説明

信頼性に優れたビア孔の形成方法

【課題】 高出力のエネルギーの炭酸ガスレーザーで銅箔に孔あけし、金属メッキ又は導電塗料を埋め込む前に、ビア孔部銅箔に付着した樹脂層を完全に除去した小径のビア孔を形成し、信頼性に優れたビア孔を有する高密度プリント配線板を得る。
【解決手段】 プリント配線板の表層にある1層目の銅箔と、ビア部の銅箔層とを電導導通するためのマイクロビア孔を炭酸ガスレーザーであけるに際し、表層銅箔の上に孔あけ補助材料を配置し、炭酸ガスレーザーの出力20〜60mJ/パルス で照射して、ビア孔の、少なくとも1層の銅箔層を除去し、その後、出力5〜35mJ/パルスにてビア孔底部の銅箔に1ショット照射後、好適には表裏の銅箔を平面的に削り、少なくとも気相法にてビア孔の側面および底部となる銅箔表層の樹脂を完全除去してビア孔を形成し、金属メッキ又は導電性塗料で最外層とビア部の銅層とを電導導通させる。
【効果】 気相法でビア孔底部の銅箔表面の樹脂を完全に除去することにより、表層銅箔とビア部の銅層との接続信頼性に優れたビア孔を形成することができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント配線板内の接続信頼性に優れたビア孔形成方法に関する。得られたプリント配線板は、主として小型の半導体プラスチックパッケージ用として使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージ等に用いられる高密度の多層プリント配線板は、ビア孔をメカニカルドリル、或いは炭酸ガスレーザーであけていた。メカニカルドリルであける場合、内層の銅箔厚みが薄い又は多層板の厚みばらつきが大きいと、内層銅箔の途中でビア孔を止めることが困難であり、時としてその下の銅箔層に到達して不良の原因となっていた。炭酸ガスレーザーで孔あけする場合、ビア孔の側面および底面の銅箔表面には1μm程度の樹脂層が残り、銅メッキ前にデスミア処理を施す必要があった。この場合、孔径が小さい場合や、液の孔底部への接触が悪い場合、デスミア処理が不十分となり、銅メッキのビア孔底部への接着不良のため、導通不良が発生し、信頼性に劣る結果となっていた。加えて、デスミア処理には、一般のスルーホール等のデスミア処理時間に比べて2〜3倍の時間を要し、作業性が悪い等の欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点、欠点を解決した、気相でビア孔部を処理して樹脂皮膜層を除去する、ビア孔の表層銅箔と底部銅箔との接続信頼性が格段に優れた、ビア孔の形成方法を提供する。
【0004】
【発明が解決するための手段】本発明は、両面に銅箔を有する両面銅張板、又は多層板の表面の銅箔の、少なくとも炭酸ガスレーザーを照射する面に、酸化金属処理を施すか、或いは融点900℃以上で、且つ結合エネルギー300kJ/mol以上の金属化合物、カーボン粉又は金属粉の1種或いは2種以上と有機物よりなる塗膜或いはシートを配置し、この上から20〜60mJ/パルスから選ばれた炭酸ガスレーザーエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振で、少なくとも表層の銅箔に孔をあけ、ビア孔底部の銅箔まで達した後、5〜35mJ/パルスから選ばれたエネルギーで、最後にビア孔底部、又は両面板の対向したビア孔底部となる外層銅箔裏面に1ショット照射した後、ビア孔内を気相処理して、ビア孔底部および内層銅箔孔あけ側面の銅箔表面に残存する樹脂層を完全に除去し、ついで金属メッキ又は導電塗料で最外層とビア孔底部の銅層とを導通するビア孔の形成方法を提供する。気相処理する前に、機械的研磨、或いは薬液にて銅箔表面を処理することが好ましい。薬液で処理する場合、両面銅張板を用いたビア孔形成では、ビア孔底部の銅箔が溶解してなくならないようにする。炭酸ガスレーザーを直接照射してビア孔をあけると、表面銅箔孔あけ部には銅箔のバリが発生する。機械研磨では取れにくいため、薬液でエッチングするのが好ましい。銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、同時に孔部に張り出した銅箔バリをもエッチング除去し、銅箔が薄くなるために、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショートやパターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板を作成することができた。また、気相処理することにより、銅箔表層に付着した樹脂層を完全に除去することができ、作業性に優れ、金属メッキ、又は導電塗料で最外層とビア孔部の銅箔とを接続する場合、接続面積も大きく、ビア孔の表層と内部の銅箔接続信頼性に優れたものが得られる。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、少なくとも2層以上の銅の層を有する両面銅張板又は多層板の表層に、金属メッキを施す前に少なくとも気相で処理してビア孔底部および中間銅表面に残存する樹脂層を除去し、表層とビア孔部との接続信頼性に優れたビア孔を形成する方法に関する。表面に直接炭酸ガスレーザーを照射してビア孔を形成する方法としては、特に限定はなく、例えば表面の銅箔に金属酸化処理を施すか、融点900℃以上で且つ結合エネルギーが300mJ/パルスの金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉の1種、或いは2種以上を3〜97容積%含む樹脂組成物を銅箔表面に塗布して塗膜とするか、又はシートとして配置し、この上から直接高出力の20〜60mJ/パルス から選ばれた炭酸ガスレーザーのエネルギーを直接照射して、少なくとも表面の銅箔に孔をあけ、その後、5〜35mJ/パルスから選ばれたエネルギーで、ビア孔底部の銅箔に最後に1ショット照射し、その下のビア孔底部および中間にある内層、又は両面板の対向した反対側の外層銅箔表層の一部分を加工し、その後、機械的研磨、或いは薬液による銅箔表面処理を行なって銅箔表層を一般には厚さ3〜7μmまでにすると同時に、孔部に発生したバリをも除去する。機械的研磨の場合、一般の研磨機械が使用可能であるが、孔部にバリが発生する場合、研磨を数回行うなどのことが必要であるが、板が伸びて寸法変化率が大きくなる等のこともあり、薬液で表層をエッチングすると同時に、バリをも溶解除去する方法で銅箔表面処理を行う方が好ましい。銅箔の両表面を平面的にエッチング除去することにより、銅箔が薄くなるために、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショート、パターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板が作成できる。ビア孔底部の樹脂層は、場合によっては炭酸ガスレーザーで完全に除去できないこともあり、またデスミア処理を施した場合も、隅々に完全に行きわたらず、完全に付着樹脂層を除去できない場合がある。そのために、金属メッキ前に、一般に公知の方法、例えばプラズマ、近紫外線等の気相法でビア孔底部銅箔表面の隅々まで全て樹脂層を除去し、その後、ビア孔部に金属メッキを施すか、又は導電塗料を埋め込んで、最外層とビア孔内部の銅箔とを接続することにより、ビア孔の接続信頼性に優れたプリント配線板を得ることができた。エッチングする薬液としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、特開平02-22887、同02-22896、同02-25089、同02-25090、同02-59337、同02-60189、同02-166789、同03-25995、同03-60183、同03-94491、同04-199592、同04-263488号公報で開示された、薬品で金属表面を溶解除去する方法(SUEP法と呼ぶ)による。エッチング速度は、一般には0.02〜1.0μm/秒で行う。
【0006】本発明で使用される、少なくとも2層以上の銅の層を有する両面板、多層板は、好適にはガラス布を基材とし、熱硬化性樹脂組成物に染料又は顔料を配合して黒色とし、且つ、無機絶縁性充填剤を10〜60wt%混合して、均質とした構成の銅張積層板が用いられる。又、多層板は、好適には、内層板にガラス布基材の両面銅張積層板を加工して使用し、必要により表面を金属酸化銅処理を施し、上下に無機或いは有機布基材プリプレグ、樹脂シート、樹脂付き銅箔、又は塗料による塗膜を配置し、必要により銅箔を置き、加熱、加圧、好ましくは真空下に積層成形する。以上の銅張板のほかに、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム等の、一般に公知の高耐熱のフィルムの両面板、或いは多層板も使用し得る。
【0007】基材としては、一般に公知の無機、有機の織布、不織布が使用できる。具体的には、無機基材としては、E、S、D、Mガラス等の繊維の織布、不織布が挙げられる。有機繊維としては、液晶ポリエステル、全芳香族ポリアミド等の繊維の織布、不織布が挙げられる。
【0008】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、 多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。出力の高い炭酸ガスレーザー照射による加工でのスルーホール形状の点からは、ガラス転移温度が150℃以上の熱硬化性樹脂組成物が好ましく、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0009】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0010】これらのほかに特公昭41-1928、同43-18468、同44-4791、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149号公報等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いら得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0011】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0012】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57-005406号公報に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。
【0013】これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0014】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelasticなゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、スチレン-イソプレンゴム、ポリエチレン-プロピレン共重合体、4-フッ化エチレン-6-フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の有機の充填剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0015】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0016】無機の絶縁性充填剤としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、天然シリカ、焼成シリカ、アモルファスシリカ等のシリカ類;ホワイトカーボン、チタンホワイト、アエロジル、クレー、タルク、ウオラストナイト、天然マイカ、合成マイカ、カオリン、マグネシア、アルミナ、パーライト等が挙げられる。添加量は、10〜60重量%、好適には15〜55重量%である。
【0017】また、炭酸ガスレーザーの照射で、光が分散しないように樹脂に黒色の染料又は顔料を添加することが好ましい。粒子径は、均一分散のために1μm以下が好ましい。染料、顔料の種類は、一般に公知の絶縁性のものが使用され得る。添加量は、0.1〜10重量%が好適である。さらには、繊維の表面を黒色に染めたガラス繊維等も使用し得る。
【0018】最外層の銅箔は、一般に公知のものが使用できる。好適には厚さ3〜18μmの電解銅箔等が使用される。
【0019】好適に使用されるガラス布基材補強銅張積層板は、まず上記ガラス布基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させてBステージとし、一般にはガラス含有量30〜80重量%となるようにプリプレグを作成する。次に、このプリプレグを所定枚数用い、上下に銅箔を配置して、加熱、加圧下に積層成形し、両面銅張積層板とする。この銅張積層板の断面は、ガラス以外の樹脂と無機充填剤が均質に分散していて、レーザー孔あけした場合、孔が均一にあく。また、黒色であるために、レーザー光が分散しにくく孔壁の凹凸が少なくなる。
【0020】両面銅張積層板、或いは多層板の表層の炭酸ガスレーザーを照射する銅箔面上に、酸化金属処理を施すか、融点900℃以上で、且つ結合エネルギーが300kJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉を3〜97容積%含む樹脂組成物の塗膜、或いはシートを配置して、直接炭酸ガスレーザーを照射することにより、孔あけを行う。
【0021】本発明で使用する補助材料の1つである、融点900℃以上で、且つ結合エネルギーが300kJ/mol 以上の金属化合物とは、一般に公知のものが使用できる。例えば酸化物としてのチタニア類;マグネシア類;鉄酸化物類;亜鉛酸化物類;コバルト酸化物類;スズ酸化物類等我挙げられ、非酸化物としては、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化ケイ素、窒化チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。その他、カーボンも使用できる。これらは1種或いは2種以上が組み合わせて使用される。さらには、一般に公知の金属粉が使用される。しかしながら、水、溶剤に溶解した場合に、発熱、発火するものは使用しない。これらは、平均粒子径が、5μm以下、好適には1μm以下のものが使用される。
【0022】補助材料の有機物としては、特に制限はないが、混連して銅箔表面に塗布、乾燥した場合、或いはシートとした場合、剥離欠落しないものを選択する。好ましくは、樹脂が使用される。特に、環境の点からも水溶性の樹脂、例えばポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、澱粉等の、一般に公知のものが好適に使用される。
【0023】金属酸化物と有機物よりなる組成物を作成する方法は、特に限定しないが、ニーダー等で無溶剤で高温にて練り、シート状に押し出す方法、溶剤或いは水に溶解する樹脂組成物を用い、これに酸化金属粉を加え、均一に撹拌、混合して、これを用い、塗料として銅箔表面に塗布、乾燥して膜を作る方法、フィルムに塗布してシート状にする方法、ガラス基材等に含浸、乾燥して得られるシート等が挙げられる。フィルムに塗布した水溶性樹脂組成物は、孔あけする前に加熱ロールで銅張板にラミネートして密着させて使用するのが良い。
【0024】炭酸ガスレーザーは、赤外線波長域にある9.3〜10.6μmの波長が一般に使用される。出力 は20〜60mJ/パルスで、まず、少なくとも表面の1層目の銅箔を加工して孔をあけ、そのままビア孔底部の銅箔部までレーザーを照射してから、出力を5〜35mJ/パルスから選ばれるエネルギーに落として、最後の1ショットで、ビア孔底部とする銅箔の表層を、銅箔を突き抜けないように樹脂層及び銅箔の一部を加工するのが好ましい。もちろん、1層目の銅箔を加工後、すぐ5〜35mJ/パルスから選ばれるエネルギーに変えて樹脂層を加工し、ビア孔底部に最後の1ショットを照射してから終了することも可能である。一般には、ガラス布基材銅張積層板等の絶縁層厚み100μm当たり1〜10ショットで加工する。照射後に両面の銅箔を薬液で平面的に溶解するとともに、孔部に発生したバリをも溶解除去する。その後、気相法でビア孔底部およびビア孔側面に露出した銅箔表面の残存樹脂を完全に除去する。気相法としては、一般に公知の方法が使用できるが、処理時に銅箔が溶解するプラズマ処理は、予め表面の銅箔層を厚めにしておき、処理後に銅箔厚みが3〜7μmとなるようにする。気相処理としては一般に公知の処理が使用可能である。例えば、プラズマ処理、低圧紫外線処理等が挙げられる。プラズマは高周波電源により分子を部分的に励起し、電離させた低温プラズマを用いる。これは、イオンの衝撃を利用した高速の処理、ラジカル種による穏やかな処理が一般に使用される。処理ガスとしては反応性ガス、不活性ガスが用いられる。反応性ガスとしては主にアルゴンガスを使用する。アルゴンガス等を使用し、物理的な表面処理を行う。物理的な処理はイオンの衝撃を利用して物理的に表面をクリーニングする。低圧紫外線は、波長が短い領域の紫外線である。例えば、184.9nm、253.7nmがピークとなる短波長域の紫外線を照射し、樹脂層を分解除去する。その後、樹脂表面が疎水化されるため、小径孔の場合、超音波を併用して湿潤処理を行い、銅メッキを行うことが好ましい。湿潤処理としては特に限定しないが、例えば過マンガン酸カリ等の水溶液、あるいはソフトエッチング等が採用される。
【0025】ビア孔のメッキは、一般に公知の銅メッキ等が使用し得る。ビア孔内部を気相処理した場合、その後のメッキ液とのぬれ性が良くない場合がある。この場合、ぬれ性を良くするために、気相処理後にデスミア処理等の湿潤処理を1回程度行う。又、ビア孔の中に導電性塗料を入れ、上下銅箔層の導通を取るようにする。導電性塗料としては、一般に公知のものが使用し得る。具体的には、銅ペースト、銀ペースト、はんだペースト、その他、はんだ類が使用し得る。
【0026】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
実施例12,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン900部、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン100部を150℃に熔融させ、攪拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ<株>製)400部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN-220F、住友化学工業<株>製)600部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛0.4部を加え、溶解混合し、これに無機絶縁性充填剤(商品名:BST#200、平均粒径0.4μmとしたもの、日本タルク<株>製)500部、及び黒色顔料8部を加え、均一攪拌混合してワニスAを得た。このワニスを厚さ100μmのガラス織布に含浸し150℃で乾燥して、ゲル化時間(at170℃)120秒、ガラス布の含有量が57重量%のプリプレグ(プリプレグB)を作成した。厚さ18μmの電解銅箔を、上記プリプレグB1枚の上下に配置し、200℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み100μmの両面銅張積層板Cを得た。一方、平均粒径0.86μmの酸化銅粉800部を、ポリビニルアルコール粉体を水に溶解したワニスに加え、均一に撹拌混合した。これを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、厚さ20μm塗布し、110℃で30分間乾燥して、金属酸化物含有量20容積%、融点83℃のフィルム付きシートを形成した。これを両面銅張積層板Cの上に温度90℃でラミネートし、その上から、間隔400μmで、孔径100μmの孔を900個直接炭酸ガスレーザーで、出力40mJ/パルスで2ショットかけ、その後、出力を7mJ/パルスに落として、1ショットでビア孔底部で、かつ外層となる銅箔の裏面内側表層部を加工除去し、全部で70ブロックのビア孔(計63,000孔)をあけた。その後、表裏面を全面SUEP法にて処理し、孔周辺の銅箔バリを溶解除去すると同時に、表面の銅箔も7μmまで溶解した。これをプラズマ処理機械に入れ、酸素を流しながら10分処理した後に表面銅箔厚みを5μmとし、ビア孔底部の銅箔表面に付着した樹脂層を除去した。この後、デスミア処理を1回行ってから、この板に銅メッキを15μm施した。このビア孔の箇所に径250μmのランドを形成し、ビア孔底部の銅箔をボールパッドとし、これを表裏交互に、計900孔つないで、ヒートサイクル試験を行なった。又、回路(ライン/スペース=50/50μmを200個)を形成し、この上に、ソルダーボール用ランド等を形成し、少なくとも半導体チップ、ボンディング用パッド、ハンダボールパッドを除いてメッキレジストで被覆し、ニッケル、金メッキを施し、プリント配線板を作成した。このプリント配線板の評価結果を表1に示す。
【0027】実施例2エポキシ樹脂(商品名:エピコート5045)1400部、エポキシ樹脂(商品名:ESCN220F)600部、ジシアンジアミド70部、2-エチル-4-メチルイミダゾール2部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、さらに実施例1の絶縁性無機充填剤を500部加え、強制攪拌して均一分散し、ワニスDを得た。これを厚さ100μmのガラス織布に含浸、乾燥して、ゲル化時間150秒、ガラス布含有量55重量%のプリプレグ(プリプレグE)、ゲル化時間180秒、ガラス布含有量44重量%のプリプレグ(プリプレグF)を作成した。このプリプレグEを1枚使用し、両面に18μmの電解銅箔を置き、190℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して両面銅張積層板Fを作成した。絶縁層の厚みは100μmであった。この上下に回路を形成し、酸化銅処理を施した後、上下にプリプレグFを配置し、その両外側に12μmの電解銅箔を置き、同様に積層成形して、両面銅箔付き4層板とした。一方、平均粒子径0.7μmの銅粉を、ポリビニルアルコール溶液に溶解し、銅粉が70容積%のワニスGとした。これを上記の両面銅張4層板の上に、厚さ40μmとなるように塗布し、110℃で30分間乾燥して塗膜とした。この上から、炭酸ガスレーザーの出力40mJ/パルスにて2ショットで銅箔に径100μmの孔をあけ、その後、13mJ/パルスにて1ショットで同様に加工し、後は実施例1においてプラズマ処理の代わりに近紫外線処理を行い、その他は同様にしてビア孔が形成された多層プリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0028】比較例1、2実施例1の両面銅張積層板、実施例2の両面銅張多層板を用い、表面SUEP処理未実施、及びビア孔底部のプラズマ、近紫外線処理を行わずに後は同様にしてプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0029】比較例3実施例2において、ドリル径100μmのメカニカルドリルを用い、表層からすぐ真下の銅箔まで孔を同様に63,000孔あけた。この孔の全部の断面を確認したが、図2に示すような孔が、13%存在した。他は内層銅箔を突き抜けて止まっていた。SUEP処理を行なわずに、デスミア処理を1回実施してから、同様にしてプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0030】比較例4実施例2の両面銅張多層板を用い、この表面の銅箔を実施例1と同様に、400μm間隔で63,000孔、径100μmでエッチングしてあけ、炭酸ガスエネルギー18mJ/パルスにて3パルスであけた。孔側壁にガラスのケバが出ていた。SUEP処理を行なわずに、公知のデスミア処理を2回繰り返して施し、同様に銅メッキを15μm付着させ、表裏に回路形成し、同様に加工してプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0031】比較例5実施例2において、炭酸ガスレーザーの出力45mJ/パルス で3パルスにて両面銅張多層板に同様にしてビア孔をあけた。これは内層の銅箔の中央を突き破っており(図3)、これにSUEP処理をかけ、同様にメッキを施し、プリント板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0032】
表1 項 目 実 施 例 比 較 例 1 2 1 2 3 4 5 ビア孔底部 ほぼ ほぼ ほぼ ほぼ 内層銅箔 ほぼ 内層銅箔 平坦 平坦 平坦 平坦 孔あき 平坦 孔あきパターン切れ 0/200 0/200 57/200 57/200 54/200 55/200 0/200及ショート(個)
ガラス転移温度 235 160 235 160 160 16 160 (℃)
ビア孔・ヒート サイクル試験 (%)
100サイクル 2.0 2.4 >50 >50 6.0 3.0 2.9 300サイクル 2.5 2.7 - - 7.3 8.7 5.5 500サイクル 2.4 2.7 - - 9.9 23.7 11.3 1000サイクル 2.6 2.9 - - 12.6 - -孔あけ加工時間 10 10 10 10 630 10 10 (分)
【0033】<測定方法>1) ビア孔底部断面を観察した。
2) ビア孔あけ時間炭酸ガスレーザー及びメカニカルドリルで孔あけを行なった場合の、63,000孔/枚孔をあけるのに要した時間を示した。
3) 回路パターン切れ、及びショート実施例、比較例で、ライン/スペース=50/50μm のパターンを拡大鏡で200パターン目視にて観察し、パターン切れ、及びショートしているパターンの合計を分子に示した。
4) ガラス転移温度DMA法にて測定した。
5) ビア孔ヒートサイクル試験ビア孔を表裏交互に900孔つなぎ1サイクルが、260℃・ハンダ・浸せき30秒→ 室温・5分で、所定サイクル実施し、抵抗値の変化の最大値を示した。
【0034】
【発明の効果】プリント配線板の表層にある1層目の銅箔と、ビア孔部にある銅箔間を電導導通するためのマイクロビア孔を炭酸ガスレーザーであけるに際し、補助材料を表層に使用し、炭酸ガスレーザー出力20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーにて銅箔に孔をあけた後、最後にビア孔底部の銅面に出力5〜35mJ/パルスから選ばれたエネルギーにて1ショット照射後、表裏の銅箔を3〜7μmまで薬液で削り、少なくとも気相法でビア孔底部を処理後に金属メッキを行うか、導電塗料を埋め込んで最外層とビア部の銅層とを導通する構造のビア孔が形成されたプリント配線板とすることにより、信頼性に優れたビア孔を形成することができた。また、加工速度はドリルであけるのに比べて格段に速く、生産性についても大幅に改善できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の炭酸ガスレーザーによるビア孔あけ[(1)、(2)、(3)]、SUEPによるバリ除去[(4)]及び銅メッキ[(5)]の工程図である。
【図2】比較例3の炭酸ガスレーザーによる同様の工程図である。
【図3】比較例5の炭酸ガスレーザーによる同様の工程図である。
【符号の説明】
a 酸化金属粉含有樹脂シート
b 銅箔
c ガラス布基材熱硬化性樹脂層
d 40mJ/パルス の炭酸ガスレーザー
e 発生したバリ
f 13mJ/パルスの炭酸ガスレーザー
g ビア孔底部の銅箔表層
h ビア孔銅メッキ部
i メカニカルドリル
j 4層目(下側外層銅箔)ヘ突き抜けた孔
k 高出力の炭酸ガスレーザーで内層銅箔を突き抜けた箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント配線板の表層にある1層目の銅箔と、ビア部にある銅箔とを電導導通するためのマイクロビア孔を炭酸ガスレーザーであけるに際し、少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板の表層銅箔の上に、酸化金属処理を施すか、融点900℃以上で且つ結合エネルギー300kJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉又は金属粉の1種或いは2種以上を3〜97容積%含む有機物からなる塗膜又はシートを配置して、炭酸ガスレーザーの出力20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーを直接照射して、ビア孔の、少なくとも1層目の銅箔層を除去し、その後、出力5〜35mJ/パルスから選ばれたエネルギーで、最後にビア孔の底部銅箔に1ショット照射した後、ビア孔内を少なくとも気相処理して、ビア孔部銅箔表面に残存する樹脂層を完全に除去して、金属メッキ又は導電塗料で最外層とビア孔部の銅層とを導通することを特徴とする信頼性に優れたビア孔の形成方法。
【請求項2】 該ビア孔内を気相処理する前に両面の銅箔表面を薬液で平面的に溶解すると同時に、表面に発生したビア孔部のバリをも溶解除去することを特徴とする請求項1記載のビア孔の形成方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−49464(P2000−49464A)
【公開日】平成12年2月18日(2000.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−227694
【出願日】平成10年7月28日(1998.7.28)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】