説明

光センサおよびそれを備えた携帯電話ならびにデジタルカメラ

【課題】低照度から高照度までの入力に対してリニアな出力を得ることが可能であるとともに、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することができる光センサを実現する。
【解決手段】光センサ(1)において、第1のアナログ−デジタル変換回路(11)に、第1のフォトダイオード(PD1)の出力電流の温度依存性を補正する温度係数を有する抵抗を備えた第1の基準電流源が備えられ、第2のアナログ−デジタル変換回路(12)に、第2のフォトダイオード(PD2)の出力電流の温度依存性を補正する温度係数を有する抵抗を備えた第2の基準電流源が備えられ、第1の基準電流源を用いて出力された第1の検出結果(ADCOUT1)と、第2の基準電流源を用いて出力された第2の検出結果(ADCOUT1)とから、第2のフォトダイオード(12)による可視波長域の受光強度を検出することによって照度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度の検出、近接物体の検知、測距などを行う光センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタルカメラ等に備えられる液晶パネルには、外乱の照度に応じて液晶のバックライトの発光量を制御するために、照度センサを搭載することへの要望がある。また、携帯電話やデジタルカメラ等に備えられる液晶パネルには、顔が近づいた時はバックライトの電源をOFF状態として低消費電力化を図るために、近接センサを搭載する要望が増えている。また、近接センサの出力値は検知距離に反比例するため、近接センサを測距センサとしても利用することへの要望もある。
【0003】
照度センサ、近接センサ、および、測距センサは、従来はアナログ型であったが、高い分解能が要求され、デジタル型が一般的となっている。
【0004】
照度センサには、数lx〜数万lxの広い入力照度範囲で動作することが求められる。また、照度センサのフォトダイオードの出力電流には温度依存性があるため、周囲温度が変動した場合でも正確な照度を検出できるようにする必要がある。また、近接センサには、そのLED出力に温度依存性があることから、周囲温度が変動した場合でも正確に近接物体の有無を検知できることが望まれる。同様に、測距センサも、そのLED出力に温度依存性があることから、周囲温度が変動した場合でも正確に物体の距離を検知できることが望まれる。
【0005】
以下に、照度センサへの上記の要求を満足するための回路方式について述べる。
【0006】
照度センサの温度補正の方式として、例えば特許文献1で提案された方式がある。特許文献1においては、対数圧縮型アナログ−デジタル変換回路を用いた出力温度特性の改善がなされている(従来例1とする)。
【0007】
図12に、照度センサ110に対数圧縮型アナログ−デジタル変換回路を備えることによってセンサ出力の温度補正を行う従来例1の構成を示す。照度センサ110は、カレントミラー回路111、対数増幅器112、および、アナログ−デジタル変換回路113を備えている。カレントミラー回路111はトランジスタTr101とトランジスタTr102とからなるトランジスタ対を有している。トランジスタTr101の電流枝には、可視〜赤外の波長域に分光感度を有するフォトダイオード(=可視〜赤外波長域用のフォトダイオード:Visible and IR)PD101が、トランジスタTr102の電流枝には、赤外の波長域に分光感度を有するフォトダイオード(=赤外波長域用のフォトダイオード:IR only)PD102が、それぞれ配置される。
【0008】
カレントミラー回路111においては、トランジスタTr102の電流枝を流れるフォトダイオードPD102の出力電流Iirが他方の電流枝に折り返される。折り返された電流IirはフォトダイオードPD101の出力電流Iv+irから減算され、減算されて得られる可視光に対応する電流Ivが対数増幅器112に入力される。
【0009】
対数増幅器112は、入力された電流Ivを、pn接合への印加電圧Vdと当該pn接合に流れる電流Idとの関係
Vd=2.30×(kT/q)×log10(Id/Is) ・・・(1)
に基づいて対数圧縮し、電圧に変換して出力する。但し、Isはpn接合の逆方向電流、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子の電荷をそれぞれ示す。上記pn接合には、ダイオードあるいはバイポーラトランジスタのエミッタ−ベース接合が用いられる。
【0010】
対数増幅器112の出力は、逐次比較型(Successive Approximation Register)アナログ−デジタル変換回路113によってデジタル出力となる。
【0011】
式(1)におけるIsの温度依存性が大きいため、Vdの温度依存性も大きい。そこで、特許文献1では、逐次比較型アナログ−デジタル変換回路113に温度依存性を有する基準電圧を供給する基準電圧源113aを用いることにより、対数変換係数の温度変動を低減させる。これにより、対数増幅器112が有する温度依存性が抑制されるようになっている。
【0012】
また、照度センサの温度補正の他の方式として、例えば特許文献2で提案された方式がある。特許文献2においては、照度センサにカレントミラー回路を用いることによって温度特性の改善がなされている(従来例2とする)。
【0013】
図13に、従来例2による、温度補正を行う照度センサ120の構成を示す。照度センサ120は、入射光を電流に変換するフォトダイオードPD105と、正の温度係数を有する抵抗R111を備えた第1のカレントミラー回路121と、電流出力用の第2のカレントミラー回路122とを備える。第1のカレントミラー回路121は、トランジスタTr111とトランジスタTr112とからなるトランジスタ対を備えている。トランジスタTr112のエミッタ面積はトラジスタTr111のエミッタ面積のn倍(n>1)である。第1のカレントミラー回路121において、フォトダイオードPD105の出力電流I111は上記トランジスタ対によって折り返されてより大きな電流I112となり、当該電流I112が第2のカレントミラー回路122でさらに増幅されて出力電流Ioとなる。
【0014】
上記構成において、
(トランジスタTr111のベース・エミッタ間電圧)=(トランジスタTr112のベース・エミッタ間電圧)+R111×I112
であるので、
Vt×ln(I111/Is)=Vt×ln(I112/[n×Is])+R1×I2
・・・(2)
となる。ここで、Vt=kT/qであり、Isは単位面積あたりの逆方向飽和電流、kはボルツマン定数、qは電子の電荷、Tは絶対温度をそれぞれ示す。
【0015】
従って、式(2)より、フォトダイオードPD105の出力電流I111が大きい場合に、左辺と右辺第1項とはともに対数で増加するため、右辺第2項のR1×I2はあまり大きくなることができない、すなわち、電流I2はあまり大きくなることができずに対数圧縮される。熱電圧Vtが絶対温度Tに比例することから、抵抗R111に正の温度係数を与えることにより、出力電流Ioの温度依存性を抑制できることが当該引用文献2において数値シミュレーションにより検証されている。
【0016】
また、照度センサには、対数圧縮を用いないでリニアな出力を得る方式も提案されている(従来例3とする)。
【0017】
図14に、アナログ−デジタル変換回路を用いて2つのセンサ出力をデジタル値に変換した後に2つのデジタル値の減算を行う従来例3の照度センサ130の構成を示す。照度センサ130は、赤外の波長域に分光感度を有するフォトダイオードPD111、可視〜赤外の波長域に分光感度を有するフォトダイオードPD112、アナログ−デジタル変換回路131、および、アナログ−デジタル変換回路132を備えている。
【0018】
フォトダイオードPD111の出力電流はアナログ−デジタル変換回路131の入力電流Iin101となり、フォトダイオードPD112の出力電流はアナログ−デジタル変換回路132の入力電流Iin102となる。入力電流Iin101をアナログ−デジタル変換回路131によってアナログ−デジタル変換した結果を出力ADCOUT101、入力電流Iin102をアナログ−デジタル変換回路132によってアナログ−デジタル変換した結果を出力ADCOUT102とする。
【0019】
出力ADCOUT101をα倍して、出力ADCOUT102から減算することにより、従来例1と同じ結果がデジタル演算で得られる。演算はソフトウェアで容易に行うことができる。すなわち、
ADCOUT102−ADCOUT101×α=Iin102−Iin101×α
・・・(3)
フォトダイオードPD111とフォトダイオードPD112とは、光の波長に対する分光感度特性が異なるため、式(3)では補正係数αを用いて、フォトダイオードPD112に流れる電流Iin102からフォトダイオードPD111に流れる電流Iin101の大きさに応じた電流(Iin101×α)を減算している。これにより、照度センサにおいて視感度に近い分光感度特性を実現することが可能になる。
【0020】
照度センサでは、太陽光、蛍光灯などの光をフォトダイオードで電流に変換し、積分型のアナログ−デジタル変換回路でデジタル出力する方式も一般的となっている。従来例3の場合には、積分型のアナログ−デジタル変換回路を用いると、入射光に対してリニアな出力を得ることができる。
【0021】
なお、近接センサには、近年、積分型のアナログ−デジタル変換回路および発光ダイオードの駆動回路を備える方式が採用されている。
【0022】
図15に、一般的な近接センサ140の構成を示す(例えば特許文献3参照)。
【0023】
この近接センサ140は、フォトダイオードPD121、発光ダイオードLED101、および制御回路141を備えている。制御回路141によって発光ダイオードLED101を駆動し、近接検知物体142からの反射光を受光用のフォトダイオードPD121によって電流に変換し、制御回路141によって近接検知物体142の有無を検知する。
【0024】
図16(a)・(b)の波形図に示すように、発光ダイオードLED101を駆動している期間T1の受光検知出力Doutであるデータ(Data1)と発光ダイオードLED101を駆動していない期間T2の受光検知出力Doutであるデータ(Data2)との差分を近接データ(Data1−Data2)とする。
【0025】
図16(a)に示すように、近接検知物体142がある場合には、近接検知物体142からの反射光が強いため、フォトダイオードPD121の出力電流は大きい。この場合には検知結果の近接データ(Data1−Data2)が制御回路141の閾値Data(th1)を超えるので、この検知結果を「近接」と判断する。図16(b)に示すように、近接検知物体142がない場合には、近接検知物体142からの反射光が弱いため、フォトダイオードPD121の出力電流は小さい。このような場合には検知結果の近接データ(Data1−Data2)が上記閾値Data(th1)を超えないので、この検知結果を「非近接」と判断する。
【0026】
また、近接センサ142の受光強度の測定値は検知距離の2乗に反比例するため、測定値に基づいて近接センサ141から測距物体である近接検知物体142までの検知距離を算出することで、近接センサ142を測距センサとして適用することが可能である。図17(a)・(b)に、測拒によって測距物体の遠近判定を行うときの波形を示す。図17(a)に示すように、測距物体が近距離に存在する場合には、近接データ(Data1−Data2)が制御回路141の閾値Data(th2)を超えるので、検知距離を「近距離」と判断する。図17(b)に示すように、測距物体が遠距離に存在する場合には、近接データ(Data1−Data2)が上記閾値Data(th2)を超えないので、検知距離を「遠距離」と判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2008−54077号公報(公開日:2008年3月6日)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2010−278383号公報(公開日:2010年12月9日)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2010−127635号公報(公開日:2010年6月10日)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、上記従来例1および従来例2の照度センサでは、対数圧縮の温度依存性の補正を行い得る一方、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することができない。また、受光強度の検知結果に対して対数圧縮を行っているため、低照度から高照度までの入力に対してリニアな出力を得ることができない。上記従来例3の照度センサは、リニアな出力を得ることができる一方、赤外域を受光するフォトダイオードの出力電流と可視〜赤外域を受光するフォトダイオードの出力電流とのそれぞれの温度依存性が異なるため、両出力の差分で表される最終検知結果を、広い温度範囲で変動のないように得ることができない場合がある。
【0029】
このように、従来の照度センサには、低照度から高照度までの広い入力ダイナミックレンジに対してリニアな出力を得ることと、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することとを両立させたものがないという問題があった。
【0030】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、低照度から高照度までの入力に対してリニアな出力を得ることが可能であるとともに、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することができる光センサ、およびそれを備えた携帯電話ならびにデジタルカメラを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
赤外波長域に分光感度を有する第1のフォトダイオードと、上記第1のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第1の検出結果を出力する第1のアナログ−デジタル変換回路と、可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有する第2のフォトダイオードと、上記第2のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第2の検出結果を出力する第2のアナログ−デジタル変換回路とを備えた光センサであって、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路および上記第2のアナログ−デジタル変換回路はそれぞれ、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する基準電流源とを備えるとともに、上記基準電流源から供給される基準電流によって放電電荷が与えられた上記充電回路に対する上記入力アナログ量の積分電荷の蓄積速度を検出することにより、上記入力アナログ量のアナログ−デジタル変換を行う積分型アナログ−デジタル変換回路であり、
各上記基準電流源は、温度係数を有する抵抗を備えているとともに、出力する電流値が、上記基準電流源に入力される基準電圧を上記抵抗の抵抗値で割った値に制御され、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第1のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第1の基準電流源が備えられ、
上記第2のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第2のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第2の基準電流源が備えられ、
上記第1の基準電流源を用いて出力された上記第1の検出結果と、上記第2の基準電流源を用いて出力された上記第2の検出結果とから、上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出することによって照度を測定することを特徴としている。
【0032】
上記の発明によれば、赤外波長域に分光感度を有する第1のフォトダイオードの出力電流の温度依存性については、第1のアナログ−デジタル変換回路が備える第1の基準電流源の抵抗の温度係数に応じた基準電流の大きさの温度依存性、すなわち充電回路に与える放電電荷量の温度依存性によってある程度あるいは完全に相殺することができる。この温度依存性の相殺によって第1の検出結果の温度依存性が補正される。可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有する第2のフォトダイオードの出力電流の温度依存性については、第2のアナログ−デジタル変換回路が備える第1の基準電流源の抵抗の温度係数に応じた基準電流の大きさの温度依存性、すなわち充電回路に与える放電電荷量の温度依存性によってある程度あるいは完全に相殺することができる。この温度依存性の相殺によって第2の検出結果の温度依存性が補正される。
【0033】
このように、第1のフォトダイオードと第2のフォトダイオードPD2とで互いに温度依存性が異なっていても、第1のアナログ−デジタル変換回路の第1の基準電流源と第2のアナログ−デジタル変換回路の第1の基準電流源とで個別に温度依存性の補正を行うことができる。これにより、第1のアナログ−デジタル変換回路の出力および第2のアナログ−デジタル変換回路の出力、従って光センサの出力を、広い温度範囲に亘って温度変動誤差の抑制された値として得ることができる。この出力の温度補償は、光センサを照度センサとして用いる場合に特に有効である。また、積分型アナログ−デジタル変換回路の出力は入力に対してリニアに変化するので、低照度から高照度までの幅広い入力照度範囲に対して均等な分解能でデジタル出力を得ることができる。
【0034】
以上により、低照度から高照度までの入力に対してリニアな出力を得ることが可能であるとともに、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することができる光センサを実現することができるという効果を奏する。
【0035】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
発光ダイオードと、上記発光ダイオードの駆動を行う回路とを備えており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、さらに、上記基準電流源として、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する第3の基準電流源を備えており、
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗は、上記発光ダイオードの発光出力の温度依存性を補正する上記温度係数を有しており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、上記発光ダイオードを駆動しないときに上記第1の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力する一方、上記発光ダイオードを駆動するときに上記第3の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力し、
上記発光ダイオードを駆動しないときに、上記第1の検出結果および上記第2の検出結果から上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出し、
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体の有無を検知することを特徴としている。
【0036】
上記の発明によれば、光センサを、出力の温度依存性が補正された近接センサとして用いることができるという効果を奏する。
【0037】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体までの距離を検知することを特徴としている。
【0038】
上記の発明によれば、光センサを、出力の温度依存性が補正された測距センサとして用いることができるという効果を奏する。
【0039】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
発光ダイオードと、上記発光ダイオードの駆動を行う回路とを備えており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、さらに、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する第3の基準電流源を備えており、
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗は、上記発光ダイオードの発光出力の温度依存性を補正する上記温度係数を有しており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、上記発光ダイオードを駆動しないときに上記第1の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力する一方、上記発光ダイオードを駆動するときに上記第3の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力し、
上記発光ダイオードを駆動しないときに、上記第1の検出結果および上記第2の検出結果から上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出し、
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体までの距離を検知することを特徴としている。
【0040】
上記の発明によれば、光センサを、出力の温度依存性が補正された測距センサとして用いることができるという効果を奏する。
【0041】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
上記第1の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数と、上記第2の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数とは互いに異なっていることを特徴としている。
【0042】
上記の発明によれば、互いに温度依存性の異なる第1のフォトダイオードの出力電流と第2のフォトダイオードの出力電流とから検出した光センサ出力の温度依存性を縮小することができるという効果を奏する。
【0043】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
上記第1の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は3000ppm/℃であり、上記第2の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は−100ppm/℃であることを特徴としている。
【0044】
上記の発明によれば、一般的な半導体製品として製造される、赤外波長域用のフォトダイオードと、可視〜赤外波長域用のフォトダイオードとに対して、それぞれの温度依存性を基準電流の温度依存性によって良好に相殺することができるという効果を奏する。
【0045】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は5000ppm/℃であることを特徴としている。
【0046】
上記の発明によれば、一般的な発光ダイオードLEDに対して、近接センサあるいは測距センサに用いる光源としての温度依存性の補正を行うことができるという効果を奏する。
【0047】
本発明の光センサは、上記課題を解決するために、
上記積分型アナログ−デジタル変換回路は、
比較器であって、上記充電回路による上記入力アナログ量の積分出力を上記比較器に入力される基準電圧と比較して、上記積分出力が上記比較器に入力される基準電圧以下であることを示す第1の出力レベルと上記積分出力が上記比較器に入力される基準電圧を超えることを示す第2の出力レベルとからなるパルス信号を出力する比較器と、
上記比較器に入力される基準電圧の供給端子と上記充電回路の出力との間の導通と遮断とを切り替える第1のスイッチと、
アナログ−デジタル変換に使用される上記基準電流源の出力と上記充電回路の入力との間の導通と遮断とを切り替える第2のスイッチと、
アナログ−デジタル変換動作を制御するとともに、アナログ−デジタル変換期間に上記比較器が出力したパルスの数に応じたデジタル値を出力する一方、上記比較器の出力が上記第1の出力レベルから上記第2の出力レベルへと変化するごとに上記第2のスイッチを導通させるとともに、上記比較器の出力が上記第2の出力レベルから上記第1の出力レベルへと変化するごとに上記第2のスイッチを遮断させる制御回路と備えていることを特徴としている。
【0048】
上記の発明によれば、積分型アナログ−デジタル変換回路が備えている特性である、広いダイナミックレンジと高い分解能のアナログ−デジタル変換とが可能であるという効果を奏する。また、基準電流の温度係数を調整することにより、積分型アナログーデジタル変換回路の温度係数を調整することが容易に可能であるという効果を奏する。
【0049】
本発明の携帯電話は、上記課題を解決するために、
上記光センサと、画面を表示する液晶パネルと、上記液晶パネルを照射するバックライトと、上記光センサの出力に基づいて上記バックライトの輝度を制御するバックライト制御部とを備えていることを特徴としている。
【0050】
上記の発明によれば、正確な光センサの検出結果に基づいたバックライトの輝度制御などの装置制御を行うことができる携帯電話を提供することができるという効果を奏する。
【0051】
本発明のデジタルカメラは、上記課題を解決するために、
上記光センサと、画面を表示する液晶パネルと、上記液晶パネルを照射するバックライトと、上記光センサの出力に基づいて上記バックライトの輝度を制御するバックライト制御部とを備えていることを特徴としている。
【0052】
上記の発明によれば、正確な光センサの検出結果に基づいたバックライトの輝度制御などの装置制御を行うことができるデジタルカメラを提供することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0053】
本発明の光センサは、以上のように、
赤外波長域に分光感度を有する第1のフォトダイオードと、上記第1のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第1の検出結果を出力する第1のアナログ−デジタル変換回路と、可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有する第2のフォトダイオードと、上記第2のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第2の検出結果を出力する第2のアナログ−デジタル変換回路とを備えた光センサであって、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路および上記第2のアナログ−デジタル変換回路はそれぞれ、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する基準電流源とを備えるとともに、上記基準電流源から供給される基準電流によって放電電荷が与えられた上記充電回路に対する上記入力アナログ量の積分電荷の蓄積速度を検出することにより、上記入力アナログ量のアナログ−デジタル変換を行う積分型アナログ−デジタル変換回路であり、
各上記基準電流源は、温度係数を有する抵抗を備えているとともに、出力する電流値が、上記基準電流源に入力される基準電圧を上記抵抗の抵抗値で割った値に制御され、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第1のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第1の基準電流源が備えられ、
上記第2のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第2のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第2の基準電流源が備えられ、
上記第1の基準電流源を用いて出力された上記第1の検出結果と、上記第2の基準電流源を用いて出力された上記第2の検出結果とから、上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出することによって照度を測定する。
【0054】
以上により、低照度から高照度までの入力に対してリニアな出力を得ることが可能であるとともに、フォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正することができる光センサを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、光センサ回路の第1の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、光センサ回路の第2の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態を示すものであり、フォトダイオードの分光感度特性を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態を示すものであり、(a)は赤外波長域に分光感度を有するフォトダイオードの構成を示す断面図であり、(b)は可視波長域に分光感度を有するフォトダイオードの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態を示すものであり、積分型アナログ−デジタル変換回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図6】図5の積分型アナログ−デジタル変換回路の動作を示す波形図である。
【図7】本発明の実施形態を示すものであり、基準電流源の構成を示す回路図である。
【図8】本発明の実施形態を示すものであり、基準電圧源の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の実施形態を示すものであり、携帯電話の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態を示すものであり、デジタルカメラの構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態を示すものであり、照度センサおよび近接センサを備える液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来技術を示すものであり、照度センサの第1の従来例の構成を示す回路ブロック図である。
【図13】従来技術を示すものであり、照度センサの第2の従来例の構成を示す回路ブロック図である。
【図14】従来技術を示すものであり、照度センサの第3の従来例の構成を示す回路ブロック図である。
【図15】従来技術を示すものであり、近接センサの構成を示す回路ブロック図である。
【図16】図15の近接センサの動作を説明する波形図であり、(a)は近接を検出する場合の波形図を示し、(b)は非近接を検出する場合の波形図を示す。
【図17】図15の近接センサを測距センサとして動作させた場合の波形図であり、(a)は近距離であることを検出する場合の波形図を示し、(b)は遠距離であることを検出する場合の波形図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
〔実施の形態1〕
本発明の実施形態について図1、3−8を用いて説明すれば、以下の通りである。
<光センサの全体構成>
図1に、本実施形態に係る光センサ1の構成を示す。
【0057】
光センサ1は照度センサとして機能するものである。光センサ1は、フォトダイオード(第1のフォトダイオード)PD1、フォトダイオード(第2のフォトダイオード)PD2、アナログ−デジタル変換回路(第1のアナログ−デジタル変換回路)11、および、アナログ−デジタル変換回路(第2のアナログ−デジタル変換回路)12を備えている。
【0058】
フォトダイオードPD1は赤外波長域に分光感度を有する、赤外波長域用のフォトダイオード(IR only)である。フォトダイオードPD2は可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有する、可視〜赤外波長域用のフォトダイオード(Visible and IR)である。フォトダイオードPD1のアノードは接地されており、カソードはアナログ−デジタル変換回路11の入力に接続されている。これにより、フォトダイオードPD1の出力電流はアナログ−デジタル変換回路11の入力電流Iin1となる。フォトダイオードPD2のアノードは接地されており、カソードはアナログ−デジタル変換回路12の入力に接続されている。これにより、フォトダイオードPD2の出力電流はアナログ−デジタル変換回路12の入力電流Iin2となる。
【0059】
アナログ−デジタル変換回路11は後述するように積分型アナログ−デジタル変換回路である。アナログ−デジタル変換回路11は基準電流源回路11aを備えている。アナログ−デジタル変換回路11は、後述するように、入力アナログ量を積分して出力する。アナログ−デジタル変換回路11は、基準電流源回路11aから供給される電流によって放電電荷が与えられた充電回路に対する入力アナログ量の積分電荷の蓄積速度を検出することにより、入力アナログ量のアナログ−デジタル変換を行う。入力アナログ量は、ここでは入力電流Iin1である。アナログ−デジタル変換回路11による入力アナログ量のアナログ−デジタル変換結果はデジタルの出力(第1の検出結果)ADCOUT1となる。
【0060】
アナログ−デジタル変換回路12も積分型アナログ−デジタル変換回路である。アナログ−デジタル変換回路12は基準電流源回路12aを備えている。アナログ−デジタル変換回路12は、アナログ−デジタル変換回路11と同じく、基準電流源回路12aから供給される電流によって放電電荷が与えられた充電回路に対する入力アナログ量の積分電荷の蓄積速度を検出することにより、入力アナログ量のアナログ−デジタル変換を行う。入力アナログ量は、ここでは入力電流Iin2である。アナログ−デジタル変換回路12による入力アナログ量のアナログ−デジタル変換結果はデジタルの出力(第2の検出結果)ADCOUT2となる。
【0061】
光センサ1は、出力ADCOUT1および出力ADCOUT2を用いて、図示しないデータ処理部によって、式(3)と同様に、
ADCOUT2−ADCOUT1×α=Iin2−Iin1×α ・・・(4)
を計算する。このようにして、光センサ1は、出力ADCOUT1および出力ADCOUT2からフォトダイオードPD2による可視波長域の受光強度を検出する。
【0062】
フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD2とは、図3に示すように、光の波長に対する分光感度特性が異なるため、式(4)では補正係数αを用いて、フォトダイオードPD2に流れる電流Iin2からフォトダイオードPD1に流れる電流Iin1の大きさに応じた電流(Iin1×α)を減算している。これにより、照度センサにおいて視感度に近い分光感度特性を実現することが可能になる。
【0063】
次に、光センサ1の各部の詳細な構成について説明する。
<フォトダイオードの構成>
図4(a)にフォトダイオードPD1の構成を、図4(b)にフォトダイオードPD2の構成をそれぞれ示す。
【0064】
図4(a)に示すように、フォトダイオードPD1は、P型基板401の中にN型ウェル402が形成されるとともに、上記N型ウェル402の中にP型拡散層403が形成された構成を有している。P型基板401とN型ウェル402との接合部によって、P型基板401側をアノードとしN型ウェル402側をカソードとする、赤外光を吸収するフォトダイオード部PD(ir)1が構成されている。フォトダイオード部PD(ir)1のアノードはフォトダイオードPD1のアノードとして接地されており、フォトダイオード部PD(ir)1のカソードはフォトダイオードPD1のカソードとしてアナログ−デジタル変換回路11の入力に接続されている。
【0065】
また、N型ウェル402とP型拡散層403との接合部によって、P型拡散層403側をアノードとしN型ウェル402側をカソードとする、可視光を吸収するフォトダイオード部PD(vis)1が構成されている。フォトダイオード部PD(vis)1のアノードとカソードとは互いに短絡されている。
【0066】
図4(b)に示すように、フォトダイオードPD2は、P型基板401の中にN型ウェル402が形成されるとともに、上記N型ウェル402の中にP型拡散層403が形成された構成を有している。P型基板401とN型ウェル402との接合部によって、P型基板401側をアノードとしN型ウェル402側をカソードとする、赤外光を吸収するフォトダイオード部PD(ir)2が構成されている。フォトダイオード部PD(ir)2のアノードはフォトダイオードPD2のアノードとして接地されており、フォトダイオード部PD(ir)2のカソードはフォトダイオードPD2のカソードとしてアナログ−デジタル変換回路12の入力に接続されている。
【0067】
また、N型ウェル402とP型拡散層403との接合部によって、P型拡散層403側をアノードとしN型ウェル402側をカソードとする、可視光を吸収するフォトダイオード部PD(vis)2が構成されている。フォトダイオード部PD(vis)2のアノードは接地されている。
<アナログ−デジタル変換回路の構成>
図5に、アナログ−デジタル変換回路11および12に用いる積分型アナログ−デジタル変換回路10の構成を示す。
【0068】
積分型アナログ−デジタル変換回路10は、充電回路10a、比較回路10b、制御回路10c、および、放電回路10dを備えている。
【0069】
充電回路10aは、オペアンプAMP1と容量C1とを備えている。オペアンプAMP1の反転入力は充電回路10aの入力であり、積分型アナログ−デジタル変換回路10の入力INに接続されている。オペアンプAMP1の非反転入力は0Vに接地されている。容量C1はオペアンプAMP1の出力と反転入力との間に接続されている。オペアンプAMP1の出力は充電回路10aの積分出力としての電圧vsigである。
【0070】
比較回路10bは、比較器CMP1と基準電圧源V1とスイッチ(第1のスイッチ)SW1とを備えている。比較器CMP1の非反転入力は比較回路10bの入力であり、充電回路10aの電圧vsigに接続されている。比較器CMP1の反転入力は、基準電圧源V1が発生する基準電圧V1の供給端子に接続されている。比較器CMP1は、比較器CMP1の非反転入力に印加される電圧vsigを比較器CMP1の反転入力に印加される基準電圧V1と比較し、電圧vsigが基準電圧V1以下であればそのことを示す出力レベル(第1の出力レベル)であるLowを出力する一方、電圧vsigが基準電圧V1を超えていればそのことを示す出力レベル(第2の出力レベル)であるHighを出力する。比較器CMP1の出力は比較回路10bの出力電圧としての出力compであり、非アクティブレベルのLowとアクティブレベルのHighとからなるパルス信号である。第1の出力レベルをHighに、第2の出力レベルをLowにそれぞれ設定してもよく、出力compのアクティブレベルをHighとLowとのいずれに設定するかで、使用する論理レベルが適宜決定される。スイッチSW1は、基準電圧V1の供給端子と比較回路10bの入力すなわち充電回路10aの出力との間の導通と遮断とを、制御信号s1に従って切り替えるように設けられている。制御信号s1は積分型アナログ−デジタル変換回路10の内部、または光センサ1の内部、または光センサ1が搭載された機器の内部で生成される。
【0071】
制御回路10cは、フリップフロップ13とカウンタ14とを備えており、アナログ−デジタル変換動作を制御する。フリップフロップ13はDフリップフロップで構成されている。フリップフリップ13のD入力は比較回路10bの出力compに接続されており、クロック入力にはクロック信号clkが入力される。クロック入力にクロック信号clkのクロックパルスが入力されるごとに、例えば当該クロックパルスの立ち上がりエッジにおいて、D入力となっている出力compのレベルを出力する。このようにして構成されるフリップフロップ13の出力を信号chargeとする。
【0072】
カウンタ14は信号chargeのパルス数をカウントし、カウント値を積分型アナログ−デジタル変換回路10の出力ADCOUTとして出力する。
【0073】
放電回路10dは、図1の基準電流源回路11aおよび12aに相当しており、基準電流源(基準電流源回路11aの第1の基準電流源、基準電流源回路12aの第2の基準電流源)IREFとスイッチ(第2のスイッチ)SW2とを備えている。基準電流源IREFは電源Vddを用いて基準電流IREFを生成する。スイッチSW2は、基準電流源IREFの出力と積分型アナログ−デジタル変換回路10の入力INすなわち充電回路の入力との間の導通と遮断とを、信号chargeの示すレベルに従って切り替えるように設けられている。
【0074】
次に、上記の構成の積分型アナログ−デジタル変換回路10の動作について説明する。
【0075】
図6に示すように、まずアナログ−デジタル変換を行う前(時刻t0以前)に制御信号s1によって比較回路10bのスイッチSW1は導通している。スイッチSW1が導通することにより、充電回路10aの電圧vsigは基準電圧V1に等しくなる。スイッチSW1は、積分型アナログ−デジタル変換回路10のアナログ−デジタル変換の開始(時刻t0)と同時に遮断され、アナログ−デジタル変換期間t(conv)に亘って遮断が保持される。図6の各信号タイミングはクロック信号clkに同期するように設定されている。
【0076】
また、時刻t0に、放電回路10dのスイッチSW2が図示しない経路で供給される制御信号によって導通する。これにより、充電回路10aの容量C1が、基準電流源IREFから供給される基準電流IREFによってプリチャージされる。アナログ−デジタル変換期間t(conv)中は入力電流Iin(入力電流Iin1およびIin2を代表してIinと記載する)が流れ続けているので、プリチャージ後の容量C1の電荷は入力電流Iinの大きさにも依存する。スイッチSW2はクロック信号clkの1周期に等しい期間t(clk)だけ導通して時刻t1に遮断される。このプリチャージ動作によって、容量C1に(IREF×t(clk))の電荷を放電させる。放電完了時には、電圧vsigは基準電圧V1よりも低い電圧となる。
【0077】
時刻t1から、フォトダイオードPD1あるいはPD2からの入力電流Iin(入力電流Iin1およびIin2を代表してIinと記載する)のみが供給されることによって容量C1に積分電荷が蓄積され、電圧vsigが上昇する。電圧vsigが基準電圧V1を超えると比較器CMP1の出力compはHighとなる。出力compがHighとなってから次のクロック信号clkの立ち上がりエッジ(時刻t3)で、フリップフロップ13がHighを出力する。これにより、信号chargeはHighとなり、カウンタ14はHighのパルスPを1つカウントする。同時にスイッチSW2が信号chargeによって導通し、基準電流源IREFによって容量C1が再び放電を行う。この放電によって電圧vsigが基準電圧V1以下となった時点で出力compはLowとなる。出力compがLowとなってから次のクロック信号clkの立ち上がりエッジ(時刻t5)で、信号chargeがLowとなり、パルスPが立ち下がる。パルスPが立ち下がるとスイッチSW2が遮断されるので、容量C1に再び入力電流Iinによって積分電荷が蓄積される。
【0078】
制御回路10cは、比較器CMP1の出力compがLowからHighへと変化するごとにスイッチSW2を導通させるとともに、比較器CMP1の出力compがHighからLowへと変化するごとにスイッチSW2を遮断させる制御を行うことになる。
【0079】
このようにして、アナログ−デジタル変換期間t(conv)にパルスPが繰り返し生成される。パルスPの総数はカウンタ14によってカウントされて出力ADCOUTとなる。入力電流Iinによる容量C1の積分電荷の蓄積速度は、入力電流Iinが大きいほど大きいため、入力電流Iinが大きいほどアナログ−デジタル変換期間t(conv)にカウントされるパルスPの数すなわち容量C1の放電回数は多くなる。
【0080】
以上のアナログ−デジタル変換動作について以下に定量的な説明を行う。
【0081】
積分型アナログ−デジタル変換回路10は、アナログ−デジタル変換期間t(conv)に、入力電流Iinにより容量C1に与えられる総充電電荷量と、プリャージ期間を含めて基準電流源IREFにより容量C1に与えられる総放電電荷量とが、互いに等しくなるように動作する。
【0082】
アナログ−デジタル変換期間t(conv)の総充電電荷量:Iin×t(conv)
アナログ−デジタル変換期間t(conv)の総放電電荷量:IREF×t(clk)×count
(但しcountはカウンタ14によってカウントされるパルスPの総数)とすると、総充電電荷量=総放電電荷量であるから、
count=(Iin×t(conv))/(IREF×t(clk))
となり、最小分解能は(IREF×t(clk))で決定されることになる。
【0083】
ここで、t(conv)=t(clk)×2(nは分解能)となるように設定すると、
count=Iin/IREF×2 ・・・(5)
となる。
【0084】
例えば、分解能n=16ビットに設定する場合には、カウント数(count)として、入力電流Iinに応じたデジタル値が0〜65535の範囲で出力されることになる。
【0085】
これにより、積分型アナログ−デジタル変換回路が備えている特性である、広いダイナミックレンジと高い分解能のアナログ−デジタル変換とが可能である。また、式(5)より、基準電流IREFの温度係数を調整することにより、積分型アナログーデジタル変換回路10の温度係数を調整することが容易に可能である。
【0086】
なお、信号chargeのパルスPの数をカウントすることは出力compのパルス数をカウントすることに等しい。従って、制御回路10cは、アナログ−デジタル変換期間に比較器CMP1が出力したパルスの数に応じたデジタル値を出力するように構成されていれば、アナログ−デジタル変換動作を実現することができる。積分型アナログ−デジタル変換回路10においてはフリップフロップ13が設けられているが、これは、出力compを信号chargeに変えてスイッチSW2の開閉タイミングを図るために設けられているため、必ずしも必要ではない。カウンタ14は出力compのパルス数を直接カウントしてもよい。フリップフロップ13には、クロック信号clkに従って動作することにより積分型アナログ−デジタル変換回路10の動作を制御する機能があるが、これは例えばカウンタ14を同期カウンタとしてカウンタ14の動作から積分型アナログ−デジタル変換回路10の動作タイミングを生成することでも代用可能である。また、信号chargeのパルスPの発生をこの動作タイミングによって出力compのパルス発生から遅延させて生成することも、同期カウンタの動作タイミングを利用するなどにより適宜可能である。さらには、信号chargeのパルスPを出力compのパルス発生から遅延させて発生させるかどうかについても、容量C1の放電開始のタイミングを回路の都合で適宜設定すればよいので、任意である。
【0087】
図7に、基準電流源IREFの構成を示す。
【0088】
基準電流源IREFは、オペアンプ71、トランジスタTr71、トランジスタTr72、および、温度係数を有する抵抗R1を備えている。オペアンプ71の反転入力には後述する基準電圧源VREFが発生する基準電圧VREFが入力される。オペアンプ71の非反転入力は抵抗R1の一端に接続されている。抵抗R1の他端は接地されている。
【0089】
トランジスタTr71はpチャネル型の電界効果トランジスタである。トランジスタTr71のソースは電源に接続されており、トランジスタTr71のドレインは抵抗R1の上記一端に接続されている。
【0090】
トランジスタTr72はpチャネル型の電界効果トランジスタである。トランジスタTr72のソースは上記電源に接続されており、トランジスタTr71のドレインは基準電流IREFの出力となっている。このとき、出力される基準電流IREFは、基準電圧VREFを抵抗R1の抵抗値R1で割った値、
IREF=VREF/R1
である。
【0091】
図8に、基準電圧源VREFの構成を示す。基準電圧源VREFは、半導体回路では一般的な定電圧回路であって、温度変動があっても一定の電圧を出力するバンドギャップ定電圧回路からなる。
【0092】
基準電圧源VREFは、オペアンプ81、トランジスタTr81、トランジスタTr82、トランジスタTr83、トランジスタQ81、トランジスタQ82、トランジスタQ83、抵抗R10、および、抵抗R11を備えている。
【0093】
トランジスタTr81、トランジスタTr82、および、トランジスタTr83はpチャネル型の電界効果トランジスタである。トランジスタQ81、トランジスタQ82、および、トランジスタQ83は、PNP型のバイポーラトランジスタである。
【0094】
トランジスタTr81、トランジスタTr82、および、トランジスタTr83の各ゲートは互いに接続されている。トランジスタTr81、トランジスタTr82、および、トランジスタTr83の各ソースは同じ電源に接続されている。トランジスタTr81のドレインはトランジスタQ81のエミッタに接続されている。トランジスタTr82のドレインは抵抗R10を介してトランジスタQ82のエミッタに接続されている。トランジスタTr83のドレインは抵抗R11を介してトランジスタQ83のエミッタに接続されている。トランジスタQ82のエミッタ面積はトランジスタQ81のエミッタ面積のn倍(nはn>1の任意数として記載)である。トランジスタQ81、トランジスタQ82、および、トランジスタQ83の各ベースおよび各コレクタは接地されている。
【0095】
オペアンプ81の反転入力はトランジスタTr81とトランジスタQ81との接続点に接続されている。オペアンプ81の非反転入力はトランジスタTr82と抵抗R10との接続点に接続されている。
【0096】
トランジスタTr83と抵抗R11との接続点が基準電圧VREFの出力である。
【0097】
図1のフォトダイオードPD1およびPD2のそれぞれの出力電流には温度依存性がある。従って、この温度依存性を補正しないまま入力電流Iin1および入力電流Iin2のアナログ−デジタル変換を行うと、出力ADCOUT1および出力ADCOUT2に誤差が生じる。また、フォトダイオードPD1の温度依存性とフォトダイオードPD2の温度依存性とが互いに異なっていることから、式(4)の結果に誤差が生じる。
【0098】
そこで、基準電流源IREFに前記抵抗R1を設けることによって、アナログ−デジタル変換回路11にフォトダイオードPD1の温度依存性に合わせた変換の補正を施すとともに、アナログ−デジタル変換回路12にフォトダイオードPD2の温度依存性に合わせた変換の補正を施す。
【0099】
抵抗R1の抵抗値は抵抗R1の温度係数に応じた値であるので、抵抗R1の電圧降下は当該温度係数を反映した値となる。例えば、温度が上昇すると、抵抗R1が正の温度係数を有している場合には、抵抗R1の電圧降下が増大する。これにより、オペアンプ71の反転入力と非反転入力との差が大きくなって、オペアンプ71の出力電圧が上昇してトランジスタTr71およびTr72のドレイン電流が抑制される。この結果、基準電流IREFが減少して、出力電流の温度依存性が負となる赤外波長域用のフォトダイオードPD1の出力変動を相殺することができる。また、同様にして、抵抗R1が負の温度係数を有している場合には、出力電流の温度依存性が正となる可視〜赤外波長域用のフォトダイオードPD2の出力変動を相殺することができる。
【0100】
例えば、フォトダイオードPD1の温度依存性が約−3000ppm/℃、フォトダイオードPD2の温度依存性が約100ppm/℃であるとすると、アナログ−デジタル変換回路11が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数を3000ppm/℃、アナログ−デジタル変換回路12が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数を−100ppm/℃とすることにより、温度補正が可能である。この例では、フォトダイオードPD1およびPD2の各温度依存性を、正負が反転した同じ値の、基準電流IREFの大きさの温度依存性によって完全に相殺しているが、正負が反転した互いに異なる値の温度依存性によってある程度の相殺を行うようにしてもよい。いずれにしても、光センサ出力の温度依存性を縮小することができるので、有効な温度補正を行い得る。
【0101】
そして、光センサ出力の温度依存性を縮小し得るのであれば、アナログ−デジタル変換回路11が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数と、アナログ−デジタル変換回路12が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数とが、互いに異なる値となっているだけでもよい。実際に、2つの抵抗R1について、例えば上記温度係数の数値例から僅かにずらした数値の温度係数を設定することでも、光センサ出力の温度依存性を縮小し得ることは明らかである。
【0102】
以上のような温度係数の設定方法に従えば、一般的な半導体製品で製造されるフォトダイオードに対して、照度センサ用に温度補正を行うことができる。また、一般的に、半導体回路では、拡散抵抗はプラスの温度係数を持ち、ポリシリコン抵抗はマイナスの温度係数を持つ。2種類の抵抗を組み合わせることで、任意の温度係数を選ぶことが可能である。
【0103】
本実施形態によれば、赤外波長域に分光感度を有するフォトダイオードPD1の出力電流の温度依存性については、アナログ−デジタル変換回路11が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数に応じた基準電流IREFの大きさの温度依存性、すなわち充電回路10aに与える放電電荷量の温度依存性によってある程度あるいは完全に相殺することができる。この温度依存性の相殺によって出力ADCOUT1の温度依存性が補正される。可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有するフォトダイオードPD2の出力電流の温度依存性については、アナログ−デジタル変換回路12が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数に応じた基準電流IREFの大きさの温度依存性、すなわち充電回路10aに与える放電電荷量の温度依存性によってある程度あるいは完全に相殺することができる。この温度依存性の相殺によって出力ADCOUT2の温度依存性が補正される。
【0104】
このように、赤外波長域用のフォトダイオードPD1と可視〜赤外波長域用のフォトダイオードPD2とで互いに温度依存性が異なっていても、アナログ−デジタル変換回路11の基準電流源IREFとアナログ−デジタル変換回路12の基準電流源IREFとで個別に温度依存性の補正を行うことができる。これにより、アナログ−デジタル変換回路11の出力ADCOUT1およびアナログ−デジタル変換回路12の出力ADCOUT2、従って光センサ1の出力を、広い温度範囲に亘って温度変動誤差の抑制された値として得ることができる。この出力の温度補償は、光センサ1を照度センサとして用いる場合に特に有効である。また、積分型アナログ−デジタル変換回路10の出力は入力に対してリニアに変化するので、低照度から高照度までの幅広い入力照度範囲に対して均等な分解能でデジタル出力を得ることができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態についてさらに図2を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、これまでに説明した部材と同じ符号を付した部材は、特に断らない限りこれまでに説明した部材と同じ機能を有するものとし、その詳細な説明を省略する。
<光センサの全体構成>
図2に、本実施形態に係る光センサ2の構成を示す。
【0105】
照度センサが搭載された機器には近接センサおよび測距センサも搭載されることが望ましいことが多い。従って、前記の実施の形態で説明した照度センサが、近接センサおよび測距センサのLED出力の温度依存性をも補償できる回路であれば非常に好ましい。そこで、光センサ2は、フォトダイオード(第1のフォトダイオード)PD1、フォトダイオード(第2のフォトダイオード)PD2、アナログ−デジタル変換回路(第1のアナログ−デジタル変換回路)21、アナログ−デジタル変換回路(第2のアナログ−デジタル変換回路)22、および、発光部20を備えている。
【0106】
発光部20は、発光ダイオードLED、LED駆動回路23、および、LED制御回路24を備えている。発光ダイオードLEDは例えば950nmの赤外光を放射する。LED駆動回路23はLED制御回路24からの制御に従って発光ダイオードLEDを駆動する。LED駆動回路23およびLED制御回路24は、発光ダイオードLEDの駆動を行う回路を構成している。
【0107】
光センサ2は、発光部20を使用しないときには照度センサとして機能し得るとともに、発光部20を使用するときには近接センサおよび測距センサとして機能し得る。発光部20を使用するときには、駆動される発光ダイオードLEDから光が放射される。放射された光が近接検知物体(物体)25によって反射されると、フォトダイオードPD1で反射光を受光する。そのときのフォトダイオードPD1の出力電流がアナログ−デジタル変換回路21によってアナログ−デジタル変換され、近接検知物体25の近接が検知される。近接および非近接の判定方法は図16(a)に示したものと同様である。また、近接検知物体25からの反射光を受光すると、図16(b)に示した判定方法によって光センサ2から近接検知物体25までの測距を行うことができる。
【0108】
発光部20を使用するときと使用しないときとで受光光の検出処理を変えるため、アナログ−デジタル変換回路21は、図5の積分型アナログ−デジタル変換回路10において、放電回路10dに相当する回路として基準電流源回路21aおよび基準電流源回路21bを備えた構成である。また、アナログ−デジタル変換回路21は、スイッチSW21aおよびスイッチSW21bを備えている。アナログ−デジタル変換回路21は、フォトダイオードPD1の出力電流を入力電流Iin1としてアナログ−デジタル変換を行う。
【0109】
基準電流源回路21aは、光センサ2を照度センサとして用いるときに、スイッチSW21aを介してアナログ−デジタル変換回路21の入力INに接続されて使用される放電回路である。基準電流源回路21bは、光センサ2を近接センサあるいは測距センサとして用いるときに、スイッチSW21bを介してアナログ−デジタル変換回路21の入力INに接続されて使用される放電回路である。
【0110】
また、アナログ−デジタル変換回路22は、図5の積分型アナログ−デジタル変換回路10において、放電回路10dに相当する回路として基準電流源回路22aを備えた構成である。アナログ−デジタル変換回路22は、光センサ2を照度センサとして用いるときに使用される。
【0111】
このように、光センサ2は、発光ダイオードLEDを駆動しないときに、出力ADCOUT1および出力ADCOUT2の検出結果からフォトダイオードPD2による可視波長域の受光強度を検出する。また、発光ダイオードLEDを駆動するときに、出力ADCOUT1の検出結果からフォトダイオードPD1による赤外波長域の受光強度を検出する。
【0112】
基準電流源回路21aの基準電流源(第1の基準電流源)IREFが備える抵抗R1は、フォトダイオードPD1の温度依存性を補正するための温度係数を有する。基準電流源回路21bの基準電流源(第3の基準電流源)IREFが備える抵抗R1は、発光ダイオードLEDの温度依存性を補正するための温度係数を有する。基準電流源回路22aの基準電流源(第2の基準電流源)IREFが備える抵抗R1は、フォトダイオードPD2の温度依存性を補正するための温度係数を有する。
【0113】
例えば、フォトダイオードPD1の温度依存性が約−3000ppm/℃、フォトダイオードPD2の温度依存性が約100ppm/℃であるとすると、アナログ−デジタル変換回路21が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数を3000ppm/℃、アナログ−デジタル変換回路22が備える基準電流源IREFの抵抗R1の温度係数を−100ppm/℃とすることにより、温度補正が可能である。光センサ2を照度センサとして使用するときの出力の温度依存性の補正については実施の形態1の場合と同様である。
【0114】
光センサ2を近接センサとして動作する場合には、フォトダイオードPD1は発光ダイオードLEDから波長950nmのみの光を受光するため、照度センサとして動作する場合よりも温度依存性が比較的小さい。しかし、発光ダイオードLEDの発光強度の温度依存性が大きく支配的となる。発光ダイオードLEDの温度依存性が約−5000ppm/℃である場合に、基準電流源回路21cの基準電流源IREFが備える抵抗R1の温度係数を5000ppm/℃に設定することにより、近接センサの出力の温度依存性を補正することが可能である。なお、温度依存性のある程度の相殺および完全な相殺については、前記の実施の形態で述べたことがそのまま当てはまる。
【0115】
基準電流源回路21cの基準電流源IREFが備える抵抗R1の温度係数を、発光ダイオードLEDの発光強度の温度依存性をある程度のあるいは完全な相殺によって補正するように設定することにより、光センサ2を、出力の温度依存性が補正された近接センサとして用いることができる。また、近接センサの測定値は検知距離の2乗に反比例するため、光センサ2を当該測定値から検知距離を算出する構成とすることで、出力の温度依存性が補正された測距センサとして用いることができる。
【0116】
また、抵抗R1の温度係数を5000ppm/℃に設定する構成により、一般的な発光ダイオードLEDに対して、近接センサあるいは測距センサに用いる光源として、温度依存性の補正を行うことができる。
【0117】
以下に、図5に示す積分型アナログーデジタル変換回路10を本実施の形態に適用した場合の、アナログ−デジタル変換動作について説明する。
【0118】
式(5)より、アナログーデジタル変換回路21のデジタルの出力ADCOUT1、アナログーデジタル変換回路22のデジタルの出力ADCOUT2を、それぞれcount1,count2とすると
count1=Iin1/IREF1×2
count2=Iin2/IREF2×2
但し、アナログ−デジタル変換回路21の基準電流源回路21aが備える基準電流源IREFの基準電流をIREF1、アナログ−デジタル変換回路22の基準電流源回路22aが備える基準電流源IREFの基準電流をIREF2とした。基準電流IREF1およびIREF2のそれぞれに対応する抵抗R1の温度係数を設定することにより、赤外波長域用のフォトダイオードPD1の入力電流Iin1の大きさをアナログ−デジタル変換して出力するアナログーデジタル変換回路21と、可視〜赤外波長域用のフォトダイオードPD2の入力電流Iin2の大きさをアナログ−デジタル変換して出力するアナログーデジタル変換回路22とのそれぞれについて、出力の温度依存性を補正することができる。従って、前記の実施の形態と同様に、フォトダイオードPD1の温度依存性とフォトダイオードPD2の温度依存性とが互いに異なる場合でも、広い温度範囲で正確な照度を測定することが可能である。
【0119】
また、発光ダイオードLEDを発光させて近接検知物体25の反射光をアナログ−デジタル変換回路21で検出した場合のアナログ−デジタル変換回路21のデジタルの出力ADCOUT1をcount3とすると、
count3=Iin1/IREF3×2
である。但し、アナログ−デジタル変換回路21の基準電流源回路21bが備える基準電流源IREFの基準電流をIREF3とした。基準電流IREF3に対応する抵抗R1の温度係数を設定することにより、発光ダイオードLEDを発光させて近接検知物体25から反射された光をアナログ−デジタル変換して出力するアナログ−デジタル変換回路21の出力の温度依存性を補正することができる。よって、近接センサまたは測拒センサにおいて発光ダイオードLEDに温度依存性がある場合でも、広い温度範囲で正確な検知を行うことが可能である。
【0120】
また、図7および図8の構成を光センサ2に適用した場合に、
count1=Iin1/IREF1×2=Iin1×R11/VREF×2
count2=Iin2/IREF2×2=Iin2×R12/VREF×2
count3=Iin3/IREF3×2=Iin3×R13/VREF×2
となる。但し、基準電流源回路21aが備える抵抗R1の抵抗を抵抗R11、基準電流源回路22aが備える抵抗R1の抵抗を抵抗R12、基準電流源回路21bが備える抵抗R1の抵抗を抵抗R13とした。従って、抵抗R1,R2,R3の温度係数をそれぞれ個別に設定することで、それぞれの温度依存性の補正の度合いを選択することができる。
【0121】
一般的に、半導体回路では、拡散抵抗はプラスの温度係数を持ち、ポリシリコン抵抗はマイナスの温度係数を持つ。2種類の抵抗を組み合わせることで、任意の温度係数を選ぶことが可能である。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態についてさらに図9ないし図11を用いて説明すれば、以下の通りである。
【0122】
図9に本実施の形態に係る携帯電話900の構成を説明する斜視図を示す。
【0123】
図9に示すように、携帯電話900は、光センサ901として、前述した光センサ1または光センサ2を備える。携帯電話900は画面を表示する液晶パネル902を備えている。携帯電話900は、光センサ901が光センサ1または光センサ2である場合に、照度センサとして検出した周囲光の強度に応じて、バックライト制御部が液晶パネル902を液晶パネル902の背面側から照射するLEDバックライトなどのバックライトの点灯・非点灯を切り替える、あるいは、当該バックライトの輝度を調節する。また、携帯電話900は、光センサ901が光センサ2である場合に、近接検知物体25が存在する近接状態であるか存在しない非近接状態であるかを検知して、液晶パネル902の表示のオン・オフを切り替える。これにより、従来の光センサを備える携帯電話よりも正確な光センサの検出結果に基づいたバックライトの輝度制御などの装置制御を行うことができるので、ユーザーの使用感を向上させることが出来る。
【0124】
図10に本実施の形態に係るデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)905の構成を説明する斜視図を示す。
【0125】
図10に示すように、デジタルカメラ905は、光センサ903として、前述した光センサ1または光センサ2を備える。デジタルカメラ905は液晶モニタ904を備えている。デジタルカメラ905は、光センサ903が光センサ1または光センサ2である場合に、照度センサとして検出した周囲光の強度に応じて、液晶パネル904を液晶パネル904の背面側から照らすLEDバックライトなどのバックライトの点灯・非点灯を切り替える、あるいは、当該バックライトの輝度を調節する。また、デジタルカメラ905は、光センサ903が光センサ2である場合に、近接検知物体25が存在する近接状態であるか存在しない非近接状態であるかを検知して、液晶パネル904の表示のオン・オフを切り替える。これにより、従来の光センサを備えるデジタルカメラよりも正確な光センサの検出結果に基づいたバックライトの輝度制御などの装置制御を行うことができるので、ユーザーの使用感を向上させることが出来る。
【0126】
図11に上記液晶パネル902・904に使用可能な液晶パネルを備えた液晶表示装置100の構成を示す。液晶表示装置100は液晶パネル101、光センサ901あるいは光センサ903としての照度/近接センサ102、バックライト制御部103、および、バックライト104を備えている。照度/近接センサ102の中の照度センサは周囲光強度を検知してバックライト制御部103に検知結果DOUTを伝達し、バックライト制御部103はバックライト104の輝度を制御する。また、照度/近接センサ102の中の近接センサは近接検知物体25としての顔が近づいたか否の検知を行ってバックライト制御部103に検知結果DOUTを伝達し、バックライト制御部103はバックライト104の電源のON/OFFを制御する。
【0127】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態を技術常識に基づいて適宜変更したものやそれらを組み合わせて得られるものも本発明の実施形態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、照度センサや近接センサ、測距センサが搭載される電子機器に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 光センサ
2 光センサ
10 積分型アナログ−デジタル変換回路
10a 充電回路
10c 制御回路
11 アナログ−デジタル変換回路(第1のアナログ−デジタル変換回路)
12 アナログ−デジタル変換回路(第2のアナログ−デジタル変換回路)
21 アナログ−デジタル変換回路(第1のアナログ−デジタル変換回路)
22 アナログ−デジタル変換回路(第2のアナログ−デジタル変換回路)
25 近接検知物体(物体)
PD1 フォトダイオード(第1のフォトダイオード)
PD2 フォトダイオード(第2のフォトダイオード)
Iin1 入力電流(入力アナログ量)
Iin2 入力電流(入力アナログ量)
ADCOUT1 出力(第1の検出結果)
ADCOUT2 出力(第2の検出結果)
IREF 基準電流源(基準電流源回路21aの第1の基準電流源、基準電流源回路22aの第2の基準電流源、基準電流源回路21bの第3の基準電流源)
CMP1 比較器
SW1 スイッチ(第1のスイッチ)
SW2 スイッチ(第2のスイッチ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外波長域に分光感度を有する第1のフォトダイオードと、上記第1のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第1の検出結果を出力する第1のアナログ−デジタル変換回路と、可視波長域から赤外波長域に亘って分光感度を有する第2のフォトダイオードと、上記第2のフォトダイオードの出力電流をアナログ−デジタル変換して得られる第2の検出結果を出力する第2のアナログ−デジタル変換回路とを備えた光センサであって、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路および上記第2のアナログ−デジタル変換回路はそれぞれ、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する基準電流源とを備えるとともに、上記基準電流源から供給される基準電流によって放電電荷が与えられた上記充電回路に対する上記入力アナログ量の積分電荷の蓄積速度を検出することにより、上記入力アナログ量のアナログ−デジタル変換を行う積分型アナログ−デジタル変換回路であり、
各上記基準電流源は、温度係数を有する抵抗を備えているとともに、出力する電流値が、上記基準電流源に入力される基準電圧を上記抵抗の抵抗値で割った値に制御され、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第1のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第1の基準電流源が備えられ、
上記第2のアナログ−デジタル変換回路に、上記基準電流源として、上記第2のフォトダイオードの出力電流の温度依存性を補正する上記温度係数を有する上記抵抗を備えた第2の基準電流源が備えられ、
上記第1の基準電流源を用いて出力された上記第1の検出結果と、上記第2の基準電流源を用いて出力された上記第2の検出結果とから、上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出することによって照度を測定することを特徴とする光センサ。
【請求項2】
発光ダイオードと、上記発光ダイオードの駆動を行う回路とを備えており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、さらに、上記基準電流源として、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する第3の基準電流源を備えており、
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗は、上記発光ダイオードの発光出力の温度依存性を補正する上記温度係数を有しており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、上記発光ダイオードを駆動しないときに上記第1の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力する一方、上記発光ダイオードを駆動するときに上記第3の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力し、
上記発光ダイオードを駆動しないときに、上記第1の検出結果および上記第2の検出結果から上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出し、
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体の有無を検知することを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体までの距離を検知することを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
発光ダイオードと、上記発光ダイオードの駆動を行う回路とを備えており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、さらに、入力アナログ量を積分して出力する充電回路と上記充電回路に電流を供給する第3の基準電流源を備えており、
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗は、上記発光ダイオードの発光出力の温度依存性を補正する上記温度係数を有しており、
上記第1のアナログ−デジタル変換回路は、上記発光ダイオードを駆動しないときに上記第1の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力する一方、上記発光ダイオードを駆動するときに上記第3の基準電流源を使用して上記第1の検出結果を出力し、
上記発光ダイオードを駆動しないときに、上記第1の検出結果および上記第2の検出結果から上記第2のフォトダイオードによる可視波長域の受光強度を検出し、
上記発光ダイオードを駆動するときに、上記第1の検出結果から、上記発光ダイオードから放射され物体から反射されて上記第1のフォトダイオードによって受光された赤外波長域の光の受光強度を検出することによって上記物体までの距離を検知することを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項5】
上記第1の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数と、上記第2の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数とは互いに異なっていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項6】
上記第1の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は3000ppm/℃であり、上記第2の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は−100ppm/℃であることを特徴とする請求項5に記載の光センサ。
【請求項7】
上記第3の基準電流源が備える上記抵抗の温度係数は5000ppm/℃であることを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項8】
上記積分型アナログ−デジタル変換回路は、
比較器であって、上記充電回路による上記入力アナログ量の積分出力を上記比較器に入力される基準電圧と比較して、上記積分出力が上記比較器に入力される基準電圧以下であることを示す第1の出力レベルと上記積分出力が上記比較器に入力される基準電圧を超えることを示す第2の出力レベルとからなるパルス信号を出力する比較器と、
上記比較器に入力される基準電圧の供給端子と上記充電回路の出力との間の導通と遮断とを切り替える第1のスイッチと、
アナログ−デジタル変換に使用される上記基準電流源の出力と上記充電回路の入力との間の導通と遮断とを切り替える第2のスイッチと、
アナログ−デジタル変換動作を制御するとともに、アナログ−デジタル変換期間に上記比較器が出力したパルスの数に応じたデジタル値を出力する一方、上記比較器の出力が上記第1の出力レベルから上記第2の出力レベルへと変化するごとに上記第2のスイッチを導通させるとともに、上記比較器の出力が上記第2の出力レベルから上記第1の出力レベルへと変化するごとに上記第2のスイッチを遮断させる制御回路と備えていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載した光センサと、画面を表示する液晶パネルと、上記液晶パネルを照射するバックライトと、上記光センサの出力に基づいて上記バックライトの輝度を制御するバックライト制御部とを備えていることを特徴とする携帯電話。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項に記載した光センサと、画面を表示する液晶パネルと、上記液晶パネルを照射するバックライトと、上記光センサの出力に基づいて上記バックライトの輝度を制御するバックライト制御部とを備えていることを特徴とするデジタルカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−231031(P2012−231031A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98662(P2011−98662)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】