた。例えば、ポリブタジエン等のジエン系ポリマーを、ガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例がある。
【0006】
また、ノルボルネン系付加型重合体にエポキシ基を導入し、硬化性を付与した環状ポリオレフィンの例がある。シアネートエステル、ジエン系ポリマーおよびエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例もある。
【0007】
また、ポリフェニレンオキサイド、ジエン系ポリマーおよびトリアリルイソシアネートからなる変性樹脂の例、アリル化ポリフェニレンエーテルおよびトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例がある。
【0008】
また、ポリエーテルイミドとスチレン、ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンとをアロイ化した例がある。ジヒドロキシ化合物とクロロメチルスチレンからウイリアムソン反応で合成した、例えば、ヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテルとノボラックフェノール樹脂からなる樹脂組成物など多数が挙げられる。
【0009】
これに対して硬化性ポリフェニレンは耐熱性、誘電特性を両立できる材料として開発されており、例えば特許文献1や特許文献2が報告されている。しかし、非特許文献1に記載の硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂は構造の一部にハロゲンが残存するため、通常のポリフェニレンエーテルと比較して誘電損失が高くなる。また、特許文献2には、ビスフェノール型の低分子オリゴマーによる溶解性、成型加工性が向上すると述べられているが、低誘電損失、高耐熱性を満足するためには分子量をより高くする必要がある。
【0010】
ポリフェニレンエーテルは一般的な低沸点の汎用溶剤にはほとんど溶けず、配線基板製造工程におけるワニス作製時にクロロホルム(ハロゲン系溶剤)や熱トルエン等を使用することが多く、環境、安全面に関して課題が残されている。
【0011】
非特許文献1によれば、ポリ(2、6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテル)(以下ポリフェニレンエーテルと略記)の側鎖の一部に不飽和結合を含む共重合体とすることで変性を試みている。側鎖の修飾により熱硬化性の樹脂となるが、主鎖の構造がポリフェニレンエーテルであるため、得られる樹脂の誘電損失は市販のポリフェニレンエーテルより低くすることは難しい。
【0012】
本発明では、上記の他の方法として、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いた複合化物およびその重合方法について検討した。また、それを用いた電子部品について検討した。
【0013】
【特許文献1】特開平05−306366号公報
【特許文献2】特開2003−155340号公報
【特許文献3】特開2003−342311号公報
【非特許文献1】T.Fukuhara、Y.Shibasaki、S.Ando、M.Ueda、Polymer、45(2004)
【非特許文献2】S.Amou、S.Yamada、A.Takahashi、A.Nagai、M.Tomoi、J.Appl.Polym.Sci.、92(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
樹脂の側鎖もしくは末端に不飽和結合を含む炭化水素基を持つ熱硬化性のポリフェニレンエーテル重合体は、樹脂単体で熱硬化性を有するものの、誘電損失は熱可塑性のポリフェニレンエーテルよりも高くなる傾向があった。これは、いずれの材料も主鎖がフェニレンエーテル骨格であるため、分子構造による低誘電損失化は難しいためと考えられる。また、側鎖の分子運動や分子量、不純物などの影響によって、樹脂の誘電損失がポリフェニレンエーテルよりも高くなると考えられる。また、変性によって熱硬化基を導入した変性ポリフェニレンエーテルは架橋基の導入量、導入位置などの制御が難しく、硬化前に室温で可溶な溶媒がクロロホルム等のハロゲン系溶剤に限られるなど、溶解性にも課題がある。
【0015】
特許文献3では、多官能のスチレン基を有する架橋成分を含み、ポリフェニレンオキサイド(ポリフェニレンエーテル)などの高分子量体を組み合わせることにより低誘電損失の硬化物を与える樹脂組成物とする方法が報告されている。これは、多官能スチレン化合物の硬化物を構造の中に含むことで、硬化物の低誘電損失化を達成できるものである。
【0016】
多官能スチレン化合物の硬化物は極めて低い誘電率と誘電正接を有し、その値は測定周波数10GHzにおいて誘電率が約2.5、誘電正接が0.002未満である。特に、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテルは相溶性に優れていることから、当該硬化物とポリフェニレンエーテルは複合化が容易に行えると考えられる。また、多官能スチレン化合物の含有量が高くなるにつれて、樹脂組成物の硬化物の誘電損失は低くなる。
【0017】
しかし、非特許文献2によれば、熱硬化は多官能スチレン化合物にのみ生じるため、熱硬化に関与しなかったポリフェニレンエーテルと硬化した多官能スチレン化合物の一部で極めて微小な領域で相分離を起こすことが報告されている。相分離構造が生じることにより、二相の間に界面が生じ、機械強度などの樹脂特性が低くなるなどの影響が考えられる。また、ポリフェニレンエーテルは熱硬化反応に関与しないため、樹脂の界面を介して溶剤に侵されやすく、耐薬品性は低いと考えられる。
【0018】
一方で、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は熱硬化性の樹脂であり、硬化後にはハロゲン系溶剤にも不溶となる。また、熱硬化前の熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は室温でトルエン等の非ハロゲン系溶剤に溶解することから、プロセス性に優れた樹脂である。そのため、多官能スチレン化合物と熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体からなる樹脂組成物について検討した。
【0019】
また、非特許文献2によると、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性多官能スチレン化合物を複合化することで、低誘電損失の樹脂硬化物を得たと報告している。しかし、硬化物中のスチレン相とポリフェニレンエーテル相の間で相分離構造が生じるため、界面の生成によって樹脂の強度は低下すると推定できる。また、熱可塑性のポリフェニレンエーテルは熱架橋反応に関与しないため、ポリフェニレンエーテルの含有量が増すと、樹脂の高温安定性および耐薬品性が低くなる。また、硬化前に室温で可溶な溶媒がクロロホルム等のハロゲン系溶剤に限られるなど、溶解性にも課題がある。そのため、樹脂界面の生成を更に抑制し、かつ高温安定性および耐薬品性の高い樹脂組成物の開発が必要と考えられる。
【0020】
本発明は、これらの課題を達成できるような、樹脂組成物およびその硬化物を提供することを課題とする。また、それを用いた高周波信号に対応できる電子部品等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の課題は、式(1)で示される多官能スチレン化合物と、式(2)で示されるフェノール誘導体のランダム共重合体を含む硬化性組成物によって達成される。
【0022】
式(1)で示される架橋成分を含む多官能スチレン化合物は以下のとおりである。
【0023】
【化1】

【0024】
式(1)は架橋成分を含む多官能スチレン化合物を表し、Rは水素あるいは炭化水素基を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から6の炭化水素基を表し、R、R、R、Rは同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から20の炭化水素基を表し、nは2以上の整数を表す。
【0025】
また、式(2)で示される熱硬化性のフェノール誘導体のランダム共重合体は、以下のとおりである。このフェノール誘導体のランダム共重合体の側鎖および末端に不飽和結合を含む熱硬化性のポリフェニレンエーテル重合体として、式(2)で示される熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体が挙げられる。
【0026】
【化2】

【0027】
式(2)はフェノール誘導体のランダム共重合体で、l、mは重合度であり1以上の整数を表し、共重合体は分子量に分布を持つ。R’、R、R10は水素あるいは炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14は同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から9の炭化水素基であるが少なくとも1つ以上が炭素数2から9の不飽和炭化水素を含む炭化水素基である。
【0028】
式(2)に示した熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は、側鎖に熱硬化性の不飽和炭化水素を含む構造であれば、既知の物質を用いてもよい。具体的な例としては、非特許文献1のようなアリル基を側鎖に持つポリフェニレンエーテル共重合体が挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、優れた誘電特性を持ち、かつ従来の低誘電樹脂組成物よりも物理強度に優れた硬化物を与えるようなポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂組成物およびその硬化物を提供することができる。また、それを用いた高周波信号に対応できる電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の樹脂組成物には、前記式(1)で示される架橋成分と式(2)で示される共重合成分の他、スチレン基を重合し得る硬化触媒及び/または、スチレン基の重合を抑制し得る重合禁止剤を添加することにより硬化性の向上、保存安定性の向上を図ることができる。
【0031】
また、本発明における低誘電損失樹脂組成物は従来の一般的な手法を用いることができる。代表的な溶剤としてはハロゲン系化合物、芳香族炭化水素系化合物などがあるが、特にこれに限定せず用いることができる。ハロゲン系化合物としてはジクロロメタン、クロロホルム、四塩化メチル等があげられる。また非ハロゲン系炭化水素ではトルエン、キシレン、リモネン等があげられる。これらの溶剤に共重合体は溶解あるいは均一分散させてワニスを作製することができる。
【0032】
上記に挙げた溶媒のうち、ポリフェニレンエーテル樹脂はハロゲン系溶剤に可溶であることが知られているが、環境への負荷や溶剤の毒性などを考慮したときに、ハロゲン系溶剤は炭化水素系溶剤と比較してより負荷が高いと考えられている。そのため、ハロゲンを含まない非ハロゲン系溶剤を用いることがより望ましい。
【0033】
本発明において得られた低誘電損失樹脂組成物は、有機溶剤に室温で少なくとも5重量%以上、より好ましくは10重量%、更に好ましくは20重量%以上溶解可能であるものが好ましい。従って、有機溶剤と、該有機溶剤に溶解した上記低誘電損失樹脂を含む樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は、必要に応じて着色剤、ラジカル架橋反応触媒、架橋剤等の1種以上の成分を含んでもよい。
【0034】
ワニス作製にあたっては、上記溶剤に本発明の樹脂組成物を所定量溶解あるいは均一分散させ、さらに必要に応じて複数の成分を加えることが可能である。また熱硬化物の架橋反応を促進するため、硬化触媒ないしは架橋剤、あるいは保存安定性を高めるために重合禁止剤の添加が挙げられる。その他必要に応じて、フィラー等の充填剤、着色剤、難燃剤、接着付与剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕捉剤、重合禁止剤、酸化防止剤、粘度調整剤等の1種以上を添加することができる。
【0035】
実際に多層配線基板に本発明の樹脂を適用するには、有機溶剤に溶解してワニスを調整し、これをガラスクロスなどの繊維基材に含浸し、乾燥し、プリプレグを作製する。本発明の樹脂組成物は加熱により硬化する熱硬化性樹脂組成物であり、硬化させる前には溶剤に可溶で、ワニスを調整することが可能であり、又それを用いてプリプレグを作ることが出来る。プリプレグは、ガラスクロス等の基材にワニスを含浸し、乾燥して用いる。これを公知の方法で、配線層と積層して多層配線基板を作る。
【0036】
本発明は前記架橋成分に誘電率が異なる種々の絶縁材料を分散した絶縁層を有する電気部品を包含する。このような構成にすることによって、絶縁層の誘電正接の増加を抑制しつつ、誘電率を容易に調整することができる。本発明の樹脂組成物ではブレンドする高分子量体の種類、添加量にて1GHzにおける誘電率を2.3〜3.0程度の範囲で調整することができる。更に絶縁層に1GHzにおける誘電率が1.0〜2.2の低誘電率絶縁体を分散した高周波用電気部品では、絶縁層の誘電率を1.5〜2.2程度に調整することが可能である。
【0037】
本発明の樹脂組成物もしくは硬化物を用いることにより、低誘電損失の特性を維持しながら、耐熱性、強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。これを絶縁層のマトリックス樹脂に用いた配線基板はエポキシ樹脂等の従来品と同じ加工性、成形性で製造でき、かつ電気特性は従来のエポキシ樹脂に比べて誘電損失の極めて低い性能を有している。また、はんだ耐熱性に代表される熱的性質も従来のエポキシ配線基板と同等か、それ以上の特性を有していることが確認できるようになる。
【0038】
本発明の電子部品は0.3〜100GHzの電気信号を伝送する導体配線と式(1)で表される架橋成分及び式(2)で表される共重合成分とからなるの架橋構造体を含有する絶縁硬化層とから形成される高周波用電気部品である。架橋成分として極性基を含まない多官能スチレン化合物を用いることによって極めて低い誘電率と誘電正接を有する絶縁層が形成できる。
【0039】
本架橋成分は揮発性を有していないため、ジビニルベンゼンのように揮発による絶縁層の特性のばらつきが生じず、これによって高周波用電子部品の低誘電損失性が安定して得られる。架橋成分の重量平均分子量(GPC、スチレン換算値)は1000以下であることが好ましい。これにより架橋成分の溶融温度の低温化、成型時の流動性の向上、硬化温度の低温化、種々のポリマー、モノマー、充填材との相溶性の向上等の特性が改善され、加工性に富んだ低誘電正接樹脂組成物となる。これにより種々の形態の高周波用電気部品の製造が容易となる。
【0040】
架橋成分の好ましい例としては、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、1、4−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1、4−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1、3−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1、3−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニルエチル)−3−(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、ビスビニルフェニルメタン、1、6−(ビスビニルフェニル)ヘキサン及び側鎖にビニル基を有するジニルベンゼン重合体(オリゴマー)等が挙げられる。
【0041】
前述の多官能スチレン化合物の架橋体は極めて低い誘電正接を有しており、不純物の含有量にもよるが、10GHzにおける誘電正接の値は0.0005〜0.0025である。これにより、本発明の高周波用電子部品の絶縁層は添加する他の成分の影響を受けて誘電正接の値は変動するものの、10GHzにおける誘電正接の値を0.0005〜0.0025と極めて低い値に調整できる。
【0042】
また、本発明では絶縁層に高分子量体を分散させることによって、絶縁層に強度、伸び、導体配線への接着力、フィルム形成能を付与することができる。これによって多層配線板の作成に必要なプリプレグ、導体箔とプリプレグを積層して硬化した導体箔付き積層板(以下、積層板と略す)の作製が可能となるほか、薄膜形成プロセスによる高密度多層配線基板の作成も可能となる。
【0043】
複合化物として一般に用いられる樹脂としては2、6−ジメチルフェノールの重合体(2、6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテル)が上げられる。この樹脂の誘電特性は優れた値を示すが、単体では熱可塑性樹脂で融点が200℃付近であり、これを用いた配線基板は部品実装におけるリフロー工程(最高260℃付近)で絶縁層の変形、流動が起き、耐熱的に問題がある。また配線基板として機械的強度(強靭性)が必要であり、分子量は5千以上、より好ましくは1万以上であることが望ましい。それより分子量が低いと、樹脂の十分な強度を得ることが難しくなる。しかし2、6−ジメチルフェノールの重合体は分子量が1万以上になると溶剤に溶けにくくなり、クロロホルム(ハロゲン系溶剤)や熱トルエン(50℃以上)等の扱いが困難な溶剤を用いなければならず、従来の基板作製に一般的に用いられている非ハロゲン系で、かつ沸点が150℃以下の有機溶剤の適用は困難である。
【0044】
また、2、6−ジメチルフェノールの重合体はBVPEが硬化した後も熱可塑性樹脂であるため、2、6−ジメチルフェノールの重合体およびそれを含む複合化物は軟化による変形およびハロゲン系溶媒やトルエン等の溶媒によって溶解もしくは膨潤を起こしやすい。そのため、BVPEの複合化物として2、6−ジメチルフェノールの共重合体を用いた場合でも、複合化物の溶解性、および硬化物の耐薬品性は低いと考えられる。以上の点を解決するため、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体を用いた。
【0045】
複合化に用いる熱硬化性ポリフェニレンエーテルとして、本報告のような共重合体を用いることで、熱硬化基を定量的に導入することができる。そのため、ポリフェニレンエーテルを変性させて熱架橋基を導入した従来の熱硬化性ポリフェニレンエーテルと異なり、任意に架橋基の種類および量、架橋基の結合位置などについて再現性よく制御することが可能となる。また、室温でトルエンに可溶であり、従来のポリフェニレンエーテルと比較して取り扱い性にも優れた樹脂である。
【0046】
また、熱硬化反応時に多官能スチレン化合物と不飽和結合を含む炭化水素基が反応するため、熱硬化反応によってポリフェニレンエーテル共重合体と多官能スチレン化合物が結合する。これによって相分離の形成が抑制されてサイズが小さくなり、界面の形成が起こりにくくなると考えられ、樹脂強度の向上、耐薬品性の向上などが期待できる。
【0047】
以上の点から、酸化カップリング共重合によって得られる熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は多官能スチレン化合物の複合化物として適していると考えられる。複合化により、10GHzにおける誘電正接の値は0.0005〜0.004と極めて低い値に調整できる。
【0048】
本発明はフェノール誘導体のランダム共重合体例えば熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体と、多官能スチレン化合物からなる樹脂組成物、硬化性の低誘電損失樹脂、当該樹脂の硬化物、およびそれらの樹脂組成とほかの成分を含む樹脂組成物、電子部品を提供する。
【0049】
以下に、複合化に最も適した熱硬化性ポリフェニレンエーテルの条件について述べる。熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体は、非特許文献1などに記載の方法により得ることができるが、熱架橋基を側鎖に持つモノマーとの共重合により樹脂の誘電損失はポリフェニレンエーテルよりも高くなる傾向があった。これは、いずれの材料も主鎖がフェニレンエーテル骨格であるため、分子構造による低誘電損失化は難しいためと考えられる。また、非特許文献1に記載のような方法によって得られた熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体では、重合過程における低分子量体の生成や、アリル基との連鎖移動反応、分岐構造の形成などの副反応が起こる。また、これによって側鎖の分子運動が起こり、樹脂の誘電損失が高くなると考えられる。
【0050】
樹脂の酸化カップリング重合方法として、反応系内における重合触媒の比率を調整する方法がある。すなわち、従来のPPE酸化カップリング重合では、塩化銅(I)とピリジンの混合物を触媒として用いるが、従来の合成条件よりも極端に塩化銅(I)の割合を低くすることによって、下げることが可能となる。
【0051】
以下にその具体的方法について述べる。まず、モノマー/塩化銅(I)のモル比を60以上、より好ましくは80以上とする。従来条件のモル比では6〜8程度であることから、モノマー成分が塩化銅成分に対して極端に多く存在する条件で合成を行うことにより、酸化カップリング重合の副反応を抑制し、分子量分布の狭い樹脂を合成することが可能となる。
【0052】
また、ピリジンなどのアミン配位子/塩化銅(I)のモル比を300以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは1000以上とすることである。従来条件のモル比では100程度であることから、極端にアミン配位子の比率を高くすることで、副反応の抑制効果が上昇する。このときに得られる樹脂の分子量分布はより狭くなり、数平均分子量20、000以上の樹脂においても、極めて分子量分布の狭い樹脂を容易に重合することが可能となる。また、上記の分子量分布の抑制効果は、式(2)に示される構造中に少なくとも1つ以上不飽和炭化水素を有する樹脂に対して有効である。
【0053】
また、本発明において得られた樹脂について既知の精製処理を行うことにより、樹脂内の不純物が除去され、より一層の低誘電損失化が見込める。本発明は、熱硬化性ポリフェニレンエーテルの精製処理の方法が限定されるものではない。
【0054】
また、本発明において用いられる共重合体は、酸化カップリング共重合によって直接得ることができるため、簡便かつ安価に熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体を得ることが可能である。また、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体はランダム共重合によって得ることができるため、親溶媒性基が樹脂中に分散して存在する。そのため、従来の熱硬化性ポリフェニレンエーテルと比較して、溶媒への溶解性が優れており、クロロホルム等のハロゲン系有機溶媒および、トルエン、キシレン等の非ハロゲン系有機溶媒に室温で溶解することが可能である。
【0055】
また、親溶媒性の高い熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は硬化前の室温もしくは加熱によって液化した多官能性スチレン中にも溶解すると考えられる。そのため、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は、多官能性スチレンと容易に混合し、硬化前の段階でより均一な複合化物となりうる。均一な複合化と熱架橋反応によって複合化物の相分離サイズが小さくなり、多官能スチレンとポリフェニレンエーテル、もしくは多官能スチレンと従来の熱硬化性ポリフェニレンエーテルの複合化物などと比較して樹脂の耐薬品性や機械強度などの樹脂特性がより改善されるものと期待できる。
【0056】
熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の溶解性は、樹脂の分子量による影響が大きい。熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は側鎖の一部にかさ高い基を持つため、有機溶媒への溶解性が高まる。しかし、樹脂の分子量が大きくなると、共重合体とした場合でも樹脂の溶媒への溶解性が低下するため、溶液中に不溶部分を生じる。そのため、非ハロゲン系溶媒を用いる場合には、側鎖の立体構造を考慮し、構造樹脂の溶解性を損なわない分子量とすることが必要となる。本発明における複合化物として適した熱硬化性ポリフェニレンエーテルの分子量は数平均分子量で5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000、更に好ましくは20,000〜40,000の共重合体樹脂である。
【0057】
熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体に含まれる低分子量体や分岐構造が多くなると、樹脂の分子量分布が広くなる。低分子量体や分岐構造は高周波信号により振動が起こりやすく、樹脂の誘電損失が高くなる。そのため、上記樹脂は、分子量分布を10未満(Mw/Mn<10)、より好ましくは、5以下(Mw/Mn≦5)、更に好ましくは3以下(Mw/Mn≦3)の共重合体樹脂である。
【0058】
熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の熱架橋性側鎖は任意に定めることができるが、熱架橋性側鎖の数が多いと、高周波による振動の影響を受けやすくなると考えられる。また、熱架橋性側鎖の数が少ないと、熱架橋反応による相分離破壊が起こりにくくなるため、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の熱硬化基を含む繰り返し単位の共重合比は3モル量%以上50モル量%以下とすることが望ましく、より望ましくは5〜30モル量%、更に望ましくは10〜20モル量%である。
【0059】
多官能スチレン化合物と熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の複合化重量比は任意に定めることができる。多官能スチレン化合物の複合化量が多くなるにつれて樹脂組成物の硬化物の誘電損失は低くなるが、複合化条件によっては硬化物に白濁が生じやすくなる。これは高分子量体である熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の重量比が低くなると、多官能スチレン化合物の単体での硬化が起こり、相分離が生じたためと推定できる。硬化物の白濁を抑制するには熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の重量比をある条件以上に高めることが有効である。具体的には、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の重量比を10重量%以上とすることが望ましく、より望ましくは20重量%以上、更に望ましくは25重量%以上である。
【0060】
以上の性能を満たす熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体を複合化物として用いることで、従来のポリフェニレンエーテルや変性ポリフェニレンエーテルを用いた場合に比べて飛躍的に優れた誘電特性、易溶解性、高耐熱性を得ることができた。熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体は、熱硬化による耐熱性に加え、側鎖構造による樹脂溶解性の向上についても期待できることから、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体が樹脂組成物を形成する上でより適していると考えられる。
【0061】
熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の具体的な構造は、フェノール誘導体のランダム共重合体であり、R’、R、R10は水素あるいは炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14は同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から9の炭化水素基であるが少なくとも1つ以上が炭素数2〜9の不飽和炭化水素を含む炭化水素基である。耐熱性、溶解性に優れた材料を提供することができる。より好ましくはR、R10がメチル基である、2、6−ジメチルフェノールとフェノール誘導体のランダム共重合体である。上記共重合体は酸化カップリング重合によって比較的容易に合成でき、構造中に含まれる官能基が短いため、高周波信号による側鎖振動の影響が最小限に抑えられると考えられる。
【0062】
不飽和炭化水素を含む官能基の具体的な例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基等の炭素数2〜9の様々な炭化水素基で不飽和結合を有する置換基である。これらの不飽和結合は熱により架橋反応が起き、配線基板の耐熱性向上に寄与する、すなわち配線基板において部品実装時のリフロー工程(最高260℃付近)で絶縁層の変形、流動を抑制できる。またメチル基に比べて分子鎖を長くした置換基を導入することで、溶剤に対する溶解性も向上できる。
【0063】
芳香族炭化水素を含む官能基の具体的な例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、スチリルメチル基等がある。これらの芳香族炭化水素基の導入により、共重合体の耐熱性が向上し、かつ置換基の効果で溶剤に対する溶解性も向上する。
【0064】
本発明において用いられる共重合体の具体的な例としては、以下に挙げるような物質がある。(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−ビニル−6−メチルフェニルエーテル)の共重合体、2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−ビニル−6−スチリルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−アリル−6−メチルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−アリル−6−フェニルフェニルエーテル)の共重合体、2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−アリル−6−スチリルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジビニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジアリルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジイソプロペニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジブテニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジイソブテニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジペンテニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジイソペンテニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジノネニルフェニルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジスチリルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2、6−ジスチリルメチルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2―メチルー6−スチリルエーテル)の共重合体、(2、6−ジメチルフェニルエーテル)と(2−メチルー6−ジスチリルメチルエーテル)の共重合体、等が挙げられる。
【0065】
ワニス作製にあたっては、上記溶剤に本発明の共重合体を所定量溶解あるいは均一分散させ、さらに必要に応じて複数の成分を加えることが可能である。また熱硬化物の架橋反応を促進するため、架橋反応触媒もしくは架橋剤等を添加することができる。添加量は特に制限はないが共重合体100重量部に対して0.01〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部程度、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部程度である。
【0066】
本発明に用いられる樹脂組成物は、硬化触媒を添加しなくとも硬化することができるが、硬化触媒を添加することによって、多官能スチレン化合物の硬化を促進することができる。これにより低温での硬化が可能となる。その添加量は誘電率、誘電正接に影響を与えない範囲に設定することが好ましく、樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100重量部として0.0005〜10重量部、より好ましくは0.0005〜10重量部である。
【0067】
スチレン基の重合を開始し得るカチオンまたはラジカル活性種を、熱または光によって生成する硬化触媒の例を以下に示す。カチオン重合開始剤としては、BF、PF、AsF、SbFを対アニオンとするジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩および脂肪族スルホニウム塩が挙げられ、こうした市販品としては旭電化工業製SP−70、172、CP−66、日本曹達製CI−2855、2823、三新化学工業製SI−100LおよびSI−150L等を使用することができる。
【0068】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインまたはベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物、アセトフェノンまたは2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物、チオキサントンまたは2、4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系化合物、4、4’−ジアジドカルコン、2、6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンまたは4、4’−ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、アゾビスイソブチルニトリル、2、2−アゾビスプロパン、m、m’−アゾキシスチレンまたはヒドラゾンのようなアゾ化合物、並びに、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンまたは2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキシドのような有機過酸化物等が挙げられる。
【0069】
特に、官能基を持たない化合物の水素引き抜きを生じさせ、架橋成分と高分子量体間の架橋をもたらし得る有機過酸化物またはビスアジド化合物を添加することが望ましい。また、本発明に用いられる樹脂組成物について、架橋剤を用いることで樹脂組成物同士の架橋反応による結びつきが強くなり、硬化を促進することができる。その添加量は誘電率、誘電正接に影響を与えない範囲に設定することが好ましく、樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100重量部として0.0005〜10重量部、より好ましくは0.0005〜10重量部とすることが望ましい。
【0070】
架橋剤の成分として、架橋剤の例としては、3、5一トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート等があげられる。
【0071】
また、本発明に用いられる樹脂組成物について、重合禁止剤を用いることで樹脂組成物の保存安定性を増す作用を有するものである。その添加量は誘電特性、硬化時の反応性を著しく阻害しない範囲が好ましく、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100重量部に対し、0〜10重量部、より好ましくは0.0005〜5重量部とすることが望ましい。重合禁止剤を前記範囲で添加すると、保存時の余計な架橋反応を抑制することができ、また硬化時に著しい硬化障害をもたらすこともない。
【0072】
かかる重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類および芳香族ジオール類が挙げられる。
【0073】
本発明に用いられる難燃剤は、特に制限はなく、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等の燐酸エステル、縮合燐酸エステルである。こうした市販品としては、大八化学製のPX−200、PX−201、PX−202、CR−741C、日本化学工業製の赤燐粒子:ヒシガードTP−A10等が使用できる。特に常温で固体の物質を用いることが好ましい。これにより誘電正接の増加を抑制することができる。
【0074】
その他必要に応じて、フィラー等の充填剤、着色剤、接着付与剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、イオントラッパー、重合禁止剤、酸化防止剤、粘度調整剤等を添加することができる。このとき、添加物を加えた樹脂組成物の硬化物について、10GHzの誘電正接が0.0005〜0.005となることが望ましい。
【0075】
ここで配線基板の製造方法としては二仕様に分けることができる。ひとつは得られたワニスを補強材に含浸塗工して、プリプレグを作製する方法である.さらにもうひとつは銅箔等に直接塗り、絶縁層としては補強材のない樹脂のみの基板である。本発明では特に限定はないが、多くの実装部品を搭載するリジッド基板の場合は補強材を用いることが多い。またフレキシブル基板ないしはビルドアップ基板を構成するときは補強材を用いないことが多い。補強材としては現在配線基板として一般に適用されている織布、不織布、不織紙、フィルム等を用いることができる。代表的なものとしてはEガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、シリカガラス、Aガラス、Qガラス等の無機酸化物、ポリイミド、ポリアラミド等の有機物等が挙げられる。
【0076】
本発明では絶縁層に多官能スチレン化合物と熱硬化性ポリフェニレンエーテルを分散させることによって、絶縁層に強度、伸び、導体配線への接着力、フィルム形成能を付与することができる。これによって多層配線板の作製に必要なプリプレグ、導体箔とプリプレグを積層して硬化した導体箔付き積層板(以下、積層板と略す)の作製が可能となるほか、薄膜形成プロセスによる高密度多層配線基板の作製も可能となる。
【0077】
実際に多層配線基板に本発明の樹脂を適用するには、有機溶剤に溶解してワニスを調整し、これをガラスクロスなどの繊維基材に含浸し、乾燥し、プリプレグを作製する。これによって、多層配線基板用低誘電損失樹脂が提供される。この熱硬化性樹脂は、硬化させる前には溶剤に可溶で、ワニスを調整することが可能であり、又それを用いてプリプレグを作ることが出来る。プリプレグは、ガラスクロス等の基材にワニスを含浸し、乾燥して用いる。これを公知の方法で、配線層と積層して多層配線基板を作る。
【0078】
本発明は前記架橋成分に誘電率が異なる種々の絶縁材料を分散した絶縁層を有する電気部品を包含する。このような構成にすることによって、絶縁層の誘電正接の増加を抑制しつつ、誘電率を容易に調整することができる。本発明の樹脂組成物ではブレンドする高分子量体の種類、添加量にて1GHzにおける誘電率を2.3〜3.0程度の範囲で調整することができる。更に絶縁層に1GHzにおける誘電率が1.0〜2.2の低誘電率絶縁体を分散した高周波用電気部品では、絶縁層の誘電率を1.5〜2.2程度に調整することが可能である。絶縁層の誘電率を低減することにより、電気信号の一層の高速伝送が可能となる。これは電気信号の伝送速度が誘電率の平方根の逆数と比例関係にあるためであり、絶縁層の誘電率が低いほど伝送速度は高くなる。
【0079】
前記低誘電率絶縁体としては低誘電率樹脂粒子、中空樹脂粒子、中空ガラスバルーン、及び/又は空隙(空気)が好ましく、その粒子サイズは絶縁層の強度、絶縁信頼性の観点から、平均粒径0.2〜100μm、より好ましくは0.2〜60μmであることが好ましい。低誘電率樹脂粒子の例としてはポリテトラフルオロエチレン粒子、ポリスチレン−ジビニルベンゼン架橋粒子等が挙げられ、中空粒子としては中空スチレン−ジビニルベンゼン架橋粒子、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン等が挙げられる。低誘電率絶縁層は高速伝送性が要求される半導体装置の封止樹脂及びチップ間を電気的に接続するMCM基板等の配線、高周波用チップインダクタ等の回路の形成に適している。
【0080】
一方、本発明では絶縁層中に1GHzにおける誘電率が3.0〜10.0の高誘電率絶縁体を分散することによって誘電正接の増大を抑制しつつ、誘電率が3.1〜20の高誘電率絶縁層を有する高周波用電気部品を作製することができる。絶縁層の誘電率を高くすることによって回路の小型化、コンデンサの高容量化が可能となり高周波用電気部品の小型化等に寄与できる。高誘電率、低誘電正接絶縁層はキャパシタ、共振回路用インダクタ、フィルター、アンテナ等の形成に適している。
【0081】
本発明に用いる高誘電率絶縁体としては、セラミック粒子または絶縁処理施した金属粒子が挙げられる。具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セラミックス粒子;例えばMgSiO、Al、MgTiO、ZnTiO、ZnTiO、TiO、CaTiO、SrTiO、SrZrO、BaTi、BaTi、BaTi0、Ba(Ti、Sn)20、ZrTiO、(Zr、Sn)TiO、BaNdTi14、BaSmTiO14、Bi−BaO−Nd−TiO系、LaTiO7、BaTiO、Ba(Ti、Zr)O系、(Ba、Sr)TiO系等の高誘電率絶縁体を挙げることができる。
【0082】
同様に、絶縁処理を施した金属微粒子;例えば金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、Mn−Mg−Zn系、Ni−Zn系、Mn−Zn系、カルボニル鉄、Fe−Si系、Fe−Al−Si系、Fe−Ni系等を挙げることができる。
【0083】
高誘電率絶縁体の粒子は破砕、造粒法または熱分解性金属化合物を噴霧、熱処理して金属微粒子を製造する噴霧熱分解法(特公昭63−31522号、特開平6−172802号、特開平6−279816号)等で作製される。噴霧熱分解法では出発材料である金属化合物、例えばカルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等と、形成された金属と反応してセラミック化するホウ酸、珪酸、リン酸あるいは、酸化後にセラミック化する各種金属塩を混合して噴霧熱分解処理することによって表面に絶縁層を有する金属粒子を形成することができる。
【0084】
高誘電率絶縁体の平均粒径は0.2〜100μm程度が好ましく、絶縁層の強度、絶縁信頼性の観点から、平均粒径0.2〜60μmが一層好ましい。粒径が小さくなると樹脂組成物の混練が困難となり、大きすぎると分散が不均一となり、絶縁破壊の起点となり、絶縁信頼性の低下を招く場合がある。高誘電率粒子の形状は、球形、破砕、ウイスカ状のいずれでもよい。以下、本発明を実施例、比較例により詳細に説明する。
【0085】
以下に実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。使用した試薬の名称、合成方法、ワニスの調製法および硬化物の評価方法を説明する。
【0086】
(1)1、2−ビス(ビニルフェニル)エタン(以下、BVPEと呼ぶ)の合成
500mlの三つ口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)を採り、滴下ロート、窒素導入管およびセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。
【0087】
次ぎに、乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジに採り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(VBC、東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で20時間攪拌を続けた。反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレーターで濃縮した。
【0088】
濃縮溶液をヘキサンで希釈し、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。
【0089】
脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、真空乾燥してBVPEを得た。得られたBVPEはm−m体(液状)、m−p体(液状)、p−p体(結晶)の混合物であり、収率は90%であった。1H−NMRによってその構造を調べたところ、その値は文献値と一致した。このBVPEを架橋成分として用いた。
【0090】
(2)ポリ(2−アリル−6−メチルフェノール−co−2、6−ジメチルフェノール)、以下、これをアリル化ポリフェニレンエーテルと呼ぶ)、2−アリル−6−メチルフェノール共重合比5mol%の合成
攪拌子を入れた2口フラスコに塩化銅(I)0.040g(0.38mmol)、トルエン150ml、ピリジン:100ml(1.24mol)を加え、50ml/minの酸素雰囲気下500〜800rpmで攪拌した。2、6−ジメチルフェノール:3.48g(28.5mmol)、2−アリル−6−メチルフェノール:0.23g(1.5mmol)を加え、25℃、酸素雰囲気下で90分攪拌した。反応終了後、大過剰の塩酸/メタノールに沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、トルエンに溶解させ、不溶物を濾別した。再びトルエンに溶解後、大過剰の塩酸/メタノールに再沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、110℃/6時間真空乾燥して収率90%の白色固形物を得た。得られた固形物はMn=22、000、Mw/Mn=2.2であった。
【0091】
(3)ポリ(2−アリル−6−メチルフェノール−co−2、6−ジメチルフェノール)(以下、これをアリル化ポリフェニレンエーテルと呼ぶ)、2−アリル−6−メチルフェノール共重合比10mol%の合成
攪拌子を入れた2口フラスコに塩化銅(I)0.040g(0.38mmol)、トルエン150ml、ピリジン:100ml(1.24mol)を加え、50ml/minの酸素雰囲気下500〜800rpmで攪拌した。2、6−ジメチルフェノール:3.30g(27.0mmol)、2−アリル−6−メチルフェノール:0.45g(3.0mmol)を加え、25℃、酸素雰囲気下で90分攪拌した。反応終了後、大過剰の塩酸/メタノールに沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、トルエンに溶解させ、不溶物を濾別した。再びトルエンに溶解後、大過剰の塩酸/メタノールに再沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、110℃/6時間真空乾燥して収率90%の白色固形物を得た。得られた固形物はMn=24、000、Mw/Mn=2.4であった。
【0092】
(4)ポリ(2−アリル−6−メチルフェノール−co−2、6−ジメチルフェノール)(以下、これをアリル化ポリフェニレンエーテルと呼ぶ)、2−アリル−6−メチルフェノール共重合比20mol%の合成
攪拌子を入れた2口フラスコに塩化銅(I)0.040g(0.38mmol)、トルエン150ml、ピリジン:100ml(1.24mol)を加え、50ml/minの酸素雰囲気下500〜800rpmで攪拌した。2、6−ジメチルフェノール:2.93g(24.0mmol)、2−アリル−6−メチルフェノール:0.90g(6.0mmol)を加え、25℃、酸素雰囲気下で90分攪拌した。反応終了後、大過剰の塩酸/メタノールに沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、トルエンに溶解させ、不溶物を濾別した。再びトルエンに溶解後、大過剰の塩酸/メタノールに再沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、110℃/6時間真空乾燥して収率90%の白色固形物を得た。得られた固形物はMn=24、000、Mw/Mn=2.5であった。
【0093】
(5)ポリ(2、6−ビス(3−メチル−2−ブテニル)フェノール−co−2、6−ジメチルフェノール)(以下、これを、ジイソブテニル化ポリフェニレンエーテルと呼ぶ)
撹拌子を入れた2口フラスコに塩化銅(I)0.040g(0.38mmol)、トルエン150ml、ピリジン:100ml(1.24mol)を加え、50ml/minの酸素雰囲気下500〜800rpmで攪拌した。2、6−ジメチルフェノール3.30g(27.0mmol)、2、6−ビス(3−メチル−2−ブテニル)フェノール0.675g(3.0mmol)を加え、25℃、酸素雰囲気下で120分攪拌した。反応終了後、大過剰の塩酸/メタノールに沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、トルエンに溶解させ、不溶物を濾別した。再びトルエンに溶解後、大過剰の塩酸/メタノールに再沈殿させ、メタノールで数回洗浄後、110℃/6時間真空乾燥して収率80%白色の固形物を得た。得られた固形物はMn=25、000、Mw/Mn=2.4であった。
【0094】
(6)ワニスの調製法
所定量の熱硬化性ポリフェニレンエーテル重合体、多官能性スチレン、溶媒等をボールミルにて約8時間攪拌して溶解、分散して、樹脂組成物のワニスを作製した。
【0095】
(7)樹脂板の作製
上記ワニスをPETフィルムに塗布して乾燥した後、これを剥離してポリテトラフルオロエチレン製のスペーサ内に所定量入れ、ポリイミドフィルムおよび鏡板を介し、真空下で、加熱、加圧して硬化して樹脂板を得た。加熱条件は、120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分で、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。樹脂板の大きさは70mm×70mm×1.5mmとした。
【0096】
(8)誘電率および誘電正接の測定
誘電率、誘電正接は、空胴共振器摂動法(アジレントテクノロジー製8722ES型ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空胴共振器)によって、10GHzでの値を測定した。
【0097】
(9)引っ張り強度の測定
樹脂板の引っ張り強度および伸び率の測定は、幅1.5mm、厚み1.5mm、長さ40mmに加工した測定サンプルを精密万能試験機オートグラフ(島津製作所製AGS−100G)によって10本測定を行い、その平均値を測定値とした。
【0098】
(10)耐薬品性試験
樹脂板の耐薬品性試験は、幅10mm、厚み1.5mm、長さ30mmに加工した測定サンプルを40℃に加熱したクロロホルム中に浸漬し、樹脂の溶解や膨潤、変形などを調べた。
【0099】
(11)ガラス転移温度の測定
熱・応力・歪測定装置(TMA/SSlSEIKO EXSTAR6000TMA/SS6100)を用い、貯蔵弾性率E’、弾性損失tanδを測定した。樹脂の弾性損失のピーク位置を転移温度とした。測定昇温速度は5℃/分とした。
【0100】
(12)プリプレグの作製
各実施例において作製したプリプレグは、当該ワニスをガラスクロス(日東紡製#2116)に含浸し、室温で約1時間、90℃で60分間乾燥することにより作製した。
【0101】
(13)プリプレグ硬化物の作製
積層板とした際の特性を知るため、前記で作製したプリプレグを6枚重ねて真空下で加熱、加圧して模擬基板を作製した。加熱条件は120℃/20分、150℃/20分、230℃/60分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。模擬基板は70mm×70mm×1.5mmとした。
【0102】
(14)難燃性
難燃性はサンプルサイズ70×3×1.5mmの試料を用いてUL−94規格に従って評価した。
【0103】
(15)その他の試薬
硬化触媒:25B:日本油脂製、2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、など。
【0104】
架橋剤:TAIC:日本化成製、1、3、5−トリアリルイソシアヌレート、など。
【0105】
難燃剤:ヒシガード(日本化学工業製)、PX−200(大八化学製)など。
【0106】
重合禁止剤:ハイドロキノン系重合禁止剤(2、5−ビス(1、1−ジメチルブチル)ハイドロキノン)、など。
【0107】
低誘電率絶縁体:Z−36(東海工業製)、硼珪酸ガラスバルーン(平均粒径56μm)、など。
【0108】
高誘電率絶縁体:Ba−Ti系無機フィラー:1GHzにおける誘電率が70、密度=5.5g/cm、平均粒子1.5μmのチタン酸バリウム系の無機フィラーなど。
【0109】
(実施例1〜6)
実施例1〜5は、BVPEとアリル化ポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物について、実施例6はBVPEとブテニル化ポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物についてそれぞれ樹脂板を作製し、測定を行った。ワニス調製時等の溶媒として、非ハロゲン系溶剤であるトルエンを使用した。側鎖に熱硬化性の官能基を有する共重合体とすることで、ポリフェニレンエーテルを用いた複合化物に比べてトルエンへの溶解性が高く、室温で10重量部%以上の樹脂含量を有するワニスとすることができた。
【0110】
(比較例1〜2)
比較例1〜2は、BVPEとポリ−2、6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテルの樹脂組成物について樹脂板を作製し、測定を行った。ポリ−2、6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテルの重合体は、アルドリッチ社製の市販品を用いた(Mn=27、000、Mw/Mn=2.7)。また、室温でトルエンによってワニスを調製した場合、ワニス中にポリフェニレンエーテルの不溶部分が生じるため、本検討における調製時の溶媒には、クロロホルムを使用した。
【0111】
実施例1〜6の結果を表1に、比較例1〜2の結果を表2にそれぞれ示した。既に知られている複合化物と比較して、引っ張り強度が改善されていることが分かった。特にポリフェニレンエーテルの複合化量が増すにつれて引っ張り強度が高くなる傾向がみられた。これは、熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体中に含まれる熱硬化基が多官能スチレンと反応することによって、ポリフェニレンエーテル成分も熱硬化に寄与するためと考えられる。
【0112】
複合化樹脂の硬化物は、複合化したアリル化PPEに近いガラス転移温度を示したことから、実施例の硬化物にも相分離は生じていると考えられる。しかし、熱硬化反応によって相分離型成が抑制されるため、樹脂強度の低下につながるような樹脂中での界面形成が起こりにくくなったと推定できる。また、比較例ではいずれも耐薬品性試験で変形を起こしたのに対し、実施例ではいずれも変形は見られなかった。熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体とBVPEの熱硬化反応に加え、相分離型成が抑制されることで、耐薬品性が高まったと考えられる。
【0113】
また、実施例の硬化物について、粘弾性測定による貯蔵弾性率はいずれも10MPa以上となり、ガラス転移温度以上の加熱によっても形状安定性が高いと考えられる。
【0114】
誘電損失および伸び率は通常のポリフェニレンエーテルとほぼ同等の値を示したことから、誘電損失、伸び率は従来の複合化物の性能を維持しつつ、引っ張り強度の高い樹脂組成物の硬化物とすることができた。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
(実施例7〜9)
実施例7〜9は、BVPEとアリル化ポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物について、樹脂組成物中の総量を100重量%として重合禁止剤、硬化触媒及び架橋剤を混合してそれぞれ樹脂板を作製し、測定を行った。実施例7〜9の結果を表3に示した。なお、樹脂組成物として、実施例2の条件で調製した樹脂組成物を例に挙げたが、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。樹脂の誘電特性に影響を与えない程度の重合禁止剤を加えることによって、室温における樹脂組成物の保存安定性が向上した。また、同様に硬化触媒や他の架橋剤を組み合わせることによって、アリル化ポリフェニレンエーテルの熱硬化反応がより高まり、硬化物のガラス転移温度の上昇や引っ張り強度の向上など、樹脂強度を高めることができた。
【0118】
【表3】

【0119】
以下、各電子部品に要求される要求特性に基づいて本発明の電子部品について説明する。
【0120】
〔半導体装置〕
従来、高周波用半導体素子は、高周波動作の障害となる配線間静電容量を低減するために、図1に記載のように空気層を絶縁層とするハーメチックシール型の気密パッケージにて製造されてきた。図1において、基材1に形成した凹部2に半導体チップ5を搭載し、シール材5を介してカバー4を接合して、凹部2を封止する。半導体チップからワイヤー配線7を介して端子6をパッケージの外部に配置する。
【0121】
本実施例では所定の配合比とした架橋成分、低誘電率絶縁体粒子、必要により高分子量体、難燃剤及び第二の架橋成分、離型剤、着色剤等を含有する低誘電率かつ低誘電正接な樹脂組成物を有機溶媒中あるいは無溶剤状態で混合分散する。これにより、該低誘電率、低誘電正接樹脂組成物で半導体チップを被覆し、必要により乾燥し、硬化することによって、低誘電率、低誘電正接樹脂層で絶縁、保護された半導体装置を作製する。該低誘電率、低誘電正接樹脂組成物の硬化は120℃〜240℃の加熱で行うことができる。
【0122】
図2に本発明の高周波用半導体装置の一例を示すがその形状は特に限定されるものではない。本実施例によれば安価なモールド成型法より、伝送速度が高く、誘電損失が小さい高効率な高周波用半導体装置を作製することができる。図2において、低誘電率封止8により半導体チップ3を封止する。半導体チップ3は、リードフレーム9を有するベースに固定する。
【0123】
本実施例の低誘電率、低誘電正接な絶縁層の形成方法としては、トランスファープレス、ポッティング等があり、半導体装置の形状に応じて適宜選択される。半導体装置の形態は特に限定されないが例えば、テープキャリア型パッケージ、半導体チップが配線基板上にベアチップ実装された半導体装置などを例として挙げることができる。
【0124】
〔多層基板〕
本実施例の樹脂組成物の硬化物は、従来の熱硬化性樹脂組成物の硬化物に比べて誘電正接が低い。従って本架橋成分を絶縁層に使用した配線基板は誘電損失が少ない高周波特性の優れた配線基板となる。
【0125】
以下、多層配線基板の作製方法について説明する。本実施例において、多層配線基板の出発材となるプリプレグ或いは絶縁層付導体箔は、所定の配合比とした架橋成分、高分子量体、必要により低誘電率絶縁体粒子又は高誘電率絶縁体粒子、難燃剤及び第二の架橋成分、着色剤等を配合した低誘電正接樹脂組成物を溶剤中で混練してスラリー化した後にガラスクロス、不織布、導体箔等の基材に塗布、乾燥して作製する。プリプレグは積層板のコア材、積層板と積層板或いは導体箔との接着層兼絶縁層として使用できる。
【0126】
一方、絶縁層付導体箔はラミネート、プレスによってコア材表面に導体層を形成する際に使用される。本実施例のコア材とは、絶縁層付導体箔を担持し、補強する基材であり、ガラスクロス、不織布、フィルム材、セラミック基板、ガラス基板、エポキシ等の汎用樹脂板、汎用積層板等を例としてあげることができる。スラリー化に使用する溶剤は、配合する架橋成分、高分子量体、難燃剤等の溶媒であることが好ましく、その例としてはジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム等を上げることができる。
【0127】
プリプレグ、絶縁層付導体箔の乾燥条件(Bステージ化)は用いた溶媒、塗布した樹脂層の厚さによって調整する。例えばトルエンを用いて、乾燥膜厚約50μmの絶縁層を形成する場合には80〜130℃で30〜90分乾燥するとよい。必要に応じて好ましい絶縁層の厚さは50〜300μmであり、その用途や要求特性(配線パターンサイズ、直流抵抗)によって調整する。
【0128】
以下、多層配線基板の作製例を示す。図3に第一の例を示す。
【0129】
図3(A);所定の厚さのプリプレグ10と導体箔11を重ねる。使用する導体箔は金、銀、銅、アルミニウム等導電率の良好な物の中から任意に選択する。その表面形状はプリプレグとの接着力を高くする必要がある場合には凹凸の大きな箔を用い、高周波特性を一層向上する必要がある場合には比較的平滑は表面を有する箔を用いる。導体箔の厚さは9〜35μm程度のものがエッチング加工性の観点から好ましい。
【0130】
図3(B);プリプレグと導体箔を圧着しながら加熱するプレス加工によって接着、硬化し、表面に導体層を有する積層板13が得られる。加熱条件は120〜240℃、1.0〜10MPa、1〜3時間とすることが好ましい。また、プレス加工の温度、圧力は上記範囲内で多段階としてもよい。本発明で得られる積層板は絶縁層の誘電正接が非常に低いことに起因して優れた高周波伝送特性を示す。
【0131】
次いで両面配線基板の作製例を説明する。
【0132】
図3(C);先に作製した積層板の所定の位置にドリル加工によってスルーホール14を形成する。図3(D);めっきによってスルーホール内にめっき膜15を形成して、表裏の導体箔を電気的に接続する。図3(E);両面の導体箔をパターンニングして導体配線16を形成する。
【0133】
次いで多層配線基板の作製例を説明する。
【0134】
図4(A);所定の厚さのプリプレグと導体箔を用いて積層板13を作製する。図4(B);積層板の両面に導体配線16を形成する。図4(C);パターン形成後の積層板に所定の厚さのプリプレグ10と導体箔11を重ね合わせる。図4(D);加熱加圧して外層に導体箔を形成する。図4(E);所定の位置にドリル加工によってスルーホール14を形成する。図4(F);スルーホール内にめっき膜115を形成し、層間を電気的に接続する。図4(G);外層の導体箔にパターンニングを施し、導体配線16を形成する。
【0135】
次いで絶縁層付銅箔を用いた多層配線基板の作製例を示す。
【0136】
図5(A);導体箔11に本発明の樹脂組成物のワニスを塗布、乾燥して未硬化の絶縁層17を有する絶縁層付導体箔18を作製する。図5(B);リード端子19と絶縁層付導体箔18を重ねる。図5(C);プレス加工によってリード端子19と絶縁層付導体箔18を接着し、積層板13を形成する。予めコア材の表面をカップリング処理或いは粗化処理することによってコア材と絶縁層の接着性を向上させることができる。図5(D);積層板13の導体箔18をパターンニングして導体配線16を形成する。図5(E);配線形成された積層板13に絶縁層付導体箔を重ねる。図5(F);プレス加工によって積層板13と絶縁層付導体箔を接着する。図5(G);所定の位置にスルーホール14を形成する。図5(H);スルーホール14にめっき膜15を形成する。図5(I);外層の導体箔11をパターンニングして導体配線16を形成する。
【0137】
次いでスクリーン印刷による多層基板の作製例を示す。
【0138】
図6(A);積層板13の導体箔をパターンニングし、導体配線16する。図6(B);本発明の樹脂組成物のワニスをスクリーン印刷によって塗布、乾燥して絶縁層17を形成する。このとき、スクリーン印刷によって部分的に誘電率の異なる樹脂組成物を塗布し、異なる誘電率を有する絶縁層を絶縁層17と同一面内に形成することができる。図6(C);絶縁層17に導体箔11を重ね合わせ、プレス加工によって接着する。図6(D);所定の位置にスルーホール14を形成する。図6(E);スルーホール内にめっき膜15を形成する。図6(F);外層の導体箔11をパターンニングして導体配線16を形成する。
【0139】
本発明では、前述の例に限らず、種々の配線基板を形成することができる。例えば、配線形成を施した複数の積層板をプリプレグを介して一括積層し、高多層化することや、レーザー加工またはドライエッチング加工によって形成されるブラインドビアホールによって層間を電気的に接続するビルドアップ多層配線基板も作製できる。多層配線基板の作製にあたっては、各絶縁層の誘電率、誘電正接は任意に選択でき、異なる特性の絶縁層を混載して、低誘電損失、高速伝送、小型化、低価格化等の目的に応じて組み合わせることができる。
【0140】
本発明の低誘電正接樹脂組成物を絶縁層として用いることによって誘電損失が小さく高周波特性に優れた高周波用電子部品を得ることができる。更に前述のような多層配線基板の作製方法により導体配線内に素子パターンを組み込むことによって種々の機能を有する高性能な高周波用電気部品が得られる。一例としては、キャパシタ、インダクタ、アンテナの少なくとも一つの機能を有する多層配線基板が作製できる。
【0141】
次いで、本発明の多層配線基板をアンテナに適用した例を示す。
【0142】
図7は、本発明のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールの要部断面構造を示す断面図である。本実施例は、5GHz帯の円偏波の信号を送受信するためのアンテナ素子一体型高周波回路モジュールである。図7に示すように、本実施例のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールは、矩形の基板118、MMICを用いて構成した高周波回路モジュール20、並びにディスクリート部品21で構成される。
【0143】
高周波回路モジュール20は、図示しないがガラスセラミクスを用いた多層基板により作製したパッケージに、GaAs半導体を用いて作製したMMICチップが積層されて構成される。MMICチップは、スイッチ、低雑音増幅器、電力増幅器、ミキサ、逓倍器などを構成する。これらのMMICチップ間を接続する配線などはガラスセラミクスのパッケージ内に設けられており、また、MMICチップは、ワイヤボンディングでパッケージ内に設けられた配線と接続されている。また、バンドパスフィルタ、フェーズロックループ(PLL)モジュール、水晶発振器は、ディスクリート部品21で構成される。基板18は、銅箔からなる3層の導体層と、2層の誘電体層(22、23)から形成されており、各導体層は、上から順に、アンテナ素子24、接地電極25、配線26として使用され、配線26がクロスする部分はジャンパー配線29によって接続される。アンテナ素子一体化高周波回路モジュールは外部接続端子119により外部と接続される。
【0144】
第3の導体層には、複数の配線26、即ち、高周波回路モジュール20への電源供給線、高周波回路モジュール20とディスクリート部品21および外部回路をつなぐための配線、並びにアンテナ素子24と高周波回路モジュール20を接続するための配線などが形成される。アンテナ素子24と、配線26の一部はビアホール27によって接続される。また、配線26と同じ導体層に形成されたパターンの一部と接地電極25とは、ビアホール28により電気的接続されて、前記配線26と同じ導体層に形成されたパターンの一部は接地電極25と同電位になるように構成される。
【0145】
本実施例において、基板118を構成する誘電体層22の厚さと、誘電体層23の厚さとは異なっている。アンテナに必要とされる帯域や利得などによって、誘電体層22の厚さは適宜変化させる。また、誘電体層23の厚さも、アンテナ素子一体型高周波回路モジュールの全体の厚さ、あるいは、配線26の幅が所望の値になるように、適宜変化させる。本実施例で使用する誘電体層は本発明の低誘電損失樹脂を使用しており、低誘電正接であり伝送損失を小さくすることができる。
【0146】
また本実施例で基板118は、3層の導体層と2層の誘電体層により構成されているが、誘電体層22と誘電体層23は電気的特性を変化させることができる。特に、誘電体層22と誘電体層23は比誘電率を変化させ、誘電体層23の比誘電率を大きくすることが有効である。
【0147】
本実施例において、誘電体層23上に銅箔を用いて4分の1波長の配線を形成する場合、その長さは誘電体層23の比誘電率によって変化し、比誘電率が大きいほど配線パターンとしての長さは短くなる。したがって、本実施例では、4分の1波長の配線パターンを短くして、アンテナ素子一体型高周波回路モジュールを小型化するために、比誘電率の大きな誘電体層23を用いる。一方、アンテナの電気的特性は、一般に誘電体層22の比誘電率が小さいほうが良くなるため、誘電体層22は誘電体層23よりも比誘電率の小さいものを用いる。
【0148】
このように、本実施の形態では、基板18を比誘電率が異なる誘電体層22と誘電体層23を用いて構成することにより、アンテナの特性が良く、かつ小型のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールを実現することができる。なお誘電体層の誘電率を変化させる場合は、低誘電率材料には実施例1〜3で作製した多孔質ポリイミドを使用しており、伝送損失を小さくすることができる。また、酸化物高誘電体粒子を多孔質層に充填し、高誘電体層とすることもできる。多孔質体を使用することで多孔質層内に充填物の種類や充填量を制御することで自由に誘電体層の誘電率を操作することができ、回路基板の設計を簡略化できる。
【0149】
以下において、本発明と他の電子部品用材料を組み合わせた電子部品の実施例を示す。
【0150】
表4に本発明に用いた樹脂組成物の組成及びその特性を示す。表4に記載の数値は、樹脂組成物中の総量を100重量%とした場合の各成分の添加量を表す。なお、樹脂組成物として、実施例7に示した樹脂組成物を例に挙げたが、これによって本特許の範囲が限定されるものではない。
【0151】
(実施例10)
実施例10は実施例7に難燃剤として有機燐化合物を添加した樹脂組成物の例である。難燃剤を添加することによって樹脂組成物が難燃化でき、電気部品の安全性が向上する。
【0152】
(実施例11、12)
実施例11、12は実施例7に低誘電率絶縁体としてガラスバルーン(Z36)を添加した例である。Z36の添加量の増加に伴い誘電率は2.8から2.0に低下した。本樹脂組成物を絶縁層に用いた電気部品は誘電損失が小さく、高速伝送性が高くなる。
【0153】
(実施例13、14)
実施例13、14は実施例7に高誘電率絶縁体としてセラミック粒子(Ba−Ti系)を添加した例である。Ba−Ti系の含有率が増すにつれて誘電率は2.8〜12.1に増加した。本樹脂組成物を絶縁層に用いた電気部品は誘電損失が小さく、小型の高周波用電気部品となる。
【0154】
(実施例15)
実施例15は実施例7に示される樹脂組成物を含み、低誘電率、低誘電正接な硬化物を形成する液状樹脂組成物である。液状の樹脂組成物は、常温且つ低圧での注型が可能である。また、本実施例の樹脂組成物から作製した絶縁層を有する高周波用電子部品は低誘電率、低誘電正接であることから高速伝送、低誘電損失な高周波用電子部品となる。
【0155】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】従来の高周波用半導体装置の構造を示す断面例。
【図2】本発明の実施例による高周波用半導体装置の構造を示す断面図。
【図3】本発明の実施例による多層配線基板の作製例を示すフロー図。
【図4】本発明の他の実施例による多層配線基板の作製例を示すフロー図。
【図5】本発明の更に他の実施例による多層配線基板の作製例を示すフロー図。
【図6】本発明のもう1つの実施例による多層配線基板の作製例を示すフロー図。
【図7】本発明の実施例によるアンテナ素子一体高周波モジュールを表す断面図。
【符号の説明】
【0157】
1…基材、2…凹部、3…半導体チップ、4…カバー、5…シール材、6…端子、7…ワイヤー配線、8…低誘電率絶縁層、9…リードフレーム、10…プリプレグ、11…導体箔、13…積層板、14…スルーホール、15…めっき膜、16…導体配線、17…絶縁層、18…外部接続端子、19…基板、20…高周波回路モジュール、21…ディスクリート部品、22、23…誘電体層、24…アンテナ素子、25…接地電極、26…配線、27、28…ビアホール、29…ジャンパー配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される架橋成分を持つ多官能スチレン化合物と、式(2)で示される熱硬化性のフェノール誘導体のランダム共重合体との混合物を含むことを特徴とする熱硬化性の低誘電損失樹脂組成物。
【化1】

式(1)は架橋成分を含む多官能スチレン化合物を表し、Rは水素あるいは炭化水素基を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から6の炭化水素基を表し、R、R、R、Rは同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から20の炭化水素基を表し、nは2以上の整数を表す。
【化2】

式(2)はフェノール誘導体のランダム共重合体を表し、l、mは重合度であり1以上の整数を表し、前記共重合体は分子量に分布を持っていてもよい。R’、R、R10は水素あるいは炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14は同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1から9の炭化水素基であるが少なくとも1つ以上が炭素数2から9の不飽和炭化水素を含む炭化水素基である。
【請求項2】
前記樹脂組成物の熱硬化物の10GHzでの誘電正接が、0.0005〜0.003であることを特徴とする請求項1に記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項3】
式(2)のフェノール誘導体のランダム共重合体は熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体であって、その数平均分子量が5000〜100000であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項4】
式(2)のフェノール誘導体のランダム共重合体は熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体であり、熱硬化基を含む繰り返し単位の共重合比が、3〜50モル量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項5】
式(1)で示される架橋成分を持つ多官能スチレン化合物と、式(2)で示される熱硬化性のポリフェニレンエーテル共重合体との混合物を含み、前記熱硬化性ポリフェニレンエーテル共重合体の重量比が前記混合物の10重量%以上であることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項6】
熱架橋基の重合及び架橋を抑制する重合禁止剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低誘電正接樹脂組成物。
【請求項7】
熱架橋基を加熱によって重合、架橋し得る硬化触媒並びに架橋剤の1つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化触媒、架橋剤及び重合禁止剤の少なくとも1種類以上を含み、その添加量がそれぞれ0.0005〜10重量部%であることを特徴とする請求項6または7に記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項9】
充填剤、着色剤、難燃剤、接着付与剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕捉剤、酸化防止剤及び粘度調整剤の少なくとも1種類以上を含み、その添加量がそれぞれ0.0005〜10重量部%であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物が10GHzでの誘電正接が、0.0005〜0.005である硬化物を与えることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物の熱硬化物は、硬化前の樹脂組成物に可溶な溶媒によって溶出または変性が実質的に起こらない請求項1〜9のいずれかに記載の低誘電正接樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物の熱硬化物の引っ張り強度が55KN/m以上である請求項1〜10のいずれかに記載の低誘電正接樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物と有機溶剤とを含み、前記低誘電損失樹脂組成物が該有機溶剤に室温で少なくとも5重量%以上溶解していることを特徴とする低誘電損失樹脂組成物。
【請求項14】
前記有機溶剤は、沸点が150℃以下である非ハロゲン系溶剤であることを特徴とする請求項13記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項15】
平均粒径0.1〜100μmの低誘電率樹脂粒子、中空樹脂粒子、中空ガラスバルーン及び空隙から選ばれる少なくとも1種類の低誘電率相を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項16】
高誘電率絶縁体としてセラミック粒子を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物中の前記多官能スチレン化合物及び前記フェノール誘導体のランダム重合体の不飽和結合の一部もしくは全てが架橋反応したことを特徴とする硬化物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物の硬化物の250℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であることを特徴とする硬化物。
【請求項19】
請求項17または18に記載の低誘電損失樹脂組成物の硬化物を含む電子部品。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかに記載の低誘電損失樹脂組成物からなる多層配線基板用ポッティング剤。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて製造された多層配線基板用プリプレグ。
【請求項22】
請求項21に記載のプリプレグを用いて製造された多層配線基板。
【請求項23】
請求項21に記載のプリプレグを用いて製造された高周波用アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−115280(P2008−115280A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299965(P2006−299965)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「(ナノテクノロジープログラム/ナノマテリアル・プロセス技術)/「精密高分子技術/高機能高分子実用化技術の研究開発」/高機能材料の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】