説明

光学モーションセンサー

【課題】 比較的単純な回路構成により明るさが全く異なる環境で人が移動したことを容易且つ確実に検出することのできる光学モーションセンサーを提供する。
【解決手段】 受光素子15と電圧一定化回路21とを直列に接続し、受光素子15と電圧一定化回路21との接続点を微分増幅回路31及びパルス成形回路37を介して信号出力端子39に接続した回路構成とし、前記電圧一定化回路は、エミッタ接地のトランジスタと、該トランジスタのベース・エミッタ間に挿入されるコンデンサと、このトランジスタのベース・コレクタ間に挿入される抵抗器とで構成され、前記トランジスタのコレクタが前記受光素子に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子によりセンサーの前方で動きがあることを検知する光学式のモーションセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの受光素子を用いて人や物体の移動を検出することが広く行われており、例えば広い範囲での物体の移動を検出可能とし、且つ、移動方向も検出可能とする固定式の検出装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、光通信の受信機としてフォトダイオードなどの受光素子を用いるものもあり、増幅率の異なる複数の増幅手段を設け、強度監視手段により受光素子が受光する光の強度を検出し、強度に応じて増幅手段を切換えることによりダイナミックレンジを広く保ちつつ、受光感度を低下させないようにする光受信機が提案されている(例えば特許文献2)。
【0004】
そして、フォトダイオードなどの受光素子は、小型軽量にして安価である為、家庭内の屋内装置品などにも組み込まれ、室内で人が移動したことを検出するセンサーに用いられ、人の移動を検知したときに屋内装置品を作動させるようにすることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−274517号
【特許文献2】特開平11−186971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋内装置品を室内におく場合、置き場所により数十LXから数百LXの明るさに環境が異なることとなり、又、昼間の窓際では2000LX以上に達することもある。
【0007】
このため、日光の入らない室内の明るさを基準に受光素子の検出感度を設定すると、昼間の日差しが室内に入ったときにセンサーの検出値が飽和状態となって人の動作等の検出が不可能となる。他方、日差しを考慮して明るい室内に適するように受光素子の検出感度を設定すると夜間の室内では検出感度が低下し、センサーの作動が不確実となることがあった。
【0008】
また、室内の昼と夜との照度差を考慮して増幅率の異なる複数の増幅回路を設けて切換えるようにすると、単純な屋内装置品に組み込む人の動作センサーとしては回路構成が複雑となる欠点があった。
【0009】
本発明は、上述の欠点を排除し、比較的単純な回路構成により明るさが全く異なる昼夜を通して室内で人が移動したことを容易且つ確実に検出することのできる屋内装置品に適した小型の光学モーションセンサーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光学モーションセンサーは、受光素子と電圧一定化回路とを直列に接続し、受光素子と電圧一定化回路との接続点を微分増幅回路及びパルス成形回路を介して信号出力端子に接続した回路構成を有するものである。
【0011】
又、前記電圧一定化回路は、エミッタ接地のトランジスタと、このトランジスタのベース・エミッタ間に挿入されるコンデンサと、このトランジスタのベース・コレクタ間に挿入される抵抗器とで構成され、このトランジスタのコレクタが受光素子に接続されるものである。
【0012】
そして、前記微分増幅回路は、結合コンデンサと反転増幅器とで構成され、電圧一定化回路のコレクタ電位の変化を結合コンデンサを介して反転増幅器に入力し、反転増幅器でこの入力されたコレクタ電位の変化分を増幅して出力するものである。
【0013】
更に、前記パルス成形回路は、二値化回路であることが望ましい。
また、前記受光素子は、一端を開口部とする筒状体の内部において他端近傍に固定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光学モーションセンサーは、受光素子と電圧一定化回路とを直列とし、受光素子への入光量が緩やかに大きく変化しても受光素子のエミッタ電位の変化幅が小さく、明るい場所でも薄明るい場所でも受光素子の作動を適正に維持することができる。
【0015】
また、電圧一定化回路は、エミッタ接地のトランジスタのベース・エミッタ間にコンデンサを、このトランジスタのベース・コレクタ間に抵抗器を有している為、トランジスタのコレクタに供給される電流の値が大きく変化する場合であっても、緩やかに変化するときはコレクタ電位の変化量を小さく保ち、コレクタへの供給電流が急激に変化した場合はコレクタ電位を明確に変化させることができる。
【0016】
そして、微分増幅回路は、単純な回路構成であっても入力電位の変化を容易に増幅することができ、パルス成形回路により単純な回路構成によって安定した出力信号を形成することができる。
【0017】
さらに、受光素子を筒状体内部の一端近傍に固定して視野を制限すれば、視野内を横切る物体の検出をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る光学モーションセンサーの回路構成を示す図。
【図2】本発明に係る光学モーションセンサーの受光部の構造を示す図。
【図3】光学モーションセンサーを組み込んだ屋内装置品の一例を示す図。
【図4】室内の明るさの変化と本発明に係る光学モーションセンサーの電圧変化を示す図。
【図5】本発明に係る光学モーションセンサーにおける動作検出時の電圧信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る光学モーションセンサーは、図1に示すように、受光素子15として電流型出力受光素子であるフォトトランジスタを用い、該フォトトランジスタを電圧一定化回路21とプラス電源との間に挿入するように、受光素子15と電圧一定化回路21を直列として電源端子間に配置し、受光素子15と電圧一定化回路21との接続点を微分増幅回路31の入力端子に、微分増幅回路31の出力端子をパルス成形回路37を介して信号出力端子39に接続するものである。
【0020】
また、この受光素子15を設ける受光部10は、図2に示す如く、筒状体11の奥に受光素子15を配置して固定部材13により筒状体11の一端近くに受光素子15を固定し、受光素子15から筒状体11の開口部17までの距離を筒状体11の内径の数倍とするものである。
【0021】
そして、この光学モーションセンサーは、例えば図3に示すような時計体40に組み込むものとし、この時計体40は、時刻設定スイッチやアラームセットスイッチなどの複数の設定スイッチ43を有し、時刻表示部41の上方に光学モーションセンサーの受光部10を収納して筒状体11の開口部17を配置すると共に、可動装飾体45としての人形を有するデジタル時計としているものである。
【0022】
尚、この可動装飾体45は、光学モーションセンサーにより時計体40の前方での人の移動等を検出したとき、可動装飾体45の手などを動かす動作やスピーカーから音声を発するなどの動作を行うものである。
【0023】
更に、光学モーションセンサーの電圧一定化回路21は、図1に示したように、エミッタ接地とするトランジスタである電圧調整トランジスタ23のエミッタとベースの間にバイアスコンデンサ25としてのコンデンサを挿入し、この電圧調整トランジスタ23とコレクタとベースの間に調整抵抗器27としての抵抗器を挿入しているものであって、この電圧調整トランジスタ23のコレクタをフォトトランジスタのエミッタに接続すると共に微分増幅回路31に接続するものである。
【0024】
この微分増幅回路31は、結合コンデンサ33と反転増幅器35とにより構成し、電圧一定化回路21の出力を結合コンデンサ33を介して反転増幅器35に入力するものである。
【0025】
また、パルス成形回路37は二値化回路を用い、入力電圧が1.5Vなどの閾値を越えると一定値のオン信号を出力し、入力電圧が閾値以下の場合は約0Vのオフ信号を出力するものである。
【0026】
従って、この電圧一定化回路21のバイアスコンデンサ25の容量を10μF程度とし、調整抵抗器27の抵抗値を数百KΩ乃至1MΩ程度とし、電源電圧を3Vとした場合、図4の(1)に示すように、室内の明るさが(A)の曲線に示す如く数LXから2000LX程度に変化したとき、筒状体11の奥に配置した受光素子15であるフォトトランジスタへの照度は(B)の曲線に示すように数LXから数百LX程度の変化となる。
【0027】
そして、このように受光素子15に入射される光の明るさが数LXから数百LX程度に変化したとき、図4の(2)に示すように、電圧一定化回路21の出力電圧である電圧調整トランジスタ23のコレクタ電位を0.5V強から0.7V弱の変化に制限することができるものである。
【0028】
即ち電圧一定化回路21では、受光素子15の出力電流を、調整抵抗器27を流れる抵抗器電流と電圧調整トランジスタ23のコレクタ電流とに分けてマイナス電源へ流し、電圧調整トランジスタ23のコレクタ電位を、電圧調整トランジスタ23のベース・エミッタ間電位である約0.5Vよりも僅かに高い値の電圧に安定させ、受光素子15への入射光の明るさが緩やかに変化しても電圧調整トランジスタ23のコレクタ電位の変化を小さくしてコレクタ電位を安定させることができるものである。
【0029】
このように、受光素子15への入射光の明るさが緩やかに大きく変化しても、電圧一定化回路21の出力を略一定に保つことにより、受光素子15のエミッタ電位の変化を小さくして受光素子15を安定した作動状態に保つことがでる。
【0030】
従って、時計体40の前方を人が横切る、又は時計体40に設けた開口部17の近くで手を振るなどにより受光素子15の筒状体11を介した視野内で人の動きが発生すると、受光素子15への入射光量が減少し、受光素子15のエミッタ電流が減少する変化を確実の行わせることができる。
【0031】
このように受光素子15のエミッタ電流が減少すると調整抵抗器27に流れる電流が減少し、バイアスコンデンサ25の電圧保持により電圧調整トランジスタ23の導通が維持され、図4の(2)にXとして示すように電圧一定化回路21の出力に0.数Vの電圧降下が発生する。
【0032】
この電圧降下は、図5の(1)に示すように、通常の人の動作では0.数秒乃至1秒程度の電圧降下であり、この電圧変動分を微分増幅回路31の結合コンデンサ33を介して反転増幅器35に入力することにより、図5の(2)に示すように、変動電圧を2V程度に増幅することができる。
【0033】
そして、パルス成形回路37として閾値を1.5V程度とする二値化回路を用いることにより、図5の(3)に示すように、ピーク値を約3Vとする電圧のパルス信号を形成して信号出力端子39に出力することができる。
【0034】
尚、二値化回路の閾値は1.5Vに限るものでなく、1Vなど、受光素子15の光電変換効率や反転増幅器35の増幅率などによる微分増幅回路31の出力にあわせて適宜に設定するものであり、パルス成形回路37として二値化回路に換えて単安定マルチバイブレータなどのパルス発生回路を用いることもできる。尤も、パルス成形回路37として二値化回路を用いれば、1個のトランジスタと数個の抵抗器などにより小型且つ容易にパルス成形回路37を形成することができる。
【0035】
そして、微分増幅回路31の反転増幅器35も、1個のトランジスタと数個の抵抗器やコンデンサで容易に形成することができ、微分増幅回路31を小型且つ単純な回路構成とすることが容易なものである。
【0036】
また、この光学モーションセンサーは、その受光素子15を筒状体11の奥に配置して受光素子15の視野の範囲を制限している為、人が時計体40の前方を横切った場合などには、視野全体が人体の一部等で完全に遮られることが多くなり、視野内での変化を大きくして受光素子15の受光量の変化率を大きくすることにより、人の動きなどを一層確実に検出することができる。
【0037】
従って、トランジスタを用いて単純な回路構成とすることが容易な電圧一定化回路21や微分増幅回路31及びパルス成形回路37により構成するこの光学モーションセンサーは、小型且つ単純な回路をもって明るさが大きく異なる環境でも人の動作を確実に検出することができるものである。
【0038】
そして、人が時計体40などの屋内装置品の前方で動作を行ったとき、この光学モーションセンサーの出力信号であるパルス信号により、可動装飾体45の制御回路を作動させて可動装飾体45などの可動部に動作を行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る光学モーションセンサーは、小型で単純な回路構成により、明るさが大きく異なる環境においても、人の動きを検知して出力信号を確実に形成することができる為、人の動きに合せて作動する屋内装置品などに容易に組み込んで屋内装置品を作動させることができるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 受光部 11 筒状体
13 固定部材 15 受光素子
17 開口部
21 電圧一定化回路
23 電圧調整トランジスタ 25 バイアスコンデンサ
27 調整抵抗器
31 微分増幅回路
33 結合コンデンサ 35 反転増幅器
37 パルス成形回路
39 信号出力端子
40 時計体
41 時刻表示部 43 設定スイッチ
45 可動装飾体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と電圧一定化回路とを直列に接続し、受光素子と電圧一定化回路との接続点を微分増幅回路及びパルス成形回路を介して信号出力端子に接続した回路構成を有し、前記電圧一定化回路は、エミッタ接地のトランジスタと、該トランジスタのベース・エミッタ間に挿入されるコンデンサと、このトランジスタのベース・コレクタ間に挿入される抵抗器とで構成され、前記トランジスタのコレクタが前記受光素子に接続されていることを特徴とする光学モーションセンサー。
【請求項2】
前記微分増幅回路は、結合コンデンサと反転増幅器とで構成され、電圧一定化回路のコレクタ電位の変化を結合コンデンサを介して反転増幅器に入力し、反転増幅器でコレクタ電位の変化分を増幅して出力することを特徴とする請求項1に記載の光学モーションセンサー。
【請求項3】
前記パルス成形回路は、二値化回路であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学モーションセンサー。
【請求項4】
前記受光素子は、一端を開口部とする筒状体の内部において筒状体の他端近傍に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の光学モーションセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114812(P2012−114812A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263827(P2010−263827)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000115773)リズム時計工業株式会社 (208)
【Fターム(参考)】