説明

保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物

【課題】 皮膚外用剤や機能性経口組成物などの分野に幅広く応用が可能な保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤を提供する。
【解決手段】 コモチシダ属植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を含有する保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物を提供することにより、上記課題を解決することを見いだしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモチシダ属(Woodwardia)植物またはその抽出物を含有する保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚にうるおいを与える保湿成分を提供するために、様々な有効成分の配合検討がなされてきた。また、加齢、疾患、ストレス、紫外線などによるシワ、シミ、皮膚の弾力低下といった皮膚症状の要因として、乾燥、細胞機能低下、紫外線によるメラニン産生や色素沈着、真皮マトリックス成分の減少や変性、紫外線などによる細胞の酸化障害などが挙げられる。このような皮膚症状を防止・改善するために、様々な有効成分の検索および配合検討がなされてきた。特に天然由来成分は、様々な薬理作用や美容効果を有することが知られ、これまでにも数多くの植物や菌類などの抽出物の皮膚外用剤、経口組成物への応用が検討されてきた。
【0003】
例えば、皮膚の保湿効果と安全性に優れた保湿剤としてハリブキ属植物の抽出物(特許文献1参照)、皮膚の老化防止、改善作用を有する皮膚外用剤を得るために、真皮線維芽細胞の賦活あるいは増殖促進作用を有する成分としてポンカンのエッセンス(特許文献2参照)、ツリガネニンジン属植物の抽出物(特許文献3参照)、クロレラ抽出物(特許文献4参照)、ビワ抽出物(特許文献5参照)等が開示されている。抗酸化剤としてはサルオガセ科サルオガセ属植物の抽出物(特許文献6参照)等が、生体内の脂肪蓄積を抑制する成分としては、シッポゴケ科植物の抽出物(特許文献7参照)等が、美白剤としては、白鶴霊芝の抽出物(特許文献8参照)等が、抗炎症作用を有する植物エキスとして、蘇葉、カカオ及び茴香の乾燥物又はその熱水抽出エキス(特許文献9参照)、カンナ科植物の溶媒抽出物(特許文献10参照)等が、免疫賦活剤としては、ニラの種子及び/又はその抽出物(特許文献11参照)等が、それぞれすでに知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−77072号公報
【特許文献2】特開2001−131045号公報
【特許文献3】特開2000−178198号公報
【特許文献4】特開平11−335293号公報
【特許文献5】特公平5−17206号公報
【特許文献6】特開平10−182413号公報
【特許文献7】特開2005−60345号公報
【特許文献8】特開2003−89630号公報
【特許文献9】特開2003−201246号公報
【特許文献10】特開平4−270224号公報
【特許文献11】特開2008−31122公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、これまでに様々な天然由来成分が応用されている。しかし、天然由来成分の中には、未だその効果が知られていないものも数多く存在し、優れた保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果を有する有効成分の開発が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、天然由来の種々の成分について検討を行った結果、従来はその効果が知られていなかったコモチシダ属植物またはその抽出物に優れた保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果が存在することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、コモチシダ属植物より選ばれる少なくとも1種の植物またはその抽出物を含有する保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コモチシダ属植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を配合することにより、優れた効果を有する保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるコモチシダ属植物は、シシガシラ科(Blechnaceae)に属する多年草で、宮城県以南・富山県以西の本州、四国、九州に分布し、ヨーロッパやアメリカでは観賞用にされている。コモチシダ属には、アイオオカグマ(Woodwardia × intermedia H.Christ)、アイコモチシダ(Woodwardia orientalis Sw. × Woodwardia orientalis Sw. var. formosana Rosenst.)、イズコモチシダ(Woodwardia × izuensis Sa.Kurata)、オオカグマ(Woodwardia japonica (L.f.) J.Sm.)、オオギミシダ(Woodwardia harlandii Hook.)、コモチシダ(Woodwardia orientalis Sw.)、ハイコモチシダ(別名:ジョウレンシダ)(Woodwardia unigemmata (Makino) Nakai)、ハチジョウカグマ(別名:タイワンコモチシダ)(Woodwardia orientalis Sw. var. formosana Rosenst.)、トサノオオカグマ(Woodwardia japonica (L. fil.) Sm. var. latisecta Tagawa)、およびホソバオオカグマ(Woodwardia kempii Copel.)が知られている。
【0010】
本発明は、コモチシダ属植物であれば特に限定されないが、本発明の効果の点から適当なものとして、ハチジョウカグマ(別名:タイワンコモチシダ)(Woodwardia orientalis Sw. var. formosana Rosenst.)が挙げられる。
【0011】
これらコモチシダ属植物を使用する際は、その使用部位には特に制限はなく、胞子体、配偶体のいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、胞子体の全草、根、全葉、葉身、葉柄などを用いるとよい。好ましくは、葉身、葉柄などを含む全葉がよい。
【0012】
抽出の際は、植物を生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。
【0013】
抽出は、任意の抽出溶媒に所定時間浸漬して行うことができる。抽出溶媒は、必要に応じて加熱してもよい。あるいは、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌したり、抽出溶媒中でホモジナイズしたりしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は、抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。
【0014】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、好ましくは、水、エタノールがよい。これらは単独で用いられるほか、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種または2種以上の超臨界液体や亜臨界液体を用いてもよく、好ましくは、二酸化炭素がよい。
【0015】
コモチシダ属植物の上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、一定期間そのまま静置して熟成させて用いてもよいし、濃縮、乾固した物を水や極性溶媒に再度溶解して使用することもできる。あるいは、これらの生理作用を損なわない範囲で、脱色、脱臭、脱塩等の精製処理や、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。コモチシダ属植物の前記抽出物やその処理物および分画物は、各処理および分画後に凍結乾燥し、用時溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0016】
コモチシダ属植物またはその抽出物は、優れた保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果を有し、保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物として利用することができる。
【0017】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする保湿剤は、優れたヒト真皮線維芽細胞のヒアルロン酸産生促進作用およびヒト表皮角化細胞のアルギナーゼ活性促進作用を有し、優れた保湿効果を発揮する。
【0018】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする抗老化剤は、優れたヒト真皮線維芽細胞の賦活作用、ヒト真皮線維芽細胞の細胞賦活作用、ヒト真皮線維芽細胞タイプIのコラーゲン産生促進作用、ヒト真皮線維芽細胞のATP産生促進作用、ヒト表皮角化細胞の賦活作用、およびヒト表皮角化細胞タイプIVのコラーゲン産生促進作用を有し、老化症状の防止・改善に優れた効果を発揮する。
【0019】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする抗酸化剤は、優れた過酸化脂質耐性、ラジカル消去作用、スーパーオキサイドアニオン消去作用を有し、優れた抗酸化効果を発揮する。
【0020】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする痩身剤は、優れたヒト前駆脂肪細胞の中性脂肪蓄積抑制作用を有し、優れた痩身効果を発揮する。
【0021】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする美白剤は、優れたヒト表皮メラニン細胞のチロシナーゼ活性阻害作用およびB16マウスメラノーマ細胞メラニン産生抑制作用を有し、色素沈着、シミ、そばかす等を予防・改善して、優れた美白効果を発揮する。
【0022】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする炎症剤は、優れたヒアルロニダーゼ阻害作用を有し、優れた抗炎症効果を発揮する。
【0023】
コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分とする免疫賦活剤は、ヒト急性単球白血病細胞株を用いた細胞賦活作用を有し、優れた免疫賦活効果を発揮する。
【0024】
コモチシダ属植物またはその抽出物を含有する皮膚外用剤は、優れた保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果などを発揮する。
【0025】
コモチシダ属植物またはその抽出物を含有する機能性経口組成物は、優れた保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果などを発揮する。
【0026】
これらの各剤は、コモチシダ属植物またはその抽出物を有効成分として含む限り、その形態およびその他成分の配合の有無等については、何ら制限されない。形態については、液状、ペースト状、ゲル状、固体状または粉末状等の任意の形態を、その用途等に応じて選択でき、その形態とするために必要なビヒクル(賦形剤)、溶剤、またはその他の一般的な添加剤(酸化防止剤、着色剤または分散剤等)を任意に含むことができる。
【0027】
ここで皮膚外用剤とは、化粧料、医薬部外品または外用医薬品等の皮膚または毛髪に外用される全ての外用組成物を意味している。機能性経口組成物についても、医薬品、食品または飲料等の種類を問わず、経口により摂取される全ての組成物を意味する。
【0028】
皮膚外用剤の剤型は任意であり、例えば、ローション等の可溶化系、カラミンローション等の分散系、またはクリームや乳液等の乳化系として提供することができる。さらに、噴射剤と共に充填するエアゾール形態、軟膏剤またはパップ剤等の種々の剤型で提供することもできる。
【0029】
具体的には、乳液、クリーム、ローション、化粧水、パック、美容液、洗浄料またはメイクアップ化粧料等の各種化粧料;液剤、軟膏、粉末、顆粒、エアゾール剤、貼付剤またはパップ剤等の様々な形態の化粧料、医薬部外品または外用医薬品などが例示できる。
【0030】
機能性経口組成物の形態も任意であり、特に限定されることはない。具体的には、飲料を含む一般食品;錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の健康食品(サプリメント)または機能性食品;錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤またはエキス等の経口医薬品などが例示できる。
【0031】
皮膚外用剤または機能性経口組成物には、コモチシダ属植物またはその抽出物の他に、その用途と必要に応じて、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料および洗浄料等に通常配合される任意の成分、例えば水、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、ゲル化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、薬剤(薬効成分)、香料、樹脂、防菌防かび剤、抗酸化剤、またはアルコール類等を適宜配合することができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、他の保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤あるいはコモチシダ属植物以外の植物またはその抽出物との併用も可能である。
【0032】
飲食品等の経口組成物の場合も、経口用として通常用いられる各種成分との組み合わせにおいて、特に限定されるものではない。
【0033】
コモチシダ属植物またはその抽出物の皮膚外用剤または機能性経口組成物への配合量は、種類や目的等によって調整することができるが、効果や安定性などの点から、全量に対して固形分換算で、好ましくは0.0001〜10.0質量%であり、より好ましくは0.001〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%であり、一層好ましくは0.1〜5質量%である。
【0034】
以下にコモチシダ属植物抽出物の調製例、保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果および免疫賦活効果を評価するための試験方法、皮膚外用剤または機能性食品としての処方例についてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0035】
[抽出物1]
ハチジョウカグマの新葉の乾燥粉砕物100gに、50質量%エタノール水溶液を2.0Kg加え、撹拌しながら室温にて2時間抽出した。抽出液をろ過して回収し、減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、抽出物1を得た。
【0036】
[抽出物2]
ハチジョウカグマの古葉の乾燥粉砕物100gに、50質量%エタノール水溶液を2.0Kg加え、撹拌しながら室温にて2時間抽出した。抽出液をろ過して回収し、減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、抽出物2を得た。
【0037】
[抽出物3]
ハチジョウカグマの新葉の乾燥粉砕物5gに精製水を100g加え、120℃で20分間抽出した。抽出液をろ過して回収し、凍結乾燥を行い、抽出物3を得た。
【0038】
[抽出物4]
ハチジョウカグマの古葉の乾燥粉砕物5gに精製水を100g加え、120℃で20分間抽出した。抽出液をろ過して回収し、凍結乾燥を行い、抽出物4を得た。
【0039】
[抽出物5]
ハチジョウカグマの新葉を乾燥させて粉砕し、セルに充填する。2時間、25Mpa、40℃、5mL/分の条件で液化二酸化炭素をセルに送液し抽出物5を得た。
【0040】
[抽出物6]
ハチジョウカグマの古葉を乾燥させて粉砕し、セルに充填する。2時間、25Mpa、40℃、5mL/分の条件で液化二酸化炭素をセルに送液し抽出物6を得た。
【0041】
ここで言う、新葉とは赤みのある葉を用い、古葉とは緑色の葉を用いた。上記抽出物を用いて、各効果の評価を行った。なお各評価結果に記載した*および**は、t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で、有意確率1%未満(P<0.01)を**でそれぞれ表したものである。
【実施例1】
【0042】
<保湿効果(ヒト真皮線維芽細胞ヒアルロン酸産生促進作用の評価)>
正常ヒト真皮繊維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて表1に示す各濃度となるように抽出物3を添加したサンプル培養液に交換し、さらに3日間培養した。培養上清中に分泌されたヒアルロン酸の定量には、プロテオグリカンを用いた間接ELISA法を用い、最後は標識されたペルオキシダーゼに対し2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)および過酸化水素を添加し反応させた後、マイクロプレートリーダーにて405nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を求めた。
評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を100とした相対値にて表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)熱水抽出物(抽出物3)は有意な保湿効果が認められた。
【実施例2】
【0045】
<保湿効果(ヒト表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用の評価)>
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後1.2mM CaClを含む5質量%FBS添加DMEM培地(分化誘導培地)にて表2に示す各濃度に抽出物5を添加したサンプル培養液に交換し、さらに9日間培養した。培地交換は3日に1回のペースで行った。培養上清中に分泌された尿素の定量には、尿素窒素 B−テストワコー(和光純薬)を用いた。アルギナーゼはアルギニンを加水分解し、オルニチン、尿素を生成する。尿素はウレアーゼによってアンモニアに分解され、アンモニアはペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物(ニトロプルシッドナトリウム)存在下でサリチル酸、次亜塩素酸と反応し、インドフェノールが生成する。アルカリ性条件下でインドフェノールに由来する570nmの吸光度を測定し、尿素濃度を求め、アルギナーゼ活性の定量を行った。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのアルギナーゼ活性を求めた。
評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのアルギナーゼ活性を100とした時の相対値にて表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)超臨界抽出物(抽出物5)は有意な保湿効果が認められた。
【0048】
上述のとおり、ハチジョウカグマ抽出物は、ヒアルロン酸産生促進作用およびアルギナーゼ活性促進作用を有し、優れた保湿効果を発揮する。
【実施例3】
【0049】
<抗老化効果(ヒト真皮線維芽細胞賦活作用の評価)>
クラボウ社(倉敷紡績株式会社)製正常ヒト真皮線維芽細胞を、1ウェル当たり2.0×10個となるように96穴マイクロプレート播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、表3に示す各濃度となるように抽出物1を添加した1質量%FBS添加DMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。上清を除いた後、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を400μg/mL含有する培地に交換して約2時間培養した。その後、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に、濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価では、試料を含む培地の他に、コントロールとして1質量%FBS添加DMEM培地を用いた。
評価結果を、コントロールにおける細胞賦活作用を100とした場合の相対値として表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)50%エタノール抽出物(抽出物1)を添加した培地では有意な細胞賦活効果が認められた。
【実施例4】
【0052】
<抗老化効果(ヒト真皮繊維芽細胞タイプIコラーゲン産生促進作用の評価)>
正常ヒト真皮繊維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて表4に示す各濃度となるように抽出物1を添加した培養液に交換し、さらに24時間培養した。培養上清中に分泌されたタイプIコラーゲンの定量にはELISA法を用い、最後は標識されたペルオキシダーゼに対し2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)及び過酸化水素を添加し反応させた後、405nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのタイプIコラーゲン産生量を求めた。
評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのタイプIコラーゲン産生量を100とした時の相対値にて表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意なコラーゲン産生促進効果が認められた。
【実施例5】
【0055】
<抗老化効果(ヒト真皮線維芽細胞ATP産生促進作用の評価)>
正常ヒト真皮線維芽細胞を1ウェル当り4.0×10個となるように48ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には1質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、1%FBS添加DMEMによって表5に示す各濃度になるように抽出物2を添加した培養液に交換し、さらに24時間培養した。細胞上清を除去し洗浄し、細胞を超音波処理して細胞中のATPを溶出した。その際に細胞内にあるATP分解酵素の溶出を防ぐため、ATP分解酵素阻害剤(Cellstein Hoechst33342)を添加した。ATPの定量にはMolecular Probes社製 ATPデタミネーションキットを使用した。細胞溶解液を試験管に分注し、ルシフェラーゼおよびルシフェリン試薬を添加し、化学発光を測定した。
評価結果を試料無添加のコントロールにおけるATP産生能を100とした相対値にて表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
表5の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)50%エタノール抽出物(抽出物2)は有意なATP産生促進効果が認められた。
【実施例6】
【0058】
<抗老化効果(ヒト表皮角化細胞賦活作用の評価)>
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、5質量%FBS添加DMEM培地にて表6に示す各濃度に抽出物4を添加した培養液に交換し、さらに24時間培養した。次に100μg/mLとなるよう培地にて調整したMTT試薬を、上清を除いた細胞に添加し、約2時間培養した。最後に2−プロパノールにて生じたフォルマザンを抽出し、550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて細胞賦活作用を評価した。
評価結果を試料無添加のコントロールにおける細胞賦活作用を100とした時の相対値にて表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
表6の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)熱水抽出物(抽出物4)は有意な細胞賦活効果が認められた。
【実施例7】
【0061】
<抗老化効果(ヒト表皮角化細胞タイプIVコラーゲン産生促進作用の評価)>
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて表7に示す各濃度に抽出物1を添加した培養液に交換し、さらに5日間培養した。培養上清中に分泌されたタイプIVコラーゲンの定量には、タイプIVコラーゲンに対するモノクローナル抗体(認識部位:α2鎖)及びビオチン化ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法を用い、最後はアビジン化ホースラディッシュペルオキシダーゼに対し3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを添加し反応させた後、650nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのIV型コラーゲン産生量を求めた。
評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのタイプIVコラーゲン産生量を100とした時の相対値にて表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
表7の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意なコラーゲン産生促進効果が認められた。
【0064】
上述のとおり、ハチジョウカグマ抽出物は、細胞賦活作用、コラーゲン産生促進作用、およびATP産生促進作用を有し、優れた抗老化効果を発揮する。
【実施例8】
【0065】
<抗酸化効果(ヒト表皮角化細胞過酸化脂質耐性の評価)>
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には10質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、10%質量FBS添加DMEM培地にて表8に示す各濃度にするように抽出物4を添加した培養液に交換し、さらに24時間培養した。任意濃度のt−ブチルヒドロペルオキシドを添加したHANK’S(+)溶液に交換し、2時間培養した。さらに、150μg/mLニュートラルレッドを含有するPBS(−)に交換し、37℃にて2時間培養した。次に1%酢酸を含む50%エタノール水溶液に交換し、細胞内に取りこまれたニュートラルレッドを抽出し、抽出液の540nmの吸光度を測定した。
評価結果をt−ブチルヒドロペルオキシド無添加のコントロールにおける細胞生存率を100としたときの相対値にて表8に示す。
【0066】
【表8】

【0067】
表8の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)熱水抽出物(抽出物4)は有意な過酸化脂質耐性効果が認められた。
【実施例9】
【0068】
<抗酸化効果(DPPHラジカル消去作用)>
抽出物6を、50質量%エタノールを用いて表9に示した濃度に調整して試料溶液とし、96穴マイクロプレートに100μLずつ添加した。そこへ、0.2mMの1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジカル(DPPH)エタノール溶液を100μLずつ添加し、良く混合後、室温、暗所にて24時間静置した。その後、DPPHラジカルに由来する516nmの吸光度を測定した。試料を添加しなかった場合のコントロールの吸光度を(A)、試料を添加した場合の吸光度を(B)としたとき、DPPHラジカルの消去率を式(1)に導入して求めた。測定結果を表9に示す。
式(1):ラジカル消去率={1−(B)/(A)}×100(%)
【0069】
【表9】

【0070】
表9の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)超臨界抽出物(抽出物6)は有意なDPPHラジカル消去効果が認められた。
【実施例10】
【0071】
<抗酸化効果(スーパーオキサイドアニオン消去作用)>
0.25mM WST−1及び1mM ヒポキサンチンを含むHanks(+)溶液75μLに、抽出物4を表10に示す濃度となるようにHanks(+)溶液で希釈した試料25μLを添加し、キサンチンオキシダーゼ25μL(0.0075ユニット)を加え、37℃で15分間反応後、450nmの吸光度を測定した。試料が無添加のコントロールの吸光度を(A)、試料を添加したときの吸光度を(B)としたとき、式(2)の値をスーパーオキサイドアニオン消去率とした。評価結果を表10に示した。
式(2):消去率={1−(B)/(A)}×100(%)
【0072】
【表10】

【0073】
表10の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)熱水抽出物(抽出物10)は有意なスーパーオキサイドアニオン消去効果が認められた。
【0074】
上述のとおり、ハチジョウカグマ抽出物は、過酸化脂質耐性作用、DPPHラジカル消去作用、およびスーパーオキサイドアニオン消去作用を有し、優れた抗酸化効果を発揮する。
【実施例11】
【0075】
<痩身効果(ヒト前駆脂肪細胞中性脂肪蓄積抑制作用の評価)>
皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞Cryo HPRAD−SQを1ウェル当り5.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはPGM培地(10%FBS、2mM L−グルタミン、100ユニット/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)を用いた。48時間培養後、表11に示す濃度となるように抽出物1を添加したPGM分化用培地(10μg/mL インシュリン、1μM デキサメタゾン、200μM インドメタシン、500μM イソブチルメチルキサンチン含有)に交換し、脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導開始後、コントロール群が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、10〜14日間培養した。細胞を回収後、10%中性緩衝ホルムアルデヒド溶液を用いて細胞を固定した。PBS(−)にて洗浄後、0.5質量/体積%オイルレッドO溶液を添加し、37℃で2時間培養した。PBS(−)にて洗浄後、メタノールを添加し、色素を抽出し、550nmの吸光度を測定した。同時に、濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて中性脂肪蓄積抑制作用を評価した。評価結果を試料無添加のコントロールにおける中性脂肪蓄積量を100とした時の相対値にて表11に示す。
【0076】
【表11】

【0077】
表11の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)エタノール抽出物(抽出物1)は有意な中性脂肪蓄積効果が認められ、優れた痩身効果を発揮する。
【実施例12】
【0078】
<美白効果(ヒト表皮メラニン細胞チロシナーゼ活性阻害作用)>
クラボウ社製正常ヒト表皮メラニン細胞を、1ウェル当たり3.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には、クラボウ社製Medium154Sを用いた。24時間後、Medium154Sによって表12に示す各濃度になるように抽出物4を添加した培地に交換し、さらに48時間培養した。次に、1質量%トリトン−X含有リン酸緩衝液75μLに交換して細胞を完全に溶解させ、内50μLを粗酵素液として使用した。粗酵素液に、基質となる0.05質量%L−ドーパ含有リン酸緩衝液50μLを加え、37℃で2時間静置した。マイクロプレートリーダーにより、基質添加直後と反応終了時の405nmの吸光度を測定し、生成されたドーパメラニン量を、式(3)に各測定値を導入して求めた。
式(3):生成されたドーパメラニン量={(反応後405nm値−反応前405nm値)}−2.166/5.238
また、PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにより各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当たりのドーパメラニン生成量を求めた。コントロールの値を100とした時の相対値より、チロシナーゼ活性阻害作用を評価した。結果を表12に示す。
【0079】
【表12】

【0080】
表12の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)熱水抽出物(抽出物4)は有意なチロシナーゼ活性阻害効果が認められた。
【実施例13】
【0081】
<美白効果(B16マウスメラノーマ細胞メラニン産生抑制作用の評価)>
B16マウスメラノーマ細胞(B16F0細胞)を1ディッシュ当り18000個となるように90mmディッシュに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、5%質量FBS添加DMEM培地にて表13に示す濃度になるように抽出物2を添加した培養液に交換し、さらに5日間培養した。培養終了後、トリプシン処理にて細胞をはがし、1.5mLマイクロチューブに移して遠心操作して細胞沈殿物を得た。得られた沈殿物は下記判定表を基にその黒化状況を肉眼判定した。評価ではネガティブコントロールに5%質量FBS添加DMEM培地、ポジティブコントロールに50mM乳酸ナトリウムを含有する5%質量FBS添加DMEM培地を用いた。これらの肉眼判定結果は判定5及び判定1とし、サンプル判定の指標とした。肉眼判定は下記に示す通り、5段階評価した。また同時に、沈殿物に組織溶解剤(商品名Solvable)を添加して煮沸し、室温に戻して分光光度計(HITACHI製分光光度計U−3010)により500nmの吸光度を測定し、総メラニン量を求めた。評価結果を表13に示す。
判定及び基準
判定 基準
1 ポジティブコントロールと同程度(ほぼ白)
2 ポジティブコントロールより僅かに黒化する(うすい褐色)
3 ポジティブコントロールとネガティブコントロールの中間(褐色)
4 ネガティブコントロールと比べやや黒化が抑制されている(黒褐色) 5 ネガティブコントロールと同程度(ほぼ黒)
【0082】
【表13】

【0083】
表13の結果から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)50%エタノール抽出物(抽出物2)は有意なメラニン産生抑制効果が認められた。
【0084】
ハチジョウカグマ抽出物は、チロシナーゼ阻害活性およびメラニン産生抑制作用を有し、優れた美白効果を発揮する。
【実施例14】
【0085】
<抗炎症効果(ヒアルロニダーゼ阻害作用の評価)>
ヒアルロン酸カリウム塩(ヒト臍の緒由来)を0.9mg/mLになるよう0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、基質溶液とした。ヒアルロニダーゼ(ウシ精巣由来)を5,300ユニット/mLとなるよう0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、酵素溶液とした。緩衝液にて表14に示す濃度になるように抽出物2を添加した溶液0.1mLおよび酵素溶液0.03mLを試験管にとり、37℃で20分間反応させた。次に活性化剤を0.06mL加え、37℃で20分間反応させた。さらに基質溶液を0.15mL加え、37℃で1時間反応させた。0.4NのNaOHを0.06mL加え、反応停止後すぐに氷冷し、ホウ酸緩衝液(pH9.1)を0.06mL添加し、3分間煮沸後さらに氷冷した。p−DABA溶液を2.0mL添加し、37℃で20分間反応させた後、反応溶液を96ウェルマイクロプレートに移し、585nmにおける吸光度を測定した。コントロールには、試料無添加の緩衝溶液を用いた。ヒアルロニダーゼの活性が阻害されると分解産物であるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)が減少し、p−DABAによる吸光度が低くなる。ヒアルロニダーゼ阻害作用は次式に定義される。
阻害率(%)=(コントロール吸光度−サンプル吸光度)/コントロール吸光度×100
評価結果を表14に示す。
【0086】
【表14】

【0087】
表14から明らかなように、ハチジョウカグマ(古葉)50%エタノール抽出物(抽出物2)は、有意なヒアルロニダーゼ阻害効果が認められ、優れた抗炎症効果を発揮する。
【実施例15】
【0088】
<免疫賦活効果(ヒト急性単球白血病細胞株を用いた細胞賦活作用)>
ヒト急性単球白血病細胞株(THP−1)を1ウェル当り5.0×104個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には1質量%のFBSを添加したRpswell Park Memorial Institute培地(RPMI)を用いた。24時間後、フォルボール 12−ミリステート 13−アセテート(PMA)を20ng/mLとなるように細胞培養液に添加した。さらに24時間後、1質量%FBS添加RPMI培地にて表15に示す各濃度になるように抽出物1を添加した培養液に交換し、48時間培養した。次に生細胞数測定試薬SF(同仁化学研究所)1/10量を添加した1質量%FBS添加RPMI培地を、上清を除いた細胞に添加し、2時間培養した。混合後、450nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて細胞賦活作用を評価した。評価結果を試料無添加のコントロールにおける細胞賦活作用を100とした時の相対値にて表15に示す。
【0089】
【表15】

【0090】
表15から明らかなように、ハチジョウカグマ(新葉)50%エタノール抽出物(抽出物1)を添加した培地では、有意なヒト急性単球白血病細胞株(免疫細胞)の賦活作用が認められ、優れた免疫賦活効果を発揮する。
【0091】
続いて、上記各調製方法で得られたコモチシダ属植物抽出物を配合した皮膚外用剤および機能性経口組成物の処方例を示す。
【実施例16】
【0092】
乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)抽出物1 5.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)と(12)を順次加え、均一に混合する。
【実施例17】
【0093】
化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残部
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)抽出物2 1.0
製法:(1)に(2)及び(3)を溶解する。さらに(4)〜(8)を順次添加した後、十分に攪拌し、(9)を加え、均一に混合する。
【実施例18】
【0094】
クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)抽出物3 5.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(11)を添加して攪拌後、冷却し40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【実施例19】
【0095】
美容液
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(フィトステリル−2−オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3−ブチレングリコール 10.0
(15)L−アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)抽出物4 3.0
製法:(1)〜(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後50℃にて(15)を、40℃にて(16)を加え、均一に混合する。
【実施例20】
【0096】
水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)エタノール 10.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)香料 0.1
(7)抽出物1 0.5
(8)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)〜(8)を加え、均一に攪拌混合する。
【実施例21】
【0097】
クレンジング料
(1)スクワラン 81.0(質量%)
(2)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 15.0
(3)精製水 100とする残部
(4)抽出物6 4.0
製法:(1)と(2)を均一に溶解する。これに、(3)と(4)を順次加え、均一に混合する。
【実施例22】
【0098】
洗顔フォーム
(1)ステアリン酸 16.0(質量%)
(2)ミリスチン酸 16.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)グリセリン 25.0
(5)水酸化ナトリウム 7.5
(6)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 1.0
(7)精製水 100とする残部
(8)抽出物2 0.1
製法:(1)〜(4)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(5)〜(7)の水相成分を80℃にて加熱溶解し、油相成分と均一に混合撹拌する。冷却後40℃にて(8)を加え、均一に混合する。
【実施例23】
【0099】
メイクアップベースクリーム
(1)スクワラン 10.2(質量%)
(2)セタノール 2.0
(3)グリセリントリ−2−エチルヘキサン酸エステル 2.5
(4)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(5)プロピレングリコール 11.0
(6)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(7)精製水 100とする残部
(8)酸化チタン 1.0
(9)ベンガラ 0.1
(10)黄酸化鉄 0.4
(11)香料 0.1
(12)抽出物3 3.0
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(5)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(8)〜(10)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【実施例24】
【0100】
乳液状ファンデーション
(1)メチルポリシロキサン 2.0(質量%)
(2)スクワラン 5.0
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
(4)セタノール 1.0
(5)ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 0.7
(7)1,3−ブチレングリコール 8.0
(8)キサンタンガム 0.1
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 100とする残部
(11)酸化チタン 9.0
(12)タルク 7.4
(13)ベンガラ 0.5
(14)黄酸化鉄 1.1
(15)黒酸化鉄 0.1
(16)香料 0.1
(17)抽出物4 0.5
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(10)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(11)〜(15)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散する。油相成分を加え、乳化を行う。冷却後40℃にて(16)と(17)の成分を順次加え、均一に混合する。
【実施例25】
【0101】
油中水型エモリエントクリーム
(1)流動パラフィン 34.0(質量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)ワセリン 5.0
(4)ジグリセリンオレイン酸エステル 5.0
(5)塩化ナトリウム 1.3
(6)塩化カリウム 0.1
(7)プロピレングリコール 3.0
(8)1,3−ブチレングリコール 5.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 100とする残部
(11)香料 0.1
(12)抽出物5 3.0
製法:(5)と(6)を(11)の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した(4)に撹拌しながら徐々に加える。これを混合した後、70℃にて加熱溶解した(1)〜(3)に均一に分散する。これに(7)〜(9)を(10)の残部に70℃にて加熱溶解したものを撹拌しながら加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と抽出物5を加え、均一に混合する。
【実施例26】
【0102】
パック
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)ポリビニルアルコール 12.0
(3)エタノール 17.0
(4)グリセリン 9.0
(5)ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 2.0
(6)抽出物1 1.0
(7)香料 0.1
製法:(2)と(3)を混合し、80℃に加温した後、80℃に加温した(1)に溶解する。均一に溶解した後、(4)と(5)を加え、攪拌しながら冷却する。40℃にて(6)と(7)を加え、均一に混合する。
【実施例27】
【0103】
入浴剤
(1)香料 0.3(質量%)
(2)抽出物2 3.0
(3)炭酸水素ナトリウム 50.0
(4)硫酸ナトリウム 46.7
製法:(1)〜(4)を均一に混合する。
【実施例28】
【0104】
ヘアーワックス
(1)ステアリン酸 3.0(質量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)セチルアルコール 3.0
(4)高重合メチルポリシロキサン 2.0
(5)メチルポリシロキサン 5.0
(6)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)
メチルポリシロキサン共重合体 1.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)1,3−ブチレングリコール 7.5
(9)アルギニン 0.7
(10)精製水 100とする残部
(11)抽出物3 2.0
(12)香料 0.1
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解後する。一方、(7)〜(10)の水相成分を75℃にて加熱溶解し、前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【実施例29】
【0105】
ヘアートニック
(1)エタノール 50.0(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)抽出物4 3.0
(4)香料 0.1
製法:(1)〜(4)の成分を混合、均一化する。
【実施例30】
【0106】
錠剤
(1)コーンスターチ 44.0(質量%)
(2)結晶セルロース 100とする残部
(3)カルボキシメチルセルロースカルシウム 5.0
(4)無水ケイ酸 0.5
(5)ステアリン酸マグネシウム 0.5
(6)抽出物5 5.0
製法:(1)〜(6)を均一に混合し、打錠機にて圧縮成型して、1錠200mgの錠剤を得る。
【実施例31】
【0107】
散剤
(1)ケイ酸アルミン酸マグネシウム 95.3(質量%)
(2)カルボキシメチルセルロースカルシウム 100とする残部
(3)抽出物6 4.0
製法:(1)〜(3)の粉体を混合後、粉砕機にて粉砕し、均一に分散する。
【実施例32】
【0108】
キャンデー
(1)白糖 60.0(質量%)
(2)水飴 100とする残部
(3)抽出物1 5.0
(4)香料 適量
製法:(1)と(2)を加熱混合・均一化した後冷却し、70℃にて成分(3)と(4)を添加し、混合均一化した後成型する。
【実施例33】
【0109】
ドリンク剤
(1)アミノエチルスルホン酸 1000mg
(2)硝酸チアミン 10mg
(3)リン酸リボフラビンナトリウム 5mg
(4)塩酸ピリドキシン 10mg
(5)無水カフェイン 50mg
(6)クエン酸 250mg
(7)D−ソルビトール液 8mg
(8)抽出物2 1000mg
(9)香料 微量
(10)精製水 100mLとする残部
製法:(1)〜(9)を順次(10)に添加し、均一化する。
【0110】
実施例16〜実施例29に示した皮膚外用剤は、保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果を有する組成物であった。また実施例30〜実施例33に示した機能性経口組成物は保湿効果、抗老化効果、抗酸化効果、痩身効果、美白効果、抗炎症効果、免疫賦活効果を有する組成物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする保湿剤。
【請求項2】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする抗老化剤。
【請求項3】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項4】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする痩身剤。
【請求項5】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする美白剤。
【請求項6】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする抗炎症剤。
【請求項7】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とする免疫賦活剤。
【請求項8】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項9】
コモチシダ属(Woodwardia)植物より選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を含有することを特徴とする機能性経口組成物。

【公開番号】特開2010−132606(P2010−132606A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310359(P2008−310359)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】