説明

光受信装置及びクロック生成方法

【課題】分散値の調整を簡易かつ迅速に行うとともに、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを回避すること。
【解決手段】分散補償部は、設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する。位相差信号生成部は、分散補償部によって補償された光信号に含まれるクロックである外部クロックと、自装置内で用いるクロックである内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する。分散値調整部は、分散補償部に設定された分散値を調整する。抑制部は、分散値調整部によって分散値が調整された場合に、位相差信号生成部によって生成された位相差信号に現れる変動を抑制する。クロック生成部は、抑制部によって抑制された位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信装置及びクロック生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光伝送の分野では、ネットワークの高速化及び広帯域化に伴って40Gbps回線の導入が始まっている。40Gbpsの光信号を受信する場合には、ファイバケーブル等の光伝送路が有する分散特性に起因して光信号の波形歪みが大きくなる。この波形歪による信号伝送への影響は、概ね伝送速度の2乗に比例して大きくなる。このため、光信号の伝送速度が高速になるほど、波長分散を補償する技術が重要度を増してきている。
【0003】
図12は、波長分散を補償する技術を採用した従来の光受信装置を説明するための図である。同図に示すように、従来の光受信装置10は、光増幅器11と、可変分散補償器(VDC:Variable Dispersion Compensator)12と、遅延干渉計13と、受光素子14と、増幅器15と、SERDES(Serializer/Deserializer)16とを有する。また、従来の光受信装置10は、Framer17と、VDC制御部18と、CR(Clock Recovery)部19とを有する。
【0004】
従来の光受信装置10では、光増幅器11が、光伝送路から入力される光信号を増幅し、VDC12が、増幅された光信号の波長分散を補償し、遅延干渉計13が、補償された光信号を復調する。そして、受光素子14が、復調後の光信号を電気信号に変換し、増幅器15が、変換後の電気信号を増幅し、CR部19が、入力される電気信号に含まれるクロックの位相と同期したクロックを生成する。そして、SERDES16が、CR部19によって生成されたクロック(以下「内部クロック」という)を基にして、電気信号が「0」又は「1」のいずれのデータであるかを識別し、識別結果を示す受信データ信号をFramer17に出力する。
【0005】
Framer17は、CR部19からの内部クロックを基にして、SERDES16からの受信データ信号の誤りを訂正し、訂正した受信データ信号を外部の装置に出力する。また、Framer17は、SERDES16からの受信データ信号の誤りを訂正した回数を示すエラー訂正数を検出し、検出したエラー訂正数をVDC制御部18へ出力する。
【0006】
VDC制御部18は、Framer17により検出されたエラー訂正数が最小となるように、VDC12に設定された分散値を調整し、最適な分散値を設定する。図13は、分散値とエラー訂正数との関係を示す図である。図13では、横軸がVDC12に設定された分散値を示し、縦軸がFramer17により検出されたエラー訂正数を示す。同図に示すように、分散値が最適値からずれるほどエラー訂正数が増大し、エラー訂正数が分散トレランスに対応する閾値Tを超えると、通信障害が発生する。VDC制御部18は、エラー訂正数が最小値をとるように、VDC12の分散値を増加方向または減少方向に調整する。
【0007】
ところで、伝送される光信号の品質が良好であり、光信号に対する雑音の比(OSNR:Optical Signal-to-Noise Ratio)が良好である場合には、分散値とエラー訂正数との関係が変化する。図14は、OSNRが良好である場合の分散値とエラー訂正数との関係を示す図である。同図に示すように、OSNRが良好である場合、分散トレランス近傍において、分散値の変化に応じてエラー訂正数が増大する度合いが通常時よりも大きくなる。したがって、分散トレランス近傍では、VDC制御部18が、VDC12の分散値を僅かに調整するだけで、エラー訂正数が急増することがある。エラー訂正数が急増すると、CR部19がいわゆるアンロック状態となる。アンロック状態とは、CR部19の出力信号が入力信号の位相(又は周波数)と同期していない状態を指す。
【0008】
かかるアンロック状態が発生する理由について、図15及び図16を用いて説明する。図15は、分散値の調整前にCR部19へ入力される電気信号の一例を示す図である。図15の縦軸は、電気信号のパワーを示し、横軸は、電気信号の周波数を示す。図15に示すように、CR部19へ入力される電気信号は、所定の周波数のクロック成分を含んでいる。例えば、図15において、電気信号は、周波数が40GHzであるクロック成分を含んでいる。
【0009】
そして、分散トレランス近傍において、VDC制御部18は、VDC12の分散値を調整したものとする。すると、エラー訂正数が急増する。図16は、分散値の調整後にCR部19へ入力される電気信号の一例を示す図である。同図に示すように、分散値が調整されると、CR部19へ入力される電気信号に含まれるクロック成分は、瞬間的に減衰する。図16の例では、周波数が40GHzであるクロック成分が瞬間的に減衰する。かかるクロック成分の減衰により、CR部19内の電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)に対する入力信号が瞬間的に変動し、VCOが内部クロックを正常に生成できなくなる。このため、CR部19は、アンロック状態となる。
【0010】
ここで、アンロック状態となったCR部19は、SERDES16やFramer17等の他の装置に対して精度の良い内部クロックを供給できない。その結果、VDC12の分散値が分散トレランスに収まっており、エラー訂正数が閾値T以下であるにも関わらず、通信障害が発生する恐れがある。
【0011】
このため、最近では、分散値の調整時にアンロック状態を回避するための技術が種々提案されている。例えば、分散トレランス近傍において、エラー訂正数の閾値Tよりも小さい他の閾値Uを別途設定し、エラー訂正数が閾値Uを超えた場合に、分散値の調整を一旦停止する手法が知られている。また、分散値の1回の調整幅をより細かく設定する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−306371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記2つの閾値を用いて分散値の調整を行う従来技術では、2つの閾値間で設定を変更する処理や分散値の調整を停止する処理等が別途必要となるため、全体として分散値の調整処理が複雑化するという問題がある。また、分散値の調整幅を細かく設定する従来技術では、分散値の調整幅を細かくするほど分散値が最適値に到達するまでの時間が長期化し、その結果、分散値の調整処理が遅延するという問題がある。
【0014】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、分散値の調整を簡易かつ迅速に行うとともに、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを回避することができる光受信装置及びクロック生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願に開示する光受信装置は、一つの態様において、分散補償部が、設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する。位相差信号生成部が、前記分散補償部によって補償された光信号に含まれるクロックである外部クロックと、自装置内で用いるクロックである内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する前記分散補償部に設定された分散値を調整する。抑制部が、前記分散値調整部によって分散値が調整された場合に、前記位相差信号生成部によって生成された位相差信号に現れる変動を抑制する。クロック生成部が、前記抑制部によって抑制された位相差信号に基づいて、前記外部クロックの位相と同期した前記内部クロックを生成する。
【発明の効果】
【0016】
開示の光受信装置によれば、分散値の調整を簡易かつ迅速に行うとともに、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係る光受信装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施例2に係る光受信装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、実施例2におけるCR部の構成を示す図である。
【図4】図4は、CR制御部によるCR制御信号の出力タイミングの一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例2に係る光受信装置による分散値調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施例2におけるCR部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例3におけるCR部の構成を示す図である。
【図8】図8は、実施例3におけるCR部の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例4におけるCR部の構成を示す図である。
【図10】図10は、図9に示したPD部の詳細図である。
【図11】図11は、実施例4におけるCR部の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、波長分散を補償する技術を採用した従来の光受信装置を説明するための図である。
【図13】図13は、分散値とエラー訂正数との関係を示す図である。
【図14】図14は、OSNRが良好である場合の分散値とエラー訂正数との関係を示す図である。
【図15】図15は、分散値の調整前にCR部へ入力される電気信号の一例を示す図である。
【図16】図16は、分散値の調整後にCR部へ入力される電気信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願の開示する光受信装置及びクロック生成方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する光受信装置及びクロック生成方法が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
まず、実施例1に係る光受信装置の構成を説明する。図1は、実施例1に係る光受信装置の構成を示す図である。同図に示すように、実施例1に係る光受信装置は、分散補償部1と、位相差信号生成部2と、分散値調整部3と、抑制部4と、クロック生成部5とを有する。
【0020】
分散補償部1は、設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する。位相差信号生成部2は、分散補償部1によって補償された光信号に含まれるクロックである外部クロックと、自装置内で用いるクロックである内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する。
【0021】
分散値調整部3は、分散補償部1に設定された分散値を調整する。抑制部4は、分散値調整部3によって分散補償部1の分散値が調整された場合に、位相差信号生成部2によって生成された位相差信号に現れる変動を抑制する。
【0022】
クロック生成部5は、抑制部4によって抑制された位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する。なお、クロック生成部5は、生成した内部クロック信号を外部の装置へ出力するとともに、位相差信号生成部2へフィードバックする。
【0023】
上述してきたように、実施例1に係る光受信装置は、分散補償部1に設定された分散値を調整した場合に、外部クロックと内部クロックとの位相差信号に現れる変動を抑制し、抑制後の位相差を基に外部クロックに同期した内部クロックを生成する。これにより、実施例1に係る光受信装置は、分散補償部1に設定された分散値を調整した後に外部クロックが瞬間的に減衰した場合であっても、精度の良い内部クロックを生成することができる。その結果、実施例1に係る光受信装置は、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを回避することができる。
【0024】
また、実施例1に係る光受信装置は、分散値を調整する通常の処理中に位相差信号の変動を抑制し、抑制後の位相差信号を基に内部クロックを生成する。このため、実施例1に係る光受信装置は、従来技術のように、閾値の設定を変更する処理や分散値の調整を停止する処理といった余分な処理を行わず、また、分散値の調整幅を変更する必要もない。したがって、実施例1に係る光受信装置は、アンロック状態を回避しつつ、分散値の調整を簡易かつ迅速に行うことができる。
【実施例2】
【0025】
次に、上記実施例1において説明した光受信装置の具体例を実施例2として説明する。実施例2では、上記実施例1において説明した光受信装置を、伝送速度が40Gbpsの光信号を受信する光受信装置に適用した例について説明する。
【0026】
まず、実施例2に係る光受信装置の構成を説明する。図2は、実施例2に係る光受信装置100の構成を示す図である。同図に示すように、実施例2に係る光受信装置100は、光増幅器101と、VDC102と、遅延干渉計103と、受光素子104と、増幅器105と、SERDES106と、Framer107とを有する。また、光受信装置100は、制御部108と、CR部109とを有する。このうち、光増幅器101は、光伝送路から入力される光信号を増幅する。
【0027】
VDC102は、設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する。具体的には、VDC102は、VDC制御部108によって設定された分散値を用いて、光増幅器101によって増幅された光信号の波長分散を補償する。なお、VDC102は、実施例1における分散補償部1の一例である。
【0028】
遅延干渉計103は、例えば、マッハツェンダ型の遅延干渉計であり、VDC102によって補償された光信号を復調する。受光素子104は、遅延干渉計103によって復調された光信号を電気信号に変換する。増幅器105は、受光素子104によって変換された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号をCR部109及びSERDES106に出力する。SERDES106は、CR部109によって生成されたクロックを基に、増幅器105からの電気信号が「0」又は「1」のいずれのデータであるかを識別し、識別結果を示す受信データ信号をFramer107に出力する。
【0029】
Framer107は、CR部109によって生成されたクロックを基に、SERDES106からの受信データ信号の誤りを訂正し、訂正した受信データ信号を図示しない外部の装置に出力する。また、Framer107は、SERDES106からの受信データ信号の誤りを訂正した回数を示すエラー訂正数を検出し、検出したエラー訂正数を制御部108へ出力する。
【0030】
CR部109は、VDC102からの光信号に含まれるクロック(以下「外部クロック」という)と自身で生成したクロックとの位相差を制御部108の制御に従って抑制し、抑制後の位相差を基に外部クロックに同期したクロックを生成する。図3は、実施例2におけるCR部109の構成を示す図である。同図に示すように、CR部109は、抽出フィルタ部121と、PD(Phase Detector)部122と、ループフィルタ部123と、電圧保持部124と、状態検出部125と、VCO部126とを有する。抽出フィルタ部121は、増幅器105から入力される電気信号から外部クロックを抽出する。
【0031】
PD部122は、抽出フィルタ部121によって抽出された外部クロックと、VCO部126から出力されたクロック(以下「内部クロック」という)との位相差を算出することにより位相差信号を生成する。ループフィルタ部123は、例えば、ローパスフィルタであり、PD部122によって生成された位相差信号の高周波成分を所定の時定数を用いて除去する。
【0032】
電圧保持部124は、VDC102の分散値が調整された場合に、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号の電圧を保持し、電圧を保持した位相差信号をVCO部126に供給する。具体的には、電圧保持部124は、制御部108から後述するCR制御信号を受け取ると、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号の電圧をコンデンサ等の蓄電部に保持し、電圧を保持した位相差信号をVCO126部に供給する。一方、電圧保持部124は、制御部108からのCR制御信号の出力が停止されると、蓄電部への電圧の保持を解除し、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号をVCO部126に直接供給する。これにより、電圧保持部124は、VDC102の分散値の調整に伴って位相差信号に現れる過渡的な変動を抑制し、抑制後の位相差信号をVCO部126に供給することができる。
【0033】
状態検出部125は、ループフィルタ部123及び電圧保持部124を介してPD部122から入力される位相差信号の状態を検出し、その検出結果を所定の表示装置に表示させる。例えば、状態検出部125は、位相差信号の電圧値を検出し、検出した電圧値を所定の表示装置に表示させる。
【0034】
VCO部126は、ループフィルタ部123及び電圧保持部124を介してPD部122から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する。なお、PD部122、電圧保持部124及びVCO部126は、それぞれ実施例1における位相差信号生成部2、抑制部4、クロック生成部5の一例である。
【0035】
図2の説明に戻り、制御部108は、光受信装置100を全体制御する制御部であり、例えば、光受信装置100が行う分散値調整処理等の各種の処理を実行する。具体的には、制御部108は、VDC制御部111と、CR制御部112とを有する。
【0036】
VDC制御部111は、Framer107からエラー訂正数を基にVDC102に設定された分散値を調整し、調整後の最適な分散値をVDC102に再設定する。具体的には、VDC制御部111は、所定の開始条件を受付けた場合に、VDC102に設定された現状の分散値に所定の調整幅を加算又は減算することにより新たな分散値を算出する。ここで、所定の開始条件には、例えば、電源の投入、運用中の定期的な調整要求、Framer107からのエラー訂正数が所定値を超えた旨の通知等の種々の条件が含まれる。
【0037】
続いて、VDC制御部111は、VDC102に設定された分散値を調整する旨を示す通知である調整開始通知をCR制御部112へ出力する。続いて、VDC制御部111は、VDC102に設定された現状の分散値を算出後の分散値へ調整する。続いて、VDC制御部111は、Framer107からエラー訂正数を取得する。なお、VDC制御部111は、算出後の分散値とエラー訂正数とを対応づけて所定のメモリに記憶する。続いて、VDC制御部111は、VDC102の分散値の調整を終了した旨を示す通知である調整終了通知をCR制御部112へ出力する。続いて、VDC制御部111は、分散値の調整回数が規定回数に到達したか否かを判定し、分散値の調整回数が規定回数に到達していない場合には、分散値を再度算出し、VDC102の分散値を算出後の分散値へ再度調整する。一方、VDC制御部111は、分散値の調整回数が規定回数に到達した場合には、算出後の分散値のうちエラー訂正数が最小となる分散値を特定し、特定した分散値をVDC102に設定する。なお、VDC制御部111は、実施例1における分散値調整部3の一例である。
【0038】
CR制御部112は、VDC102の分散値の調整に伴ってCR部109の動作を制御するためのCR制御信号をCR部109へ出力する。具体的には、CR制御部112は、VDC制御部111から調整開始通知を受け取った場合には、CR制御信号をCR部109へ出力する。一方、CR制御部112は、VDC制御部111から調整終了通知を受け取った場合には、CR部109へのCR制御信号の出力を停止する。
【0039】
ここで、CR制御部112による処理をさらに詳細に説明する。図4は、CR制御部112によるCR制御信号の出力タイミングの一例を示す図である。図4の横軸は、時間を示す。同図に示すように、CR制御部112は、VDC制御部111から調整開始通知を受け取った時刻T1、T3、T5、T7及びT9に、CR部109に対するCR制御信号の出力を開始する。本実施例では、CR部109の電圧保持部124が、CR制御部112からのCR制御信号を受け取る。電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取ると、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号の電圧をコンデンサ等の蓄電部に保持し、電圧を保持した位相差信号をVCO部126に供給する。そして、VCO部126は、電圧保持部124により電圧が保持された位相差信号を基にして、内部クロックを生成する。
【0040】
一方、CR制御部112は、VDC制御部111から調整終了通知を受け取った時刻T2、T4、T6、T8及びT10に、CR部109に対するCR制御信号の出力を停止する。電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止されると、蓄電部への電圧の保持を解除し、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号をVCO部126に直接供給する。そして、VCO部126は、電圧保持部124から供給される位相差信号を基にして、内部クロックを生成する。これにより、VCO部126は、VDC102の分散値の調整に伴ってPD部122からの位相差信号が過渡的に変動した場合であっても、内部クロックを正常に生成することができる。
【0041】
次に、実施例2に係る光受信装置100による分散値調整処理の処理手順を説明する。図5は、実施例2に係る光受信装置100による分散値調整処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、光受信装置100では、VDC制御部111が、所定の開始条件を受付けるまで待機する(ステップS11否定)。なお、所定の開始条件には、電源の投入、運用中の定期的な調整要求、Framer107からのエラー訂正数が所定値を超えた旨の通知等の種々の条件が含まれる。所定の開始条件を受付けると(ステップS11肯定)、VDC制御部111は、VDC102に設定された現状の分散値に所定の調整幅を加算又は減算することにより新たな分散値を算出する(ステップS12)。
【0042】
続いて、VDC制御部111は、調整開始通知をCR制御部112へ出力する。調整開始通知を受け取ったCR制御部112は、CR制御信号をCR部109へ出力する(ステップS13)。続いて、VDC制御部112は、VDC102に設定された現状の分散値を算出後の分散値へ調整し(ステップS14)、Framer107からエラー訂正数を取得する(ステップS15)。
【0043】
続いて、VDC制御部111は、調整終了通知をCR制御部112へ出力する。調整終了通知を受け取ったCR制御部112は、CR部109へのCR制御信号の出力を停止する(ステップS16)。続いて、VDC制御部111は、分散値の調整回数が規定回数に到達したか否かを判定し(ステップS17)、分散値の調整回数が規定回数に到達していない場合には(ステップS17否定)、処理をステップS12に戻す。
【0044】
一方、VDC制御部111は、分散値の調整回数が規定回数に到達した場合には(ステップS17肯定)、ステップS12で算出した分散値のうち、ステップS15で取得したエラー訂正数が最小となる分散値を特定する(ステップS18)。続いて、VDC制御部111は、特定した分散値をVDC102に設定する(ステップS19)。
【0045】
次に、実施例2におけるCR部109の処理手順を説明する。図6は、実施例2におけるCR部109の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、CR部109の抽出フィルタ部121は、増幅器105から入力される電気信号から外部クロックを抽出する(ステップS21)。そして、PD部122は、抽出フィルタ部121によって抽出された外部クロックと、VCO部126から出力された内部クロックとから位相差信号を生成する(ステップS22)。
【0046】
そして、ループフィルタ部123は、PD部122によって生成された位相差信号の高周波成分を除去する(ステップS23)。そして、VCO部126は、ループフィルタ部123及び電圧保持部124を介してPD部122から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS24)。
【0047】
電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取った否かを判定する(ステップS25)。そして、電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取っていない場合には(ステップS25否定)、処理をステップS21へ戻し、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号をVCO部126へ直接供給する。
【0048】
一方、電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取った場合には(ステップS25肯定)、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号の電圧をコンデンサ等の蓄電部に保持する(ステップS26)。続いて、電圧保持部124は、電圧を保持した位相差信号をVCO部126へ供給する(ステップS27)。そして、VCO部126は、電圧保持部124により電圧が保持された位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS28)。
【0049】
続いて、電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止されたか否かを判定し(ステップS29)、CR制御信号の出力が停止されていない場合には(ステップS29否定)、ステップS26〜S29の処理を繰り返す。一方、電圧保持部124は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止された場合には(ステップS29肯定)、蓄電部への電圧の保持を解除する(ステップS30)。そして、電圧保持部124は、処理をステップS21へ戻し、ループフィルタ部123を介してPD部122から入力される位相差信号をVCO部126へ直接供給する。
【0050】
上述してきたように、実施例2に係る光受信装置100は、VDC102に設定された分散値を調整した場合に、外部クロックと内部クロックとの位相差信号に現れる変動を抑制し、抑制後の位相差信号を基に外部クロックに同期した内部クロックを生成する。これにより、光受信装置100は、VDC102に設定された分散値を調整した後に外部クロックが瞬間的に減衰した場合であっても、精度の良い内部クロックを生成することができる。その結果、光受信装置100は、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを回避することができる。
【0051】
また、実施例2に係る光受信装置100は、分散値を調整する通常の処理において、位相差信号の電圧を電圧保持部124により保持し、保持した位相差信号をVCO部126に供給することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する。そして、光受信装置100は、変動を抑制した位相差信号を基に外部クロックに同期した内部クロックを生成する。このため、光受信装置100は、従来技術のように、分散値の調整処理中に閾値の設定を変更する処理や分散値の調整を停止する処理といった余分な処理を行わず、また、分散値の調整幅を変更する必要もない。したがって、光受信装置100は、アンロック状態を回避しつつ、分散値の調整を簡易かつ迅速に行うことができる。
【実施例3】
【0052】
上記実施例2では、VDC102の分散値が調整される場合に、位相差信号の電圧を保持し、保持後の位相差信号をVCO126に供給することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する例を示した。しかし、位相差信号の高周波成分を除去するループフィルタ部の時定数を変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制するようにしてもよい。そこで、実施例3では、位相差信号の高周波成分を除去するループフィルタ部の時定数を変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する例について説明する。
【0053】
まず、実施例3に係る光受信装置200が有するCR部の構成について説明する。図7は、実施例3におけるCR部209の構成を示す図である。なお、以下では、図3に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。また、実施例3に係る光受信装置200の構成は、図2に示した構成と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、CR部209は、図3に示したCR部109が有するループフィルタ部123、電圧保持部124及びVCO部126の代わりに、ループフィルタ部223と、時定数変更部224と、VCO部226とを有する。
【0055】
ループフィルタ部223は、例えば、ローパスフィルタであり、PD部122によって生成された位相差信号の高周波成分を第1の時定数τ1又は第1の時定数τ1よりも大きい第2の時定数τ2を用いて除去する。第2の時定数τ2に対応する高周波成分の除去量は、第2の時定数τ1に対応する高周波成分の除去量よりも多い。
【0056】
時定数変更部224は、VDC102の分散値が調整された場合に、ループフィルタ部223が用いる時定数を変更する。具体的には、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取ると、ループフィルタ部223が用いる時定数を第1の時定数τ1から第1の時定数τ1よりも大きい第2の時定数τ2へ変更する。時定数が第2の時定数τ2へ変更されると、ループフィルタ部223は、第1の時定数τ1に対応する高周波成分よりも多くの高周波成分を位相差信号から除去する。一方、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止されると、ループフィルタ部223が用いる時定数を第2の時定数τ2から第1の時定数τ1に戻す。これにより、時定数変更部224は、VDC102の分散値の調整に伴って位相差信号に現れる過渡的な変動を抑制し、抑制後の位相差信号をVCO部226に供給することができる。
【0057】
VCO部226は、ループフィルタ部223を介してPD部122から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する。なお、時定数変更部224及びVCO226は、それぞれ実施例1における抑制部4、クロック生成部5の一例である。
【0058】
次に、実施例3におけるCR部209の処理手順を説明する。図8は、実施例3におけるCR部209の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、CR部209の抽出フィルタ部121は、増幅器105から入力される電気信号から外部クロックを抽出する(ステップS31)。そして、PD部122は、抽出フィルタ部121によって抽出された外部クロックと、VCO部226から出力された内部クロックとから位相差信号を生成する(ステップS32)。
【0059】
そして、ループフィルタ部223は、PD部122によって生成された位相差信号の高周波成分を第1の時定数τ1を用いて除去する(ステップS33)。そして、VCO部226は、ループフィルタ部223を介してPD部122から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS34)。
【0060】
時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取ったか否かを判定する(ステップS35)。そして、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取っていない場合には(ステップS35否定)、処理をステップS31へ戻し、ループフィルタ部223が用いる時定数を第1の時定数τ1に維持する。
【0061】
一方、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取った場合には(ステップS35肯定)、ループフィルタ部223が用いる第1の時定数τ1を第1の時定数τ1よりも大きい第2の時定数τ2へ変更する(ステップS36)。時定数が第2の時定数τ2へ変更されると、ループフィルタ部223は、第1の時定数τ1に対応する高周波成分よりも多くの高周波成分を位相差信号から除去し、除去後の位相差信号をVCO部226に供給する(ステップS37)。そして、VCO部226は、ループフィルタ部223によって第2の時定数で高周波成分が除去された位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS38)。
【0062】
続いて、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止されたか否かを判定し(ステップS39)、CR制御信号の出力が停止されていない場合には(ステップS39否定)、ステップS36〜S39の処理を繰り返す。一方、時定数変更部224は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止された場合には(ステップS39肯定)、ループフィルタ部223が用いる時定数を第2の時定数τ2から第1の時定数τ1に戻す(ステップS40)。そして、時定数変更部224は、処理をステップS31へ戻し、ループフィルタ部223が用いる時定数を第1の時定数τ1に維持する。
【0063】
上述してきたように、実施例3に係る光受信装置200は、VDC102の分散値が調整される場合に、ループフィルタ部223の時定数を現状の時定数よりも大きい時定数に変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する。このため、光受信装置200は、既存のループフィルタ部の時定数を変更するという簡易な処理を行うだけで位相差信号に現れる変動を抑制することができる。その結果、光受信装置200は、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを効率的に回避することができる。
【実施例4】
【0064】
上記実施例2では、VDC102の分散値が調整される場合に、位相差信号の電圧を保持し、保持後の位相差信号をVCO126に供給することにより、分散値の調整に伴って位相差信号に現れる変動を抑制する例を示した。しかし、位相差信号の増幅率を変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制するようにしてもよい。そこで、実施例3では、位相差信号の増幅率を変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する例について説明する。
【0065】
まず、実施例4に係る光受信装置300が有するCR部の構成について説明する。図9は、実施例4におけるCR部309の構成を示す図である。なお、以下では、図3に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。また、実施例4に係る光受信装置300の構成は、図2に示した構成と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、CR部309は、図3に示したCR部109が有するPD部122、電圧保持部124及びVCO部126の代わりに、PD部322と、電流変更部324と、VCO部326とを有する。
【0067】
PD部322は、抽出フィルタ部121によって抽出された外部クロックと、VCO部326から出力された内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する。また、PD部322は、生成した位相差信号の増幅率を変更する。
【0068】
ここで、PD部322の具体的な構成を説明する。図10は、図9に示したPD部322の詳細図である。同図に示すように、PD部322は、PD本体部331と、電流源332とを有する。
【0069】
PD本体部331は、抽出フィルタ部121から出力された外部クロックのエッジと、VCO部326から出力された内部クロックのエッジとを比較することにより、外部クロックと内部クロックとの位相差を算出する。また、PD本体部331は、算出された位相差に応じて、内部クロックの位相を進ませるためのup信号又は内部クロックの位相を遅らせるためのdown信号を電流源332へ出力する。
【0070】
電流源332は、PD部322から出力される位相差信号の増幅率を決定するための電流を発生する。電流源332は、PD本体部331から入力されるup信号又はdown信号を電流により増幅し、増幅後のup信号又はdown信号を位相差信号としてループフィルタ部123へ出力する。また、電流源332は、電流変更部324から入力される電流変更信号に応じて発生する電流を変更する。
【0071】
図9の説明に戻り、電流変更部324は、VDC102の分散値が調整された場合に、PD部322の電流源332から出力される電流を変更する。具体的には、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取ると、現状の電流I1よりも小さい電流I2に変更するように指示する電流変更信号をPD部322の電流源332へ出力する。電流変更信号を受け取ったPD部322の電流源332は、電流I1を電流I2へ変更する。電流I1が電流I2へ変更されると、PD部322は、電流I1に対応する増幅率よりも小さい増幅率で位相差信号を増幅し、増幅後の位相差信号をループフィルタ部123へ出力することとなる。一方、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号が停止されると、電流I2を電流I1へ戻すように指示する電流変更信号をPD部322の電流源332へ出力する。電流変更信号を受け取ったPD部322の電流源332は、電流I2を電流I1へ戻す。電流I2が電流I1へ変更されると、PD部322は、電流I2に対応する増幅率よりも大きい増幅率で位相差信号を増幅し、増幅後の位相差信号をループフィルタ部123へ出力する。これにより、電流変更部324は、VDC102の分散値の調整に伴って位相差信号に現れる過渡的な変動を抑制し、抑制後の位相差信号をループフィルタ部123を介してVCO部326に供給することができる。
【0072】
VCO部326は、ループフィルタ部123を介してPD部322から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する。なお、PD部322、電流変更部324及びVCO部326は、それぞれ実施例1における位相差信号生成部2、抑制部4、クロック生成部5の一例である。
【0073】
次に、実施例4におけるCR部309の処理手順を説明する。図11は、実施例4におけるCR部309の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、CR部309の抽出フィルタ部121は、増幅器105から入力される電気信号から外部クロックを抽出する(ステップS41)。そして、PD部322は、抽出フィルタ部121によって抽出された外部クロックと、VCO部326から出力された内部クロックとから位相差信号を生成する(ステップS42)。このとき、PD部322の電流源332は、PD本体部331から入力されるup信号又はdown信号を電流I1により増幅し、増幅後のup信号又はdown信号を位相差信号としてループフィルタ部123へ出力する。
【0074】
そして、ループフィルタ部123は、PD部322によって生成された位相差信号の高周波成分を除去する(ステップS43)。そして、VCO部326は、ループフィルタ部123を介してPD部322から入力される位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS44)。
【0075】
電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取ったか否かを判定する(ステップS45)。そして、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取っていない場合には(ステップS45否定)、処理をステップS41へ戻し、PD部322の電流源332から出力される電流を電流I1に維持する。
【0076】
一方、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号を受け取った場合には(ステップS45肯定)、現状の電流I1よりも小さい電流I2に変更するように指示する電流変更信号をPD部322の電流源332へ出力する。電流変更信号を受け取ったPD部322の電流源332は、電流I1を電流I2へ変更する(ステップS46)。電流I1が電流I2へ変更されると、PD部322は、電流I1に対応する増幅率よりも小さい増幅率で位相差信号を増幅し、増幅後の位相差信号をループフィルタ部123を介してVCO部326に供給する(ステップS47)。そして、VCO部326は、電流I1に対応する増幅率よりも小さい増幅率で増幅された位相差信号に基づいて、外部クロックの位相と同期した内部クロックを生成する(ステップS48)。
【0077】
続いて、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止されたか否かを判定し(ステップS49)、CR制御信号の出力が停止されていない場合には(ステップS49否定)、ステップS46〜S49の処理を繰り返す。一方、電流変更部324は、CR制御部112からのCR制御信号の出力が停止された場合には(ステップS49肯定)、電流I2を電流I1へ戻すように指示する電流変更信号をPD部322の電流源332へ出力する。電流変更信号を受け取ったPD部322の電流源332は、電流I2を電流I1へ戻す(ステップS50)。そして、電流変更部324は、処理をステップS41へ戻し、PD部322の電流源332から出力される電流を電流I1に維持する。
【0078】
上述してきたように、実施例4に係る光受信装置300は、VDC102の分散値が調整される場合に、位相差信号の増幅率を決定するための電流を現状の電流よりも低い電流に変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する。このため、光受信装置300は、既存のPD部の電流源から出力される電流を変更するという簡易な処理を行うだけで位相差信号に現れる変動を抑制することができる。その結果、光受信装置300は、分散値の調整時にアンロック状態が発生することを効率的に回避することができる。
【実施例5】
【0079】
本願の開示する光受信装置等は、上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。そこで、実施例5では、本願の開示する光受信装置等の他の実施例について説明する。
【0080】
例えば、上記実施例3では、ループフィルタ部223が二つの時定数を用い、時定数を第1の時定数τ1から第1の時定数τ1よりも大きい第2の時定数τ2に変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制する例を示した。しかし、ループフィルタ部が三つ以上の時定数を用い、時定数を段階的に変更することにより、位相差信号に現れる変動を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 分散補償部
2 位相差信号生成部
3 分散値調整部
4 抑制部
5 クロック生成部
100、200、300 光受信装置
101 光増幅器
102 VDC
103 遅延干渉計
104 受光素子
105 増幅器
106 SERDES
107 Framer
108 制御部
109、209、309 CR部
111 VDC制御部
112 CR制御部
121 抽出フィルタ部
122、322 PD部
123、223 ループフィルタ部
124 電圧保持部
125 状態検出部
126、226、326 VCO部
224 時定数変更部
324 電流変更部
331 PD本体部
332 電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する分散補償部と、
前記分散補償部によって補償された光信号に含まれるクロックである外部クロックと、自装置内で用いるクロックである内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する位相差信号生成部と、
前記分散補償部に設定する分散値を調整する分散値調整部と、
前記分散値調整部によって分散値が調整された場合に、前記位相差信号生成部によって生成された位相差信号に現れる変動を抑制する抑制部と、
前記抑制部によって抑制された位相差信号に基づいて、前記外部クロックの位相と同期した前記内部クロックを生成するクロック生成部と
を備えたことを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記抑制部は、前記位相差信号生成部によって生成された位相差信号の電圧を保持し、電圧を保持した前記位相差信号を前記クロック生成部に供給することにより、前記位相差信号に現れる変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記位相差信号生成部によって生成された位相差信号の高周波成分を第1の時定数又は当該第1の時定数よりも大きい第2の時定数を用いて除去するフィルタ部をさらに備え、
前記抑制部は、前記フィルタ部によって用いられる前記第1の時定数を前記第2の時定数へ変更することにより、前記位相差信号に現れる変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記位相差信号生成部は、前記位相差信号の増幅率を決定するための電流を発生する電流源を含み、
前記抑制部は、前記電流源から出力される第1の電流を当該第1の電流よりも小さい第2の電流に変更することにより、前記位相差信号に現れる変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項5】
設定された分散値を用いて光信号の波長分散を補償する分散補償部を備えた光受信装置が行うクロック生成方法であって、
前記光受信装置が、
前記分散補償部によって補償された光信号に含まれる外部クロックと、自装置内で用いるクロックである内部クロックとの位相差を算出することにより位相差信号を生成する位相差信号生成ステップと、
前記分散補償部に設定された分散値を調整する分散値調整ステップと、
前記分散値変更ステップによって分散値が調整された場合に、前記位相差信号生成ステップによって生成された位相差信号に現れる変動を抑制する抑制ステップと、
前記抑制ステップによって抑制された位相差信号に基づいて、前記外部クロックの位相と同期した前記内部クロックを生成するクロック生成ステップと
を含んだことを特徴とするクロック生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−182190(P2011−182190A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44376(P2010−44376)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】