説明

光学フィルタ及び顕微鏡装置

【課題】遮蔽部分の形状を変更することが可能な空間フィルタ、又は阻止波長を変更することが可能な波長フィルタとして利用できる光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルタ60を、その入射光LIの光軸に対して反射面を45°傾けて配向され入射光を反射面で反射する第1の光L1及び反射面を透過する第2の光L2に分光する半透鏡61と、第1の光L1を反対向きに反射して半透鏡61に再び入射させる第1の反射鏡62aと、第2の光L2を反対向きに反射して半透鏡61に再び入射させる第2の反射鏡62bと、により構成し、第1及び第2の反射鏡61、62の少なくとも一方をその反射面の法線方向の位置をそれぞれ制御可能な複数のミラー素子で構成されたマイクロミラーアレイとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルタに関する。より詳しくは、所定の波長成分を阻止する波長フィルタ、又は透過光を部分的に遮光する空間フィルタとして使用可能な光学フィルタ、及びこれを用いる顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネルなどの半導体デバイス等の製造は多数の工数から成り立っており、最終及び途中の工程での欠陥の発生具合を検査して製造工程にフィードバックすることが歩留まり向上の上からも重要である。製造工程の途中で欠陥を検出するために、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを光学顕微鏡を用いて観察し、試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査などの外観検査が広く行われている。
以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用外観検査装置に用いられる顕微鏡装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスク用基板や、液晶デバイス用基板、液晶表示パネル用基板などを検査する外観検査装置にも広く適用可能である。
【0003】
図1は、下記特許文献1にて開示される従来の半導体ウエハ用外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、半導体ウエハ用外観検査装置1は、検査対象である半導体ウエハ2(以下「ウエハ」と示す)を保持するステージ11と、被検査面であるウエハ2の表面の光学像を投影する対物レンズ12と、投影されたウエハ2の表面の光学像を電気的な画像信号に変換する撮像装置(イメージセンサ)50と、対物レンズ12により投影されたウエハ2の像をさらにイメージセンサ50上に結像するリレーレンズ21、22と、イメージセンサ50から出力されたアナログ画像信号を処理して多値のデジタル画像データに変換する画像信号処理回路51と、デジタル画像データを処理してパターンの同一部分を比較し、欠陥を検出するデジタル画像データ処理回路53と、データ処理のために画像データを記憶する画像データメモリ52とを有する。
【0004】
また、ウエハ2の表面を照明する照明光学系は、光源31と、照明用レンズ32、33と、対物レンズ12の投影光路中に設けられた半透鏡(ビームスプリッタ)40とを有する。半透鏡40は、照明用レンズ32により集光された照明光を対物レンズ12に向けて反射させるとともに、対物レンズ12が撮像装置50の受光面上に結像するウエハ2の表面の光学像の投影光を透過する。
照明用レンズ32及び33は、コンデンサレンズとしての対物レンズ12の瞳面3の位置に光源31の像を結ぶ。このような照明はケラー照明と呼ばれ対物レンズ12を通過した照明光は一様なムラのない照明光となる。
【0005】
撮像装置50としては、2次元CCD素子を使用したTVカメラなどを使用することも可能であるが、高精細の画像信号を得るためには1次元CCD等のラインセンサを使用することも多い。この場合は、ステージ11をウエハ2に対して相対移動させ(走査して)、ステージ11を駆動する駆動パルス信号に同期して、画像信号処理回路51が撮像装置50の信号を取り込んで画像を取得することが多い。
【0006】
次に、半導体ウエハ用外観検査装置の照明光学系について説明する。半導体ウエハ用外観検査装置では金属顕微鏡の照明光学系が使用される。明視野照明系では、対物レンズの光軸を含む垂直方向からウエハ2の表面を照明しその正反射光の像を捕らえる。
一方で、暗視野照明系は、ウエハ2を斜め方向から照明して垂直方向から観察するか、あるいはウエハ2を垂直方向から照明し斜め方向から観察することにより、ウエハ2の表面で正反射された照明光を捉えないでその乱反射光を捉える。このためウエハ2上に存在する欠陥(短絡)部分から生じる回折光が強調される利点があり、近年のウエハ上パターンの微細化により暗視野照明下で検査することが必要な場合が急速に増加している。
【0007】
このような暗視野照明系を実現するために、照明光学系や結像光学系に空間フィルタを設けた顕微鏡装置が用いられている。例えば下記特許文献2には、落射照明光学系を備えた顕微鏡装置において対物レンズ12の瞳面3の照明光学系側の共役面4に光束の中心部分を遮蔽する輪帯フィルタを設けることにより、対物レンズ12の瞳面3に中空のドーナツ上の照明像を結像させ、対物レンズ12の周辺部からウエハ2を斜めに照明する照明光を実現している。
【0008】
また半導体ウエハ上のメモリセル領域のように周期性を有する反復パターンが被検査面に形成されている場合には、被検査面に対する対物レンズ12のフーリエ変換面3やその共役面5には被検査面の像の空間周波数スペクトル像が現れる。このようなフーリエ変換面3やその共役面5に空間フィルタを設けることによって、被検査面の反復パターンに起因する空間周波数スペクトル像に現れるスポット像をマスクすると、撮像装置50の受光面上に結像する観察画像における被検査面の反復パターン像の相対強度を弱まり、欠陥像の相対強度を高めることが可能となる。例えば下記特許文献1及び4には、対物レンズ12のフーリエ変換面である瞳面3の共役面5に空間フィルタを設ける外観検査装置が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平2006−23221号公報
【特許文献2】特開平2004−101406号公報
【特許文献3】特開平2006−113437号公報
【特許文献4】米国特許第6,686,602号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のウエハ2などの被検査面上には、様々な種類のパターンが様々な材料で形成されており、また観察に使用する照明光も材料に応じて複数種の波長の照明光が使用されている。上述の空間フィルタもまたこれら検査内容に応じて最適なものを選択する必要があり、1種類のフィルタだけで全ての試料に対応することは不可能である。このため従来は、重要な製造工程に伴い行われる検査内容に最も適したフィルタを顕微鏡装置に装着し、その他の工程に伴い行われる検査の際にはフィルタによる感度向上を見送る場合もあった。
また場合によっては試料に応じてフィルタを交換するが、この場合は交換作業とその後の装置調整が必要になるため作業が煩雑となっていた。
【0011】
また、物体の光学反射率や透過性、表面における散乱状態は、その物体の材質と入射光の波長帯とに依存する。例えば、半導体回路の配線部分に使用される銅は可視光域では反射率が高い性質を示すが、350nm付近の波長帯で反射率が程度で反射率が低下するという性質を有する。したがって固有の材料で形成されたパターンが形成された被検査面上の欠陥を検出する場合には、その材料で強く反射する波長帯の成分を照明光から除去し、欠陥で散乱する回折光を強調することが好適である。
【0012】
上記の解決課題に鑑み、本発明は、遮蔽部分の形状を変更することが可能な空間フィルタとして利用できる光学フィルタを提供することを目的とする。また本発明は、阻止波長を変更することが可能な波長フィルタとして利用できる光学フィルタを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、光学フィルタを、その入射光の光軸に対して反射面を45°傾けて配向され入射光を反射面で反射する第1の光及び反射面を透過する第2の光に分光する半透鏡と、第1の光を反対向きに反射して半透鏡に再び入射させる第1の反射鏡と、第2の光を反対向きに反射して半透鏡に再び入射させる第2の反射鏡と、により構成し、第1及び第2の反射鏡の少なくとも一方をその反射面の法線方向の位置をそれぞれ制御可能な複数のミラー素子で構成されたマイクロミラーアレイとした。
【0014】
光学フィルタを上記の通り構成することにより、図2を参照して後述するように、第1の反射鏡で反射した第1の光が半透鏡の反射面を透過して半透鏡を出射する第1の出射光と、第2の反射鏡で反射した第2の光が半透鏡の反射面で反射する第2の出射光とが、半透鏡を同じ方向へ出射する出射光となって合成される。したがって第1及び/又は第2の反射鏡として設けられたマイクロミラーアレイの反射面の法線方向におけるミラー素子の位置を変えることによって、これら合成される第1の出射光と第2の出射光との間の光路差を変更することができる。このとき、ある波長λに対して、第1の出射光と第2の出射光との間の光路差ΔLが、次式、
【0015】
ΔL=(n+1/2)×λ (1)
【0016】
を満たすように、上記マイクロミラーアレイのミラー素子の位置を調整することにより、第1の出射光及び第2の出射光に含まれる波長をλとする波長成分同士が打ち消し合うために、本光学フィルタは、阻止波長を変更することが可能な波長フィルタとして利用することが可能である。
【0017】
また、単一波長の入射光に対して、マイクロミラーアレイの複数のミラー素子のうちの一部分だけを、第1の出射光及び第2の出射光が打ち消し合うような位置に調整することによって、本光学フィルタを、遮蔽部分の形状を変更することが可能な空間フィルタとして利用することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、阻止波長を変更することが可能な波長フィルタが実現される。また遮蔽部分の形状を変更することが可能な空間フィルタが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図2は、本発明の実施例による光学フィルタの概略構成図である。
光学フィルタ60は、その入射光LIの光軸に対して反射面を45°傾けて配向される半透鏡(ビームスプリッタ)61と、この半透鏡61によって入射光LIを分光した第1の光L1及び第2の光L2を反対向きにそれぞれ反射して半透鏡61に入射させる第1の反射鏡62a及び第2の反射鏡62bと、を備えて構成される。
図2の構成例では、半透鏡61によって分光された入射光LIの2つの成分のうち、半透鏡61で反射した成分を第1の光L1とし、半透鏡61を透過した成分を第2の光L2としている。
【0020】
半透鏡61から出射した第1の光L1は、第1の反射鏡62aにて反対向きに反射することにより再び半透鏡61に入射する。そして半透鏡61の反射面で反射する成分と反射面を透過する成分とに分光される。半透鏡61の反射面で反射する成分は入射光LIが入射してきた方向に進行する光となり、反射面を透過する成分は光学フィルタ60から出射する第1の出射光LO1となる。
一方で、半透鏡61から出射した第2の光L2は、第2の反射鏡62bにて反対向きに反射することにより再び半透鏡61に入射する。そして半透鏡61の反射面で反射する成分と反射面を透過する成分とに分光される。半透鏡61の反射面を透過する成分は入射光LIが入射してきた方向に進行する光となり、反射面で反射する成分は光学フィルタ60から出射する第2の出射光となり、上述の第1の光L1に合成される。
【0021】
ここで、第1の反射鏡62a及び第2の反射鏡62bの一方又は両方には、その反射面が微小なミラー素子の配列により構成されるマイクロミラーアレイデバイスが用いられている。ここで用いられるマイクロミラーアレイデバイスは、このデバイスの反射面である2次元平面上に多数のミラー素子が配列され、かつ各ミラー素子の反射面の方向がマイクロミラーアレイデバイス自体の反射面と同じ方向に配向され、さらに各ミラー素子の位置が、反射面の法線方向について精密に制御することができるデバイスである。このようなミラー素子の駆動機構は、例えば圧電材料を用いた圧電アクチュエータにより実現可能である。
【0022】
図3の(A)及び図3の(B)に圧電アクチュエータを駆動機構とする本マイクロミラーデバイスの構成例を示す。図3の(A)は、多数のミラー素子から成るマイクロミラーデバイス70のうち2×2=4個のミラー素子71部分だけを示している。図3の(B)は、図3の(A)に示したマイクロミラーデバイス70のうち、表面に設けられたミラー素子71を取り除いて、ミラー素子71を駆動する圧電アクチュエータアレイを露呈させた状態を示す。
【0023】
図3の(A)に示すように、各ミラー素子71はそれぞれを支える圧電アクチュエータ73の上面に設けられ、圧電アクチュエータ73はセラミック基板72の上に配列され固定されている。各圧電アクチュエータ73は、圧電体73aと、これを横方向から挟む一対の電極73b及び73cで構成される。
ここで圧電体73aは圧電横効果による変位を生じる素子であり、その分極方向Pが、電極対73b及び73cに電圧が印加されたときに圧電体73a内に生じる電界Eと同じ方向に向けられている。
【0024】
電極対73b及び73cに電圧を印加することにより、圧電体73aにその分極方向Pと同じ方向に電界Eを加えると、圧電体73aはそれらと垂直方向である図示矢印S方向に伸縮変位を生じる。圧電体73aの下端はセラミック基板72に固定されているので、この伸縮変位は、各ミラー素子71を反射面の法線方向に駆動する駆動力を生じさせる。
【0025】
図2に戻り、第1の反射鏡62a及び第2の反射鏡62bの一方又は両方に、上記のマイクロミラーアレイデバイス70を用いて、反射面をその法線方向について移動させることにより、半透鏡61で分光され第1の反射鏡62aにて反射して光学フィルタ60から出射する第1の出射光LO1と、半透鏡61で分光され第2の反射鏡62bにて反射して光学フィルタ60から出射する第2の出射光LO2との間の光路差ΔLを調整することが可能である。
【0026】
そして第1の出射光LO1と第2の出射光LO2との間の光路差ΔLが、与えられた波長λについて上式(1)を満たすように、上記マイクロミラーアレイのミラー素子の位置を調整することにより、光学フィルタ60への入射光LIのうち波長λの波長成分を阻止する。
例えば、マイクロミラーアレイデバイスの圧電体73aに駆動電圧を印加しない状態において、第1の反射鏡62a及び第2の反射鏡62bの各々の反射面を、半透鏡61の反射面に対して対称な位置に配置し、出射光LO1と第2の出射光LO2との間に光路差がない状態(ΔL=0)にしておき、波長λの波長成分を阻止するときだけミラー素子71を変位させることにより上式(1)を満たす光路差ΔLを与えてよい。
【0027】
図4は、本発明による光学フィルタを備える半導体ウエハ用外観検査装置の第1実施例の概略構成図である。図4に示す半導体ウエハ外観検査装置1は、図1に示す半導体ウエハ用外観検査装置に類似する構成を有しており、同様の構成要素には同じ参照番号を付すこととし同様の機能については説明を省略する。
本半導体ウエハ外観検査装置1は、照明光学系として、光源31と、光源31からの光を平行光とするコリメートレンズ34と、第1の光学フィルタ81を備える。コリメートレンズ34により平行光にされた照明光は、第1の光学フィルタ81を通過した後に、半透鏡40で反射して対物レンズ12に入射しウエハ2の表面を照明する。
【0028】
第1の光学フィルタ81は、図2を参照して説明した本発明による光学フィルタと同じ構成を有している。すなわち、第1の光学フィルタ81は、入射する照明光の光軸に対して反射面を45°傾けて配向される半透鏡81aと、この半透鏡81aによって照明光を分光した第1の照明光及び第2の照明光を反対向きにそれぞれ反射して半透鏡81aに入射させる第1の反射鏡81b及び第2の反射鏡81cと、を備えて構成され、第1の反射鏡81b及び第2の反射鏡81cの一方又は両方には、図3の(A)及び図3の(B)を参照して説明したマイクロミラーアレイデバイスが用いられている。
以下の第1の光学フィルタ81の説明において、半透鏡81aで分光され第1の反射鏡81bにて反射して第1の光学フィルタ81から出射する出射光を「第1の出射光」と示し、半透鏡81aで分光され第2の反射鏡81cにて反射して光学フィルタ81から出射する出射光を「第2の出射光」と示す。
【0029】
ここで、光源31として多数の波長域の波長成分を含む光源(例えば白色光源)が用いられる場合に、本半導体ウエハ外観検査装置1は、所定の波長の波長成分を照明光から除く波長フィルタとして使用する。
例えば、ウエハ2の被検査面に所定の材料でパターンが形成され、波長λの照明光がこの所定材料で強く反射し、欠陥で散乱する回折光の相対強度が低下する場合には、照明光に含まれる波長λの成分を阻止するよう第1の光学フィルタ81がマイクロミラーアレイデバイスの反射面の位置を制御する。
具体的には、例えば所定の材料に応じて定めた波長λに対して上記第1の出射光と第2の出射光との光路差ΔLが上式(1)を満足するように、第1の光学フィルタ81に設けられたマイクロミラーアレイデバイスの反射面の位置決めする。
【0030】
また、光源31として単一の波長域λの波長成分を含む光源(例えば発光ダイオードやレーザーダイオード)が用いられる場合には、本半導体ウエハ外観検査装置1は、第1の光学フィルタ81をコリメートレンズ34により平行光束にされた照明光の一部を遮蔽する空間フィルタとして使用する。
図5を参照して、第1の光学フィルタ81を空間フィルタとして使用する場合における、第1の光学フィルタ81に設けられたマイクロミラーアレイデバイスの駆動方法を説明する。図5は、第1の反射鏡81b及び/又は第2の反射鏡81cとして第1の光学フィルタ81に設けられたマイクロミラーアレイデバイスを示しており、図のマス目の各々はマイクロミラーアレイデバイスの表面に設けられた個々の微小ミラー素子を表している。また、図示の点線90で囲まれた領域は、マイクロミラーアレイデバイスの反射面のうち第1の光学フィルタ81に入射した平行光束が照射される領域を示している。
【0031】
例えば、対物レンズ12の瞳面3に中空のドーナツ上の照明像を生じさせ、対物レンズ12の周辺部からウエハ2を斜めに照明して暗視野観察像を得る場合には、マイクロミラーアレイデバイスの反射面に設けられた全てのミラー素子のうち、平行光束の中央部分が照射されるミラー素子(図5において梨地でハッチングしたミラー素子)の位置だけを、波長λに対して上記第1の出射光と第2の出射光との光路差ΔLが上式(1)を満足するように位置決めする。
【0032】
そしてそれ以外のミラー素子(図5において白地のままにしたミラー素子)の位置を、第1の出射光と第2の出射光との光路差がなくなるように位置決めする。
このようにマイクロミラーアレイデバイスのミラー素子の反射面を位置決めすることにより、第1の光学フィルタ81は入射する平行光束の照明光の中央部分だけを遮光し、対物レンズ12の瞳面3に中空のドーナツ上の照明像を生じる。
【0033】
図4に戻り、本半導体ウエハ外観検査装置1は、結像光学系に設けられたリレーレンズ21と22との間に、第2の光学フィルタ82を備える。
第2の光学フィルタ82は、図2を参照して説明した本発明による光学フィルタと同じ構成を有している。すなわち、第2の光学フィルタ82は、リレーレンズ21を通過した対物レンズ12からの投影光(入射光)の光軸に対して反射面を45°傾けて配向される半透鏡82aと、この半透鏡82aによって照明光を分光した第1の投影光及び第2の投影光を反対向きにそれぞれ反射して半透鏡82aに入射させる第3の反射鏡82b及び第4の反射鏡82cと、を備えて構成され、第3の反射鏡82b及び第4の反射鏡82cの一方又は両方には、図3の(A)及び図3の(B)を参照して説明したマイクロミラーアレイデバイスが用いられている。
以下の第2の光学フィルタ82の説明において、半透鏡82aで分光され第3の反射鏡82bにて反射して第2の光学フィルタ82から出射する出射光を「第3の出射光」と示し、半透鏡82aで分光され第4の反射鏡82cにて反射して光学フィルタ82から出射する出射光を「第4の出射光」と示す。
【0034】
また、第2の光学フィルタ82の位置は、第4の反射鏡82cの反射面5が、ウエハ2の被検査面に対する対物レンズ12のフーリエ変換面(すなわち対物レンズ12の瞳面3)の共役面となるように位置付けられており、また第3の反射鏡82bは、その反射面5’が第4の反射鏡82cの反射面5に対して、半透鏡82aの反射面について対称となる位置に設けられている。
したがって、第3の反射鏡82b及び第4の反射鏡82cの各々の反射面には、該被検査面のパターンの空間周波数スペクトル像(フーリエ変換像)が現れる。
【0035】
例えば、被検査面に現れるパターンが図6の(A)に示すような図のY方向に周期性を有する反復パターンである場合には、この反復パターンに対応して、図6の(B)に示すような図のY方向に連続するスポット像の列からなる空間周波数スペクトル像が、第3の反射鏡82b及び第4の反射鏡82cの各々の反射面に生じる。
そこで、第3の反射鏡82b及び/又は第4の反射鏡82cとして設けられたマイクロミラーアレイデバイスの各ミラー素子の反射面の位置を制御することにより、空間周波数スペクトル像に現れるスポット像の部分をマスクし、撮像装置50の受光面上に結像する観察画像における被検査面の反復パターン像の相対強度を弱めて、欠陥像の相対強度を高める。
【0036】
図6の(C)を参照して、図6の(B)に示す空間周波数スペクトル像に現れるスポット像の部分をマスクする空間フィルタとして第2の光学フィルタ82を使用する場合における、第2の光学フィルタ82に設けられたマイクロミラーアレイデバイスの駆動方法を説明する。図6の(C)は、第3の反射鏡82b及び/又は第4の反射鏡82cとして第2の光学フィルタ82に設けられたマイクロミラーアレイデバイスを示している。
【0037】
マイクロミラーアレイデバイスの反射面に配置された全てのミラー素子のうち、空間周波数スペクトル像のスポット像が生じるミラー素子(図6の(C)において梨地でハッチングしたミラー素子)の位置だけを、照明光の波長λに対して上記第3の出射光と第4の出射光との光路差ΔLが上式(1)を満足するように位置決めする。
そしてそれ以外のミラー素子(図6の(C)において白地のままにしたミラー素子)の位置を、第3の出射光と第4の出射光との光路差がなくなるように反射面の位置決めする。
【0038】
このようにマイクロミラーアレイデバイスのミラー素子の反射面を位置決めすることにより、第2の光学フィルタ82に入射した投影光のうち、被検査面に現れる反復パターンに起因して生じる周波数成分のみがマスクされ、撮像装置50の受光面上に結像する観察画像における欠陥像の相対強度を高められる。
【0039】
図7は、本発明による光学フィルタを備える半導体ウエハ用外観検査装置の第2実施例の概略構成図である。図7に示す構成例では、照明光学系としてケーラー照明を使用し、照明用レンズ32と33との間に、図2を参照して説明した本発明による光学フィルタと同じ構成を有する第1の光学フィルタ81を備える。
そして、第1の光学フィルタ81の位置は、第1の反射鏡81bの反射面4が、対物レンズ12の瞳面3の共役面となるように位置付けられており、また第2の反射鏡81cは、その反射面4’が第1の反射鏡81bの反射面4に対して、半透鏡81aの反射面について対称となる位置に設けられている。
【0040】
したがって、第1の反射鏡81b及び/又は第2の反射鏡81cとして第1の光学フィルタ81に設けられたマイクロミラーアレイデバイスを、図5を参照して上述の説明と同様に制御すると、第1の光学フィルタ81は入射する平行光束の照明光の中央部分だけを遮光し、対物レンズ12の瞳面3に中空のドーナツ上の照明像を生じ、対物レンズ12の周辺部からウエハ2を斜めに照明して暗視野観察像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、通過光の所定の波長成分をカットする波長カットフィルタ、又は透過光を部分的に遮光する空間フィルタとして使用可能な光学フィルタ、及びこれを用いる顕微鏡装置に利用可能であり、特に半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの表面の撮像画像に基づき、これらの表面に形成されたパターンの欠陥を検出する外観検査装置において、試料表面の撮像画像を取得するために使用される顕微鏡装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の半導体ウエハ用外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】発明の実施例による光学フィルタの概略構成図である。
【図3】(A)は圧電アクチュエータを駆動機構とする本マイクロミラーデバイスの構成例を示す図であり、(B)は(A)に示すミラーを駆動する圧電アクチュエータアレイの構成例を示す図である。
【図4】本発明による光学フィルタを備える半導体ウエハ用外観検査装置の第1実施例の概略構成図である。
【図5】図4に示す半導体ウエハ用外観検査装置の照明光学系に設けられた光学フィルタにより実現される空間フィルタの例を示す図である。
【図6】(A)は被検査面に形成される反復パターンを示す図であり、(B)は(A)のパターンを有する被検査面からの反射光を捉えた対物レンズのフーリエ変換面に生じる空間周波数スペクトル像であり、(C)は(B)の空間周波数スペクトル像を遮蔽するのに好適な光学フィルタにより実現される空間フィルタの例を示す図である。
【図7】本発明による光学フィルタを備える半導体ウエハ用外観検査装置の第2実施例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
60、81、82 光学フィルタ
61 半透鏡
62a 第1の反射鏡
62b 第2の反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタであって、
該光学フィルタへの入射光の光軸に対して反射面を45°傾けて配向され、該入射光を前記反射面で反射する第1の光及び前記反射面を透過する第2の光に分光する半透鏡と、
前記第1の光を反対向きに反射して前記半透鏡に再び入射させる第1の反射鏡と、
前記第2の光を反対向きに反射して前記半透鏡に再び入射させる第2の反射鏡と、
を備え、
前記第1及び第2の反射鏡の少なくとも一方は、その反射面の法線方向の位置をそれぞれ制御可能な複数のミラー素子で構成されたマイクロミラーアレイであることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学フィルタにおいて、
前記マイクロミラーアレイの反射面の法線方向における前記ミラー素子の位置が可変制御されることにより、前記第1の反射鏡で反射した前記第1の光が前記半透鏡の反射面を透過して前記半透鏡を出射する第1の出射光と、前記第2の反射鏡で反射した前記第2の光が前記半透鏡の反射面で反射し前記第1の出射光と同一方向に出射する第2の出射光と、の間の光路差が可変制御されることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学フィルタにおいて、
前記マイクロミラーアレイの反射面の法線方向における前記ミラー素子の位置が可変制御されることにより、通過光の減衰波長領域が可変制御されることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光学フィルタにおいて、
前記マイクロミラーアレイの反射面の法線方向における前記ミラー素子の位置が可変制御された結果、前記複数のミラー素子の一部とそれ以外とで前記法線方向における位置が異なることにより、所定波長の入射光に対する空間フィルタとして作用することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルタを備え、
被検査面を照明するための照明光を前記光学フィルタによりフィルタリングすることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルタと、
被検査面を照明するための照明光を生じる光源と、
前記光源より生じた光を平行光にするコリメートレンズと、を備え、
前記光学フィルタにより前記平行光をフィルタリングすることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項7】
請求項4に記載の光学フィルタと、
被検査面を照明するための照明光を生じる光源と、
前記照明光により照明された被検査面の像を形成する対物レンズと、
前記対物レンズの瞳面に前記光源の像を形成する照明光学系と、
を備え、
前記マイクロミラーアレイの反射面が、前記対物レンズの瞳面の共役面に位置するように、前記照明光学系に前記光学フィルタを設けることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項8】
請求項4に記載の光学フィルタと、
被検査面で反射した光束を集光し該被検査面に対するフーリエ変換面に空間周波数スペクトル像を発生させる対物レンズを備え、
前記マイクロミラーアレイの反射面が、前記フーリエ変換面又はその共役面に位置するように、前記光学フィルタが配置されることを特徴とする顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−58647(P2008−58647A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235975(P2006−235975)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】