説明

作業機の油圧システム

【課題】 走行モータ、ドーザシリンダ及びこれら以外の油圧アクチュエータを2つの独立した圧油吐出ポートによって駆動する油圧システムをベースに、走行装置とドーザ装置とを同時操作した場合の走行直進性能及びターン性能の確保を図る。
【解決手段】 同時操作される一対のドーザ用制御バルブを設け、他の制御バルブを操作せずに走行装置を操作したときに、一の圧油吐出ポートの吐出油を一の走行用制御バルブ及び一のドーザ用制御バルブに、他の圧油吐出ポートの吐出油を他の走行用制御バルブ及び他のドーザ用制御バルブに独立して供給可能とする独立位置と、他の制御バルブを操作したときに、一の圧油吐出ポートと他の圧油吐出ポートの吐出油を合流して各制御バルブに供給可能とする合流位置とに切換自在な走行独立弁を設け、負荷の大きさにかかわらず操作量に応じた流量の圧油を各制御バルブに対して配分する圧力補償弁を各制御バルブに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の走行装置とドーザ装置とを備えた作業機の油圧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対の走行装置とドーザ装置とを備えた作業機として、特許文献1に記載の作業機がある。
この特許文献1に係る作業機は、前部にドーザ装置を備えた走行体上に上下軸回りに旋回自在な旋回台を設け、この旋回台の前部に掘削作業装置を設けている。
走行体は走行モータで駆動されるクローラ式走行装置を左右一対備え、ドーザ装置はドーザシリンダで上げ下げされるブレードを備えている。
【0003】
旋回台は旋回モータによって旋回駆動される。
旋回台の前部には、上下軸回りに左右揺動自在に設けられたスイングブラケットが設けられ、このスイングブラケットはスイングシリンダによって左右に揺動駆動される。
掘削作業装置は、スイングブラケットに枢支連結されたブームと、このブームに枢支連結されたアームと、このアームに枢支連結されたバケットとを有し、ブームはブームシリンダによって、アームはアームシリンダによって、バケットはバケットシリンダによってそれぞれ揺動駆動される。
【0004】
前記走行モータ及び旋回モータは油圧モータで構成され、ドーザシリンダ、スイングシリンダ、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダは油圧シリンダによって構成されている。
この作業機にあっては、ロードセンシングシステムを備えた油圧システムが装備されている。
【0005】
この油圧システムは、吐出流量が制御可能な第1ポンプ及び第2ポンプと、流量制御されない第3ポンプと、第1、2ポンプの吐出流量を制御する流量制御部と、第1、2ポンプの吐出油の方向を切り換える走行独立弁とを備えている。
走行独立弁は、第1ポンプ及び第2ポンプからの圧油をそれぞれ独立して左右の走行用制御バルブに供給する独立位置と、第1及び第2ポンプからの圧油を合流してブーム用制御バルブ、アーム用制御バルブ、バケット用制御バルブ、スイング用制御バルブに供給する合流位置とに切り換え自在とされ、走行時には独立位置に切り換えられ、非走行時には合流位置に切り換えられる。
【0006】
また、第3ポンプの吐出油は、非走行時には、旋回用制御バルブとドーザ用制御バルブに供給可能とされ、走行時には、さらに、ブーム用制御バルブ、アーム用制御バルブ、バケット用制御バルブ、スイング用制御バルブに供給可能とされている。
ブーム用制御バルブ、アーム用制御バルブ、バケット用制御バルブ、スイング用制御バルブには、対象となる油圧アクチュエータに対して圧油の方向を切り換える方向切換弁のほか、これら制御バルブで制御される油圧アクチュエータのうちの複数を同時操作したときの該油圧アクチュエータ間の負荷の調整として機能する圧力補償弁が組み込まれている。
【0007】
この圧力補償弁によって、低負荷圧側の制御バルブに、最高負荷圧との差圧分の圧力損失を発生させ、負荷の大きさによらず、制御バルブのスプールの操作量に応じた流量を流すことができる。
また、この油圧システムにあっては、非走行時に、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、スイングシリンダのうちの複数を同時操作する場合、操作された油圧アクチュエータの負荷圧のうちの最高の負荷圧がPLS信号圧として流量制御部に伝達されると共に第1ポンプ及び第2ポンプの吐出圧がPPS信号圧として流量制御部に伝達され、この流量制御部によって、PPS信号圧−PLS信号圧を設定値に維持するように第1ポンプ及び第2ポンプの吐出流量が自動制御されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−161510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実作業では、ドーザ装置(ブレード)を使っての土工作業は、走行しながら同時にブレードを動かす場合が多い(例えば、砂利やさらさらの砂をブレード作業で撒く場合では、走行しながらブレードを上下に動かして均等に撒いていく。また、舗装作業などでは、かなりきれいに均すために、機械の傾きなどを補正すべく、走行しながらブレードを操作する)。
【0010】
特許文献1の作業機にあっては、走行しながらドーザ装置を操作する場合において、第1ポンプの吐出油で左右一方の走行モータを駆動し、第2ポンプの吐出油で左右他方の走行モータを駆動していると共に、走行装置の直進性能及びターン性能を確保するために、第3ポンプでドーザ装置を駆動するようにしているが、ドーザシリンダ等を作動させないときには、第3ポンプを無駄に駆動させるため、システム効率が低下する。
【0011】
そこで、第1・2ポンプのみで、バックホーに装備された前記油圧アクチュエータを作動させるような回路構成にすると、第3ポンプがなくなり、システム効率がよいが、この場合、走行しながらドーザ装置を駆動させる際において、第1ポンプの吐出油で左右一方の走行モータを、第2ポンプの吐出油で左右他方の走行モータを、それぞれ独立して駆動すると共に、一方の油圧ポンプからの吐出油でドーザシリンダを駆動するようにすると、第1、2ポンプの一方からの吐出油がドーザシリンダにとられるので、直進性が悪くなると共に、ターン性能が極端に落ちる。
【0012】
したがって、第1・2ポンプで、バックホーに装備された前記油圧アクチュエータを駆動させる回路構成とする場合は、通常、走行のみ行う場合は、第1ポンプ及び第2ポンプからの圧油をそれぞれ独立して左右の走行用制御バルブに供給し、走行しながらドーザ装置を駆動する場合は、第1、2ポンプの吐出油を合流して左右の走行用制御バルブとドーザ用制御バルブとに供給する回路構成とされる。
【0013】
しかしながら、この回路構成にした場合でも、ドーザ装置を駆動した場合は走行の左右独立性がなくなるため、システム上、ターン能力が低いという問題が残る。
したがって、作業機に装備された走行モータ、ドーザシリンダ及びこれら以外の油圧アクチュエータを2つの独立した圧油吐出ポートによって駆動するようにした油圧システムをベースに、走行しながらドーザ装置を操作したときにも、一方の圧油吐出ポートからの圧油を一方の走行用制御バルブに、他方の圧油吐出ポートからの圧油を他方の走行用制御バルブに、それぞれ独立して供給するという独立回路構成を確保することができる油圧システムが要望されている。
【0014】
本発明は、このような要望に鑑みて、作業機に装備された走行モータ、ドーザシリンダ及びこれら以外の油圧アクチュエータを2つの独立した圧油吐出ポートによって駆動するようにした油圧システムをベースに、走行装置とドーザ装置とを同時に操作した場合の走行直進性能及びターン性能の確保を図った作業機の油圧システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の構成を特徴とする。
請求項1に係る発明では、別々の走行モータによって駆動される左右の走行装置と、ドーザシリンダによって駆動されるドーザ装置とを備え、前記走行モータを制御する走行用制御バルブを左右走行装置の各々に対して備え、前記走行モータ、ドーザシリンダ以外に装備された他の油圧アクチュエータを制御する他の制御バルブを備え、独立した2つの圧油吐出ポートを備えた作業機の油圧システムにおいて、
前記ドーザシリンダを制御すべく同時に操作される一対のドーザ用制御バルブを設け、
他の制御バルブを操作せずに走行装置を操作したときに、一方の圧油吐出ポートからの圧油を一方の走行用制御バルブ及び一方のドーザ用制御バルブに、他方の圧油吐出ポート
からの圧油を他方の走行用制御バルブ及び他方のドーザ用制御バルブに、それぞれ独立して供給可能とする独立位置と、
少なくとも他の制御バルブを操作したときに、一方の圧油吐出ポートからの圧油と他方の圧油吐出ポートからの圧油とを合流して他の制御バルブ及び各走行用制御バルブ並びに各ドーザ用制御バルブに供給可能とする合流位置とに切換自在な走行独立弁を設け、
前記各油圧アクチュエータに作用する負荷の大きさにかかわらず操作量に応じた流量の圧油を各制御バルブに対して配分するように機能する圧力補償弁を各制御バルブに設けていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に係る発明では、各制御バルブは圧油の方向を切り換える方向切換弁を備え、
各走行用制御バルブ及び各ドーザ用制御バルブの方向切換弁のいずれかを操作したときに走行独立弁を独立位置に切り換えるべく、該方向切換弁のいずれかを操作したことを検出する第1検出油路と、
他の制御バルブの方向切換弁を操作したときに走行独立弁を合流位置に切り換えるべく、該方向切換弁を操作したことを検出する第2検出油路とを備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に係る発明では、各制御バルブを一方向に並べて配置し、一方の走行用制御バルブと一方のドーザ用制御バルブとを並べて配置すると共に、他方の走行用制御バルブと他方のドーザ用制御バルブとを並べて配置し、且つ、一方の走行用制御バルブ及び一方のドーザ用制御バルブと、他方の走行用制御バルブ及び他方のドーザ用制御バルブとを走行独立弁を挟んで配置していることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に係る発明では、前記圧油吐出ポートの吐出圧と、操作された油圧アクチュエータに作用する負荷圧のうちの最高の負荷圧との差を設定値に維持するように圧油吐出ポートの吐出流量を自動制御する流量制御部を備え、
各制御バルブの圧力補償弁の各々に負荷伝達ラインを介して接続されていて、操作された油圧アクチュエータに作用する最高の負荷圧を流量制御部に伝達するPLS信号油路を備え、
このPLS信号油路が、前記走行独立弁を独立位置にしたときに、一方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のラインと、他方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のラインとに分断されるよう構成され、
一方の圧油吐出ポートからの圧油を流通させる圧油供給路と、他方の圧油吐出ポートからの圧油を流通させる圧油供給路との各々の流路終端側にアンロード弁を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、2つの独立した圧油吐出ポートからの圧油によって、作業機に装備された左右走行モータ、ドーザシリンダ及び他の油圧アクチュエータを駆動可能とした油圧システムにおいて、走行しながらドーザ装置を操作する場合における、直進性能及びターン性能の確保を図ることができる。
【0020】
すなわち、走行しながらドーザ装置を操作する場合に、一方の圧油吐出ポートからの圧油が一方の走行用制御バルブ及び一方のドーザ用制御バルブに、他方の圧油吐出ポートからの圧油が他方の走行用制御バルブ及び他方のドーザ用制御バルブに、それぞれ独立して供給されるが、このとき、同時に操作される一対のドーザ用制御バルブによって、一方及び他方の圧油吐出ポートからの圧油が均等に抜き取られてドーザシリンダに送られるので、バックホーの走行直進性を確保することができる。
【0021】
また、ドーザ装置を操作しながら作業機を左右一方にターンさせる場合にあっては、圧力補償弁が分流制御するため、走行モータにかかる負荷が高く、ドーザシリンダにかかる負荷が低くても、設定流量以上の圧油がドーザシリンダに流入しないことから、一方の圧油吐出ポートからの圧油を一方の走行用制御バルブに、他方の圧油吐出ポートからの圧油を他方の走行用制御バルブに、それぞれ独立して供給するという独立回路構成を維持でき
且つ一方及び他方の圧油吐出ポートからの圧油が均等に抜き取られるので、左右の走行モータへの圧油供給流量が確保され、ターン性能を確保することができる。
【0022】
請求項2に係る発明では、制御バルブの方向切換弁を操作したことを検出する検出油路の回路構成の簡素化を図ることができる。
請求項3に係る発明では、第1検出油路の回路構成の簡素化を図ることができる。
請求項4に係る発明では、走行独立弁を独立位置にしたときに、PLS信号油路が、一方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のラインと、他方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のラインとに分断されるので、一方の圧油吐出ポートからの圧油供給系統と他方の圧油吐出ポートからの圧油供給系統との間で負荷信号の干渉がなくなり、圧力補償弁の機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】バックホーの側面図である。
【図2】油圧システムの概略図である。
【図3】油圧システムの一部の回路図である。
【図4】コントロールバルブの一部の回路図である。
【図5】コントロールバルブの他の一部の回路図である。
【図6】コントロールバルブの別の一部の回路図である。
【図7】油圧システムの流量制御部及び圧油供給ユニットの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1はバックホー(作業機)であり、該バックホー1は下部の走行体2と、この走行体2上に上下方向の旋回軸心回りに全旋回可能に搭載された上部の旋回体3とから主構成されている。
走行体2は、油圧モータからなる走行モータML,MRによって無端帯状のクローラベルト4を周方向に循環回走させるように構成したクローラ式走行装置5をトラックフレーム6の左右両側に備えている。
【0025】
前記トラックフレーム6の前部には、ドーザ装置7が設けられている。このドーザ装置7は、後端側がトラックフレーム6に枢支連結されていて上下揺動可能な支持アーム8の前端側にブレード9を備えてなり、前記支持アーム8は、油圧シリンダからなるドーザシリンダC1の伸縮によって上げ・下げ駆動される。
旋回体3は、トラックフレーム6上に旋回軸心回りに回動自在に搭載された旋回台10と、この旋回台10の前部に装備された掘削作業装置11と、旋回台10上に搭載されたキャビン12とを備えている。
【0026】
旋回台10には、エンジンE、ラジエータ、燃料タンク、作動油タンク、バッテリー等が設けられており、該旋回台10は、油圧モータからなる旋回モータMTによって旋回駆動される。
また、旋回台10の前部には、該旋回台10から前方突出状に支持ブラケット13が設けられ、この支持ブラケット13には、スイングブラケット14が上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されている。このスイングブラケット14は、油圧シリンダからなるスイングシリンダC2によって左右に揺動駆動される。
【0027】
掘削作業装置11は、基部側がスイングブラケット14の上部に左右軸回りに回動自在に枢支連結されて上下揺動自在とされたブーム15と、このブーム15の先端側に左右軸回りに回動自在に枢支連結されて前後揺動自在とされたアーム16と、このアーム16の先端側に左右軸回りに回動自在に枢支連結されて前後揺動自在とされたバケット17とから主構成されている。
【0028】
ブーム15は該ブーム15とスイングブラケット14との間に介装されたブームシリンダC3によって揺動駆動され、アーム16は該アーム16とブーム15との間に介装されたアームシリンダC4によって揺動駆動され、バケット17は該バケット17とアーム16との間に介装されたバケットシリンダC5によって揺動駆動される。
前記ブームシリンダC3、アームシリンダC4及びバケットシリンダC5は油圧シリン
ダによって構成されている。
【0029】
また、バックホー1にあっては、アーム16の先端側に、例えば、バケット17の代わりに油圧ブレーカ等の油圧アタッチメントを取り付けて使用することが可能とされている。
次に、図2〜図7を参照してバックホー1に装備された各種油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5を作動させるための油圧システムについて説明する。
【0030】
油圧システムは、図2に示すように、コントロールバルブCVと、圧油供給ユニット18と、流量制御部19とを有する。
前記コントロールバルブCVは、各種油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5を制御する制御バルブV1〜10、圧油取入れ用のインレットブロックB2油排出用の一対のアウトレットブロックB1,B3を一方向に配置して集約してなるものである。
【0031】
このコントロールバルブCVは、本実施形態では、第1アウトレットブロックB1、バケットシリンダC5を制御するバケット用制御バルブV1、ブームシリンダC3を制御するブーム用制御バルブV2、ドーザシリンダC1を制御するドーザ用第1制御バルブV3、右側のクローラ式走行装置5の走行モータMRを制御する走行右用制御バルブV4、インレットブロックB2、左側のクローラ式走行装置5の走行モータMLを制御する走行左用制御バルブV5、ドーザシリンダC1を制御するドーザ用第2制御バルブV6、アームシリンダC4を制御するアーム用制御バルブV7、旋回モータMTを制御する旋回用制御バルブV8、スイングシリンダC2を制御するスイング用制御バルブV9、アーム16に取り付けられる油圧アタッチメントを制御するSP用制御バルブV10、第2アウトレットブロックB3を、順に配置(図2においては右から順に配置)すると共にこれらを相互に連結してなる。
【0032】
図3〜図6に示すように、前記各制御バルブV1〜10は、バルブボディ内に方向切換弁DV1〜10と圧力補償弁V11とを組み込んでなる。
前記方向切換弁DV1〜10は、制御対象となる油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に対して圧油の方向を切り換えるものであり、圧力補償弁V11は、方向切換弁DV1〜10に対する圧油供給下手側で且つ制御対象となる油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に対する圧油供給上手側に配備されている。
【0033】
第1アウトレットブロックB1には第1リリーフ弁V12と第1アンロード弁V13とが組み込まれ、インレットブロックB2には走行独立弁V14が組み込まれ、第2アウトレットブロックB3には第2リリーフ弁V15と第2アンロード弁V16とが組み込まれている。
前記各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10と前記走行独立弁V14とは、直動スプール形切換弁から構成されていると共にパイロット圧によって切換操作されるパイロット操作切換弁によって構成されている。
【0034】
また、各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10は、各方向切換弁DV1〜10を操作する各操作手段の操作量に比例してスプールが動かされて、該スプールの動かされた量に比例する量の圧油を制御対象の油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に供給するように構成されている(各操作手段の操作量に比例して操作対象の油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5の作動速度が変速可能とされている)。
【0035】
また、前記ドーザ用第1制御バルブV3の方向切換弁DV3とドーザ用第2制御バルブV6の方向切換弁DV6とは、ドーザ装置7を操作する一本のドーザレバー等の操作手段によって同時に作動する。
この油圧システムにおける圧油供給源としての油圧ポンプは、油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5を作動させる作動油の供給用の第1ポンプ21と、パイロット圧や検出信号等の信号圧油の供給用の第2ポンプ22とが装備されている。
【0036】
これら第1ポンプ21と第2ポンプ22とは、前記圧油供給ユニット18に備えられ、旋回台10に搭載されたエンジンEによって駆動される。
前記第1ポンプ21は、本実施形態では、独立した2つの圧油吐出ポートP1,P2から等しい量の圧油を吐出する等流量ダブルポンプの機能を有する斜板形可変容量アキシャ
ルポンプで構成されている。
【0037】
詳しくは、第1ポンプ21は、1つのピストン・シリンダバレルキットからバルブプレートの内外に形成した吐出溝へ交互に圧油を吐き出す機構をもったスプリットフロー式の油圧ポンプが採用されている。
この第1ポンプ21から吐出される一方の圧油吐出ポートP1を第1圧油吐出ポートP1といい、他方の圧油吐出ポートP2を第2圧油吐出ポートP2という。
【0038】
なお、本実施形態では、2つのポンプ機能を有する油圧ポンプから吐出される圧油吐出ポートを第1・2圧油吐出ポートP1,P2としているが、別個に形成された2つの油圧ポンプの一方の油圧ポンプの圧油吐出ポートを第1圧油吐出ポートとし、他方の油圧ポンプの圧油吐出ポートを第2圧油吐出ポートとしてもよい。
また、圧油供給ユニット18には、第1ポンプ21の斜板を押圧する押圧ピストン23と、第1ポンプ21の斜板を制御する流量補償用ピストン24とが装備されている。
【0039】
第1ポンプ21は、該第1ポンプ21の自己圧によって押圧ピストン23を介して斜板がポンプ流量を増加する方向に押圧されるよう構成されていると共に、この押圧ピストン23の押圧力に対抗する力を前記流量補償用ピストン24によって斜板に作用させるように構成され、流量補償用ピストン24に作用する圧力を制御することにより、該第1ポンプ21の吐出流量が制御される。
【0040】
したがって、流量補償用ピストン24に作用する圧力が抜けると、第1ポンプ21は、斜板角がMAXとなって最大流量を吐出する。
前記流量制御部19は第1ポンプ21の斜板制御を行うものであり、該第1ポンプ21の斜板制御は、前記流量補償用ピストン24に作用する圧力を、流量制御部19に装備された流量補償用バルブV17を制御することにより行われる。
【0041】
また、圧油供給ユニット18には、第1ポンプ21のポンプ馬力(トルク)制御用のバネ25とスプール26とが設けられており、第1ポンプ21の吐出圧が、予め設定していた圧力になると、第1ポンプ21がエンジンEから吸収する馬力(トルク)を制限するよう構成されている。
前記第2ポンプ22は定容量形のギヤポンプによって構成されており、該第2ポンプ22の吐出油は第3圧油吐出ポートP3から吐出される。
【0042】
第1圧油吐出ポートP1は第1吐出路aを介してインレットブロックB2に接続され、第2圧油吐出ポートP2は第2吐出路bを介してインレットブロックB2に接続されている。
第1吐出路aは第1圧油供給路dに接続され、該第1圧油供給路dは、インレットブロックB2から走行右用制御バルブV4のバルブボディ→ドーザ用第1制御バルブV3のバルブボディ→ブーム用制御バルブV2のバルブボディ→バケット用制御バルブV1のバルブボディを経て第1アウトレットブロックB1に至るように形成され、該第1アウトレットブロックB1にて(流路終端側にて)分岐されて第1リリーフ弁V12と第1アンロード弁V13とに接続されている。
【0043】
前記第1圧油供給路dから走行右用制御バルブV4、ドーザ用第1制御バルブV3、ブーム用制御バルブV2、バケット用制御バルブV1の各方向切換弁DV4,DV3,DV2,DV1に圧油分岐路fを介して作動油が供給可能とされている。
第1リリーフ弁V12と第1アンロード弁V13とはドレン油路gに接続され、該ドレン油路gは、第1アウトレットブロックB1からバケット用制御バルブV1のバルブボディ→ブーム用制御バルブV2のバルブボディ→ドーザ用第1制御バルブV3のバルブボディ→走行右用制御バルブV4のバルブボディ→インレットブロックB2→走行左用制御バルブV5のバルブボディ→ドーザ用第2制御バルブV6のバルブボディ→アーム用制御バルブV7のバルブボディ→旋回用制御バルブV8のバルブボディ→スイング用制御バルブV9のバルブボディ→SP用制御バルブV10のバルブボディを経て第2アウトレットブロックB3に至り、ここからタンクTに排出される。
【0044】
第2吐出路bは第2圧油供給路eに接続され、この第2圧油供給路eはインレットブロックB2から走行左用制御バルブV5のバルブボディ→ドーザ用第2制御バルブV6のバ
ルブボディ→アーム用制御バルブV7のバルブボディ→旋回用制御バルブV8のバルブボディ→スイング用制御バルブV9のバルブボディ→SP用制御バルブV10のバルブボディを経て第2アウトレットブロックB3に至るように形成され、該第2アウトレットブロックB3にて(流路終端側にて)分岐されて第2リリーフ弁V15と第2アンロード弁V16とに接続されている。
【0045】
前記第2圧油供給路eから走行左用制御バルブV5、ドーザ用第2制御バルブV6、アーム用制御バルブV7、旋回用制御バルブV8、スイング用制御バルブV9、SP用制御バルブV10の各方向切換弁DV5,DV6,DV7,DV8,DV9,DV10に圧油分岐路hを介して作動油が供給可能とされている。
第2リリーフ弁V15と第2アンロード弁V16とは前記ドレン油路gに接続されている。
【0046】
第1圧油供給路dと第2圧油供給路eとは、インレットブロックB2内において、走行独立弁V14を横切る連通路jを介して相互に接続されている。
走行独立弁V14は、連通路jの圧油流通を遮断する独立位置27と、連通路jの圧油流通を許容する合流位置28とに切換自在とされている。
したがって、走行独立弁V14が独立位置27に切り換えられていると、第1圧油吐出ポートP1からの圧油が走行右用制御バルブV4、ドーザ用第1制御バルブV3の各方向切換弁DV4,DV3に供給可能とされると共に、第2圧油吐出ポートP2からの圧油が走行左用制御バルブV5、ドーザ用第2制御バルブV6の各方向切換弁DV5,DV6に供給可能とされ、第1圧油吐出ポートP2からの圧油が走行左用制御バルブV5、ドーザ用第2制御バルブV6には供給されず、また、第2圧油吐出ポートP2からの圧油が走行右用制御バルブV4、ドーザ用第1制御バルブV3には供給されない。
【0047】
また、走行独立弁V14が合流位置28に切り換えられると、第1圧油吐出ポートP1からの圧油と第2圧油吐出ポートP2からの圧油とが合流されて各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10に供給可能とされる。
第3圧油吐出ポートP3は第3吐出路mを介してインレットブロックB2に接続され、該第3吐出路mは、途中で第1分岐油路m1と第2分岐油路m2とに分岐されてインレットブロックB2に接続されている。
【0048】
第1分岐油路m1は第1信号油路n1を介して走行独立弁V14の一側の受圧部14aに接続され、第2分岐油路m2は第2信号油路n2を介して走行独立弁V14の他側の受圧部14bに接続されている。
前記第1信号油路n1には第1検出油路r1が接続され、前記第2信号油路n2には第2検出油路r2が接続されている。
【0049】
前記第1検出油路r1は、第1信号油路n1からドーザ用第2制御バルブV6の方向切換弁DV6→走行左用制御バルブV5の方向切換弁DV5→走行右用制御バルブV4の方向切換弁DV4→ドーザ用第1制御バルブV3の方向切換弁DV3を経てドレン油路gに接続されている。
前記第2検出油路r2は、第2信号油路n2からSP用制御バルブV10の方向切換弁DV10→スイング用制御バルブV9の方向切換弁DV9→旋回用制御バルブV8の方向切換弁DV8→アーム用制御バルブV7の方向切換弁DV7→ドーザ用第2制御バルブV6の方向切換弁DV6→走行左用制御バルブV5の方向切換弁DV5→走行右用制御バルブV4の方向切換弁DV4→ドーザ用第1制御バルブV3の方向切換弁DV3→ブーム用制御バルブV2の方向切換弁DV2→バケット用制御バルブV1の方向切換弁DV1を経てドレン油路gに接続されている。
【0050】
前記走行独立弁V14は、各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10が中立である場合は、バネの力によって合流位置28に保持されている。
そして、走行右用制御バルブV4、走行左用制御バルブV5、ドーザ用第1制御バルブV3、ドーザ用第2制御バルブV6の各方向切換弁DVのいずれかが中立位置から操作されたときに、第1検出油路r1及び第1信号油路n1に圧が立って、走行独立弁V14が合流位置28から独立位置27に切り換えられる。
【0051】
したがって、走行のみする場合、走行しながらドーザ装置7を使用する場合、又は、ドーザ装置7のみ使用する場合には、第1圧油吐出ポートP1からの圧油が走行右用制御バルブV4、ドーザ用第1制御バルブV3の各方向切換弁DVに供給され、且つ、第2圧油吐出ポートP2からの圧油が走行左用制御バルブV5、ドーザ用第1制御バルブV3の各方向切換弁DVに供給される。
【0052】
このとき、SP用制御バルブV10、スイング用制御バルブV9、旋回用制御バルブV8、アーム用制御バルブV7、ブーム用制御バルブV2、バケット用制御バルブV1の方向切換弁DV10,DV9,DV8,DV7,DV2,DV1のいずれかが中立位置から操作されたときには、第2検出油路r2及び第2信号油路n2に圧が立って、走行独立弁V14が独立位置27から合流位置28に切り換えられる。
【0053】
また、各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10が中立である場合において、SP用制御バルブV10、スイング用制御バルブV9、旋回用制御バルブV8、アーム用制御バルブV7、ブーム用制御バルブV2、バケット用制御バルブV1の方向切換弁DV10,DV9,DV8,DV7,DV2,DV1のいずれかが中立位置から操作されたときにも、走行独立弁V14は合流位置28である。
【0054】
したがって、非走行時又は走行時において、ブーム15、アーム16、バケット17、スイングブラケット14、旋回台10、ドーザ装置7の同時操作が可能とされている。
また、この油圧システムにあっては、エンジンEのアクセル装置を自動的に操作するオートアイドリング制御システム(AIシステム)が備えられている。
このAIシステムは、第3吐出路mの第1分岐油路m1と第2分岐油路m2とに感知油路s及びシャトル弁V18を介して接続された圧力スイッチ29と、エンジンEのガバナを制御する電気アクチュエータと、この電気アクチュエータを制御する制御装置とを備え、前記圧力スイッチ29は制御装置に接続されている。
【0055】
このAIシステムにあっては、各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10が中立であるときには、第1分岐油路m1と第2分岐油路m2とに圧が立たないので、圧力スイッチ29が感圧作動することがなく、この状態では、ガバナが、予め設定されているアイドリング位置にまでアクセルダウンするよう電気アクチュエータ等によって自動制御される。
【0056】
また、制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10のうちのいずれか一つでも操作されると、第1分岐油路m1又は第2分岐油路m2に圧が立ち、この圧が圧力スイッチ29によって感知されて該圧力スイッチ29が感圧作動する。すると、制御装置から電気アクチュエータ等に指令信号が出され、該電気アクチュエータ等によってガバナが設定されたアクセル位置までアクセルアップするよう自動制御される。
【0057】
また、この油圧システムにあってはロードセンシングシステムが採用されている。
本実施形態のロードセンシングシステムは、各制御バルブV1〜10に設けられた圧力補償弁V11、第1ポンプ21の斜板を制御する流量補償用ピストン24、前記流量制御部19に装備された流量補償用バルブV17、前記第1・2リリーフ弁V12,V15、前記第1・2アンロード弁V13,V16を有する。
【0058】
また、本実施形態のロードセンシングシステムは、圧力補償弁V11が方向切換弁DV1〜10に対する圧油供給下手側に配備されたアフターオリフィス型のロードセンシングシステムが採用されている。
このロードセンシングシステムにあっては、バックホー1に装備された油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5の複数を同時操作したとき、該油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5間の負荷の調整として圧力補償弁V11が機能し、低負荷圧側の制御バルブV1〜10に最高負荷圧との差圧分の圧力損失を発生させ、負荷の大きさによらず、方向切換弁DV1〜10のスプールの操作量に応じた流量を流す(配分する)ことができる。
【0059】
また、ロードセンシングシステムは、バックホー1に装備された各油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5の負荷圧に応じて第1ポンプ21の吐出量を制御して、負荷に必要とされる油圧動力を第1ポンプ21から吐出させることにより、動力の節約と操作
性を向上することができる。
本実施形態のロードセンシングシステムをさらに詳しく説明する。
【0060】
ロードセンシングシステムは、各制御バルブV1〜10の負荷圧のうちの最高の負荷圧をPLS信号圧として流量補償用バルブV17に伝達するPLS信号油路wと、第1ポンプ21の吐出圧をPPS信号圧として流量補償用バルブV17に伝達するPPS信号油路xとを有する。
PLS信号油路wは、第1アウトレットブロックB1からバケット用制御バルブV1のバルブボディ→ブーム用制御バルブV2のバルブボディ→ドーザ用第1制御バルブV3のバルブボディ→走行右用制御バルブV4のバルブボディにわたって設けられると共に、走行独立弁V14を横切って走行左用制御バルブV5のバルブボディ→ドーザ用第2制御バルブV6のバルブボディ→アーム用制御バルブV7のバルブボディ→旋回用制御バルブV8のバルブボディ→スイング用制御バルブV9のバルブボディ→SP用制御バルブV10のバルブボディ→第2アウトレットブロックB3にわたって設けられており、該PLS信号油路wは各制御バルブにおいて、圧力補償弁V11に負荷伝達ラインyを介して接続されている。
【0061】
また、このPLS信号油路wは、第2アウトレットブロックB3から流量補償用バルブV17のスプールの一側に接続され、PPS信号圧が流量補償用バルブV17のスプールの一側に作用する。
さらに、PLS信号油路wは、第1アウトレットブロックB1において第1アンロード弁V13とドレン油路gに接続され、第2アウトレットブロックB3において第2アンロード弁V16とドレン油路gに接続されている。
【0062】
前記走行独立弁V14が合流位置28にあるときには、PLS信号油路wの、走行独立弁V14から第1アウトレットブロックB1に至るラインw1と、走行独立弁V14から第2アウトレットブロックB3に至るラインw2とが連通しており、走行独立弁V14が合流位置28から独立位置27に切り換えられると、該走行独立弁V14にてPLS信号油路wが遮断される。
【0063】
これによって、PLS信号油路wが、走行独立弁V14を独立位置27にしたときに、第1圧油吐出ポートP1から圧油が供給される側のラインw1と、第2圧油吐出ポートP2から圧油が供給される側のラインw2とに分断される。
PPS信号油路xは、走行独立弁V14から流量補償用バルブV17のスプールの他側にわたって設けられており、該PPS信号油路xは、走行独立弁V14が合流位置28にあるときには第2圧油供給路eに接続油路zを介して連通されていてPPS信号圧(第1ポンプ21の吐出圧)が流量補償用バルブV17のスプールの他側に作用し、走行独立弁V14が独立位置27に切り換えられると、該PPS信号油路xは逃し油路qを介してドレン油路gに連通し、PPS信号圧が零となるよう構成されている。
【0064】
また、流量補償用バルブV17のスプールの一側には、該流量補償用バルブV17に制御差圧を与えるバネ30と差圧ピストン31とが設けられている。
前記構成の油圧システムにあっては、各制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10が中立位置にあるときには走行独立弁V14が合流位置28であり、このとき、第1圧油供給路dの流路終端側が第1アンロード弁V13によってブロックされ且つ第2圧油供給路eの流路終端側が第2アンロード弁V16によってブロックされるようになっている。したがって、第1ポンプ21の吐出圧(PPS信号圧)が上昇し、このPPS信号圧とPLS信号圧(この時は零である)との差が制御差圧よりも大きくなると、第1ポンプ21が吐出量を減少させる方向に流量制御されると共に第1・第2アンロード弁V16が開いて第1ポンプ21からの吐出油をタンクTに落とす。
【0065】
したがって、この状態では、第1ポンプ21の吐出圧は第1・第2アンロード弁V13,V16で設定される圧となり、第1ポンプ21の吐出流量は最小吐出量となる。
次に、ブームシリンダC3、アームシリンダC4、バケットシリンダC5、スイングシリンダC2、旋回モータMT、油圧アタッチメントのうちのいずれか二つ以上を同時操作する場合、又は、これらの一つ以上と、左右走行モータML,MR、ドーザシリンダC1
のうちのいずれか一つ以上とを同時操作する場合について説明する。
【0066】
この場合にあっては、走行独立弁V14は合流位置28であり、操作された油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に作用する最高負荷圧がPLS信号圧となり、PPS信号圧−PLS信号圧が制御差圧となるように(PPS信号圧とPLS信号圧との差を設定値に維持するように)第1ポンプ21の吐出圧(吐出流量)が自動制御される。
すなわち、第1・第2アンロード弁V13,V16を介してのアンロード流量が零になると、第1ポンプ21の吐出流量が増加し始め、操作された制御バルブの操作量に応じて第1ポンプ21の吐出油の全量が操作された油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に流れる。
【0067】
また、圧力補償弁V11によって、操作された制御バルブV1〜10の方向切換弁DV1〜10のスプールの前後差圧が一定となり、操作された油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に作用する負荷の大きさの違いにかかわらず、第1ポンプ21の吐出流量が、操作された各油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に対して操作量に応じた量、分流される。
【0068】
なお、油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5の要求流量が第1ポンプ21の最大吐出流量を超える場合は、第1ポンプ21の吐出油は操作された各油圧アクチュエータML,MR,MT,C1〜5に比例配分される。
前記場合にあっては、効率的なシステムで同時操作(複合操作)が可能となる。
次に、走行しながらドーザ装置7によって土工作業をする場合について説明する。
【0069】
この場合にあっては、走行独立弁V14が独立位置27に切り換えられ、該走行独立弁V14によって、連通路j及びPLS信号油路wが遮断され、また、PPS信号油路xは逃し油路qを介してドレン油路gに連通し、PPS信号圧が零となる。
したがって、第1圧油吐出ポートP1からの圧油は走行右用制御バルブV4及びドーザ用第1制御バルブV3に流れ、走行左用制御バルブV5及びドーザ用第2制御バルブV6には流れない。また、第2圧油吐出ポートP2からの圧油は走行左用制御バルブV5及びドーザ用第2制御バルブV6に流れ、走行右制御バルブV4及びドーザ用第1制御バルブV3には流れない。さらに、PPS信号圧が零であるので、第1ポンプ21は斜板角がMAXとなって最大流量を吐出する。
【0070】
本実施形態の油圧システムにあっては、ドーザ用第1制御バルブV3及びドーザ用第2制御バルブV6によって、第1圧油供給路dと第2圧油供給路eとから圧油が均等に抜き取られてドーザシリンダC1に送られるので、バックホー1の走行直進性を確保することができる。
また、バックホー1を左右一方にターンさせる場合にあっては、圧力補償弁V11が分流制御するため、走行モータML,MRにかかる負荷が高く、ドーザシリンダC1にかかる負荷が低くても、設定流量以上の圧油がドーザシリンダC1に流入しないことから、第1圧油吐出ポートP1からの圧油を走行右用制御バルブV4に、第2圧油吐出ポートP2からの圧油を走行左用制御バルブV5に、それぞれ独立して供給するという独立回路構成を維持でき且つ第1、2圧油吐出ポートP1,P2からの圧油が均等に抜き取られるので、左右の走行モータML,MRへの圧油供給流量が確保され、ターン性能を確保することができる。
【0071】
もし、ドーザシリンダを制御するドーザ用制御バルブが1つである場合、該ドーザ用制御バルブは、第1圧油供給路又は第2圧油供給路の一方から圧油が供給されるように設けられるが、この場合、該一方の圧油供給路からドーザシリンダに圧油がとられると、直進走行の場合には斜行するという問題が生じる。また、ターンする場合には、ドーザ用制御バルブを設けた側の圧油供給系統の圧力損失が大きく、動きが遅くなる(具体的には、第1圧油吐出ポートP1からの圧油供給系統にドーザ用制御バルブを設けた場合、ドーザ装置7を操作しながら左ターンする場合では動くが、ドーザ装置7を操作しながら右ターンする場合は、ドーザ装置7を操作した時点で、動きが遅くなる)。
【0072】
また、ドーザシリンダを制御するドーザ用制御バルブを1つとし、第1圧油供給路、及び第2圧油供給路の両方から均等にドーザ用制御バルブに圧油を送るように構成すること
が考えられるが、この場合、直進性を確保することは可能ではあるが、ターン性能が大幅に低下する。
すなわち、ターン時にあっては、ドーザシリンダに高圧側の圧油供給路から多くの流量の圧油が流入してしまう為にターン性能が大幅に低下するのである。
【0073】
また、この場合、第1圧油吐出ポートP1からの圧油か、或いは第2圧油吐出ポートP2からの圧油かのどちらの信号を基準に分流制御するのか、回路構成上決められないので、ロードセンシングシステムの構成が困難になる。
また、走行しながらドーザ装置7によって土工作業をする場合にあっては、走行独立弁V14が独立位置27になると、PLS信号油路wも遮断されるので、第1圧油吐出ポートP1からの圧油供給系統と第2圧油吐出ポートP2からの圧油供給系統との間で、負荷信号の干渉がなく、圧油を走行用制御バルブV4,V5とドーザ用制御バルブV3,V6とに分流し且つ余剰の圧油をアンロード弁V13,V16からタンクTへ排出させるという制御を、第1圧油吐出ポートP1からの圧油供給系統、第2圧油吐出ポートP2からの圧油供給系統のそれぞれの回路で独立して行うことができ、圧力補償弁V11の機能を確保することができる。
【0074】
また、走行体2のみ或いはドーザ装置7のみ駆動する場合も、前記走行しながらドーザ装置7によって土工作業をする場合と同様、走行独立弁V14が独立位置27に切り換えられ、該走行独立弁V14によって、連通路j及びPLS信号油路wが遮断され、また、PPS信号油路xは逃し油路を介してドレン油路gに連通し、PPS信号圧が零となる。
また、各走行用制御バルブV4,V5を第1ポンプ21の圧油吐出ポートP1,P2からの圧油供給系統の最上流側に配置しているので、第1ポンプ21から走行モータML,MRに至る油圧管路における圧損低減を図ることができる。
【0075】
なお、前記構成の油圧システムにあっては、第1ポンプ21は、スプリットフロー式の油圧ポンプが採用されていて、第1圧油吐出ポートP1からの吐出流量と、第2圧油吐出ポートP2からの吐出流量とを独立して制御できないものであるので、第1圧油供給路dと第2圧油供給路eとを独立させる際(合流させない場合)において、第1ポンプ21の吐出流量が最大となるように構成しているが、2つの油圧ポンプを設け、この2つの油圧ポンプのうちの一方の油圧ポンプの吐出ポートを第1圧油吐出ポートP1とし、他方の油圧ポンプの吐出ポートを第2圧油吐出ポートP2とする場合は、各油圧ポンプは、走行独立弁V14が独立位置27の場合でも、それぞれ独立に制御して、必要流量のみ吐出させるよう構成される(この場合でも、2つの油圧ポンプが合流時に同時に最大流量を吐出するように制御してもよい)。
【0076】
また、ドーザ装置7のみを操作したときに、走行独立弁V14が合流位置28になるように構成することも考えられるが、そうすると、走行しながらドーザ装置7を操作した場合において、走行独立弁V14を独立位置27に保持するために、ドーザ用制御バルブV3,V6の方向切換弁DV3,DV6を操作したことを検出するための第3の検出油路を設けなければならず、検出回路の回路構成構成が複雑化するが、本実施形態では、第1検出油路r1で走行用制御バルブV4,V5及び/又はドーザ用制御バルブV3,V6を操作したことを検出するよう構成しているので、検出回路の回路構成の簡素化を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態の油圧システムにあっては、走行用制御バルブV4,V5とドーザ用制御バルブV3,V6とを並べて配置し、且つ、一方の走行用制御バルブV4及び一方のドーザ用制御バルブV3と、他方の走行用制御バルブV5及び他方のドーザ用制御バルブV6とを走行独立弁V14を挟んで配置しているので、走行用制御バルブV4,V5及び/又はドーザ用制御バルブV3,V6を操作したことを検出する検出回路の回路構成の簡素化を図ることができる。
【0078】
なお、制御バルブV1〜10、インレットブロックB2の配列としては、図例の配列に限定されることはなく、2つの独立した圧油吐出ポートP1,P2からの圧油供給系統のうちの一方に、一方の走行用制御バルブV4,V5及び一方のドーザ用制御バルブV3,V6並びに一方のアウトレットブロックB1,B3を設け、他方の圧油供給系統に、他方
の走行用制御バルブV4,V5及び他方のドーザ用制御バルブV3,V6並びに他方のアウトレットブロックB1,B3を設けていれば、その他の制御バルブV1,V2,V7〜10の配置は特に限定はされない。
【0079】
また、各制御バルブV1〜10の配列方向の順番も限定されることはない。
【符号の説明】
【0080】
5 走行装置
7 ドーザ装置
27 独立位置
28 合流位置
19 流量制御部
P1 一方の圧油吐出ポート(第1圧油吐出ポート)
P2 他方の圧油吐出ポート(第2圧油吐出ポート)
ML 左側の走行モータ
MR 右側の走行モータ
MT 旋回モータ
C1 ドーザシリンダ
C2 スイングシリンダ
C3 ブームシリンダ
C4 アームシリンダ
C5 バケットシリンダ
V1 バケット用制御バルブ
V2 ブーム用制御バルブ
V3 ドーザ用第1制御バルブ
V4 走行右用制御バルブ
V5 走行左用制御バルブ
V6 ドーザ用第2制御バルブ
V7 アーム用制御バルブ
V8 旋回用制御バルブ
V9 スイング用制御バルブ
V10 SP用制御バルブ
V11 圧力補償弁
V13 アンロード弁
V14 走行独立弁
V16 アンロード弁
DV1〜10 方向切換弁
d 圧油供給路
e 圧油供給路
r1 第1検出油路
r2 第2検出油路
w PLS信号油路
w1 一方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のライン
w2 他方の圧油吐出ポートから圧油が供給される側のライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々の走行モータ(ML,MR)によって駆動される左右の走行装置(5)と、ドーザシリンダ(C1)によって駆動されるドーザ装置(7)とを備え、前記走行モータ(ML,MR)を制御する走行用制御バルブ(V4,V5)を左右走行装置(5)の各々に対して備え、前記走行モータ(ML,MR)、ドーザシリンダ(C1)以外に装備された他の油圧アクチュエータ(MT,C2〜5)を制御する他の制御バルブ(V1,V2,V7〜V10)を備え、独立した2つの圧油吐出ポート(P1,P2)を備えた作業機の油圧システムにおいて、
前記ドーザシリンダ(C1)を制御すべく同時に操作される一対のドーザ用制御バルブ(V3,V6)を設け、
他の制御バルブ(V1,V2,V7〜V10)を操作せずに走行装置(5)を操作したときに、一方の圧油吐出ポート(P1)からの圧油を一方の走行用制御バルブ(V4)及び一方のドーザ用制御バルブ(V3)に、他方の圧油吐出ポート(P2)からの圧油を他方の走行用制御バルブ(V5)及び他方のドーザ用制御バルブ(V6)に、それぞれ独立して供給可能とする独立位置(27)と、
少なくとも他の制御バルブ(V1,V2,V7〜V10)を操作したときに、一方の圧油吐出ポート(P1)からの圧油と他方の圧油吐出ポート(P2)からの圧油とを合流して他の制御バルブ(V1,V2,V7〜V10)及び各走行用制御バルブ(V4,V5)並びに各ドーザ用制御バルブ(V3,V6)に供給可能とする合流位置(28)とに切換自在な走行独立弁(V14)を設け、
前記各油圧アクチュエータ(ML,MR,MT,C1〜5)に作用する負荷の大きさにかかわらず操作量に応じた流量の圧油を各制御バルブ(V1〜V10)に対して配分するように機能する圧力補償弁(V11)を各制御バルブ(V1〜V10)に設けていることを特徴とする作業機の油圧システム。
【請求項2】
各制御バルブ(V1〜V10)は圧油の方向を切り換える方向切換弁(DV1〜10)を備え、
各走行用制御バルブ(V4,V5)及び各ドーザ用制御バルブ(V3,V6)の方向切換弁(DV3〜6)のいずれかを操作したときに走行独立弁(V14)を独立位置(27)に切り換えるべく、該方向切換弁(DV3〜6)のいずれかを操作したことを検出する第1検出油路(r1)と、
他の制御バルブ(V1,V2,V7〜V10)の方向切換弁(DV1,DV2,DV7〜10)を操作したときに走行独立弁(V14)を合流位置(28)に切り換えるべく、該方向切換弁(DV1,DV2,DV7〜10)を操作したことを検出する第2検出油路(r2)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
各制御バルブ(V1〜V10)を一方向に並べて配置し、一方の走行用制御バルブ(V4)と一方のドーザ用制御バルブ(V3)とを並べて配置すると共に、他方の走行用制御バルブ(V5)と他方のドーザ用制御バルブ(V6)とを並べて配置し、且つ、一方の走行用制御バルブ(V4)及び一方のドーザ用制御バルブ(V3)と、他方の走行用制御バルブ(V5)及び他方のドーザ用制御バルブ(V6)とを走行独立弁(V14)を挟んで配置していることを特徴とする請求項2に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記圧油吐出ポート(P1,P2)の吐出圧と、操作された油圧アクチュエータ(ML,MR,MT,C1〜5)に作用する負荷圧のうちの最高の負荷圧との差を設定値に維持するように圧油吐出ポート(P1,P2)の吐出流量を自動制御する流量制御部(19)を備え、
各制御バルブ(V1〜V10)の圧力補償弁(V11)の各々に負荷伝達ライン(y)を介して接続されていて、操作された油圧アクチュエータ(ML,MR,MT,C1〜5
)に作用する最高の負荷圧を流量制御部(19)に伝達するPLS信号油路(w)を備え、
このPLS信号油路(w)が、前記走行独立弁(V14)を独立位置(27)にしたときに、一方の圧油吐出ポート(P1)から圧油が供給される側のライン(w1)と、他方の圧油吐出ポート(P2)から圧油が供給される側のライン(w2)とに分断されるよう構成され、
一方の圧油吐出ポート(P1)からの圧油を流通させる圧油供給路(d)と、他方の圧油吐出ポート(P2)からの圧油を流通させる圧油供給路(e)との各々の流路終端側にアンロード弁(V13,V16)を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−67459(P2012−67459A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210938(P2010−210938)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】