説明

傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構

【課題】負荷を受けた時のバネの変形分を吸収して、防振性、静音性を向上させた傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構の提供。
【解決手段】傾斜角αを以って一方向に傾斜させた傾斜型オーバルコイルバネとゴム状弾性体とを組合せ、上部フランジを備えたバネ受フランジの上部フランジとバネ受フランジに対向して溝部を設け、この溝部に傾斜型オーバルコイルバネをコイルバネの軸方向に対して横臥して遊嵌・設置し、バネ受フランジ側の溝部の両側上縁部に設けた凹処内にゴム状弾性体を上部フランジと離れて並設し、上部フランジに働く負荷に対して傾斜型オーバルコイルバネの傾斜角αの変形率が適用範囲内で傾斜型オーバルコイルバネを働かせ、ついで上部フランジと係止させて前記ゴム状弾性体を働かせ、弾性体とバネと協働で全荷重を受け、更にコイルバネの軸方向変形分を吸収するための軸受ユニットを一体に組合せたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広く一般に使用される防振、耐震構造等に利用される傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に防振装置に用いられる防振材料としては、振動や音を吸収して減衰させる機能が優れ、且つ強度の高い材料が望まれる。防振ゴム、空気バネ、金属バネ等が知られ、建築物用、輸送機関やその他のエンジン用、また、例えば、防振ゴムは、車両、機械、その他の設備に取り付けて、振動の伝搬防止、または緩衝の目的で使用されているのが通例である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−304336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら上述の先行例において、負荷を受けた時の傾斜型オーバルコイルバネの変形に対する機能面での改善が望まれていた。
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みて成されたもので、特許文献1を基に更に研鑚して機能を向上させたものであり、傾斜型オーバルコイルバネの負荷を受けた時のバネの変形分を吸収して無駄なエネルギーの発生を除去可能とし、防振性、静音性を向上させた傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、下記構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0006】
(1)傾斜度を示すピッチ角αを以って一方向にコイルを傾斜させた傾斜型オーバルコイルバネとゴム状弾性体とを組合わせ、上部フランジを備えたバネ受フランジの上部フランジとバネ受フランジには相対向して所定の溝部を設け、この溝部に前記傾斜型オーバルコイルバネをコイルバネの軸方向に対して横臥して遊嵌・設置し、更に前記バネ受フランジ側の溝部の両側上縁部に設けた凹処内に前記ゴム状弾性体を上部フランジと離れて単層状、若しくは積層状に並設すると共に上部フランジに働く負荷に対して前記傾斜型オーバルコイルバネの傾斜度を示すピッチ角αの変形率が適用範囲内で前記傾斜型オーバルコイルバネを働かせ、ついで前記上部フランジと係止させて前記ゴム状弾性体を働かせ、これにより前記傾斜型オーバルコイルバネと協働で全荷重を受けるように構成し、更に前記傾斜型オーバルコイルバネの軸方向変形分を吸収するための軸受ユニットを一体に組合せた構成とした傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【0007】
(2)前記傾斜型オーバルコイルバネと前記ゴム状弾性体とを組合せた対を複数並設して成る上部フランジを備えたバネ受フランジを単段若しくは多段構造とした前項(1)記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【0008】
(3)前記軸受ユニットは、対向する対となる上下軸受フランジを有し、該フランジの対向する面にそれぞれ係合する溝部を設け、この溝部に沿って転動する複数の転動体から構成される前項(1)記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【0009】
(4)前記転動体は、球体、円筒状ころ、截頭円錐状ころのいずれかから構成される前項(3)記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、小さな負荷変動に対して、変形率が大きく、振動や音の吸収減衰機能が高い傾斜型オーバルコイルバネを横臥状態で利用し、且つ弾性体を並設することにより、負荷に対する応力を分散して、地震その他の外力により発生する衝撃等を緩和し、且つバネの変形分を吸収する構成としたことで静音性を向上させると共に防振部材、耐震部材としての寿命を更に向上させ、経済的な緩衝機構を提供出来るという効果を呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、実施例1における要部構成を示す縦断面図、図2は、実施例2における要部構成を示す縦断面図、図3は、実施形態における要部構成を示す断面拡大図、(a)はコイルバネの軸方向に直交する面に沿った断面図、(b)はA−A断面図、図4は、負荷が掛かった時の状態を示す断面拡大図、(a)はコイルバネの軸方向に直交する面に沿った断面図、(b)はA−A断面図、図5は、実施例3における要部構成を示す縦断面図、図6は、実施例4における要部構成を示す縦断面図、図7は、実施例5における要部構成を示す説明図、(a)は模式的斜視図、(b)はC−C断面図、(c)は(b)の要部平面図、図8は、実施例6における要部構成を示す縦断面図である。
【実施例1】
【0013】
傾斜度を示すピッチ角αを以って一方向にコイルを傾斜させた傾斜型オーバルコイルバネTOSとゴム状弾性体3とを組合わせ、上部フランジ1を備えたバネ受フランジ2の上部フランジ1とバネ受フランジ2には相対向して所定の溝部1a、2aを設け、この溝部1a、2aに前記傾斜型オーバルコイルバネTOSをコイルバネの軸方向に対して横臥して遊嵌・設置し、更に前記バネ受フランジ2側の溝部2aの両側上縁部に設けた凹処3a、3a内に前記ゴム状弾性体3を上部フランジ1と離れて(図中hx)単層状、若しくは積層状に並設すると共に上部フランジ1に働く負荷Pに対して前記傾斜型オーバルコイルバネTOSの傾斜度を示すピッチ角αの変形率が適用範囲内で前記傾斜型オーバルコイルバネTOSを働かせ、ついで前記上部フランジ1と係止させて前記ゴム状弾性体3を働かせ、これにより前記傾斜型オーバルコイルバネTOSと協働で全荷重を受けるように構成し、更に前記傾斜型オーバルコイルバネTOSの軸方向(長手方向)変形分を吸収するための軸受ユニットYbを一体に組合せた構成としたことを特徴とする。
【0014】
軸受ユニットYbは、対向する対となる上下軸受フランジ4、5を有し、該フランジの対向する面にそれぞれ係合する溝部4a、5aを設け、この溝部4a、5aに沿って転動する複数の転動体Brから構成されている。
【0015】
尚、図示するように、傾斜型オーバルコイルバネTOS、ゴム状弾性体3、上部フランジ1、バネ受フランジ2とで構成される組合せがバネユニットYsである。
【0016】
実施例1の場合は、図1に示すように、傾斜型オーバルコイルバネTOSとゴム状弾性体3とを複数列配置して上部フランジ1とバネ受フランジ2とで挟持し、この下方側に転動体Brを形成する球体6を挟持する上部軸受フランジ4と下部軸受フランジ5を支持体を構成するごとく添設し、傾斜型オーバルコイルバネTOS長手方向軸心に沿って設けられた溝(この場合転動体Brを形成する球体6に係合する断面円弧状の溝)4a、5aをガイドとして転動するため、負荷Pが発生して図3(a)、(b)の状態から図4(a)、(b)の状態となり、傾斜型オーバルコイルバネTOSの傾斜度を示すピッチ角αがαとなって傾斜度が大となり、前記コイルバネが沈みこんだ時、傾斜型オーバルコイルバネTOSが長手方向に変形して抵抗が生ずるが、転動体Brを形成する球体6の転動作用(歪を打ち消す方向(矢印イに沿って)に転動する)によりずれようとする変形エネルギーを軸受ユニットYbが吸収するので、振動、騒音などを防止することが出来る。
【実施例2】
【0017】
実施例2は、図2に示すように、傾斜型オーバルコイルバネTOSとゴム状弾性体3(図中、積層ゴム状弾性体)を並列して複列に配置し、上部フランジ1とバネ受フランジ2とで挟持して一段を形成するバネユニットYsを多段として多段式構造(この場合、3段式とした例)とし、最下部に軸受ユニットYbを一体に組合せた構成とした例である。その他実施例1と同様の部分は、説明を省略する。
【実施例3】
【0018】
実施例3は、図5に示すように、傾斜型オーバルコイルバネTOSとゴム状弾性体3とを並列して複列に配置し、上部フランジ1とバネ受フランジ2とで挟持し、単段式複列の構成として一段を形成するバネユニットYsの上側に転動体Brを形成する球体6を挟持する上部軸受フランジ4と下部軸受フランジ5とから成る軸受ユニットYbを添設した場合である。その他実施例1と同様の部分は、説明を省略する。
【実施例4】
【0019】
実施例4は、図6に示すように、実施例2の場合とは、逆に多段のバネユニットYsの最上部に軸受ユニットYbを添設した場合である。その他実施例1及び2と同様の部分は、説明を省略する。
【実施例5】
【0020】
実施例5は、図7(a)、(b)に示すように、全体構成が円盤状となる構成とした場合であり、円板状の上部フランジ7と円板状のバネ受フランジ8との間に傾斜型オーバルコイルバネTOSとゴム状弾性体3とを並列に対を成して周設してバネユニットYs−1を形成し、このバネユニットYs−1の下側に円板状の上部軸受フランジ9と下部軸受フランジ10とを有し、この間に転動体Brを形成する複数の截頭円錐状ころ11を挟持して成る軸受ユニットYb−1を添設した場合であり、上方から負荷が掛かった場合、傾斜型オーバルコイルバネTOSが傾斜側に傾斜角度を増して変形すると円周方向に撓みが生じ、この作用を打ち消すように円板状のバネ受フランジ8と上部軸受フランジ9とが回転しようとする方向に転動体Brを形成する複数の截頭円錐状ころ11が従動して傾斜型オーバルコイルバネTOSの変形分を吸収するために最下部の基盤となる下部軸受フランジ10が固定され安全な状態を維持することが出来る。図7(c)は截頭円錐状ころ11の形状を説明したものであり、円盤の中心CLから円周側に向かって放射状の線分の広がり角度βに沿って描かれる外側に向かって末広がりの截頭円錐状ころを構成する。截頭円錐状ころ11の形状、大きさ及び個数は円盤の大きさ、負荷の大きさに対応して自由に決めることができる。
【0021】
符号12は、組立て式着脱自在の回転軸である。
【実施例6】
【0022】
実施例6は、図8に示すように、実施例5の転動体Brを球体15に置き換えた場合であり、その他の構成は実施例5の場合と同様である。
【0023】
尚、図7(b)中の符号9a、10aは転動体Brを形成する截頭円錐状ころ11に係合するガイド用の溝部であり、また図8中の符号13a、14aは転動体Brを形成する球体15に係合するガイド用の断面円弧状の溝部である。
【0024】
更に尚、軸受ユニットを構成する転動体は、負荷の状況、構造などの条件に応じて球体、円筒状ころ、截頭円錐状ころ、のいずれかを自由に選択でき、また材質については、金属製、合成樹脂製等負荷に適応出来るものであれば良く、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1における要部構成を示す縦断面図
【図2】実施例2における要部構成を示す縦断面図
【図3】実施形態における要部構成を示す断面拡大図、(a)コイルバネの軸方向に直交する面に沿った断面図、(b)A−A断面図
【図4】負荷が掛かった時の状態を示す断面拡大図、(a)コイルバネの軸方向に直交する面に沿った断面図、(b)A−A断面図
【図5】実施例3における要部構成を示す縦断面図
【図6】実施例4における要部構成を示す縦断面図
【図7】実施例5における要部構成を示す説明図、(a)模式的斜視図、(b)C−C断面図、(c)は(b)の要部平面図
【図8】実施例6における要部構成を示す縦断面図
【符号の説明】
【0026】
1、7 上部フランジ
2、8 バネ受フランジ
3 ゴム状弾性体
4、9、13 上部軸受フランジ
5、10、14 下部軸受フランジ
6、15 球体
11 截頭円錐状ころ
Br 転動体
TOS 傾斜型オーバルコイルバネ
Yb 軸受ユニット
Ys バネユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜度を示すピッチ角αを以って一方向にコイルを傾斜させた傾斜型オーバルコイルバネとゴム状弾性体とを組合わせ、上部フランジを備えたバネ受フランジの上部フランジとバネ受フランジには相対向して所定の溝部を設け、この溝部に前記傾斜型オーバルコイルバネをコイルバネの軸方向に対して横臥して遊嵌・設置し、更に前記バネ受フランジ側の溝部の両側上縁部に設けた凹処内に前記ゴム状弾性体を上部フランジと離れて単層状、若しくは積層状に並設すると共に上部フランジに働く負荷に対して前記傾斜型オーバルコイルバネの傾斜度を示すピッチ角αの変形率が適用範囲内で前記傾斜型オーバルコイルバネを働かせ、ついで前記上部フランジと係止させて前記ゴム状弾性体を働かせ、これにより前記傾斜型オーバルコイルバネと協働で全荷重を受けるように構成し、更に前記傾斜型オーバルコイルバネの軸方向変形分を吸収するための軸受ユニットを一体に組合せた構成としたことを特徴とする傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【請求項2】
前記傾斜型オーバルコイルバネと前記ゴム状弾性体とを組合せた対を複数並設して成る上部フランジを備えたバネ受フランジを単段若しくは多段構造としたことを特徴とする請求項1記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【請求項3】
前記軸受ユニットは、対向する対となる上下軸受フランジを有し、該フランジの対向する面にそれぞれ係合する溝部を設け、この溝部に沿って転動する複数の転動体から構成されることを特徴とする請求項1記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。
【請求項4】
前記転動体は、球体、円筒状ころ、截頭円錐状ころのいずれかから構成されることを特徴とする請求項3記載の傾斜型オーバルコイルバネ利用の緩衝機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−270981(P2007−270981A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97863(P2006−97863)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000106416)サンデン商事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】