説明

作業機の作業灯配置構造

【課題】外側作業灯と内側作業灯とを左右に近接して配置しても、外側作業灯と内側作業灯とを別個に大きく揺動調整できて、外側作業灯と内側作業灯とによる照射範囲を広げることができるようにする。
【解決手段】作業機の左右両側に、左右方向の外側に位置する外側作業灯と左右方向の内側に位置する内側作業灯とが、左右に揺動調整自在となるように設けられた作業機の作業灯配置構造において、
外側作業灯と内側作業灯とが前後に段違いになるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業機の作業灯配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業機には、例えば車体に搭載されたキャビンのルーフ前端部の左右両側に、左右方向外方に位置する外側作業灯と左右方向内方に位置する内側作業灯とをそれぞれ設け、これら内側作業灯及び外側作業灯をそれぞれ縦軸廻りに左右に揺動調整自在に支持するようにしたものがあり、この種の従来の作業機の作業灯配置構造では、内側作業灯と外側作業灯とを前後位置が略同一になるように左右に並べて配置していた(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特願2004−156723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、従来の場合、外側作業灯及び内側作業灯を極力左右方向の外端部に設置する必要等から、これら外側作業灯と内側作業灯とを左右に近接して配置すると、左右方向に揺動調整する場合に、外側作業灯と内側作業灯とが互いに干渉するおそれがあり、このため内側作業灯と外側作業灯との揺動調整の範囲が狭くなった。従って、例えば、内側作業灯を、外側作業灯に邪魔されることなく、作用方向外方に向くように揺動調整して作業灯全体の照射範囲を広げるようなことが困難であった。。
本発明は、上記問題点に鑑み、外側作業灯と内側作業灯とを左右に近接して配置しても、外側作業灯と内側作業灯とを別個に大きく揺動調整できて、外側作業灯と内側作業灯とによる照射範囲を広げることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、作業機の左右両側に、左右方向の外側に位置する外側作業灯と左右方向の内側に位置する内側作業灯とが、左右に揺動調整自在となるように設けられた作業機の作業灯配置構造において、
外側作業灯と内側作業灯とが前後に段違いになるように配置されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、外側作業灯よりも内側作業灯が前方に配置されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、作業機に搭載されたキャビンのルーフの左右両側に、外側作業灯と内側作業灯とがそれぞれ設けられ、ルーフの前端部の左右両側に、後方に没入した凹部が設けられ、外側作業灯は、ルーフの前方であって、ルーフの凹部内に配置され、内側作業灯は、ルーフの前方であって凹部の左右方向内方に配置され、内側作業灯は外側作業灯よりも前方に配置されている点にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、外側作業灯と内側作業灯とを左右に近接して配置しても、外側作業灯と内側作業灯とを左右方向に揺動調整する場合、外側作業灯と内側作業灯とが互いに干渉するおそれがなくなり、内側作業灯と外側作業灯とを別個に左右に大きく揺動調整できるようになる。このため、例えば、外側作業灯を左右方向外方側に向けると共に、内側作業灯を、外側作業灯に邪魔されることなく、作用方向内方側に向くように揺動調整して作業灯全体の照射範囲を広げることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図3〜図6において、作業機であるトラクタ1は、左右一対の前輪2と、左右一対の後輪3とを備える。また、エンジン5、ミッションケース6等によって走行車体7が構成され、該走行車体7の後部には、運転席及び操縦部を内包したキャビン8が設けられている。
走行車体7の前部には、エンジン5及び左右一対の前輪2の車軸を支持する前車軸フレーム10が配備され、前車軸フレーム10の上方をボンネット11によって覆うことにより、キャビン8の前方にボンネット11及び前車軸フレーム10によって覆われたエンジンルームEが形成されている。
【0007】
図4に示す如く、ボンネット11の後端部は、枢支具13を介してキャビン8の仕切壁の前上部に連結されており、これによってボンネット11は、図4中に二点鎖線で示す如く、前端部を上下動させて上下に開閉自在となっている。
前記エンジンルームE内には、ラジエータ15が配備され、ラジエータ15の前方にバッテリー16が配備され、バッテリー16の上方にエアクリーナ17が配備されている。ラジエータ15は、エンジン5の前方に配備されていて、前側から空気を取り込んで後方のエンジン5へ冷却風を送るようになっている。
【0008】
ラジエータ15の後方には筒状の風胴19が配備され、風胴19の内部にラジエータファン20が配備され、ラジエータファン20を、エンジン5を介して駆動されるベルト伝動手段によって高速回転させることにより、ボンネット14の前面グリル部及び側面グリル部からエンジンルームEに空気が取り込まれる。
図3及び図4に示すように、前記前車軸フレーム10に、バンパー23が前方突出状に取り付けられ、バンパー23に複数のフロントウエイト24が着脱自在に取り付けられている。ボンネット11の前端部に、ボンネットロック装置25が設けられている。
【0009】
図4〜図8に示すように、ボンネットロック装置25は、前車軸フレーム10側に設けた受け部材27とロック部材28とロック解除レバー29とを備えると共に、ボンネット11側に図7に示す係合軸31を備えている。係合軸31は、ボンネット11の前壁下部に後方突出状に設けられ、受け部材27は、前車軸フレーム10側に固設した平板状の取付プレート33に、上方突出状に設けられ、受け部材27にボンネット11の係合軸31を受ける受け凹部32が設けられている。ロック部材28は、受け部材27に前後軸34廻りに揺動自在に支持され、ロック部材28の下方側がバネ35により引っ張られ、ロック部材28は、前後軸34廻りに矢印a方向に回動するようにバネ35により付勢されている。また、ロック部材28は係止部37と傾斜案内部38とを有し、係止部37は、受け部材27の受け凹部32に受けられた係合軸31に上側から係合して、係合軸31の上方移動を規制する。傾斜案内部38は、ボンネット11と共に係合軸31が上側から下降してきたとき、係合軸31が傾斜案内部38に接当して下方に押圧がされることにより、ロック部材28をバネ35に抗して前後軸34廻りに矢印b方向に揺動させて、係合軸31を受け部材27の受け凹部32に案内する。ロック部材28に切欠凹部40が設けられ、受け部材27等の固定側に突設したストッパー41が、切欠凹部40に挿通されており、ロック部材28の揺動範囲は、切欠凹部40内をストッパー41が相対移動できる範囲に規制されていて、係止部37が受け凹部32内の係合軸31に上側から係合するロック位置(図7に実線で示す)と、係止部37が受け凹部32内の係合軸31から左側に外れるロック解除位置(図7に点線で示す)とにロック部材28は揺動するようになっている。
【0010】
ロック解除レバー29は、金属等の1本の丸棒材により構成され、ロック解除レバー29の右端部は扁平につぶされて、ロック部材28の上端部に前後軸43廻りに揺動可能に連結されている。ロック解除レバー29の左端部は、左方向に水平に突出するように屈曲されて、水平な円形に湾曲したつまみ部44が形成され、このつまみ部44を手で摘んで(又は指を引っ掛けて)ロック解除レバー29を左側方に引っ張ることにより、ロック部材28によるロックを解除して、ボンネット11を上方に開放できるようになっている。そして、図8に示すように、つまみ部44はボンネット11とからやや外側方に突出しており、ボンネット11の外側方からロック解除レバー29のつまみ部44を簡単に摘んで、外側方に容易に引っ張ってロック部材28によるボンネット11のロックを容易に解除できるようになっている。
【0011】
なお、従来は、図7に2点鎖線で示す如く、ロック解除レバー29の左端部に、垂直面内で円形に湾曲したつまみ部44Aを形成し、ボンネット11の前方から手を挿入して、ロック解除レバー29のつまみ部44を摘んで、ロック解除操作をするようにしていたが、バンパー23にフロントウエイト24を取り付けた場合、このフロントウエイト24が邪魔になって、ロック解除レバー29によるロック解除操作が困難になることがあった。そこで、本実施の形態では、上記の如くロック解除レバー29の左端部に、水平な円形に湾曲したつまみ部44を形成すると共に、つまみ部44をボンネット11からやや外側方に突出したので、バンパー23にフロントウエイト24を取り付けた場合でも、ボンネット11の外側方からロック解除レバー29のつまみ部44を簡単に摘んで、ロック解除レバー29を外側方に引っ張ってロックを容易に解除できるようになっている。
【0012】
図1及び図3に示すように、キャビン8は骨組みとなるキャビンフレームFを備え、このキャビンフレームFは、前部に配置された左右一対の前支柱51、後部に配置された左右一対の後支柱52、これら前後支柱51,52間に配置された左右一対の中間支柱53を備えていると共に、左右前支柱51の上端部を連結する上前枠材55と、左右後支柱52の上端部を連結する上後枠材と、左右の同じ側にある前後支柱51,52の上端部を連結する上側枠材57とを備え、キャビンフレームFは箱形枠形状を呈している。
なお、左右前支柱51間にはフロントガラスが、左右後支柱52間にはリヤガラスが、前支柱51と中間支柱53との間には乗降ドアが、中間支柱53と後支柱52との間にはサイドガラスが、サイドガラスの下方側には後輪を覆うフェンダ59が夫々設けられている。
【0013】
キャビンフレームFの上部にはルーフ61が設けられており、このルーフ61は、キャビン室内側に配置されてキャビン室内の天井部を構成するインナールーフと、インナールーフの上方に位置されるアウタールーフとから中空状(最中状)に構成されていて、内部に空間を有している。
前記ルーフ61の左側の内側面等に、図9〜図11に示すようにラジカセ(オーディオ)63が装着されている。即ち、図9〜図11において、ルーフ61のインナールーフに設けた開口部を塞ぐように化粧パネル65がインナールーフに取り付けられ、化粧パネル65に開口窓67が設けられている。ラジカセ63は、ルーフ61内に挿入されて、ルーフ61内に設けた支持枠68にビスやボルトナット等の固定具69,70により固定されている。ラジカセ63の前面部63bは、ラジカセ本体(オーディオ本体)63aよりもやや大きく形成され、化粧パネル65の開口窓67は、ラジカセ63の前面部63aよりもやや大きい長方形状に形成されている。ラジカセ63の前面部63aは、化粧パネル65の開口窓67を内外に貫通するように配置されて、前面部63bの前側は外部に突出されている。ラジカセ63の前面部63bと、化粧パネル65の開口窓67の開口縁部との間に、長方形のリング状のカバー部材(エスカッション)71が設けられている。カバー部材71の外周縁部の上下両側に嵌合溝72が設けられ、カバー部材71の外周縁部の上下両側は、嵌合溝72を介して、カバー部材71における開口窓67の開口縁部の上下に左右に摺動自在に嵌合保持され、カバー部材71の外周縁部の左右両側は化粧パネル65の開口窓67の開口縁部の左右両側に外側から重合接当されている。カバー部材71はラジカセ63の前面部63bに外嵌されて、カバー部材71の内周縁部は略全周に亘ってラジカセ63の前面部63bに接当されている。
【0014】
この場合、化粧パネル65の開口窓67は、ラジカセ63の前面部63bよりもやや大きい長方形状に形成されているので、ラジカセ本体63aが、本来の位置から前後方向等に多少位置ずれしてルーフ61側に固定されても、カバー部材71を化粧パネル65に対して相対的に前後に摺動させることで、開口窓67をラジカセ63の前面部63bに合わせて、化粧パネル65をルーフ61側に固定することができ、この際に、カバー部材71により、化粧パネル65の開口窓67の開口縁部と、ラジカセ63の前面部63bとの間の隙間を塞いで、化粧パネル65とラジカセ63との間に隙間ができるのを防ぐことができる。
【0015】
図1に示すように、キャビン8のルーフ61の前端部の左右両側に、後方に没入した凹部74が設けられている。ルーフ61上面の前部の左右方向中央側に、左右方向外方に向かうに従って徐々に下降傾斜する凸面部75が設けられている。凸面部75は、ルーフ61の上面前部の左右両側よりも上方に膨出されると共に、ルーフ61上面の凸面部75の左右両側が、前後方向前側に向かうに従って徐々に下降するように傾斜されており、これによりルーフ61の前部側に降った雨水が左右に分かれてルーフ61前端の左右両側の凹部74から流れ落ちるようになっている。ルーフ61の前部側に降った雨は、主として前方向に流れ、ルーフ61の後部側に降った雨は主として後方向に流れる。ルーフ61の前側に流れた雨は、図1に破線の矢印で示すように、凸面部75で左右に分かれ、凸面部75の左右両側に流れる。
【0016】
従って、ルーフ61の前部側に降った雨は、主として前方向に流れ、ルーフ61の前側に流れた雨は、図1に破線の矢印で示すように、凸面部75で左右に分かれ、凸面部75の左右両側に流れる。また、凸面部75上に降った雨は、図1に破線の矢印で示すように、凸面部75上を左右方向外方に向けて流れて、凸面部75の左右両側に流れる。そして、雨水は、凸面部75の左右両側を前側に流れて、ルーフ61前端の左右両側の凹部74から流れ落ちる。このとき、大部分の雨水はフロントガラスの左右両端部を下方に流れる。従って、ルーフ61上に降った雨は、ルーフ61の上面からフロントガラスの前面の左右方向中央側にほとんど流れなくなり、ルーフ61から流れ落ちる雨で作業者の前方視界が妨げられるようなことがなくなる。
【0017】
図1及び図2に示すように、ルーフ(作業機)61の左右両側に、左右方向の外側に位置する外側作業灯77と内側に位置する内側作業灯78とがそれぞれ設けられている。外側作業灯77は、ルーフ61の前方であって、ルーフ61の凹部74内に配置され、内側作業灯78は、ルーフ61の前方であって凹部74の左右方向内方に配置されている。内側作業灯78は外側作業灯77よりも前方に配置されている。キャビン8の上前枠材55に、各作業灯77,78に対応する支持ステー79,80が前方突設され、支持ステー79,80の前端部に取付孔81が設けられており、この取付孔81に挿通したボルト等の締結具82により、各外側作業灯77及び内側作業灯78は各支持ステー79,80の前端部の上面側に、縦軸83廻り揺動調整自在に締め付け固定されている。
【0018】
従って、外側作業灯77及び内側作業灯78を極力左右方向の外端部に設置する必要等から、これら外側作業灯77と内側作業灯78とを左右に近接して配置しても、内側作業灯78は外側作業灯77よりも前方に配置されて、外側作業灯77と内側作業灯78とが作業灯1個分程度前後に段違いになっているため、外側作業灯77と内側作業灯78とを左右方向に揺動調整する場合、外側作業灯77と内側作業灯78とが互いに干渉するおそれがなくなり、外側作業灯77と内側作業灯78とをそれぞれ別個に左右に大きく揺動調整できるようになる。このため、例えば、外側作業灯77を左右方向外方側に向けると共に、内側作業灯78を、外側作業灯77に邪魔されることなく、作用方向内方側に向くように揺動調整して作業灯全体の照射範囲を広げることが可能になる。
【0019】
なお、前記実施の形態では、内側作業灯78は外側作業灯77よりも前方に配置されているが、これに代え、外側作業灯77を内側作業灯78よりも前方に配置し、これにより、内側作業灯78と外側作業灯77とが前後に段違いになるようにして、外側作業灯77と内側作業灯78とが互いに干渉するおそれなく、内側作業灯78と外側作業灯77とをそれぞれ別個に左右に揺動調整できるようにしてもよい。
また、本発明が適用される作業機は、トラクタ1に限定されず、バックホー、フロントローダその他の農業機械や産業機械であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の一実施の形態を示すルーフの前部部分の平面図である。
【図2】同作業灯部分の側面図である。
【図3】同トラクタの側面図である。
【図4】同ボンネット部分の側面図である。
【図5】同ボンネット部分の平面図である。
【図6】同ボンネット部分の正面断面図である。
【図7】同ボンネットロック装置部分の正面図である。
【図8】同ボンネットロック装置部分の平面図である。
【図9】同ラジカセ装着部分の正面図である。
【図10】同ラジカセ装着部分の平面断面図である。
【図11】同ラジカセ装着部分の側面断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 トラクタ(作業機)
8 キャビン
61 ルーフ
74 凹部
77 外側作業灯
78 内側作業灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機(1)の左右両側に、左右方向の外側に位置する外側作業灯(77)と左右方向の内側に位置する内側作業灯(78)とが、左右に揺動調整自在となるように設けられた作業機の作業灯配置構造において、
外側作業灯(77)と内側作業灯(78)とが前後に段違いになるように配置されていることを特徴とする作業機の作業灯配置構造。
【請求項2】
外側作業灯(77)よりも内側作業灯(78)が前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機の作業灯配置構造。
【請求項3】
作業機(1)に搭載されたキャビン(8)のルーフ(61)の左右両側に、外側作業灯(77)と内側作業灯(78)とがそれぞれ設けられ、ルーフ(61)の前端部の左右両側に、後方に没入した凹部(74)が設けられ、外側作業灯(77)は、ルーフ(61)の前方であって、ルーフ(61)の凹部(74)内に配置され、内側作業灯(78)は、ルーフ(61)の前方であって凹部(74)の左右方向内方に配置され、内側作業灯(78)は外側作業灯(77)よりも前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機の作業灯配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−142918(P2006−142918A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333657(P2004−333657)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】