説明

作業機械のキャブ構造

【課題】作業機械のキャブに関し、部品の加工性及びハンドリングを向上させ、コストを抑え、また、大小何れの機体にも良好に適用できるキャブ構造を提供する。
【解決手段】左右一対の第一梁部材44,45と、左右一対の支柱48L,48Rがそれぞれ第一梁部材44,45を通過してルーフパネル42に接合する左右一対の接合部位Aと、接合部位A間に架け渡された第二梁部材51と、平面形状の第一ガセット52と、2つで一組の平面形状の第二ガセット53とを備え、第一ガセット52は、その面内方向が垂直且つ機体前後方向に一致した状態でその一面部が支柱48L,48Rの内側面に並行に当接し、一組の第二ガセット53は、その面内方向が垂直且つ機体幅方向に一致し且つそれらの間に第二梁部材51を挟持した状態で、第一ガセット52の他面部に垂直に当接するとともにルーフパネル42に垂直に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の作業機械において、ROPSが装備されたキャブの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、ホイールローダ1は、前部車両10と後部車両20とに分割されるとともに、前部車両10と後部車両20とが連結部30を介して左右揺動自在に連結されて構成されている。前部車両10は、架台となるフロントフレーム11と前輪12と作業装置13とを備えており、後部車両20は、架台となるリヤフレーム21と後輪22とキャブ23とエンジン(図示略)とを備えている。
【0003】
キャブ23は、例えば特許文献1に開示されているように、万一の場合の機体の転倒に際し、シートベルトを装着したオペレータの安全保護スペース(いわゆるDLV;たわみ限界領域)を確保するROPS(Roll-Over Protective Structure)といわれる転倒時保護構造を装備したものが知られている。
このROPSは、転倒時に想定される荷重がかかった際に、上記安全保護スペースを確保できる強度を有している必要がある。つまり、例えば、転倒時に側方から荷重がかかった際に、ピラー23aとピラー23aで支持されるルーフパネル23bとが変形して転倒エネルギーを吸収するが、このようにピラー23aやルーフパネル23bが変形しても、変形したピラー23aやルーフパネル23bが上記安全保護スペースに侵入しない構造上の強度を有している必要がある。
【0004】
このため、ROPSが装備されたキャブ23には、一例として、ルーフパネル23bに4mmという肉厚の鋼板を使用するとともに、大型のガセット(図示略)でピラー23aとルーフパネル23bとの接合部位を補強するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2001−123482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の4mmという肉厚の鋼板の使用は、コストがかかるとともに、その加工性が良好ではないという課題がある。また、ガセットが大型であるために重量増となり、ハンドリングが困難であるという課題がある。さらに、小型のホイールローダのキャブにROPSを装備する場合、オペレータの安全保護スペースの確保のために大型のガセットを使用し難いという課題もある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、部品の加工性及びハンドリングを向上させ、コストを抑え、また、大小何れの機体にも良好に適用できるようにした、作業機械のキャブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の作業機械のキャブ構造は、作業機械のキャブにおいて、床壁をなすベースフレームと、天井壁をなすルーフパネルと、該ベースフレームに立設され該ルーフパネルを支持する左右一対の支柱とを有するキャブ構造であって、該ルーフパネルの左側縁部及び右側縁部に沿うとともに機体前後方向に延在する左右一対の第一梁部材と、上記の左右一対の支柱がそれぞれ、上記の左側又は右側の第一梁部材を通過して該ルーフパネルに接合する左右一対の接合部位と、上記の左右一対の接合部位間に架け渡されて機体幅方向に延在し、各接合部位を補強する第二梁部材と、該各接合部位をさらに補強する第一ガセット及び2つで一組の第二ガセットとを備え、該第一ガセットは、平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体前後方向に一致した状態で、その一面部が該支柱の内側面に並行に当接し、上記の一組の第二ガセットは、それぞれ平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体幅方向に一致し、且つ、それらの間に該第二梁部材を挟持した状態で、該第一ガセットの他面部に垂直に当接するとともに該ルーフパネルに垂直に当接していることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明の作業機械のキャブ構造は、作業機械のキャブにおいて、床壁をなすベースフレームと、天井壁をなすルーフパネルと、該ベースフレームに立設され該ルーフパネルを支持する左右一対のフロントピラー及び左右一対のリアピラーとを有するキャブ構造であって、該ルーフパネルの左側縁部又は右側縁部に沿うとともに機体前後方向に延在するレフトビーム及びライトビームと、上記の左右一対のリアピラーがそれぞれ、該レフトビーム又は該ライトビームを通過して該ルーフパネルに接合する左右一対の接合部位と、上記の左右一対の接合部位間に架け渡されて機体幅方向に延在し、該各接合部位を補強するクロスメンバと、該各接合部位をさらに補強する第一ガセット及び2つで一組の第二ガセットとを備え、該第一ガセットは、平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体前後方向に一致した状態で、その一面部が該左側リアピラーの内側面又は該右側リアピラーの内側面に並行に当接し、上記の一組の第二ガセットは、それぞれ平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体幅方向に一致し、且つ、それらの間に該クロスメンバを挟持した状態で、該第一ガセットの他面部に垂直に当接するとともに該ルーフパネルに垂直に当接していることを特徴としている。
【0009】
なお、上記の作業機械は、ホイールローダであればより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業機械のキャブ構造によれば、支柱(またはリアピラー)とルーフパネルとの各接合部位を、第二梁部材(またはクロスメンバ)と1枚の第一ガセットと2枚で一組の第二ガセットとで集中補強したので、万一機体が転倒した場合に横方向から荷重がかかっても、支柱(リアピラー)やルーフパネルの変形を抑え、変形した支柱(リアピラー)やルーフパネルがオペレータの安全保護空間(DLV)に侵入することを防止することができる。
【0011】
そして、このように接合部位を集中補強したので、ルーフパネルに従来よりも厚みの薄い鋼板を使用しても、十分に転倒時にオペレータの安全保護空間を確保することができ、また、コストを抑えるとともに、加工性を向上させることができる。さらに、接合部位を集中補強するガセットは従来のような大型のガセット一つで補強するものではなく、複数のガセットで補強するので、各ガセットを小型且つ軽量にすることができ、ハンドリングも向上させることができる。
【0012】
また、各ガセットは比較的小型のものにすることができるので、小型機においてルーフパネルの内側にガセット等を目隠しする内張りを張っても、十分にオペレータの安全保護空間を確保することができる。つまり、大型機においても小型機においても、同様の補強構造を採用することが可能になり、汎用性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[一実施形態]
本発明の一実施形態について説明する。図1〜図10は本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造を示す図であって、図1はその全体斜視図、図2はその天井部を下から見た斜視図、図3は図2のX−X矢視図、図4は図3のY−Y矢視断面図、図5はその床部を上から見た断面図、図6はそのレフトビームの斜視図、図7はそのライトビームの斜視図、図8はその大ガセットの正面図、図9はその小ガセットの正面図、図10はそのキャブ構造が適用されたキャブの側面図である。なお、従来技術の説明で用いた図11を適宜流用して説明する。
【0014】
<構成>
本発明のキャブ構造は、図11に示すホイールローダ(作業機械)1において、キャブ23に代わり、図10に示すキャブ40に適用されたものである。なお、ホイールローダ1の構成は、キャブ以外は従来技術と同様であるので、説明を省略する。
キャブ40は、ROPS(転倒時保護構造)が装備されたものであって、そのROPSは、図1及び図2に示すように、ベースフレーム41と、ルーフパネル42と、フロントビーム43と、レフトビーム(第一梁部材)44と、ライトビーム(第一梁部材)45と、リアビーム46と、左右一対のフロントピラー(支柱)47L,47Rと、左右一対のリアピラー(支柱)48L,48Rと、から大枠を構成されている。また、キャブ40のROPSは、補強部材として、2本のクロスメンバ(第二梁部材)51,51と、2枚の大ガセット(第一ガセット)52,52と、4枚の小ガセット(第二ガセット)53,53,53,53とを有している。
【0015】
ベースフレーム41は、キャブ40の床壁をなす鋼板であり、平面視で略六角形状をしている。詳しくは、長方形と台形とが、長方形の前辺に台形の底辺が接合して合体したような六角形状をなしている。そして、このベースフレーム41に、オペレータシートやコンソールボックスやステアリングハンドル(何れも図示略)等が取り付けられるようになっている。
【0016】
ルーフパネル42は、キャブ40の天井壁をなす平面視で略四角形状の鋼板であり、その縁部は、見栄えを良くするために内折りされている。そして、前述の内折り等の加工性を考慮して、例えば3.2mmという薄い板厚の鋼板で成形されている。
フロントビーム43,レフトビーム44,ライトビーム45及びリアビーム46は、鋼板からなる梁部材であって、ルーフパネル42の四辺(縁部)に沿って延在している。
【0017】
詳しくは、フロントビーム43は、平板であって、レフトビーム44及びライトビーム45の前端に当接し、左右方向(機体幅方向)に延在している。
レフトビーム44は、図6に示すように、断面形状がコ字型のチャンネルであるとともに、その一部44aが切り欠かれている。そして、図2に示すように、そのコ字型の開放部が上方を向き、前後方向(機体前後方向)に延在した状態でルーフパネル42に当接し、また、この切り欠き44aに左側のリアピラー48Lの上端部が嵌合するようになっている。
【0018】
ライトビーム45も、図7に示すように、レフトビーム44と同様に、断面形状がコ字型のチャンネルであるとともに、その一部45aが切り欠かれている。そして、図2に示すように、そのコ字型の開放部が上方を向き、且つ、前後方向に延在した状態でルーフパネル42に当接し、また、図4に示すように、この切り欠き45aに右側のリアピラー48Rの上端部が嵌合するようになっている。
【0019】
リアビーム46は、図1及び図2に示すように、断面形状がコ字型のチャンネルであるとともに、そのコ字型の開放部が上方を向き、且つ、左右方向に延在した状態でルーフパネル42に当接している。また、リアビーム46は、レフトビーム44とライトビーム45とを接続するように、レフトビーム44の後端部及びライトビーム45の後端部間に位置している。
【0020】
左右一対のフロントピラー47L,47R及び左右一対のリアピラー48L,48Rはそれぞれ、断面四角形状の鋼管からなる支柱であって、ベースフレーム41に立設されるとともにルーフパネル42を支持している。
詳しくは、左右一対のフロントピラー47L,47Rは、図5に示すように、ベースフレーム41の前部である台形部分の角部に立設されるとともに、図2に示すように、その上端がレフトビーム44及びライトビーム45の底面に当接して、ルーフパネル42を支持している。
【0021】
左右一対のリアピラー48L,48Rは、図5に示すように、ベースフレーム41の後部に立設されるとともに、図2に示し且つ上述するように、その上端がレフトビーム44及びライトビーム45の切り欠き44a,45aに嵌合し、且つレフトビーム44及びライトビーム45を通過(言い換えれば貫通)した状態でルーフパネル42に当接し、ルーフパネル42を支持している。なお、リアピラー48L,48Rは、図5に示すように、フロントピラー47L,47Rよりもその断面積が大きく形成されている。
【0022】
2つのクロスメンバ51,51はそれぞれ、断面形状が略Cの字型のチャンネルであるとともに、図1及び図2に示すように、そのC字型の開放部が上方を向き、且つ、左右方向に延在した状態でルーフパネル42に当接している。また、各クロスメンバ51の両端部はそれぞれ、レフトビーム44及びライトビーム45に当接している。ここで、2つのクロスメンバ51,51とフロントビーム43とリアビーム46とは、互いの距離が略等間隔になるように並んで配置されている。そして、リア側に配置されたクロスメンバ(以下、リアクロスメンバという)51は、レフトビーム44及びライトビーム45それぞれの切り欠き44a,45aが形成された部分で、レフトビーム44及びライトビーム45に当接するようになっている。つまり、ここでは、切り欠き44a,45aの形成された部分がレフトビーム44及びライトビーム45と左右のリアピラー48L,48Rとの接合部位A,Aであり、リアクロスメンバ51はこれら接合部位A,A間に架け渡されて各接合部位Aを補強するようになっている。
【0023】
さらに、この接合部位Aは、大ガセット52と小ガセット53とによって、集中補強されている。
この接合部位Aの集中補強について、特に図3及び図4を用いて詳しく説明する。なお、図3は図2のX−X方向から見た右側の接合部位Aの斜視図であり、図4は図3のY−Y方向から見た右側の接合部位Aの一組の小ガセット53間で切断した断面図である。
【0024】
先に、大ガセット52について説明すると、大ガセット52は、平面形状の鋼材(平鋼)であって、その外形は、図8に示すように、水平方向に真っ直ぐ延びる第一直線部52aと、第一直線部52aに対し小さな鋭角をなすとともに比較的大きなアールのカーブを描く第一曲線部52bと、第一直線部52aに対し90度又は90度に近い角度をなすとともに第一曲線部52bに比べて緩やかなカーブを描く第二曲線部52cとから、おおよそ三角形状に形成されている。換言すると、大ガセット52は、第一直線部52aを底辺としてみると、始めは緩やかな勾配だが次第に急勾配になる第一曲線部52bと、急勾配の第二曲線部52cとがぶつかる部分に頂上部52tを持つ山型形状に形成されている。
【0025】
続いて、小ガセット53について説明すると、小ガセット53は、大ガセット52よりもその面積が小さな平面形状の鋼材(平鋼)であって、その外形は、図9に示すように、水平方向に真っ直ぐ延びる第一直線部53aと、鉛直方向に真っ直ぐ延びる第二直線部53bと、第一直線部53aの一端と第二直線部53bの一端とを緩やかなカーブで結ぶ第一曲線部53cと、第一直線部53aの他端と第二直線部53bの他端とを丸みのある略L字型の曲線で結ぶL字曲線部53dとから、一部(L字曲線部53dの部分)を切り欠いたおおよそ直角三角形状に形成されている。
【0026】
そして、図1〜図3に示すように、このような一つの大ガセット52と2つで一組の小ガセット53,53とが一群となって、一箇所の接合部位Aに用いられるようになっている。
まず、大ガセット52は、図3及び図4に示すように、その面内方向(その面が広がる方向)を垂直方向且つ前後方向に一致させながら、その第一直線部52aがライトビーム45(またはレフトビーム44)の底面に垂直に当接するとともに、その外面(一面)が右側のリアピラー48R(または左側のリアピラー48L)の内側面に並行に当接し、且つ、その頂上部52tが右側のリアピラー48R(または左側のリアピラー48L)の内側面の前後方向中央に位置するように配置されている。
【0027】
次に、一組の小ガセット53,53は、それぞれの面内方向を垂直方向且つ左右方向に一致させながら、図3に示すように、それらの間にクロスメンバ51を挟持した状態で、それぞれの第一直線部53aがルーフパネル42に垂直に当接するように配置されている。また、図4に示すように、それぞれのL字曲線部53dがライトビーム45(またはレフトビーム44)にぴったりと嵌合して当接し、さらに、それぞれの第二直線部53bが大ガセット52の内面(他面)に垂直に当接するように配置されている。また、一組の小ガセット53,53は、図3に示すように、互いに平行に配置される。
【0028】
さらに、他の部材同士の接合部位の補強についても、以下に簡単に説明する。
レフトビーム44とリアビーム46との接合部位は、図2に示すように、ガセット(第三ガセット)61によって補強されている。同様に、ライトビーム45とリアビーム46との接合部位も、図3に示すように、ガセット61と同形状・同サイズのガセット(第四ガセット)62によって補強されている。
【0029】
また、レフトビーム44とフロントビーム43との接合部位は、ガセット61及びガセット62よりも小さなガセット(第五ガセット)63によって補強され、ライトビーム45とフロントビーム43との接合部位も、ガセット63と同形状・同サイズのガセット(第六ガセット)64によって補強されている。
ここで、ガセット61〜64はそれぞれ、平面形状の鋼材(平鋼)であって、その面内方向を水平方向に一致させた状態で、補強対象のビーム43〜46同士がなす角部に跨って当接している。
【0030】
また、図1に示すように、フロントビーム43と左側のフロントピラー47Lとの接合部位は、ガセット(第七ガセット)65によって補強され、フロントビーム43と右側のフロントピラー47Rとの接合部位も、ガセット65と同形状・同サイズのガセット(第八ガセット)66によって補強されている。
ここで、ガセット65,66はそれぞれ、平面形状の鋼材(平鋼)であって、その面内方向を垂直方向且つ前後方向に一致させた状態で、補強対象のビーム43及びピラー47L,47R同士がなす角部に跨って当接している。
【0031】
なお、ルーフパネル42の内側には、これらガセット52,53,61〜66による補強箇所を目隠しする等して外観の審美性を向上させるために、図示しない内張りが張られている。
また、図1及び図5に示すように、リアピラー48L,48Rとベースフレーム41との各接合部位Bも、リアピラー48L,48Rとルーフパネル42との各接合部位Aのように集中補強されている。
【0032】
つまり、各接合部位Bは、3つのガセット71〜73によって三方向(後側,前側,内側の三方向)から集中補強されている。ガセット71〜73は、平面形状の鋼材(平鋼)であって、その面内方向を垂直方向に一致させた状態で、ベースフレーム41とリアピラー48L,48Rとに跨って、ベースフレーム41とリアピラー48L,48Rとに当接している。
【0033】
一方、フロントピラー47L,47Rとベースフレーム41との各接合部位Cは、1つのガセット74によって補強されている。ガセット74も、平面形状の鋼材(平鋼)であって、その面内方向を垂直方向に一致させた状態で、ベースフレーム41とフロントピラー47L,47Rとに跨って、ベースフレーム41とフロントピラー47L,47Rとに当接している。
【0034】
<作用・効果>
本発明の一実施形態にかかる作業機械のキャブ構造は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
リアピラー48L,48Rとルーフパネル42との各接合部位Aを、一つの大ガセット52と2つで一組の小ガセット53とで集中補強したので、万一機体が転倒した場合に、横方向から荷重がかかっても、リアピラー48L,48Rやルーフパネル42の変形を抑え、変形したリアピラー48L,48Rやルーフパネル42がオペレータの安全保護空間(DLV)に侵入することを防止することができる。そして、このように接合部位Aを集中補強したので、ルーフパネル42に3.2mmという従来よりも厚みの薄い鋼板を使用しても、十分に転倒時にオペレータの安全保護空間を確保することができ、また、コストを抑えるとともに、加工性を向上させることができる。さらに、接合部位Aを集中補強する各ガセット52,53は従来のような大型のガセット一つで補強するものではなく、複数のガセット52,53で補強するので、各ガセット52,53を従来よりも小型且つ軽量にすることができ、ハンドリングも向上させることができる。
【0035】
また、各ガセット52,53は比較的小型のものにすることができるので、小型機においてルーフパネル42の内側に内張りを張っても、十分にオペレータの安全保護空間を確保することができる。つまり、大型機においても小型機においても、同様の補強構造を採用することが可能になり、汎用性を向上させることができる。
また、リアピラー48L,48Rの下部の接合部位Bも集中補強したので、ベースフレーム41の変形を良好に防止することができる。
【0036】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では、リアピラー48L,48Rとルーフパネル42との接合部位Aを集中補強するキャブ構造について説明したが、集中補強する部位はリア側に限らず、フロントピラー47L,47Rとルーフパネル42との接合部位を集中補強しても良い。
【0037】
また、上記実施形態では、ホイールローダ1に適用したキャブ構造について説明したが、油圧ショベルやクレーン等のその他の作業機械に適用しても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の天井部を下から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の要部の斜視図であって、図2のX−X矢視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の要部の断面図であって、図3のY−Y矢視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の床部を上から見た断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造のレフトビームの斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造のライトビームの斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の大ガセットの正面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造の小ガセットの正面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャブ構造が適用されたキャブの側面図である。
【図11】一般的なホイールローダの斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ホイールローダ(作業機械)
10 前部車両
20 後部車両
23 キャブ
30 連結部
40 キャブ
41 ベースフレーム
42 ルーフパネル
43 フロントビーム
44 レフトビーム(第一梁部材)
45 ライトビーム(第一梁部材)
46 リアビーム
47L,47R フロントピラー(支柱)
48L,48R リアピラー(支柱)
51 クロスメンバ(第二梁部材)
52 大ガセット(第一ガセット)
52a 第一直線部
52b 第一曲線部
52c 第二曲線部
53t 頂上部
53 小ガセット(第二ガセット)
53a 第一直線部
53b 第二直線部
53c 第一曲線部
53d L字曲線部
61〜66,71〜74 ガセット
A 接合部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のキャブにおいて、床壁をなすベースフレームと、天井壁をなすルーフパネルと、該ベースフレームに立設され該ルーフパネルを支持する左右一対の支柱とを有するキャブ構造であって、
該ルーフパネルの左側縁部及び右側縁部に沿うとともに機体前後方向に延在する左右一対の第一梁部材と、
上記の左右一対の支柱がそれぞれ、上記の左側又は右側の第一梁部材を通過して該ルーフパネルに接合する左右一対の接合部位と、
上記の左右一対の接合部位間に架け渡されて機体幅方向に延在し、各接合部位を補強する第二梁部材と、
該各接合部位をさらに補強する第一ガセット及び2つで一組の第二ガセットとを備え、
該第一ガセットは、平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体前後方向に一致した状態で、その一面部が該支柱の内側面に並行に当接し、
上記の一組の第二ガセットは、それぞれ平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体幅方向に一致し、且つ、それらの間に該第二梁部材を挟持した状態で、該第一ガセットの他面部に垂直に当接するとともに該ルーフパネルに垂直に当接している
ことを特徴とする、作業機械のキャブ構造。
【請求項2】
作業機械のキャブにおいて、床壁をなすベースフレームと、天井壁をなすルーフパネルと、該ベースフレームに立設され該ルーフパネルを支持する左右一対のフロントピラー及び左右一対のリアピラーとを有するキャブ構造であって、
該ルーフパネルの左側縁部又は右側縁部に沿うとともに機体前後方向に延在するレフトビーム及びライトビームと、
上記の左右一対のリアピラーがそれぞれ、該レフトビーム又は該ライトビームを通過して該ルーフパネルに接合する左右一対の接合部位と、
上記の左右一対の接合部位間に架け渡されて機体幅方向に延在し、該各接合部位を補強するクロスメンバと、
該各接合部位をさらに補強する第一ガセット及び2つで一組の第二ガセットとを備え、
該第一ガセットは、平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体前後方向に一致した状態で、その一面部が該左側リアピラーの内側面又は該右側リアピラーの内側面に並行に当接し、
上記の一組の第二ガセットは、それぞれ平面形状であって、その面内方向が垂直方向且つ機体幅方向に一致し、且つ、それらの間に該クロスメンバを挟持した状態で、該第一ガセットの他面部に垂直に当接するとともに該ルーフパネルに垂直に当接している
ことを特徴とする、作業機械のキャブ構造。
【請求項3】
該作業機械はホイールローダである
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械のキャブ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−90567(P2010−90567A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259821(P2008−259821)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】