説明

信号出力装置、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置及びシート材識別方法

【課題】 信頼性を向上させた出力信号装置、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 シート材に衝撃を付与する衝撃付与部と、
該衝撃を受けるための衝撃受け部と、
前記衝撃付与部側又は前記衝撃受け部側の少なくとも一方に位置し、
前記衝撃衝撃付与部により前記衝撃受け部が受けた衝撃により信号を出力する信号出力部とを備えた信号出力装置であって、
前記衝撃付与部で発生する衝撃力と、前記信号出力部から出力される出力信号との少なくとも一方を補正する補正手段を有することを特徴する信号出力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号出力装置に関するものである。また、本発明は固体物質、すなわち金属、合金、プラスチック、セラミックスなどの有機、無機化合物やそれらの複合体などの成型品に関する。
【0002】
また本発明は、シート材の識別をおこなうシート材識別装置に関し、特にシート材に衝撃を付与(衝撃を印加するとも言う)することによりシート材の種類を識別するものに関する。
【0003】
さらに本発明は、信号出力装置、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0004】
従来、複写機、プリンタ、あるいはFAX等の画像形成装置は、記録媒体となるシート材に対して画像の形成をおこなう。画像を形成するためのシート材には、コピー紙等の普通紙をはじめとして、光沢紙、コート紙、再生紙、或いは、OHP等が用いられる。
【0005】
画像形成装置が、このような多くの種類のシート材に対してそれぞれに良い品質の画像を形成するためには、シート材の種類に合わせた画像形成をおこなうことが好ましく、画像形成の前にシート材の種類を自動的に識別できることが望ましい。
【0006】
そこで、シート材に衝撃付与部材を用いて衝撃を加えて、その衝撃がシート材により減衰等をして得られる出力信号のピーク値やピーク数あるいはピーク間の時間間隔を検出する。そしてあらかじめ記憶されているシート材に関する情報を照らし合わせて、記録媒体の識別をおこなうものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、図13に示すように、予めシート材自体に何らかの数字コードまたは記号等のマーキングMを施しておく。次いでこのマーキングMを画像形成装置内に設けられたセンサーにより読み取る。こうしてシート材Sの種類を識別して画像形成モードの最適化を図るというマーキング方式のものがある(特許文献2参照。)。
【0008】
また、シート材の表面に光を照射し、その反射光を受光し、その結果を基にシート材の種類を識別して画像形成モードの最適化を図るという方式のものがある(特許文献3参照。)。
【0009】
また、圧電素子の先端にプローブを設けたセンサーで、シート材の表面の状態を観察し、その結果を基にシート材の種類を識別して画像形成モードの最適化を図るという方式のものがある(特許文献4参照。)。
【0010】
また、圧電素子を用いて、シート材の表面との摺擦状態を観察し、その結果を基にシート材の種類を識別して画像形成モードの最適化を図るという方式のものがある(特許文献5参照。)。
【0011】
また、シート材識別装置として、圧力センサー(衝撃センサー、以下においては、圧力センサーと称する)を用いて、シート材の弾性を検知して、その結果を基にシート材の種類を識別して画像形成モードの最適化を図るという方式のものがある(特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開2004−026486号公報
【特許文献2】特開平11−314443号公報
【特許文献3】特開平10−221905号公報
【特許文献4】特開2002−340518号公報
【特許文献5】特開2000−356507号公報
【特許文献6】特開2003−276856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記特許文献1では、径時変化や衝撃力を発生させる部材の劣化などによる衝撃力や出力信号の変化に対して対応できないという課題があった。またシート材に安定した衝撃を加えることができない場合がある。さらに、温度、湿度などが変化した場合に、使用部材の熱膨張などによる衝撃力の変化によっても衝撃力や出力信号は変化することがある。
【0013】
例えば、経時変化による影響が大きい衝撃付与部材を使用すると、衝撃力や出力信号が経時的に変化する場合がある。衝撃付与部材では、ばねを使用して、何度も衝撃を加えることによりばねの伸張力が経時的に変化することや、先端形状が変化してしまう可能性があるからである。
【0014】
また、環境変化による影響が大きい材料を衝撃付与部材等に使用すると、衝撃力や出力信号が経時的に変化する場合がある。例えば、衝撃付与部材で使用するばねや、衝撃力検知手段で圧電素子等のセンサや、センサの振動を低減するためにゴム材による緩衝材を用いる場合には当該ゴム材の振動に対する性質が環境変化に伴い変化する場合が該当する。
【0015】
また、従来のマーキング方式のシート材識別装置においては、シート材Sの種類が識別できるのはマーキングMが施されたシート材Sのみであり、マーキングMが施されていないシート材Sは種類を識別することができない。
【0016】
さらに、マーキングするための専用装置が必要であり、マーキングする手間も必要となり、コスト高の原因になる。
【0017】
特許文献3,4,5,6では、シート材の情報を正確に取得するには、十分な性能を有していないという問題がある。そして、特許文献6においては、シート材の判別を行うシーケンスが、ユーザーのシート材種類検知信号の出力時、画像形成装置本体の電源のON時、給紙カセットのセット時などである。そのためシート材は一度検知手段まで給送され、種類を判別した後、シート材の先端が給紙カセットに戻すというシート材の往復運動を行うために、高速の画像形成装置には向いていない。圧力センサーを用いる場合には、温度、湿度や径時変化などにより、圧力センサーの出力電圧が変動する場合があるために、シート材の識別性能が低下する 本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、より信頼性を向上させた出力信号装置、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置を提供するものである。
【0018】
また本発明は、シート材にマーキングを施すことなく、かつ簡単な構造でシート材の種類の識別を行うことのでき、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置並びにシート材識別方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の信号出力装置は、シート材に衝撃を付与する衝撃付与部と、
該衝撃を受けるための衝撃受け部と、
前記衝撃付与部側又は前記衝撃受け部側の少なくとも一方に、
前記衝撃付与部により前記衝撃受け部が受けた衝撃により信号を出力する信号出力部と、
を備えた信号出力装置であって、
前記衝撃付与部で発生する衝撃力と、
前記信号出力部から出力される出力信号との少なくとも一方を補正する補正手段を有することを特徴とするものである。
【0020】
また本発明のシート材識別装置は、前記信号出力装置、及びシート材に関する情報が記憶された記憶部とを備え、
前期信号出力装置からの出力信号と、前記記憶部の情報とを用いて、シート材を識別する機能を備えていることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明の画像形成装置は、前記信号出力装置、シート材を搬送する搬送手段、及び前記シート材に画像を形成する画像形成手段を備えており、
前記信号出力装置からの信号に基づいて画像形成条件を制御することを特徴とするものである。
【0022】
また本発明のシート材識別方法は、衝撃付与部によってシート材が介在する状態で衝撃受け部に所定の衝撃を付与する工程と、
衝撃受け部によって前記シート材に付与された衝撃を出力信号として出力する工程と、
該出力信号と予め用意したシート材を識別するための情報とに基づいて前記シート材を識別する工程と、
を備えたシート材の識別方法であって、
前記衝撃付与部によってシート材に所定の衝撃を付与する工程の前に、
前記識別すべきシート材が介在しない状態で前記衝撃受け部に衝撃を付与して出力信号を得る工程と、
該出力信号が所定の範囲内となるように前記衝撃付与部で発生する衝撃力を調整する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0023】
さらに本発明のシート材識別方法は、衝撃付与部によってシート材が介在する状態で衝撃受け部に所定の衝撃を付与する工程と、
衝撃受け部によって前記シート材に付与された衝撃を出力信号として出力する工程と、
該出力信号と予め用意したシート材を識別するための情報とに基づいて前記シート材を識別する工程と、
を備えたシート材の識別方法であって、
前記衝撃付与部によってシート材に所定の衝撃を付与する工程の前に、
前記識別すべきシート材が介在しない状態で前記衝撃受け部に衝撃を付与して出力信号を得る工程と、
該出力信号が所定の範囲内となるように前記信号出力部からの信号を変更する処理を行う工程と、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明により、固体物質の力学的情報を高速に、かつ容易に測定することができ、かつ、補正手段により、信頼性も大幅に改善できる。
【0025】
また本発明の信号出力装置によれば、衝撃付与手段である衝撃付与部が衝撃力を補正することができ、シート材に安定した衝撃を加えることが可能である。
【0026】
本発明によれば、信号出力部からの信号の増幅度を変えることができる。これにより、衝撃付与部と衝撃受け部間にシート材が介在しない時の信号出力部からの信号が、所定の値になるように増幅することが可能となる。
【0027】
さらに本発明は、シート材を介して受けるシート材介在衝撃力も安定することから、シート材の識別を精度良くおこなうことができる。それにより、シート材の種類に最適な定着温度やインク量を設定することができ、より良い品質の画像を提供できるとともに、消費電力を低減することや、インクの浪費を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態にかかるシート材識別装置を図1乃至図3に沿って説明する。図1は、本発明にかかるシート材識別装置の機能的構成を示すブロック図である。図2(a)は、シート材不在時の衝撃付与部材(衝撃印加部材ともいう)による衝撃を検知する構成を示す断面図である。図2(b)は、シート材介在時の衝撃付与部材による衝撃を検知する構成を示す断面図である。図3は、シート材を識別するまでの動作工程を示すフローチャートである。
【0030】
まず、本発明にかかるシート材識別装置の機能的構成を説明する。シート材識別装置100は、衝撃付与部(衝撃付与手段)101と制御部102とからなる。制御部102は、シート材介在衝撃力とシート材不在衝撃力を検知する付与衝撃力検知部103と、衝撃付与部101に衝撃力を補正する命令を与える衝撃力補正部104とを有する。さらに制御部102は、シート材介在衝撃力からシート材を識別するシート材識別部105とを有する構成となっている。
【0031】
本発明では、シート材の力学的特性、すなわち、剛性、密度、厚さに関する情報を識別することができる。その原理は、衝撃付与部101によりシート材に衝撃を付与し、この衝撃によるシート材を介しての応答を衝撃検知部103で検出するものである。そして、シート材が温度や湿度に代表される環境になどにより変化する場合には、それらの変化に対応した情報を検知することができる。また、剛性、密度、厚さと相関のある情報に関しては、それらとの相関関係を利用して知見を得ることができる。例えば、シート材が電子写真やインクジェット法を始めとする各種印刷/記録用紙の場合には、シート材の凹凸、表面粗さ、及び用紙ごとのムラやばらつきなどを利用して最適な印刷/印字条件に関する知見を得ることができる。さらに、温度、湿度による厚さや密度の変化が判明しているような場合には、シート材の水分測定などにも応用することができる。
【0032】
衝撃付与部と衝撃力検知部について説明する。図1にあるシート材識別装置100の衝撃付与部101は、図2(a)(b)で示す衝撃付与部材201と、圧電素子202と、カム203と、固定軸204と、ガイド205と、ばね206と、衝撃付与引き上げ部材207を備えている。圧電素子202は、図2においては紙搬送ガイド209Bと同一平面状に配置されているが、これに限定されるものではない。シート材208は、画像形成装置の搬送路の一部であるシート材搬送ガイド209内を搬送される。シート材208は、本発明では不図示の紙搬送装置により、AR3の方向から任意の速度で紙搬送ガイド209(A、B)の間を搬送される。
【0033】
衝撃付与部材201は、シート材介在衝撃力を検知する場合は、シート材208を介して圧電素子202に衝撃を付与する。またシート材不在衝撃力を検知する場合は、直接圧電素子202に衝撃を付与する。圧電素子202は、衝撃付与部材201にシート材搬送ガイド209を介して対向する位置に配置されており、衝撃等の振動による機械的な外力に応じて電気的な出力信号を発生するセンサである。
【0034】
カム203は、固定軸204を回転軸として衝撃付与部材201を引き上げるための部材であって、不図示のモータ等により図2(a)(b)に示す矢印AR1の向きに回転する。そして衝撃付与引き上げ部材207が引き上げられることにより、衝撃付与部材201を上方に引き上げる。カム203の形状が半円柱形状であるため、所定の回転角度を越えると、衝撃付与引き上げ部材207が解放される。固定軸204は、衝撃付与部材201が動作する向きと平行な向き(矢印AR2)に動かすことが可能であり、図2(a)(b)では不図示である衝撃力補正部104からの指令により、動作する。
【0035】
ガイド205は、衝撃付与部材201を狭持し、衝撃付与部材201が移動する方向を維持する。ばね206は、衝撃付与部材201と衝撃付与引き上げ部材207の接続部周辺にあり、カム203によって衝撃付与部材201が引き上げられたときに圧縮し、解放されたときに伸張することによって衝撃付与部材201を加速する。これにより、衝撃付与部材201は、圧電素子202やシート材208に衝撃を付与する。
【0036】
なお、衝撃付与部材201は、付与した際の衝撃力を自身で吸収しない非弾性部材を用いることが好ましく、例えば弾性率の低い金属、硬化プラスチック等を用いることが考えられる。
【0037】
シート材208は、シート材搬送ガイド209内に沿って矢印AR3に示す方向に搬送される。図2(a)においては、シート材208が衝撃付与部材201と圧電素子202との間に介在していない(不在の)状態が示されており、図2(b)においては、シート材208が衝撃付与部材201と圧電素子202との間に介在している状態が示されている。
【0038】
つぎに、第1の実施の形態にかかるシート材識別装置100の動作を説明する。例えば画像形成装置の電源の立上げ時などの衝撃付与部材201と圧電素子202との間にシート材208が介在していない時に、制御部102の付与衝撃力検知部103により不図示のモータが制御される。そして衝撃付与部101のカム203を矢印AR1に示す方向に回転させる。これにより、カム203は、衝撃付与引き上げ部材207を引き上げることにより衝撃付与部材201をガイド205に沿って引き上げた状態で保持し、ばね206を圧縮する。そして、カム203は半円柱形状であるため、さらに回転させると衝撃付与部材201を引き上げた状態から解放される。この結果ばね206の伸張と共に衝撃付与部材201が加速され、シート材208が不在な状態で、つまり衝撃力を直に圧電素子202に付与する(衝撃付与部材201による衝撃付与、図3の301)。
【0039】
このとき、圧電素子202は、このシート材208が介在していない状態のシート材不在衝撃力に応じた電圧信号を生じ、図1に示した制御部102の付与衝撃力検知部103へと電圧信号を伝達する。これにより、付与衝撃力検知部103は、シート材不在衝撃力を検知する。そして必要に応じてシート材不在衝撃力に応じた電圧信号を不図示の記憶装置に記憶させることができる(シート材不在衝撃力を検知、図3の302)。
【0040】
つづいて、シート材不在衝撃力が衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力の設定した範囲であるか比較をする。そしてシート材不在衝撃力が所定の衝撃力のある設定した範囲から外れていた場合には、衝撃力補正部104に情報を伝達し、衝撃力の補正を行う(シート材不在衝撃力と所定値とを比較、図3の303)。
【0041】
例えば、シート材が介在しない状態の信号(第1信号)と所定の衝撃力の設定した範囲(初期設定信号)とを比較し、その差が所定の範囲から外れた場合に、前記第1信号と所定の信号とを実質的に等しくなるように衝撃力を補正する。勿論、必ずしも等しくする必要はなく、両者の違いが例えば初期設定信号出力値の20%以内にするなどある程度の幅を持たせても良い。このように補正する許容範囲を好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下に狭くすることで、シート材の識別精度をより高くすることができる。
【0042】
衝撃力の補正は、衝撃付与部材の速度を変化させることで行うことができる。例えば、図2に示したように、固定軸204とカム203を不図示の装置により、位置を変化させることにより行うことができる。例えば、衝撃力が不足している場合には、図2のAR2の方向にカム203と固定軸204を移動させることにより、バネの圧縮を大きくすればよい。バネ206を大きく圧縮させることにより、カムから開放された衝撃付与部材201はより早い速度で移動することができる。固定軸204とカム203を移動させる装置に制限はないが、電磁モーターなどの各種アクチュエータが代表的なものである。また、バネ206、カム203を交換することによっても、速度が変化させられる。あらかじめ、シート材不在衝撃力に対応したカム203の高さを示すデータテーブルを用いるのでも良い。カム203の移動の調整が終了したのち、シート材識別装置100の動作を初めからやり直す(衝撃付与部材201による衝撃力を変更、図3の304)。
【0043】
シート材不在衝撃力が衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力の設定した範囲にある場合、シート材208がシート材搬送ガイド209に沿って矢印AR3に示す方向に搬送される。衝撃付与部材201の先端部分と圧電素子202との間まで搬送されると、制御部102の衝撃力検知部103により不図示のモータが制御される。そして上述と同様にカム204を矢印AR2方向に回転させて、衝撃付与部材201によりシート材208に対して衝撃力を付与する(衝撃付与部材201による衝撃付与、図3の305)。
【0044】
このとき、圧電素子202は、このシート材208が介在している状態のシート材介在衝撃力に応じた電圧信号を生じ、図1に示した制御部102のシート材識別部105へと電圧信号を伝達する(シート材介在衝撃力を検知、図3の306)。
【0045】
そして、制御部102のシート材識別部105は、上述した衝撃力検知部103のシート材介在衝撃力に基づき、例えばあらかじめ用意したシート材別のデータテーブルを参照するなどして、シート材208の識別をおこなう(シート材識別、図3の307)。
【0046】
上記シート材識別部105には、シート材を識別するための情報を予め記憶させておく。この情報は、本発明の装置の使用目的により自由に設定することができる。例えば、衝撃力を補正するための必要情報、シート材の種類、型番、剛性、厚さ、密度、凹凸、種類、含水量などと圧電素子202からの出力との相関関係(例えば電圧の最大値や電圧の減衰率等の値等)がある。さらにシート材を識別するための出力信号の閾値、さらにはこれらの情報の温度、湿度依存性などがある。そして、複写機や各種プリンターなどの場合であれば、前記情報と画像形成条件やシート材の搬送条件を制御するための制御条件などを記憶させてもよい。これらの情報は、ROMやデータベースなどを用いて記憶させておけばよい。
【0047】
識別すべきシート材が複数の場合には、305から307の動作を繰り返して識別を行えばよい。
【0048】
シート材208の識別が終わると、画像形成装置の制御部などに情報が伝達され、画像形成処理に対する画像形成装置の動作設定等に用いられる。
【0049】
以降は、図3が示すように、終了しても良いし、衝撃付与部材201による衝撃付与待ち状態にしても良い。なぜなら、シート材208が通過する毎に、シート材208の識別動作をおこなっても良いからである。例えば画像形成装置に同種のシート材208を収納する給紙トレー等がある場合には、当該給紙トレーが開閉されるまで、最初のシート材208の識別情報を以降のシート材208に対して用いることも考えられる。このような場合にシート材の208通過毎に識別動作をおこなう必要がないとしても良い。
【0050】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかるシート材識別装置100によれば、衝撃付与部材201の補正手段を有しているため、ばね206の劣化や結露、外乱などによる影響を受けたとしてもシート材208の識別を精度良く行うことができる。
【0051】
また、第1の実施の形態にかかるシート材識別装置100によれば、衝撃付与部材201は、ガイド205内に敷設されたばね206によって加速されて圧電素子202やシート材208に衝撃力を付与できる。この結果、識別処理を高速におこなうことができるようになる。これにより、搬送路上をシート材208が搬送中であっても、シート材208の識別を精度良くおこなうことができるようになる。
【0052】
なお、衝撃付与部による衝撃をシート材を介在させた状態で衝撃を受ける衝撃受け部は、凹構造を備え、且つ該凹部に向かってシート材が撓むような構成にすることもできる。この場合には、凹構造によりシート材の曲げ剛性(撓み)を反映した信号が信号出力部より出力できる。凹部に向かってシート材が撓むように、凹部内に衝撃付与部の先端側(外力受け部側)が入る構成が好ましい。
【0053】
シート材とは、例えば複写機やプリンタに適用可能な紙やプラスチックシート(OHP)である。
【0054】
図2の紙搬送ガイド209Bと圧電素子202とは、同一平面に配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、圧電素子202を紙搬送ガイド209Bとは段差をつけて、シート材208を撓ませるようにする。このように撓ませるために、図2のAR3方向の下流側、すなわち図2では圧電素子202の左側にシート材の搬送に一時的な障害になるような作用を持つ部材を配置する。このようにシート材にループを形成して圧電素子202から浮かせるようにしたり、逆に凹部を形成するように圧電素子を紙搬送ガイド面から段差をつけて配置してもよい。
【0055】
さらに、この撓み量を安定にするために、シート材のバタツキを押えるような部材を設けてもよい。また、図2では、衝撃付与部と圧電素子がシート材を介して対抗する位置に配置されているが、これに限定されるものではなく、衝撃付与部と圧電素子がシート材の同じ面に配置されていてもよい。
【0056】
衝撃力の発生及び補正には、これまでの記載した方式に限定されるものではなく、図4に示したように、ソレノイド401とソレノイド端子台402を用いることもできる。ソレノイド端子台402からの通電量を変化させることにより、所望の衝撃力及び衝撃力の補正を行えばよい。また、図5に示したように、ソレノイド501、端子台502、及び磁性体の重り503を用いて、衝撃付与材201の重さを変化させてもよい。さらに、衝撃付与材を自由落下させて衝撃力を得る場合には、自由落下する距離を変化させてもよいことは自明である。
【0057】
衝撃力検知には、圧電素子を用いて説明を行ったが、これに限定されるものではない。圧力を検知できる方式であれば、何でも用いることができる。例えば、半導体の圧電効果を用いた圧力センサー、光を用いた変位センサー、感圧ゴムを用いた圧力センサー、ボイスコイルなど、何でもよい。
【0058】
衝撃力の補正は、温度、湿度などの環境変化や使用部材の径時変化などに理由で行うだけでなく、測定対象の性質が大きく変わるような場合にも必要となる。例えば、シート材が各種の記録用紙の場合には、薄紙や厚紙同士を詳細に識別したい場合と多様な紙種を薄紙と厚紙に識別したい場合とでは衝撃力の強さを変えた方がよいことがある。このような場合には、衝撃力の大きさを目的により補正することが望ましい。このような場合には、衝撃力補正部104又はシート材識別部105に予め目的に応じた衝撃力の情報を記憶させておけばよい。そして、目的に応じた調整範囲で衝撃力の補正を行えばよい。
【0059】
上記実施の形態の説明では、シート材が介在しない状態の信号(シート材不在衝撃力による出力信号)の経時変化に基づいて衝撃力を補正する場合を説明した。
【0060】
しかし本発明はこの形態に限定されるものではなく、例えば以下のような方法で衝撃力の補正を行うことも可能である。
【0061】
即ち予め規格化されたシート材(シート材の種類、型番、剛性、厚さ、密度、凹凸、種類、含水量等が定められた規格を満たすシート材/基準シート材)を介在させた状態で、衝撃付与部により衝撃を付与し、初期の出力信号を得る。次いで一定時間経過後または定期的に基準シート材の現在の出力信号を得る。そしてこれらの出力信号の値を比較し、初期の出力信号の値とのずれが所定の範囲よりも大きくなった際に前述と同様に衝撃力を調整する。
【0062】
この場合、基準シート材としては、特に制限はないが、長期間使用する際には経時的変化が少なく、耐環境性の高い材料が好ましい。例えば樹脂製のシート材、又は金属製のシート材を基準シート材として採用することが好ましい。
【0063】
<第2の実施の形態>
つぎに、本発明の第2の実施の形態にかかるシート材識別装置を、図4を用いて説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる衝撃付与部の構成を示す斜視図である。
【0064】
なお、第2の実施の形態にかかるシート材識別装置は、上記第1の実施の形態において衝撃付与部材201の引き上げ機構を変更したものであって、図4において図2(a)(b)と同一符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0065】
図4に示すように、ソレノイド401は衝撃付与部材201の上部に配置され、ガイド205に狭持され、衝撃付与部材201が移動する方向を維持する。端子台402は、ソレノイド401の吸引力を決める電流を流す端子である。
【0066】
つぎに、第2の実施の形態にかかるシート材識別装置100の動作を説明する。第1の実施の形態にかかるシート材識別装置100の動作の説明図である図3と同じ動作をするために、図1、図3、図4を用いて説明する。
【0067】
例えば画像形成装置の電源の立上げ時などの衝撃付与部材201と圧電素子202との間にシート材208が介在していない時に、端子台402に所定の電流を流すことでソレノイド401に吸引力が働き、衝撃付与部材201が引き上げられる。所定の時間が経過すると、端子台402に流れる電流が遮断され、ソレノイド401の吸引力がなくなり、衝撃付与部材201は、加速されながら衝撃力を直に圧電素子202に付与する。(衝撃付与部材201による衝撃付与、図3の301)
このとき、圧電素子202は、このシート材208が介在していない状態のシート材不在衝撃力に応じた電圧信号を生じ、図1に示した制御部102の付与衝撃力検知部103へと電圧信号を伝達する。これにより、付与衝撃力検知部103は、シート材不在衝撃力を検知する(シート材不在衝撃力を検知、図3の302)。
【0068】
つづいて、シート材不在衝撃力が衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力の設定した範囲であるか比較をする。もし、シート材不在衝撃力が所定の衝撃力のある設定した範囲から外れていた場合、衝撃力補正部104に情報を伝達する。シート材不在衝撃力が、衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力より小さい場合、シート材不在衝撃力を大きくしなければならないため、端子台402に所定の電流以上の電流を流すことでソレノイド401に働く吸引力も大きくなる。シート材不在衝撃力が、衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力より大きい場合、上述した動作の反対の動作をおこなえば良い。端子台に流す電流の調整が終了したのち、シート材識別装置100の動作を初めからやり直す(衝撃付与部材201による衝撃力を変更、図3の304)。
【0069】
シート材不在衝撃力が衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力の設定した範囲にある場合、シート材208がシート材搬送ガイド209に沿って矢印AR3に示す方向に搬送される。衝撃付与部材201の先端部分と圧電素子202との間まで搬送されると、制御部102の衝撃力検知部103により再び端子台402に所定の電流が流れる。その結果、衝撃付与部材201は吸引され、所定の時間の経過後に、電流が遮断される。衝撃付与部材201は、加速されてシート材208に衝撃力を付与する(衝撃付与部材201による衝撃付与、図3の305)。
【0070】
このとき、圧電素子202は、このシート材208が介在している状態のシート材介在衝撃力に応じた電圧信号を生じ、図1に示した制御部102のシート材識別部105へと電圧信号を伝達する(シート材介在衝撃力を検知、図3の306)。
【0071】
そして、制御部102のシート材識別部105は、上述した衝撃力検知部103のシート材介在衝撃力に基づき、例えばあらかじめ用意したシート材別のデータテーブルを参照するなどして、シート材208の識別をおこなう(シート材識別、図3の307)。
【0072】
このデータテーブルは、シート材別に割り当てられた電圧の最大値や電圧の減衰率等の値が記録されているものであり、例えば不図示のROMやデータベースなどにあらかじめ格納されているものである。
【0073】
シート材208の識別が終わると、画像形成装置の制御部などに情報が伝達され、画像形成処理に対する画像形成装置の動作設定等に用いられる。
【0074】
以降は、図3が示すように、終了しても良いし、衝撃付与部材201による衝撃付与待ち状態にしても良い。また、シート材208が通過する毎に、上述したシート材208の識別動作をおこなっても良い。さらに例えば画像形成装置に同種のシート材208を収納する給紙トレー等がある場合には、当該給紙トレーが開閉されるまで、最初のシート材208の識別情報を以降のシート材208に対して用いることもできる。このように必要に応じてシート材208の通過毎の識別動作を省略することもできる。
【0075】
また、第2の実施の形態にかかるシート材識別装置100によれば、衝撃付与部材201のストロークを短くとることができ、シート材識別装置100自身を小型化することが可能である。
【0076】
なお、第2の実施の形態においては、衝撃付与部材201の速度を補正するものとしてソレノイド401を用いているが、衝撃付与部材201の速度を容易に補正できるものであれば何を用いてもよい。
【0077】
上記実施の形態の説明では、シート材が介在しない状態の信号(シート材不在衝撃力による出力信号)の経時変化に基づいて衝撃力を補正する場合を説明した。
【0078】
しかし本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1の実施の形態で説明したように、基準シートを介在させて衝撃力の補正を行うことも可能である。
【0079】
<第3の実施の形態>
つぎに、本発明の第3の実施の形態にかかるシート材識別装置を図5を用いて説明する。図5は、第3の実施の形態にかかる衝撃付与部の構成を示す断面図である。図5において図2(a)(b)と同一符号は、同一又は相当部分を示し、他の同一部分も含め、その説明を省略する。ただし、本実施例の固定軸204はAR1の方向以外は、移動しない。
【0080】
図5に示すように、ソレノイド501は衝撃付与引き上げ部材207の上方に配置される。端子台502は、ソレノイド501の吸引力を決める電流を流す端子である。重り503はn(nは1以上の整数)個あり、ソレノイド501の磁束により磁化されて、吸引力の大きさにより、ソレノイド501に吸引しているか、衝撃付与引き上げ部材207の上部にある。重り503は、反磁性体でない磁性体であれば、何を用いても良い。
【0081】
つぎに、第3の実施の形態にかかるシート材識別装置100の動作を説明する。第1の実施の形態にかかるシート材識別装置100の動作の説明図である図3の304以外は同じ動作をするため、図3の304の動作を図5を用いて説明すると共に、図3の304以外の説明は省略する。
【0082】
シート材不在衝撃力を検知後に、衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力の設定した範囲であるか比較をする。もし、シート材不在衝撃力が所定の衝撃力のある設定した範囲から外れていた場合、衝撃力補正部104に情報を伝達する。シート材不在衝撃力が、衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力より小さい場合、シート材不在衝撃力を大きくしなければならないため、端子台502に流す電流を小さくする。ソレノイド501の磁束が弱くなるために、吸引力が弱くなり、ソレノイド501に吸引していた重り503の一部は、衝撃付与部材207の上部に移動する。シート材不在衝撃力が、衝撃付与部101のもつ所定の衝撃力より大きい場合、シート材不在衝撃力を小さくしなければならない。そのため、端子台502に流す電流を大きくすることで、ソレノイド501の磁束が強まり、吸引力が増し、重り503の一部はソレノイド501に吸引される。
【0083】
重り503が移動することで、衝撃付与部材201の重さが変動して、衝撃力を補正することが可能となる。あらかじめ、シート材不在衝撃力に対応した電流の大きさを示すデータテーブルを用いるのでも良い。端子台502に流す電流の調整が終了したのち、シート材識別装置100の動作を初めからやり直す(衝撃付与部材201による衝撃力を変更、図3の304)。
【0084】
なお、第3の実施の形態においては、衝撃付与部材201の重さを補正するものとしてソレノイド501を用いているが、衝撃付与部材201の重さを容易に補正できるものであれば何を用いてもよい。
【0085】
第1乃至第3の実施の形態においては、シート材識別装置100は、複写機、プリンタ、あるいはFAX等の画像形成装置に設置されるとして説明した。しかし、本発明は、例えば券売機や自動販売機等、シート材の種類の識別を必要とするものであれば何に用いてもよい。
【0086】
また、第1、第3の実施の形態においては、衝撃付与部材201を加速させるための部材をばね206であるとして説明したが、他のゴム等の弾性部材を用いてもよい。
【0087】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、圧電素子202により衝撃付与部材201が付与する衝撃力を電圧信号として発生させるとしたが、付与する衝撃力をそれに応じた、数値データとして発生させることができるものであれば何を用いてもよい。
【0088】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、衝撃付与部材201から受ける衝撃力によって圧電素子202で生じる電圧信号には、適宜、フィルタ等でノイズ成分の除去やアンプによる増幅等をおこなってもよい。
【0089】
上記実施の形態の説明では、シート材が介在しない状態の信号(シート材不在衝撃力による出力信号)の経時変化に基づいて衝撃力を補正する場合を説明した。
【0090】
しかし本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1の実施の形態で説明したように、基準シートを介在させて衝撃力の補正を行うことも可能である。
【0091】
<第4の実施の形態>
図6は、本発明の実施の形態に係るシート材識別装置としての信号出力装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す図であり、同図において、600はレーザプリンタ、600Aはプリンタ本体、600Bは画像形成部である。
【0092】
ここで、このレーザプリンタ600においては、不図示のパーソナルコンピュータやワードプロセッサ等の外部情報機器から情報が送信されると、この情報に基づいて不図示のビデオコントローラボードが画像信号を作成する。次いでこの後、ビデオコントローラボードで作成された画像信号に応じたレーザ光Lをレーザスキャナ605が時計方向に回転している感光ドラム606A上に照射する。これにより、感光ドラム606A上に静電潜像が形成される。
【0093】
次に、このように感光ドラム606A上に静電潜像を形成した後、この静電潜像を、プロセスユニット606内の不図示の現像器から供給されるトナーによって順次トナー像として顕画化する。この後、このトナー像を感光ドラム606Aと転写ローラ607とにより構成される転写部607Aへ搬送する。
【0094】
一方、このようなトナー像形成動作に並行して給紙カセット608内に積載収納されているシート材Sの最上位のシートを反時計方向に1回転する半月状の給紙ローラ609によって順次給紙パス610Aへ送り出す。この後、搬送ローラ611によって回転停止中のレジストローラ612に搬送する。
【0095】
ここで、このようにレジストローラ612に到達したシート材Sは、先端がレジストローラ612のニップに突き当たった後、所定のループを形成するまで搬送が続けられることにより、斜行状態の矯正がなされる。
【0096】
そして、このように斜行状態の矯正を終えたシート材Sは、感光ドラム606A上のトナー像と位置を合わせるタイミングをとって回転を開始するレジストローラ612によって転写部607Aへ搬送される。この転写部607Aにおいて、転写ローラ607により感光ドラム606A上のトナー像がシート面上に転写される。
【0097】
次に、このようにトナー像の転写を終えたシート材Sは搬送ガイド613上を通って定着装置14へ搬送され、この定着装置14において加熱及び加圧されることにより、転写されたトナー像がシート上に定着される。
【0098】
なお、トナー像の定着処理を終えたシート材Sは、印字面を下向きに積載(フェイスダウン積載)する場合には、搬送面116とそれに対向するフェイスアップトレイ622によって形成される搬送路を通る。そして不図示の駆動源を備えたフェイスダウン排紙ローラ619と、フェイスダウン排紙ローラ619と圧接して従動する従動コロ625とによってプリンタ本体600Aの上部のフェイスダウン排紙トレイ617上へ排紙される。
【0099】
ところで、同図において、50は画像形成部600Bの下流、本実施の形態おいては、搬送ローラ611とレジストローラ612との間に設けられたシート材識別装置である。このシート材識別装置50は、シート材Sに衝撃付与部材を衝突させ、シート材の弾性により吸収された後の衝撃エネルギーを圧力センサーで検出し、圧力センサーに加わった衝撃力に応じた大きさの電気信号を出力する。この結果に基づいてシートの種類を識別するように構成されたものである。また、80は、レーザプリンタ600の画像形成動作を制御する制御部である。この制御部80は、このシート材識別装置50からのシート材識別信号に基づき、シート材Sに応じた搬送速度、定着温度等の条件で画像を形成するよう画像形成部600Bを制御するようにしている。
【0100】
なお、本発明における信号出力装置は、衝撃子(衝撃付与部)、衝撃受け部、圧力センサを含み構成される。衝撃受け部は圧力センサ自体であってもよい。また、衝撃受け部上下部あるいは内部に圧力センサを設けてもよい。そしてシート材を衝撃受け部と衝撃付与部間に介在させ、あるいはさせない場合に、当該加得られた衝撃に応じて信号を出力できる構成にしておくことが望ましい。なお、衝撃付与部による衝撃をシート材を介在させた状態で衝撃を受ける衝撃受け部は、凹構造を備え、且つ該凹部に向かってシート材が撓むような構成にすることもできる。この場合には、凹構造によりシート材の曲げ剛性(撓み)を反映した信号が信号出力部より出力できるからである。凹部に向かってシート材が撓むように、凹部内に衝撃付与部の先端側(外力受け部側)が入る構成が好ましい。
【0101】
シート材とは、例えば複写機やプリンタに適用可能な紙やプラスチックシート(OHP)である。
【0102】
なお、本発明においては、シート材が介在しない状態での信号(第1信号)を検知する。次いでその信号と所定の信号(例えば、初期設定信号)とを比較し、その増幅度が可変な増幅器を有する信号出力部の増幅度を変えて、前記第1信号と所定の信号とを実質的に等しくする。勿論、必ずしも等しくする必要はなく、両者の違いが例えば20%以内にするなどある程度の幅を持たせても良い。
【0103】
図7は、このようなシート材識別装置50の構成を説明する図である。
【0104】
同図において、Sはシート材、611A、611Bは、対になって図示の矢印の方向に回転し、シート材Sを搬送する為の搬送ローラ、612A、612Bは、対になって図示の矢印の方向に回転し、シート材Sを搬送する為のレジストローラである。
【0105】
また、51は、本実施例では611の搬送ローラの軸に固定されて、図示のA点を回転中心として、図示の矢印の方向に回転し、シート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材であり、611の搬送ローラの径より、やや、小さく設けられている。52は、応力を蓄える部材であり、本実施例では、B点で片側を固定された板ばねを用いた構成で説明する。
【0106】
また、本実施例では、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材を搬送ローラ軸の駆動力を用いているが、画像形成装置内に設けられた他のローラ軸の駆動力を用いてもよい。
【0107】
また、本実施例では、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材にローラ軸を用いているが、プランジャー等の電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機構を用いてもよい。
【0108】
また、52の応力を蓄える部材は、本実施例では板ばねを用いているが、コイルばねを用いてもよい。
【0109】
53は、52の応力を蓄える部材と一体に設けられ、前記シート材に衝撃を加えるための衝撃子(衝撃付与部材)である。54は、前記53の板ばねと一体で設けられた衝撃子により加えられた応力が、Sのシート材の弾性により吸収された衝撃エネルギーを検出する為の圧力センサーである。
【0110】
また、53の衝撃子は、52の応力を蓄える部材と一体化し、ばねを用いずに自由落下させる構成としてもよい。
【0111】
54の圧力センサーは、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、比較的機械的破壊に強いリニアモータ(ボイスコイル)、また、小型化のために圧電素子等を用いることが出来る。
【0112】
55は、54の圧力センサーで得られた電気信号を所望の電圧まで増幅する増幅器である。60は、前記シート材Sの種類を識別するため、予めシート材Sの種類に応じたデータを不図示のメモリーに記憶しておき、このデータと入力された電圧出力信号とを比較分析(解析)することにより、シート材Sの種類を識別するシート材識別部である。
【0113】
61は55の増幅器から得られる出力電圧の初期の設定を記憶しておく記憶部である。そして耐環境条件の変化に伴い、圧電センサーから得られる出力電圧が変動した場合に、初期の設定と現時点の出力電圧とを比較分析し、55の増幅器の増幅度を変える為の機能をも併せ持つものである。
【0114】
例えば55の増幅器の増幅度を変えるための一つの方法は、増幅器55の帰還抵抗の比を変えることである。また別の一つの方法は、54の圧力センサーの終端抵抗に可変抵抗器を用いて、55の増幅器を含む増幅回路の増幅度を変える方法である。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
次に、このような構成のシート材識別装置50におけるシート材識別動作について図8に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0116】
ユーザーの要求により、レーザプリンタ600が画像形成動作を開始(ON)すると、給紙カセット608(図6参照)から給紙されたシート材Sは、搬送ローラ611によってレジストローラ612方向に図示のように搬送される。
【0117】
この時611の搬送ローラの軸に固定されて、図示のA点を回転中心として、図示の矢印の方向に回転する51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材は、以下の動作を繰り返す。即ち611の搬送ローラの径より、やや、小さく設けられていて、52の応力を蓄える部材板ばねを、すくい上げては、開放するという動作を繰り返すことになる。
【0118】
このとき、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材は、搬送ローラの径より、やや、小さく設けられているため、シート材の搬送には、なんらの悪影響をも及ぼすことはない。
【0119】
また、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材は、長さを変えることにより、52の応力を蓄える部材板ばねを、すくい上げ、開放する点を変えることができる。すなわち、52に蓄えられる応力、結果的に、シート材に衝撃を加えるための衝撃子53の衝撃力を変えることができる。
【0120】
また、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材は、数を増やすことにより、短時間に52の応力を蓄える部材板ばねを、すくい上げ、開放することが出来る。すなわち、短時間に数多くシート材に衝撃を加え、Sのシート材の弾性データを取得できる。
【0121】
シート材に衝撃を複数回繰り返し、更に、衝撃力を変えることにより、Sのシート材の弾性データを複数取得することにより、シート材Sの種類の識別能力を高めることが出来る。
【0122】
このように、51のシート材に衝撃を加える為の応力を発生する部材により、すくい上げては、開放されるという52の応力を蓄える部材板ばねは、B点で片側を固定されている。その為、すくい上げられる過程では徐々に応力が増していき、開放された時点で、一挙に反発し、52の板ばねに一体で設けられた衝撃子53により、Sのシート材を挟んで、54の圧力センサーに衝撃エネルギーを与えることになる。
【0123】
衝撃子53がシート材Sを挟んで圧力センサー54に衝撃を加えた場合に得られる電気信号を予めシート材Sの種類に応じたデータとして、不図示のメモリーに記憶しておく。このデータと上記によって得られたデータとを比較分析(解析)することによりシート材識別部60は、シート材Sの種類を識別する。
【0124】
この方法で、外部環境の変化、たとえば、温度、湿度の変化、52の応力を蓄える部材板ばねの経年変化等を生じた場合、圧力センサー54から得られる出力電圧に変動が生じ、シート材の識別精度が低下する為、以下に述べる方法が、より、識別精度が向上する。
【0125】
シート材Sが、搬送ローラ611によって搬送されるが、シート材Sが衝撃子53と、圧力センサー54の線上まで到達していない場合は、衝撃子53は、圧力センサー54に直接衝撃を加えることになる。このときに圧力センサー54で得られた電気信号を、Sのシート材の弾性データを求める基準電気信号として用いる。(図8に示すタイミングチャート(e)圧力センサー部にシート材の有無の「なし」の部分(ア))。
【0126】
この操作が衝撃子53に対して、シート材S一枚毎に、補正(キャリブレーション)したことになる。この結果、圧力センサー54に直接衝撃を加えた場合に得られる出力信号(基準電気信号ともいう)は、耐環境の変化により、52の応力を蓄える部材板ばねの経年変化等を生じても、識別精度が維持される。
【0127】
更には、初期の出力電圧の条件を61の初期条件記憶部に記憶しておく。そして耐環境条件の変化に伴い基準となる出力電圧に変動が生じた場合には、61の初期条件記憶部に記憶しておかれたデータと、上記によって得られたデータとを比較分析する。そしてこの比較分析結果に基づいて増幅器55の増幅度を変える。その結果図8に示すタイミングチャート(e)圧力センサー部にシート材の有無の「なし」の部分(ア)の出力電圧が、初期の設定に略等しい条件で出力されることになる。
【0128】
上記において、増幅器55の増幅度を変えても、図8に示すタイミングチャート(e)圧力センサー部にシート材の有無の「なし」の部分(ア)の出力電圧が、初期の設定に略等しい条件の出力が得られない場合がある。その場合はシート材識別手段が、故障又は寿命であることを表示させても良い。
【0129】
次に、シート材Sが、搬送ローラ611により搬送され、シート材Sが衝撃子53と、圧力センサー54の線上に到達した場合は、衝撃子53は、シート材Sを挟んで圧力センサー54に衝撃を加えることになる。
【0130】
このときに圧力センサー54で得られる電気信号は、シート材Sの弾性により吸収された衝撃エネルギーにより、衝撃子53が圧力センサー54に直接衝撃を加えたときに圧力センサー54で得られた基準電圧の電気信号と比較し小さくなる。(図8に示すタイミングチャート(e)圧力センサー部にシート材の有無の「あり」の部分(イ))。
【0131】
このときにおいては、前述の工程で増幅器55の増幅度が変えられたことにより、図8に示すタイミングチャート(e)圧力センサー部にシート材の有無の「あり」の部分(イ)の出力電圧は、次のように出力される。即ちシート材Sの弾性が同じで有れば、初期の設定に略等しい条件で、出力されることになる。
【0132】
従って応力を発生する部材51、応力を蓄える部材板ばね52、衝撃子53、圧力センサー54が、耐環境条件の変化により、総合的に感度の低下した状態においても、紙の種類の識別精度が向上する。これはシート材識別部60に送り出される出力電圧が、初期の状態に略等しくなり、信号対ノイズ比(S/N比)が向上するからである。
【0133】
シート材Sの弾性により吸収される衝撃エネルギーは、シート材Sの種類、たとえば、厚み、硬さ等により、種類毎に違いを生じる。
【0134】
よって、衝撃子53が、圧力センサー54に直接衝撃を加えた場合に得られる基準電気信号と、衝撃子53がシート材Sを挟んで圧力センサー54に衝撃を加えた場合に得られる電気信号と、を比較することにより、シート材Sの種類を識別できる。
【0135】
衝撃子53が、圧力センサー54に直接衝撃を加えた場合に得られる基準電気信号と、シート材Sを挟んで衝撃を加えた場合に得られる電気信号と、を比較した結果を予めシート材Sの種類に応じたデータとして不図示のメモリーに記憶しておく。このデータと上記によって得られたデータとを比較分析(解析)することによりシート材識別部60は、シート材Sの種類を識別する。
【0136】
そして、このような図8の(f)に示すシート材識別工程において、シート材Sの種類を識別した後、シート材識別部60から制御部80にシート材識別信号が出力されるようになっている。制御部80は、このシート材識別信号に応じ、図8の(g)に示す画像形成モード期間において、シート材Sに応じた搬送速度や定着温度、インクの吐出量等を制御し、画像形成モードの最適化を図るようにしている。
【0137】
このように、画像形成装置内に、シート材に衝撃を加えるための衝撃子(衝撃付与部材)を設け、前記シート材に衝撃を加えて、前記シート材により吸収された後の衝撃エネルギーを圧力センサーで検出し、電気信号として得る。そして必要に応じて、前記シート材のない場合に前記衝撃子より前記圧力センサーに直接衝撃を加えて得られた電気信号を得る。そしてこれらの得られた電気信号に基づいて前記シート材の種類を識別する。また、前記シート材のない場合に前記衝撃子より前記圧力センサーに直接衝撃を付与して得られた電気信号が、耐環境条件の変化に伴い変動した場合には以下の操作を行う。即ち前記圧力センサーからの出力電圧を増幅する為の増幅器の増幅度を変えることにより、初期の設定に略等しい出力電圧を得て前記シート材の種類を識別する。この結果、シート材Sにマーキングを施すことなく、かつ簡単な構成でシート材Sの種類の識別を行うことができる。
【0138】
なお、本発明では、水平に設置する構成を説明したが、垂直に設置するようにしても良い。
【0139】
また、本実施の形態においては、搬送ローラ611の直後に配置したが、給紙カセット608から転写部607Aの直前までであれば、これ以外の場所に設置しても良い。
【0140】
なお、シート材がある場合の前記信号出力部からの信号か、シート材がない場合の前記信号出力部からの信号かを判別するために、シート材有無検知手段(例えば、シート材のあるなしで受光量が変わる光り検知手段)を設けることもできる。また、増幅器の増幅度を変えても所定の出力信号が得られない場合は、画像形成装置内で警告情報をユーザーに分かるように出力するのがよい。
【0141】
図6において、50はレジストローラ612と紙搬送ローラ611の間に設けられたシート材識別装置であり、この出力信号をプリンタ600の画像形成動作を制御する制御部80に送って、記録用紙に応じた搬送速度、定着温度、転写条件などの制御を行う。
【0142】
シート材識別装置の詳細原理を図7に示した。紙搬送ローラ611a、b及びレジストローラ612a、bは対になって図の矢印の方向に回転して、記録用紙Sを図の矢印の方向に搬送する。51は応力発生部材であり、搬送ローラ611aの回転軸に固定されている。この図では、棒状で記載されているが、これに限定されるものではなく、ローラ611aの直径よりも小さければ、形状には制限がない。52は、板バネであり、図中Bで固定されている。53は衝撃付与部材である。103は衝撃力の検知部であり、104が衝撃力補正部、105はシート材識別部である。61は、104の初期値を記憶しておく記録部であり、図ではシート材識別部105と別に記載してあるが、105と一体にしても何ら問題はない。
【0143】
シート材の識別の概念は、図8に示してある。紙搬送ローラ611を回転させ、記録用紙Sが該ローラ611に到達する前に応力発生部材51により、板バネ52に応力を与える。51の回転により、板バネが開放されると衝撃付与部材53が衝撃力検知部103に衝撃を与える。このときの検知部103からの出力を何も補正せずに初期条件記憶部61の記憶データと比較する。初期データとの比較により問題がなければ、図6の制御部80に信号を送って紙搬送を開始する。記録用紙の有無に係らず、衝撃を付与する回数やその強さには、全く制限がない。すなわち、衝撃力の強さは、記録用紙に傷がつく、あるいは画像形成に障害を与えるような機械的な組成変形が起きない限り、どのような強さの衝撃力でもかまわない。また、衝撃を付与する回数、複数の衝撃を付与する際の間隔であるが、これにも制限は全くない。
【0144】
記録用紙がない時の衝撃力検知部103からの出力に問題がなければ、紙搬送ローラ611により搬送されてきた記録用紙に記録用紙がない時と同様に衝撃付与部材53をもちいて衝撃を付与する。衝撃力検知部で出力した信号を初期条件と同じようにシート材識別装置105に送って記録用紙Sの情報を本体制御部80に転送して、制御部80は画像形成動作を開始する。
【0145】
一方、記録用紙がないときの衝撃力検知部103からの出力信号が、61に記憶されていた初期条件と異なる場合には、衝撃力補正部104により、所定の値になるように補正を行う。そしてシート材識別部105で記録用紙の情報を本体制御部に送って、記録用紙に適した画像形成動作を行う。
【0146】
衝撃力補正部104では、衝撃力検知部103からの信号を必要により補正するのであるが、103からの信号が電圧であれば、その電圧を増幅あるいは減衰させることで補正することができる。例えば、信号を増幅させる場合には、増幅器の帰還抵抗比を変化させたり、衝撃力検知部103の終端抵抗に可変抵抗器を用いて増幅回路の増幅度を変える方法がある。また、該信号を微分、積分したり、電圧の増減も含めて、これらを組み合わせて補正することも可能である。一般的には、補正が必要になる場合は、温度、湿度などの環境が変化した時や、プリンター本体を始めとする各種の径時変化などが考えられる。さらには、特殊条件での画像形成動作を行うような場合にも補正が必要になる。
【0147】
シート材識別部105には、シート材を識別するための情報を予め記憶させておく。この情報は、本発明の装置の使用目的により自由に設定することができる。例えば、シート材の剛性、厚さ、密度、凹凸、種類、含水量などと圧電素子202からの出力との相関関係や、シート材を識別するための出力信号の閾値、さらにはこれらの情報の温度、湿度依存性などがある。そして、複写機などの場合であれば、前記情報と画像形成条件やシート材の搬送条件を制御するための制御条件などを記憶させてもよいことは言うまでもない。これらの情報は、ROMやデータベースなどを用いて記憶させておけばよい。さらに、衝撃力の補正を行っても、初期条件を再現できない場合には、その主旨をプリンターの使用者に知らせるための警告信号をだして、画像形成動作を中止させるような機能を持たせてもよい。
【0148】
上記実施の形態の説明では、シート材が介在しない状態の信号(シート材不在衝撃力による出力信号)の経時変化に基づいて衝撃力を補正する場合を説明した。
【0149】
しかし本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1の実施の形態で説明したように、基準シートを介在させて衝撃力の補正を行うことも可能である。
【実施例】
【0150】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0151】
(実施例1)
図1に本発明のシート材識別装置100の構成図を示す。101は衝撃付与部、102は制御部であり、さらに衝撃力検知部103、衝撃力補正部104及びシート材識別部105から構成されている。
【0152】
衝撃付与部101及び衝撃力検知部103、及び衝撃力補正部104の詳細構成原理図を図2に示した。この図において、衝撃付与部は図中のAR1の方向に回転する固定軸204に固定されたカム203、バネ206、衝撃付与部207、衝撃付与部材201及びガイド205から構成される。衝撃力補正部は、固定軸204及びカム203を図2中AR2方向に移動させる不図示の駆動部により構成される。209(A)及び209(B)はシート材の搬送ガイドであり、シート材208は、図中AR3の方向から不図示の駆動装置により搬送される。202は衝撃力検知部であり、本発明では圧電素子を用いた。
【0153】
図3に示したシート材の判別を行う手順に従って、本発明の動作を説明する。本発明によりシート材を識別する場合、識別行為を行うために、まずシート材がない状態でカム203及び固定軸204をAR1方向に回転させて、バネ206を圧縮し、その後、開放することにより、衝撃力を発生させる。このように衝撃付与部材201が衝撃力検知部である圧電素子202に衝撃力を付与する。(図3の工程30 1、302)この時の圧電素子202からの出力を予め設定してある出力値と比較する。(図3の工程 303、及び図2(A))この比較の結果、202からの出力値が、予め設定されていた値と同じであれば、不図示の装置により、シート材208を搬送して、前記と同じ動作により衝撃力をシート材に付与する。(図3の工程305,306、及び図2(B))シート材を介した時の圧電素子202からの出力をシート材識別部に記憶された情報と比較することによりシート材を識別する。(図3の工程307)シート材が複数の場合には、図3の工程305に戻って測定を繰り返す。
【0154】
図3の工程302での出力値が予め設定されていた値と異なる場合には、工程304を実施する。衝撃力が何らかの原因で所定の値よりも小さくなっている場合について説明すると、図2のAR2の方向に固定軸204とカム203を移動させる。この移動により、バネ206は大きく圧縮させることができるために、衝撃付与部207がカムの回転により開放されると移動前に比べて大きな衝撃力を発生させることができる。このようにして、301から304の工程を必要なだけ繰り返してシート材がない場合に衝撃力を所定の値に補正する。このことにより、シート材に付与させる衝撃力は常に一定に保持できることになる。
【0155】
本発明の装置を使って、電子写真用の記録用紙を測定した。使用した用紙は、バジャーボンド60(BB60)、ゼロックス75(Xx75)、ニーナクラシック90(NCL90)、ハンマーミル120(HM120)、キヤノン電子写真用OHT(CG3300)である。この図では207及び201の合計質量が3.9g、衝撃の強さは衝撃付与部材201がシート材208に衝突する時の速度が0.48m/sの場合について示してある。この条件で、衝撃を付与すると、圧電素子202からの出力は、シート材がない時には12V±0.2Vであった。この値をシート材がない時の設定値とした。
【0156】
図3の手順に従って、記録用紙の識別を行い、衝撃力が正常な場合の測定結果を図9に示した。この図では、縦軸は本発明の識別装置における出力電圧、横軸は記録用紙の大きさと厚さから算出した密度である。各用紙のプロットの大きさは、50回測定した時のばらつきを示している。
【0157】
衝撃回数が多くなってくると、バネ206の径時変化が主な理由と思われるが、シート材がない場合に圧電素子からの出力電圧が低下する現象が見られる。例えば、衝撃回数が120万回になったときに、シート材のない時の出力電圧が11V以下になることがあった。このような場合には、シート材に衝撃を付与すると、圧電素子からの出力も低下して、例えば、記録用紙BB60は4V、CG3300用紙は7Vよりも小さな電圧となった。このような場合には、シート材のない場合の出力電圧を12±0.2Vになるように固定軸204とカム203を不図示のモーターで移動させて、バネ206の圧縮率を大きくするようにした。本発明の場合には、1mmだけAR2方向に203と204を移動させた。この状態で、各記録用紙の測定を行うと、すべての用紙において図9の結果が再現できた。
【0158】
(実施例2)
本発明の出力装置をレ−ザービームプリンターに搭載した。レーザービームプリンター600の構成図を図6に示した。この図において、50がシート材識別を行う出力装置である。その詳細構成原理を図7に示した。又、図8にはレーザービームプリンター100における画像形成動作の手順を示した。
【0159】
画像形成動作が始まると、図6において記録用紙Sは給紙ローラ609により、1枚づつ引き出され、給紙パス610Aを経て、搬送ローラ611の到達する。図7の搬送ローラ611Aにはその回転中心Aとして図中の矢印で示した搬送ローラと同じ方向に回転する応力発生部材51が取り付けられている。搬送ローラ611の回転により、応力発生部材51が応力蓄積部材52を跳ね上げ、搬送ローラ611の回転により52を開放する。このとき、52は図7のBで片側を固定されているために、開放されると衝撃付与部材53により衝撃力検知部103に衝撃を付与する。この一連の動作は、搬送ローラ611が回転している間、繰り返される。
【0160】
図7では、応力発生部材51は回転中心Aを中心に非対称な形状としているために、応力蓄積部材52に蓄えられる応力は2種類の大きさとなり、衝撃は搬送ローラ611が1回転する間に強弱の2回が付与される。(図8(D))搬送ローラ611が2回転すると衝撃力検知部103に記録用紙Sが搬送されて、その後は搬送ローラ611の回転により、強弱2回の衝撃付与を繰り返すことになる。記録用紙がない場合の衝撃力検知部からの出力は、初期条件記憶部61に記憶された情報と比較され、衝撃力補正部104により61に記憶された値と同じになるように補正される。(図8(E)(ア))この時の補正の割合に基づいて記録用紙Sに衝撃を付与した時の出力を補正する。(図8(E)(イ))この補正された値により、シート材識別部105により必要な情報を図6の制御器80に送って画像形成を開始する。(図8(G))
より具体的に示すと以下のようになる。まず、応力蓄積部52を板バネで、衝撃付与部材53を重さ8gのステンレスとして、衝撃力検知部103に衝撃付与したときの速度が、0.48m/sと0.23m/sの場合、衝撃力検知部103からの出力は図10のようであった。この測定を予め50回繰り返した時の平均値を初期条件記憶部61に記憶させた。なお、図7では記録用紙Sの搬送面と衝撃力検知部103が同一平面状に配置されているが、本発明の測定では衝撃を検知するセンサーの衝撃受け面は、該搬送面よりも0.3mmずらして、該搬送面には凹部を形成してある。本発明では、縦横5mm、厚さ100μmの圧電素子を該センサーとして用いた。
【0161】
次いで、シート材の情報が記録用紙の紙厚である場合について説明する。記録用紙として電子写真用記録用紙であるCLC用紙(キヤノン製)を用いた場合の測定結果を図11に示した。なお、用紙は20cm/sの速度で搬送された状態で測定した。坪量の異なるCLC用紙の紙厚を横軸に、圧電素子からの出力を縦軸に取ってある。なお、紙厚はマイクロメーターを用いて、各用紙20枚を1枚あたり無作為に10箇所で紙厚を測定し、その平均値を用いた。圧電素子からの出力は、シート材がない時の電圧に対する相対発生電圧である。図8では、搬送ローラ611の回転が3回で回転を止めているように記載してあるが、これに限定されるものではない。記録用紙からの信号を3回取得した後にこの平均値を用いて図11を作成した。楕円で囲ったAの部分は、1回目(すなわち強い衝撃)の衝撃付与、Bの部分は2回目(すなわち弱い衝撃)の外衝撃付与による測定結果である。これを二次関数で近似するとA部分は、相対電圧をy、紙厚をxとするとy=0.13x−0.37x+0.23(相関係数R=0.9996)で表すことができた。また、Bの部分は、y=―4.13x+0.42x+0.09(相関係数R=0.9999)で回帰することができた。この測定結果を予めシート材識別部105に記憶させておく。
【0162】
以上のような記録用紙がない時とある時の情報を初期条件記憶部61とシート材識別部103に記憶させた後に、実際の画像形成を行う。未知の記録用紙であっても図11の回帰曲線から、記録用紙の紙厚が算出される。このため、この紙厚に最適な画像形成条件、例えば、本発明のレーザービームプリンター100では、CLC81.4とCLC209用紙では、CLC209用紙の方が定着温度は約15℃高く設定されている。これらの用紙が混在している場合には、通常は高い定着温度に画像形成温度を設定することが多い。しかし、本発明では図11の回帰曲線により、紙厚を測定することにより各用紙に最適な定着温度が適用される。この結果、CLC81.4用紙に対する無駄な電力消費もなくなり、さらには画像形成後の用紙カールも大幅に低減できた。
【0163】
なお、本発明では衝撃付与は2種類の衝撃力を用いているが、これに限定されるものではない。上記のような場合には、図11の2つの回帰曲線により、未知の用紙の紙厚を求め、その平均値から画像形成条件を決定してもよいし、一方だけで判定してもよいことは言うまでもない。さらに、強弱の衝撃に対して、例えば強衝撃は紙密度、弱衝撃は紙厚といった異なる紙情報を求めてよい。衝撃の回数や強さ、周期なども制限はなく、また記録用紙に衝撃を付与する場所も図6のレジストローラ周辺に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0164】
以上のように、本発明にかかるシート材識別装置は、画像形成装置にて画像を形成する際のシート材の識別をおこなう際に有用であり、特に、品質の良い画像形成をおこなうことが要求される画像形成装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明にかかるシート材識別装置の機能的構成を示すブロック図。
【図2】(a)はシート材不在時の衝撃付与部材による衝撃を検知する構成を示す断面図、(b)はシート材介在時の衝撃付与部材による衝撃を検知する構成を示す断面図。
【図3】シート材を識別するまでの動作工程を示すフローチャート。
【図4】第2の実施の形態にかかる衝撃付与部の構成を示す斜視図。
【図5】第3の実施の形態にかかる衝撃付与部の構成を示す断面図。
【図6】本発明の実施の形態に係るシート材識別装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す図。
【図7】上記シート材識別装置の構成を説明する図。
【図8】上記シート材識別装置におけるシート材識別動作のタイミングを説明する図。
【図9】記録紙の密度と出力電圧との関係を表すグラフ。
【図10】衝撃力検知部に衝撃付与したときの速度と、衝撃力検知部から出力される信号との関係を表すグラフ。
【図11】坪量の異なる用紙の紙厚と、衝撃力検知部から出力される信号との関係を表すグラフ。
【図12】シート材の一部にマーキングを施す装置の一例を示す図。
【図13】従来のシート材識別装置により識別されるマーキングが施されたシート材を示す図。
【符号の説明】
【0166】
100 シート材識別装置
101 衝撃付与部
102 制御構部
103 衝撃力検知部
104 衝撃力補正部
105 シート材識別部
201 衝撃付与部材
202 圧電素子
203 カム
204 固定軸
205 ガイド
206 ばね
208 シート材
209 シート材搬送ガイド
401 ソレノイド
402 端子台
501 ソレノイド
502 端子台
503 重り
50 シート材識別装置
51 応力を発生する部材
52 応力を蓄える部材
53 衝撃子
54 圧力センサー
55 増幅器
60 シート材識別部
61 初期条件記憶部
80 制御部
600 レーザプリンタ
600A プリンタ本体
600B 画像形成部
607A 転写部
611 搬送ローラ
612 レジストローラ
S シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に衝撃を付与する衝撃付与部と、
該衝撃を受けるための衝撃受け部と、
前記衝撃付与部側又は前記衝撃受け部側の少なくとも一方に、
前記衝撃付与部により前記衝撃受け部が受けた衝撃により信号を出力する信号出力部と、
を備えた信号出力装置であって、
前記衝撃付与部で発生する衝撃力と、
前記信号出力部から出力される出力信号との少なくとも一方を補正する補正手段を有することを特徴とする信号出力装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
識別すべきシート材が介在しない状態で衝撃を付与して得られた出力信号が所定の範囲外の場合に、
衝撃力を調整するか、
前記出力信号を変更する補正手段であることを特徴とする請求項1記載の信号出力装置。
【請求項3】
前記衝撃付与部で発生する衝撃力の補正手段が、
該衝撃付与部と前記衝撃受け部との間にシート材が介在しない状態で、
前記衝撃付与部により前記衝撃受け部が受けた衝撃により前記信号出力部から出力される信号を用いて補正を行う補正手段を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか1項記載の信号出力装置。
【請求項4】
前記衝撃付与部は衝撃発生手段と衝撃付与部材を含み、前記衝撃付与部材の速度を補正することで衝撃力の補正を行うことを特徴とする請求項3記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記衝撃付与部は衝撃発生手段と衝撃付与部材を含み、前記衝撃付与部材の重さを補正することにより衝撃力の補正を行うことを特徴とする請求項3記載の信号出力装置。
【請求項6】
前記衝撃付与部は衝撃発生手段と衝撃付与部材を含み、
衝撃を発生させる前の前記衝撃付与部材と前記衝撃受け材の距離を補正することで前記信号出力装置から出力される信号を補正することを特徴とする請求項3記載の信号出力装置。
【請求項7】
請求項1,2、3のいずれか1項記載の信号出力装置において、前記信号出力部からの信号を補正する手段が、
前記信号出力部からの信号を増幅、減衰、積分、微分から選択される少なくとも1つの機能を有する信号処理部を含み、かつ前記信号処理部の信号処理機能が可変であることであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
前記衝撃付与部と前記衝撃受け部の間にシート材が介在しない状態で、
前記衝撃付与部により前記衝撃受け部が受けた衝撃により前記信号出力部から出力される信号が所定の値になるように前記信号処理部の可変度を変えることを特徴とする請求項7記載の信号出力装置。
【請求項9】
前記衝撃付与部で発生する衝撃力と前記信号出力部から出力信号の一方、又は両方を補正しても、信号出力部からの信号が所定の値に補正されない時に、警告信号を出力する手段を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の信号出力装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の信号出力装置、及びシート材に関する情報が記憶された記憶部とを備え、
前期信号出力装置からの出力信号と、前記記憶部の情報とを用いて、シート材を識別する機能を備えていることを特徴とするシート材識別装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の信号出力装置、シート材を搬送する搬送手段、及び前記シート材に画像を形成する画像形成手段を備えており、
前記信号出力装置からの信号に基づいて画像形成条件を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
衝撃付与部によってシート材が介在する状態で衝撃受け部に所定の衝撃を付与する工程と、
衝撃受け部によって前記シート材に付与された衝撃を出力信号として出力する工程と、
該出力信号と予め用意したシート材を識別するための情報とに基づいて前記シート材を識別する工程と、
を備えたシート材の識別方法であって、
前記衝撃付与部によってシート材に所定の衝撃を付与する工程の前に、
前記識別すべきシート材が介在しない状態で前記衝撃受け部に衝撃を付与して出力信号を得る工程と、
該出力信号が所定の範囲内となるように前記衝撃付与部で発生する衝撃力を調整する工程と、
を有することを特徴とするシート材識別方法。
【請求項13】
衝撃付与部によってシート材が介在する状態で衝撃受け部に所定の衝撃を付与する工程と、
衝撃受け部によって前記シート材に付与された衝撃を出力信号として出力する工程と、
該出力信号と予め用意したシート材を識別するための情報とに基づいて前記シート材を識別する工程と、
を備えたシート材の識別方法であって、
前記衝撃付与部によってシート材に所定の衝撃を付与する工程の前に、
前記識別すべきシート材が介在しない状態で前記衝撃受け部に衝撃を付与して出力信号を得る工程と、
該出力信号が所定の範囲内となるように前記信号出力部からの信号を変更する処理を行う工程と、
を有することを特徴とするシート材識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−206321(P2006−206321A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319644(P2005−319644)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】