説明

光ピックアップ

【課題】光ピックアップにおいて、戻り光が通過する光学路に回折光学素子を配置するメリットを、複数種類の光ディスクの場合に拡大できる技術を提供する。
【解決手段】光ピックアップ1は、光ディスクからの反射光を光検出部23に導く光路中に回折光学素子21を有し、光検出部23から出力される信号を用いてFE信号及びTE信号を生成する。光検出部23は、回折光学素子21で回折されることなく回折光学素子21を透過する光を受光するメイン受光部231と、回折光学素子21で回折された回折光を受光するサブ受光部232と、を有し、サブ受光部232には、FE信号を生成するために使用される第1の領域R1と、TE信号を生成するために使用される第2の領域R2と、が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録される情報の読み取りや光ディスクへの情報の書き込みを行う際に用いられる光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルーレイディスク(以下BDと記載)、デジタル多用途ディスク(以下DVDと記載)、コンパクトディスク(以下CDと記載)等の光ディスクに対して、情報を読み取ったり、情報を書き込んだりする目的で使用される光ピックアップが知られている。この光ピックアップには、光源から出射される光を光ディスクの情報記録面に集光するための対物レンズと、光ディスクで反射される反射光(戻り光)を受光する光検出器(PDIC)と、が含まれる。
【0003】
光ピックアップによって、光ディスクの情報を読み取ったり、光ディスクに情報を書き込んだりする場合には、対物レンズによって集光される光スポットの位置を次のように制御する必要がある。第1に、対物レンズによって集光される光スポットが、光ディスクの情報記録面上に常に存在するように制御(フォーカシング制御)する必要がある。第2に、対物レンズによって情報記録面に集光された光スポットが、光ディスクに形成されるトラックに常に追従するように制御(トラッキング制御)する必要がある。
【0004】
このために、光ピックアップにおいては、光検出器から出力される信号に基づいて、光スポットと情報記録面(目標の情報記録面)とのズレ量を表すフォーカスエラー(FE)信号と、光スポットとトラック(目標のトラック)とのズレ量を表すトラッキングエラー(TE)信号とが算出されるように構成される。そして、FE信号に基づいて対物レンズのフォーカス方向の位置を動かす制御(フォーカシング制御)が行われ、TE信号に基づいて対物レンズのトラッキング方向の位置を動かす制御(トラッキング制御)が行われる。
【0005】
なお、フォーカス方向は、光ディスクの情報記録面に略垂直な方向であり、トラッキング方向は、光ディスクのトラック(情報記録面に同心円状又は螺旋状に形成される)に略垂直な方向である。
【0006】
TE信号を算出する方法としては、従来、PP(Push-Pull)法やDPP(Differential Push-Pull)法等が知られている。DPP法は、レンズシフト(対物レンズのトラッキング方向へのオフセット)の影響を抑制してTE信号を得ることができるため、従来、光ピックアップに広く採用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
しかしながら、例えばBDは、情報記録面の数が複数ある多層ディスクが一般的であり、最近では3、4層といった多層ディスクも市販されている。このような多層ディスクに光ピックアップで対応する場合、目的とする情報記録面とは異なる情報記録面からの反射光が迷光として発生する。光源から出射される光を回折格子(グレーティング)によって主光と2つの副光とからなる3つの光に分けて光ディスクに照射する構成を採用するDPP法は、前述の迷光の影響を受け易く、多層ディスクに対しては不向きである。
【0008】
また、DPP法においては、上述のように光源から出射される光を3つの光に分けて光ディスクに照射するために、1つの光のみを光ディスクに照射する場合に比べて、光の利用効率が低下してしまう。すなわち、光利用効率の面からもDPP法は好ましくないと言える。
【0009】
このようなことから、最近では、例えば特許文献5にも示されるように、光源から出射される光によって光ディスクに形成される光スポットは1つとし、光ディスクからの戻り光を回折光学素子によって複数の光に分けて光検出器で受光し、TE信号を得る構成が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−27477号公報
【特許文献2】特開2008−234807号公報
【特許文献3】特開2009−259401号公報
【特許文献4】特開2008−4250号公報
【特許文献5】特開2010−153033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年の光ピックアップは複数種類の光ディスクに対応するのが一般的である。例えば光ピックアップは、BDとDVDとに互換可能に設けられることが多く、この両者に好適に使用できることが望まれる。このようなことを考慮すると、BD対応の光ピックアップに対して望ましい形態として採用される、「戻り光が通過する光学路に回折光学素子が配置される構成」は、DVD対応の場合にも好ましい形態として利用できると非常に有益である。
【0012】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、光ピックアップにおいて、戻り光が通過する光学路に回折光学素子を配置するメリットを、複数種類の光ディスクの場合に拡大できる技術を提供することである。また、本発明の他の目的は、BD及びDVDを互換する光ピックアップに好適な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の光ピックアップは、光ディスクからの反射光を光検出部に導く光路中に回折光学素子を有し、前記光検出部から出力される信号を用いてフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号が生成される光ピックアップであって、前記光検出部は、前記回折光学素子で回折されることなく前記回折光学素子を透過する光を受光するメイン受光部と、前記回折光学素子で回折された回折光を受光するサブ受光部と、を有し、前記サブ受光部には、前記フォーカスエラー信号を生成するために使用される第1の領域と、前記トラッキングエラー信号を生成するために使用される第2の領域と、が形成される。
【0014】
本構成によれば、戻り光が通過する光路中に配置される回折光学素子を使用してTE信号を得ることができるようになっている。このために、本構成の光ピックアップでは、光源から出射される光を3つの光に分けて光ディスクに照射する必要がなく、DPP法を用いてTE信号を生成する場合に比べて光利用効率を高められる。また、本構成では、多層ディスク(BDで採用される場合が多い)に対応する場合に、DPP法では深刻な問題となる迷光について、その影響を小さなものとできる。また、本構成では、回折光学素子で回折された回折光をFE信号の演算にも使用する構成であり、戻り光が通過する光学路に回折光学素子を配置するメリットを、例えばBDのみならず、DVDにも拡大できる。
【0015】
なお、DVDにおけるメリットとしては、例えば、DVD−R及びDVD−RW(以下、DVD−R,RWという表記を使用する)と、DVD−RAMといったトラックピッチの異なるDVDについて、コンパチビリティを確保できることが挙げられる。
【0016】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記メイン受光部には、互いに直交する第1の分割線と第2の分割線とで分割された4つの分割領域が形成され、前記第1の領域は、前記光ディスクのトラック構造によって生じる0次光と1次光とが重なり合う部分の光を含む光が入射される領域であって、前記第1の分割線に略平行な第3の分割線が少なくとも使用されて4つの領域に分割されており、前記第2の領域は、前記光ディスクのトラック構造によって生じる0次光と1次光とが重なり合う部分とは異なる部分の光が入射される領域であって、前記第2の分割線に略平行な第4の分割線で分割されている、こととしてよい。そして、この構成において、前記第1の領域は、前記第3の分割線に加えて前記第4の分割線を用いて4つの領域に分割されていることとしてもよい。
【0017】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記第2の領域が2つあって、前記第1の領域は前記2つの第2の領域に挟まれている、こととしてもよい。本構成によれば、光検出部で受光する光を効率良く使用できる。
【0018】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記サブ受光部は2つ設けられ、前記2つのサブ受光部は、前記メイン受光部を挟んで対称的な位置に形成されている、こととしてもよい。この構成は、回折光学素子をブレーズド格子としない場合には好ましい態様である。
【0019】
上記構成の光ピックアップにおいて、第1の波長の光を出射する第1の光源と、前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出射する第2の光源と、を備え、前記サブ受光部には、前記第1の波長の光用の第1のサブ受光部と、前記第2の波長の光用の第2のサブ受光部と、の2種類のサブ受光部が含まれる、こととしてもよい。本構成は、光ピックアップが複数種類の光ディスクに対応する場合に好ましい形態である。
【0020】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記第1の波長の光はBDに対して使用される光であり、前記第2の波長の光はDVDに対して使用される光であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ピックアップにおいて、戻り光が通過する光学路に回折光学素子を配置するメリットを、複数種類の光ディスクの場合に拡大可能である。また、本発明は、BD及びDVDに対応可能な光ピックアップに好適な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図
【図2】本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図
【図3】本実施形態の光ピックアップが備える回折光学素子について説明するための図
【図4】本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタの受光面に形成される受光パターンを示す概略平面図
【図5】本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタに形成される、メイン受光部とBD用のサブ受光部との構成を示す概略平面図
【図6】光ディスクで反射された戻り光の構成を模式的に示した図
【図7】DVD−R,RWからの反射光の構成とDVD−RAMからの反射光の構成とを模式的に示した図
【図8】本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタに形成されるサブ受光部の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態の光ピックアップは、BD及びDVDに対応可能な構成となっている。
【0024】
図1は、本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図で、図1(a)は光ピックアップの上面図、図1(b)は光ピックアップの側面図である。なお、図1(b)は、図1(a)に示す矢印Aに沿って見た図である。また、図1(b)には、理解を容易とするために、光ディスクDも併せて示している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の光ピックアップ1は、ピックアップベース10と、ピックアップベース10上に固定配置される対物レンズアクチュエータ30と、を備えた構成となっている。
【0026】
ピックアップベース10には、光ピックアップ1が備える光学部材が搭載される。また、ピックアップベース10の左右の端部には軸受け部10a、10bが設けられている。ピックアップベース10は、この軸受け部10a、10bによって、光ディスク装置(光ディスクDの再生や記録を行うための装置)に設けられるガイドシャフト100(図1(a)に破線で示す)に摺動可能に支持されることになる。光ディスク装置に設けられるガイドシャフト100は、光ディスクの半径方向(ラジアル方向;Rad方向)に延びるように配置される。ガイドシャフト100に対して摺動可能とされる光ピックアップ1は、回転する光ディスクDの所望のアドレスにアクセスして情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0027】
対物レンズアクチュエータ30は、光ピックアップ1の光学系に備えられる2つの対物レンズ16、20をフォーカス方向及びトラッキング方向(Rad方向に同じ)に移動可能とする装置である。
【0028】
光ピックアップ1においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、対物レンズ16、20の焦点位置が常に光ディスクDの情報記録面RSに合うようにフォーカシング制御を行う必要がある。また、光ピックアップ1においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、対物レンズ16、20によって光ディスクDの情報記録面RSに集光される光スポットの位置が、光ディスクDのトラックに追随するようにトラッキング制御を行う必要がある。対物レンズアクチュエータ30は、これらフォーカシング制御及びトラッキング制御を可能とするものである。
【0029】
なお、対物レンズアクチュエータ30は、対物レンズ16、20を保持するレンズホルダを有し、レンズホルダをワイヤで揺動可能に支持する構成のものである。このようなタイプの対物レンズアクチュエータは公知であるので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0030】
図2は、本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図である。光ピックアップ1には、第1の光源11から出射される光を光ディスクDに導くとともに、光ディスクDで反射される反射光(戻り光)を光検出部23に導く、BD用の光学路が形成されている。また、光ピックアップ1には、第2の光源17から出射される光を光ディスクDに導くとともに、光ディスクDで反射される反射光(戻り光)を光検出部23に導く、DVD用の光学路が形成されている。
【0031】
なお、光ピックアップ1においては、複数の光学部材が、BD用の光学路とDVD用の光学路とで共用された構成となっている。なお、光検出部23もBD対応の場合とDVD対応の場合とで兼用される。このため、光ピックアップ1は、BD及びDVDに対応する光ピックアップを少ない部品点数で形成可能となっている。
【0032】
まず、BD用の光学路について説明する。第1の半導体レーザ11は、BD用のレーザ光(例えば波長405nm帯のレーザ光;本発明の第1の波長の光)を出射可能となっている。第1の半導体レーザ11から出射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ12に送られる。
【0033】
偏光ビームスプリッタ12は、第1の半導体レーザ11から出射されたS偏光(或いはP偏光)を反射する。偏光ビームスプリッタ12で反射されたS偏光は、1/4波長板13で円偏光に変換される。1/4波長板13から出射される円偏光は、コリメートレンズ14を透過後、第1の立ち上げミラー15で反射される。第1の立ち上げミラー15で反射されたレーザ光は、第1の立ち上げミラー15の上方にある第1の対物レンズ16へと至る。第1の対物レンズ16は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RSに集光する機能を有する。
【0034】
第1の対物レンズ16によって情報記録面RSに集光された後、情報記録面RSで反射された反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ16を通過後、第1の立ち上げミラー15で反射される。そして、戻り光は、コリメートレンズ14を通過し、1/4波長板13でP偏光(或いはS偏光)に変換されて偏光ビームスプリッタ12を透過する。ビームスプリッタ18を通過した戻り光は、回折光学素子21と、シリンドリカル面を含むセンサーレンズ22と、からなるセンサー光学系を介してフォトディテクタ23へと集光される。
【0035】
フォトディテクタ23は、受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。フォトディテクタ23から出力された電気信号は、信号処理部24に送られる。信号処理部24においては、再生信号、FE信号、TE信号等が生成される。
【0036】
次に、DVD用の光学路について説明する。第2の半導体レーザ17は、DVD用のレーザ光(例えば例えば波長650nm帯のレーザ光;本発明の第2の波長の光)を出射可能となっている。第2の半導体レーザ17から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ18に送られる。
【0037】
ビームスプリッタ18は、入射したレーザ光の一部を反射し、一部を透過する。ビームスプリッタ18で反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ12、1/4波長板13、コリメートレンズ14を通過する。なお、偏光ビームスプリッタ12は、BD用のレーザ光に作用する光学部材であり、DVD用のレーザ光は、その偏光状態に関わらず透過する。
【0038】
第1の立ち上げミラー15は、ダイクロイックミラーであり、BD用のレーザ光は反射されるが、DVD用のレーザ光は透過可能となっている。このため、第2の半導体レーザ17から出射されてコリメートレンズ14を通過したレーザ光は、第1の立ち上げミラー15も透過する。第1の立ち上げミラー15を透過したレーザ光は、第2の立ち上げミラー19で反射される。第2の立ち上げミラー19で反射されたレーザ光は、第2の立ち上げミラー19の上方にある第2の対物レンズ20へと至る。第2の対物レンズ20は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RSに集光する機能を有する。
【0039】
第2の対物レンズ20によって情報記録面RSに集光された後、情報記録面RSで反射された反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ20を通過後、第2の立ち上げミラー19で反射される。そして、戻り光は、第1の立ち上げミラー15、コリメートレンズ14、1/4波長板13、偏光ビームスプリッタ12を通過する。その後、ビームスプリッタ18を通過した戻り光は、回折光学素子21と、シリンドリカル面を含むセンサーレンズ22と、からなるセンサー光学系を介してフォトディテクタ23へと集光される。フォトディテクタ23は、光電変換を行って電気信号を信号処理部24に送り、信号処理部24は、再生信号、FE信号、TE信号等を生成する。
【0040】
なお、コリメートレンズ14は、光軸方向M(図2の左右方向)に移動可能となっており、その位置は、対応する光ディスクDの種類や、レイヤージャンプ等に応じて適宜移動される。これにより、光ピックアップ1においては、球面収差の影響が適切に抑制される。また、センサーレンズ22にシリンドリカル面を設けて非点収差が与えられるように構成しているのは、FE信号を生成できるようにするためである。また、信号処理部24で生成されたFE信号及びTE信号に基づいて、光ピックアップ1の制御部(図示せず)は、フォーカシング制御及びトラッキング制御を行うべく、対物レンズアクチュエータ30の駆動を制御する。
【0041】
また、光源11、17から出射された光が光ディスクDへと導かれる往路において、光学部材12、13、14、15は、BD用の光学路とDVD用の光学路とで共用されている。また、光ディスクDで反射された戻り光が光検出部23へと至る復路において、光学部材15、14、13、12、18、21、22は、BD用の光学路とDVD用の光学路とで共用されている。
【0042】
図3は、本実施形態の光ピックアップが備える回折光学素子について説明するための図で、図3(a)は回折光学素子の構成を示す概略平面図、図3(b)は回折光学素子の構成を示す一部断面図である。回折光学素子21は、図3に示すように、縞状の凹凸パターンからなる回折格子が形成されている。回折光学素子21を通過する戻り光は、0次光(回折光学素子21で回折されることなく回折光学素子21を透過する光)と、回折光(±1次光)とに分けられる。回折光学素子21は、BD用のレーザ光とDVD用のレーザ光とのいずれに対しても回折作用を示す。
【0043】
なお、回折光学素子21の構成は、本実施形態の構成に限らず、適宜変更可能である。例えば、回折光学素子21に形成される回折格子をブレーズド格子等としてもよい。
【0044】
図4は、本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタの受光面に形成される受光パターンを示す概略平面図である。図4に示すように、フォトディテクタ23の受光面には、メイン受光部231と、メイン受光部231を挟むように設けられる2つのBD用のサブ受光部232と、メイン受光部231及びBD用のサブ受光部232を挟むように設けられる2つのDVD用のサブ受光部233と、が形成されている。なお、これら5つの受光部231、232、232、233、233は、トラッキング方向に対応する方向に一列に配置されている。トラッキング方向に対応する方向は、換言すると、対物レンズ16、20をトラッキング方向に移動(レンズシフト)した場合に、光スポットが受光面上を移動する方向である。
【0045】
BD用のサブ受光部232は本発明の第1のサブ受光部の一例であり、DVD用のサブ受光部233は本発明の第2のサブ受光部の一例である。
【0046】
メイン受光部231は、回折光学素子21からの0次光が受光されるように配置されている。回折光学素子21からの0次光は、BD用のレーザ光が使用される場合とDVD用のレーザ光が使用される場合とのいずれの場合にも、メイン受光231で受光される。すなわち、メイン受光部231については、BD対応の場合とDVD対応の場合とで共用される。
【0047】
回折光学素子21で回折される回折光(本実施形態では±1次光が該当)の回折角は、回折光学素子21に入射するレーザ光の波長に依存する。レーザ光の波長が長くなるにつれて、回折角は大きくなる。すなわち、回折光学素子21に入射したBD用のレーザ光(波長405nm)に比べて、DVD用のレーザ光(波長650nm)の方が大きく回折する。このため、BD用のレーザ光とDVD用のレーザ光は、フォトディテクタ23の受光面の異なった位置に光スポットを形成する。
【0048】
この点を考慮して、本実施形態では、フォトディテクタ23にBD用のサブ受光部232と、DVD用のサブ受光部233とを設けている。BD用のサブ受光部232は、回折光学素子21にBD用のレーザ光が入射した場合に生じる回折光を受光できる位置に配置されている。また、DVD用のサブ受光部233は、回折光学素子21にDVD用のレーザ光が入射した場合に生じる回折光を受光できる位置に配置されている。
【0049】
なお、回折光学素子21においては、異なる方向に回折される+1次光と−1次光とが生じるために、BD用のサブ受光部232及びDVD用のサブ受光部233は、それぞれ、2つずつ設けられる構成となっている。ただし、場合によっては、これらのサブ受光部232、233は、それぞれ1つずつとしてもよい。
【0050】
以下、メイン受光部231とサブ受光部232、233の構成について詳細に説明する。ただし、本実施形態では、BD用のサブ受光部232とDVD用のサブ受光部233は同一の構成としている。このために、サブ受光部232、233の構成を詳細に説明するにあたって、BD用のサブ受光部232についてのみ説明し、DVD用のサブ受光部233の説明は省略する。
【0051】
図5は、本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタに形成される、メイン受光部とBD用のサブ受光部との構成を示す概略平面図である。図5は、図4における破線で囲まれた部分を拡大して示した図に該当する。また、図5においては、理解を容易とするために、BD用のレーザ光がフォトディテクタ23の受光面上に形成する光スポット(模式的なもの)も合わせて示している。この光スポットは、レンズシフトが行われていない場合を想定して示している。
【0052】
図5に示すように、メイン受光部231には、矩形状の受光領域を第1の分割線DL1と第2の分割線DL2とで4等分して形成された4つの分割領域A、B、C、Dが設けられている。第1の分割線DL1と第2の分割線DL2とは互いに直交する。また、第1の分割線DL1は、対物レンズ16、20がレンズシフトされた場合に光スポットが移動する方向と平行である。
【0053】
BD用のサブ受光部232の詳細について説明する前に、光ディスクDで反射された戻り光の構成について図6を参照しながら説明しておく。なお、図6は、光ディスクで反射された戻り光の構成を模式的に示した図である。
【0054】
光ディスクDに形成されるトラック(情報記録面RSに同心円状又は螺旋状に形成される)は、光ディスクDに入射する光に対して回折格子として作用する。このために、光ディスクDの情報記録面RSで反射される反射光(戻り光)は分光され、戻り光には0次光と1次光(±1次光)とが含まれることになる。図6に示すように、戻り光の0次光と±1次光とは一部が重なった状態となる。
【0055】
戻り光の0次光と1次光とが重なった部分(光束の中央両端部側に存在;図6の斜線を施した部分)は、光ディスクDに入射する光がトラックを横切る際に発生する交流信号(トラック横断信号)成分を含む領域に該当する。一方、0次光の1次光が重ならない部分は、光ディスクDの反射率に応じた光量を示す領域で、この部分はトラック横断信号成分を含まず、例えばレンズシフト等によって生じるオフセット成分を含む領域に該当する。
【0056】
図5に示すように、2つのBD用のサブ受光部232は、メイン受光部231を挟んで対称的な位置に設けられており、一方は回折光学素子21からの+1次光を、他方は−1次光を受光する。なお、2つのBD用のサブ受光部232の構成は同じである。
【0057】
BD用のサブ受光部232には、戻り光の0次光と1次光(トラック構造に由来するもの)とが重なり合う部分を含む光が入射される矩形状の第1の領域R1が形成されている。また、BD用のサブ受光部232には、戻り光の0次光と1次光(トラック構造に由来するもの)とが重なり合う部分とは異なる部分の光が入射される第2の領域R2が形成されている。第2の領域R2は、いずれも矩形状である2つ部分に分かれており、この2つの部分に第1の領域R1が挟まれた構成となっている。
【0058】
第1の領域R1は、メイン受光部231の第1の分割線DL1と平行な第3の分割線DL3によって2等分されている。また、第1の領域R1は、メイン受光部231の第2の分割線DL2と平行な第4の分割線DL4によっても2等分されている。すなわち、第1の領域R1には、等しい面積を有する4つの分割領域G、H、I、Jが形成されている。
【0059】
また、2つある第2の領域R2は、いずれも、メイン受光部231の第2の分割線DL2と平行な第4の分割線DL4によって2等分されている。すなわち、第2の領域R2には、互いに等しい面積を有する2種類の分割領域E、F(数で言うと分割領域Eは2つ、分割領域Fは2つある)が形成されている。
【0060】
以上のように構成されるフォトディテクタク23を用いて、光ピックアップ1においては、信号処理部24(図2参照)で、以下のような演算式によって、再生信号(RF信号)、FE信号、TE信号を生成する。なお、光ピックアップ1においては、BD対応の場合も、DVD対応の場合も同じ演算式で、RF信号、FE信号、TE信号が生成される。ただし、BD対応の場合にはサブ受光部としてBD用のサブ受光部232が使用され、DVD対応の場合にはサブ受光部としてDVD用のサブ受光部233が使用される。なお、メイン受光部231は、上述のようにBD対応の場合とDVD対応の場合で兼用される。
【0061】
まず、RF信号は、以下の式(1)で生成される。
RF=SA+SB+SC+SD (1)
なお、式(1)においては、メイン受光部231の各分割領域から出力される信号が、各分割領域の名前に「S」をつけて示されている。以下の式(2)、式(3)でも同様の表記を用いる。
【0062】
なお、RF信号は、サブ受光部232(或いはサブ受光部233)から出力される信号を用いて得てもよい。
【0063】
FE信号は、以下の式(2)で生成される。
FE=(SA+SC)−(SB+SD)−α((SG+SI)−(SH+SJ)) (2)
なお、式(2)においてαは係数である。
【0064】
FE信号を単に、メイン受光部231からの信号のみを利用して非点収差法で得る場合、トラック横断信号成分の漏れ込みの影響で適切な信号が得られない場合がある。この点、本実施形態の構成では、サブ受光部232(或いはサブ受光部233)における、第1の領域R1から出力される信号を使用して、非点収差法で得られるFE信号を補正する構成となっている。第1の領域R1は、トラック横断信号成分を多く含む領域からの光を受光する領域であり、この領域から出力される信号を使用すれば、非点収差法で得られるFE信号から、トラック横断信号成分の漏れ込みの影響を除去することが可能となる。このため、本実施形態の光ピックアップ1では、FE信号を適切に得ることが可能である。
【0065】
TE信号は、以下の式(3)で生成される。
TE=(SA+SD)−(SB+SC)−k(E−F) (3)
なお、式(3)においてkは係数である。
【0066】
TE信号を単に、メイン受光部231からの信号のみを利用して得る場合には、対物レンズ16、20がレンズシフトした場合に適切な信号が得られない。この点、本実施形態の構成では、サブ受光部232(或いはサブ受光部233)における、第2の領域R2から出力される信号を使用して、レンズシフトによるオフセット成分による影響を除去するようになっている。第2の領域R2は、レンズシフトによるオフセット成分を含む領域からの光を受光する領域であり、この領域から出力される信号を使用すれば、レンズシフトによるオフセット成分による影響を除去することができる。このため、本実施形態の光ピックアップ1では、TE信号を適切に得ることが可能である。
【0067】
なお、式(2)、(3)における係数α及びkは、例えば、係数を種々の値に変更しながら、適切なFE信号やTE信号が得られる値を実験的に求めるというやり方で得てもよい。
【0068】
以上のように構成される本実施形態の光ピックアップ1は、光源11、17から光ディスクDに照射される光が1つの光(光ディスクD上に1つの光スポットのみ形成される)である。このために、TE信号に得るためにDPP法を採用する光ピックアップに比べて光の利用効率を向上できる。また、本実施形態の光ピックアップ1では、多層ディスク(特にBDで採用される場合が多い)に対応する場合に、DPP法では深刻な問題となる迷光について、その影響を小さなものとできる。
【0069】
また、DPP法を採用する場合には、各光源の前に回折光学素子を配置する必要があるために、BD及びDVD対応の光ピックアップでは、回折光学素子が2つ必要となるが、本実施形態の光ピックアップ1では回折光学素子は1つ(回折光学素子21のみ)でよい。このため、本実施形態の光ピックアップ1は、部品点数の低減が図れ、低コスト化を図れる。
【0070】
更に、例えばDVDにおいては、トラックピッチが異なる規格が存在する。DVD−R,RWではトラックピッチは例えば0.74μmであり、DVD−RAMではトラックピッチは例えば1.23μmである。光ディスクDのトラックピッチが異なると、光ディスクDで反射されて生じる回折光の回折角度が異なったものとなる。トラックピッチが大きいもの程、回折角が小さくなる。
【0071】
図7は、DVD−R,RWからの反射光の構成とDVD−RAMからの反射光の構成とを模式的に示した図で、図7(a)はDVD−R,RWからの反射光の構成を示し、図7(b)はDVD−RAMからの反射光の構成を示す。図7に示すように、トラックピッチの大きなDVD−RAMでは、トラックピッチの小さいDVD−R,RWに比べて、0次光と1次光とが重なる範囲Wが大きくなる。
【0072】
そして、DVD−RAMのように、0次光と1次光とが重なる範囲Wが大きくなると、FE信号をメイン受光部231のみを使用する非点収差法で得ようとした場合に、トラック横断信号成分の漏れ込みの影響が深刻となる。しかしながら、本実施形態の光ピックアップ1では、このようなトラック横断信号成分の漏れ込みの影響を除去してFE信号が得られるようになっており、DVD−R,RWのみならず、DVD−RAMについても適切なFE信号が得られる。すなわち、本実施形態の光ピックアップ1は、DVD−R,RWとDVD−RAMとのコンパチビリティを確保できる。
【0073】
なお、従来のDPP法を採用する光ピックアップでも、いわゆる差動非点収差法の採用により、上述したトラック横断信号成分の漏れ込みの影響は除去できる。しかしながら、DVD−R,RWとDVD−RAMとでは、トラックピッチが異なるために、サブビームの最適調整位置が異なるものとなる。このために、DPP法を採用する構成においては、DVD−R,RWとDVD−RAMとのコンパチビリティの確保が困難であった。
【0074】
以上に示した実施形態は本発明の一例であり、本発明の光ピックアップは以上に示した構成に限定されるものではない。
【0075】
例えば、以上に示したフォトディテクタ23の構成は一例にすぎず、フォトディテクタ23の構成は適宜変更可能である。図8は、本実施形態の光ピックアップが備えるフォトディテクタに形成されるサブ受光部の変形例を示す図である。
【0076】
例えば、図8(a)に示すように、戻り光の0次光と1次光(トラック構造に由来するもの)とが重なり合う部分を含む光が入射される第1の領域R1は、対称的な構成を有する2つの領域からなる構成であってもよい。この場合、各々の領域を、メイン受光部231の第1の分割線DL1と平行な第3の分割線DL3によって2等分すれば、等しい面積を有する4つの分割領域G、H、I、Jが形成できる。
【0077】
また、例えば図8(b)に示すように、戻り光の0次光と1次光(トラック構造に由来するもの)とが重なり合う部分とは異なる部分の光が入射される第2の領域R2は、本実施形態のように2つの領域で構成する(図5参照)のではなく、1つの領域のみで構成してもよい。なお、図8(b)は、図5に示す第2の領域R2の下側がない構成であるが、図5に示す第2の領域R2の上側がない構成としても構わない。
【0078】
また、以上に示した実施形態では、第1の対物レンズ16と第2の対物レンズ20とがTan配置(Tan方向に並列配置)される構成としたが、本発明の適用範囲はこの構成に限らない。すなわち、例えば、2つの対物レンズ16、20がRad配置(Rad方向に並列配置)される場合等にも本発明は適用可能である。また、光ピックアップが備える対物レンズの数が2つ以外の場合にも(例えば1つの場合にも)、本発明は適用可能である。
【0079】
また、以上に示した実施形態では、BD用のサブ受光部232とDVD用のサブ受光部233との構成を同一としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、BD用のサブ受光部232について、第1の領域R1を設けない構成(この部分に受光領域を設けない、或いは、遮光する)としても構わない。この場合、BD対応の場合には、FE信号は非点収差法で得るようにすればよい。
【0080】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ1がBD及びDVDに対応する構成とした。しかし、本発明は、例えば、光ピックアップがDVDのみ対応する場合や、BDのみ対応する場合等、1種類の光ディスクに対応する光ピックアップにも適用可能である。また、逆に、本発明は、光ピックアップがBD及びDVDに加えてCDに対応する場合等、3種類以上の光ディスクに対応する光ピックアップにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えばBD及びDVDを互換する光ピックアップに対して好適である。
【符号の説明】
【0082】
1 光ピックアップ
11 第1の半導体レーザ(第1の光源)
17 第2の半導体レーザ(第2の光源)
21 回折光学素子
23 フォトディテクタ(光検出部)
231 メイン受光部
232 BD用のサブ受光部(第1のサブ受光部)
233 DVD用のサブ受光部(第2のサブ受光部)
D 光ディスク
DL1 第1の分割線
DL2 第2の分割線
DL3 第3の分割線
DL4 第4の分割線
RS 情報記録面
R1 第1の領域
R2 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクからの反射光を光検出部に導く光路中に回折光学素子を有し、前記光検出部から出力される信号を用いてフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号が生成される光ピックアップであって、
前記光検出部は、
前記回折光学素子で回折されることなく前記回折光学素子を透過する光を受光するメイン受光部と、
前記回折光学素子で回折された回折光を受光するサブ受光部と、
を有し、
前記サブ受光部には、
前記フォーカスエラー信号を生成するために使用される第1の領域と、
前記トラッキングエラー信号を生成するために使用される第2の領域と、
が形成される、光ピックアップ。
【請求項2】
前記メイン受光部には、互いに直交する第1の分割線と第2の分割線とで分割された4つの分割領域が形成され、
前記第1の領域は、前記光ディスクのトラック構造によって生じる0次光と1次光とが重なり合う部分の光を含む光が入射される領域であって、前記第1の分割線に略平行な第3の分割線が少なくとも使用されて4つの領域に分割されており、
前記第2の領域は、前記光ディスクのトラック構造によって生じる0次光と1次光とが重なり合う部分とは異なる部分の光が入射される領域であって、前記第2の分割線に略平行な第4の分割線で分割されている、請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第3の分割線に加えて前記第4の分割線を用いて4つの領域に分割されている、請求項2に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記第2の領域が2つあって、
前記第1の領域は前記2つの第2の領域に挟まれている、請求項1から3のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記サブ受光部は2つ設けられ、
前記2つのサブ受光部は、前記メイン受光部を挟んで対称的な位置に形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項6】
第1の波長の光を出射する第1の光源と、
前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出射する第2の光源と、
を備え、
前記サブ受光部には、前記第1の波長の光用の第1のサブ受光部と、前記第2の波長の光用の第2のサブ受光部と、の2種類のサブ受光部が含まれる、請求項1から5のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項7】
前記第1の波長の光はBDに対して使用される光であり、前記第2の波長の光はDVDに対して使用される光である、請求項6に記載の光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133850(P2012−133850A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286309(P2010−286309)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】