偽信号抑制処理方法および偽信号抑制処理回路並びに撮像装置
【課題】高輝度の被写体に起因した帯状ノイズを抑制する機能を持つ撮像装置得において、より適切な処理ができるようにする。
【解決手段】画素列別平均値検出部254で、高輝度の被写体に起因した帯状ノイズに対応した画素列別平均値信号S14を抽出する。平均値検出部252で暗電流成分を検出して背景信号抑制処理部256でこれを抑制する。コアリング処理部258でOB画素信号のばらつき成分を抑制し、クリップ処理部260でコアリング処理信号S16の所定レベル以上である部分を無効化し、ローパスフィルタ処理部262でクリップ処理信号S17に含まれる高周波成分を除去する。補正量調整部264は、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変して帯状ノイズ補正信号S19を生成する。帯状ノイズ補正信号S19を用いて帯状ノイズを抑制することで、補正残しや過補正を解決し、適切な帯状ノイズ抑制を実現する。
【解決手段】画素列別平均値検出部254で、高輝度の被写体に起因した帯状ノイズに対応した画素列別平均値信号S14を抽出する。平均値検出部252で暗電流成分を検出して背景信号抑制処理部256でこれを抑制する。コアリング処理部258でOB画素信号のばらつき成分を抑制し、クリップ処理部260でコアリング処理信号S16の所定レベル以上である部分を無効化し、ローパスフィルタ処理部262でクリップ処理信号S17に含まれる高周波成分を除去する。補正量調整部264は、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変して帯状ノイズ補正信号S19を生成する。帯状ノイズ補正信号S19を用いて帯状ノイズを抑制することで、補正残しや過補正を解決し、適切な帯状ノイズ抑制を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像に現われるスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状のノイズ成分を補正する偽信号抑制処理方法および偽信号抑制処理回路並びにこの帯状のノイズ成分を補正する機能を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子(以下撮像デバイスともいう)で被写体の画像を撮像する場合に、高輝度の光が入射されると、スミア現象やブルーミング現象に起因した帯状のノイズ成分(偽信号)が発生し得ることが知られている。特に、固体撮像素子として、光電変換部(受光画素)の列を相互に分離し、それぞれの光電変換部ごとに転送シフトレジスタを並べたインターライン転送(ILT:interline transfer)形式の構造を採っているCCDエリアイメージセンサの場合に顕著に現われ得ることが知られている(たとえば非特許文献1,2参照)。
【0003】
【非特許文献1】竹村裕夫、“CCDカメラ技術入門”、初版、コロナ社、1997年12月15日、p.80〜83
【非特許文献2】竹村裕夫、“CCDカメラ技術”、初版、ラジオ技術杜、昭和61年11月3日、p.51〜53
【0004】
図10は、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号の概要を説明する図である。撮像デバイスの受光側の面は、図示を割愛した光電変換部が行方向および列方向に(つまり2次元状に)多数配列されて画素部(撮像部)11aが構成される。ここで、画素部11aにおける有効画像領域(有効部)と、光学的黒を与える基準画素領域との関係は、一例として図示のようになっている。
【0005】
すなわち、図10(A)に示すように、画素部11aは、画像を取り込む画素が配列された有効領域である有効画素領域(有効部)11bの他に、光学的黒(OB:Optical Black)を与える基準画素領域11cが有効画素領域11bの周囲に配され、さらに、ダミー画素が配列されたダミー画素領域11dが基準画素領域11cの外側に設けられて構成される。
【0006】
一例として、基準画素領域11cとしては、垂直列方向の上下に数行(たとえば1〜10行)分の光学的黒を与える基準画素が配列され、また、有効画素領域11bを含む水平行における左右に数画素〜数10画素(たとえば3〜40画素)分の光学的黒を与える基準画素が配列される。またダミー画素領域11dは、垂直列方向の上下の一方(図では上側)に数行(たとえば1〜10行)分が設けられる。
【0007】
光学的黒を与える基準画素は、その受光面側が、フォトダイオードなどからなる電荷生成部に光が入らないように、遮光される。なお、光学的黒を与える基準画素は、光学的に遮光したものに限らず、垂直シフトレジスタのみを配置するものや、垂直シフトレジスタの駆動により無信号部分を得る擬似的な構成のものも含むものとする。この基準画素からの画素信号は、先ず映像信号の黒基準に使われる。
【0008】
ここで、ハイライトなどの高輝度被写体を撮像したとき、その高輝度の光を受光した光電変換部(高輝度発生源11eという)を基点として、縦縞状のノイズ成分(以下帯状ノイズ11fともいう)が視覚的に検知されるようになる。この帯状ノイズ11fの発生要因は、一般にブルーミング現象とスミア現象とに区別される。
【0009】
ブルーミング現象は、電荷生成部(光電変換部)の光電変換素子に強い光が入射すると、蓄積できる最大電荷量以上の電荷が生成されることで、画素が飽和して、その電荷が光電変換素子(高輝度発生源11e)から溢れ出し、この溢れた電荷が隣接画素や信号線あるいは垂直転送CCDなどの周辺部に漏れ込む現象である。
【0010】
ブルーミング現象が生じると、撮像画像に白い帯状または白い円状パターンが観察され、画質が劣化する。すなわち、光電変換素子に飽和光量以上の強い光が入射すると信号電荷が溢れ、周囲の画素に余剰電荷が入り込み、光の当たらない部分までが明るく膨らむ現象がブルーミング現象であり、隣接する光電変換素子に余剰電荷が入り込むと、ちょうど花が咲いたように局囲に白い部分が円弧状に広がるノイズとして現われ、またCCD垂直転送部(垂直転送レジスタ)に漏れ込むと垂直方向に広がって垂直の縞(帯状ノイズ11f)となって画質を損なうことになる。
【0011】
一方、スミア現象は、信号線やCCDへの光の混入や、半導体基板内部で発生した信号電荷が拡散により広がり、隣接画素や転送部に混入するために発生する現象である。特に、光の漏れ込みにより、高輝度発生源11eであるスミア発生源の上下方向すなわち垂直方向に縞状の明るい帯(帯状ノイズ11f;特にスミア帯)が発生し、信号電荷を垂直転送部を通して読み出すことに起因して生じるものである。
【0012】
すなわち、垂直転送部は極力完全に遮光が行なわれ、入射光の影響がないように設計されるが、100%完全に遮光するということは難しく、たとえば境界部分での遮光の不完全、多重反射による側面からの光の混入、あるいは遮光膜の不完全などの要因によって、僅かな光の混入は避けられない構造になっている。このため、強いスポット光が有効画素領域11bに照射されることで、本来遮光されているはずの垂直転送レジスタに光が漏れ込み、垂直転送レジスタで直接に電荷が生じてしまう。
【0013】
スミア現象は、基本的には光の強さに無関係に一定の割合で発生するものであり、量が少ないときは目視されないが、強い光が入った場合には、その白点(高輝度発生源11e)が上下に縞状に伸びて現われて、帯状ノイズ11fとなって視認されるようになる。
【0014】
たとえば、インターライン転送形式の構造を採っているCCDエリアイメージセンサの場合には、高輝度発生源11eから溢れた電荷が垂直転送レジスタに漏れ込んだ電荷や垂直転送レジスタで発生した電荷によって、その高輝度の光(高輝度発生源11e)を反映した画像の上方および下方に白い帯状の領域を生じて、垂直方向に輝度の高いスジとなって見える現象となる。
【0015】
すなわち、遮光された光電変換素子部(OB画素)である基準画素領域11cの画素信号は入射光が無いため光に対する電荷は発生しないので、この部分に現れる画素信号はノイズである。垂直転送レジスタに溢れた電荷は、垂直方向の画素信号にも漏れ込むため、遮光された基準画素領域11c(光電変換素子部;OB画素)の画素信号にも漏れ込む。
【0016】
要するに、スミア現象の生ずる原因は、被写体が電荷生成部や当該電荷生成部で生成された信号電荷を保持する電荷蓄積部で対処(保持・蓄積)可能な量を超えるほどに高輝度であるため、有効画素領域11bの電荷生成部や電荷蓄積部だけではなく、垂直シフトレジスタ内にも信号電荷とは異なる不要な電荷(不正電荷)を生じ、この不正電荷が電荷生成部からの信号電荷に合成されて画素信号として転送されることにある。
【0017】
このため、図10(B)に示すように、画素部11aの有効画素領域11bに対応する撮像範囲の中に高輝度被写体である高輝度発生源11eが存在する場合に、これをCCD固体撮像素子10で撮像すると、その結果は、図10(A)に示すように、高輝度発生源11eの上方および下方に、帯状ノイズ11fが生じてしまう。
【0018】
このような高輝度の光が入射されたときに発生する、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号である帯状ノイズ11fを軽減もしくは除去(以下纏めて抑制ともいう)するため、従来の撮像装置では、固体撮像素子の有効画素領域11bから読み出される有効な画素信号から所定の手法によって抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ信号成分を取り除くような補正処理を行なう補正回路を設ける仕組みを採ることがある(たとえば特許文献1参照)。
【0019】
【特許文献1】特開平6−268922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1に記載の補正方法においては、基準画素領域11cのOB画素を含むライン(OBライン)の出力を利用してノイズ信号成分を抽出しており、この抽出したノイズ信号成分を有効な画素信号から取り除く処理を単純に行なうと、縦縞ノイズが抑制されるものの、過度な補正を行なってしまい、映像信号が高輝度に張り付いてしまっている画素信号の発生部分や境界部分に不自然な縞模様が視認される現象が発生するということが分かった。あるいは、他のノイズ成分が発生してしまい、結果としては補正しきれない、補正残しの状態が生じてしまうことが分かった。過度な補正とならないようにした場合にも、同様に、補正残しの状態が生じてしまう。
【0021】
たとえば、OBラインの出力を利用して抽出したノイズ信号成分には、スミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わす成分の他に暗電流成分も含まれるし、信号出力値にばらつきがあり、このスミア現象やブルーミング現象に関係しない暗電流成分やばらつき成分を帯状ノイズ11fの一部であるとして有効画素信号から差し引くと、適切な補正ができない。たとえば過度・不適切な補正になる、あるいはスミア現象やブルーミング現象の発生していない場所で誤補正する場合がある。
【0022】
また、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を抽出して有効画素信号から取り除く処理を行なうと、抽出されるノイズ成分が過度に大きくなり、高輝度発生源11eの上下(帯状部分)の帯状ノイズ11fが取り除かれるだけでなく、帯状部分が過度に低レベルになってしまう現象(過度な補正)が見られる。つまり、スミア現象やブルーミング現象による帯状ノイズ11fが発生する部分に不自然な縞模様が出てしまう現象が発生する。
【0023】
また、帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、OBラインでの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれに起因して、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう。つまり、スミア現象やブルーミング現象による帯状ノイズ11fが発生する境界付近に不自然な縞模様(筋状のノイズ)が出てしまう現象が発生する。
【0024】
また、スミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fの信号レベルは、比較的高輝度の高輝度発生源11eの場合には高レベルの縦筋(白筋)で現われるが、比較的低い輝度の高輝度発生源11eの場合には中レベルの縦筋で現われる。中レベルの縦筋の帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、比較的適切にその中レベルの帯状ノイズ11fを除去できるが、高レベルの縦筋の帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、前述の超高輝度の部分と同様に、過補正になることがある。つまり、映像信号が高輝度に張り付いてしまっている画素信号の部分、すなわちスミア現象やブルーミング現象による高レベルの帯状ノイズ11fが発生する部分に不自然な縞模様が出てしまう現象が発生する。
【0025】
このように、従来の補正処理の仕組みでは、補正残しや誤補正が発生し、高精度な帯状ノイズのキャンセルが実現できなかった。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スミア現象やブルーミング現象によって生じる偽信号(帯状ノイズ11f)を抑制する補正処理を行なっても、不自然な縞模様が生じる現象あるいは補正残しを緩和することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を求め、この求めた適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうようにした。
【0028】
具体的には、本発明に係る第1の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求め、このばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0029】
また、本発明に係る第2の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化(クリップ処理)した適正なノイズ成分を求め、この所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0030】
また、本発明に係る第3の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をした適正なノイズ成分を求め、この帯域制限処理をした適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0031】
また、本発明に係る第4の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を調整することで、補正量を調整することとする。つまり、帯状ノイズに対する補正レベルを、帯状ノイズの信号レベルに応じて可変する。そして、この補正量が調整された補正信号を使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0032】
また、本発明に係る第5の偽信号抑制処理方法では、前述の第1〜第4の手法を順次適用するようにした。すなわち、高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、抽出されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理を行ない(第1の偽信号抑制処理方法の処理)、コアリング処理にてばらつき成分を抑制したノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分を求め(第2の偽信号抑制処理方法の処理)る。
【0033】
さらに、所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をしたノイズ成分を求め(第3の偽信号抑制処理方法の処理)、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、抽出されたノイズ成分もしくは帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を調整することで、補正量を調整することとする(第4の偽信号抑制処理方法の処理)。
【0034】
そして、最後に、この補正量が調整された補正信号を使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0035】
なお、第5の偽信号抑制処理方法においては、コアリング処理に先立って、抽出されたノイズ成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出し、ノイズ成分と背景の偽信号成分とに基づいて、ノイズ成分から背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める。なお、このような処理は、第5の偽信号抑制処理方法に適用するだけでなく、第1〜第4の偽信号抑制処理方法にも適用できる。
【0036】
この後に、コアリング処理においては、背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を処理対象として、この背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるようにするのがよい。第1〜第4の偽信号抑制処理方法に適用する場合、コアリング処理に代わるそれぞれの処理(たとえばクリップ処理や帯域制限処理など)においては、背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を処理対象とすればよい。
【0037】
本発明に係る偽信号抑制処理回路や撮像装置は、上記本発明に係る偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、補正信号適正化処理部が求めた適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部とを備えるものとした。
【0038】
具体的には、本発明に係る第1の偽信号抑制処理回路や第1の撮像装置は、上記本発明に係る第1〜第4の何れかの偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に撮像デバイスから出力される撮像信号に含まれる、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応するノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部を先ず備える構成とした。
【0039】
また、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第2のノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第3のノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第4のノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部、および、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくはノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号の補正量を調整する補正量調整部(それぞれの機能部は補正信号適正化処理部の一例である)のうちの少なくとも1つの機能部を備えるようにした。
【0040】
さらに、これら少なくとも1つの機能部から出力される信号を補正信号として用いて、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部を備える構成とした。
【0041】
ここで、前述の補正信号適正化処理部の一例である各機能部のうちの任意の組合せによる何れか複数の機能部を備えた構成とする場合においては、ノイズ成分抽出部の後段に、コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部、の順となるように各機能部を設ける。そして、後段の機能部は、前段の機能部から出力された処理済みのノイズ信号を対象として、それぞれが担当する処理を行なうようにする。
【0042】
本発明に係る第2の偽信号抑制処理回路や第2の撮像装置は、上記本発明に係る第1〜第4の全ての偽信号抑制処理方法、すなわち上記本発明に係る第5の偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、前述の補正信号適正化処理部の一例である各機能部を全て備える構成とした。その配置順は、ノイズ成分抽出部の後段に、コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部、の順となるように各機能部を設ける。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に対して、たとえば、ばらつき成分を抑制する(第1の偽信号抑制処理)、抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化する(第2の偽信号抑制処理)、抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する(第3の偽信号抑制処理)、あるいは、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変するなどして、より適切な補正信号を求め、このより適切な補正信号を用いて補正処理を行なうようにした。
【0044】
これにより、スミア現象やブルーミング現象によって生じる偽信号(帯状ノイズ)を抑制する補正処理を行なっても、過度な補正や誤補正を防止できるようになり、高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度の帯状ノイズ部分での不自然な縞模様が生じる現象を緩和することができる。また、高輝度に張り付いていない帯状ノイズに対しても、良好な補正を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0046】
<デジタルスチルカメラの全体構成;CCDタイプ>
図1は、本発明に係る撮像装置(カメラシステム)の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の撮像装置は、固体撮像素子10の一例であるたとえばインターライン転送(IT)方式で全画素読出しが可能なCCD固体撮像素子11、被写体Zの光学像を取り込む撮像レンズ50、およびCCD固体撮像素子11を駆動する駆動制御部96を有するカメラモジュール3と、カメラモジュール3により得られる撮像信号に基づいて映像信号を生成しモニタ出力したり所定の記憶メディアに画像を格納したりする本体ユニット4とを備えてなるデジタルスチルカメラ1として構成されている。なお、カメラモジュール3と本体ユニット4とを一体化した形態での撮像装置モジュールとして構成するようにしてもよい。
【0047】
なお、このデジタルスチルカメラ1は、具体的には、フレーム読出方式を用いた静止画撮像動作時にカラー画像を撮像し得るカメラとして適用されるようになっている。また、フレーム読出方式としては、CCD固体撮像素子11と組み合わせることで、一般的な2フィールド読出方式に限らず、3フィールド、4フィールド、あるいは5フィールド、さらにはそれ以上など様々フィールド数の態様の読出方式を適用可能に構成されている。また、静止画撮像モードに限らず、間引き読みを利用して30フレーム/秒に近いフレームレート(たとえば10フレーム以上/秒)での動画撮影モードも用意されている。
【0048】
カメラモジュール3内の駆動制御部96には、CCD固体撮像素子11を駆動するための各種のパルス信号を生成するタイミング信号生成部40と、このタイミング信号生成部40からのパルス信号を受けて、CCD固体撮像素子11を駆動するためのドライブパルスに変換するドライバ(駆動部)42と、CCD固体撮像素子11やドライバ42などに電源供給する駆動電源46が設けられている。
【0049】
カメラモジュール3内の固体撮像素子10(本例ではCCD固体撮像素子11)と駆動制御部96とにより固体撮像装置2が構成される。固体撮像装置2は、CCD固体撮像素子11と駆動制御部96とが、1枚の回路基板上に配されたもの、あるいは1つの半導体基板上に形成されたものとして提供されるものであるのがよい。
【0050】
CCD固体撮像素子11は、その構成例については図示を割愛するが、たとえば、半導体基板上に、画素(ユニットセル)に対応して受光素子の一例であるフォトダイオードなどからなるセンサ部(感光部;フォトセル)が多数、水平(行)方向および垂直(列)方向において2次元マトリクス状に配列されている。これらセンサ部は、受光面から入射した入射光をその光量に応じた電荷量の信号電荷に変換して蓄積する。
【0051】
センサ部は、カラー画像撮像用途として、光が入射されるフォトダイオードなどの受光面には、複数色の色フィルタの組合せからなる色分解フィルタの何れかの色フィルタが設けられる。一例としては、いわゆるベイヤ(Bayer)配列の基本形のカラーフィルタを用いて、正方格子状に配されたセンサ部(単位画素)が赤(R),緑(G),青(B)の3色カラーフィルタ(原色フィルタ)に対応するように配される。あるいは、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y),緑(G)の4色を組み合わせた補色フィルタ構成のものとしてもよい。
【0052】
信号処理として、原色信号処理を行なう構成のものとする場合、原色フィルタとすれば、CCD固体撮像素子11にて得られる撮像信号(複数色の画素信号の組合せ)から、赤(R),緑(G),青(B)の原色信号を分離する原色分離部を割愛することができる。
【0053】
またCCD固体撮像素子11は、センサ部の垂直列ごとに6相もしくは8相駆動に対応する複数本の垂直転送電極が設けられる垂直CCD(Vレジスタ部、垂直転送部)が配列される。垂直CCDの転送方向は図中縦方向であり、この方向に垂直CCD13が複数本並べられて設けられる。さらに、これら垂直CCDと各センサ部との間には読出ゲート(ROG)が介在し、また各ユニットセルの境界部分にはチャネルストップが設けられる。これらセンサ部の垂直列ごとに設けられ、各センサ部から読出ゲート部によって読み出された信号電荷を垂直転送する複数本の垂直CCDによって撮像エリアが構成される。
【0054】
センサ部に蓄積された信号電荷は、読出ゲート部に読出パルスXSGに対応するドライブパルスが印加されることにより垂直CCDに読み出される。垂直CCDは、6相(あるいは8相)の垂直転送クロックV1〜V6(あるいはV8)に基づくドライブパルスφV1〜φV6(φV8)よって転送駆動され、読み出された信号電荷を水平ブランキング期間の一部にて1走査線(1ライン)に相当する部分ずつ順に垂直方向に転送する。この1ラインずつの垂直転送を、特にラインシフトという。
【0055】
また、CCD固体撮像素子11には、複数本の垂直CCDの各転送先側端部すなわち、最後の行の垂直CCDに隣接して、所定(たとえば左右)方向に延在する水平CCD(Hレジスタ部、水平転送部)が1ライン分設けられる。この水平CCDは、たとえば2相の水平転送クロックH1,H2に基づくドライブパルスφH1,φH2によって転送駆動され、複数本の垂直CCDから移された1ライン分の信号電荷を、水平ブランキング期間後の水平走査期間において順次水平方向に転送する。このため2相駆動に対応する複数本(2本)の水平転送電極が設けられる。
【0056】
水平CCDの転送先の端部には、たとえばフローティング・ディフュージョン・アンプ(FDA)構成の電荷電圧変換部が設けられる。この電荷電圧変換部は、水平CCDによって水平転送されてきた信号電荷を順次電圧信号に変換して出力する。この電圧信号は、被写体からの光の入射量に応じたCCD出力(Vout )として導出される。以上により、インターライン転送方式のCCD固体撮像素子11が構成される。
【0057】
また、このデジタルスチルカメラ1の処理系統は、大別して、光学系5、信号処理系6、記録系7、表示系8、および制御系9から構成されている。なお、カメラモジュール3および本体ユニット4が、図示しない外装ケースに収容されて、実際の製品(完成品)が仕上がるのは言うまでもない。
【0058】
光学系5は、シャッタ52、被写体の光画像を集光するレンズ54、および光画像の光量を調整する絞り56を有する撮像レンズ50と、集光された光画像を光電変換して電気信号に変換するCCD固体撮像素子11とから構成されている。被写体Zからの光L1は、シャッタ52およびレンズ54を透過し、絞り56により調整されて、適度な明るさでCCD固体撮像素子11に入射する。このとき、レンズ54は、被写体Zからの光L1からなる映像が、CCD固体撮像素子11上で結像されるように焦点位置を調整する。
【0059】
信号処理系6は、CCD固体撮像素子11からのアナログ撮像信号を増幅する増幅アンプや、増幅された撮像信号をサンプリングすることによってノイズを低減させるCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路などを有するプリアンプ部62、プリアンプ部62が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)変換部64、A/D変換部64から入力されるデジタル信号に所定の画像処理を施すDSP(Digital Signal Processor)で構成されたカメラ信号処理LSI(Large Scale Integrated Circuit;大規模集積回路)としての画像信号処理部66から構成される。
【0060】
画像信号処理部66は、たとえば、補色の撮像データから、赤(R),緑(G),青(B)の原色信号を分離・同時化する原色分離処理、原色の撮像データ(R,G,Bの各画素データ)を同時化する同時化処理、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する縦縞ノイズ補正処理、ホワイトバランス(WB;White Balance )調整を制御するWB制御処理、階調度合いを調整するガンマ補正処理、あるいは輝度データ(Y)や色データ(C)を生成するYC信号生成処理などを行なう。またCCD固体撮像素子11を駆動するタイミングパルスの基準を示す同期信号を生成する機能も持つ。なお、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する縦縞ノイズ補正処理に関わる本実施形態特有の構成部分については後で詳しく説明する。
【0061】
このDSPで構成される画像信号処理部66は、各機能部分の全ての処理をそれぞれ専用のハードウェアによるデジタル処理回路で行なう構成とすることもできるし、これら機能部分の一部をソフトウェア処理で行なう構成とすることもできる。
【0062】
ソフトウェアで所定の処理を行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。これに対して、ハードウェア処理回路で行なうことで、高速化を図ったアクセラレータシステムを構築することができるようになる。アクセラレータシステムは、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを得ることができる。
【0063】
記録系7は、画像データを記憶するフラッシュメモリなどの装置に対して着脱可能なメモリ(記録媒体)72と、画像信号処理部66が処理した画像データを符号化(圧縮)してメモリ72に記録し、また、読み出して復号(伸長)し画像信号処理部66に供給するCODEC(Compression/Decompression )74とから構成されている。
【0064】
表示系8は、画像信号処理部66が処理した画像信号をアナログ化するD/A(Digital/Analog)変換部82、入力されるビデオ信号に対応する画像を表示することによりファインダとして機能する液晶(LCD;Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)などよりなるビデオモニタ84、およびアナログ化された画像信号を後段のビデオモニタ84に適合する形式のビデオ信号にエンコードするビデオエンコーダ86から構成されている。なお、D/A変換部82とビデオエンコーダ86との配置を逆にして、エンコード処理をデジタル処理で行なう構成とすることもできる。この場合、ビデオエンコーダ86を画像信号処理部66に取り込むこともできる。
【0065】
制御系9は、先ずデジタルスチルカメラ1の全体を制御するCPU(Central Processing Unit )などよりなる中央制御部92と、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)93a、随時書込みおよび読出しが可能であるともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)93b、不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)93c、白点位置情報や各種調整データなど装置個別のデータを格納する不揮発性の記憶部の一例であるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)93dを有する記憶部(メモリ部)93とを備えている。なお、CPUなどからなる中央制御部92やEEPROM93dを除く記憶部93の各種メモリはDSPで構成された画像信号処理部66に取り込むこともできる。
【0066】
上記において“揮発性の記憶部”とは、デジタルスチルカメラ1の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、デジタルスチルカメラ1のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。なお、特殊用途として、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、外付けの駆動装置を利用することで、磁気ディスクや光ディスクなどの外部媒体を利用して構成してもよい。
【0067】
このような電子計算機のように構成されるデジタルスチルカメラ1においては、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、記録媒体(本例ではROM93a)からインストールされる。このソフトウェアの中には、コンピュータ上で稼働するOS(オペレーティングシステム;基本ソフト)も含まれる。
【0068】
なお、所定の処理を中央制御部92に実行させるプログラムは、CD−ROMやフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、任意の可搬型の記憶媒体を通じて配布(取得や更新)されてもよいし、あるいは、サーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
【0069】
中央制御部92は、半導体メモリなどで構成された記憶部93のROM93aに記憶されている制御用プログラムを読み出し、読み出した制御用プログラム、あるいはユーザからのコマンドなどに基づいてデジタルスチルカメラ1の全体の動作や信号処理を制御する。CPUやメモリを利用してソフトウェア的にデジタルスチルカメラ1を構成する、すなわちパーソナルコンピュータなどのコンピュータ(電子計算機)の機能を利用してデジタルスチルカメラ1をソフトウェア的に機能させる構成が実現される。
【0070】
このような構成において、中央制御部92は、システムバス99を介してシステム全体の制御を行なう。ROM93aは、中央制御部92の制御プログラムなど装置共通のデータを格納する。RAM93bは、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納する。また、RAM93bは、固体撮像素子10で読み取った画像データや、所定のアプリケーションプログラムによって編集した画像データやメモリ72から読み取った画像データなどを一時的に格納する領域を含んでいる。
【0071】
また制御系9は、画像信号処理部66に送られた画像の明るさが適度な明るさを保つようにシャッタ52や絞り56を制御する露出コントローラ94、CCD固体撮像素子11から画像信号処理部66までの各機能部の動作タイミングを制御するタイミング信号生成部(タイミングジェネレータ;TG)40を具備した駆動制御部96、ユーザがシャッタタイミングやその他のコマンドを入力する操作部98を有する。 中央制御部92は、デジタルスチルカメラ1のシステムバス99に接続された画像信号処理部66、CODEC74、メモリ72、露出コントローラ94、およびタイミング信号生成部40を制御している。
【0072】
このデジタルスチルカメラ1では、オートフォーカス(AF)、オートホワイトバランス(AWB)、自動露光(AE)などの自動制御装置を備えている。これらの制御は、CCD固体撮像素子11から得られる出力信号を使用して処理する。たとえば、露出コントローラ94は、画像信号処理部66に送られた画像の明るさが適度な明るさを保つようにその制御値が中央制御部92により設定され、その制御値に従って絞り56を制御する。具体的には、中央制御部92が画像信号処理部66に保持されている画像から適当な個数の輝度値のサンプルを獲得し、その平均値が予め定められた適当とされる輝度の範囲に収まるように絞り56の制御値を設定する。
【0073】
タイミング信号生成部40は、中央制御部92により制御され、CCD固体撮像素子11、プリアンプ部62、A/D変換部64、および画像信号処理部66の動作に必要とされるタイミングパルスを発生し、各部に供給する。操作部98は、ユーザが、デジタルスチルカメラ1を動作させるとき操作される。
【0074】
図示した例は、信号処理系6のプリアンプ部62およびA/D変換部64をカメラモジュール3に内蔵しているが、このような構成に限らず、プリアンプ部62やA/D変換部64を本体ユニット4内に設ける構成を採ることもできる。またD/A変換部を画像信号処理部66内に設ける構成を採ることもできる。
【0075】
また、タイミング信号生成部40をカメラモジュール3に内蔵しているが、このような構成に限らず、タイミング信号生成部40を本体ユニット4内に設ける構成を採ることもできる。またタイミング信号生成部40とドライバ42とが別体のものとしているが、このような構成に限らず、両者を一体化させたもの(ドライバ内蔵のタイミングジェネレータ)としてもよい。こうすることで、よりコンパクトな(小型の)デジタルスチルカメラ1を構成できる。
【0076】
また、タイミング信号生成部40やドライバ42は、それぞれ個別のディスクリート部材で回路構成されたものでもよいが、1つの半導体基板上に回路形成されたIC(Integrated Circuit)として提供されるものであるのがよい。こうすることで、コンパクトにできるだけなく、部材の取扱いが容易になるし、両者を低コストで実現できる。また、デジタルスチルカメラ1の製造が容易になる。また、使用するCCD固体撮像素子11との関わりの強い部分であるタイミング信号生成部40やドライバ42をCCD固体撮像素子11と共通の基板に搭載することで一体化させる、あるいはカメラモジュール3内に搭載することで一体化させると、部材の取扱いや管理が簡易になる。また、これらがモジュールとして一体となっているので、デジタルスチルカメラ1(の完成品)の製造も容易になる。なお、カメラモジュール3は、CCD固体撮像素子11および光学系5からのみ構成されていても構わない。
【0077】
このようなCCD固体撮像素子11を備えたデジタルスチルカメラ1の一連の動作を概説すれば以下の通りである。先ず、タイミング信号生成部40は、垂直転送用の転送クロックV1〜V6(V8)や読出パルスXSGなどの種々のパルス信号を生成する。これらのパルス信号は、ドライバ42により所定電圧レベルのドライブパルスに変換された後に、CCD固体撮像素子11の所定端子に入力される。
【0078】
被写体Zを撮像する際に、撮像レンズ50(シャッタ52およびレンズ54)を介してCCD固体撮像素子11の受光面に結像された被写体Zの光学像は、フォトダイオードなどからなる各センサ部で光の入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。
【0079】
センサ部の各々に蓄積された信号電荷は、タイミング信号生成部40から発せられた読出パルスXSGが読出ゲート部の転送チャネル端子電極に印加され、転送チャネル端子電極下のポテンシャルが深くなることにより、当該読出ゲート部を通して垂直CCDに読み出される。そして、6相(8相)の垂直ドライブパルスφV1〜φV6(φV8)に基づいて垂直CCDが駆動されることで、順次水平CCDへ転送される。
【0080】
なお、蓄積した信号電荷をシャッタゲートパルスによって掃出可能な構造のものとすれば、電荷の蓄積時間(シャッタスピード)を制御する、いわゆる電子シャッタ機能を実現できる。この場合、撮像レンズ50のシャッタ52を取り外すことができ、光学系5をコンパクトにすることができる。
【0081】
水平CCDは、タイミング信号生成部40から発せられドライバ42により所定電圧レベルの変換された2相の水平ドライブパルスφH1,φH2に基づいて、複数本の垂直CCDの各々から垂直転送された1ラインに相当する信号電荷を順次電荷電圧変換部側に水平転送する。
【0082】
電荷電圧変換部は、水平CCDから順に注入される信号電荷を図示しないフローティングディフュージョンに蓄積し、この蓄積した信号電荷を信号電圧に変換し、たとえば図示しないソースフォロア構成の出力回路を介して、タイミング信号生成部40から発せられたリセットパルスRGの制御の元に撮像信号(CCD出力信号)Vout として出力する。
【0083】
すなわち上記CCD固体撮像素子11においては、センサ部を縦横に2次元状に配置してなる撮像エリアで検出した信号電荷を、各センサ部の垂直列に対応して設けられた垂直CCDにより水平CCDまで垂直転送し、この後、2相の水平転送パルスH1,H2に基づいて、信号電荷を水平CCDにより水平方向に転送するようにしている。そして、電荷電圧変換部にて水平CCDからの信号電荷に対応した電位に変換してから出力するという動作を繰り返す。
【0084】
CCD固体撮像素子11から順次読み出された電圧信号、すなわち画素に対応するR,G,Bの各画素信号は、タイミング信号生成部40からの各サンプルパルスなどに基づき、プリアンプ部62にてCDS処理などが施され、A/D変換部64にてデジタルのR,G,Bの各画素データに変換された後、一旦、記憶部93のRAM93bに格納される。
【0085】
RAM93bに格納されたR,G,Bの各画素データは、画像信号処理部66にて、同時化処理やガンマ補正処理などが施された後、輝度データYと色(クロマ)データU,V(あるいはCr,Cb)(纏めてYCデータともいう)に変換され、記憶部93のRAM93bに一旦格納される。
【0086】
表示系8では、RAM93bに格納したYCデータを読み出し、液晶などからなるビデオモニタ84に出力することにより、スルー画像や撮影された静止画などを表示させることができる。
【0087】
また、撮影後のYCデータは、圧縮/伸長機能を持つCODEC74によって、JPEG(Joint Photographic Experts Group)などの所定のフォーマットに圧縮されたのち、メモリ72などの記録媒体に記録される。さらに、再生モード時にはメモリ72などに記録されている画像データがCODEC74によって伸長処理された後、ビデオモニタ84に出力され、再生画像が表示される。
【0088】
<<縦縞ノイズ補正処理機能>>
図2は、図1に示したデジタルスチルカメラ1における縦縞ノイズ補正処理機能に着目したブロック図である。
【0089】
図示するように、画像処理部(DSP)66における信号処理機能として、固体撮像素子10で取得されA/D変換部64にてデジタル化された撮像データの黒基準をクランプするデジタルクランプ部200、デジタルクランプ部200にてクランプされた撮像データからR,G,Bの原色データを抽出するとともに同時化する原色分離・同時化処理部202を備えている。
【0090】
また画像信号処理部66は、原色データR,G,Bに対して、補間処理やその他の輝度信号処理や色信号処理を施して輝度データY(あるいは明度データL)や2つの色データU,Vに変換して出力する信号処理部220を備えている。信号処理部220にて生成された各データY,U,Vは、記録系7に送られて画像記録に供されたり、あるいは表示系8に送られて表示出力に供されたりする。
【0091】
信号処理部220は、一例として、ガンマ補正部222および色差マトリクス部224を備えている。もちろん、この構成例は一例であって、これらの処理機能以外の構成要素も備える。
【0092】
ガンマ補正部222は、R信号Sr3,G信号Sg3,B信号Sb3に基づいて、忠実な色再現のためのガンマ(γ)補正を行ない、ガンマ(γ)補正された各色用の出力信号R,G,Bを色差マトリクス部224に入力する。色差マトリクス部224は、色差マトリクス処理を行なって得た色差信号R−Y,B−Yをビデオエンコーダ86に入力する。
【0093】
ビデオエンコーダ86は、色信号副搬送波に対応するデジタル信号で色差信号R−Y,B−Yをデジタル変調した後、図示しない輝度信号生成部にて生成された輝度信号Yと合成して、デジタル映像信号VD(=Y+S+C;Sは同期信号、Cはクロマ信号)に変換した後、D/A変換部82に入力する。D/A変換部82は、デジタル映像信号VDをアナログ映像信号Vに変換する。
【0094】
また画像信号処理部66は、本実施形態の特徴部分として、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する機能要素として、OBゲート部242と補正信号検知部244と補正処理部246とを含んで構成された帯状ノイズ補正処理部240を原色分離・同時化処理部202の前段に備えている。
【0095】
補正信号検知部244において帯状ノイズ補正信号S19を生成して、この帯状ノイズ補正信号S19を利用して補正処理部246において補正済画素信号S30を求める処理としては、基本的には、遮光された光電変換素子部(OB画素)に漏れ込んだ電荷を含んだ画素信号を補正成分として検知(抽出)して、画素信号S10からこの帯状ノイズ補正信号S19を差し引くことで補正済画素信号S30を求める。
【0096】
すなわち、基準画素領域11cのOB画素を含むライン(OBライン)の出力を利用する。OB画素は被写体を撮像することはなく、被写体撮像電荷は生じないが、スミア現象やブルーミング現象による電荷は存在する。よって、OBラインの出力を利用すれば、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズレベル情報や位置情報などが得られることとなり、補正回路はその情報を利用して有効画素領域11bの受光画素のライン(受光ライン)からの画素信号S10より、この抽出した縦縞ノイズ成分を差し引くことで補正済画素信号S30を取得する。具体的には、以下の通りである。
【0097】
OBゲート部242は、固体撮像素子10としてのCCD固体撮像素子11から読み出された画素信号S10から、遮蔽されたOB画素を有する基準画素領域11cのOB画素信号S12を抽出する。抽出する範囲は、図10に示した上下の部分(OBラインの画素)の基準画素領域11cと図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素の範囲である。OBゲート部242は、抽出したOB画素信号S12を、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を検出する補正信号検知部244に入力する。
【0098】
OBゲート部242には図示しないアナログスイッチが設けられており、このアナログスイッチにはCCD水平シフトレジスタからの画素信号S10が入力され、このアナログスイッチはその画素信号S10のうちのOB期間の信号のみを後段の補正信号検知部244に渡す。その振分けは、図10に示した上下の部分(OBラインの画素)の基準画素領域11cと、図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素の範囲である。
【0099】
補正信号検知部244は、OB画素信号S12に基づいて、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を表わす帯状ノイズ補正信号S19を検出する。補正信号検知部244は、この検出した帯状ノイズ補正信号S19を補正処理部246に入力する。
【0100】
補正処理部246は、差分処理機能を備えて構成されており、補正信号検知部244で検知された帯状ノイズ補正信号S19を、CCD固体撮像素子11から読み出された画素信号S10における同じ垂直方向の列ごとの光電変換素子の画素信号レベルから減算することにより、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分の補正が行なわれた補正済画素信号S30を生成する。
【0101】
補正処理部246の差分処理機能は、たとえば演算増幅器で実現することができる。たとえば、演算増幅器の非反転入力端子には画素信号S10が入力され、反転入力端子には補正信号検知部244からの帯状ノイズ補正信号S19が入力される。演算増幅器は、有効画素領域11bにおける受光画素の画像信号S10から、OBラインの画素信号に基づいて取得した帯状ノイズ補正信号S19を差し引き、これを補正済画素信号S30として出力する。
【0102】
なお、OBラインの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ補正信号S19を画素信号S10から減算して補正を加えると、高輝度被写体画像が移動した場合には誤補正になるという問題がある。この問題を避けるためには、たとえば、特許文献1に記載のように、帯状ノイズ11fを消去するための補正処理を受けようとする被補正画面の画像信号入力前における画素列別平均値検出部254から出力される帯状ノイズ補正信号S19を記憶する第1記憶手段と、被補正画面の画像信号入力後における画素列別平均値検出部254から出力される帯状ノイズ補正信号S19を記憶する第2記憶手段と、被補正画面の画像信号を記憶する被補正画面記憶手段とを用意するとよい。
【0103】
補正処理部246は、その一端が第1記憶手段の示すノイズ発生位置となり、かつ他端が第2記憶手段の示すノイズ発生位置となる帯状領域のみを補正対象領域として、被補正画面記憶手段に保持されている画像信号についての補正処理を実行するようにすればよい。こうすることで、帯状ノイズ11fを生じさせる高輝度被写体が静止している場合のみならず、動く場合であっても、帯状ノイズ11fの補正を良好に行なうことができるようになる。
【0104】
<<補正成分検知部の構成例>>
図3は、帯状ノイズ補正処理部240における補正量を検出するための補正信号検知部244の一構成例を示した回路ブロック図である。また、図4は、図3に示した補正信号検知部244の一構成例における各機能部の出力信号波形の一例を示した図である。各出力信号波形は、水平アドレス方向について示している。
【0105】
図示するように、補正信号検知部244は、平均値検出部252、画素列別平均値検出部254、および背景信号抑制処理部256を含んで構成された画素列別帯状ノイズ信号S15を生成する前段処理部247と、コアリング処理部258、クリップ処理部260、ローパスフィルタ処理部262、および補正量調整部264を備えた後段処理部248とを有して構成されている。
【0106】
補正量調整部264は、中央制御部92により予め設定されるサプレス処理開始レベルLspstおよびサプレス処理終了レベルLspedと、前段処理部247により抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15の大きさとを比較して、中央制御部92により予め設定される妥協係数Kcompの大きさを調整することで、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分を抑制するための帯状ノイズ補正信号S19を生成する。
【0107】
OBゲート部242を通ったOB画素信号S12は、前段処理部247の平均値検出部252および画素列別平均値検出部254に入る。
【0108】
前段処理部247は、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を示す画素列別帯状ノイズ信号S15を抽出するノイズ成分抽出部の機能を持つとともに、抽出したノイズ成分から高輝度の被写体に起因しない背景の偽信号成分を抑制する機能とを備えている。
【0109】
たとえば、平均値検出部252は、画素列別平均値検出部254が抽出した、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を示す画素列別平均値信号S14に含まれる、高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分の一例である平均値検出信号S13を抽出する背景信号抽出部の一例である。
【0110】
背景信号抑制処理部256は、画素列別平均値検出部254が抽出した画素列別平均値信号S14と平均値検出部252により抽出された背景信号成分を示す平均値検出信号S13とに基づいて、画素列別平均値信号S14から背景成分である平均値検出信号S13が抑制されたノイズ成分を示す画素列別帯状ノイズ信号S15を求める。
【0111】
具体的には、先ず背景信号抽出部の機能を持つ平均値検出部252は、第1の帯状の偽信号成分である帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しないすなわちスミア現象やブルーミング現象に関わりのない第2の偽信号成分の一例である暗電流成分を抽出する第2偽信号抽出処理部の一例である。この平均値検出部252は、OB画素信号S12の内、OBゲート部242を通った、水平方向の遮蔽された光電変換部(OB画素)である、図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素から出力される画素信号の平均値を計算して、平均値検出信号S13(図4(A)参照)を生成する。
【0112】
これは、後述する画素列別平均値検出部254において抽出されるスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ信号成分に含まれる、スミア現象やブルーミング現象に関係しない暗電流成分を、帯状ノイズ11fが現われることのない水平方向の基準画素領域11cのOB画素信号を使って抽出することを目的としたものである。
【0113】
画素列別平均値検出部254は、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出する帯状偽信号抽出処理部の一例であって、ノイズ成分抽出部の主要な機能を持つ。具体的には、画素列別平均値検出部254は、OB画素信号S12の内、OBゲート部242を通った、図10に示した垂直方向の複数ライン(OBラインの画素)の遮蔽された光電変換部(OB画素)の画素列ごとの画素信号の平均値を計算し、画素列別平均値信号S14(図4(B)参照)を生成する。
【0114】
これにより、特許文献1記載の手法と同様に、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号である帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を抽出できる。ただし、先にも述べたように、この画素列別平均値検出部254で抽出される成分には、スミア現象やブルーミング現象に起因する本来のノイズ成分以外に、暗電流成分を含む(図4(B)参照)。
【0115】
背景信号抑制処理部256は、差分処理機能を備えて構成されており、画素列別平均値検出部254で取得された第1の帯状の偽信号成分である画素列別平均値信号S14と平均値検出部252で取得された第2の偽信号成分である平均値検出信号S13とに基づいて、画素列別平均値信号S14(第1の帯状の偽信号成分)から平均値検出信号S13(第2の偽信号成分)が抑制された適正な帯状の偽信号成分である画素列別帯状ノイズ信号S15を求める適正偽信号抽出処理部の機能を持つ。
【0116】
具体的には、背景信号抑制処理部256の差分処理機能は、たとえば演算増幅器で実現することができる。たとえば、演算増幅器の反転入力端子には平均値検出部252からの平均値検出信号S13が入力され、非反転入力端子には画素列別平均値検出部254からの画素列別平均値信号S14が入力される。演算増幅器は、画素列別平均値検出部254から出力された画素列別平均値信号S14から、平均値検出部252から出力された平均値検出信号S13を差し引き(減算し)、これを画素列別帯状ノイズ信号S15(図4(C)参照)として出力する。
【0117】
ここで、画素列別平均値信号S14から平均値検出信号S13を減算するのは、遮蔽された光電変換部(OB画素)では、光が当たっていなくても暗電流が発生するため、帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分に関しても、この暗電流の影響を除くことが好ましいからである。
【0118】
このため、前段処理部247においては、スミア現象やブルーミング現象に起因した縦縞ノイズ成分に影響が無い水平方向のOB画素の電荷出力信号である平均値検出信号S13を用いて、垂直方向の遮蔽された光電変換部(OBラインの画素)における暗電流の影響を除去する目的で、背景信号抑制処理部256は、画素列別平均値信号S14から平均値検出信号S13を減算する減算処理を行なう。
【0119】
このことから分かるように、前段処理部247は、高輝度の被写体に起因した第1の帯状の偽信号成分を抽出し、第1の帯状の偽信号成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しない第2の偽信号成分である背景信号成分を抽出し、第1の帯状の偽信号成分と第2の偽信号成分(背景信号成分)とに基づいて、第1の帯状の偽信号成分から第2の偽信号成分が抑制された適正な帯状の偽信号成分を求める機能を持つ。
【0120】
また、前段処理部247の後段に配される後段処理部248の各機能部は、前段処理部247で抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15(ノイズ成分)を、より適正なレベルの補正信号に調整する補正信号適正化処理部の機能を持つ。本実施形態においては、背景信号抑制処理部256から出力された画素列別帯状ノイズ信号S15を対象として、それぞれが担当する処理を順次行なう。
【0121】
こうすることで、OB画素信号のばらつき要素を抑制したり、極めて高輝度(超高輝度)の部分を所定レベルに抑制したり、帯状ノイズ11fの水平方向のエッジ部分を帯域制限したり、あるいは帯状ノイズ11fの信号レベルに応じて補正量を調整して、総合的により適切なレベルの補正信号を生成する。適切なレベルの補正信号を用いて補正処理を行なうことで、補正残しが生じることなく、また補正処理によって不自然な縞模様が生じる現象を緩和することができる。
【0122】
具体的には先ず、コアリング処理部258は、遮光された光電変換部(OB画素)の水平方向の電荷出力値ばらつきを抑えるコアリング処理を行なう。つまり、画素列別帯状ノイズ信号S15について、中央制御部92により予め設定されたコアリングレベルLcorr(図4(C)参照)に基づいてコアリング処理を行ない、コアリング処理信号S16(図4(D)参照)を生成する。コアリングレベルLcorrは、OBラインの出力信号のばらつき部分を除去可能なレベルに設定する。
【0123】
ここで、画素列別帯状ノイズ信号S15の水平方向の信号レベルを見た場合、垂直方向の複数ラインの遮光された光電変換部(OBラインの画素)の水平方向の信号出力値にばらつきがあると、スミアが発生していない場所で誤補正する場合がある。結果としては、補正残しの状態となる。
【0124】
そこで、画素列別帯状ノイズ信号S15から設定したコアリングレベルLcorrより下の信号レベルを無効化する、具体的にはゼロに信号レベルを置き換え、このコアリングレベルLcorrより下の信号レベルが無効化されたコアリング処理信号S16を使用して補正処理を行なうようにする。これにより、OBラインの出力信号ばらつきの影響を受けることがないようにすることができ、スミア現象やブルーミング現象の発生していない場所で誤補正する虞れを防止することができる。
【0125】
クリップ処理部260は、高輝度に張り付いてしまっている帯状ノイズ11fの信号レベルを一定レベルに制限する。つまり、コアリング処理部258から出力されたコアリング処理信号S16から、中央制御部92により予め設定されたクリップレベルLclip(図4(D)参照)に基づいてクリップ処理を行なうことで、クリップ処理信号S17(図4(E)参照)を生成する。クリップレベルLclipは、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを過度に補正してしまうことを防止可能なレベルに設定する。
【0126】
ここで、クリップ処理部260におけるクリップ処理とは、スミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分は後段でのLPF(Low Pass Filter ;ローパスフィルタ)処理で適正な処理をするため、コアリング処理信号S16から設定されたクリップレベルLclipより上の信号レベルを無効化する、具体的にはクリップレベルLclipの信号に置き換える処理である。
【0127】
これは、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を前段処理部247にて抽出した後に、有効画素信号から取り除く処理を行なうと、抽出されるノイズ成分が過度に大きくなり、高輝度発生源11eの上下の帯状ノイズ11fが取り除かれるだけでなく、帯状部分が過度に低レベルになってしまう過度な補正現象が生じてしまう。
【0128】
そこで、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fに関しては、コアリング処理信号S16が一定レベル(クリップレベルLclip)以上になると抽出するノイズ成分を抑制する、すなわちクリップレベルLclip以上のノイズ成分はクリップレベルLclipに固定することで、過度な補正がなされることを防止する。これにより、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の上下(帯状部分)を、過度に低レベルにすることなく、帯状ノイズ11fを適切に取り除くことができるようになる。
【0129】
ローパスフィルタ(LPF)処理部262は、帯状ノイズ11fにおける高周波成分を除去するすなわち、帯状ノイズ11fのエッジ成分を滑らかにする帯域制限処理を行なう。つまり、クリップ処理部260から出力されたクリップ処理信号S17から高周波成分を除去するため、予め設定されたLPF(ローパスフィルタ)の特性に従い帯域制限の処理を行なって、ローパス処理信号S18を生成する。
【0130】
これにより、画素列別平均値検出部254においてOBラインでの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分(画素列別平均値信号S14)と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれ(たとえば信号処理による遅延などによる)が存在しても、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう現象を緩和することができる。
【0131】
補正量調整部264は、帯状ノイズ11fの信号レベルに応じて補正量を可変する。すなわち、ローパスフィルタ処理部262から出力されたローパス処理信号S18をそのまま帯状ノイズ補正信号S19にするのではなく、過補正を回避するため、予め設定されるサプレス処理開始レベルLspstおよびサプレス処理終了レベルLspedと、前段処理部247により抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15の大きさとを比較して、予め設定される妥協係数Kcompの大きさを調整する妥協係数調整処理を行なう。
【0132】
この補正量調整部264における妥協係数調整処理の動作としては、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstまでは、予め設定された妥協係数Kcompをローパス処理信号S18に乗算する。また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstを越え、かつサプレス処理終了レベルLspedの間は、信号レベルに応じて妥協係数Kcompを減少させる。また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLspedを越えると、妥協係数Kcompをゼロに固定し、帯状ノイズ補正信号S19をゼロにする。
【0133】
なお、ここで言う妥協係数Kcompとは、予め設定している係数で、最大値は1.0であるものとする。また、サプレス処理開始レベルLspstとは、予め設定している設定値で画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルにより妥協係数Kcompを減少させる開始点である。また、サプレス処理終了レベルLspedとは、予め設定している設定値で画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルにより妥協係数Kcompを減少させる終了点である。この終了点では調整後の妥協係数がゼロとなり、それ以降もゼロとなるようにするのが好ましい。これらについては、後述する図9も参照するとよい。
【0134】
このような処理によって、帯状ノイズ補正信号S19のレベルを低減することで補正の効果を緩和でき、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止することができる。高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度部における帯状ノイズ発生部分での不自然な縞模様を低減し、過補正が起こらないようにすることができる。たとえば、妥協係数Kcompを0.5〜0.6というように1.0よりも低く設定すれば、ローパス処理信号S18の全てのレベルについて、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止することができる。
【0135】
また、サプレス処理終了レベルLsped以上では妥協係数をゼロにすることで、超高輝度の帯状ノイズ11fに対する補正処理を停止することもできる。超高輝度の帯状ノイズ11fは、概ね白レベルとして視認されるが、補正を加えることでその帯状部分が過度に低レベルになってしまう現象(過度な補正)が見られるよりは、元々の白レベルとして視認させておいた方が画質としては好ましいと考えられる。この点では、超高輝度の帯状ノイズ11fに対する補正処理を停止することは、帯状ノイズに対する補正処理についての全体のバランスを考えると、有効な手法である。
【0136】
また、サプレス処理開始レベルLspstからサプレス処理終了レベルLspedの間で漸次妥協係数Kcompの大きさを低減するようにすれば、高輝度の帯状ノイズ11fやその境界部分における過度な補正を防止できる。また、補正の効果が漸次低減するように妥協係数を変化させることで、高輝度〜超高輝度の間で補正の効果の現れ方が急激に変化することを防止できる。
【0137】
<コアリング処理部の構成例>
図5は、補正信号検知部244におけるコアリング処理部258の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、コアリング処理部258は、非反転入力端子(+)に入力されるコアリングレベルLcorrと反転入力端子(−)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルを比較する比較器302と、一方の入力端子(H側)に入力される0レベルと他方の入力端子(L側)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ304とを備えている。コアリングレベルLcorrとしては、画素列別帯状ノイズ信号S15における水平方向の信号出力値のばらつきを除去可能な程度とする。
【0138】
比較器302は、画素列別帯状ノイズ信号S15が、予め設定されたコアリングレベルLcorrより小さいときには出力をHレベルにし、大きいときには出力をLレベルにする。この比較器302の出力信号が切替制御信号CN16として選択スイッチ304の制御端子に入力される。
【0139】
このような構成により、コアリング処理部258は、画素列別帯状ノイズ信号S15が、予め設定されたコアリングレベルLcorrより小さい部分を無効化(ゼロレベル)して、コアリングレベルLcorrより大きい信号部分のみをそのまま出力することでコアリング処理信号S16(図4(D)参照)を生成するというコアリング処理を行なう。
【0140】
このように、画素列別帯状ノイズ信号S15に対して、画素列別帯状ノイズ信号S15における水平方向の信号出力値のばらつきを除去可能な程度のコアリングレベルLcorrを設定してコアリング処理を行なうことで、スミアが発生していない場所で誤補正する虞れを防止することができるようになる。
【0141】
<クリップ処理部の構成例>
図6は、補正信号検知部244におけるクリップ処理部260の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、コアリング処理部258は、反転入力端子(−)に入力されるクリップレベルLclipと非反転入力端子(+)に入力されるコアリング処理信号S16のレベルを比較する比較器312と、一方の入力端子(H側)に入力されるクリップレベルLclipと他方の入力端子(L側)に入力されるコアリング処理信号S16の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ314とを備えている。クリップレベルLclipとしては、コアリング処理信号S16におけるスミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分を一定レベルに制限可能なレベルにする。
【0142】
比較器312は、コアリング処理信号S16が、予め設定されたクリップレベルLclipより大きいときには出力をHレベルにし、小さいときには出力をLレベルにする。この比較器312の出力信号が切替制御信号CN17として選択スイッチ314の制御端子に入力される。
【0143】
このような構成により、クリップ処理部260は、コアリング処理信号S16が、予め設定されたクリップレベルLclipより大きい部分を無効化、具体的にはクリップレベルLclipに固定して、クリップレベルLclipより小さい信号部分のみをそのまま出力することで、クリップ処理信号S17(図4(E)参照)を生成するというクリップ処理を行なう。
【0144】
このように、コアリング処理信号S16に対して、コアリング処理信号S16におけるスミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分を制限可能な程度のクリップレベルLclipを設定してクリップ処理を行ない後段のローパスフィルタ処理部262に渡すことで、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の上下(帯状部分)を、過度に低レベルにすることなく、帯状ノイズ11fを適切に取り除くことができる。
【0145】
<ローパスフィルタ処理部の作用例>
図7は、補正信号検知部244におけるローパスフィルタ処理部262の動作例を説明する図である。ローパスフィルタ処理では、クリップ処理信号S17から高周波成分を除去するため、処理したい画素(注目画素)に隣接する複数画素を用いて平均化フィルタ処理を行なう。このとき、たとえば、周辺画素の係数と中央画素(注目画素)の係数を全て同じにすれば、単純な平滑化フィルタ処理がなされたローパス処理信号S18を生成することができる。また、周辺画素の係数よりも中央画素(注目画素)の係数を大きくすれば、注目画素を強調する重付けフィルタ処理がなされたローパス処理信号S18を生成することができる。
【0146】
たとえば、図7に示すように、水平アドレスにおける任意位置xを注目画素として両隣の画素との間でフィルタ係数を{1、2、1}に設定してローパスフィルタ処理を行なう場合、3つの画素の画素データをそれぞれ(Ax-1),Ax,(Ax+1)とすると、任意位置xのローパス処理信号S18であるYxは、式(1)で示される。
【0147】
【数1】
【0148】
これにより、画素列別平均値検出部254により抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分(画素列別平均値信号S14)と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれが存在しても、境界部分でやんわりと補正処理を加えることができるので、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう現象を緩和することができる。
【0149】
また、クリップ処理部260において、コアリング処理信号S16がクリップレベルLclipより大きい部分を予めクリップレベルLclipに固定しておいているので、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の周辺画素に対して、過度に補正がなされてしまう虞れを低減できる。
【0150】
<妥協係数調整処理部の構成例>
図8は、補正信号検知部244における補正量調整部264の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、補正量調整部264は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベル並びにサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとに基づいて妥協係数Kcompを調整して調整済み妥協係数Kadj を生成する妥協係数調整部322と、反転入力端子(−)に入力されるサプレス処理開始レベルLspstと非反転入力端子(+)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルを比較する比較器324とを備えている。
【0151】
また補正量調整部264は、一方の入力端子(L側)に入力される妥協係数Kcompと他方の入力端子(H側)に入力される妥協係数調整部322からの調整済み妥協係数Kadj の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ326と、選択スイッチ326から出力された適正な妥協係数Koに基づき、ローパス処理信号S18を補正して帯状ノイズ補正信号S19を生成する乗算処理機能を持つ縦縞ノイズ補正出力信号生成部328とを備えている。
【0152】
妥協係数調整部322は、前段処理部247の背景信号抑制処理部256からの画素列別帯状ノイズ信号S15がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、その画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0153】
具体的には、妥協係数調整部322は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルがサプレス処理開始レベルLspstを越えサプレス処理終了レベルLspedの間は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルに応じて、妥協係数を概ね線形的に漸次減少させる。このとき、サプレス処理終了レベルLspedのときに妥協係数がゼロとなるようにするのがよい。
【0154】
また、妥協係数調整部322は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLspedを越える場合には、妥協係数をゼロに固定する。なお、このような線形性を持ちつつ漸次変化させることに限らず、たとえばサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で2次関数などの高次関数に従って連続的かつ曲線状に漸次減少させてもよい。
【0155】
比較器324は、妥協係数サプレス処理開始位置判定部の機能を持ち、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst以下の場合は出力をLレベルにし、大きいときには出力をHレベルにする。この比較器324の出力信号が切替制御信号CN19として選択スイッチ326の制御端子に入力される。
【0156】
選択スイッチ326は、比較器324からの切替制御信号CN19がLレベルのときには入力端子(L側)に入力される妥協係数Kcompをそのまま適正な妥協係数Koとして縦縞ノイズ補正出力信号生成部328に入力する一方、比較器324からの切替制御信号CN19がHレベルのときには入力端子(H側)に入力される妥協係数調整部322からの調整済み妥協係数Kadj を適正な妥協係数Koとして縦縞ノイズ補正出力信号生成部328に入力する。
【0157】
縦縞ノイズ補正出力信号生成部328は、ローパスフィルタ処理部262からのローパス処理信号S18に対して選択スイッチ326の出力信号である妥協係数Ko、すなわち妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を乗算することにより帯状ノイズ補正信号S19を生成する。つまり、ローパス処理信号S18に乗算する係数として、妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を選択して使用することで、帯状ノイズ補正信号S19を生成する。
【0158】
このような構成により、補正量調整部264は、先ず、妥協係数サプレス処理開始位置判定部の機能をもつ比較器324での選択スイッチ326に対する切替制御信号CN19の切替の基準を、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst以下の場合は妥協係数Kcompを選択し、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstを越えた場合に妥協係数Kcompに対するサプレス処理した調整済み妥協係数Kadj を選択するようにする。そして、縦縞ノイズ補正出力信号生成部328は、ローパス処理信号S18に妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を乗算することにより帯状ノイズ補正信号S19を取得する。
【0159】
<妥協係数サプレス処理の作用>
図9は、妥協係数調整部322における作用を説明する妥協係数調整処理の概念図である。ローパスフィルタ処理部262から得られたローパス処理信号S18に乗算される妥協係数は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst(A点)以下の場合は設定された妥協係数Kcompを選択し、ローパス処理信号S18に乗算する。
【0160】
また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst(A点)を越え、サプレス処理終了レベルLsped(B点)の間の場合は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルに応じて妥協係数Kcompを漸次減少させ、ローパス処理信号S18に乗算する。さらに、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLsped(B点)を越えた場合は、妥協係数Kcompをゼロに固定する。
【0161】
妥協係数Kcompの信号レベルに対する減少幅は、図9に示すように、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedを結ぶライン(直線)に従うものとする。つまり、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で妥協係数Kcompを、線形性を持ちつつ、漸次変化させる。
【0162】
ただし、このような直線的な変化に限らず、たとえばサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で2次関数などの高次関数に従って連続的かつ曲線状に漸次減少させてもよい。つまり、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとを曲線で結んでもよい。
【0163】
また、この例では、妥協係数Kcompを0.5〜0.6というように1.0よりも低く設定して、ローパス処理信号S18の全てのレベルについて、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止するようにしているが、妥協係数Kcompを1.0に設定し、サプレス処理開始レベルLspst以下ではローパス処理信号S18の信号レベルをそのまま帯状ノイズ補正信号S19として使用するようにしてもよい。
【0164】
このようにして調整された調整済み妥協係数Kadj を用いてローパス処理信号S18に対して補正を加えて帯状ノイズ補正信号S19を生成することで、帯状ノイズ補正信号S19のレベルを低減することができる。
【0165】
よって、この帯状ノイズ補正信号S19を用いて補正処理部246にて帯状ノイズ11fに対して補正を加えることで、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止する(補正の効果を緩和する)ことができる。
【0166】
妥協係数Kcompを何れに設定しても、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で妥協係数を漸次減少させることで、高輝度の帯状ノイズ11fやその境界部分における過度な補正を防止できるし、補正の効果が漸次低減するように妥協係数を変化させることで、高輝度〜超高輝度の間で補正の効果の現れ方が急激に変化することを防止できる。
【0167】
高輝度に張り付いていないスミア現象やブルーミング現象に起因した縦縞ノイズ成分に対しても良好な補正を実現することができる。従来の補正回路で出ていた、高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度の帯状ノイズ部分に発生していた不自然な縞模様をなくすことができる。
【0168】
このように、本実施形態の帯状ノイズ補正処理部240によれば、従来の補正処理の仕組みでは、補正残しや誤補正が発生し、高精度な帯状ノイズのキャンセルが実現できなかったのに対して、背景の偽信号成分である暗電流成分を抑制したり、ばらつき成分を抑制したり、抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化したり、抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したり、あるいは、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変するなど、これらを組み合わせることで、補正残しや過補正を解決し、適切な帯状ノイズキャンセルを実現することが可能となった。
【0169】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0170】
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0171】
たとえば、上記実施形態では、補正量調整部264は、前段処理部247から出力された画素列別帯状ノイズ信号S15を参照信号として、前段処理部247で抽出され、さらに後段処理部248のコアリング処理部258、クリップ処理部260、およびローパスフィルタ処理部262で順に、より適正なレベルの補正信号に調整されたローパス処理信号S18(高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応する調整済みノイズ成分の一例)に対して補正を加えていた。さらに、撮像デバイスの有効画像領域から出力された画素信号S10に含まれる、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号として帯状ノイズ補正信号S19を生成していた。しかしながら、妥協係数調整部322で参照する信号は必ずしも、画素列別帯状ノイズ信号S15に限らない。
【0172】
一例としては、妥協係数調整部322で参照する信号は、画素列別帯状ノイズ信号S15の代わりに、画素列別平均値検出部254により抽出された暗電流成分を含む画素列別平均値信号S14そのものを用いてもよいし、あるいは、CCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10を用いてもよい。
【0173】
ここで、画素列別平均値検出部254により抽出された暗電流成分を含む画素列別平均値信号S14を用いる場合には、画素列別平均値信号S14がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、画素列別平均値信号S14のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0174】
CCD固体撮像素子11から出力される画素信号S10を用いる場合は、CCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、画素信号S10のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0175】
妥協係数調整部322で参照する信号に画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合には、高輝度の被写体に起因しない背景の偽信号である暗電流成分の影響を受けることがなく、本来の帯状ノイズ11fのレベルに応じ、帯状ノイズの補正処理における補正量を適切に調整できるという利点が得られる。
【0176】
また、妥協係数調整部322で参照する信号に画素列別平均値信号S14を用いた場合は、画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合に比べて暗電流成分の影響を受けるものの、暗電流成分は、調整済み妥協係数Kadj を参照信号レベルに応じ可変する領域の信号レベルではなく、妥協係数Kadjの係数固定領域のため、その影響は少ないと考えてよい。
【0177】
また、妥協係数調整部322で参照する信号にCCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10(撮像デバイスからの撮像信号そのもの)を用いる場合には、列ごとではなく、画素ごとに調整済み妥協係数Kadj を生成することが出来る利点が得られる。
【0178】
一方、画素ごとに調整済み妥協係数Kadj を生成することになり、画素ごとに調整済み妥協係数Kadjが変化し、画素毎の偽信号を抑制する補正回路において、ノイズ成分の過補正が発生する可能性がある。しかしながら、偽信号が発生していない領域では、偽信号成分がないので帯状ノイズ補正信号S19は発生しない。
【0179】
このため、偽信号を抑制する補正回路に関しては、影響しない。偽信号が発生している領域では、画素別平均値信号S14や画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合に比べて同じ動作をするので、画素別平均値信号S14や画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明に係る撮像装置(カメラシステム)の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したデジタルスチルカメラにおける縦縞ノイズ補正処理機能に着目したブロック図である。
【図3】縦縞ノイズ補正処理部における補正量を検出するための補正成分検知部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図4】図3に示した補正成分検知部の一構成例における各機能部の出力信号波形の、水平アドレス方向についての一例を示した図である。
【図5】コアリング処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図6】クリップ処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図7】ローパスフィルタ処理部の動作例を説明する図である。
【図8】妥協係数調整処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図9】妥協係数調整部における作用を説明する妥協係数調整処理の概念図である。
【図10】スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号の概要を説明する図である。
【符号の説明】
【0181】
1…デジタルスチルカメラ(撮像装置)、2…固体撮像装置、3…カメラモジュール、3a…撮像装置モジュール、4…本体ユニット、5…光学系、6…信号処理系、7…記録系、8…表示系、9…制御系、10…固体撮像素子、11…CCD固体撮像素子、11a…画素部、11b…有効画素領域、11c…基準画素領域、11d…ダミー画素領域、11e…高輝度発生源、11f…帯状ノイズ、40…タイミング信号発生器、42…ドライバ、46…駆動電源、50…撮像レンズ、52…シャッタ、54…集光レンズ、56…絞り、62…プリアンプ、64…AD変換器、66…画像信号処理部、72…メモリ、74…CODEC、82…DA変換部、84…ビデオモニタ、86…ビデオエンコーダ、92…中央制御部、93…記憶部(メモリ)、94…露出コントローラ、96…駆動制御部、98…操作部、99…システムバス、200…デジタルクランプ、202…原色分離・同時化処理部、220…信号処理部、222…ガンマ補正部、224…色差マトリクス、240…縦縞ノイズ補正処理部、242…OBゲート部、244…補正成分検知部、246…差分処理部、247…前段処理部(ノイズ成分抽出部)、248…後段処理部(補正信号適正化部)、252…平均値検出部、254…画素列別平均値検出部、256…差分処理部、258…コアリング処理部、260…クリップ処理部、262…ローパスフィルタ処理部、264…妥協係数調整処理部、302…比較器、304…選択スイッチ、312…比較器、314…選択スイッチ、322…妥協係数調整部、324…比較器、326…選択スイッチ、328…乗算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像に現われるスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状のノイズ成分を補正する偽信号抑制処理方法および偽信号抑制処理回路並びにこの帯状のノイズ成分を補正する機能を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子(以下撮像デバイスともいう)で被写体の画像を撮像する場合に、高輝度の光が入射されると、スミア現象やブルーミング現象に起因した帯状のノイズ成分(偽信号)が発生し得ることが知られている。特に、固体撮像素子として、光電変換部(受光画素)の列を相互に分離し、それぞれの光電変換部ごとに転送シフトレジスタを並べたインターライン転送(ILT:interline transfer)形式の構造を採っているCCDエリアイメージセンサの場合に顕著に現われ得ることが知られている(たとえば非特許文献1,2参照)。
【0003】
【非特許文献1】竹村裕夫、“CCDカメラ技術入門”、初版、コロナ社、1997年12月15日、p.80〜83
【非特許文献2】竹村裕夫、“CCDカメラ技術”、初版、ラジオ技術杜、昭和61年11月3日、p.51〜53
【0004】
図10は、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号の概要を説明する図である。撮像デバイスの受光側の面は、図示を割愛した光電変換部が行方向および列方向に(つまり2次元状に)多数配列されて画素部(撮像部)11aが構成される。ここで、画素部11aにおける有効画像領域(有効部)と、光学的黒を与える基準画素領域との関係は、一例として図示のようになっている。
【0005】
すなわち、図10(A)に示すように、画素部11aは、画像を取り込む画素が配列された有効領域である有効画素領域(有効部)11bの他に、光学的黒(OB:Optical Black)を与える基準画素領域11cが有効画素領域11bの周囲に配され、さらに、ダミー画素が配列されたダミー画素領域11dが基準画素領域11cの外側に設けられて構成される。
【0006】
一例として、基準画素領域11cとしては、垂直列方向の上下に数行(たとえば1〜10行)分の光学的黒を与える基準画素が配列され、また、有効画素領域11bを含む水平行における左右に数画素〜数10画素(たとえば3〜40画素)分の光学的黒を与える基準画素が配列される。またダミー画素領域11dは、垂直列方向の上下の一方(図では上側)に数行(たとえば1〜10行)分が設けられる。
【0007】
光学的黒を与える基準画素は、その受光面側が、フォトダイオードなどからなる電荷生成部に光が入らないように、遮光される。なお、光学的黒を与える基準画素は、光学的に遮光したものに限らず、垂直シフトレジスタのみを配置するものや、垂直シフトレジスタの駆動により無信号部分を得る擬似的な構成のものも含むものとする。この基準画素からの画素信号は、先ず映像信号の黒基準に使われる。
【0008】
ここで、ハイライトなどの高輝度被写体を撮像したとき、その高輝度の光を受光した光電変換部(高輝度発生源11eという)を基点として、縦縞状のノイズ成分(以下帯状ノイズ11fともいう)が視覚的に検知されるようになる。この帯状ノイズ11fの発生要因は、一般にブルーミング現象とスミア現象とに区別される。
【0009】
ブルーミング現象は、電荷生成部(光電変換部)の光電変換素子に強い光が入射すると、蓄積できる最大電荷量以上の電荷が生成されることで、画素が飽和して、その電荷が光電変換素子(高輝度発生源11e)から溢れ出し、この溢れた電荷が隣接画素や信号線あるいは垂直転送CCDなどの周辺部に漏れ込む現象である。
【0010】
ブルーミング現象が生じると、撮像画像に白い帯状または白い円状パターンが観察され、画質が劣化する。すなわち、光電変換素子に飽和光量以上の強い光が入射すると信号電荷が溢れ、周囲の画素に余剰電荷が入り込み、光の当たらない部分までが明るく膨らむ現象がブルーミング現象であり、隣接する光電変換素子に余剰電荷が入り込むと、ちょうど花が咲いたように局囲に白い部分が円弧状に広がるノイズとして現われ、またCCD垂直転送部(垂直転送レジスタ)に漏れ込むと垂直方向に広がって垂直の縞(帯状ノイズ11f)となって画質を損なうことになる。
【0011】
一方、スミア現象は、信号線やCCDへの光の混入や、半導体基板内部で発生した信号電荷が拡散により広がり、隣接画素や転送部に混入するために発生する現象である。特に、光の漏れ込みにより、高輝度発生源11eであるスミア発生源の上下方向すなわち垂直方向に縞状の明るい帯(帯状ノイズ11f;特にスミア帯)が発生し、信号電荷を垂直転送部を通して読み出すことに起因して生じるものである。
【0012】
すなわち、垂直転送部は極力完全に遮光が行なわれ、入射光の影響がないように設計されるが、100%完全に遮光するということは難しく、たとえば境界部分での遮光の不完全、多重反射による側面からの光の混入、あるいは遮光膜の不完全などの要因によって、僅かな光の混入は避けられない構造になっている。このため、強いスポット光が有効画素領域11bに照射されることで、本来遮光されているはずの垂直転送レジスタに光が漏れ込み、垂直転送レジスタで直接に電荷が生じてしまう。
【0013】
スミア現象は、基本的には光の強さに無関係に一定の割合で発生するものであり、量が少ないときは目視されないが、強い光が入った場合には、その白点(高輝度発生源11e)が上下に縞状に伸びて現われて、帯状ノイズ11fとなって視認されるようになる。
【0014】
たとえば、インターライン転送形式の構造を採っているCCDエリアイメージセンサの場合には、高輝度発生源11eから溢れた電荷が垂直転送レジスタに漏れ込んだ電荷や垂直転送レジスタで発生した電荷によって、その高輝度の光(高輝度発生源11e)を反映した画像の上方および下方に白い帯状の領域を生じて、垂直方向に輝度の高いスジとなって見える現象となる。
【0015】
すなわち、遮光された光電変換素子部(OB画素)である基準画素領域11cの画素信号は入射光が無いため光に対する電荷は発生しないので、この部分に現れる画素信号はノイズである。垂直転送レジスタに溢れた電荷は、垂直方向の画素信号にも漏れ込むため、遮光された基準画素領域11c(光電変換素子部;OB画素)の画素信号にも漏れ込む。
【0016】
要するに、スミア現象の生ずる原因は、被写体が電荷生成部や当該電荷生成部で生成された信号電荷を保持する電荷蓄積部で対処(保持・蓄積)可能な量を超えるほどに高輝度であるため、有効画素領域11bの電荷生成部や電荷蓄積部だけではなく、垂直シフトレジスタ内にも信号電荷とは異なる不要な電荷(不正電荷)を生じ、この不正電荷が電荷生成部からの信号電荷に合成されて画素信号として転送されることにある。
【0017】
このため、図10(B)に示すように、画素部11aの有効画素領域11bに対応する撮像範囲の中に高輝度被写体である高輝度発生源11eが存在する場合に、これをCCD固体撮像素子10で撮像すると、その結果は、図10(A)に示すように、高輝度発生源11eの上方および下方に、帯状ノイズ11fが生じてしまう。
【0018】
このような高輝度の光が入射されたときに発生する、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号である帯状ノイズ11fを軽減もしくは除去(以下纏めて抑制ともいう)するため、従来の撮像装置では、固体撮像素子の有効画素領域11bから読み出される有効な画素信号から所定の手法によって抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ信号成分を取り除くような補正処理を行なう補正回路を設ける仕組みを採ることがある(たとえば特許文献1参照)。
【0019】
【特許文献1】特開平6−268922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1に記載の補正方法においては、基準画素領域11cのOB画素を含むライン(OBライン)の出力を利用してノイズ信号成分を抽出しており、この抽出したノイズ信号成分を有効な画素信号から取り除く処理を単純に行なうと、縦縞ノイズが抑制されるものの、過度な補正を行なってしまい、映像信号が高輝度に張り付いてしまっている画素信号の発生部分や境界部分に不自然な縞模様が視認される現象が発生するということが分かった。あるいは、他のノイズ成分が発生してしまい、結果としては補正しきれない、補正残しの状態が生じてしまうことが分かった。過度な補正とならないようにした場合にも、同様に、補正残しの状態が生じてしまう。
【0021】
たとえば、OBラインの出力を利用して抽出したノイズ信号成分には、スミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わす成分の他に暗電流成分も含まれるし、信号出力値にばらつきがあり、このスミア現象やブルーミング現象に関係しない暗電流成分やばらつき成分を帯状ノイズ11fの一部であるとして有効画素信号から差し引くと、適切な補正ができない。たとえば過度・不適切な補正になる、あるいはスミア現象やブルーミング現象の発生していない場所で誤補正する場合がある。
【0022】
また、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を抽出して有効画素信号から取り除く処理を行なうと、抽出されるノイズ成分が過度に大きくなり、高輝度発生源11eの上下(帯状部分)の帯状ノイズ11fが取り除かれるだけでなく、帯状部分が過度に低レベルになってしまう現象(過度な補正)が見られる。つまり、スミア現象やブルーミング現象による帯状ノイズ11fが発生する部分に不自然な縞模様が出てしまう現象が発生する。
【0023】
また、帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、OBラインでの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれに起因して、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう。つまり、スミア現象やブルーミング現象による帯状ノイズ11fが発生する境界付近に不自然な縞模様(筋状のノイズ)が出てしまう現象が発生する。
【0024】
また、スミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fの信号レベルは、比較的高輝度の高輝度発生源11eの場合には高レベルの縦筋(白筋)で現われるが、比較的低い輝度の高輝度発生源11eの場合には中レベルの縦筋で現われる。中レベルの縦筋の帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、比較的適切にその中レベルの帯状ノイズ11fを除去できるが、高レベルの縦筋の帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を有効画素信号から取り除くと、前述の超高輝度の部分と同様に、過補正になることがある。つまり、映像信号が高輝度に張り付いてしまっている画素信号の部分、すなわちスミア現象やブルーミング現象による高レベルの帯状ノイズ11fが発生する部分に不自然な縞模様が出てしまう現象が発生する。
【0025】
このように、従来の補正処理の仕組みでは、補正残しや誤補正が発生し、高精度な帯状ノイズのキャンセルが実現できなかった。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スミア現象やブルーミング現象によって生じる偽信号(帯状ノイズ11f)を抑制する補正処理を行なっても、不自然な縞模様が生じる現象あるいは補正残しを緩和することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を求め、この求めた適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうようにした。
【0028】
具体的には、本発明に係る第1の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求め、このばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0029】
また、本発明に係る第2の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化(クリップ処理)した適正なノイズ成分を求め、この所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0030】
また、本発明に係る第3の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をした適正なノイズ成分を求め、この帯域制限処理をした適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0031】
また、本発明に係る第4の偽信号抑制処理方法では、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を調整することで、補正量を調整することとする。つまり、帯状ノイズに対する補正レベルを、帯状ノイズの信号レベルに応じて可変する。そして、この補正量が調整された補正信号を使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0032】
また、本発明に係る第5の偽信号抑制処理方法では、前述の第1〜第4の手法を順次適用するようにした。すなわち、高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、抽出されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理を行ない(第1の偽信号抑制処理方法の処理)、コアリング処理にてばらつき成分を抑制したノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分を求め(第2の偽信号抑制処理方法の処理)る。
【0033】
さらに、所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をしたノイズ成分を求め(第3の偽信号抑制処理方法の処理)、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、抽出されたノイズ成分もしくは帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を調整することで、補正量を調整することとする(第4の偽信号抑制処理方法の処理)。
【0034】
そして、最後に、この補正量が調整された補正信号を使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なうこととした。
【0035】
なお、第5の偽信号抑制処理方法においては、コアリング処理に先立って、抽出されたノイズ成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出し、ノイズ成分と背景の偽信号成分とに基づいて、ノイズ成分から背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める。なお、このような処理は、第5の偽信号抑制処理方法に適用するだけでなく、第1〜第4の偽信号抑制処理方法にも適用できる。
【0036】
この後に、コアリング処理においては、背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を処理対象として、この背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるようにするのがよい。第1〜第4の偽信号抑制処理方法に適用する場合、コアリング処理に代わるそれぞれの処理(たとえばクリップ処理や帯域制限処理など)においては、背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を処理対象とすればよい。
【0037】
本発明に係る偽信号抑制処理回路や撮像装置は、上記本発明に係る偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、補正信号適正化処理部が求めた適正なノイズ成分を補正信号として使用して、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部とを備えるものとした。
【0038】
具体的には、本発明に係る第1の偽信号抑制処理回路や第1の撮像装置は、上記本発明に係る第1〜第4の何れかの偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に撮像デバイスから出力される撮像信号に含まれる、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応するノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部を先ず備える構成とした。
【0039】
また、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第2のノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第3のノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはこのノイズ成分に対応する第4のノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部、および、撮像デバイスで取得される撮像信号もしくはノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分の大きさに基づいて、ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分もしくはノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号に含まれる高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号の補正量を調整する補正量調整部(それぞれの機能部は補正信号適正化処理部の一例である)のうちの少なくとも1つの機能部を備えるようにした。
【0040】
さらに、これら少なくとも1つの機能部から出力される信号を補正信号として用いて、撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部を備える構成とした。
【0041】
ここで、前述の補正信号適正化処理部の一例である各機能部のうちの任意の組合せによる何れか複数の機能部を備えた構成とする場合においては、ノイズ成分抽出部の後段に、コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部、の順となるように各機能部を設ける。そして、後段の機能部は、前段の機能部から出力された処理済みのノイズ信号を対象として、それぞれが担当する処理を行なうようにする。
【0042】
本発明に係る第2の偽信号抑制処理回路や第2の撮像装置は、上記本発明に係る第1〜第4の全ての偽信号抑制処理方法、すなわち上記本発明に係る第5の偽信号抑制処理方法を実施するのに好適な装置(偽信号抑制処理回路および撮像装置)であって、前述の補正信号適正化処理部の一例である各機能部を全て備える構成とした。その配置順は、ノイズ成分抽出部の後段に、コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部、の順となるように各機能部を設ける。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、この抽出されたノイズ成分に対して、たとえば、ばらつき成分を抑制する(第1の偽信号抑制処理)、抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化する(第2の偽信号抑制処理)、抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する(第3の偽信号抑制処理)、あるいは、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変するなどして、より適切な補正信号を求め、このより適切な補正信号を用いて補正処理を行なうようにした。
【0044】
これにより、スミア現象やブルーミング現象によって生じる偽信号(帯状ノイズ)を抑制する補正処理を行なっても、過度な補正や誤補正を防止できるようになり、高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度の帯状ノイズ部分での不自然な縞模様が生じる現象を緩和することができる。また、高輝度に張り付いていない帯状ノイズに対しても、良好な補正を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0046】
<デジタルスチルカメラの全体構成;CCDタイプ>
図1は、本発明に係る撮像装置(カメラシステム)の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の撮像装置は、固体撮像素子10の一例であるたとえばインターライン転送(IT)方式で全画素読出しが可能なCCD固体撮像素子11、被写体Zの光学像を取り込む撮像レンズ50、およびCCD固体撮像素子11を駆動する駆動制御部96を有するカメラモジュール3と、カメラモジュール3により得られる撮像信号に基づいて映像信号を生成しモニタ出力したり所定の記憶メディアに画像を格納したりする本体ユニット4とを備えてなるデジタルスチルカメラ1として構成されている。なお、カメラモジュール3と本体ユニット4とを一体化した形態での撮像装置モジュールとして構成するようにしてもよい。
【0047】
なお、このデジタルスチルカメラ1は、具体的には、フレーム読出方式を用いた静止画撮像動作時にカラー画像を撮像し得るカメラとして適用されるようになっている。また、フレーム読出方式としては、CCD固体撮像素子11と組み合わせることで、一般的な2フィールド読出方式に限らず、3フィールド、4フィールド、あるいは5フィールド、さらにはそれ以上など様々フィールド数の態様の読出方式を適用可能に構成されている。また、静止画撮像モードに限らず、間引き読みを利用して30フレーム/秒に近いフレームレート(たとえば10フレーム以上/秒)での動画撮影モードも用意されている。
【0048】
カメラモジュール3内の駆動制御部96には、CCD固体撮像素子11を駆動するための各種のパルス信号を生成するタイミング信号生成部40と、このタイミング信号生成部40からのパルス信号を受けて、CCD固体撮像素子11を駆動するためのドライブパルスに変換するドライバ(駆動部)42と、CCD固体撮像素子11やドライバ42などに電源供給する駆動電源46が設けられている。
【0049】
カメラモジュール3内の固体撮像素子10(本例ではCCD固体撮像素子11)と駆動制御部96とにより固体撮像装置2が構成される。固体撮像装置2は、CCD固体撮像素子11と駆動制御部96とが、1枚の回路基板上に配されたもの、あるいは1つの半導体基板上に形成されたものとして提供されるものであるのがよい。
【0050】
CCD固体撮像素子11は、その構成例については図示を割愛するが、たとえば、半導体基板上に、画素(ユニットセル)に対応して受光素子の一例であるフォトダイオードなどからなるセンサ部(感光部;フォトセル)が多数、水平(行)方向および垂直(列)方向において2次元マトリクス状に配列されている。これらセンサ部は、受光面から入射した入射光をその光量に応じた電荷量の信号電荷に変換して蓄積する。
【0051】
センサ部は、カラー画像撮像用途として、光が入射されるフォトダイオードなどの受光面には、複数色の色フィルタの組合せからなる色分解フィルタの何れかの色フィルタが設けられる。一例としては、いわゆるベイヤ(Bayer)配列の基本形のカラーフィルタを用いて、正方格子状に配されたセンサ部(単位画素)が赤(R),緑(G),青(B)の3色カラーフィルタ(原色フィルタ)に対応するように配される。あるいは、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y),緑(G)の4色を組み合わせた補色フィルタ構成のものとしてもよい。
【0052】
信号処理として、原色信号処理を行なう構成のものとする場合、原色フィルタとすれば、CCD固体撮像素子11にて得られる撮像信号(複数色の画素信号の組合せ)から、赤(R),緑(G),青(B)の原色信号を分離する原色分離部を割愛することができる。
【0053】
またCCD固体撮像素子11は、センサ部の垂直列ごとに6相もしくは8相駆動に対応する複数本の垂直転送電極が設けられる垂直CCD(Vレジスタ部、垂直転送部)が配列される。垂直CCDの転送方向は図中縦方向であり、この方向に垂直CCD13が複数本並べられて設けられる。さらに、これら垂直CCDと各センサ部との間には読出ゲート(ROG)が介在し、また各ユニットセルの境界部分にはチャネルストップが設けられる。これらセンサ部の垂直列ごとに設けられ、各センサ部から読出ゲート部によって読み出された信号電荷を垂直転送する複数本の垂直CCDによって撮像エリアが構成される。
【0054】
センサ部に蓄積された信号電荷は、読出ゲート部に読出パルスXSGに対応するドライブパルスが印加されることにより垂直CCDに読み出される。垂直CCDは、6相(あるいは8相)の垂直転送クロックV1〜V6(あるいはV8)に基づくドライブパルスφV1〜φV6(φV8)よって転送駆動され、読み出された信号電荷を水平ブランキング期間の一部にて1走査線(1ライン)に相当する部分ずつ順に垂直方向に転送する。この1ラインずつの垂直転送を、特にラインシフトという。
【0055】
また、CCD固体撮像素子11には、複数本の垂直CCDの各転送先側端部すなわち、最後の行の垂直CCDに隣接して、所定(たとえば左右)方向に延在する水平CCD(Hレジスタ部、水平転送部)が1ライン分設けられる。この水平CCDは、たとえば2相の水平転送クロックH1,H2に基づくドライブパルスφH1,φH2によって転送駆動され、複数本の垂直CCDから移された1ライン分の信号電荷を、水平ブランキング期間後の水平走査期間において順次水平方向に転送する。このため2相駆動に対応する複数本(2本)の水平転送電極が設けられる。
【0056】
水平CCDの転送先の端部には、たとえばフローティング・ディフュージョン・アンプ(FDA)構成の電荷電圧変換部が設けられる。この電荷電圧変換部は、水平CCDによって水平転送されてきた信号電荷を順次電圧信号に変換して出力する。この電圧信号は、被写体からの光の入射量に応じたCCD出力(Vout )として導出される。以上により、インターライン転送方式のCCD固体撮像素子11が構成される。
【0057】
また、このデジタルスチルカメラ1の処理系統は、大別して、光学系5、信号処理系6、記録系7、表示系8、および制御系9から構成されている。なお、カメラモジュール3および本体ユニット4が、図示しない外装ケースに収容されて、実際の製品(完成品)が仕上がるのは言うまでもない。
【0058】
光学系5は、シャッタ52、被写体の光画像を集光するレンズ54、および光画像の光量を調整する絞り56を有する撮像レンズ50と、集光された光画像を光電変換して電気信号に変換するCCD固体撮像素子11とから構成されている。被写体Zからの光L1は、シャッタ52およびレンズ54を透過し、絞り56により調整されて、適度な明るさでCCD固体撮像素子11に入射する。このとき、レンズ54は、被写体Zからの光L1からなる映像が、CCD固体撮像素子11上で結像されるように焦点位置を調整する。
【0059】
信号処理系6は、CCD固体撮像素子11からのアナログ撮像信号を増幅する増幅アンプや、増幅された撮像信号をサンプリングすることによってノイズを低減させるCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路などを有するプリアンプ部62、プリアンプ部62が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)変換部64、A/D変換部64から入力されるデジタル信号に所定の画像処理を施すDSP(Digital Signal Processor)で構成されたカメラ信号処理LSI(Large Scale Integrated Circuit;大規模集積回路)としての画像信号処理部66から構成される。
【0060】
画像信号処理部66は、たとえば、補色の撮像データから、赤(R),緑(G),青(B)の原色信号を分離・同時化する原色分離処理、原色の撮像データ(R,G,Bの各画素データ)を同時化する同時化処理、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する縦縞ノイズ補正処理、ホワイトバランス(WB;White Balance )調整を制御するWB制御処理、階調度合いを調整するガンマ補正処理、あるいは輝度データ(Y)や色データ(C)を生成するYC信号生成処理などを行なう。またCCD固体撮像素子11を駆動するタイミングパルスの基準を示す同期信号を生成する機能も持つ。なお、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する縦縞ノイズ補正処理に関わる本実施形態特有の構成部分については後で詳しく説明する。
【0061】
このDSPで構成される画像信号処理部66は、各機能部分の全ての処理をそれぞれ専用のハードウェアによるデジタル処理回路で行なう構成とすることもできるし、これら機能部分の一部をソフトウェア処理で行なう構成とすることもできる。
【0062】
ソフトウェアで所定の処理を行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。これに対して、ハードウェア処理回路で行なうことで、高速化を図ったアクセラレータシステムを構築することができるようになる。アクセラレータシステムは、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを得ることができる。
【0063】
記録系7は、画像データを記憶するフラッシュメモリなどの装置に対して着脱可能なメモリ(記録媒体)72と、画像信号処理部66が処理した画像データを符号化(圧縮)してメモリ72に記録し、また、読み出して復号(伸長)し画像信号処理部66に供給するCODEC(Compression/Decompression )74とから構成されている。
【0064】
表示系8は、画像信号処理部66が処理した画像信号をアナログ化するD/A(Digital/Analog)変換部82、入力されるビデオ信号に対応する画像を表示することによりファインダとして機能する液晶(LCD;Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)などよりなるビデオモニタ84、およびアナログ化された画像信号を後段のビデオモニタ84に適合する形式のビデオ信号にエンコードするビデオエンコーダ86から構成されている。なお、D/A変換部82とビデオエンコーダ86との配置を逆にして、エンコード処理をデジタル処理で行なう構成とすることもできる。この場合、ビデオエンコーダ86を画像信号処理部66に取り込むこともできる。
【0065】
制御系9は、先ずデジタルスチルカメラ1の全体を制御するCPU(Central Processing Unit )などよりなる中央制御部92と、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)93a、随時書込みおよび読出しが可能であるともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)93b、不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)93c、白点位置情報や各種調整データなど装置個別のデータを格納する不揮発性の記憶部の一例であるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)93dを有する記憶部(メモリ部)93とを備えている。なお、CPUなどからなる中央制御部92やEEPROM93dを除く記憶部93の各種メモリはDSPで構成された画像信号処理部66に取り込むこともできる。
【0066】
上記において“揮発性の記憶部”とは、デジタルスチルカメラ1の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、デジタルスチルカメラ1のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。なお、特殊用途として、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、外付けの駆動装置を利用することで、磁気ディスクや光ディスクなどの外部媒体を利用して構成してもよい。
【0067】
このような電子計算機のように構成されるデジタルスチルカメラ1においては、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、記録媒体(本例ではROM93a)からインストールされる。このソフトウェアの中には、コンピュータ上で稼働するOS(オペレーティングシステム;基本ソフト)も含まれる。
【0068】
なお、所定の処理を中央制御部92に実行させるプログラムは、CD−ROMやフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、任意の可搬型の記憶媒体を通じて配布(取得や更新)されてもよいし、あるいは、サーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
【0069】
中央制御部92は、半導体メモリなどで構成された記憶部93のROM93aに記憶されている制御用プログラムを読み出し、読み出した制御用プログラム、あるいはユーザからのコマンドなどに基づいてデジタルスチルカメラ1の全体の動作や信号処理を制御する。CPUやメモリを利用してソフトウェア的にデジタルスチルカメラ1を構成する、すなわちパーソナルコンピュータなどのコンピュータ(電子計算機)の機能を利用してデジタルスチルカメラ1をソフトウェア的に機能させる構成が実現される。
【0070】
このような構成において、中央制御部92は、システムバス99を介してシステム全体の制御を行なう。ROM93aは、中央制御部92の制御プログラムなど装置共通のデータを格納する。RAM93bは、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納する。また、RAM93bは、固体撮像素子10で読み取った画像データや、所定のアプリケーションプログラムによって編集した画像データやメモリ72から読み取った画像データなどを一時的に格納する領域を含んでいる。
【0071】
また制御系9は、画像信号処理部66に送られた画像の明るさが適度な明るさを保つようにシャッタ52や絞り56を制御する露出コントローラ94、CCD固体撮像素子11から画像信号処理部66までの各機能部の動作タイミングを制御するタイミング信号生成部(タイミングジェネレータ;TG)40を具備した駆動制御部96、ユーザがシャッタタイミングやその他のコマンドを入力する操作部98を有する。 中央制御部92は、デジタルスチルカメラ1のシステムバス99に接続された画像信号処理部66、CODEC74、メモリ72、露出コントローラ94、およびタイミング信号生成部40を制御している。
【0072】
このデジタルスチルカメラ1では、オートフォーカス(AF)、オートホワイトバランス(AWB)、自動露光(AE)などの自動制御装置を備えている。これらの制御は、CCD固体撮像素子11から得られる出力信号を使用して処理する。たとえば、露出コントローラ94は、画像信号処理部66に送られた画像の明るさが適度な明るさを保つようにその制御値が中央制御部92により設定され、その制御値に従って絞り56を制御する。具体的には、中央制御部92が画像信号処理部66に保持されている画像から適当な個数の輝度値のサンプルを獲得し、その平均値が予め定められた適当とされる輝度の範囲に収まるように絞り56の制御値を設定する。
【0073】
タイミング信号生成部40は、中央制御部92により制御され、CCD固体撮像素子11、プリアンプ部62、A/D変換部64、および画像信号処理部66の動作に必要とされるタイミングパルスを発生し、各部に供給する。操作部98は、ユーザが、デジタルスチルカメラ1を動作させるとき操作される。
【0074】
図示した例は、信号処理系6のプリアンプ部62およびA/D変換部64をカメラモジュール3に内蔵しているが、このような構成に限らず、プリアンプ部62やA/D変換部64を本体ユニット4内に設ける構成を採ることもできる。またD/A変換部を画像信号処理部66内に設ける構成を採ることもできる。
【0075】
また、タイミング信号生成部40をカメラモジュール3に内蔵しているが、このような構成に限らず、タイミング信号生成部40を本体ユニット4内に設ける構成を採ることもできる。またタイミング信号生成部40とドライバ42とが別体のものとしているが、このような構成に限らず、両者を一体化させたもの(ドライバ内蔵のタイミングジェネレータ)としてもよい。こうすることで、よりコンパクトな(小型の)デジタルスチルカメラ1を構成できる。
【0076】
また、タイミング信号生成部40やドライバ42は、それぞれ個別のディスクリート部材で回路構成されたものでもよいが、1つの半導体基板上に回路形成されたIC(Integrated Circuit)として提供されるものであるのがよい。こうすることで、コンパクトにできるだけなく、部材の取扱いが容易になるし、両者を低コストで実現できる。また、デジタルスチルカメラ1の製造が容易になる。また、使用するCCD固体撮像素子11との関わりの強い部分であるタイミング信号生成部40やドライバ42をCCD固体撮像素子11と共通の基板に搭載することで一体化させる、あるいはカメラモジュール3内に搭載することで一体化させると、部材の取扱いや管理が簡易になる。また、これらがモジュールとして一体となっているので、デジタルスチルカメラ1(の完成品)の製造も容易になる。なお、カメラモジュール3は、CCD固体撮像素子11および光学系5からのみ構成されていても構わない。
【0077】
このようなCCD固体撮像素子11を備えたデジタルスチルカメラ1の一連の動作を概説すれば以下の通りである。先ず、タイミング信号生成部40は、垂直転送用の転送クロックV1〜V6(V8)や読出パルスXSGなどの種々のパルス信号を生成する。これらのパルス信号は、ドライバ42により所定電圧レベルのドライブパルスに変換された後に、CCD固体撮像素子11の所定端子に入力される。
【0078】
被写体Zを撮像する際に、撮像レンズ50(シャッタ52およびレンズ54)を介してCCD固体撮像素子11の受光面に結像された被写体Zの光学像は、フォトダイオードなどからなる各センサ部で光の入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。
【0079】
センサ部の各々に蓄積された信号電荷は、タイミング信号生成部40から発せられた読出パルスXSGが読出ゲート部の転送チャネル端子電極に印加され、転送チャネル端子電極下のポテンシャルが深くなることにより、当該読出ゲート部を通して垂直CCDに読み出される。そして、6相(8相)の垂直ドライブパルスφV1〜φV6(φV8)に基づいて垂直CCDが駆動されることで、順次水平CCDへ転送される。
【0080】
なお、蓄積した信号電荷をシャッタゲートパルスによって掃出可能な構造のものとすれば、電荷の蓄積時間(シャッタスピード)を制御する、いわゆる電子シャッタ機能を実現できる。この場合、撮像レンズ50のシャッタ52を取り外すことができ、光学系5をコンパクトにすることができる。
【0081】
水平CCDは、タイミング信号生成部40から発せられドライバ42により所定電圧レベルの変換された2相の水平ドライブパルスφH1,φH2に基づいて、複数本の垂直CCDの各々から垂直転送された1ラインに相当する信号電荷を順次電荷電圧変換部側に水平転送する。
【0082】
電荷電圧変換部は、水平CCDから順に注入される信号電荷を図示しないフローティングディフュージョンに蓄積し、この蓄積した信号電荷を信号電圧に変換し、たとえば図示しないソースフォロア構成の出力回路を介して、タイミング信号生成部40から発せられたリセットパルスRGの制御の元に撮像信号(CCD出力信号)Vout として出力する。
【0083】
すなわち上記CCD固体撮像素子11においては、センサ部を縦横に2次元状に配置してなる撮像エリアで検出した信号電荷を、各センサ部の垂直列に対応して設けられた垂直CCDにより水平CCDまで垂直転送し、この後、2相の水平転送パルスH1,H2に基づいて、信号電荷を水平CCDにより水平方向に転送するようにしている。そして、電荷電圧変換部にて水平CCDからの信号電荷に対応した電位に変換してから出力するという動作を繰り返す。
【0084】
CCD固体撮像素子11から順次読み出された電圧信号、すなわち画素に対応するR,G,Bの各画素信号は、タイミング信号生成部40からの各サンプルパルスなどに基づき、プリアンプ部62にてCDS処理などが施され、A/D変換部64にてデジタルのR,G,Bの各画素データに変換された後、一旦、記憶部93のRAM93bに格納される。
【0085】
RAM93bに格納されたR,G,Bの各画素データは、画像信号処理部66にて、同時化処理やガンマ補正処理などが施された後、輝度データYと色(クロマ)データU,V(あるいはCr,Cb)(纏めてYCデータともいう)に変換され、記憶部93のRAM93bに一旦格納される。
【0086】
表示系8では、RAM93bに格納したYCデータを読み出し、液晶などからなるビデオモニタ84に出力することにより、スルー画像や撮影された静止画などを表示させることができる。
【0087】
また、撮影後のYCデータは、圧縮/伸長機能を持つCODEC74によって、JPEG(Joint Photographic Experts Group)などの所定のフォーマットに圧縮されたのち、メモリ72などの記録媒体に記録される。さらに、再生モード時にはメモリ72などに記録されている画像データがCODEC74によって伸長処理された後、ビデオモニタ84に出力され、再生画像が表示される。
【0088】
<<縦縞ノイズ補正処理機能>>
図2は、図1に示したデジタルスチルカメラ1における縦縞ノイズ補正処理機能に着目したブロック図である。
【0089】
図示するように、画像処理部(DSP)66における信号処理機能として、固体撮像素子10で取得されA/D変換部64にてデジタル化された撮像データの黒基準をクランプするデジタルクランプ部200、デジタルクランプ部200にてクランプされた撮像データからR,G,Bの原色データを抽出するとともに同時化する原色分離・同時化処理部202を備えている。
【0090】
また画像信号処理部66は、原色データR,G,Bに対して、補間処理やその他の輝度信号処理や色信号処理を施して輝度データY(あるいは明度データL)や2つの色データU,Vに変換して出力する信号処理部220を備えている。信号処理部220にて生成された各データY,U,Vは、記録系7に送られて画像記録に供されたり、あるいは表示系8に送られて表示出力に供されたりする。
【0091】
信号処理部220は、一例として、ガンマ補正部222および色差マトリクス部224を備えている。もちろん、この構成例は一例であって、これらの処理機能以外の構成要素も備える。
【0092】
ガンマ補正部222は、R信号Sr3,G信号Sg3,B信号Sb3に基づいて、忠実な色再現のためのガンマ(γ)補正を行ない、ガンマ(γ)補正された各色用の出力信号R,G,Bを色差マトリクス部224に入力する。色差マトリクス部224は、色差マトリクス処理を行なって得た色差信号R−Y,B−Yをビデオエンコーダ86に入力する。
【0093】
ビデオエンコーダ86は、色信号副搬送波に対応するデジタル信号で色差信号R−Y,B−Yをデジタル変調した後、図示しない輝度信号生成部にて生成された輝度信号Yと合成して、デジタル映像信号VD(=Y+S+C;Sは同期信号、Cはクロマ信号)に変換した後、D/A変換部82に入力する。D/A変換部82は、デジタル映像信号VDをアナログ映像信号Vに変換する。
【0094】
また画像信号処理部66は、本実施形態の特徴部分として、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する機能要素として、OBゲート部242と補正信号検知部244と補正処理部246とを含んで構成された帯状ノイズ補正処理部240を原色分離・同時化処理部202の前段に備えている。
【0095】
補正信号検知部244において帯状ノイズ補正信号S19を生成して、この帯状ノイズ補正信号S19を利用して補正処理部246において補正済画素信号S30を求める処理としては、基本的には、遮光された光電変換素子部(OB画素)に漏れ込んだ電荷を含んだ画素信号を補正成分として検知(抽出)して、画素信号S10からこの帯状ノイズ補正信号S19を差し引くことで補正済画素信号S30を求める。
【0096】
すなわち、基準画素領域11cのOB画素を含むライン(OBライン)の出力を利用する。OB画素は被写体を撮像することはなく、被写体撮像電荷は生じないが、スミア現象やブルーミング現象による電荷は存在する。よって、OBラインの出力を利用すれば、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズレベル情報や位置情報などが得られることとなり、補正回路はその情報を利用して有効画素領域11bの受光画素のライン(受光ライン)からの画素信号S10より、この抽出した縦縞ノイズ成分を差し引くことで補正済画素信号S30を取得する。具体的には、以下の通りである。
【0097】
OBゲート部242は、固体撮像素子10としてのCCD固体撮像素子11から読み出された画素信号S10から、遮蔽されたOB画素を有する基準画素領域11cのOB画素信号S12を抽出する。抽出する範囲は、図10に示した上下の部分(OBラインの画素)の基準画素領域11cと図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素の範囲である。OBゲート部242は、抽出したOB画素信号S12を、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を検出する補正信号検知部244に入力する。
【0098】
OBゲート部242には図示しないアナログスイッチが設けられており、このアナログスイッチにはCCD水平シフトレジスタからの画素信号S10が入力され、このアナログスイッチはその画素信号S10のうちのOB期間の信号のみを後段の補正信号検知部244に渡す。その振分けは、図10に示した上下の部分(OBラインの画素)の基準画素領域11cと、図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素の範囲である。
【0099】
補正信号検知部244は、OB画素信号S12に基づいて、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を表わす帯状ノイズ補正信号S19を検出する。補正信号検知部244は、この検出した帯状ノイズ補正信号S19を補正処理部246に入力する。
【0100】
補正処理部246は、差分処理機能を備えて構成されており、補正信号検知部244で検知された帯状ノイズ補正信号S19を、CCD固体撮像素子11から読み出された画素信号S10における同じ垂直方向の列ごとの光電変換素子の画素信号レベルから減算することにより、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分の補正が行なわれた補正済画素信号S30を生成する。
【0101】
補正処理部246の差分処理機能は、たとえば演算増幅器で実現することができる。たとえば、演算増幅器の非反転入力端子には画素信号S10が入力され、反転入力端子には補正信号検知部244からの帯状ノイズ補正信号S19が入力される。演算増幅器は、有効画素領域11bにおける受光画素の画像信号S10から、OBラインの画素信号に基づいて取得した帯状ノイズ補正信号S19を差し引き、これを補正済画素信号S30として出力する。
【0102】
なお、OBラインの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ補正信号S19を画素信号S10から減算して補正を加えると、高輝度被写体画像が移動した場合には誤補正になるという問題がある。この問題を避けるためには、たとえば、特許文献1に記載のように、帯状ノイズ11fを消去するための補正処理を受けようとする被補正画面の画像信号入力前における画素列別平均値検出部254から出力される帯状ノイズ補正信号S19を記憶する第1記憶手段と、被補正画面の画像信号入力後における画素列別平均値検出部254から出力される帯状ノイズ補正信号S19を記憶する第2記憶手段と、被補正画面の画像信号を記憶する被補正画面記憶手段とを用意するとよい。
【0103】
補正処理部246は、その一端が第1記憶手段の示すノイズ発生位置となり、かつ他端が第2記憶手段の示すノイズ発生位置となる帯状領域のみを補正対象領域として、被補正画面記憶手段に保持されている画像信号についての補正処理を実行するようにすればよい。こうすることで、帯状ノイズ11fを生じさせる高輝度被写体が静止している場合のみならず、動く場合であっても、帯状ノイズ11fの補正を良好に行なうことができるようになる。
【0104】
<<補正成分検知部の構成例>>
図3は、帯状ノイズ補正処理部240における補正量を検出するための補正信号検知部244の一構成例を示した回路ブロック図である。また、図4は、図3に示した補正信号検知部244の一構成例における各機能部の出力信号波形の一例を示した図である。各出力信号波形は、水平アドレス方向について示している。
【0105】
図示するように、補正信号検知部244は、平均値検出部252、画素列別平均値検出部254、および背景信号抑制処理部256を含んで構成された画素列別帯状ノイズ信号S15を生成する前段処理部247と、コアリング処理部258、クリップ処理部260、ローパスフィルタ処理部262、および補正量調整部264を備えた後段処理部248とを有して構成されている。
【0106】
補正量調整部264は、中央制御部92により予め設定されるサプレス処理開始レベルLspstおよびサプレス処理終了レベルLspedと、前段処理部247により抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15の大きさとを比較して、中央制御部92により予め設定される妥協係数Kcompの大きさを調整することで、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分を抑制するための帯状ノイズ補正信号S19を生成する。
【0107】
OBゲート部242を通ったOB画素信号S12は、前段処理部247の平均値検出部252および画素列別平均値検出部254に入る。
【0108】
前段処理部247は、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を示す画素列別帯状ノイズ信号S15を抽出するノイズ成分抽出部の機能を持つとともに、抽出したノイズ成分から高輝度の被写体に起因しない背景の偽信号成分を抑制する機能とを備えている。
【0109】
たとえば、平均値検出部252は、画素列別平均値検出部254が抽出した、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を示す画素列別平均値信号S14に含まれる、高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分の一例である平均値検出信号S13を抽出する背景信号抽出部の一例である。
【0110】
背景信号抑制処理部256は、画素列別平均値検出部254が抽出した画素列別平均値信号S14と平均値検出部252により抽出された背景信号成分を示す平均値検出信号S13とに基づいて、画素列別平均値信号S14から背景成分である平均値検出信号S13が抑制されたノイズ成分を示す画素列別帯状ノイズ信号S15を求める。
【0111】
具体的には、先ず背景信号抽出部の機能を持つ平均値検出部252は、第1の帯状の偽信号成分である帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しないすなわちスミア現象やブルーミング現象に関わりのない第2の偽信号成分の一例である暗電流成分を抽出する第2偽信号抽出処理部の一例である。この平均値検出部252は、OB画素信号S12の内、OBゲート部242を通った、水平方向の遮蔽された光電変換部(OB画素)である、図10に示した左右部分の基準画素領域11cの水平OB画素から出力される画素信号の平均値を計算して、平均値検出信号S13(図4(A)参照)を生成する。
【0112】
これは、後述する画素列別平均値検出部254において抽出されるスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ信号成分に含まれる、スミア現象やブルーミング現象に関係しない暗電流成分を、帯状ノイズ11fが現われることのない水平方向の基準画素領域11cのOB画素信号を使って抽出することを目的としたものである。
【0113】
画素列別平均値検出部254は、高輝度の被写体に起因したスミア現象やブルーミング現象による帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出する帯状偽信号抽出処理部の一例であって、ノイズ成分抽出部の主要な機能を持つ。具体的には、画素列別平均値検出部254は、OB画素信号S12の内、OBゲート部242を通った、図10に示した垂直方向の複数ライン(OBラインの画素)の遮蔽された光電変換部(OB画素)の画素列ごとの画素信号の平均値を計算し、画素列別平均値信号S14(図4(B)参照)を生成する。
【0114】
これにより、特許文献1記載の手法と同様に、スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号である帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を抽出できる。ただし、先にも述べたように、この画素列別平均値検出部254で抽出される成分には、スミア現象やブルーミング現象に起因する本来のノイズ成分以外に、暗電流成分を含む(図4(B)参照)。
【0115】
背景信号抑制処理部256は、差分処理機能を備えて構成されており、画素列別平均値検出部254で取得された第1の帯状の偽信号成分である画素列別平均値信号S14と平均値検出部252で取得された第2の偽信号成分である平均値検出信号S13とに基づいて、画素列別平均値信号S14(第1の帯状の偽信号成分)から平均値検出信号S13(第2の偽信号成分)が抑制された適正な帯状の偽信号成分である画素列別帯状ノイズ信号S15を求める適正偽信号抽出処理部の機能を持つ。
【0116】
具体的には、背景信号抑制処理部256の差分処理機能は、たとえば演算増幅器で実現することができる。たとえば、演算増幅器の反転入力端子には平均値検出部252からの平均値検出信号S13が入力され、非反転入力端子には画素列別平均値検出部254からの画素列別平均値信号S14が入力される。演算増幅器は、画素列別平均値検出部254から出力された画素列別平均値信号S14から、平均値検出部252から出力された平均値検出信号S13を差し引き(減算し)、これを画素列別帯状ノイズ信号S15(図4(C)参照)として出力する。
【0117】
ここで、画素列別平均値信号S14から平均値検出信号S13を減算するのは、遮蔽された光電変換部(OB画素)では、光が当たっていなくても暗電流が発生するため、帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分に関しても、この暗電流の影響を除くことが好ましいからである。
【0118】
このため、前段処理部247においては、スミア現象やブルーミング現象に起因した縦縞ノイズ成分に影響が無い水平方向のOB画素の電荷出力信号である平均値検出信号S13を用いて、垂直方向の遮蔽された光電変換部(OBラインの画素)における暗電流の影響を除去する目的で、背景信号抑制処理部256は、画素列別平均値信号S14から平均値検出信号S13を減算する減算処理を行なう。
【0119】
このことから分かるように、前段処理部247は、高輝度の被写体に起因した第1の帯状の偽信号成分を抽出し、第1の帯状の偽信号成分に含まれる、高輝度の被写体に依存しない第2の偽信号成分である背景信号成分を抽出し、第1の帯状の偽信号成分と第2の偽信号成分(背景信号成分)とに基づいて、第1の帯状の偽信号成分から第2の偽信号成分が抑制された適正な帯状の偽信号成分を求める機能を持つ。
【0120】
また、前段処理部247の後段に配される後段処理部248の各機能部は、前段処理部247で抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15(ノイズ成分)を、より適正なレベルの補正信号に調整する補正信号適正化処理部の機能を持つ。本実施形態においては、背景信号抑制処理部256から出力された画素列別帯状ノイズ信号S15を対象として、それぞれが担当する処理を順次行なう。
【0121】
こうすることで、OB画素信号のばらつき要素を抑制したり、極めて高輝度(超高輝度)の部分を所定レベルに抑制したり、帯状ノイズ11fの水平方向のエッジ部分を帯域制限したり、あるいは帯状ノイズ11fの信号レベルに応じて補正量を調整して、総合的により適切なレベルの補正信号を生成する。適切なレベルの補正信号を用いて補正処理を行なうことで、補正残しが生じることなく、また補正処理によって不自然な縞模様が生じる現象を緩和することができる。
【0122】
具体的には先ず、コアリング処理部258は、遮光された光電変換部(OB画素)の水平方向の電荷出力値ばらつきを抑えるコアリング処理を行なう。つまり、画素列別帯状ノイズ信号S15について、中央制御部92により予め設定されたコアリングレベルLcorr(図4(C)参照)に基づいてコアリング処理を行ない、コアリング処理信号S16(図4(D)参照)を生成する。コアリングレベルLcorrは、OBラインの出力信号のばらつき部分を除去可能なレベルに設定する。
【0123】
ここで、画素列別帯状ノイズ信号S15の水平方向の信号レベルを見た場合、垂直方向の複数ラインの遮光された光電変換部(OBラインの画素)の水平方向の信号出力値にばらつきがあると、スミアが発生していない場所で誤補正する場合がある。結果としては、補正残しの状態となる。
【0124】
そこで、画素列別帯状ノイズ信号S15から設定したコアリングレベルLcorrより下の信号レベルを無効化する、具体的にはゼロに信号レベルを置き換え、このコアリングレベルLcorrより下の信号レベルが無効化されたコアリング処理信号S16を使用して補正処理を行なうようにする。これにより、OBラインの出力信号ばらつきの影響を受けることがないようにすることができ、スミア現象やブルーミング現象の発生していない場所で誤補正する虞れを防止することができる。
【0125】
クリップ処理部260は、高輝度に張り付いてしまっている帯状ノイズ11fの信号レベルを一定レベルに制限する。つまり、コアリング処理部258から出力されたコアリング処理信号S16から、中央制御部92により予め設定されたクリップレベルLclip(図4(D)参照)に基づいてクリップ処理を行なうことで、クリップ処理信号S17(図4(E)参照)を生成する。クリップレベルLclipは、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを過度に補正してしまうことを防止可能なレベルに設定する。
【0126】
ここで、クリップ処理部260におけるクリップ処理とは、スミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分は後段でのLPF(Low Pass Filter ;ローパスフィルタ)処理で適正な処理をするため、コアリング処理信号S16から設定されたクリップレベルLclipより上の信号レベルを無効化する、具体的にはクリップレベルLclipの信号に置き換える処理である。
【0127】
これは、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分を前段処理部247にて抽出した後に、有効画素信号から取り除く処理を行なうと、抽出されるノイズ成分が過度に大きくなり、高輝度発生源11eの上下の帯状ノイズ11fが取り除かれるだけでなく、帯状部分が過度に低レベルになってしまう過度な補正現象が生じてしまう。
【0128】
そこで、極めて高輝度(超高輝度)の部分に起因したスミア現象やブルーミング現象によって生じる帯状ノイズ11fに関しては、コアリング処理信号S16が一定レベル(クリップレベルLclip)以上になると抽出するノイズ成分を抑制する、すなわちクリップレベルLclip以上のノイズ成分はクリップレベルLclipに固定することで、過度な補正がなされることを防止する。これにより、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の上下(帯状部分)を、過度に低レベルにすることなく、帯状ノイズ11fを適切に取り除くことができるようになる。
【0129】
ローパスフィルタ(LPF)処理部262は、帯状ノイズ11fにおける高周波成分を除去するすなわち、帯状ノイズ11fのエッジ成分を滑らかにする帯域制限処理を行なう。つまり、クリップ処理部260から出力されたクリップ処理信号S17から高周波成分を除去するため、予め設定されたLPF(ローパスフィルタ)の特性に従い帯域制限の処理を行なって、ローパス処理信号S18を生成する。
【0130】
これにより、画素列別平均値検出部254においてOBラインでの画素信号に基づいて抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分(画素列別平均値信号S14)と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれ(たとえば信号処理による遅延などによる)が存在しても、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう現象を緩和することができる。
【0131】
補正量調整部264は、帯状ノイズ11fの信号レベルに応じて補正量を可変する。すなわち、ローパスフィルタ処理部262から出力されたローパス処理信号S18をそのまま帯状ノイズ補正信号S19にするのではなく、過補正を回避するため、予め設定されるサプレス処理開始レベルLspstおよびサプレス処理終了レベルLspedと、前段処理部247により抽出された画素列別帯状ノイズ信号S15の大きさとを比較して、予め設定される妥協係数Kcompの大きさを調整する妥協係数調整処理を行なう。
【0132】
この補正量調整部264における妥協係数調整処理の動作としては、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstまでは、予め設定された妥協係数Kcompをローパス処理信号S18に乗算する。また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstを越え、かつサプレス処理終了レベルLspedの間は、信号レベルに応じて妥協係数Kcompを減少させる。また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLspedを越えると、妥協係数Kcompをゼロに固定し、帯状ノイズ補正信号S19をゼロにする。
【0133】
なお、ここで言う妥協係数Kcompとは、予め設定している係数で、最大値は1.0であるものとする。また、サプレス処理開始レベルLspstとは、予め設定している設定値で画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルにより妥協係数Kcompを減少させる開始点である。また、サプレス処理終了レベルLspedとは、予め設定している設定値で画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルにより妥協係数Kcompを減少させる終了点である。この終了点では調整後の妥協係数がゼロとなり、それ以降もゼロとなるようにするのが好ましい。これらについては、後述する図9も参照するとよい。
【0134】
このような処理によって、帯状ノイズ補正信号S19のレベルを低減することで補正の効果を緩和でき、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止することができる。高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度部における帯状ノイズ発生部分での不自然な縞模様を低減し、過補正が起こらないようにすることができる。たとえば、妥協係数Kcompを0.5〜0.6というように1.0よりも低く設定すれば、ローパス処理信号S18の全てのレベルについて、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止することができる。
【0135】
また、サプレス処理終了レベルLsped以上では妥協係数をゼロにすることで、超高輝度の帯状ノイズ11fに対する補正処理を停止することもできる。超高輝度の帯状ノイズ11fは、概ね白レベルとして視認されるが、補正を加えることでその帯状部分が過度に低レベルになってしまう現象(過度な補正)が見られるよりは、元々の白レベルとして視認させておいた方が画質としては好ましいと考えられる。この点では、超高輝度の帯状ノイズ11fに対する補正処理を停止することは、帯状ノイズに対する補正処理についての全体のバランスを考えると、有効な手法である。
【0136】
また、サプレス処理開始レベルLspstからサプレス処理終了レベルLspedの間で漸次妥協係数Kcompの大きさを低減するようにすれば、高輝度の帯状ノイズ11fやその境界部分における過度な補正を防止できる。また、補正の効果が漸次低減するように妥協係数を変化させることで、高輝度〜超高輝度の間で補正の効果の現れ方が急激に変化することを防止できる。
【0137】
<コアリング処理部の構成例>
図5は、補正信号検知部244におけるコアリング処理部258の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、コアリング処理部258は、非反転入力端子(+)に入力されるコアリングレベルLcorrと反転入力端子(−)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルを比較する比較器302と、一方の入力端子(H側)に入力される0レベルと他方の入力端子(L側)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ304とを備えている。コアリングレベルLcorrとしては、画素列別帯状ノイズ信号S15における水平方向の信号出力値のばらつきを除去可能な程度とする。
【0138】
比較器302は、画素列別帯状ノイズ信号S15が、予め設定されたコアリングレベルLcorrより小さいときには出力をHレベルにし、大きいときには出力をLレベルにする。この比較器302の出力信号が切替制御信号CN16として選択スイッチ304の制御端子に入力される。
【0139】
このような構成により、コアリング処理部258は、画素列別帯状ノイズ信号S15が、予め設定されたコアリングレベルLcorrより小さい部分を無効化(ゼロレベル)して、コアリングレベルLcorrより大きい信号部分のみをそのまま出力することでコアリング処理信号S16(図4(D)参照)を生成するというコアリング処理を行なう。
【0140】
このように、画素列別帯状ノイズ信号S15に対して、画素列別帯状ノイズ信号S15における水平方向の信号出力値のばらつきを除去可能な程度のコアリングレベルLcorrを設定してコアリング処理を行なうことで、スミアが発生していない場所で誤補正する虞れを防止することができるようになる。
【0141】
<クリップ処理部の構成例>
図6は、補正信号検知部244におけるクリップ処理部260の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、コアリング処理部258は、反転入力端子(−)に入力されるクリップレベルLclipと非反転入力端子(+)に入力されるコアリング処理信号S16のレベルを比較する比較器312と、一方の入力端子(H側)に入力されるクリップレベルLclipと他方の入力端子(L側)に入力されるコアリング処理信号S16の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ314とを備えている。クリップレベルLclipとしては、コアリング処理信号S16におけるスミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分を一定レベルに制限可能なレベルにする。
【0142】
比較器312は、コアリング処理信号S16が、予め設定されたクリップレベルLclipより大きいときには出力をHレベルにし、小さいときには出力をLレベルにする。この比較器312の出力信号が切替制御信号CN17として選択スイッチ314の制御端子に入力される。
【0143】
このような構成により、クリップ処理部260は、コアリング処理信号S16が、予め設定されたクリップレベルLclipより大きい部分を無効化、具体的にはクリップレベルLclipに固定して、クリップレベルLclipより小さい信号部分のみをそのまま出力することで、クリップ処理信号S17(図4(E)参照)を生成するというクリップ処理を行なう。
【0144】
このように、コアリング処理信号S16に対して、コアリング処理信号S16におけるスミア現象やブルーミング現象に起因した高レベルの縦縞ノイズ成分を制限可能な程度のクリップレベルLclipを設定してクリップ処理を行ない後段のローパスフィルタ処理部262に渡すことで、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の上下(帯状部分)を、過度に低レベルにすることなく、帯状ノイズ11fを適切に取り除くことができる。
【0145】
<ローパスフィルタ処理部の作用例>
図7は、補正信号検知部244におけるローパスフィルタ処理部262の動作例を説明する図である。ローパスフィルタ処理では、クリップ処理信号S17から高周波成分を除去するため、処理したい画素(注目画素)に隣接する複数画素を用いて平均化フィルタ処理を行なう。このとき、たとえば、周辺画素の係数と中央画素(注目画素)の係数を全て同じにすれば、単純な平滑化フィルタ処理がなされたローパス処理信号S18を生成することができる。また、周辺画素の係数よりも中央画素(注目画素)の係数を大きくすれば、注目画素を強調する重付けフィルタ処理がなされたローパス処理信号S18を生成することができる。
【0146】
たとえば、図7に示すように、水平アドレスにおける任意位置xを注目画素として両隣の画素との間でフィルタ係数を{1、2、1}に設定してローパスフィルタ処理を行なう場合、3つの画素の画素データをそれぞれ(Ax-1),Ax,(Ax+1)とすると、任意位置xのローパス処理信号S18であるYxは、式(1)で示される。
【0147】
【数1】
【0148】
これにより、画素列別平均値検出部254により抽出した帯状ノイズ11fを表わすノイズ成分(画素列別平均値信号S14)と実際に発生する帯状ノイズ11f部分との微妙な位置ずれが存在しても、境界部分でやんわりと補正処理を加えることができるので、帯状ノイズ11fが発生する部分と発生しない部分の境界で、筋状のノイズ(過度な補正がされた現象)が現われてしまう現象を緩和することができる。
【0149】
また、クリップ処理部260において、コアリング処理信号S16がクリップレベルLclipより大きい部分を予めクリップレベルLclipに固定しておいているので、極めて高輝度(超高輝度)の部分を撮像した場合でも、その超高輝度の発生源の周辺画素に対して、過度に補正がなされてしまう虞れを低減できる。
【0150】
<妥協係数調整処理部の構成例>
図8は、補正信号検知部244における補正量調整部264の一構成例を示した回路ブロック図である。図示するように、補正量調整部264は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベル並びにサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとに基づいて妥協係数Kcompを調整して調整済み妥協係数Kadj を生成する妥協係数調整部322と、反転入力端子(−)に入力されるサプレス処理開始レベルLspstと非反転入力端子(+)に入力される画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルを比較する比較器324とを備えている。
【0151】
また補正量調整部264は、一方の入力端子(L側)に入力される妥協係数Kcompと他方の入力端子(H側)に入力される妥協係数調整部322からの調整済み妥協係数Kadj の何れか一方を選択して出力する2入力−1出力型の選択スイッチ326と、選択スイッチ326から出力された適正な妥協係数Koに基づき、ローパス処理信号S18を補正して帯状ノイズ補正信号S19を生成する乗算処理機能を持つ縦縞ノイズ補正出力信号生成部328とを備えている。
【0152】
妥協係数調整部322は、前段処理部247の背景信号抑制処理部256からの画素列別帯状ノイズ信号S15がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、その画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0153】
具体的には、妥協係数調整部322は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルがサプレス処理開始レベルLspstを越えサプレス処理終了レベルLspedの間は、画素列別帯状ノイズ信号S15のレベルに応じて、妥協係数を概ね線形的に漸次減少させる。このとき、サプレス処理終了レベルLspedのときに妥協係数がゼロとなるようにするのがよい。
【0154】
また、妥協係数調整部322は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLspedを越える場合には、妥協係数をゼロに固定する。なお、このような線形性を持ちつつ漸次変化させることに限らず、たとえばサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で2次関数などの高次関数に従って連続的かつ曲線状に漸次減少させてもよい。
【0155】
比較器324は、妥協係数サプレス処理開始位置判定部の機能を持ち、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst以下の場合は出力をLレベルにし、大きいときには出力をHレベルにする。この比較器324の出力信号が切替制御信号CN19として選択スイッチ326の制御端子に入力される。
【0156】
選択スイッチ326は、比較器324からの切替制御信号CN19がLレベルのときには入力端子(L側)に入力される妥協係数Kcompをそのまま適正な妥協係数Koとして縦縞ノイズ補正出力信号生成部328に入力する一方、比較器324からの切替制御信号CN19がHレベルのときには入力端子(H側)に入力される妥協係数調整部322からの調整済み妥協係数Kadj を適正な妥協係数Koとして縦縞ノイズ補正出力信号生成部328に入力する。
【0157】
縦縞ノイズ補正出力信号生成部328は、ローパスフィルタ処理部262からのローパス処理信号S18に対して選択スイッチ326の出力信号である妥協係数Ko、すなわち妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を乗算することにより帯状ノイズ補正信号S19を生成する。つまり、ローパス処理信号S18に乗算する係数として、妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を選択して使用することで、帯状ノイズ補正信号S19を生成する。
【0158】
このような構成により、補正量調整部264は、先ず、妥協係数サプレス処理開始位置判定部の機能をもつ比較器324での選択スイッチ326に対する切替制御信号CN19の切替の基準を、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst以下の場合は妥協係数Kcompを選択し、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspstを越えた場合に妥協係数Kcompに対するサプレス処理した調整済み妥協係数Kadj を選択するようにする。そして、縦縞ノイズ補正出力信号生成部328は、ローパス処理信号S18に妥協係数Kcompまたは調整済み妥協係数Kadj を乗算することにより帯状ノイズ補正信号S19を取得する。
【0159】
<妥協係数サプレス処理の作用>
図9は、妥協係数調整部322における作用を説明する妥協係数調整処理の概念図である。ローパスフィルタ処理部262から得られたローパス処理信号S18に乗算される妥協係数は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst(A点)以下の場合は設定された妥協係数Kcompを選択し、ローパス処理信号S18に乗算する。
【0160】
また、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理開始レベルLspst(A点)を越え、サプレス処理終了レベルLsped(B点)の間の場合は、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルに応じて妥協係数Kcompを漸次減少させ、ローパス処理信号S18に乗算する。さらに、画素列別帯状ノイズ信号S15の信号レベルがサプレス処理終了レベルLsped(B点)を越えた場合は、妥協係数Kcompをゼロに固定する。
【0161】
妥協係数Kcompの信号レベルに対する減少幅は、図9に示すように、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedを結ぶライン(直線)に従うものとする。つまり、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で妥協係数Kcompを、線形性を持ちつつ、漸次変化させる。
【0162】
ただし、このような直線的な変化に限らず、たとえばサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で2次関数などの高次関数に従って連続的かつ曲線状に漸次減少させてもよい。つまり、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとを曲線で結んでもよい。
【0163】
また、この例では、妥協係数Kcompを0.5〜0.6というように1.0よりも低く設定して、ローパス処理信号S18の全てのレベルについて、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止するようにしているが、妥協係数Kcompを1.0に設定し、サプレス処理開始レベルLspst以下ではローパス処理信号S18の信号レベルをそのまま帯状ノイズ補正信号S19として使用するようにしてもよい。
【0164】
このようにして調整された調整済み妥協係数Kadj を用いてローパス処理信号S18に対して補正を加えて帯状ノイズ補正信号S19を生成することで、帯状ノイズ補正信号S19のレベルを低減することができる。
【0165】
よって、この帯状ノイズ補正信号S19を用いて補正処理部246にて帯状ノイズ11fに対して補正を加えることで、帯状ノイズ11fに対して過度な補正を防止する(補正の効果を緩和する)ことができる。
【0166】
妥協係数Kcompを何れに設定しても、サプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間で妥協係数を漸次減少させることで、高輝度の帯状ノイズ11fやその境界部分における過度な補正を防止できるし、補正の効果が漸次低減するように妥協係数を変化させることで、高輝度〜超高輝度の間で補正の効果の現れ方が急激に変化することを防止できる。
【0167】
高輝度に張り付いていないスミア現象やブルーミング現象に起因した縦縞ノイズ成分に対しても良好な補正を実現することができる。従来の補正回路で出ていた、高輝度の帯状ノイズが発生している境界付近および高輝度の帯状ノイズ部分に発生していた不自然な縞模様をなくすことができる。
【0168】
このように、本実施形態の帯状ノイズ補正処理部240によれば、従来の補正処理の仕組みでは、補正残しや誤補正が発生し、高精度な帯状ノイズのキャンセルが実現できなかったのに対して、背景の偽信号成分である暗電流成分を抑制したり、ばらつき成分を抑制したり、抽出されたノイズ成分の所定レベル以上である部分を無効化したり、抽出されたノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したり、あるいは、帯状ノイズに対する補正レベルを帯状ノイズの信号レベルに応じて可変するなど、これらを組み合わせることで、補正残しや過補正を解決し、適切な帯状ノイズキャンセルを実現することが可能となった。
【0169】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0170】
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0171】
たとえば、上記実施形態では、補正量調整部264は、前段処理部247から出力された画素列別帯状ノイズ信号S15を参照信号として、前段処理部247で抽出され、さらに後段処理部248のコアリング処理部258、クリップ処理部260、およびローパスフィルタ処理部262で順に、より適正なレベルの補正信号に調整されたローパス処理信号S18(高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応する調整済みノイズ成分の一例)に対して補正を加えていた。さらに、撮像デバイスの有効画像領域から出力された画素信号S10に含まれる、高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号として帯状ノイズ補正信号S19を生成していた。しかしながら、妥協係数調整部322で参照する信号は必ずしも、画素列別帯状ノイズ信号S15に限らない。
【0172】
一例としては、妥協係数調整部322で参照する信号は、画素列別帯状ノイズ信号S15の代わりに、画素列別平均値検出部254により抽出された暗電流成分を含む画素列別平均値信号S14そのものを用いてもよいし、あるいは、CCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10を用いてもよい。
【0173】
ここで、画素列別平均値検出部254により抽出された暗電流成分を含む画素列別平均値信号S14を用いる場合には、画素列別平均値信号S14がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、画素列別平均値信号S14のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0174】
CCD固体撮像素子11から出力される画素信号S10を用いる場合は、CCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10がサプレス処理開始レベルLspstとサプレス処理終了レベルLspedとの間にあるとき、画素信号S10のレベルに応じて妥協係数Kcompを圧縮調整(サプレス)して調整済み妥協係数Kadj を生成する。
【0175】
妥協係数調整部322で参照する信号に画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合には、高輝度の被写体に起因しない背景の偽信号である暗電流成分の影響を受けることがなく、本来の帯状ノイズ11fのレベルに応じ、帯状ノイズの補正処理における補正量を適切に調整できるという利点が得られる。
【0176】
また、妥協係数調整部322で参照する信号に画素列別平均値信号S14を用いた場合は、画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合に比べて暗電流成分の影響を受けるものの、暗電流成分は、調整済み妥協係数Kadj を参照信号レベルに応じ可変する領域の信号レベルではなく、妥協係数Kadjの係数固定領域のため、その影響は少ないと考えてよい。
【0177】
また、妥協係数調整部322で参照する信号にCCD固体撮像素子11(固体撮像素子10)から出力される画素信号S10(撮像デバイスからの撮像信号そのもの)を用いる場合には、列ごとではなく、画素ごとに調整済み妥協係数Kadj を生成することが出来る利点が得られる。
【0178】
一方、画素ごとに調整済み妥協係数Kadj を生成することになり、画素ごとに調整済み妥協係数Kadjが変化し、画素毎の偽信号を抑制する補正回路において、ノイズ成分の過補正が発生する可能性がある。しかしながら、偽信号が発生していない領域では、偽信号成分がないので帯状ノイズ補正信号S19は発生しない。
【0179】
このため、偽信号を抑制する補正回路に関しては、影響しない。偽信号が発生している領域では、画素別平均値信号S14や画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合に比べて同じ動作をするので、画素別平均値信号S14や画素列別帯状ノイズ信号S15を用いた場合と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明に係る撮像装置(カメラシステム)の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したデジタルスチルカメラにおける縦縞ノイズ補正処理機能に着目したブロック図である。
【図3】縦縞ノイズ補正処理部における補正量を検出するための補正成分検知部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図4】図3に示した補正成分検知部の一構成例における各機能部の出力信号波形の、水平アドレス方向についての一例を示した図である。
【図5】コアリング処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図6】クリップ処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図7】ローパスフィルタ処理部の動作例を説明する図である。
【図8】妥協係数調整処理部の一構成例を示した回路ブロック図である。
【図9】妥協係数調整部における作用を説明する妥協係数調整処理の概念図である。
【図10】スミア現象やブルーミング現象によって生じる固体撮像デバイス特有の偽信号の概要を説明する図である。
【符号の説明】
【0181】
1…デジタルスチルカメラ(撮像装置)、2…固体撮像装置、3…カメラモジュール、3a…撮像装置モジュール、4…本体ユニット、5…光学系、6…信号処理系、7…記録系、8…表示系、9…制御系、10…固体撮像素子、11…CCD固体撮像素子、11a…画素部、11b…有効画素領域、11c…基準画素領域、11d…ダミー画素領域、11e…高輝度発生源、11f…帯状ノイズ、40…タイミング信号発生器、42…ドライバ、46…駆動電源、50…撮像レンズ、52…シャッタ、54…集光レンズ、56…絞り、62…プリアンプ、64…AD変換器、66…画像信号処理部、72…メモリ、74…CODEC、82…DA変換部、84…ビデオモニタ、86…ビデオエンコーダ、92…中央制御部、93…記憶部(メモリ)、94…露出コントローラ、96…駆動制御部、98…操作部、99…システムバス、200…デジタルクランプ、202…原色分離・同時化処理部、220…信号処理部、222…ガンマ補正部、224…色差マトリクス、240…縦縞ノイズ補正処理部、242…OBゲート部、244…補正成分検知部、246…差分処理部、247…前段処理部(ノイズ成分抽出部)、248…後段処理部(補正信号適正化部)、252…平均値検出部、254…画素列別平均値検出部、256…差分処理部、258…コアリング処理部、260…クリップ処理部、262…ローパスフィルタ処理部、264…妥協係数調整処理部、302…比較器、304…選択スイッチ、312…比較器、314…選択スイッチ、322…妥協係数調整部、324…比較器、326…選択スイッチ、328…乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に、前記撮像デバイスで取得される撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制する偽信号抑制処理方法であって、
前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、
抽出された前記ノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を求め、
この求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする偽信号抑制処理方法。
【請求項2】
抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求め、
この求めた、ばらつき成分を抑制した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項3】
抽出された前記ノイズ成分が所定レベル以上である場合、その部分を無効化した適正なノイズ成分を求め、
前記所定レベル以上である部分を無効化した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項4】
抽出された前記ノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をした適正なノイズ成分を求め、
この帯域制限処理をした前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項5】
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成し、
この補正量が調整された補正信号を使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項6】
抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理を行ない、
前記コアリング処理にて前記ばらつき成分を抑制したノイズ成分が所定レベル以上である場合、その部分を無効化したノイズ成分を求め、
前記所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をしたノイズ成分を求め、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、抽出された前記ノイズ成分もしくは前記帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成し、
この補正量が調整された補正信号を使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項7】
前記コアリング処理に先立って、抽出された前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出し、前記ノイズ成分と前記背景の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求め、
前記コアリング処理においては、前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求める
ことを特徴とする請求項6に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項8】
高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に、前記撮像デバイスで取得される撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制する偽信号抑制処理回路であって、
前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、
前記ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、
前記補正信号適正化処理部が求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部と
を備えたことを特徴とする偽信号抑制処理回路。
【請求項9】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求めるコアリング処理部を含み、
前記補正処理部は、前記コアリング処理部が求めた、ばらつき成分を抑制した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項10】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部を含み、
前記補正処理部は、前記クリップ処理部により前記所定レベル以上である部分を無効化した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項11】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれる高周波成分を除去して適正なノイズ成分を求める帯域制限処理部を含み、
前記補正処理部は、前記帯域制限処理部により求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項12】
前記補正信号適正化処理部は、前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部を含み、
前記補正処理部は、前記補正量調整部により補正量が調整された前記補正信号を用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項13】
前記補正信号適正化処理部は、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部と、前記コアリング処理部が求めた、前記ばらつき成分を抑制したノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部と、
前記クリップ処理部により前記所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部と、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは前記帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部と、
を含んで構成されており、
前記補正処理部は、前記補正量調整部により補正量が調整された前記補正信号を用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項14】
前記ノイズ成分抽出部は、
抽出した前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出する背景信号抽出部と、
前記抽出したノイズ成分と前記偽信号抽出部により抽出された前記第2の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記第2の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める背景信号抑制処理部と
を有し、
前記コアリング処理部は、前記背景信号抑制処理部から出力されたノイズ成分について、前記ばらつき成分を抑制する
ことを特徴とする請求項13に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項15】
被写体の画像を撮像して撮像信号を出力する撮像デバイスと、
高輝度の被写体を前記撮像デバイスで撮像した際に前記撮像デバイスから出力される前記撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応するノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、
前記ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、
前記補正信号適正化処理部が求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
前記補正信号適正化処理部は、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第2のノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第3のノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第4のノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部、および、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部、
のうちの少なくとも1つの機能部を含んで構成されており、
前記補正処理部は、前記少なくとも1つの機能部から出力される信号を補正信号として用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記ノイズ成分抽出部は、
抽出した前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出する背景信号抽出部と、
前記抽出したノイズ成分と前記背景信号抽出部により抽出された前記背景の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める背景成分抑制処理部と
を有し、
前記コアリング処理部は、前記背景信号抑制処理部から出力されたノイズ成分について、前記ばらつき成分を抑制する
ことを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部のうちの任意の組合せによる何れか複数の機能部を備えた構成においては、
前記ノイズ成分抽出部の後段に、前記コアリング処理部、前記クリップ処理部、前記帯域制限処理部、および前記補正量調整部、の順となるように各機能部が設けられ、
後段の機能部は、前段の機能部から出力された処理済みのノイズ信号を対象として、それぞれが担当する処理を行なう
ことを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項1】
高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に、前記撮像デバイスで取得される撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制する偽信号抑制処理方法であって、
前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出し、
抽出された前記ノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を求め、
この求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする偽信号抑制処理方法。
【請求項2】
抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求め、
この求めた、ばらつき成分を抑制した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項3】
抽出された前記ノイズ成分が所定レベル以上である場合、その部分を無効化した適正なノイズ成分を求め、
前記所定レベル以上である部分を無効化した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項4】
抽出された前記ノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をした適正なノイズ成分を求め、
この帯域制限処理をした前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項5】
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成し、
この補正量が調整された補正信号を使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項6】
抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理を行ない、
前記コアリング処理にて前記ばらつき成分を抑制したノイズ成分が所定レベル以上である場合、その部分を無効化したノイズ成分を求め、
前記所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去する帯域制限処理をしたノイズ成分を求め、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、抽出された前記ノイズ成分もしくは前記帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成し、
この補正量が調整された補正信号を使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項7】
前記コアリング処理に先立って、抽出された前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出し、前記ノイズ成分と前記背景の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求め、
前記コアリング処理においては、前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求める
ことを特徴とする請求項6に記載の偽信号抑制処理方法。
【請求項8】
高輝度の被写体を撮像デバイスで撮像した際に、前記撮像デバイスで取得される撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分を抑制する偽信号抑制処理回路であって、
前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分に対応したノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、
前記ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、
前記補正信号適正化処理部が求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部と
を備えたことを特徴とする偽信号抑制処理回路。
【請求項9】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制した適正なノイズ成分を求めるコアリング処理部を含み、
前記補正処理部は、前記コアリング処理部が求めた、ばらつき成分を抑制した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項10】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部を含み、
前記補正処理部は、前記クリップ処理部により前記所定レベル以上である部分を無効化した前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項11】
前記補正信号適正化処理部は、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれる高周波成分を除去して適正なノイズ成分を求める帯域制限処理部を含み、
前記補正処理部は、前記帯域制限処理部により求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項12】
前記補正信号適正化処理部は、前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部を含み、
前記補正処理部は、前記補正量調整部により補正量が調整された前記補正信号を用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項13】
前記補正信号適正化処理部は、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部と、前記コアリング処理部が求めた、前記ばらつき成分を抑制したノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部と、
前記クリップ処理部により前記所定レベル以上である部分を無効化したノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部と、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは前記帯域制限処理をした調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部と、
を含んで構成されており、
前記補正処理部は、前記補正量調整部により補正量が調整された前記補正信号を用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項8に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項14】
前記ノイズ成分抽出部は、
抽出した前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出する背景信号抽出部と、
前記抽出したノイズ成分と前記偽信号抽出部により抽出された前記第2の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記第2の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める背景信号抑制処理部と
を有し、
前記コアリング処理部は、前記背景信号抑制処理部から出力されたノイズ成分について、前記ばらつき成分を抑制する
ことを特徴とする請求項13に記載の偽信号抑制処理回路。
【請求項15】
被写体の画像を撮像して撮像信号を出力する撮像デバイスと、
高輝度の被写体を前記撮像デバイスで撮像した際に前記撮像デバイスから出力される前記撮像信号に含まれる、前記高輝度の被写体に起因した帯状の偽信号成分に対応するノイズ成分を抽出するノイズ成分抽出部と、
前記ノイズ成分抽出部により抽出されたノイズ成分を所定の手順に従って補正して、適正なノイズ成分を補正信号として求める補正信号適正化処理部と、
前記補正信号適正化処理部が求めた前記適正なノイズ成分を補正信号として使用して、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう補正処理部と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
前記補正信号適正化処理部は、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第2のノイズ成分に含まれるばらつき成分を抑制したノイズ成分を求めるコアリング処理部、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第3のノイズ成分の予め設定される所定レベル以上である部分を無効化した適正なノイズ成分を求めるクリップ処理部、
前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する第4のノイズ成分に含まれる高周波成分を除去したノイズ成分を求める帯域制限処理部、および、
前記撮像デバイスで取得される撮像信号もしくは前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分の大きさに基づいて、前記ノイズ成分抽出部により抽出された前記ノイズ成分もしくは当該ノイズ成分に対応する調整済みノイズ成分に対して補正を加えることで、補正量が調整された、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された前記撮像信号に含まれる前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理に使用される補正信号を生成する補正量調整部、
のうちの少なくとも1つの機能部を含んで構成されており、
前記補正処理部は、前記少なくとも1つの機能部から出力される信号を補正信号として用いて、前記撮像デバイスの有効画像領域から出力された撮像信号から、前記高輝度の被写体に起因した前記帯状の偽信号成分を抑制するための補正処理を行なう
ことを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記ノイズ成分抽出部は、
抽出した前記ノイズ成分に含まれる、前記高輝度の被写体に依存しない背景の偽信号成分を抽出する背景信号抽出部と、
前記抽出したノイズ成分と前記背景信号抽出部により抽出された前記背景の偽信号成分とに基づいて、前記ノイズ成分から前記背景の偽信号成分が抑制されたノイズ成分を求める背景成分抑制処理部と
を有し、
前記コアリング処理部は、前記背景信号抑制処理部から出力されたノイズ成分について、前記ばらつき成分を抑制する
ことを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記コアリング処理部、クリップ処理部、帯域制限処理部、および補正量調整部のうちの任意の組合せによる何れか複数の機能部を備えた構成においては、
前記ノイズ成分抽出部の後段に、前記コアリング処理部、前記クリップ処理部、前記帯域制限処理部、および前記補正量調整部、の順となるように各機能部が設けられ、
後段の機能部は、前段の機能部から出力された処理済みのノイズ信号を対象として、それぞれが担当する処理を行なう
ことを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−24985(P2006−24985A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198992(P2004−198992)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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