説明

光モジュールの製造方法

【課題】 信頼性の高い光モジュールを製造することができる光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 光モジュール1の製造方法は、はんだ付けにより固定された光ファイバ10を備える光モジュール1の製造方法であって、クラッド12の一部に第1、第2メタライズ層16、17が設けられた光ファイバ10を準備する準備工程P1と、光ファイバ10がはんだ付けされる位置が、第1、第2メタライズ層16、17の位置となるように、光ファイバ10を配置する配置工程P2と、光ファイバ10のクラッド12に光を入射し、光の少なくとも一部を第1、第2メタライズ層16、17で吸収させることで、第1、第2メタライズ層16、17を加熱する加熱工程P3と、第1、第2メタライズ層16、17が加熱されている状態で、光ファイバ10をはんだ付けするはんだ付け工程P4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性の高い光モジュールを製造することができる光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子から出力されたレーザ光を光ファイバのコアに入力する光モジュールが知られている。この光モジュールにおいては、一般的に、筐体内の基台上にレーザサブマウント及びファイバサブマウントが配置されており、半導体レーザ素子と光ファイバの端部の相対的位置が正確に合わされて、半導体レーザ素子がレーザサブマウント上に固定され、光ファイバがファイバサブマウント上に固定されている。また、一般的に、筐体には、貫通孔が筐体の内から外に通じるようにパイプ(スリーブ)が設けられており、光ファイバは、この貫通孔を通されて、筐体の内から外に導出され、光ファイバの外周面とパイプの内周面との間の空間が気密封止されている。
【0003】
ファイバサブマウント上への光ファイバの固定、及び、パイプ内の気密封止は、はんだ付けにより行われる場合がある。この場合、一般的に、光ファイバのはんだ付けされる部分は、はんだの濡れ性を向上させるために、金等から成るメタライズ層により被覆されている。そして、はんだが外部からの抵抗加熱、誘導加熱、レーザ加熱等により溶融されて、はんだ付けが行われる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、光ファイバが挿入されたパイプ内を抵抗加熱によりはんだ付けして封止する、はんだ付け方法が記載されている。また、下記特許文献2には、パイプ内の光ファイバをレーザによりによりはんだ付けして封止する、はんだ付け方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許平01−138505号
【特許文献2】特許平03−259105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバをはんだ付けする場合、上記のように、一般的に、光ファイバのはんだ付けされる部分は、メタライズ層で被覆されている。しかし、はんだ付けの際、メタライズ層自体の温度が十分に高くなっていないと、はんだの濡れ性が悪く、十分にはんだ付けすることができないが、多くの場合、加熱手段の加熱部とメタライズ層との間は、空気や窒素などの気体の存在により熱伝導しづらい。光ファイバが十分にはんだ付けされないと、光ファイバのファイバサブマウント上での位置精度が落ちたり、パイプ内の気密封止が不十分であったりして、光モジュールの信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、信頼性の高い光モジュールを製造することができる光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光モジュールの製造方法は、はんだ付けにより固定された光ファイバを備える光モジュールの製造方法であって、クラッドの一部にメタライズ層が設けられた光ファイバを準備する準備工程と、前記光ファイバがはんだ付けされる位置が、前記メタライズ層の位置となるように、前記光ファイバを配置する配置工程と、前記光ファイバのクラッドに光を入射し、前記光の少なくとも一部を前記メタライズ層で吸収させることで、前記メタライズ層を加熱する加熱工程と、前記光により前記メタライズ層が加熱されている状態で、前記光ファイバをはんだ付けするはんだ付け工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
このような光モジュールの製造方法によれば、メタライズ層の位置がはんだ付けされる位置とされるので、光ファイバをはんだ付けするときに、メタライズ層にはんだが付着する。さらにはんだ付けするときにおいて、メタライズ層は、クラッドに入射する光により加熱されているため、メタライズ層のはんだ濡れ性が良い。従って、このような光モジュールの製造方法によれば、光ファイバが十分にはんだ付けされ、信頼性の高い光モジュールを製造することができる。
【0010】
さらに前記光モジュールは、光を出射する光素子を更に備え、前記配置工程において、前記光ファイバが前記光素子と光学的に結合するように、前記光ファイバを配置し、前記加熱工程において、前記光を前記光素子から前記クラッドに入射することが好ましい。
【0011】
光素子から出力する光を用いてメタライズ層を加熱することにより、他の発光手段を準備する必要がなく、簡易に加熱工程を行うことができる。例えば、光モジュールが、光素子から出射された光を光ファイバから出射する励起光源等である場合、クラッドに入力する光としては、コアに入力しない漏れ光とすることができる。
【0012】
或いは、前記加熱工程において、前記光を外部の発光手段から前記クラッドに入射することとしても良い。
【0013】
外部の発光手段を用いることにより、光の波長や強度等を自由に設定することができ、メタライズ層が加熱され易い光を用いることができる。また、光モジュールが、メタライズ層を加熱できるほど強い光を出射する光素子を有していない場合においても、メタライズ層を外部からの光により加熱することができる。
【0014】
更にこの場合において、前記光モジュールは、光素子を更に備え、前記クラッドは、前記クラッドよりも屈折率が低い被覆層により被覆され、前記配置工程において、前記光ファイバが前記光素子と光学的に結合するように、前記光ファイバを配置し、前記加熱工程において、前記光を前記光ファイバの前記光素子側と反対側から前記光ファイバに入射すると共に、前記光が前記光ファイバに入射している間、前記光ファイバと前記光素子との間を遮蔽することとしても良い。
【0015】
光素子を備える光モジュールの場合、光ファイバは、一般的に光素子と光学的に結合するように配置される。このような光モジュールの製造において、加熱工程で、外部から光ファイバに光を入射する場合、光ファイバの光素子側と反対側から光を入射する方が容易である。しかし、光ファイバと光学的に結合した光素子にこの光が入射されてしまうと、光素子を損傷する可能性がある。しかし、このような光モジュールの製造方法によれば、光ファイバと光素子との間を遮蔽して、それぞれの光学的な結合を遮断しているため、メタライズ層を加熱する光を容易に光ファイバに入射できると共に、光素子の損傷を防止することができる。また、クラッドが、クラッドよりも屈折率が低い被覆層により被覆されているため、クラッドを伝播する光を被覆層が吸収することによる被覆層の焼損を防止することができる。
【0016】
また、前記はんだ付け工程において、外部の加熱手段によりはんだ溶融させることとしても良い。光ファイバをはんだ付けする場合、光ファイバのクラッドに入射する光のみによってはんだを溶融させることができない場合がある。例えば、はんだと光ファイバとの間に隙間がある場合や、クラッドに入射する光により、メタライズ層が、はんだを溶融できるほど十分に加熱されない場合である。しかし、このような場合においても、外部からはんだを加熱して溶融することにより、はんだを適切に溶融させて、適切にはんだ付けを行うことができる。
【0017】
さらに、前記はんだ付け工程において、外部の加熱手段によりはんだ溶融させる場合、更に加熱された前記メタライズ層により前記はんだを溶融させることとしても良い。
【0018】
外部の加熱手段と、クラッドに入射する光により加熱されたメタライズ層とにより、はんだを溶融することで、効率的にはんだを溶融でき、効率的にはんだ付け工程を行うことができる。
【0019】
或いは、前記はんだ付け工程において、前記メタライズ層から発せられる熱のみにより、はんだを溶融させることとしても良い。このようにはんだを溶融させることで、外部の加熱手段を用いる必要がなく、簡易な設備ではんだ付け工程を行うことができる。
【0020】
また、前記光モジュールは、前記光ファイバの一部が搭載されるファイバサブマウントを更に備え、前記配置工程において、前記メタライズ層が、前記ファイバサブマウント上となるように、前記光ファイバを配置し、前記はんだ付け工程において、前記ファイバサブマウントと光ファイバとをはんだ付けすることとしても良い。
【0021】
このような製造方法によれば、光ファイバを適切にファイバサブマウント上に固定することができるので、高い信頼性の光モジュールを製造することができる。
【0022】
また、前記光モジュールは、パイプを有する筐体を更に備え、前記配置工程において、前記光ファイバの一端が前記筐体内となると共に、前記メタライズ層が、前記パイプの貫通孔内となるように、前記光ファイバを配置し、前記はんだ付け工程において、前記パイプを封止するように、前記光ファイバと前記パイプとをはんだ付けすることとしても良い。
【0023】
このような製造方法によれば、光ファイバの一端が収容された筐体を適切に気密封止することができるので、高い信頼性のファイバレーザ装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、信頼性の高い光モジュールを製造することができる光モジュールの製造方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る光モジュールを示す図である。
【図2】光モジュールにおける光ファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。
【図3】光ファイバの一方の端部側の様子を示す図である。
【図4】図1の光モジュールの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】配置工程後の様子を示す図である。
【図6】はんだ付け工程におけるレーザ光ではんだ付けする様子を半導体レーザ素子側から見た図である。
【図7】はんだ付け工程における誘導加熱ではんだ付けする様子を示す図である。
【図8】第3の製造方法における加熱工程の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光モジュールの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る光モジュールを示す図である。
【0028】
図1に示すように光モジュール1は、パイプ35を有する筐体30と、筐体30内に配置されている基台40と、基台40上に配置されているレーザサブマウント41及びファイバサブマウント42と、レーザサブマウント41上に配置されている光素子としての半導体レーザ素子20と、一端が筐体30内に収容されパイプ35の貫通孔Hから外部に導出されている光ファイバ10と、光ファイバ10の一端近傍をファイバサブマウント42上に固定するはんだ51と、パイプ35の貫通孔Hを封止しているはんだ52と、を主な構成として備える。このように本実施形態の光モジュール1は、半導体レーザ素子20から出力されるレーザ光を光ファイバ10により外部に出射する光モジュールであり、例えば、励起光源に使用される。なお、理解の容易のため、図1においては、筐体30を断面で示している。
【0029】
筐体30は、銅や鉄、鉄ニッケル合金、鉄・ニッケル・コバルト合金といった金属等から成り、上述のパイプ35と、中が空間で外形が直方体の形状をしている収容部31とから構成されている。パイプ35は、収容部31の側面に設けられ、パイプ35の貫通孔Hを介して、収容部31の内側の空間と、筐体30の外側の空間とが繋がっている。パイプ35は、収容部31側が肉厚に形成されており、この部分が肉厚部36とされ、収容部31側と反対側が肉薄に形成されており、この部分が肉薄部37とされる。そして、貫通孔Hは、肉厚部36において径が小さく、肉薄部37において径が大きくされている。さらに肉厚部36には、パイプ35の長手方向に垂直な孔Hvが形成されており、孔Hvは、パイプ35の外側から貫通孔Hまで、肉厚部36を貫通している。また、筐体30は、図示しない手段により、収容部31の内部が露出できるように、一部が開閉可能とされている。
【0030】
基台40は、収容部31内に収められている。基台40は、例えば、金属やセラミック製の板状の部材から構成されている。基台40を構成する材料が金属である場合、この金属としては、特に制限されないが、例えば、銅、銅タングステンを挙げることができ、基台40を構成する材料がセラミックである場合、このセラミックとしては、特に制限されないが、例えば、窒化アルミ(AlN)やアルミナ(Al)等を挙げることができる。また、基台40が筐体30と同じ材料である場合には、基台40は、筐体の一部から構成されても良い。
【0031】
基台40上に配置されているレーザサブマウント41は、略直方体の形状をしており、図示しないはんだ材料により基台40上に固定されている。このレーザサブマウント41を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、AlNやAl等のセラミックを挙げることができ、中でも、熱伝導性に優れる観点からAlNが好ましい。また、基台40とレーザサブマウント41とが同様のセラミックから成る場合には、基台40とレーザサブマウント41とを一体の部品として構成しても良い。
【0032】
半導体レーザ素子20は、レーザサブマウント41上に図示しないはんだ材料により固定されている。この半導体レーザ素子20においては、複数の半導体層が積層されており、これらの半導体層により共振器構造が形成されている。そして、半導体レーザ素子20の光ファイバ側の面から、例えば、波長が900nm帯のレーザ光を出力する。
【0033】
基台40上に配置されているファイバサブマウント42は、略直方体の形状をしており、レーザサブマウントと同様にして、基台40上に固定されている。このファイバサブマウント42を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、レーザサブマウント41を構成する材料と同様の材料を挙げることができ、中でも、熱伝導性に優れる観点からAlNが好ましい。また、基台40とファイバサブマウント42とが同様のセラミックから成る場合には、基台40とファイバサブマウント42とを一体の部品として構成しても良い。
【0034】
また、ファイバサブマウント42の基台40側と反対側の面には、ボンディングパッド43が形成されている。ボンディングパッド43は、はんだ51が固定可能な材料であれば特に限定されないが、本実施形態においては、ファイバサブマウント42側にチタン(Ti)層が積層されており、Ti層上に白金(Pt)層が積層されており、Pt層上に金(Au)層が積層されており、このAu層の表面が、はんだ51が固定される側の表面とされている。
【0035】
図2は、光モジュール1における光ファイバ10の長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図2に示すように、光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12とクラッド12の外周面を被覆する被覆層13とから構成されている。クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低くされており、コア11は、例えば、ゲルマニウム等の屈折率を上げるドーパントが添加されたガラスから成り、クラッド12は、例えば、何らドーパントが添加されない純粋な石英から構成される。或いは、コア11は、例えば、何らドーパントが添加されない純粋な石英から成り、クラッド12は、例えば、フッ素が添加されたガラスから成る。また、被覆層13は、紫外線硬化樹脂等から構成され、少なくとも1層の樹脂層から構成されている。
【0036】
図3は、収容部31内に配される光ファイバ10の一方の端部側の様子を示す図である。図3に示すように、光ファイバ10は、一方の端部側の被覆層13が除去されて、クラッド12が露出している。そして、被覆層13が除去された領域において、先端から所定の間隔をあけて、第1メタライズ層16が形成されており、第1メタライズ層16はクラッド12の外周面を覆っている。さらに、被覆層13が除去された領域において、第1メタライズ層16から被覆層13側に所定の間隔をあけて、第2メタライズ層17が形成されており、第2メタライズ層17は、クラッド12の外周面を覆っている。
【0037】
第1メタライズ層16、第2メタライズ層17は、それぞれ金属の層であり、第1メタライズ層16は、はんだ51が固定可能な材料とされ、第2メタライズ層17は、はんだ52が固定可能な材料とされる。後述するようにはんだ付けは、通常、フラックス無しで行うため、第1、第2メタライズ層16、17の表面は、はんだ濡れ性を高めるためAuであることが好ましい。さらに光ファイバ10のクラッドと、Auの密着性を高めるために下地層としてNi層を設けることが好ましい。本実施形態において、第1、第2メタライズ層16、17は、Ni層とAu層の積層体から成り、Ni層がクラッド12の外周面を被覆しており、Au層がNi層の外周面を被覆している。また、Ni層、Au層の厚さは、特に限定されないが、例えば、Ni層が1〜4μmであり、Au層が0.1μm〜0.2μmとされる。このNi層が漏れ光の一部を吸収する。
【0038】
この光ファイバ10における被覆層13が除去された部分は、パイプ35の貫通孔Hから挿通され、端部が収容部31内に収容されている。そして、図1に示すように、光ファイバ10は、第1メタライズ層16が形成されている部分が、ファイバサブマウント42のボンディングパッド43上に配置され、第2メタライズ層17が形成されている部分が、貫通孔Hにおける肉厚部36で囲まれた部分に配置され、被覆層13の端部が、貫通孔Hにおける肉薄部37で囲まれた部分に配置されている。さらに光ファイバ10は、収容部31内に収容されている端部が、半導体レーザ素子20の出射面に向けられており、半導体レーザ素子20から出力されるレーザ光が光ファイバ10のコア11に入力するように、光ファイバ10と半導体レーザ素子20とが光学的に結合されている。この状態において、さらに光ファイバ10は、第1メタライズ層16がボンディングパッド43にはんだ51で固定されることで、ファイバサブマウント42上に固定され、第2メタライズ層17がパイプ35の肉厚部36にはんだ52で固定されることで、パイプ35に固定されている。
【0039】
ボンディングパッド43上において、光ファイバ10を固定しているはんだ51としては、例えば、金錫系の共晶はんだを挙げることができ、Auと錫(Sn)の重量比としては、Au80%−Sn20%や、Au10%−Sn90%を挙げることができる。本実施形態においては、はんだ51がAu80%−Sn20%である場合について説明する。この場合、はんだの融点は約280度とされる。
【0040】
また、パイプ35における貫通孔Hで、光ファイバ10を固定しているはんだ52は、肉厚部36における貫通孔H全体に充填されると共に、孔Hv全体にまで充填され、上述のように貫通孔Hを封止している。このはんだ52としては、はんだ51と同様のはんだを挙げることができる。
【0041】
また、パイプ35の肉薄部37における貫通孔Hには、固定樹脂53が充填されており、固定樹脂53は、図1に示すように、光ファイバ10における被覆層13が除去された部分から被覆層13における端部の外周面を覆っている。従って、被覆層13は、固定樹脂53によりパイプ35に固定されており、光ファイバ10は、外力により容易にコア11及びクラッド12が折れない構造とされている。固定樹脂53の材料としては、特に限定されないが、例えば、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂を挙げることができる。
【0042】
このような光モジュール1は、図示しない外部からの電力の供給により、半導体レーザ素子20が励起され、レーザ光が出射される。このレーザ光の波長は、上述のように、例えば、900nm帯とされる。半導体レーザ素子20から出射されたレーザ光は、光ファイバ10のコア11に入力して、コア11を伝播して、光モジュール1の外部に出射される。
【0043】
なお、レーザ光が光ファイバ10に入射するとき、レーザ光は、上述のようにコア11に入射するが、光ファイバ10の端面における屈折や、光ファイバ10と半導体レーザ素子20との光軸のずれ等により、レーザ光の一部がクラッド12に漏れ光として入射する。この場合、漏れ光は、主にクラッド12を伝播して、光ファイバ10が第1、第2メタライズ層16、17で被覆されている部分に到達して、漏れ光の少なくとも一部が第1、第2メタライズ層16、17に吸収され、熱に変換される。このとき第1メタライズ層16で生じる熱は、はんだ51、ファイバサブマウント42、基台40を介して筐体30に伝導し、外部に放出され、第2メタライズ層17で生じる熱は、はんだ52を介して筐体30に伝導し、外部に放出される。
【0044】
次に光モジュール1の製造方法について説明する。
【0045】
(第1の製造方法)
まず、光モジュール1を製造する第1の製造方法について説明する。
【0046】
図4は、図1の光モジュール1の製造方法の工程を示すフローチャートである。図4に示すように、光モジュール1の製造方法は、クラッド12の一部に第1、第2メタライズ層16、17が設けられた光ファイバ10を準備する準備工程P1と、光ファイバ10がはんだ付けされる位置が、第1、第2メタライズ層16、17の位置となるように、光ファイバ10を配置する配置工程P2と、光ファイバ10のクラッド12に光を入射し、光の少なくとも一部を第1、第2メタライズ層16、17で吸収させることで、第1、第2メタライズ層16、17を加熱する加熱工程P3と、第1、第2メタライズ層16、17が加熱されている状態で、光ファイバ10をはんだ付けするはんだ付け工程P4と、パイプ35の貫通孔Hに固定樹脂53を充填する充填工程P5と、を備える。
【0047】
<準備工程P1>
まず、光ファイバ10を準備する。また、本工程において、収容部31内に基台40、ファイバサブマウント42、レーザサブマウント41、半導体レーザ素子20が配置された筐体30、及び、はんだ51、52を準備する。
【0048】
光ファイバ10の準備においては、光ファイバ10の一方の端部側の被覆層13を除去して、クラッド12を露出させる。そして、光ファイバ10は、図1に示すように、ファイバサブマウント42上とパイプ35の肉厚部36内において、はんだ付けされるため、これらのはんだ付けが予定されている領域を含んで、この領域よりも短くなるように第1、第2メタライズ層16、17を設ける。具体的には、はんだ付けが予定されている領域の両側にはみ出さないようにして、第1、第2メタライズ層16、17を設ける。
【0049】
ファイバサブマウント42上においてはんだ付けが予定されている領域は、図1のように光ファイバ10がファイバサブマウント42上に配置される場合に、光ファイバ10とボンディングパッド43とが重なる部分とすれば良い。従って、第1メタライズ層16の長さが、ボンディングパッド43における光ファイバ10の長手方向に沿った幅よりも短くなるように、第1メタライズ層16を設ける。例えば、ボンディングパッド43における光ファイバ10の長手方向に沿った幅よりも、0.05mm〜1.0mm程度短く第1メタライズ層16を設ける。
【0050】
また、パイプ35の貫通孔H内においてはんだ付けが予定されている領域は、図1のように光ファイバ10がパイプ35の貫通孔Hに挿通される場合に、肉厚部36で囲まれる部分とすれば良い。従って、第2メタライズ層17の長さが、肉厚部36の長さよりも短くなるように、第2メタライズ層17を設ける。例えば、肉厚部36の長さよりも、0.05mm〜1.0mm程度短く第2メタライズ層17を設ける。
【0051】
第1、第2メタライズ層16、17は、上述のように、例えば、Ni層とAu層との積層体であるため、めっき法により設けられることが好ましい。めっき法によれば、外形が円柱の側面状であるクラッド12の外周面に対して、より均一な厚さで第1、第2メタライズ層16、17を設けることができるためである。
【0052】
こうして第1、第2メタライズ層16、17が設けられた光ファイバ10を得る。
【0053】
また、収容部31内に基台40、ファイバサブマウント42、レーザサブマウント41、半導体レーザ素子20が配置された筐体30を準備する。
【0054】
筐体30は、収容部31の内部が露出できるように、一部が開閉可能なものを準備する。そして、特に図示しないが、収容部31の内部を露出した状態にしておく。
【0055】
また、ファイバサブマウント42にボンディングパッド43を設ける。ボンディングパッド43は、蒸着法、スパッタ法、めっき法等の成膜加工により設ければ良い。そして、ファイバサブマウント42におけるボンディングパッド43が設けられている面と逆側の面を図示しないはんだ材料により基台40に固定する。なお、ファイバサブマウント42が基台40と一体とされている場合や、予めファイバサブマウント42が基台40に固定されている場合には、基台40にファイバサブマウント42が固定されている状態で、ボンディングパッド43を設ければ良い。
【0056】
さらに、基台40にレーザサブマウント41を図示しないはんだ材料により固定すると共に、レーザサブマウント41上に半導体レーザ素子20を図示しないはんだ材料により固定する。
【0057】
次に、ファイバサブマウント42及びレーザサブマウント41が固定された基台40を筐体30の収容部31内に図示しないはんだにより固定する。
【0058】
はんだ51、52は、光ファイバ10を固定するために、適切な量のはんだを準備して、はんだ51としてファイバサブマウント42上に配置できるように、必要な分のはんだを1つないし複数の塊にしておくと共に、はんだ52としてパイプ35の孔Hvに挿入できるように、必要な分のはんだを1つないし複数の塊にしておく。なお、はんだ51、52にはフラックスが添加されていないことが、光ファイバ10の端面や半導体レーザ素子20の出射面にフラックスが付着することを防止できる観点や、はんだの腐食(酸化や硫化)を防止でき信頼性が向上することができる観点から好ましい。
【0059】
<配置工程P2>
次に準備した光ファイバを筐体30に挿通するように配置する。具体的には、光ファイバ10の被覆層13が除去されている側をパイプ35の貫通孔Hに挿通する。このとき、光ファイバ10を貫通孔Hの収容部側と反対側から挿通する。そして、光ファイバ10におけるはんだ付けが予定される領域に形成された第1メタライズ層16が、ボンディングパッド43上に配置され、同じくはんだ付けが予定される領域に形成された第2メタライズ層17が、貫通孔Hにおける肉厚部36で囲まれた部分に配置されるようにする。ただし、上述のように、第1メタライズ層16の長さは、ボンディングパッド43における光ファイバ10の長手方向に沿った幅よりも短くなるよう設けられているため、光ファイバ10を配置した状態で、第1メタライズ層16は、ボンディングパッド43からはみ出さない。また、上述のように、第2メタライズ層17の長さは、肉厚部36の長さよりも短くなるように設けられているため、光ファイバ10を配置した状態で、第2メタライズ層17は、肉厚部36からはみ出さない。
【0060】
さらに、光ファイバ10の中心軸が、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光の光軸と合うようにして、半導体レーザ素子20と光ファイバ10とが光学的に結合するように、光ファイバ10が配置される位置を微調整する。この光ファイバ10の配置においては、図示しない治具を用いて、図5に示すように、光ファイバ10がボンディングパッド43から僅かに浮くようにして、光ファイバ10の位置を固定する。
【0061】
こうして、図5に示すように、光ファイバ10は、被覆層13が除去された部分が筐体30に挿通され、第1メタライズ層16がボンディングパッド43上とされ、第2メタライズ層17がパイプ35の肉厚部36における貫通孔H内とされた状態で配置される。
【0062】
<加熱工程P3>
次に第1、第2メタライズ層16、17を加熱する。加熱する際には、周囲の酸素によりはんだが酸化することを防止するために、窒素雰囲気下で加熱することが望ましい。この場合の酸素濃度は、使用するはんだの組成によっても異なるが50ppm以下であることが望ましい。本工程においては、外部から半導体レーザ素子20に電力を供給して、半導体レーザ素子20を励起し、半導体レーザ素子からレーザ光を出射させる。このレーザ光の波長は、上述のように、例えば、900nm帯とされる。上述の配置工程において、半導体レーザ素子20と光ファイバ10とは、互いに光学的に結合しているため、出射したレーザ光は、光ファイバ10のコア11に入力して、コア11を伝播する。しかし、上述の配置工程において、誤差なく光ファイバ10を配置する場合においても、レーザ光が光ファイバ10に入射するとき、レーザ光は、光ファイバ10の端面における屈折により、レーザ光の一部がクラッド12に漏れ光として入射したり、コア11に入射した光の内NA(Numerical Aperture:開口数)の大きな光がコア11からクラッド12に漏れ光として伝播する。また、上述の配置工程において、光ファイバ10を配置する際、光ファイバ10と半導体レーザ素子20との光軸のずれがある場合も、レーザ光の一部がクラッド12に漏れ光として入射する。つまり、光ファイバ10の配置の精度に関わらず、クラッド12には、レーザ光の一部が漏れ光として入射する。
【0063】
クラッド12に入射した漏れ光は、主にクラッド12を伝播して、第1メタライズ層16が設けられている領域に達して、第1メタライズ層16において、一部の光が吸収されて熱に変換される。さらに、第1メタライズ層16が設けられている領域を通過した光は、更にクラッド12を伝播して、第2メタライズ層17が設けられている領域に達して、第2メタライズ層17において、一部の光が吸収されて熱に変換される。こうして第1、第2メタライズ層16、17が加熱される。
【0064】
このとき第1、第2メタライズ層16、17の少なくとも一方の温度を温度モニターで検知することが、正確な温度で第1、第2メタライズ層16、17を加熱することができる観点から好ましい。また、この温度モニターは、非接触であることが、第1、第2メタライズ層16、17に傷等を与えない観点から好ましい。また、温度モニターを設置できない場合には、半導体レーザ素子20に与える電力から第1、第2メタライズ層16、17の温度を求めても良い。半導体レーザ素子20に与える電力と、第1、第2メタライズ層16、17の温度との関係は、事前に実験等で確認をしておき、そのデータを基に行えば良い。
【0065】
加熱された第1、第2メタライズ層16、17の温度としては、後述のはんだ付け工程P4において、第1、第2メタライズ層16、17が、十分なはんだ濡れ性を有する程度の温度とされ、Au80%−Sn20%はんだを使う場合、例えば、120℃〜280℃とされ、さらに120℃〜180℃であることが、第1、第2メタライズ層16、17の変質や融解を防止する観点から好ましい。ただし、後述のはんだ付け工程P4においては、はんだ付けによる第1、第2メタライズ層16、17の温度上昇もあるため、本工程におけるクラッド12を伝播する漏れ光による第1、第2メタライズ層16、17の加熱のみで、十分なはんだ濡れ性を有する温度になる必要はない。
【0066】
<はんだ付け工程P4>
次に、光ファイバ10をはんだ付けする。本工程においては、まず、光ファイバ10をファイバサブマウント42上にはんだ付けし、その後、光ファイバ10をパイプ35にはんだ付けしてパイプ35の貫通孔Hを封止する。この光ファイバ10のはんだ付けは、第1、第2メタライズ層16、17が半導体レーザ素子20からの光により加熱されている状態で行う。
【0067】
まず、ボンディングパッド43上にはんだ51を配置する。このときはんだ51を第1メタライズ層16に接触するように配置することが、第1メタライズ層16の熱によりはんだ51を加熱することができる観点から好ましい。なお、はんだ51の配置は、上述の配置工程P2や加熱工程P3において行っても良い。
【0068】
図6は、本工程におけるはんだ51を加熱する様子を半導体レーザ素子20側から見た図である。なお、図6においては、筐体30を省略して、収納部31の中の様子のみを示す。図6に示すように、本実施形態においては、はんだ51の加熱は、外部の加熱手段である外部の図示しないレーザ装置から照射されるレーザ光Lにより行われる。レーザ光Lは、はんだ51が配置された状態で照射し、はんだ51に直接照射しても良いが、はんだ51が局所的に溶融したり、はんだ51が変質することを防止する観点から、ファイバサブマウント42に照射することが好ましい。このようにファイバサブマウント42にレーザ光Lが照射する場合、ファイバサブマウント42における加熱された部分からの熱伝導により、ボンディングパッド43が加熱されて、更にこの熱がはんだ51に伝導して、はんだ51が溶融する。また、このときはんだ51の温度をはんだの融点より10℃〜40℃高くすることが、はんだ51を十分に溶融する観点から好ましい。このときはんだ51の温度を温度モニターで検知することが、正確な温度ではんだ51を加熱することができる観点からこのましい。また、この温度モニターは、非接触であることが、はんだ付けに影響を与えない観点から好ましい。
【0069】
このようにファイバサブマウント42にレーザ光Lを照射する場合、はんだ51が溶融するときにボンディングパッド43が加熱されているので、ボンディングパッド43のはんだ濡れ性が良い。そして、溶融されたはんだ51は、ボンディングパッド43上に広がると共に、第1メタライズ層16に付着する。このとき第1メタライズ層16は、半導体レーザ素子20からの光により加熱されているため、はんだ濡れ性が良く、はんだ51は、第1メタライズ層16上に広がり、適切に第1メタライズ層16に付着する。
【0070】
なお、はんだ51が第1メタライズ層16と接触するように配置されれば、はんだ51をボンディングパッド43からの熱と、第1メタライズ層16からの熱により加熱することができ、はんだ51が溶融するまでにかかる時間を短くすることができる。
【0071】
そして、レーザ光Lの照射を止めることで、はんだ51が固化して、光ファイバ10は、図1に示すように、ボンディングパッド43を介してファイバサブマウント42上にはんだ付けされ固定される。
【0072】
図7は、本工程におけるはんだ52を加熱する様子を示す図である。図7に示すように、本実施形態において、はんだ52の加熱は、外部の加熱手段である外部の図示しない誘導加熱装置も用いた誘導加熱により行われる。まず、高周波が印加されるコイル61の内側に、パイプ35の肉厚部36を配置して、肉厚部36がコイル61で囲まれるようにする。さらに、パイプ35の孔Hvにはんだ52を挿入する。はんだ52の配置は、はんだ52が、第2メタライズ層17に接触するように配置することが、第2メタライズ層17の熱により、はんだ52を加熱することができる観点から好ましい。なお、はんだ52の配置は、上述の配置工程P2や加熱工程P3において行っても良い。
【0073】
次に、コイル61に高周波を印加する。これによりコイル61の内側に高周波の電磁波が生じて、はんだ52、及び、パイプ35の肉厚部36は加熱される。この加熱により、はんだ52が溶融すると共に、孔Hvから貫通孔Hに流入して、貫通孔Hにおける肉厚部36で囲まれる部分が、はんだ52で充填されると共に、第2メタライズ層17に付着する。このとき誘導加熱によりパイプ35が加熱されているため、パイプ35の肉厚部36の内壁面ははんだ濡れ性が良く、はんだ52が適切に肉厚部36の内壁面に広がって付着する。さらに、このとき第2メタライズ層17は、半導体レーザ素子20からの光により加熱されているため、はんだ濡れ性が良く、はんだ52が適切に第2メタライズ層17上に広がって付着する。このようにはんだ52が、適切に第2メタライズ層17上に広がって付着するため、貫通孔Hにおける肉厚部36で囲まれる部分が適切にはんだ52で封止される。なお、はんだ52は、孔Hvにも充填される。このときはんだ52の温度をはんだの融点より10℃〜40℃高くすることが、はんだ52を十分に溶融して貫通孔Hを封止することができる観点から好ましい。また、このときはんだ52の温度を温度モニターで検知することが、正確な温度ではんだ52を加熱することができる観点からこのましい。また、この温度モニターは、非接触であることが、はんだ付けに影響を与えない観点から好ましい。
【0074】
そして、高周波の印加を止めることで、はんだ52が固化して、図1に示すように、光ファイバ10が、パイプ35にはんだ付けされ固定されると共に、貫通孔Hが封止される。
【0075】
<充填工程P5>
次に、貫通孔Hにおける肉薄部37で囲まれた部分に固定樹脂53を充填する。固定樹脂53の充填において、固定樹脂53が紫外線硬化樹脂である場合は、貫通孔Hの収容部31側と反対側から、紫外線硬化樹脂の前駆体である未硬化状態の紫外線硬化性樹脂を充填する。このとき、貫通孔H内の光ファイバ10の被覆層13が、紫外線硬化性樹脂に埋もれるまで、紫外線硬化性樹脂を充填する。そして、紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させることで、固定樹脂53がパイプ35の貫通孔H内に固定され、光ファイバ10の被覆層13が固定樹脂53を介して、パイプ35に固定される。また、この紫外線硬化樹脂が熱硬化併用型(紫外線により仮硬化後、加熱することで本硬化する樹脂)である場合は、この樹脂を紫外線により硬化させた後でさらに必要な加熱を行うことで本硬化させる。また、固定樹脂53が熱硬化樹脂である場合は、上記と同様に未硬化状態の樹脂を充填後、適切な加熱を行い硬化させる。
【0076】
そして、筐体30の収納部を閉めて、図1に示す光モジュール1を得る。
【0077】
以上説明したように、本実施形態における光モジュール1の第1の製造方法によれば、第1、第2メタライズ層16、17の位置が、はんだ付けされる位置とされるので、光ファイバをはんだ付けするときに、第1、第2メタライズ層16、17にはんだが付着する。このとき第1、第2メタライズ層16、17は、クラッドに入射する光により加熱されているため、第1、第2メタライズ層16、17のはんだ濡れ性が良い。従って、このような光モジュールの製造方法によれば、はんだ付けの際、第1、第2メタライズ層16、17に溶融したはんだ51、52が広がり、光ファイバが十分にはんだ付けされ、信頼性の高い光モジュールを製造することができる。
【0078】
また、半導体レーザ素子20から出力する漏れ光を用いて第1、第2メタライズ層16、17を加熱するので、他の発光手段を準備する必要がなく、簡易に加熱工程P3を行うことができる。
【0079】
また、はんだ付け工程P4において、外部のレーザ装置や誘導加熱装置を用いて、はんだを溶融させるため、光ファイバ10のクラッド12に入射する漏れ光のみによってはんだを溶融させることができない場合であっても、はんだを十分に溶融することができる。特に、はんだ51、52と第1、第2メタライズ層16、17との間に隙間がある場合や、クラッド12に入射する漏れ光により、第1、第2メタライズ層16、17が、はんだ51、52を溶融できるほど十分に加熱されない場合に有効である。
【0080】
なお、上記の製造方法のようにはんだ付け工程P4において、外部の加熱手段によりはんだ51、52を溶融させる場合、更に加熱された第1、第2メタライズ層16、17によりはんだ51、52を溶融させることとしても良い。このような場合、はんだ51、52を第1、第2メタライズ層16、17に接触するように配置する。そして、少なくともはんだ付け工程P4において、はんだ51、52の融点よりも高くなるように第1、第2メタライズ層16、17を加熱する。こうすることで、レーザ光Lや誘導加熱に加えて、加熱された第1、第2メタライズ層16、17によりはんだ51、52を溶融させることができる。このように、外部の加熱手段と、クラッド12に入射する光により加熱された第1、第2メタライズ層16、17とにより、はんだ51、52を溶融することで、効率的にはんだ51、52を溶融することができ、効率的にはんだ付け工程P4を行うことができる。
【0081】
(第2の製造方法)
次に、光モジュール1を製造するための第2の製造方法について説明する。なお、第1の製造方法と同一・同様の説明については、一部の説明を省略する。
【0082】
本製造方法においては、まず、第1の製造方法と同様にして、準備工程P1を行う。
【0083】
次に、本製造方法においては、配置工程P2において、第1の製造方法と同様に光ファイバを配置した後、はんだ51をメタライズ層16に接触するようにボンディングパッド43上に配置し、はんだ52をメタライズ層17に接触するように孔Hvに挿入して配置する。
【0084】
次に、加熱工程P3において、第1メタライズ層16及び第2メタライズ層17を第1の製造方法と同様にして加熱する。ただし、本製造方法においては、加熱工程P3は、はんだ51、52が溶融する前まで加熱する。
【0085】
次に、はんだ付け工程P4において、加熱工程P3で加熱された第1、第2メタライズ層16、17を更に加熱する。この加熱は、加熱工程と同様にして、半導体レーザ素子20から光ファイバ10に入射される漏れ光のみを用いる。別言すれば、本製造方法は、半導体レーザ素子20から入射される漏れ光のみを用いて、加熱工程P3及びはんだ付け工程P4を連続して行う。従って、本製造方法により製造される光モジュール1においては、半導体レーザ素子20として、強度の高いレーザ光を出力することができる半導体レーザ素子を用いる。このとき、はんだ51、52の温度を第1の製造方法と同様に、はんだの融点より10℃〜40℃高くすることが、第1の製造方法における理由と同様の理由から好ましい。また、このときはんだ51、52の温度を非接触の温度モニターで検知することが、第1の製造方法における理由と同様の理由から好ましい。
【0086】
そして、はんだ付け工程P4の後に、第1の製造方法と同様にして、充填工程P5を行い、そして、筐体30の収納部を閉めて、図1に示す光モジュール1を得る。
【0087】
光モジュール1の本製造方法によれば、第1、第2メタライズ層16、17の熱のみにより、はんだ51、52を溶融させるため、外部の加熱手段を用いる必要がなく、簡易な設備ではんだ付け工程P4を行うことができる。
【0088】
(第3の製造方法)
次に、光モジュール1を製造するための第3の製造方法について説明する。なお、第1の製造方法と同一・同様の説明については、一部の説明を省略する。
【0089】
本製造方法においては、第1の製造方法と同様にして、準備工程P1、及び、配置工程P2をおこなう。
【0090】
次に加熱工程P3を行う。図8は、本製造方法における加熱工程P3の様子を示す図である。なお、図8においては、筐体30を省略して、収納部31の中の様子のみを示す。本製造方法においては、加熱工程P3において、クラッド12を伝播する光が被覆層で吸収されることを防止する観点から、光ファイバ10としては、クラッド12より屈折率が低い被覆層13を有する光ファイバを使用する。まず、光ファイバ10と半導体レーザ素子20との間に、光を遮蔽する遮蔽板62を配置する。次に、外部の発光手段を用いて、光ファイバ10の半導体レーザ素子20側と反対側からクラッド12に光を入射する。このクラッド12に入射された光は、クラッド12より被覆層13の方が低い屈折率であるため、主にクラッド12を伝播して、第2メタライズ層17が設けられている領域に達して、第2メタライズ層17において、一部の光が吸収されて熱になる。さらに、第2メタライズ層17が設けられている領域を通過した光は、更にクラッド12を伝播して、第1メタライズ層16が設けられている領域に達して、第1メタライズ層16において、一部の光が吸収されて熱になる。さらに、第1メタライズ層16が設けられている領域を通過した光は、光ファイバ10の半導体レーザ素子20側の端部から出射されて、遮蔽板62に吸収または反射され、遮蔽板62に吸収された光は熱になる。こうして第1、第2メタライズ層16、17が加熱される。なお、本工程において第1、第2メタライズ層16、17が加熱される温度は、第1の製造方法と同様とすれば良い。また、本製造方法においても、第1、第2メタライズ層16、17の少なくとも一方の温度を検知することが、第1の製造方法と同様の理由から好ましい。なお、遮蔽板62は、光を熱に変換し易い板であることが好ましく、また放熱性に優れる板であることが好ましい。このような板としては、表面が黒色に加工された金属等を挙げることができる。
【0091】
そして、次に第1の製造方法と同様にしてはんだ付け工程P4を行う。なおこのときにおいても、光ファイバ10に光が入射されて、第1、第2メタライズ層16、17が加熱されているため、遮蔽板62により、光ファイバ10と半導体レーザ素子20とを遮蔽する。
【0092】
そして、充填工程P5を行い、そして、筐体30の収納部を閉めて、図1に示す光モジュール1を得る。
【0093】
光モジュール1の本製造方法によれば、外部の発光手段を用いることにより、光の周波数や強度等を自由に設定することができ、第1、第2メタライズ層16、17が加熱され易い光を用いることができる。また、半導体レーザ素子20が然程強い光を出射しない場合においても、第1、第2メタライズ層16、17を光により加熱することができる。
【0094】
また、半導体レーザ素子20と光ファイバ10とは、光学的に結合するように配置される。この場合、光ファイバ10と半導体レーザ素子20との間は、通常狭く、外部からの光は、光ファイバ10の半導体レーザ素子20側と反対側から入射することが容易である。しかし、このような方向から光ファイバ10に光を入射すると、光ファイバ10に光学的に結合された半導体レーザ素子20にこの光が入射されてしまい、半導体レーザ素子20を損傷する可能性がある。しかし、本製造方法によれば、光ファイバ10と半導体レーザ素子20との間を遮蔽板62で遮蔽して、それぞれの光学的な結合を遮断しているため、第1、第2メタライズ層16、17を加熱する光を容易に光ファイバ10に入射できると共に、半導体レーザ素子20の損傷を防止することができる。
【0095】
なお、外部からの光を光ファイバ10の半導体レーザ素子20側から入射することができる場合は、半導体レーザ素子20側から入射しても良い。この場合、被覆層13がクラッド12より低い屈折率である必要はない。
【0096】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限らない。
【0097】
例えば、上記実施形態においては、光素子として、半導体レーザ素子20を用いた光モジュールを例に説明したが、本発明は、これに限らず、他の光素子を用いた光モジュールに適用しても良く、或いは、光素子を備えない光モジュールに適用しても良い。例えば、光モジュールは、光素子として、誘電体結晶を用いた光通信用LiNbO3変調器のような外部変調器であっても良い。ただし、光素子が、第1、第2メタライズ層16、17を加熱する様な光を発しない光素子である場合、第3の製造方法のように、光ファイバ10に第1、第2メタライズ層16、17を加熱するための光を外部から入射する必要がある。
【0098】
また、上記実施形態において、ファイバサブマウント42上への光ファイバ10の固定のみに上記の製造方法を用いも良い。例えば、パイプ35を有していない光モジュールを製造する場合がこれに相当する。この場合、第2メタライズ層17は不要である。或いは、パイプ35に光ファイバを挿通した状態で、パイプ35を封止する場合のみに、上記の製造方法を用いても良い。例えば、光モジュールが、光素子を有しない光ファイバコネクタである場合がこれに相当する。この場合、第1メタライズ層16は不要である。
【0099】
また、第3の製造方法において、第2の製造方法のように外部から光ファイバ10に入射された光により加熱された第1、第2メタライズ層16、17の熱により、はんだ付け工程P4を行っても良い。
【0100】
また、第3の製造方法において、光ファイバ10の半導体レーザ素子20側から出力した光が半導体レーザ素子20に到達しても良い場合は、遮蔽板62により、光ファイバ10と半導体レーザ素子20とを必ずしも遮蔽しなくても良い。
【0101】
また、はんだ51は他の材料系のはんだでも良く、ボンディングパッド43の表面、及び、はんだ51、及び、メタライズ層の表面に同じ金属が含まれていなくても良い。
【0102】
また、はんだ付け工程P4において、レーザ光Lや誘導加熱により加熱を行ったが、加熱は抵抗加熱等の他の加熱により行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明によれば信頼性の高い光モジュールを製造することができる光モジュールの製造方法を提供され、励起光源の製造や、光通信用外部変調器の製造等に活用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1・・・光モジュール
10・・・光ファイバ
11・・・コア
12・・・クラッド
13・・・被覆層
16・・・第1メタライズ層
17・・・第2メタライズ層
20・・・半導体レーザ素子
30・・・筐体
31・・・収容部
35・・・パイプ
36・・・肉厚部
37・・・肉薄部
40・・・基台
41・・・レーザサブマウント
42・・・ファイバサブマウント
43・・・ボンディングパッド
51、52・・・はんだ
53・・・固定樹脂
61・・・コイル
62・・・遮蔽板
H・・・貫通孔
Hv・・・孔
L・・・レーザ光
P1・・・準備工程
P2・・・配置工程
P3・・・加熱工程
P4・・・はんだ付け工程
P5・・・充填工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けにより固定された光ファイバを備える光モジュールの製造方法であって、
クラッドの一部にメタライズ層が設けられた光ファイバを準備する準備工程と、
前記光ファイバがはんだ付けされる位置が、前記メタライズ層の位置となるように、前記光ファイバを配置する配置工程と、
前記光ファイバのクラッドに光を入射し、前記光の少なくとも一部を前記メタライズ層で吸収させることで、前記メタライズ層を加熱する加熱工程と、
前記光により前記メタライズ層が加熱されている状態で、前記光ファイバをはんだ付けするはんだ付け工程と、
を備える
ことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記光モジュールは、光を出射する光素子を更に備え、
前記配置工程において、前記光ファイバが前記光素子と光学的に結合するように、前記光ファイバを配置し、
前記加熱工程において、前記光を前記光素子から前記クラッドに入射する
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、前記光を外部の発光手段から前記クラッドに入射することを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光モジュールは、光素子を更に備え、
前記クラッドは、前記クラッドよりも屈折率が低い被覆層により被覆され、
前記配置工程において、前記光ファイバが前記光素子と光学的に結合するように、前記光ファイバを配置し、
前記加熱工程において、前記光を前記光ファイバの前記光素子側と反対側から前記光ファイバに入射する共に、前記光が前記光ファイバに入射している間、前記光ファイバと前記光素子との間を遮蔽する
ことを特徴とする請求項3に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記はんだ付け工程において、外部の加熱手段によりはんだを溶融させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記はんだ付け工程において、更に加熱された前記メタライズ層により前記はんだを溶融させることを特徴とする請求項5に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記はんだ付け工程において、前記メタライズ層から発せられる熱のみにより、はんだを溶融させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記光モジュールは、前記光ファイバの一部が搭載されるファイバサブマウントを更に備え、
前記配置工程において、前記メタライズ層が、前記ファイバサブマウント上となるように、前記光ファイバを配置し、
前記はんだ付け工程において、前記ファイバサブマウントと光ファイバとをはんだ付けする
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記光モジュールは、パイプを有する筐体を更に備え、
前記配置工程において、前記光ファイバの一端が前記筐体内となると共に、前記メタライズ層が、前記パイプの貫通孔内となるように、前記光ファイバを配置し、
前記はんだ付け工程において、前記パイプを封止するように、前記光ファイバと前記パイプとをはんだ付けする
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50484(P2013−50484A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186807(P2011−186807)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】