説明

信頼度評価装置、信頼度評価方法および信頼度評価プログラム

【課題】地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことができなかった。
【解決手段】車両に搭載された記録媒体に記録された地図情報から信頼度の評価対象となる評価対象値を取得し、前記車両に搭載されたセンサによって前記評価対象値を測定するための測定値を複数回取得し、前記評価対象値の信頼度を前記測定値に基づいて評価する信頼度評価法を前記測定値の分散に応じて選択し、選択した前記信頼度評価法によって前記評価対象値の信頼度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報の信頼度を評価する信頼度評価装置、信頼度評価方法および信頼度評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の挙動に基づいて道路の曲率半径を算出して地図情報が示す曲率半径と比較することで誤制御が行われたか否かを判定し、誤制御が行われた場合には次回から地図情報を参照したコーナー制御を行わないように設定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、地図情報の信頼度を算出する技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−218950号公報
【特許文献2】特開2007−225498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことができなかった。
すなわち、カーブ区間の曲率やカーブ区間の開始位置等は車両に搭載された加速度センサや位置センサ(GPS等)など、各種のセンサの出力信号に基づいて実測することが可能である。しかし、各種のセンサによって各種の測定対象を複数回測定した場合、その測定値の分布特性は種々の特性となり、異なる分布特性の測定値の信頼度を同じ評価方法で評価することはできない。例えば、測定値の分布から特定の値が正しい値として推定される場合と、正しい値は推定されないが測定値が許容誤差内に分布する場合とでは、測定値を信頼すべきか否かの判断指標が異なるべきである。以上のように、測定値の分布特性が異なると同じ評価方法で測定値の信頼度を評価することはできず、従来技術のように車両の挙動によって特定される値と地図情報が示す値とを比較しても地図情報に含まれる各種の情報について信頼度を的確に特定することはできない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、車両に搭載されたセンサによって評価対象値を測定するための測定値を複数回取得し、当該測定値の分散に応じて信頼度評価法を選択する。そして、選択した信頼度評価法によって評価対象値の信頼度を評価する。すなわち、本発明においては測定値の分散に対応した複数の信頼度評価法が予め用意されており、測定値の分散に応じて当該信頼度評価法が選択される。これらの信頼度評価法において、地図情報が示す地物の位置等を示す評価対象値の信頼度は、車両に搭載されたセンサの測定値に基づいて評価される。また、測定値の分散は、測定値の分布において平均値に対する分布の広がり特性を示しているため、分布から特定の測定値を推定可能であるか否かを示す指標となる。従って、測定値の分散に応じて選択された信頼度評価法によって評価対象値の信頼度を評価することにより、地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことが可能になる。
【0006】
評価対象値取得手段は、地図情報に含まれる複数の評価対象値から任意の評価対象値を評価対象として抽出すればよい。評価対象値は、車両に搭載されたセンサによって測定することが可能な値であるとともに予め地図情報の一部として記録媒体に記録された情報である。従って、評価対象値は、地図情報を構成する地物等に関する値であればよく、地物等の位置や曲率、道路幅などのように大きさや量を特定する値であっても良いし、地物の存在を示すフラグなどのように特定の意味を示す値であっても良い。
【0007】
測定値取得手段は、測定値を複数回取得することができればよく、測定値は評価対象値を測定するための値であればよい。すなわち、測定値と評価対象値とは直接的に比較できる値であり、センサの出力値が評価対象値と同じ単位系であればセンサの出力値が評価対象を測定した測定値であるとして出力値と評価対象値とを比較すればよいし、異なる単位系であれば一方を他方に合わせて変換する構成とする。センサは、車両に搭載されるとともに地図情報を構成する評価対象を測定するための測定値あるいは測定値に変換可能な値を出力することができればよい。従って、位置、速度、加速度などの物理量を測定するセンサの他、画像解析によって車両や路面上の地物の位置、速度、加速度などを測定するためのカメラ等であっても本発明におけるセンサに相当する。
【0008】
信頼度評価手段は、測定値の分散に応じた信頼度評価法の選択と、測定値に基づいた評価対象値の信頼度の評価を行うことができればよい。測定値の分散は、直接的に特定しても良いし間接的に特定しても良い。例えば、センサの種類や測定値の性質、測定値に対する演算処理の方法等に対して予め分散の大きさを対応づけておき、測定値の分散が当該センサの種類や測定値の性質、測定値に対する演算処理の方法等に対応づけられた分散であるとみなす構成としても良い。むろん、測定値を複数回取得して分散を実際に演算して直接的に特定しても良い。
【0009】
分散に応じた信頼度評価法の選択においては、測定値の分散に対応する評価対象の特徴に応じて信頼度評価法が選択されるように構成されていればよい。すなわち、測定値の分散が小さい評価対象であるほど、測定値を安定的に測定できるという特徴を有している。測定値を安定的に測定可能であれば、当該測定値に基づいて評価対象値自体の正確性を評価することが可能になる。従って、測定値の分散が小さい場合には、例えば、評価対象値自体の正確性によって信頼度を評価する信頼度評価法を選択する構成等を採用することが可能である。一方、測定値の分散が大きい評価対象であるほど、測定値の分布範囲が広がる。従って、測定値の分散が大きい場合には、測定値自体ではなく、測定値の集合、例えば、特定の範囲内の測定値が測定される測定確率によって信頼度を評価する信頼度評価法を選択する構成等を採用することが可能である。
【0010】
評価対象値の信頼度は、当該評価対象値を車両の制御に利用した場合に車両に与える悪影響が少ないほど高い信頼度であると定義されていればよい。例えば、誤差を含む評価対象値が正しい値であるとみなして車両の制御を行った場合に運転に与える影響の大きさ等によって信頼度を評価する構成等を採用可能である。また、評価対象値の信頼度は、測定値に基づいて評価されればよく、測定値自体や測定値を変換して得られる値、複数の測定値から演算された値等を特定し、その分布を解析する構成や特定された値と評価対象値とを比較する構成等を採用可能である。
【0011】
さらに、信頼度評価法の具体な構成例として、評価対象値との差分が所定の閾値以内である測定値を参照して信頼度を評価するように信頼度評価法を定義し、複数の信頼度評価法における当該所定の閾値が互いに異なるように定義してもよい。この構成によれば、測定値の分散に応じて信頼度評価法を選択することにより、測定値の分散に応じて所定の閾値を選択して信頼度を評価することになる。
【0012】
すなわち、分散値が小さい場合には測定値を複数回取得した場合に相対的に狭い範囲に測定値が分布し、分散値が大きい場合には測定値を複数回取得した場合に相対的に広い範囲内に測定値が分布する。従って、前者であれば狭い範囲を解析対象とすれば良く、後者であれば広い範囲を解析対象とすればよい。このため、測定値の分散に応じて異なる閾値となるように信頼度評価法を選択することにより、測定値の分散に応じて適切な範囲の測定値を解析対象としながら信頼度評価法を選択することが可能になる。
【0013】
さらに、測定値の分散が小さいほど狭い範囲の測定値を参照して信頼度を評価する信頼度評価法を選択する構成とすれば、分散値が小さく、狭い範囲の測定値によって評価対象値自体の信頼度を評価できる場合に相対的に狭い範囲の測定値を参照して信頼度を評価する構成とすることができる。一方、分散値が大きく、特定の範囲における測定値の分布が測定対象の性質を表す場合に相対的に広い範囲の測定値を参照して信頼度を評価する構成とすることができる。このため、測定値の分散に応じた信頼度評価法によって評価対象値の信頼度を評価することができる。
【0014】
さらに、測定値が測定される確率に基づいて信頼度を評価する構成を採用しても良い。すなわち、特定の測定値が繰り返し測定される確率は、特定の測定値を測定する際の再現性および正確性を示している。そこで、最も測定される確率が高い測定値に着目すると、当該最も測定される確率が高い測定値は評価対象値を測定したものであると推定することができる。このように推定する場合、当該測定値が評価対象値に近く、その測定確率が高いほど評価対象値は評価対象の正確な値に近いことになる。従って、最も測定される確率が高い測定値の存在範囲とその測定確率によって評価対象値の信頼度を評価することができる。そこで、測定値が評価対象値に近いか否かを判定するための範囲として第1の範囲を定義し、最も測定される確率が高い確率を第1の確率とすれば、複数回取得した測定値に基づいて評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価法を定義することができる。
【0015】
一方、特定の範囲内の測定値が測定される確率は、測定値を複数回取得した場合に測定値が当該特定の範囲内に含まれる確率を示しており、特定の範囲内の測定値が安定的に測定されるか否かを示す指標となる。従って、評価対象値に許容される誤差の範囲を特定の範囲とすれば、当該特定の範囲内の測定値が測定される確率によって評価対象値の信頼度を評価することができる。そこで、評価対象値に許容される誤差の範囲を第2の範囲として定義すれば、複数回取得した測定値に基づいて評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価法を定義することができる。
【0016】
以上のように信頼度評価法を定義すれば、測定値の分散に応じて信頼度評価法を選択することが可能になる。すなわち、測定値の分散は、測定値を複数回取得した場合の分布特性であるとともに、測定値の分布を特徴づける分布特性の中でも測定値の信頼度と密接に関連した分布特性である。従って、分散に対応した信頼度評価法を選択することにより地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことができる。例えば、測定値の分散が小さい評価対象について、最も測定される確率が高い測定値が評価対象値から第1の範囲内に存在する場合に当該最も測定される確率が高い測定値が測定される確率である第1の確率に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法を選択する構成を採用可能である。測定値の分散が大きい評価対象について、評価対象値を含む第2の範囲内の測定値が測定される確率である第2の確率に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法を選択する構成を採用可能である。
【0017】
さらに、例えば、最も測定される確率が高い測定値と評価対象値との差分に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法を定義すれば、最も測定される確率が高い測定値が評価対象の実測値であると推定して、評価対象値の信頼度を評価することが可能である。すなわち、測定値が車両のセンサによって評価対象を実測した値であれば、地図情報に含まれる評価対象値と測定値とを直接的に比較して評価対象値の信頼度を評価することが可能である。なお、最も測定される確率が高い測定値と評価対象値との差分は信頼度に対応しているので、差分と閾値とを比較して差分が閾値を超える場合に信頼度が低いと評価する構成や、差分の大きさと信頼度とを対応づけて信頼度を評価する構成など、種々の構成を採用可能である。
【0018】
一方、評価対象値との差分が所定値以上である範囲で測定値が測定される確率は、測定値が評価対象値から所定値以上離れているような測定値、すなわち、評価対象値の信頼度を低下させるような測定値がどの程度の割合で測定されるのかを評価する指標となる。そこで、評価対象値との差分が所定値以上である範囲で測定値が測定される確率に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法を定義すれば、評価対象値の信頼度を低下させるような測定値の測定確率に基づいて評価対象値の信頼度を評価することができる。例えば、評価対象値と測定値との差分が所定値以上である範囲を評価対象値に許容される誤差の範囲を超える範囲と定義し、評価値との差分が所定値以上である範囲で測定値が測定される確率が所定の確率以上である場合に評価対象値の信頼度が低いとみなす構成等を採用可能である。
【0019】
さらに、測定値の分散は種々の指標に基づいて定義することが可能である。例えば、測定値を取得するセンサに車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれない場合、車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれる場合よりも測定値の分散が小さいとみなす構成を採用可能である。すなわち、測定値を取得するためのセンサに車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれる場合、測定の結果得られる測定値には運転時の状況等が反映されており、一般的に測定値の分散は大きい。従って、測定値を取得するためのセンサに車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれるか否かに基づいて分散の大小を特定すれば、実際に分散を特定することなく分散を決定することができる。
【0020】
さらに、評価対象値の信頼度が低く、分散が小さく、かつ、最も高い確率で測定される測定値の測定確率が所定値以上である場合、最も高い確率で測定される測定値に基づいて評価対象を示す値を特定し、当該特定された値によって地図情報の評価対象値を更新する構成としても良い。すなわち、測定値の分散が小さければ、最も高い確率で測定される測定値の値自体の信頼性が高いと評価することができる。さらに、最も高い確率で測定される測定値の測定確率が所定値以上である場合、既存の評価対象値よりも当該最も高い確率で測定される測定値の方が評価対象の実際の値に近い可能性が高い。そこで、既存の評価対象値の信頼度が低いと評価された場合、最も高い確率で測定される測定値の方が信頼度が高いとみなし、既存の評価対象値を更新する。この構成によれば、地図情報の信頼度を高めることができる。
【0021】
さらに、信頼度を評価するための信頼度評価法は、測定値の分布特性に応じて選択されれば良く、測定値の分布特性に応じて信頼度評価法を選択するための指標として分散と異なる指標を採用しても良い。例えば、評価対象が異なれば測定値の分布特性が異なるため、評価対象に応じて信頼度評価法を選択する構成としても良い。この構成によれば、評価対象に適した信頼度評価法で評価対象値の信頼度を評価することが可能になる。なお、評価対象に応じて信頼度評価法を選択するためには種々の構成を採用可能である。例えば、評価対象と信頼度評価法とを予め対応づけておき、当該対応に応じて信頼度評価法を選択する構成としても良いし、評価対象を予め分類し、当該分類と信頼度評価法とを対応づけておき、当該対応に応じて信頼度評価法を選択する構成としても良い。また、測定手法が異なれば測定値の分布特性が異なるため、測定値の測定手法に応じて信頼度評価法を選択する構成としてもよい。この構成によれば、測定値の測定手法に適した信頼度評価法で評価対象値の信頼度を評価することが可能になる。なお、測定手法は、評価対象値を測定するための手法であり、センサの種類,センサによって測定する測定値,測定値を変換するのであればその変換方法、の組み合わせによって規定される。
【0022】
さらに、本発明のように測定値の分散に応じて信頼度評価法を選択して評価対象値の信頼度を評価する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】信頼度評価装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】測定値の度数分布を示す図である。
【図3】車両制御処理のフローチャートである。
【図4】カーブ区間の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)車両制御処理:
(3)他の実施形態:
【0025】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる信頼度評価装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして信頼度評価プログラム21および車両制御プログラム22を実行可能である。信頼度評価プログラム21はナビゲーション装置10の記録媒体30に記録された地図情報30aに含まれる情報の信頼度を評価し、低い信頼度の情報を更新する機能を備えている。また、本実施形態において、車両制御プログラム22は地図情報30aの信頼度に応じて車両制御の制御量を変化させながら当該車両制御を実行する機能を備えている。
【0026】
なお、地図情報30aは、車両の位置の特定や車両の経路案内に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含んでいる。本実施形態において、地図情報30aには道路に形成されたカーブ区間を示す情報と当該カーブ区間の開始位置および曲率を示す情報が含まれている。
【0027】
本実施形態における車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とステアリングセンサ44と加速度センサ45と変速部46と制動部47とを備えている。これらの各部と制御部20とが協働することによって信頼度評価プログラム21による機能や車両制御プログラム22による機能を実現する。
【0028】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
【0029】
ステアリングセンサ44は車両のステアリングの舵角(ホイールの基準状態(0°)からの回転角度)を示す信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、ステアリングの舵角を示す信号に基づいて運転者がステアリングを操作したタイミングを特定する。加速度センサ45は、車両に作用する加速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の横方向に対して平行な方向の成分を持つ加速度(横方向の加速度)を取得する。
【0030】
変速部46は、前進について計6速、後進について計1速等の複数の変速段を有する有段のトルクコンバータを備えており、各変速段に対応した変速比で回転数を調整しながらエンジンの駆動力を車両の車輪に伝達することができる。制御部20は図示しないインタフェースを介して変速段を切り替えるための制御信号を出力し、変速部46は当該制御信号を取得して変速段を切り替えることが可能である。本実施形態においては、前進1速〜前進6速のように変速段がハイギアになるにつれて変速比が小さくなるように構成されている。
【0031】
制動部47は、車両の車輪に搭載されたブレーキによる減速の程度を調整するホイールシリンダの圧力を制御する装置を含み、制御部20は当該制動部47に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を調整させることが可能である。従って、制御部20が当該制動部47に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を増加させると、ブレーキによる制動力が増加し、車両が減速される。
【0032】
制御部20は、信頼度評価プログラム21を実行することにより、地図情報30aに含まれる情報の信頼度を評価する。このために、信頼度評価プログラム21は、評価対象値取得部21aと測定値取得部21bと信頼度評価部21cとを備えている。
【0033】
評価対象値取得部21aは、地図情報30aから信頼度の評価対象となる評価対象値を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において制御部20は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号に基づいて特定された車両の現在位置の前方の所定範囲にカーブ区間が存在するか否かを判定している。そして、当該所定範囲にカーブ区間が存在すると判定された場合、制御部20は、評価対象値取得部21aの処理により、当該カーブ区間における車両制御に関連する曲率とカーブ区間の開始位置とを評価対象とし、曲率とカーブ区間の開始位置との値を地図情報30aから抽出して評価対象値とする。なお、地図情報30aに含まれる評価対象値の形式は種々の形式を採用可能である。例えば、カーブ区間と曲率とを対応づけて地図情報30aに記録しておく構成の他、カーブ区間の道路上に設定された形状補間点を少なくとも3点抽出し、これらの形状補間点の位置から曲率を算出する構成であっても良い。
【0034】
測定値取得部21bは、車両に搭載されたセンサによって評価対象値を測定するための測定値を複数回取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態においては、センサの出力値が評価対象値と同じ単位系であればセンサの出力値を測定値とし、センサの出力値が評価対象値と異なる単位系であれば一方を他方に合わせて変換する。具体的には、車両の現在位置の前方の所定範囲にカーブ区間が存在すると判定された場合、制御部20は、測定値取得部21bの処理により、ステアリングセンサ44の出力信号を取得して運転者がステアリングを操作したタイミングを特定する。さらに、当該タイミングにおける車両の位置をGPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号に基づいて特定してカーブ区間の開始位置とみなす。ステアリングが操作されたタイミングにおける車両の位置はカーブ区間の開始位置を示す評価対象値と同じ単位系であるため、ステアリングが操作されたタイミングにおける車両の位置を測定値とし、測定値情報30bとして記録媒体30に記録する。
【0035】
また、制御部20は、測定値取得部21bの処理により、加速度センサ45の出力信号を取得して車両に作用する横加速度Gtを特定し、車速センサ42の出力信号を取得して車速vを特定する。そして、横加速度Gtおよび車速vに基づいて曲率(Gt/v2)を測定値として取得し、測定値情報30bとして記録媒体30に記録する。すなわち、曲率はセンサの出力値である横加速度Gtおよび車速vは曲率と異なる単位系であるため、評価対象値である曲率と同じ単位系となるようにセンサの出力値を変換して測定値としている。なお、測定値情報30bには、測定対象を示す情報が対応づけられている。例えば、カーブ区間の開始位置を示す値や曲率を示す値に対してカーブ区間の位置が対応づけられている。
【0036】
本実施形態において、車両が前方の所定範囲にカーブ区間が存在する位置に到達するたびに制御部20が当該カーブ区間に関する測定値を取得する。従って、本実施形態においては、車両が当該カーブ区間に複数回到達することに応じて測定値が複数回取得され、各測定値が測定値情報30bとして蓄積される。
【0037】
信頼度評価部21cは、信頼度評価法を選択し、選択した信頼度評価法によって評価対象値の信頼度を評価する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態においては、測定値をその分散の性質に応じて予め2種類に分類し、当該分類に応じた2種類の信頼度評価法を予め定義し、評価法情報30cとして記録媒体30に記録してある。本実施形態において、評価法情報30cには第1評価法情報と第2評価法情報とが含まれ、第1評価法情報は小さい分散に対応し、第2評価法情報は大きい分散に対応する。また、評価法情報30cにおいては、信頼度評価の対象となる測定値の範囲を示す閾値と、信頼度を評価するための指標と、信頼度を評価するための確率の値を示す情報を規定している。具体的には、第1評価法情報において上述の閾値,指標,確率の値はそれぞれ±10%,最も測定される確率が高い測定値,第1の確率N(0≦N≦1)であり、第2評価法情報において上述の閾値,指標,確率の値はそれぞれ±30%,閾値内に含まれる測定値,第2の確率M(0≦M≦1)である。
【0038】
図2Aおよび図2Bは、2種類の測定値についての度数分布を示す図であり、横軸を測定値、縦軸を度数として示している。図2Aは曲率の測定値の度数分布、図2Bはカーブ区間の開始位置の測定値の度数分布であり、所定の間隔を単位とし、各間隔内の測定値が測定された回数を度数として度数分布としたものである。これらの図2Aおよび図2Bに示すように、図2Aの度数分布は図2Bの度数分布と比較して急峻であり、前者の分散は後者の分散より小さい。このような分散の傾向は、センサによる測定対象の性質に依存する。
【0039】
すなわち、図2Aに示す測定値である曲率は車両に作用する横加速度Gtを加速度センサ45で取得することによって特定され、図2Bに示す測定値であるカーブ区間の開始位置は車両の運転者によるステアリングの操作タイミングにてGPS受信部41等によって車両の現在位置を取得することによって特定される。ここで、横加速度Gtは運転者の操作の影響を間接的に受けるのみであり、操作タイミングは運転者の操作を直接的に検出したものである。さらに、横加速度Gtはカーブ区間の長さに対応した所定期間内で測定可能であるが、ステアリングの操作タイミングはカーブ区間の開始点付近の極めて限定的な期間で測定されるのみである。従って、横加速度Gtを複数回取得した場合には狭い範囲の値に収束しやすく、ステアリングの操作タイミングから特定されるカーブ区間の開始位置を複数回取得した場合には狭い範囲の値に収束しにくい。このため、横加速度Gtから特定される曲率の分散は小さく、ステアリングの操作タイミングが直接的に影響を与えるカーブ区間の開始位置の分散は曲率の分散と比較して大きくなる。そこで、本実施形態において制御部20は、測定値を取得するセンサに車両の運転者の操作を直接的に測定するセンサが含まれない場合には測定値の分散が小さいとみなし、測定値を取得するセンサに車両の運転者の操作を直接的に測定するセンサが含まれる場合には測定値の分散が大きいとみなす。
【0040】
上述のように定義された第1評価法情報および第2評価法情報が示す信頼度評価法は、このような分散の性質に応じて評価対象値の信頼度を評価するように設定されている。すなわち、分散が小さい度数分布が得られるような測定値は測定値が狭い範囲に分布するため、測定値を安定的に測定でき、測定値と評価対象値とを直接的に比較することで評価対象値自体の正確性を評価することが可能である。そこで、分散が小さい測定値については最も測定される確率が高い測定値が評価対象の実測値であると推定することとし、制御部20は、評価法情報30cから第1評価法情報を選択し、最も測定される確率が高い測定値に基づいて信頼度を評価することとする。
【0041】
一方、分散が大きい度数分布が得られるような測定値は測定値が広い範囲に分布するため、測定値自体に基づいて評価対象値を評価することは困難であるが、測定値を集合として捉えることによって評価対象値の信頼度を評価することができる。そこで、分散が大きい測定値については特定の範囲の測定値が測定される測定確率が評価対象の実測値の評価指標になるとみなし、制御部20は、評価法情報30cから第2評価法情報を選択し、特定の範囲の測定値が測定される測定確率に基づいて信頼度を評価することとする。
【0042】
より具体的には、分散が小さい測定値に対応する信頼度評価法による評価において制御部20は、評価対象値との差分が閾値以内にある範囲(評価対象値から±10%以内の範囲)を第1の範囲として規定する。そして、制御部20は、最も測定される確率が高い測定値が評価対象値から第1の範囲内である場合に、最も測定される確率が高い測定値の測定確率が第1の確率N以上であれば評価対象値の信頼度が高いと判定する。また、制御部20は、最も測定される確率が高い測定値の測定確率が第1の確率Nより小さければ評価対象値の信頼度が低いと判定する。なお、最も測定される確率が高い測定値が第1の範囲内に存在しない場合、制御部20は評価対象値の信頼度が低いと判定する。すなわち、最も測定される確率が高い測定値と評価対象値との差分が過度に大きくなると信頼度が低いと評価することとしている。
【0043】
一方、分散が大きい測定値に対応する信頼度評価法による評価において制御部20は、評価対象値との差分が閾値以内にある範囲(評価対象値から±30%以内の範囲)を第2の範囲として規定する。そして、制御部20は、第2の範囲内の測定値が測定される確率が第2の確率M以上であれば評価対象値の信頼度が高いと判定する。また、制御部20は、評価対象値から±30%以内の範囲の測定値が測定される確率が第2の確率Mより小さければ評価対象値の信頼度が低いと判定する。なお、評価対象値を含む第2の範囲内の測定値の測定確率よりも、評価対象値を含む第2の範囲内に含まれない測定値の測定確率の方が高い場合、制御部20は評価対象値の信頼度が低いと判定する。すなわち、評価対象値と測定値との差分が過度に大きい状態となっている割合が高い場合には信頼度が低いと評価することとしている。
【0044】
なお、各信頼度評価法での解析対象を示す第1の範囲と第2の範囲は異なるため、分散に応じて当該異なる閾値を選択していると考えることもできる。また、本実施形態において、第1の範囲は第2の範囲より狭くなるように構成される。すなわち、分散値が小さい場合には測定値を複数回取得した場合に相対的に狭い範囲に測定値が分布し、分散値が大きい場合には測定値を複数回取得した場合に相対的に広い範囲内に測定値が分布する。従って、前者であれば狭い範囲を解析対象とすれば良く、後者であれば広い範囲を解析対象とすればよい。この構成によれば、測定値の分散に応じて適切な範囲の測定値を解析対象としながら信頼度評価法を選択することが可能になる。
【0045】
また、第1の確率や第2の確率については、各確率と比較される値が第1の確率や第2の確率を超える場合に信頼度が高く、超えない場合に信頼度が低くなるように設定してあれば良い。従って、第1の確率や第2の確率は、地図情報30aにおいて要求される情報の精度に応じて決定すればよい。なお、信頼度は、評価対象値の正確性の程度を示す情報であり、評価対象値を車両の制御に利用した場合に車両に与える悪影響が少ないほど高くなるように定義される。本実施形態においては、誤差を含む評価対象値が正しい値であるとみなして車両の制御を行った場合に運転に与える影響の大きさ等によって信頼度を評価できるように、許容誤差が相対的に小さい評価対象値は、許容誤差が相対的に大きい評価対象値と比較して、第1の範囲、第2の範囲が狭く、第1の確率、第2の確率が大きくなるように設定してある。
【0046】
また、本実施形態においては、測定値の分布を度数分布で評価しているため、各測定値は所定の間隔毎に解析され、各間隔内に含まれる測定値の個数が度数となる。従って、測定値の測定確率や最も測定される確率が高い測定値は、当該間隔毎に評価される。例えば、ある間隔に含まれる測定値の測定確率は当該間隔の度数を全度数で除した値となり、最も測定される確率が高い測定値は、度数分布において当該最も測定される確率が高い測定値が含まれる間隔の中央値となる。
【0047】
制御部20は、以上のようにして信頼度評価部21cの処理により信頼度評価法を選択し、当該選択した信頼度評価法に応じて測定値に基づく評価対象値の信頼度の評価を行う。評価対象値の信頼度が特定されると、制御部20は、信頼度に応じた車両の制御を行う。すなわち、車両制御プログラム22は評価対象値に基づいて車両を制御する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、当該制御に際して評価対象値の信頼度に応じて制御内容を選択する。
【0048】
本実施形態において制御部20は、車両制御プログラム22の処理によってカーブ区間の開始位置以降、一定曲率区間の開始位置までの区間内で車両を減速させる。この際、評価対象値の信頼度が高いほど自動制御の度合いが高くなり、評価対象値の信頼度が高いほど制御量が大きくなるように設定されている。より具体的には、制御部20は、カーブ区間の開始位置および曲率の信頼度に基づいて車両制御の内容を変動させる。
【0049】
例えば、カーブ区間の開始位置の信頼度が高い場合、制御部20は、車両が当該カーブ区間の開始位置に達した時点で車両の減速を開始する。一方、カーブ区間の開始位置の信頼度が低い場合、制御部20は、ステアリングセンサ44の出力信号によって運転者が操舵を開始した時点で車両の減速を開始する。すなわち、カーブ区間の開始位置の信頼度が高い場合には地図情報30aに基づいて減速タイミングが自動的に決定され、カーブ区間の開始位置の信頼度が低い場合には運転者の操作に基づいて減速タイミングが決定される。
【0050】
また、曲率の信頼度が高い場合、制御部20は、制動部47に制御信号を出力し、カーブ区間の開始位置から一定曲率区間の開始位置まで走行する過程で、現在車速を目標車速に減速させるための制動力を発生させる。一方、曲率の信頼度が低い場合、制御部20は、変速部46に制御信号を出力し、カーブ区間の開始位置から一定曲率区間の開始位置まで走行する過程で、現在車速を目標車速に減速させるために好ましい変速比となるように変速比を制御する。すなわち、曲率の信頼度が高い場合には制御部20が現在車速を目標車速にするための減速度を実際に車両に対して作用させ、曲率の信頼度が低い場合には制御部20によって変速によるエンジンブレーキが車両に作用するように制御する。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、測定値の分散に応じて選択された信頼度評価法によって評価対象値の信頼度を評価しているため、地図情報が示す地物の位置等を測定した場合の測定値の分布特性に応じた信頼度の評価を行うことが可能になる。また、評価対象値の信頼度に応じて車両を制御するため、多くの場合に車両制御が確実に実行され、仮に誤制御が行われたとしても当該誤制御による影響を抑制することができる。
【0052】
(2)車両制御処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する車両制御処理を図3に示すフローチャートおよび図4に示す具体例に基づいて説明する。なお、図4は、クロソイド区間および一定曲率区間を含むカーブ区間の例を示す図であり、同図4においては、一定曲率区間の前後に設けられたクロソイド区間を破線で示す矢印L0,L1、一定曲率区間を一点鎖線で示す矢印L2で示している。また、図4においては、一定曲率区間に到達する以前のクロソイド区間の開始位置がカーブ区間の開始位置Pとなり、一定曲率区間における半径をRとして示している。従って、曲率αは1/Rである。
【0053】
制御部20は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号に基づいて車両の前方の所定範囲にカーブ区間が存在するか否かを判定しており、カーブ区間が存在すると判定した場合、測定値の取得処理と図3に示す車両制御処理とを実行する。すなわち、車両がカーブ区間を走行する際に、制御部20は測定値取得部21bの処理により、カーブ区間の開始位置Pと曲率αとを測定し、カーブ区間の位置を示す情報に対応づけて測定値情報30bとして記録媒体30に記録する処理を行う。
【0054】
一方、車両がカーブ区間に到達する前に図3に示す車両制御処理が開始され、制御部20は、評価対象値取得部21aの処理により、地図情報30aを参照して評価対象値を取得する(ステップS100)。すなわち、車両Cの前方の所定範囲に存在するカーブ区間についての地図情報30aを参照し、カーブ区間の開始位置Pおよびカーブ区間の曲率αを示す情報を取得する。
【0055】
次に、制御部20は、信頼度評価部21cの処理により、測定値の分散を特定する(S105)。本実施形態において制御部20は、評価対象の測定値を取得するセンサに車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれるか否かを判定し、運転者の操作を直接的に測定するセンサが含まれない場合には測定値の分散が小さいとみなし、運転者の操作を直接的に測定するセンサが含まれる場合には測定値の分散が大きいとみなす。図3,図4に示す例において、カーブ区間の開始位置Pを特定するためには運転者のステアリング操作を直接的に測定するステアリングセンサ44を利用する必要があるため、カーブ区間の開始位置の測定値の分散が大きいとみなされる。曲率αは車両に作用する横加速度を測定する加速度センサ45の測定値に基づいて特定されるため、測定値を取得するためのセンサに操作者の操作を直接的に測定するセンサが含まれず、分散が小さいとみなされる。
【0056】
次に、制御部20は、信頼度評価部21cの処理により、分散に応じて信頼度評価法を選択し(ステップS110)、評価対象値の信頼度を評価する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、測定値の分散が大きいとみなしたカーブ区間の開始位置Pについては、第2評価法情報を参照し、予め決められた閾値(±30%)に基づいて評価対象値を含む第2の範囲を定義する。そして、制御部20は、測定値情報30bを取得して当該第2の範囲に含まれる測定値の度数の和S1と当該第2の範囲に含まれない測定値の度数の和S2と全測定値の度数の和S0とを取得する。図2Bにおいては、評価対象値をEP、第2の範囲を実線の矢印R2にて示しており、和S1はハッチを付した度数の和、和S2はハッチを付していない度数の和、S0はS1+S2となる。
【0057】
さらに、制御部20は、第2の範囲に含まれない測定値の測定確率(S2/S0)と第2の範囲内の測定値の測定確率(S1/S0)とを比較し、第2の範囲に含まれない測定値の測定確率の方が高い場合には、評価対象値EPの信頼度が低いとみなす。第2の範囲に含まれない測定値の測定確率の方が低い場合、制御部20は、さらに、第2の範囲に含まれる測定値の測定確率が第2の確率M以上であるか否かを判定し、第2の範囲に含まれる測定値の測定確率が第2の確率M以上であれば信頼度が高いとみなす。また、第2の範囲に含まれる測定値の測定確率が第2の確率M未満であれば信頼度が低いとみなす。
【0058】
一方、制御部20は、測定値の分散が小さいみなした曲率αについては、予め決められた閾値(±10%)に基づいて第1の範囲を定義する。そして、制御部20は、測定値情報30bを取得して最も測定確率が高い測定値(最大度数の測定値)を特定し、当該最も測定確率が高い測定値Dの度数F1と全度数の和F0とを取得する。図2Aにおいては、評価対象値をEα、第1の範囲を実線の矢印R1にて示しており、測定値Dの度数にはハッチを付して示している。なお、測定値Dは、図2Aに棒グラフで示す度数分布において最大分布数を示す棒の横軸方向の中央値である。
【0059】
さらに、制御部20は、最も測定確率が高い測定値Dが第1の範囲に含まれない場合には、評価対象値Eαの信頼度が低いとみなす。最も測定確率が高い測定値Dが第1の範囲に含まれる場合、制御部20は、さらに、最も測定確率が高い測定値Dの測定確率(F1/F0)が第1の確率N以上であるか否かを判定する。そして、制御部20は、第1の範囲に含まれる測定値の測定確率が第1の確率N以上であれば信頼度が高いとみなす。また、第1の範囲に含まれる測定値の測定確率が第1の確率N未満であれば信頼度が低いとみなす。
【0060】
以上のようにして、制御部20がカーブ区間の開始位置Pおよび曲率αの信頼度を特定すると、制御部20は車両制御プログラム22の処理によって、カーブ区間の開始位置Pの信頼度が高いか否かを判定する(ステップS120)。当該ステップS120にて、カーブ区間の開始位置Pの信頼度が高いと判定された場合、制御部20は、評価対象値に基づいてカーブ区間の開始位置Pを特定するように設定する(ステップS125)。一方、ステップS120にて、カーブ区間の開始位置Pの信頼度が高いと判定されない場合、制御部20は、ステアリングセンサ44の測定値に基づいてカーブ区間の開始位置Pを特定するように設定する(ステップS130)。
【0061】
さらに、制御部20は車両制御プログラム22の処理によって、曲率αの信頼度が高いか否かを判定する(ステップS135)。当該ステップS135にて、曲率αの信頼度が高いと判定された場合、制御部20は、制動部47による減速制御を実行するように設定する(ステップS140)。一方、ステップS135にて、曲率αの信頼度が高いと判定されない場合、エンジンブレーキによる減速の補助を行うように設定する(ステップS145)。すなわち、ステップS125あるいはS130での設定に従って特定されたカーブ区間の開始位置Pに車両が到達すると、制御部20は、ステップS140あるいはステップS145での設定に従って制動部47による減速あるいはエンジンブレーキによる減速の補助を実行する。より具体的には、制動部47による減速を実行するように設定されていた場合、車両がカーブ区間の開始位置Pに到達した時点から制動部47に制御信号を出力し、カーブ区間の開始位置Pから一定曲率区間の開始位置に到達するまでの距離内で車両の現在車速を目標車速に減速させるための制動力を発生させて減速制御を行う。エンジンブレーキによる減速の補助を実行するように設定されていた場合、車両がカーブ区間の開始位置Pに到達した時点にて変速部46に制御信号を出力し、カーブ区間の開始位置Pから一定曲率区間の開始位置に到達するまでの距離内で車両の現在車速を目標車速に減速させるために好ましい変速比となるように変速比を制御する。
【0062】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、測定値の分散に応じて信頼度評価法を選択して評価対象値の信頼度を評価する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、処理手順は上述の図3に示す手順に限定されず、車両制御を行った後に測定値を記録媒体30の測定値情報30bとして記録する構成としても良い。
【0063】
また、各評価対象値に対応する測定値が一定回数以上測定されるまで本発明における信頼度の評価を実行しない構成を採用しても良い。さらに、車両制御を実行するたびに評価対象を測定するための測定値について分散を特定する構成の他、各評価対象値についての分散の大小を予め特定しておき、特定された分散の大小を示す情報と評価対象値とを対応づけて地図情報30aを構成してもよい。
【0064】
さらに、評価対象値の信頼度に基づく制御を行う対象は制動部や変速部に限定されず、スロットル制御部等を利用して車両の加速制御を行う構成としても良い。また、減速制御において制動部、変速部、スロットル制御部に対する制御を組み合わせてもよい。すなわち、評価対象値の信頼度が高いほど組み合わせの制御による制御量(減速度等)が大きくなるように構成してもよい。
【0065】
さらに、評価対象値は、車両に搭載されたセンサによって測定することが可能な値であるとともに予め地図情報の一部として記録媒体に記録された情報である。従って、評価対象値は、地図情報を構成する地物等に関する値であればよく、評価対象値は上述のようなカーブ区間の開始位置や曲率に限定されない。例えば、停止線等の地物の位置や道路幅などのように大きさや量を特定する値であっても良いし、地物の存在を示すフラグなどのように特定の意味を示す値であってもよい。
【0066】
さらに、測定値は各種のセンサに基づいて特定することができ、画像解析によって車両や路面上の地物の位置、速度、加速度などを測定するためのカメラ等を本発明のセンサとしても良い。
【0067】
さらに、上述のように、測定値の性質に応じて分散を特定する構成の他、センサの種類や測定値に対する演算処理の方法等に応じて予め分散の大きさを対応づけておき、測定値の分散が当該センサの種類や測定値に対する演算処理の方法等に対応づけられた分散であるとみなす構成としても良い。むろん、測定値を複数回取得して分散を実際に演算しても良い。さらに、分散を実際に解析する構成ではなく、評価対象に応じて信頼度評価法を選択する構成としても良い。
【0068】
さらに、分散に応じて信頼度評価法の組み合わせが選択される構成であっても良いし、特定の信頼度評価法が選択される構成であっても良い。例えば、測定値の分散に応じて、最も測定される確率が高い測定値と評価対象値との差分に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法と、評価対象値との差分が所定値以上である範囲で測定値が測定される確率に基づいて信頼度を評価する信頼度評価法とのいずれかを選択する構成を想定する。この構成において、前者の信頼度評価法が、小さい分散に対応した信頼度評価法の一部を構成してもよいし全部を構成してもよいし、また、後者の信頼度評価法が、大きい分散に対応した信頼度評価法の一部を構成してもよいし全部を構成してもよい。
【0069】
さらに、評価対象値の信頼度が低く、分散が小さく、かつ、最も高い確率で測定される測定値の測定確率が所定値以上である場合、最も高い確率で測定される測定値に基づいて評価対象を示す値を特定し、当該特定された値によって地図情報の評価対象値を更新する構成としても良い。この構成は、例えば、図1に示す信頼度評価プログラム21に対して信頼度の低い評価対象値の更新を行う地図情報更新部を追加することによって実現することができる。すなわち、評価対象値の信頼度が低いと判定された場合、制御部20は、地図更新部の処理により、当該評価対象値が示す評価対象を測定した測定値の分散が小さいか否かを判定する。当該測定値の分散が小さいと判定された場合、制御部20は、さらに、最も高い確率で測定される測定値の測定確率を取得し、当該測定確率が所定値以上であるか否かを判定する。そして、最も高い確率で測定される測定値の測定確率が所定値以上であった場合、当該測定値によって地図情報30aの評価対象値を更新する。この構成によれば、地図情報の信頼度を高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…信頼度評価プログラム、21a…評価対象値取得部、21b…測定値取得部、21c…信頼度評価部、22…車両制御プログラム、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…測定値情報、30c…評価法情報、41…受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ステアリングセンサ、45…加速度センサ、46…変速部、47…制動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された記録媒体に記録された地図情報から信頼度の評価対象となる評価対象値を取得する評価対象値取得手段と、
前記車両に搭載されたセンサによって前記評価対象値を測定するための測定値を複数回取得する測定値取得手段と、
前記評価対象値の信頼度を前記測定値に基づいて評価する信頼度評価法を前記測定値の分散に応じて選択し、選択した前記信頼度評価法によって前記評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価手段と、
を備える信頼度評価装置。
【請求項2】
前記評価対象値との差分が所定の閾値以内である前記測定値を参照して前記信頼度を評価する前記信頼度評価法であって、前記所定の閾値が異なる複数の前記信頼度評価法が予め定義されており、
前記信頼度評価手段は、前記測定値の分散に応じて複数の前記信頼度評価法の中から前記信頼度評価法を選択する、
請求項1に記載の信頼度評価装置。
【請求項3】
前記信頼度評価手段は、前記測定値の分散が小さいほど狭い範囲の前記測定値を参照して前記信頼度を評価する前記信頼度評価法を選択する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の信頼度評価装置。
【請求項4】
前記信頼度評価手段は、前記測定値の分散に応じて
最も測定される確率が高い前記測定値が前記評価対象値から第1の範囲内に存在する場合に当該最も測定される確率が高い前記測定値が測定される確率である第1の確率に基づいて前記信頼度を評価する信頼度評価法と、
前記評価対象値を含む第2の範囲内の前記測定値が測定される確率である第2の確率に基づいて前記信頼度を評価する信頼度評価法と
のいずれかを選択する、
請求項2または請求項3のいずれかに記載の信頼度評価装置。
【請求項5】
前記信頼度評価手段は、前記測定値の分散に応じて
最も測定される確率が高い前記測定値と前記評価対象値との差分に基づいて前記信頼度を評価する信頼度評価法と、
前記評価対象値との差分が所定値以上である範囲で前記測定値が測定される確率に基づいて前記信頼度を評価する信頼度評価法と
のいずれかを選択する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の信頼度評価装置。
【請求項6】
前記信頼度評価手段は、前記測定値を取得する前記センサに前記車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれない場合、前記車両の運転者の操作を測定するセンサが含まれる場合よりも前記測定値の分散が小さいとみなす、
請求項1〜請求項5に記載の信頼度評価装置。
【請求項7】
前記信頼度評価手段は、複数回取得した前記測定値に基づいて当該測定値の分散を取得する、
請求項1〜請求項6に記載の信頼度評価装置。
【請求項8】
前記信頼度が低く、かつ、前記分散が小さく、かつ、最も高い確率で測定される前記測定値の測定確率が所定値以上である場合、前記最も高い確率で測定される前記測定値を特定し、当該測定値によって前記地図情報の前記評価対象値を更新する地図情報更新手段を備える、
請求項1〜請求項7に記載の信頼度評価装置。
【請求項9】
車両に搭載された記録媒体に記録された地図情報から信頼度の評価対象となる評価対象値を取得する評価対象値取得手段と、
前記車両に搭載されたセンサによって前記評価対象値を測定するための測定値を複数回取得する測定値取得手段と、
前記評価対象値の信頼度を前記測定値に基づいて評価する信頼度評価法を前記評価対象に応じて選択し、選択した前記信頼度評価法によって前記評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価手段と、
を備える信頼度評価装置。
【請求項10】
車両に搭載された記録媒体に記録された地図情報から信頼度の評価対象となる評価対象値を取得する評価対象値取得工程と、
前記車両に搭載されたセンサによって前記評価対象値を測定するための測定値を複数回取得する測定値取得工程と、
前記評価対象値の信頼度を前記測定値に基づいて評価する信頼度評価法を前記測定値の分散に応じて選択し、選択した前記信頼度評価法によって前記評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価工程と、
を備える信頼度評価方法。
【請求項11】
車両に搭載された記録媒体に記録された地図情報から信頼度の評価対象となる評価対象値を取得する評価対象値取得機能と、
前記車両に搭載されたセンサによって前記評価対象値を測定するための測定値を複数回取得する測定値取得機能と、
前記評価対象値の信頼度を前記測定値に基づいて評価する信頼度評価法を前記測定値の分散に応じて選択し、選択した前記信頼度評価法によって前記評価対象値の信頼度を評価する信頼度評価機能と、
をコンピュータに実現させる信頼度評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−17989(P2011−17989A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163860(P2009−163860)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】