説明

光ディスク原盤露光装置

【課題】レーザ光の空間強度分布に時間変動がある場合でも安定なフォーカス状態を維持する光ディスク原盤露光装置を提供する。
【解決手段】ビーム形状の変化を読み取り、ビームの変動に合わせて4分割光ディテクタ113cの位置を補正することを特徴とし、ビーム形状の変化による4分割フォトディテクタ113cに入射するビームの光強度の空間強度分布の変動をキャンセルすることで、フォーカス状態の変動を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの製造に使用する光ディスク原盤露光装置のフォーカス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、光ディスク原盤からスタンパーを作成し、これを使用して射出成形により複製して製造される。図9は、従来の光ディスク原盤露光装置の構成例を示す。
図9において、従来の光ディスク原盤露光装置は、記録レーザ素子101から出射されたコヒーレントなビームに、変調および/又は偏向を施し、対物レンズ110aを介し記録光を光ディスク原盤111に照射して情報を記録する。光ディスク原盤露光装置のフォーカス制御としては、非点収差を用いる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の光ディスク原盤露光装置の動作について、具体的に説明する。
記録レーザ素子101から出射したコヒーレントなビームは、パワーおよび/又は信号変調を行う信号変調素子102、偏光素子103、ビーム成形部104を通り、ミラー105、ハーフミラー106で反射する。そして、一部はハーフミラー108を透過し、ダイクロイックミラー109から、レンズアクチュエータ110で駆動された対物レンズ110aを経て、光ディスク原盤111に集光される。
【0004】
光ディスク原盤111からの反射光は、逆方向に進み、一部はハーフミラー108で反射後、ミラー112で反射され、集光レンズ113aおよびシリンドリカルレンズ113bにより4分割フォトディテクタ113cに集光される。集光レンズ113aとシリンドリカルレンズ113bにより非点収差が生じる。図10(a)に示すように、対物レンズ110aの焦点位置に対し光ディスク原盤111が近い位置の場合は、フォトディテクタB,Dの方向の右斜め楕円のスポットが4分割フォトディテクタ113c上に形成される。図10(b)に示すように、対物レンズ110aの焦点位置に対し光ディスク原盤111が合焦点の場合は、フォトディテクタA,B,C,Dに均等に照射された円のスポットが4分割フォトディテクタ113c上に形成される。図10(c)に示すように、対物レンズ110aの焦点位置に対し光ディスク原盤111が遠い位置の場合は、フォトディテクタA,Cの方向の左斜め楕円のスポットが4分割フォトディテクタ113c上に形成される。
【0005】
なお、集光レンズ113a、シリンドリカルレンズ113bおよび4分割フォトディテクタ113cを、非点収差フォーカス装置113と呼ぶ。光ディスク原盤111からの反射光のうちでダイクロイックミラー109を透過した反射光は、ミラー115で反射されて補助フォーカス装置116に入射する。
【0006】
4分割フォトディテクタ113cの各検出出力は、図11に示すように、(A+C)−(B+D)に処理されて、対物レンズ110aと光ディスク原盤111の位置関係に対応する信号、即ちフォーカスエラー信号となる。フォーカス制御は、このフォーカスエラー信号が常にゼロになるようにレンズアクチュエータ110を駆動制御して、対物レンズ110aの位置を調整し、対物レンズ110aと光ディスク原盤111の位置を対物レンズ110aの焦点位置に保持する制御である。この状態で変調されたコヒーレントなビームにより、均一のピットおよび/又は溝を、光ディスク原盤111の上に塗布されたフォトレジスト層111aに形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−277339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の非点収差フォーカス装置113においては、記録レーザ素子101から出射されたコヒーレントなビームの出力は一定に保たれているが、4分割フォトディテクタ113cに入射するフォーカスビームが時間と共に変化する。そのため、実際にはフォーカスがずれていないにもかかわらず、フォーカス状態が変動するという課題を有している。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであって、反射光の空間強度分布の変動によるフォーカス状態の変動を抑えた光ディスク原盤露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光ディスク原盤露光装置は、光源から出射されたコヒーレントなビームに変調および/又は偏向を施し、対物レンズを介し光ディスク原盤に照射して情報を記録すると共に、該光ディスク原盤から反射したフォーカスビームを4分割フォトディテクタにより受光し、前記4分割フォトディテクタの出力から前記対物レンズの位置制御を行う光ディスク原盤露光装置において、前記4分割フォトディテクタを上下左右に駆動させる駆動装置と、前記4分割フォトディテクタに入射するフォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置が前記4分割フォトディテクタの中心と一致するように前記駆動装置を駆動させる4分割フォトディテクタ移動量計算装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射光の空間強度分布の変動によるフォーカス状態の変動を抑えた光ディスク原盤露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスク原盤露光装置の構成図
【図2】(a)〜(h)本発明の実施の形態1のマスタリングプロセスの説明図
【図3】(a)〜(c)合焦点位置における非点収差フォーカス装置への入射ビームの空間強度分布の変動の説明図
【図4】本発明の実施の形態1における4分割フォトディテクタ移動量計算装置のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における4分割フォトディテクタ移動量計算装置のフォーカスビーム位置ズレ量測定回路の構成図
【図6】(a)〜(c)本発明の実施の形態1における非点収差フォーカス装置への入射ビームズレの位置制御方法の説明図
【図7】本発明の実施の形態2における光ディスク原盤露光装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態2におけるビームモニター系を使用した4分割フォトディテクタ移動量計算装置の光量中心位置と光量ピーク位置の計算方法を示す説明図
【図9】従来の光ディスク原盤露光装置の構成図
【図10】(a)〜(c)従来の光ディスク原盤露光装置の非点収差フォーカス装置での合焦状態の説明図
【図11】従来の光ディスク原盤露光装置の非点収差4分割フォトディテクタ回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態を、図1〜図8に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、同一構成には同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1の光ディスク原盤露光装置を示す。図2(a)〜(h)に、本発明の実施の形態1のマスタリングプロセスの説明図を示す。
【0014】
まず、図2(a)〜(h)を用いて光ディスクのマスタリングプロセスについて説明する。
まず、図2(a)では、青板ガラス、石英ガラス或いはSi基板等を研磨して、光ディスク原盤111を作る。
【0015】
続いて、図2(b)では、光ディスク原盤111の上に、フォトレジスト層111aを、有機系の材料のスピンコート或いは無機系の記録材料のスパッタリングによって形成する。フォトレジスト層111aの厚みは、光ディスク(CD、DVD、BD等)のフォーマットの種類や反射膜或いは記録材料などによって異なるが、10〜300nm程度である。
【0016】
続いて、図2(c)では、光ディスク原盤111の上に光記録装置のレーザにより信号ピットおよび/又は案内溝を記録する。
続いて、図2(d)では、アルカリ現像液により露光部を現像することにより、露光された部分のみが溶出し、所望のピット形状としての凹凸パターンおよび/又は溝が形成される。
【0017】
続いて、図2(e)では、図2(d)で現像した光ディスク原盤111の表面にスパッタリング或いは無電解工法により、導電膜を形成する。なお、図2(b)において光ディスク原盤上にスパッタリング法により無機系の記録材料が形成された場合は、図2(e)の導電膜形成工程が省略される場合もある。
【0018】
続いて、図2(f)では、ニッケル電鋳によりマスタースタンパーが製造される。
続いて、図2(g)および(h)では、製造されたマスタースタンパーのマザーリング、即ちマスタースタンパーへのニッケル電鋳を、2回行い、光ディスク射出成形用のスタンパーを完成させる。なお、この図2(g)および(h)のマザーリングは省略されることもある。
【0019】
図1における記録レーザ素子101から出射したレーザ光は、パワーおよび/又は信号変調を行う信号変調素子102により光の強度を減衰させる。更に、このレーザ光は、偏光素子103において、強度変調および/又は周波数偏向が行われて出射される。ここで、強度変調とは、偏向素子における記録すべき情報に応じたレーザ光の強度変調である。また、周波数偏向とは、偏向素子における光軸に対する垂直な左右或いは上下方向の周波数変更である。
【0020】
この偏光素子103を出射した光は、ビーム成形部104で適当なビーム径のレーザ光に成形され、ミラー105,106、ダイクロイックミラー109で反射した後、レンズアクチュエータ110に取り付けられた対物レンズ110aに入射する。
【0021】
この対物レンズ110aに入射した光は、有機或いは無機のフォトレジスト層111aが形成された光ディスク原盤111上に集光され照射される。このとき、対物レンズ110aを介して光ディスク原盤111上に照射されるレーザビームは、光ディスク原盤111上で焦点を結び、露光が施される。ここで、露光方法としては、フォトレジスト層111aが有機の場合はフォトリソグラフィー方式により行われ、フォトレジスト層111aが無機の場合は熱記録方式により行われる。
【0022】
なお、フォトレジスト層111aが有機の場合、記録レーザ素子101として、フォトリソグラフィー方式において有機レジスト層が感光する波長、例えば、波長266nmのDeep UVレーザが用いられる。また、フォトレジスト層111aが無機の場合、記録レーザ素子101として、熱記録方式により無機フォトレジスト層に十分な熱エネルギーを与える波長、例えば、波長351nmのガスレーザ或いは波長405nmの半導体レーザが用いられる。
【0023】
図1において、光ディスク原盤111から反射したビームは、再び対物レンズ110aを通過し、一部の光はダイクロイックミラー109を透過して、ミラー115で反射されて補助フォーカス装置116に入射する。一方、光ディスク原盤111から反射したビームの一部の光は、ダイクロイックミラー109で反射した後にハーフミラー108で反射し、ミラー112で反射する。
【0024】
ミラー112で反射したビームは、集光レンズ113a、シリンドリカルレンズ113bを介し、光軸に対し垂直な右肩上がり方向および右肩下がり方向に非点収差を持ったビームとなり4分割フォトディテクタ113c上に入射する。また後述する非点収差によるサーボ方式の原理上、シリンドリカルレンズ113bはその円柱対角線の方向と、4分割フォトディテクタ113cの分割線の方向が同様になるような位置関係に設置される。
【0025】
非点収差方式のフォーカスサーボは、集光レンズ113aとシリンドリカルレンズ113bの焦点距離が異なるため、4分割フォトディテクタ113c上にはレーザビームの非点収差が発生する。このとき、図10(a)〜(c)に示すように、対物レンズ110aと光ディスク原盤111の距離の変化に伴い、4分割フォトディテクタ113c上のレーザビーム形状が長楕円形に変化する。即ち、各々の対角に配置されたフォトディテクタA,CおよびB,Dの和信号(A+C)および(B+D)間に電位差が発生する。この電位差をレンズアクチュエータ110にフィードバックすることにより、対物レンズ110aと光ディスク原盤111の距離を一定に保つようなサーボ、即ち、非点収差フォーカスサーボが可能となる。
【0026】
ここで、非点収差フォーカス装置213のシリンドリカルレンズ113bおよび/又は4分割フォトディテクタ113cを予め調整し、4分割フォトディテクタの中心と光軸の中心が重なるように調整しても、4分割フォトディテクタ113cに入射されるフォーカスビームの光強度の空間強度分布は、フォーカスビームの時間変動と共に、図3(a)または図3(c)に示すような状態に変動する場合がある。なお、図3(b)は合焦点位置の場合である。
【0027】
フォトディテクタA〜Dの出力電圧は入射する光の光量によって出力が決まるので、図3(a)または図3(c)のように図中の円で示すビームの大きさおよび位置が一定でも、フォーカスビームの空間強度分布が変化すると、4分割フォトディテクタ113cのフォトディテクタA〜Dのそれぞれの出力電圧が変動する。
【0028】
フォーカスビームが焦点位置にあったとしても、図3(a)ではフォトディテクタBの出力電圧が相対的に大きくなり、合焦点位置から近い位置と誤検出して、対物レンズ110aを合焦点位置からずらしてしまい、焦点位置のずれが発生する場合がある。
【0029】
図3(c)では、フォトディテクタAの出力電圧が相対的に大きくなり合焦点位置から遠い位置と誤検出して、対物レンズ110aを合焦点位置からずらしてしまうことで焦点位置のずれが発生する場合がある。
【0030】
そこで、この実施の形態1では駆動装置213d,4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eを設けて、焦点位置(フォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置)のずれを防止している。なお、ここで、フォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置とは、光強度の強度分布の重心となる位置である。
【0031】
4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eについて、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS401において、非点収差フォーカス装置213の動作を開始させた後、ステップS402では、駆動装置213d,4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eを用いて、焦点位置の位置ズレ補正を開始する。そして、ステップS406でフォーカス制御の終了が検出されるまで、ステップS403〜ステップS406を繰り返し実行して、常にフォーカス制御をし続ける。
【0032】
具体的なステップS403〜ステップS406について説明する。
ステップS403では、4分割フォトディテクタ113cに入射するフォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置を計測し、4分割フォトディテクタ113cとフォーカスビームのX方向のズレ量ΔX、Y方向のズレ量ΔYを計算する。具体的には、図5に示す回路によってΔX,ΔYは計算される。
【0033】
続いて、ステップS404では、ステップS403の計算結果であるズレ量から4分割フォトディテクタ113cの位置補正が必要かを判断する。ステップS404においてΔX=0かつΔY=0を満足しないと判定された場合には、ステップS405の4分割フォトディテクタ113cの位置補正を実行する。
【0034】
この4分割フォトディテクタ113cの位置補正は、ΔX=0かつΔY=0となるように、駆動装置213dで4分割フォトディテクタ113cを−ΔX、−ΔY方向に駆動し、4分割フォトディテクタ113cとフォーカスビームの位置を一致させることで、補正する。
【0035】
図6(a)のように、4分割フォトディテクタ113cの左下Bにフォーカスビームの空間強度分布が偏った場合や、図6(c)のように4分割フォトディテクタ113cの左上Aにフォーカスビームの空間強度分布が偏った場合にでも、4分割フォトディテクタ113cの位置を補正することによりフォーカスエラー信号の誤検出をなくし、フォーカスビームの光強度の空間強度分布の時間変動の影響を受けない非点収差フォーカスサーボを実現することができる。なお、図6(b)は、ビーム位置が4分割フォトディテクタ113cの中央に入射している場合を示している。
【0036】
駆動装置213dには、例えば、直交2軸を高精度で位置決めできるマイクロステージを使用する。ここでは、駆動装置213dとして、移動量±2mm、最大速度5mm/s、位置決め精度10μmとしたマイクロステージを使用した。
【0037】
次に、4分割フォトディテクタ113cの位置補正の周期と制限について説明する。
非点収差方式のフォーカスサーボと4分割フォトディテクタ113cの位置補正は同時に行う必要があるため、4分割フォトディテクタ113cの位置補正を頻繁に行うと、非点収差方式のフォーカスサーボが外れてしまう可能性がある。また、4分割フォトディテクタ113cの位置補正の補正量についても同様に、4分割フォトディテクタ113cを大きく動かしてしまうと、非点収差方式のフォーカスサーボが外れてしまう可能性がある。
【0038】
そこで、本実施の形態では、4分割フォトディテクタ113cの位置補正の周期は、非点収差方式のフォーカスサーボの周期の10倍以上の周期とした。また、4分割フォトディテクタ113cの位置補正量は、コヒーレントなビームのビーム径の1/10以内とした。このように構成すると、フォーカスビームの空間強度分布の時間変動によるフォーカスエラー信号の誤検知を抑制し、安定なフォーカス状態を得ることができ、良好な光ディスク原盤を作製できる。
【0039】
(実施の形態2)
図7に本発明の実施の形態2の光ディスク原盤露光装置を示す。
前述の実施の形態1では、4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eが、4分割フォトディテクタ113cの出力電圧から空間強度分布の中心位置のズレ量を計算して、このズレ量が小さくなるように制御した。この実施の形態2では、ハーフミラー112を透過したビームをミラー214で反射し、ビームモニター系207に入射させ、集光レンズ207aを透過し、2次元撮像素子207b上に集光させている。そして、2次元撮像素子207b上に集光した光より、ビームの光強度の空間強度分布の中心位置のズレ量を計算して、空間強度分布の中心位置のズレ量が小さくなるように制御している。なお、実施の形態2は、この点を除いては実施の形態1と同じである。
【0040】
図7におけるビームモニター系207は、集光レンズ207aと2次元撮像素子207bから構成される。2次元撮像素子207bの画素ピッチは4分割フォトディテクタ113cのセンササイズよりも十分に細かいものとする必要がある。本実施の形態2では、記録レーザ波長266nmのDeep UVレーザに対しても感度のある1/2インチサイズ(画素サイズ:8.4×9.4μm)の38万画素程度のCCDカメラを使用した。また、ビームモニター系207の光軸は、非点収差フォーカス装置213へ入射するビームの位置計算が行い易いように、非点収差フォーカス装置213へ入射するビームと平行に配置した。
【0041】
この実施の形態2では、4分割フォトディテクタ移動量計算装置113eが、図4のステップS403において、2次元撮像素子207bの撮像結果から、次のように光強度の空間強度分布のズレ量を計算する。
【0042】
上下左右に4分割フォトディテクタ113cへ入射するビームの位置ズレ量ΔXおよびΔYは、フォーカスビームの光軸に平行なため、2次元撮像素子207bの撮像結果から計算可能である。
【0043】
2次元撮像素子207bの撮像面上では、図8に示すようなビームの強度分布が存在すると考えられることから、2次元撮像素子207bの素子(Xi、Yj)上のビームの強度をIijとしたとき、コヒーレントなビームの光量中心位置PXc,PYcは以下の計算式(数1)、(数2)で表現される。
【0044】
【数1】

図8および計算式(数1)、(数2)において、Xs、Xeは、2次元撮像素子207b上でビームが入射しているX方向の範囲である。また、Ys、Yeは、2次元撮像素子207b上でビームが入射しているY方向の範囲を示している。計算式(数1)、(数2)を用いることで、コヒーレントなビームの光量中心位置PXc,PYcは、コヒーレントなビーム上のノイズなどに影響されにくく安定して計測できる。4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eは、位置ズレ量ΔXをPXcとし、ΔYをPYcとして、ステップS405で、駆動装置213dを用いて、ΔX,ΔYが小さくなるように4分割フォトディテクタ113cの位置を制御する。
【0045】
なお、上記の説明では4分割フォトディテクタ移動量計算装置213eは、位置ズレ量ΔXをPXcとし、ΔYをPYcとして、4分割フォトディテクタ113cの位置を制御した。だが、コヒーレントなビームの光量が最大となる位置を示すと共にビーム強度Iijが最大となるXi,Yjを光強度の空間強度分布の中心位置とし、位置ズレ量ΔX,ΔYを計算しても、同様にズレ量が小さくなるように制御できる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、フォーカスビームの光強度の空間強度分布の時間変動によるフォーカスエラー信号の誤検知を抑制し、安定なフォーカス状態を得ることができ、各種の良好な光ディスク原盤の作製に寄与する。
【符号の説明】
【0047】
101 記録レーザ素子
102 光変調素子
103 偏光素子
104 ビーム成形部
105,106,115 ミラー
107 ビームモニター系
107a 集光レンズ
107b 2次元撮像素子
108 ハーフミラー
109 ダイクロイックミラー
110 レンズアクチュエータ
110a 対物レンズ
111 光ディスク原盤
111a フォトレジスト層
112 ハーフミラー
113,213 非点収差フォーカス装置
113a 集光レンズ
113b シリンドリカルレンズ
113c 4分割フォトディテクタ
213d 駆動装置
213e 4分割フォトディテクタ移動量計算装置
214 ミラー
216 補助フォーカス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射されたコヒーレントなビームに変調および/又は偏向を施し、対物レンズを介し光ディスク原盤に照射して情報を記録すると共に、該光ディスク原盤から反射したフォーカスビームを4分割フォトディテクタにより受光し、前記4分割フォトディテクタの出力から前記対物レンズの位置制御を行う光ディスク原盤露光装置において、
前記4分割フォトディテクタを上下左右に駆動させる駆動装置と、
前記4分割フォトディテクタに入射するフォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置が前記4分割フォトディテクタの中心と一致するように前記駆動装置を駆動させる4分割フォトディテクタ移動量計算装置と、を備えたことを特徴とする
光ディスク原盤露光装置。
【請求項2】
前記4分割フォトディテクタ移動量計算装置は、非点収差方式のフォーカスサーボと前記4分割フォトディテクタの位置補正を同時に行うことを特徴とする
請求項1に記載の光ディスク原盤露光装置。
【請求項3】
前記光ディスク原盤で反射したフォーカスビームを分岐させ、一方の光を前記4分割フォトディテクタに入射させるミラーと、
前記ミラーで分岐した他方の光を撮像する2次元撮像素子を備え、
前記4分割フォトディテクタ移動量計算装置は、前記2次元撮像素子での撮像結果からフォーカスビームの光量中心位置を計算し、前記光量中心位置をフォーカスビームの光強度の空間強度分布の中心位置とすることを特徴とする
請求項1記載の光ディスク原盤露光装置。
【請求項4】
前記4分割フォトディテクタ移動量計算装置は、前記2次元撮像素子の素子(Xi,Yj)上のビームの強度をIijとし、前記2次元撮像素子上でビームが入射しているX方向の範囲をXs,Xeとし、前記2次元撮像素子上でビームが入射しているY方向の範囲をYs,Yeとしたときビームの光量中心位置PXc,PYcが
【数2】

で表され、このPXc,PYcを、前記4分割フォトディテクタに入射するフォーカスビームの空間強度分布のX方向のズレ量ΔX,Y方向のズレ量ΔYとして前記駆動装置を制御する
請求項3記載の光ディスク原盤露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−8412(P2013−8412A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139978(P2011−139978)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】