説明

偏心補償を有する二重エンコーダ構造を備えた回転記録装置

【課題】記録媒体を担持するターンテーブルの回転に使用されるスピンドル・モータの正確な制御を提供し、また単一のエンコーダシステムの欠点を克服した正確なクロック信号、位置信号または速度信号を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、電子ビーム記録装置などの回転記録デバイスが二重エンコーダ構造を備えている。第1のエンコーダはスピンドル・モータ・コントローラとして使用され、スピンドルの第1の端部に配置される。第2のエンコーダは、記録表面に隣接してターンテーブルに取り付けられ、パターンを基板に記録するための位置源、速度源またはクロック源として使用される。ディジタル位相固定ループを使用したディジタル・クロック発生システムによって、より正確に取り付けられたスピンドル制御エンコーダに対して、第2のエンコーダの取付けの偏心が測定および補償される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能記録デバイスを用いて情報を記録する分野に関するものであり、より詳細には、二重エンコーダ構造を採用した回転可能記録デバイスの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハード・ディスク・ドライブなどの磁気ディスク・ドライブは、磁気媒体で被覆された1または複数のディスク上にデータを記憶している。読出し/書込みのために、磁気媒体の表面は、ディスク・タイプの媒体上においてディスクの中心の周りで互いに同心に配置された概ね平行な多数のデータ・トラックを有している。
【0003】
アクチュエータ・アームがトランスデューサすなわち「ヘッド」を所望のトラック上に位置決めし、ヘッドがトラックにデータを書き込み、あるいは読み出しを行う。ディスクが回転すると、ディスクの磁気媒体の専用サーボ・フィールドに記憶された位置情報すなわち「サーボ・データ」に基づいた閉ループ・サーボ・システムの制御の下で、アクチュエータ・アームがヘッドをトラックの両端の間で半径方向に移動させる。サーボ・フィールドは、ディスク表面のデータ・セクタと交互に配置することができ、あるいはサーボ情報を記憶するための専用のものである別個のディスク表面に配置することができる。ヘッドがサーボ・フィールドの上を通過すると、ヘッドは所望のトラックの中心線に対するヘッドのロケーションを現すフィードバック信号を生成する。サーボ・システムは、このロケーションに基づいてアクチュエータ・アームを移動させてヘッドの位置を調整し、それによってヘッドが、所望のトラック上の位置および/または差し当たって必要なトラック内の所望のロケーションに向かって移動する。
【0004】
そのようなハード・ディスク・ドライブの製造における要件の1つは、磁気ディスク上のサーボ・パターンの形成に関するものであり、このサーボ・パターンは、典型的には同心円パターンである。磁気接触転写に使用されるマスタ・スタンパ上にサーボ・トラックを形成するためのマスタリング・システムが、レーザ・ビームを用いるステップ並進メカニズム、ならびに電子ビームを用いる連続並進メカニズムの両方に使用されてきた。サーボ・データを基板に記録している間、基板は、スピンドルの頂部に配置された回転ターンテーブルの上に配置される。スピンドル制御モータは、コントローラから提供される制御信号に従ってスピンドルを回転させる。サーボ・トラックは、電子ビームもしくはレーザ・ビームへの露光によって記録される。
【0005】
フォーマット信号発生器が、電子ビーム発生器またはレーザ・ビーム発生器を制御するために使用され、それによってディスクがターンテーブルと共に回転するのにしたがってディスク上にパターンが形成される。フォーマット信号発生器の制御、延いてはディスク上への記録制御は、モータに配置されたエンコーダからのエンコーダ信号に基づいて実施することができる。
【0006】
エンコーダは通常、スピンドルの底部端に設けられる。ターンテーブルは、スピンドルの底部端とは反対側の端部に取り付けられる。この位置に配置されたエンコーダを使用することによって正確なモータ制御が提供される。すなわち、スピンドルの底部に配置されたエンコーダは、スピンドルの回転軸線に対して実質的に偏心がしないように取り付けることができ、これはエンコーダ信号に基づいてモータを極めて正確に制御することを可能にする。
【0007】
正確に心出しされた取り付けおよび正確なモータ制御信号を提供したとしても、記録中におけるフォーマット信号生成プロセスのためのクロック、位置または速度源を提供するためにエンコーダを使用する場合、エンコーダをモータの底部に配置することは問題である。その理由は、わずかではあるが記録システムの回転部分に生じる機械的な振動のためである。特に、ターンテーブルが配置されたスピンドルの頂部の振動と、エンコーダが配置されたスピンドルの底部の振動とは同期していない。サーボ・トラックに使用される長さは極端に短く、例えば50nmから90nmであるため、わずかな外乱であってもトラック間位相誤差の問題の原因になる。
【0008】
しかしながら、エンコーダをスピンドルの頂部の記録表面に隣接するように単純に移動させるだけでは適切な解決法は提供されない。これはなぜなら、実際には、記録表面に隣接させ且つ実質的に完全な中心位置に取り付けたエンコーダを提供することは極めて困難であることが分かっているためである。したがってターンテーブルに提供された記録表面に隣接するエンコーダは回転の際に偏心するので、記録を制御するための正確なクロック、位置、または速度信号を提供するためにはこのエンコーダ信号は適切ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
記録媒体を担持するターンテーブルの回転に使用されるスピンドル・モータの正確な制御を提供し、且つ単一のエンコーダシステムの欠点を克服した正確なクロック信号、位置信号、または速度信号を提供する構造が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この必要性および他の必要性は、スピンドル・モータとスピンドル・モータによって駆動されるスピンドルとを有する電子ビーム記録装置を提供する本発明の実施例によって満足される。スピンドルはスピンドル・モータまで延び、また第1および第2の端部を有している。スピンドルの第2の端部に、中心回転軸線を有するターンテーブルが取り付けられる。第1のエンコーダがスピンドルの第1の端部に取り付けられ、また第2のエンコーダがターンテーブルの上に取り付けられる。コントローラが第1および第2のエンコーダおよびスピンドル・モータに結合され、スピンドル・モータを制御し、また第1および第2のエンコーダから受け取るエンコーダ信号の関数として記録クロック信号を生成する。
【0011】
二重エンコーダを使用することにより、第1のエンコーダからのエンコーダ信号を関数としてスピンドル・モータを正確に制御することができ、また第2のエンコーダから受け取るエンコーダ信号の関数として記録クロック信号が提供される。特定の実施例では、コントローラは、ターンテーブル上の第2のエンコーダの、ターンテーブルの中心回転軸線に対する偏心取り付けを補償するためのロジックを含む。
【0012】
また上述した必要性は、スピンドルと、スピンドルの第1の端部に取り付けられた第1のエンコーダと、スピンドルの第2の端部に取り付けられたターンテーブルと、ターンテーブルに取り付けられた第2のエンコーダと、第1および第2のエンコーダに結合されたコントローラとを有する回転記録デバイスを制御する方法であって、第1および第2のエンコーダからの信号に従って回転記録デバイスを制御する方法を提供する本発明の他の実施例によって満足される。この方法は、スピンドルの中心回転軸線に対する第2のエンコーダの偏心を決定するステップと、第2のエンコーダからの信号内の決定された偏心を補償するステップとを含む。
【0013】
また上述した必要性は、ターンテーブルのところに取り付けられたエンコーダを備えたターンテーブルおよびモータ構成と、エンコーダの偏心取り付けに起因するエンコーダからの信号を補償するための手段とを有する電子ビーム記録装置を提供する本発明の他の実施例によって満足される。
【0014】
本発明の上記および他の特徴、観点および利点は、添付の図面を参照して行う本発明についての以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【実施例】
【0015】
本発明は、サーボ情報などの情報の記録ディスクへの正確な記録に関連する問題を扱い、解決するものである。そのような記録システムの振動に起因する問題は、二重エンコーダシステムを備えた本発明の実施例によって解決される。一方のエンコーダを使用してスピンドル・モータを制御することができ、同時に他方のエンコーダを使用して記録デバイスの信号フォーマット発生器によって使用されるクロック源信号(あるいは位置もしくは速度信号)を提供することができる。エンコーダはターンテーブルの上で偏心して取り付けられているけれども、偏心補償ロジックが、エンコーダによって提供されるエンコーダ信号から正確なクロック信号を生成することを可能にする。したがってシステムに振動が存在していてもスピンドル・モータの正確な制御、および記録のための正確なクロック信号の生成が達成される。
【0016】
図1は、本発明の実施例による電子ビーム記録装置あるいは他の回転記録デバイスの一部を側断面図で示したものである。図2は、二重エンコーダ構造の詳細を示したもので、これについては追って考察する。いくつかのマークが、ビーム記録システム10によってディスク表面21に形成される。記録システム10は、ディスク・ワークピース21と記録ビームとの間に相対運動を生じさせる。この運動の間にビームは表面に衝突し、またシステムがビームを変調させてディスクの表面を所望のパターンで露光する。ビームは、例えばサーボ・マーク・パターンに従ってディスク21上のフォトレジスト表面にサーボ・マークを形成するように変調される。
【0017】
システム10は電子ビーム記録システムであり、しかしながら、例えば異なるコンポーネントを備えたレーザ・ビーム記録システムなどの他のタイプの記録システムであってもよい。システム10は、ターンテーブル31と、記録ビームを生成および操作するための電子ビーム・コラム33とを含む。ターンテーブル31は、その垂直軸線の周りでB方向に回転するようにディスク21を支持している。そのような電子ビーム記録システムの実施例は、Unaxis Nimbus社から入手することができる。当業者は電子ビーム・コラム・デバイスの構造および動作に概ね精通していると思われるが、考察の完全性を期すために、電子ビーム・コラム・デバイスの概要について説明する。
【0018】
図に示す実施例では、電子ビーム・コラム33は、熱電界放出(TFE)電子源35およびサプレッション・アセンブリ37を含む。電子ビーム・コラムは、電子エクストラクタ(電子引出し器)39をさらに含んでいてもよい。適切な電圧をTFE源35、サプレッション・アセンブリ37および電子エクストラクタ39に印加すると、これらのエレメントが協働して電子流が生成し、これは電子ビーム・コラム33内でさらに処理される。電子流は第1の三重エレメント・レンズ41を通過した後、ブランキング・プレート43およびブランキング開口45を通過する。電子流は次に、例えば図の第2の三重レンズ47で示すような1または複数の追加のレンズを通過する。
【0019】
ビームの位置は偏向板49に電圧を印加することによって制御することができる。電子ビーム・コラム内における偏向板の、他の電子ビーム・コラムのエレメントに対する正確なロケーションは重要ではない。図に示す実施例では、偏向板はブランキング開口45とレンズ41の間に配置されているが、他のコラム構造では他の配置が使用される。
【0020】
電子ビーム・コラム33のエレメントに適用される信号の形状および電圧は、電子流を特定のアプリケーションのための所望の形状の変調ビームに収束および整形し、且つ所望のエネルギー・レベルを持たせる役割を果たしている。例えば電子ビーム・コラム33のエレメントに一組の信号を適用することにより、電子ビーム・コラムは、特定のサイズおよび深さのサーボ・パターンをディスク21の表面のロケーションに形成する変調ビームを生成する。図1には、説明の便宜上、電子ビーム・コラム33を通して移動するビームが直線で示されている。実際の操作では、ビームは、所望の方法で回転テーブル31上のサンプル上に収束するために、電子ビーム・コラム33の様々なエレメントを通過するのにしたがって収束および発散するであろう。
【0021】
電子ビーム記録システム30は、電子ビーム・コラム33によって使用される様々な信号であって、それによってビームを変調および偏向させてディスク21上に露光されるパターンをフォーマットするための信号を生成するフォーマット信号発生器61をさらに含む。フォーマッタ61は、所望のビームを生成するために電子ビーム・コラム33のコンポーネントに適用される様々な信号を生成するための、1または複数の信号発生器を形成する回路機構を本質的に有している。
【0022】
フォーマット信号発生器61によって生成される信号の一例は、電子ビームのエネルギー・レベルを制御し、延いては記録されるパターンの露光を制御するブランキング・プレート43に適用されるフォーマット変調信号(すなわちビーム「フォーマット」信号)である。コントローラ30がターンテーブル31の回転速度を制御する。フォーマット信号発生器61は、ターンテーブル・コントロール63にエンコーダ信号を提供し、ターンテーブル31の回転動作を調整する。ターンテーブル・コントロール63は、ターンテーブルの位置および/または速度を指示する1または複数のフィードバック信号をフォーマット信号発生器61に提供してもよい。例えばターンテーブル・コントロール63は、ターンテーブル、またはディスク上のマークまたはフィーチャが基準点を通過する毎にインデックス信号を提供してもよい。このインデックス信号は回転速度に関する情報を提供する。例えば1分当たりのインデックス・パルスの数は、1分当たりの回転数(RPM)を表している。インデックス信号のパルスとパルスの間の時間は、1回転の周期を表している。回転の開始点(例えば12時)と基準点の間の角度は既知の定数である。したがってインデックスは、連続する回転の開始点および終了点を決定するために使用することも可能である。
【0023】
上で考察したように、スピンドル・モータの底部端に同心に取り付けられた単一のエンコーダの使用は、ターンテーブルが取り付けられたスピンドルの頂部の振動のために十分に正確な情報を提供できない。これはトラック間位相誤差を導く。図2の実施例に示すような二重エンコーダ構造を使用することで、これらの欠点は克服される。
【0024】
図2では便宜上、コラム33のエレメントは単一のブロックで示す。スピンドル・モータ14が、コイル16、および中心軸線上で回転するスピンドル18を有している。スピンドル18はスピンドル軸受20によって支持されている。
【0025】
第1のエンコーダ22がスピンドル18の第1の端部(すなわちスピンドル18の底部端)に配置されている。第2のエンコーダ24がターンテーブルの記録表面31に隣接する位置、すなわちスピンドル18の第2の端部に配置されている。センサ26が第1および第2のエンコーダ22、24と共に動作し、エンコーダ信号をコントローラ30に提供する。
【0026】
コントローラ30は、速度制御ロジック32、ディジタル・クロック・ロジック34および偏心補償ロジック36を含む。速度制御ロジック32は、スピンドル・モータ14の速度を制御する。追って明らかになるように、通常、速度制御ロジック32は、記録中、第1のエンコーダ22の箇所にあるセンサ26から受け取る信号に基づいてスピンドル・モータ14の速度を制御する。
【0027】
ディジタル・クロック・ロジックはその出力信号をフォーマット信号発生器に提供し、それによってクロック信号に応じた電子ビームを生成するように電子ビーム記録装置コラム33を制御する。追ってさらに説明するように、ディジタル・クロック・ロジック34は、偏心補償ロジック36を使用して、第2のエンコーダ24のターンテーブル31に対する取り付けの偏心を補償する。第2のエンコーダ24の方が記録表面21に近いため、第1のエンコーダ22に関連する信号に頼る代わりに、センサ26を介して第2のエンコーダ24から引き出される信号を使用することによって、より正確なクロック信号を生成することが可能になる。偏心補償ロジック36は、テーブル38に記憶された偏心情報などの記憶情報を使用して偏心補償を実行する。
【0028】
第2のエンコーダ24をサーボ・パターンなどのパターンをディスク基板21に記録するための位置、速度またはクロック源として使用するためには、この第2のエンコーダ24の偏心を測定しなければならない。本発明の特定の実施例では、第2のエンコーダ24の取り付けの偏心は、より正確に取り付けられた第1のエンコーダ22に対して測定される。図4は、本発明の特定の実施例による、偏心を測定および補償するためのプロセスを示したものである。このプロセスは、ステップ70から開始される。ステップ72で、第1のエンコーダ22に関連した信号に従ってスピンドル・モータ14が制御される。第1のエンコーダ22を使用して、パルス・タイミングの反復可能成分を測定する。すべてのエンコーダは許容差を有し、すなわちガラス基板上に置かれるマークとマークの間の距離をどのくらい厳密に制御することができるかという許容差を有している。マークがディスク上に配置されるとこれらのマークは固定されるが、距離の変動(エンコーダが回転したときには周波数成分の変動)がパルス・タイミングの変動を示す(この変動はインデックス位置に対して固定されている)。これは、インデックスで参照されるタイミングの変動量が常に同じになるので、「反復可能成分」と呼ばれる。
【0029】
ステップ74では、ステップ72で第1のエンコーダ22を使用して実行する制御および測定と同様に、第2のエンコーダ24を使用してスピンドル・モータ14の速度が制御され、同じく第2のエンコーダ24を使用して反復可能成分が測定される。
【0030】
次にステップ76で第1のエンコーダ22を使用してスピンドル・モータ14を制御し、第2のエンコーダ24を使用してパルス・タイミングの反復可能成分を測定する。
【0031】
ステップ78では、上記測定に基づいて第2のエンコーダ24の取り付けの偏心の程度が決定される。次にステップ80で、この偏心情報を使用してテーブルを公式化することができる。したがってテーブルには、ターンテーブル31の中心回転軸線に対する第2のエンコーダ24の取り付けの偏心に関する記憶情報が含まれる。
【0032】
ステップ82では、比較的正確に取り付けられた、スピンドル・モータ14のスピンドル制御エンコーダとして動作する第1のエンコーダ22、およびディジタル・クロック発生システムを使用して記録が実行される。ディジタル・クロック発生システムは、記録中、フォーマット信号発生器61に信号を提供する。第2のエンコーダ24は、ターンテーブル31内で記録表面21に隣接して配置されているので、記録表面21およびターンテーブル31からはるかに遠くに離れて配置された第1のエンコーダ22より正確なクロック信号を提供することができ、したがって基板とエンコーダの間に生じ得る重大な機械的誤差および一時的な変動(またはズレ)を回避することができる。この重大な機械的誤差および一時的な変動を回避することができるため、基板に記録されるパターンが不正確になることが防止される。しかしながら同時に、偏心補償ロジック36、およびテーブル38に記憶された情報を使用して、第2のエンコーダ24の取り付けの偏心が補償される。
【0033】
図3は、ディジタル・クロック・ロジック34および偏心補償ロジック36をブロック図の形で示したものである。ロジック34および36は、第1および第2のエンコーダ22、24からエンコーダ信号を受け取る。上で説明したように、実際の記録動作の間、第2のエンコーダ24からの信号を使用してディジタル・クロック源が生成される。
【0034】
ディジタル・クロック・ロジック34および偏心補償ロジック36は、カスタム・フィルタ(ループ補償器)42に結合されたディジタル位相検出器40を含む。数値制御発振器44がフィルタ42の出力を受け取り、クロックの掛算に使用されるN分割掛算器46の入力部にその出力を提供する。ディジタル・クロック・ロジック34および偏心補償ロジック36は、必要に応じてテーブル38を参照して偏心補償を提供することができる。
【0035】
二重エンコーダ構造を用いた本発明の実施例により、電子ビーム記録装置または他の回転記録デバイスにおけるマスタ基板または他の媒体上への高品質なパターンの正確な記録が達成される。記録表面からいくらか距離を隔てて配置されるスピンドル制御システムのエンコーダは、スピンドルエンコーダと基板表面の間の機械的な隔たりによって基板とエンコーダの間に重大な機械的誤差および瞬間的な変動を生じる可能性があり、そのため基板に記録されるパターンが不正確になるので、パターンをマスタ基板に記録するための一次クロック源としては使用されない。その代わりに本発明は、記録表面に隣接するターンテーブルの上に配置された第2のエンコーダであって、基板にパターンを記録するための位置、速度もしくはクロック源として使用することができる第2のエンコーダを提供する。第2のエンコーダの取り付けの偏心は、測定した偏心を補償するためのディジタル位相固定ループを用いたディジタル・クロック発生システムを使用して、スピンドル制御エンコーダに対する偏心を測定することにより補償することができる。
【0036】
以上、本発明について詳細に説明および例証してきたが、以上の詳細な説明および例証が単なる説明目的のものに過ぎず、また単なる実施例に過ぎず、本発明を何ら制限するものではないことを明確に理解されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲の各請求項によってのみ制限されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ディスク・ワークピース上にサーボ・マークを形成するための電子ビーム・タイプの記録装置システムの側面図であって、電子ビーム・デバイスの特定の構成要素を断面で示す図である。
【図2】図1に示す電子ビーム記録デバイスの部分断面図であって、本発明の実施例によるモータ、コントローラおよびエンコーダ構成をより詳細に示す図である。
【図3】本発明の一実施例に従って構築された、図1および図2に示す電子ビーム記録装置に使用するための偏心補償ロジックを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例による、図1および図2に示す電子ビーム記録装置などの回転記録デバイスを制御する方法を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ビーム記録システム
14 スピンドル・モータ
16 コイル
18 スピンドル
20 スピンドル軸受
21 ディスク表面(ディスク・ワークピース、ディスク、記録表面、ディスク基板)
22、24 エンコーダ
26 センサ
30 電子ビーム記録システム
30 コントローラ
31 ターンテーブル(回転テーブル、記録表面)
32 速度制御ロジック
33 電子ビーム・コラム(電子ビーム記録装置コラム)
34 ディジタル・クロック・ロジック
35 熱電界放出(TFE)電子源
36 偏心補償ロジック
37 サプレッション・アセンブリ
38 テーブル
39 電子エクストラクタ
40 ディジタル位相検出器
41、47 三重エレメント・レンズ(三重レンズ)
42 カスタム・フィルタ(ループ補償器)
43 ブランキング・プレート
44 数値制御発振器
45 ブランキング開口
46 N分割掛算器
49 偏向板
61 フォーマット信号発生器(フォーマッタ)
63 ターンテーブル・コントロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル・モータと、
前記スピンドル・モータによって駆動されるスピンドルであって、前記スピンドル・モータを通して延び、且つ第1および第2の端部を有しているスピンドルと、
前記スピンドルの前記第2の端部に取り付けられ、且つ中心回転軸線を有しているターンテーブルと、
前記スピンドルの前記第1の端部に取り付けられる第1のエンコーダと、
前記ターンテーブル上に取り付けられる第2のエンコーダと、
前記第1および第2のエンコーダならびに前記スピンドル・モータに結合されるコントローラであって、前記スピンドル・モータを制御し、且つ前記第1および第2のエンコーダから受け取るエンコーダ信号の関数として記録クロック信号を生成するコントローラと
を有する電子ビーム記録装置。
【請求項2】
前記コントローラが、前記ターンテーブル上の前記第2のエンコーダの、前記ターンテーブルの前記中心回転軸線に対する偏心取り付けを補償するためのロジックを含む請求項1に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記スピンドル・モータの速度を制御するための速度制御ロジックを含む請求項2に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項4】
前記コントローラが、ディジタル・クロック信号を生成するためのディジタル・クロック発生ロジックを含む請求項3に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項5】
電子ビーム発生器と、該電子ビーム発生器に結合されるフォーマット信号発生器であって、前記電子ビーム発生器の出力を変調するフォーマット信号発生器とをさらに有する請求項4に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項6】
前記フォーマット信号発生器は、前記ディジタル・クロック信号を入力として受け取るように結合され、且つ前記電子ビーム発生器の出力を前記ディジタル・クロック信号の関数として変調する請求項5に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項7】
前記速度制御ロジックが、前記第1のエンコーダのみからのエンコーダ信号の関数として制御される請求項6に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項8】
前記ディジタル・クロック発生ロジックが、前記第2のエンコーダのみからのエンコーダ信号の関数として前記ディジタル・クロック信号を生成する請求項7に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項9】
偏心取り付けを補償するための前記ロジックが、前記第2のエンコーダの取り付けの、測定された偏心に関する記憶情報を含む請求項8に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項10】
前記ディジタル・クロック発生ロジックが、前記記憶情報にしたがって前記第2のエンコーダの偏心取り付けを補償するための前記ロジックに結合された位相固定ループ(PLL)を含む請求項9に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項11】
前記コントローラが、前記第2のエンコーダのみからのエンコーダ信号の関数として位置信号を生成する位置信号発生ロジックを含み、前記フォーマット信号発生器は、前記位置信号を入力として受け取るように結合され、且つ前記電子ビーム発生器の出力を前記位置信号の関数として変調する請求項5に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項12】
前記コントローラが、前記第2のエンコーダのみからのエンコーダ信号の関数として速度信号を生成する速度信号発生ロジックを含み、前記フォーマット信号発生器は、前記速度信号を入力として受け取るように結合され、且つ前記電子ビーム発生器の出力を前記速度信号の関数として変調する請求項5に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項13】
スピンドルと、前記スピンドルの第1の端部に取り付けられる第1のエンコーダと、前記スピンドルの第2の端部に取り付けられるターンテーブルと、前記ターンテーブル上に取り付けられる第2のエンコーダと、前記第1および第2のエンコーダに結合されて、前記第1および第2のエンコーダからの信号に従って前記回転記録デバイスを制御するコントローラとを有する回転記録デバイスを制御する方法であって、
前記スピンドルの中心回転軸線に対する前記第2のエンコーダの偏心を決定するステップと、
前記第2のエンコーダからの信号内の決定された偏心を補償するステップと
を含む回転記録デバイス制御方法。
【請求項14】
前記決定ステップが、
前記第1のエンコーダからの信号にしたがって前記スピンドルの回転を制御し、且つ前記第1のエンコーダを使用してタイミング信号の反復可能成分を測定するステップと、
前記第2のエンコーダからの信号にしたがって前記スピンドルの回転を制御し、且つ前記第2のエンコーダを使用してタイミング信号の反復可能成分を測定するステップと、
前記第1のエンコーダからの信号にしたがって前記スピンドルの回転を制御し、且つ前記第2のエンコーダを使用してタイミング信号の反復可能成分を測定するステップと
を含む請求項13に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項15】
前記決定ステップが、複数の前記測定に基づくテーブルを作成するステップをさらに含み、該テーブルは、前記決定された偏心に関する記憶情報を含む請求項14に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項16】
前記補償ステップが、前記第2のエンコーダからの信号を位相固定ループを通して通過させ、且つ前記テーブルに記憶された情報を使用して前記第2のエンコーダからの信号を修正するステップを含む請求項15に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項17】
記録動作の間、前記第1のエンコーダからの信号が前記スピンドルの回転を制御し、前記第2のエンコーダからの前記修正済み信号が源信号として使用される請求項16に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項18】
前記源信号が、位置信号源、速度信号源およびクロック信号源のうちの少なくともいずれか1つである請求項17に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項19】
前記回転記録デバイスが電子ビーム記録装置である請求項18に記載の回転記録デバイス制御方法。
【請求項20】
ターンテーブルおよびモータ構成であって、前記ターンテーブルのところにエンコーダが取り付けられたターンテーブルおよびモータ構成と、
前記エンコーダの取り付けの偏心に起因する前記エンコーダからの信号を補償する手段と
を有する電子ビーム記録装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−92724(P2006−92724A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−267616(P2005−267616)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】