光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板
【課題】繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバの折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得る光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板を提供する。
【解決手段】プリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込み（埋込工程Ａ）、弾性樹脂製枠部材によりプリプレグの外周端部を整合させ、切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう光ファイバを弾性樹脂製枠部材に支持せしめ（整合保護工程Ｂ）、プリプレグを定盤の上に載置し、その周囲をシール材で取り囲み、バッグフィルムを覆い被せ真空引きし（吸引工程Ｃ）、プリプレグを加熱・加圧成形して積層板とし（成形工程Ｄ）、弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残すよう切除する（切除工程Ｅ）。
【解決手段】プリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込み（埋込工程Ａ）、弾性樹脂製枠部材によりプリプレグの外周端部を整合させ、切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう光ファイバを弾性樹脂製枠部材に支持せしめ（整合保護工程Ｂ）、プリプレグを定盤の上に載置し、その周囲をシール材で取り囲み、バッグフィルムを覆い被せ真空引きし（吸引工程Ｃ）、プリプレグを加熱・加圧成形して積層板とし（成形工程Ｄ）、弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残すよう切除する（切除工程Ｅ）。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般に、ＣＦＲＰ（Carbon fiber reinforced plastics）やＧＦＲＰ（Glass fiber reinforced plastics）等の繊維強化複合材積層板は軽量で且つ強度面で優れているので、橋梁、航空機、船舶、プラント等の構造物といった各種分野で広く使用されている。
【０００３】
しかし、前記繊維強化複合材積層板は、成形中に内部応力が発生するため、該内部応力の発生のメカニズムを解明したり、前記内部応力を低減する成形法を開発することを目的として、歪みセンサとしての光ファイバを埋め込んだ繊維強化複合材積層板が製造されている。
【０００４】
従来の場合、前記繊維強化複合材積層板の内部に光ファイバを埋め込む際には、該繊維強化複合材積層板における光ファイバの取り出し端縁部で、該光ファイバが折損することを防ぐために、光ファイバ保護用の金属製スリーブや樹脂製チューブ等を前記繊維強化複合材積層板の端部に埋め込むことが行われていた。
【０００５】
しかしながら、前記繊維強化複合材積層板の成形工程には、積層したプリプレグをオートクレーブ等の加熱炉に入れて圧力を加える工程があるため、仮に光ファイバの取出部をスリーブ等で保護しても、光ファイバが折損する可能性は依然として残っていた。
【０００６】
尚、前記光ファイバの折損を防止するための光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献１がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特許第３８９７５１１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
前記特許文献１に開示されたものにおいては、積層したプリプレグ間の空気を除去して互いに密着させるための真空引きに必要となるシール材に対し、前記光ファイバをその取出部が支持されるように載置しているため、繊維強化複合材積層板の成形時における光ファイバの折損を防止することは確かに可能となっている。
【０００９】
しかしながら、前記シール材は、繊維強化複合材積層板の成形完了後、取り除かれる部材であり、前記繊維強化複合材積層板の曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバの取出部を保護するものが存在しなくなるため、該光ファイバが折れ曲がったりすることは避けられず、誤信号を拾ってしまう可能性も高く、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることは困難となっていた。
【００１０】
本発明は、斯かる実情に鑑み、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバの折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得る光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明は、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込む埋込工程と、
該埋込工程でプリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、前記積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめる整合保護工程と、
該整合保護工程で外周端部が整合されたプリプレグを定盤の上に載置すると共に、該プリプレグの周囲をシール材で取り囲み、該シール材及び前記プリプレグにバッグフィルムを覆い被せ、該バッグフィルム内を真空引きする吸引工程と、
該吸引工程で真空引きされたプリプレグを加熱・加圧成形して積層板とする成形工程と、
該成形工程で加熱・加圧成形された積層板の弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材の部分を切除する切除工程と
を有することを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法にかかるものである。
【００１２】
又、本発明は、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層し加熱・加圧成形され且つ内部に光ファイバが埋め込まれた積層板と、
該積層板を成形する際に、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、切欠部に前記光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを支持せしめる弾性樹脂製枠部材を利用し、該弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材と
を備えたことを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板にかかるものである。
【００１３】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【００１４】
プリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめるため、繊維強化複合材積層板の成形時に光ファイバが折損する心配はなく、しかも、該光ファイバの折損を防止することが可能となることにより、繊維強化複合材積層板を製造する上での歩留りも向上することとなる。
【００１５】
更に、前記繊維強化複合材積層板の成形中には、プリプレグからマトリックス樹脂が流出して弾性樹脂製枠部材の切欠部に流れ込み、該マトリックス樹脂により光ファイバが弾性樹脂製枠部材に対して接着されるため、前記繊維強化複合材積層板の成形完了後、該繊維強化複合材積層板の曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバの取出部は、弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材に確実に保護される形となり、これにより、該光ファイバが折れ曲がったりすることが避けられ、誤信号を拾ってしまう可能性もなく、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることが可能となる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板によれば、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバの折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例を示す工程図である。
【図２】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における整合保護工程を示す平面図である。
【図３】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における成形工程を示す断面図であって、図２のＩＩＩ−ＩＩＩ断面相当図である。
【図４】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における成形工程での弾性樹脂製枠部材及び光ファイバを示す断面図である。
【図５】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における切除工程を行った後の積層板を示す平面図である。
【図６】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における切除工程を行った後の弾性樹脂製枠部材（端部保護材）及び光ファイバを示す断面図である。
【図７】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の試験の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【００１９】
図１〜図６は本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例であって、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグ１を積層しつつ内部に光ファイバ２を埋め込み（埋込工程Ａ）、
該埋込工程Ａでプリプレグ１間に埋め込まれた光ファイバ２の取出部を収めるための切欠部３が形成されたシリコンゴム等の弾性樹脂製枠部材４により、前記積層したプリプレグ１の外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に光ファイバ２の取出部が収まって保護されるよう該光ファイバ２を前記弾性樹脂製枠部材４に支持せしめ（整合保護工程Ｂ）、
該整合保護工程Ｂで外周端部が整合されたプリプレグ１を、図２に示す如く、定盤５の上に載置すると共に、該プリプレグ１の周囲をシール材６で取り囲み、該シール材６及び前記プリプレグ１に、図３に示す如く、バッグフィルム７を覆い被せ、該バッグフィルム７内を真空引きし（吸引工程Ｃ）、
該吸引工程Ｃで真空引きされたプリプレグ１を加熱・加圧成形して積層板８とし（成形工程Ｄ）、
該成形工程Ｄで加熱・加圧成形された積層板８の弾性樹脂製枠部材４の光ファイバ２を支持する部分を、図５及び図６に示す如く、少なくとも端部保護材４ａとして残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材４の部分を切除する（切除工程Ｅ）ようにしたものである。
【００２０】
本実施例の場合、図３に示す如く、前記定盤５の上には離型フィルム９を敷いてその上に、弾性樹脂製枠部材４により外周端部を整合させたプリプレグ１を載置し、該プリプレグ１及び弾性樹脂製枠部材４の上に、離型フィルム１０を介してステンレス等の金属プレート１１を載せ、それら全体を覆うように布状の素材からなるブリーザ１２を被せ、前記バッグフィルム７はこのブリーザ１２の上に設けてあり、オートクレーブ（図示せず）内において、前記プリプレグ１を真空引きしつつ、加熱・加圧成形するようにしてある。
【００２１】
因みに、前記ブリーザ１２は、前記プリプレグ１を真空引きする際に、均一に空気を抜くために設けたものであり、又、前記金属プレート１１は、加圧の際に布状のブリーザ１２の織目がプリプレグ１の表面に転写されることを防ぐために設けたものである。
【００２２】
又、図４に示す如く、前記弾性樹脂製枠部材４は、光ファイバ２の取出部の位置に合致するよう、プリプレグ１の厚さ方向に二分割し、該光ファイバ２の取出部を上下から挟み込む形で保護できるようにしてある。
【００２３】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【００２４】
プリプレグ１間に埋め込まれた光ファイバ２の取出部を収めるための切欠部３が形成された弾性樹脂製枠部材４により、積層したプリプレグ１の外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に光ファイバ２の取出部が収まって保護されるよう該光ファイバ２を前記弾性樹脂製枠部材４に支持せしめるため、繊維強化複合材積層板の成形時に光ファイバ２が折損する心配はなく、しかも、該光ファイバ２の折損を防止することが可能となることにより、繊維強化複合材積層板を製造する上での歩留りも向上することとなる。
【００２５】
更に、前記繊維強化複合材積層板の成形中には、プリプレグ１からマトリックス樹脂が流出して弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に流れ込み、該マトリックス樹脂により光ファイバ２が弾性樹脂製枠部材４に対して接着されるため、前記繊維強化複合材積層板の成形完了後、図７に示す如く、積層板８を三点曲げ試験装置１３にセットし、光ファイバ２を図示していない歪計測装置に接続して曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバ２の取出部は、弾性樹脂製枠部材４の光ファイバ２を支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材４ａに確実に保護される形となり、これにより、該光ファイバ２が折れ曲がったりすることが避けられ、誤信号を拾ってしまう可能性もなく、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることが可能となる。
【００２６】
こうして、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバ２の折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得る。
【００２７】
尚、本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００２８】
１ プリプレグ
２ 光ファイバ
３ 切欠部
４ 弾性樹脂製枠部材
４ａ 端部保護材
５ 定盤
６ シール材
７ バッグフィルム
８ 積層板
Ａ 埋込工程
Ｂ 整合保護工程
Ｃ 吸引工程
Ｄ 成形工程
Ｅ 切除工程
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般に、ＣＦＲＰ（Carbon fiber reinforced plastics）やＧＦＲＰ（Glass fiber reinforced plastics）等の繊維強化複合材積層板は軽量で且つ強度面で優れているので、橋梁、航空機、船舶、プラント等の構造物といった各種分野で広く使用されている。
【０００３】
しかし、前記繊維強化複合材積層板は、成形中に内部応力が発生するため、該内部応力の発生のメカニズムを解明したり、前記内部応力を低減する成形法を開発することを目的として、歪みセンサとしての光ファイバを埋め込んだ繊維強化複合材積層板が製造されている。
【０００４】
従来の場合、前記繊維強化複合材積層板の内部に光ファイバを埋め込む際には、該繊維強化複合材積層板における光ファイバの取り出し端縁部で、該光ファイバが折損することを防ぐために、光ファイバ保護用の金属製スリーブや樹脂製チューブ等を前記繊維強化複合材積層板の端部に埋め込むことが行われていた。
【０００５】
しかしながら、前記繊維強化複合材積層板の成形工程には、積層したプリプレグをオートクレーブ等の加熱炉に入れて圧力を加える工程があるため、仮に光ファイバの取出部をスリーブ等で保護しても、光ファイバが折損する可能性は依然として残っていた。
【０００６】
尚、前記光ファイバの折損を防止するための光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献１がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特許第３８９７５１１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
前記特許文献１に開示されたものにおいては、積層したプリプレグ間の空気を除去して互いに密着させるための真空引きに必要となるシール材に対し、前記光ファイバをその取出部が支持されるように載置しているため、繊維強化複合材積層板の成形時における光ファイバの折損を防止することは確かに可能となっている。
【０００９】
しかしながら、前記シール材は、繊維強化複合材積層板の成形完了後、取り除かれる部材であり、前記繊維強化複合材積層板の曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバの取出部を保護するものが存在しなくなるため、該光ファイバが折れ曲がったりすることは避けられず、誤信号を拾ってしまう可能性も高く、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることは困難となっていた。
【００１０】
本発明は、斯かる実情に鑑み、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバの折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得る光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明は、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込む埋込工程と、
該埋込工程でプリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、前記積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめる整合保護工程と、
該整合保護工程で外周端部が整合されたプリプレグを定盤の上に載置すると共に、該プリプレグの周囲をシール材で取り囲み、該シール材及び前記プリプレグにバッグフィルムを覆い被せ、該バッグフィルム内を真空引きする吸引工程と、
該吸引工程で真空引きされたプリプレグを加熱・加圧成形して積層板とする成形工程と、
該成形工程で加熱・加圧成形された積層板の弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材の部分を切除する切除工程と
を有することを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法にかかるものである。
【００１２】
又、本発明は、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層し加熱・加圧成形され且つ内部に光ファイバが埋め込まれた積層板と、
該積層板を成形する際に、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、切欠部に前記光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを支持せしめる弾性樹脂製枠部材を利用し、該弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材と
を備えたことを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板にかかるものである。
【００１３】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【００１４】
プリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめるため、繊維強化複合材積層板の成形時に光ファイバが折損する心配はなく、しかも、該光ファイバの折損を防止することが可能となることにより、繊維強化複合材積層板を製造する上での歩留りも向上することとなる。
【００１５】
更に、前記繊維強化複合材積層板の成形中には、プリプレグからマトリックス樹脂が流出して弾性樹脂製枠部材の切欠部に流れ込み、該マトリックス樹脂により光ファイバが弾性樹脂製枠部材に対して接着されるため、前記繊維強化複合材積層板の成形完了後、該繊維強化複合材積層板の曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバの取出部は、弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材に確実に保護される形となり、これにより、該光ファイバが折れ曲がったりすることが避けられ、誤信号を拾ってしまう可能性もなく、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることが可能となる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板によれば、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバの折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例を示す工程図である。
【図２】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における整合保護工程を示す平面図である。
【図３】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における成形工程を示す断面図であって、図２のＩＩＩ−ＩＩＩ断面相当図である。
【図４】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における成形工程での弾性樹脂製枠部材及び光ファイバを示す断面図である。
【図５】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における切除工程を行った後の積層板を示す平面図である。
【図６】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例における切除工程を行った後の弾性樹脂製枠部材（端部保護材）及び光ファイバを示す断面図である。
【図７】本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の試験の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【００１９】
図１〜図６は本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法の実施例であって、繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグ１を積層しつつ内部に光ファイバ２を埋め込み（埋込工程Ａ）、
該埋込工程Ａでプリプレグ１間に埋め込まれた光ファイバ２の取出部を収めるための切欠部３が形成されたシリコンゴム等の弾性樹脂製枠部材４により、前記積層したプリプレグ１の外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に光ファイバ２の取出部が収まって保護されるよう該光ファイバ２を前記弾性樹脂製枠部材４に支持せしめ（整合保護工程Ｂ）、
該整合保護工程Ｂで外周端部が整合されたプリプレグ１を、図２に示す如く、定盤５の上に載置すると共に、該プリプレグ１の周囲をシール材６で取り囲み、該シール材６及び前記プリプレグ１に、図３に示す如く、バッグフィルム７を覆い被せ、該バッグフィルム７内を真空引きし（吸引工程Ｃ）、
該吸引工程Ｃで真空引きされたプリプレグ１を加熱・加圧成形して積層板８とし（成形工程Ｄ）、
該成形工程Ｄで加熱・加圧成形された積層板８の弾性樹脂製枠部材４の光ファイバ２を支持する部分を、図５及び図６に示す如く、少なくとも端部保護材４ａとして残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材４の部分を切除する（切除工程Ｅ）ようにしたものである。
【００２０】
本実施例の場合、図３に示す如く、前記定盤５の上には離型フィルム９を敷いてその上に、弾性樹脂製枠部材４により外周端部を整合させたプリプレグ１を載置し、該プリプレグ１及び弾性樹脂製枠部材４の上に、離型フィルム１０を介してステンレス等の金属プレート１１を載せ、それら全体を覆うように布状の素材からなるブリーザ１２を被せ、前記バッグフィルム７はこのブリーザ１２の上に設けてあり、オートクレーブ（図示せず）内において、前記プリプレグ１を真空引きしつつ、加熱・加圧成形するようにしてある。
【００２１】
因みに、前記ブリーザ１２は、前記プリプレグ１を真空引きする際に、均一に空気を抜くために設けたものであり、又、前記金属プレート１１は、加圧の際に布状のブリーザ１２の織目がプリプレグ１の表面に転写されることを防ぐために設けたものである。
【００２２】
又、図４に示す如く、前記弾性樹脂製枠部材４は、光ファイバ２の取出部の位置に合致するよう、プリプレグ１の厚さ方向に二分割し、該光ファイバ２の取出部を上下から挟み込む形で保護できるようにしてある。
【００２３】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【００２４】
プリプレグ１間に埋め込まれた光ファイバ２の取出部を収めるための切欠部３が形成された弾性樹脂製枠部材４により、積層したプリプレグ１の外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に光ファイバ２の取出部が収まって保護されるよう該光ファイバ２を前記弾性樹脂製枠部材４に支持せしめるため、繊維強化複合材積層板の成形時に光ファイバ２が折損する心配はなく、しかも、該光ファイバ２の折損を防止することが可能となることにより、繊維強化複合材積層板を製造する上での歩留りも向上することとなる。
【００２５】
更に、前記繊維強化複合材積層板の成形中には、プリプレグ１からマトリックス樹脂が流出して弾性樹脂製枠部材４の切欠部３に流れ込み、該マトリックス樹脂により光ファイバ２が弾性樹脂製枠部材４に対して接着されるため、前記繊維強化複合材積層板の成形完了後、図７に示す如く、積層板８を三点曲げ試験装置１３にセットし、光ファイバ２を図示していない歪計測装置に接続して曲げ試験等を行う際には、前記光ファイバ２の取出部は、弾性樹脂製枠部材４の光ファイバ２を支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材４ａに確実に保護される形となり、これにより、該光ファイバ２が折れ曲がったりすることが避けられ、誤信号を拾ってしまう可能性もなく、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングすることが可能となる。
【００２６】
こうして、繊維強化複合材積層板の成形時だけでなく成形完了後の実際の使用時における光ファイバ２の折損を確実に防止することができ、繊維強化複合材積層板の荷重履歴を正確にモニタリングし得る。
【００２７】
尚、本発明の光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法及び光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００２８】
１ プリプレグ
２ 光ファイバ
３ 切欠部
４ 弾性樹脂製枠部材
４ａ 端部保護材
５ 定盤
６ シール材
７ バッグフィルム
８ 積層板
Ａ 埋込工程
Ｂ 整合保護工程
Ｃ 吸引工程
Ｄ 成形工程
Ｅ 切除工程
【特許請求の範囲】
【請求項１】
繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込む埋込工程と、
該埋込工程でプリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、前記積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめる整合保護工程と、
該整合保護工程で外周端部が整合されたプリプレグを定盤の上に載置すると共に、該プリプレグの周囲をシール材で取り囲み、該シール材及び前記プリプレグにバッグフィルムを覆い被せ、該バッグフィルム内を真空引きする吸引工程と、
該吸引工程で真空引きされたプリプレグを加熱・加圧成形して積層板とする成形工程と、
該成形工程で加熱・加圧成形された積層板の弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材の部分を切除する切除工程と
を有することを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法。
【請求項２】
繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層し加熱・加圧成形され且つ内部に光ファイバが埋め込まれた積層板と、
該積層板を成形する際に、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、切欠部に前記光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを支持せしめる弾性樹脂製枠部材を利用し、該弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材と
を備えたことを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板。
【請求項１】
繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層しつつ内部に光ファイバを埋め込む埋込工程と、
該埋込工程でプリプレグ間に埋め込まれた光ファイバの取出部を収めるための切欠部が形成された弾性樹脂製枠部材により、前記積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、該弾性樹脂製枠部材の切欠部に光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを前記弾性樹脂製枠部材に支持せしめる整合保護工程と、
該整合保護工程で外周端部が整合されたプリプレグを定盤の上に載置すると共に、該プリプレグの周囲をシール材で取り囲み、該シール材及び前記プリプレグにバッグフィルムを覆い被せ、該バッグフィルム内を真空引きする吸引工程と、
該吸引工程で真空引きされたプリプレグを加熱・加圧成形して積層板とする成形工程と、
該成形工程で加熱・加圧成形された積層板の弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分を少なくとも端部保護材として残し、それ以外の弾性樹脂製枠部材の部分を切除する切除工程と
を有することを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板の製造方法。
【請求項２】
繊維に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを積層し加熱・加圧成形され且つ内部に光ファイバが埋め込まれた積層板と、
該積層板を成形する際に、積層したプリプレグの外周端部を整合させると共に、切欠部に前記光ファイバの取出部が収まって保護されるよう該光ファイバを支持せしめる弾性樹脂製枠部材を利用し、該弾性樹脂製枠部材の光ファイバを支持する部分以外の部分を切除することによって形成された端部保護材と
を備えたことを特徴とする光ファイバ埋込繊維強化複合材積層板。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１２−２０４８３（Ｐ２０１２−２０４８３Ａ）
【公開日】平成２４年２月２日（２０１２．２．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１６０１８０（Ｐ２０１０−１６０１８０）
【出願日】平成２２年７月１５日（２０１０．７．１５）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年２月２日（２０１２．２．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年７月１５日（２０１０．７．１５）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
【Ｆターム（参考）】
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