説明

使用のための容器に小さい医薬粒子を沈殿させるための方法

液体に分散または溶解させた物質(例えば、医薬品)の疎液性の沈殿のための商業的に実行可能な方法が提供され、ここにおいて、それぞれ所定量(84)の溶液または分散液を含む複数の個々の開口した容器(22)は、共通の加圧可能なチャンバー(12)内で処理される。このプロセスにおいて、望ましいほぼ超臨界的な、または、超臨界的な温度および圧力条件は、選択された貧溶媒のガス(例えば二酸化炭素)に対して確立され、さらに、超音波装置(14)は、チャンバー(12)内で高エネルギーの超音波が発生するように作動する。これにより、容器(22)内で貧溶媒と液体(溶液または分散液)との強い混合が生じ、その結果として溶媒が除去され、物質が沈殿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ほぼ超臨界的な、または、超臨界の貧溶媒のガス(例えば二酸化炭素)を用いて、複数の容器内で物質(具体的には医薬品)を同時に沈殿させるための、改善された商業的に実行可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ほぼ超臨界的な、または、超臨界の貧溶媒を用いて医薬品などの粒子を沈殿させるための大幅に改善された方法を説明している。これらの方法は通常、噴霧技術を含んでおり、ここにおいて相間物質の移動速度は、極めて小さい沈殿粒子が生成するように、分散液の小さい液滴と貧溶媒ガスとの間で最大化される。またこの特許は、容器から容器への医薬品の移動を必要としないでも、医薬品を製造し、患者に投与することができることも教示している。すなわち、結果として密封され、後で所定用量の医薬品を使用のための容器から取り出すことができる最終的な使用のための容器中で、分散液/貧溶媒の沈殿を行うことである。この技術は、一般的に、バッチまたはセミバッチベースでの医薬品の疎液性の沈殿を含む。しかしながら、このプロセスに関して教示している上記方法は、一方の端がガラスフリットで覆われた長いガラスチューブの使用を含む。このようなフリット化したチューブは、全ての医薬品の商業的な生産に適しているとは限らず、従って、この特許文献1で説明されている特定の単一のバイアル技術は、限定的な商業的可能性しか有さない。
【0003】
また特許文献2は、超臨界流体の貧溶媒を用いたナノ粒子の形成にも関する。このケースにおいて、望ましい沈殿させようとする物質を含む分散液を超音波で振動する表面に適用するか、または、それに極めて近接させて、小さい液滴を生成させる。また、望ましい粒子を沈殿させるために、ほぼ超臨界的な条件または超臨界条件の貧溶媒も、上記の振動する表面に隣接させて適用される。ここでも、超音波で振動する表面と物質を含む分散液とを直接的に接触させるか、または、近接させて接触させる必要があることから、このプロセスを商業規模で効果的に用いることができないことがわかる。これはなぜなら、容器を個々に処理する必要があると予想されるため、または、それぞれの容器ごとに振動を生じる表面を提供する必要があると予想されるためである。いずれのケースにおいても、コスト、および、このようなシステムの複雑さのために、プロセスの実用性が相当に損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,833,891号
【特許文献2】米国特許第6,620,351号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記で概説した問題を克服し、大幅に改善された、且つ、商業的に実行可能な方法を提供するものであり、それにより、ほぼ超臨界的な条件、または、超臨界条件で貧溶媒のガスを用いて、複数の個別の容器またはバイアル内で液体に分散または溶解させた物質を同時に沈殿させることが可能である。本方法は、米国特許第5,833,891号(参照により本発明に含める)で開示された方法に類似している。本発明の方法は、一般的に、共通の加圧可能なチャンバー内に複数の容器を置くことを含み、ここにおいて各容器は、少なくとも部分的にチャンバー内の雰囲気に対して開口しており、さらに、所定量の沈殿させようとする物質を含む液体(溶液または分散液)を有する。続いてこのチャンバーを加熱し、容器をその中に入れた状態で加圧する(ここにおいて、貧溶媒のガスをこのチャンバーに導入する工程を含む)。チャンバー内で適切な温度および圧力条件(一般的に、選択された貧溶媒にとってほぼ超臨界、または、超臨界条件)が生じたら、貧溶媒内で超音波エネルギー波を発生させ、それにより、貧溶媒を液体に急速に混合して溶解させ、上記物質を小さい粒子として沈殿させる。
【0006】
一実施態様において、溶媒の除去/沈殿工程中に、各容器は、それらの開口部内に緩くはめ込まれたストッパーを有する。その後、それぞれのストッパーを容器の開口部に完全に取り付けることによってそれぞれのバルブを密封する。これは、好ましくは、チャンバー内に設置されたストッパー装置によって達成される。
【0007】
上述したように、チャンバー内の温度および圧力条件は、貧溶媒にとってほぼ超臨界または超臨界条件であることが好ましく、一般的には、貧溶媒にとって約0.7〜1.4Tc、および、約0.2〜7Pcである。より一般的には、圧力は、所定のチャンバー温度に応じて2Pc未満と予想される。個々の容器から液体がオーバーフローしないようにしながら、貧溶媒と溶液または分散液との最良な混合を達成するのに最適な温度および圧力条件を確認するために、好ましくは、溶液または分散液の組成がわかれば、簡単な実験を行ってもよい。
【0008】
好ましい貧溶媒は、二酸化炭素、プロパン、ブタン、エタン、イソブタン、亜酸化窒素、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、キセノン、および、それらの混合物からなる群より選択される。一般的に、最も好ましい貧溶媒の一つは、二酸化炭素である。本発明で取り扱われる組成物は、好ましくは、溶媒と沈殿させようとする物質を含む溶質とで構成される真溶液である。あるいは、このような組成物は、沈殿させようとする物質を含む分散剤を有する分散剤であってもよい。一般的には、このような溶液または分散液は、少なくとも5質量%の溶質または分散剤、より好ましくは少なくとも約50質量%の溶質または分散剤、最も好ましくは少なくとも約90%の溶質または分散剤を含むと予想される。このような溶液または分散液はまた、その他の助剤成分を含んでいてもよく、例えばアジュバント(医薬品の場合)、賦形剤、表面活性剤、増量剤、結合剤などを含んでいてもよい。
【0009】
超音波エネルギー波は、好ましくは、個々の容器から比較的離れた位置にある、チャンバー内に位置する超音波プローブの使用によって発生させる。たとえ容器が部分的に閉じられている場合であっても、超音波は容器に入って、その中の液体を混合し、粒子を沈殿させることができることが発見された。このようにして沈殿した物質は、様々な形態であってもよく、例えば、上記物質の純粋な結晶性もしくは非結晶性粒子、または、上記物質を1種またはそれ以上の助剤成分と共に含むケークの形態であり得る。
【0010】
一実施態様において、得られた物質は、約0.1〜10μmの平均直径、より好ましくは約0.6μm以下の平均直径を有する粒子の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明において有用な沈殿装置の概略図である。
【図2】図1の装置の一部を形成する圧力容器の概略図であり、それぞれ中に所定量の分散剤(沈殿させようとする物質を含む)を含む複数の開口した容器を図説する。
【図3】図2に類似した図であり、容器の中で粒子を沈殿させた後、完全に閉じた状態の容器を図説するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これらの図面をまずは図1からより詳細に参照すると、本発明に関して有用な典型的な沈殿装置は、一般的には10という数字で示される。大まかに言えば、装置10は、超音波変換装置14を備えた高圧チャンバー12、チャンバー12に貧溶媒を導入するためのシステム16、および、試験システム18を含む。
【0013】
一実施態様において、チャンバー12は、2つの観察窓(示さず)を有する適切な体積(例えば6L)の直立の金属製の容器である。またこのチャンバーは、複数の容器またはバイアル22を固定するように適合させた内部の棚20も含む。加えて、ストッパー機構24が棚20の上に設置されるが、その理由は以下で述べる。装置14は、プローブ28がチャンバー12内に操作可能に連結された外部の超音波変換器26を含む。
【0014】
貧溶媒系16は、ライン32を介した貧溶媒のガスの供給が維持されるように設計されたガスシリンダー30を含み、このライン32は、バルブ34および36、ならびにライン中に介在する水分トラップ38を有する。示した通り、ライン32は、チャンバー12から出ている排気管40と交差する。バイパスライン42は、バルブ34からチャンバー12の底部に伸長し、送出ライン44は、バルブ36からブースターポンプ46に伸長する;さらにライン44は、フィルター48、および、圧力計50も備えている。ポンプ46からの配出物は、ライン52を介して送り出され、このライン52は、その中に4.5Lのサージタンク54、バルブ56、および、温度および圧力計58および60を有する。示した通り、ライン52は、貧溶媒のガスをチャンバーに送り出すために、チャンバー12の底面に連結されている。また、中にバルブ64を有する送気管62も、ポンプ46と連結されている。
【0015】
安全弁66は、排気管40と操作可能に連結されており、さらに排気口68を有する。圧力計および温度計70および72はそれぞれ、排気管40およびチャンバー12と連結されている。
【0016】
システム18は任意であるが、中にバルブ78を有するライン76と連結されたガスシリンダー74を含む。シリンダー74は、通常、窒素の供給を維持するものであり、この窒素は、それらを実際に使用する前に、チャンバー12および関連する構成要素に漏れがあるかどうかを試験するために用いられる。
【0017】
容器22は、全体的に従来型のものであるが、説明のために、開口した開口部80、および、容器の内部がチャンバー12内の雰囲気と通じるように開口部80内に緩くはめ込まれたストッパー82と共に示した。示した通り、各バルブは、中に沈殿させようとする物質を有する所定量84の液体(溶液または分散液)を含む。沈殿後(図3)、容器22それぞれの中に所定量86の沈殿した物質が存在する。
【0018】
ストッパー装置24を模式的に図説したが、これは、それぞれ各ストッパー82の上に設置された一連の連動したレシプロ式のプランジャー90を有する共通のヘッダー88を含む。図3で説明されているように、プランジャー90は、個々のストッパー82にそれらが容器の開口部80内に完全に着座するように操作することができる。
【0019】
装置10の使用中に、まずそれらを制御器と連結された一般的な加熱用タップ(示さず)を用いて特定の温度に加熱する。続いてシステム全体を、窒素システム18を用いて漏れに関して試験する。試験の後、それぞれ所定量84の液体(溶液または分散液)を有する複数の容器22を、個々のプランジャー90の下の棚20の上に置く。図2で示されるように、容器22は、容器内部がチャンバーの雰囲気と通じるように、部分的に閉じられる。この時点で、チャンバー12は、シリンダー30から容器16内へ貧溶媒のガスを導入することによって加圧される。これは、バルブ34、36および56を開くことによって、フィルター48、ブースターポンプ46およびサージタンク54を通って容器の内部に貧溶媒を流動させることを含む。貧溶媒のガスは、導管40、ならびにライン32、44および52を通ってリサイクルされ、水分はトラップ38によって除去される。
【0020】
容器12が完全に加圧され、その中の温度および圧力条件が、用いられる貧溶媒にとって望ましい安定化されたレベルに達したら、チャンバー12中の貧溶媒内で超音波エネルギー波を発生させるために、装置14を作動させる。これらのエネルギー波は、チャンバー内部へ伝播し、緩くはめ込まれたストッパー82を通り越して個々の容器22内へ通過する。それにより貧溶媒とそれぞれの容器20内の溶液または分散液とが強く混合され、溶液または分散液が過飽和になり、溶質または分散剤が貧溶媒内に選択的に抽出される。これにより、容器内の物質の沈殿が生じる。沈殿した物質は、様々な形態であってよく、例えば、結晶性形態の、または、非結晶性形態の小さい粒子、および、無定形の物質であり得る。助剤成分が用いられる場合、これらは通常、活性成分と共に沈殿する。この工程中に、温度および圧力条件は、結果的に物質の損失を招く容器22からの液体のオーバーフローの可能性がなくなるように、慎重に維持される。
【0021】
物質が完全に沈殿した後、装置14を60〜90分間稼働させたままにし、その際、チャンバー12を介して貧溶媒を流し、排気口68を介してガス抜きする。これにより、残留した全ての液体(溶媒または分散媒)が容器から除去されることを確実にする。その後、高圧の貧溶媒をチャンバー12から排気口68を介して排出し、容器を冷却して周囲温度にする。この時点で、ストッパー装置24を用いて、それぞれのバルブ82(図3)を完全に閉じてプロセスを完了させる。望ましい場合、続いて上記システムを、バルブ34をライン42に切り換え、新しい流体(例えばCO2またはその他の不活性ガス、)をチャンバー12に導入することによってフラッシングしてもよい。好ましくは、このような流体は、滅菌されている。
【0022】
以下の実施例で、本発明に係る物質の粒子を沈殿させる好ましい技術を説明する。しかしながら、これらの実施例は例証として示されたものであり、その中には本発明の全体の範囲に限定を与えると解釈される何物もないことは勿論である。
【0023】
以下の実施例1〜3において、超臨界CO2貧溶媒、および、超音波エネルギーを用いたアセトアミノフェン、イブプロフェン、ヒドロコルチゾン、フェニトイン、および、インスリンの疎液性の沈殿を、図1で説明したタイプの装置を用いて調査した。
【0024】
沈殿装置10は、チャンバー内部の上部に取り付けた超音波変換装置14とともに高圧の6Lチャンバー12を含む。プロセスの目視検査が可能になるように、チャンバー壁に2つの観察窓を備えた。10個までの小さい容器22を保持できるようなサイズのプラットフォーム20を、チャンバーの底部(ほぼ観察窓の底部の位置)に設置した。4.5Lのサージタンク54を用いて、CO2ポンプ46からのCO2フローの変動を制御し、乾燥剤を含む水分トラップ38を用いて、システムからの水分を維持した。このシステムの最大許容圧力は、約70℃以下の温度で約2,000psiであった。
【0025】
典型的な凍結乾燥実験において、それぞれ溶液中に薬物を含む多数の容器22を、チャンバー12内のプラットフォーム20に取り付けた。チャンバーを所定温度に加熱し、システム全体を漏れについて窒素ガス試験システム18を用いて試験した。凍結乾燥/沈殿プロセス中に、ラボビュー(LabView)プログラムソフトウェアを用いてモニターし、温度および圧力を記録した。
【0026】
窒素の漏れ試験の後、チャンバー12をCO2を用いて所定圧力に加圧した。特定の温
度および圧力の設定値が達成され、安定化したら、超音波変換装置14を作動させて、容器22内のCO2を用いて薬物溶液を強く混合した。圧力、温度および超音波エネルギーをモニターして、容器からの膨張した薬物溶液のオーバーフローを防いだ。好ましい圧力および温度値は、システムで用いられる具体的な溶媒に基づいて決定できることが見出された。薬物が沈殿するのが観察され、溶媒を高濃度のCO2相に抽出したら、システムパラメーター(超音波エネルギー、温度、圧力、CO2フロー)を追加の60〜90分間維持して、容器から残留溶媒を除去した。好ましくは、続いてチャンバー12を追加のCO2でフラッシングして、蒸発した溶媒を除去し、薬物から全ての残留溶媒を乾燥させた。次に、チャンバー12を慎重に減圧し、沈殿した薬物を含む容器を回収し、周囲温度に冷却した。以下に、具体的な実験パラメーターを示す。
【0027】
実施例1−超音波発生装置を用いた第一の疎液性の沈殿実験
様々な濃度の薬物のエタノール溶液を、以下の表に従って製造した。
【表1】

【0028】
2mLの各試験溶液を容器に移した。この容器を、チャンバー内部のプラットフォームに移した。続いてチャンバーをCO2を用いて1200psiに加圧し、チャンバーを約62〜66℃に加熱して超臨界条件を確立した。続いて超音波変換器を、約15〜70%の出力で約38分間作動させ、その時間中に薬物が沈殿するのが観察された。出力を追加の52分間を約50%に維持して、薬物から残留したエタノールを除去した。以下に結果を示す。
【表2】

【0029】
この実験から、薬物溶液の乾燥時間は、ほとんど薬物濃度に関連しておらず、たとえ関連していたとしてもほんのわずかであることが確認された。
【0030】
実施例2−超音波発生装置を用いた第二の疎液性の沈殿実験。
様々な濃度の薬物のエタノールまたはヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)溶液を、以下の表に従って製造した。
【表3】

【0031】
上記表に示された通りの様々な量の各薬物溶液を、指示された容器に移した。続いてこれらの容器をチャンバー内のプラットフォームに置いた。チャンバーをCO2を用いて1,200psiに加圧し、チャンバーを約50℃に加熱することによって、超臨界条件を確立した。超音波変換器を約15〜40%の出力で約60分間稼働させ、その時間中に薬物が沈殿するのが観察され、溶媒をCO2に蒸発させた。出力を追加の90分を約40〜50%に維持して、乾燥するまで薬物から残留溶媒を除去した。以下に結果を示す。
【表4】

【0032】
この実験から、インスリンは容易に膨張することが決定され、超音波変換器を稼働させる前でさえも多少の沈殿が観察された。アセトアミノフェンが結晶として沈殿するのが観察され、フェニトインが針状結晶として沈殿するのが観察された。
【0033】
実施例3−超音波発生装置を用いた第三の疎液性実験
様々な濃度の薬物のエタノールまたはHFIP溶液を、以下の表に従って製造した。
【表5】

【0034】
上記表に示された通りの様々な量の各薬物溶液を、指示された容器に移した。容器をチャンバー内のプラットフォーム上に移行した。チャンバーをCO2を用いて1,200p
siに加圧し、容器を約50℃に加熱して、超臨界条件を確立した。超音波発生器を、1秒間オン、2秒間オフになるようにプログラムして、薬物が完全に沈殿して溶媒が蒸発するまで出力供給を徐々に増加させた。出力供給を15%に約10分間設定し、約65分かけて20%に高め、約35分かけて24%に高め、約40分かけて28%に高め、最終的に約185分かけて30%に高め(合計で5時間30分)、プロセスを完了させた。続いて出力を追加の50分間を約40%に維持して、乾燥するまで薬物から残留溶媒を除去した。以下に結果を示す。
【表6】

【0035】
この実験によって沈殿した薬物粒子は、以前の2つの実験で生産された粒子よりも大きいサイズを有することが観察された。特に、インスリンは、実験2よりも、実験3で沈殿したほうがかなり大きいことが観察された。このことから、処理時間は粒度と互いに関係があると結論付けた。従って、処理時間が短ければ短いほど、より小さい薬物の粒度が生じる。
【0036】
以下の実施例で、従来の機械的な混合を超える本発明の有意な利点を説明する。
【0037】
実施例4−空気作動式の混合プラットフォームを用いた疎液性の沈殿
この実験において、空気作動式の振盪機を、機械的な混合によって超臨界CO2の環境中で疎液性の沈殿を起こす試みで用いた。プラットフォームを、高圧チャンバー内(ほぼ観察窓の底面の位置)に配置し、そのプラットフォーム上に薬物溶液を含む容器を置いた。圧縮空気を用いて、プラットフォームを、動きによってこぼれることなく容器の内容物が渦を巻くように水平面で振盪した。
【0038】
2つの容器をそれぞれ別々に1mLの飽和薬物溶液で充填し、容器内の混合プラットフォーム上に置いた。第一の容器には、アセトン中のフェニトインが含まれており、第二の容器には、アセトン中のヒドロコルチゾンが含まれていた。容器の温度を36〜63℃の間で変動させ、容器をCO2でほぼ超臨界/超臨界の約910〜1,220psiに加圧した。薬物を沈殿させるのに必要な振盪時間は、44時間以下であった。
【0039】
最初の実験によれば、薬物およびアセトンの飽和溶液のレベルは、約4〜5時間機械的に振盪した後でさえも実質的に同じままであることが示された。より高い温度(約48〜63℃)ではCO2と薬物溶液との間に透明な新月形のものが観察されたが、それより低い温度(約36〜42℃)では透明な新月形のものは観察されなかった。しかしながら、約42〜44時間後でさえも、より高い温度でもわずか1mLの溶媒しか蒸発しなかった。
【0040】
このことから、機械的な振盪によっては、薬物溶液/CO2の境界面において、2つの相間の強い混合を引き起こすほどの十分な撹乱を生じさせることはできず、さらに、CO2相への溶媒の拡散に関する深刻な輸送制限がないとことが結論付けられた。
【符号の説明】
【0041】
10 装置
12 容器
14 超音波変換装置
16 高圧システム
18 試験システム
20 内部の棚
22 複数の容器またはバイアル
24 ストッパー装置
28 プローブ
26 外部の超音波変換器
32、44、52、76 ライン
30 ガスシリンダー
34、36、56 バルブ
38 水分捕獲装置
40 流出ダクト
42 バイパスライン
44 送出ライン
46 ブースターポンプ
48 フィルター
50 圧力計
52 ライン
54 サージタンク
56 バルブ
58および60 温度計および圧力計
62 送気管
64 バルブ
66 安全弁
68 通気孔
70、72 圧力計および温度計
74 ガスシリンダー
78 バルブ
80 開口部
82 ストッパー
84、86 所定量
88 ヘッダー
90 プランジャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貧溶媒のガスを用いて複数の容器内の物質を同時に沈殿させる方法であって、前記方法は、複数の容器を加圧可能なチャンバー内に置く工程(ここにおいて各容器は、少なくとも部分的にチャンバー内の雰囲気に対して開口しており、さらに、その中に所定量の沈殿させようとする物質を含む液体(溶液または分散液)を有する);その中に前記容器を含む前記チャンバーを加熱および加圧する工程(ここにおいて、前記貧溶媒のガスを前記チャンバーに導入する工程を含む);前記チャンバー中の前記貧溶媒内で超音波エネルギー波を発生させて、前記容器中の前記液体を除去して前記物質を沈殿させる工程を含む、上記方法。
【請求項2】
容器はそれぞれ、液体の除去および沈殿工程中にそれらの開口部内に緩くはめ込まれたストッパーを有し、前記方法は、前記沈殿工程後に前記ストッパーそれぞれを前記容器の開口部中に完全に取り付けることによって、前記容器それぞれを密封する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
貧溶媒にとってほぼ超臨界的な条件または超臨界条件で、チャンバー内の温度および圧力条件を確立する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
条件は、貧溶媒にとって、約0.7〜1.4Tc、および、約0.2〜7Pcである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
物質が、医薬品を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
貧溶媒が、二酸化炭素、プロパン、ブタン、エタン、イソブタン、亜酸化窒素、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、キセノン、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
チャンバー内に設置された超音波プローブにエネルギーを与えることによって、前記超音波エネルギー波を発生させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
容器から液体を除去した後に、チャンバー内の圧力をほぼ大気圧に減少させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
液体の除去工程中に、容器から物質が実質的にオーバーフローしないように温度および圧力条件が維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
沈殿した物質が、約0.1〜10μmの平均直径を有する小粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
平均粒度が、約0.6μm以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物質が、医薬品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
物質が、少なくとも5質量%の液体(溶液または分散液)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
物質が、少なくとも50質量%の液体(溶液または分散液)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
超音波エネルギー波を発生させる工程の後に、且つ、容器それぞれを密封する工程の前に、前記容器を流体でフラッシングする工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
超音波エネルギー波を発生させる工程の後に、且つ、容器それぞれを密封する工程の前に、前記容器を不活性ガスでフラッシングする工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
物質が医薬品であり、溶液または分散液は、アジュバント、賦形剤、増量剤、表面活性剤、および、結合剤からなる群より選択された助剤成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
助剤成分が、医薬品と共に沈殿する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
物質が、小粒子として沈殿する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−506703(P2010−506703A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532576(P2009−532576)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/081092
【国際公開番号】WO2008/070279
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509103370)クリティテック・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】