説明

作業機の走行用操作装置

【課題】 走行レバーの操作領域が広くて調整領域が大きくなり、作業機を容易かつスムーズにソフトターンさせることができると共に、スピンターン、ピポットターンをゆっくりした適当な速さでなし得るようにする。
【解決手段】 走行レバーを傾動操作することにより、走行レバーの傾動方向に対応した2つのパイロット弁が選択的に操作され、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対応したパイロット圧が該操作された2つのパイロット弁から油圧駆動装置に出力されて、作業機を前進又は後進しながら右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置が走行モータを駆動するようにした作業機の走行用操作装置において、
走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量が小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式の走行モータを有する左右一対の走行装置を備え、左右の走行モータを駆動する油圧駆動装置が設けられた作業機の走行用操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックローダ等の作業機には、従来より油圧式の走行モータを有する左右一対の走行装置を備え、左右の走行モータを駆動する油圧駆動装置が設けられたものがあり、この種の従来の作業機の走行用操作装置では、前進用パイロット弁と、後進用パイロット弁と、右旋回用パイロット弁と、左旋回用パイロット弁と、これらパイロット弁について共通の走行レバーとを有し、走行レバーは、中立位置から前後左右と前後左右の間の斜め方向とに傾動操作可能とされ、走行レバーを前後左右に傾動操作することにより、走行レバーの傾動方向に対応した各パイロット弁が択一的に操作され、走行レバーの中立位置からの操作量に対応したパイロット圧が該操作されたパイロット弁から油圧駆動装置に出力されて、作業機を前進、後進、右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置が左右の走行モータを駆動し、走行レバーを前後左右の間の斜め方向に傾動操作することにより、走行レバーの傾動方向に対応した前進用パイロット弁又は後進用パイロット弁と、右旋回用パイロット弁又は左旋回用パイロット弁との2つのパイロット弁が選択的に操作され、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対応したパイロット圧が該操作された2つのパイロット弁から油圧駆動装置に出力されて、作業機が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回させるべく、油圧駆動装置が、前記操作された2つのパイロット弁の出力するパイロット圧の差圧によって、走行モータを駆動するようにしたものがある。
【0003】
この種の従来の作業機の走行用操作装置では、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量と、右旋回用パイロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量が同一になるように設定するのが一般的であった(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−299710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量と、右旋回用イロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量とが同一になるように設定されていたので、走行レバーの前後左右への傾動操作に対する作業機の前進、後進、左旋回、右旋回に対して、走行レバーの前後左右の間の斜め方向への傾動操作による作業機のソフトターン領域及びピポット・スピンターン領域が、例えば図12に示すように小さくなり、走行レバーの傾動操作により旋回する際に、操作領域が狭く、調整領域が小さいため、作業機が敏感に左右に旋回してしまい、ソフトターンの操作がやりづらいという問題があった。また、スピンターン、ピポットターンのスピードが速くなりすぎるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、走行レバーの傾動操作により旋回する際に、操作領域が広くて、調整領域が大きくなり、作業機を容易かつスムーズにソフトターンさせることができると共に、スピンターン、ピポットターンをゆっくりした適当な速さでなし得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、油圧式の走行モータを有する左右一対の走行装置を備え、左右の走行モータを駆動する油圧駆動装置が設けられた作業機の走行用操作装置であって、
前進用パイロット弁と、後進用パイロット弁と、右旋回用パイロット弁と、左旋回用パイロット弁と、これらパイロット弁について共通の走行レバーとを有し、走行レバーは、中立位置から前後左右と前後左右の間の斜め方向とに傾動操作可能とされ、
走行レバーを前後左右に傾動操作することにより、走行レバーの傾動方向に対応したパイロット弁が択一的に操作され、走行レバーの操作量に対応したパイロット圧が該操作されたパイロット弁から油圧駆動装置に出力されて、作業機を前進、後進、右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置が左右の走行モータを駆動し、走行レバーを前後左右の間の斜め方向に傾動操作することにより、走行レバーの傾動方向に対応した前進用パイロット弁又は後進用パイロット弁と、右旋回用パイロット弁又は左旋回用パイロット弁との2つのパイロット弁が選択的に操作され、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対応したパイロット圧が該操作された2つのパイロット弁から油圧駆動装置に出力されて、作業機を前進又は後進しながら右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置が走行モータを駆動するようにした作業機の走行用操作装置において、
走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量が小さくなるように設定されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記各パイロット弁はこれらに共通のボディーに組み込まれ、ボディーに各パイロット弁に対応するポンプポートと出力ポートとタンクポートとが設けられ、前記各パイロット弁は、走行レバーの前後左右の対応する成分方向の操作量に応じて走行レバーにより押圧操作されるプッシュロッドと、プッシュロッドにより押圧されるスプリング座と、中立位置から動作位置に向けて移動自在に支持されかつ出力ポートのパイロット圧によって動作位置側から中立位置側に向けて押されるスプールと、スプリング座に対してスプールを中立位置から動作位置に向けて付勢するバランススプリングと、スプリング座をプッシュロッドに接当させるべくスプリング座をプッシュロッドに向けて付勢するリターンスプリングとを有し、スプールが中立位置にあるときに出力ポートとタンクポートとを連通すると共にポンプポートを閉じ、スプールが動作位置Aにあるときに出力ポートとポンプポートとを連通すると共にタンクポートを閉じるように各スプールに連通孔が設けられ、
走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量が小さくなるように、前進用パイロット弁と後進用パイロット弁とのバランススプリングに比べて右旋回用パイロット弁と左旋回用パイロット弁とのバランススプリングの弾性係数が小さく設定されている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、走行レバーを前側に傾動させると前進用パイロット弁が操作されて該前進用パイロット弁からパイロット圧が出力され、走行レバーを後側に傾動させると後進用パイロット弁が操作されて該後進用パイロット弁からパイロット圧が出力され、走行レバーを右側に傾動させると右旋回用パイロット弁が操作されて該右旋回用パイロット弁からパイロット圧が出力され、走行レバーを左側に傾動させると左旋回用パイロット弁が操作されて該左旋回用パイロット弁からパイロット圧が出力されるように構成され、
走行レバーを左斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁と左旋回用パイロット弁とが操作されて、前進用パイロット弁と左旋回用パイロット弁とからパイロット圧が出力され、走行レバーを右斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁と右旋回用パイロット弁とが操作されて、前進用パイロット弁と右旋回用パイロット弁とからパイロット圧が出力され、走行レバーを左斜め前側に傾動操作すると、後進用パイロット弁と左旋回用パイロット弁とが操作されて、後進用パイロット弁と左旋回用パイロット弁とからパイロット圧が出力され、走行レバーを右斜め後側に傾動操作すると、後進用パイロット弁と右旋回用パイロット弁とが操作されて、後進用パイロット弁と右旋回用パイロット弁とからパイロット圧が出力されるように構成されている点にある。
【0009】
また、本発明の他の技術的手段は、前進用パイロット弁からのパイロット圧で左走行モータを正転駆動すると共に右走行モータを正転駆動し、後進用パイロット弁からのパイロット圧で左走行モータを逆転駆動すると共に右走行モータを逆転駆動し、右旋回用パイロット弁からのパイロット圧で左走行モータを正転駆動すると共に右走行モータを逆転駆動し、左旋回用パイロット弁からのパイロット圧で右走行モータが正転駆動すると共に左走行モータが逆転駆動するように、前記油圧駆動装置が構成されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前進用パイロット弁のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁のパイロット圧で、右走行モータを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁のパイロット圧と左旋回用パイロット弁のパイロット圧との差圧で、左走行モータを正転駆動し、前進用パイロット弁のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁のパイロット圧で、左走行モータを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁のパイロット圧と右旋回用パイロット弁のパイロット圧との差圧で、右走行モータを正転駆動し、後進用パイロット弁のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁のパイロット圧で、左走行モータを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁のパイロット圧と左旋回用パイロット弁のパイロット圧との差圧で、右走行モータを逆転駆動し、後進用パイロット弁のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁のパイロット圧で、右走行モータを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁のパイロット圧と右旋回用パイロット弁のパイロット圧との差圧で、左走行モータが逆転駆動するように、前記油圧駆動装置が構成されている点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行レバーの前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁及び後進用パイロット弁のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁及び左旋回用パイロット弁のパイロット圧の変化量が小さくなるように設定されているので、走行レバーの傾動操作によって旋回する際に、操作領域が広く調整領域が大きくなるため、走行レバーの比較的大きな操作量で作業機を緩やかに左右に旋回させることが可能になり、ソフトターンが容易かつスムーズにできるようになる。また、スピンターン、ピポットターンをゆっくりした適当な速さでなし得て、より簡単にスピンターン、ピポットターンができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図9及び図10において、本発明に係る作業機(トラックローダ)1は、機体フレーム2と、この機体フレーム2に装着した作業装置3と、機体フレーム2を支持する左右一対の走行装置4とを備え、機体フレーム2の前部側にキャビン5(運転者保護装置)が搭載されている。
機体フレーム2は、鉄板等により構成されていて、底壁6と、左右一対の側壁7と、前壁8と、左右各側壁7の後部に設けられた支持枠体9とを備え、側壁7間は上方に開放状とされ、この機体フレーム2の後端部には、左右一対の支持枠体9間の後端開口を塞ぐ蓋部材10が開閉自在に設けられている。
【0012】
前記キャビン5は、前下端が機体フレーム2の前壁8の上縁部8aに接当載置されていると共に、背面の上下中途部が機体フレーム2の支持ブラケット11に、左右方向の支持軸12廻りに揺動自在に支持されており、前記支持軸12回りにキャビン5を上方に揺動することにより機体フレーム2内のメンテナンス等ができるよう構成されている。
キャビン5内には運転席13が設けられ、この運転席13の左右一側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置され、運転席13の左右他側(例えば、右側)には、作業装置3を操作するための作業用操作装置15が配置されている。
【0013】
キャビン5は上面が屋根で塞がれ、左右の側面が多数の角孔を形成した側壁で塞がれ、背面上部がリヤガラスで塞がれ、底面の前後方向中央部が底壁により塞がれていて、前方が開口した箱形に形成され、前面側が乗降口とされている。
左右の各走行装置4は、前後一対の従動輪16と、前後の従動輪16間の上方で且つ後部寄りに配置した駆動輪17と、前後の従動輪16間に配置した複数の転輪18と、これら前後従動輪16,駆動輪17及び転輪18にわたって巻き掛けられた無端帯状のクローラベルト19とを備えてなるクローラ式走行装置により構成されている。
【0014】
前後従動輪16及び転輪18は、機体フレーム2に取付固定されたトラックフレーム20に横軸回りに回転自在に取り付けられ、駆動輪17は前記トラックフレーム20に取り付けられた油圧式の走行モータ21L,21R(ホイルモータ)の回転ドラムに取り付けられ、該走行モータ21L,21Rによって駆動輪17を左右軸回りに回転駆動することによりクローラベルト19が周方向に循環回走され、これにより、作業機1が前後進するように構成されている。
作業装置3は、左右一対のブーム22と、該ブーム22の先端に装着したバケット23(作業具)とを備える。
【0015】
左右一対のブーム22は、機体フレーム2及びキャビン5の左右両側に配置され、左右のブーム22はその前部側の中途部において連結体によって相互に連結されている。
左右の各ブーム22は、該ブーム22の先端側が機体フレーム2の前方側で昇降するように、その基部側(後部側)が機体フレーム2の後上部に第1リフトリンク24と第2リフトリンク25とを介して上下揺動自在に支持されている。
また、左右の各ブーム22の基部側と機体フレーム2の後下部との間には、複動式油圧シリンダからなるリフトシリンダ26が設けられていて、左右のリフトシリンダ26を左右同時に伸縮させることにより左右のブーム22が上下に揺動動作する。
【0016】
左右の各ブーム22の先端側には、それぞれ装着ブラケット27が左右軸回りに回動自在に枢支連結され、左右の装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
また、装着ブラケット27とブーム22の先端側中途部との間には、複動式油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が介装され、このチルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動動作(スクイ・ダンプ動作)するように構成されている。
バケット23は装着ブラケット27に対して着脱自在とされており、バケット23を取り外して装着ブラケット27に各種のアタッチメント(油圧駆動式の作業具)を取り付けることで、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
【0017】
機体フレーム2の底壁6上の後側にはエンジン29が設けられ、機体フレーム2の底壁6上の前側には燃料タンク30と作動油タンク31とが設けられている。
エンジン29の前方には左右の走行モータ21L,21Rを駆動する油圧駆動装置32が設けられ、油圧駆動装置32の前方に第1〜3ポンプP1,P2,P3が設けられ、機体フレーム2の右側壁7の前後方向中途部に、作業装置3用のコントロールバルブ33(油圧制御装置)が設けられている。
次に、図1を参照して、作業機1の走行系の油圧システムについて説明する。
【0018】
第1〜3ポンプP1,P2,P3は、エンジン29の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプによって構成され、第1ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用され、第2ポンプP2は、主として制御信号圧力の供給用に使用され、第3ポンプP3(サブポンプ)は、ブーム22の先端側に取り付けられる油圧駆動式のアタッチメントの油圧アクチュエータが大容量を必要とする油圧アクチュエータである場合に該油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を増量するのに使用される。
【0019】
走行用操作装置14は、前進用パイロット弁36と、後進用パイロット弁37と、右旋回用パイロット弁38と、左旋回用パイロット弁39と、これらパイロット弁36,37,38,39について共通の走行レバー40と、第1〜4シャトル弁41,42,43,44とを有する。
走行用操作装置14の各パイロット弁36,37,38,39には、電磁方式の2位置切換弁からなる走行ロック弁46を励磁することにより第2ポンプP2からの圧油が供給可能とされ、該走行ロック弁46が消磁されることにより第2ポンプP2からの圧油が供給不能とされて走行用操作装置14が操作不能となるように構成されている。
【0020】
左右の各走行モータ21L,21Rは、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータによって構成された油圧モータ47と、この油圧モータ47の斜板の角度を切り換えることにより油圧モータ47を高低2速に変速操作する斜板切換シリンダ48と、油圧モータ47の出力軸(走行モータ21L,21Rの出力軸)を制動するブレーキシリンダ49と、フラシッング弁50と、フラシッング用のリリーフ弁51とを有する。
斜板切換シリンダ48は、第2ポンプP2からの制御信号圧力が作用していないときには油圧モータ47を1速状態とし、電磁方式の2位置切換弁からなる2速切換弁45を操作手段によって励磁することにより該斜板切換シリンダ48に第2ポンプP2からの制御信号圧力が作用して作動し、油圧モータ47を2速状態に切り換える。
【0021】
ブレーキシリンダ49は、バネの付勢力によって油圧モータ47の出力軸を制動し、電磁方式の2位置切換弁からなるブレーキ解除弁52を励磁することにより該ブレーキシリンダ49に第2ポンプP2からの制御信号圧力が作用して、油圧モータ47の出力軸の制動を解除する。
前記走行ロック弁46及びブレーキ解除弁52には、例えば、キャビン5から降りる時に操作されるロックレバーによって同時に消磁信号が送られ、解除スイッチによって同時に励磁信号が送られる。
【0022】
フラシッンブ弁50及びフラシッンブ用のリリーフ弁については後述する。
油圧駆動装置32は、左走行モータ21L用の駆動回路32A(左用駆動回路)と、右走行モータ21R用の駆動回路32B(右用駆動回路)とを備えており、各駆動回路32A,32Bは、一対の変速用油路a,bによって対応する走行モータ21L,21Rの油圧モータ47に接続された油圧ポンプ53と、高圧側の変速用油路a,bの圧が設定以上になると低圧側の変速用油路a,bに逃がす高圧リリーフ弁54と、第2ポンプP2からの圧油をチェック弁55を介して低圧側の変速用油路a,bに補充するためのチャージ油路cとを備えている。
【0023】
前記チャージ油路cには、第2ポンプP2からの圧油がチャージ圧供給路dを介して供給可能とされ、左用駆動回路32Aには、各駆動回路32A,32Bのチャージ油路cの回路圧を設定するチャージリリーフ弁56が設けられている。
各駆動回路32A,32Bの油圧ポンプ53は、エンジン29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプであると共にパイロット圧で斜板の角度が変更されるパイロット方式の油圧ポンプであり、パイロット圧が作用する前進用受圧部53aと後進用受圧部53bとを備えており、これら受圧部53a,53bに作用するパイロット圧によって斜板角度が変更されて作動油の吐出方向及び吐出量が変更され、これによって走行モータ21L,21Rの回転出力を作業機1を前進させる方向(正転方向)或いは作業機1を後進させる方向(逆転方向)に無段階に変速することができるよう構成されている。
【0024】
走行モータ21L,21Rのフラシッンブ弁50は、高圧側の変速用油路a,bの圧によって低圧側の変速用油路a,bをフラシッンブ用リリーフ弁51に接続するように切り換えられ、低圧側の変速用油路a,bに作動油を補充させるべく該低圧側の変速用油路a,bの作動油の一部をフラシッンブ用リリーフ弁51を介して逃がすものである。
走行モータ21L,21Rの油圧モータ47及びフラシッンブ弁50等と駆動回路32A,32Bと一対の変速用油路a,bとで静油圧トランスミッション(HST)を構成している。
【0025】
図2〜図6はパイロット弁36,37,38,39の構成を示している。図2〜図6に示すように、パイロット弁36,37,38,39はこれらに共通のボディー61に組み込まれ、ボディー61に走行レバー40が支持されている。ボディー61に、各パイロット弁36,37,38,39に対応してポンプポート62と出力ポート63とタンクポート64とが設けられている。
走行レバー40の下部に調整ナット66及び操作ナット67が螺合装着されている。走行レバー40の下端にユニバーサルジョイント68が設けられ、走行レバー40はユニバーサルジョイント68を介してボディー61の上端部に前後左右と前後左右の間の斜め方向に傾動操作可能に支持されている。
【0026】
ボディー61の前後左右の4箇所に大径の保持孔70と小径の挿通孔71とが縦方向に連続状に形成され、各保持孔70及び挿通孔71はパイロット弁36,37,38,39にそれぞれ対応しており、各保持孔70はタンクポート64と交差し、各挿通孔71はポンプポート62と交差しかつ挿通孔71の下端部は出力ポート63に連通している。
各パイロット弁36,37,38,39は、プッシュロッド73とスプリング座74とスプール75とバランススプリング76とリターンスプリング77とをそれぞれ有している。各保持孔70の上端部にプラグ80が内嵌され、プッシュロッド73はボディー61の上端部にプラグ80を介して上方に出退移動自在に保持されている。各プッシュロッド73に走行レバー40の操作ナット67が上側から接当しており、各プッシュロッド73は、走行レバー40の前後左右の対応する成分方向の操作量に応じて走行レバー40により下方に押圧操作される。スプリング座74はプッシュロッド73の下方で各保持孔70の上部に上下移動自在に保持され、各スプリング座74は対応するプッシュロッド73により下方に押圧される。
【0027】
各スプール75は、ボディー61の保持孔70と挿通孔71とに跨って上下方向に移動自在に保持され、これにより中立位置Nから動作位置Aに向けて上下方向に移動自在に支持され、出力ポート63のパイロット圧によって動作位置A側から中立位置N側に向けて押されるように構成されている。バランススプリング76は保持孔70内に設けられ、スプリング座74に対してスプール75を中立位置Nから動作位置Aに向けて付勢している。リターンスプリング77は保持孔70内に設けられ、スプリング座74をプッシュロッド73に向けて付勢して、スプリング座74をプッシュロッド73に接当させている。
【0028】
スプール75の下部に連通孔82が設けられている。スプール75の連通孔82の一端部(下端部)82aはスプール75下端から出力ポート63に向けて開口され、連通孔82の他端部(上端部)82bはスプール75下端側中途部の外周面に開口されており、連通孔82は、スプール75が中立位置Nにあるときに、出力ポート63とタンクポート64とを連通すると共にポンプポート62を閉じ、スプール75が動作位置Aにあるときに、出力ポート63とポンプポート62とを連通すると共にタンクポート64を閉じるようになっている。
【0029】
前進用パイロット弁36と後進用パイロット弁37とのバランススプリング76に比べて右旋回用パイロット弁38と左旋回用パイロット弁39とのバランススプリング76の弾性係数が小さく設定されており、これにより、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量が小さくなっている。
而して、走行用操作装置14の走行レバー40は、中立位置から、前後左右と前後左右の間の斜め方向に傾動操作可能とされ、該走行レバー40を傾動操作することにより、走行用操作装置14の各パイロット弁36,37,38,39が操作されると共に、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧が該操作されたパイロット弁36,37,38,39から出力されるよう構成されている。
【0030】
即ち、走行レバー40を前後左右に傾動操作することにより、走行レバー40の傾動方向に対応したパイロット弁36,37,38,39が択一的に操作され、走行レバー40の操作量に対応したパイロット圧が該操作されたパイロット弁36,37,38,39から油圧駆動装置32に出力されて、作業機1を前進、後進、右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置32が左右の走行モータ21L,21Rを駆動する。また、走行レバー40を前後左右の間の斜め方向に傾動操作することにより、走行レバー40の傾動方向に対応した前進用パイロット弁36又は後進用パイロット弁37と、右旋回用パイロット弁38又は左旋回用パイロット弁39との2つのパイロット弁が選択的に操作され、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対応したパイロット圧が該操作された2つのパイロット弁から油圧駆動装置32に出力されて、作業機1を前進又は後進しながら右旋回又は左旋回させるべく、油圧駆動装置32が、前記操作された2つのパイロット弁の出力するパイロット圧の差圧によって、走行モータ21L,21Rを駆動する。
【0031】
より具体的には、走行レバー40を前側(図4では矢示A1方向)に傾動させると、前進用パイロット弁36が操作されて該パイロット弁36からパイロット圧が出力され、該パイロット圧は第1シャトル弁41を介して左用駆動回路32Aの油圧ポンプ53の前進用受圧部53aに作用すると共に第2シャトル弁42を介して右用駆動回路32Bの前進用受圧部53aに作用し、これにより左右の走行モータ21L,21Rの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)して作業機1が前方に直進する。
また、走行レバー40を後側(図4では矢示A2方向)に傾動させると、後進用パイロット弁37が操作されて該パイロット弁37からパイロット圧が出力され、該パイロット圧は第3シャトル弁43を介して左用駆動回路32Aの油圧ポンプ53の後進用受圧部53bに作用すると共に第4シャトル弁44を介して右用駆動回路32Bの油圧ポンプ53の後進用受圧部53bに作用し、これにより左右の走行モータ21L,21Rの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
【0032】
また、走行レバー40を右側(図4では矢示A3方向)に傾動させると、右旋回用パイロット弁38が操作されて該パイロット弁38からパイロット圧が出力され、該パイロット圧は第1シャトル弁41を介して左用駆動回路32Aの油圧ポンプ53の前進用受圧部53aに作用すると共に第4シャトル弁44を介して右用駆動回路32Bの油圧ポンプ53の後進用受圧部53bに作用し、これにより左走行モータ21Lの出力軸が正転し且つ右走行モータ21Rの出力軸が逆転して作業機1が右側に旋回する。
また、走行レバー40を左側(図4では矢示A4方向)に傾動させると、左旋回用パイロット弁39が操作されて該パイロット弁39からパイロット圧が出力され、該パイロット圧は第2シャトル弁42を介して右用駆動回路32Bの油圧ポンプ53の前進用受圧部53aに作用すると共に第3シャトル弁43を介して左用駆動回路32Aの油圧ポンプ53の後進用受圧部53bに作用し、これにより右走行モータ21Rの出力軸が正転し且つ左走行モータ21Lの出力軸が逆転して作業機1が左側に旋回する。
【0033】
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、各駆動回路32A,32Bの前進用受圧部53aと後進用受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、走行モータ21L,21Rの出力軸の回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する(すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回し、走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する)。
【0034】
従って、走行レバー40を前側に傾動させると前進用パイロット弁36が操作されて該前進用パイロット弁36からパイロット圧が出力され、走行レバー40を後側に傾動させると後進用パイロット弁37が操作されて該後進用パイロット弁37からパイロット圧が出力され、走行レバー40を右側に傾動させると右旋回用パイロット弁38が操作されて該右旋回用パイロット弁38からパイロット圧が出力され、走行レバー40を左側に傾動させると左旋回用パイロット弁39が操作されて該左旋回用パイロット弁39からパイロット圧が出力されるように構成されている。
【0035】
また、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁36と左旋回用パイロット弁39とが操作されて、前進用パイロット弁36と左旋回用パイロット弁39とからパイロット圧が出力され、走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁36と右旋回用パイロット弁38とが操作されて、前進用パイロット弁36と右旋回用パイロット弁38とからパイロット圧が出力され、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると、後進用パイロット弁37と左旋回用パイロット弁39とが操作されて、後進用パイロット弁37と左旋回用パイロット弁39とからパイロット圧が出力され、走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると、後進用パイロット弁37と右旋回用パイロット弁38とが操作されて、後進用パイロット弁37と右旋回用パイロット弁38とからパイロット圧が出力されるように構成されている。
【0036】
そして、油圧駆動装置32は、第1〜4シャトル弁41,42,43,44を介して各パイロット弁36,37,38,39からパイロット圧を入力して、前進用パイロット弁36からのパイロット圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37からのパイロット圧で左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、右旋回用パイロット弁38からのパイロット圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、左旋回用パイロット弁39からのパイロット圧で右走行モータ21Rが正転駆動すると共に左走行モータ21Lが逆転駆動するように構成されている。
【0037】
また、油圧駆動装置32は、第1〜4シャトル弁41,42,43,44を介して各パイロット弁36,37,38,39からパイロット圧を入力して、前進用パイロット弁36のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧で、右走行モータ21Rを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧と左旋回用パイロット弁39との差圧で、左走行モータ21Lを正転駆動し、前進用パイロット弁36のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧で、左走行モータ21Lを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧との差圧で、右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧で、左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧と左旋回用パイロット弁39のパイロット圧との差圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧との差圧で、左走行モータ21Lが逆転駆動するように構成されている。
【0038】
上記実施の形態によれば、図2及び図4に示すように、走行レバー40が中立状態では、スプール75はリターンスプリング77でスプリング座74を介して中立位置Nに持ち上げられる。このとき、スプール75がポンプポート62を完全に塞ぎ、出力ポート63とタンクポート64はスプール75の連通孔82により通じているため、出力ポート63の圧力は、タンクポート64の圧力と等しくなっている。従って、図4に示すスプール75のノッチ部のストローク(間隙D)内においては、出力ポート63の圧力は上昇せずタンクポート64の圧力と同じ状態である。
【0039】
図5に示すように、走行レバー40を中立状態から前後左右に傾動操作すると、プッシュロッド73が押し込まれ、リターンスプリング77が縮まりながら、スプール75も中立位置N側から動作位置A側に向けて押し込まれ、スプール75のノッチ部の間隙D間が0に近づく。バランススプリング76は、スプール75のノッチ部の間隙Dが0になるまで、初期の設定状態を保っている。スプール75のノッチ部の間隙D間が0になると、ポンプポート62の圧油が連通孔82を通して出力ポート63に流れ込み、出力ポート63に2次圧(パイロット圧)が発生し、バランススプリング76の設定位置まで圧力は上昇する。出力ポート63の圧力がバランススプリング76の力よりも勝ると、スプール75が上方向(中立位置N側)に移動し出力ポート63の圧油がタンクポート64に排出され、出力ポート63の圧力は、バランススプリング76の力に見合うところまで下降する。
【0040】
図6に示すように、走行レバー40をさらに傾けると、プッシュロッド73がさらに動作位置A側に向けて押し込まれ、ポンプポート62から圧油が出力ポート63に流れる。バランススプリング76の作動力は、徐々に該スプリング76の縮みの増加により上昇する。その結果、出力ポート63の圧力が上昇し、バランススプリング76の力と釣り合いを保つ。出力ポート63の圧力が設定圧を超えると、出力ポート63とポンプポート62は閉じ、出力ポート63とタンクポート64が開く。出力ポート63の圧力がバランススプリング76の設定圧力まで落ちると、出力ポート63とポンプポート62が開き、出力ポート63とタンクポート64が開き、出力ポート63とタンクポート64が閉じ、2次圧(パイロット圧)は一定に保たれる。
【0041】
従って、パイロット弁36,37,38,39のプッシュロッド73のストロークと、パイロット弁36,37,38,39の出力ポート63の2次圧力(パイロット圧)との関係は、図7に示すように、各パイロット弁36,37,38,39のプッシュロッド73のストロークに比例して各パイロット弁36,37,38,39のパイロット圧が増加する。その結果、走行レバー40の前後左右の操作量に比例した(対応した)大きさのパイロット圧が、走行レバー40により操作されたパイロット弁36,37,38,39から油圧駆動装置32に出力される。
【0042】
従来のように、前進用パイロット弁36と後進用パイロット弁37とのバランススプリング76と右旋回用パイロット弁38と左旋回用パイロット弁39とのバランススプリング76との弾性係数が同一に設定されて、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量と、右旋回用イロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量とが同一になるように設定されている場合には、図11に示すように、パイロット弁36,37,38,39のプッシュロッド73のストロークに対する、パイロット弁36,37,38,39の出力ポート63の2次圧力(パイロット圧)の上昇する割合は、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37と右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39とで同一になり、従って、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量と、右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量とが等しくなり、プッシュロッド73のフルストロークでパイロット弁36,37,38,39のパイロット圧がいずれも20kgf/cm2になる。
【0043】
また、従来のように、前進用パイロット弁36と後進用パイロット弁37とのバランススプリング76と右旋回用パイロット弁38と左旋回用パイロット弁39とのバランススプリング76との弾性係数が同一に設定されている場合、走行レバー40を右斜め45度の前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁36のプッシュロッド73と右旋回用パイロット弁38のプッシュロッド73とが、フルストローク動き、第1〜4シャトル弁41,42,43,44の各出力ポート63から吐出される圧力は、それぞれ(1)20kgf/cm2、(2)20kgf/cm2、(3)0kgf/cm2、(4)20kgf/cm2となり、右走行モータ21R側では、第4シャトル弁44の出力ポート63の圧力と、第2シャトル弁42の出力ポート63の圧力とは圧力相殺され、右走行モータ21Rが停止して、作業機1は走行不能に固定される。一方、左走行モータ21L側では、第2シャトル弁41の出力ポート63と第3シャトル弁43の出力ポート63の差圧が20kgf/cm2となり、左走行モータ21Lが高速で正転駆動し、作業機1は右にピポットターンする。つまり、走行レバー40を右斜め45度の前側に傾動操作すると、作業機1が前向きに右にピポットターンする。また、同様にして、走行レバー40を左斜め45度の前側に傾動操作すると、作業機1が前向きに左にピポットターンし、走行レバー40を左斜め45度の後側に傾動操作すると、作業機1が後ろ向きに左にピポットターンし、走行レバー40を右斜め45度の後側に傾動操作すると、作業機1が後向きに右にピポットターンする。
【0044】
従って、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量が等しくなるように設定された従来のような作業機1の走行用操作装置の場合には、走行レバー40の傾動方向に対するソフトターン領域及びピポット・スピンターン領域は図12に示すようになり、走行レバー40の前後左右への傾動操作に対する作業機1の前進、後進、左旋回、右旋回に対して、走行レバー40の前後左右の間の斜め方向への傾動操作による作業機1のソフトターン領域及びピポット・スピンターン領域が小さくてすぎてしまうことになる。
【0045】
これに対して、前記実施形態の場合、前進用パイロット弁36と後進用パイロット弁37とのバランススプリング76に比べて右旋回用パイロット弁38と左旋回用パイロット弁39とのバランススプリング76の弾性係数が小さく設定されているため、図7に示すように、パイロット弁36,37,38,39のプッシュロッド73のストロークに対する、パイロット弁36,37,38,39の出力ポート63の2次圧力(パイロット圧)の上昇する割合は、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37よりも右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39の方が小さくなり、従って、走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量が小さくなり、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37の場合、プッシュロッド73のフルストロークでパイロット圧が20kgf/cm2になるのに対して、右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39では、プッシュロッド73のフルストロークでパイロット圧が15kgf/cm2になる。
【0046】
また、前記実施形態の場合、走行レバー40を右斜め45度の前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁36のプッシュロッド73と右旋回用パイロット弁38のプッシュロッド73とは、フルストローク動く。このとき、第1〜4シャトル弁41,42,43,44の各出力ポート63から吐出される圧力は、それぞれ(1)20kgf/cm2、(2)15kgf/cm2、(3)0kgf/cm2、(4)20kgf/cm2となり、右走行モータ21R側では、第4シャトル弁44の出力ポート63の圧力と、第2シャトル弁42の出力ポート63の圧力とは、20kgf/cm2−15kgf/cm2=5kgf/cm2の差圧になり、右走行モータ21Rが遅い速度で正転(前進回転)する。一方、左走行モータ21L側では、第1シャトル弁41の出力ポート63と第3シャトル弁43の出力ポート63の差圧が20kgf/cm2となり、これにより左走行モータ21Lが走行レバー40の傾動量に比例した速い速度で正転(前進回転)する。つまり、走行レバー40を右斜め45度の前側に傾動操作すると、作業機1が前進しながら右にソフトターンする。また、同様にして、走行レバー40を左斜め45度の前側に傾動操作すると、作業機1が前進しながら左にソフトターンし、走行レバー40を左斜め45度の後側に傾動操作すると、作業機1が後進しながら左にソフトターンし、走行レバー40を右斜め45度の後側に傾動操作すると、作業機1が後進しながら右にソフトターンする。
【0047】
従って、前記実施の形態の如く走行レバー40の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁36及び後進用パイロット弁37のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁38及び左旋回用パイロット弁39のパイロット圧の変化量が小さくなるように設定されているため、走行レバー40の傾動方向に対するソフトターン領域及びピポット・スピンターン領域は、図8に示すように、ソフトターン領域が大きく広がり、ピポット・スピンターン領域が狭くなり、ソフトターン領域が増える。その結果、走行レバー40の傾動操作により旋回する際に、操作領域が広くて、調整領域が大きくなり、作業機1を容易かつスムーズににソフトターン(緩やかな旋回)緩やかに旋回させることができると共に、スピンターン、ピポットターンをゆっくりした適当な速さでなし得るようになる。
【0048】
なお、前記実施の形態では、前進用パイロット弁36からのパイロット圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37からのパイロット圧で左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、右旋回用パイロット弁38からのパイロット圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、左旋回用パイロット弁39からのパイロット圧で右走行モータ21Rが正転駆動すると共に左走行モータ21Lが逆転駆動するように、油圧駆動装置32が構成されているが、これに代え、油圧駆動装置32の回路構成の都合上等からパイロット弁36,37,38,39のパイロット圧を比例的に変更又は加減圧してなる増減変更した油圧を作出し、前進用パイロット弁36からのパイロット圧を増減変更した油圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37からのパイロット圧を増減変更した油圧で左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、右旋回用パイロット弁38からのパイロット圧を増減変更した油圧で左走行モータ21Lを正転駆動すると共に右走行モータ21Rを逆転駆動し、左旋回用パイロット弁39からのパイロット圧を増減変更した油圧で右走行モータ21Rが正転駆動すると共に左走行モータ21Lが逆転駆動するように、油圧駆動装置32を構成してもよい。
【0049】
また、前記実施の形態では、前進用パイロット弁36のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧で、右走行モータ21Rを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧と左旋回用パイロット弁39のパイロット圧との差圧で、左走行モータ21Lを正転駆動し、前進用パイロット弁36のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧で、左走行モータ21Lを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧との差圧で、右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧で、左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧と左旋回用パイロット弁39のパイロット圧との差圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧との差圧で、左走行モータ21Lが逆転駆動するように、前記油圧駆動装置32が構成されているが、これに代え、油圧駆動装置32の回路構成の都合上等からパイロット弁36,37,38,39のパイロット圧を比例的に変更又は加減圧してなる増減変更した油圧を作出し、前進用パイロット弁36のパイロット圧を増減変更した油圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧を増減変更した油圧で、右走行モータ21Rを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧を増減変更した油圧と左旋回用パイロット弁39とパイロット圧を増減変更した油圧との差圧で、左走行モータ21Lを正転駆動し、前進用パイロット弁36のパイロット圧を増減変更した油圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧を増減変更した油圧で、左走行モータ21Lを正転駆動すると共に、前進用パイロット弁36のパイロット圧を増減変更した油圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧を増減変更した油圧との差圧で、右走行モータ21Rを正転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧を増減変更した油圧又は左旋回用パイロット弁39のパイロット圧を増減変更した油圧で、左走行モータ21Lを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧と左旋回用パイロット弁39のパイロット圧を増減変更した油圧との差圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動し、後進用パイロット弁37のパイロット圧を増減変更した油圧又は右旋回用パイロット弁38のパイロット圧を増減変更した油圧で、右走行モータ21Rを逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁37のパイロット圧を増減変更した油圧と右旋回用パイロット弁38のパイロット圧を増減変更した油圧との差圧で、左走行モータ21Lが逆転駆動するように、油圧駆動装置32を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態を示す油圧システムの回路図である。
【図2】同走行系のパイロット弁部分の正面断面図である。
【図3】同走行系のパイロット弁部分の一部断面を有する斜視図である。
【図4】同走行レバーの中立状態におけるパイロット弁部分の断面図である。
【図5】同走行レバーを少し傾動した状態のパイロット弁部分の断面図である。
【図6】同走行レバーを大きく傾動した状態のパイロット弁部分の断面図である。
【図7】同パイロット弁の動作説明用のグラフである。
【図8】同走行レバーの傾動方向に対する作業機の動きを示す説明図である。
【図9】同作業機の全体側面図である。
【図10】キャビンを持ち上げた状態の作業機の側面断面図である。
【図11】従来装置におけるパイロット弁の動作説明用のグラフである。
【図12】同走行レバーの傾動方向に対する作業機の動きを示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
4 走行装置
21L 左走行モータ
21R 右行モータ
32 油圧駆動装置
36 前進用パイロット弁
37 後進用パイロット弁
38 右旋回用パイロット弁
39 左旋回用パイロット弁
40 走行レバー
62 ポンプポート
63 出力ポート
64 タンクポート
73 プッシュロッド
74 スプリング座
75 スプール
76 バランススプリング
77 リターンスプリング
82 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式の走行モータ(21L,21R)を有する左右一対の走行装置(4)を備え、左右の走行モータ(21L,21R)を駆動する油圧駆動装置(32)が設けられた作業機の走行用操作装置であって、
前進用パイロット弁(36)と、後進用パイロット弁(37)と、右旋回用パイロット弁(38)と、左旋回用パイロット弁(39)と、これらパイロット弁(36,37,38,39)について共通の走行レバー(40)とを有し、走行レバー(40)は、中立位置(N)から前後左右と前後左右の間の斜め方向とに傾動操作可能とされ、
走行レバー(40)を前後左右に傾動操作することにより、走行レバー(40)の傾動方向に対応したパイロット弁(36,37,38,39)が択一的に操作され、走行レバー(40)の操作量に対応したパイロット圧が該操作されたパイロット弁(36,37,38,39)から油圧駆動装置(32)に出力されて、作業機を前進、後進、右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置(32)が左右の走行モータ(21L,21R)を駆動し、走行レバー(40)を前後左右の間の斜め方向に傾動操作することにより、走行レバー(40)の傾動方向に対応した前進用パイロット弁(36)又は後進用パイロット弁(37)と、右旋回用パイロット弁(38)又は左旋回用パイロット弁(39)との2つのパイロット弁が選択的に操作され、走行レバー(40)の前後左右の成分方向の操作量に対応したパイロット圧が該操作された2つのパイロット弁から油圧駆動装置(32)に出力されて、作業機を前進又は後進しながら右旋回又は左旋回させるべく油圧駆動装置(32)が走行モータ(21L,21R)を駆動するようにした作業機の走行用操作装置において、
走行レバー(40)の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁(36)及び後進用パイロット弁(37)のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁(38)及び左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧の変化量が小さくなるように設定されていることを特徴とする作業機の走行用操作装置。
【請求項2】
前記各パイロット弁(36,37,38,39)はこれらに共通のボディー(61)に組み込まれ、ボディー(61)に各パイロット弁(36,37,38,39)に対応するポンプポート(62)と出力ポート(63)とタンクポート(64)とが設けられ、前記各パイロット弁(36,37,38,39)は、走行レバー(40)の前後左右の対応する成分方向の操作量に応じて走行レバー(40)により押圧操作されるプッシュロッド(73)と、プッシュロッド(73)により押圧されるスプリング座(74)と、中立位置(N)から動作位置(A)に向けて移動自在に支持されかつ出力ポート(63)のパイロット圧によって動作位置(A)側から中立位置(N)側に向けて押されるスプール(75)と、スプリング座(74)に対してスプール(75)を中立位置(N)から動作位置(A)に向けて付勢するバランススプリング(76)と、スプリング座(74)をプッシュロッド(73)に接当させるべくスプリング座(74)をプッシュロッド(73)に向けて付勢するリターンスプリング(77)とを有し、スプール(75)が中立位置(N)にあるときに出力ポート(63)とタンクポート(64)とを連通すると共にポンプポート(62)を閉じ、スプール(75)が動作位置(A)にあるときに出力ポート(63)とポンプポート(62)とを連通すると共にタンクポート(64)を閉じるように各スプール(75)に連通孔(82)が設けられ、
走行レバー(40)の前後左右の成分方向の操作量に対する、前進用パイロット弁(36)及び後進用パイロット弁(37)のパイロット圧の変化量に比べて右旋回用パイロット弁(38)及び左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧の変化量が小さくなるように、前進用パイロット弁(36)と後進用パイロット弁(37)とのバランススプリング(76)に比べて右旋回用パイロット弁(38)と左旋回用パイロット弁(39)とのバランススプリング(76)の弾性係数が小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機の走行用操作装置。
【請求項3】
走行レバー(40)を前側に傾動させると前進用パイロット弁(36)が操作されて該前進用パイロット弁(36)からパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を後側に傾動させると後進用パイロット弁(37)が操作されて該後進用パイロット弁(37)からパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を右側に傾動させると右旋回用パイロット弁(38)が操作されて該右旋回用パイロット弁(38)からパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を左側に傾動させると左旋回用パイロット弁(39)が操作されて該左旋回用パイロット弁(39)からパイロット圧が出力されるように構成され、
走行レバー(40)を左斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁(36)と左旋回用パイロット弁(39)とが操作されて、前進用パイロット弁(36)と左旋回用パイロット弁(39)とからパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を右斜め前側に傾動操作すると、前進用パイロット弁(36)と右旋回用パイロット弁(38)とが操作されて、前進用パイロット弁(36)と右旋回用パイロット弁(38)とからパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を左斜め前側に傾動操作すると、後進用パイロット弁(37)と左旋回用パイロット弁(39)とが操作されて、後進用パイロット弁(37)と左旋回用パイロット弁(39)とからパイロット圧が出力され、走行レバー(40)を右斜め後側に傾動操作すると、後進用パイロット弁(37)と右旋回用パイロット弁(38)とが操作されて、後進用パイロット弁(37)と右旋回用パイロット弁(38)とからパイロット圧が出力されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機の走行用操作装置。
【請求項4】
前進用パイロット弁(36)からのパイロット圧で左走行モータ(21L)を正転駆動すると共に右走行モータ(21R)を正転駆動し、後進用パイロット弁(37)からのパイロット圧で左走行モータ(21L)を逆転駆動すると共に右走行モータ(21R)を逆転駆動し、右旋回用パイロット弁(38)からのパイロット圧で左走行モータ(21L)を正転駆動すると共に右走行モータ(21R)を逆転駆動し、左旋回用パイロット弁(39)からのパイロット圧で右走行モータ(21R)が正転駆動すると共に左走行モータ(21L)が逆転駆動するように、前記油圧駆動装置(32)が構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業機の走行用操作装置。
【請求項5】
前進用パイロット弁(36)のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧で、右走行モータ(21R)を正転駆動すると共に、前進用パイロット弁(36)のパイロット圧と左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧との差圧で、左走行モータ(21L)を正転駆動し、前進用パイロット弁(36)のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁(38)のパイロット圧で、左走行モータ(21L)を正転駆動すると共に、前進用パイロット弁(36)のパイロット圧と右旋回用パイロット弁(38)のパイロット圧との差圧で、右走行モータ(21R)を正転駆動し、後進用パイロット弁(37)のパイロット圧又は左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧で、左走行モータ(21L)を逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁(37)のパイロット圧と左旋回用パイロット弁(39)のパイロット圧との差圧で、右走行モータ(21R)を逆転駆動し、後進用パイロット弁(37)のパイロット圧又は右旋回用パイロット弁(38)のパイロット圧で、右走行モータ(21R)を逆転駆動すると共に、後進用パイロット弁(37)のパイロット圧と右旋回用パイロット弁(38)のパイロット圧との差圧で、左走行モータ(21L)が逆転駆動するように、前記油圧駆動装置(32)が構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業機の走行用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−12825(P2010−12825A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172454(P2008−172454)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】