説明

光ピックアップ装置

【課題】 光ピックアップにおいて制御信号の変動やデータ信号のエラー率の原因となる多層間クロストークを除去し、狭い層間隔でも安定した動作を確保する。
【解決手段】 多層ディスク501からの反射光を、中心線で分かれるように分割光学系107で二つに平行分割し、集光する。集光された当該層からの反射光は、反射領域を制限した反射板534で反射され、光検出器52で検出されるが、他層からの反射光は反射板534で反射されないので、層間クロストークは減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置に関し、特に光ピックアップ装置の読出し光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクでは、容量を増加させるために多層化技術が進んできている。しかし、通常の光ドライブ装置では層間クロストークが残ることになる。
【0003】
図3を用いて、光ピックアップ装置の検出光学系における多層光ディスクによるクロストークを説明する。トラッキングエラー信号の検出はここではDPP(Differential Push-Pull)法を使用するものとする。DPP法では回折格子によりレーザ光を1本のメイン光線と二本のサブ光線に分割し、3本の光線で光ディスクを照射する。図3ではメイン光線80のみを示している。単純化のために、501は二層の光ディスクとし、511及び512は情報記録層であるものとする。対物レンズ401からのメイン光線の最小ビームスポット位置はメイン光線80で示すように情報記録層511上にあり、情報記録層511からの情報を読み出そうとしている。情報記録層511上には、図4に示すトラッキングのための案内溝が形成されており、この溝をメイン光線が光スポット94として照射し、同時にサブ光線は半トラックピッチだけずれた位置を照射スポット95、96の状態で照射している。照射光の焦点は記録層511に合っているので、その反射光は入射光と同じ光路を逆方向に辿って図3の対物レンズ401に戻る。次に、検出レンズ402を透過し、光ビーム801となって光検出器51に入射する。検出レンズ402には非点収差が入っており、光検出器51は最小錯乱円の位置に設置される。
【0004】
光検出器の形状とディスクからの反射光の入射状態を図5に示す。中央にある田の字状の四分割された検出器541はメイン光線を検出するものであり、メイン光線はスポット811として検出器541を照射する。サブ光線による反射光は、それぞれ2分割検出器542、543上に光スポット812、813として入射する。四分割検出器541からの信号をA、B、C、Dとし、2分割検出器542からの信号をE、F、2分割検出器543からの信号をG、Hとする。このとき、トラッキングエラー信号TRは、TR=(A+B)−(C+D)−k{(E−F)+(G−H)}と表される。ここに、kは定数であり、メイン光線とサブ光線の強度比等から決められる。通常、メイン光線はサブ光線の強度と比較して10倍以上大きくなるように設定されている。また、フォーカスエラー信号をAF、データ信号をRFとしたとき、AF=A+C−(B+D)、RF=A+C+B+Dのように表される。TR及びAF信号はレーザ光の照射位置の制御に使用される。
【0005】
多層ディスクにレーザ光を照射したとき、それぞれの層で反射され光検出器で検出される反射光量はほぼ同量になるように設計されている。このために対物レンズに近い層の透過率が大きくなっており、対物レンズから遠い層にもレーザ光が照射できるようになっている。このような条件下では、図3に示したように情報読出し対象層である511にレーザ光の焦点を合わせると、一部のレーザ光は光ビーム82として当該層511を透過し、隣接層512で反射され、迷光である反射光ビーム83となる。この反射光ビーム83は対物レンズ401に戻り、検出レンズ402に入射した後、光検出器51の手前で一旦集光され、光ビーム804で示したように広がりながら光検出器51に入射する。光ビーム804は、光検出器面上では図5に示すように、広がった光スポット841になり、光検出器541、542、543を覆った状態となる。このため、ビーム811及び812、813と干渉することになる。この干渉は、層間隔の変動による光スポット841の位相の変化に影響され、変化する。
【0006】
ビーム811の全光量であるRF信号強度の変動はRF信号のジッターの劣化を引き起こし、データ読み出し時のエラーレートを悪化させてしまう。また、ビーム812と813での干渉はTR信号の変動を引き起こす。回折格子で分割されて生成されるサブ光線の強度は設計上小さく設定されているので、隣接層からのメイン光線の反射光のパワーデンシティと同程度となり、このため、干渉の効果が強く現れる。この干渉も光ディスクの傾きや層間隔などに影響され、不均一な層間隔のディスクの回転で光スポット812あるいは813の光量分布が変化する。この結果、TR信号の差動信号部分(E−F)+(G−H)に影響を与えることになり、トラッキング信号のバランスが崩れることになる。これにより、トラッキングがはずれるような不具合が生じる。同様に、隣接層512が読出し対象層511の対物レンズ寄りにある場合も、隣接層から反射光が発生し、問題となる干渉が同様に生じる。
【0007】
そこで、クロストークを低減するための技術として、特許文献1があげられる。特許文献1では図7に示すピックアップ光学系において、反射領域制限反射鏡43を使用している。以下に光学系の説明をする。半導体レーザ101から出射したレーザ光を、コリメータレンズ403と三角プリズム102により円形のコリメートされた光ビームに変換する。コリメートされたビームは回折格子103により3本のビームに分割され、1本のメイン光線と2本のサブ光線になる。メイン光線の進行方向は入射ビームと同じ方向であるが、サブ光線は光軸の両側にある傾きを持った出射光となる。3本のビームは偏光ビームスプリッタ104を透過し、λ/4板105により円偏光に変換され、回転機構により回転する多層ディスク501に対物レンズ404で絞り込まれる。ここでは多層ディスク501として2層ディスクを図示しているが、3層以上の多層ディスクにも適用可能である。読出し対象層(当該層)は511であり、レーザ光の最小スポットの位置が511上にある。隣接層512からも反射光83が発生し、クロストークの原因である迷光となる。
【0008】
多層ディスクからの反射光は迷光も含めて、対物レンズ404を戻り、λ/4板105により、元の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変換される。このため偏光ビームスプリッタ104で反射され、λ/4板106に向かい、円偏光に変換される。その後、反射光集光レンズ405で集光され、当該層である記録層511からの反射光の最小スポット位置に置かれた反射板43で反射される。反射板43の形状は図8に示されている。831はメイン光線の最小スポットであり、832、833はサブ光線の最小スポットを表している。それぞれの最小スポットは反射領域が制限された反射領域431,432,433で反射される。該反射領域の外側は反射率の低い部分になっている。反射板43による当該層からの反射光は反射光集光レンズ405に戻り、λ/4板106により入射時の偏光方向に対して直交した偏光方向の直線偏光となり、ビームスプリッタ104を透過する。406は非点収差が入った集光レンズであり、最小錯乱円の位置に光検出器52が置かれている。光検出器52の感度のある部分の形状は図5で示した通りである。光検出器52からの信号は信号処理回路53で処理され、光スポットの位置を制御するAF信号及びTR信号、データ信号であるRF信号が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-135097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図8において、クロストークの主な原因となる他層からの迷光841は広い領域を照射するので、反射率の低い部分も照射することになり、検出器に向けて反射される光量は減少する。しかし、反射領域431,432,433も照射するので、この領域による反射光が検出器に戻りクロストークの原因として残されていた。
【0011】
本発明の目的は、光ピックアップ装置において、上述の残された層間クロストークを除去する手段を提供することにより、安定したトラッキング信号やフォーカシングエラー信号を実現し、さらに、RF信号の信号雑音比の低下を防止しすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明では、他層からの反射光が反射領域制限反射面において反射領域を照射しないようにすることで、層間クロストークを減少させる。
【0013】
多層ディスクからの反射光を2つに分割して反射光集光レンズで集光している状態を図9及び図10に示す。説明を分かり易くするために、それぞれの図において当該層からの反射光と他層からの反射光を別の図に描いているが、実際には両者同時に起こり重なり合うものである。それぞれの図の左側では、分割された当該層からの反射光812を反射光集光レンズ405で集光しており、集光面524で最小スポットになる。図9の右図は、当該層より対物レンズに近い層からの迷光となる反射光を反射光集光レンズ405で集光した状態を示している。反射集光レンズ405に入射する反射光851は分割されているものとする。反射層が対物レンズに近いため、当該層の集光面524より遠くの位置525で集光することになる。図10の右図は、反射層が当該層より遠くにある場合の集光状態を示しており、分割された反射光852は当該層の集光面524より反射光集光レンズ405に近い位置526で集光することになる。
【0014】
図9あるいは図10における集光面524での光の分布を図11に示す。当該層からの反射光はメイン光線が1本、サブ光線が2本あり、メイン光線はスポット821として絞り込まれ、サブ光線はスポット822および823として絞り込まれている。当該層以外からの反射光は二つに分裂して中心から分かれた光量分布となる。たとえば、メイン光線の他層による反射光は816のようになり、サブ光線の他層による反射光分布は817および818のようになる。いずれにしても、中心領域は他層からの反射光が照射しない状態となる。ここで反射領域を531、532、533のように制限された反射板431を設置すると、当該層からの反射光のみ反射され、他層からの反射光はほとんど反射されなくなる。このように反射領域を制限することによって、当該層からの反射光を他層からの迷光に影響されずに検出できるようになる。
【0015】
本発明の光ピックアップ装置は、レーザ光源と、レーザ光源からのレーザ光を多層光情報記録媒体の一つの記録層に集光する照射光集光光学系と、多層光情報記録媒体の記録層から反射された反射光を検出する検出光学系とを有する。検出光学系は、記録層からの反射光を平行分割する分割光学系と、分割された反射光を絞り込む反射光集光レンズと、反射光集光レンズによって絞り込まれた反射光中の目的とする記録層からの反射光の最小スポット位置に置かれた反射領域制限反射面と、反射光を検出する光検出器とを含み、反射面によって反射された反射光を前記光検出器上で検出する。
【0016】
あるいは、照射光集光光学系の光路中にビームスプリッタと対物レンズが設けられ、照射光集光光学系と検出光学系はビームスプリッタと前記対物レンズを共有し、照射光集光光学系は、レーザ光源からのレーザ光を発散光としてビームスプリッタを通過させる。そして、検出光学系は、記録層からの反射光を、分割直後には光軸を通らず次第に光軸に収束するように光軸の両側に分割する分割光学系と、分割光学系を通過した反射光中の目的とする記録層からの反射光の最小スポット位置に設けられた反射領域制限反射面と、反射光を検出する光検出器とを含み、反射面によって反射された反射光を光検出器上で検出する。
【0017】
当該層からの反射光の焦点位置に置かれた反射領域制限反射面は当該層からの反射光を反射し、他層からの反射光を反射させない役割をする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、他層からの反射光が光検出器に入射しなくなるので、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号およびRF信号への層間クロストークによる影響を小さくすることができる。
【0019】
また、光線の分割間隔を大きくすることで、レンズシフトを大きくとっても、層間クロストークが増加しないようにできること、同時に狭い層間隔の多層ディスクにも対応できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による光ピックアップ装置の光学系の一例を示す図。
【図2】本発明による光ピックアップ装置の光学系の一例を示す図。
【図3】隣接層からの反射光の影響を示す図。
【図4】1本のメイン光線と2本のサブ光線が溝付き記録面を照射している状態を示す図。
【図5】光検出器の形状と光ディスクからの反射光の光スポットの位置と広がりを示す図。
【図6】グレーティングの鋸歯の形状を示す図。
【図7】反射領域を制限した反射板を用いる光ピックアップ光学系を示す図。
【図8】反射領域を制限した反射板を示す図
【図9】分割した反射光の集光状態を示す図。
【図10】分割した反射光の集光状態を示す図。
【図11】当該層で反射されたメイン光線とサブ光線の分割平行光が反射集光レンズで集光したときの集光状態と、それぞれの他層による反射光の分布状態を示す図。
【図12】本発明による光ピックアップ装置を用いた光ディスクドライブ装置の一例を示す図。
【図13】グレーティングの鋸歯の形状を示す図。
【図14】2枚のバイプリズムを用いた分割光学系を示す図。
【図15】2枚の分割グレーティングを用いた分割光学系を示す図。
【図16】2枚の平行平板を用いた分割光学系を示す図。
【図17】信号処理回路の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に、分割光学系について説明する。図14は、バイプリズムを二つ使用してビームを分割する分割光学系の例を示す図である。第1のバイプリズム408に平行光線が入射しており、光軸の垂線を分割線として光軸に対して同角度で対称な進行方向の平行光線が作られる。第2のバイプリズム409は、光軸に対して角度を持った平行光線の進行方向を光軸に対して平行に変える。このようにバイプリズムを二つ使用することにより、通常のビームを分割平行光線に変換することができる。
【0022】
図15は、透過グレーティング41と42を用いて平行分割する分割光学系の例を示す図である。グレーティング41及び42はそれぞれグレーティングによる回折光の方向が異なる二つの領域から構成されているが、二つの領域のグレーティングは分割線と同じ溝方向と同じ溝ピッチを有し、なおかつ0次光の発生しない溝深さ1/(n−1)の鋸歯状のグレーティングとなっている。nはグレーティングの屈折率であり、空気中にあるものとした。溝深さはこの整数倍のものでも0次光を発生しない。図13にはグレーティング41の鋸歯の形状を示しており、410と411の領域での鋸歯は互いに反転した形状をしているので、回折光は光軸に対称な方向に発生する。これにより、入射光の二つの領域の光は異なる方向に出射することになる。図6にグレーティング42の鋸歯の形状を示す。光は上方から入射する。421での鋸歯の形状と410での形状、及び420での鋸歯の形状と411での形状はそれぞれ同じであるので、グレーティング41を透過して光軸に対して角度を持った二つのビームはグレーティング42を透過した後、間隔の空いた光軸に対して平行な光になる。
【0023】
図16は、平行平板を使用した分割光学系の例を示す図である。分割平板素子44は、2枚の平行平板441と442で構成され、それぞれの平行平板は光軸に対して同じ角度で傾いており、また光軸に対して対称な位置にある。二つの平行平板の接合部がなす稜線は光軸に垂直に交わるものとし、平行平板の接合部がなす稜線あるいは谷線はメイン光線とサブ光線の中心を通り、かつ光軸に垂直な直線と略同じ方向を有している。紙面上方からの入射平行光は谷線の位置で二つに分けられ、それぞれ別の平行平板に入射する。平行平板は透明ガラスあるいはプラスチックとすると、屈折率が空気より大きいので、入射面で光線が谷線と光軸を含む平面から離れる方向に向かい、出射面で光軸と平行なビームとなる。
【0024】
以上説明した分割光学系は平行光束中に入れることを想定したものであるが、反射光集光レンズの後の収束光中に入れることも可能である。たとえば図16のような光学素子の場合は入射面の角度と出射面の角度が同じであったが、収束光中に入れる場合には、光軸に対する入射面の角度と出射面の角度が異なる設計をすれば、同様な効果を得ることができる。
【0025】
次に、実施例により本発明を説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1による光ピックアップ装置の光学系を示す図である。図7で示した光学系に、分割光学系107が挿入されている。これにより多層ディスク501からの反射光が、中心部が空いた状態のビームに変換される。反射板43も使用可能であるが、反射領域制限反射板45に置き換えられており、反射領域はたとえば534で示した通りストライプ状の短冊形状になっており、当該層からの反射光を反射する。短冊の長手方向の長さは長くても迷光が照射しない限り問題はない。この短冊状の反射領域を当該層からのメイン光線とサブ光線が黒丸で示したスポット状態で照射しているため、これらのスポットは反射される。当該層からの反射光は平行分割された状態で反射光集光レンズ405に戻り、分割光学系107を通過した後、通常の分割のない状態に戻る。分割光学系107を出射した反射光は、偏光ビームスプリッタ104、非点収差の入った集光レンズ406を透過後、光検出器52で検出される。他層からの反射光は短冊状の反射領域を照射しないので、反射光集光レンズ405に戻らない。したがって、光検出器52に到達しなくなるので、層間クロストークは発生しなくなる。なお、光検出器に到達した光は、信号処理回路53で、RF信号等を生成する。
【0027】
短冊形状の反射領域の幅は当該層が少なくともフォーカスの引き込み範囲において、その反射光のスポットより大きい必要がある。スポットが大きいと引き込み範囲が狭くなり、層間ジャンプやフォーカスが不安定になる。たとえば、引き込み範囲を3μm、対物レンズと反射光集光レンズの光学系の光学倍率を10倍とするとストライプの幅は60μm必要となる。これに伴い、他層の反射光はこの短冊形状を避けるようなバイプリズムの設計をする必要がある。
【0028】
分割光学系107には、図14から16に示した光学系を利用できる。図15に示した分割光学系のグレーティングは偏光性回折素子とすることも可能である。この場合、偏光ビームスプリッタ104から分割光学系107に向かう光線に対してのみ回折効果を持たせ、106のλ/4板から戻る偏光方向が90度異なる光線に対しては作用を及ぼさないようにしておく。ビームが分割された状態で検出されることになるが、それぞれの分割された検出器(図5)に入射する光量はビームが分割されていない場合と同様であるので、RF信号及び制御信号に問題が生じることはない。偏光性回折格子を使用することで、反射板45の傾きや光軸方向の位置ずれに対して分割素子の影響を少なくできる長所がある。ここで、短冊状の反射面は、短冊の長手方向が前記分割光学系の分割方向と略一致するように構成されている。
【0029】
図17に、信号処理のための電子回路を示す。光検出器541及び542、543は図5で示したものと同様である。4分割検出器541はメイン光線を検出し、2分割検出器542、543はそれぞれサブ光線を検出する。551から555までが差動増幅器であり、561から566までが加算回路である。580はk倍の増幅器であり、kはメイン光線とサブ光線の強度比を勘案して決まる値である。各検出器からの信号はプリアンプで増幅された後、これらの電子回路で処理され、制御信号あるいはデータ信号となる。4分割検出器からの出力であるA及びB、C、Dのすべてを加え合わせた信号572は、データ信号である。574は非点収差法によるAF信号となる。573はメイン光線によるプッシュプル信号であり、571はサブ光線によるサブプッシュプル信号である。信号571は増幅器580でk倍に増幅され、メイン光線によるプッシュプル信号573と共に差動増幅器555で処理され、TR信号575となる。
【0030】
本実施例によると、RF信号への層間クロストークが低減されるので、RF信号の信号雑音比が向上し、エラーの少ないデータ信号を得ることができる。同時に、本方式は層間隔の変動に伴ってトラッキングエラー信号が変動する現象を小さくすることができる。すなわち、隣接層からのメイン光線の反射光とトラッキングのための当該層からのサブ光線の反射光とが干渉し、その位相差が層間隔によって変わるので、サブプッシュプル信号が変動するが、本発明により隣接層からの反射光の影響を小さくできるので、トラッキングエラー信号の変動が小さくなる。これにより、精度の高いレーザ光照射位置の制御が可能となり、読出し及び書込みのときのレーザ照射位置を正確に決められるので信号の品質が向上する。
【0031】
本実施例では偏光光学系を用いたが、半導体レーザの最大出力に十分余裕がある場合は、偏光ビームスプリッタ104を通常のビームスプリッタに置き換え、λ/4板105、106を取り除いた光学系を使用することも可能である。
【実施例2】
【0032】
図2は、本発明の実施例2による光ピックアップ装置の光学系を示す図である。本実施例では、回折格子103と偏光ビームスプリッタ104がコリメータレンズ407より半導体レーザ101側に設置されている。従って、半導体レーザ101から出射したレーザ光は発散光の状態で偏光ビームスプリッタ104を透過し、その後コリメータレンズ407でコリメートされ、λ/4板105に入射する。多層ディスクにおいて、当該層のディスク表面からの深さが異なると発生する球面収差が異なるが、この収差はコリメータレンズ407を光軸上で移動させることで補償する。実施例1では回折格子103と偏光ビームスプリッタ104がコリメータレンズ403と対物レンズ404の間に設置されていたため、集光レンズ405が必要であったが、実施例2では図2に示すように、多層ディスク501の読出し対象層511から反射された光ビームはコリメータレンズ407を通ると収束光になるので、集光レンズが必要ない。これにより、部品点数を削減できる効果がある。
【0033】
分割光学系107には、実施例1と同様に、図14から16に示した光学系を利用できる。図15に示した分割光学系のグレーティングを偏光性回折素子としてもよいのも実施例1と同様である。実施例1では、当該層511からの反射光は分割光学系107から平行光として出射するが、本実施例の場合、当該層511からの反射光は分割光学系107から収束光として出射する。
【実施例3】
【0034】
層間クロストークを減少させることが可能な光ディスクドライブ装置の実施例を図12に示す。回路711〜714は、データを多層光ディスク501に記録するためのものである。誤り訂正用符号化回路711では、データに誤り訂正符号が付加される。記録符号化回路712は、1−7PP方式でデータを変調する。記録補償回路713は、マーク長に適した書込みのためのパルスを発生する。発生したパルス列に基づき、半導体レーザ駆動回路714により、光ピックアップ60内の半導体レーザを駆動し、対物レンズから出射したレーザ光80を変調する。モータ502によって回転駆動される光ディスク501上には相変化膜が形成されており、レーザ光で熱せられ、急冷されるとアモルファス状態になり、徐冷されると結晶状態になる。これらの二つの状態は反射率が異なり、マークを形成することができる。書き込み状態では、レーザ光のコヒーレンシーを低下させる高周波重畳を行わないため、隣接層からの反射光と当該層からの反射光は干渉しやすい状態になっている。このため、SPPの変動を低減するための対策を行わない場合は、トラッキングがはずれたり、隣接トラックのデータを消したりする不具合が生じる。本実施例では、光ピックアップ60には実施例1,2で示した光ピックアップのいずれかが採用されており、多層ディスクにおいてもトラッキングの不具合は生じない。
【0035】
回路721〜726は、データの読み出しのためのものである。イコライザー721は、最短マーク長付近の信号雑音比を改善する。この信号はPLL回路722に入力され、クロックが抽出される。また、イコライザーで処理されたデータ信号は抽出されたクロックのタイミングでA−D変換器723でデジタル化される。PRML(Pertial Response Maximum Likelyhood)信号処理回路724では、ビタビ復号を行う。記録復号化回路725では1−7PP方式の変調規則に基づき復号化し、誤り訂正回路726でデータを復元する。
【0036】
なお、実施例では2層の例について説明したが、3層以上でも同様の効果があることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、光ピックアップ装置において、多層間クロストークを回避することができる。これによりRF信号の信号雑音比を向上させることが可能であり、他層クロストーク除去効果と相まって、データ信号の品質をエラーの少ない状態に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
43:反射板、52:検出器、53:信号処理回路、101:半導体レーザ、103:回折格子、104:偏光ビームスプリッタ、105:λ/4板、106:λ/4板、107:分割光学系、404:対物レンズ、405:反射光集光レンズ、406:非点収差入り集光レンズ、45:反射領域制限反射板、501:多層ディスク、534:ストライプ状反射領域、541:四分割検出器、542:2分割検出器、543:2分割検出器、81:当該層からの反射光:811:メイン光線スポット、812:サブ光線スポット、813:サブ光線スポット、841:隣接層からのメイン光線の光スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光を多層光情報記録媒体の一つの記録層に集光する照射光集光光学系と、
前記多層光情報記録媒体の前記記録層から反射された反射光を検出する検出光学系とを有し、
前記検出光学系は、
前記記録層からの反射光を、分割後の光束が光軸を通らないように光軸の両側に平行分割する分割光学系と、
前記分割光学系によって分割された反射光を絞り込む反射光集光レンズと、
前記反射光集光レンズによって絞り込まれた前記反射光中の前記一つの記録層からの反射光の最小スポット位置に設けられた反射領域制限反射面と、
前記反射領域制限反射面の反射面によって反射された反射光を検出する光検出器を含み、
前記反射領域制限反射面は、前記一つの記録層からの反射光を反射し、他の記録層からの反射光を反射しないように構成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、更に、前記レーザ光をメイン光線とサブ光線に分割する光学素子を含み、それぞれの集光スポットを前記反射領域制限反射面の反射する領域で反射することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップ装置において、前記検出光学系は非点収差を有することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は光軸に沿って配置された二つのバイプリズムで構成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は光軸に沿って配置された二つのグレーティング素子からなり、前記二つのグレーティング素子は光軸を含む面で二分割され、前記グレーティング素子の溝形状は鋸波状で、溝深さは0次光を抑圧する深さであり、前記光軸を含む面に対して対称であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は光軸に垂直な直線を稜線として光軸に対して同角度の二平面と該二平面を光軸方向に平行移動した二平面とで光学面が構成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記反射面は短冊状をしており、短冊の長手方向が前記分割光学系の分割方向と略一致することを特徴とすることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記反射面の反射領域の大きさは前記一つの記録層に集光されているときの前記反射光の照射領域を含み、前記記録層以外からの反射光の照射領域を含まないことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光を多層光情報記録媒体の一つの記録層に集光する照射光集光光学系と、
前記多層光情報記録媒体の前記記録層から反射された反射光を検出する検出光学系とを有し、
前記照射光集光光学系の光路中にビームスプリッタと対物レンズが設けられ、前記照射光集光光学系と前記検出光学系は前記ビームスプリッタと前記対物レンズを共有し、
前記照射光集光光学系は、前記レーザ光源からのレーザ光を発散光として前記ビームスプリッタを通過させ、
前記検出光学系は、
前記記録層からの反射光を、分割直後には光軸を通らず次第に光軸に収束するように光軸の両側に分割する分割光学系と、
前記分割光学系を通過した前記反射光中の前記一つの記録層からの反射光の最小スポット位置に設けられた反射領域制限反射面と、
前記反射領域制限反射面の反射面によって反射された反射光を検出する光検出器とを含み、
前記反射領域制限反射面は、前記一つの記録層からの反射光を反射し、他の記録層からの反射光を反射しないように構成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は光軸に沿って配置された二つのバイプリズムで構成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項11】
請求項9に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は光軸に沿って配置された二つのグレーティング素子からなり、前記二つのグレーティング素子は光軸を含む面で二分割され、前記グレーティング素子の溝形状は鋸波状で、溝深さは0次光を抑圧する深さであり、前記光軸を含む面に対して対称であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項12】
請求項9に記載の光ピックアップ装置において、前記分割光学系は、前記反射光を前記反射領域制限反射面に向けて収束する光学素子と前記反射領域制限反射面との間に設置されたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−113613(P2011−113613A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269424(P2009−269424)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】