説明

光学式位置検出装置および光学式位置検出方法

【課題】温度センサ等を追加しなくても、環境温度の変化に応じた適正な補正を行うことのできる光学式位置検出装置および光学式位置検出方法を提供すること。
【解決手段】光学式位置検出装置10および光学式位置検出方法において、補正条件決定部64は、対象物体Obが存在しないデフォルト状態により位置検出部50で検出されたデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定し、位置検出部50により対象物体Obの二次元座標データを検出する際、補正条件に対応する補正が行われる。従って、環境温度を直接、測定しなくても、温度補正を行うことができるので、検出用光源12からの検出光の出射強度が環境温度によって変化した場合でも、対象物体Obの二次元座標データを精度よく検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の位置を光学的に検出する光学式位置検出装置および光学式位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物体を光学的に検出する光学式位置検出装置としては、例えば、複数の検出用光源の各々から透光部材を介して対象物体に向けて検出光を出射し、対象物体で反射した検出光が透光部材を透過して受光部で検出されるものが提案されている(特許文献1参照)。また、複数の検出用光源の各々から出射された検出光を、板状のライトガイドを介して出射し、対象物体で反射した検出光を受光部で検出する方式の光学式位置検出装置も提案されている(特許文献2、3参照)。
【0003】
かかる光学式位置検出装置では、複数の検出用光源のうちの一部の検出用光源が点灯した際の受光部での受光強度と、他の一部の検出用光源が点灯した際の受光部での受光強度との比較結果に基づいて対象物体の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−534554号公報
【特許文献2】特開2010−127671号公報
【特許文献3】特開2009−295318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光学式位置検出装置において検出用光源として用いられる発光ダイオード(LED)は、温度により、出射強度やピーク波長がシフトしてしまうため、特許文献1〜3に記載の構成のままでは、環境温度が変化した際、検出精度が著しく低下するという問題点がある。例えば、図11(a)において、環境温度が20℃のとき、対象物体のXY座標値(830,160)であると検出されている場合でも、環境温度が変化すると、対象物体のX座標値は、図11(a)に黒丸および実線L81で示すようにシフトする一方、対象物体のY座標値は、図11(a)に白丸および破線L82で示すようにシフトする。その結果、対象物体が実際の位置が同一であっても、図11(b)に示すように、環境温度が低い場合には、対象物体が中央寄りの位置にあると誤検出され、環境温度が高い場合には、対象物体が外側の位置にあると誤検出されてしまう。それ故、特許文献1〜3に記載の構成のままでは、環境温度が大きく変化するような場所では使用できない。
【0006】
かといって、光学式位置検出装置に温度センサーを追加し、かかる温度センサーでの検出結果に基づいて温度補正を行うと、部材を追加する必要がある分だけ、コストが嵩んでしまう。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、温度センサー等を追加しなくても、環境温度の変化に応じた適正な補正を行うことのできる光学式位置検出装置および光学式位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、対象物体の位置を光学的に検出する光学式位置検出装置であって、検出光を出射する複数の検出用光源と、該複数の検出用光源を順次点灯させる光源駆動部と、前記対象物体で反射した前記検出光を受光する受光部と、前記複数の検出用光源が順次点灯した際の前記検出光の受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の少なくとも二次元座標データを検出する位置検出部と、前記対象物体が存在しない状態で前記複数の検出用光源が順次点灯した際に前記位置検出部で検出されたデフォルト二次元座標データの前記第1座標値と前記第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定部と、を有し、前記位置検出部において前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際、前記補正条件に対応する補正が行われることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、検出光を出射する複数の検出用光源を順次点灯させた際の受光部での受光強度に基づいて対象物体の少なくとも二次元座標データを検出する検出動作を行う光学式位置検出方法であって、前記対象物体が存在しない状態で前記検出動作を行い、得られたデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定工程と、前記対象物体が存在する状態で前記検出動作を行った際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の二次元座標データを検出する位置検出工程と、を有し、前記位置検出工程では、前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際、前記補正条件に対応する補正を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明では、対象物体が存在しない状態で検出動作を行い、得られたデフォルト二次元座標データを得るとともに、かかるデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を設定し、かかる補正条件に基づいて、二次元座標データを検出する際に補正を行う。すなわち、対象物体が存在しない状態で検出動作を行うと、検出光の漏れ光のみが受光部に入射するので、得られたデフォルト二次元座標データにおいては、第1座標値と第2座標値とは、基本的には、同一の値になる。しかるに、環境温度の変化によって、複数の検出用光源において出射強度の変動があると、得られたデフォルト二次元座標データにおいては、第1座標値と第2座標値とは異なる値となり、第1座標値と第2座標値との比較結果は、複数の検出用光源に対する環境温度の影響が合成された値となる。それ故、デフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を設定し、かかる補正条件に基づいて、二次元座標データを検出する際に補正を行えば、温度を直接、測定しなくても、温度補正を行うことができる。それ故、本発明によれば、環境温度が大きく変化するような環境でも、対象物体の位置を精度よく検出することができる。
【0011】
本発明は、前記検出用光源が赤外光を出射する発光ダイオードである場合に適用すると特に効果的である。
【0012】
本発明において、前記位置検出部は、前記対象物体が存在する状態で前記複数の検出用光源が順次点灯した際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得部と、前記補正条件に基づいて前記第1二次元座標データに前記補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得部と、を備えている構成を採用することができる。
【0013】
かかる構成に対応する光学式位置検出方法においては、前記補正を行うにあたっては、前記位置検出工程において、前記対象物体が存在する状態で前記検出動作を行った際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得工程と、該第1二次元座標データ取得工程の後、前記補正条件により前記第1二次元座標データに前記補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得工程と、を行う。
【0014】
本発明において、前記位置検出部が前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際に前記補正条件に基づいて前記複数の検出用光源からの前記検出光の出射強度に前記補正を行う出射強度補正部を有している構成を採用してもよい。
【0015】
かかる構成に対応する光学式位置検出方法においては、前記補正を行うにあたっては、前記位置検出工程を行う際、前記補正条件に基づいて前記複数の検出用光源からの前記検出光の出射強度に前記補正を行う。
【0016】
本発明において、前記検出動作では、前記複数の検出用光源のうち、一部の検出用光源と他の一部の検出用光源とを交互に点灯させる第1点灯動作と、該第1点灯動作とは異なる組み合わせで、一部の検出用光源と他の一部の検出用光源とを交互に点灯させる第2点灯動作と、を行い、前記検出動作では、前記第1点灯動作時および前記第2点灯動作時のいずれにおいても、前記一部の検出用光源を点灯させた際の前記受光部での受光強度と、前記他の一部の検出用光源を点灯させた際の前記受光部での受光強度とが等しくなるように前記複数の検出用光源に対する駆動電流を調整したときの前記一部の検出用光源に対する駆動電流値と前記他の一部の検出用光源に対する駆動電流値との比較結果に基づいて前記二次元座標データを検出することが好ましい。かかる構成によれば、受光部において受光強度と出力電流との関係が温度によって変動した場合でも、かかる変動の影響を受けずに対象物体の二次元座標データを得ることができる。
【0017】
本発明は、前記一部の検出用光源から出射された検出光、および前記他の一部の検出用光源から出射された検出光は、ライトガイドによって、当該ライトガイドの他方端から一方端側に向けて出射強度が減少する検出光、および一方側から他方側に向けて出射強度が増大する検出光として出射される光学式位置検出方法や光学式位置検出装置に適用すると効果が大きい。すなわち、ライトガイドによって所定の光強度分布を形成する方式の場合、検出用光源からの出射光量が温度変化によって変動すると、光強度分布が変化するため、検出用光源の温度特性の影響を受けやすいが、本発明によれば、かかる方式の場合でも、温度変化の影響を適正に補正することができるので、検出精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した位置検出システムの要部等を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した光学式位置検出装置で用いた検出光の説明図である。
【図3】本発明を適用した位置検出システムに用いた光学式位置検出装置の電気的構成を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した光学式位置検出装置において検出用光源を所定のパターンで順次点灯させて光強度分布を形成する様子を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した光学式位置検出装置において、検出用光源から出射された検出光によって位置検出用の光強度分布が形成される様子を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した光学式位置検出装置での位置検出原理を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明を適用した光学式位置検出装置で用いた検出用光源の温度特性を示すグラフである。
【図8】本発明を適用した光学式位置検出装置において温度補正に利用したデフォルト二次元座標データの説明図である。
【図9】本発明を適用した光学式位置検出装置の動作を示す説明図である。
【図10】本発明を適用した別の光学式位置検出装置の電気的構成を示す説明図である。
【図11】光学式位置検出装置において環境温度の変化に伴って検出結果がシフトする様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、表示装置の表示面等の情報が表示される視認面に沿う方向において互いに交差する軸をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に交差する軸をZ軸として説明する。従って、Z軸方向は、視認面に対して交差する方向であり、以下の説明において、Z軸方向は、視認面に対する法線方向である。また、以下に参照する図面では、X軸方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とし、Y軸方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側として示し、Z軸方向において視認面(表示面)から離間する方向(一方側)をZ1側とし、他方側をZ2側として示してある。また、以下の説明では、二次元座標データをXY座標データとする。このため、二次元座標データにおける「第1座標値」はX座標値に相当し、「第2座標値」はY座標値に相当する。
【0020】
[位置検出システムの構成]
(位置検出システムの全体構成)
図1は、本発明を適用した位置検出システムの要部等を示す説明図である。図2は、本発明を適用した光学式位置検出装置で用いた検出光の説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、対象物体で反射した光が受光部で受光される様子を平面的に示す説明図、対象物体で反射した光が受光部で受光される様子を断面的に示す説明図、およびライトガイド内での検出光の減衰状態を示す説明図である。
【0021】
図1および図2(a)、(b)に示すように、本形態の位置検出システム100は、有機エレクトロルミネッセンス装置やプラズマ表示装置等の直視型電気光学装置からなる表示装置8(視認面構成部材)と、表示装置8の視認面80(表示面)側に位置する対象物体Obの位置を光学的に検出する光学式位置検出装置10とを有している。
【0022】
光学式位置検出装置10は、視認面80に対してZ軸方向の一方側Z1で重なる空間を検出対象空間10R(検出光L2の出射空間)としており、検出対象空間10Rに後述するライトガイド13を介して検出光L2を出射する複数の検出用光源12(検出用光源12A〜12D)と、検出用光源12から出射された検出光L2のうち、検出対象空間10R内において対象物体Obで反射した検出光L2(検出光L3)の一部を検出する受光部30とを備えている。
【0023】
本形態においては、複数の検出用光源12として、4つの検出用光源12A〜12Dが用いられている。複数の検出用光源12はいずれも、LED(発光ダイオード)等により構成され、赤外光からなる検出光L2を発散光として出射する。すなわち、検出光L2は、指等の対象物体Obにより効率的に反射される波長域を有することが好ましいことから、人体の表面での反射率の高い赤外域にピークを備えている。例えば、検出光L2は、可視光領域に近い近赤外線、例えば波長850nm付近にピークを有する光である。
【0024】
また、本形態の光学式位置検出装置10は、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の透明な樹脂板等からなるライトガイド13を備えており、検出用光源12から出射された検出光L2は、ライトガイド13を介してZ軸方向の一方側Z1に出射され、かかる検出光L2が出射される空間によって検出対象空間10Rが構成されている。ここで、ライトガイド13は表示装置8に対してZ軸方向の一方側Z1に重ねて配置されている。このため、表示装置8が生成した画像は、ライトガイド13の光出射面13sに表示される。それ故、本形態では、ライトガイド13の光出射面13sは、表示装置8の実質的な表示面として利用される。
【0025】
本形態において、ライトガイド13は、略長方形の平面形状を有しており、ライトガイド13において、検出対象空間10Rに向いている面が光出射面13sであり、光出射面13sに交差する外周側面13mにおいて、4つの角部13a〜13dには、4つの検出用光源12(検出用光源12A〜12D)が発光面を向けている。従って、ライトガイド13の角部13a〜13dは、検出用光源12から出射された検出光L2が入射する光入射部13e〜13hとして用いられている。本形態において、光入射部13e〜13hは、角部13a〜13dを面取りした部分からなる。また、4つの検出用光源12は、ライトガイド13において対角に位置する角部に中心光軸を向けている。より具体的には、角部13aに配置された検出用光源12Aは、対角の角部13bに中心光軸を向け、角部13bに配置された検出用光源12Bは、対角の角部13aに中心光軸を向けている。同様に、角部13cに配置された検出用光源12Cは、対角の角部13dに中心光軸を向け、角部13dに配置された検出用光源12Dは、対角の角部13cに中心光軸を向けている。
【0026】
かかるライトガイド13の背面13tには、微細な凹凸等からなる反射部が設けられており、このような反射部によって、角部13a〜13dから入射して内部を伝播する光は、その伝播方向に進むに従って徐々に偏向されて光出射面13sよりZ軸方向の一方側Z1に向けて出射される。従って、検出用光源12から出射された検出光L2は、ライトガイド13の角部13a〜13dから入射した後、ライトガイド13内部を伝播しながら光出射面13sから出射される。例えば、検出用光源12Aから出射された検出光L2aは、ライトガイド13の内部において矢印Aで示す方向に進行しながら、光出射面13sから出射される。検出用光源12Bから出射された検出光L2bは、ライトガイド13の内部において矢印Aで示す方向とは逆方向に進行しながら、光出射面13sから出射される。検出用光源12Cから出射された検出光L2cは、ライトガイド13の内部において矢印Cで示す方向に進行しながら、光出射面13sから出射される。検出用光源12Dから出射された検出光L2dは、ライトガイド13の内部において矢印Cで示す方向とは逆方向に進行しながら、光出射面13sから出射される。
【0027】
かかる構成の光学式位置検出装置10においては、例えば、ライトガイド13から検出対象空間10Rに出射される検出光L2aの光量は、図2(c)に実線で示すように、検出用光源12Aからの距離に伴って減衰する。また、ライトガイド13から検出対象空間10Rに出射される検出光L2bの光量は、図2(c)に点線で示すように、検出用光源12Bからの距離に伴って減衰する。他の検出用光源12C、12Dから出射された検出光L2c、L2dも同様に減衰しながら光出射面13sから出射される。従って、検出光L2は、図5等を参照して後述する光強度分布を検出対象空間10Rに形成する。
【0028】
なお、ライトガイド13の光出射側には、検出光L2a〜L2dの均一化を図るために、必要に応じて、プリズムシートや光散乱板等の光学シートが配置される場合もある。また、本形態では、検出光L2として赤外光が用いられており、表示装置8において画像の表示に用いられる光(可視光)とは波長が相違する。このため、ライトガイド13の背面13tあるいは光出射面13sに赤外光に対する凹凸等の反射部を設けても、画像の表示には大きな支障がない。
【0029】
(受光部30の構成)
受光部30は、フォトダイオードやフォトトランジスター等の受光素子からなり、検出対象空間10Rの外側のうち、ライトガイド13の辺部の略中央位置で検出対象空間10Rに受光部を向けている。本形態において、受光部30は、検出光L2の中心ピークと略重なる位置に感度領域を備えたフォトダイオード等からなる。
【0030】
(参照用光源12Rの構成)
本形態の光学式位置検出装置10は、検出対象空間10Rを経由せずに受光部30に参照光Lrを入射させる参照用光源12Rを備えており、かかる参照用光源12Rは、検出用光源12と同様、可視光領域に近い近赤外線、例えば波長850nm付近にピークを有する光を発散光として出射するLEDである。このような参照用光源12Rを利用すれば、検出用光源12A〜12Dや受光部30の初期条件を設定する際、参照用光源12Rから出射された参照光Lrの受光部30での検出強度を基準とすることができる。また、後述する方法で対象物体Obの二次元座標データ(XY座標データ)を検出する際、受光部30での参照光Lrの検出強度と、対象物体Obで反射した検出光L3の受光部30での検出強度とを比較した結果等を利用することができる。
【0031】
(光学式位置検出装置10の電気的構成)
図3は、本発明を適用した位置検出システム100に用いた光学式位置検出装置10の電気的構成を示す説明図である。本形態の位置検出システム100に用いた光学式位置検出装置10において、検出用光源12、参照用光源12Rおよび受光部30は、図3に示す制御用IC70に電気的に接続されており、かかる制御用IC70は制御装置60に電気的接続されている。制御用IC70は、基準クロック、A相基準パルス、A相基準パルスに対して逆相のB相基準パルス、タイミング制御パルス、同期クロック等を生成する複数の回路(図示せず)を有している。また、制御用IC70は、A相基準パルスに基づいて所定の駆動パルスを生成するパルス発生器75aと、B相基準パルスに基づいて所定の駆動パルスを生成するパルス発生器75bと、パルス発生器75aおよびパルス発生器75bが生成した駆動パルスを検出用光源12(検出用光源12A〜12D)および参照用光源12Rの何れに印加するかを制御するスイッチ部76とを有している。かかるパルス発生器75a、75b、およびスイッチ部76は光源駆動部51を構成している。
【0032】
また、制御用IC70は、受光部30での検出結果を増幅する増幅部等を備えた受光量測定部73と、受光量測定部73での測定結果に基づいてパルス発生器75a、75bを制御して検出用光源12および参照用光源12Rに供給する駆動パルスの電流レベルを調整する調整量算出部74とを備えている。かかる受光量測定部73および調整量算出部74は、位置検出部50の一部の機能を担っている。
【0033】
ここで、制御用IC70は、パーソナルコンピューター等の上位の制御装置60の制御部61によって制御されており、かかる制御装置60は、受光量測定部73および調整量算出部74とともに位置検出部50を構成する座標取得部55を有している。従って、本形態において、位置検出部50は、制御用IC70の受光量測定部73および調整量算出部74と、上位の制御装置60(パーソナルコンピューター)の座標取得部55とによって構成されている。
【0034】
本形態では、後述する理由から、座標取得部55は、対象物体Obが存在する状態で複数の検出用光源12が順次点灯した際の受光部30での受光強度に基づいて対象物体Obの第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得部551と、第1二次元座標データに補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得部552とを備えている。また、制御装置60は、対象物体Obが存在しないデフォルト状態で複数の検出用光源12が順次点灯した際に位置検出部50で検出されたデフォルト二次元座標データ(XY座標データ)のX座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定部64と、X座標値とY座標値との比較結果に対応する補正データが記憶されている補正データメモリー66とを備えている。なお、第2二次元座標データ取得部552は、補正データメモリー66に記憶されている補正データのうち、補正条件決定部64により指定された補正データに基づいて補正を行う。
【0035】
本形態において、座標取得部55や補正条件決定部64は、制御装置60において、メモリー(図示せず)に予め格納されたプログラムに基づいて行われる動作を機能的に示す部分である。
【0036】
(光強度分布の説明)
図4は、本発明を適用した光学式位置検出装置10において検出用光源12(検出用光源12A〜12D)を所定のパターンで順次点灯させて光強度分布を形成する様子を示す説明図である。図5は、本発明を適用した光学式位置検出装置10において、検出用光源12から出射された検出光L2によって位置検出用の光強度分布が形成される様子を示す説明図である。なお、図4では、点灯している検出用光源12についてはグレーで表してある。
【0037】
図1および図2において、本形態の光学式位置検出装置10では、検出用光源12Aが点灯する一方、他の検出用光源12B〜12Dが消灯状態にあると、検出対象空間10Rには、X軸方向の一方側X1およびY軸方向の一方側Y1の角部をピークとする光強度分布が形成され、かかる光強度分布において強度は直線的に変化している。また、検出用光源12Bが点灯する一方、他の検出用光源12A、12C、12Dが消灯状態にあると、検出対象空間10Rには、X軸方向の他方側X2およびY軸方向の他方側Y2の角部をピークとする光強度分布が形成され、かかる光強度分布において強度は直線的に変化している。また、検出用光源12Cが点灯する一方、他の検出用光源12A、12B、12Dが消灯状態にあると、検出対象空間10Rには、X軸方向の他方側X2およびY軸方向の一方側Y1の角部をピークとする光強度分布が形成され、かかる光強度分布において強度は直線的に変化している。また、検出用光源12Dが点灯する一方、他の検出用光源12A〜12Cが消灯状態にあると、検出対象空間10Rには、X軸方向の一方側X1およびY軸方向の他方側Y2の角部をピークとする光強度分布が形成され、かかる光強度分布において、強度は直線的に変化している。
【0038】
従って、図4(a)に示すように、検出用光源12A、12Dが点灯状態にあって他の検出用光源12B、12Cが消灯状態にあると、図5(a)に示すように、X軸方向の一方側X1から他方側X2に向かって検出光の強度が単調減少するX座標検出用第1光強度分布L2Xa(第1座標検出用第1光強度分布)が形成される。本形態において、X座標検出用第1光強度分布L2Xaでは、X軸方向の一方側X1から他方側X2に向かって検出光L2の強度が直線的に減少し、かつ、Y軸方向では、検出光L2の強度が一定である。
【0039】
これに対して、図4(b)に示すように、検出用光源12B、12Cが点灯状態にあって他の検出用光源12A、12Dが消灯状態にあると、図5(b)に示すように、X軸方向の他方側X2から一方側X1に向かって検出光の強度が単調減少するX座標検出用第2光強度分布L2Xb(第1座標検出用第2光強度分布)が形成される。本形態において、X座標検出用第2光強度分布L2Xbでは、X軸方向の他方側X2から一方側X1に向かって検出光L2の強度が直線的に減少し、かつ、Y軸方向では、検出光L2の強度が一定である。
【0040】
ここで、ライトガイド13および検出対象空間10Rは、Z軸方向からみたときいずれも長方形であって、双方の中心が一致している。それ故、ライトガイド13を基準に光強度分布をX軸方向で対称に形成すれば、検出対象空間10Rにおいても、光強度分布をX軸方向で対称に形成することができる。
【0041】
また、図4(c)に示すように、検出用光源12A、12Cが点灯状態にあって他の検出用光源12B、12Dが消灯状態にあると、図5(c)に示すように、Y軸方向の一方側Y1から他方側Y2に向かって検出光の強度が単調減少するY座標検出用第1光強度分布L2Ya(第2座標検出用第1光強度分布)が形成される。本形態において、Y座標検出用第1光強度分布L2Yaでは、Y軸方向の一方側Y1から他方側Y2に向かって検出光L2の強度が直線的に減少し、かつ、X軸方向では、検出光L2の強度が一定である。
【0042】
これに対して、図4(d)に示すように、検出用光源12B、12Dが点灯状態にあって他の検出用光源12A、12Cが消灯状態にあると、図5(d)に示すように、Y軸方向の他方側Y2から一方側Y1に向かって検出光の強度が単調減少するY座標検出用第2光強度分布L2Yb(第2座標検出用第2光強度分布)が形成される。本形態において、Y座標検出用第2光強度分布L2Ybでは、Y軸方向の他方側Y2から一方側Y1に向かって検出光L2の強度が直線的に減少し、かつ、X軸方向では、検出光L2の強度が一定である。
【0043】
ここで、ライトガイド13および検出対象空間10Rは、Z軸方向からみたときいずれも長方形であって、双方の中心が一致している。それ故、ライトガイド13を基準に光強度分布をY軸方向で対称に形成すれば、検出対象空間10Rにおいても、光強度分布をY軸方向で対称に形成することができる。
【0044】
(X座標値検出の基本原理)
図6は、本発明を適用した光学式位置検出装置10での位置検出原理を模式的に示す説明図であり、図6(a)、(b)は、対象物体Obで反射した検出光の強度を示す説明図、および対象物体Obで反射した検出光の強度が等しくなるように検出光の光強度分布を調整する様子を示す説明図である。
【0045】
本形態の光学式位置検出装置10においては、検出用光源12を点灯させて検出対象空間10Rに検出光L2の光強度分布を形成するとともに、対象物体Obで反射した検出光L2を受光部30で検出し、かかる受光部30での検出結果に基づいて、位置検出部50は、検出対象空間10R内の対象物体Obの位置を検出する。そこで、図6を参照して座標検出の原理を説明する。
【0046】
本形態の光学式位置検出装置10においては、図5(a)、(b)を参照して説明したX座標検出用第1光強度分布L2XaおよびX座標検出用第2光強度分布L2Xbを利用してX軸方向の位置(X座標値/第1座標値)を検出する。その際、検出用光源12A、12Dと検出用光源12B、12Cとを逆相に駆動する。より具体的には、X座標検出用第1期間において、検出用光源12A、12Dを点灯させる一方、検出用光源12B、12Cを消灯させ、図5(a)に示すX座標検出用第1光強度分布L2Xaを形成する。次に、検出用光源12A、12Dを消灯させる一方、検出用光源12B、12Cを点灯させ、図5(b)に示すX座標検出用第2光強度分布L2Xbを形成する。従って、検出対象空間10Rに対象物体Obが配置されると、対象物体Obにより検出光L2が反射され、その反射光の一部が受光部30により検出される。ここで、X座標検出用第1光強度分布L2Xa、およびX座標検出用第2光強度分布L2Xbは、一定の分布を有している。それ故、位置検出部50は、X座標検出用第1期間における受光部30での検出強度と、X座標検出用第2期間における受光部30での検出強度との比較を行えば、図6を参照して以下に説明する方法等により、対象物体ObのX座標値を検出することができる。
【0047】
まず、図6(a)に示すように、光源駆動部51は、X座標検出用第1期間およびX座標検出用第2期間においてX座標検出用第1光強度分布L2XaおよびX座標検出用第2光強度分布L2Xbを絶対値が等しく、かつ、X軸方向で逆向きになるように順次形成する。この状態で、X座標検出用第1期間における受光部30での検出値LXaと、X座標検出用第2期間における受光部30での検出値LXbとが等しければ、対象物体ObがX軸方向の中央に位置することが分る。
【0048】
これに対して、X座標検出用第1期間における受光部30での検出値LXaと、X座標検出用第2期間における受光部30での検出値LXbとが相違している場合、光源駆動部51は、検出値LXa、LXbが等しくなるように、検出用光源12に対する制御量(駆動電流)を調整して、図6(b)に示すように、再度、X座標検出用第1期間においてX座標検出用第1光強度分布L2Xaを形成し、X座標検出用第2期間においてX座標検出用第2光強度分布L2Xbを順次形成する。そして、X座標検出用第1期間における受光部30での検出値LXaと、X座標検出用第2期間における受光部30での検出値LXbとを等しくする。かかる差動を行った際の検出用光源12A、12Dに対する制御量(電流値)と、検出用光源12A、12Dに対する制御量(電流値)との比あるいは差等により、位置検出部50は、対象物体ObのX座標値を検出することができる。また、X座標検出用第1期間での検出用光源12に対する制御量の調整量ΔLXaと、X座標検出用第2期間での検出用光源12に対する制御量の調整量ΔLXbとの比あるいは差等により、対象物体ObのX座標値を検出することができる。かかる方法によれば、検出光L2以外の環境光、例えば、外光に含まれる赤外成分が受光部30に入射した場合でも、検出値LXa、LXbが等しくなるように検出用光源12に対する制御量の調整を行なう際、環境光に含まれる赤外成分の強度が相殺されるので、環境光に含まれる赤外成分が検出精度に影響を及ぼすことがない。
【0049】
(Y座標値検出の基本原理)
本形態の光学式位置検出装置10においては、図5(c)、(d)を参照して説明したY座標検出用第1光強度分布L2YaおよびY座標検出用第2光強度分布L2Ybを利用してY軸方向の位置(Y座標/第2座標値)を検出する。より具体的には、検出用光源12A、12Cと検出用光源12B、12Dとを逆相に駆動する。すなわち、図4(c)に示すように、Y座標検出用第1期間においては、検出用光源12A、12Cを点灯させる一方、検出用光源12B、12Dを消灯させ、図5(c)に示すY座標検出用第1光強度分布L2Yaを形成する。次に、Y座標検出用第2期間において、図4(d)に示すように、検出用光源12A、12Cを消灯させる一方、検出用光源12B、12Dを点灯させ、図5(d)に示すY座標検出用第2光強度分布L2Ybを形成する。従って、位置検出部50は、Y座標検出用第1期間における受光部30での検出値LYaと、Y座標検出用第2期間における受光部30での検出値LYbとを比較する等、X座標値を検出した方法と同様な方法により、対象物体ObのY座標値を検出することができる。
【0050】
(参照用光源12Rを用いての座標検出)
上記の座標検出を行う際、検出光L2のみを用いてもよいが、本形態の光学式位置検出装置10では、参照用光源12Rが設けられている。従って、対象物体ObのX座標値およびY座標値を検出する際、検出用光源12同士の差動に代えて、受光部30での参照光Lrの検出強度と、対象物体Obで反射した検出光L3の受光部30での検出強度とを比較した結果等を利用することができる。より具体的には、受光部30での検出強度が等しくなるように参照用光源12Rと一部の検出用光源12とを差動させた際の検出用光源12に対する駆動電流と、受光部30での検出強度が等しくなるように参照用光源12Rと他の一部の検出用光源12とを差動させた際の検出用光源12に対する駆動電流との差や比を用いて対象物体Obの位置を検出することができる。ここで、検出用光源12および参照用光源12Rは共通の光源駆動部51により駆動されている。このため、検出用光源12および参照用光源12Rに供給される駆動信号に強度変動が発生しても、かかる強度変動の影響等を受けずに対象物体Obの位置を検出することができる。
【0051】
(検出用光源12の温度特性)
図7は、本発明を適用した光学式位置検出装置10で用いた検出用光源12の温度特性を示すグラフであり、図7(a)、(b)は、環境温度と相対放射束(出射光量)との関係を示すグラフ、および環境温度とピーク波長との関係を示すグラフである。
【0052】
図7に示すように、本形態の光学式位置検出装置10において検出用光源12として用いられる発光ダイオード(LED)は、温度により、出射光量やピーク波長がシフトしてしまう。すなわち、図7(a)に示すように、検出用光源12は、温度が低下すると出射光量が増大する。また、図7(b)に示すように、検出用光源12は、温度が低下するとピーク波長が短波長側にシフトする。従って、光学式位置検出装置10の使用環境の温度が変化すると、対象物体Obの位置を検出した際、図5を参照して説明した光強度分布のバランスが崩れるため、以下に説明した温度補正を行わないと、図11を参照して説明したように、検出精度が低下する。
【0053】
(温度補正の基本原理)
図8は、本発明を適用した光学式位置検出装置10において温度補正に利用したデフォルト二次元座標データの説明図であり、図8(a)、(b)は、デフォルト二次元座標データの座標値の温度変化を示すグラフ、およびデフォルト二次元座標データの座標値の差の温度変化を示すグラフである。
【0054】
本形態では、光学式位置検出装置10を製造した後の最終調整段階で、環境温度が+20℃の条件、かつ、検出対象空間10Rに対象物体Obが存在しないデフォルト状態で、図4〜図6を参照して説明した位置検出動作を行う。その際、検出対象空間10Rに対象物体Obが存在しない状態でも、検出光L2の漏れ光の一部が受光部30に入射するので、かかる入射光の受光部30での受光強度に基づいて、位置検出が行われる。その結果、得られた二次元座標データがデフォルト二次元座標データである。かかるデフォルト二次元座標データは、本来、検出対象空間10Rの中心位置(二次元座標データ(511.5,511.5)に相当する。但し、検出用光源12のレイアウト等の影響により、受光部30に対する漏れ光の入射量のバランスがずれている場合、デフォルト二次元座標データは、検出対象空間10Rの中心位置(二次元座標データ(511.5,511.5)からずれることになる。そこで、光学式位置検出装置10では、環境温度が+20℃の条件で求めたデフォルト二次元座標データをデフォルト値として設定してある。
【0055】
このため、光学式位置検出装置10を実使用時には、検出対象空間10Rに対象物体Obが存在しないデフォルト状態での漏れ光の入射量のバランスのずれについては既に補正されているので、以降、環境温度が20℃の条件でデフォルト二次元座標データを検出すると、デフォルト二次元座標データは、検出対象空間10Rの中心位置(二次元座標データ(511.5,511.5)となる。
【0056】
本形態では、環境温度が20℃から変動すると、検出用光源12(発光ダイオード)の温度特性の影響を受けて、デフォルト二次元座標データがシフトし、かつ、図8に示すように、デフォルト二次元座標データのX座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)のシフト量に差があることを利用して、対象物体Obの位置を検出する際、温度補正を行う。
【0057】
より具体的には、図8(a)に示すように、環境温度が20℃の条件でデフォルト二次元座標データを検出すると、デフォルト二次元座標データは、検出対象空間10Rの中心位置(二次元座標データ(511.5,511.5))となる。これに対して、環境温度が20℃より高くなると、X座標値は、図8(a)に黒丸と実線L86で示すように、例えば、小さい値にシフトし、環境温度が20℃より低くなると、X座標値は大きい値にシフトする。また、環境温度が20℃より高くなると、Y座標値も、図8(a)に白丸と実線L87で示すように、例えば、X座標値と同様、小さい値にシフトし、環境温度が20℃より低くなると、Y座標値も、X座標値と同様、大きい値にシフトする。ここで、X座標値のシフト量とY座標値のシフト量とは相違する。従って、X座標値とY座標値との比較結果として、例えば、X座標値とY座標値との差(X座標値−Y座標値)は、図8(b)に実線L80で示すように、環境温度に対して正の相関性を示す。それ故、光学式位置検出装置10を使用する際、デフォルト二次元座標データを検出し、かかるデフォルト二次元座標データにおけるX座標値とY座標値との比較結果を検出すれば、環境温度を検出できることになり、かかる差を用いれば、対象物体Obの位置を検出する際、適正な温度補正を行えることになる。
【0058】
そこで、本形態では、図3に示すように、制御装置60には、対象物体Obが存在しないデフォルト状態で位置検出部50により検出されたデフォルト二次元座標データ(XY座標データ)のX座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定部64と、第1座標値(X座標値)と第2座標値(Y座標値)との比較結果に対応する補正データが記憶されている補正データメモリー66とが設けられている。本形態において、補正条件決定部64は、デフォルト二次元座標データ(XY座標データ)のX座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との差に基づいて補正条件を決定する。また、補正データメモリー66には、環境温度が40℃以上の場合に用いられる補正テーブルTAと、環境温度が0℃以上、20℃未満の場合に用いられる補正テーブルTBと、環境温度が0℃未満の場合に用いられる補正テーブルTCとが格納されており、環境温度が20℃以上、40℃未満の場合には、補正を行わないので、かかる環境温度に対応する補正テーブルは格納されていない。なお、補正データメモリー66に格納されている補正テーブルTA、TB、TCは、光学式位置検出装置10の最終調整工程において光学式位置検出装置10を各温度において位置検出を行って実際の対象物体Obの位置と検出結果とのずれを求め、かかるずれを補正するために設定された各座標データ毎のルックアップデーブルからなる。
【0059】
また、座標取得部55には、受光部30での受光強度に基づいて対象物体Obの第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得部551と、補正条件決定部64により設定された補正条件に基づいて、第1二次元座標データに補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得部552とが設けられており、第2二次元座標データ取得部552により取得された第2二次元座標データを対象物体Obの真の二次元座標データ(補正後の二次元座標データ)として利用する。なお、デフォルト二次元座標データは、位置検出部50のうち、第1二次元座標データ取得部551により取得された二次元座標データである。
【0060】
(位置検出動作)
図9は、本発明を適用した光学式位置検出装置10の動作を示す説明図であり、図9(a)、(b)は、検出動作全体の処理の要部を示すフローチャート、および温度補正の処理内容の一例を示す説明図である。かかる処理は、制御装置60において、制御部61の制御の下、メモリー(図示せず)に予め格納されたプログラムに基づいて実施される。
【0061】
本形態では、図9(a)に示すように、ステップST11において電源がオンされると、ステップST12、ST13に示す補正条件決定工程ST1が行われる。より具体的には、ステップST12において、対象物体Obが存在しないデフォルト状態で検出動作を行ってデフォルト二次元座標データを得た後、ステップST13において、デフォルト二次元座標データのX座標値とY座標値との比較結果に基づいて現在の環境温度を検出し、次に行う位置検出工程ST2で行う補正条件を決定する。すなわち、ステップST13においては、位置検出工程ST2において補正を行う際、補正データメモリー66に格納されている補正テーブルTA、TB、TCのいずれを用いるかを決定する。なお、ステップST12において、デフォルト状態で検出動作を行っている期間中は、その旨を表示装置8で表示する。
【0062】
次に、ステップST14〜ST17に示す位置検出工程ST2において、対象物体Obの位置検出が行われる。より具体的には、まず、ステップST14において、検出対象空間10Rに対象物体Obが存在する状態で、複数の検出用光源12を順次点灯させ、ステップST15において、受光部30での受光強度に基づいて対象物体Obの第1二次元座標データ(補正前の二次元座標データ)を取得する(第1二次元座標データ取得工程)。次に、ステップST16において、補正条件決定工程ST1で決定された補正条件により第1二次元座標データに温度補正を行い、ステップST17において、第1二次元座標データを温度補正してなる第2二次元座標データを取得する(第2二次元座標データ取得工程)。
【0063】
しかる後には、ステップST18において、終了の指示があるか否かを判断し、終了の指示がない場合、ステップST14に戻って上記の処理を繰り返し、終了の指示があった場合、ステップST19において処理を終了する。
【0064】
なお、ステップST16での温度補正は、例えば、図9(b)に示すように、ステップST21で温度補正を開始した後、まず、ステップST22、ST24、ST26において、ステップST13で検出した温度がいずれかを判断する。ステップST22において環境温度が40℃以上であると判断した場合、ステップST23において補正テーブルTAを用いて第1二次元座標データを補正し、ステップST24において環境温度が0℃未満であると判断した場合、ステップST25において補正テーブルTCを用いて第1二次元座標データを補正し、ステップST26において環境温度が20℃未満であると判断した場合、ステップST27において補正テーブルTBを用いて第1二次元座標データを補正する。ステップST22、ST24、ST26において、環境温度が40℃以上、0℃未満、20℃未満のいずれでもないと判断した場合、環境温度が20℃以上、40℃未満であるので、温度補正を行わずに、ステップST28において温度補正を終了する。
【0065】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の光学式位置検出装置10および光学式位置検出方法において、補正条件決定部64は、補正条件決定工程ST1において、対象物体Obが存在しないデフォルト状態により位置検出部50で検出されたデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定し、位置検出工程ST2において、位置検出部50により、対象物体Obの二次元座標データを検出する際、補正条件に対応する補正が行われる。すなわち、対象物体Obが存在しない状態で検出動作を行うと、検出光L2の漏れ光のみが受光部30に入射するので、得られたデフォルト二次元座標データにおいては、第1座標値と第2座標値とは、基本的には、同一の値になる。しかるに、環境温度の変化によって、複数の検出用光源12において出射強度の変動があると、得られたデフォルト二次元座標データにおいては、第1座標値と第2座標値とは異なる値となり、第1座標値と第2座標値との比較結果は、複数の検出用光源12に対する環境温度の影響が合成された値となる。それ故、デフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を設定し、かかる補正条件に基づいて、対象物体の二次元座標データを検出する際に補正を行えば、温度を直接、測定しなくても、温度補正を行うことができる。それ故、本形態によれば、環境温度が大きく変化するような環境でも、対象物体Obの位置を精度よく検出することができる。
【0066】
特に本形態において、検出用光源12が赤外光を出射する発光ダイオードであるため、本発明を適用した場合の効果が顕著である。すなわち、検出用光源12が赤外光を出射する発光ダイオードである場合、環境温度が変化すると、検出用光源12の出射強度およびピーク波長が変化するため、対象物体Obの検出精度に影響が及びやすいが、本形態では、実際に位置検出を行って得たデフォルト二次元座標データに基づいて補正を行う。このため、検出用光源12の出射強度およびピーク波長の温度変化の影響を纏めて補正するので、検出用光源12が赤外光を出射する発光ダイオードであっても環境温度の変化を受けずに正確な位置検出を行うことができる。また、検出光L2は赤外光であるため、表示装置8の表示面と重なる位置に検出対象空間10Rを設定した場合でも、検出光L2が画像の視認を妨げない。
【0067】
また、本形態では、位置検出工程ST2において、位置検出部50の第1二次元座標データ取得部551によって対象物体Obが存在する状態で対象物体Obの第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得工程を行い、その後、位置検出部50の第2二次元座標データ取得部552によって第1二次元座標データに補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得工程を行う。このため、温度補正を行う場合でも、ソフト面で対応することができるという利点がある。
【0068】
また、本形態においては、第1点灯動作時および第2点灯動作時において受光部30での受光強度が等しくなるように複数の検出用光源12を差動させた結果に基づいて二次元座標データを検出する。このため、受光部30において受光強度と出力電流との関係が温度によって変動した場合でも、かかる変動の影響を受けずに対象物体Obの二次元座標データを得ることができる。
【0069】
また、本形態の光学式位置検出装置10は、ライトガイド13によって光強度分布を形成するタイプであるため、検出用光源12からの出射光量が温度変化によって変動すると、光強度分布が変化する等、検出用光源12の温度特性の影響を受けやすいが、本形態によれば、かかる方式の場合でも、温度変化の影響を適正に補正することができるので、検出精度の低下を防止することができる。
【0070】
[別の実施の形態]
図10は、本発明を適用した別の光学式位置検出装置10の電気的構成を示す説明図である。上記実施の形態では、位置検出工程ST2において対象物体Obの二次元座標データを検出する際に補正条件に対応する補正を行うにあたって、対象物体Obが存在する状態で対象物体Obの第1二次元座標データを取得した後、かかる第1二次元座標データに補正を行ったが、本形態では、対象物体Obの二次元座標データを検出する際に検出用光源12からの検出光L2の出射強度に補正を行う。このため、図10に示すように、本形態の光学式位置検出装置10では、制御装置60には、位置検出部50が対象物体Obの二次元座標データを検出する際に補正条件に基づいて調整量算出部74を制御する出射強度補正部68が設けられており、図3を参照して説明した第1二次元座標データ取得部551や第2二次元座標データ取得部552が設けられていない。その他の構成は、前記の実施の形態と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0071】
かかる構成の光学式位置検出装置10でも、図9(a)を参照して説明したように、補正条件決定工程ST1では、対象物体Obが存在しないデフォルト状態で検出動作を行ってデフォルト二次元座標データを得た後、デフォルト二次元座標データのX座標値とY座標値との比較結果に基づいて現在の環境温度を検出し、補正条件を決定する。そして、位置検出工程ST2において対象物体Obの位置検出を行う際、補正条件決定工程ST1で決定された補正条件により、出射強度補正部68は、調整量算出部74を制御し、検出用光源12に供給する駆動電流を補正する。このため、環境温度を直接、測定しなくても、温度補正を行うことができる等、前記の実施の形態と同様な効果を奏する。
【0072】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、デフォルト二次元座標データのX座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との比較結果に基づいて補正条件を決定するにあたって、X座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との差を用いたが、X座標値(第1座標値)とY座標値(第2座標値)との比、あるいは差および比の双方に基づいて補正条件を決定してもよい。
【0073】
上記実施の形態では、ライトガイド13によって光強度分布を形成するタイプの光学式位置検出装置10に本発明を適用した例を説明したが、特表2003−534554号公報に記載されている光学式位置検出装置10のように、ライトガイドを用いないタイプの光学式位置検出装置10に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
8・・表示装置(視認面構成部材)、10・・光学式位置検出装置、10R・・検出対象空間、12、12A〜12D・・検出用光源、12R・・参照用光源、13・・ライトガイド、30・・受光部、50・・位置検出部、64・・補正条件決定部、66・・補正データメモリー、100・・位置検出システム、551・・第1二次元座標データ取得部、552・・第2二次元座標データ取得部、Ob・・対象物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体の位置を光学的に検出する光学式位置検出装置であって、
検出光を出射する複数の検出用光源と、
該複数の検出用光源を順次点灯させる光源駆動部と、
前記対象物体で反射した前記検出光を受光する受光部と、
前記複数の検出用光源が順次点灯した際の前記検出光の受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の少なくとも二次元座標データを検出する位置検出部と、
前記対象物体が存在しない状態で前記複数の検出用光源が順次点灯した際に前記位置検出部で検出されたデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定部と、
を有し、
前記位置検出部において前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際、前記補正条件に対応する補正が行われることを特徴とする光学式位置検出装置。
【請求項2】
前記検出用光源は、赤外光を出射する発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の光学式位置検出装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、前記対象物体が存在する状態で前記複数の検出用光源が順次点灯した際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得部と、前記補正条件に基づいて前記第1二次元座標データに前記補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得部と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式位置検出装置。
【請求項4】
前記位置検出部が前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際に前記補正条件に基づいて前記複数の検出用光源からの前記検出光の出射強度に前記補正を行う出射強度補正部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式位置検出装置。
【請求項5】
検出光を出射する複数の検出用光源を順次点灯させた際の受光部での受光強度に基づいて対象物体の少なくとも二次元座標データを検出する検出動作を行う光学式位置検出方法であって、
前記対象物体が存在しない状態で前記検出動作を行い、得られたデフォルト二次元座標データの第1座標値と第2座標値との比較結果に基づいて補正条件を決定する補正条件決定工程と、
前記対象物体が存在する状態で前記検出動作を行った際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の二次元座標データを検出する位置検出工程と、
を有し、
前記位置検出工程では、前記対象物体の前記二次元座標データを検出する際、前記補正条件に対応する補正を行うことを特徴とする光学式位置検出方法。
【請求項6】
前記検出用光源は、赤外光を出射する発光ダイオードであることを特徴とする請求項5に記載の光学式位置検出方法。
【請求項7】
前記補正を行うにあたっては、
前記位置検出工程において、前記対象物体が存在する状態で前記検出動作を行った際の前記受光部での受光強度に基づいて前記対象物体の第1二次元座標データを取得する第1二次元座標データ取得工程と、該第1二次元座標データ取得工程の後、前記補正条件により前記第1二次元座標データに前記補正を行って第2二次元座標データを取得する第2二次元座標データ取得工程と、を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の光学式位置検出方法。
【請求項8】
前記補正を行うにあたっては、
前記位置検出工程を行う際、前記補正条件に基づいて前記複数の検出用光源からの前記検出光の出射強度に前記補正を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の光学式位置検出方法。
【請求項9】
前記検出動作では、前記複数の検出用光源のうち、一部の検出用光源と他の一部の検出用光源とを交互に点灯させる第1点灯動作と、該第1点灯動作とは異なる組み合わせで、一部の検出用光源と他の一部の検出用光源とを交互に点灯させる第2点灯動作と、を行い、
前記検出動作では、前記第1点灯動作時および前記第2点灯動作時のいずれにおいても、前記一部の検出用光源を点灯させた際の前記受光部での受光強度と、前記他の一部の検出用光源を点灯させた際の前記受光部での受光強度とが等しくなるように前記複数の検出用光源に対する駆動電流を調整したときの前記一部の検出用光源に対する駆動電流値と前記他の一部の検出用光源に対する駆動電流値との比較結果に基づいて前記二次元座標データを検出することを特徴とする請求項8に記載の光学式位置検出方法。
【請求項10】
前記一部の検出用光源から出射された検出光、および前記他の一部の検出用光源から出射された検出光は、ライトガイドによって、当該ライトガイドの他方端から一方端側に向けて出射強度が減少する検出光、および一方側から他方側に向けて出射強度が増大する検出光として出射されることを特徴とする請求項5乃至9の何れか一項に記載の光学式位置検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−145473(P2012−145473A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4593(P2011−4593)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】