説明

光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】 液晶セルを光学的に補償する光学フィルム、とりわけ、大型の液晶表示装置に適用した場合でも、ムラを生じることなく又はムラが少ない、表示品位の高い画像を表示するのに寄与する光学フィルムを提供する。
【解決手段】 支持体上に、液晶化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層がカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも1種を含有し、且つ前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーがカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有する連鎖移動剤を用いた重合により得られたポリマーである光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物を配向固定した光学異方性層を有する光学フィルム、該光学フィルムを備えた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来、光学補償シートとしては、延伸複屈折フィルムが使用されている。また、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶性化合物からなる光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶性化合物を含むディスコティック液晶組成物を配向膜の上に塗布し、配向温度よりも高い温度で加熱してディスコティック液晶性化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。一般に、ディスコティック液晶性化合物は、大きな複屈折率を有するとともに、多様な配向形態がある。ディスコティック液晶性化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0003】
一方、ディスコティック液晶性化合物は、多様な配向形態があるため、所望の光学特性を発現させるためには、光学異方性層におけるディスコティック液晶性化合物の配向を制御する必要がある。ディスコティック液晶性化合物を平均傾斜角が5度未満の水平配向状態に制御する方法として、ディスコティック液晶性化合物に、セルロース低級脂肪酸エステル、含フッ素界面活性剤または1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、フッ素置換アルキル基と親水基(スルホ基が連結基を介してベンゼン環に結合した)を有する化合物を光学異方性層に添加し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、疎水性排除体積効果化合物を光学異方性層に併用して、液晶性化合物の配向を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、液晶性化合物のハイブリッド配向を効果的に促進する化合物の効果およびその使用法については、言及されていない。
【0004】
液晶性化合物の配向を制御する他の方法として、配向膜(界面処理)を用いる方法が知られている。しかし、配向膜の規制力だけでは、液晶性化合物を配向膜界面から空気界面まで均一に配向(モノドメイン配向)させることが難しく、シュリーレンなどの欠陥が残りやすい。特に、生産性を向上させるために熟成時間を短縮すると、シュリーレン欠陥の発生が顕著になる。光学異方性層にシュリーレン欠陥が生じると光散乱が起こり、光学特性を損なうという問題がある。
【0005】
また、従来の技術では、主に、15インチ以下の小型あるいは中型の液晶表示装置を想定して、光学補償シートが開発されていた。しかし、最近では、17インチ以上の大型、かつ輝度の高い液晶表示装置も想定する必要がある。大型の液晶表示装置の偏光板に、従来の光学補償シートを保護フィルムとして装着したところ、パネル上にムラが発生していることが判明した。この欠陥は、小型あるいは中型の液晶表示装置では、あまり目立っていなかったが、大型化、高輝度化に対応して、光漏れムラに対処した光学フィルムをさらに開発する必要が生じている。
ムラの改良を行う技術として、重合性液晶にレベリング剤を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法は重合性液晶がホモジニアス配向の場合にのみ有効であり、本発明のようにハイブリット配向をはじめとした複雑な配向には、適用できないことが判った。
【0006】
【特許文献1】特開平11−352328号公報(第9−21頁)
【特許文献2】特開2001−330725号公報(第7−10頁)
【特許文献3】特開2002−20363号公報(第3−21頁)
【特許文献4】特開平11−148080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液晶セルを光学的に補償する光学フィルムを提供することにある。とりわけ、大型の液晶表示装置に適用した場合でも、ムラを生じることなく又はムラが少ない、表示品位の高い画像を表示するのに寄与する光学フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に優れる光学フィルムを備えた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記光学フィルム、該光学フィルムを備えた下記偏光板、及びそれらから構成された液晶表示装置により達成される。
[1] 支持体上に、液晶化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層がカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有し、且つ前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーがカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有する連鎖移動剤を用いた重合により得られたポリマーである光学フィルム。
[2] 前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーが下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーから導かれる繰り返し単位を含む[1]の光学フィルム:
【0009】
【化1】

一般式[1]においてR1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表し、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0010】
[3] 前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーが、下記一般式[2]で表されるモノマーから導かれる繰り返し単位を含む[1]又は[2]の光学フィルム:
【0011】
【化2】

上記一般式[2]において、R6は水素原子またはメチル基を表し、Zは2価の連結基を表し、R7は置換基を有してもよいポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有してもよい炭素数1以上20以下の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表す。
【0012】
[4] 前記液晶化合物が、ディスコティック化合物であるする[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] 支持体上に、液晶化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層が、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基が少なくともチオエーテル結合(−S−)を含む二価基を介して主鎖末端に結合したフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも1種を含有する光学フィルム。
[6] [1]〜[5]のいずれかの光学フィルムと、偏光子とを有する偏光板。
[7] [6]に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
【0013】
なお、本明細書では、光学異方性層、光学フィルム等の種々の光学部材の面内レターデーションReおよび厚み方向のレターデーションRthは、以下の方法で測定した値とする。
ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、液晶性化合物を所定の親水性基を有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーの存在下で配向させ、その状態に固定して光学異方性層を形成することで、優れた光学補償能を有する光学フィルムを提供している。即ち、本発明によれば、液晶セルを光学的に補償する光学フィルム、とりわけ、大型の液晶表示装置に適用した場合でも、ムラを生じることなく、表示品位の高い画像を表示するのに寄与する光学フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、上記特性に優れる光学フィルムを備えた偏光板、及びムラが少ない又はムラがない表示品位の高い画像を表示し得る液晶表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値又は上限値及び下限値として含む範囲を意味する。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、液晶性化合物の少なくとも1種と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を主鎖末端に有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも1種とを含有する組成物から形成された光学異方性層を有する。該フルオロ脂肪族基含有ポリマーは、前記組成物の塗布性を改善するのに寄与し、前記組成物を支持体に塗布した際に、ハジキやムラを軽減することができる。また、前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーの存在下で液晶性化合物の分子を配向させることにより、安定的に所望の配向状態、例えば円盤状液晶性化合物の場合は安定的にハイブリッド配向状態、にするのに寄与する。その結果、本発明の光学フィルムや該光学フィルムを有する偏光板を適用した液晶表示装置は、大型であっても、画像にムラがなく又はムラが少なく、表示品位の高い画像を表示することができる。
【0016】
以下、本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有ポリマー(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)について詳細に説明する。
前記フッ素系ポリマーはカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2] 及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を主鎖末端に有する。上記親水性基は、フッ素系ポリマー主鎖末端と相互作用し、共有結合によって連結されていることがより好ましい。中でも、上記親水性基を有する連鎖移動剤を用いた重合により得られたフッ素系ポリマーを用いるのが好ましく、カルボキシル基(−COOH)を有する連鎖移動剤を用いた重合により得られたフッ素系ポリマーを用いるのがより好ましい。
【0017】
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、あるいは、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0018】
上記した様に、前記フッ素系ポリマーの製造時には、連鎖移動剤を用いることがさらに好ましい。カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有する連鎖移動剤が好ましく、カルボキシル基(−COOH)を有する連鎖移動剤が最も好ましい。連鎖移動剤の種類としてはメルカプタン類(例えば、メルカプト酢酸、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル類(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、メルカプタン類が好ましい。これらの連鎖移動剤は、モノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0019】
例えば、前記親水性基を有するメルカプタン類を連鎖移動剤として用いた場合は、前記フッ素系ポリマーは、連鎖移動剤由来のチオエーテル基を含む二価基 *−S−R−**(Rは置換もしくは無置換の、アルキレン基(好ましくはC1-15アルキレン基)、アリレーン基またはヘテロ環基を表し、*でポリマー主鎖に結合し、**で親水性基に結合する)を介してポリマー主鎖と、前記親水性基とが結合した構造となる。
【0020】
本発明に使用可能なカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種を有する連鎖移動剤の具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
これらの化合物は、例えばアメリカ特許US第2504030号公報に記載の方法によって合成することができる。
【0025】
前記フッ素系ポリマーは、下記一般式[1]で表されるフルオロモノマー由来の繰り返し単位を有するのが好ましい。
【0026】
【化6】

【0027】
上記一般式[1]において、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し(R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である)、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1〜6の整数、nは2〜4の整数を表す。
【0028】
Xは好ましくは酸素原子であり、Zは好ましくは水素原子であり、mは好ましくは1または2であり、nは好ましくは3または4であり、これらの混合物を用いてもよい。
【0029】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なモノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない
【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
前記フッ素系ポリマーは、下記一般式[2]で表されるモノマー由来の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0040】
【化16】

【0041】
上記一般式[2]において、R6は水素原子またはメチル基を表し、Zは2価の連結基を表し、R7は置換基を有してもよいポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表す。Zで表される2価の連結基としては、酸素原子、イオウ原子、または−N(R5)−が好ましい。ここで、R5は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルが好ましい。R5はより好ましくは、水素原子またはメチルである。Zは、酸素原子、−NH−、または−N(CH3)−であることが特に好ましい。
【0042】
上記一般式[2]において、ポリ(アルキレンオキシ)基は(RO)xで表すことができ、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、または−CH(CH3)CH(CH3)−であることが好ましい。
上記ポリ(アルキレンオキシ)基中のアルキレンオキシ単位は、例えばポリ(プロピレンオキシ)のように全ての単位が同一であっても良く、また互いに異なる2種以上のアルキレンオキシ単位が不規則に分布したもの(例えば、直鎖プロピレンオキシ単位、分岐状プロピレンオキシ単位およびエチレンオキシ単位が不規則に分布したもの)であっても良く、また互いに異なる2種以上のアルキレンオキシ単位のブロックが結合したもの(例えば、直鎖または分岐状のプロピレンオキシ単位のブロックとエチレンオキシ単位のブロックが結合したもの)であっても良い。
【0043】
このポリ(アルキレンオキシ)鎖として、複数のポリ(アルキレンオキシ)単位同士が1つまたはそれ以上の連結基(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など、ここでPhはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連結基が3価またはそれ以上の原子価を有する場合には、これにより分岐鎖状のアルキレンオキシ単位を得ることができる。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(アルキレンオキシ)基の分子量は250〜3000が適当である。
【0044】
7で表される炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0045】
7で表されるポリ(アルキレンオキシ)基またはアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。
【0046】
上記一般式[2]で表されるモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートまたはポリ(アルキレンオキシ)(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0047】
上記一般式[2]で示されるモノマーの具体例を次に示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
【化19】

【0051】
【化20】

【0052】
【化21】

【0053】
【化22】

【0054】
【化23】

【0055】
【化24】

【0056】
【化25】

【0057】
【化26】

【0058】
【化27】

【0059】
【化28】

【0060】
【化29】

【0061】
なお、ポリ(アルキレンオキシ)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)材料、例えば商品名"プルロニック"[Pluronic(旭電化工業(株)製)、"アデカポリエーテル"(旭電化工業(株)製)"カルボワックス"[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、"トリトン"[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))および"P.E.G"(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0062】
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記一般式[1]で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのが特に好ましい。
【0063】
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1000以上1,000,000以下であるのが好ましく、1000以上500,000以下であるのがより好ましく、1000以上100,000以下であるのがさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0064】
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、あるいは、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0065】
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0066】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0067】
以下に、フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPS換算の質量平均分子量である。
【0068】
【化30】

【0069】
【化31】

【0070】
【化32】

【0071】
【化33】

【0072】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフルオロ脂肪族基を有するモノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0073】
前記光学異方性層形成用の組成物中における前記フッ素系ポリマーの含有量は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜2.5質量%であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0074】
本発明の光学フィルムは、液晶性化合物、前記フッ素系ポリマー、及びその他必要に応じて添加する各種化合物を含有する組成物を、配向膜上に塗布し、液晶性化合物の分子を配向させることにより光学異方性層を形成する工程を含む方法によって作製することができる。前記光学異方性層は、液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を示す。以下に、本発明の光学フィルムの光学異方性層に用いられる材料のうち、前記で説明したフッ素系ポリマー以外の材料について詳細に説明する。
【0075】
[液晶性化合物]
本発明には、液晶性化合物として、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物のいずれを用いてもよく、また高分子液晶および低分子液晶のいずれを用いてもよい。さらに、本発明の組成物を用いて光学異方性層を形成した後は、例えば光学異方性層中に低分子液晶が架橋された状態で含有され、もはや液晶性を示さなくなってもよい。本発明に用いる液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物が好ましい。
【0076】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体の液晶性化合物も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。棒状液晶性化合物についてはWO01/88574A1号50頁7行〜57頁末行に記載されている。
【0077】
ディスコティック液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。さらに、ディスコティック液晶性化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造のものも含まれ、液晶性を示す。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。
【0078】
本発明に用いる液晶性化合物としては、トリフェニレン液晶が特に好ましい。本発明に用いられるトリフェニレン液晶の例としては、前記C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)、またはB.Moureyらの研究報告、Mol.Cryst.84巻、193頁(1982年)に記載されているトリフェニレン誘導体などを挙げることができる。特に好ましいトリフェニレン液晶としては、特開平7−306317号公報記載の一般式(1)〜(3)にて表されるトリフェニレン誘導体、特開平7−309813号公報記載の一般式(I)で表されるトリフェニレン誘導体、および特開2001−100028号公報記載の一般式(I)で表されるトリフェニレン誘導体を挙げることができる。
【0079】
また、光学異方性層が最終的に形成された際に、液晶性化合物はもはや液晶性化合物である必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化して、液晶性を失ってもよい。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載があり、本発明にも適用することができる。
【0080】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定する方法の一例として、ディスコティック液晶性化合物として、ディスコティックコアに置換基として重合性基が結合した液晶性化合物を用い、ハイブリッド配向させた後、前記液晶性化合物を重合させて固定する方法がある。但し、ディスコティックコアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる傾向にある。そこで、ディスコティックコアと重合性基との間に、連結基を導入することが好ましい。重合性基を有する好ましいディスコティック液晶性化合物としては、下記式(2)で表わされる化合物が挙げられる。
【0081】
一般式(2)
D(−L−P)n
式中、Dはディスコティックコアを表し、Lは二価の連結基を表し、Pは重合性基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。前記ディスコティック液晶性化合物の具体例としては、WO01/88574A1号公報の58頁6行〜65頁8行に記載されている。
【0082】
本発明で用いられる最も好ましい液晶性化合物としては、特開平7−306317号公報記載の一般式(1)〜(3)にて表されるトリフェニレン誘導体、特開平7−309813号公報記載の一般式(I)で表されるトリフェニレン誘導体、および特開2001−100028号公報記載の一般式(I)で表されるトリフェニレン誘導体の中でも、トリフェニレンコアと重合性基との間に連結基を有する化合物を挙げることができる。
【0083】
本発明では、2種類以上の液晶性化合物を併用してもよい。また、例えば、上記の重合性ディスコティック液晶性化合物と非重合性ディスコティック液晶性化合物とを併用することも可能である。非重合性ディスコティック液晶性化合物は、前述した重合性ディスコティック液晶性化合物の重合性基(式(2)中のP)を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0084】
一般式(3)
D(−L−R)n
式中、Dは円盤状コアを、Lは二価の連結基を、Rは水素原子またはアルキル基を表し、nは4〜12の整数である。
【0085】
[光学異方性層の添加剤]
前記光学異方性層形成用の組成物中には、前記液晶性化合物、前記フッ素系ポリマーの他に、任意の添加剤を併用することができる。添加剤の例としては、ハジキ防止剤、配向膜のチルト角(光学異方性層/配向膜界面での液晶性化合物のチルト角)を制御するための添加剤、重合開始剤、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー等である。以下、各添加剤について、
【0086】
[ハジキ防止剤]
液晶性化合物、特にディスコティック液晶性化合物とともに使用して、塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ハジキ防止剤として使用可能なポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0087】
[配向膜チルト角制御剤]
配向膜のチルト角を制御する添加剤として、分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物を添加することができる。極性基を有する化合物としては、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−NH−R、R−SH、R−S−R、R−CO−R、R−COO−R、R−CONH−R、R−CONHCO−R、R−SO3H、R−SO3−R、R−SO2NH−R、R−SO2NHSO2−R、R−C=N−R、HO−P(−OR)2、(HO−)2P−OR、P(−OR)3、HO−PO(−OR)2、(HO−)2PO−OR、PO(−OR)3、R−NO2、R−CN、等が例として挙げられる。また、有機塩(例えば、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩)でもかまわない。前記極性基を有する化合物の中でも、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−SO3H、HO−PO(−OR)2、(HO−)2PO−OR、PO(−OR)3もしくは有機塩が好ましい。ここで、上記各Rは非極性基を表し、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基)が例として挙げられる。これらの非極性基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が例として挙げられる。
【0088】
前記組成物に配向膜チルト制御剤を添加し、配向膜チルト制御剤の存在下で液晶性化合物の分子を配向させることで、配向膜側界面における液晶性分子のチルト角を調整することができるが、その時の変化量はラビング密度に関係がある。ラビング密度が高い配向膜とラビング密度の低い配向膜を比較すれば、ラビング密度の低い配向膜の方が、配向膜チルト制御剤の添加量が同一であっても、チルト角が変わりやすい。したがって、配向膜チルト制御剤の添加量の好ましい範囲は、用いる配向膜のラビング密度および所望のチルト角の大きさ等によって変動するが、一般的には、液晶性化合物の質量に対して0.0001質量%〜30質量%であるのが好ましく、0.001質量%〜20質量%であるのがより好ましく、0.005質量%〜10質量%であるのがさらに好ましい。本発明に使用可能な配向膜チルト制御剤の具体例を以下に示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0089】
【化34】

【0090】
【化35】

【0091】
【化36】

【0092】
[重合開始剤]
液晶性化合物の分子を配向状態に固定して光学異方性層を形成するのが好ましく、重合反応を利用して液晶性化合物の分子を固定するのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例、光重合開始財の使用量、および重合のための光照射エネルギーの値の各々は特開2001−91741号公報の段落[0050]〜[0051]の記載が本発明に適用できる。
【0093】
[重合性モノマー]
液晶性化合物とともに重合性モノマーを使用してもよい。本発明に使用可能な重合性モノマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物のチルト角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0094】
[塗布溶剤]
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0095】
[塗布方式]
塗布液の配向膜表面への塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。また、塗布液における液晶性化合物の含有量は1〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。
【0096】
[光学異方性層の特性]
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0097】
前記組成物を配向膜上に適用すると、液晶性分子は配向膜との界面では配向膜のチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向する。本発明の組成物を配向膜の表面に塗布後、液晶性化合物を均一配向(モノドメイン配向)させることで、実態ではないが、イメージで表すと空気界面から配向膜界面に向けて、つまり光学異方性層の深さ方向に液晶性化合物のチルト角(ディスコティック液晶性化合物の円盤面の法線と透明支持体の配向膜を設ける面の法線とがなす角)が連続的に変化するハイブリッド配向を実現することができる。液晶性分子をハイブリッド配向させ、且つその配向状態に固定することによって形成された光学異方性層を有する光学フィルムは、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与し、並びに視角変化に対するコントラスト低下、階調または黒白反転、および色相変化等を防止するのに寄与する。
【0098】
前記フッ素系ポリマーの存在下では、液晶性分子を、空気界面のチルト角50°以上で配向させることができる。光学補償シートとして好ましい性能を発揮できる状態のハイブリッド配向を実現するためには、配向膜側の液晶性分子のチルト角は3°〜30°とするのが好ましい。この配向膜側の液晶性分子のチルト角は、前記した方法(配向膜のラビング密度、配向膜チルト角制御剤等)により制御することができる。一方、空気界面側の液晶性分子のチルト角は、前記フッ素系ポリマーを用いることによって、および所望により添加される他の化合物(例えば、前記水素結合性基を有する少なくとも二種の化合物より形成される水平配向化剤など)を選択することにより調整することができ、本発明の光学フィルムを適用する液晶表示装置の表示モードに応じて、好ましいハイブリッド配向状態を実現することができる。
【0099】
[チルト角]
チルト角とは、液晶性化合物の分子の長軸方向と界面(配向膜界面あるいは空気界面)の法線がなす角度を指し、本発明では、配向膜のチルト角は3°〜30°、空気界面側のチルト角は40〜80°であるのが好ましい。配向膜のチルト角は小さすぎると、液晶性化合物、特にディスコティック液晶性化合物をモノドメイン配向させるのに要する時間が長くなるため大きい方が好ましいが、チルト角が大きくなりすぎると、光学補償シートとして好ましい光学性能が得られなくなるため逆に好ましくない。したがって、モノドメイン化時間の短縮と光学補償シートとしての好ましい光学性能の両立の観点から、好ましい配向膜のチルト角は5°〜30°、更に好ましくは10〜30°、特に好ましいのは20〜30°である。また、好ましい空気界面側のチルト角は40〜80°、更に好ましくは50〜80°、特に好ましいのは50〜70°である。配向膜側のチルト角は、配向膜のラビング密度を変える方法、あるいは前述の配向膜チルト角制御剤の添加などにより、数度〜数十度の範囲で制御可能である。なお、上述した様に、光学異方性層が一旦形成された後、転写などにより2つの層間に配置されている場合等は、必ずしも光学異方性層の界面は配向膜界面と空気界面でなく、かかる態様では、光学異方性層が有する2つの界面のうち一方の界面側および他方の界面側それぞれにおける液晶性分子のチルト角が、上記配向膜側チルト角の範囲および上記空気界面側のチルト角の範囲であるのが好ましい。
【0100】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜上に設けられる光学異方性層の液晶性化合物に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、配向膜のチルト角の制御し易さの点から、特にポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では「液晶便覧」(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。配向膜に用いられるポリマーは、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明の光学フィルム用の配向膜の作製には、ポリビニルアルコールおよびその誘導体が好ましく用いられる。特に好ましくは、疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向膜についてはWO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
【0101】
[配向膜のラビング密度]
配向膜のラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善(株))に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl{1+(2πrn/60v)}
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。ラビング密度と配向膜のチルト角との間には、ラビング密度を高くするとチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとチルト角は大きくなる関係がある。
【0102】
なお、液晶性分子を配向させて、重合等によりその状態を固定すれば、配向膜がなくてもその配向状態を維持することができる。従って、前記光学異方性層を配向膜(例えば仮支持体上に形成された配向膜)上に形成した後、透明支持体上に光学異方性層のみを転写することによって、本発明の光学フィルムを作製することもできる。即ち、本発明には、配向膜を含まない光学フィルムの態様も含まれる。
【0103】
[透明支持体]
本発明に使用する支持体は透明であるのが好ましく、光透過率が80%以上であるのが好ましい。光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002−22942号公報の段落番号[0013]の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであってもWO00/26705号明細書に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0104】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度、およびその範囲、並びにセルロースアセテートの化学構造は、特開2002−196146号公報の段落番号[0021]の記載を適用できる。セルロースアシレートフィルムを非塩素系溶媒を用いて製造することについて、発明協会公開技報2001−1745号に詳しく記載されており、そこに記載されたセルロースアシレートフィルムも本発明に好ましく用いることができる。
【0105】
透明支持体として用いるセルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション値、および複屈折率の範囲は、特開2002−139621号公報の段落番号[0018]〜[0019]の記載を適用できる。
【0106】
透明支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物の好ましい範囲、および使用量は、特開2002−139621号公報の段落番号[0021]〜[0023]の記載を適用できる。このようなレターデーション上昇剤についてはWO01/88574A1、WO00/2619A1、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特願2002−70009号明細書等に記載されている。
【0107】
セルロースアシレートフィルムは、調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて、ドープの2層以上流延によるフィルム化もできる。フィルムの形成は、特開2002−139621号公報の段落番号[0038]〜[0040]の記載を適用できる。
【0108】
セルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%の範囲にあることが好ましい。前記セルロースアシレートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0109】
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特開2002−139621号公報の段落番号[0043]の態様、および好ましい範囲が本発明に適用できる。
【0110】
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開2002−139621号公報の段落番号 [0044]の記載を適用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0111】
セルロースアシレートフィルムの表面処理、および固体の表面エネルギーについては、特開2002−196146号公報の段落番号[0051]〜[0052]の記載を適用できる。
【0112】
セルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0113】
[光学フィルムの用途]
本発明の光学フィルムは、光学補償シートして、液晶表示装置に用いるのが好ましい。また、偏光膜と組合せて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型液晶表示装置に、偏光膜と組合せて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。以下に、本発明の光学フィルムを光学補償シートとして利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0114】
[楕円偏光板]
本発明の光学フィルムと偏光膜とを積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の光学フィルムを利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大しうる楕円偏光板を提供することができる。前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0115】
偏光膜は前記光学補償シートの光学異方性層側に積層する。偏光膜の光学補償シートを積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0116】
[液晶表示装置]
本発明の光学フィルムの利用により、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。また、表示ムラのない高品位の画像を表示し得る液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号明細書および国際公開WO96/37804号公報に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0117】
本発明において、上記公報を参考にして各種のモードの液晶セル用光学補償シートを作製することができる。本発明の光学フィルムは、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードなど、種々のモードで駆動される液晶セルを有する液晶表示装置に、光学補償フィルムとして用いることができる。本発明の光学フィルムは、TN(Twisted Nematic)モードまたはOCB(Optically Compensatory Bend)モードの液晶表示装置において特に効果がある。
【実施例】
【0118】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0119】
【化37】

【0120】
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート 39.2g、メルカプト酢酸(シグマ・アルドリッチ(株)製) 0.8g、ジメチル 2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート(和光純薬工業(株)製V−601) 1.1g、2−ブタノン 30gを加え窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は1.4×104であった。
【0121】
フルオロ脂肪族基含有ポリマー(P−1)の合成と類似の方法で、フッ素系ポリマー(P−12)、(P−20)を合成した。
さらに比較用ポリマーとして、下記ポリマーR−1を用いた
【0122】
【化38】

【0123】
[実施例1]
(ポリマー基材の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 2.2 0
────────────────────────────────────
【0124】
【化39】

【0125】
得られた内層用ドープおよび外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルム(PK−1)について、光学特性を測定した。
【0126】
得られたポリマー基材(PK−1)の幅は1340mmであり、厚さは、80μmであった。上記方法により波長546nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、6nmであった。また、波長500nmにおけるレターデーション値(Rth)を測定したところ、90nmであった。
作製したポリマー基材(PK−1)を2.0mol/Lの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、2.0mol/Lの硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。このPK−1の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
【0127】
このPK−1上に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して、ポリビニルアルコール層を形成した。
【0128】
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0129】
【化40】

【0130】
形成したポリビニルアルコール層の表面にラビング処理を施して、配向膜を形成した。ラビング処理は、ポリマー基材(PK−1)の遅相軸(波長632.8nmで測定)と平行な方向に、配向膜にラビング処理を実施した。
【0131】
(光学異方性層の形成)
下記の組成物を、102質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
フルオロ脂肪族基含有ポリマー例示化合物(P−1) 0.02質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
【0132】
【化41】

【0133】
調製した塗布液を、#3.4のワイヤーバーで、上記配向膜の表面に室温下で塗布し、さらに120℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物をハイブリッド配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cmの高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合して、配向状態を固定した。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(KH−1)を作製した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は50nmであった。
【0134】
(光学補償シートの面状評価)
偏光板をクロスニコル配置とし、正面、および法線から60度まで傾けた方向から得られた光学補償シートのムラ及びハジキを観察した。結果は、第1表に示す。以下に示す実施例2及び3、ならびに比較例1及び2についても同様に、面状評価を行った。
【0135】
(液晶性化合物の傾斜角評価)
光学異方性層における液晶性化合物の配向膜近傍の傾斜角および空気界面近傍の傾斜角を、エリプソメーター(APE−100、島津製作所(株)製)を用いて観察角度を変えてレターデーションを測定し、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.143−147に記載されている手法で算出した。測定波長は632.8nmであった。結果を第1表に示す。以下に示す実施例2及び3、ならびに比較例1及び2についても同様に、傾斜角を求めた。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、KH−1(光学補償シート)を、偏光子(HF−1)の片側表面に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子(HF−1)の反対側表面に貼り付けた。
偏光子(HF−1)の透過軸と、光学補償シートの支持体であるポリマーフィルム(PK−1)の遅相軸とが平行になるように配置した。偏光子(HF−1)の透過軸と上記トリアセチルセルロースフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−1)を作製した。
【0136】
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した偏光板(HB−1)を、光学補償シート(KH−1)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までで視野角を測定した。上下左右で、コントラスト比(白透過率/黒透過率)が10以上、かつ黒側の階調反転(L1とL2での反転)のない領域を視野角として求めた。測定結果を第1表に示す。以下に示す実施例2及び3、ならびに比較例1及び2についても同様に、視野角を求めた。
【0137】
[実施例1〜3、比較例1及び2]
表1に記載の如く、フルオロ脂肪族基含有ポリマーの種類と添加量を代えた以外は、実施例1と同様にして光学補償シートを作製し、同様に面状、傾斜角、視野角の評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
上記表1の結果から分かるように、本発明のフルオロ脂肪族基含有ポリマーを少量使用することで、円盤状化合物を空気界面側の傾斜角が充分なハイブリッド配向状態とすることができ、その結果所望の光学補償能を有し、且つ良好な面状を有する光学補償シートが得られた。さらにかかる光学補償シートを用いることで、視野角が良好な液晶表示装置を提供することができた。
【0140】
[実施例4]
実施例1で用いたレターデーション上昇剤の添加量を変えて、Rthを80、85、100、110、120nmにしたポリマー基材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、光学補償シート、さらには光学補償シート付き偏光板を作製した。ポリマー基材のRthを80、85、100、110、120nmに変えても、上下左右の視野角は実施例1で得られた視野角とほぼ同等であることを確認した。
【0141】
[実施例5]
実施例1で用いたレターデーション上昇剤を、下記のレターデーション上昇剤に代え、内層の添加量を1.2質量部にし、Rthを90nmにしたポリマー基材を作製した以外は、実施例1と同様にして、光学補償シート、さらには、光学補償シート付き偏光板を作製した。上下左右の視野角は実施例1で得られた視野角とほぼ同等であることを確認した。
【0142】
【化42】

【0143】
[実施例6]
実施例5で用いたレターデーション上昇剤の添加量を変えて、Rthを80、85、100、110、120nmにしたポリマー基材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、光学補償シート、さらには光学補償シート付き偏光板を作製した。ポリマー基材のRthを80、85、100、110、120nmに変えても、上下左右の視野角は実施例1で得られた視野角とほぼ同等であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の光学フィルム及び本発明の光学フィルムを有する偏光板は、光学異方性層中に、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を主鎖末端に有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーを含有しているので、優れた光学補償能を有するとともに、面状も良好である。本発明の光学フィルムや偏光板を適用した液晶表示装置は、大型であっても、画像にムラがない又はムラが少なく、表示品位の高い画像を表示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、液晶化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層がカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも1種を含有し、且つ前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーがカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有する連鎖移動剤を用いた重合により得られたポリマーである光学フィルム。
【請求項2】
前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーが下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーから導かれる繰り返し単位を含む請求項1に記載の光学フィルム:
【化1】

一般式[1]においてR1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表し、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記フルオロ脂肪族基含有ポリマーが、下記一般式[2]で表されるモノマーから導かれる繰り返し単位を含む請求項1又は2に記載の光学フィルム:
【化2】

上記一般式[2]において、R6は水素原子またはメチル基を表し、Zは2価の連結基を表し、R7は置換基を有してもよいポリ(アルキレンオキシ)基または置換基を有してもよい炭素数1以上20以下の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表す。
【請求項4】
前記液晶化合物が、ディスコティック化合物であるする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
支持体上に、液晶化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する光学フィルムであって、該光学異方性層が、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基[−PO(OH)2]及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基が少なくともチオエーテル結合(−S−)を含む二価基を介して主鎖末端に結合したフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも1種を含有する光学フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光子とを有する偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板を有する液晶表示装置。

【公開番号】特開2006−251642(P2006−251642A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70875(P2005−70875)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】