説明

作業機連結装置

【課題】 作業時における各所軸受部の潤滑性を損なうことなく、かつ、軸受回転時の焼付きを発生させることなく、軸受部への外部からの度々の給脂を必要せず、しかも吸音性に優れた作業機連結装置を提供する。
【解決手段】 建設機械作業機における鋼製作業機ブッシュ1と作業機ピン4とで形成される隙間に、潤滑油および/または潤滑材を蓄えることのできる構造の金属系摺動材料7を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧ショベル、ブルドーザ等の建設・土木機械の作業機の連結装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図19(a)に例示されているように、油圧ショベルのような建設機械の作業機は、その主構成がブーム51、アーム52およびバケット53から構成され、これら各作業機を連結する連結装置はそれらをつなぐ回転部分、それらを動かす油圧シリンダ部および車体との連結部等に多数使用されている。図19(b)には、バケット連結部の詳細構造(分解斜視図)が示されているが、この連結部に設けられる作業機ブッシュ54,55においては、その内径面にグリース潤滑溝加工が施され、浸炭焼入れや高周波焼入れによって耐焼付き性と耐摩耗性の向上を図るために、HRC45以上の硬さの熱処理硬化層が形成されている。また、作業機ピン56,57,58においては、その外径面に高周波焼入れ、浸炭焼入れによって耐焼付き性、耐摩耗性および耐折損性の改善を図るために、HRC45以上の硬さの熱処理硬化層が形成されている。さらに、それら作業機ブッシュ54,55と作業機ピン56,57,58との連結部には、潤滑用グリースを注入するニップルを設けて、外部から作業機ブッシュに開けたグリース穴を通し、作業機内径部のグリース溝を通じて摺動面にグリースを供給し、シール装置59,60を配置して、作業機ブッシュと作業機ピン間の潤滑用グリースの逃げや、土砂や泥水の浸入を防止し、作業機ブッシュ内径面と作業機ピン外径面との焼付き防止と摩耗寿命の改善を図っている。
【0003】この給脂機構は図19(a)に示される油圧ショベル以外の他の作業機連結装置に対してもほぼ同じであるが、それら作業機連結装置は位置が高いところにあり、作業の不便さから、多くの場合において、潤滑グリース供給配管を使って、作業性の良い位置からのグリース給脂が行われている。
【0004】なお、本願発明に関連する先行技術として、本出願人の提案になる特許文献1,2に開示されるものがある。ここで、特許文献1に開示された技術は、高硬度、耐摩耗、耐高温酸化性、耐食性に優れた銅合金として広く使用されているAl青銅合金系の焼結性を改善し、寸法精度の良い製品を作るのに適したCu−Al系の焼結材料と、その焼結材料を用いた複合焼結摺動部材に関するものである。また、特許文献2に開示された技術は、高面圧下での軸受の耐焼き付き性および/または耐摩耗性の向上、異音の発生防止、給脂間隔の延長をねらいとした摺動材料並びに複合焼結摺動部材およびその製造方法に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−271129号公報
【特許文献2】特開2002−180216号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記潤滑用グリースが切れた場合には、連結部で焼付き、異音(鳴き)および異状摩耗等が発生するために、通常は、24〜50hr間隔でグリース給脂を実施しているのが実情である。しかし、このグリース給脂によっても、連結部で焼付き、異音(鳴き)および異常摩耗等が発生するのを完全に防止することができない。
【0007】また、前記連結部で焼付き、異音(鳴き)および異状摩耗等が発生した場合においては、作業機ブッシュ、作業機ピンを共に交換することが必要になり、この交換作業が煩雑で、コスト高になるという問題点がある。
【0008】近年は、作業機のイージーメンテナンス化のために、作業機ブッシュに耐焼付き性に優れ、保油性に優れた各種金属系焼結摺動材料を適用することが始められているが、特性的には、例えば給脂間隔が250〜500hr程度に延びた程度であり、給脂用配管類を無くすことができず、コスト的にも十分な対策がなされていない状況にある。
【0009】また、建設機械の作業能率向上と作業周辺環境の観点からは作業機トータルの軽量化を図ることと連結部での吸音性の向上が緊急的に望まれており、また連結部の軽量化そのものも課題となっている。
【0010】本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、作業時における各所軸受部の潤滑性を損なうことなく、かつ、軸受回転時の焼付きを発生させることなく、軸受部への外部からの度々の給脂を必要せず、しかも吸音性に優れた作業機連結装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用・効果】前記目的を達成するために、第1発明による作業機連結装置は、建設機械作業機における鋼製作業機ブッシュと作業機ピンとからなる作業機連結装置において、作業機ブッシュと作業機ピンで形成される隙間に、潤滑油および/または潤滑材を蓄えることのできる構造の金属系摺動材料を介在させることを特徴とするものである。
【0012】本発明によれば、作業機ブッシュと作業機ピンで形成される隙間に、潤滑油および/または潤滑材を蓄えることのできる構造の金属系摺動材料が介在されているので、作業時における軸受部の潤滑性を損なうことがなく、軸受回転時の焼付きが発生することがなく、しかも外部からの度々の給脂の必要がない吸音性に優れた作業機連結装置を得ることができる。
【0013】ところで、前記建設機械の作業機連結部においては、衝撃的な荷重状態を含めて、車体重量(W)の3倍レベルの荷重が頻繁にかかるために、作業機ブッシュは、600kgf/cmを越える面圧で作業機ピンと摺動することが多く、さらに、その摺動速度が極めて遅いために(2m/min以下)潤滑性が確保されにくいという問題点がある。とりわけ、図19に示されるブームシリンダ61、アームシリンダ62およびブームと車体との連結部63では摺動速度が遅い(〜0.2m/min)ために、頻繁に給脂を実施しても、焼付き、異音の発生が頻発する。
【0014】そこで、本発明では、作業機ブッシュと作業機ピンとの摺動面における材料の組み合わせによっていずれか一方が優先的に損傷されるようにし、作業機ブッシュまたは作業機ピンのいずれか一方を交換すれば良いようにするために、前記摺動面における材料の組み合わせとして、HRC45以上の硬さに焼入れ硬化された鋼と、より軟質な金属系摺動材料とからなるものとした。
【0015】要するに、本発明において、前記金属系摺動材料は、穴加工が施され、その穴部に潤滑油および/または潤滑材が保有されているのが好ましい(第2発明)。また、前記金属系摺動材料は、5〜30体積%の通気孔を有する金属系多孔質焼結摺動材料であり、その摺動相手材料がHRC45以上の硬さに焼入れ硬化された鋼との組み合わせからなるのが好ましい(第3発明)。
【0016】このように、作業機ブッシュに利用する金属系多孔質焼結摺動材料においては、含油もしくはグリース等の潤滑材を摺動面に均一に供給できるような構造であることが大切であり、本発明では、その摺動材料の気孔中に潤滑油を含有させることによって、摺動面での潤滑性の改善を図った。この金属系多孔質焼結摺動材料気孔率は、それぞれの気孔が閉空孔化され、焼結体中での潤滑油の移動がスムーズに起こるために必要な5体積%以上とし、またその金属系焼結体強度の観点からして30体積%以下とした。
【0017】さらに本発明では、この金属系燒結摺動材料に各種形状の穴を複数個あけ、その穴部にグリースや潤滑油を多量に貯蔵し、摺動面に安定的に長期にわたってそれらを供給することができるようにした。また、その穴部の摺動面における最大面積率は金属系焼結摺動材料の耐焼付き性能によって適正に選定されるが、後述する本発明のCu−Al−Sn、Cu−Al−Ti銅系焼結摺動材料が従来摺動材料の2〜4倍程度の耐焼き付き性を改善していること考慮すると、加工穴の面積率はほぼ0面積%から最大75面積%まで適用できることが明らかである。
【0018】前記金属系摺動材料は作業機連結装置を組み立てる際に作業機ブッシュまたは作業機ピンのいずれか一方に一体化されていることが好ましい。またさらに、連結装置としての交換作業性を考慮し、言い換えれば作業機ブッシュは本体に圧入して使用され、交換時には治具を使ってプレスで抜くのに対し、作業機ピンは簡便に引き抜くことができることを考慮し、本発明においては、従来の鋼製作業機ブッシュと作業機ピンの隙間に金属系摺動材料を挿入した構成、もしくは金属系摺動材料を挿入する不便性を考慮し、作業機ピン外径部にその金属系摺動材料を一体化した作業機ピンを提案するものである。
【0019】すなわち、前記第3発明において、少なくとも外径面がHRC45以上の硬さに熱処理硬化された鋼製の作業機ピンと摺動する作業機ブッシュ内径摺動部位に前記金属系多孔質焼結摺動材料が一体化されているのが好ましい(第4発明)。あるいは、少なくとも内径部がHRC45以上の硬さに熱処理硬化された鋼製の作業機ブッシュ内径面と摺動する作業機ピン外径摺動部位に前記金属系多孔質焼結摺動材料が一体化されているのが好ましい(第5発明)。
【0020】なお、円筒状もしくは板状の部材を円筒状に丸曲げした略円筒状の金属系摺動材料を一体化する方法としては、焼結接合法、圧入、嵌合、接着、ろう付け、バンド止め、クリンチ結合等のいずれの方法によっても良い(第22発明)が、作業現場での交換作業性を考慮した場合には、軽く嵌合させる方法である、バンド止めもしくはクリンチ結合などの方法を用いるのが好ましい。
【0021】このように軽い力にて一体化するする方法においては、作業機連結装置が回転した場合には、作業機ピンの軸方向に金属系摺動材料を押し出す力が作用するので、好ましくは、作業機ピン外径部に溝加工を施し、この溝形状に沿って金属系摺動材料の一部もしくは全てを設置し、前記押し出し力に対する抗力を発生させるようにするのが好ましい(第23発明)。
【0022】なお、前記金属系摺動材料としては、HRC45以上の硬さに焼入れ硬化された鋼に対して、より軟質で、鋼に対する耐化学的凝着性にすぐれる銅系摺動材料を用いるのがより好ましい。また、前記金属系摺動材料としては5〜30体積%の通気孔が含有される金属系多孔質焼結摺動材料を使い、その金属系多孔質焼結摺動材料の気孔中に潤滑油を含有させることによって、より厳しい摺動環境においても焼付きの発生を極力抑えるものとした(第3発明)。なお、さらに厳しい摺動環境の場合には、後述の少なくとも硬質のβ相を含有するCu−Al−Sn、Cu−Al−Ti系焼結摺動材料を用いるのが好ましいことは明らかである。
【0023】さらになお、前記金属系多孔質焼結摺動材料を適用する場合には、その円筒状または略円筒状成形体やそれらの仮焼結体を作業機ピン外径部に焼結接合して一体化する方法も好ましいことは明らかである。
【0024】さらに、作業機ピンの引き抜き後に、再度組み付ける際の不便性を解消するために、前記作業機ブッシュ端面部にシール装置またはシール装置とスラストリングとを介して2個の円筒リングを配置し、その円筒リングとその内径部に挿入した作業機ピンを固定しながら、同時に作業機ブッシュと作業機ピンを一体化(カセット化)するのが好ましい(第6発明)。こうすることで、給脂に関するメンテナンスフリー化を図ることができる。
【0025】さらに、本連結装置の長寿命化を図るために、長時間使用後に金属系摺動材料の荷重面が適時に変更できるように作業機ブッシュおよび/または作業機ピンが回転できるような構造にするのが好ましい(第7発明)。より具体的には、本連結装置が本体にセットされた状態で、固定ピンを緩めるか取り外した後に作業機ブッシュ部位を回転させる方法もしくは連結ボルトの固定位置を回転させて作業機ピン部位を回転させる方法がある。
【0026】前記各発明において、前記作業機ピンは、潤滑油を貯蔵できるように円筒形状に加工され、熱処理によって、その内径部がHRC35以上に硬化されているのが好ましい(第8発明)。
【0027】作業機のイージーメンテナンス化のために、前記作業機ピンは、その半径方向に設けた潤滑油供給穴が前記金属系多孔質焼結摺動材料を貫通しないようにして、その内径部に貯蔵させた潤滑油が金属系多孔質焼結摺動材料中の気孔を通じて摺動面へ供給できるようにされるのが好ましい(第12発明)。こうして、摺動面に潤滑材を多量に貯蔵させることによって、給脂用配管類を無くすことができ、経済的な改善が期待できる。
【0028】なお、前記潤滑材としては従来良く利用されるグリースなども良いが、このグリースは、極めて粘性が高いために、前記摺動面へ供給するに人手や機械的に加圧して送り出す必要があり給脂配管をなくすことは可能であっても、イージーメンテナンスの観点からは不十分である。このため、本発明では、少なくとも室温においては液体状の低粘性の潤滑油を使い、前記加圧による給油を必要のないものにした。すなわち、本発明においては、まず、作業機ピンに対しては、(1)前記作業機ピン外周面に一体化する金属系摺動材料として、5〜30体積%の通気孔が含有される金属系多孔質焼結摺動材料を用い、その金属系多孔質焼結摺動材料の気孔による潤滑油の保有力を使って、多量の潤滑油が摺動面から流出しないようにすること、(2)作業機ピンに開けられた潤滑油供給穴が前記金属系多孔質焼結摺動材料を貫通していないような構造とすること、(3)前記金属系摺動材料に機械加工によって適度な穴加工を施し、その穴部に保油性の高い多孔質材料(例えば、黒鉛、発泡ウレタン、含油プラスチック、フェルト布など)を充填し、摺動面における保油性を高めること、(4)作業機ピンの潤滑油貯蔵穴やさらに、潤滑油供給穴に発泡ウレタンなどの前記多孔質材料と潤滑油を共存させて充填し、摺動面へ供給性を調整すること、(5)作業機ブッシュの両端面内径部に例えばリップシールのようなオイルシール装置を配置し、作業機ピン外径面で適正に潤滑油が連結装置外へ流出しないようにすること、のうちの1つ以上の要件を組み合わせることとした。
【0029】また、前記潤滑油貯蔵穴の径は大きいほど多量の潤滑油を貯蔵することが可能となるが、前述の大きな荷重によって折損する危険性があってはならないので、建設機械本体での最過酷な作業状祝での作業機ピンにかかる曲げ応力を計測し、この結果(〜25kgf/cm以下)に基づいて、本発明では、中実の作業機ピンの曲げ断面係数Zを基準にして、本発明の円筒状作業機ピンの断面係数が0.6倍(〜42kgf/mm、表面傷による応力集中1.5倍の安全率を見込むと〜65kg/mm)を下回ることのないようにするとともに、さらに、この円筒状作業機ピンに衝撃的な荷重が作用した場合に、円環つぶしによる引張応力によって内径面から亀裂が発生し、さらにその亀裂が軸方向に進行しながら外径面に達することを見出して、その内径面が少なくとも熱処理によって前記引張応力に耐えるように強化するために、その硬さをHRC30以上に高めることによって、疲労強度的には50kgf/mm以上を確保できるようにした。なお、この硬さは、HRC35(HRC45)以上であることがより好ましいのは明らかである。
【0030】なお、前記円筒状作業機ピンの断面係数Zを0.6倍とした場合においては、前記円筒状作業機ピンの肉厚/外径の比は約10%となり、約64%の顕著な軽量化が達成されるので、作業機の作業効率改善に大きく寄与することがわかる。同様に、肉厚/外径の比を約25%とした場合には、Zは約0.93倍になり、約25%程度の軽量化が達成できるので、前記肉厚/外径の比は0.10〜0.25の範囲に調整することが好ましい。すなわち、前記作業機ピンは、外径部と内径部にHRC45以上の硬さの焼入れ硬化層が形成され、外径部硬化層と内径部硬化層の間に軟化層が形成され、この軟化層の肉厚が外径の0.1〜0.25倍で、同じ外径、長さの中実の作業機ピンに対して25〜65%軽量化されているのが好ましい(第9発明)。
【0031】さらに、本発明では、大きな潤滑油貯蔵穴に吸音性の優れた発泡ウレタン樹脂などを充填し、さらに、発泡ウレタンの発泡気孔中に潤滑油を含油させることによって、作業機ピンの吸音性を画期的に高めることを意図した。すなわち、前記第8発明または第9発明において、前記作業機ピンは、その内径部に吸音性の優れた発泡ウレタンなどの樹脂類が配置され、および/またはその半径方向に潤滑油供給穴を設けて、その内径部に貯蔵させた潤滑油を摺動面へ補給できるようにされ、および/またはその樹脂と潤滑油を共存できるようにされるのが好ましい(第10発明)。
【0032】また、前記円筒状作業機ピンの内径部に潤滑油を貯蔵する場合には、その両端面内径部に潤滑油を封止するための装置を設ける必要があり、少なくともそのうちの一方もしくは両方の封止装置が作業機ピンの端面から突出しないようにして、作業機ピンの取り付け取り外し時の圧入治具との干渉や、ハンマリング時に破損しないようにするものとして、さらに、その一方の封止装置からの潤滑油の供給ができるようにした。すなわち、前記第10発明において、前記内径部に潤滑油を含有する作業機ピンにおいて、その両端面部が封止され、少なくともその一方もしくは両方の封止装置が作業機ピン端面から突出することがなく、かつ一方の封止装置から潤滑油が供給できるようにされるのが好ましい(第11発明)。
【0033】また、前記第8発明〜第11発明において、前記作業機ピンは、その半径方向に設けた潤滑油供給穴が前記金属系多孔質焼結摺動材料を貫通しないようにして、その内径部に貯蔵させた潤滑油が金属系多孔質焼結摺動材料中の気孔を通じて摺動面へ供給できるようにされるのが好ましい(第12発明)。さらに、前記第2発明〜第12発明において、前記金属系多孔質焼結摺動材料には穴加工が施され、その穴中に潤滑材および吸音性や保油性の高い樹脂、ゴム、フェルト、黒鉛等が保有されているのが好ましい(第13発明)。
【0034】さらに、本発明では、前記作業機ピン外径部に均一な気孔が分散した金属系多孔質焼結摺動材料を一体化させる代わりに、作業機ブッシュ全体を金属系多孔質摺動材料で形成するか、もしくは円筒状または略円筒状の鋼製裏金の内径部に前記金属系摺動材料を一体化させても良い(第16発明)。この場合、前記作業機ピンまたは作業機ブッシュに一体化される金属系多孔質焼結摺動材料は、少なくともAlが5〜30重量%とCuが15〜40重量%含有されているFe−Cu−Al系もしくはFe−Cu−Al−C系多孔質焼結摺動材料であるのがより好ましい(第17発明)。
【0035】さらに本発明では、摺動特性の優れた金属系多孔質焼結摺動材料よりなる金属系摺動材料に各種形状の穴を複数個あけたものを利用して、その穴部にグリースや潤滑油を多量に貯蔵することや、摺動性、吸音性、保油性に優れた樹脂等を充填して使用することがより好ましいのは明らかである。より具体的には、金属系多孔質焼結摺動材料で作業機ブッシュ全体を形成する場合には、機械加工での穴あけ切削加工が必要であるが、薄肉円筒状の金属系多孔質焼結摺動材料よりなる摺動材料に各種形状の穴をあけたものや各種形状の穴をあけた板状の金属系多孔質焼結摺動材料を丸曲げたものを利用するのが好ましい。とりわけ、コスト的な観点からすればプレス加工で穴あけを施した板状の摺動材料を丸曲げして用いるのが好ましい。
【0036】また、作業機ブッシュ全体を金属系多孔質焼結摺動材料にて製造する場合には、補給される低粘性な潤滑油が連結装置外に流れ出やすく、長時間の無給脂化が危惧されるために、本発明では作業機ブッシュに最初に含油処理する潤滑油は低粘度な潤滑油とワックスやグリースの粘性を高める材料とを適時に配合して、少なくとも液体化する温度を50℃以上に高めるようにして、加熱含油処理するのが好ましい。さらに、作業機ブッシュの両端面内径部にオイシール装置を設けることも好ましい。
【0037】次に、前記潤滑油および/またはグリースが含油された作業機ブッシュとしては、高強度で、高硬質な鉄系多孔質焼結材料で一体成形されたブッシュが安価で好ましく、例えばFe−C−Cu系の含油焼結軸受を湊炭焼入れ処理などの熱処理を施したものがより低コストに利用できるが、そのときの気孔率は5〜30体積%の範囲で調整されるものとするのが良い。すなわち、前記第3発明〜第12発明において、前記作業機ブッシュ全体がFe−Cu系多孔質焼結摺動材料で構成され、かつHRC45以上の硬さに焼入れ、浸炭焼入れ等の熱処理を施されているのが好ましい(第15発明)。
【0038】さらに、前述のように、建設機械の連結部における摺動条件としては、面圧が600kg/cmを越え、摺動速度が2mm/min以下の潤滑状況が極めて厳しいことから、これらの鉄系含油軸受が摺動材料として十分でない場合が多い。このような極めて過酷な摺動条件下でも適用できるものとして、本発明では、本発明者らの提案(特開2002−180216号公報)になるFe−Al系の規則相を含有した材料が後述のようにFe−C−Cu系含油焼結軸受の3倍以上の高面圧においても焼付くことがないことから、この材料を使用することがより好ましい。要するに、前記作業機ブッシュ全体がFe−Cu−Al系もしくはFe−Cu−Al−C系多孔質焼結摺動材料で構成され、少なくともAlが5〜30重量%とCuが15〜40重量%含有されているのが良い(第14発明)。
【0039】また、より高荷重下や、低摺動速度で摺動する場合には、ヤング率が鋼の1/2程度に低く、作業機ピンとの接触面積が増大して面圧を下げ、さらに、化学的にも鋼に対して焼付きにくい銅系多孔質摺動材料が好ましい。この銅系多孔質摺動材料は一般的には軟質で、耐摩耗性に優れないことが知られているが、本発明では、本発明者らが先に提案した(特開2001−271129号公報)Cu−Al−Sn、Cu−Al−Ti系で、かつ、その組織中に硬質なβ相を含有した銅系多孔質焼結摺動材料が鋼に対する摺動材料として極めて有効であることから、この多孔質焼結材料を利用する前記作業機ブッシュ、作業機ピンがより好ましいものである。
【0040】すなわち、前記作業機ブッシュまたは作業機ピンに一体化される金属系多孔質焼結摺動材料は、ヤング率が鋼よりも低く、耐焼付き性に優れるとともに、耐摩耗性および耐食性に優れた銅系焼結摺動材料であるのが好ましい(第18発明)。ここで、前記銅系焼結摺動材料は、Cu−Al系多孔質焼結摺動材料であって、その焼結組織において少なくとも硬質なβ相およびα相とβ相が共存した組織となっており、その焼結組織の硬さがHv130以上であるのが良い(第19発明)。さらに、前記銅系焼結摺動材料は、5〜12重量%のAlを必須元素として、0.3〜5重量%のTiを含有した銅系焼結材料用混合粉末を圧縮成形して焼結し、それに続いてその焼結体を再圧縮と焼結する工程を1回以上繰り返してなるCu−Al−Ti系焼結摺動材料であるのが好ましい(第20発明)。また、前記銅系焼結摺動材料は、5〜12重量%のAlと3〜6重量%のSnを含有して、さらに、Ti、Ni、Co、Si、Fe、P、黒鉛の1種以上が0.5〜5.0重量%の範囲で含有されているCu−Al−Sn系焼結摺動材料であるのが良い(第21発明)。
【0041】また、前記銅系多孔質焼結摺動材料を作業機ブッシュ全体に使用した場合にはきわめて高価になるため、安価で、強度に優れた鋼製の円筒状および/または略円筒状の裏金内径部に薄い金属系多孔質焼結摺動材料を一体化して利用することが経済的であり、その一体化のための手法として、焼結接合法も実施されるが、円筒状の金属系多孔質焼結摺動材料や板状のものを丸曲げたもの、溶接、クリンチ結合などで形成した略円筒状のものを裏金内径部に圧入させたり、接着させたものを利用することが経済的にも好ましい。
【0042】また、作業時には作業機ピンと作業機ブッシュ間には軸方向へのスラスト力が作用し、前記金属系多孔質焼結摺動材料にも軸方向への抜け力が作用することも考えられることから、作業機ブッシュの内径部に前記金属系多孔質焼結摺動材料が圧入や接着されていることは好ましいことであるが、作業機ブッシュ裏金内径部に溝加工を施し、その溝形状に沿うような形状の金属系多孔質焼結摺動材料を加工することによって、溝部でスラスト力による抜け出しを防止することや作業機ピンを圧入している圧入部側面でそのスラスト力を受けるようにするのが好ましい。
【0043】さらに、本発明において、前記金属系摺動材料が裏金内径部に圧入または嵌合された作業機ブッシュには、その両端部近傍内径面に封止装置が取り付けられ(第24発明)、この封止装置にて作業機ピン外径面でシールすることによって、前記グリースや潤滑油の長期的保有性を高めると同時に外部からの土砂や泥水の浸入による作業機連結装置の焼付きや摩耗寿命を改善する構造とするのが好ましい。
【0044】
【発明の実施の形態】次に、本発明による作業機連結装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0045】図1(a)(b)(c)(d)には、本発明の一実施形態に係る作業機連結装置の断面図が示されている。
【0046】本実施形態の代表的な作業機連結装置として、図1(a)に示す油圧ショベルのアーム本体とバケットの連結装置では、アーム本体8に圧入される作業機ブッシュ1と、この作業機ブッシュ1の内径部を貫通するとともに、バケットフレーム2の穴を貫通するように配される円筒状の作業機ピン4とより構成されている。作業機ピン4の一端には作業機ピンの抜け止め用の鋼板3が一体化され、さらに、固定用リング5とボルト6によってバケットフレーム2に固定され、バケットが作業するときには作業機ピン4がバケットと共に回転し、作業機ブッシュ1との間で摺動する。そして、前記作業機ブッシュ1と作業機ピン4との間には、含油および/またはグリース等の潤滑材を蓄えることのできる構造の金属系摺動材料7が介在され、作業時における焼付き、異常摩耗等をその金属系摺動材料7に集中させるようにしてその補修性の改善が図られている。
【0047】さらに、バケットフレーム2に固定される作業機ピン4のわずかなたわみに起因する微小な摺動によって、バケットフレーム2と作業機ピン4間で発生する異音(鳴き)を防止するためには、図1(b)に示されるようにバケットフレーム2に作業機ブッシュ9と金属系摺動材料10を配することがより好ましい。
【0048】また、前記焼付き性や局部焼付きによる異状摩耗をできるだけ改善するために、前記作業機ブッシュ1および/または前記作業機ピン4との摺動面における材料の組み合わせを、5〜30体積%の通気孔が含有される金属系多孔質焼結摺動材料とHRC45以上の硬さに焼入れ硬化された鋼とからなるようにし、その金属系多孔質焼結摺動材料の気孔中に潤滑油を含有させるようにされている。ここで、図1(c)には、作業機ブッシュ1の内径部に溝を形成し、この溝に前記金属系摺動材料7を一体化した例が示され、図1(d)には、作業機ピン4の外径部に溝を形成し、この溝に前記金属系摺動材料7を一体化した例が示されている。なお、図1(c)において符号11にて示されるのはシール装置である。
【0049】さらに、図2(a)に示されるように、作業機ピン4と作業機ブッシュ1をシール装置13またはシール装置13とスラストリング14を介して固定リング15,16で一体化し、本体への取り付け、取り外し性を簡便化するとともに、さらに、長時間の使用後に金属系摺動材料7の荷重面を変更できるようにするために、一体化した連結装置を本体に装着したままの状態でブッシュ固定ピン12を緩めるか外して、作業機ブッシュ1を回転させる構造および/または固定リング5と固定ボルト6を緩めるか外して作業機ピン4が回転できるような構造にしても良い。
【0050】さらに、図2(b)に示されるように、ブラケット部が二分されたアーム本体8とバケットフレーム2を連結するにあたり、二分されたブラケット部それぞれに作業機ブッシュ1をシール装置13またはシール装置13とスラストリング14を介して装着し、リング30を介して作業機ピン4と固定リング15,16で一体化し、取り付けるようにしても良い。こうすることによって、作業機ブッシュ1を含めてブラケット部がコンパクトになり、取付け・取り外し性を簡便化することができる。さらに、長時間の使用後に金属系摺動材料7の荷重面を変更できるようにするために、一体化した連結装置を本体に装着したままの状態でブッシュ固定ピン12を緩めるか外して、作業機ブッシュ1を回転させる構造および/または固定リング5と固定ボルト6を緩めるか外して作業機ピン4が回転できるような構造にすることもできる。
【0051】また、前記金属系多孔質焼結摺動材料(金属系摺動材料7)への長期間の給油を確保するために、作業機ピン4の中心部に軸方向に潤滑油貯蔵穴17が設けられるとともに、半径方向に潤滑油供給穴18が設けられ、内部に貯蔵される潤滑油を摺動面に補給できるようにされている。また、グリース給脂のように摺動面への供給に人手や機械式による加圧供給を不要とするために、本実施形態では、少なくとも室温において液体状の低粘性の潤滑油を用い、作業機ピン4に対しては次の(1)〜(5)のうちの1つ以上の要件を組み合わせるようにされている(図3参照)。
(1)作業機ピン4外周面に一体化する金属系摺動材料7として、5〜30体積%の通気孔を含有する金属系多孔質焼結摺動材料を使い、この金属系多孔質焼結摺動材料の気孔による潤滑油の保有力を使って、多量の潤滑油が摺動面から流出しないようにすること、(2)作業機ピン4に開けられた潤滑油供給穴18が前記金属系多孔質焼結摺動材料を貫通していないような構造とすること、(3)前記金属系摺動材料7に機械加工によって適度な穴加工を施し、その穴部に保油力の高い多孔質材料(例えば、黒鉛、発泡ウレタン、含油プラスチック、フェルト布など)を充填し、摺動面における保油性を高めること(図3(c))、(4)作業機ピン4の潤滑貯蔵穴17および/または潤滑油供給穴18に発泡ウレタン、フェルト、黒鉛などの多孔質体と潤滑油を共存させ、摺動面への潤滑油の供給性を調整すること(図3(b))、(5)作業機ブッシュ1の両端面内径部に、例えばリップシールのようなオイルシール装置11が配置され(図3(a))、作業機ピン4外径面で適正に潤滑油が連結装置外へ流出しないようにすること、
【0052】また、本実施形態では、少なくとも作業機ピン4の内径面を熱処理強化することによって、その作業機ピン4を後述するように、より薄肉円筒状のものとして、その内径部により多量の潤滑材を貯蔵することにより無給脂化を図り、また給脂配管類の廃止や給脂の手間を省くことができるようにした。
【0053】なお、前記円筒状作業機ピン4の内径は大きいほど後述する多量の潤滑油等を貯蔵することが可能となるが、大きな荷重によって折損する危険性があってはならない範囲での適正化が必要であることから、本実施形態では、当社建設機械(PC300)を使って、とりわけ衝撃的な大荷重のかかるバケットシリンダボトム連結部での最過酷な作業条件での中実の作業機ピン(円柱状)にかかる曲げ応力を計測して得られた図4に示される結果に基づいて(〜23kgf/mm)、中実の作業機ピンの曲げ断面係数(Z)を基準にして、本実施形態の円筒状作業機ピン4のZが0.6倍(〜40kgf/mm)を下回ることがないようにした。
【0054】さらに、円筒状作業機ピンに衝撃的な荷重が作用した場合に、円環つぶしによる引張応力によって内径面から亀裂が発生し、さらにその亀裂が軸方向に進行しながら外径面に達することを見出して、その内径面が少なくとも熱処理によって前記引張応力に耐えるように強化するために、その硬さをHRC30以上に高めるようにし、これによって疲労強度的には50kgf/mm以上を確保できるようにした。なお、この内径面の硬さは、表面傷等による安全率約1.5倍を見込むと、HRC35以上とするのがより好ましい。
【0055】また、前記円筒状作業機ピンの肉厚が薄くなり、円環つぶし引張応力による破損が重要になるにつれ、よりその内径部の強化が重要になることは明らかであり、円筒状作業機ピンの肉厚全域でHRC40以上に硬化されるが、本実施形態ではさらに、図5に示されるように、円筒状作業機ピン4の外径面と内径面に硬化層19を、肉厚内部に軟化層(軟質層)20をそれぞれ形成し、内外径部表面に圧縮残留応力を発生させた高強度な作業機ピンとすることとした。
【0056】さらに、作業機ピンの外径サイズは30〜150mmレベルのものが多く使われており、本実施形態の円筒状作業機ピンにおいても、肉厚は37.5mmにも及ぶために、安価な炭素鋼やボロン鋼を利用するためにはその内径面を直接的に焼入れることがより好ましいが、作業機ピンが極めて小径長尺な内筒体であるために、内径面を均一に焼入れ硬化させることが極めて難しい。このため、本実施形態では、円筒状作業機ピンを焼入れ処理可能な温度域に全体加熱した後に、少なくとも内径部を図6に示されるように内外径冷却仕切り板を用いた管内層流冷却方法によって焼入れし、前記図5に示したように外径面と内径面に硬化層19、肉厚内部に軟化層20を形成し、内外径部表面に圧縮残留応力を発生させた高強度な作業機ピンを製造するものとした。
【0057】なお、肉厚/外径比が10〜25%の円筒状作業機ピン素材の内径表面部には通常1mm以内で脱炭された層があるが、本実施形態では、内径部に熱処理を付与していることや、連結部位によっては大きな強度が必要とされないことから、内径部の機械加工を廃止するものとした。
【0058】なお、前述の断面係数Zを0.6倍とした場合においては、前記円筒状作業機ピンの肉厚/外径の比は約10%となり、約64%の顕著な軽量化が達成されるので作業機の作業効率改善に大きく寄与することがわかる。同様に、肉厚/外径の比を約25%とした場合には、Zは約0.93倍になり、約25%程度の軽量化が達成できるので、前記肉厚/外径の比を0.10〜0.25の範囲(曲げ断面係数が0.6〜0.93)に調整することが好ましい。
【0059】さらに本実施形態では、図3に示されるように、その大きな潤滑油貯蔵穴に吸音性の優れた発泡ウレタン樹脂などを充填することによって、作業機ピンのさらなる吸音性と前記無給脂化の機能を高めることとした。
【0060】また、前記円筒状作業機ピンの内径部に潤滑油を貯蔵する場合には、図3に示されるようにその両端面内径部に潤滑油を封止するための装置(シール装置11)を設ける必要があり、少なくともそのうちの一方もしくは両方の封止装置が作業機ピンの端面から突出しないようにして、作業機ピンの取り付け取り外し時の圧入治具との干渉や、ハンマリング時の破損が生じないようにし、さらに、一方の封止装置から潤滑油の供給ができるようにした。
【0061】さらに、作業機ブッシュ全体が金属系多孔質焼結体で製造され、摺動部がHRC45以上に硬化されている場合には、前記作業機ピンと組み合わせて使用することが好ましい。また、作業機ピン内径部から補給される低粘性な潤滑油が連結装置外に流れ出やすく、長時間の無給脂化が危惧される場合は、前記(1)〜(5)の対策の1つ以上を実施することができる。本実施形態では、作業機ブッシュに最初に含油処理する潤滑油は低粘度な潤滑油とワックスやグリースの粘性を高める材料とを適時に配合して、少なくとも液体化する温度を50℃以上に高めるようにして、加熱含油処理するものとした。さらに、作業機ブッシュの両端面内径部にオイルシール装置を設けることも好ましいことである。
【0062】次に、前記全体焼結材料とした作業機ブッシュとしては、高強度で、高硬質な鉄系多孔質焼結材料を一体成形されたブッシュが好ましく、例えば、Fe−C−Cu系の含油焼結軸受を浸炭焼入れ処理などの熱処理を施したものがより低コストで利用できるが、そのときの気孔率は5〜30体積%の範囲で調整されるものとすることは重要である。
【0063】さらに、前述のように、建設機械の連結部における摺動条件として面圧が600kg/cmを越え、さらに摺動速度が2mm/min以下の潤滑状況がきわめて厳しいことから、これらの鉄系含油軸受が摺動材料として十分でない場合が多い。このような極めて過酷な摺動条件下でも適用できるものとして、本実施形態では、本発明者らが提案している(特開2002−180216号公報)Fe−Al系の規則相を含有した材料が後述のようにFe−C−Cu系含油焼結軸受の3倍以上の高面圧においても焼付くことがないことから、この材料を使用することがより好ましい。
【0064】前記Fe−Al系の規則相を含有した材料としては、後述するように少なくともAlが5〜30重量%とCuが15〜40重量%含有されているFe−Cu−Al系もしくはFe−Cu−Al−C系多孔質焼結摺動材料である。
【0065】また、より高荷重下や、低摺動速度で摺動する場合には、ヤング率が鋼の1/2程度に低く、作業機ピンとの接触面積が増大して、面圧を下げ、さらに、化学的にも鋼に対して焼付きにくい銅系多孔質摺動材料が好ましい。この銅系多孔質摺動材料は、一般的に軟質で、耐摩耗性に優れないことが知られているが、本実施形態では、本発明者らが先に提案した(特開2001−271129号公報)Cu−Al−Sn、Cu−Al−Ti系で、かつ、その組織中に硬質なβ相を含有した鋼系多孔質焼結摺動材料が極めて有効であることから、この多孔質焼結材料を利用することが極めて好ましいものとした。
【0066】前記銅系などの多孔質焼結摺動材料はきわめて高価な材料であるために、前述のように作業機ブッシュ全体が焼結材料から構成されることは、経済的に不利である。このため、本実施形態では図1に示したように高強度な鋼製の円筒状および/または略円筒状の裏金内径部に薄い多孔質焼結摺動材料を一体化した構造とした。一体化の方法としては、焼結接合法も考えられるが、円筒状の金属系多孔質焼結摺動材料や板状のものを丸曲げたもの、さらに、それを溶接、クリンチなどで形成した略円筒状の金属系多孔質焼結摺動材料を裏金内径部に圧入させたり、接着させたものを利用することが経済的にも好ましい。
【0067】より具体的には、図7(a)に示されるように、板状の摺動材料を円筒状に丸曲げ加工し、作業機ブッシュ内径部にセットする際に、端面部で突き合わせて嵌合力を発生させるもの、図7(b)に示されるように、板状の摺動材料を円筒状に丸曲げ加工し、突き合わせて溶接したもの、図7(c)に示されるように、板状の摺動材料の両端面を丸曲げ加工した後にクリンチ接合したものがある。なお、前記金属系摺動材料を内径部に溝を持つ作業機ブッシュに配置する方法としては、円筒状および/または略円筒状の金属系摺動材料を拡張加工するのも良いことは明らかである。
【0068】なお、作業機ブッシュは前述のように連結部において圧入して使われることが多いので、圧入時のかじりを軽減するためにはHRC20以上の硬さを確保しておくことが好ましい。
【0069】前記裏金に一体化した金属系多孔質焼結摺動材料の含油およびまたはグリースなどの潤滑材をより多く保有できる構造においては、その摺動材料に各種形状の穴をあけたものを利用する方法が好ましい。この方法は薄肉円筒状の金属系摺動材料に対しては機械加工によって容易に製造することが可能であり、また、各種形状の穴をプレス加工であけた板状の金属系摺動材料を丸曲げて利用することは、いわゆるパンチングメタル(図8R>8参照)として市場入手性に優れ、低コストで加工できることから好ましい。
【0070】作業時には作業機ピンと作業機ブッシュ間には軸方向へのスラスト力が作用し、前記金属系多孔質焼結摺動材料には軸方向への抜け力が作用することから、作業機ブッシュの内径部に前記金属系多孔質焼結摺動材料が圧入や接着されていることは好ましいことであるが、より長期間の安定性を考慮した場合には、作業機ブッシュの裏金内径部に溝加工を施し、その溝形状に沿うような形状の金属系多孔質焼結摺動材料を加工することによって、溝部でスラスト力による抜け出しを防止することが好ましい(図3参照)。
【0071】さらに、本実施形態では、作業機ブッシュ裏金の両端面部内にリップシールなどのオイルシール装置を配し、作業機ピン外径面でシールすることによって、前記グリースや潤滑油の長期的保有性を高めると同時に外部からの土砂や海水の浸入による作業機連結装置の焼付きや摩耗寿命を改善する構造とした(図3参照)。
【0072】図9(a)〜(h)には、本発明の他の実施形態に係る作業機連結装置の断面図が示されている。
【0073】本実施形態は、球面ブッシュに適用した例を示すものである。この適用例において、(a)〜(d)にて示されるのは、外輪21,21Aの内径部に金属系摺動材料7を一体化した例であり、(e)〜(g)にて示されるのは、内輪22,22Aの外径部に金属系摺動材料7を一体化した例である。また、(d)(h)にて示されるのは、内輪22の内径部に金属系摺動材料7を一体化した例である。ここで、外輪21および内輪22は溶製鋼であり、外輪21Aおよび内輪22Aは高強度焼結鋼である。
【0074】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0075】(実施例1)実車作業機ピンにかかる応力の測定本実施例では、当社建設機械のPC300を使って、面打ちストロークエンドアーム90°の作業時に最も過酷な荷重がかかることが知られているバケットシリンダボトムのシリンダ軸力とそれらの作業機ピンにかかる曲げ応力をひずみゲージを使って測定した。図4には軸力から算出した負荷荷重と中実作業機ピン外径部(φ90mm)に発生する曲げ応力の測定結果が示されているが、その最大負荷荷重は170.9tonで、中実作業機ピン外径部の最大応力は23kg/mmであった。なお、円筒状作業機ピンの肉厚を薄くしすぎた場合には、後述のように円環つぶれ破損が多く問題になるので、本実施例ではZ=0.6以上で、肉厚/外径比=0.1以上とした。
【0076】(実施例2)作業機ピンの円環つぶれ疲労破壊本実施例では、外径60mm、長さ140mmで、内径を変えて、肉厚/外径=0.175、0.145、0.1に調整した作業機ピンの試験片を、図10に示すような治具に装着して疲労試験を実施し、作業機ピンの円環つぶし引張応力によるその内径部からの破損強度に対する内径部硬さの影響を調査した。なお、作業機ブッシュはS45C炭素鋼管材を用いて、その外径、内径面ともに高周波焼入れによってHRC45の硬化深さが約3mmとなるように焼入れし、180℃、3hrの焼戻し処理を施した水準1(内径硬化層硬さHRC57)、水準1の内径部を焼入れの無い水準2(内径部硬さHRC18)およびSCrB440鋼管を使って、全体を850℃に30min加熱した後、油焼入れし、300℃で3hr焼戻した水準3(スルハード硬さHRC50)を準備した。
【0077】図11は水準1の肉厚/外径比が0.175の前記円筒状作業機ピンの同図中に示す荷重点下の内径部にひずみゲージを貼り、計測した発生応力を示したものである。なお、本実施例で使用する作業機ピンの外径φ60mmは当社PC100(9.5ton)に利用するサイズであり、また計測の最大荷重は車体荷重の約4倍荷重としている。
【0078】疲労試験の条件は、負荷荷重が車体荷重の約2倍程度作用することを想定して、さらにその2倍の加速テストを行うために、疲労試験荷重は38tonとし、それらの内径部にかかる前記引張応力を測定しながら、その応力繰り返し回数と内径部のわれの発生関係を求めたが、ひずみゲージの破断時点を割れ発生とするために、数百回レベルの検出遅れは避けられないために、低回数で破損する水準の検出精度が相対的に悪くなることは避けられない。本実施例の結果を図12にまとめて示した。なお、水準1−2、水準1−3はそれぞれ肉厚/外径比が0.145、0.10の形状のものに水準1の熱処理を施したものの結果である。
【0079】この試験の結果、内径部硬さが高くなるほどより高強度になり、前述の実際の作業機ピンにかかる応力調査(〜25kg/mm)に基づき、かつ、断面係数0.6倍を考慮した場合の応力が43kg/mm程度であり、その際の円環つぶし引張応力が50kg/mmを越えないこと、および、作業機ピンにかかる最大負荷回数が実車寿命(1〜2万時間)で10万回を越えないことから内径部硬さがHRC30以上、好ましくはHRC35以上あれば良いことが分かる(図13中のB点参照)。また、同様の基準に基づけば、肉厚/外径の比が0.1以上であることが好ましいことも明らかである。
【0080】さらに、本実施例では中空作業機ピンの試験片の内径部熱処理法として、高周波焼入れ法を採用したが、実際の作業機ピンは外径/長さの比が0.1ときわめて小さく、本発明の円筒状作業機ピンにおける内径/長さの比は0.1以下になる場合が多く、実際的には内径部に高周波コイルを入れてその内径部を焼き入れることは困難であり、本発明では、本発明者らが先に提案したように、作業機ピン全体を焼入れ処理可能な温度に加熱した後に、内径部に冷却媒体を管内層流状に流して焼入れ、外径部は水スプレー等の一般的な手法によって焼入れる方法で製造することが好ましいのは明らかである。
【0081】図14には、外径41.3mm、内径24.5mm、長さ81mmの円筒体(S45C炭素鋼DI値;0.9inch)を3本重ねた状態(内径/長さ=0.1)で、外径面から高周波加熱で約900℃に加熱した後に、外径面からの高周波加熱を続けながら、内径部に対して水の管内層流冷却を開始し、5秒後に外径からの高周波加熱を止めて外周面を水スプレー冷却した時のそれら円筒体の焼入れ組織写真が示されている。この写真から、内径部と外径部に均一な硬化層(HRC60)が形成され、その硬化層内部に未焼入れな軟化層(HRC27)が形成されていることがわかる。また、この焼入れ方法を適用することによって、より小径、薄肉な円筒状作業機ピンにおいても、前述の円環つぶし引張応力に対して強靭な前記肉厚中央部あたりに軟質層を設ける焼入れ硬化層分布が容易に形成され、また、厚肉の円筒状作業機ピンにおいても焼入れ性の低い安価な炭素鋼などが利用できるなどの経済的メリットも大きい。
【0082】(実施例3)CuAl系焼結板の製造と摺動試験結果300メッシュ以下のAl粉末、Sn粉末、TiH粉末、Si粉末、Mn粉末、Ni粉末、燐鉄粉末と電解銅粉末(福田金属CE15)を用いて表1に示した混合粉末を図15に示すJISの引張り試験片用金型にて成形圧力4ton/cmで成形し、その試験片を真空焼結炉を用いて0.01torrの真空度、850、900、960℃で1hr焼結した後に、その試験片が割れない範囲で圧延し、同じ温度で1hr再焼結したもの(2S1R材)の硬さを測定し、さらに、それらの材料を定速摩擦摩耗試験法で、摩擦係数が急激に高くなる面圧と摺動速度から焼き付き限界値(PV値)とその時点での摩耗量(△Wmm)を測定して摺動特性を評価した。
【0083】
【表1】


【0084】図16には、定速摩擦摩耗試験機の概念図、摺動試験片ホルダーおよび摺動試験条件が示されている。摺動試験片は板厚さ2mmで5mm角に加工した後、摺動試験片ホルダーにセットして試験に供した。摺動試験の面圧は100kg/cmから開始して、5分間に摩擦係数の異常や摩耗の異常が無ければ50kg/cm毎に昇圧しながら最大800kg/cmまで負荷した。
【0085】各試験片のビッカース硬さHv、PV値および摩耗量の測定結果が表1にまとめて示されている。この結果、主に以下のことが明らかになった。
(1)Cu−Alに対するSn添加による硬さアップの寄与はほとんど無く、わずかにAl濃度が増すに連れて硬化するが、β単一組織になると圧延し難くなり、結果として硬度が低くなる。
(2)Cu−Al、Cu−Al−Sn系焼結体の硬さアップに対するTiの添加の影響は極めて顕著であり、その作用は焼結温度が高いほど大きくなるが、これはTiの合金化の促進によるものである。同様の作用はMn、Ni、Siにおいても観察される。
(3)定速摩擦摩耗試験による摺動特性を評価した結果、α相、(α+β)二相、β相の各組織材においてもSnの添加によって、摺動特性はより改善されることが分かった。
(4)さらに、軟質なα相組織材料に比べて、(α+β)二相およびβ相組織材料の摺動特性は顕著に改善されることがわかった。
(5)また、Ti、Si、Mn、Niなどの添加によって、耐摩耗性が改善されることも明らかになった。
【0086】なお、表1中のNo.53〜55には900℃での真空焼結時間を5分と短くして、圧延と焼結を二度繰り返した(3S2R材)水準を示したが、No.54では非平衝状態でのβ相が粒界に沿って微細に析出することが確認され、摺動特性を改善することにもその影響があらわれている。
【0087】また、本実施例では焼結体に割れが発生しない範囲での最大の圧延率を施しているが、その際の相対焼結密度は98以上にまで達するものが多く、したがって、最終圧延率をコントロールすることによって、本発明が希望する相対密度95〜70%の焼結板を製造できることは明らかである。さらになお、本実施例のようにAl粉末を直接的に利用する場合には散布粉末の状態で真空焼結した場合においても、緻密化は起こらず、必ず一旦圧密化した状態で焼結することが必要である。
【0088】前述のことから、薄板を丸曲げて作る略円筒状の多孔質焼結摺動材料が安価に製造でき、本発明の作業機ピンおよびまたは作業機ブッシュに容易に一体化して利用できることがわかる。
【0089】(実施例4)含油ができる構造の金属系摺動材料本実施例では、作業機使用条件での各種金属系摺動材料の耐焼き付き性を調査し、適正な摺動材料の検討を行った。前記金属系摺動材料の摺動特性を評価するために、図17に示す摺動試験片を用い、図18に示した試験方法によって、摩擦係数が顕著に上昇したり、異音を発生したり、異常摩耗が進行した時点での面圧によってその耐焼き付き性を評価した。
【0090】なお、本実施例に用いた金属系摺動材料を表2に示したが、No.1〜5はAl青銅系焼結摺動材料、No.6、7は青銅の溶製材と焼結材料である。またさらにS45C高周波焼入れ材料を基準にFe−C−Cu系含油軸受材およびFe−Al−Cu系焼結摺動材料の摺動特性についても調査した。
【0091】
【表2】


【0092】本実施例の結果は、表2中にまとめて示したが、明らかに、鉄系摺動材料に比べて銅系摺動材料が好ましく、さらに、含油できる銅系焼結材料が好ましく、とりわけ、Al青銅系焼結材料が優れていることがわかる。特に、No.2〜5の焼結材料はβ相を含有する材料は耐焼付き性に優れると共に、極めて硬質になっており耐摩耗性にも優れることは容易に想像される。
【0093】作業機ブッシュと作業機ピン間の接触面圧は、前述の通りに、摺動材料にかかる面圧としては500kg/cmに耐えることがより好ましく、表2に示すように、耐面圧性に優れたCu−Al系およびFe−Cu−Al系の焼結摺動材料がより好ましいことは明らかである。作業機連結装置における面圧が必ずしも前記のような過酷な条件ばかりでないことを勘案すれば、本発明主旨からすれば、挿入する金属系摺動材料およびまたは金属系多孔質焼結摺動材料の材質に関しては必ずしも限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)(b)(c)(d)は、一実施形態に係る作業機連結装置の断面図(1)である。
【図2】図2(a)(b)は、一実施形態に係る作業機連結装置の断面図(2)である。
【図3】図3(a)(b)(c)は、作業機ピンによる自己給脂方策を示す図である。
【図4】図4は、シリンダ軸力と作業機ピン外径面に発生する曲げ応力との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、軽量化作業機ピンの熱処理硬化パターン(a)(b)および硬さ分布図(c)である。
【図6】図6は、円筒状作業機ピン内径部の冷却方法説明図である。
【図7】図7(a)(b)(c)は、金属系摺動材料の形成方法説明図である。
【図8】図8(a)〜(g)は、金属系摺動材料の例を示す図である。
【図9】図9(a)〜(h)は、球面ブッシュへの適用例を示す断面図である。
【図10】図10は、作業機ピンの円環つぶし疲労試験説明図である。
【図11】図11は、荷重と円環つぶし引張応力との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、作業機ピンの内径破壊疲労強度を示すグラフである。
【図13】図13は、内径部硬さと破損回数との関係を示すグラフである。
【図14】図14(a)(b)は、縦断面および横断面のマクロパターン写真である。
【図15】図15は、引張試験片形状を示す図である。
【図16】図16は、定速摩擦摩耗試験装置の概念図(a)と摺動試験片ホルダー(b)である。
【図17】図17は、摺動試験に供した試験片形状を示す断面図である。
【図18】図18は、摺動試験の試験装置の概念図(a)および試験条件(b)である。
【図19】図19は、油圧ショベルの作業機を示す斜視図(a)とバケット連結部の詳細図(b)である。
【符号の説明】
1 作業機ブッシュ
2 油圧シリンダ
4 作業機ピン
7 金属系摺動材料
11 シール装置
17 潤滑油貯蔵穴
18 潤滑油供給穴
19 硬化層
20 軟化層
21,21A 外輪
22,22A 内輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】 建設機械作業機における鋼製作業機ブッシュと作業機ピンからなる作業機連結装置において、作業機ブッシュと作業機ピンで形成される隙間に、潤滑油および/または潤滑材を蓄えることのできる構造の金属系摺動材料を介在させることを特徴とする作業機連結装置。
【請求項2】 前記金属系摺動材料は、穴加工が施され、その穴部に潤滑油および/または潤滑材が保有されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機連結装置。
【請求項3】 前記金属系摺動材料は、5〜30体積%の通気孔を有する金属系多孔質焼結摺動材料であり、その摺動相手材料がHRC45以上の硬さに焼入れ硬化された鋼との組み合わせからなることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機連結装置。
【請求項4】 少なくとも外径面がHRC45以上の硬さに熱処理硬化された鋼製の作業機ピンと摺動する作業機ブッシュ内径摺動部位に前記金属系多孔質焼結摺動材料が一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の作業機連結装置。
【請求項5】 少なくとも内径部がHRC45以上の硬さに熱処理硬化された鋼製の作業機ブッシュ内径面と摺動する作業機ピン外径摺動部位に前記金属系多孔質焼結摺動材料が一体化されている請求項3に記載の作業機連結装置。
【請求項6】 前記作業機ブッシュ端面部にシール装置またはシール装置とスラストリングとを介して2個の円筒リングを配置し、その円筒リングとその内径部に挿入した作業機ピンを固定しながら、同時に作業機ブッシュと作業機ピンを一体化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項7】 前記金属系摺動材料の荷重面が適時に変更できるように作業機ブッシュおよび/または作業機ピンが回転できるような構造にすることを特徴とする請求項6に記載の作業機連結装置。
【請求項8】 前記作業機ピンは、潤滑油を貯蔵できるように円筒形状に加工され、熱処理によって、その内径部がHRC35以上に硬化されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項9】 前記作業機ピンは、外径部と内径部にHRC45以上の硬さの焼入れ硬化層が形成され、外径部硬化層と内径部硬化層との間に軟化層が形成され、この軟化層の肉厚が外径の0.1〜0.25倍で、同じ外径、長さの中実な作業機ピンに対して25〜65%軽量化されていることを特徴とする請求項8に記載の作業機連結装置。
【請求項10】 前記作業機ピンは、その内径部に吸音性の優れた発泡ウレタンなどの樹脂類が配置され、および/またはその半径方向に潤滑油供給穴を設けて、その内径部に貯蔵させた潤滑油を摺動面へ補給できるようにされ、および/またはその樹脂と潤滑油を共存できるようにされる請求項8または9に記載の作業機連結装置。
【請求項11】 前記内径部に潤滑油を含有する作業機ピンにおいて、その両端面部が封止され、少なくともその一方もしくは両方の封止装置が作業機ピン端面から突出することがなく、かつ、その一方の封止装置から潤滑油が供給できるようにされる請求項10に記載の作業機連結装置。
【請求項12】 前記作業機ピンは、その半径方向に設けた潤滑油供給穴が前記金属系多孔質焼結摺動材料を貫通しないようにして、その内径部に貯蔵させた潤滑油が金属系多孔質焼結摺動材料中の気孔を通じて摺動面へ供給できるようにされる請求項8〜11のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項13】 前記金属系多孔質焼結摺動材料には穴加工が施され、その穴中に潤滑材および吸音性や保油性の高い樹脂、ゴム、フェルト、黒鉛等が保有されている請求項2〜12のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項14】 前記作業機ブッシュ全体がFe−Cu−Al系もしくはFe−Cu−Al−C系多孔質焼結摺動材料で構成され、少なくともAlが5〜30重量%とCuが15〜40重量%含有されている請求項3〜12のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項15】 前記作業機ブッシュ全体がFe−C系多孔質焼結摺動材料で構成され、かつHRC45以上の硬さに焼入れ、浸炭焼入れ等の熱処理を施されている請求項3〜12のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項16】 鋼製の円筒状および/または略円筒状裏金の内径部に金属系多孔質焼結摺動材料が一体化された作業機ブッシュが用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項17】 前記作業機ピンまたは作業機ブッシュに一体化される金属系多孔質焼結摺動材料は、少なくともAlが5〜30重量%とCuが15〜40重量%含有されているFe−Cu−Al系もしくはFe−Cu−Al−C系多孔質焼結摺動材料である請求項16に記載の作業機連結装置。
【請求項18】 前記作業機ブッシュまたは作業機ピンに一体化される金属系多孔質焼結摺動材料は、ヤング率が鋼よりも低く、耐焼付き性に優れるとともに、耐摩耗性および耐食性に優れた銅系焼結摺動材料である請求項16に記載の作業機連結装置。
【請求項19】 前記銅系焼結摺動材料は、Cu−Al系多孔質焼結摺動材料であって、その焼結組織において少なくとも硬質なβ相およびα相とβ相が共存した組織となっており、その焼結組織の硬さがHv130以上である請求項18に記載の作業機連結装置。
【請求項20】 前記銅系焼結摺動材料は、5〜12重量%のAlを必須元素として、0.3〜5重量%のTiを含有した銅系焼結材料用混合粉末を圧縮成形して焼結し、それに続いてその焼結体を再圧縮と焼結する工程を1回以上繰り返してなるCu−Al−Ti系焼結摺動材料である請求項19に記載の作業機連結装置。
【請求項21】 前記銅系焼結摺動材料は、5〜12重量%のAlと3〜6重量%のSnを含有して、さらに、Ti、Ni、Co、Si、Fe、P、黒鉛の1種以上が0.5〜5.0重量%の範囲で含有されているCu−Al−Sn系焼結摺動材料である請求項20に記載の作業機連結装置。
【請求項22】 前記作業機ピンの外径部または作業機ブッシュの内径部への前記金属系多孔質焼結摺動材料よりなる金属系摺動材料の一体化は、円筒状および/または略円筒状に加工した粉末成形体、仮焼結体、焼結体を焼結接合、圧入、嵌合、接着、ろう付け、クリンチ結合等の方法により一体化するものである請求項3〜19のいずれかに記載の作業機連結装置。
【請求項23】 前記作業機ピンの外径部または作業機ブッシュ裏金の内径部に溝を設け、その溝形状に沿うように前記金属系摺動材料を一体化させることによって、作業時に軸方向への金属系摺動材料の抜け止め防止が図られる請求項22に記載の作業機連結装置。
【請求項24】 前記金属系摺動材料が裏金内径部に圧入または嵌合された作業機ブッシュには、その両端部近傍内径面に封止装置が取り付けられる請求項1〜23のいずれかに記載の作業機連結装置。

【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図10】
image rotate


【図12】
image rotate


【図9】
image rotate


【図11】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【図19】
image rotate


【公開番号】特開2003−221838(P2003−221838A)
【公開日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−275744(P2002−275744)
【出願日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】