説明

保護膜形成用薬液

【課題】表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの製造方法において、パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善するための、撥水性保護膜形成用薬液を提供することを課題とする。
【解決手段】表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、一般式RSi(H)(X)4−a−bで表されるケイ素化合物A及び酸、または、一般式RSi(H)(CH(Z)4−g−h−wで表されるケイ素化合物C及び水の含有量が35質量%以下の塩基を含み、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下である、撥水性保護膜形成用薬液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造などにおいて、特に微細でアスペクト比の高い回路パターン化されたデバイスの製造歩留まりの向上を目的とした基板(ウェハ)の洗浄技術に関する。特に、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの凹凸パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善することを目的とした撥水性保護膜形成用薬液等に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため回路パターンの微細化が進行しており、それに伴い製造歩留まりの低下を引き起こすパーティクルサイズも微小化している。その結果、微小化したパーティクル等の汚染物質の除去を目的とした洗浄工程が多用されており、その結果、半導体製造工程全体の3〜4割にまで洗浄工程が占めている。
【0003】
その一方で、従来行われていたアンモニアの混合洗浄剤による洗浄では、回路パターンの微細化に伴い、その塩基性によるウェハへのダメージが問題となっている。そのため、よりダメージの少ない例えば希フッ酸系洗浄剤への代替が進んでいる。
【0004】
これにより、洗浄によるウェハへのダメージの問題は改善されたが、半導体デバイスの微細化に伴うパターンのアスペクト比が高くなることによる問題が顕在化している。すなわち洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象を引き起こし、歩留まりが大幅に低下することが大きな問題となっている。
【0005】
このパターン倒れは、ウェハを洗浄液またはリンス液から引き上げるときに生じる。これは、パターンのアスペクト比が高い部分と低い部分との間において、残液高さの差ができ、それによってパターンに作用する毛細管力に差が生じることが原因と言われている。
【0006】
このため、毛細管力を小さくすれば、残液高さの違いによる毛細管力の差が低減し、パターン倒れが解消すると期待できる。毛細管力の大きさは、以下に示される式で求められるPの絶対値であり、この式からγ、もしくは、cosθを小さくすれば、毛細管力を低減できると期待される。
【0007】
P=2×γ×cosθ/S
(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)
特許文献1には、γを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として気液界面がパターンを通過する前に洗浄液を水から2−プロパノールへ置換する技術が開示されている。しかし、この手法では、パターン倒れ防止に有効である一方、γが小さい2−プロパノール等の溶媒は通常の接触角も小さくなり、その結果、cosθが大きくなる傾向にある。そのため、対応できるパターンのアスペクト比が5以下である等、限界があると言われている。
【0008】
また、特許文献2には、cosθを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として、レジストパターンを対象とする技術が開示されている。この手法は接触角を90°付近とすることで、cosθを0に近づけ毛細管力を極限まで下げることによって、パターン倒れを抑制する手法である。しかし、この開示された技術はレジストパターンを対象としており、レジスト自体を改質するものであり、さらに最終的にレジストと共に除去が可能であるため、乾燥後の処理剤の除去方法を想定する必要がなく、本目的には適用できない。
【0009】
また、特許文献3には、シリコンを含む膜により凹凸形状パターンを形成したウェハ表面を酸化等により表面改質し、該表面に水溶性界面活性剤又はシランカップリング剤を用いて撥水性保護膜を形成し、毛細管力を低減し、パターンの倒壊を防止する洗浄方法が開示されている。しかし、上記で使用されている撥水剤は、撥水性付与効果が不十分である場合がある。
【0010】
また、半導体デバイスのパターン倒れを防止する手法として、臨界流体の利用や液体窒素の利用等が提案されている。しかし、いずれも一定の効果があるものの、従来の洗浄プロセスよりもスループットが悪いなど、量産工程への適用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−198958号公報
【特許文献2】特開平5−299336号公報
【特許文献3】特許第4403202号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体デバイスの製造時には、ウェハ表面は微細な凹凸パターンを有する面とされる。本発明は、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハ(以降、「シリコンウェハ」または単に「ウェハ」と記載する)の製造方法において、スループットが損なわれることなく、パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善するための、ウェハの凹凸パターン表面に撥水性保護膜を形成する保護膜形成用薬液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のウェハの凹凸パターン表面に撥水性保護膜を形成する保護膜形成用薬液(以降「保護膜形成用薬液」または単に「薬液」と記載する)は、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜(以降「撥水性保護膜」または単に「保護膜」と記載する)を形成するための薬液であり、下記一般式[1]で表されるケイ素化合物A、および、プロトンをケイ素化合物Aに供与する酸又は/および電子をケイ素化合物Aから受容する酸を含み、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることを特徴とする。

(式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素または窒素の1価の有機基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は3以下である。)
【0014】
前記一般式[1]のRは、前記保護膜の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該保護膜表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。これにより、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
【0015】
前記保護膜は、前記一般式[1]のXがシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって形成される。従って、前記シリコンウェハの凹部から洗浄液が除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹部表面に前記保護膜が形成されているので、該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。また、前記保護膜は後工程で除去できる。
【0016】
前記酸は、プロトンをケイ素化合物Aに供与又は電子をケイ素化合物Aから受容することで、ケイ素化合物AとシリコンウェハのSiとの反応を促進する触媒として作用する。酸は下図の機構のように作用しているものと考えられる。なお、図中で酸を「L」と表記する。当該酸が前記薬液中に存在することにより、保護膜を短時間で形成することができる。なお、前記酸が、保護膜の一部を形成してもよい。

【0017】
前記酸に対して、水の存在量が多くなると、酸はプロトンを水に供与又は水から電子を受容することが多くなり、前記した触媒としての作用が低減しやすくなり、ひいては、前記保護膜が形成されにくくなる。このため、薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることが好ましい。水分量が5000質量ppm超の場合、前記保護膜を短時間で形成しにくくなる。このため、前記水分の総量は、少ないほど好ましく、特に1000質量ppm以下、さらには500質量ppm以下が好ましい。さらに、水の存在量が多いと、前記薬液の保管安定性が低下しやすいため、水分量は少ない方が好ましく、200質量ppm以下、さらには100質量ppm以下が好ましい。なお、前記水分の総量は0.1質量ppm以上であってもよい。また、前記酸は、原料の時点から水の含有量が少ないものほど好ましく、原料における好ましい水の含有率は、35質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、さらには1質量%以下が好ましい。また、前記酸の水の含有量は0.001質量%以上であってもよい。
【0018】
また、前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aは、下記一般式[2]で表されるアルコキシシランであることが好ましい。

(式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。cは1〜3の整数、dは0〜2の整数であり、cとdの合計は3以下である。)
【0019】
また、前記薬液中に含まれるアルコキシシランと酸は、反応によって得られたものであってもよい。例えば、以下の式[3]ようにケイ素化合物Bとアルコールを反応させて得られたものであってもよい。

(式[3]中、RSi(H)(Y)4−e−fはケイ素化合物B、R−OHはアルコールを表し、RSi(H)(OR4−e−fは反応から得られるアルコキシシラン、H−Yは、酸を表す。Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。eは1〜3の整数、fは0〜2の整数であり、eとfの合計は3以下である。また、Yは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、−OS(O)−R、及び、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【0020】
また、本発明の保護膜形成用薬液は、下記一般式[4]で表されるケイ素化合物C、および、水の含有量が35質量%以下の塩基を含むみ、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であるものであってもよい。

(式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素の1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、gは0〜3の整数、hは0〜2の整数、wは0〜2の整数であり、gとhの合計は1〜3、gとwの合計は1〜3、gとhとwの合計は1〜3である。)
【0021】
前記一般式[4]のRは、前記保護膜の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該保護膜表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。これにより、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
【0022】
前記保護膜は、前記一般式[4]のZがシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって形成される。従って、前記シリコンウェハの凹部から洗浄液が除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹部表面に前記保護膜が形成されているので、該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。また、前記保護膜は後工程で除去できる。
【0023】
前記塩基は、前記ケイ素化合物CとシリコンウェハのSiとの反応を促進する触媒として作用する。当該塩基が前記薬液中に存在することにより、保護膜を短時間で形成することができる。なお、前記塩基が、保護膜の一部を形成してもよい。
【0024】
前記塩基は、水を含有するものであると、前記薬液中に含まれる水の増加につながり、前記保護膜が形成されにくくなる。このため、前記塩基は、水の含有量が少ないものほど好ましく、好ましい水の含有率は、35質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、さらには1質量%以下が好ましい。また、前記塩基の水の含有量は0.001質量%以上であってもよい。
【0025】
また、前記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cは、下記一般式[5]で表されるアルコキシシランであることが好ましい。

(式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜2の整数であり、iとjの合計は1〜3、iとkの合計は1〜3、iとjとkの合計は1〜3である。)
【0026】
また、前記薬液中に含まれるアルコキシシランと塩基は、反応によって得られたものであってもよい。例えば、以下の式[6]、または、式[7]ようにケイ素化合物Dとアルコールを反応させて得られたものであってもよい。


(式[6]において、R10Si(H)(CH(W)4−p−q−rはケイ素化合物D、R11−OHはアルコールを表し、R10Si(H)(CH(OR114−p−q−rは反応から得られるアルコキシシラン、H−Wは塩基を表す。また、式[7]において、[R12(CH(H)Si]N−R133−vはケイ素化合物D、R14−OHはアルコールを表し、R12(CH(H)SiOR14は反応から得られるアルコキシシラン、N(H)(R133−vは塩基を表す。R10は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R11は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R11で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。R12は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R13は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜8の1価の有機基、および、水素基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R14は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R14で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。pは0〜3の整数、qは0〜2の整数、rは0〜2の整数であり、pとqの合計は1〜3、pとrの合計は1〜3、pとqとrの合計は1〜3であり、sは0〜3の整数、tは0〜2の整数、uは0〜2の整数であり、sとtとuの合計は3であり、vは1〜3の整数である。また、Wは、それぞれ互いに独立して、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【0027】
また、前記薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることが好ましい。前記0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個超であると、パーティクルによるパターンダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であれば、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。なお、前記0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり1個以上あってもよい。なお、本発明における薬液中の液相でのパーティクル測定は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して測定するものであり、パーティクルの粒径とは、PSL(ポリスチレン製ラテックス)標準粒子基準の光散乱相当径を意味する。
【0028】
また、前記薬液中の、Na、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であることが好ましい。前記の各元素の金属不純物としては、金属微粒子、イオン、コロイド、錯体、酸化物や窒化物といった形で、溶解、未溶解に係らず薬液中に存在するもの全てが対象となる。前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し100質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流が増大する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であると、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。なお、前記金属不純物含有量は、該薬液総量に対し各0.01質量ppb以上であってもよい。
【0029】
本発明の保護膜形成用薬液は、凹凸パターンが形成されたウェハの洗浄工程において洗浄液を該薬液に置換して使用される。また、前記置換した薬液は他の洗浄液に置換されてもよい。
【0030】
前記のように洗浄液を保護膜形成用薬液に置換し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に該薬液が保持されている間に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記保護膜が形成される。本発明の保護膜は、必ずしも連続的に形成されていなくてもよく、また、必ずしも均一に形成されていなくてもよいが、より優れた撥水性を付与できるため、連続的に、また、均一に形成されていることがより好ましい。
【0031】
本発明において、ウェハの撥水性保護膜とは、ウェハ表面に形成されることにより、該ウェハ表面の濡れ性を低くする膜、すなわち撥水性を付与する膜のことである。本発明において撥水性とは、物品表面の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該物品表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる意味である。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。該相互作用の低減により、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
【0032】
本発明では、洗浄液が凹部から除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記保護膜が形成されているので、該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。また、前記保護膜は、ウェハ表面を光照射すること、ウェハを加熱すること、ウェハをオゾン曝露すること、及び、ウェハ表面にプラズマ照射することから選ばれる少なくとも1つの処理により除去できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の保護膜形成用薬液によって形成される保護膜は撥水性に優れることから、ウェハの凹凸パターン表面の毛細管力を低下させ、ひいてはパターン倒れ防止効果を示す。該薬液を用いると、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの製造方法中の洗浄工程が、スループットが低下することなく改善される。従って、本発明の保護膜形成用薬液を用いて行われる表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの製造方法は、生産性が高いものとなる。
【0034】
本発明の保護膜形成用薬液は、今後益々高くなると予想される例えば7以上のアスペクト比を有する凹凸パターンにも対応可能であり、より高密度化された半導体デバイス生産のコストダウンを可能とする。しかも従来の装置から大きな変更がなく対応でき、その結果、各種の半導体デバイスの製造に適用可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたウェハ1を斜視したときの模式図を示す図である。
【図2】図1中のa−a’断面の一部を示したものである。
【図3】洗浄工程にて凹部4が保護膜形成用薬液8を保持した状態の模式図を示している。
【図4】保護膜が形成された凹部4に水系洗浄液が保持された状態の模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の保護膜形成用薬液を用いる、表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの好適な洗浄方法は、
(工程1)ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系洗浄液を保持する工程、
(工程2)凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する工程、
(工程3)前記洗浄液Aを保護膜形成用薬液で置換し、該薬液を凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持する工程、
(工程4)乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程、
(工程5)保護膜を除去する工程
を有する。
【0037】
さらに、保護膜形成用薬液を凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持する工程(工程3)の後で、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液Bに置換した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。また、前記洗浄液Bへの置換を経て、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系溶液からなる水系洗浄液を保持した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。また、前記保護膜形成用薬液が水系洗浄液と置換可能である場合は、前記洗浄液Bによる置換を省略しても構わない。
【0038】
本発明において、ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記薬液や洗浄液を保持できるのであれば、該ウェハの洗浄方式は特に限定されない。ウェハの洗浄方式としては、ウェハをほぼ水平に保持して回転させながら回転中心付近に液体を供給してウェハを1枚ずつ洗浄するスピン洗浄に代表される枚葉方式や、洗浄槽内で複数枚のウェハを浸漬し洗浄するバッチ方式が挙げられる。なお、ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に前記薬液や洗浄液を供給するときの該薬液や洗浄液の形態としては、該凹部表面に保持された時に液体になるものであれば特に限定されず、たとえば、液体、蒸気などがある。
【0039】
前記保護膜形成用薬液は、下記一般式[1]で表されるケイ素化合物A、または下記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cを含む。


(式[1]において、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素または窒素の1価の有機基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は3以下である。また、式[4]において、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素の1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、gは0〜3の整数、hは0〜2の整数、wは0〜2の整数であり、gとhの合計は1〜3、gとwの合計は1〜3、gとhとwの合計は1〜3である。)
【0040】
前記一般式[1]、及び[4]において、X、及びZとしてのハロゲン基の例としては、クロロ基、ブロモ基などがある。また、Siに結合する元素が酸素または窒素の1価の有機基には、水素、炭素、窒素、酸素だけでなく、ケイ素、硫黄、ハロゲン元素などが含まれていても良い。Siと結合する元素が窒素の1価の有機基の例としては、イソシアネート基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソチオシアネート基、アジド基、アセトアミド基、−N(CH)C(O)CH、−N(CH)C(O)CF、−N=C(CH)OSi(CH、−N=C(CF)OSi(CH、−NHC(O)−OSi(CH、−NHC(O)−NH−Si(CH、イミダゾール環(下式[8])、オキサゾリジノン環(下式[9])、モルホリン環(下式[10])、−NH−C(O)−Si(CH、−N(H)2−α(Si(H)β3−βα(αは1または2、βは0〜2の整数)などがあり、Siと結合する元素が酸素の1価の有機基としては、Si−O−CやSi−O−SでSiと結合するものがあり、Si−O−Cで結合するものの例としては、アルコキシ基、−OC(CH)=CHC(O)CH、−OC(CH)=N−Si(CH、−OC(CF)=N−Si(CH、−OC(O)−R15(R15は、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)などがあり、Si−O−Sで結合するものの例としては、−OS(O)−R16(R16は、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)などが挙げられる。このようなケイ素化合物AまたはCは、前記反応性部位であるX、及びZがシリコンウェハの凹凸パターン表面の反応サイトであるシラノール基と速やかに反応し、ケイ素化合物AまたはCがシロキサン結合を介してシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって、ウェハ表面を疎水性のR基またはR基で覆うことができるため、短時間で該ウェハの凹部表面の毛細管力を小さくできる。

【0041】
また、前記一般式[1]において4−a−bで表されるケイ素化合物AのXの数、または、前記一般式[4]において4−g−h−wで表されるケイ素化合物CのZの数が1であると、前記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0042】
また、前記一般式[1]におけるRは、それぞれ互いに独立してC2m+1(m=1〜18)、および、C2n+1CHCH(n=1〜8)から選ばれる少なくとも1つの基であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を形成した際に、該表面の濡れ性をより低くできる、すなわち、該表面により優れた撥水性を付与できるためより好ましい。また、mが1〜8、nが1〜6であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。
【0043】
前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aは、下記一般式[2]で表されるアルコキシシランであることが好ましい。

(式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。cは1〜3の整数、dは0〜2の整数であり、cとdの合計は3以下である。)
【0044】
また、前記一般式[4]におけるRは、それぞれ互いに独立してC2m+1(m=2〜18)、および、C2n+1CHCH(n=2〜8)から選ばれる少なくとも1つの基であると、前記保護膜を形成した際に、前記凹凸パターン表面に保護膜を形成した際に、該表面の濡れ性をより低くできる、すなわち、該表面により優れた撥水性を付与できるためより好ましい。また、mが2〜8、nが2〜6であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。
【0045】
前記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cは、下記一般式[5]で表されるアルコキシシランであることが好ましい。

(式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜2の整数であり、iとjの合計は1〜3、iとkの合計は1〜3、iとjとkの合計は1〜3である。)
【0046】
前記アルコキシシランとしては、例えば、CHSi(OCH、CSi(OCH、CSi(OCH、CSi(OCH、C11Si(OCH、C13Si(OCH、C15Si(OCH、C17Si(OCH、C19Si(OCH、C1021Si(OCH、C1123Si(OCH、C1225Si(OCH、C1327Si(OCH、C1429Si(OCH、C1531Si(OCH、C1633Si(OCH、C1735Si(OCH、C1837Si(OCH、(CHSi(OCH、CSi(CH)(OCH、(CSi(OCH、CSi(CH)(OCH、(CSi(OCH、CSi(CH)(OCH、(CSi(OCH、C11Si(CH)(OCH、C13Si(CH)(OCH、C15Si(CH)(OCH、C17Si(CH)(OCH、C19Si(CH)(OCH、C1021Si(CH)(OCH、C1123Si(CH)(OCH、C1225Si(CH)(OCH、C1327Si(CH)(OCH、C1429Si(CH)(OCH、C1531Si(CH)(OCH、C1633Si(CH)(OCH、C1735Si(CH)(OCH、C1837Si(CH)(OCH、(CHSiOCH、CSi(CHOCH、(CSi(CH)OCH、(CSiOCH、CSi(CHOCH、(CSi(CH)OCH、(CSiOCH、CSi(CHOCH、(CSiOCH、C11Si(CHOCH、C13Si(CHOCH、C15Si(CHOCH、C17Si(CHOCH、C19Si(CHOCH、C1021Si(CHOCH、C1123Si(CHOCH、C1225Si(CHOCH、C1327Si(CHOCH、C1429Si(CHOCH、C1531Si(CHOCH、C1633Si(CHOCH、C1735Si(CHOCH、C1837Si(CHOCH、(CHSi(H)OCH、CHSi(H)OCH、(CSi(H)OCH、CSi(H)OCH、CSi(CH)(H)OCH、(CSi(H)OCH等のアルキルメトキシシラン、あるいは、CFCHCHSi(OCH、CCHCHSi(OCH、CCHCHSi(OCH、CCHCHSi(OCH、C11CHCHSi(OCH、C13CHCHSi(OCH、C15CHCHSi(OCH、C17CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(CH)(OCH、CCHCHSi(CH)(OCH、CCHCHSi(CH)(OCH、CCHCHSi(CH)(OCH、C11CHCHSi(CH)(OCH、C13CHCHSi(CH)(OCH、C15CHCHSi(CH)(OCH、C17CHCHSi(CH)(OCH、CFCHCHSi(CHOCH、CCHCHSi(CHOCH、CCHCHSi(CHOCH、CCHCHSi(CHOCH、C11CHCHSi(CHOCH、C13CHCHSi(CHOCH、C15CHCHSi(CHOCH、C17CHCHSi(CHOCH、CFCHCHSi(CH)(H)OCH等のフルオロアルキルメトキシシラン、あるいは、前記メトキシシランのメトキシ基のメチル基部分を、メチル基以外の炭素数が1〜18の1価の有機基に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0047】
さらに、前記一般式[2]のR、または、前記一般式[5]のRが、アルキル基であると、前記凹凸パターン表面に保護膜を短時間に形成できるためより好ましく、さらに直鎖アルキル基であると、該保護膜をさらに短時間で形成できるためより好ましい。また、前記直鎖アルキル基の炭素数が1〜6であると、保護膜をさらに短時間で形成できるためより好ましい。
【0048】
前記薬液中の酸としては、無機酸や有機酸がある。水の含有量が少ない無機酸の例としては、塩化水素、硫酸、過塩素酸、リン酸など、有機酸の例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸などがある。
【0049】
また、酸としてはルイス酸も用いることができる。ルイス酸の定義については、例えば「理化学辞典(第五版)」に記載されている。ルイス酸としては、酸無水物、ホウ素化合物、ケイ素化合物があり、酸無水物の例としては、無水トリフルオロメタンスルホン酸などの一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良い無水アルカンスルホン酸、無水酢酸や無水トリフルオロ酢酸、無水ペンタフルオロプロピオン酸などの一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良い無水カルボン酸など、ホウ素化合物の例としては、アルキルホウ酸エステル、アリールホウ酸エステル、トリス(トリフルオロアセトキシ)ホウ素、トリアルコキシボロキシン、トリフルオロホウ素など、ケイ素化合物の例としては、クロロシラン、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルアルキルスルホネート、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルカルボキシレートなどが挙げられる。なお、前記ケイ素化合物が用いられた場合、該ケイ素化合物で前記保護膜の少なくとも一部が形成されても良い。
【0050】
これらのうち、清浄度を考慮すると、ブレンステッド酸、酸無水物、クロロシラン、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルアルキルスルホネート、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良いアルキルシリルカルボキシレートなどのケイ素化合物が特に好ましい。なお、前記ケイ素化合物が用いられた場合、該ケイ素化合物で前記保護膜の少なくとも一部が形成されても良い。
【0051】
前記塩基としては、アンモニア、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアニリン、アルキルアミン、ピリジン、ピペラジン、N−アルキルモルホリン、R17Si−A4−x(R17は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基、AはSiと結合する元素が窒素であり、フッ素やケイ素原子を含んでいても良い1価の有機基、xは1〜3の整数)等の含窒素化合物類などがある。特に、触媒能を考慮すると、アンモニアやアルキルアミンが好ましい。なお、R17Si−A4−xが用いられた場合、R17Si−A4−xで前記保護膜の少なくとも一部が形成されても良い。
【0052】
触媒能を考慮すると、前記薬液中の触媒は酸が好ましく、中でも強酸のブレンステッド酸やその酸無水物、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されたアルキルシリルアルキルスルホネート、一部または全ての水素がフッ素原子等で置換されたアルキルシリルカルボキシレートが特に好ましい。
【0053】
前記薬液において、触媒として作用する酸または塩基の濃度は、前記ケイ素化合物Aまたは前記ケイ素化合物Cの総量100質量%に対して0.01〜60質量%であることが好ましい。添加量が少ないと触媒効果が低下するので好ましくなく、過剰に多くしても触媒効果は向上せず、逆に、ウェハ表面を浸食したり、不純物としてウェハに残留する懸念もある。このため、前記触媒濃度は、前記ケイ素化合物Aまたは前記ケイ素化合物Cの総量100質量%に対して0.05〜50質量%であることが特に好ましい。
【0054】
また、前記薬液において、前記のケイ素化合物A及び酸、または、前記のケイ素化合物C及び塩基は、溶媒によって希釈されてもよい。前記薬液の総量100質量%に対して、ケイ素化合物Aと酸の添加量の総和、または、前記のケイ素化合物Cと塩基の添加量の総和を、0.01〜100質量%とすると、前記凹凸パターンの少なくとも凹部表面に均一に保護膜を形成しやすくなるため好ましい。0.01質量%未満では、凹凸パターンの保護効果が不十分となる傾向がある。一方、添加量の総和を多くてもウェハ表面を浸食したり、不純物としてウェハに残留する懸念もある。さらに好ましくは0.05〜50質量%、より好ましくは0.1〜30質量%である。
【0055】
前記薬液において希釈に用いられることのある溶媒としては、例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒などの有機溶媒が好適に使用される。
【0056】
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
【0057】
また、前記有機溶媒に不燃性のものを使うと、保護膜形成用薬液が不燃性になる、あるいは、引火点が高くなって、該薬液の危険性が低下するので好ましい。含ハロゲン溶媒は不燃性のものが多く、不燃性含ハロゲン溶媒は不燃性有機溶媒として好適に使用できる。
【0058】
本発明の薬液では希釈溶媒としてプロトン性溶媒を用いても、前記ケイ素化合物Aや前記酸の効果、または、前記ケイ素化合物Cや前記塩基の効果が低下し難い。従って安全性の高いプロトン性溶媒、特には、アルコール類を希釈溶媒として用いることが出来るため、前記薬液を安全性の高いものとすることができる。背景技術の特許文献3で用いられているシランカップリング剤又は界面活性剤はプロトン性溶媒との混合により活性が低下し、所望の撥水性が得られ難くなったり、スループットが低下したりする傾向があるため、本発明のようにプロトン性溶媒を使用できる意義は大きい。
【0059】
また、ウェハを回転させながら前記薬液をウェハに供する場合、前記有機溶媒の沸点が低すぎると、前記薬液がウェハ全面に濡れ広がる前に該薬液が乾燥しやすくなり好ましくない。また、沸点が高すぎると前記薬液の粘性が高くなりすぎる傾向があり好ましくない。このため、前記有機溶媒は沸点が70〜220℃のものを用いるのが好ましい。このような溶媒としては、コストや他の洗浄液との溶解性(置換のしやすさ)を考慮すると、前記アルコールでは、1−プロパノール、2−プロパノール、前記アルコール以外の有機溶媒では、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい。
【0060】
また、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることが好ましい。水分量の総量が5000質量ppm超の場合、前記ケイ素化合物A及び酸の効果、または、前記ケイ素化合物C及び前記塩基の効果が低下し、前記保護膜を短時間で形成しにくくなる。このため、前記薬液中の水分量の総量は少ないほど好ましく、特に1000質量ppm以下、さらには500質量ppm以下が好ましい。さらに、水の存在量が多いと、前記薬液の保管安定性が低下しやすいため、水分量は少ない方が好ましく、200質量ppm以下、さらには100質量ppm以下が好ましい。なお、前記薬液中の水分量は0.1質量ppm以上であってもよい。従って、前記薬液に含まれるケイ素化合物A、または、前記ケイ素化合物C、酸、または、塩基や、前記薬液に含まれることのある溶媒は水を多く含有しないものであることが好ましい。
【0061】
また、前記薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることが好ましい。前記0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個超であると、パーティクルによるパターンダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であれば、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。このため、前記薬液中の0.5μmより大きい粒子の該薬液1mL当たりの個数は少ないほど好ましく、特に10個以下、さらに2個以下が好ましい。また、前記0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり1個以上あってもよい。
【0062】
また、前記薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であることが好ましい。前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し100質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流が増大する恐れがありデバイスの歩留まりの低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であると、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。このため、前記金属不純物含有量は少ないほど好ましく、特に各1質量ppb以下、さらには各0.1質量ppb以下が好ましい。また、前記金属不純物含有量は、該薬液総量に対し各0.01質量ppb以上であってもよい。
【0063】
前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aと酸を混合して含有させる保護膜形成用薬液の調製方法において、混合前のケイ素化合物A、酸、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを精製することが好ましい。また、保護膜形成用薬液が溶媒を含有する場合は、前記の混合前のケイ素化合物A及び酸は、溶媒を含んだ溶液状態であってもよく、この場合前記精製は、混合前のケイ素化合物Aまたはその溶液、酸またはその溶液、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0064】
また、前記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cと塩基を混合して含有させる保護膜形成用薬液の調製方法において、ケイ素化合物C、塩基、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを精製することが好ましい。また、保護膜形成用薬液が溶媒を含有する場合は、前記の混合前のケイ素化合物C及び、塩基は、溶媒を含んだ溶液状態であってもよく、この場合前記精製は、混合前のケイ素化合物Cまたはその溶液、塩基またはその溶液、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0065】
前記精製は、モレキュラーシーブ等の吸着剤や蒸留等による水分子の除去、イオン交換樹脂や蒸留等によるNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物の除去、及び、フィルターろ過によるパーティクル等の汚染物質の除去のうち少なくとも1つの除去手段を用いて行われるものである。保護膜形成用薬液の反応性やウェハの清浄度を考慮して、水分子を除去し、かつ、金属不純物を除去し、かつ、汚染物質を除去することが好ましく、除去する順番は問わない。
【0066】
なお、前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aと酸を混合して含有させる保護膜形成用薬液の調製方法において、前記酸と前記溶媒は、前記ケイ素化合物Aと混合する前に水分子を除去することが好ましい。これにより、前記保護膜形成用薬液を調製したときに、該ケイ素化合物Aや該酸を失活させることなく、水分量を小さくしやすいので好ましい。
【0067】
また、前記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cと塩基を混合して含有させる保護膜形成用薬液の調製方法において、前記塩基と前記溶媒は、前記ケイ素化合物Cと混合する前に水分子を除去することが好ましい。これにより、前記保護膜形成用薬液を調製したときに、該ケイ素化合物Cや該塩基を失活させることなく、水分量を小さくしやすいので好ましい。
【0068】
本発明の前記薬液中に含まれるアルコキシシランと酸は、反応によって得られたものであってもよい。例えば、以下の式[3]ようにケイ素化合物Bとアルコールを反応させて得られたものであってもよい。

(式[3]中、RSi(H)(Y)4−e−fはケイ素化合物B、R−OHはアルコールを表し、RSi(H)(OR4−e−fは反応から得られるアルコキシシラン、H−Yは、酸を表す。Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。eは1〜3の整数、fは0〜2の整数であり、eとfの合計は3以下である。また、Yは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、−OS(O)−R、及び、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【0069】
また、前記薬液中に含まれるアルコキシシランと塩基は、反応によって得られたものであってもよい。例えば、以下の式[6]、または、式[7]のようにケイ素化合物Dとアルコールを反応させて得られたものであってもよい。


(式[6]において、R10Si(H)(CH(W)4−p−q−rはケイ素化合物D、R11−OHはアルコールを表し、R10Si(H)(CH(OR114−p−q−rは反応から得られるアルコキシシラン、H−Wは塩基を表す。また、式[7]において、[R12(CH(H)Si]N−R133−vはケイ素化合物D、R14−OHはアルコールを表し、R12(CH(H)SiOR14は反応から得られるアルコキシシラン、N(H)(R133−vは塩基を表す。R10は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R11は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R11で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。R12は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R13は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜8の1価の有機基、および、水素基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R14は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R14で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。pは0〜3の整数、qは0〜2の整数、rは0〜2の整数であり、pとqの合計は1〜3、pとrの合計は1〜3、pとqとrの合計は1〜3であり、sは0〜3の整数、tは0〜2の整数、uは0〜2の整数であり、sとtとuの合計は3であり、vは1〜3の整数である。また、Wは、それぞれ互いに独立して、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【0070】
なお、前記式[3]、[6]、[7]で用いられるアルコールは、反応により消費されるものであるが、得られる薬液に残存していてもよい。前記式[3]、[6]、[7]の原料として過剰量のアルコールを使用することにより、残存するアルコール成分を希釈溶媒として利用してもよい。前記式[3]、[6]、[7]で得られるアルコキシシランと酸または塩基は、残存するアルコールにより活性が低下し難い。従って安全性の高いアルコール類を希釈溶媒として用いることが出来るため、前記薬液を安全性の高いものとすることができる。背景技術の特許文献3で用いられているシランカップリング剤又は界面活性剤はプロトン性溶媒との混合により活性が低下し、所望の撥水性が得られ難くなったり、スループットが低下したりする傾向があるため、本発明のようにアルコール溶媒を使用できる意義は大きい。なお、前記式[3]、[6]、[7]の右辺のようにアルコキシシランと酸または塩基の混合物が得られるのであれば、前記ケイ素化合物Bとアルコール、または、前記ケイ素化合物Dとアルコールとの反応以外の反応を利用してもよい。
【0071】
前記ケイ素化合物Bとしては、例えば、CHSiCl、CSiCl、CSiCl、CSiCl、C11SiCl、C13SiCl、C15SiCl、C17SiCl、C19SiCl、C1021SiCl、C1123SiCl、C1225SiCl、C1327SiCl、C1429SiCl、C1531SiCl、C1633SiCl、C1735SiCl、C1837SiCl、(CHSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CH)Cl、(CSiCl、C11Si(CH)Cl、C13Si(CH)Cl、C15Si(CH)Cl、C17Si(CH)Cl、C19Si(CH)Cl、C1021Si(CH)Cl、C1123Si(CH)Cl、C1225Si(CH)Cl、C1327Si(CH)Cl、C1429Si(CH)Cl、C1531Si(CH)Cl、C1633Si(CH)Cl、C1735Si(CH)Cl、C1837Si(CH)Cl、(CHSiCl、CSi(CHCl、(CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CHCl、(CSi(CH)Cl、(CSiCl、CSi(CHCl、(CSiCl、C11Si(CHCl、C13Si(CHCl、C15Si(CHCl、C17Si(CHCl、C19Si(CHCl、C1021Si(CHCl、C1123Si(CHCl、C1225Si(CHCl、C1327Si(CHCl、C1429Si(CHCl、C1531Si(CHCl、C1633Si(CHCl、C1735Si(CHCl、C1837Si(CHCl、(CHSi(H)Cl、CHSi(H)Cl、(CSi(H)Cl、CSi(H)Cl、CSi(CH)(H)Cl、(CSi(H)Cl等のアルキルクロロシラン、あるいは、CFCHCHSiCl、CCHCHSiCl、CCHCHSiCl、CCHCHSiCl、C11CHCHSiCl、C13CHCHSiCl、C15CHCHSiCl、C17CHCHSiCl、CFCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、C11CHCHSi(CH)Cl、C13CHCHSi(CH)Cl、C15CHCHSi(CH)Cl、C17CHCHSi(CH)Cl、CFCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、C11CHCHSi(CHCl、C13CHCHSi(CHCl、C15CHCHSi(CHCl、C17CHCHSi(CHCl、CFCHCHSi(CH)(H)Cl等のフルオロアルキルクロロシラン、あるいは、前記クロロシランのクロロ基を、ブロモ基などのハロゲン基、−OS(O)−R、及び、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)に置き換えたものが挙げられる。
【0072】
前記ケイ素化合物Dとしては、例えば、CSi(NH、CSi(NH、CSi(NH、C11Si(NH、C13Si(NH、C15Si(NH、C17Si(NH、C19Si(NH、C1021Si(NH、C1123Si(NH、C1225Si(NH、C1327Si(NH、C1429Si(NH、C1531Si(NH、C1633Si(NH、C1735Si(NH、C1837Si(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、C11Si(CH)(NH、C13Si(CH)(NH、C15Si(CH)(NH、C17Si(CH)(NH、C19Si(CH)(NH、C1021Si(CH)(NH、C1123Si(CH)(NH、C1225Si(CH)(NH、C1327Si(CH)(NH、C1429Si(CH)(NH、C1531Si(CH)(NH、C1633Si(CH)(NH、C1735Si(CH)(NH、C1837Si(CH)(NH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSiNH、C11Si(CHNH、C13Si(CHNH、C15Si(CHNH、C17Si(CHNH、C19Si(CHNH、C1021Si(CHNH、C1123Si(CHNH、C1225Si(CHNH、C1327Si(CHNH、C1429Si(CHNH、C1531Si(CHNH、C1633Si(CHNH、C1735Si(CHNH、C1837Si(CHNH、(CHSi(H)NH、CHSi(H)NH、(CSi(H)NH、CSi(H)NH、CSi(CH)(H)NH、(CSi(H)NH、CFCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、C11CHCHSi(NH、C13CHCHSi(NH、C15CHCHSi(NH、C17CHCHSi(NH、CFCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、C11CHCHSi(CH)(NH、C13CHCHSi(CH)(NH、C15CHCHSi(CH)(NH、C17CHCHSi(CH)(NH、CFCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、C11CHCHSi(CHNH、C13CHCHSi(CHNH、C15CHCHSi(CHNH、C17CHCHSi(CHNH、CFCHCHSi(CH)(H)NH等のアミノシラン、あるいは、前記アミノシランのアミノ基を、ジアルキルアミノ基、イソシアネート基に置き換えたもの、または、CSi(CHNHSi(CH、CSi(CHNHSi(CH、CSi(CHNHSi(CH、C11Si(CHNHSi(CH11、C13Si(CHNHSi(CH13、C17Si(CHNHSi(CH17、CSi(CHNHSi(CH、{CSi(CHN、(CHHSiNHSi(CHH、CFCHCHSi(CHNHSi(CHCHCHCF、CCHCHSi(CHNHSi(CHCHCH、CCHCHSi(CHNHSi(CHCHCH
、CCHCHSi(CHNHSi(CHCHCH、C11CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH11、C13CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH13、C15CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH15、C17CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH17、{CFCHCHSi(CHN等の化合物が挙げられる。
【0073】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノールなどのアルキル基と1個の水酸基からなるアルコール、エチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールまたはその誘導体が挙げられる。
【0074】
なお、直鎖アルキル基の末端に1個の水酸基があるアルコールを用いると、短時間で前記保護膜が形成できるので好ましく、さらに、該直鎖アルキル基の炭素数が1〜6であると短時間で前記保護膜が形成できるので特に好ましい。
【0075】
また、前記のように反応によって得られた場合も、保護膜形成用薬液の出発原料中の水分の総量は、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることが好ましい。この場合も、前記原料中の水分量は少ないほど好ましく、特に1000質量ppm以下が好ましく、さらには500質量ppm以下が好ましい。なお、前記原料中の水分量の総量は0.1質量ppm以上であってもよい。このため、前記反応に用いられるケイ素化合物B、または、ケイ素化合物D、アルコールは水を多く含まないものであることが好ましく、それぞれの水分量が5000質量ppm以下であることが好ましい。5000質量ppm超の場合、前記式[3]、[6]、[7]の反応が進行しにくくなり、所望の保護膜形成用薬液を得られにくくなる。このため、前記反応に用いられるケイ素化合物B、または、ケイ素化合物D、アルコールは水分量が少ないほど好ましく、それぞれが、特に1000質量ppm以下、さらには500質量ppm以下が好ましい。さらに、水の存在量が多いと、前記薬液の保管安定性が低下しやすいため、水分量は少ない方が好ましく、200質量ppm以下、さらには100質量ppm以下が好ましい。なお、前記原料中の水分量の総量は0.1質量ppm以上であってもよい。
【0076】
また、前記のように反応によって得られた場合も、保護膜形成用薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることが好ましい。前記0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個超であると、パーティクルによるパターンダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まりの低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であれば、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。このため、前記薬液中の0.5μmより大きい粒子の該薬液1mL当たりの個数は少ないほど好ましく、特に10個以下、さらに2個以下が好ましい。また、前記0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり1個以上あってもよい。
【0077】
また、前記のように反応によって得られた場合も、保護膜形成用薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であることが好ましい。前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し100質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流が増大する恐れがあり、デバイスの歩留まりの低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、前記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であると、前記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略または低減できるため好ましい。このため、前記金属不純物含有量は少ないほど好ましく、特に1各質量ppb以下、さらには各0.1質量ppb以下が好ましい。また、前記金属不純物含有量は、該薬液総量に対し各0.01質量ppb以上であってもよい。
【0078】
前記保護膜形成用薬液の原料としてケイ素化合物Bとアルコールを用いる場合、混合前のケイ素化合物B、アルコール、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを精製することが好ましい。また、保護膜形成用薬液が溶媒を含有する場合は、前記の混合前のケイ素化合物Bとアルコールは、溶媒を含んだ溶液状態であってもよく、この場合前記精製は、混合前のケイ素化合物Bまたはその溶液、アルコールまたはその溶液、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0079】
また、前記保護膜形成用薬液の原料としてケイ素化合物Dとアルコールを用いる場合、混合前のケイ素化合物D、アルコール、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを精製することが好ましい。また、保護膜形成用薬液が溶媒を含有する場合、前記精製は、前記の混合前のケイ素化合物Dまたはその溶液、アルコールまたはその溶液、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0080】
前記精製は、モレキュラーシーブ等の吸着剤や蒸留等による水分子の除去、イオン交換樹脂や蒸留等によるNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物の除去、及び、フィルターろ過によるパーティクル等の汚染物質の除去のうち少なくとも1つの除去手段を用いて行われるものである。保護膜形成用薬液の活性や清浄度を考慮して、水分子を除去し、かつ、金属不純物を除去し、かつ、汚染物質を除去することが好ましく、除去する順番は問わない。
【0081】
なお、前記アルコールと前記溶媒は、前記ケイ素化合物B、またはケイ素化合物Dと混合する前に水分子を除去することが好ましい。これにより、前記保護膜形成用薬液を調製したときに、生成するケイ素化合物A、またはケイ素化合物Cや酸または塩基を失活させることなく、水分量を小さくしやすいので好ましい。このため、それぞれの水分量は少ないほど好ましく、それぞれ、10000質量ppm以下であることが好ましく、それぞれが、限りなく0質量ppmに近いことが理想的である。
【0082】
また、本発明の保護膜形成用薬液は、前記ケイ素化合物A、またはケイ素化合物C、酸または塩基や、溶媒の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の添加剤等を含有してもよい。該添加剤としては、過酸化水素、オゾンなどの酸化剤、界面活性剤等が挙げられる。また、ウェハの凹凸パターンの一部に、前記ケイ素化合物A、またはケイ素化合物Cでは保護膜が形成しない材質がある場合は、該材質に保護膜を形成できるものを添加しても良い。また、触媒以外の目的で他の酸や塩基を添加しても良い。
【0083】
また、本発明の保護膜形成用薬液は、原料を2つ以上に分けた状態で保管し、使用前に混合して使うこともできる。例えば、前記保護膜形成用薬液の原料の一部としてケイ素化合物A、酸を用いる場合、ケイ素化合物Aと酸を個別に保管し、使用前に混合することもできる。なお、混合前のケイ素化合物Aと酸はそれぞれ溶液状態であっても良い。また、ケイ素化合物Aと酸を同じ溶液で保管し、使用前に別の原料からなる溶液と混合することもできる。ケイ素化合物B、及びアルコールを用いる場合、ケイ素化合物Bとアルコールを個別に保管して使用前に混合することもできる。なお、混合前のケイ素化合物Bとアルコールはそれぞれ溶液状態であっても良い。また、上記のケイ素化合物Bとアルコールを同じ溶液で保管して使用前に別の原料と混合することもできる。
【0084】
同様に、ケイ素化合物C、塩基を用いる場合、ケイ素化合物Cと塩基を個別に保管し、使用前に混合することもできる。なお、混合前のケイ素化合物Cと塩基はそれぞれ溶液状態であっても良い。また、ケイ素化合物Cと塩基を同じ溶液で保管し、使用前に別の原料からなる溶液と混合することもできる。ケイ素化合物D、及びアルコールを用いる場合、ケイ素化合物Dとアルコールを個別に保管して使用前に混合することもできる。なお、混合前のケイ素化合物Dとアルコールはそれぞれ溶液状態であっても良い。また、上記のケイ素化合物Dとアルコールを同じ溶液で保管して使用前に別の原料と混合することもできる。
【0085】
また、本発明の保護膜形成用薬液として、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、および、多価アルコールやその誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の有機溶媒が76〜99.99質量%、C2y+1基またはC2y+1CHCH基(y=1〜8)を持つアルコキシシランやクロロシラン、トリメチルシリルパーフルオロアルキルスルホネート、トリメチルシリルトリフルオロアセテートからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のケイ素化合物が0.1〜20質量%、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の酸が0〜4質量%からなる混合物を含むもの、又は当該混合物だけからなるものを使用してもよい。なお、ケイ素化合物がアルコキシシランのみの場合、あるいは、有機溶媒がアルコールを含まない場合は、上記酸の濃度は0.01〜4質量%とする。さらに例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール、および、多価アルコールやその誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の有機溶媒が76〜99.99質量%、C2y+1基またはC2y+1CHCH基(y=2〜8)を持つアルコキシシラン、ジメチルアルコキシシラン、テトラメチルジシラザンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のケイ素化合物が0.1〜20質量%、アンモニア、アルキルアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の塩基が0〜4質量%からなる混合物を含むもの、又は当該混合物だけからなるものを使用してもよい。なお、ケイ素化合物がアルコキシシランのみの場合、あるいは、有機溶媒がアルコールを含まない場合は、上記塩基の濃度は0.01〜4質量%とする。
【0086】
ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とするパターン形成工程では、まず、該ウェハ表面にレジストを塗布したのち、レジストマスクを介してレジストに露光し、露光されたレジスト、または、露光されなかったレジストをエッチング除去することによって所望の凹凸パターンを有するレジストを作製する。また、レジストにパターンを有するモールドを押し当てることでも、凹凸パターンを有するレジストを得ることができる。次に、ウェハをエッチングする。このとき、レジストパターンの凹の部分が選択的にエッチングされる。最後に、レジストを剥離すると、微細な凹凸パターンを有するウェハが得られる。
【0087】
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハとしては、ウェハ表面にシリコン、酸化ケイ素、または窒化ケイ素などシリコン元素を含む膜が形成されたもの、あるいは、上記凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの表面の少なくとも一部がシリコン、酸化ケイ素、または窒化ケイ素などシリコン元素を含むものが含まれる。
【0088】
また、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つを含む複数の成分から構成されたウェハに対しても、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つの表面に保護膜を形成することができる。該複数の成分から構成されたウェハとしては、シリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つがウェハ表面に形成したもの、あるいは、凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1つとなるものも含まれる。なお、本発明の薬液で保護膜を形成できるのは前記凹凸パターン中のシリコン元素を含む部分の表面である。
【0089】
前記ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液で表面の洗浄を行い、乾燥等により水系洗浄液を除去すると、凹部の幅が小さく、凸部のアスペクト比が大きいと、パターン倒れが生じやすくなる。該凹凸パターンは、図1及び図2に記すように定義される。図1は、表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたウェハ1を斜視したときの模式図を示し、図2は図1中のa−a’断面の一部を示したものである。凹部の幅5は、図2に示すように凸部3と凸部3の間隔で示され、凸部のアスペクト比は、凸部の高さ6を凸部の幅7で割ったもので表される。洗浄工程でのパターン倒れは、凹部の幅が70nm以下、特には45nm以下、アスペクト比が4以上、特には6以上のときに生じやすくなる。
【0090】
本発明の好ましい態様では、前記(工程1)に記したように、ウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系洗浄液を保持する。そして、前記(工程2)に記したように、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する。該洗浄液Aの好ましい例としては、本発明で特定する保護膜形成用薬液、水、有機溶媒、あるいは、それらの混合物、あるいは、それらに酸、アルカリ、界面活性剤、酸化剤のうち少なくとも1種が混合されたもの等が挙げられる。また、洗浄液Aとして前記薬液以外を使用したときは、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に洗浄液Aが保持された状態で、該洗浄液Aを該保護膜形成用薬液に置換していくことが好ましい。
【0091】
また、該洗浄液Aの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
【0092】
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
【0093】
また、該洗浄液Aに混合されることのある酸としては、無機酸や有機酸がある。無機酸の例としては、フッ酸、バッファードフッ酸、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸など、有機酸の例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸などが挙げられる。該洗浄液Aに混合されることのあるアルカリとしては、アンモニア、コリンなどが挙げられる。該洗浄液Aに混合されることのある酸化剤としては、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。
【0094】
なお、該洗浄液Aが有機溶媒であれば、前記保護膜形成用薬液を水と接触させることなく凹部に供すことができるので好ましい。この中でも、該有機溶媒が水溶性有機溶媒(水100質量部に対する溶解度が5質量部以上)を含むと、水系洗浄液から洗浄液Aの置換が容易に行えるので好ましい。また、該洗浄液Aが酸水溶液を含んでいれば、前記保護膜が短時間で形成できるので好ましい。
【0095】
また、前記洗浄液Aとして、複数の洗浄液を用いても良い。例えば、酸水溶液あるいはアルカリ水溶液を含む洗浄液と前記有機溶媒(好ましくは水溶性有機溶媒を含む)の2種類を洗浄液Aに用い、酸水溶液あるいはアルカリ水溶液を含む洗浄液→前記有機溶媒の順で洗浄することができる。また、さらに水系洗浄液を追加し、酸水溶液あるいはアルカリ水溶液を含む洗浄液→水系洗浄液→前記有機溶媒の順で洗浄することもできる。
【0096】
図3は、洗浄工程にて凹部4が保護膜形成用薬液8を保持した状態の模式図を示している。図3の模式図のウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。洗浄工程の際に、保護膜形成用薬液が、凹凸パターン2が形成されたウェハ1に供される。この際、前記薬液は図3に示したように凹部4に保持された状態となり、凹部4の表面に保護膜が形成されることにより該表面が撥水化される。
【0097】
保護膜形成用薬液は、温度を高くすると、より短時間で前記保護膜を形成しやすくなる。均質な保護膜を形成しやすい温度は、10℃以上、該薬液の沸点未満であり、特には15℃以上、該薬液の沸点よりも10℃低い温度未満で保持されることが好ましい。前記薬液の温度は、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持されているときも当該温度に保持されることが好ましい。
【0098】
なお、他の洗浄液についても、10℃以上、洗浄液の沸点未満の温度で保持しても良い。例えば、洗浄液Aが酸水溶液を含む、特に好ましくは酸水溶液と沸点が100℃以上の有機溶媒を含む溶液を用いる場合、洗浄液の温度を該洗浄液の沸点付近に高くすると、前記保護膜が短時間で形成しやすくなるので好ましい。
【0099】
前記凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保護膜形成用薬液を保持する工程(工程3)の後で、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液Bに置換した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよく、この洗浄液Bの例としては、水系溶液からなる水系洗浄液、または、有機溶媒、または、前記水系洗浄液と有機溶媒の混合物、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種が混合されたもの、またはそれらに保護膜形成用薬液に含まれるケイ素化合物Aと酸、または前記ケイ素化合物Cと塩基が該薬液よりも低濃度になるように添加されたもの等が挙げられる。
【0100】
また、該洗浄液Bの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
【0101】
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
【0102】
また、前記洗浄液Bへの置換を経て、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に水系溶液からなる水系洗浄液を保持した後に、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程(工程4)に移ってもよい。
【0103】
また、前記洗浄液Bとして、複数の洗浄液を用いても良い。例えば、有機溶媒(好ましくは水溶性有機溶媒を含む)と水系洗浄液の2種類を用いることができる。
【0104】
水系洗浄液の例としては、水、あるいは、水に有機溶媒、酸、アルカリのうち少なくとも1種が混合された水を主成分(例えば、水の含有率が50質量%以上)とするものが挙げられる。特に、水系洗浄液に水を用いると、前記薬液によって撥水化された凹凸パターンの少なくとも凹部表面の該液との接触角θが大きくなって該凹部表面の毛細管力Pが小さくなり、さらに乾燥後にウェハ表面に汚れが残りにくくなるので好ましい。
【0105】
保護膜形成用薬液により撥水化された凹部4に水系洗浄液が保持された場合の模式図を図4に示す。図4の模式図のウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。凹凸パターン表面は前記薬液により保護膜10が形成され撥水化されている。そして、該保護膜10は、水系洗浄液9が凹凸パターン表面から除去されるときもウェハ表面に保持される。
【0106】
ウェハの凹凸パターンの少なくとも凹部表面に、保護膜形成用薬液により前記保護膜10が形成されたとき、該表面に水が保持されたと仮定したときの接触角は60〜120°であると、パターン倒れが発生し難いため好ましい。また、接触角は90°に近いほど該凹部表面の毛細管力が小さくなり、パターン倒れが更に発生し難くなるため、70〜110°がより好ましく、75〜105°がさらに好ましい。また、毛細管力は1.6MN/m以下であることが好ましい。該毛細管力が1.6MN/m以下であれば、パターン倒れが発生し難いため好ましい。また、該毛細管力が小さくなると、パターン倒れは更に発生し難くなるため、該毛細管力は1.1MN/m以下がより好ましく、0.8MN/m以下がさらに好ましい。さらに、洗浄液との接触角を90°付近に調整して毛細管力を限りなく0.0MN/mに近づけることが理想的である。
【0107】
次に、前記(工程4)に記したように、乾燥により凹凸パターン表面から液体を除去する工程が行われる。該工程では、凹凸パターン表面に保持された液体が乾燥により除去される。当該乾燥は、スピン乾燥法、IPA(2−プロパノール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥などの周知の乾燥方法によって行うことが好ましい。
【0108】
前記凹凸パターン表面から液体が除去されるときに、該表面に保持されている液体は、前記薬液、洗浄液B、水系洗浄液、及びそれらの混合液でもよい。なお、前記薬液を含む混合液は、前記薬液を洗浄液Bに置換する途中の状態の液でもよいし、あらかじめ前記薬液を該薬液とは異なる洗浄液に混合して得た混合液でもよい。また、前記凹凸パターン表面から液体が一旦除去された後で、前記凹凸パターン表面に、洗浄液B、水系洗浄液、および、それらの混合液から選ばれる少なくとも1つを保持させて、その後、乾燥しても良い。
【0109】
次に、前記(工程5)に記したように、保護膜10を除去する工程が行われる。前記保護膜を除去する場合、該保護膜中のC−C結合、C−F結合を切断することが有効である。その方法としては、前記結合を切断できるものであれば特に限定されないが、例えば、ウェハ表面を光照射すること、ウェハを加熱すること、ウェハをオゾン曝露すること、ウェハ表面にプラズマ照射すること、ウェハ表面にコロナ放電すること等が挙げられる。
【0110】
光照射で前記保護膜10を除去する場合、該保護膜10中のC−C結合、C−F結合を切断することが有効であり、このためには、それらの結合エネルギーである83kcal/mol、116kcal/molに相当するエネルギーである340nm、240nmよりも短い波長を含む紫外線を照射することが好ましい。この光源としては、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプ、カーボンアークなどが用いられる。紫外線照射強度は、メタルハライドランプであれば、例えば、照度計(コニカミノルタセンシング製照射強度計UM−10、受光部UM−360〔ピーク感度波長:365nm、測定波長範囲:310〜400nm〕)の測定値で100mW/cm以上が好ましく、200mW/cm以上が特に好ましい。なお、照射強度が100mW/cm未満では前記保護膜10を除去するのに長時間要するようになる。また、低圧水銀ランプであれば、より短波長の紫外線を照射することになるので、照射強度が低くても短時間で前記保護膜10を除去できるので好ましい。
【0111】
また、光照射で前記保護膜10を除去する場合、紫外線で前記保護膜10の構成成分を分解すると同時にオゾンを発生させ、該オゾンによって前記保護膜10の構成成分を酸化揮発させると、処理時間が短くなるので特に好ましい。この光源としては、低圧水銀ランプやエキシマランプが用いられる。また、光照射しながらウェハを加熱してもよい。
【0112】
ウェハを加熱する場合、400〜700℃、好ましくは、500〜700℃でウェハの加熱を行う。この加熱時間は、0.5〜60分、好ましくは1〜30分の保持で行うことが好ましい。また、当該工程では、オゾン曝露、プラズマ照射、コロナ放電などを併用してもよい。また、ウェハを加熱しながら光照射を行ってもよい。
【0113】
ウェハをオゾン曝露する場合、低圧水銀灯などによる紫外線照射や高電圧による低温放電等で発生させたオゾンをウェハ表面に供することが好ましい。ウェハをオゾン曝露しながら光照射してもよいし、加熱してもよい。
【0114】
前記のウェハ表面の保護膜を除去する工程では、光照射処理、加熱処理、オゾン曝露処理、プラズマ照射処理、コロナ放電処理などを組み合わせることによって、効率的にウェハ表面の保護膜を除去することができる。
【0115】
本発明の薬液は、前記ケイ素化合物Aと前記酸が最初から混合されて含まれる1液タイプでもよいし、前記ケイ素化合物Aを含む液と前記酸を含む液の2液タイプとして使用する際に混合するものであってもよい。また、前記ケイ素化合物Bを含む液と前記アルコールを含む液の2液タイプとしてもよい。また、本発明の薬液は、前記ケイ素化合物Cと前記塩基が最初から混合されて含まれる1液タイプでもよいし、前記ケイ素化合物Cを含む液と前記塩基を含む液の2液タイプとして使用する際に混合するものであってもよい。また、前記ケイ素化合物Dを含む液と前記アルコールを含む液の2液タイプとしてもよい。
【実施例】
【0116】
ウェハの表面を微細な凹凸パターンを有する面とすること、凹凸パターンの少なくとも凹部表面に保持された洗浄液を他の洗浄液で置換することは、他の文献等にて種々の検討がなされ、既に確立された技術であるので、本発明では、前記保護膜形成用薬液の評価を中心に行った。また、背景技術等で述べた式 P=2×γ×cosθ/S(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)から明らかなようにパターン倒れは、洗浄液のウェハ表面への接触角、すなわち液滴の接触角と、洗浄液の表面張力に大きく依存する。凹凸パターン2の凹部4に保持された洗浄液の場合、液滴の接触角と、パターン倒れと等価なものとして考えてよい該凹部表面の毛細管力とは相関性があるので、前記式と保護膜10の液滴の接触角の評価から毛細管力を導き出してもよい。なお、実施例において、前記洗浄液として、水系洗浄液の代表的なものである水を用いた。
【0117】
しかしながら、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの場合、パターンは非常に微細なため、該凹凸パターン表面に形成された前記保護膜10自体の接触角を正確に評価できない。
【0118】
水滴の接触角の評価は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するウェハの場合、接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
【0119】
そこで、本発明では前記薬液を表面が平滑なウェハに供して、ウェハ表面に保護膜を形成して、該保護膜を表面に微細な凹凸パターン2が形成されたウェハ1の表面に形成された保護膜10とみなし、種々評価を行った。なお、本発明では、表面が平滑なウェハとして、表面に熱酸化膜層または窒化ケイ素層またはポリシリコン層を有し、表面が平滑なシリコンウェハを用いた。
【0120】
詳細を下記に述べる。以下では、保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法、該保護膜形成用薬液の調製、そして、ウェハに該保護膜形成用薬液を供した後の評価結果が述べられる。
【0121】
〔保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法〕
保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法として、以下の(1)〜(4)の評価を行った。
【0122】
(1)ウェハ表面に形成された保護膜の接触角評価
保護膜が形成されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA−X型)で測定した。
【0123】
(2)毛細管力の評価
下式を用いてPを算出し、毛細管力(Pの絶対値)を求めた。
【0124】
P=2×γ×cosθ/S
ここで、γは表面張力、θは接触角、Sはパターン寸法を示す。
なお、本実施例では、パターン形状の一例として、線幅(凹部の幅)が45nmのラインアンドスペース形状のパターンのウェハを想定した。線幅:45nmのパターンでは、気液界面がウェハを通過するときの洗浄液が水の場合はパターンが倒れやすく、2−プロパノールの場合はパターンが倒れ難い傾向がある。パターン寸法:45nm、ウェハ表面:酸化ケイ素の場合、洗浄液が、2−プロパノール(表面張力:22mN/m、酸化ケイ素との接触角:1°)では毛細管力は0.98MN/mとなる。一方、水銀を除く液体の中で表面張力が最も大きい水(表面張力:72mN/m、酸化ケイ素との接触角:2.5°)では毛細管力は3.2MN/mとなる。該毛細管力は1.6MN/m以下が好ましく、1.1MN/m以下がより好ましく、0.8MN/m以下が特に好ましい。
【0125】
(3)保護膜の除去性
以下の条件でメタルハライドランプのUV光をサンプルに2時間照射した。照射後に水滴の接触角が30°以下となったものを合格(表中で○と表記)とした。
・ランプ:アイグラフィックス製M015−L312
(強度:1.5kW)
・照度:下記条件における測定値が128mW/cm
・測定装置:紫外線強度計
(コニカミノルタセンシング製、UM−10)
・受光部:UM−360
(受光波長:310〜400nm、ピーク波長:365nm)
・測定モード:放射照度測定
【0126】
(4)保護膜除去後のウェハの表面平滑性評価
原子間力電子顕微鏡(セイコ−電子製:SPI3700、2.5μm四方スキャン)によって表面観察し、中心線平均面粗さ:Ra(nm)を求めた。なお、Raは、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さを測定面に対し適用して三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」として次式で算出した。保護膜を除去した後のウェハのRa値が1nm以下であれば、洗浄によってウェハ表面が浸食されていない、および、前記保護膜の残渣がウェハ表面にないとし、合格(表中で○と表記)とした。
【0127】

ここで、X、X、Y、Yは、それぞれ、X座標、Y座標の測定範囲を示す。Sは、測定面が理想的にフラットであるとした時の面積であり、(X−X)×(Y−Y)の値とした。また、F(X,Y)は、測定点(X,Y)における高さ、Zは、測定面内の平均高さを表す。
【0128】
[実施例1]
(1)保護膜形成用薬液の調製
ケイ素化合物Aとしてトリメチルメトキシシラン〔(CHSiOCH〕;3g、酸としてトリフルオロメタンスルホン酸〔CFSOH〕;1g、有機溶媒としてフッ素系溶剤(住友3M製Novec HFE−7100:ハイドロフルオロエーテル);96gを混合し、保護膜形成用薬液を得た。さらに、モレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和製)により該薬液から水分を除去し、次いで、イオン交換樹脂(日本ポール製イオンクリーンSL)により該薬液から金属不純物を除去し、次いで、フィルターろ過(日本インテグリス製オプチマイザー)により該薬液からパーティクルを除去し精製を行った。精製後の該薬液中の水分量をカールフィツシャー式水分計(京都電子製、ADP−511型)により測定を行ったところ、精製後の該薬液中の水分量は、該薬液総量に対し8質量ppmであった。また、精製後の該薬液中の金属不純物含有量を誘導結合プラズマ質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製、Agilent 7500cs型)により測定したところ、精製後の該薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量は、該薬液総量に対しそれぞれ、Na=3質量ppb、Mg=0.03質量ppb、K=0.4質量ppb、Ca=6質量ppb、Mn=0.003質量ppb、Fe=0.2質量ppb、Cu=0.04質量ppbであった。また、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数を光散乱式液中粒子測定装置(リオン社製、KS−42AF型)により測定したところ、0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり3個であった。なお、本実施例以降の実施例においても、同様の精製を行い、水分量が薬液総量に対し5000質量ppm以下であり、Na、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量は該薬液総量に対しそれぞれ100質量ppb以下であり、0.5μmより大きい粒子の数は該薬液1mL当たり100個以下であることを確認した薬液を用いた。
【0129】
(2)シリコンウェハの洗浄
平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で2分浸漬し、次いで3質量%の過酸化水素水溶液に80℃で2分浸漬し、さらに純水に室温で1分、2−プロパノール(iPA)に室温で1分浸漬した。
【0130】
(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理
シリコンウェハを、上記「(1)保護膜形成用薬液の調製」で調製した保護膜形成用薬液に20℃で5分浸漬させた。その後、シリコンウェハをiPAに1分浸漬し、次いで、水系洗浄液としての純水に1分浸漬した。最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて、表面の純水を除去した。
【0131】
得られたウェハを上記「保護膜形成用薬液が供されたウェハの評価方法」に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は86°となり、撥水性付与効果を示した。また、上記「毛細管力の評価」に記載した式を使って、水が保持されたときの毛細管力を計算したところ、毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。
【0132】
【表1】

【0133】
[実施例2〜57]
実施例1で用いたケイ素化合物A(ケイ素化合物C)、ケイ素化合物Aの濃度、酸、酸の濃度、塩基、有機溶媒、保護膜形成用薬液の表面処理後の処理手順などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表1〜表2に示す。
【0134】
【表2】

【0135】
なお、表中で、「(CHSiCl」はトリメチルクロロシランを意味し、「(CHSi(H)OCHCH」はジメチルエトキシシランを意味し、「(CHSiOSi(CH」はヘキサメチルジシロキサンを意味する。
【0136】
また、表中で、「CTFP」は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを意味し、「DCTFP」はcis−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを意味し、「PGMEA」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味し、「HFE−7100/PGMEA」は質量比でHFE−7100:PGMEA=95:5である混合溶液を意味する。「CTFP/PGMEA」は質量比でCTFP:PGMEA=95:5である混合溶液を意味する。「DCTFP/PGMEA」は質量比でDCTFP:PGMEA=95:5である混合溶液を意味する。「HFE−7100/iPA」はHFE−7100とiPAの混合溶媒を意味し、保護膜形成用薬液中のアルコールの濃度(アルコール濃度)を5質量%としたものである。「CTFP/iPA」はCTFPとiPAの混合溶媒を意味し、保護膜形成用薬液中のアルコールの濃度(アルコール濃度)を5質量%としたものである。「DCTFP/iPA」はDCTFPとiPAの混合溶媒を意味し、保護膜形成用薬液中のアルコールの濃度(アルコール濃度)を5質量%としたものである。
【0137】
また、表中で、「CHSOH」は酸であるメタンスルホン酸を意味し、「HSO」は酸である98%硫酸を意味し、「(CHSiOSOCF」は酸であるトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを意味し、「(CFSOO」は酸である無水トリフルオロメタンスルホン酸を意味し、「DEA」は塩基であるジエチルアミンを意味する。
【0138】
実施例31〜34において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液に浸漬した後、純水に1分浸漬し、最後にシリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて、表面の純水を除去した。
【0139】
実施例35〜38において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液に浸漬した後、iPAに1分浸漬し、最後に、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて表面のiPAを除去した。
【0140】
実施例39〜42において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液から取出した後、エアーを吹き付けて、表面の保護膜形成用薬液を除去した。
【0141】
実施例43〜44において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の保護膜形成用薬液を除去した。次いで、純水に1分浸漬し、最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて表面の純水を除去した。
【0142】
実施例45〜46において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の保護膜形成用薬液を除去した。次いで、iPAに1分浸漬し、最後に、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて表面のiPAを除去した。
【0143】
実施例47〜48において、上記「(3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」でシリコンウェハを保護膜形成用薬液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の保護膜形成用薬液を除去した。次いで、iPAに1分浸漬し、純水に1分浸漬し、最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて表面の純水を除去した。
【0144】
[実施例58]
ケイ素化合物Bとしてトリメチルクロロシラン〔(CHSiCl〕;3g、有機溶媒として2−プロパノール(iPA);5gとHFE−7100;92gの混合溶媒を混合し、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてトリメチルイソプロポキシシラン、酸として塩化水素、有機溶媒としてHFE−7100を含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は68°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0145】
【表3】

【0146】
[実施例59〜73]
実施例58で用いたケイ素化合物Bの濃度、アルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表3に示す。
【0147】
表中で、「HFE−7100/iPA」はHFE−7100とiPAの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「CTFP/iPA」はCTFPとiPAの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「DCTFP/iPA」はDCTFPとiPAの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「nPA」は1−プロパノールを意味し、「HFE−7100/nPA」はHFE−7100とnPAの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「HFE−7100/エタノール」はHFE−7100とエタノールの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「PDO」は1,2−ペンタンジオールを意味し、「HFE−7100/PDO」はHFE−7100とPDOの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテルを意味し、「HFE−7100/PGME」はHFE−7100とPGMEの混合溶媒を意味し、出発原料中のアルコール濃度を5質量%としたものである。
【0148】
[実施例74]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Bにジメチルクロロシラン〔(CHSi(H)Cl〕を用い、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてジメチルイソプロポキシシランを含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例60と同じとした。評価結果は表3に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0149】
[実施例75〜76]
実施例74で用いたアルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表3に示す。
【0150】
[実施例77]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Dとしてテトラメチルジシラザン〔(CHSi(H)−NH−Si(H)(CH〕;10g、有機溶媒として1−プロパノール(nPA);5gとHFE−7100;85gの混合溶媒を混合し、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Cとしてジメチルプロポキシシラン、塩基としてアンモニア、有機溶媒としてHFE−7100を含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例75と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0151】
【表4】

【0152】
[実施例78]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Bにエチルジメチルクロロシラン〔CSi(CHCl〕を用い、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてエチルジメチルイソプロポキシシランを含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例60と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0153】
[実施例79〜80]
実施例78で用いたアルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。
【0154】
[実施例81]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Bにプロピルジメチルクロロシラン〔CSi(CHCl〕を用い、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてプロピルジメチルイソプロポキシシランを含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例60と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は76°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0155】
[実施例82〜83]
実施例81で用いたアルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。
【0156】
[実施例84]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Bにトリフルオロプロピルジメチルクロロシラン〔CFSi(CHCl〕を用い、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてトリフルオロプロピルジメチルイソプロポキシシランを含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例60と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0157】
[実施例85〜86]
実施例84で用いたアルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。
【0158】
[実施例87]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Bにノナフルオロヘキシルジメチルクロロシラン〔CF(CFSi(CHCl〕を用い、下式のように反応させることにより、ケイ素化合物Aとしてノナフルオロヘキシルジメチルイソプロポキシシランを含む保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例60と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。

【0159】
[実施例88〜89]
実施例87で用いたアルコール、アルコール濃度、有機溶媒などの条件を適宜変更して、ウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。
【0160】
[実施例90]
平滑な窒化ケイ素膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ0.3μmの窒化ケイ素層を有するSiウェハ)を用いた以外は実施例88と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。
【0161】
[実施例91]
表面に膜を有さないシリコンウェハを用いた以外は実施例88と同じとした。評価結果は表4に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり保護膜は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは浸食されず、さらにUV照射後に保護膜の残渣は残らないことが確認できた。
【0162】
[比較例1]
シリコンウェハに保護膜形成用薬液を供さなかった以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例では、撥水化されていない表面状態のウェハを評価した。評価結果は表5に示すとおり、ウェハの接触角は3°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.2MN/mと大きかった。
【0163】
【表5】

【0164】
[比較例2]
トリメチルメトキシシラン;3.0g、iPA;94.6gを混合し、次いで、1N塩酸水溶液;2.4gを添加し、約24時間室温で撹拌して、保護膜形成用薬液を得た後、水分除去の精製を行わなかった以外は、実施例1と同じとした。得られた保護膜形成用薬液中の水分量は21000質量ppmであった。評価結果は表5に示すとおり、表面処理後の接触角は16°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.1MN/mと大きかった。
【0165】
[比較例3]
保護膜形成用薬液の調製時に、トリメチルメトキシシランを添加しなかった以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例ではケイ素化合物Aを含まない薬液を調製した。評価結果は表5に示すとおり、表面処理後の接触角は14°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.1MN/mと大きかった。
【0166】
[比較例4]
保護膜形成用薬液の調製時に、トリフルオロメタンスルホン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例では酸を含まない薬液を調製した。評価結果は表5に示すとおり、表面処理後の接触角は10°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.2MN/mと大きかった。
【0167】
[比較例5]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Aとしてヘキサメチルジシラザン〔(CHSi−NH−Si(CH〕を用い、酸を添加しなかった以外はすべて実施例14と同じとした。評価結果は表5に示すとおり、表面処理後の接触角は30°と低く、水が保持されたときの毛細管力は2.8MN/mと大きかった。
【0168】
[比較例6]
保護膜形成用薬液中のケイ素化合物Dとしてヘキサメチルジシラザン〔(CHSi−NH−Si(CH〕用いて保護膜形成用薬液を得た以外はすべて実施例77と同じとした。評価結果は表6に示すとおり、表面処理後の接触角は40°と低く、水が保持されたときの毛細管力は2.5MN/mと大きかった。
【0169】
【表6】

【0170】
[比較例7]
実施例4で得られた保護膜形成用薬液100gに水を0.5g添加し、薬液中の水分量を5000質量ppm超とした以外は全て実施例4と同じとした。表面処理後の接触角は14°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.1MN/mと大きいものとなった。薬液中の水の存在が過多となったことで、酸の触媒としての作用が低減したことが原因であると考えられる。
【符号の説明】
【0171】
1 ウェハ
2 ウェハ表面の微細な凹凸パターン
3 パターンの凸部
4 パターンの凹部
5 凹部の幅
6 凸部の高さ
7 凸部の幅
8 凹部4に保持された保護膜形成用薬液
9 凹部4に保持された水系洗浄液
10 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、下記一般式[1]で表されるケイ素化合物A、および、プロトンをケイ素化合物Aに供与する酸又は/および電子をケイ素化合物Aから受容する酸を含み、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることを特徴とする、撥水性保護膜形成用薬液。

(式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素または窒素の1価の有機基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1つの基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は3以下である。)
【請求項2】
前記一般式[1]で表されるケイ素化合物Aが、下記一般式[2]で表されるアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載の撥水性保護膜形成用薬液。

(式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。cは1〜3の整数、dは0〜2の整数であり、cとdの合計は3以下である。)
【請求項3】
前記薬液中に含まれるアルコキシシランと酸が、式[3]に示すケイ素化合物Bとアルコールとの反応により得られるものであることを特徴とする、請求項2に記載の撥水性保護膜形成用薬液。

(式[3]中、RSi(H)(Y)4−e−fはケイ素化合物B、R−OHはアルコールを表し、RSi(H)(OR4−e−fは反応から得られるアルコキシシラン、H−Yは、酸を表す。Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が1〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。eは1〜3の整数、fは0〜2の整数であり、eとfの合計は3以下である。また、Yは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、−OS(O)−R、及び、−OC(O)−R(Rは、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜8の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【請求項4】
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、下記一般式[4]で表されるケイ素化合物C、および、水の含有量が35質量%以下の塩基を含み、前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し5000質量ppm以下であることを特徴とする、撥水性保護膜形成用薬液。

(式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン基、Siに結合する元素が酸素の1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、gは0〜3の整数、hは0〜2の整数、wは0〜2の整数であり、gとhの合計は1〜3、gとwの合計は1〜3、gとhとwの合計は1〜3である。)
【請求項5】
前記一般式[4]で表されるケイ素化合物Cが、下記一般式[5]で表されるアルコキシシランであることを特徴とする、請求項4に記載の撥水性保護膜形成用薬液。

(式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rで示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜2の整数であり、iとjの合計は1〜3、iとkの合計は1〜3、iとjとkの合計は1〜3である。)
【請求項6】
前記薬液中に含まれるアルコキシシランと塩基が、式[6]、または、式[7]に示すケイ素化合物Dとアルコールとの反応により得られるものであることを特徴とする、請求項5に記載の撥水性保護膜形成用薬液。


(式[6]において、R10Si(H)(CH(W)4−p−q−rはケイ素化合物D、R11−OHはアルコールを表し、R10Si(H)(CH(OR114−p−q−rは反応から得られるアルコキシシラン、H−Wは塩基を表す。また、式[7]において、[R12(CH(H)Si]N−R133−vはケイ素化合物D、R14−OHはアルコールを表し、R12(CH(H)SiOR14は反応から得られるアルコキシシラン、N(H)(R133−vは塩基を表す。R10は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R11は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R11で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。R12は、それぞれ互いに独立して、炭素数が2〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、および、炭素数が2〜8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R13は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜8の1価の有機基、および、水素基から選ばれる少なくとも1つの基であり、R14は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素がフッ素に置き換えられていても良い炭素数が1〜18の1価の炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、R14で示される炭化水素基は、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、水酸基のうち、1つ以上を含んでいても良い。pは0〜3の整数、qは0〜2の整数、rは0〜2の整数であり、pとqの合計は1〜3、pとrの合計は1〜3、pとqとrの合計は1〜3であり、sは0〜3の整数、tは0〜2の整数、uは0〜2の整数であり、sとtとuの合計は3であり、vは1〜3の整数である。また、Wは、それぞれ互いに独立して、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの基を示す。)
【請求項7】
前記薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.5μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の撥水性保護膜形成用薬液。
【請求項8】
前記薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe及びCuの各元素の金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各100質量ppb以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の撥水性保護膜形成用薬液。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、請求項7、及び請求項8のいずれかに記載の撥水性保護膜形成用薬液の調製方法であって、当該保護膜形成用薬液の原料である混合前のケイ素化合物Aまたはケイ素化合物C、酸または塩基、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つに対して、水分、パーティクル、及び、金属不純物のうち少なくとも1つを除去することを特徴とする、前記調製方法。
【請求項10】
請求項3、請求項6、請求項7、及び請求項8のいずれかに記載の撥水性保護膜形成用薬液の調製方法であって、当該保護膜形成用薬液の原料である混合前のケイ素化合物Bまたはケイ素化合物D、アルコール、及び、混合後の混合液のうち少なくとも1つに対して、水分、パーティクル、及び、金属不純物のうち少なくとも1つを除去することを特徴とする、前記調製方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の保護膜形成用薬液を用いる、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハ表面の洗浄方法であり、該方法は、洗浄液をウェハ表面から取り除いた後に該ウェハ表面から保護膜を除去する工程を有することを特徴とする、前記洗浄方法。
【請求項12】
前記ウェハ表面から保護膜を除去する工程が、ウェハ表面を光照射すること、ウェハを加熱すること、ウェハをオゾン曝露すること、及び、ウェハ表面にプラズマ照射することから選ばれる少なくとも1つの処理であることを特徴とする、請求項11に記載の前記洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−33873(P2012−33873A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91952(P2011−91952)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】