説明

光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法

【課題】製造工数を削減した光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法を提供する。
【解決手段】光モジュールに記憶手段を実装することにより、光モジュールが搭載されたホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、製造工数を削減した光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホストボードの構成を図6に示す。
一般的に光トランシーバモジュール10は、レーザーダイオード(LD)2およびアバランシェダイオード(APD)3を内蔵した光モジュール1、制御回路5、LD駆動回路(Laser Driver)6、APD駆動回路(昇圧回路)7、増幅回路(AMP)などで構成されている。
光トランシーバモジュール10は、LD2およびAPD3の温度特性を補償するための回路(第1の制御手段)5を内蔵しており、事前にこれらの温度特性を取得し、所望の特性が獲られるように調整されている。
【0003】
使用者は光トランシーバモジュール10をHOST BOARD(以下、ホストボード)8上に実装し、ホストボード上の制御・駆動回路(第2の制御手段)9から電気信号を入力するだけで電気−光変換できることから、非常に容易にLD2やAPD3のような光部品を扱うことができるという利点がある。また、温度による特性変動が著しいLD2およびAPD3は光トランシーバモジュール10に内蔵されている制御回路5によって制御されるため、LD2およびAPD3の温度特性をまったく気にする必要がないことも利点の一つである。そのため、従来は光モジュール1を使用するにあたり、一旦、光モジュール1を光トランシーバモジュール10に実装する構成をとることが一般的であった。
【0004】
ここで、光モジュールを有する装置として温度変化等による半導体発光素子の光出力特性の変動を高い精度で制御できる低コストの光送信器(例えば、特許文献1参照。)、光受信モジュールとAPDバイアス電圧制御部との汎用的な組合せが可能で、APDバイアス電圧制御部の外付けによる光受信モジュールの小型化、更にはPIN素子光受信モジュールの構造の共通化が可能となるAPDバイアス電圧制御回路(例えば、特許文献2参照。)、及び効率よく製造できる光送信モジュール(例えば、特許文献3参照。)が挙げられる。
【特許文献1】再特WO2002/069464号公報
【特許文献2】特開2002−84235号公報
【特許文献3】特開2006−156808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来型の光トランシーバモジュールは機能をパッケージ化する利点がある一方で、以下の理由により製造コストの削減が難しいという欠点がある。
1つめの理由は部品点数の削減が難しいことである。
2つめの理由は、光トランシーバモジュール10の調整および試験に必要な設備の削減が難しいことである。
3つめの理由は、光トランシーバモジュール10の調整および試験にかかる工数を削減することが難しいことである。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造工数を削減した光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載の発明は、発光素子と、受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段とを有する光モジュールであることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段とを備えたホストボードであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段と、前記受光素子の出力に基づいて前記発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを備えたホストボードであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第1の制御手段は、リアルタイムに前記発光素子及び前記受光素子を制御するパラメータを計算することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明において、前記第1の制御手段は、変換効率Sをパラメータとすることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールを準備する工程と、前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段と、前記受光素子の出力に基づいて前記発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを有するホストボード用の基板を準備する工程と、前記基板に前記光モジュールを搭載する工程とを備えたホストボードの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光モジュールに記憶手段を実装することにより、光モジュールをホストボードに搭載するとホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、製造工数を削減した光モジュール、ホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、光モジュール1に記憶領域4を実装することにより、ホストボード8上でLD2およびAPD3の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型の光トランシーバモジュール10という形態をとる必要がなくなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光モジュールの一実施の形態は、発光素子と、受光素子と、発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段とを有することを特徴とする。
発光素子としては、例えばレーザーダイオード、フォトダイオードが挙げられる。
受光素子としては、例えばアバランシェダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタが挙げられる。
記憶手段としては、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0016】
上記構成によれば、光モジュールが発光素子と、受光素子と、発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段とを有することにより、ホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、この光モジュールを用いることにより、製造工数を削減したホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。
【0017】
本発明に係るホストボードの一実施の形態は、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段とを備えたことを特徴とする。
制御手段としては、例えば、マイクロプロセッサが挙げられる。
【0018】
上記構成によれば、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段とを備えたことにより、ホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、事前調整が不要となり、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、製造工数を削減したホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。
【0019】
本発明に係るホストボードの他の実施の形態は、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段と、受光素子の出力に基づいて発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段と、受光素子の出力に基づいて発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを備えたことにより、ホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、事前調整が不要となり、製造工数を削減したホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。
【0021】
本発明に係るホストボードの他の実施の形態は、上記構成に加え、第1の制御手段は、リアルタイムに発光素子及び受光素子を制御するパラメータを計算することを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第1の制御手段は、リアルタイムに発光素子及び受光素子を制御するパラメータを計算することにより、事前調整が不要となり、効率的にホストボードを製造することができる。
【0023】
本発明に係るホストボードの他の実施の形態は、上記構成に加え、第1の制御手段は、変換効率Sをパラメータとすることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、第1の制御手段は、変換効率Sをパラメータとすることにより、事前調整が不要となり、効率的にホストボードを製造することができる。
【0025】
本発明に係るホストボードの製造方法の一実施の形態は、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールを準備する工程と、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段と、受光素子の出力に基づいて発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを有するホストボード用の基板を準備する工程と、基板に光モジュールを搭載する工程とを備えたことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、発光素子、受光素子、及び発光素子及び受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールを準備する工程と、光モジュールが搭載されるとデータに基づいて発光素子及び受光素子を制御する第1の制御手段と、受光素子の出力に基づいて発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを有するホストボード用の基板を準備する工程と、基板に前記光モジュールを搭載する工程とを備えたことにより、光モジュールが搭載されたホストボードで発光素子および受光素子の特性データに対応した制御を自動的に実現できるので、従来型のホストボードのような光トランシーバモジュールという形態をとる必要がなくなる。この結果、事前調整が不要となり、製造工数を削減したホストボード、およびホストボードの製造方法の提供を実現することができる。
【0027】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【実施例1】
【0028】
本発明に係る光モジュール、ホストボード、及びホストボードの製造方法は、事前調整を不要とするものであって、LD(Laser Diode)またはAPD(Avalanche Photo Diode)またはその両方を内蔵する光モジュールにおいて、それらを温度制御するための回路を事前に調整することなしにホストボード8上で自動的に温度制御することを特徴とする。
【0029】
図1は本発明に係るホストボードの製造方法を適用した光モジュール及びホストボードの一実施例を示す概念図である。
図1に示すように、光モジュール1はLD2およびAPD3および記憶手段4を内蔵している。記憶手段4にはあらかじめLD2およびAPD3の特性に関するデータが記録されている。
ホストボード8上に設置された制御回路5は、光モジュール1の記憶手段4の記憶領域からLD2およびAPD3の特性に関する情報を読み出し、目標とする光出力パワーおよび受光感度が得られるようにレーザードライバ6および駆動回路(例えば、昇圧回路)7を自動制御する。
【0030】
すなわち、記憶手段4の記憶領域に記録されたLD2およびAPD3に関する特性データを用いてホストボード8上の制御回路5がレーザードライバ6および昇圧回路7を自動制御するため、従来実施されてきた事前のLD2およびAPD3の温度調整が不要となることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る光モジュールの制御方式を図1を参照して説明する。
光モジュール1はLD2およびAPD3および記憶手段4を内蔵している。記憶手段4の記憶領域にはあらかじめLD2およびAPD3の特性に関するデータが記録されている。LD2に関するデータは、電流−光変換効率(η)、発光しきい値(Ith)およびこれらの温度変動特性がある。APD3に関するデータは、光−電流変換効率(S)、ブレイクダウン電圧(Vbr)およびこれらの温度変動特性がある。レーザードライバ6はLD2を駆動するための回路である。
レーザードライバ6は変調電流(Imod)およびバイアス電流(Ibias)をLD2に流すことによりLD2を目的の光出力パワーおよび消光比で駆動する。
【0032】
第1の制御手段としての制御回路5は、記憶手段4の記憶領域から読み出したLD2に関する特性データ(η、Ith)に応じてImodおよびIbiasを決める。
昇圧回路7は、APD3の逆バイアス電圧(Vbias)を発生する回路である。APD3はVbiasにより受光効率が決められ、受光感度特性を決定する。最適なVbiasはAPD3の特性に依存する。制御回路5は記憶手段4の記憶領域から読み出したAPD3に関する特性データ(S、Vbr)に応じてVbiasを決める。
【0033】
〔実施例の動作の説明〕
次に、本発明に係るホストボードの動作を説明する。
図1の記憶手段4の記憶領域には、あらかじめLD2およびAPD3の特性に関するデータが記録されている。
図2は、一般的なレーザーダイオード(LD)の特性を示したグラフである。横軸がLDに流す電流、縦軸が発光パワーを示す。この図で示されているように発光パワーおよび消光比は以下の関係式(1)〜(4)で表される。
【0034】
P1=η×(Imod+Ibias−Ith) …(1)
(ただし、ここではIthによる発光は充分小さいとして無視する)
P0=η×(Ibias−Ith) …(2)
(ただし、ここではIthによる発光は充分小さいとして無視する)
Pave=(P1+P0)/2 …(3)
ER=P1/P0=Imod/(Ibias−Ith) …(4)
(ただし、ここではIthによる発光は充分小さいとして無視する)
【0035】
ここで、Paveは平均光出力パワー、ERは消光比、ImodはLDに流す変調電流、IbiasはLDに流すバイアス電流、IthはLDの発光しきい値、ηはLDの電流−光変換効率を示す。
また、一般的にLDを実装した光モジュールはLDの発光パワーをモニタするフォトダイオード(モニタPD)を実装している。発光パワーとモニタPDに流れる電流とは比例関係にあるため、モニタ電流を測定することでPaveを決めることができる。
【0036】
ここで、規定発光パワーPaのときにモニタPDに流れる電流をImonと仮定すると、Paveの発光パワーを得るのに必要な駆動電流(=Imod+Ibias)は以下の式(5)で表される。
Imod/2+Ibias=Pave/Pa×Imon+Ith …(5)
つまり、LDを実装した光モジュールの特性データであるηおよびIth、Imonが分かれば、目標とする発光パワーPaveおよび消光比ERに設定するために必要な電流条件ImodおよびIbiasを決定することができる。
【0037】
ただし、これらηおよびIth,Imonは温度により変動するため、温度に対応した特性データを事前に取得する必要がある。これらの情報を図1の記憶手段4の記憶領域に記憶することにより、記憶手段4から呼び出した特性データから温度に対応した最適なImodおよびIbiasをホストボード8上で制御回路が自動的に決定することができる。
実際には、ホストボード8の温度環境と記憶領域に格納された特性データの温度条件が一致しないため、温度Tをパラメータとした計算式を個別に導出する。そのパラメータは以下の式(6)、(7)で規定される。
【0038】
ここで、f(),g()は関数を示す。
Imod=f(η,Ith,Imon,Pa,Pave,ER,T) …(6)
Ibias=g(η,Ith,Imon,Pa,Pave,ER,T) …(7)
【0039】
図3は、一般的なアバランシェダイオード(Avalanche Photo Diode:APD)の特性を示したグラフである。
図3において、横軸がAPDに印加する逆バイアス電圧Vbias、縦軸がAPDに流れる電流Iapdである。
APDを実装した光モジュールの特性パラメータのうち、変換効率Sとブレイクダウン電圧Vbrが光モジュールの特性を決める主要なパラメータとなる。変換効率SはAPDの増倍率Mが1のときの光−電流変換効率である。APD電流Iapdは下式(8)によって決まる。
Iapd=M×S×Pin …(8)
ここで、Pinは受光パワーを示す。増倍率Mは印加電圧Vbrによって決めることができる。
【0040】
つまり、SおよびVbrが分かれば、目標とする受光電流Iapdに設定するために必要なVbiasを決定することができる。
ただし、MとVpadの関係は温度により変動するため、温度に対応した特性データを事前に取得する必要がある。これらの情報を図1の記憶手段4の記憶領域に記憶することにより、記憶手段4から呼び出した特性データから温度に対応した最適なVbiasをホストボード8上で制御回路が自動的に決定することができる。
【0041】
実際には、ホストボード8の温度環境と記憶領域に格納された特性データの温度条件が一致しないため、温度Tをパラメータとした計算式を個別に導出する。そのパラメータは以下の式(9)で規定される。ここで、h()は関数を示す。
Vbias=h(S,Vbr,T) …(9)
【0042】
図4は図1の記憶手段4の記憶領域に記憶する特性データの一例を示している。
ここでは温度特性をいくつかの代表的な温度条件を取得した結果を記憶している。ホストボード8はこれらのデータを読み出し、各データの間の温度は補間式を導出することによって算出することができる。特性データの温度特性を記憶手段4の記憶領域に記憶することで、図1の制御回路5でLD2およびAPD3を制御するために必要なパラメータを抽出し、自動的に制御することができる。
【0043】
〔効果の説明〕
本発明の第1の効果は、LDおよびAPDの事前調整および試験が不要なことである。
【0044】
本発明の第2の効果は、LDおよびAPDを内蔵した光モジュールを光トランシーバモジュールという機能モジュールにパッケージ化することなしに、LDおよびAPDの温度制御ができることである。
【0045】
本発明の第3の効果は、事前にLDおよびAPDの調整を実施しないため、ホストボード上で任意のLDおよびAPDの調整をすることができることである。
【実施例2】
【0046】
図5は図1に示した記憶手段の記憶領域に記憶するデータの図4の他の実施例を示す説明図である。それぞれのパラメータη、Ith、Imon、S、Vbrを温度特性の関数で記憶する。
このようにデータを構成しても実施例1と同様の効果が得られる。
尚、本実施例では、LDおよびAPDの両方を内蔵した光モジュールを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されずLDのみを内蔵した光モジュールもしくはAPDのみを内蔵した光モジュールでも同様の効果が得られる。
【0047】
表1は従来の光モジュール構成と本発明による構成の部品点数を比較した表である。
本発明による構成では記憶領域4の部品点数が増えるが、光トランシーバモジュール10を構成する機構部品およびプリント基板が不要になる。一般に光トランシーバモジュール10を構成する機構部品およびプリント基板に対して、記憶領域4の価格は非常に安価であるため、本発明により部材価格の低減を図ることができる。
【0048】
【表1】

【0049】
図7に従来型の光トランシーバモジュールに必要な試験と設備の構成とを示す。
同図において、光モジュール1の組立(ステップS1)には光モジュール組立設備を必要とする。
光モジュール1の試験(ステップS2)にはパワーメータ、恒温槽もしくはヒータなどの温度制御槽、電流計、電圧計を必要とする。
光トランシーバモジュール10の組立(ステップS3)には光トランシーバモジュール組立設備を必要とする。
光トランシーバモジュール10の調整・試験(ステップS4)にはパワーメータ、光オシロスコープ、パルスパターンジェネレータ、エラーデティクタ、スペクトラムアラナイザ、光減衰器、恒温槽もしくはヒータなどの温度制御槽、電流計、電圧計を必要とする。
ホストボード8への実装(ステップS5)を経てホストボード8の試験(ステップS6)にはホストボード試験設備を必要とする。
【0050】
次に図8に本発明の光モジュールによる構成に必要な試験設備の構成を示す。
同図において、光モジュール1の組立(ステップS11)には光モジュール組立設備を必要とする。
光モジュール1の試験(ステップS12)にはパワーメータ、恒温槽もしくはヒータなどの温度制御槽、電流計、電圧計を必要とする。
光モジュール1の記憶手段4の記憶領域へのデータ書き込み(ステップS13)には汎用のコンピュータを必要とする。
ホストボード8への実装(ステップS14)を経て、ホストボード8の試験(ステップS15)にはホストボード試験設備を必要とする。
【0051】
図7及び図8より、本発明による構成では、従来の構成に比べて、光トランシーバモジュールの試験に必要な設備が不要となることが分かる。本発明による構成では記憶手段4の記憶領域へのデータ書き込み作業が増えているが、これに必要な設備は汎用のコンピュータであり、本発明により設備の削減を図ることができる。
【0052】
図9に従来型の光トランシーバモジュールに必要な工数を示す。
同図において、光モジュール1の組立(ステップS1)には光モジュールの組み立て:Aを必要とする。
光モジュール1の試験(ステップS2)には光モジュール1の試験:Bを必要とする。
光トランシーバモジュール10の組立(ステップS3)には光トランシーバモジュールの組み立て:Cを必要とする。
光トランシーバモジュール10の調整・試験(ステップS4)には光トランシーバモジュール10の調整:D及び光トランシーバモジュール10の試験:Eを必要とする。
ホストボード8への実装(ステップS5)にはホストボード8への実装:Fを必要とする。
ホストボード8の試験(ステップS6)にはホストボード試験:Gを必要とする。
【0053】
図10に本発明による構成に必要な工数を示す。
同図において、光モジュール1の組立(ステップS11)には光モジュールの組み立て:Aを必要とする。
光モジュール1の試験(ステップS12)には光モジュール1の試験:Bを必要とする。
光モジュール1の記憶手段4の記憶領域へのデータ書き込み(ステップS13)にはデータ書き込み:Zを必要とする。
ホストボード8への実装(ステップS14)にはホストボード8への実装:Fを必要とする。
ホストボード8の試験(ステップS15)にはホストボード8の試験:G+Hを必要とする。
【0054】
図9より従来型の光トランシーバモジュールでは、A+B+C+D+E+F+Gの工数がかかることが分かる。図10より本発明による構成では、A+B+F+G+H+Zの工数がかかる。その差はC+D+E−H−Zとなる。
【0055】
ここで、一般的にはC+D+E>H+Zであるので、本発明により工数の削減を図ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、光通信ネットワークの局舎装置、加入者側装置(モデム)に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るホストボードの製造方法を適用した光モジュール及びホストボードの一実施例を示す概念図である。
【図2】一般的なレーザーダイオード(LD)の特性を示したグラフである。
【図3】一般的なアバランシェダイオード(Avalanche Photo Diode:APD)の特性を示したグラフである。
【図4】図1の記憶手段4の記憶領域に記憶する特性データの一例を示している。
【図5】図1に示した記憶手段の記憶領域に記憶するデータの図4の他の実施例を示す説明図である。
【図6】従来のホストボードの構成を示す図である。
【図7】従来型の光トランシーバモジュールに必要な試験と設備の構成とを示す説明図である。
【図8】本発明の光モジュールによる構成に必要な試験設備の構成を示す説明図である。
【図9】従来型の光トランシーバモジュールに必要な工数を示す説明図である。
【図10】本発明による構成に必要な工数を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 光モジュール
2 レーザーダイオード(LD)
3 アバランシェダイオード(APD)
4 記憶手段
5 制御回路(第1の制御手段)
6 レーザードライバ
7 APD駆動回路(昇圧回路)
8 ホストボード(HOST BOARD)
9 制御・駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段とを有することを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、
前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段とを備えたことを特徴とするホストボード。
【請求項3】
発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールと、
前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段と、前記受光素子の出力に基づいて前記発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを備えたことを特徴とするホストボード。
【請求項4】
前記第1の制御手段は、リアルタイムに前記発光素子及び前記受光素子を制御するパラメータを計算することを特徴とする請求項2記載のホストボード。
【請求項5】
前記第1の制御手段は、変換効率Sをパラメータとすることを特徴とする請求項2または3記載のホストボード。
【請求項6】
発光素子、受光素子、及び前記発光素子及び前記受光素子の特性に関するデータを記録した記憶手段を有する光モジュールを準備する工程と、
前記光モジュールが搭載されると前記データに基づいて前記発光素子及び前記受光素子を制御する第1の制御手段と、前記受光素子の出力に基づいて前記発光素子の出力を制御する第2の制御手段とを有するホストボード用の基板を準備する工程と、
前記基板に前記光モジュールを搭載する工程とを備えたことを特徴とするホストボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−26789(P2009−26789A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185378(P2007−185378)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】