信号多重化回路
【課題】データ信号とクロック信号との位相関係を適応的に制御できる信号多重化回路を提供する。
【解決手段】信号多重化回路は、第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と第1のクロック信号の第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、第1及び第2のデータ信号と第1及び第2のクロック信号とに基づいて、第2のクロック信号とデータ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、位相制御信号に応じて位相関係を制御する位相制御器とを含む
【解決手段】信号多重化回路は、第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と第1のクロック信号の第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、第1及び第2のデータ信号と第1及び第2のクロック信号とに基づいて、第2のクロック信号とデータ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、位相制御信号に応じて位相関係を制御する位相制御器とを含む
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、一般に電子回路に関し、詳しくは信号多重化回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCMOSプロセスの微細化による動作速度の高速化により、CMOS−ICの適用分野は、10Gbpsを超える光伝送システム等の有線通信や、ミリ波帯(60〜100GHz)を利用した無線通信及びレーダ等へと拡大してきている。このような高速アプリケーションでは、信号送信部に用いられる信号多重化回路において、プロセスばらつきや温度及び電源等の使用環境条件の変動に影響を受けるデータ信号とクロック信号との位相関係を、適応的に制御できることが望ましい。
【0003】
信号送信部においては、伝送線路を介してデータをシリアル伝送するために、低速で信号処理が行われたデータ信号を多重化する。通常、2:1多重化回路を複数段繋げたツリー構造により、N:1の多重化処理を行う。2:1多重化回路では、入力される2つのデータ信号D1及びD2をラッチ回路により第1のクロック信号に同期させる。このときデータ信号D1はクロック信号の0度位相に同期させ、データ信号D2は第1のクロック信号の180度位相に同期させる。この同期動作により、データ信号D1は0度位相から360度位相までを単位長とする信号となり、データ信号D2は−180度位相から180度位相までを単位長とする信号となる。これらデータ信号D1及びD2は、信号セレクタ回路へと入力され、第1のクロック信号と90度位相がずれた第2のクロック信号のHIGH及びLOWに応じて交互に選択されて出力される。即ち、90度位相から270度位相でデータ信号D1が選択され、−90度位相から90度位相でデータ信号D2が選択される。これにより、データ信号D1及びD2の波形のそれぞれのデータ中心の部分を選択して出力することができる。このような2:1多重化回路の一例が、例えば特許文献1の図7に開示される。
【0004】
上記の第2のクロック信号は、信号セレクタ回路入力部分のデータ信号D1及びD2に対して90度位相がずれた信号であること、即ち第1のクロック信号に対して90度位相がずれた信号であることが、信号切り替え動作のマージンの観点から望ましい。このため、内部回路の遅延合わせにより、これら2つのクロック信号が90度の位相差を有するように多重化回路を設計する。しかしながら、微細化された超高速用CMOSプロセスでは、トランジスタ閾値の相対ばらつきなどにより、無視できない遅延差が発生してしまう。またその遅延差は、回路動作時の温度や電源の変動によって変動してしまう。従って、第2のクロック信号と2つのデータ信号との間の位相関係が動作条件に応じて変化してしまうことになり、多重化した出力波形に十分な品質を確保することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−17636号公報
【特許文献2】特開2005−316879号公報
【特許文献3】特開2004−40378号公報
【特許文献4】特開平8−79210号公報
【特許文献5】特開平9−55667号公報
【特許文献6】特開2005−316879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上を鑑みると、データ信号とクロック信号との位相関係を適応的に制御できる信号多重化回路が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
信号多重化回路は、第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて前記第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、前記第1及び第2のデータ信号と前記第1及び第2のクロック信号とに基づいて、前記第2のクロック信号と前記データ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、前記位相制御信号に応じて前記位相関係を制御する位相制御器とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願開示の少なくとも1つの実施例によれば、データ信号とクロック信号との位相関係を適応的に制御できる。これにより、プロセスばらつきや回路動作時の温度や電源の変動に対して、安定な信号多重化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】信号多重化回路の構成の一例を示す図である。
【図2】信号多重化回路の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図3】位相検出器の構成の一例を示す図である。
【図4】位相検出器の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図5】位相検出器による位相制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】コード変換器の入出力関係を示す図である。
【図7】サーモメータコードの上位2ビット及び下位9ビットと位相との関係を模式的に示す図である。
【図8】位相補間回路の回路構成の一例を示す図である。
【図9】位相補間回路の機能構成を示す図である。
【図10】位相補間回路の動作を説明する図である。
【図11】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図12】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図13】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図14】信号伝送システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は、信号多重化回路の構成の一例を示す図である。図1の信号多重化回路は、4相クロック生成回路11、ラッチ回路(L)12乃至14、セレクタ回路(SEL)15、位相補間器(PI)16、位相検出器17、バッファ18、及びバッファ19を含む。図1の信号多重化回路を含め以下において各実施例で説明する信号多重化回路は、差動構成の回路であってよいし、或いは単相構成の回路であってもよい。以下の説明では、信号多重化回路は差動構成のものであるとするが、説明の便宜上、適宜一方の信号に着目することにより、単相の信号を入出力とする単相構成の回路の場合と同様の説明を行なう。また以下の説明では、信号多重化回路は2つの信号を多重化する構成である場合について説明するが、それ以上の数の信号を多重化する構成であっても構わない。
【0012】
4相クロック生成回路11は、各位相が0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を生成する。互いに逆位相である0度のクロック信号と180度のクロック信号との一対のクロック信号は、バッファ18を介して、第1のクロック信号C1としてラッチ回路12乃至14に供給される。ラッチ回路12は、第1のクロック信号C1の180度位相位置(180度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D1を取り込む。同様にラッチ回路14は、第1のクロック信号C1の180度位相位置(180度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D2を取り込む。またラッチ回路13は、第1のクロック信号C1の0度位相位置(0度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D2を取り込む。これによりセレクタ回路15は、第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D3と、第1のクロック信号C1の0度位相位置から180度位相がずれた180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D4とを受け取る。セレクタ回路15は、第2のクロック信号C2に応じてデータ信号D3とD4とを順次選択して出力する。選択対象(多重化対象)の信号数が3つ以上であれば順番に選択して出力することになるが、この例のように選択対象の信号数が2つであれば、2つの信号を交互に選択して出力することになる。
【0013】
位相検出器17は、データ信号D3及びD4と第1及び第2のクロック信号C1及びC2とに基づいて、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する。位相制御信号は、第2のクロック信号C2の位相を制御する位相制御器として機能する位相補間器16に供給される。
【0014】
位相補間器16は、4相クロック生成回路11が生成する0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を受け取り、上記の位相制御信号に応じてこれら4相のクロック信号を重ね合わせることにより、第2のクロック信号C2を生成する。位相補間器16が生成する第2のクロック信号C2は、バッファ19を介してセレクタ回路15に供給される。位相補間器16は、位相制御信号に応じて第2のクロック信号C2の位相を制御することにより、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を制御する。
【0015】
図2は、信号多重化回路の動作の一例を示すタイムチャートである。図2に示されるように、データ信号D1を第1のクロック信号C1の0度位相位置(図示の立ち上がりエッジ)に同期してラッチすることにより、第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D3が生成される。またデータ信号D2を第1のクロック信号C1の180度位相位置(図示の立ち下がりエッジ)に同期してラッチすることにより、第1のクロック信号C1の180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D4が生成される。
【0016】
データ信号D3は0度位相から360度位相までを単位長とする信号となり、データ信号D4は−180度位相から180度位相までを単位長とする信号となる。これらデータ信号D3及びD4は、セレクタ回路15へと入力され、第1のクロック信号C1と位相がずれた第2のクロック信号C2のHIGH及びLOWに応じて交互に選択されて出力される。この例では、第2のクロック信号C2のHIGH期間でデータ信号D3が選択出力され、第2のクロック信号C2のLOW期間でデータ信号D4が選択出力される。初期状態では、「C2(初期)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適ではない。即ち、データ信号D3のデータ単位の中心位置(隣接データ遷移点間の中間点)に第2のクロック信号C2のHIGH期間の中心が位置しておらず、またデータ信号D4のデータ単位の中心位置に第2のクロック信号C2のLOW期間の中心が位置していない。この状態で、前述のように位相補間器16が、位相制御信号に応じて第2のクロック信号C2の位相を制御することにより、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を制御する。このフィードバック制御の結果、データ信号D3及びD4のそれぞれのデータ単位の中心位置に、第2のクロック信号C2のHIGH期間の中心及びLOW期間の中心がそれぞれ一致する状態となる。この状態の第2のクロック信号C2が「C2(FB後)」として示される。従って、データ信号D3及びD4の波形のそれぞれのデータ中心の部分を選択して出力し、信号選択切替動作において最大のマージンを確保することができる。
【0017】
図3は、位相検出器の構成の一例を示す図である。図4は、位相検出器の動作の一例を示すタイムチャートである。図3の位相検出器17は、ラッチ回路(L)21及び22、EXOR(排他的論理和)回路23及び24、AND回路25及び26、ローパスフィルタ(LPF)27及び28、比較回路29、アップダウンカウンタ30、及びコード変換回路31を含む。ラッチ回路21は、データ信号D3に基づいて第1のクロック信号C1の180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号を生成する。この生成されたデータ信号がデータ信号D3’として図4に示される。EXOR回路23は、データ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとることにより、データ遷移のタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する。この第1のタイミング信号が信号Aとして図4に示される。データ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとる対象が同一のデータ値である期間(例えば両データ共にa0である期間)では、第1のタイミング信号Aの値は例外なくLOWとなる。またデータ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとる対象が隣接するデータ値である期間(例えば一方がa0で他方がa1である期間)については、実際のデータ値に応じて排他的論理和の値が異なる。但し、一般に伝送対象の信号はマーク率が1/2になるように(即ちHIGHの出現確率が1/2となるように)スクランブルがかけられているので、排他的論理和の値がHIGHになる確率は高い。図4では、EXOR回路23の出力である第1のタイミング信号Aは、便宜上、隣接するデータ値の排他的論理和値に対応する部分でHIGHとなる信号として示してある。
【0018】
ラッチ回路22は、データ信号D4に基づいて第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号を生成する。この生成されたデータ信号がデータ信号D4’として図4に示される。EXOR回路24は、データ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとることにより、データ遷移のタイミングを示す第2のタイミング信号を生成する。この第2のタイミング信号が信号Bとして図4に示される。データ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとる際に、同一のデータ値の期間(例えば両データ共にb0である期間)では、第2のタイミング信号Bの値は例外なくLOWとなる。またデータ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとる対象が隣接するデータ値である期間(例えば一方がb0で他方がb1である期間)については、実際のデータ値に応じて排他的論理和の値が異なる。図4では、EXOR回路24の出力である第2のタイミング信号Bは、便宜上、隣接するデータ値の排他的論理和値に対応する部分でHIGHとなる信号として示してある。
【0019】
AND回路25は、第1のタイミング信号Aと第2のクロック信号C2との論理和をとることにより第1の検出信号(「検出信号1」)を生成する。AND回路26は、第2のタイミング信号Bと第2のクロック信号C2との論理和をとることにより第2の検出信号(「検出信号2」)を生成する。初期状態においては、「C2(初期)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適ではない。この場合、第2のクロック信号C2の同一のHIGHパルスに対応する第1の検出信号と第2の検出信号とは、「検出信号1」と「検出信号2」との斜線でハッチしたパルスに示されるように、互いに異なるパルス長を有する信号となる。それに対して、前述の位相制御完了状態においては、「C2(FB後)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適となる。この状態では、図4の最下段に枠で囲った部分においてハッチしたパルスとして示されるように、第2のクロック信号C2の同一のHIGHパルスに対応する第1の検出信号と第2の検出信号とは、互いに略同一のパルス長を有する信号となる。従って、位相制御においては、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較し、両者が略同一となるようなフィードバック制御を行なえばよい。
【0020】
図5は、位相検出器による位相制御の流れを示すフローチャートである。ステップS1で、上記説明した第1の検出信号と第2の検出信号とを生成する。ステップS2で、第1の検出信号と第2の検出信号とのそれぞれの時間平均値を求める。ステップS3で、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較する。第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より小さければ、ステップS4で、遅れ位相の状態となっていると判断する(第2のクロック信号C2の位相が適正値より遅い状態)。また第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より大きければ、ステップS5で、進み位相の状態となっていると判断する(第2のクロック信号C2の位相が適正値より早い状態)。ステップS6で、位相状態の判断結果に従って位相を可変に調整する。
【0021】
図3のローパスフィルタ27及び28及びその下流にある回路要素は、上記の位相制御を実現するための部分である。図3のローパスフィルタ27は、AND回路25の出力である第1の検出信号の時間平均値を求める。ローパスフィルタ28は、AND回路26の出力である第2の検出信号の時間平均値を求める。比較回路29は、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較し、何れが大きいかを示す位相制御信号を生成する。例えば第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より大きければ、位相制御信号はHIGHとなる。この場合、第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より小さければ、位相制御信号はLOWとなる。
【0022】
アップダウンカウンタ30は、所定のクロック信号に同期してカウントアップ又はカウントダウン動作を行なう。例えば、アップダウンカウンタ30は、位相制御信号がHIGHの時にはクロック信号に同期してカウントアップする(例えばクロック信号の各パルスの立ち上がりに応答して+1だけカウンタ値を増加する)。また例えば、アップダウンカウンタ30は、位相制御信号がLOWの時にはクロック信号に同期してカウントダウンする(例えばクロック信号の各パルスの立ち上がりに応答して−1だけカウンタ値を減少する)。例えば図4の例で「C2(初期)」として示されるように第2のクロック信号C2のタイミングが早すぎる場合には、位相制御信号はHIGHとなり、アップダウンカウンタ30のカウント値は増加していく。また逆に第2のクロック信号C2のタイミングが遅すぎる場合には、位相制御信号はLOWとなり、アップダウンカウンタ30のカウント値は減少していく。アップダウンカウンタ30のカウンタ値が減少すると第2のクロック信号C2のタイミングが早まる(位相が進む)ように位相とカウンタ値とを関係付けておけば、適切な位相状態となるように第2のクロック信号C2のタイミングを調整することができる。第2のクロック信号C2が適切な位相状態になると、比較回路29の出力はHIGHとLOWとが略同確率でランダムに現れるデータとなり、アップダウンカウンタ30のカウンタ値は細かく上下しながらも略一定の値となる。これにより、第2のクロック信号C2のタイミングは一定のタイミングに落ち着く。
【0023】
前述のように、伝送対象の信号であるデータ信号D3及びデータ信号D4は、一般に、例えばマーク率が1/2になるようにスクランブルがかけられている。また伝送対象の信号においては、0又は1の一方が連続する期間の最長時間についても規定されている。従って、上記の平均化処理及び比較処理に基づいて第2のクロック信号C2をフィードバック制御することで、第2のクロック信号C2を適切な位相状態に調整することができる。なおマーク率が1/2である必要はなく、データ信号D3及びデータ信号D4のマーク率が同等であり且つ0/1分布特性が同等であれば、フィードバック制御により適切な位相状態を実現することができる。
【0024】
図6は、コード変換器の入出力関係を示す図である。図3に示すように、アップダウンカウンタ30の出力するカウント値は、コード変換回路31によりコード変換されて、位相補間器16に供給される。図6に示すテーブルは、アップダウンカウンタ30の出力するカウント値を入力(Code No.)として、コード変換回路31が出力するサーモメータコードの上位2ビットと下位9ビットを示している。2つの隣り合うカウント値に対応する2つのコード間でのビット変化数が最大でも2ビットであるように、サーモメータコードが各カウント値に対して割り当てられている。このように割り当てられたサーモメータコードを用いることにより、次段の位相補間器16での信号処理を安定して容易に実行することができる。
【0025】
図7は、サーモメータコードの上位2ビット及び下位9ビットと位相との関係を模式的に示す図である。図7に示すように、サーモメータコードの上位2ビットは、位相平面での象限の位置を表している。またサーモメータコードの下位9ビットは、位相平面での単位円上の位置(位相)を表している。カウント値(Code No.)が0,1,2,・・・と大きくなるにつれ、位相が−360°,−360°+(90/16)°,−360°+2×(90/16)°,・・・と徐々に進んで行く。
【0026】
図8は、位相補間回路の回路構成の一例を示す図である。図8に示す位相補間器16は、差動増幅回路41−1乃至41−4、電流設定回路42−1乃至42−4、DAC(デジタル−アナログ変換器)43、オフセット調整回路44、及び出力バッファ45を含む。DAC43は、コード変換回路31が出力するサーモメータコードの上位2ビットと下位9ビットとを受け取り、サーモメータコードをデジタル−アナログ変換することにより、カウント値に応じた4つのアナログ電流信号を生成する。具体的には、DAC43が含む並列接続された複数のPMOSトランジスタのゲートに上記サーモメータコードに応じた制御電圧を印加し、サーモメータコードに応じた別個の電流量を有する4つの電流を生成する。これら4つの電流はそれぞれ電流設定回路42−1乃至42−4に供給される。これら4つのアナログ電流信号の電流値は、異なる位相を有する多相クロック信号をそれぞれ重み付けして重ね合わせる際の重みを表す値である。
【0027】
電流設定回路42−1乃至42−4は互いに同一の回路構成となっており、電流設定回路42−1の回路構成が代表として示されている。電流設定回路42−1は、ゲート同士が接続された2つのNMOSトランジスタにより構成されるカレントミラー回路とPMOSトランジスタとを含む。電流設定回路42−1は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をNMOSトランジスタに流すようなNMOSトランジスタのゲート電圧を生成し、そのゲート電圧を差動増幅回路41−1に供給する。また更に電流設定回路42−1は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をPMOSトランジスタに流すようなPMOSトランジスタのゲート電圧をノードw0に生成し、そのゲート電圧を差動増幅回路41−1に供給する。同様にして、電流設定回路42−2乃至42−4は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタに流すようなゲート電圧を生成し、それらゲート電圧を差動増幅回路41−2乃至41−4にそれぞれ供給する。これにより、差動増幅回路41−1乃至41−4には、コード変換回路31からのサーモメータコードに応じた固有の電流量のバイアス電流が流れる。
【0028】
差動増幅回路41−1乃至41−4は互いに同一の回路構成となっており、差動増幅回路41−1の回路構成が代表として示されている。差動増幅回路41−1は、差動構成のNMOSトランジスタ対とPMOSトランジスタ対とを含む。NMOSトランジスタ対のゲートには、互いに位相が反転したクロック信号θ0及びθ2が印加される。同様に、PMOSトランジスタ対のゲートにも、互いに位相が反転したクロック信号θ0及びθ2が印加される。クロック信号θ0及びθ2はそれぞれ0度位相及び180度位相のクロック信号である。NMOSトランジスタ対及びPMOSトランジスタ対に流れる電流量は、電流設定回路42−1により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる0°の位相成分を調整する。同様に差動増幅回路41−2には互いに位相が反転したクロック信号θ1及びθ3が供給される。クロック信号θ1及びθ3はそれぞれ90度位相及び270度位相のクロック信号である。差動増幅回路41−2に流れる電流量は、電流設定回路42−2により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる90°の位相成分を調整する。差動増幅回路41−3には互いに位相が反転したクロック信号θ2及びθ0が供給される。差動増幅回路41−3に流れる電流量は、電流設定回路42−3により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる180°の位相成分を調整する。また差動増幅回路41−4には互いに位相が反転したクロック信号θ3及びθ1が供給される。差動増幅回路41−4に流れる電流量は、電流設定回路42−4により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる270°の位相成分を調整する。
【0029】
オフセット調整回路44は、出力バッファ45の入力信号の平均電圧が所定のオフセット電圧となるように調整する。具体的には、出力バッファ45の入力部分において変化する信号電圧の平均電圧を容量素子により検出し、その平均電圧と所定の閾値電圧とをコンパレータにより比較することにより、出力バッファ45の入力信号の平均電圧を調整する。これにより、出力バッファ45の2つの入力の平均電圧を、互いに等しい所望のオフセット電圧に調整する。
【0030】
図9は、位相補間回路の機能構成を示す図である。図8の位相補間器16の機能的な構成は、図9のように示すことができる。重み付け回路51は、それぞれ0度位相及び180度位相のクロック信号θ0及びθ2にx倍の重み付けをして出力する。重み付け回路52は、それぞれ90度位相及び270度位相のクロック信号θ1及びθ3に1−x倍の重み付けをして出力する。出力バッファ53は、x倍の重み付けをされたクロック信号θ0及びθ2と1−x倍の重み付けをされたクロック信号θ1及びθ3とを加算して得られるクロック信号φ0及びφ2を出力する。
【0031】
図10は、位相補間回路の動作を説明する図である。図10において、x倍の重み付けをされたクロック信号θ0及びθ2をcs(t)として示し、1−x倍の重み付けをされたクロック信号θ1及びθ3をsn(t)として示す。これらのx・cs(t)の波形と(1−x)・sn(t)の波形とを加算することにより、点線で示される波形が得られる。この点線で示される波形が、加算して得られるクロック信号φ0及びφ2に相当する。重み付けxの値を調整することにより、クロック信号φ0及びφ2の位相を調整することができる。即ち、図3において、位相検出器17のコード変換回路31から供給されるサーモメータコードに応じて重み付けxの値を調整することにより、位相補間器16から出力される第2のクロック信号C2の位相を調整することができる。
【0032】
図11は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図11において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図11に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、4相クロック生成回路11の具体例として4相電圧制御発振器(QuadVCO)11Aが設けられている点が異なる。4相電圧制御発振器11Aは、例えば信号多重化回路が設けられるシステムのクロック信号を生成するPLL回路のVCOであり、印加される制御電圧に応じた周波数の4相のクロック信号を生成する。これら4相のクロック信号の各位相は、0度、90度、180度、270度である。互いに逆位相である0度のクロック信号と180度のクロック信号との一対のクロック信号は、バッファ18を介して、第1のクロック信号C1としてラッチ回路12乃至14に供給される。また0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号は、位相補間器16に供給される。この位相補間器16が、前述のフィードバック制御により、所望の位相の第2のクロック信号C2を生成する。
【0033】
図12は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図12において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図12に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、位相補間器16の代りに位相補間器16Aが設けられている点が異なる。図1に示す信号多重化回路ではフィードバック制御に基づいて位相補間器16により第2のクロック信号C2の位相を制御するが、図12に示す多重化回路ではフィードバック制御に基づいて位相補間器16Aにより第1のクロック信号C1の位相を制御する。このように第1のクロック信号C1の位相を制御することによっても、第2のクロック信号C2の位相を制御する場合と同様に、第2のクロック信号とデータ信号D3及びD3のデータ遷移との位相関係を適切な関係に調整することができる。
【0034】
図13は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図13において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図13に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、4相クロック生成回路11の具体例として分周器(Div)11B−1及び電圧制御発振器(VCO)11B−2が設けられていることが異なる。電圧制御発振器11B−2は、例えば信号多重化回路が設けられるシステムのクロック信号を生成するPLL回路のVCOであり、印加される制御電圧に応じた周波数のクロック信号を生成する。分周器11B−1は、電圧制御発振器11B−2が発振するクロック信号を分周することにより、例えば周波数が1/4で位相が0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を生成する。
【0035】
図14は、信号伝送システムの構成の一例を示す図である。図14の信号伝送システムは、光送信機61、光受信機62、光アンプ63、及び光アンプ64を含む。光送信機61が送信する光信号は、光アンプ63により増幅され、光ファイバーを介して伝送される。光ファイバーを介して伝送された光信号は、光アンプ64により増幅され、光受信機62により受信される。
【0036】
光送信機61は、x:1のマルチプレクサ(MUX)71、クロックアンプ72、D−フリップフロップ(D−F/F)73、ドライバ74、及び光変調器75を含む。マルチプレクサ71によりx対1に信号を多重化することにより得られるシリアル伝送信号が、クロックアンプ72の生成するクロック信号に同期してD−フリップフロップ73にラッチされる。このD−フリップフロップ73にラッチされたデータ信号に応じて、ドライバ74が光変調器75を駆動し、光信号の変調を行なう。マルチプレクサ71は、2:1多重化回路を複数段繋げたツリー構造により、x:1の多重化処理を行う。この2:1多重化回路として、例えば図1や図11乃至14に示した多重化回路を用いることができる。
【0037】
光受信機62は、アンプ81、タイミング抽出器82、クロックアンプ83、識別回路84、及び1:xのデマルチプレクサ(DEMUX)85を含む。アンプ81は、受信した光信号を電気信号に変換して増幅する。タイミング抽出器82は、受信信号のデータ遷移に基づいてクロック信号のタイミングを抽出し、クロック信号を再生する。クロックアンプ83は、再生されたクロック信号を増幅して、識別回路84及びデマルチプレクサ85に供給する。識別回路84は、クロック信号に同期してデータ信号の0及び1を識別する。デマルチプレクサ85は、識別後のシリアル受信データを分離(非多重化)することにより、個々の信号を生成する。
【0038】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
11 4相クロック生成回路
12,13,14 ラッチ回路
15 セレクタ回路
16 位相補間器
17 位相検出器
18,19 バッファ
【技術分野】
【0001】
本願開示は、一般に電子回路に関し、詳しくは信号多重化回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCMOSプロセスの微細化による動作速度の高速化により、CMOS−ICの適用分野は、10Gbpsを超える光伝送システム等の有線通信や、ミリ波帯(60〜100GHz)を利用した無線通信及びレーダ等へと拡大してきている。このような高速アプリケーションでは、信号送信部に用いられる信号多重化回路において、プロセスばらつきや温度及び電源等の使用環境条件の変動に影響を受けるデータ信号とクロック信号との位相関係を、適応的に制御できることが望ましい。
【0003】
信号送信部においては、伝送線路を介してデータをシリアル伝送するために、低速で信号処理が行われたデータ信号を多重化する。通常、2:1多重化回路を複数段繋げたツリー構造により、N:1の多重化処理を行う。2:1多重化回路では、入力される2つのデータ信号D1及びD2をラッチ回路により第1のクロック信号に同期させる。このときデータ信号D1はクロック信号の0度位相に同期させ、データ信号D2は第1のクロック信号の180度位相に同期させる。この同期動作により、データ信号D1は0度位相から360度位相までを単位長とする信号となり、データ信号D2は−180度位相から180度位相までを単位長とする信号となる。これらデータ信号D1及びD2は、信号セレクタ回路へと入力され、第1のクロック信号と90度位相がずれた第2のクロック信号のHIGH及びLOWに応じて交互に選択されて出力される。即ち、90度位相から270度位相でデータ信号D1が選択され、−90度位相から90度位相でデータ信号D2が選択される。これにより、データ信号D1及びD2の波形のそれぞれのデータ中心の部分を選択して出力することができる。このような2:1多重化回路の一例が、例えば特許文献1の図7に開示される。
【0004】
上記の第2のクロック信号は、信号セレクタ回路入力部分のデータ信号D1及びD2に対して90度位相がずれた信号であること、即ち第1のクロック信号に対して90度位相がずれた信号であることが、信号切り替え動作のマージンの観点から望ましい。このため、内部回路の遅延合わせにより、これら2つのクロック信号が90度の位相差を有するように多重化回路を設計する。しかしながら、微細化された超高速用CMOSプロセスでは、トランジスタ閾値の相対ばらつきなどにより、無視できない遅延差が発生してしまう。またその遅延差は、回路動作時の温度や電源の変動によって変動してしまう。従って、第2のクロック信号と2つのデータ信号との間の位相関係が動作条件に応じて変化してしまうことになり、多重化した出力波形に十分な品質を確保することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−17636号公報
【特許文献2】特開2005−316879号公報
【特許文献3】特開2004−40378号公報
【特許文献4】特開平8−79210号公報
【特許文献5】特開平9−55667号公報
【特許文献6】特開2005−316879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上を鑑みると、データ信号とクロック信号との位相関係を適応的に制御できる信号多重化回路が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
信号多重化回路は、第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて前記第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、前記第1及び第2のデータ信号と前記第1及び第2のクロック信号とに基づいて、前記第2のクロック信号と前記データ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、前記位相制御信号に応じて前記位相関係を制御する位相制御器とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願開示の少なくとも1つの実施例によれば、データ信号とクロック信号との位相関係を適応的に制御できる。これにより、プロセスばらつきや回路動作時の温度や電源の変動に対して、安定な信号多重化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】信号多重化回路の構成の一例を示す図である。
【図2】信号多重化回路の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図3】位相検出器の構成の一例を示す図である。
【図4】位相検出器の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図5】位相検出器による位相制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】コード変換器の入出力関係を示す図である。
【図7】サーモメータコードの上位2ビット及び下位9ビットと位相との関係を模式的に示す図である。
【図8】位相補間回路の回路構成の一例を示す図である。
【図9】位相補間回路の機能構成を示す図である。
【図10】位相補間回路の動作を説明する図である。
【図11】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図12】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図13】信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。
【図14】信号伝送システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は、信号多重化回路の構成の一例を示す図である。図1の信号多重化回路は、4相クロック生成回路11、ラッチ回路(L)12乃至14、セレクタ回路(SEL)15、位相補間器(PI)16、位相検出器17、バッファ18、及びバッファ19を含む。図1の信号多重化回路を含め以下において各実施例で説明する信号多重化回路は、差動構成の回路であってよいし、或いは単相構成の回路であってもよい。以下の説明では、信号多重化回路は差動構成のものであるとするが、説明の便宜上、適宜一方の信号に着目することにより、単相の信号を入出力とする単相構成の回路の場合と同様の説明を行なう。また以下の説明では、信号多重化回路は2つの信号を多重化する構成である場合について説明するが、それ以上の数の信号を多重化する構成であっても構わない。
【0012】
4相クロック生成回路11は、各位相が0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を生成する。互いに逆位相である0度のクロック信号と180度のクロック信号との一対のクロック信号は、バッファ18を介して、第1のクロック信号C1としてラッチ回路12乃至14に供給される。ラッチ回路12は、第1のクロック信号C1の180度位相位置(180度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D1を取り込む。同様にラッチ回路14は、第1のクロック信号C1の180度位相位置(180度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D2を取り込む。またラッチ回路13は、第1のクロック信号C1の0度位相位置(0度のクロック信号の立ち上がりエッジ)に同期してデータ信号D2を取り込む。これによりセレクタ回路15は、第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D3と、第1のクロック信号C1の0度位相位置から180度位相がずれた180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D4とを受け取る。セレクタ回路15は、第2のクロック信号C2に応じてデータ信号D3とD4とを順次選択して出力する。選択対象(多重化対象)の信号数が3つ以上であれば順番に選択して出力することになるが、この例のように選択対象の信号数が2つであれば、2つの信号を交互に選択して出力することになる。
【0013】
位相検出器17は、データ信号D3及びD4と第1及び第2のクロック信号C1及びC2とに基づいて、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する。位相制御信号は、第2のクロック信号C2の位相を制御する位相制御器として機能する位相補間器16に供給される。
【0014】
位相補間器16は、4相クロック生成回路11が生成する0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を受け取り、上記の位相制御信号に応じてこれら4相のクロック信号を重ね合わせることにより、第2のクロック信号C2を生成する。位相補間器16が生成する第2のクロック信号C2は、バッファ19を介してセレクタ回路15に供給される。位相補間器16は、位相制御信号に応じて第2のクロック信号C2の位相を制御することにより、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を制御する。
【0015】
図2は、信号多重化回路の動作の一例を示すタイムチャートである。図2に示されるように、データ信号D1を第1のクロック信号C1の0度位相位置(図示の立ち上がりエッジ)に同期してラッチすることにより、第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D3が生成される。またデータ信号D2を第1のクロック信号C1の180度位相位置(図示の立ち下がりエッジ)に同期してラッチすることにより、第1のクロック信号C1の180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号D4が生成される。
【0016】
データ信号D3は0度位相から360度位相までを単位長とする信号となり、データ信号D4は−180度位相から180度位相までを単位長とする信号となる。これらデータ信号D3及びD4は、セレクタ回路15へと入力され、第1のクロック信号C1と位相がずれた第2のクロック信号C2のHIGH及びLOWに応じて交互に選択されて出力される。この例では、第2のクロック信号C2のHIGH期間でデータ信号D3が選択出力され、第2のクロック信号C2のLOW期間でデータ信号D4が選択出力される。初期状態では、「C2(初期)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適ではない。即ち、データ信号D3のデータ単位の中心位置(隣接データ遷移点間の中間点)に第2のクロック信号C2のHIGH期間の中心が位置しておらず、またデータ信号D4のデータ単位の中心位置に第2のクロック信号C2のLOW期間の中心が位置していない。この状態で、前述のように位相補間器16が、位相制御信号に応じて第2のクロック信号C2の位相を制御することにより、第2のクロック信号C2とデータ遷移との位相関係を制御する。このフィードバック制御の結果、データ信号D3及びD4のそれぞれのデータ単位の中心位置に、第2のクロック信号C2のHIGH期間の中心及びLOW期間の中心がそれぞれ一致する状態となる。この状態の第2のクロック信号C2が「C2(FB後)」として示される。従って、データ信号D3及びD4の波形のそれぞれのデータ中心の部分を選択して出力し、信号選択切替動作において最大のマージンを確保することができる。
【0017】
図3は、位相検出器の構成の一例を示す図である。図4は、位相検出器の動作の一例を示すタイムチャートである。図3の位相検出器17は、ラッチ回路(L)21及び22、EXOR(排他的論理和)回路23及び24、AND回路25及び26、ローパスフィルタ(LPF)27及び28、比較回路29、アップダウンカウンタ30、及びコード変換回路31を含む。ラッチ回路21は、データ信号D3に基づいて第1のクロック信号C1の180度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号を生成する。この生成されたデータ信号がデータ信号D3’として図4に示される。EXOR回路23は、データ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとることにより、データ遷移のタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する。この第1のタイミング信号が信号Aとして図4に示される。データ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとる対象が同一のデータ値である期間(例えば両データ共にa0である期間)では、第1のタイミング信号Aの値は例外なくLOWとなる。またデータ信号D3とデータ信号D3’との排他的論理和をとる対象が隣接するデータ値である期間(例えば一方がa0で他方がa1である期間)については、実際のデータ値に応じて排他的論理和の値が異なる。但し、一般に伝送対象の信号はマーク率が1/2になるように(即ちHIGHの出現確率が1/2となるように)スクランブルがかけられているので、排他的論理和の値がHIGHになる確率は高い。図4では、EXOR回路23の出力である第1のタイミング信号Aは、便宜上、隣接するデータ値の排他的論理和値に対応する部分でHIGHとなる信号として示してある。
【0018】
ラッチ回路22は、データ信号D4に基づいて第1のクロック信号C1の0度位相位置に同期したデータ遷移をするデータ信号を生成する。この生成されたデータ信号がデータ信号D4’として図4に示される。EXOR回路24は、データ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとることにより、データ遷移のタイミングを示す第2のタイミング信号を生成する。この第2のタイミング信号が信号Bとして図4に示される。データ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとる際に、同一のデータ値の期間(例えば両データ共にb0である期間)では、第2のタイミング信号Bの値は例外なくLOWとなる。またデータ信号D4とデータ信号D4’との排他的論理和をとる対象が隣接するデータ値である期間(例えば一方がb0で他方がb1である期間)については、実際のデータ値に応じて排他的論理和の値が異なる。図4では、EXOR回路24の出力である第2のタイミング信号Bは、便宜上、隣接するデータ値の排他的論理和値に対応する部分でHIGHとなる信号として示してある。
【0019】
AND回路25は、第1のタイミング信号Aと第2のクロック信号C2との論理和をとることにより第1の検出信号(「検出信号1」)を生成する。AND回路26は、第2のタイミング信号Bと第2のクロック信号C2との論理和をとることにより第2の検出信号(「検出信号2」)を生成する。初期状態においては、「C2(初期)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適ではない。この場合、第2のクロック信号C2の同一のHIGHパルスに対応する第1の検出信号と第2の検出信号とは、「検出信号1」と「検出信号2」との斜線でハッチしたパルスに示されるように、互いに異なるパルス長を有する信号となる。それに対して、前述の位相制御完了状態においては、「C2(FB後)」として示されるように、第2のクロック信号C2に対するデータ信号D3及びD4のデータ遷移の位相関係が最適となる。この状態では、図4の最下段に枠で囲った部分においてハッチしたパルスとして示されるように、第2のクロック信号C2の同一のHIGHパルスに対応する第1の検出信号と第2の検出信号とは、互いに略同一のパルス長を有する信号となる。従って、位相制御においては、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較し、両者が略同一となるようなフィードバック制御を行なえばよい。
【0020】
図5は、位相検出器による位相制御の流れを示すフローチャートである。ステップS1で、上記説明した第1の検出信号と第2の検出信号とを生成する。ステップS2で、第1の検出信号と第2の検出信号とのそれぞれの時間平均値を求める。ステップS3で、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較する。第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より小さければ、ステップS4で、遅れ位相の状態となっていると判断する(第2のクロック信号C2の位相が適正値より遅い状態)。また第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より大きければ、ステップS5で、進み位相の状態となっていると判断する(第2のクロック信号C2の位相が適正値より早い状態)。ステップS6で、位相状態の判断結果に従って位相を可変に調整する。
【0021】
図3のローパスフィルタ27及び28及びその下流にある回路要素は、上記の位相制御を実現するための部分である。図3のローパスフィルタ27は、AND回路25の出力である第1の検出信号の時間平均値を求める。ローパスフィルタ28は、AND回路26の出力である第2の検出信号の時間平均値を求める。比較回路29は、第1の検出信号の信号値の時間平均値と第2の検出信号の信号値の時間平均値とを比較し、何れが大きいかを示す位相制御信号を生成する。例えば第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より大きければ、位相制御信号はHIGHとなる。この場合、第1の検出信号の信号値の時間平均値が第2の検出信号の信号値の時間平均値より小さければ、位相制御信号はLOWとなる。
【0022】
アップダウンカウンタ30は、所定のクロック信号に同期してカウントアップ又はカウントダウン動作を行なう。例えば、アップダウンカウンタ30は、位相制御信号がHIGHの時にはクロック信号に同期してカウントアップする(例えばクロック信号の各パルスの立ち上がりに応答して+1だけカウンタ値を増加する)。また例えば、アップダウンカウンタ30は、位相制御信号がLOWの時にはクロック信号に同期してカウントダウンする(例えばクロック信号の各パルスの立ち上がりに応答して−1だけカウンタ値を減少する)。例えば図4の例で「C2(初期)」として示されるように第2のクロック信号C2のタイミングが早すぎる場合には、位相制御信号はHIGHとなり、アップダウンカウンタ30のカウント値は増加していく。また逆に第2のクロック信号C2のタイミングが遅すぎる場合には、位相制御信号はLOWとなり、アップダウンカウンタ30のカウント値は減少していく。アップダウンカウンタ30のカウンタ値が減少すると第2のクロック信号C2のタイミングが早まる(位相が進む)ように位相とカウンタ値とを関係付けておけば、適切な位相状態となるように第2のクロック信号C2のタイミングを調整することができる。第2のクロック信号C2が適切な位相状態になると、比較回路29の出力はHIGHとLOWとが略同確率でランダムに現れるデータとなり、アップダウンカウンタ30のカウンタ値は細かく上下しながらも略一定の値となる。これにより、第2のクロック信号C2のタイミングは一定のタイミングに落ち着く。
【0023】
前述のように、伝送対象の信号であるデータ信号D3及びデータ信号D4は、一般に、例えばマーク率が1/2になるようにスクランブルがかけられている。また伝送対象の信号においては、0又は1の一方が連続する期間の最長時間についても規定されている。従って、上記の平均化処理及び比較処理に基づいて第2のクロック信号C2をフィードバック制御することで、第2のクロック信号C2を適切な位相状態に調整することができる。なおマーク率が1/2である必要はなく、データ信号D3及びデータ信号D4のマーク率が同等であり且つ0/1分布特性が同等であれば、フィードバック制御により適切な位相状態を実現することができる。
【0024】
図6は、コード変換器の入出力関係を示す図である。図3に示すように、アップダウンカウンタ30の出力するカウント値は、コード変換回路31によりコード変換されて、位相補間器16に供給される。図6に示すテーブルは、アップダウンカウンタ30の出力するカウント値を入力(Code No.)として、コード変換回路31が出力するサーモメータコードの上位2ビットと下位9ビットを示している。2つの隣り合うカウント値に対応する2つのコード間でのビット変化数が最大でも2ビットであるように、サーモメータコードが各カウント値に対して割り当てられている。このように割り当てられたサーモメータコードを用いることにより、次段の位相補間器16での信号処理を安定して容易に実行することができる。
【0025】
図7は、サーモメータコードの上位2ビット及び下位9ビットと位相との関係を模式的に示す図である。図7に示すように、サーモメータコードの上位2ビットは、位相平面での象限の位置を表している。またサーモメータコードの下位9ビットは、位相平面での単位円上の位置(位相)を表している。カウント値(Code No.)が0,1,2,・・・と大きくなるにつれ、位相が−360°,−360°+(90/16)°,−360°+2×(90/16)°,・・・と徐々に進んで行く。
【0026】
図8は、位相補間回路の回路構成の一例を示す図である。図8に示す位相補間器16は、差動増幅回路41−1乃至41−4、電流設定回路42−1乃至42−4、DAC(デジタル−アナログ変換器)43、オフセット調整回路44、及び出力バッファ45を含む。DAC43は、コード変換回路31が出力するサーモメータコードの上位2ビットと下位9ビットとを受け取り、サーモメータコードをデジタル−アナログ変換することにより、カウント値に応じた4つのアナログ電流信号を生成する。具体的には、DAC43が含む並列接続された複数のPMOSトランジスタのゲートに上記サーモメータコードに応じた制御電圧を印加し、サーモメータコードに応じた別個の電流量を有する4つの電流を生成する。これら4つの電流はそれぞれ電流設定回路42−1乃至42−4に供給される。これら4つのアナログ電流信号の電流値は、異なる位相を有する多相クロック信号をそれぞれ重み付けして重ね合わせる際の重みを表す値である。
【0027】
電流設定回路42−1乃至42−4は互いに同一の回路構成となっており、電流設定回路42−1の回路構成が代表として示されている。電流設定回路42−1は、ゲート同士が接続された2つのNMOSトランジスタにより構成されるカレントミラー回路とPMOSトランジスタとを含む。電流設定回路42−1は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をNMOSトランジスタに流すようなNMOSトランジスタのゲート電圧を生成し、そのゲート電圧を差動増幅回路41−1に供給する。また更に電流設定回路42−1は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をPMOSトランジスタに流すようなPMOSトランジスタのゲート電圧をノードw0に生成し、そのゲート電圧を差動増幅回路41−1に供給する。同様にして、電流設定回路42−2乃至42−4は、DAC43から供給される電流信号に等しい電流量をNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタに流すようなゲート電圧を生成し、それらゲート電圧を差動増幅回路41−2乃至41−4にそれぞれ供給する。これにより、差動増幅回路41−1乃至41−4には、コード変換回路31からのサーモメータコードに応じた固有の電流量のバイアス電流が流れる。
【0028】
差動増幅回路41−1乃至41−4は互いに同一の回路構成となっており、差動増幅回路41−1の回路構成が代表として示されている。差動増幅回路41−1は、差動構成のNMOSトランジスタ対とPMOSトランジスタ対とを含む。NMOSトランジスタ対のゲートには、互いに位相が反転したクロック信号θ0及びθ2が印加される。同様に、PMOSトランジスタ対のゲートにも、互いに位相が反転したクロック信号θ0及びθ2が印加される。クロック信号θ0及びθ2はそれぞれ0度位相及び180度位相のクロック信号である。NMOSトランジスタ対及びPMOSトランジスタ対に流れる電流量は、電流設定回路42−1により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる0°の位相成分を調整する。同様に差動増幅回路41−2には互いに位相が反転したクロック信号θ1及びθ3が供給される。クロック信号θ1及びθ3はそれぞれ90度位相及び270度位相のクロック信号である。差動増幅回路41−2に流れる電流量は、電流設定回路42−2により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる90°の位相成分を調整する。差動増幅回路41−3には互いに位相が反転したクロック信号θ2及びθ0が供給される。差動増幅回路41−3に流れる電流量は、電流設定回路42−3により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる180°の位相成分を調整する。また差動増幅回路41−4には互いに位相が反転したクロック信号θ3及びθ1が供給される。差動増幅回路41−4に流れる電流量は、電流設定回路42−4により設定された量となるように制御される。これにより、出力バッファ45から出力される出力クロック信号φ0及びφ2に含まれる270°の位相成分を調整する。
【0029】
オフセット調整回路44は、出力バッファ45の入力信号の平均電圧が所定のオフセット電圧となるように調整する。具体的には、出力バッファ45の入力部分において変化する信号電圧の平均電圧を容量素子により検出し、その平均電圧と所定の閾値電圧とをコンパレータにより比較することにより、出力バッファ45の入力信号の平均電圧を調整する。これにより、出力バッファ45の2つの入力の平均電圧を、互いに等しい所望のオフセット電圧に調整する。
【0030】
図9は、位相補間回路の機能構成を示す図である。図8の位相補間器16の機能的な構成は、図9のように示すことができる。重み付け回路51は、それぞれ0度位相及び180度位相のクロック信号θ0及びθ2にx倍の重み付けをして出力する。重み付け回路52は、それぞれ90度位相及び270度位相のクロック信号θ1及びθ3に1−x倍の重み付けをして出力する。出力バッファ53は、x倍の重み付けをされたクロック信号θ0及びθ2と1−x倍の重み付けをされたクロック信号θ1及びθ3とを加算して得られるクロック信号φ0及びφ2を出力する。
【0031】
図10は、位相補間回路の動作を説明する図である。図10において、x倍の重み付けをされたクロック信号θ0及びθ2をcs(t)として示し、1−x倍の重み付けをされたクロック信号θ1及びθ3をsn(t)として示す。これらのx・cs(t)の波形と(1−x)・sn(t)の波形とを加算することにより、点線で示される波形が得られる。この点線で示される波形が、加算して得られるクロック信号φ0及びφ2に相当する。重み付けxの値を調整することにより、クロック信号φ0及びφ2の位相を調整することができる。即ち、図3において、位相検出器17のコード変換回路31から供給されるサーモメータコードに応じて重み付けxの値を調整することにより、位相補間器16から出力される第2のクロック信号C2の位相を調整することができる。
【0032】
図11は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図11において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図11に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、4相クロック生成回路11の具体例として4相電圧制御発振器(QuadVCO)11Aが設けられている点が異なる。4相電圧制御発振器11Aは、例えば信号多重化回路が設けられるシステムのクロック信号を生成するPLL回路のVCOであり、印加される制御電圧に応じた周波数の4相のクロック信号を生成する。これら4相のクロック信号の各位相は、0度、90度、180度、270度である。互いに逆位相である0度のクロック信号と180度のクロック信号との一対のクロック信号は、バッファ18を介して、第1のクロック信号C1としてラッチ回路12乃至14に供給される。また0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号は、位相補間器16に供給される。この位相補間器16が、前述のフィードバック制御により、所望の位相の第2のクロック信号C2を生成する。
【0033】
図12は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図12において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図12に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、位相補間器16の代りに位相補間器16Aが設けられている点が異なる。図1に示す信号多重化回路ではフィードバック制御に基づいて位相補間器16により第2のクロック信号C2の位相を制御するが、図12に示す多重化回路ではフィードバック制御に基づいて位相補間器16Aにより第1のクロック信号C1の位相を制御する。このように第1のクロック信号C1の位相を制御することによっても、第2のクロック信号C2の位相を制御する場合と同様に、第2のクロック信号とデータ信号D3及びD3のデータ遷移との位相関係を適切な関係に調整することができる。
【0034】
図13は、信号多重化回路の構成の変形例を示す図である。図13において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図13に示す信号多重化回路は、図1に示す信号多重化回路と比較して、4相クロック生成回路11の具体例として分周器(Div)11B−1及び電圧制御発振器(VCO)11B−2が設けられていることが異なる。電圧制御発振器11B−2は、例えば信号多重化回路が設けられるシステムのクロック信号を生成するPLL回路のVCOであり、印加される制御電圧に応じた周波数のクロック信号を生成する。分周器11B−1は、電圧制御発振器11B−2が発振するクロック信号を分周することにより、例えば周波数が1/4で位相が0度、90度、180度、270度の4相のクロック信号を生成する。
【0035】
図14は、信号伝送システムの構成の一例を示す図である。図14の信号伝送システムは、光送信機61、光受信機62、光アンプ63、及び光アンプ64を含む。光送信機61が送信する光信号は、光アンプ63により増幅され、光ファイバーを介して伝送される。光ファイバーを介して伝送された光信号は、光アンプ64により増幅され、光受信機62により受信される。
【0036】
光送信機61は、x:1のマルチプレクサ(MUX)71、クロックアンプ72、D−フリップフロップ(D−F/F)73、ドライバ74、及び光変調器75を含む。マルチプレクサ71によりx対1に信号を多重化することにより得られるシリアル伝送信号が、クロックアンプ72の生成するクロック信号に同期してD−フリップフロップ73にラッチされる。このD−フリップフロップ73にラッチされたデータ信号に応じて、ドライバ74が光変調器75を駆動し、光信号の変調を行なう。マルチプレクサ71は、2:1多重化回路を複数段繋げたツリー構造により、x:1の多重化処理を行う。この2:1多重化回路として、例えば図1や図11乃至14に示した多重化回路を用いることができる。
【0037】
光受信機62は、アンプ81、タイミング抽出器82、クロックアンプ83、識別回路84、及び1:xのデマルチプレクサ(DEMUX)85を含む。アンプ81は、受信した光信号を電気信号に変換して増幅する。タイミング抽出器82は、受信信号のデータ遷移に基づいてクロック信号のタイミングを抽出し、クロック信号を再生する。クロックアンプ83は、再生されたクロック信号を増幅して、識別回路84及びデマルチプレクサ85に供給する。識別回路84は、クロック信号に同期してデータ信号の0及び1を識別する。デマルチプレクサ85は、識別後のシリアル受信データを分離(非多重化)することにより、個々の信号を生成する。
【0038】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
11 4相クロック生成回路
12,13,14 ラッチ回路
15 セレクタ回路
16 位相補間器
17 位相検出器
18,19 バッファ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて前記第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、
前記第1及び第2のデータ信号と前記第1及び第2のクロック信号とに基づいて、前記第2のクロック信号と前記データ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、
前記位相制御信号に応じて前記位相関係を制御する位相制御器と
を含むことを特徴とする信号多重化回路。
【請求項2】
前記位相検出器は、前記第1のデータ信号に基づいて前記第1のクロック信号の前記第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第3のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号と前記第3のデータ信号との排他的論理和により前記データ遷移のタイミングを示す第1のタイミング信号を生成し、前記第2のデータ信号に基づいて前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第4のデータ信号を生成し、前記第2のデータ信号と前記第4のデータ信号との排他的論理和により前記データ遷移のタイミングを示す第2のタイミング信号を生成し、前記第1のタイミング信号と前記第2のタイミング信号と前記第2のクロック信号とに応じて前記位相制御信号を生成することを特徴とする請求項1記載の信号多重化回路。
【請求項3】
前記位相検出器は、前記第1のタイミング信号と前記第2のクロック信号との論理和をとった信号の時間平均値と前記第2のタイミング信号と前記第2のクロック信号との論理和をとった信号の時間平均値とを比較することにより前記位相制御信号を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の信号多重化回路。
【請求項4】
前記位相制御器は、前記位相制御信号に応じて前記第2のクロック信号の位相を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の信号多重化回路。
【請求項5】
前記位相制御器は、前記位相制御信号に応じて前記第1のクロック信号の位相を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の信号多重化回路。
【請求項1】
第1のクロック信号の第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第1のデータ信号と前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置から180度位相がずれた第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第2のデータ信号とを受け取り、第2のクロック信号に応じて前記第1及び第2のデータ信号を順次選択して出力するセレクタ回路と、
前記第1及び第2のデータ信号と前記第1及び第2のクロック信号とに基づいて、前記第2のクロック信号と前記データ遷移との位相関係を示す位相制御信号を出力する位相検出器と、
前記位相制御信号に応じて前記位相関係を制御する位相制御器と
を含むことを特徴とする信号多重化回路。
【請求項2】
前記位相検出器は、前記第1のデータ信号に基づいて前記第1のクロック信号の前記第2の位相位置に同期したデータ遷移をする第3のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号と前記第3のデータ信号との排他的論理和により前記データ遷移のタイミングを示す第1のタイミング信号を生成し、前記第2のデータ信号に基づいて前記第1のクロック信号の前記第1の位相位置に同期したデータ遷移をする第4のデータ信号を生成し、前記第2のデータ信号と前記第4のデータ信号との排他的論理和により前記データ遷移のタイミングを示す第2のタイミング信号を生成し、前記第1のタイミング信号と前記第2のタイミング信号と前記第2のクロック信号とに応じて前記位相制御信号を生成することを特徴とする請求項1記載の信号多重化回路。
【請求項3】
前記位相検出器は、前記第1のタイミング信号と前記第2のクロック信号との論理和をとった信号の時間平均値と前記第2のタイミング信号と前記第2のクロック信号との論理和をとった信号の時間平均値とを比較することにより前記位相制御信号を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の信号多重化回路。
【請求項4】
前記位相制御器は、前記位相制御信号に応じて前記第2のクロック信号の位相を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の信号多重化回路。
【請求項5】
前記位相制御器は、前記位相制御信号に応じて前記第1のクロック信号の位相を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の信号多重化回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−109475(P2011−109475A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263227(P2009−263227)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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