説明

信号発生器の保護回路

【課題】出力信号経路に過電流が流れた場合でも信号出力回路の破壊または劣化を防ぎ、信号出力回路を保護することが可能な信号発生器の保護回路を実現する。
【解決手段】クロック信号またはデジタル信号である信号出力回路からの出力信号をリレーを介して出力する信号発生器の保護回路において、電源と信号出力回路の電源端子の間に接続された電流検出用抵抗と、電流検出用抵抗の両端電圧を増幅して出力する増幅器と、増幅器からの電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する電圧検出判定回路と、電圧検出判定回路からの検出信号に応じてリレーを切断し、出力信号の経路を断つリレー制御回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号またはデジタル信号である信号出力回路からの出力信号をリレーを介して出力する信号発生器の保護回路に関し、詳しくは、出力信号経路に過電流が流れた場合でも信号出力回路の破壊または劣化を防ぎ、信号出力回路を保護することが可能な信号発生器の保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の信号発生器の保護回路の一例を示した構成図である。
図3において、信号発生器10は、クロック出力回路1、バイアス抵抗2、バイアス抵抗3、リレー4、リレー5、電圧検出判定回路6およびリレー制御回路7を有している。また、DUT(Device Under Test)ボード20は、受信回路11および終端抵抗12を有している。
【0003】
クロック出力回路1は、外部から入力されるクロック信号を差動クロック信号に変換して出力する。クロック出力回路1は、例えば、ECL(Emitter-Coupled Logic)差動出力のIC(Integrated Circuit)である。バイアス抵抗2は、一端がクロック出力回路1の差動クロック信号の正側端子に接続され、他端が接地される。バイアス抵抗3は、一端がクロック出力回路1の差動クロック信号の負側端子に接続され、他端が接地される。バイアス抵抗2および3は、クロック出力回路1から出力される差動クロック信号のバイアス電流用の抵抗である。
【0004】
リレー4は、一端がクロック出力回路1の差動クロック信号の正側端子に接続され、他端が信号発生器10の出力端子CN1の一方に接続される。リレー5は、一端がクロック出力回路1の差動クロック信号の負側端子に接続され、他端が信号発生器10の出力端子CN1の他方に接続される。
【0005】
電圧検出判定回路6は、一方の入力端子がクロック出力回路1の差動クロック信号の正側端子に接続され、他方の入力端子がクロック出力回路1の差動クロック信号の負側端子に接続される。電圧検出判定回路6は、クロック出力回路1の差動クロック信号の経路上の電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する。電圧検出判定回路6には、クロック出力回路1が正常な状態で取りうる電圧を超える閾値が予め設定されている。
【0006】
リレー制御回路7は、電圧検出判定回路6からの検出信号が入力され、この検出信号に応じてリレー4およびリレー5のオンまたはオフを制御する。受信回路11は、正側入力端子が入力端子CN2の一方に接続され、負側入力端子が入力端子CN2の他方に接続される。受信回路11は、クロック出力回路1からの差動クロック信号を受信して所定の動作を行う。終端抵抗12は、一端が受信回路11の正側入力端子に接続され、他端が受信回路11の負側入力端子に接続される。また、信号発生器10の出力端子CN1とDUTボード20の入力端子CN2間はケーブル等で接続されている。
【0007】
このような信号発生器の過電圧印加時の保護動作を説明する。
リレー制御回路7は、リレー4およびリレー5をオンさせる。クロック出力回路1は、外部から入力されるクロック信号を差動クロック信号に変換して出力し、出力された差動クロック信号は、リレー4およびリレー5を介して、出力端子CN1から出力される。そして、出力端子CN1から出力された差動クロック信号は、入力端子CN2を介してDUTボード20の受信回路11に入力される。
【0008】
リレー4およびリレー5がオンしている状態で、DUTボード20上の信号経路の接続ミス等により、信号発生器10の出力端子CN1に過電圧が誤って印加された場合、電圧検出判定回路6がその過電圧を検出し、検出信号を出力する。リレー制御回路7は、電圧検出判定回路6からの検出信号を受信すると、直ちにリレー4およびリレー5をオフ(切断)する。
【0009】
このように、電圧検出判定回路6が差動クロック信号の経路上の過電圧を検出し、リレー制御回路7が、電圧検出判定回路6からの検出信号に応じて直ちにリレー4およびリレー5をオフ(切断)することにより、過電圧がクロック出力回路1にかからなくなるので、クロック出力回路1の破壊または損傷を受けることによる劣化を防ぐことができる。
【0010】
特許文献1には、予め設定された第1直流電圧を生成する電源ユニットからデバイスに供給される前記第1直流電圧の過電圧に伴う前記デバイスの損傷を防止する過電圧保護装置及び電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−086140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、図3に示す従来例では、差動クロック信号の経路に過電流が流れることによるクロック出力回路1の破壊または劣化を防ぐことができない。すなわち、差動クロック信号の経路上の電圧が適正な範囲であっても、出力端子CN1が誤って低インピーダンスの電圧源に接続された場合、クロック出力回路1の出力ピンに絶対最大定格以上の電流が流れる可能性がある。しかし、電圧検出判定回路6では、この状態を検出できないため、直ちにリレー4およびリレー5をオフ(切断)することができず、クロック出力回路1を保護できないという問題があった。
【0013】
そこで本発明の目的は、出力信号経路(差動クロック信号経路)に過電流が流れた場合でも信号出力回路(クロック出力回路)の破壊または劣化を防ぎ、信号出力回路を保護することが可能な信号発生器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、
クロック信号またはデジタル信号である信号出力回路からの出力信号をリレーを介して出力する信号発生器の保護回路において、
電源と前記信号出力回路の電源端子の間に接続された電流検出用抵抗と、
この電流検出用抵抗の両端電圧を増幅して出力する増幅器と、
この増幅器からの電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する電圧検出判定回路と、
この電圧検出判定回路からの前記検出信号に応じて前記リレーを切断し、前記出力信号の経路を断つリレー制御回路と
を備えたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記電圧検出判定回路は、
前記信号出力回路からの前記出力信号の経路上の電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような効果がある。
クロック信号またはデジタル信号である信号出力回路からの出力信号をリレーを介して出力する信号発生器の保護回路において、電源と前記信号出力回路の電源端子の間に接続された電流検出用抵抗と、この電流検出用抵抗の両端電圧を増幅して出力する増幅器と、この増幅器からの電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する電圧検出判定回路と、この電圧検出判定回路からの前記検出信号に応じて前記リレーを切断し、前記出力信号の経路を断つリレー制御回路とを備えたことにより、信号出力回路の出力ピンに過電流がかからなくなるので、出力信号経路に過電流が流れた場合でも信号出力回路の破壊または劣化を防ぎ、信号出力回路を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の信号発生器の保護回路の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】本発明の信号発生器の保護回路の第2の実施例を示した構成図である。
【図3】従来の信号発生器の保護回路の一例を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施例]
図1は、本発明の信号発生器の保護回路の第1の実施例を示した構成図である。ここで、図3と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。図1において、図3に示す構成と異なる点は、電流検出用抵抗13および増幅器14が新たに設けられている点、電圧検出判定回路6の代わりに電圧検出判定回路15が設けられている点である。
【0018】
図1において、信号発生器30は、クロック出力回路1、バイアス抵抗2、バイアス抵抗3、リレー4、リレー5、リレー制御回路7、電流検出用抵抗13、増幅器14および電圧検出判定回路15を有している。
【0019】
電流検出用抵抗13は、クロック出力回路1に供給される電源VCCとクロック出力回路1の電源端子の間に接続される。増幅器14は、電流検出用抵抗13の両端電圧を増幅して出力する。電圧検出判定回路15は、第1の入力端子がクロック出力回路1の差動クロック信号の正側端子に接続されると共に第2の入力端子がクロック出力回路1の差動クロック信号の負側端子に接続され、第3の入力端子が増幅器14の出力端子に接続される。
【0020】
電圧検出判定回路15は、増幅器14からの電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する。また、電圧検出判定回路15は、従来の電圧検出判定回路6と同様に、クロック出力回路1の差動クロック信号の経路上の電圧が予め定められた閾値を超えた場合にも検出信号を出力する。電圧検出判定回路15には、クロック出力回路1が正常な状態で取りうる電圧を超える閾値が予め設定されている。
【0021】
このような信号発生器の過電流時の保護動作を説明する。
リレー4およびリレー5がオンしていると共に電圧検出判定回路15が過電圧を検出していない状態で、クロック出力回路1の出力ピンに過電流が発生した場合、出力ピンの電流増加は電源VCCの電流の増加となって現れる。電流検出用抵抗13は、過電流によって増加した電流を検出するために電源VCCとクロック出力回路1の電源端子の間に挿入されている。
【0022】
電圧検出判定回路15は、増幅器14で増幅された電流検出用抵抗13の両端電圧をモニタしており、過電流発生時に、この両端電圧の値が予め定められた閾値を超えると、電圧検出判定回路15は、検出信号を出力する。リレー制御回路7は、電圧検出判定回路15からの検出信号を受信すると、直ちにリレー4およびリレー5をオフ(切断)する。
【0023】
なお、過電流と判定する閾値は、通常状態においてクロック出力回路1で消費される電源電流とクロック出力回路1から出力される差動クロック信号の出力電流の絶対最大定格とが考慮された値となる。
【0024】
また、電流検出用抵抗13は、例えば、抵抗値が1Ω程度の小さい値のものが使用され、電流検出用抵抗13による電源電圧低下がクロック出力回路1の動作に影響が無いように考慮されている。さらに、増幅器14と電圧検出判定回路15は、クロック出力回路1が過電流により破壊または劣化しないように、十分高速に動作するよう設計されている。
【0025】
このように、クロック出力回路1に供給される電源VCCとクロック出力回路1の電源端子の間に電流検出用抵抗13を挿入し、電圧検出判定回路15が、増幅器14で増幅された電流検出用抵抗13の両端電圧をモニタする。そして、電圧検出判定回路15が、この両端電圧の値が予め定められた閾値を超えるとクロック出力回路1の出力ピンに過電流が発生したと判定して検出信号を出力し、リレー制御回路7が、電圧検出判定回路15からの検出信号に応じて直ちにリレー4およびリレー5をオフ(切断)することにより、クロック出力回路1の出力ピンに過電流がかからなくなるので、クロック出力回路1の破壊または劣化を防ぎ、クロック出力回路1を保護することができる。
【0026】
[第2の実施例]
図2は、本発明の信号発生器の保護回路の第2の実施例を示した構成図である。ここで、図1と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。図2において、図1に示す構成と異なる点は、クロック出力回路1の代わりにクロック出力回路16が設けられている点、バイアス抵抗2の代わりに出力抵抗17が設けられている点、バイアス抵抗3の代わりに出力抵抗18が設けられている点、DUTボード20の終端抵抗12が削除されている点である。
【0027】
図2において、信号発生器40は、リレー4、リレー5、リレー制御回路7、電流検出用抵抗13、増幅器14、電圧検出判定回路15、クロック出力回路16、出力抵抗17および出力抵抗18を有している。また、DUTボード50は、受信回路11を有している。
【0028】
クロック出力回路16は、外部から入力されるクロック信号を差動クロック信号に変換して出力する。クロック出力回路16は、例えば、ECL→TTL(Transistor-Transistor Logic)変換のICである。出力抵抗17は、一端がクロック出力回路16の差動クロック信号の正側端子に接続され、他端がリレー4の一端に接続される。出力抵抗18は、一端がクロック出力回路16の差動クロック信号の負側端子に接続され、他端がリレー5の一端に接続される。
【0029】
このような信号発生器の過電流時の保護動作は、第1の実施例と同じため、説明を省略する(第1の実施例のクロック出力回路1をクロック出力回路16に読み替える)。
【0030】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すようなものでもよい。
図1および図2に示す実施例において、差動クロック信号を出力するクロック出力回路を保護対象とする構成を示したが、クロック出力回路に限らず、デジタル信号を出力する信号出力回路であれば良い。
【符号の説明】
【0031】
1,16 クロック出力回路
10,30 信号発生器
13 電流検出用抵抗
14 増幅器
15 電圧検出判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号またはデジタル信号である信号出力回路からの出力信号をリレーを介して出力する信号発生器の保護回路において、
電源と前記信号出力回路の電源端子の間に接続された電流検出用抵抗と、
この電流検出用抵抗の両端電圧を増幅して出力する増幅器と、
この増幅器からの電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力する電圧検出判定回路と、
この電圧検出判定回路からの前記検出信号に応じて前記リレーを切断し、前記出力信号の経路を断つリレー制御回路と
を備えたことを特徴とする信号発生器の保護回路。
【請求項2】
前記電圧検出判定回路は、
前記信号出力回路からの前記出力信号の経路上の電圧が予め定められた閾値を超えた場合に検出信号を出力することを特徴とする請求項1記載の信号発生器の保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−250088(P2011−250088A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120610(P2010−120610)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】