光学式測定装置及び光学式測定方法
【課題】非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる光学式測定装置を提供する。
【解決手段】プローブ15の基体16の内部には、3組の測定ユニット20が配置されている。各測定ユニット20は光源としての光ファイバー21、照射孔22、透過部としての反射光導入孔23、集光レンズ24および受光素子(二次元PSD)25とから構成される。そして、プローブ15を被加工物の穴の内部に挿入した状態で光源から光を照射すると、光は穴の内壁面にて乱反射され、散乱光のうち一部の光(反射光)がプローブ15内部に透過されて受光素子25の受光面26上に結像する。この結像点の座標に基づいて穴の内壁面を周面とする仮想円を求めることで、穴の内径を算出する。
【解決手段】プローブ15の基体16の内部には、3組の測定ユニット20が配置されている。各測定ユニット20は光源としての光ファイバー21、照射孔22、透過部としての反射光導入孔23、集光レンズ24および受光素子(二次元PSD)25とから構成される。そして、プローブ15を被加工物の穴の内部に挿入した状態で光源から光を照射すると、光は穴の内壁面にて乱反射され、散乱光のうち一部の光(反射光)がプローブ15内部に透過されて受光素子25の受光面26上に結像する。この結像点の座標に基づいて穴の内壁面を周面とする仮想円を求めることで、穴の内径を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シリンダブロック等の鋳物類や、種々の機械加工品等に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置及び光学式測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、鋳物類等の被測定物に形成された穴の内部形状(例えば、内径、真円度、表面粗さ等)を測定する装置としては、以下に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された測定装置は、被測定物を所定の方向に移動可能とする種々のテーブル、被測定物の穴の位置を撮像するCCDカメラ、同CCDカメラの出力が入力されるコンピュータ、被測定物の穴の内部に挿入されるマイクロプローブ等を備えている。マイクロプローブは、その先端部に一対の接触子を有している。この測定装置によれば、マイクロプローブ(接触子)を被測定物の穴の内壁面に接触させることで、穴の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0003】
例えば、上記穴の内径を測定する場合には、以下のステップにより行われる。すなわち、テーブル上に載置された被測定物の穴の内壁面に向かってプローブを移動させて一方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第1ステップと、一方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第2ステップとを備えている。次に、前記第1ステップとは逆方向へプローブを移動させて他方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第3ステップと、この他方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第4ステップとを備えている。更に、第2ステップ及び第4ステップによりそれぞれ特定した二つの接触点の位置に基づいて接触点間の距離、すなわち穴の内径を算出する第5ステップを備えている。
【特許文献1】特開2004−53413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の測定装置においては、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させる操作を複数回繰り返すことが必要となる。そうした操作は作業者にとって煩雑なものであり、時間を要するものとなっていた。また、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させるステップ(第1ステップ及び第3ステップ)においては、マイクロプローブ(接触子)を穴の内壁面に接触させるべくテーブルを移動させて、同マイクロプローブ(接触子)が穴の内壁面に接触したときの抵抗変化の信号をトリガとしてテーブルを停止させる等の複雑な機構が必要となる。このため、測定装置の複雑化、ひいては大型化を招くこととなり、被測定物の製造現場において短時間で所望の測定をするのは困難であった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる光学式測定装置及び光学式測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円径および中心座標を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて仮想円径および中心座標が求められる。そして、反射位置の座標値と、仮想円の中心座標値により、穴の内径が算出される。このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の内径の測定が可能となる。従って、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円径および中心座標を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて1つの仮想円径および中心座標が求められる。続いて、穴の深さ方向に沿う別の箇所においても、上記と同様に、受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づいて別の仮想円径および中心座標を求める。これにより、穴の深さ方向に沿う2箇所において別途仮想円径および中心座標が同定され、それぞれの中心座標に基づいて穴の傾斜角度が算出される。
【0010】
このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の傾斜角度の測定が可能となる。よって、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明の光学式測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において複数設けられてなることを要旨とする。上記構成によれば、一度の測定により反射位置の座標値が2つ以上求められることから、穴の傾斜角度を測定するに際して必要となる仮想円を同定しやすくなる。すなわち、穴の内部を容易に測定することができる。
【0012】
請求項4に記載の光学式測定装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記受光素子は二次元位置検出素子であり、該二次元位置検出素子の受光面は前記プローブの軸線と直交する平面上に配置されていることを要旨とする。これによれば、複数の光源を用いる場合であっても受光素子を共用することができる。
【0013】
請求項5に記載の光学式測定方法は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定方法であって、前記被測定物の穴の内壁面の少なくとも異なる3箇所に向けて基本光を照射して各箇所の座標を特定する工程と、前記工程で求めた内壁面の少なくとも異なる3箇所の座標に基づいて仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する工程からなることを要旨とする。これによれば、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の内径の測定が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学式測定装置及び同方法によれば、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の光学式測定装置及び同装置を用いた穴内部の測定方法を具体化した一実施形態(第1の実施形態)を図面に基づいて説明する。
光学式定装置の構成
図1に示すように、光学式測定装置10は、基台11と、同基台11に軸支されてなるアーム部12とを備えており、アーム部12は、複数(本実施形態では3つ)のアーム部材13が互いに回動自在に軸支されてなるものである。これら複数のアーム部材13のうち最も先端側に配設されたアーム部材13には、非接触式のプローブ(以下、単にプローブという)15が設けられている(図2参照)。また、光学式測定装置10は制御手段及び演算手段としてのコンピュータとコンピュータに電気的に接続されプローブ15を3次元方向に移動また軸周りに回転させる駆動手段としてのモータを備えている(いずれも図示略)。そして、このプローブ15を、シリンダブロック等の被測定物50の穴51(シリンダ)の内部において所定方向へ移動させることで、その穴の内部形状(本実施形態では、穴の傾斜角度)を測定することができる。以下、本実施形態のプローブ15について図3等に基づいて説明する。
【0016】
プローブ15は、金属材料より形成されて中空円筒状をなす基体16を備えている。基体16は、先端に底部17aを有する有底筒状に形成された基体本体17とこの基体本体17と同径であって基端に底部18aを有する有底筒状に形成された基体先端部18とから構成される(図3)。この基体本体17と基体先端部18とは互いの底部17a,18aを重ね合わせた状態で図示しない締結部材にて相対移動しないように固定されている。なお、基体16は横断面が真円として形成されており基体16の横断面における中心を軸心g(図4参照)、この軸心gを通り基体16の軸方向に延びる仮想線を軸線h、軸線hの延びる方向(基体16の延伸方向)を軸線方向という。また、プローブ15の軸心g、軸線h及び軸線方向は基体16のそれらと一致するためプローブ15についても同義で用いる。
【0017】
プローブ15は測定ユニット20を3組備えており、各測定ユニット20は光源としての光ファイバー21、照射孔22、透過部としての反射光導入孔23、集光レンズ24および受光素子25とから構成される。これらの構成のうち光ファイバー21、照射孔22、反射光導入孔23、集光レンズ24は各測定ユニット20が個別に有する構成であるが、受光素子25のみは全測定ユニット20にて共用している。これら3組の測定ユニット20は、基体16の軸線hを中心とする同一円周上に等間隔(120度間隔)で設けられている(図4及び図5参照)。説明の便宜上、3組の測定ユニット20のうち図3及び図4中上部に図示されているものを第一測定ユニット20a、また、図4中の第一測定ユニット20aから時計回りにそれぞれ第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cが配置されているものとする。以下、測定ユニット20及び各部材の構成や作用等の説明は第一測定ユニット20aについて構成等を説明するが第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cは位置が異なるのみで第一測定ユニット20a同一構成であるため、説明を省略する。
【0018】
光ファイバー21について
光源としての光ファイバー21は、周囲を覆うカバー21aと同カバー21a内に収納された光ファイバー繊維21bとから構成されたユニットである。光ファイバー21の先端側側面には径方向外側に向いた窓21cが形成されており(図3)、光ファイバー繊維21bを伝送されてきた光(赤外光)はこの窓21cから収束された状態で基体16の軸線hを通りこの軸線hに直交する仮想線k上を基体16の半径方向外側に向けて照射される。以下、光ファイバー21から照射される光を「基本光α」といい、基本光αの光軸は仮想線kと一致することを前提とする。なお、図3、図4では第一測定ユニット20aを構成する光ファイバー21についてのみ仮想線kを図示している。この光ファイバー21は既存製品を用いればよく、例えばオムロン株式会社の形式名E32−T24がある。
【0019】
照射孔22および反射光導入孔23について
基体16における仮想線kとの交点には貫通孔である照射孔22が形成されている。また、基体本体17のうち照射孔22よりも軸線方向先端側には長方形状に切り欠かれた反射光導入孔23が形成されている(図3、図4)。
【0020】
集光レンズ24について
基体本体17の先端の底部17a、および基体先端部18の底部18aには、それぞれ円孔17b、18bが形成されており、お互いの底部間に挟持される状態で円孔内に集光レンズ24が固定されている(図3、図5)。この集光レンズ24は凸レンズであり、その光軸が基体16の軸線hと平行となるように設置され、集光レンズ24の光学的な中心点24a(集光レンズ24の径方向かつ厚み方向における中心)は仮想線kを基体16の軸線hに沿って基体16の先端側に距離aだけ平行移動させた仮想線l上に位置している。なお、図5では第一測定ユニット20aを構成する集光レンズ24についてのみ仮想線lを図示している。
【0021】
受光素子25について
受光素子25は、二次元位置検出素子(Position Sensitive Detector=PSD)であり、基部25aと集光レンズ24側を向いて配置された受光面26とから構成される(図3)。受光素子25はその受光面26が基体16の軸線hと直交する面と平行になるように基体先端部18に取り付けられており、受光面26は集光レンズ24の中心点24aから軸線方向において距離b離間している。この受光素子25は、受光面26上に結像した赤外光の重心位置(受光位置)をx軸及びこれに直交するy軸上の座標(x,y)として電気信号に変換し出力することができる。この受光素子25も二次元PSDとして既存製品を用いればよく、例えば浜松ホトニクス株式会社の型式名S7848がある。
【0022】
また、受光面26上の座標の原点(x0,y0)26aは基体16の軸線h上に設定されており、受光面26のy軸は仮想線k、仮想線lと平行に設定してある(図6)。受光素子25から出力された電気信号は端子ピン(図示略)を経てコンピュータに入力され原点26aから受光位置までの距離sが算出される。なお、この距離sは受光面26の原点26aを中心として集光レンズ24側にて結像される場合には正の値(+)として算出され、集光レンズ24の反対側にて結像される場合には負の値(−)として算出される。
【0023】
このように受光素子25は、受光面26上にて結像した光の重心位置の座標を電気信号として出力するものであるため、拡散した光として結像されると座標の特定に誤差が生じやすくなる。したがって、受光素子25上に結像される光はその面積が小さいことが好ましく、そのためには集光レンズ24として受光素子25上に焦点が合わせられている焦点距離を有するものを用いることが好ましい。
【0024】
具体的には、焦点距離fは、1/f=1/a+1/b(aは軸線方向における仮想線kから集光レンズ24の中心点24a(仮想線l)までの距離、bは軸線方向における集光レンズ24の中心点24a(仮想線l)から受光面26までの距離)として特定することができるため、a及びbの値に基づいて焦点距離fを定めることができる。
【0025】
測定ユニット20から照射された光の経路について
以下、本実施形態の測定ユニット20において、光ファイバー21から照射された光が穴51の内壁面52に当たり、そこで生じた散乱光が受光素子25に結像されるまでの経路について図7に基づいて説明する。なお、図7は説明の便宜上3組の測定ユニット20のうち第一測定ユニット20aのみを図示しているが、第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cについても同様である。
【0026】
光ファイバー21内を伝送されてきた光は光ファイバー21の先端の窓21cから外部に向かって照射される。光ファイバー21から出た基本光αは仮想線kに沿って照射孔22を通過してプローブ15の外へ出た後、穴51の内壁面52に到達する。なお、基本光αが穴51の内壁面52に当たって反射される箇所も仮想線k上にあり、この箇所を反射位置52aという。ここで、反射位置52aを含めた穴51の内壁面52は中ぐり加工等により形成されたものであり、その表面は肉眼では平坦に見えるものの微視的には細かな凹凸が形成されている。したがって、基本光αは反射位置52aにて乱反射され散乱光となる。この散乱光のうち、特定の方向に向かった光(この光を「反射光β」という。)は反射光導入孔23を透過してプローブ15内部に導入され、さらにその一部は集光レンズ24を通って受光面26上に結像される。反射光βが集光レンズ24にて集光され受光面26上に結像される受光位置を結像点26bという。
【0027】
図7に図示している反射光βは、理解の便宜のため反射位置52aで反射された散乱光のうち特に集光レンズ24の中心点24aを通るもののみを表しており、反射位置52aから結像点26bまでは直線で結ばれる。つまり、結像点26bは反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aと結んで得られる線の延長上に形成されることとなる。
【0028】
反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aとは軸線hを通り互いに平行な仮想線kと仮想線l上にそれぞれ形成されているから、結像点26bも軸線hを通りこれら仮想線kおよび仮想線lと平行な仮想線m上の何れか一点に形成される。すなわち、第一測定ユニット20aにあっては、プローブ15と反射位置52aとの距離を異ならせた場合に受光面26上に形成される結像点26bの軌跡(以下、単に「結像点26bの軌跡」という。)は受光面26のy軸(x=0)と一致する。図6では、第一測定ユニット20aを用いた場合の結像点26bの軌跡を一点鎖線にて示している。
【0029】
一方、図7に示す反射位置52aにより受光面26上に形成される結像点26bのおおよその位置を図6に示しているが、仮に、反射位置52aが図7に示した位置よりもプローブ15から離間した位置とすると反射光βの光軸は軸線hに対してより大きな角度差を持って集光レンズ24を通ることとなる。このため、その場合の結像点26bは図7に示す結像点26bよりもy座標値が小さい箇所にて形成される(図9に二点差線にて示したプローブ15の結像点26bを参照)。
【0030】
次に上記実施形態に係る光学式測定装置10を用いた穴51の傾斜角度(プローブ15の軸線方向に対する傾斜角度)θの測定手順について説明する。測定手順の概要は図8のフローチャートに示しており、コンピュータはこのフローチャートの各ステップを実行するためのデータが格納されたROMを備えている(図示略)。以下、図8のフローチャート及び図9に従って説明する。なお、穴51の内部の測定は特定位置(プローブ15のうち基本光αが照射される位置)における穴51の内壁面52を円周とする仮想円の方程式を得ることにより行う。
【0031】
ステップ1(S1)
まず、コンピュータは駆動手段を駆動させてプローブ15を穴51内部の第一測定位置30へと移動させる(図9の実線にて示す位置)。測定対象となる穴51は加工用データに基づいて深さ、内径等が設定されており、穴51の形状を正確に測定するために第一測定位置30においてプローブ15の軸線方向が穴51の形成方向とほぼ平行となるようにしておく方が好ましい。なお、第一測定位置30は穴51の内部であればその深さは限定されないが、穴51の下端に近いとプローブ15がさらに移動することができなくなる。
【0032】
ステップ2(S2)
第一測定位置30へ移動した後に穴51の形状(内径)を算出するための座標測定を行う。穴51の内径を測定する段階では穴51の中心および半径はいずれも判明していない。このため、第一測定位置30において、同位置にあるプローブ15のうち基本光αが照射される位置における軸心gを座標原点(X=0,Y=0)とした場合の、同位置における穴51の内壁面52の円周上の異なる3箇所の座標を測定する。なお、この場合の座標は受光面26の座標と同じマップを用いてもよいし、異なるマップを用いてもよい。測定対象となる3箇所の座標は第一測定ユニット20a、第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cを順次作動させて行う。以下、第一測定ユニット20aを用いた測定方法を例に説明する。
【0033】
まず、集光レンズ24の中心点24aを通り、基体16の軸線hに平行な仮想線nを想定する(図7)。仮想線kと仮想線lはともに基体16の軸線hに直交することから、仮想線kと仮想線lは仮想線nに対しても直交する関係にある。穴51の内壁面52に到達した基本光αは反射位置52aにおいて散乱光として乱反射し、その散乱光の一部は反射光βとして集光レンズ24を通って受光面26上に結像する。この反射光βのうち集光レンズ24の中心点24aを通る光軸を仮想線pとする。
【0034】
ここで、図7において仮想線kと仮想線nとの交点を点Oとし仮想線nと受光面26上の仮想線mとの交点を点Dとする。また基本光αの反射位置52aを点A、集光レンズ24の中心点24aを点Bとし、反射光βの受光面26上の結像点26bを点Cとすると、同一平面上に三角形OABと三角形DBCの2つの直角三角形を形成することができる。
【0035】
この三角形OABと三角形DBCのそれぞれ点Bを頂点とする内角は対角であるため同じ角度であり、また点O、点Dをそれぞれ頂点とする内角はいずれも直角であるため、二組の角が等しい三角形となり、三角形OABと三角形DBCは相似である。また、辺OBは距離a、辺DBは距離bに設定されているため、相似条件により辺OAの距離:辺CDの距離=距離a:距離bの関係が成立する。
【0036】
一方、辺OAは仮想線kの一部であるから、基体16の表面から反射位置52a(点A)までの距離をL、軸線hから基体16表面までの距離(基体の半径)を距離r、軸線hから集光レンズ24の中心点24a(点B)までの距離を距離cとすると、辺OAの距離はL+r−cにて表すことができる。このうち、距離r及び距離cは予め距離が特定されている。他方、辺DCは、仮想線kと平行な仮想線m上の一部であり、受光面26上の軸線hから点Dまでの距離は軸線hから集光レンズ24の中心点24aまでの距離(=距離c)に等しい。また、辺DCの距離は、軸線hから集光レンズ24の中心点24aまでの距離cから、軸線hから点Cまでの距離sを除したものであるから、辺DCの距離=距離c−距離sにて表すことができる。
【0037】
そして、前記の三角形の相似条件から、L+r−c:c−s=a:bの関係が成り立つ。この式を展開すると、以下の式(1)となる。
【0038】
【数1】
【0039】
この式の右辺において距離a,距離b,距離c,距離rはいずれも距離が判明しており、距離sのみが変化する値である。したがって、距離sを求めることにより上記式を用いて距離Lを求めることができる。ここで、距離Lと距離sとの関係は上記式(1)にて示したように1次の直線となるから、式(1)を距離sで微分して得られる距離sの微小変化dsに対する距離Lの微小変化dLの割合、すなわち受光素子25における検出感度は、dL/ds=−a/bと一定となり、距離L、距離sに依存しない。
【0040】
距離sは受光面26上の原点26aから結像点26b(点C)までの距離(ただし、y座標が負の時は距離sは負の値)であり、結像点26b(点C)は座標(0,y1)にて特定されるため、s=y1として特定することができる。これにより求めたsの値を上記式に代入することにより、プローブ15表面から穴51の内壁面52である反射位置52aまでの距離L、さらには反射位置52aの座標値(X11,Y11)を測定することができる。第一測定ユニット20aによる測定にて求められた反射位置52aの座標(X11,Y11)は、コンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0041】
第一測定位置30における仮想円である第一仮想円31の式を求めるには異なる3箇所の座標が必要であるため、同様の手順にて第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cを作動させて異なる二つの反射位置の座標値(X12,Y12)(X13,Y13)を求める。このうち、第二測定ユニット20bは、第一測定ユニット20aに対して軸線hを中心として図3中時計回りに120度回転させた位置に配置されている。このため、第二測定ユニット20bによる受光面26上の結像点26bの軌跡は原点26aを通りy軸に対して時計回りに120度傾いた直線(y=−1/√3x)上に形成される(図6にて二点鎖線で示す)。
【0042】
また、第三測定ユニット20cは、第一測定ユニット20aに対して軸線hを中心として図4中反時計回りに120度回転させた位置に配置されていることから、第三測定ユニット20cによる受光面26上の結像点26bの軌跡は原点26aを通りy軸に対して反時計回りに120度傾いた直線(y=1/√3x)上に形成される(図6にて破線で示す)。そして、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cを用いてそれぞれ測定した受光面26上の結像点26b(点C)の座標値(x12,y12)、(x13,y13)は、いずれも反射位置52aがプローブ15に近い場合にはそのy座標値が小さく反射位置が離れるにしたがってy座標値が大きくなる。
【0043】
したがって、第二測定ユニット20b並びに第三測定ユニット20cの結像点26b(点C)の座標値に基づくそれぞれの距離sは、以下の式(2)又は式(3)にて求めることができる。
【0044】
【数2】
【0045】
上記の式により求められた距離sを式(1)に代入することにより、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cにおける基体16の表面から各反射位置52aまでの距離Lをそれぞれ求めることができ、更には各反射位置の座標値(X12,Y12)(X13,Y13)を求めることができる。この座標値もコンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0046】
ステップ3(S3)
上記ステップ2により求めた穴51の内壁面52の3箇所の座標値に基づいて第一仮想円31の式を算出する。まず、既に求めた3つの反射位置52aの座標値(X11,Y11)(X12,Y12)(X13,Y13)のうち任意の2点の座標値(Xi,Yi)、(Xi+1,Yi+1)を、下記式(4)の円の方程式に代入する。なお、本実施形態では、穴51の断面形状を略真円と仮定する。
【0047】
【数3】
【0048】
そして、各座標値をそれぞれ代入した後に得られた双方の式を減算し、Cx,Cyについて整理すると、下記式(5)が得られる。なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果においては、式(5)が(n−1)個得られる。
【0049】
【数4】
【0050】
ここで、式(5)を下記の式(6)〜(8)のようにおくと、
【0051】
【数5】
【0052】
上記式(5)は、下記の式(9)のように表される。
【0053】
【数6】
【0054】
なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果からは、(n−1)個の式(9)が得られる。この結果から、最小二乗法を用いてCx,Cyを求めると、下記の式(10)及び式(11)が得られる。
【0055】
【数7】
【0056】
【数8】
【0057】
但し、Σの範囲は1≦i≦n−1である。これにより、第一仮想円31の中心座標31aが求められる。そして、この中心座標31aを決定した後、下記式(12)により各反射位置の座標値に対応したRiを求め、その平均値を仮想円の半径の測定値Rとする。
【0058】
【数9】
【0059】
但し、Σの範囲は1≦i≦nである。このようにして仮想円の半径を求めることで、穴の内径(仮想円の直径)が算出される。したがって、円周上の3箇所の異なる座標を得ることができれば上記円の方程式の3つの定数を算出することができる。算出した第一仮想円31の式はコンピュータのRAMに格納される。
【0060】
ステップ4(S4)
ステップ4において、コンピュータは駆動手段を駆動させてプローブ15を第二測定位置40(図9の二点差線で示す位置)へと移動させる。この第二測定位置40は第一測定位置30におけるプローブ15をその軸線h上に穴51の深さ方向Fへ向けて所定距離tだけ移動させた位置である。
【0061】
ステップ5(S5)
プローブ15を第二測定位置40へ移動した後には同位置における穴51の形状を測定する。この測定方法はステップ2の測定方法と同じであり、第一測定ユニット20a、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cを順次動作させてこの第二測定位置における穴51の内壁面52の異なる3箇所の座標値(X21,Y21)(X22,Y22)(X23,Y23)を測定する。
【0062】
ステップ6(S6)
上記ステップ5により求めた第二測定位置40における穴51の内壁面52の3箇所の座標値に基づいて第二仮想円41の式を算出する。算出方法はステップ3と同じであり、算出した第二仮想円41の式はコンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0063】
ステップ7(S7)
コンピュータは、ステップ3で求めた第一仮想円31とステップ6で求めた第二仮想円41の式をRAMから読み出して穴51の傾斜角度θを演算する。すなわち、プローブ15の軸線方向に対する穴51の傾斜角度θは第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aとを結ぶ線により求めることができる(図10)。ここで、穴51の傾斜角度θが零で、内壁面52がプローブ15の軸線方向と一致する場合には、第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aは一致するはずである。一方、第一仮想円31の中心座標31aに対して第二仮想円41の中心座標41aが一致しない場合(図10に示す状態)には、プローブ15の軸線方向に対して穴51が傾いていることになるため、第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aとプローブ15の距離tとの関係から穴51の傾斜角度θを算出することができる。
【0064】
上記実施形態の光学式測定装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
* 本実施形態の光学式測定装置10によれば、各測定ユニット20(20a,20b,20c)から基本光αを穴51の内壁面52に対して照射することで各反射位置52aの座標値を求め、穴51の内部における任意の箇所で1つの仮想円を同定することにより穴51の内径が測定される。また、穴51の内部においてプローブ15の軸線方向の2箇所でそれぞれ仮想円を同定することにより穴51の傾斜角度θが測定される。すなわち、プローブ15を穴51の内壁面52に接触させることなく同穴51の内部が測定可能とされる。これにより、本実施形態では、穴51の内壁面52にプローブ15を接触させるための複雑な機構を必要とせず、構成の簡略化を図ることができ、ひいては装置の大型化が回避される。そして、穴51の内部にプローブ15を挿入するといった極めて簡易な操作により、所望の測定が可能となる。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、被測定物50の製造現場においてその穴51の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0065】
* 本実施形態では、内壁面52の反射位置52aにおいて散乱された散乱光のうちの任意の光を反射光βとして受光素子25上に結像させて結像点26bの座標を測定している。このため、本実施形態では、反射光βを正確に受光素子25上に結像させるべく光の角度や、基体16の内部における受光素子25の設置箇所等を厳密に調整する必要がない。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、構造の簡易化を図ることができる。
【0066】
* 本実施形態の光学式測定装置10には、光源としての光ファイバー21がユニットとして周方向において3つ設けられている。ここで、上記仮想円を同定する際には最低限3つの座標値が必要となる。本実施形態によれば、そうした3つの座標値が一度の測定において瞬時に算出可能とされる。これにより、仮想円径および中心座標の同定を容易に行うことができる。また、各光ファイバー21は、周方向において等間隔に設けられている。すなわち、周方向において等間隔に反射位置52aの座標値が求められることとなる。これにより、穴51の内部形状を高い精度で反映する仮想円を同定することが可能となるため、穴51の内壁面52の傾斜角度や穴51の内径を正確に測定することができる。
【0067】
* 光源として光ファイバー21を用いることにより、穴51の内壁面52の所定箇所に対して基本光αを確実に照射させることができる。
* 穴51の内壁面52の座標値は、受光面26の原点26aからの反射光βの受光面26上への結像点26bまでの距離sを求めることによって算出している。したがって穴51の内壁面52の座標値を容易に測定することができる。
【0068】
* 受光手段として受光素子(二次元PSD)25をその受光面26が軸線hに直交する平面上となるように配置して各測定ユニット20にて共用している。このため、受光手段を測定ユニット20の数に応じて準備する必要がない。
【0069】
* 反射光βを集光レンズ24によって集光させて受光面26上に結像させている。このため、受光面26上の結像点26bのスポット面積が小さくなり、光の重心位置を求めるPSDの測定誤差が小さくなる。
【0070】
* 集光レンズ24によって反射光βを集光させて受光素子25上に結像させるため、受光素子25上の結像点26bの光量も増加することとなり検出感度が良好となる。
* 距離Lと距離sとの関係は1次の直線(式(1))となるから、受光素子25における検出感度は、dL/ds=−a/bと一定となり、距離L、距離sに依存することなく安定した感度を得ることができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更、応用してもよい。
○ 受光素子(二次元PSD)25に、測定に用いた波長の光のみを通過させるフィルタを備えたものを用いると、外乱光等のノイズを更に減少させることができる。
【0072】
○ 上記実施形態にて配置されている集光レンズ24を用いることなく、集光レンズ24を配置していた位置に細孔を形成することにより、同細孔をピンホールとして機能させて反射光βを受光面26上に結像又は照射させてもよい。この場合、細孔を通過した反射光βのみにて受光面26上に結像(照射)点26bを形成することから、集光レンズ24を用いる場合に比して結像(照射)点26bの光量が不十分になる可能性がある。このため、集光レンズ24を使用しなくても反射光βが受光素子25にて検出可能な程度の光量が得られる光を基本光αとする必要がある。
【0073】
○ 上記実施形態では、測定ユニット20を周方向に等間隔に3組備えているが、測定ユニット20は1組或いは2組でもよい。測定ユニット20が1組の場合にはプローブ15が軸線hを中心として回転可能としておき、穴51の内壁面52の座標を1箇所測定する毎に所定角度回転し、異なる3箇所における穴51の内壁面52の座標を測定することにより穴51の形状を測定することができる。また、2組の場合には少なくとも異なる3箇所における穴51の内壁面52の座標を測定することができればよい。
【0074】
○ 受光手段を上記実施形態の二次元PSD25に変えて、色を識別することができるカラーCCDとしてもよい。この場合、3組の測定ユニット20の光源の光色をそれぞれ異ならせる(例えば、グリーン、ブルー、レッド)ことにより、受光手段にて複数の測定ユニット20からの反射光を順次受光しても色ごと、つまり各測定ユニット20の反射位置52aからの反射光β毎に各結像点26bの座標を特定することができる。
【0075】
○ 上記実施形態では光源として光ファイバー21を用いたが、これに変えてLEDやレーザダイオード等の他の光源に変更してもよい。
○ 本実施形態では、3つの光ファイバー21を周方向において等間隔毎に設けたが、隣接する光ファイバー21同士の間隔はそれぞれ相違するものであってもよい。
【0076】
○ 本実施形態のプローブ15における測定ユニット20を、同プローブ15の先端側にさらに1組ずつ設ける構成でもよい。すなわち、プローブ15には、3組×2段の測定ユニット20が設けられることとなる。このように構成した場合には、穴51の内部において軸線方向にプローブ15を動かさずとも、穴51の深さ方向において異なる箇所にて第一仮想円と第二仮想円とを測定することが可能となる。従って、この構成によれば、穴51の内部において第一測定位置30から第二測定位置40へとプローブ15を移動させる操作が不要となるため、穴51の内部の測定が一層容易なものとなる。
【0077】
○ 本実施形態では、穴51の内部の深さ方向における2箇所(第一測定位置30及び第二測定位置40)においてそれぞれ仮想円を同定し、その仮想円の半径から個々に穴の内径を求めたが、穴51の内部において3箇所以上でそれぞれ仮想円を同定し、各仮想円の直径の平均値を穴の内径としてもよい。
【0078】
○ 本実施形態では、穴51の断面形状を略真円と仮定したが、その断面形状が仮に楕円であるときには、上記円の方程式の代わりに楕円の公式を採用する。この場合、上記と同様に仮想円を求める際には、穴51の内壁面上における反射位置の座標値が少なくとも4つ必要となる。こうしたときには、測定の簡易化及び迅速化を図るべく、基体16の軸線h上に中心を有する同一円周上において4つ以上の測定ユニット20を設ける構成が好ましい。
【0079】
○ 本実施形態では、穴51の内部において第一仮想円31と第二仮想円41を求めることで穴51の内壁面52の傾斜角度θを測定したが、これを以下の方法に変更してもよい。すなわち、穴51の内部の2箇所において本実施形態と同様の方法で第一測定位置30での距離(L)L1と第二測定位置40での距離(L)L2を算出した後、下記式(13)により傾斜角度θiを求める。
【0080】
【数10】
【0081】
この式(13)により傾斜角度θiをそれぞれ求め、その平均値を内壁面の傾斜角度θの測定値とする。
○ 本実施形態では、光ファイバー21よりも基体16の先端側に位置する箇所に受光素子25を配設したが、同受光素子25の配設箇所はこれに限定されるものではない。すなわち、光ファイバー21よりも基体16の基端側に位置する箇所に受光素子25を配設してもよい。このような構成とした場合においても、穴51の内壁面52で反射した散乱光のうち任意の光が受光素子25上に結像されることから、穴51の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0082】
○ 本実施形態では、第一仮想円31を同定した後にプローブ15を穴51の深さ方向Fの底部側に移動させて第二仮想円41を同定したが、これとは逆方向(穴の開口部側)へプローブ15を移動させて上記第二仮想円41を同定する方法を採用してもよい。
【0083】
○ 本実施形態では、第一仮想円31を同定し、続いて第二仮想円41を同定することにより穴の傾きを求めるという流れである。これに限られず、第一測定位置30における穴51の内壁面52の座標を所定数測定し、続いて第二測定位置40における穴51の内壁面52の座標を所定数測定し、その後に第一仮想円31の同定及び第二仮想円41を同定して穴51の傾きを求めるという工程を採用してもよい。
【0084】
次に、本発明の光学式測定装置について、既に示した実施形態(第1の実施形態)とは別の実施形態(第2の実施形態)を示す。この実施形態では第1の実施形態と比して集光レンズ124を傾斜させて配置した点に特徴があり、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、また、説明を行う場合であっても第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を用いる。
【0085】
図11に示すように、プローブ15の基体16を構成する基体本体117の先端には底部は形成されておらず開口されている一方、基体先端部118の底部118aは外周部118bに対して中央部118cが基体本体117側に突き出た断面凸状に形成されている。外周部118bと中央部118cとの間は傾斜部118dが形成されており、外周部118bと中央部118cとの間にまたがるように底部118aを貫通する円孔が形成されている。この円孔の内側周囲には図示しない保持枠が形成されており、この保持枠内に集光レンズ124が固定されている。
【0086】
図12にて集光レンズ124の位置関係を詳細に示す。集光レンズ124の光学的な中心点124aは仮想線kを基体16の軸線hに沿って基体16の先端側に距離aだけ平行移動させた仮想線l上に位置している。一方、集光レンズ124は、その光軸が受光面26の原点26aと集光レンズ124の中心点124aとを結ぶ線qと一致するように配置されている。なお、この実施形態でも測定ユニットを3組備えており、他の測定ユニットを構成する集光レンズも各測定ユニット内にて同様に傾斜して配置されていることは第1の実施形態と同様である。また、この第2の実施形態に係る光学式測定装置10を用いた穴内部の測定方法は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。この第2の実施形態の光学式測定装置10によれば、第1の実施形態に加えて以下のような効果を得ることができる。
【0087】
すなわち、第1の実施形態においては集光レンズ24の光軸はプローブの軸線hと平行であり、穴51の内壁面52の反射位置52aにて反射して集光レンズ24を通過する反射光βは穴51の反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aとを結ぶことから、この反射光βと集光レンズ24の光軸との間には必ずある程度の角度差が存在する。このような角度差がある場合、受光面26上に形成される結像点の形状は楕円形状、さらに詳しくいえば尾を引いた彗星のような形状となる。この現象をコマ収差現象といい、集光レンズ24に対する反射光βの角度差が大きくなるにしたがって顕著となり、尾が長くなる。受光素子である二次元PSD25は受光面26上の結像点の重心を求めるものであるため、上記現象による結像点26bの形状の変形に伴い、受光素子25によって求められる重心位置がずれてしまい検出誤差が生ずる可能性もある。
【0088】
これに対して、第2の実施形態のように予め集光レンズ124の光軸を反射光βに対応して傾斜させて配置させることにより、上記コマ収差現象による受光素子25による検出誤差を減少させることができる。この場合、反射光βと集光レンズ124の光軸との角度差をなくすることは困難であるため、受光面26上において反射光βを受光可能な範囲(図6参照)の中間位置である原点26aに集光レンズ124の光軸を合わせることにより、極端な検出誤差の発生を抑制することができる。
【0089】
また、集光レンズ124の光軸を傾斜させて配置する場合の角度は上記実施形態に示すものには限られず、少なくとも集光レンズ124の光軸がプローブ15の先端方向に向かってプローブ15の軸線h側に傾斜していればよい。具体的な角度は受光素子25の検出有効範囲や想定する穴の径等に応じて設定することができる。
【0090】
上記した実施形態から把握することのできる技術的思想を下に示す。
(1)プローブには、透過部を透過した任意の散乱光を集光させて受光素子に受光させるための集光レンズが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式測定装置。
(2)前記集光レンズは、その光軸がプローブの先端方向に向かってプローブの軸線側に傾斜して配置されていることを特徴とする技術的思想1に記載の光学式測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施形態(第1の実施形態)の光学式測定装置を示す概略図。
【図2】同光学式測定装置を示す部分拡大概略図。
【図3】本実施形態のプローブの内部の断面図。
【図4】図3のA−A線端面図。
【図5】図3のB−B線端面図。
【図6】受光面上の結像点の軌跡を示す模式図。
【図7】穴内部の測定方法を示す概略図。
【図8】穴内部の測定方法を示すフロー図。
【図9】穴内部の測定方法を示す説明図。
【図10】穴内部の測定方法を示す説明模式図。
【図11】第2の実施形態のプローブの内部の断面図。
【図12】第2の実施形態の集光レンズの光軸を示す説明図。
【符号の説明】
【0092】
α…基本光、θ,θi…傾斜角度、F…深さ方向、h…軸線、10…光学式測定装置、15…プローブ、20(20a,20b,20c)…測定ユニット、21…光ファイバー、23…透過部としての反射光導入孔、24、124…集光レンズ、25…受光素子(二次元PSD)、26…受光面、30…第一測定位置、31…第一仮想円、40…第二測定位置、41…第二仮想円、50…被測定物、51…穴、52…内壁面、52a…反射位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シリンダブロック等の鋳物類や、種々の機械加工品等に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置及び光学式測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、鋳物類等の被測定物に形成された穴の内部形状(例えば、内径、真円度、表面粗さ等)を測定する装置としては、以下に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された測定装置は、被測定物を所定の方向に移動可能とする種々のテーブル、被測定物の穴の位置を撮像するCCDカメラ、同CCDカメラの出力が入力されるコンピュータ、被測定物の穴の内部に挿入されるマイクロプローブ等を備えている。マイクロプローブは、その先端部に一対の接触子を有している。この測定装置によれば、マイクロプローブ(接触子)を被測定物の穴の内壁面に接触させることで、穴の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0003】
例えば、上記穴の内径を測定する場合には、以下のステップにより行われる。すなわち、テーブル上に載置された被測定物の穴の内壁面に向かってプローブを移動させて一方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第1ステップと、一方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第2ステップとを備えている。次に、前記第1ステップとは逆方向へプローブを移動させて他方の接触子を上記穴の内壁面に接触させる第3ステップと、この他方の接触子が上記穴の内壁面に接触したときの接触点の位置を検出手段の検出結果に基づいて特定する第4ステップとを備えている。更に、第2ステップ及び第4ステップによりそれぞれ特定した二つの接触点の位置に基づいて接触点間の距離、すなわち穴の内径を算出する第5ステップを備えている。
【特許文献1】特開2004−53413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の測定装置においては、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させる操作を複数回繰り返すことが必要となる。そうした操作は作業者にとって煩雑なものであり、時間を要するものとなっていた。また、マイクロプローブを穴の内壁面に接触させるステップ(第1ステップ及び第3ステップ)においては、マイクロプローブ(接触子)を穴の内壁面に接触させるべくテーブルを移動させて、同マイクロプローブ(接触子)が穴の内壁面に接触したときの抵抗変化の信号をトリガとしてテーブルを停止させる等の複雑な機構が必要となる。このため、測定装置の複雑化、ひいては大型化を招くこととなり、被測定物の製造現場において短時間で所望の測定をするのは困難であった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる光学式測定装置及び光学式測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円径および中心座標を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて仮想円径および中心座標が求められる。そして、反射位置の座標値と、仮想円の中心座標値により、穴の内径が算出される。このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の内径の測定が可能となる。従って、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明の光学式測定装置は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円径および中心座標を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、内壁面で反射された散乱光の一部が透過部を介して受光素子によって受光される。そして、この受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づき、穴の内壁面上における基本光の反射位置とプローブとの間の間隔が算出され、基本光の反射位置の座標値が決定される。その結果、そうした反射位置の座標値に基づいて1つの仮想円径および中心座標が求められる。続いて、穴の深さ方向に沿う別の箇所においても、上記と同様に、受光素子上における前記散乱光の受光位置に基づいて別の仮想円径および中心座標を求める。これにより、穴の深さ方向に沿う2箇所において別途仮想円径および中心座標が同定され、それぞれの中心座標に基づいて穴の傾斜角度が算出される。
【0010】
このように、本構成では、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の傾斜角度の測定が可能となる。よって、装置構造の複雑化を招くことがなく、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明の光学式測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において複数設けられてなることを要旨とする。上記構成によれば、一度の測定により反射位置の座標値が2つ以上求められることから、穴の傾斜角度を測定するに際して必要となる仮想円を同定しやすくなる。すなわち、穴の内部を容易に測定することができる。
【0012】
請求項4に記載の光学式測定装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記受光素子は二次元位置検出素子であり、該二次元位置検出素子の受光面は前記プローブの軸線と直交する平面上に配置されていることを要旨とする。これによれば、複数の光源を用いる場合であっても受光素子を共用することができる。
【0013】
請求項5に記載の光学式測定方法は、被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定方法であって、前記被測定物の穴の内壁面の少なくとも異なる3箇所に向けて基本光を照射して各箇所の座標を特定する工程と、前記工程で求めた内壁面の少なくとも異なる3箇所の座標に基づいて仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する工程からなることを要旨とする。これによれば、穴の内壁面にプローブを接触させる必要はなく、同プローブを穴の内部に挿入するといった極めて単純な操作により、穴の内部形状に関する所望の測定、すなわち穴の内径の測定が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学式測定装置及び同方法によれば、非接触式のプローブを具備することで、穴の内部を短時間で容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の光学式測定装置及び同装置を用いた穴内部の測定方法を具体化した一実施形態(第1の実施形態)を図面に基づいて説明する。
光学式定装置の構成
図1に示すように、光学式測定装置10は、基台11と、同基台11に軸支されてなるアーム部12とを備えており、アーム部12は、複数(本実施形態では3つ)のアーム部材13が互いに回動自在に軸支されてなるものである。これら複数のアーム部材13のうち最も先端側に配設されたアーム部材13には、非接触式のプローブ(以下、単にプローブという)15が設けられている(図2参照)。また、光学式測定装置10は制御手段及び演算手段としてのコンピュータとコンピュータに電気的に接続されプローブ15を3次元方向に移動また軸周りに回転させる駆動手段としてのモータを備えている(いずれも図示略)。そして、このプローブ15を、シリンダブロック等の被測定物50の穴51(シリンダ)の内部において所定方向へ移動させることで、その穴の内部形状(本実施形態では、穴の傾斜角度)を測定することができる。以下、本実施形態のプローブ15について図3等に基づいて説明する。
【0016】
プローブ15は、金属材料より形成されて中空円筒状をなす基体16を備えている。基体16は、先端に底部17aを有する有底筒状に形成された基体本体17とこの基体本体17と同径であって基端に底部18aを有する有底筒状に形成された基体先端部18とから構成される(図3)。この基体本体17と基体先端部18とは互いの底部17a,18aを重ね合わせた状態で図示しない締結部材にて相対移動しないように固定されている。なお、基体16は横断面が真円として形成されており基体16の横断面における中心を軸心g(図4参照)、この軸心gを通り基体16の軸方向に延びる仮想線を軸線h、軸線hの延びる方向(基体16の延伸方向)を軸線方向という。また、プローブ15の軸心g、軸線h及び軸線方向は基体16のそれらと一致するためプローブ15についても同義で用いる。
【0017】
プローブ15は測定ユニット20を3組備えており、各測定ユニット20は光源としての光ファイバー21、照射孔22、透過部としての反射光導入孔23、集光レンズ24および受光素子25とから構成される。これらの構成のうち光ファイバー21、照射孔22、反射光導入孔23、集光レンズ24は各測定ユニット20が個別に有する構成であるが、受光素子25のみは全測定ユニット20にて共用している。これら3組の測定ユニット20は、基体16の軸線hを中心とする同一円周上に等間隔(120度間隔)で設けられている(図4及び図5参照)。説明の便宜上、3組の測定ユニット20のうち図3及び図4中上部に図示されているものを第一測定ユニット20a、また、図4中の第一測定ユニット20aから時計回りにそれぞれ第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cが配置されているものとする。以下、測定ユニット20及び各部材の構成や作用等の説明は第一測定ユニット20aについて構成等を説明するが第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cは位置が異なるのみで第一測定ユニット20a同一構成であるため、説明を省略する。
【0018】
光ファイバー21について
光源としての光ファイバー21は、周囲を覆うカバー21aと同カバー21a内に収納された光ファイバー繊維21bとから構成されたユニットである。光ファイバー21の先端側側面には径方向外側に向いた窓21cが形成されており(図3)、光ファイバー繊維21bを伝送されてきた光(赤外光)はこの窓21cから収束された状態で基体16の軸線hを通りこの軸線hに直交する仮想線k上を基体16の半径方向外側に向けて照射される。以下、光ファイバー21から照射される光を「基本光α」といい、基本光αの光軸は仮想線kと一致することを前提とする。なお、図3、図4では第一測定ユニット20aを構成する光ファイバー21についてのみ仮想線kを図示している。この光ファイバー21は既存製品を用いればよく、例えばオムロン株式会社の形式名E32−T24がある。
【0019】
照射孔22および反射光導入孔23について
基体16における仮想線kとの交点には貫通孔である照射孔22が形成されている。また、基体本体17のうち照射孔22よりも軸線方向先端側には長方形状に切り欠かれた反射光導入孔23が形成されている(図3、図4)。
【0020】
集光レンズ24について
基体本体17の先端の底部17a、および基体先端部18の底部18aには、それぞれ円孔17b、18bが形成されており、お互いの底部間に挟持される状態で円孔内に集光レンズ24が固定されている(図3、図5)。この集光レンズ24は凸レンズであり、その光軸が基体16の軸線hと平行となるように設置され、集光レンズ24の光学的な中心点24a(集光レンズ24の径方向かつ厚み方向における中心)は仮想線kを基体16の軸線hに沿って基体16の先端側に距離aだけ平行移動させた仮想線l上に位置している。なお、図5では第一測定ユニット20aを構成する集光レンズ24についてのみ仮想線lを図示している。
【0021】
受光素子25について
受光素子25は、二次元位置検出素子(Position Sensitive Detector=PSD)であり、基部25aと集光レンズ24側を向いて配置された受光面26とから構成される(図3)。受光素子25はその受光面26が基体16の軸線hと直交する面と平行になるように基体先端部18に取り付けられており、受光面26は集光レンズ24の中心点24aから軸線方向において距離b離間している。この受光素子25は、受光面26上に結像した赤外光の重心位置(受光位置)をx軸及びこれに直交するy軸上の座標(x,y)として電気信号に変換し出力することができる。この受光素子25も二次元PSDとして既存製品を用いればよく、例えば浜松ホトニクス株式会社の型式名S7848がある。
【0022】
また、受光面26上の座標の原点(x0,y0)26aは基体16の軸線h上に設定されており、受光面26のy軸は仮想線k、仮想線lと平行に設定してある(図6)。受光素子25から出力された電気信号は端子ピン(図示略)を経てコンピュータに入力され原点26aから受光位置までの距離sが算出される。なお、この距離sは受光面26の原点26aを中心として集光レンズ24側にて結像される場合には正の値(+)として算出され、集光レンズ24の反対側にて結像される場合には負の値(−)として算出される。
【0023】
このように受光素子25は、受光面26上にて結像した光の重心位置の座標を電気信号として出力するものであるため、拡散した光として結像されると座標の特定に誤差が生じやすくなる。したがって、受光素子25上に結像される光はその面積が小さいことが好ましく、そのためには集光レンズ24として受光素子25上に焦点が合わせられている焦点距離を有するものを用いることが好ましい。
【0024】
具体的には、焦点距離fは、1/f=1/a+1/b(aは軸線方向における仮想線kから集光レンズ24の中心点24a(仮想線l)までの距離、bは軸線方向における集光レンズ24の中心点24a(仮想線l)から受光面26までの距離)として特定することができるため、a及びbの値に基づいて焦点距離fを定めることができる。
【0025】
測定ユニット20から照射された光の経路について
以下、本実施形態の測定ユニット20において、光ファイバー21から照射された光が穴51の内壁面52に当たり、そこで生じた散乱光が受光素子25に結像されるまでの経路について図7に基づいて説明する。なお、図7は説明の便宜上3組の測定ユニット20のうち第一測定ユニット20aのみを図示しているが、第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cについても同様である。
【0026】
光ファイバー21内を伝送されてきた光は光ファイバー21の先端の窓21cから外部に向かって照射される。光ファイバー21から出た基本光αは仮想線kに沿って照射孔22を通過してプローブ15の外へ出た後、穴51の内壁面52に到達する。なお、基本光αが穴51の内壁面52に当たって反射される箇所も仮想線k上にあり、この箇所を反射位置52aという。ここで、反射位置52aを含めた穴51の内壁面52は中ぐり加工等により形成されたものであり、その表面は肉眼では平坦に見えるものの微視的には細かな凹凸が形成されている。したがって、基本光αは反射位置52aにて乱反射され散乱光となる。この散乱光のうち、特定の方向に向かった光(この光を「反射光β」という。)は反射光導入孔23を透過してプローブ15内部に導入され、さらにその一部は集光レンズ24を通って受光面26上に結像される。反射光βが集光レンズ24にて集光され受光面26上に結像される受光位置を結像点26bという。
【0027】
図7に図示している反射光βは、理解の便宜のため反射位置52aで反射された散乱光のうち特に集光レンズ24の中心点24aを通るもののみを表しており、反射位置52aから結像点26bまでは直線で結ばれる。つまり、結像点26bは反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aと結んで得られる線の延長上に形成されることとなる。
【0028】
反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aとは軸線hを通り互いに平行な仮想線kと仮想線l上にそれぞれ形成されているから、結像点26bも軸線hを通りこれら仮想線kおよび仮想線lと平行な仮想線m上の何れか一点に形成される。すなわち、第一測定ユニット20aにあっては、プローブ15と反射位置52aとの距離を異ならせた場合に受光面26上に形成される結像点26bの軌跡(以下、単に「結像点26bの軌跡」という。)は受光面26のy軸(x=0)と一致する。図6では、第一測定ユニット20aを用いた場合の結像点26bの軌跡を一点鎖線にて示している。
【0029】
一方、図7に示す反射位置52aにより受光面26上に形成される結像点26bのおおよその位置を図6に示しているが、仮に、反射位置52aが図7に示した位置よりもプローブ15から離間した位置とすると反射光βの光軸は軸線hに対してより大きな角度差を持って集光レンズ24を通ることとなる。このため、その場合の結像点26bは図7に示す結像点26bよりもy座標値が小さい箇所にて形成される(図9に二点差線にて示したプローブ15の結像点26bを参照)。
【0030】
次に上記実施形態に係る光学式測定装置10を用いた穴51の傾斜角度(プローブ15の軸線方向に対する傾斜角度)θの測定手順について説明する。測定手順の概要は図8のフローチャートに示しており、コンピュータはこのフローチャートの各ステップを実行するためのデータが格納されたROMを備えている(図示略)。以下、図8のフローチャート及び図9に従って説明する。なお、穴51の内部の測定は特定位置(プローブ15のうち基本光αが照射される位置)における穴51の内壁面52を円周とする仮想円の方程式を得ることにより行う。
【0031】
ステップ1(S1)
まず、コンピュータは駆動手段を駆動させてプローブ15を穴51内部の第一測定位置30へと移動させる(図9の実線にて示す位置)。測定対象となる穴51は加工用データに基づいて深さ、内径等が設定されており、穴51の形状を正確に測定するために第一測定位置30においてプローブ15の軸線方向が穴51の形成方向とほぼ平行となるようにしておく方が好ましい。なお、第一測定位置30は穴51の内部であればその深さは限定されないが、穴51の下端に近いとプローブ15がさらに移動することができなくなる。
【0032】
ステップ2(S2)
第一測定位置30へ移動した後に穴51の形状(内径)を算出するための座標測定を行う。穴51の内径を測定する段階では穴51の中心および半径はいずれも判明していない。このため、第一測定位置30において、同位置にあるプローブ15のうち基本光αが照射される位置における軸心gを座標原点(X=0,Y=0)とした場合の、同位置における穴51の内壁面52の円周上の異なる3箇所の座標を測定する。なお、この場合の座標は受光面26の座標と同じマップを用いてもよいし、異なるマップを用いてもよい。測定対象となる3箇所の座標は第一測定ユニット20a、第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cを順次作動させて行う。以下、第一測定ユニット20aを用いた測定方法を例に説明する。
【0033】
まず、集光レンズ24の中心点24aを通り、基体16の軸線hに平行な仮想線nを想定する(図7)。仮想線kと仮想線lはともに基体16の軸線hに直交することから、仮想線kと仮想線lは仮想線nに対しても直交する関係にある。穴51の内壁面52に到達した基本光αは反射位置52aにおいて散乱光として乱反射し、その散乱光の一部は反射光βとして集光レンズ24を通って受光面26上に結像する。この反射光βのうち集光レンズ24の中心点24aを通る光軸を仮想線pとする。
【0034】
ここで、図7において仮想線kと仮想線nとの交点を点Oとし仮想線nと受光面26上の仮想線mとの交点を点Dとする。また基本光αの反射位置52aを点A、集光レンズ24の中心点24aを点Bとし、反射光βの受光面26上の結像点26bを点Cとすると、同一平面上に三角形OABと三角形DBCの2つの直角三角形を形成することができる。
【0035】
この三角形OABと三角形DBCのそれぞれ点Bを頂点とする内角は対角であるため同じ角度であり、また点O、点Dをそれぞれ頂点とする内角はいずれも直角であるため、二組の角が等しい三角形となり、三角形OABと三角形DBCは相似である。また、辺OBは距離a、辺DBは距離bに設定されているため、相似条件により辺OAの距離:辺CDの距離=距離a:距離bの関係が成立する。
【0036】
一方、辺OAは仮想線kの一部であるから、基体16の表面から反射位置52a(点A)までの距離をL、軸線hから基体16表面までの距離(基体の半径)を距離r、軸線hから集光レンズ24の中心点24a(点B)までの距離を距離cとすると、辺OAの距離はL+r−cにて表すことができる。このうち、距離r及び距離cは予め距離が特定されている。他方、辺DCは、仮想線kと平行な仮想線m上の一部であり、受光面26上の軸線hから点Dまでの距離は軸線hから集光レンズ24の中心点24aまでの距離(=距離c)に等しい。また、辺DCの距離は、軸線hから集光レンズ24の中心点24aまでの距離cから、軸線hから点Cまでの距離sを除したものであるから、辺DCの距離=距離c−距離sにて表すことができる。
【0037】
そして、前記の三角形の相似条件から、L+r−c:c−s=a:bの関係が成り立つ。この式を展開すると、以下の式(1)となる。
【0038】
【数1】
【0039】
この式の右辺において距離a,距離b,距離c,距離rはいずれも距離が判明しており、距離sのみが変化する値である。したがって、距離sを求めることにより上記式を用いて距離Lを求めることができる。ここで、距離Lと距離sとの関係は上記式(1)にて示したように1次の直線となるから、式(1)を距離sで微分して得られる距離sの微小変化dsに対する距離Lの微小変化dLの割合、すなわち受光素子25における検出感度は、dL/ds=−a/bと一定となり、距離L、距離sに依存しない。
【0040】
距離sは受光面26上の原点26aから結像点26b(点C)までの距離(ただし、y座標が負の時は距離sは負の値)であり、結像点26b(点C)は座標(0,y1)にて特定されるため、s=y1として特定することができる。これにより求めたsの値を上記式に代入することにより、プローブ15表面から穴51の内壁面52である反射位置52aまでの距離L、さらには反射位置52aの座標値(X11,Y11)を測定することができる。第一測定ユニット20aによる測定にて求められた反射位置52aの座標(X11,Y11)は、コンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0041】
第一測定位置30における仮想円である第一仮想円31の式を求めるには異なる3箇所の座標が必要であるため、同様の手順にて第二測定ユニット20b、第三測定ユニット20cを作動させて異なる二つの反射位置の座標値(X12,Y12)(X13,Y13)を求める。このうち、第二測定ユニット20bは、第一測定ユニット20aに対して軸線hを中心として図3中時計回りに120度回転させた位置に配置されている。このため、第二測定ユニット20bによる受光面26上の結像点26bの軌跡は原点26aを通りy軸に対して時計回りに120度傾いた直線(y=−1/√3x)上に形成される(図6にて二点鎖線で示す)。
【0042】
また、第三測定ユニット20cは、第一測定ユニット20aに対して軸線hを中心として図4中反時計回りに120度回転させた位置に配置されていることから、第三測定ユニット20cによる受光面26上の結像点26bの軌跡は原点26aを通りy軸に対して反時計回りに120度傾いた直線(y=1/√3x)上に形成される(図6にて破線で示す)。そして、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cを用いてそれぞれ測定した受光面26上の結像点26b(点C)の座標値(x12,y12)、(x13,y13)は、いずれも反射位置52aがプローブ15に近い場合にはそのy座標値が小さく反射位置が離れるにしたがってy座標値が大きくなる。
【0043】
したがって、第二測定ユニット20b並びに第三測定ユニット20cの結像点26b(点C)の座標値に基づくそれぞれの距離sは、以下の式(2)又は式(3)にて求めることができる。
【0044】
【数2】
【0045】
上記の式により求められた距離sを式(1)に代入することにより、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cにおける基体16の表面から各反射位置52aまでの距離Lをそれぞれ求めることができ、更には各反射位置の座標値(X12,Y12)(X13,Y13)を求めることができる。この座標値もコンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0046】
ステップ3(S3)
上記ステップ2により求めた穴51の内壁面52の3箇所の座標値に基づいて第一仮想円31の式を算出する。まず、既に求めた3つの反射位置52aの座標値(X11,Y11)(X12,Y12)(X13,Y13)のうち任意の2点の座標値(Xi,Yi)、(Xi+1,Yi+1)を、下記式(4)の円の方程式に代入する。なお、本実施形態では、穴51の断面形状を略真円と仮定する。
【0047】
【数3】
【0048】
そして、各座標値をそれぞれ代入した後に得られた双方の式を減算し、Cx,Cyについて整理すると、下記式(5)が得られる。なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果においては、式(5)が(n−1)個得られる。
【0049】
【数4】
【0050】
ここで、式(5)を下記の式(6)〜(8)のようにおくと、
【0051】
【数5】
【0052】
上記式(5)は、下記の式(9)のように表される。
【0053】
【数6】
【0054】
なお、n点(本実施形態では3点)の測定結果からは、(n−1)個の式(9)が得られる。この結果から、最小二乗法を用いてCx,Cyを求めると、下記の式(10)及び式(11)が得られる。
【0055】
【数7】
【0056】
【数8】
【0057】
但し、Σの範囲は1≦i≦n−1である。これにより、第一仮想円31の中心座標31aが求められる。そして、この中心座標31aを決定した後、下記式(12)により各反射位置の座標値に対応したRiを求め、その平均値を仮想円の半径の測定値Rとする。
【0058】
【数9】
【0059】
但し、Σの範囲は1≦i≦nである。このようにして仮想円の半径を求めることで、穴の内径(仮想円の直径)が算出される。したがって、円周上の3箇所の異なる座標を得ることができれば上記円の方程式の3つの定数を算出することができる。算出した第一仮想円31の式はコンピュータのRAMに格納される。
【0060】
ステップ4(S4)
ステップ4において、コンピュータは駆動手段を駆動させてプローブ15を第二測定位置40(図9の二点差線で示す位置)へと移動させる。この第二測定位置40は第一測定位置30におけるプローブ15をその軸線h上に穴51の深さ方向Fへ向けて所定距離tだけ移動させた位置である。
【0061】
ステップ5(S5)
プローブ15を第二測定位置40へ移動した後には同位置における穴51の形状を測定する。この測定方法はステップ2の測定方法と同じであり、第一測定ユニット20a、第二測定ユニット20b及び第三測定ユニット20cを順次動作させてこの第二測定位置における穴51の内壁面52の異なる3箇所の座標値(X21,Y21)(X22,Y22)(X23,Y23)を測定する。
【0062】
ステップ6(S6)
上記ステップ5により求めた第二測定位置40における穴51の内壁面52の3箇所の座標値に基づいて第二仮想円41の式を算出する。算出方法はステップ3と同じであり、算出した第二仮想円41の式はコンピュータのRAM(図示略)に格納される。
【0063】
ステップ7(S7)
コンピュータは、ステップ3で求めた第一仮想円31とステップ6で求めた第二仮想円41の式をRAMから読み出して穴51の傾斜角度θを演算する。すなわち、プローブ15の軸線方向に対する穴51の傾斜角度θは第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aとを結ぶ線により求めることができる(図10)。ここで、穴51の傾斜角度θが零で、内壁面52がプローブ15の軸線方向と一致する場合には、第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aは一致するはずである。一方、第一仮想円31の中心座標31aに対して第二仮想円41の中心座標41aが一致しない場合(図10に示す状態)には、プローブ15の軸線方向に対して穴51が傾いていることになるため、第一仮想円31の中心座標31aと第二仮想円41の中心座標41aとプローブ15の距離tとの関係から穴51の傾斜角度θを算出することができる。
【0064】
上記実施形態の光学式測定装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
* 本実施形態の光学式測定装置10によれば、各測定ユニット20(20a,20b,20c)から基本光αを穴51の内壁面52に対して照射することで各反射位置52aの座標値を求め、穴51の内部における任意の箇所で1つの仮想円を同定することにより穴51の内径が測定される。また、穴51の内部においてプローブ15の軸線方向の2箇所でそれぞれ仮想円を同定することにより穴51の傾斜角度θが測定される。すなわち、プローブ15を穴51の内壁面52に接触させることなく同穴51の内部が測定可能とされる。これにより、本実施形態では、穴51の内壁面52にプローブ15を接触させるための複雑な機構を必要とせず、構成の簡略化を図ることができ、ひいては装置の大型化が回避される。そして、穴51の内部にプローブ15を挿入するといった極めて簡易な操作により、所望の測定が可能となる。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、被測定物50の製造現場においてその穴51の内部を短時間で容易に測定することができる。
【0065】
* 本実施形態では、内壁面52の反射位置52aにおいて散乱された散乱光のうちの任意の光を反射光βとして受光素子25上に結像させて結像点26bの座標を測定している。このため、本実施形態では、反射光βを正確に受光素子25上に結像させるべく光の角度や、基体16の内部における受光素子25の設置箇所等を厳密に調整する必要がない。従って、本実施形態の光学式測定装置10によれば、構造の簡易化を図ることができる。
【0066】
* 本実施形態の光学式測定装置10には、光源としての光ファイバー21がユニットとして周方向において3つ設けられている。ここで、上記仮想円を同定する際には最低限3つの座標値が必要となる。本実施形態によれば、そうした3つの座標値が一度の測定において瞬時に算出可能とされる。これにより、仮想円径および中心座標の同定を容易に行うことができる。また、各光ファイバー21は、周方向において等間隔に設けられている。すなわち、周方向において等間隔に反射位置52aの座標値が求められることとなる。これにより、穴51の内部形状を高い精度で反映する仮想円を同定することが可能となるため、穴51の内壁面52の傾斜角度や穴51の内径を正確に測定することができる。
【0067】
* 光源として光ファイバー21を用いることにより、穴51の内壁面52の所定箇所に対して基本光αを確実に照射させることができる。
* 穴51の内壁面52の座標値は、受光面26の原点26aからの反射光βの受光面26上への結像点26bまでの距離sを求めることによって算出している。したがって穴51の内壁面52の座標値を容易に測定することができる。
【0068】
* 受光手段として受光素子(二次元PSD)25をその受光面26が軸線hに直交する平面上となるように配置して各測定ユニット20にて共用している。このため、受光手段を測定ユニット20の数に応じて準備する必要がない。
【0069】
* 反射光βを集光レンズ24によって集光させて受光面26上に結像させている。このため、受光面26上の結像点26bのスポット面積が小さくなり、光の重心位置を求めるPSDの測定誤差が小さくなる。
【0070】
* 集光レンズ24によって反射光βを集光させて受光素子25上に結像させるため、受光素子25上の結像点26bの光量も増加することとなり検出感度が良好となる。
* 距離Lと距離sとの関係は1次の直線(式(1))となるから、受光素子25における検出感度は、dL/ds=−a/bと一定となり、距離L、距離sに依存することなく安定した感度を得ることができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更、応用してもよい。
○ 受光素子(二次元PSD)25に、測定に用いた波長の光のみを通過させるフィルタを備えたものを用いると、外乱光等のノイズを更に減少させることができる。
【0072】
○ 上記実施形態にて配置されている集光レンズ24を用いることなく、集光レンズ24を配置していた位置に細孔を形成することにより、同細孔をピンホールとして機能させて反射光βを受光面26上に結像又は照射させてもよい。この場合、細孔を通過した反射光βのみにて受光面26上に結像(照射)点26bを形成することから、集光レンズ24を用いる場合に比して結像(照射)点26bの光量が不十分になる可能性がある。このため、集光レンズ24を使用しなくても反射光βが受光素子25にて検出可能な程度の光量が得られる光を基本光αとする必要がある。
【0073】
○ 上記実施形態では、測定ユニット20を周方向に等間隔に3組備えているが、測定ユニット20は1組或いは2組でもよい。測定ユニット20が1組の場合にはプローブ15が軸線hを中心として回転可能としておき、穴51の内壁面52の座標を1箇所測定する毎に所定角度回転し、異なる3箇所における穴51の内壁面52の座標を測定することにより穴51の形状を測定することができる。また、2組の場合には少なくとも異なる3箇所における穴51の内壁面52の座標を測定することができればよい。
【0074】
○ 受光手段を上記実施形態の二次元PSD25に変えて、色を識別することができるカラーCCDとしてもよい。この場合、3組の測定ユニット20の光源の光色をそれぞれ異ならせる(例えば、グリーン、ブルー、レッド)ことにより、受光手段にて複数の測定ユニット20からの反射光を順次受光しても色ごと、つまり各測定ユニット20の反射位置52aからの反射光β毎に各結像点26bの座標を特定することができる。
【0075】
○ 上記実施形態では光源として光ファイバー21を用いたが、これに変えてLEDやレーザダイオード等の他の光源に変更してもよい。
○ 本実施形態では、3つの光ファイバー21を周方向において等間隔毎に設けたが、隣接する光ファイバー21同士の間隔はそれぞれ相違するものであってもよい。
【0076】
○ 本実施形態のプローブ15における測定ユニット20を、同プローブ15の先端側にさらに1組ずつ設ける構成でもよい。すなわち、プローブ15には、3組×2段の測定ユニット20が設けられることとなる。このように構成した場合には、穴51の内部において軸線方向にプローブ15を動かさずとも、穴51の深さ方向において異なる箇所にて第一仮想円と第二仮想円とを測定することが可能となる。従って、この構成によれば、穴51の内部において第一測定位置30から第二測定位置40へとプローブ15を移動させる操作が不要となるため、穴51の内部の測定が一層容易なものとなる。
【0077】
○ 本実施形態では、穴51の内部の深さ方向における2箇所(第一測定位置30及び第二測定位置40)においてそれぞれ仮想円を同定し、その仮想円の半径から個々に穴の内径を求めたが、穴51の内部において3箇所以上でそれぞれ仮想円を同定し、各仮想円の直径の平均値を穴の内径としてもよい。
【0078】
○ 本実施形態では、穴51の断面形状を略真円と仮定したが、その断面形状が仮に楕円であるときには、上記円の方程式の代わりに楕円の公式を採用する。この場合、上記と同様に仮想円を求める際には、穴51の内壁面上における反射位置の座標値が少なくとも4つ必要となる。こうしたときには、測定の簡易化及び迅速化を図るべく、基体16の軸線h上に中心を有する同一円周上において4つ以上の測定ユニット20を設ける構成が好ましい。
【0079】
○ 本実施形態では、穴51の内部において第一仮想円31と第二仮想円41を求めることで穴51の内壁面52の傾斜角度θを測定したが、これを以下の方法に変更してもよい。すなわち、穴51の内部の2箇所において本実施形態と同様の方法で第一測定位置30での距離(L)L1と第二測定位置40での距離(L)L2を算出した後、下記式(13)により傾斜角度θiを求める。
【0080】
【数10】
【0081】
この式(13)により傾斜角度θiをそれぞれ求め、その平均値を内壁面の傾斜角度θの測定値とする。
○ 本実施形態では、光ファイバー21よりも基体16の先端側に位置する箇所に受光素子25を配設したが、同受光素子25の配設箇所はこれに限定されるものではない。すなわち、光ファイバー21よりも基体16の基端側に位置する箇所に受光素子25を配設してもよい。このような構成とした場合においても、穴51の内壁面52で反射した散乱光のうち任意の光が受光素子25上に結像されることから、穴51の内部形状に関する所望の測定が可能となる。
【0082】
○ 本実施形態では、第一仮想円31を同定した後にプローブ15を穴51の深さ方向Fの底部側に移動させて第二仮想円41を同定したが、これとは逆方向(穴の開口部側)へプローブ15を移動させて上記第二仮想円41を同定する方法を採用してもよい。
【0083】
○ 本実施形態では、第一仮想円31を同定し、続いて第二仮想円41を同定することにより穴の傾きを求めるという流れである。これに限られず、第一測定位置30における穴51の内壁面52の座標を所定数測定し、続いて第二測定位置40における穴51の内壁面52の座標を所定数測定し、その後に第一仮想円31の同定及び第二仮想円41を同定して穴51の傾きを求めるという工程を採用してもよい。
【0084】
次に、本発明の光学式測定装置について、既に示した実施形態(第1の実施形態)とは別の実施形態(第2の実施形態)を示す。この実施形態では第1の実施形態と比して集光レンズ124を傾斜させて配置した点に特徴があり、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、また、説明を行う場合であっても第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を用いる。
【0085】
図11に示すように、プローブ15の基体16を構成する基体本体117の先端には底部は形成されておらず開口されている一方、基体先端部118の底部118aは外周部118bに対して中央部118cが基体本体117側に突き出た断面凸状に形成されている。外周部118bと中央部118cとの間は傾斜部118dが形成されており、外周部118bと中央部118cとの間にまたがるように底部118aを貫通する円孔が形成されている。この円孔の内側周囲には図示しない保持枠が形成されており、この保持枠内に集光レンズ124が固定されている。
【0086】
図12にて集光レンズ124の位置関係を詳細に示す。集光レンズ124の光学的な中心点124aは仮想線kを基体16の軸線hに沿って基体16の先端側に距離aだけ平行移動させた仮想線l上に位置している。一方、集光レンズ124は、その光軸が受光面26の原点26aと集光レンズ124の中心点124aとを結ぶ線qと一致するように配置されている。なお、この実施形態でも測定ユニットを3組備えており、他の測定ユニットを構成する集光レンズも各測定ユニット内にて同様に傾斜して配置されていることは第1の実施形態と同様である。また、この第2の実施形態に係る光学式測定装置10を用いた穴内部の測定方法は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。この第2の実施形態の光学式測定装置10によれば、第1の実施形態に加えて以下のような効果を得ることができる。
【0087】
すなわち、第1の実施形態においては集光レンズ24の光軸はプローブの軸線hと平行であり、穴51の内壁面52の反射位置52aにて反射して集光レンズ24を通過する反射光βは穴51の反射位置52aと集光レンズ24の中心点24aとを結ぶことから、この反射光βと集光レンズ24の光軸との間には必ずある程度の角度差が存在する。このような角度差がある場合、受光面26上に形成される結像点の形状は楕円形状、さらに詳しくいえば尾を引いた彗星のような形状となる。この現象をコマ収差現象といい、集光レンズ24に対する反射光βの角度差が大きくなるにしたがって顕著となり、尾が長くなる。受光素子である二次元PSD25は受光面26上の結像点の重心を求めるものであるため、上記現象による結像点26bの形状の変形に伴い、受光素子25によって求められる重心位置がずれてしまい検出誤差が生ずる可能性もある。
【0088】
これに対して、第2の実施形態のように予め集光レンズ124の光軸を反射光βに対応して傾斜させて配置させることにより、上記コマ収差現象による受光素子25による検出誤差を減少させることができる。この場合、反射光βと集光レンズ124の光軸との角度差をなくすることは困難であるため、受光面26上において反射光βを受光可能な範囲(図6参照)の中間位置である原点26aに集光レンズ124の光軸を合わせることにより、極端な検出誤差の発生を抑制することができる。
【0089】
また、集光レンズ124の光軸を傾斜させて配置する場合の角度は上記実施形態に示すものには限られず、少なくとも集光レンズ124の光軸がプローブ15の先端方向に向かってプローブ15の軸線h側に傾斜していればよい。具体的な角度は受光素子25の検出有効範囲や想定する穴の径等に応じて設定することができる。
【0090】
上記した実施形態から把握することのできる技術的思想を下に示す。
(1)プローブには、透過部を透過した任意の散乱光を集光させて受光素子に受光させるための集光レンズが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式測定装置。
(2)前記集光レンズは、その光軸がプローブの先端方向に向かってプローブの軸線側に傾斜して配置されていることを特徴とする技術的思想1に記載の光学式測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施形態(第1の実施形態)の光学式測定装置を示す概略図。
【図2】同光学式測定装置を示す部分拡大概略図。
【図3】本実施形態のプローブの内部の断面図。
【図4】図3のA−A線端面図。
【図5】図3のB−B線端面図。
【図6】受光面上の結像点の軌跡を示す模式図。
【図7】穴内部の測定方法を示す概略図。
【図8】穴内部の測定方法を示すフロー図。
【図9】穴内部の測定方法を示す説明図。
【図10】穴内部の測定方法を示す説明模式図。
【図11】第2の実施形態のプローブの内部の断面図。
【図12】第2の実施形態の集光レンズの光軸を示す説明図。
【符号の説明】
【0092】
α…基本光、θ,θi…傾斜角度、F…深さ方向、h…軸線、10…光学式測定装置、15…プローブ、20(20a,20b,20c)…測定ユニット、21…光ファイバー、23…透過部としての反射光導入孔、24、124…集光レンズ、25…受光素子(二次元PSD)、26…受光面、30…第一測定位置、31…第一仮想円、40…第二測定位置、41…第二仮想円、50…被測定物、51…穴、52…内壁面、52a…反射位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円径および中心座標を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円径および中心座標を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光学式測定装置であって、
前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において複数設けられてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学式測定装置であって、
前記受光素子は二次元位置検出素子であり、該二次元位置検出素子の受光面は前記プローブの軸線と直交する平面上に配置されていることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項5】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定方法であって、
前記被測定物の穴の内壁面の少なくとも異なる3箇所に向けて基本光を照射して各箇所の座標を特定する工程と、
前記工程で求めた内壁面の少なくとも異なる3箇所の座標に基づいて仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する工程からなることを特徴とする光学式測定方法。
【請求項1】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づき仮想円径および中心座標を求めることにより、前記穴の内径を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定装置であって、
前記被測定物の穴の内壁面に向けて基本光を照射する光源と、前記内壁面で反射された任意の散乱光を透過させるための透過部と、当該透過部を透過した前記任意の散乱光を受光する受光素子とを備えてなる非接触式のプローブと、
前記プローブが前記穴の内部に挿入された状態で、当該穴の深さ方向に沿う少なくとも2箇所において前記受光素子上における前記任意の散乱光の受光位置に基づきそれぞれ仮想円径および中心座標を求めることで、前記穴の傾斜角度を算出する演算手段とを備えてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光学式測定装置であって、
前記光源は、前記プローブの軸線上に中心を有する同一円周上において複数設けられてなることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学式測定装置であって、
前記受光素子は二次元位置検出素子であり、該二次元位置検出素子の受光面は前記プローブの軸線と直交する平面上に配置されていることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項5】
被測定物に設けられた穴の内部を測定する光学式測定方法であって、
前記被測定物の穴の内壁面の少なくとも異なる3箇所に向けて基本光を照射して各箇所の座標を特定する工程と、
前記工程で求めた内壁面の少なくとも異なる3箇所の座標に基づいて仮想円を求めることにより、前記穴の内径を算出する工程からなることを特徴とする光学式測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−157635(P2008−157635A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343340(P2006−343340)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(391002487)学校法人大同学園 (23)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(391002487)学校法人大同学園 (23)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
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