説明

保管庫

【課題】セキュリティを向上させることができる保管庫を提供すること。
【解決手段】開閉が許可された保管庫1のID番号を記憶するICタグを供えるICキーを用いて保管庫1の開閉を行うシステム61で使用される保管庫1であって、前記ICキー11から取得した前記ID番号に基づいて権限認証を行い、正当な権限を認証した場合に、前記保管庫1に設けられた扉6,7の開閉を制御する開閉手段8,9に前記扉6,7を開閉する許可を与える保管庫1において、前記ICタグ23にデータを読み書きするリーダライタ手段33と、前記リーダライタ手段33に、前記保管庫1の利用データを前記ICタグ23に書き込ませるデータ書込制御手段59を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正当な権限が認証された場合に、扉の電子錠を開錠して扉の開閉を許可する保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されるシステムでは、ホテルやレジャー施設等のフロントにおいて利用者が利用可能なロッカーをカードキーに記憶させ、利用者がロッカーに設けられた電気錠装置にカードキーを近づけると、電気錠装置がカードキーと通信して権限認証を行い、正当な権限を認証した場合にロッカーの電子錠を開錠する。電気錠装置は、電池から電源供給を受けて動作する。電気錠装置は、電池残量を検知してカードキーに書込み、利用者がカードキーをフロントに返却した後に、カードキーに書き込まれた情報を読み取って電気錠装置の電池残量をフロントで集中管理する。
【0003】
【特許文献1】特開平9−259237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記システムは、利用者によるロッカーの利用状況を把握することができず、セキュリティが低かった。そのため、例えば、ロッカーの被保管物が紛失しても、各利用者がどのようにロッカーを使用したか分からず、責任の所在を明らかにすることが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、セキュリティを向上させることができる保管庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る保管庫は以下の構成を有する。
(1)開閉が許可された保管庫のID番号を記憶するICタグを供えるICキーを用いて保管庫の開閉を行うシステムで使用される保管庫であって、前記ICタグから取得した前記ID番号に基づいて権限認証を行い、正当な権限を認証した場合に、前記保管庫に設けられた扉の開閉を制御する開閉手段に前記扉を開閉する許可を与える保管庫において、前記ICタグにデータを読み書きするリーダライタ手段と、前記リーダライタ手段に、前記保管庫の利用データを前記ICタグに書き込ませるデータ書込制御手段を有する。
【0007】
(2)(1)に記載の発明において、前記保管庫の使用開始指示を検知する使用開始指示検知手段と、前記保管庫の使用終了指示を検知する使用終了指示検知手段とを有し、前記利用データは、前記使用開始指示検知手段が前記使用開始指示を検知した時刻である第1時刻データと、前記使用終了指示検知手段が使用終了指示を検知した時刻である第2時刻データと、を含む。
【0008】
(3)(1)に記載の発明において、物体を撮像する撮像手段を有し、前記利用データは、前記撮像手段が撮像した画像の画像データを含む。
【0009】
(4)(3)に記載の発明において、前記撮像手段の撮像対象物が人間の顔であるか否かを判定する顔判定手段を有し、前記データ書込制御手段は、前記顔判定手段が、前記撮像手段の撮像対象物が前記人間の顔であると判定した場合に、前記扉の開閉を許可する。
【0010】
(5)(4)に記載の発明において、前記顔判定手段が、前記撮像手段の撮像対象物が前記人間の顔でないと判定した場合に、警告を出力する警告手段を有する。
【0011】
(6)(1)乃至(4)の何れか一つに記載の発明において、前記ICタグがパスワードを記憶しており、データを表示する表示手段と、データを入力する入力手段と、前記権限認証を行う場合にパスワード入力画面を前記表示手段に表示させるパスワード入力画面表示制御手段と、前記ICタグから前記パスワードを取得し、前記パスワード入力画面表示制御手段が表示した前記パスワード入力画面に前記入力手段を用いて入力されたパスワードを前記ICタグから取得したパスワードと照合して一致する場合に、正当な権限を認証するパスワード認証手段とを有する。
【0012】
(7)(1)乃至請求項(6)の何れか一つに記載の発明において、前記ID番号は、前記保管庫の使用権限を示す個人IDと、前記保管庫の扉を特定する扉IDとを含む。
【0013】
(8)(1)乃至(7)の何れか一つに記載の発明において、前記ICタグは、前記ID番号が有効な有効時間に関する有効時間データを記憶している。
【0014】
(9)(1)乃至(8)の何れか一つに記載の発明において、前記利用データを記憶する利用データ記憶手段を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保管庫は、保管庫の利用データをICキーのICタグに書き込むので、例えば、システムのサーバ側でICタグに記憶されている利用データを読み取れば、サーバと保管庫とが配線等で直接接続されていなくても、保管庫の利用状態を把握することができ、セキュリティを向上させることができる。
【0016】
本発明の保管庫は、使用開始指示検知示手段が保管庫の使用開始指示を検知した時刻である第1時刻データと、使用終了指示検知手段が保管庫の使用終了指示を検知した時刻である第2時刻データとをICキーのICタグに記憶させるので、保管庫の扉がいつ開閉されたかを把握することができる。
【0017】
本発明の保管庫は、撮像手段が撮像した画像の画像データをICキーのICタグに記憶させるので、撮像手段に撮像される緊張感を利用者に与え、保管庫の被保管物を不正に持ち出す不正行為を予防することができる。
【0018】
本発明の保管庫は、撮像手段の撮像対象物が人間の顔である場合に保管庫の扉の開閉を許可するので、例えば、利用者が顔にお面やマスク等をつけ、撮像手段が人間の顔を撮像できないときには、保管庫の扉を開閉できず、セキュリティが向上する。
【0019】
本発明の保管庫は、撮像手段の撮像対象物が人間の顔でない場合に警告を出力するので、例えば、正当な権限を有する者がマスクなどをして、撮像手段に顔を撮像させない場合には、顔の画像データを取得できないために扉の開閉が許可されないことを警告によって利用者に知らしめ、故障の誤認識を防止できる。
【0020】
本発明の保管庫は、表示手段が表示したパスワード入力画面に入力手段を用いてパスワードが入力された場合に、入力されたパスワードをICキーのICタグに記憶されているパスワードと照合し、一致することを条件に正当な権限を認証するので、パスワードを記憶する記憶手段を保管庫に設ける必要がなく、パスワードを第三者に盗まれにくい。
【0021】
本発明の保管庫は、ID番号が、保管庫の使用権限を示す個人IDと保管庫の扉を特定
する扉IDとを含むので、複数の者がICキーを共有する場合でも、ICキーのICタグにID番号を書き込めば、ID番号に対応する利用者と保管庫に専用のICキーを簡単に作ることができる。
【0022】
本発明の保管庫は、ICキーのICタグが、ID番号の有効時間に関する有効時間データを記憶しているので、不正行為にさらされる危険を低減できる。
【0023】
本発明の保管庫は、ICキーのICタグだけでなく、保管庫側にも利用データを記憶しているので、例えば、利用者がICタグに記憶されている利用データを消滅させるためにICキーを破損させたり、破棄した場合でも、保管庫側の利用データを取得すれば、保管庫の利用状態を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明に係る保管庫の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
<保管庫の全体構成>
図1は、保管庫1の外観斜視図である。
保管庫1は、収納ボックス2,3を備える。収納ボックス2,3は、金属製筐体4,5に金属製の扉6,7を観音開きに取り付けたものであり、耐防火性や剛性を確保している。収納ボックス2,3は、「開閉手段」の一例である電子錠8,9が扉6,7にそれぞれ取り付けられ、扉6,7の開閉を制御する。収納ボックス2の扉6には、鍵ユニット10が取り付けられている。
【0026】
<鍵ユニットの全体構成>
鍵ユニット10は、保管庫1に後付けできるように、電池から電源を供給されて駆動している。鍵ユニット10は、ICキー11からID番号を取得して権限認証を行い、正当な権限を認証した場合に電子錠8,9に開錠信号を出力し、扉6,7の開閉を許可するものである。鍵ユニット10は、ケース12に錠前13と、「表示手段」の一例である液晶ディスプレイ14と、「撮像手段」の一例であるCCDカメラ15と、「物体検知手段」の一例である赤外線照射装置16とを備える。CCDカメラ15は、錠前13の近傍に配置され、錠前13にICキー11を差し込むために保管庫1の前に立った利用者の顔周辺を撮像するように撮像範囲が決められている。赤外線照射装置16は、CCDカメラ15の両側に1個ずつ設けられ、保管庫1の前に立った利用者に異なる波長の近赤外線を照射する。赤外線照射装置16をCCDカメラ15の両側に設置するのは、利用者の顔全体に近赤外線を照射してCCDカメラ15に鮮明な画像を撮像させるためである。近赤外線を利用するのは、利用者に負担なく、安定した明るさの画像をCCDカメラ15に撮像させるためである。
【0027】
<ICキーの構成>
図2は、図1に示す錠前13とICキー11の構成を示す分解斜視図である。
ICキー11は、把持部11aと挿入部11bとから構成される。ICキー11は、2枚の樹脂製の鍵基板21,22の間に、接触式ICタグ23、及び一対の端子板24,25が挟み込まれて構成される。接触式ICタグ23は、個別に付与された数値列を記憶しており、その数値列によってICキー11を各別に特定することができる。接触式ICタグ23の裏面には、2つの接点が露出している。その2つの接点には、1対の端子板24,25の一端に形成された接触部24b,25bが板ばねのバネ力により接触している。
【0028】
鍵基板21には、把持部11aに接触式ICタグ23を収納するための凹部21aが形成されている。また、鍵基板21には、端子板24,25の各々を収納するための溝21b,21cが形成されている。溝21b,21cの挿入部11b側の端部には、外部に露
出する端子板24,25の接点部24a,25aを裏側から支持するための凸部21d,21eが形成されている。
【0029】
一方、鍵基板22には、把持部11aに、カバー26を取り付けるための取付開口部22aが形成されている。また、鍵基板22には、端子板24,25の接点部24a,25aを外部に露出させるための接点窓22b,22cが形成されている。
【0030】
端子板24,25は、溝21b,21cに収納されることにより、各々接触しない状態で鍵基板21に装着される。そして、鍵基板22を鍵基板21に被せて2本のねじ27,27で鍵基板21,22を密着固定する。これにより、端子板24,25の接点部24a,25aが接点窓22b,22cから外部に露出した状態になる。このとき、接点部24a,25aは、鍵基板21の凸部21d,21eにより裏側を支持されている。
【0031】
接触式ICタグ23は、鍵基板22の取付開口部22aから鍵基板21,22の間に装着される。カバー26は、取付開口部22aに嵌め込まれて、ねじ28で鍵基板21に固定される。これにより、接触式ICタグ23の2つの接点が端子板24,25の接触部24b,25bに各々接触する。尚、ICキー11は、鍵基板21,22の同じ箇所に切り欠き21f,22dが形成されている。
【0032】
<錠前の構成>
錠前13は、円筒形状の内筒31が、錠前本体32に形成された円筒形状の孔32aに回転可能に保持されている。内筒31の端部には、鍔31aが外径方向に突出するように形成されている。鍔31aは、錠前本体32の孔32aが開口する開口端部に係止され、内筒31を錠前本体32に対して軸方向の位置決めを行う。
【0033】
内筒31は、ICキー11の挿入部11bが差し込まれる差込孔31eが、鍔31a側の端面に開設されている。内筒31の側面には、切欠部31bが形成されている。切欠部31bには、「リーダライタ手段」の一例であるリーダライタ基板33が取り付けられている。リーダライタ基板33は、接触式ICタグ23と接触し、接触式ICタグ23に記憶されているデータを読み取ったり、或いは、接触式ICタグ23にデータを書き込んだりする。
【0034】
また、内筒31は、鍔31aが設けられた端部を反対側の端部の外周に、Cリング34を装着するためのCリング装着溝31cが環状に形成されている。内筒31は、錠前本体32を貫くように孔32aに挿入され、Cリング装着溝31cにCリング34を装着されることにより、錠前本体32に対して回転可能に取り付けられる。内筒31は、鍔31aと反対側の端面にねじ孔が形成されており、回転板35が内筒31と一体的に回転するようにねじ36によって固定されている。回転板35には、内筒31に対して位置決め固定するための四角穴35aが形成されている。また、回転板35には、回転防止溝35b,35cが90度の角度違いで形成されている。
【0035】
錠前本体32には、鍵ユニット10のケース12に取り付けるためのヒンジ37が形成されている。錠前本体32には、ソレノイド39を取り付けるための取付箱38が形成されている。取付箱38には、ロッド40を回転板35側に突出させるようにソレノイド39が取り付けられる。ソレノイド39は、ロッド40を回転板35の回転防止溝35b,35cに挿入し、回転板35を介して内筒31の回転を阻止する。
【0036】
内筒31の外周面には、溝31dが半円状に形成されている。溝31dは、差込孔31eと連通しており、差込孔31eに差し込まれたICキー11を内筒31の外部に露出させる。溝31dには、差込孔31eに差し込まれたICキー11を検出するキー検出セン
サ42が取り付けられている。
【0037】
錠前本体32には、内筒31の溝31dと対応する位置に、溝32bが円弧状に形成されている。錠前本体32は、溝32bの近傍に凸部32cが外径方向に突き出すように突設されている。凸部32cには、抜き取り防止爪41aを錠前本体32の溝32bから内筒31の溝31dに進入するようにブラケット41が取り付けられ、抜き取り防止爪41aをICキー11の切り欠き21f,22dに係合可能に配置している。ブラケット41には、回転検知部43が設けられ、ICキー11が内筒31と一体的に所定量(本実施形態では90度)正転されたことを検知できるようになっている。
【0038】
<制御装置の構成>
図3は、図1に示す扉6,7の開閉を許可する制御装置50の電気ブロック図である。
制御装置50は、鍵ユニット10に内設され、電子錠8,9に開錠許可信号を出力して保管庫1に設けた扉6,7の開閉を許可する。制御装置50は、周知のコンピュータであって、CPU51に入出力インターフェース52とROM53とRAM54とHDD55と時刻検出部56とが接続されている。
【0039】
入出力インターフェース52には、電子錠8,9と、液晶ディスプレイ14と、CCDカメラ15と、赤外線照射装置16と、錠前13のリーダライタ基板33及びソレノイド39、キー検出センサ42、回転検知部43とが接続されている。
【0040】
ROM53は、開閉許可プログラム57を記憶している。開閉許可プログラム57は、保管庫1の扉6,7の開閉を制御する動作手順を規定するものである。開閉許可プログラム57については、後述する。
【0041】
HDD55は、ID番号記憶手段58と利用データ記憶手段59との記憶領域が設けられている。
ID番号記憶手段58は、保管庫1の扉6,7を開閉する権限を有する利用者の「個人ID」と、扉6,7に個別に付与された「扉ID」とを含む「ID番号」を記憶するデータベースである。
【0042】
利用データ記憶手段59は、保管庫1の利用データを蓄積して記憶するデータベースである。本実施形態では、利用データ記憶手段59は、「第1時刻データ」と「第2時刻データ」と「画像データ」と「年月日データ」と「個人データ」と「扉データ」とを相互に関連付けて「利用データ」として記憶している。
【0043】
「第1時刻データ」とは、保管庫1の使用開始指示を検知した時刻をいう。より具体的には、例えば、利用者がICキー11を錠前13に差し込んだ時刻をいう。ICキー11の差し込み検出は、キー検出センサ42がICキー11を検出することにより行う。利用者がICキー11を錠前13に差し込むことは、保管庫1の使用を開始する使用開始指示に他ならないので、キー検出センサ42は、使用開始指示を検知することになる。この意味で、キー検出センサ42は、「使用開始指示検知手段」の一例になり得る。
【0044】
「第2時刻データ」とは、保管庫1の使用終了指示を検知した時刻をいう。より具体的には、例えば、利用者が液晶ディスプレイ14に表示された終了ボタン76(図8参照)にタッチしたときに、時刻検出部56が検出した時刻をいう。利用者が終了ボタン76にタッチすることは、保管庫1の使用終了を指示することに他ならず、液晶ディスプレイ14に表示される終了ボタン76は、「使用終了指示検知手段」の一例になり得る。
【0045】
「画像データ」とは、CCDカメラ15が撮像した画像をいう。
「年月日データ」とは、年月日を示すデータをいう。
「個人データ」とは、利用者の個人情報をいう。本実施形態では、ICキー11の接触式ICタグ23から読み取った「個人ID」を「個人データ」とする。
「扉データ」とは、利用者が開閉した扉に関する情報をいう。本実施形態では、利用者が開閉した扉の「扉ID」を「扉データ」とする。
【0046】
<保管庫管理システム>
図5は、図1に示す保管庫1を使用した保管庫管理システム61の概略構成図であって、データの流れを示す。保管庫管理システム61は複数の保管庫を使用するが、図5ではデータの流れを分かりやすくするために、保管庫1を1個だけ記載している。
保管庫管理システム61は、パソコン62と鍵管理ボックス63と保管庫1とで構成されている。パソコン62は、鍵管理ボックス63に接続されているが、保管庫1の鍵ユニット10には直接接続されていないため、鍵管理ボックス63に収納されるICキー11を介して、システムに使用される保管庫1の利用状態を管理する。
【0047】
図6は、図5に示す鍵管理ボックス63とパソコン62を示す図である。
鍵管理ボックス63は、開閉扉65が付設され、開閉扉65は通常閉じられている。鍵管理ボックス63の開閉扉65の内側には、10個のICキー11を保持するキー孔66が付設されている。鍵管理ボックス63には、カードリーダ67、テンキー操作部68、液晶表示部69が付設されている。鍵管理ボックス63は、通信線70を介してパソコン62に接続され、パソコン62によって動作を制御される。通信線70は、鍵管理ボックス63とパソコン62とを一対一で接続してもよいし、鍵管理ボックス63とパソコン62とをLANなどのネットワークで接続してもよい。キー孔66には、図示しないキー抜け阻止手段により、通常はICキー11を抜くことができない状態となっている。
【0048】
<保管庫管理システムの機能説明>
次に、保管庫管理システム61の機能を説明する。ここでは、保管庫管理システム61を会社に導入し、機密文書を綴じたファイルを収納した保管庫1を管理する場合を、例に挙げて説明する。
図5に示すように、例えば、利用者が非接触式ICチップを備える社員証であるIDカード64を鍵管理ボックス63のカードリーダ67に近づけると、カードリーダ67がIDカード64の非接触式ICチップと通信する。非接触式ICチップには、社員を識別するために個別に付与された「個人ID」が記憶されている。そこで、カードリーダ67は、非接触式ICチップから「個人ID」を取得する。また、鍵管理ボックス63は、他人がIDカード64を使用して不正行為することを防止するために、液晶表示部69にパスワード入力画面を表示してパスワード入力を促す。
【0049】
パソコン62は、保管庫管理システム61の使用権限を有する社員の「個人ID」に「パスワード」と「扉ID」とを関連付けて登録している。パソコン62は、鍵管理ボックス63にIDカード64から読み取らせた「個人ID」を、パソコン62に登録されている「個人ID」と照合して一致する場合には、正当な権限があると判断する。また、パソコン62は、IDカード64から読み取った「個人ID」に関連付けられた「パスワード」を抽出し、利用者が入力した「パスワード」を抽出した「パスワード」と照合し、一致する場合には、利用者が本人であることを認証する。パソコン62は、正当な権限と本人を認証したら、開錠許可信号を鍵管理ボックス63に送信し、開閉扉65の開閉を許可する。
【0050】
また、パソコン62は、各キー孔66に設けた図示しない鍵抜け阻止手段の動作状態を検知し、どのキー孔66にICキー11が差し込まれているか常時把握している。パソコン62は、キー孔66に差し込まれているICキー11の中から1個を特定して接触式I
Cタグ23を初期化した後、鍵管理ボックス63を介してICキー11の接触式ICタグ23に「個人ID」と、「個人ID」に対応する「パスワード」と、「個人ID」に関連付けられた「扉ID」と、ICキー11が鍵として有効な時間を規定する「有効時間データ」とを、書き込む。これらのデータが書き込まれたICキー11は、当該利用者固有の鍵となり、また、特定の保管庫の扉の専用鍵となる。
【0051】
パソコン62は、データの書込みが完了したら、特定したICキー11が収納されているキー孔66の図示しないキー抜け阻止手段を解除する。そして、パソコン62は、鍵管理ボックス63の液晶表示部69に、取り出し可能なICキー11の収納場所を表示する。尚、取り出し可能なICキー11の通知は、キー孔66毎にLEDを設けてLEDの点灯によって知らせてもよいし、図示しないキー抜け阻止手段を解除した後に取り出し可能なICキー11をキー孔66から突出させることにより行ってもよい。利用者は、取り出し可能なICキー11をキー孔66から取り出し、開閉扉65を閉める。パソコン62は、ICキー11が鍵管理ボックス63から取り出された時間を記憶する。
【0052】
ICキー11を所持した利用者は、使用したい保管庫1へ行き、ICキー11を保管庫1の錠前13に差し込む。保管庫1は、当該利用者が正当な権限を有することを確認したら、電子錠8,9を開錠し、扉6,7の開閉を許可する。そして、保管庫1は、利用者が保管庫1を使用する間に、利用者が保管庫1を利用した利用状況を示す「利用データ」(「年月日データ」、「第1時刻データ」、「第2時刻データ」、「画像データ」、「個人データ」、「扉データ」)をICキー11に書き込む。これら保管庫1の処理については、後述する。
【0053】
利用者は、保管庫1の利用が終了したら、ICキー11を返却するために鍵管理ボックス63へ行き、鍵管理ボックス63のカードリーダ67にIDカード64を近づけるとともに、パスワードを入力し、正当な権限を認証されたら、開閉扉65を開く。そして、利用者は、空いているキー孔66にICキー11を差し込み、開閉扉65を閉める。開閉扉65は、閉められると同時に施錠される。このとき、パソコン62は、ICキー11が鍵管理ボックス63に返却された時間を記憶する。
【0054】
パソコン62は、鍵管理ボックス63を介して返却されたICキー11の接触式ICタグ23から「利用データ」(「年月日データ」、「第1時刻データ」、「第2時刻データ」、「画像データ」、「個人データ」、「扉データ」)を読み取り、記憶する。これにより、パソコン62は、何時から何時まで誰がどの保管庫のどの扉を開閉したかを認識するとともに、実際に保管庫の扉を開閉した者の顔を認識する。尚、パソコン62は、ICキー11の接触式ICタグ23に記憶されているデータを全て読み取った後、読み取ったデータから上記「利用データ」を抽出して記憶してもよい。
【0055】
パソコン62は、接触式ICタグ23から読み取った「画像データ」が人間の顔であるか否かを判定する。保管庫1側と別にパソコン62に顔判定させるのは、パソコン62は保管庫1の鍵ユニット10よりデータ処理能力が高く、精度が高い顔判定を行えるからである。パソコン62は、「画像データ」が人間の顔でないと判定した場合には、その旨を保管庫管理システム61の管理者に警告する。
【0056】
<保管庫の動作説明>
次に、上述した保管庫1の動作について説明する。図4は、図3に示す開閉許可プログラム57のフローチャートである。図7は、図1に示す液晶ディスプレイ14に表示されるパスワード入力画面71の一例を示す図である。図8は、図1に示す液晶ディスプレイ14に表示される使用終了指示入力画面75の一例を示す図である。
保管庫1は、利用者がICキー11を錠前13に差し込んで保管庫1を使用する意思表
示をしたときをトリガとして、制御装置51のCPU51がROM53から開閉許可プログラム57を読み出してRAM54にコピーし、実行する。
【0057】
開閉許可プログラム57を実行するCPU51は、先ず図4のステップ1(以下「S1」と略記する。)において、通信が確立したか否かを判断する。通信の確立は、リーダライタ基板33がICキー11の接点部24a,25aに接触して接触式ICタグ23のデータを読み取れる場合には、通信が確立したと判断し、一方、読み取れない場合には、通信が確立しないと判断する。通信が確立しない場合には(S1:NO)、保管庫1の扉6,7の開閉を許可せずに、処理を終了する。
【0058】
通信が確立した場合には(S1:YES)、リーダライタ基板33にICキー11の接触式ICタグ23から「有効時間データ」を読み取らせ、ICキー11を錠前13に差し込んだ日時が「有効時間データ」で定められる有効期間内であるか否かを判断する。有効期間内でない場合には(S2:NO)、当該ICキー11が無効と判断し、そのまま処理を終了する。
【0059】
一方、有効期間内である場合には(S2:YES)、S3において、利用者がICキー11を錠前13に差し込み、キー検出センサ42がICキー11を検出したときに、時刻検出部56が検出した時刻を「第1時刻データ」として、利用データ記憶手段59に記憶する。このとき、例えば、ICキー11が数日間貸し出された場合でも、使用日時を特定できるように、「第1時刻データ」は「年月日データ」と関連付けて記憶される。また、リーダライタ基板33に「第1時刻データ」を「年月日データ」に関連付けてICキー11の接触式ICタグ23に書き込ませる。
【0060】
そして、S4において、「ID番号」を取得して記憶する。すなわち、リーダライタ基板33に接触式ICタグ23から「個人ID」と「扉ID」とを読み取らせ、RAM54に記憶する。
【0061】
そして、S5において、権限認証を行う。権限認証は、接触式ICタグ23から読み取った「個人ID」をID番号記憶手段58に記憶されている「個人ID」に照合し、一致する場合に、正当性を認証する。
【0062】
そして、S6において、他人がICキー11を使用して不正行為することを防止するために、例えば図7に示すようなパスワード入力画面71を液晶ディスプレイ14に表示する。パスワード入力画面71には、パスワードを設定するパスワード設定欄72とともに、パスワードを入力するためのタッチパネル73(「入力手段」の一例)が表示される。尚、鍵ユニット10に「入力部」の一例となるテンキー操作部を設け、テンキー操作部からパスワードを入力させてもよい。よって、S6の処理は、「パスワード入力画面表示制御手段」の一例になり得る。
【0063】
そして、図4のS7において、パスワード認証を行う。パスワード認証は、ICキー11の接触式ICタグ23から「パスワード」を読み取って、利用者が図7に示すパスワード入力画面71に入力した「パスワード」とICキー11の接触式ICタグ23から読み取った「パスワード」とを照合し、一致する場合に、正当性を認証する。この意味で、S7の処理は、「パスワード認証手段」の一例になり得る。
【0064】
そして、図4のS8において、正当な権限が有るか否かを判断する。接触式ICタグ23から読み取った「個人ID」と、パスワード入力画面に入力された「パスワード」との少なくとも一方について正当性を認証できない場合には、正当な権限がないと判断し(S8:NO)、保管庫1の扉6,7の開閉を許可せずに処理を終了する。
【0065】
これに対して、接触式ICタグ23から読み取った「個人ID」と、パスワード入力画面に入力された「パスワード」との何れについても正当性が認証された場合には、正当な権限があると判断し(S8:YES)、S9において、CCDカメラ15に利用者を撮像させる。CCDカメラ15は、赤外線照射装置16が近赤外線を照射し、利用者(撮像対象物)に跳ね返った近赤外線を読み取って画像を取得する。近赤外線を照射することにより、CCDカメラ15は暗い場所でも利用者を撮像できる。CCDカメラ15は、赤外線照射装置16が異なる波長の近赤外線を照射するのに合わせて、2種類の画像を撮像する。そして、S10において、S9で撮像した各画像の輝度を算出する。
【0066】
それから、S11において、人肌領域を検出する。人肌領域の検出は、S10で算出した各画像の輝度の違いを計算し、人肌特有の反射特性により人肌領域を特定することにより行われる。そして、S12において、CCDカメラ15の撮像対象物が人の顔か否かを判定する。人の顔か否かは、S11で検出した人肌領域が、正常範囲内(或いは閾値以上)であるか否かに基づいて判断する。人肌領域が正常範囲内(若しくは閾値以上)である場合には、人間の顔であると判定する。一方、人肌領域が正常範囲外(若しくは閾値未満)である場合には、人間の顔でないと判定する。
【0067】
尚、S10〜S12の処理によって、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔であるか否かを判定しているため、「顔判定手段」の一例になり得る。
【0068】
例えば、利用者がお面をつけている場合には、人肌領域を検知できず、人間の顔でないと判定する。また、人肌領域があっても、利用者がマスクやサングラスをかけ、人肌領域が正常範囲外(若しくは閾値未満)の場合には、人間の顔でないと判定する。このように、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔でない場合には(S11:NO)、S13において、例えば「マスクを取って下さい。」等の警告メッセージを液晶ディスプレイ14に表示する。この意味で、S12の処理は、「警告手段」の一例になり得る。尚、警告は音声出力により行ってもよい。
【0069】
これに対して、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔であると判定した場合には(S12:YES)、S14において、CCDカメラ15が撮像した画像の「画像データ」をS3で記憶した「第1時刻データ」に関連付けて利用データ記憶手段59に記憶する。また、リーダライタ基板33に「画像データ」を、先に書き込まれている「第1時刻データ」に関連付けて接触式ICタグ23に書き込ませる。
【0070】
そして、S15において、ソレノイド39に通電して、ロッド40を回転板35の回転防止溝35bから退避させ、内筒31が錠前本体32に対して回転可能にする。そこで、
利用者は、ICキー11の把持部11aを手指でつまんで、ICキー11を90度正転させる。ソレノイド39は、通電開始後すぐに通電を停止され、ロッド40を回転板35に突き当てる。ICキー11が90度正転すると、ロッド40が回転防止溝35cに進入し、内筒31の回転を制限する。このとき、ICキー11は、ブラケット41の抜き取り防止爪41aが切り欠き21f,22dに係合し、抜き取り不能になる。この状態で、回転検知部43はICキー11が90度正転されたことを検出する。
【0071】
このようにしてICキー11が正転されたことを検出すると(S16:YES)、S17において、S4で取得した「扉ID」によって特定される扉6,7の電子錠8,9に開錠許可信号を送信し、扉6,7の開閉を許可する。それから、S18において、S4にて接触式ICタグ23から読み取った「個人ID」を「個人データ」として、また、開閉を許可した扉6,7の「扉ID」を「扉データ」として、利用データ記憶手段59に記憶すると共に、リーダライタ基板33に「個人データ」と「扉データ」とをS3にて書き込ん
だ「第1時刻データ」に関連付けて接触式ICタグ23に書き込ませる。
【0072】
その後、S19において、使用終了指示が有るか否かを判断する。液晶ディスプレイ14には、例えば、利用者が扉6,7を閉めたときに、図8に示すような使用終了指示入力画面75が表示される。使用終了指示入力画面75には、終了ボタン76が表示されている。利用者が液晶ディスプレイ14の終了ボタン76にタッチするまでは(S19:NO)、そのまま待機する。この状態では、ブラケット41の抜き取り防止爪41aがICキー11の切り欠き21f,22dに係合しており、ICキー11を錠前13から抜き取ることができない。
【0073】
一方、利用者が液晶ディスプレイ14の終了ボタン76にタッチしたら(S19:YES)、S20において、時刻検出部56が検出した時刻を「第2時刻データ」として「第1時刻データ」に関連付けて利用データ記憶手段59に記憶する。また、リーダライタ基板33に「第2時刻データ」をS3で書き込んだ「第1時刻データ」に関連付けてICキー11の接触式ICタグ23に書き込ませる。
【0074】
その後、S21において、ソレノイド39に通電してロッド40を回転板35の回転防止溝35cから退避させる。これにより、ICキー11が回転可能になるので、利用者がICキー11の把持部11aを手指でつまんでICキー11を反転させる。ソレノイド39は、通電後すぐに通電を停止され、ロッド40を回転板35に突き当てる。ICキー11を90度反転させると、ロッド40が回転板35の回転防止溝35bに係合し、ICキー11の回転を防止する。このとき、ICキー11の切り欠き21f,22dはブラケット41の抜き取り防止爪41aから外れる。この時点で、利用者は、ICキー11を錠前13から抜き取ることが可能になる。このように、ソレノイド39を駆動してICキー11を抜き取り可能にしたら、処理を終了する。
【0075】
尚、S3,S14,S20の処理は、リーダライタ基板33に利用データをICキー11の接触式ICタグ23に書き込ませるため、「データ書込制御手段」の一例になり得る。
【0076】
ところで、利用者は、「有効時間データ」が規定する有効時間内であれば、何回でも保管庫1の扉6,7を開閉できる。制御装置50は、利用者が扉6,7を開閉する度に上記処理を行い、「利用データ」をICキー11の接触式ICタグ23に逐一書き込む。
また、ICキー11の接触式ICタグ23に複数の保管庫の「扉ID」を書き込めば、1個のICキー11を各保管庫の扉を開閉できる共通鍵として使用できる。そのため、利用者は、複数の鍵を持ち、保管庫の前で鍵を取捨選択する必要がなく、便利である。そして、利用者が複数の保管庫からファイルを取り出す場合でも、「扉データ」を「年月日データ」、「第1及び第2時刻データ」、「画像データ」、「個人データ」に関連付けた「利用データ」を接触式ICタグ23に書き込む。
よって、例えば、パソコン62等で接触式ICタグ23の「利用データ」を参照すれば、利用者が同じ保管庫を何回も開閉したり、複数の保管庫を開閉する場合でも、どのような顔をした利用者が何時どの保管庫の扉を開閉したかを詳細に認識できる。
【0077】
<作用効果>
第1実施形態の保管庫1は、リーダライタ基板33によって保管庫1の「利用データ」をICキー11の接触式ICタグ23に書き込むので(図4のS3,S14,S18,S20参照)、例えば、保管庫管理システム61のパソコン62がICキー11の接触式ICタグ23に記憶されている「利用データ」を読み取れば、パソコン62と保管庫1とが配線等で直接接続されていなくても、保管庫1の利用状態を把握することができ、セキュリティを向上させることができる。
【0078】
第1実施形態の保管庫1は、リーダライタ基板33によって「第1時刻データ」と「第2時刻データ」とをICキー11の接触式ICタグ23に記憶させるので(図4のS3,S20参照)、保管庫1の扉6,7がいつ開かれて、いつ閉じられたを把握することができる。このため、例えば、保管庫1のファイルが紛失した場合に、紛失時間を特定し、その特定した時間内に保管庫1の扉6,7を開閉した利用者を「第1及び第2時刻データ」に基づいて特定することにより、責任の所在を明確にすることができる。
【0079】
第1実施形態の保管庫1は、CCDカメラ15が撮像した画像の「画像データ」をICキー11の接触式ICタグ23に記憶させるので(図4のS14参照)、CCDカメラ15に撮像される緊張感を利用者に与え、保管庫1のファイル等の被保管物を不正に持ち出す不正行為を予防することができる。
【0080】
第1実施形態の保管庫1は、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔である場合に保管庫1の扉6,7の開閉を許可するので(図4のS12:YES,S14〜S17参照)、例えば、利用者が顔にお面やマスク等をつけ、CCDカメラ15が人間の顔を撮像できないときには、保管庫1の扉6,7を開閉できず、セキュリティが向上する。すなわち、お面やマスクなどをして顔を隠した不審者では、保管庫1の扉6,7を開閉してファイル(被保管物)を持ち出せない。
【0081】
第1実施形態の保管庫1は、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔でない場合に、液晶ディスプレイ14に警告メッセージを表示するので(図4のS12:NO、S13参照)、例えば、正当な権限を有する者がマスクなどをして、CCDカメラ15に顔を撮像させない場合には、顔の「画像データ」を取得できないために扉6,7の開閉が許可されないことを警告によって利用者に知らしめ、故障の誤認識を防止できる。
【0082】
第1実施形態の保管庫1は、液晶ディスプレイ14に表示したパスワード入力画面71にタッチパネル73を用いて「パスワード」が入力された場合に、入力された「パスワード」をICキー11の接触式ICタグ23に記憶されている「パスワード」と照合し、一致することを条件に正当な権限を認証するので(図4のS6〜S8参照)、「パスワード」を記憶する記憶手段を保管庫1の制御装置50に設ける必要がなく、「パスワード」を第三者に盗まれにくい。
【0083】
第1実施形態の保管庫1は、「ID番号」が「個人ID」と「扉ID」とを含むので、複数の者がICキー11を共有する場合でも、ICキー11の接触式ICタグ23に「ID番号」を書き込めば(図4のS4参照)、「ID番号」に対応する利用者と保管庫1の扉6,7に専用のICキー11を簡単に作ることができる。
【0084】
第1実施形態の保管庫1は、ICキー11の接触式ICタグ23が、「ID番号」の有効時間に関する「有効時間データ」を記憶しているので(図5)、例えば、ICキー11を第三者に盗まれても、第三者は有効時間経過後にICキー11を用いて保管庫1の扉6,7を不正に開閉することができず、不正行為にさらされる危険を低減できる。
【0085】
第1実施形態の保管庫1は、ICキー11だけでなく、保管庫1の利用データ記憶手段59にも「利用データ」を記憶しているので、例えば、利用者が接触式ICタグ23に記憶されている利用データを消滅させるためにICキー11を破損させたり、破棄した場合でも、利用データ記憶手段59に記憶されている「利用データ」を取得することにより、保管庫1の利用状態を把握することができる。このことにより、不正行為を働こうとする者に、ICキー11を処分しても自分の顔の画像データや保管庫1の開閉履歴が残るという危惧を与え、不正行為の発生率を低くすることができる。
【0086】
更に、第1実施形態の保管庫1は、利用データ記憶手段59とICキー11の接触式ICタグ23に「第1及び第2時刻データ」と「画像データ」と「年月日データ」と「個人データ」と「扉データ」とを相互に関連付けて記憶するので、これらのデータを参照すれば、何時誰がどの保管庫1のどの扉6,7を開閉したかを把握できる。また、「画像データ」が人間の顔か否かを判定することにより、利用者が顔を見せられないような不審者であるか否かを判断できる。
【0087】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)上記実施形態では、「第1時刻データ」と「第2時刻データ」とを「年月日データ」と別々に管理したが、「第1時刻データ」と「第2時刻データ」とをそれぞれ「年月日データ」と一緒にして「第1日時データ」及び「第2日時データ」として管理しても良い。
(2)上記実施形態では、人肌領域に基づいてCCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔か否かを判定した。これに対して、例えば、CCDカメラ15が撮像した画像に、顔のパーツ(眉毛、目、鼻、口)が全て含まれているか否かによって、CCDカメラ15の撮像対象物が人間の顔であるか否かを判定しても良い。
(3)上記実施形態では、ICキー11が接触式ICタグ23を備えるが、接触式ICタグ23に代えて非接触式ICタグを使用してもよい。そして、非接触式ICタグにデータを読み書きするリーダライタ装置を、錠前13内に設けてもよいし、錠前13を省略して鍵ユニット10に設けてもよい。
(4)上記実施形態では、観音開き式の扉6,7を備える保管庫1を例に挙げて説明したが、引き出し式の扉を備える保管庫であってもよい。
(5)上記実施形態では、キー検出センサ42を内筒31の溝31dに設けたが、ICキー11の先端部が突き当たる差込口31eの内壁にリミットスイッチや近接スイッチなどを設けてキー11を錠前13に差し込んだこと、すんわち保管庫1の使用開始指示を検知するようにしてもよい。また、液晶ディスプレイ14に使用開始ボタンを表示し、使用開始ボタンに利用者がタッチしたことを保管庫1の使用開始指示として検知してもよい。
(6)上記実施形態では、液晶ディスプレイ14に終了ボタン76を表示したが、錠前ユニット10に終了スイッチを設けてもよい。保管庫1の扉6,7に開閉検知センサを設け、開閉検知センサが扉6,7が閉まったことを検知した場合に、それを使用終了指示として検知してもよい。
(7)上記実施形態では、回転検知部43によってICキー11の回転を検知した。これに対して、例えば、回転板35に磁石を取り付け、鍵ユニット10のケース12に磁気センサを付設し、磁石の移動量からICキー11の回転を検知してもよい。また、ソレノイド39のロッド40が回転板35の回転防止溝35b,35cに親友したときにリミットスイッチを押すようにして、ICキー11の回転を検知してもよい。
(8)上記実施形態では、パソコン62及び保管庫1がパスワードを用いて本人認証するが、指紋や静脈、網膜、虹彩、声紋等によって本人認証してもよい。
【0088】
(9)上記実施形態における保管庫1の動作説明では、扉6,7の電子錠8,9を開錠しているが、例えば、扉6の「扉ID」のみが接触式ICタグ23に記憶されている場合には、電子錠8のみを開錠する。これにより、利用者は、収納ボックス2からはファイルを取り出すことができるが、収納ボックス3からはファイルを取り出すことができない。
(10)上記実施形態では、接触式ICタグ23から読み取った「扉ID」を「扉データ」としたが、開閉検知センサを扉6,7に設け、開閉を検知した扉の「扉ID」を「扉データ」として記憶すれば、より詳細に保管庫を管理できる。
【0089】
(11)上記実施形態では、例えば、保管庫1を開いた後に鍵の閉め忘れをした場合に、誰でいつ鍵を開けて鍵を閉め忘れたかを管理できるように、「第1及び第2時刻データ」
や「画像データ」等の利用データをICキー10の接触式ICタグ23や制御装置50の利用データ記憶手段59に逐次記憶した(図4のS3,S14,S18,S20参照)。これに対して、上記利用データを電子錠8,9を施錠する前などに一括してICキー11の接触式ICタグ23や制御装置50の利用データ記憶手段59に記憶させても良い。
【0090】
(12)上記実施形態では、パソコン62は、ICキー11の返却時に接触式ICタグ23から読み取った「画像データ」が人間の顔であるか否かを判定した。これに対して、例えば、パソコン62に、保管庫管理システム61の使用権限を有する者の顔を撮像した「顔データ」を予め「個人ID」に関連付けて登録しておき、ICキー11の接触式ICタグ23から読み取った「画像データ」と登録済みの「顔データ」とを照合して個人認証してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の保管庫の外観斜視図である。
【図2】図1に示す錠前とICキーの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す扉の開閉を許可する制御装置の電気ブロック図である。
【図4】図3に示す開閉許可プログラムのフローチャートである。
【図5】図1に示す保管庫を使用した鍵管理システムの概略構成図であって、データの流れを示す。
【図6】図5に示す鍵管理ボックスとパソコンを示す図である。
【図7】図1に示す液晶ディスプレイに表示されるパスワード入力画面の一例を示す図である。
【図8】図1に示す液晶ディスプレイに表示される使用終了指示入力画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 保管庫管理システム
6,7 扉
8,9 電子錠
10 保管庫
11 ICキー
14 液晶ディスプレイ(表示手段)
15 CCDカメラ(撮像手段)
16 赤外線照射装置(物体検知手段)
23 接触式ICタグ
33 リーダライタ基板33(リーダライタ手段)
42 キー検出センサ(使用開始指示検知手段)
57 開閉許可プログラム(データ書込制御手段、顔判定手段、撮像制御手段、警告手段、パスワード入力画面表示制御手段、パスワード認証手段)
59 利用データ記憶手段
71 パスワード入力画面
73 タッチパネル(入力手段)
76 終了ボタン(使用終了指示検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉が許可された保管庫のID番号を記憶するICタグを供えるICキーを用いて保管庫の開閉を行うシステムで使用される保管庫であって、前記ICタグから取得した前記ID番号に基づいて権限認証を行い、正当な権限を認証した場合に、前記保管庫に設けられた扉の開閉を制御する開閉手段に前記扉を開閉する許可を与える保管庫において、
前記ICタグにデータを読み書きするリーダライタ手段と、
前記リーダライタ手段に、前記保管庫の利用データを前記ICタグに書き込ませるデータ書込制御手段を有する
ことを特徴とする保管庫。
【請求項2】
請求項1に記載する保管庫において、
前記保管庫の使用開始指示を検知する使用開始指示検知手段と、
前記保管庫の使用終了指示を検知する使用終了指示検知手段と、を有し、
前記利用データは、前記使用開始指示検知手段が前記使用開始指示を検知した時刻である第1時刻データと、前記使用終了指示検知手段が使用終了指示を検知した時刻である第2時刻データと、を含む
ことを特徴とする保管庫。
【請求項3】
請求項1に記載する保管庫において、
物体を撮像する撮像手段を有し、
前記利用データは、前記撮像手段が撮像した画像の画像データを含む
ことを特徴とする保管庫。
【請求項4】
請求項3に記載する保管庫において、
前記撮像手段の撮像対象物が人間の顔であるか否かを判定する顔判定手段を有し、
前記データ書込制御手段は、前記顔判定手段が、前記撮像手段の撮像対象物が前記人間の顔であると判定した場合に、前記扉の開閉を許可する
ことを特徴とする保管庫。
【請求項5】
請求項4に記載する保管庫において、
前記顔判定手段が、前記撮像手段の撮像対象物が前記人間の顔でないと判定した場合に、警告を出力する警告手段を有する
ことを特徴とする保管庫。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する保管庫において、
前記ICタグがパスワードを記憶しており、
データを表示する表示手段と、
データを入力する入力手段と、
前記権限認証を行う場合にパスワード入力画面を前記表示手段に表示させるパスワード入力画面表示制御手段と、
前記ICタグから前記パスワードを取得し、前記パスワード入力画面表示制御手段が表示した前記パスワード入力画面に前記入力手段を用いて入力されたパスワードを前記ICタグから取得したパスワードと照合して一致する場合に、正当な権限を認証するパスワード認証手段と
を有することを特徴とする保管庫。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載する保管庫において、
前記ID番号は、前記保管庫の使用権限を示す個人IDと、前記保管庫の扉を特定する扉IDとを含む
ことを特徴とする保管庫。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載する保管庫において、
前記ICタグは、前記ID番号が有効な有効時間に関する有効時間データを記憶している
ことを特徴とする保管庫。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載する保管庫において、
前記利用データを記憶する利用データ記憶手段を有する
ことを特徴とする保管庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−267116(P2008−267116A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270924(P2007−270924)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【分割の表示】特願2007−106941(P2007−106941)の分割
【原出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(391020322)東海理研株式会社 (42)
【Fターム(参考)】