作業車両及び作業車両の制御方法
【課題】操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供する。
【解決手段】作業車両は、制御部10を備える。制御部10は、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する。制御部10は、低負荷条件が満たされているときには、エンジン21の出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、エンジン21を制御する。また、制御部10は、検出された車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジン21の出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【解決手段】作業車両は、制御部10を備える。制御部10は、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する。制御部10は、低負荷条件が満たされているときには、エンジン21の出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、エンジン21を制御する。また、制御部10は、検出された車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジン21の出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダなどの作業車両において、エンジンの出力を制御するための制御モードを、作業の負荷に応じて低出力モードと高出力モードとのいずれかに切り換える技術が知られている(特許文献1参照)。各制御モードでは、予め設定されたエンジントルクカーブに従ってエンジンの出力が制御される。エンジントルクカーブは、エンジンの出力トルクの上限値とエンジン回転数との関係を示す。そして、エンジンの出力トルクの上限値に関して、低出力モードでのエンジントルクカーブは、高出力モードでのエンジントルクカーブのα倍(α<1)に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2005/024208号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術では、作業の負荷が低下すると、高出力モードのエンジントルクカーブから、低出力モードのエンジントルクカーブへと切り換えられる。しかし、低出力モードのエンジントルクカーブは、高出力モードのエンジントルクカーブに対して、エンジンの出力トルクの上限値がα倍になっている全く別のエンジントルクカーブである。このため、作業の途中で、エンジンの出力性能が急激に変化する恐れがある。この場合、作業車両の操作性が低下してしまう。
【0005】
また、上記のような操作性の低下を防ぐためには、低出力モードでのエンジントルクカーブと、高出力モードでのエンジントルクカーブとの間のトルク差を小さくすることが考えられる。これにより、エンジントルクの急激な変化が抑えられるからである。しかし、この場合、低出力モードでのエンジンの出力トルクの低減量が小さくなる。このため、燃費低減の効果が小さい。
【0006】
本発明の課題は、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様にかかる作業車両は、エンジンと、走行装置と、作業機と、第1検出部と、第2検出部と、制御部と、を備える。走行装置は、エンジンからの駆動力により車両を走行させる。作業機は、エンジンからの駆動力により駆動される。第1検出部は、エンジン回転数を検出する。第2検出部は、車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つを検出する。制御部は、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する。制御部は、低負荷条件が満たされているときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、エンジンを制御する。また、制御部は、第2検出部によって検出された車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、第1検出部によって検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【0008】
この作業車両では、低負荷条件が満たされているときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量は、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度との少なくとも1つと、エンジン回転数との変化に応じて、変化する。従って、予め設定された量だけ一律にエンジンの出力トルクの上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数と車速等との状況の変化に応じて、低減量が変化する。このため、エンジンの出力トルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる作業車両は、第1の態様にかかる作業車両であって、低減量は、低負荷条件に応じて変化する。
【0010】
低負荷条件が異なれば車両にかかる負荷の大きさも異なる。このため、低負荷条件に応じて低減量を変化させることにより、負荷の大きさに適した低減量を決定することができる。例えば、低負荷条件が満たされていても、負荷の大きな低負荷条件では、負荷の小さな低負荷条件よりも低減量が小さくされるとよい。これにより、操作性の低下をさらに抑えることができる。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる作業車両は、第1又は第2の態様にかかる作業車両であって、制御部は、エンジン回転数が所定回転数より大きいときに、エンジンの出力トルクの上限値を低減させる。また、所定回転数は、低負荷条件に応じて変化する。
【0012】
この作業車両では、エンジン回転数が所定回転数より大きいときには、エンジンの出力トルクの上限値が低減される。すなわち、低負荷条件が満たされても、エンジン回転数が所定回転数より小さいときには、エンジンの出力トルクの上限値が低減されない。これにより、エンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。また、所定回転数は、低負荷条件に応じて変化する。最低限必要なエンジンの出力トルクは低負荷条件に応じて異なるので、低負荷条件に応じて所定回転数を変化させることにより、低負荷条件ごとに最低限必要なエンジンの出力トルクを確保することができる。これにより、操作性の低下を抑えながら、燃費を向上させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる作業車両であって、オペレータによって操作されるアクセル操作部材と、アクセル操作部材の操作量を検出する第3検出部と、をさらに備える。制御部は、第3検出部によって検出されたアクセル操作部材の操作量を考慮して低減量を決定する。
【0014】
この作業車両では、アクセル操作部材の操作量を考慮して、エンジンの出力トルクの上限値の低減量が決定される。このため、オペレータの意思を低減量に反映させることができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第4の態様のいずれかにかかる作業車両であって、第2検出部は、車速を検出する。車速が所定速度以上であるときには、制御部は車速が所定速度より小さいときよりも低減量を小さくする。
【0016】
この作業車両では、高速走行時にエンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。これにより、高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0017】
本発明の第6の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第4の態様のいずれかにかかる作業車両であって、第2検出部は、車速を検出する。車速が第1の所定速度より小さいとき、及び、車速が第1の所定速度より大きい第2の所定速度より大きいときには、制御部は、車速が第1の所定速度以上であり第2の所定速度以下であるときよりも、低減量を小さくする。
【0018】
この作業車両では、低速走行時および高速走行時にエンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。これにより、低速走行時および高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0019】
本発明の第7の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第6の態様のいずれかにかかる作業車両であって、制御部は、走行装置及び作業機の作動状態から車両の作業局面を判別し、低負荷条件が満たされているか否かを作業局面に基づいて判定する、
この作業車両では、作業局面に基づいて、エンジンの出力トルクの上限値の低減量が決定される。このため、車両の負荷状態により適した低減量に決定できる。これにより、さらに、燃費が低減するとともに操作性の低下が抑えられる。
【0020】
本発明の第8の態様にかかる作業車両は、第7の態様にかかる作業車両であって、低負荷条件は、作業局面が空荷状態であることを含む。空荷状態とは、作業機に荷物が積まれていない状態である。
【0021】
この作業車両では、作業機に荷物が積まれていないときに、エンジンの出力トルクの上限が低減される。作業機に荷物が積まれていないときには、作業機にかかる負荷が小さい。従って、エンジンの出力トルクの上限が低減されても、作業機の動作に与える影響が小さい。このため、操作性の低下を抑えると共に、燃費を低減させることができる。
【0022】
本発明の第9の態様にかかる作業車両は、第7の態様または第8の態様にかかる作業車両であって、車両の前進と後進との切換を操作するための前後進切換操作部材をさらに備える。低負荷条件は、作業局面がシャトル状態であることを含む。シャトル状態とは、前後進切換操作部材によって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なっている状態である。
【0023】
この作業車両では、車両がシャトル状態であるときに、エンジンの出力トルクの上限が低減される。シャトル状態は、オペレータが車両の前進と後進との切換を操作したときから、車両の動作が実際に切り換わるまでの間の状態である。このため、車両がシャトル状態であるときには、車両を高速で走行させたり、作業機を迅速に駆動させたりする状況ではない。このため、操作性の低下を抑えると共に、燃費を低減させることができる。
【0024】
本発明の第10の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第9の態様のいずれかにかかる作業車両であって、制御部は、車両が登坂走行を行っているか否かを判定する。制御部は、車両が登坂走行を行っている場合には、制御部は低減量を小さくする。
【0025】
この作業車両では、車両が登坂走行を行っていると判定された場合には、低減量が小さくされる。このため、登坂走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0026】
本発明の第11の態様にかかる作業車両の制御方法は、エンジンと走行装置と作業機とを備える作業車両の制御方法である。走行装置は、エンジンからの駆動力により車両を走行させる。作業機は、エンジンからの駆動力により駆動される。この作業車両の制御方法は、次のステップを備える。エンジン回転数が検出される。車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つが検出される。車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かが判定される。低負荷条件が満たされるときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされないときよりも低減するように、エンジンが制御される。検出された車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【0027】
この作業車両の制御方法では、低負荷条件が満たされるときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、低負荷条件が満たされるときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量は、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度との少なくとも1つと、エンジン回転数との変化に応じて、変化する。従って、予め設定された量だけ一律にエンジンの出力トルクの上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数と車速等との状況の変化に応じて、低減量が変化する。このため、エンジンの出力トルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る作業車両の側面図。
【図2】作業車両の構成を示す模式図。
【図3】エンジントルクカーブの一例を示す図。
【図4】エンジントルク低減制御での処理を示すフローチャート。
【図5】補正エンジン回転数を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図6】低負荷条件とトルク低減量テーブルとを示す図。
【図7】エンジントルク低減制御でのトルク低減量の算出処理を示すフローチャート。
【図8】トルク低減量テーブルの例を示す図。
【図9】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図10】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図11】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図12】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図13】補正エンジン回転数及びトルク低減補正値によるトルク低減量への影響を示す図。
【図14】トルク低減補正値を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図15】低アクセル低速時低減比率を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図16】Vシェープ作業時の車両の動作を示す模式図。
【図17】他の実施形態に係るトルク低減量テーブルの例を示す図。
【図18】他の実施形態に係るトルク低減量テーブルの例を示す図。
【図19】本発明の他の実施形態に係るHST型作業車両の構成の概略を示すブロック図。
【図20】HST型作業車両でのポンプ容量−走行回路油圧特性の例を示す図。
【図21】HST型作業車両でのモータ容量−走行回路油圧特性の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係る作業車両1を図1および図2に示す。図1は、作業車両1の外観図であり、図2は、作業車両1の構成を示す模式図である。この作業車両1は、ホイールローダであり、作業車両1は、前輪4a、後輪4bが回転駆動されることにより自走可能であると共に作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
【0031】
図1に示すように、この作業車両1は、車体フレーム2、作業機3、前輪4a、後輪4b、運転室5を備えている。
【0032】
車体フレーム2は、前車体部2aと後車体部2bとを有している。前車体部2aと後車体部2bとは互いに左右方向に揺動可能に連結されている。前車体部2aと後車体部2bとに渡って一対のステアリングシリンダ11a,11bが設けられている。ステアリングシリンダ11a,11bは、ステアリングポンプ12(図2参照)からの作動油によって駆動される油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11a,11bが伸縮することによって、前車体部2aが後車体部2bに対して揺動する。これにより、車両の進行方向が変更される。なお、図1及び図2では、ステアリングシリンダ11a,11bの一方のみを図示しており他方を省略している。
【0033】
前車体部2aには、作業機3および一対の前輪4aが取り付けられている。作業機3は、作業機ポンプ13(図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム6と、一対のリフトシリンダ14a,14bと、バケット7と、バケットシリンダ15と、ベルクランク9とを有する。ブーム6は、前車体部2aに装着されている。リフトシリンダ14a,14bの一端は前車体部2aに取り付けられている。リフトシリンダ14a,14bの他端はブーム6に取り付けられている。リフトシリンダ14a,14bが作業機ポンプ13からの作動油によって伸縮することによって、ブーム6が上下に揺動する。なお、図1及び図2では、リフトシリンダ14a,14bのうちの一方のみを図示しており、他方は省略している。バケット7は、ブーム6の先端に取り付けられている。バケットシリンダ15の一端は前車体部2aに取り付けられている。バケットシリンダ15の他端はベルクランク9を介してバケット7に取り付けられている。バケットシリンダ15が、作業機ポンプ13からの作動油によって伸縮することによって、バケット7が上下に揺動する。
【0034】
後車体部2bには、運転室5及び一対の後輪4bが取り付けられている。運転室5は、車体フレーム2の上部に載置されており、オペレータが着座するシートや、後述する操作部8などが内装されている。
【0035】
また、図2に示すように、作業車両1は、エンジン21、走行装置22、作業機ポンプ13、ステアリングポンプ12、操作部8、制御部10などを備えている。
【0036】
エンジン21は、ディーゼルエンジンであり、シリンダ内に噴射する燃料量を調整することによりエンジン21の出力が制御される。この調整は、エンジン21の燃料噴射ポンプ24に付設された電子ガバナ25が後述する第1制御部10aによって制御されることで行われる。ガバナ25としては、一般的にオールスピード制御方式のガバナが用いられ、エンジン回転数が、後述するアクセル操作量に応じた目標回転数となるように、負荷に応じてエンジン回転数と燃料噴射量とを調整する。すなわち、ガバナ25は目標回転数と実際のエンジン回転数との偏差がなくなるように燃料噴射量を増減する。エンジン回転数は、エンジン回転数センサ91(第1検出部)によって検出される。エンジン回転数センサ91の検出信号は、第1制御部10aに入力される。
【0037】
走行装置22は、エンジン21からの駆動力により車両を走行させる装置である。走行装置22は、トルクコンバータ装置23、トランスミッション26、及び上述した前輪4a及び後輪4bなどを有する。
【0038】
トルクコンバータ装置23は、ロックアップクラッチ27とトルクコンバータ28を有している。ロックアップクラッチ27は、連結状態と非連結状態とに切換可能である。ロックアップクラッチ27が非連結状態である場合には、トルクコンバータ28が、オイルを媒体としてエンジン21からの駆動力を伝達する。ロックアップクラッチ27が連結状態である場合には、トルクコンバータ28の入力側と出力側とが直結される。ロックアップクラッチ27は、油圧作動式のクラッチであり、ロックアップクラッチ27への作動油の供給がクラッチ制御弁31を介して後述する第2制御部10bによって制御されることにより、連結状態と非連結状態とが切り換えられる。
【0039】
トランスミッション26は、前進走行段に対応する前進クラッチCFと、後進走行段に対応する後進クラッチCRとを有している。各クラッチCF,CRの連結状態・非連結状態が切り換えられることによって、車両の前進と後進とが切り換えられる。クラッチCF,CRが共に非連結状態のときは、車両は中立状態となる。また、トランスミッション26は、複数の速度段に対応した複数の速度段クラッチC1−C4を有しており、減速比を複数段階に切り換えることができる。例えば、このトランスミッション26では、4つの速度段クラッチC1−C4が設けられており、速度段を第1速から第4速までの4段階に切り換えることができる。各速度段クラッチC1−C4は、油圧作動式の油圧クラッチである。図示しない油圧ポンプからクラッチ制御弁31を介してクラッチC1−C4へ作動油が供給される。クラッチ制御弁31が第2制御部10bによって制御されて、クラッチC1−C4への作動油の供給が制御されることにより、各クラッチC1−C4の連結状態及び非連結状態が切り換えられる。
【0040】
トランスミッション26の出力軸には、トランスミッション26の出力軸の回転数を検出するT/M出力回転数センサ92が設けられている。T/M出力回転数センサ92(第2検出部)からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。第2制御部10bは、T/M出力回転数センサ92の検出信号に基づいて車速を算出する。従って、T/M出力回転数センサ92は車速を検出する車速センサとして機能する。なお、トランスミッション26の出力軸ではなく他の部分の回転速度を検出するセンサが車速センサとして用いられてもよい。トランスミッション26から出力された駆動力は、シャフト32などを介して前輪4a及び後輪4bに伝達される。これにより、車両が走行する。トランスミッション26の入力軸の回転数は、T/M入力回転数センサ93によって検出される。T/M入力回転数センサ93からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。
【0041】
エンジン21の駆動力の一部は、PTO軸33を介して作業機ポンプ13及びステアリングポンプ12に伝達される。作業機ポンプ13及びステアリングポンプ12は、エンジン21からの駆動力によって駆動される油圧ポンプである。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、作業機制御弁34を介してリフトシリンダ14a,14b及びバケットシリンダ15に供給される。また、ステアリングポンプ12から吐出された作動油は、ステアリング制御弁35を介してステアリングシリンダ11a,11bに供給される。このように、作業機3は、エンジン21からの駆動力の一部によって駆動される。
【0042】
作業機ポンプ13から吐出された作動油の圧力(以下、「作業機ポンプ油圧」と呼ぶ)は、第1油圧センサ94によって検出される。リフトシリンダ14a,14bに供給される作動油の圧力(以下「リフトシリンダ油圧」と呼ぶ)は、第2油圧センサ95によって検出される。具体的には、第2油圧センサ95は、リフトシリンダ14a,14bを伸長させるときに作動油が供給されるシリンダヘッド室の油圧を検出する。バケットシリンダ15に供給される作動油の圧力(以下「バケットシリンダ油圧」と呼ぶ)は、第3油圧センサ96によって検出される。具体的には、第3油圧センサ96は、バケットシリンダ15を伸長させるときに作動油が供給されるシリンダヘッド室の油圧を検出する。ステアリングポンプ12から吐出された作動油の圧力(以下、「ステアリングポンプ油圧」と呼ぶ)は、第4油圧センサ97によって検出される。第1〜第4油圧センサ94−97からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。
【0043】
操作部8は、オペレータによって操作される。操作部8は、アクセル操作部材81a、アクセル操作検出装置81b、ステアリング操作部材82a、ステアリング操作検出装置82b、ブーム操作部材83a、ブーム操作検出装置83b、バケット操作部材84a、バケット操作検出装置84b、変速操作部材85a、変速操作検出装置85b、FR操作部材86a、FR操作検出装置86b、シフトダウン操作部材89a、及び、シフトダウン操作検出装置89bなどを有する。
【0044】
アクセル操作部材81aは、例えばアクセルペダルであり、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。アクセル操作検出装置81b(第3検出部)は、アクセル操作部材81aの操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を検出する。アクセル操作検出装置81bは、検出信号を第1制御部10aへ出力する。
【0045】
ステアリング操作部材82aは、例えばステアリングハンドルであり、車両の進行方向を操作するために操作される。ステアリング操作検出装置82bは、ステアリング操作部材82aの位置を検出し、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、ステアリング操作検出装置82bからの検出信号に基づいてステアリング制御弁35を制御する。これにより、ステアリングシリンダ11a,11bが伸縮して、車両の進行方向が変更される。
【0046】
ブーム操作部材83a及びバケット操作部材84aは、例えば操作レバーであり、作業機3を動作させるために操作される。具体的には、ブーム操作部材83aは、ブーム6を動作させるために操作される。バケット操作部材84aは、バケット7を動作させるために操作される。ブーム操作検出装置83bは、ブーム操作部材83aの位置を検出する。バケット操作検出装置84bは、バケット操作部材84aの位置を検出する。ブーム操作検出装置83b及びバケット操作検出装置84bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、ブーム操作検出装置83b及びバケット操作検出装置84bからの検出信号に基づいて作業機制御弁34を制御する。これにより、リフトシリンダ14a,14b及びバケットシリンダ15が伸縮して、ブーム6及びバケット7が動作する。また、作業機3にはブーム角を検出するブーム角検出装置98が設けられている。ブーム角は、前後の車輪4a,4bの回転軸の中心を結んだ線と、ブーム6の前車体フレーム2aに対する回転中心と、バケット7のブーム6に対する回転中心とを結ぶ線とに挟まれた角度を言う。ブーム角は、地面からのバケット7の高さに相当する。ブーム角検出装置98は、検出信号を第2制御部10bに出力する。
【0047】
変速操作部材85aは、例えばシフトレバーである。変速操作部材85aは、自動変速モードが選択されているときには、速度段の上限を設定するために操作される。例えば、変速操作部材85aが第3速に設定されている場合には、トランスミッション26は、第2速から第3速までの間で切り換えられ、第4速には切り換えられない。また、手動変速モードが選択されているときには、トランスミッション26は変速操作部材85aによって設定された速度段に切り換えられる。変速操作検出装置85bは、変速操作部材85aの位置を検出する。変速操作検出装置85bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて、トランスミッション26の変速を制御する。なお、自動変速モードと手動変速モードとは図示しない変速モード切換部材によってオペレータによって切り換えられる。
【0048】
FR操作部材86a(前後進切換操作部材)は、車両の前進と後進とを切り換えるために操作される。FR操作部材86aは、前進、中立、及び後進の各位置に切り換えられることができる。FR操作検出装置86bは、FR操作部材86aの位置を検出する。FR操作検出装置86bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、FR操作検出装置86bからの検出信号に基づいてクラッチ制御弁31を制御する。これにより、前進クラッチCF及び後進クラッチCRが制御され、車両の前進と後進と中立状態とが切り換えられる。
【0049】
シフトダウン操作部材89aは、自動変速モードが選択されているときに、トランスミッション26の速度段を、現在の速度段から1つ下の速度段に切り換えるために操作される。シフトダウン操作部材89aは、例えば、変速操作部材85aに設けられたスイッチである。シフトダウン操作検出装置89bは、シフトダウン操作部材89aが操作されたか否かを検出して、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて、トランスミッション26の変速を制御する。つまり、シフトダウン操作部材89aが操作されたことが検出されると、第2制御部10bは、トランスミッション26の速度段を1つ下の速度段に切り換える。
【0050】
制御部10は、第1制御部10a及び第2制御部10bを有する。第1制御部10a及び第2制御部10bは、例えばプログラムメモリやワークメモリとして使用される記憶装置と、プログラムを実行するCPUと、を有するコンピュータにより、それぞれ実現されることができる。
【0051】
第1制御部10aは、アクセル操作量に応じた目標回転数が得られるように、エンジン指令信号をガバナ25に送る。図3に、エンジン21が回転数に応じて出力できるトルク上限値(以下、「トルク上限値」と呼ぶ)を表すエンジントルクカーブを示す。図3において、実線L100は、後述するエンジントルク低減制御が行われていない高負荷作業局面においてアクセル操作量が100%であるときのエンジントルクカーブを示している。このエンジントルクカーブは、例えばエンジン21の定格又は最大のパワー出力に相当する。なお、アクセル操作量が100%とは、アクセル操作部材81aが最大に操作されている状態を意味する。また、破線L75は、高負荷作業局面においてアクセル操作量が75%であるときのエンジントルクカーブを示している。ガバナ25は、エンジン21の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)がエンジントルクカーブ以下となるようにエンジン21の出力を制御する。このエンジン21の出力の制御は、例えば、エンジン21への燃料噴射量の上限値を制御することにより行われる。また、エンジントルク低減制御が行われているときには、第1制御部10aは、第2制御部10bから修正指令信号を受信する。第1制御部10aは、修正指令信号によりエンジン指令信号の指令値を修正してガバナ25に送る。修正指令信号については、後に詳細に説明する。
【0052】
第2制御部10bは、車両の走行状態に応じて、トランスミッション26やトルクコンバータ装置23を制御する。例えば、自動変速モードが選択されているときには、第2制御部10bは、車速に応じて、トランスミッション26の速度段の切換およびロックアップクラッチ27の切換を自動的に行う。なお、手動変速モードが選択されているときには、第2制御部10bは、変速操作部材85aによって選択された速度段にトランスミッション26を切り換える。
【0053】
第2制御部10bには、上述した検出信号に加えて、トルクコンバータ装置23の入口圧及び出口圧などの検出信号も入力される。また、第1制御部10aと第2制御部10bとは有線又は無線によって互いに通信することができる。エンジン回転数、燃料噴射量、アクセル操作量などの検出信号が第1制御部10aから第2制御部10bに入力される。第2制御部10bは、後述するエンジントルク低減制御において、これらの信号に基づいて、エンジン指令信号の指令値を修正するための修正値を算出する。第2制御部10bは、修正値に対応する修正指令信号を第1制御部10aへ送信する。この修正値は、トルク上限値の所望の低減量を得るために必要な値である。これにより、第1制御部10aと第2制御部10bとは、トルク上限値を所望の値に制御することができる。
【0054】
以下、エンジントルク低減制御について説明する。まず、エンジン回転数、車速及び操作部8の操作状態を含む各種の情報が検出されて、第2制御部10bに検出信号が送られる。次に、第2制御部10bにおいて、車両の作業局面が、走行装置22及び作業機3の作動状態から判別される。そして、作業局面と操作部8の操作状態とに基づいて、所定の低負荷条件が満たされているか否かが判定される。低負荷条件は、車両が低負荷状態であることを示す条件であり、複数の低負荷条件が用意されている。そして、複数の低負荷条件のうちのある条件が満たされているときには、当該条件に対応するトルク低減量テーブルが選択される。トルク低減量テーブルは、トルク上限値の低減量(以下、「トルク低減量」と呼ぶ)を算出するためのテーブルであり、エンジン回転数と車速とトルク低減量との関係が設定されている。第2制御部10bは、選択したトルク低減量テーブルを用いて、エンジン回転数と車速とに対応するトルク低減量を算出する。そして、第2制御部10bは、算出したトルク低減量に対応する修正値を算出し、これを修正指令信号として第1制御部10aへ送る。第1制御部10aは、修正指令信号により修正されたエンジン指令信号をガバナ25に送る。これにより、低負荷条件が満たされているときには、トルク上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するようにエンジン21が制御される。また、このときのトルク低減量の算出は、エンジン回転数と車速とに基づいて行われ、エンジン21が駆動されている間は繰り返し行われる。このため、トルク低減量は、エンジン回転数と車速との変化に応じて連続的に変化する。従って、トルク上限値は、エンジン回転数と車速との変化に応じて連続的に変化する。以下、エンジントルク低減制御での処理について、図4に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0055】
まず、第1ステップS1で、各種情報が検出される。ここでは、操作部8及び各種のセンサからの検出信号により、エンジン回転数及び車速を含む各種情報が検出される。
【0056】
次に、第2ステップS2で、補正エンジン回転数が算出される。補正エンジン回転数は、後述するトルク低減量テーブルによるトルク低減量の算出に用いられる。補正エンジン回転数は、以下の式(1)から算出される。
【0057】
Nt=Ne+a−Nbp ・・・(1)
Ntは、補正エンジン回転数である。Neは、エンジン回転数センサ91によって検知された現在のエンジン回転数である。Nbpは、アクセル操作量に応じた目標エンジン回転数であり、現在のアクセル操作量から算出される。具体的には、Nbpは、図5に示すテーブルと現在のアクセル操作量とから算出される。図5において、n0〜n10は所定の数値であり、n0からn10の順に大きくなる。すなわち、アクセル操作量が大きいほどNbpは大きい。なお、図5のテーブルに示されていない値は、テーブルに示されている値の補間により求められる。後述する他のテーブルについても同様である。aは所定の定数であり、アクセル操作量が所定量であるときの目標エンジン回転数である。例えば、定数aはアクセル操作量が100%であるときの目標エンジン回転数n10に設定される。補正エンジン回転数は、アクセル操作量が所定量であるときのトルク低減量テーブルを利用して、現在のアクセル操作量に応じたトルク低減量を求めるために用いられる。すなわち、定数aがn10である場合は、アクセル操作量が100%であるときのトルク低減量テーブルを利用して、アクセル操作量が100%未満であるときのトルク低減量を求めることができる。(Nbpとaは、図13参照)
図4のフローチャートに戻り、第3ステップS3では、エンジン低回転域フラグがONであるか否かが判定される。エンジン低回転域フラグは、エンジン回転数センサ91によって検出されたエンジン回転数が所定の低回転数Nlow以下である場合にONに設定され、エンジン回転数が所定の低回転数Nlowより大きい場合にOFFに設定される。第3ステップS3において、エンジン低回転域フラグがONである場合には、第10ステップS10に進む。第10ステップS10では、トルク低減量がゼロに設定される。すなわち、エンジントルク低減制御は行われない。
【0058】
第4ステップS4では、変速操作部材85aが第1速位置に位置しているか否かが判定される。ここでは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて判定が行われる。変速操作部材85aが第1速位置に位置している場合には第10ステップS10に進み、トルク低減量がゼロに設定される。変速操作部材85aが第1速位置に位置していない場合には、第5ステップS5に進む。すなわち、変速操作部材85aが第2速以上の速度段位置に位置している場合には、第5ステップS5に進む。
【0059】
第5ステップS5では、作業局面の判別が行われる。具体的には、第2制御部10bは、以下のようにして作業局面を判別する。
【0060】
まず、第2制御部10bは、上述した検出信号に基づいて、車両の走行ステータスと作業ステータスとを判別する。走行ステータスには、「停止」、「前進」、「後進」、及び「シャトル」がある。車速が所定の停止閾値以下である場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「停止」と判定する。所定の停止閾値は、車両が停止していると見なすことができる程度に低い値である。FR操作部材86aが前進位置に設定されており、且つ、車両が前進している場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「前進」と判定する。FR操作部材86aが後進位置に設定されており、且つ、車両が後進している場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「後進」と判定する。また、FR操作部材86aによって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なる場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「シャトル」と判定する。すなわち、シャトルとは、オペレータがFR操作部材86aを前進から後進に、又は、後進から前進に切り換えたが、車両の進行方向が切り換わる前の状態である。
【0061】
作業ステータスには、「積荷」、「空荷」、及び、「掘削」がある。第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧が所定の積荷閾値以上である場合には、作業ステータスを「積荷」と判定する。第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧がこの積荷閾値より小さい場合には、作業ステータスを「空荷」と判定する。すなわち、「空荷」とは、バケット7に荷物が積まれていない状態を意味し、「積荷」とは、バケット7に荷物が積まれている状態を意味する。従って、所定の積荷閾値は、バケット7に荷物が積まれていない状態でのリフトシリンダ油圧の値よりも大きな値であり、バケット7に荷物が積まれていると見なすことができるリフトシリンダ油圧の値である。また、第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧が所定の掘削油圧閾値以上であり、且つ、走行ステータスが「前進」であり、且つ、ブーム角が所定の掘削角度閾値以下である場合に、「掘削」と判定する。「掘削」は、車両が前進しながらバケット7を土砂に突っ込んで持ち上げる作業を意味する。従って、掘削油圧閾値は、掘削作業中のリフトシリンダ油圧の値に相当する。また、掘削角度閾値は、掘削作業中のブーム角の値に相当する。第2制御部10bは、上記の走行ステータスと作業ステータスとの組み合わせにより、作業局面を判別する。具体的には、「空荷停止」、「積荷停止」「空荷前進」、「積荷前進」、「空荷後進」、「積荷後進」、「掘削」の7つの局面に判別される。
【0062】
第6ステップS6で、低負荷条件が満たされるか否かが判定される。低負荷条件は、車両が低負荷状態であることを示す条件である。ここでは、上述した作業局面および操作部材の操作状態によって、低負荷条件が満たされるか否かが判定される。例えば、低負荷条件としては、図6に示すように複数の低負荷条件がある。低負荷条件については後にトルク低減量テーブルと共に説明する。また、これらの低負荷条件のいずれも満たされない場合には、車両が高負荷状態にあると判定される。例えば作業局面が「掘削」の場合は、高負荷状態と判定される。また、車両が登坂走行を行っている場合にも、高負荷状態と判定される。例えば車両の傾斜角が検出され、車両の傾斜角が所定角度以上であり且つ車両が走行しているときに車両が登坂走行を行っていると判定される。或いは、車両の加速度が検出され、アクセル操作部材81aの操作量が所定の操作閾値以上であるのに加速度が所定の加速度閾値より小さいときに、車両が登坂走行を行っていると判定される。車両が高負荷状態であると判定された場合には、第10ステップS10においてトルク低減量がゼロに設定される。すなわち、トルク上限値の低減は行われない。低負荷条件のいずれかが満たされている場合は、ステップS7に進む。
【0063】
第7ステップS7で、トルク低減量の算出が行われる。トルク低減量の算出方法については後述する。
【0064】
第8ステップS8で、修正指令信号が出力される。ここでは、第2制御部10bが、第7ステップS7で算出されたトルク低減量に相当する修正指令信号を第1制御部10aに送る。
【0065】
そして、第9ステップS9で、エンジン指令信号が修正される。ここでは、上述したように、第1制御部10aが修正指令信号によりエンジン指令信号を修正してエンジン21を制御する。
【0066】
次に、第7ステップS7で算出されるトルク低減量の算出方法について、図7に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0067】
まず、第11ステップS11において、トルク低減量テーブルが選択される。ここでは、作業局面と操作部材の操作状態とに基づいて、トルク低減量テーブルが選択される。具体的には、上述の第6ステップS6で判定された低負荷条件に対応するトルク低減量テーブルが選択される。トルク低減量テーブルには、例えば図6に示すように、「排土テーブル」、「シャトルテーブル」、「空荷前進テーブル」、「空荷後進テーブル」、「積荷前進テーブル」、「積荷後進テーブル」がある。「排土テーブル」は、作業局面が積荷前進であり且つバケット操作部材84aの操作方向がダンプ側であり且つ操作量が所定のバケット操作閾値(例えば50%)以上の場合に選択される。また、「排土テーブル」は、作業局面が積荷停止であり且つバケット操作部材84aの操作方向がダンプ側であり且つ操作量が所定のバケット操作閾値(例えば50%)以上である場合に選択される。なお、「ダンプ側」とは、排土作業を行う場合のようにバケット7の刃先を下降させるときの操作方向を意味する。また、バケット操作部材84aの操作量は、最大操作量に対する割合を%で示したものである。なお、中立状態では操作量は0%である。「シャトルテーブル」は、作業局面がシャトルである場合に選択される。「空荷前進テーブル」は、作業局面が空荷前進である場合に選択される。「空荷後進テーブル」は、作業局面が空荷後進である場合に選択される。「積荷前進テーブル」は、作業局面が積荷前進であり且つ変速操作部材85aの位置が第2速である場合に選択される。「積荷後進テーブル」は、作業局面が積荷後進である場合に選択される。これらの低負荷条件は、車両の状態が、上述した高負荷状態よりも負荷の低い低負荷状態であるときに満たされるものである。各テーブルは、各低負荷条件が満たされている状態の車両にとって適切なエンジン回転数、車速、トルク低減量の関係を定めている。これらのテーブルは、予め実験等によって求められ、第2制御部10bに記憶されている。
【0068】
トルク低減量テーブルの例を図8に示す。図8(a)−(c)において、V0〜Vmax、N11〜N16,N21、N31、a111〜a122、b111〜b152、c111〜c151は、数値を示している。V0〜Vmaxは車速であり、V0<V1<V2<V3<V4<Vmaxである。特にVmaxは、車両の最高速度である。また、N11〜N16,N21,N31はエンジン回転数であり、0<N11<N12<N13<N14<N15<N16、0<N21<N12、0<N31<N12である。a111〜a122,b111〜b152,c111〜c151はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。このように、各テーブルの車速、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及び車速が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0069】
例えば、図8(a)のテーブルでは、エンジン回転数がN11以下のときには、トルク低減量はゼロである。これに対して、図8(c)のテーブルでは、エンジン回転数がN31以下のときに、トルク低減値がゼロとなる。すなわち、図8(a)のテーブルでは、エンジン回転数がN11より大きいときに、トルク上限値が低減される。また、図8(c)のテーブルでは、エンジン回転数がN31より大きいときに、トルク上限値が低減される。このように、トルク上限値が低減されるエンジン回転数の下限値は、低負荷条件に応じて変化する。
【0070】
これらのエンジン回転数の下限値は、各低負荷条件において急激に大きな負荷が作用した場合でもエンジン回転数が大幅に低下し難い値に設定される。すなわち、トルク上限値が低減されるエンジン回転数の下限値は、各低負荷条件において最低限必要なエンジンの出力トルクを確保するために必要な値が実験等により予め求められて設定される。
【0071】
また、図8(a)のテーブルでは、車速がVmaxであるときはエンジン回転数に応じてトルク低減量がゼロからa122までの間で変化する。これに対して、図8(b)のテーブルでは、車速がVmaxであるときには、エンジン回転数によらずトルク低減量はゼロである。さらに、図8(c)のテーブルでは車速がV4以上であるときには、エンジン回転数によらずトルク低減量はゼロである。次に、図8(a)のテーブルでは、車速がV2より大きいときに、ゼロより大きいトルク低減量が設定される。これに対して、図8(b)及び図8(c)のテーブルでは、車速がV0より大きいときに、ゼロより大きいトルク低減量が設定される。このように、トルク上限値が低減される車速の下限値は、低負荷条件に応じて変化する。これらの車速の下限値は、各低負荷条件において、例えば落石時の脱出等の危険回避のために緊急操作が必要な場合において初期動作に支障が生じない値に設定される。すなわち、トルク上限値が低減される車速の下限値は、各低負荷条件において、最低限必要なエンジンの出力トルクを確保するために必要な値が実験等により予め求められて設定される。例えば、トルク上限値が低減される車速の下限値として、5km/h程度の車速が設定される。
【0072】
低負荷条件が異なれば、同じエンジン回転数や車速であっても、エンジントルクの低下によってオペレータが操作性の低下を感じる程度は異なる。このため、上記のように低負荷条件に応じて異なるトルク低減量テーブルを用いることによって、操作性の低下をオペレータに感じさせずに、低負荷条件ごとにできるだけエンジントルクを低減させることができる。
【0073】
図7のフローチャートに戻り、第12ステップS12では、第1トルク低減値が算出される。ここでは、第11ステップS11において選択されたトルク低減量テーブルを参照して、現在のエンジン回転数と車速とに対応するトルク低減量が第1トルク低減値として算出される。
【0074】
トルク低減量テーブルによってトルク上限値が低減されたエンジントルクカーブの例を図9に示す。図9(a)−(d)は、エンジン回転数と、車速と、エンジントルク(上限値)との関係を示す3次元マップである。図9(a)−(d)からわかるように、トルク低減量は、同じエンジン回転数及び車速であっても、低負荷条件に応じて異なる。図9(a)は、図8(a)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(a)に示すテーブルは、上述した排土テーブル及びシャトルテーブルとして用いられる。図9(b)は、図8(b)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(b)に示すテーブルは、上述した空荷後進テーブル及び積荷後進テーブルとして用いられる。図9(c)は、図8(c)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(c)に示すテーブルは、上述した空荷前進テーブルとして用いられる。なお、図9(d)は、トルク低減が行われない場合のエンジントルクカーブの例であり、例えば、2速より高い速度段を選択した場合の上述した積荷前進テーブルに対応している。トルク低減量テーブルは、車両の特性や使われ方を考慮した様々な低負荷条件に応じて設定される。
【0075】
例えば、図9(a)のマップにおいて、異なる車速でのエンジン回転数−エンジントルクカーブを図10(a)に示す。図10(a)において、実線Lv2は車速がV2のときのエンジントルクカーブである。破線Lv3は車速がV3のときのエンジントルクカーブである。二点鎖線Lv4は車速がV4のときのトルクカーブである。なお、上述したようにV2<V3<V4である。このように、車速の変化に応じてトルク低減量が変化している。具体的には、車速が大きいほど、トルク低減量が増大している。
【0076】
また、図9(a)のマップにおいて、異なるエンジン回転数での車速−エンジントルクカーブを図10(b)に示す。図10(b)において、実線Ln1はエンジン回転数がN11のときのエンジントルクカーブである。破線Ln2はエンジン回転数がN12のときのエンジントルクカーブである。破線Ln3はエンジン回転数がN13のときのエンジントルクカーブである。このように、エンジン回転数の変化に応じてトルク低減量が変化している。エンジン回転数がN11のとき、すなわちエンジン回転数が低いときには、トルク低減量はゼロで一定であり、車速の変化に関わらずトルク上限値はTaで一定である。また、エンジン回転数がN12のときには、車速がV2とV4との間で変化すると、トルク上限値も車速の変化に応じて変化する。ただし、車速がV2以下のときは、車速の変化に関わらずトルク上限値はTb1で一定である。また、車速がV4以上のときは、トルク上限値は、車速の変化に関わらずTb2で一定である。同様に、エンジン回転数がN13のときには、車速がV2とV4との間で変化すると、トルク上限値も車速の変化に応じて変化する。ただし、車速がV2以下のときは、車速の変化に関わらずトルク上限値はTc1(<Ta<Tb1)で一定である。また、車速がV4以上のときは、トルク上限値は、車速の変化に関わらずTc2(Ta<Tb2)で一定である。
【0077】
以上のように、同じ低負荷条件であっても、車速とエンジン回転数との変化に応じて、トルク低減量が変化する。
【0078】
また、図9(a)のマップと図9(b)のマップとにおける同じ車速でのエンジン回転数−エンジントルクカーブを図11(a)及び図11(b)にそれぞれ示す。図11(a)は、図9(a)のマップでのエンジン回転数−エンジントルクカーブである。また、図11(a)において、破線Lhaはトルク低減量がゼロであるときのエンジントルクカーブである。実線Llaはトルク低減テーブルによって低減されたエンジン回転数−エンジントルクカーブである。図11(b)は、図9(b)のマップでのエンジン回転数−エンジントルクカーブである。また、破線Lhbはトルク低減量がゼロであるときのエンジントルクカーブである。実線Llbはトルク低減テーブルによって低減されたエンジン回転数−エンジントルクカーブである。これらの図からわかるように、図9(b)のマップの方が図9(a)のマップよりもトルク低減量が小さい。このように、同じ車速であっても、低負荷条件によってトルク低減量が異なる。例えば、図11(a)の実線Llaで示すエンジントルクカーブは、後述するVシェープ作業等の短距離での作業において、特に、作業車両1への負荷が小さい作業局面に基づく低負荷条件において有効である。図11(b)の実線Llbで示すエンジントルクカーブは、作業車両1への負荷が大きい作業局面に基づく低負荷条件において有効である。また、作業車両1への負荷が更に増大した場合には、実線Llbで示すエンジントルクカーブを破線Lhbで示すエンジントルクカーブに近づけたエンジントルクカーブが用いられるとよい。また、この場合、負荷が増大するほど、さらに破線Lhbで示すエンジントルクカーブに近づけたエンジントルクカーブが用いられるとよい。
【0079】
図9(a)と図9(c)とにおける同じエンジン回転数での車速−エンジントルクカーブを図12に示す。実線Lvaは、図9(a)での車速−エンジントルクカーブである。破線Lvcは、図9(c)での車速−エンジントルクカーブである。二点鎖線Lv0はトルク低減量がゼロであるときの車速−エンジントルクカーブである。この図12からわかるように、図9(a)のマップの方が図9(c)のマップよりも車速の変化に対して緩やかにトルク低減量が変化している。このように、同じエンジン回転数であっても、低負荷条件によってトルク低減量の変化が異なる。また、破線Lvcは、車速がV0より大きくV4より小さい中間域であるときに、トルク上限値が低減されている。より詳細には、車速がV0より大きくV1より小さいときには、トルク低減量が車速の上昇に応じて増加している。車速がV1以上でV3以下のときには、トルク低減量は一定である。車速がV3より大きくV4より小さいときには、トルク低減量は、車速の上昇に応じて減少している。
【0080】
なお、第12ステップS12における、トルク低減量テーブルを用いた第1トルク低減値の算出の際には、T/M出力回転数センサ92が検知した車速が、現在の車速として用いられる。また、アクセル操作量が100%であるときにはエンジン回転数センサ91が検知したエンジン回転数が現在のエンジン回転数として用いられる。アクセル操作量が100%よりも小さい操作量の場合には、第2ステップS2で算出された補正エンジン回転数が現在のエンジン回転数として用いられる。
【0081】
図13は、補正エンジン回転数を用いた場合のエンジントルクカーブの補正過程を示している。二点鎖線L100は、アクセル操作量が100%のときのエンジントルクカーブであり、トルク低減量はゼロである。一点鎖線L100´は、アクセル操作量が100%であるとして設定されたトルク低減量テーブルに基づいて、エンジントルクカーブL100のトルクを低減したときのエンジントルクカーブである。破線Lcnは、補正エンジン回転数によりトルク低減量を算出したときのエンジントルクカーブであり、アクセル操作量が75%のときにトルクが低減されたエンジントルクカーブである。このように、補正エンジン回転数が用いられることにより、二点鎖線L100と一点鎖線L100´とのトルク差(トルク低減量)が、二点鎖線L100と破線Lcnとのトルク差(トルク低減量)に補正されている。即ち、補正エンジン回転数を用いて第1トルク低減値を算出することにより、アクセル操作量を考慮してトルク低減量を補正することができる。これにより、アクセル操作量ごとにトルク低減量テーブルを設定しなくてもよい。
【0082】
図7のフローチャートに戻り、第13ステップS13では、低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」であるか否かが判定される。低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」である場合には第16ステップS16に進む。すなわち、第11ステップS11において、積荷前進テーブル又は積荷後進テーブルが選択されている場合には第16ステップS16に進む。低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」ではない場合には第14ステップS14に進む。すなわち、第11ステップS11において、「排土テーブル」、「シャトルテーブル」、「空荷前進テーブル」、「空荷後進テーブル」のいずれかが選択されている場合には第14ステップS14に進む。
【0083】
第14ステップS14では、第2トルク低減値A2が算出される。第2トルク低減値A2は以下の式(2)により算出される。
A2=A1+B・・・(2)
A1は第12ステップS12で算出された第1トルク低減値である。Bはトルク低減補正値であり、アクセル操作量に応じて変化する値である。具体的には、トルク低減補正値は、図14に示すトルク低減補正値テーブルによって求められる。図14において、a1〜a7,b1〜b5は所定の数値である。0<a1<a2<a3<a4<a5<a6<a7であり、b1>b2>b3>b4>b5>0である。すなわち、アクセル操作量が大きいほど、トルク低減補正値は小さい。アクセル操作量が所定値a7(例えば85%)より大きいときには、トルク低減補正値はゼロである。
【0084】
トルク低減補正値を用いたときのエンジントルクカーブを図13において実線Lcaで示す。このエンジントルクカーブでは、補正エンジン回転数により第1トルク低減値を算出し、且つ、トルク低減補正値を用いて第2トルク低減値を算出したときのエンジントルクカーブである。上述した破線Lcnは、補正エンジン回転数により第1トルク低減値を算出し、且つ、トルク低減補正値を用いずに第2トルク低減値を算出したときのエンジントルクカーブである。いずれの場合もアクセル操作量は同じ(例えば75%)である。このように、トルク低減補正値を用いて第2トルク低減値を算出することにより、アクセル操作量を考慮してトルク低減量を補正することができる。
【0085】
第15ステップS15で、トルク低減量Dが算出される。トルク低減量Dは以下の式(3)により算出される。
D=A2×R1・・・(3)
A2は、第14ステップS14で算出された第2トルク低減値である。R1は、低アクセル低速時低減比率である。低アクセル低速時低減比率は、アクセル操作量による低減比率raと車速による低減比率rvとのうちの大きい方を選択することにより、算出される。アクセル操作量による低減比率raは、図15(a)に示す低減比率算出テーブルから算出される。図15(a)のテーブルでは、AC1,AC2は数値を示しており、0<AC1<AC2である。アクセル操作量が所定値AC1(例えば70%)以下であるときには低減比率raはゼロである。すなわち、アクセル操作量が低いときにはトルク低減量がゼロとなる。また、アクセル操作量が所定値AC2(例えば90%)以上であるときには低減比率raは1である。アクセル操作量が所定値AC1とAC2との間であるときは、低減比率raは比例計算により算出される。また、車速による低減比率rvは、図15(b)に示す低減比率算出テーブルから算出される。図15(b)のテーブルでは、VL1,VL2は数値を示しており、0<VL1<VL2である。車速が所定値VL1以下であるときには低減比率rvはゼロである。すなわち、車速が低いときにはトルク低減量がゼロとなる。また、車速が所定値VL2以上であるときには低減比率rvは1である。車速がVL1とVL2との間であるときは、低減比率rvは比例計算により算出される。このような低アクセル低速時低減比率が用いられることによって、低車速からの加速を向上させることができる。
【0086】
低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」である場合には、第16ステップS16から第18ステップS18において、上記とは異なる方法で第2トルク低減値が算出される。
【0087】
まず、第16ステップS16で、第1算出値C1が以下の式(4)により算出される
C1=(A1+B)×R2・・・(4)
第1トルク低減値A1、トルク低減補正値Bの算出方法は上述のとおりである。R2は、積荷時低減比率である。積荷時低減比率R2は、エンジントルク(トルク上限値)から後述する作業機ポンプ推定トルクを差し引いた値よりもトルク低減量を大きくしてもオペレータが違和感を感じない場合を想定して設定される。例えば、積荷時低減比率R2は、0より大きく1より小さい値であり、例えば「0.4」などの値が設定される。積荷時低減比率R2は、作業機ポンプ13の推定出力トルクに対応する低減比率マップから算出される。
【0088】
第17ステップS17で、第2算出値C2が以下の式(5)により算出される
C2=A1+B−T1+T2・・・(5)
第1トルク低減値A1、トルク低減補正値Bの算出方法は上述のとおりである。T1は、作業機ポンプ推定トルクである。作業機ポンプ推定トルクT1は、作業機ポンプ13を駆動するために必要なトルクである。作業機ポンプ推定トルクT1は、作業機ポンプ13の吐出容量と第1油圧センサ94によって検出された作業機ポンプ13の圧力の積に基づいて作業機ポンプ推定トルクT1として算出される。T2は、作業機ポンプ13の中立出力トルクである。すなわち、T2は、ブーム操作部材83a及びバケット操作部材84aが操作されていない中立状態での作業機ポンプ13を駆動するために必要なトルクである。なお、上記の式(5)では、作業機ポンプのトルクを考慮したが,ステアリングポンプ12やその他の油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプの駆動トルクも考慮して第2算出値C2が算出されてもよい。
【0089】
第18ステップS18で、第1算出値C1と第2算出値C2とのうち大きい方が第2トルク低減値A2として選択される。そして、第15ステップS15で上述した式(3)によりトルク低減値Dが算出される。
【0090】
以上の図4に示す第1ステップS1から第9ステップS9の処理、及び、図7に示す第11ステップS11から第18ステップS18の処理は、エンジン21が駆動されている間、繰り返し行われる。
【0091】
本実施形態に係る作業車両では、低負荷条件が満たされているときには、トルク上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、エンジン回転数と車速との変化に応じてトルク低減量が変化する。従って、予め設定された量だけ一律にトルク上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数及び車速等の変化に応じて、低減量が連続的に変化する。このため、エンジントルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。また、各低負荷条件に対応したトルク低減量テーブルが用意されているので、トルク低減量は低負荷条件に応じて変化する。従って、車両の低負荷条件に応じた適切なトルク低減量を設定することができる。これにより、各低負荷条件において、オペレータに操作性の低下を感じさせない範囲で、できるだけエンジントルクを低減させることができる。
【0092】
例えば、作業車両1がいわゆるVシェープ作業を行っているときのエンジントルク低減制御について説明する。Vシェープ作業とは、図16に示すように、作業車両1が、土砂などの荷物100を作業機3によって持ち上げ、ダンプトラックなどの積み込み位置200に積み込む作業である。Vシェープ作業が行われるときは、比較的近距離での移動が繰り返されるので、変速操作部材85aは第2速位置に設定される。まず、作業車両1は、荷物100に向かって移動する。このとき作業局面は「空荷前進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「空荷前進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1が荷物100に突っ込んでバケット7に荷物100を積み込んで持ち上げる。このとき作業局面は「掘削」である。このため、エンジントルクは低減されない。次に、作業車両1は、バケット7に荷物100を載せた状態で後退する。このとき、作業局面は「積荷後進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第16ステップS16から第18ステップS18、及び第15ステップS15の処理により、「積荷後進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを後進位置から前進位置に切り換える。このとき、作業車両1の進行方向が後進から前進に切り換わるまでの間は、作業局面は「シャトル」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「シャトルテーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1がバケット7に荷物100を載せた状態で、積み込み位置200に向かって前進する。このとき、作業局面は、積荷前進である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第16ステップS16から第18ステップS18、及び第15ステップS15の処理により、「積荷前進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1が積み込み位置200の近くに位置している状態で、オペレータがバケット操作部材84aを操作して、バケット7上の荷物100を積み込み位置200に降ろす。このとき、「排土」の低負荷条件が満たされる。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「排土テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを前進位置から後進位置に切り換え、作業車両1は、後進して積み込み位置200から離れる。このとき、作業局面は「空荷後進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「空荷後進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを後進位置から前進位置に切り換える。このとき、作業車両1の進行方向が後進から前進に切り換わるまでの間は、作業局面は「シャトル」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「シャトルテーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。以上の動作が繰り返される。
【0093】
また、低負荷条件が満たされても、各テーブルにおいて、エンジン回転数が所定回転数以下であるときには、トルク低減量がゼロに設定されている。また、所定回転数は、トルク低減量テーブル毎にそれぞれ設定されているので、低負荷条件が変わると変化する。このため、オペレータに操作性の低下を感じさせない範囲で低負荷条件ごとにできるだけエンジントルクを低減させることができる。また、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件は、作業局面を含んでいる。このため、所定回転数は、低負荷条件に代えて、作業局面に応じて変化するようにしてもよい。
【0094】
トルク低減補正値は、アクセル操作量が大きいほど小さい。すなわち、アクセル操作量が小さいほど、トルク低減補正値は大きい。従って、オペレータがアクセルを大きく操作しているときには、トルク低減量は小さな値に設定される。オペレータがアクセルを大きく操作しているときは、オペレータが大きな出力を望んでいる状態であるので、トルク低減量が小さく設定されることにより、オペレータが操作性の低下を感じることを抑えることができる。また、オペレータがアクセルを小さく操作しているときには、トルク低減量は大きな値に設定される。オペレータがアクセルを小さく操作しているときは、オペレータが大きな出力を望んでいない状態であるので、トルク低減量が大きく設定されても、オペレータが操作性の低下を感じる恐れは少ない。このため、オペレータに操作性の低下を感じさせずに、燃費を向上させることができる。
【0095】
図8(b)及び図8(c)のトルク低減量テーブルに示されているように、速度がVmaxではトルク低減量はゼロである。このため、高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0097】
例えば、車速に代えて、車両の加速度に基づいてトルク低減量が算出されてもよい。すなわち、図17に示すように、トルク低減量テーブルは、エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量との関係を定めるものであってもよい。図17(a),(b),(c)に示すテーブルは、それぞれ異なる低負荷条件で用いられるトルク低減量テーブルである。図17(a),(b),(c)において、VA1〜VAmax、N21〜N26,a211〜a253、b211〜b255、c211〜c255は、数値を示している。VA1〜VAmaxは車両の加速度であり、0<VA1<VA2<VA3<VA4<VAmaxである。また、N21〜N26はエンジン回転数であり、0<N21<N22<N23<N24<N25<N26である。a211〜a253、b211〜b255、c211〜c255はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。このように、各テーブルのトルク低減量は、車両の加速度及びエンジン回転数の変化に応じて変化する。また、各テーブルの車両の加速度、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及び車両の加速度が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0098】
或いは、車速に代えて、エンジン回転数の加速度に基づいてトルク低減量が算出されてもよい。すなわち、図18に示すように、トルク低減量テーブルは、エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量との関係を定めるものであってもよい。図18(a),(b),(c)に示すテーブルは、それぞれ異なる低負荷条件で用いられるトルク低減量テーブルである。図18(a),(b),(c)において、EA1〜EAmax、N31〜N36,a311〜a353、b311〜b355、c311〜c355は、数値を示している。EA1〜EAmaxはエンジン回転数の加速度であり、0<EA1<EA2<EA3<EA4<EAmaxである。また、N31〜N36はエンジン回転数であり、0<N31<N32<N33<N34<N35<N36である。a311〜a353、b311〜b355、c311〜c355はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。例えば、エンジン回転数がN32であり、エンジン回転数の加速度がEA1であるときには、図18(a)のテーブルによれば、低減量はゼロにされる。また、エンジン回転数が同じN32であるが、エンジン回転数の加速度がEA1より大きいEA3であるときには、図18(a)のテーブルによれば、低減量はa311にされる。また、上記と同様にエンジン回転数がN32であり、エンジン回転数の加速度がEA1であっても、図18(b)のテーブルによれば、低減量はb311とされる。このように、各テーブルのトルク低減量は、エンジン回転数の加速度及びエンジン回転数の変化に応じて変化する。また、各テーブルのエンジン回転数の加速度、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及びエンジン回転数の加速度が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0099】
また、トルク低減量が車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうち、いずれに基づいて算出されるかは、低負荷条件ごとに異なってもよい。例えば、第1の低負荷条件では「エンジン回転数と車速とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられており、第2の低負荷条件では「エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられており、第3の低負荷条件では「エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられてもよい。
【0100】
また、1つの低負荷条件に、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とが異なっている複数のトルク低減量テーブルが設定されており、これらのトルク低減量テーブルから最も大きいトルク低減量が選択されてもよい。例えば、1つの低負荷条件に「エンジン回転数と車速とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルと「エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルと「エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルの3つのトルク低減量テーブルが設定されており、これらのトルク低減量テーブルから現在の車両の状態において最も大きいトルク低減量が選択されてもよい。
【0101】
なお、エンジン回転数の加速度とは、エンジン回転数の単位時間当たりの変化量を意味する。エンジン回転数の加速度は、加速度を検出するセンサにより検出されてもよい。或いは、エンジン回転数の加速度は、エンジン回転数センサ91が検出したエンジン回転数から制御部10が算出してもよい。また、トルク低減量はテーブルによらず計算式により算出されてもよい。また、図17(a)−(c)において(a)のN21〜N26、(b)のN21〜N26、(c)のN21〜N26は同じ符号としたが、同じ値でなくてもよい。図18(a)−(c)のN31〜N36も同様に同じ値でなくてもよい。
【0102】
上記の実施形態では、補正エンジン回転数が用いられることにより、アクセル操作量が100%のときのトルク低減量テーブルから、現在のアクセル操作量に対応するトルク低減量が求められている。これにより、アクセル操作量が100%のときのエンジントルクカーブから、アクセル操作量が100%未満のときに対応するトルク低減量を算出することができる。ただし、アクセル操作量に応じたトルク低減量を算出する方法は、上記のように補正エンジン回転数を用いたものに限られない。アクセル操作量ごとに複数のトルク低減量テーブルが制御部10に記憶され、これらのテーブルからトルク低減量が求められてもよい。
【0103】
上記の実施形態では、図4のフローチャートの第10ステップS10において、トルク低減量がゼロに設定されている。しかし、トルク低減量は必ずしもゼロでなくてもよい。
【0104】
低負荷条件は、上述したものと異なる低負荷条件の判定が行われてもよい。作業局面の判別も、上述したものと異なる作業局面の判別が行われてもよい。上述したトルク低減量テーブルとは異なるトルク低減量テーブルに基づいてトルク低減量が算出されてもよい。例えば、トランスミッション26の速度段が低負荷条件に含まれてもよい。そして、トルク低減量テーブルの車速Vmaxが各速度段に対応した最高車速に設定されてもよい。
【0105】
操作部材の形態は、上記で例示したものに限られない。例えば、レバーやペダルに限らず、スライド型或いはダイヤル型のスイッチなどの他の操作部材が用いられてもよい。
【0106】
上記の実施形態に係る作業車両1では、第1制御部10aと第2制御部10bとが別に設けられているが、一体に設けられてもよい。例えば、1つのコンピュータによって第1制御部10aと第2制御部10bとの機能が実現されてもよい。逆に、第1制御部10a又は第2制御部10bの機能が複数のコンピュータによって分担されてもよい。
【0107】
また、本発明が適用される作業車両は上記のものに限られない。ホイールローダ以外の作業車両にも本発明を適用することができる。また、本発明は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの機械式の無段変速装置(CVT:Continuously Variable Transmission)装置、あるいは、電気式無段変速装置を備える作業車両に適用されてもよい。例えば、図19に示すように、HSTを備える作業車両(以下、「HST型作業車両」と呼ぶ)では、エンジン21からの駆動力により走行用油圧ポンプ41を駆動し、走行用油圧ポンプ41から吐出された作動油が走行回路42を介して油圧モータ43に供給される。これにより油圧モータ43が駆動され、油圧モータ43の回転力により前輪4a及び後輪4bが駆動される。油圧モータ43に供給される作動油の圧力(「走行回路油圧」とよぶ)は、走行回路油圧センサ44によって検出される。また、第2制御部10bからの制御信号により走行用油圧ポンプ41の傾転角を調整するポンプ容量制御部45が備えられている。第2制御部10bは、ポンプ容量制御部45を制御することにより、走行用油圧ポンプ41の容量を電気的に制御することができる。また、第2制御部10bからの制御信号により油圧モータ43の傾転角を調整するモータ容量制御部46が備えられている。第2制御部10bは、モータ容量制御部46を制御することにより、油圧モータ43の容量を電気的に制御することができる。なお、図19では、図2と共通の構成には同じ符号が付されている。
【0108】
第2制御部10bは、エンジン回転数センサ91および走行回路油圧センサ44からの出力信号を処理して、ポンプ容量の指令信号をポンプ容量制御部45に出力する。ここでは、第2制御部10bは、第2制御部10bに記憶されているポンプ容量−走行回路油圧特性データを参照して、エンジン回転数の値と走行回路油圧の値とからポンプ容量を設定し、この設定したポンプ容量に対応するポンプ容量指令値をポンプ容量制御部45に出力する。図20に、ポンプ容量−走行回路油圧特性データの一例を示す。図中の実線L11および破線L12〜L15は、エンジン回転数に応じて変更されるポンプ容量−走行回路油圧特性を示すラインである。ポンプ容量制御部45は、入力されたポンプ容量指令値に基づいて走行用油圧ポンプ41の傾転角を変更する。これにより、ポンプ容量がエンジン回転数に対応したものに制御される。
【0109】
また、第2制御部10bは、エンジン回転数センサ91および走行回路油圧センサ44からの出力信号を処理して、モータ容量の指令信号をモータ容量制御部46に出力する。ここでは、第2制御部10bは、第2制御部10bに記憶されているモータ容量−走行回路油圧特性データを参照して、エンジン回転数の値と走行回路油圧の値とからモータ容量を設定し、この設定したモータ容量に対応する傾転角の変更指令をモータ容量制御部46に出力する。図21に、モータ容量−走行回路油圧特性データの一例を示す。図中の実線L21は、エンジン回転数がある値の状態における、走行回路油圧に対する傾転角を定めたラインである。走行回路油圧がある一定の値以下の場合までは傾転角は最小(Min)であり、その後、走行回路油圧の上昇に伴って傾転角も次第に大きくなり(実線の傾斜部分L22)、傾転角が最大(Max)となった後は、油圧が上昇しても傾転角は最大傾転角Maxを維持する。上記実線の傾斜部分L22は、エンジン回転数によって上下するように設定されている。すなわち、エンジン回転数が低ければ、走行回路油圧がより低い状態から傾転角が大きくなり、走行回路油圧がより低い状態で最大傾転角に達するように制御される(図21における下側の破線の傾斜部分L23参照)。反対にエンジン回転数が高ければ、走行回路油圧がより高くなるまで最小傾転角Minを維持し、走行回路油圧がより高い状態で最大傾転角Maxに達するように制御される(図21における上側の破線の傾斜部分L24参照)。
【0110】
また、このHST型作業車両は、上記の実施形態に係る作業車両1と同様の変速操作部材85aを備えている。第2制御部10bは、変速操作部材85aによって選択される各速度段に対応する最高車速を記憶している。第2制御部10bは、車速が、選択された速度段での最高車速を超えないように、モータ容量制御部46を制御する。これにより、上記の実施形態に係る作業車両と同様の変速制御が行われる。また、このHST型作業車両では、上記の実施形態に係る作業車両と同様のエンジン21の制御が第1制御部10aによって行われる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる効果を有する。このため、本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0112】
21 エンジン
22 走行装置
3 作業機
91 エンジン回転数センサ(第1検出部)
92 T/M出力回転数センサ(第2検出部)
10 制御部
81a アクセル操作部材
81b アクセル操作検出装置(第3検出部)
86a FR操作部材(前後進切換操作部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダなどの作業車両において、エンジンの出力を制御するための制御モードを、作業の負荷に応じて低出力モードと高出力モードとのいずれかに切り換える技術が知られている(特許文献1参照)。各制御モードでは、予め設定されたエンジントルクカーブに従ってエンジンの出力が制御される。エンジントルクカーブは、エンジンの出力トルクの上限値とエンジン回転数との関係を示す。そして、エンジンの出力トルクの上限値に関して、低出力モードでのエンジントルクカーブは、高出力モードでのエンジントルクカーブのα倍(α<1)に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2005/024208号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術では、作業の負荷が低下すると、高出力モードのエンジントルクカーブから、低出力モードのエンジントルクカーブへと切り換えられる。しかし、低出力モードのエンジントルクカーブは、高出力モードのエンジントルクカーブに対して、エンジンの出力トルクの上限値がα倍になっている全く別のエンジントルクカーブである。このため、作業の途中で、エンジンの出力性能が急激に変化する恐れがある。この場合、作業車両の操作性が低下してしまう。
【0005】
また、上記のような操作性の低下を防ぐためには、低出力モードでのエンジントルクカーブと、高出力モードでのエンジントルクカーブとの間のトルク差を小さくすることが考えられる。これにより、エンジントルクの急激な変化が抑えられるからである。しかし、この場合、低出力モードでのエンジンの出力トルクの低減量が小さくなる。このため、燃費低減の効果が小さい。
【0006】
本発明の課題は、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様にかかる作業車両は、エンジンと、走行装置と、作業機と、第1検出部と、第2検出部と、制御部と、を備える。走行装置は、エンジンからの駆動力により車両を走行させる。作業機は、エンジンからの駆動力により駆動される。第1検出部は、エンジン回転数を検出する。第2検出部は、車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つを検出する。制御部は、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する。制御部は、低負荷条件が満たされているときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、エンジンを制御する。また、制御部は、第2検出部によって検出された車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、第1検出部によって検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【0008】
この作業車両では、低負荷条件が満たされているときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量は、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度との少なくとも1つと、エンジン回転数との変化に応じて、変化する。従って、予め設定された量だけ一律にエンジンの出力トルクの上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数と車速等との状況の変化に応じて、低減量が変化する。このため、エンジンの出力トルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる作業車両は、第1の態様にかかる作業車両であって、低減量は、低負荷条件に応じて変化する。
【0010】
低負荷条件が異なれば車両にかかる負荷の大きさも異なる。このため、低負荷条件に応じて低減量を変化させることにより、負荷の大きさに適した低減量を決定することができる。例えば、低負荷条件が満たされていても、負荷の大きな低負荷条件では、負荷の小さな低負荷条件よりも低減量が小さくされるとよい。これにより、操作性の低下をさらに抑えることができる。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる作業車両は、第1又は第2の態様にかかる作業車両であって、制御部は、エンジン回転数が所定回転数より大きいときに、エンジンの出力トルクの上限値を低減させる。また、所定回転数は、低負荷条件に応じて変化する。
【0012】
この作業車両では、エンジン回転数が所定回転数より大きいときには、エンジンの出力トルクの上限値が低減される。すなわち、低負荷条件が満たされても、エンジン回転数が所定回転数より小さいときには、エンジンの出力トルクの上限値が低減されない。これにより、エンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。また、所定回転数は、低負荷条件に応じて変化する。最低限必要なエンジンの出力トルクは低負荷条件に応じて異なるので、低負荷条件に応じて所定回転数を変化させることにより、低負荷条件ごとに最低限必要なエンジンの出力トルクを確保することができる。これにより、操作性の低下を抑えながら、燃費を向上させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる作業車両であって、オペレータによって操作されるアクセル操作部材と、アクセル操作部材の操作量を検出する第3検出部と、をさらに備える。制御部は、第3検出部によって検出されたアクセル操作部材の操作量を考慮して低減量を決定する。
【0014】
この作業車両では、アクセル操作部材の操作量を考慮して、エンジンの出力トルクの上限値の低減量が決定される。このため、オペレータの意思を低減量に反映させることができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第4の態様のいずれかにかかる作業車両であって、第2検出部は、車速を検出する。車速が所定速度以上であるときには、制御部は車速が所定速度より小さいときよりも低減量を小さくする。
【0016】
この作業車両では、高速走行時にエンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。これにより、高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0017】
本発明の第6の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第4の態様のいずれかにかかる作業車両であって、第2検出部は、車速を検出する。車速が第1の所定速度より小さいとき、及び、車速が第1の所定速度より大きい第2の所定速度より大きいときには、制御部は、車速が第1の所定速度以上であり第2の所定速度以下であるときよりも、低減量を小さくする。
【0018】
この作業車両では、低速走行時および高速走行時にエンジンの出力トルクが過度に低下することを抑えることができる。これにより、低速走行時および高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0019】
本発明の第7の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第6の態様のいずれかにかかる作業車両であって、制御部は、走行装置及び作業機の作動状態から車両の作業局面を判別し、低負荷条件が満たされているか否かを作業局面に基づいて判定する、
この作業車両では、作業局面に基づいて、エンジンの出力トルクの上限値の低減量が決定される。このため、車両の負荷状態により適した低減量に決定できる。これにより、さらに、燃費が低減するとともに操作性の低下が抑えられる。
【0020】
本発明の第8の態様にかかる作業車両は、第7の態様にかかる作業車両であって、低負荷条件は、作業局面が空荷状態であることを含む。空荷状態とは、作業機に荷物が積まれていない状態である。
【0021】
この作業車両では、作業機に荷物が積まれていないときに、エンジンの出力トルクの上限が低減される。作業機に荷物が積まれていないときには、作業機にかかる負荷が小さい。従って、エンジンの出力トルクの上限が低減されても、作業機の動作に与える影響が小さい。このため、操作性の低下を抑えると共に、燃費を低減させることができる。
【0022】
本発明の第9の態様にかかる作業車両は、第7の態様または第8の態様にかかる作業車両であって、車両の前進と後進との切換を操作するための前後進切換操作部材をさらに備える。低負荷条件は、作業局面がシャトル状態であることを含む。シャトル状態とは、前後進切換操作部材によって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なっている状態である。
【0023】
この作業車両では、車両がシャトル状態であるときに、エンジンの出力トルクの上限が低減される。シャトル状態は、オペレータが車両の前進と後進との切換を操作したときから、車両の動作が実際に切り換わるまでの間の状態である。このため、車両がシャトル状態であるときには、車両を高速で走行させたり、作業機を迅速に駆動させたりする状況ではない。このため、操作性の低下を抑えると共に、燃費を低減させることができる。
【0024】
本発明の第10の態様にかかる作業車両は、第1の態様から第9の態様のいずれかにかかる作業車両であって、制御部は、車両が登坂走行を行っているか否かを判定する。制御部は、車両が登坂走行を行っている場合には、制御部は低減量を小さくする。
【0025】
この作業車両では、車両が登坂走行を行っていると判定された場合には、低減量が小さくされる。このため、登坂走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0026】
本発明の第11の態様にかかる作業車両の制御方法は、エンジンと走行装置と作業機とを備える作業車両の制御方法である。走行装置は、エンジンからの駆動力により車両を走行させる。作業機は、エンジンからの駆動力により駆動される。この作業車両の制御方法は、次のステップを備える。エンジン回転数が検出される。車速と、車両の加速度と、エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つが検出される。車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かが判定される。低負荷条件が満たされるときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされないときよりも低減するように、エンジンが制御される。検出された車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出されたエンジン回転数との変化に応じて、低負荷条件が満たされているときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる。
【0027】
この作業車両の制御方法では、低負荷条件が満たされるときには、エンジンの出力トルクの上限値が、低負荷条件が満たされないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、低負荷条件が満たされるときのエンジンの出力トルクの上限値の低減量は、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度との少なくとも1つと、エンジン回転数との変化に応じて、変化する。従って、予め設定された量だけ一律にエンジンの出力トルクの上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数と車速等との状況の変化に応じて、低減量が変化する。このため、エンジンの出力トルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る作業車両の側面図。
【図2】作業車両の構成を示す模式図。
【図3】エンジントルクカーブの一例を示す図。
【図4】エンジントルク低減制御での処理を示すフローチャート。
【図5】補正エンジン回転数を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図6】低負荷条件とトルク低減量テーブルとを示す図。
【図7】エンジントルク低減制御でのトルク低減量の算出処理を示すフローチャート。
【図8】トルク低減量テーブルの例を示す図。
【図9】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図10】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図11】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図12】トルク低減量テーブルによって算出されたトルク低減量によるエンジントルクカーブの変化の例を示す図。
【図13】補正エンジン回転数及びトルク低減補正値によるトルク低減量への影響を示す図。
【図14】トルク低減補正値を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図15】低アクセル低速時低減比率を算出するためのテーブルの一例を示す図。
【図16】Vシェープ作業時の車両の動作を示す模式図。
【図17】他の実施形態に係るトルク低減量テーブルの例を示す図。
【図18】他の実施形態に係るトルク低減量テーブルの例を示す図。
【図19】本発明の他の実施形態に係るHST型作業車両の構成の概略を示すブロック図。
【図20】HST型作業車両でのポンプ容量−走行回路油圧特性の例を示す図。
【図21】HST型作業車両でのモータ容量−走行回路油圧特性の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係る作業車両1を図1および図2に示す。図1は、作業車両1の外観図であり、図2は、作業車両1の構成を示す模式図である。この作業車両1は、ホイールローダであり、作業車両1は、前輪4a、後輪4bが回転駆動されることにより自走可能であると共に作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
【0031】
図1に示すように、この作業車両1は、車体フレーム2、作業機3、前輪4a、後輪4b、運転室5を備えている。
【0032】
車体フレーム2は、前車体部2aと後車体部2bとを有している。前車体部2aと後車体部2bとは互いに左右方向に揺動可能に連結されている。前車体部2aと後車体部2bとに渡って一対のステアリングシリンダ11a,11bが設けられている。ステアリングシリンダ11a,11bは、ステアリングポンプ12(図2参照)からの作動油によって駆動される油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11a,11bが伸縮することによって、前車体部2aが後車体部2bに対して揺動する。これにより、車両の進行方向が変更される。なお、図1及び図2では、ステアリングシリンダ11a,11bの一方のみを図示しており他方を省略している。
【0033】
前車体部2aには、作業機3および一対の前輪4aが取り付けられている。作業機3は、作業機ポンプ13(図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム6と、一対のリフトシリンダ14a,14bと、バケット7と、バケットシリンダ15と、ベルクランク9とを有する。ブーム6は、前車体部2aに装着されている。リフトシリンダ14a,14bの一端は前車体部2aに取り付けられている。リフトシリンダ14a,14bの他端はブーム6に取り付けられている。リフトシリンダ14a,14bが作業機ポンプ13からの作動油によって伸縮することによって、ブーム6が上下に揺動する。なお、図1及び図2では、リフトシリンダ14a,14bのうちの一方のみを図示しており、他方は省略している。バケット7は、ブーム6の先端に取り付けられている。バケットシリンダ15の一端は前車体部2aに取り付けられている。バケットシリンダ15の他端はベルクランク9を介してバケット7に取り付けられている。バケットシリンダ15が、作業機ポンプ13からの作動油によって伸縮することによって、バケット7が上下に揺動する。
【0034】
後車体部2bには、運転室5及び一対の後輪4bが取り付けられている。運転室5は、車体フレーム2の上部に載置されており、オペレータが着座するシートや、後述する操作部8などが内装されている。
【0035】
また、図2に示すように、作業車両1は、エンジン21、走行装置22、作業機ポンプ13、ステアリングポンプ12、操作部8、制御部10などを備えている。
【0036】
エンジン21は、ディーゼルエンジンであり、シリンダ内に噴射する燃料量を調整することによりエンジン21の出力が制御される。この調整は、エンジン21の燃料噴射ポンプ24に付設された電子ガバナ25が後述する第1制御部10aによって制御されることで行われる。ガバナ25としては、一般的にオールスピード制御方式のガバナが用いられ、エンジン回転数が、後述するアクセル操作量に応じた目標回転数となるように、負荷に応じてエンジン回転数と燃料噴射量とを調整する。すなわち、ガバナ25は目標回転数と実際のエンジン回転数との偏差がなくなるように燃料噴射量を増減する。エンジン回転数は、エンジン回転数センサ91(第1検出部)によって検出される。エンジン回転数センサ91の検出信号は、第1制御部10aに入力される。
【0037】
走行装置22は、エンジン21からの駆動力により車両を走行させる装置である。走行装置22は、トルクコンバータ装置23、トランスミッション26、及び上述した前輪4a及び後輪4bなどを有する。
【0038】
トルクコンバータ装置23は、ロックアップクラッチ27とトルクコンバータ28を有している。ロックアップクラッチ27は、連結状態と非連結状態とに切換可能である。ロックアップクラッチ27が非連結状態である場合には、トルクコンバータ28が、オイルを媒体としてエンジン21からの駆動力を伝達する。ロックアップクラッチ27が連結状態である場合には、トルクコンバータ28の入力側と出力側とが直結される。ロックアップクラッチ27は、油圧作動式のクラッチであり、ロックアップクラッチ27への作動油の供給がクラッチ制御弁31を介して後述する第2制御部10bによって制御されることにより、連結状態と非連結状態とが切り換えられる。
【0039】
トランスミッション26は、前進走行段に対応する前進クラッチCFと、後進走行段に対応する後進クラッチCRとを有している。各クラッチCF,CRの連結状態・非連結状態が切り換えられることによって、車両の前進と後進とが切り換えられる。クラッチCF,CRが共に非連結状態のときは、車両は中立状態となる。また、トランスミッション26は、複数の速度段に対応した複数の速度段クラッチC1−C4を有しており、減速比を複数段階に切り換えることができる。例えば、このトランスミッション26では、4つの速度段クラッチC1−C4が設けられており、速度段を第1速から第4速までの4段階に切り換えることができる。各速度段クラッチC1−C4は、油圧作動式の油圧クラッチである。図示しない油圧ポンプからクラッチ制御弁31を介してクラッチC1−C4へ作動油が供給される。クラッチ制御弁31が第2制御部10bによって制御されて、クラッチC1−C4への作動油の供給が制御されることにより、各クラッチC1−C4の連結状態及び非連結状態が切り換えられる。
【0040】
トランスミッション26の出力軸には、トランスミッション26の出力軸の回転数を検出するT/M出力回転数センサ92が設けられている。T/M出力回転数センサ92(第2検出部)からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。第2制御部10bは、T/M出力回転数センサ92の検出信号に基づいて車速を算出する。従って、T/M出力回転数センサ92は車速を検出する車速センサとして機能する。なお、トランスミッション26の出力軸ではなく他の部分の回転速度を検出するセンサが車速センサとして用いられてもよい。トランスミッション26から出力された駆動力は、シャフト32などを介して前輪4a及び後輪4bに伝達される。これにより、車両が走行する。トランスミッション26の入力軸の回転数は、T/M入力回転数センサ93によって検出される。T/M入力回転数センサ93からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。
【0041】
エンジン21の駆動力の一部は、PTO軸33を介して作業機ポンプ13及びステアリングポンプ12に伝達される。作業機ポンプ13及びステアリングポンプ12は、エンジン21からの駆動力によって駆動される油圧ポンプである。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、作業機制御弁34を介してリフトシリンダ14a,14b及びバケットシリンダ15に供給される。また、ステアリングポンプ12から吐出された作動油は、ステアリング制御弁35を介してステアリングシリンダ11a,11bに供給される。このように、作業機3は、エンジン21からの駆動力の一部によって駆動される。
【0042】
作業機ポンプ13から吐出された作動油の圧力(以下、「作業機ポンプ油圧」と呼ぶ)は、第1油圧センサ94によって検出される。リフトシリンダ14a,14bに供給される作動油の圧力(以下「リフトシリンダ油圧」と呼ぶ)は、第2油圧センサ95によって検出される。具体的には、第2油圧センサ95は、リフトシリンダ14a,14bを伸長させるときに作動油が供給されるシリンダヘッド室の油圧を検出する。バケットシリンダ15に供給される作動油の圧力(以下「バケットシリンダ油圧」と呼ぶ)は、第3油圧センサ96によって検出される。具体的には、第3油圧センサ96は、バケットシリンダ15を伸長させるときに作動油が供給されるシリンダヘッド室の油圧を検出する。ステアリングポンプ12から吐出された作動油の圧力(以下、「ステアリングポンプ油圧」と呼ぶ)は、第4油圧センサ97によって検出される。第1〜第4油圧センサ94−97からの検出信号は、第2制御部10bに入力される。
【0043】
操作部8は、オペレータによって操作される。操作部8は、アクセル操作部材81a、アクセル操作検出装置81b、ステアリング操作部材82a、ステアリング操作検出装置82b、ブーム操作部材83a、ブーム操作検出装置83b、バケット操作部材84a、バケット操作検出装置84b、変速操作部材85a、変速操作検出装置85b、FR操作部材86a、FR操作検出装置86b、シフトダウン操作部材89a、及び、シフトダウン操作検出装置89bなどを有する。
【0044】
アクセル操作部材81aは、例えばアクセルペダルであり、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。アクセル操作検出装置81b(第3検出部)は、アクセル操作部材81aの操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を検出する。アクセル操作検出装置81bは、検出信号を第1制御部10aへ出力する。
【0045】
ステアリング操作部材82aは、例えばステアリングハンドルであり、車両の進行方向を操作するために操作される。ステアリング操作検出装置82bは、ステアリング操作部材82aの位置を検出し、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、ステアリング操作検出装置82bからの検出信号に基づいてステアリング制御弁35を制御する。これにより、ステアリングシリンダ11a,11bが伸縮して、車両の進行方向が変更される。
【0046】
ブーム操作部材83a及びバケット操作部材84aは、例えば操作レバーであり、作業機3を動作させるために操作される。具体的には、ブーム操作部材83aは、ブーム6を動作させるために操作される。バケット操作部材84aは、バケット7を動作させるために操作される。ブーム操作検出装置83bは、ブーム操作部材83aの位置を検出する。バケット操作検出装置84bは、バケット操作部材84aの位置を検出する。ブーム操作検出装置83b及びバケット操作検出装置84bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、ブーム操作検出装置83b及びバケット操作検出装置84bからの検出信号に基づいて作業機制御弁34を制御する。これにより、リフトシリンダ14a,14b及びバケットシリンダ15が伸縮して、ブーム6及びバケット7が動作する。また、作業機3にはブーム角を検出するブーム角検出装置98が設けられている。ブーム角は、前後の車輪4a,4bの回転軸の中心を結んだ線と、ブーム6の前車体フレーム2aに対する回転中心と、バケット7のブーム6に対する回転中心とを結ぶ線とに挟まれた角度を言う。ブーム角は、地面からのバケット7の高さに相当する。ブーム角検出装置98は、検出信号を第2制御部10bに出力する。
【0047】
変速操作部材85aは、例えばシフトレバーである。変速操作部材85aは、自動変速モードが選択されているときには、速度段の上限を設定するために操作される。例えば、変速操作部材85aが第3速に設定されている場合には、トランスミッション26は、第2速から第3速までの間で切り換えられ、第4速には切り換えられない。また、手動変速モードが選択されているときには、トランスミッション26は変速操作部材85aによって設定された速度段に切り換えられる。変速操作検出装置85bは、変速操作部材85aの位置を検出する。変速操作検出装置85bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて、トランスミッション26の変速を制御する。なお、自動変速モードと手動変速モードとは図示しない変速モード切換部材によってオペレータによって切り換えられる。
【0048】
FR操作部材86a(前後進切換操作部材)は、車両の前進と後進とを切り換えるために操作される。FR操作部材86aは、前進、中立、及び後進の各位置に切り換えられることができる。FR操作検出装置86bは、FR操作部材86aの位置を検出する。FR操作検出装置86bは、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、FR操作検出装置86bからの検出信号に基づいてクラッチ制御弁31を制御する。これにより、前進クラッチCF及び後進クラッチCRが制御され、車両の前進と後進と中立状態とが切り換えられる。
【0049】
シフトダウン操作部材89aは、自動変速モードが選択されているときに、トランスミッション26の速度段を、現在の速度段から1つ下の速度段に切り換えるために操作される。シフトダウン操作部材89aは、例えば、変速操作部材85aに設けられたスイッチである。シフトダウン操作検出装置89bは、シフトダウン操作部材89aが操作されたか否かを検出して、検出信号を第2制御部10bに出力する。第2制御部10bは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて、トランスミッション26の変速を制御する。つまり、シフトダウン操作部材89aが操作されたことが検出されると、第2制御部10bは、トランスミッション26の速度段を1つ下の速度段に切り換える。
【0050】
制御部10は、第1制御部10a及び第2制御部10bを有する。第1制御部10a及び第2制御部10bは、例えばプログラムメモリやワークメモリとして使用される記憶装置と、プログラムを実行するCPUと、を有するコンピュータにより、それぞれ実現されることができる。
【0051】
第1制御部10aは、アクセル操作量に応じた目標回転数が得られるように、エンジン指令信号をガバナ25に送る。図3に、エンジン21が回転数に応じて出力できるトルク上限値(以下、「トルク上限値」と呼ぶ)を表すエンジントルクカーブを示す。図3において、実線L100は、後述するエンジントルク低減制御が行われていない高負荷作業局面においてアクセル操作量が100%であるときのエンジントルクカーブを示している。このエンジントルクカーブは、例えばエンジン21の定格又は最大のパワー出力に相当する。なお、アクセル操作量が100%とは、アクセル操作部材81aが最大に操作されている状態を意味する。また、破線L75は、高負荷作業局面においてアクセル操作量が75%であるときのエンジントルクカーブを示している。ガバナ25は、エンジン21の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)がエンジントルクカーブ以下となるようにエンジン21の出力を制御する。このエンジン21の出力の制御は、例えば、エンジン21への燃料噴射量の上限値を制御することにより行われる。また、エンジントルク低減制御が行われているときには、第1制御部10aは、第2制御部10bから修正指令信号を受信する。第1制御部10aは、修正指令信号によりエンジン指令信号の指令値を修正してガバナ25に送る。修正指令信号については、後に詳細に説明する。
【0052】
第2制御部10bは、車両の走行状態に応じて、トランスミッション26やトルクコンバータ装置23を制御する。例えば、自動変速モードが選択されているときには、第2制御部10bは、車速に応じて、トランスミッション26の速度段の切換およびロックアップクラッチ27の切換を自動的に行う。なお、手動変速モードが選択されているときには、第2制御部10bは、変速操作部材85aによって選択された速度段にトランスミッション26を切り換える。
【0053】
第2制御部10bには、上述した検出信号に加えて、トルクコンバータ装置23の入口圧及び出口圧などの検出信号も入力される。また、第1制御部10aと第2制御部10bとは有線又は無線によって互いに通信することができる。エンジン回転数、燃料噴射量、アクセル操作量などの検出信号が第1制御部10aから第2制御部10bに入力される。第2制御部10bは、後述するエンジントルク低減制御において、これらの信号に基づいて、エンジン指令信号の指令値を修正するための修正値を算出する。第2制御部10bは、修正値に対応する修正指令信号を第1制御部10aへ送信する。この修正値は、トルク上限値の所望の低減量を得るために必要な値である。これにより、第1制御部10aと第2制御部10bとは、トルク上限値を所望の値に制御することができる。
【0054】
以下、エンジントルク低減制御について説明する。まず、エンジン回転数、車速及び操作部8の操作状態を含む各種の情報が検出されて、第2制御部10bに検出信号が送られる。次に、第2制御部10bにおいて、車両の作業局面が、走行装置22及び作業機3の作動状態から判別される。そして、作業局面と操作部8の操作状態とに基づいて、所定の低負荷条件が満たされているか否かが判定される。低負荷条件は、車両が低負荷状態であることを示す条件であり、複数の低負荷条件が用意されている。そして、複数の低負荷条件のうちのある条件が満たされているときには、当該条件に対応するトルク低減量テーブルが選択される。トルク低減量テーブルは、トルク上限値の低減量(以下、「トルク低減量」と呼ぶ)を算出するためのテーブルであり、エンジン回転数と車速とトルク低減量との関係が設定されている。第2制御部10bは、選択したトルク低減量テーブルを用いて、エンジン回転数と車速とに対応するトルク低減量を算出する。そして、第2制御部10bは、算出したトルク低減量に対応する修正値を算出し、これを修正指令信号として第1制御部10aへ送る。第1制御部10aは、修正指令信号により修正されたエンジン指令信号をガバナ25に送る。これにより、低負荷条件が満たされているときには、トルク上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減するようにエンジン21が制御される。また、このときのトルク低減量の算出は、エンジン回転数と車速とに基づいて行われ、エンジン21が駆動されている間は繰り返し行われる。このため、トルク低減量は、エンジン回転数と車速との変化に応じて連続的に変化する。従って、トルク上限値は、エンジン回転数と車速との変化に応じて連続的に変化する。以下、エンジントルク低減制御での処理について、図4に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0055】
まず、第1ステップS1で、各種情報が検出される。ここでは、操作部8及び各種のセンサからの検出信号により、エンジン回転数及び車速を含む各種情報が検出される。
【0056】
次に、第2ステップS2で、補正エンジン回転数が算出される。補正エンジン回転数は、後述するトルク低減量テーブルによるトルク低減量の算出に用いられる。補正エンジン回転数は、以下の式(1)から算出される。
【0057】
Nt=Ne+a−Nbp ・・・(1)
Ntは、補正エンジン回転数である。Neは、エンジン回転数センサ91によって検知された現在のエンジン回転数である。Nbpは、アクセル操作量に応じた目標エンジン回転数であり、現在のアクセル操作量から算出される。具体的には、Nbpは、図5に示すテーブルと現在のアクセル操作量とから算出される。図5において、n0〜n10は所定の数値であり、n0からn10の順に大きくなる。すなわち、アクセル操作量が大きいほどNbpは大きい。なお、図5のテーブルに示されていない値は、テーブルに示されている値の補間により求められる。後述する他のテーブルについても同様である。aは所定の定数であり、アクセル操作量が所定量であるときの目標エンジン回転数である。例えば、定数aはアクセル操作量が100%であるときの目標エンジン回転数n10に設定される。補正エンジン回転数は、アクセル操作量が所定量であるときのトルク低減量テーブルを利用して、現在のアクセル操作量に応じたトルク低減量を求めるために用いられる。すなわち、定数aがn10である場合は、アクセル操作量が100%であるときのトルク低減量テーブルを利用して、アクセル操作量が100%未満であるときのトルク低減量を求めることができる。(Nbpとaは、図13参照)
図4のフローチャートに戻り、第3ステップS3では、エンジン低回転域フラグがONであるか否かが判定される。エンジン低回転域フラグは、エンジン回転数センサ91によって検出されたエンジン回転数が所定の低回転数Nlow以下である場合にONに設定され、エンジン回転数が所定の低回転数Nlowより大きい場合にOFFに設定される。第3ステップS3において、エンジン低回転域フラグがONである場合には、第10ステップS10に進む。第10ステップS10では、トルク低減量がゼロに設定される。すなわち、エンジントルク低減制御は行われない。
【0058】
第4ステップS4では、変速操作部材85aが第1速位置に位置しているか否かが判定される。ここでは、変速操作検出装置85bからの検出信号に基づいて判定が行われる。変速操作部材85aが第1速位置に位置している場合には第10ステップS10に進み、トルク低減量がゼロに設定される。変速操作部材85aが第1速位置に位置していない場合には、第5ステップS5に進む。すなわち、変速操作部材85aが第2速以上の速度段位置に位置している場合には、第5ステップS5に進む。
【0059】
第5ステップS5では、作業局面の判別が行われる。具体的には、第2制御部10bは、以下のようにして作業局面を判別する。
【0060】
まず、第2制御部10bは、上述した検出信号に基づいて、車両の走行ステータスと作業ステータスとを判別する。走行ステータスには、「停止」、「前進」、「後進」、及び「シャトル」がある。車速が所定の停止閾値以下である場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「停止」と判定する。所定の停止閾値は、車両が停止していると見なすことができる程度に低い値である。FR操作部材86aが前進位置に設定されており、且つ、車両が前進している場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「前進」と判定する。FR操作部材86aが後進位置に設定されており、且つ、車両が後進している場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「後進」と判定する。また、FR操作部材86aによって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なる場合には、第2制御部10bは、走行ステータスを「シャトル」と判定する。すなわち、シャトルとは、オペレータがFR操作部材86aを前進から後進に、又は、後進から前進に切り換えたが、車両の進行方向が切り換わる前の状態である。
【0061】
作業ステータスには、「積荷」、「空荷」、及び、「掘削」がある。第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧が所定の積荷閾値以上である場合には、作業ステータスを「積荷」と判定する。第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧がこの積荷閾値より小さい場合には、作業ステータスを「空荷」と判定する。すなわち、「空荷」とは、バケット7に荷物が積まれていない状態を意味し、「積荷」とは、バケット7に荷物が積まれている状態を意味する。従って、所定の積荷閾値は、バケット7に荷物が積まれていない状態でのリフトシリンダ油圧の値よりも大きな値であり、バケット7に荷物が積まれていると見なすことができるリフトシリンダ油圧の値である。また、第2制御部10bは、リフトシリンダ油圧が所定の掘削油圧閾値以上であり、且つ、走行ステータスが「前進」であり、且つ、ブーム角が所定の掘削角度閾値以下である場合に、「掘削」と判定する。「掘削」は、車両が前進しながらバケット7を土砂に突っ込んで持ち上げる作業を意味する。従って、掘削油圧閾値は、掘削作業中のリフトシリンダ油圧の値に相当する。また、掘削角度閾値は、掘削作業中のブーム角の値に相当する。第2制御部10bは、上記の走行ステータスと作業ステータスとの組み合わせにより、作業局面を判別する。具体的には、「空荷停止」、「積荷停止」「空荷前進」、「積荷前進」、「空荷後進」、「積荷後進」、「掘削」の7つの局面に判別される。
【0062】
第6ステップS6で、低負荷条件が満たされるか否かが判定される。低負荷条件は、車両が低負荷状態であることを示す条件である。ここでは、上述した作業局面および操作部材の操作状態によって、低負荷条件が満たされるか否かが判定される。例えば、低負荷条件としては、図6に示すように複数の低負荷条件がある。低負荷条件については後にトルク低減量テーブルと共に説明する。また、これらの低負荷条件のいずれも満たされない場合には、車両が高負荷状態にあると判定される。例えば作業局面が「掘削」の場合は、高負荷状態と判定される。また、車両が登坂走行を行っている場合にも、高負荷状態と判定される。例えば車両の傾斜角が検出され、車両の傾斜角が所定角度以上であり且つ車両が走行しているときに車両が登坂走行を行っていると判定される。或いは、車両の加速度が検出され、アクセル操作部材81aの操作量が所定の操作閾値以上であるのに加速度が所定の加速度閾値より小さいときに、車両が登坂走行を行っていると判定される。車両が高負荷状態であると判定された場合には、第10ステップS10においてトルク低減量がゼロに設定される。すなわち、トルク上限値の低減は行われない。低負荷条件のいずれかが満たされている場合は、ステップS7に進む。
【0063】
第7ステップS7で、トルク低減量の算出が行われる。トルク低減量の算出方法については後述する。
【0064】
第8ステップS8で、修正指令信号が出力される。ここでは、第2制御部10bが、第7ステップS7で算出されたトルク低減量に相当する修正指令信号を第1制御部10aに送る。
【0065】
そして、第9ステップS9で、エンジン指令信号が修正される。ここでは、上述したように、第1制御部10aが修正指令信号によりエンジン指令信号を修正してエンジン21を制御する。
【0066】
次に、第7ステップS7で算出されるトルク低減量の算出方法について、図7に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0067】
まず、第11ステップS11において、トルク低減量テーブルが選択される。ここでは、作業局面と操作部材の操作状態とに基づいて、トルク低減量テーブルが選択される。具体的には、上述の第6ステップS6で判定された低負荷条件に対応するトルク低減量テーブルが選択される。トルク低減量テーブルには、例えば図6に示すように、「排土テーブル」、「シャトルテーブル」、「空荷前進テーブル」、「空荷後進テーブル」、「積荷前進テーブル」、「積荷後進テーブル」がある。「排土テーブル」は、作業局面が積荷前進であり且つバケット操作部材84aの操作方向がダンプ側であり且つ操作量が所定のバケット操作閾値(例えば50%)以上の場合に選択される。また、「排土テーブル」は、作業局面が積荷停止であり且つバケット操作部材84aの操作方向がダンプ側であり且つ操作量が所定のバケット操作閾値(例えば50%)以上である場合に選択される。なお、「ダンプ側」とは、排土作業を行う場合のようにバケット7の刃先を下降させるときの操作方向を意味する。また、バケット操作部材84aの操作量は、最大操作量に対する割合を%で示したものである。なお、中立状態では操作量は0%である。「シャトルテーブル」は、作業局面がシャトルである場合に選択される。「空荷前進テーブル」は、作業局面が空荷前進である場合に選択される。「空荷後進テーブル」は、作業局面が空荷後進である場合に選択される。「積荷前進テーブル」は、作業局面が積荷前進であり且つ変速操作部材85aの位置が第2速である場合に選択される。「積荷後進テーブル」は、作業局面が積荷後進である場合に選択される。これらの低負荷条件は、車両の状態が、上述した高負荷状態よりも負荷の低い低負荷状態であるときに満たされるものである。各テーブルは、各低負荷条件が満たされている状態の車両にとって適切なエンジン回転数、車速、トルク低減量の関係を定めている。これらのテーブルは、予め実験等によって求められ、第2制御部10bに記憶されている。
【0068】
トルク低減量テーブルの例を図8に示す。図8(a)−(c)において、V0〜Vmax、N11〜N16,N21、N31、a111〜a122、b111〜b152、c111〜c151は、数値を示している。V0〜Vmaxは車速であり、V0<V1<V2<V3<V4<Vmaxである。特にVmaxは、車両の最高速度である。また、N11〜N16,N21,N31はエンジン回転数であり、0<N11<N12<N13<N14<N15<N16、0<N21<N12、0<N31<N12である。a111〜a122,b111〜b152,c111〜c151はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。このように、各テーブルの車速、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及び車速が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0069】
例えば、図8(a)のテーブルでは、エンジン回転数がN11以下のときには、トルク低減量はゼロである。これに対して、図8(c)のテーブルでは、エンジン回転数がN31以下のときに、トルク低減値がゼロとなる。すなわち、図8(a)のテーブルでは、エンジン回転数がN11より大きいときに、トルク上限値が低減される。また、図8(c)のテーブルでは、エンジン回転数がN31より大きいときに、トルク上限値が低減される。このように、トルク上限値が低減されるエンジン回転数の下限値は、低負荷条件に応じて変化する。
【0070】
これらのエンジン回転数の下限値は、各低負荷条件において急激に大きな負荷が作用した場合でもエンジン回転数が大幅に低下し難い値に設定される。すなわち、トルク上限値が低減されるエンジン回転数の下限値は、各低負荷条件において最低限必要なエンジンの出力トルクを確保するために必要な値が実験等により予め求められて設定される。
【0071】
また、図8(a)のテーブルでは、車速がVmaxであるときはエンジン回転数に応じてトルク低減量がゼロからa122までの間で変化する。これに対して、図8(b)のテーブルでは、車速がVmaxであるときには、エンジン回転数によらずトルク低減量はゼロである。さらに、図8(c)のテーブルでは車速がV4以上であるときには、エンジン回転数によらずトルク低減量はゼロである。次に、図8(a)のテーブルでは、車速がV2より大きいときに、ゼロより大きいトルク低減量が設定される。これに対して、図8(b)及び図8(c)のテーブルでは、車速がV0より大きいときに、ゼロより大きいトルク低減量が設定される。このように、トルク上限値が低減される車速の下限値は、低負荷条件に応じて変化する。これらの車速の下限値は、各低負荷条件において、例えば落石時の脱出等の危険回避のために緊急操作が必要な場合において初期動作に支障が生じない値に設定される。すなわち、トルク上限値が低減される車速の下限値は、各低負荷条件において、最低限必要なエンジンの出力トルクを確保するために必要な値が実験等により予め求められて設定される。例えば、トルク上限値が低減される車速の下限値として、5km/h程度の車速が設定される。
【0072】
低負荷条件が異なれば、同じエンジン回転数や車速であっても、エンジントルクの低下によってオペレータが操作性の低下を感じる程度は異なる。このため、上記のように低負荷条件に応じて異なるトルク低減量テーブルを用いることによって、操作性の低下をオペレータに感じさせずに、低負荷条件ごとにできるだけエンジントルクを低減させることができる。
【0073】
図7のフローチャートに戻り、第12ステップS12では、第1トルク低減値が算出される。ここでは、第11ステップS11において選択されたトルク低減量テーブルを参照して、現在のエンジン回転数と車速とに対応するトルク低減量が第1トルク低減値として算出される。
【0074】
トルク低減量テーブルによってトルク上限値が低減されたエンジントルクカーブの例を図9に示す。図9(a)−(d)は、エンジン回転数と、車速と、エンジントルク(上限値)との関係を示す3次元マップである。図9(a)−(d)からわかるように、トルク低減量は、同じエンジン回転数及び車速であっても、低負荷条件に応じて異なる。図9(a)は、図8(a)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(a)に示すテーブルは、上述した排土テーブル及びシャトルテーブルとして用いられる。図9(b)は、図8(b)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(b)に示すテーブルは、上述した空荷後進テーブル及び積荷後進テーブルとして用いられる。図9(c)は、図8(c)に示すテーブルに対応している。例えば、図8(c)に示すテーブルは、上述した空荷前進テーブルとして用いられる。なお、図9(d)は、トルク低減が行われない場合のエンジントルクカーブの例であり、例えば、2速より高い速度段を選択した場合の上述した積荷前進テーブルに対応している。トルク低減量テーブルは、車両の特性や使われ方を考慮した様々な低負荷条件に応じて設定される。
【0075】
例えば、図9(a)のマップにおいて、異なる車速でのエンジン回転数−エンジントルクカーブを図10(a)に示す。図10(a)において、実線Lv2は車速がV2のときのエンジントルクカーブである。破線Lv3は車速がV3のときのエンジントルクカーブである。二点鎖線Lv4は車速がV4のときのトルクカーブである。なお、上述したようにV2<V3<V4である。このように、車速の変化に応じてトルク低減量が変化している。具体的には、車速が大きいほど、トルク低減量が増大している。
【0076】
また、図9(a)のマップにおいて、異なるエンジン回転数での車速−エンジントルクカーブを図10(b)に示す。図10(b)において、実線Ln1はエンジン回転数がN11のときのエンジントルクカーブである。破線Ln2はエンジン回転数がN12のときのエンジントルクカーブである。破線Ln3はエンジン回転数がN13のときのエンジントルクカーブである。このように、エンジン回転数の変化に応じてトルク低減量が変化している。エンジン回転数がN11のとき、すなわちエンジン回転数が低いときには、トルク低減量はゼロで一定であり、車速の変化に関わらずトルク上限値はTaで一定である。また、エンジン回転数がN12のときには、車速がV2とV4との間で変化すると、トルク上限値も車速の変化に応じて変化する。ただし、車速がV2以下のときは、車速の変化に関わらずトルク上限値はTb1で一定である。また、車速がV4以上のときは、トルク上限値は、車速の変化に関わらずTb2で一定である。同様に、エンジン回転数がN13のときには、車速がV2とV4との間で変化すると、トルク上限値も車速の変化に応じて変化する。ただし、車速がV2以下のときは、車速の変化に関わらずトルク上限値はTc1(<Ta<Tb1)で一定である。また、車速がV4以上のときは、トルク上限値は、車速の変化に関わらずTc2(Ta<Tb2)で一定である。
【0077】
以上のように、同じ低負荷条件であっても、車速とエンジン回転数との変化に応じて、トルク低減量が変化する。
【0078】
また、図9(a)のマップと図9(b)のマップとにおける同じ車速でのエンジン回転数−エンジントルクカーブを図11(a)及び図11(b)にそれぞれ示す。図11(a)は、図9(a)のマップでのエンジン回転数−エンジントルクカーブである。また、図11(a)において、破線Lhaはトルク低減量がゼロであるときのエンジントルクカーブである。実線Llaはトルク低減テーブルによって低減されたエンジン回転数−エンジントルクカーブである。図11(b)は、図9(b)のマップでのエンジン回転数−エンジントルクカーブである。また、破線Lhbはトルク低減量がゼロであるときのエンジントルクカーブである。実線Llbはトルク低減テーブルによって低減されたエンジン回転数−エンジントルクカーブである。これらの図からわかるように、図9(b)のマップの方が図9(a)のマップよりもトルク低減量が小さい。このように、同じ車速であっても、低負荷条件によってトルク低減量が異なる。例えば、図11(a)の実線Llaで示すエンジントルクカーブは、後述するVシェープ作業等の短距離での作業において、特に、作業車両1への負荷が小さい作業局面に基づく低負荷条件において有効である。図11(b)の実線Llbで示すエンジントルクカーブは、作業車両1への負荷が大きい作業局面に基づく低負荷条件において有効である。また、作業車両1への負荷が更に増大した場合には、実線Llbで示すエンジントルクカーブを破線Lhbで示すエンジントルクカーブに近づけたエンジントルクカーブが用いられるとよい。また、この場合、負荷が増大するほど、さらに破線Lhbで示すエンジントルクカーブに近づけたエンジントルクカーブが用いられるとよい。
【0079】
図9(a)と図9(c)とにおける同じエンジン回転数での車速−エンジントルクカーブを図12に示す。実線Lvaは、図9(a)での車速−エンジントルクカーブである。破線Lvcは、図9(c)での車速−エンジントルクカーブである。二点鎖線Lv0はトルク低減量がゼロであるときの車速−エンジントルクカーブである。この図12からわかるように、図9(a)のマップの方が図9(c)のマップよりも車速の変化に対して緩やかにトルク低減量が変化している。このように、同じエンジン回転数であっても、低負荷条件によってトルク低減量の変化が異なる。また、破線Lvcは、車速がV0より大きくV4より小さい中間域であるときに、トルク上限値が低減されている。より詳細には、車速がV0より大きくV1より小さいときには、トルク低減量が車速の上昇に応じて増加している。車速がV1以上でV3以下のときには、トルク低減量は一定である。車速がV3より大きくV4より小さいときには、トルク低減量は、車速の上昇に応じて減少している。
【0080】
なお、第12ステップS12における、トルク低減量テーブルを用いた第1トルク低減値の算出の際には、T/M出力回転数センサ92が検知した車速が、現在の車速として用いられる。また、アクセル操作量が100%であるときにはエンジン回転数センサ91が検知したエンジン回転数が現在のエンジン回転数として用いられる。アクセル操作量が100%よりも小さい操作量の場合には、第2ステップS2で算出された補正エンジン回転数が現在のエンジン回転数として用いられる。
【0081】
図13は、補正エンジン回転数を用いた場合のエンジントルクカーブの補正過程を示している。二点鎖線L100は、アクセル操作量が100%のときのエンジントルクカーブであり、トルク低減量はゼロである。一点鎖線L100´は、アクセル操作量が100%であるとして設定されたトルク低減量テーブルに基づいて、エンジントルクカーブL100のトルクを低減したときのエンジントルクカーブである。破線Lcnは、補正エンジン回転数によりトルク低減量を算出したときのエンジントルクカーブであり、アクセル操作量が75%のときにトルクが低減されたエンジントルクカーブである。このように、補正エンジン回転数が用いられることにより、二点鎖線L100と一点鎖線L100´とのトルク差(トルク低減量)が、二点鎖線L100と破線Lcnとのトルク差(トルク低減量)に補正されている。即ち、補正エンジン回転数を用いて第1トルク低減値を算出することにより、アクセル操作量を考慮してトルク低減量を補正することができる。これにより、アクセル操作量ごとにトルク低減量テーブルを設定しなくてもよい。
【0082】
図7のフローチャートに戻り、第13ステップS13では、低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」であるか否かが判定される。低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」である場合には第16ステップS16に進む。すなわち、第11ステップS11において、積荷前進テーブル又は積荷後進テーブルが選択されている場合には第16ステップS16に進む。低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」ではない場合には第14ステップS14に進む。すなわち、第11ステップS11において、「排土テーブル」、「シャトルテーブル」、「空荷前進テーブル」、「空荷後進テーブル」のいずれかが選択されている場合には第14ステップS14に進む。
【0083】
第14ステップS14では、第2トルク低減値A2が算出される。第2トルク低減値A2は以下の式(2)により算出される。
A2=A1+B・・・(2)
A1は第12ステップS12で算出された第1トルク低減値である。Bはトルク低減補正値であり、アクセル操作量に応じて変化する値である。具体的には、トルク低減補正値は、図14に示すトルク低減補正値テーブルによって求められる。図14において、a1〜a7,b1〜b5は所定の数値である。0<a1<a2<a3<a4<a5<a6<a7であり、b1>b2>b3>b4>b5>0である。すなわち、アクセル操作量が大きいほど、トルク低減補正値は小さい。アクセル操作量が所定値a7(例えば85%)より大きいときには、トルク低減補正値はゼロである。
【0084】
トルク低減補正値を用いたときのエンジントルクカーブを図13において実線Lcaで示す。このエンジントルクカーブでは、補正エンジン回転数により第1トルク低減値を算出し、且つ、トルク低減補正値を用いて第2トルク低減値を算出したときのエンジントルクカーブである。上述した破線Lcnは、補正エンジン回転数により第1トルク低減値を算出し、且つ、トルク低減補正値を用いずに第2トルク低減値を算出したときのエンジントルクカーブである。いずれの場合もアクセル操作量は同じ(例えば75%)である。このように、トルク低減補正値を用いて第2トルク低減値を算出することにより、アクセル操作量を考慮してトルク低減量を補正することができる。
【0085】
第15ステップS15で、トルク低減量Dが算出される。トルク低減量Dは以下の式(3)により算出される。
D=A2×R1・・・(3)
A2は、第14ステップS14で算出された第2トルク低減値である。R1は、低アクセル低速時低減比率である。低アクセル低速時低減比率は、アクセル操作量による低減比率raと車速による低減比率rvとのうちの大きい方を選択することにより、算出される。アクセル操作量による低減比率raは、図15(a)に示す低減比率算出テーブルから算出される。図15(a)のテーブルでは、AC1,AC2は数値を示しており、0<AC1<AC2である。アクセル操作量が所定値AC1(例えば70%)以下であるときには低減比率raはゼロである。すなわち、アクセル操作量が低いときにはトルク低減量がゼロとなる。また、アクセル操作量が所定値AC2(例えば90%)以上であるときには低減比率raは1である。アクセル操作量が所定値AC1とAC2との間であるときは、低減比率raは比例計算により算出される。また、車速による低減比率rvは、図15(b)に示す低減比率算出テーブルから算出される。図15(b)のテーブルでは、VL1,VL2は数値を示しており、0<VL1<VL2である。車速が所定値VL1以下であるときには低減比率rvはゼロである。すなわち、車速が低いときにはトルク低減量がゼロとなる。また、車速が所定値VL2以上であるときには低減比率rvは1である。車速がVL1とVL2との間であるときは、低減比率rvは比例計算により算出される。このような低アクセル低速時低減比率が用いられることによって、低車速からの加速を向上させることができる。
【0086】
低負荷条件が「積荷前進+変速操作部材の位置が第2速」又は「積荷後進」である場合には、第16ステップS16から第18ステップS18において、上記とは異なる方法で第2トルク低減値が算出される。
【0087】
まず、第16ステップS16で、第1算出値C1が以下の式(4)により算出される
C1=(A1+B)×R2・・・(4)
第1トルク低減値A1、トルク低減補正値Bの算出方法は上述のとおりである。R2は、積荷時低減比率である。積荷時低減比率R2は、エンジントルク(トルク上限値)から後述する作業機ポンプ推定トルクを差し引いた値よりもトルク低減量を大きくしてもオペレータが違和感を感じない場合を想定して設定される。例えば、積荷時低減比率R2は、0より大きく1より小さい値であり、例えば「0.4」などの値が設定される。積荷時低減比率R2は、作業機ポンプ13の推定出力トルクに対応する低減比率マップから算出される。
【0088】
第17ステップS17で、第2算出値C2が以下の式(5)により算出される
C2=A1+B−T1+T2・・・(5)
第1トルク低減値A1、トルク低減補正値Bの算出方法は上述のとおりである。T1は、作業機ポンプ推定トルクである。作業機ポンプ推定トルクT1は、作業機ポンプ13を駆動するために必要なトルクである。作業機ポンプ推定トルクT1は、作業機ポンプ13の吐出容量と第1油圧センサ94によって検出された作業機ポンプ13の圧力の積に基づいて作業機ポンプ推定トルクT1として算出される。T2は、作業機ポンプ13の中立出力トルクである。すなわち、T2は、ブーム操作部材83a及びバケット操作部材84aが操作されていない中立状態での作業機ポンプ13を駆動するために必要なトルクである。なお、上記の式(5)では、作業機ポンプのトルクを考慮したが,ステアリングポンプ12やその他の油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプの駆動トルクも考慮して第2算出値C2が算出されてもよい。
【0089】
第18ステップS18で、第1算出値C1と第2算出値C2とのうち大きい方が第2トルク低減値A2として選択される。そして、第15ステップS15で上述した式(3)によりトルク低減値Dが算出される。
【0090】
以上の図4に示す第1ステップS1から第9ステップS9の処理、及び、図7に示す第11ステップS11から第18ステップS18の処理は、エンジン21が駆動されている間、繰り返し行われる。
【0091】
本実施形態に係る作業車両では、低負荷条件が満たされているときには、トルク上限値が、低負荷条件が満たされていないときよりも低減される。これにより、燃費が低減する。また、エンジン回転数と車速との変化に応じてトルク低減量が変化する。従って、予め設定された量だけ一律にトルク上限値が低減されるのではなく、エンジン回転数及び車速等の変化に応じて、低減量が連続的に変化する。このため、エンジントルクの急激な変化が抑えられる。これにより、操作性の低下が抑えられる。また、各低負荷条件に対応したトルク低減量テーブルが用意されているので、トルク低減量は低負荷条件に応じて変化する。従って、車両の低負荷条件に応じた適切なトルク低減量を設定することができる。これにより、各低負荷条件において、オペレータに操作性の低下を感じさせない範囲で、できるだけエンジントルクを低減させることができる。
【0092】
例えば、作業車両1がいわゆるVシェープ作業を行っているときのエンジントルク低減制御について説明する。Vシェープ作業とは、図16に示すように、作業車両1が、土砂などの荷物100を作業機3によって持ち上げ、ダンプトラックなどの積み込み位置200に積み込む作業である。Vシェープ作業が行われるときは、比較的近距離での移動が繰り返されるので、変速操作部材85aは第2速位置に設定される。まず、作業車両1は、荷物100に向かって移動する。このとき作業局面は「空荷前進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「空荷前進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1が荷物100に突っ込んでバケット7に荷物100を積み込んで持ち上げる。このとき作業局面は「掘削」である。このため、エンジントルクは低減されない。次に、作業車両1は、バケット7に荷物100を載せた状態で後退する。このとき、作業局面は「積荷後進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第16ステップS16から第18ステップS18、及び第15ステップS15の処理により、「積荷後進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを後進位置から前進位置に切り換える。このとき、作業車両1の進行方向が後進から前進に切り換わるまでの間は、作業局面は「シャトル」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「シャトルテーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1がバケット7に荷物100を載せた状態で、積み込み位置200に向かって前進する。このとき、作業局面は、積荷前進である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第16ステップS16から第18ステップS18、及び第15ステップS15の処理により、「積荷前進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、作業車両1が積み込み位置200の近くに位置している状態で、オペレータがバケット操作部材84aを操作して、バケット7上の荷物100を積み込み位置200に降ろす。このとき、「排土」の低負荷条件が満たされる。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「排土テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを前進位置から後進位置に切り換え、作業車両1は、後進して積み込み位置200から離れる。このとき、作業局面は「空荷後進」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「空荷後進テーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。次に、オペレータはFR操作部材86aを後進位置から前進位置に切り換える。このとき、作業車両1の進行方向が後進から前進に切り換わるまでの間は、作業局面は「シャトル」である。このため、図7の第11ステップS11から第13ステップS13、第14ステップS14、及び第15ステップS15の処理により、「シャトルテーブル」に基づいてエンジントルクが低減される。以上の動作が繰り返される。
【0093】
また、低負荷条件が満たされても、各テーブルにおいて、エンジン回転数が所定回転数以下であるときには、トルク低減量がゼロに設定されている。また、所定回転数は、トルク低減量テーブル毎にそれぞれ設定されているので、低負荷条件が変わると変化する。このため、オペレータに操作性の低下を感じさせない範囲で低負荷条件ごとにできるだけエンジントルクを低減させることができる。また、車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件は、作業局面を含んでいる。このため、所定回転数は、低負荷条件に代えて、作業局面に応じて変化するようにしてもよい。
【0094】
トルク低減補正値は、アクセル操作量が大きいほど小さい。すなわち、アクセル操作量が小さいほど、トルク低減補正値は大きい。従って、オペレータがアクセルを大きく操作しているときには、トルク低減量は小さな値に設定される。オペレータがアクセルを大きく操作しているときは、オペレータが大きな出力を望んでいる状態であるので、トルク低減量が小さく設定されることにより、オペレータが操作性の低下を感じることを抑えることができる。また、オペレータがアクセルを小さく操作しているときには、トルク低減量は大きな値に設定される。オペレータがアクセルを小さく操作しているときは、オペレータが大きな出力を望んでいない状態であるので、トルク低減量が大きく設定されても、オペレータが操作性の低下を感じる恐れは少ない。このため、オペレータに操作性の低下を感じさせずに、燃費を向上させることができる。
【0095】
図8(b)及び図8(c)のトルク低減量テーブルに示されているように、速度がVmaxではトルク低減量はゼロである。このため、高速走行時に走行性能が低下することが抑えられる。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0097】
例えば、車速に代えて、車両の加速度に基づいてトルク低減量が算出されてもよい。すなわち、図17に示すように、トルク低減量テーブルは、エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量との関係を定めるものであってもよい。図17(a),(b),(c)に示すテーブルは、それぞれ異なる低負荷条件で用いられるトルク低減量テーブルである。図17(a),(b),(c)において、VA1〜VAmax、N21〜N26,a211〜a253、b211〜b255、c211〜c255は、数値を示している。VA1〜VAmaxは車両の加速度であり、0<VA1<VA2<VA3<VA4<VAmaxである。また、N21〜N26はエンジン回転数であり、0<N21<N22<N23<N24<N25<N26である。a211〜a253、b211〜b255、c211〜c255はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。このように、各テーブルのトルク低減量は、車両の加速度及びエンジン回転数の変化に応じて変化する。また、各テーブルの車両の加速度、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及び車両の加速度が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0098】
或いは、車速に代えて、エンジン回転数の加速度に基づいてトルク低減量が算出されてもよい。すなわち、図18に示すように、トルク低減量テーブルは、エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量との関係を定めるものであってもよい。図18(a),(b),(c)に示すテーブルは、それぞれ異なる低負荷条件で用いられるトルク低減量テーブルである。図18(a),(b),(c)において、EA1〜EAmax、N31〜N36,a311〜a353、b311〜b355、c311〜c355は、数値を示している。EA1〜EAmaxはエンジン回転数の加速度であり、0<EA1<EA2<EA3<EA4<EAmaxである。また、N31〜N36はエンジン回転数であり、0<N31<N32<N33<N34<N35<N36である。a311〜a353、b311〜b355、c311〜c355はトルク低減量であり、ゼロより大きい値を示している。例えば、エンジン回転数がN32であり、エンジン回転数の加速度がEA1であるときには、図18(a)のテーブルによれば、低減量はゼロにされる。また、エンジン回転数が同じN32であるが、エンジン回転数の加速度がEA1より大きいEA3であるときには、図18(a)のテーブルによれば、低減量はa311にされる。また、上記と同様にエンジン回転数がN32であり、エンジン回転数の加速度がEA1であっても、図18(b)のテーブルによれば、低減量はb311とされる。このように、各テーブルのトルク低減量は、エンジン回転数の加速度及びエンジン回転数の変化に応じて変化する。また、各テーブルのエンジン回転数の加速度、エンジン回転数、トルク低減量の関係はそれぞれ異なっている。従って、トルク低減量は、エンジン回転数及びエンジン回転数の加速度が同じであっても、低負荷条件に応じて変化する。
【0099】
また、トルク低減量が車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とのうち、いずれに基づいて算出されるかは、低負荷条件ごとに異なってもよい。例えば、第1の低負荷条件では「エンジン回転数と車速とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられており、第2の低負荷条件では「エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられており、第3の低負荷条件では「エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルが用いられてもよい。
【0100】
また、1つの低負荷条件に、車速と車両の加速度とエンジン回転数の加速度とが異なっている複数のトルク低減量テーブルが設定されており、これらのトルク低減量テーブルから最も大きいトルク低減量が選択されてもよい。例えば、1つの低負荷条件に「エンジン回転数と車速とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルと「エンジン回転数と車両の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルと「エンジン回転数とエンジン回転数の加速度とトルク低減量」との関係を定めるトルク低減量テーブルの3つのトルク低減量テーブルが設定されており、これらのトルク低減量テーブルから現在の車両の状態において最も大きいトルク低減量が選択されてもよい。
【0101】
なお、エンジン回転数の加速度とは、エンジン回転数の単位時間当たりの変化量を意味する。エンジン回転数の加速度は、加速度を検出するセンサにより検出されてもよい。或いは、エンジン回転数の加速度は、エンジン回転数センサ91が検出したエンジン回転数から制御部10が算出してもよい。また、トルク低減量はテーブルによらず計算式により算出されてもよい。また、図17(a)−(c)において(a)のN21〜N26、(b)のN21〜N26、(c)のN21〜N26は同じ符号としたが、同じ値でなくてもよい。図18(a)−(c)のN31〜N36も同様に同じ値でなくてもよい。
【0102】
上記の実施形態では、補正エンジン回転数が用いられることにより、アクセル操作量が100%のときのトルク低減量テーブルから、現在のアクセル操作量に対応するトルク低減量が求められている。これにより、アクセル操作量が100%のときのエンジントルクカーブから、アクセル操作量が100%未満のときに対応するトルク低減量を算出することができる。ただし、アクセル操作量に応じたトルク低減量を算出する方法は、上記のように補正エンジン回転数を用いたものに限られない。アクセル操作量ごとに複数のトルク低減量テーブルが制御部10に記憶され、これらのテーブルからトルク低減量が求められてもよい。
【0103】
上記の実施形態では、図4のフローチャートの第10ステップS10において、トルク低減量がゼロに設定されている。しかし、トルク低減量は必ずしもゼロでなくてもよい。
【0104】
低負荷条件は、上述したものと異なる低負荷条件の判定が行われてもよい。作業局面の判別も、上述したものと異なる作業局面の判別が行われてもよい。上述したトルク低減量テーブルとは異なるトルク低減量テーブルに基づいてトルク低減量が算出されてもよい。例えば、トランスミッション26の速度段が低負荷条件に含まれてもよい。そして、トルク低減量テーブルの車速Vmaxが各速度段に対応した最高車速に設定されてもよい。
【0105】
操作部材の形態は、上記で例示したものに限られない。例えば、レバーやペダルに限らず、スライド型或いはダイヤル型のスイッチなどの他の操作部材が用いられてもよい。
【0106】
上記の実施形態に係る作業車両1では、第1制御部10aと第2制御部10bとが別に設けられているが、一体に設けられてもよい。例えば、1つのコンピュータによって第1制御部10aと第2制御部10bとの機能が実現されてもよい。逆に、第1制御部10a又は第2制御部10bの機能が複数のコンピュータによって分担されてもよい。
【0107】
また、本発明が適用される作業車両は上記のものに限られない。ホイールローダ以外の作業車両にも本発明を適用することができる。また、本発明は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの機械式の無段変速装置(CVT:Continuously Variable Transmission)装置、あるいは、電気式無段変速装置を備える作業車両に適用されてもよい。例えば、図19に示すように、HSTを備える作業車両(以下、「HST型作業車両」と呼ぶ)では、エンジン21からの駆動力により走行用油圧ポンプ41を駆動し、走行用油圧ポンプ41から吐出された作動油が走行回路42を介して油圧モータ43に供給される。これにより油圧モータ43が駆動され、油圧モータ43の回転力により前輪4a及び後輪4bが駆動される。油圧モータ43に供給される作動油の圧力(「走行回路油圧」とよぶ)は、走行回路油圧センサ44によって検出される。また、第2制御部10bからの制御信号により走行用油圧ポンプ41の傾転角を調整するポンプ容量制御部45が備えられている。第2制御部10bは、ポンプ容量制御部45を制御することにより、走行用油圧ポンプ41の容量を電気的に制御することができる。また、第2制御部10bからの制御信号により油圧モータ43の傾転角を調整するモータ容量制御部46が備えられている。第2制御部10bは、モータ容量制御部46を制御することにより、油圧モータ43の容量を電気的に制御することができる。なお、図19では、図2と共通の構成には同じ符号が付されている。
【0108】
第2制御部10bは、エンジン回転数センサ91および走行回路油圧センサ44からの出力信号を処理して、ポンプ容量の指令信号をポンプ容量制御部45に出力する。ここでは、第2制御部10bは、第2制御部10bに記憶されているポンプ容量−走行回路油圧特性データを参照して、エンジン回転数の値と走行回路油圧の値とからポンプ容量を設定し、この設定したポンプ容量に対応するポンプ容量指令値をポンプ容量制御部45に出力する。図20に、ポンプ容量−走行回路油圧特性データの一例を示す。図中の実線L11および破線L12〜L15は、エンジン回転数に応じて変更されるポンプ容量−走行回路油圧特性を示すラインである。ポンプ容量制御部45は、入力されたポンプ容量指令値に基づいて走行用油圧ポンプ41の傾転角を変更する。これにより、ポンプ容量がエンジン回転数に対応したものに制御される。
【0109】
また、第2制御部10bは、エンジン回転数センサ91および走行回路油圧センサ44からの出力信号を処理して、モータ容量の指令信号をモータ容量制御部46に出力する。ここでは、第2制御部10bは、第2制御部10bに記憶されているモータ容量−走行回路油圧特性データを参照して、エンジン回転数の値と走行回路油圧の値とからモータ容量を設定し、この設定したモータ容量に対応する傾転角の変更指令をモータ容量制御部46に出力する。図21に、モータ容量−走行回路油圧特性データの一例を示す。図中の実線L21は、エンジン回転数がある値の状態における、走行回路油圧に対する傾転角を定めたラインである。走行回路油圧がある一定の値以下の場合までは傾転角は最小(Min)であり、その後、走行回路油圧の上昇に伴って傾転角も次第に大きくなり(実線の傾斜部分L22)、傾転角が最大(Max)となった後は、油圧が上昇しても傾転角は最大傾転角Maxを維持する。上記実線の傾斜部分L22は、エンジン回転数によって上下するように設定されている。すなわち、エンジン回転数が低ければ、走行回路油圧がより低い状態から傾転角が大きくなり、走行回路油圧がより低い状態で最大傾転角に達するように制御される(図21における下側の破線の傾斜部分L23参照)。反対にエンジン回転数が高ければ、走行回路油圧がより高くなるまで最小傾転角Minを維持し、走行回路油圧がより高い状態で最大傾転角Maxに達するように制御される(図21における上側の破線の傾斜部分L24参照)。
【0110】
また、このHST型作業車両は、上記の実施形態に係る作業車両1と同様の変速操作部材85aを備えている。第2制御部10bは、変速操作部材85aによって選択される各速度段に対応する最高車速を記憶している。第2制御部10bは、車速が、選択された速度段での最高車速を超えないように、モータ容量制御部46を制御する。これにより、上記の実施形態に係る作業車両と同様の変速制御が行われる。また、このHST型作業車両では、上記の実施形態に係る作業車両と同様のエンジン21の制御が第1制御部10aによって行われる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、操作性の低下を抑えると共に、燃費低減の効果を向上させることができる効果を有する。このため、本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0112】
21 エンジン
22 走行装置
3 作業機
91 エンジン回転数センサ(第1検出部)
92 T/M出力回転数センサ(第2検出部)
10 制御部
81a アクセル操作部材
81b アクセル操作検出装置(第3検出部)
86a FR操作部材(前後進切換操作部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンからの駆動力により車両を走行させる走行装置と、
前記エンジンからの駆動力により駆動される作業機と、
エンジン回転数を検出する第1検出部と、
車速と、車両の加速度と、前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つを検出する第2検出部と、
車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記低負荷条件が満たされているときには、前記エンジンの出力トルクの上限値が、前記低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、前記エンジンを制御し、
前記第2検出部によって検出された前記車速と前記車両の加速度と前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、前記第1検出部によって検出された前記エンジン回転数との変化に応じて、前記低負荷条件が満たされているときの前記エンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる、
作業車両。
【請求項2】
前記低減量は、前記低負荷条件に応じて変化する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジン回転数が所定回転数より大きいときに、前記エンジンの出力トルクの上限値を低減させ、
前記所定回転数は、前記低負荷条件に応じて変化する、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
オペレータによって操作されるアクセル操作部材と、
前記アクセル操作部材の操作量を検出する第3検出部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第3検出部によって検出された前記アクセル操作部材の操作量を考慮して前記低減量を決定する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記第2検出部は、前記車速を検出し、
前記車速が所定速度以上であるときには、前記制御部は、前記車速が前記所定速度より小さいときよりも前記低減量を小さくする、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記第2検出部は、前記車速を検出し、
前記車速が第1の所定速度より小さいとき、及び、前記車速が前記第1の所定速度より大きい第2の所定速度より大きいときには、前記制御部は、前記車速が前記第1の所定速度以上であり前記第2の所定速度以下であるときよりも、前記低減量を小さくする、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記走行装置及び前記作業機の作動状態から車両の作業局面を判別し、 前記低負荷条件が満たされているか否かを前記作業局面に基づいて判定する、
請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記低負荷条件は、前記作業局面が、前記作業機に荷物が積まれていない空荷状態であることを含む、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
車両の前進と後進との切換を操作するための前後進切換操作部材をさらに備え、
前記低負荷条件は、前記作業局面が、前記前後進切換操作部材によって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なっているシャトル状態であることを含む、
請求項7または8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記制御部は、車両が登坂走行を行っているか否かを判定し、車両が登坂走行を行っている場合には、前記制御部は前記低減量を小さくする、
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項11】
エンジンと、前記エンジンからの駆動力により車両を走行させる走行装置と、前記エンジンからの駆動力により駆動される作業機と、を備える作業車両の制御方法であって、
エンジン回転数が検出されるステップと、
車速と、車両の加速度と、前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つが検出されるステップと、
車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かが判定されるステップと、
前記低負荷条件が満たされるときには、前記エンジンの出力トルクの上限値が、前記低負荷条件が満たされないときよりも低減するように、前記エンジンが制御されるステップと、
検出された前記車速と前記車両の加速度と前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出された前記エンジン回転数との変化に応じて、前記低負荷条件が満たされているときの前記エンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させるステップと、
を備える作業車両の制御方法。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンからの駆動力により車両を走行させる走行装置と、
前記エンジンからの駆動力により駆動される作業機と、
エンジン回転数を検出する第1検出部と、
車速と、車両の加速度と、前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つを検出する第2検出部と、
車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かを判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記低負荷条件が満たされているときには、前記エンジンの出力トルクの上限値が、前記低負荷条件が満たされていないときよりも低減するように、前記エンジンを制御し、
前記第2検出部によって検出された前記車速と前記車両の加速度と前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、前記第1検出部によって検出された前記エンジン回転数との変化に応じて、前記低負荷条件が満たされているときの前記エンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させる、
作業車両。
【請求項2】
前記低減量は、前記低負荷条件に応じて変化する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジン回転数が所定回転数より大きいときに、前記エンジンの出力トルクの上限値を低減させ、
前記所定回転数は、前記低負荷条件に応じて変化する、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
オペレータによって操作されるアクセル操作部材と、
前記アクセル操作部材の操作量を検出する第3検出部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第3検出部によって検出された前記アクセル操作部材の操作量を考慮して前記低減量を決定する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記第2検出部は、前記車速を検出し、
前記車速が所定速度以上であるときには、前記制御部は、前記車速が前記所定速度より小さいときよりも前記低減量を小さくする、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記第2検出部は、前記車速を検出し、
前記車速が第1の所定速度より小さいとき、及び、前記車速が前記第1の所定速度より大きい第2の所定速度より大きいときには、前記制御部は、前記車速が前記第1の所定速度以上であり前記第2の所定速度以下であるときよりも、前記低減量を小さくする、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記走行装置及び前記作業機の作動状態から車両の作業局面を判別し、 前記低負荷条件が満たされているか否かを前記作業局面に基づいて判定する、
請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記低負荷条件は、前記作業局面が、前記作業機に荷物が積まれていない空荷状態であることを含む、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
車両の前進と後進との切換を操作するための前後進切換操作部材をさらに備え、
前記低負荷条件は、前記作業局面が、前記前後進切換操作部材によって指示された進行方向と車両の進行方向とが異なっているシャトル状態であることを含む、
請求項7または8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記制御部は、車両が登坂走行を行っているか否かを判定し、車両が登坂走行を行っている場合には、前記制御部は前記低減量を小さくする、
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項11】
エンジンと、前記エンジンからの駆動力により車両を走行させる走行装置と、前記エンジンからの駆動力により駆動される作業機と、を備える作業車両の制御方法であって、
エンジン回転数が検出されるステップと、
車速と、車両の加速度と、前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つが検出されるステップと、
車両が低負荷状態であることを示す低負荷条件が満たされているか否かが判定されるステップと、
前記低負荷条件が満たされるときには、前記エンジンの出力トルクの上限値が、前記低負荷条件が満たされないときよりも低減するように、前記エンジンが制御されるステップと、
検出された前記車速と前記車両の加速度と前記エンジン回転数の加速度とのうちの少なくとも1つと、検出された前記エンジン回転数との変化に応じて、前記低負荷条件が満たされているときの前記エンジンの出力トルクの上限値の低減量を変化させるステップと、
を備える作業車両の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−236759(P2011−236759A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107115(P2010−107115)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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