説明

光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造法

【課題】 本発明は、溶媒中、塩基、相間移動触媒存在下、ペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応させることを特徴とする光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法を提供する。

【解決手段】 溶媒中、塩基(4)、(5)もしくは(6)と
光学活性相間移動触媒(7)もしくは(8)の存在下、一般式(1)
CHO (1)
で示されるカルボニル化合物を、一般式(2)
SiR (2)
で示されるペルフルオロアルキルシラン類と反応させ、一般式(3)
CH(OSiR)R (3)
で示されるペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体、または脱シリル化した一般式(4)
CH(OH)R (4)
で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】

光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体は医薬、農薬分野における重要な合成中間体である。前記一般式(3)または一般式(4)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法としては、次に示す方法が挙げられる。即ち(1)α位に含フッ素置換基を有するアルコール化合物を酵素による光学分割する方法(非特許文献1)(2)不斉補助基が置換したα位に含フッ素置換基を有するカルボニル化合物に対してジアステレオ選択的なフルオロアルキル化反応を方法(非特許文献2、)、等が知られている。
【0003】
しかしながら、前記(1)の方法では原料として含フッ素置換基を有するカルボニル化合物を入手する必要がある。工業的に入手可能な含フッ素置換基を有するカルボニル化合物は限定される点が問題であった。(2)の方法では化学量論量の不斉補助基をことから工業的スケールによる反応では適切ではない。一方、エナンチオ選択的な直接的ペルフルオロアルキル化反応もいくつか報告されている。すなわちシンコナアルカロイドから誘導される光学活性4級アンモニウムフロリドを触媒としてアルデヒド化合物への直接的ペルフルオロアルキル化反応による光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造法(非特許文献3、4)である。しかし本製造法で利用される光学活性4級アンモニウムフロリドは潮解性が高く取扱いが困難かつ煩雑な合成ステップを必要とする問題点があった。さらに得られる光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の光学純度は中程度までしか達成していない。近年、光学活性4級アンモニウムブロミドおよびBINOLのナトリウム塩のコンビネーション法を用いた製造法(非特許文献5)やN上に嵩高い3,5−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンジル基を有する光学活性4級アンモニウムフェノキシドを触媒としてケトン化合物へのペルフルオロアルキル化反応による光学活性含フッ素3級アルコール誘導体の製造法も知られている。前記(5)の方法は不斉源を2分子用いることから、工業的に入手可能な触媒に限定される。また、前記(6)の方法は、ケトン化合物でのみ報告例がされており、アルデヒド化合物への応用はない。
【0004】
従って、取り扱いが容易で合成容易な触媒を用いた反応系で、ペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応して、工業的スケールで効率良く製造し得る前記一般式(3)または一般式(4)に示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法が望まれていた。
【非特許文献1】Chem.Lett.,237(1983)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,71,2177(2006)
【非特許文献3】Tetrahedron Lett.,35,3137(1994)
【非特許文献4】Synthesis,1693(2003)
【非特許文献5】Tetrahedron,63,6822(2007)
【非特許文献6】Chem.Lett.,36,666(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、溶媒中、塩基と反応触媒として光学活性な相間移動触媒の存在下、ペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応させて、工業的スケールで効率良く製造し得る前記一般式(3)または(4)に示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、溶媒中、塩基と反応触媒として相間移動触媒を用いてペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応させて、前記一般式(3)または(4)に示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記の(1)〜(7)に関するものである。
(1) 溶媒中、塩基および光学活性な相間移動触媒存在下、一般式(1)
CHO (1)
(式中、Rは水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基またはアリール基である。)
で示されるアルデヒド化合物を、一般式(2)
SiR (2)
(式中、Rはペルフルオロアルキル基であり、R、RまたはRはそれぞれ互いに独立し、同一または異なってもよいアルキル基またはアリール基を示す。)
で示されるペルフルオロアルキルシラン類と反応させることを特徴とする一般式(3)
CH(OSiR)R (3)
(式中、R、R、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法。
【0008】

(2) 溶媒中、ルイス酸触媒存在下、一般式(1)
溶媒中、塩基および光学活性な相関移動触媒存在下、一般式(1)
COH (1)
(式中、Rは前記定義に同じ。)
で示されるカルボニル化合物を、一般式(2)
SiR (2)
(式中、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示されるペルフルオロアルキルシラン類と反応させ、一般式(3)
CH(OSiR)R (3)
(式中、R、R、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示されるペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を含有する反応液を直接脱シリル化、または精製分離した後に脱シリル化することを特徴とする一般式(4)
CH(OH)R (4)
(式中、R、Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法。
【0009】

(3) 前記一般式(2)で示されるペルフルオロアルキルシラン類がトリフルオロメチルトリメチルシランである(1)または(2)に記載の製造方法。
【0010】

(4)前記塩基は,一般に市販されているアミン類、無機塩一般式(5)もしくは4級アンモニウム塩一般式(6)から選ばれる少なくとも1種類の塩基であることを特徴とする請求項1および2に記載の製造法。
アミンとしては,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなどを用いることができる。無機塩は一般式(5)
(X)nM (5)
(式中,Mは,希土類を含む遷移金属,リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウムから選ばれた元素,nは,Mの原子価と同数の整数を表す。Xはフロリド、アルコシド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)4級アンモニウム塩一般式(6)
NX (6)
(式中、R、R、RまたはRはそれぞれ互いに独立し、同一または異なってもよいアルキル基またはアリール基を示す。Xはフロリド、クロリド、ブロミド、イオダイドもしくはアルコシド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)

(5)前記一般式(5)がNaOHもしくは一般式(6)がテトラメチルアンモニウムフロリドである請求項1または2に記載の製造法。
【0011】

(6)前記光学活性な相間移動触媒は,光学活性4級アンモニウム塩類から選ばれる少なくとも1種類の塩であることを特徴とする請求項1および2のいずれか1項に記載の製造方法。
光学活性な相間移動触媒としては,一般式(7),(8)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中,Rは水素,置換もしくは未置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。もしくはOR13で表せるR13はアルキル基を示す。R10は,エチル基もしくはビニル基を示す。R11は,水素,アルキル基,アリール基またはアシル基を示す。R12は,水素,ハロゲン原子,トリフルオロメチル基または置換もしくは未置換のアルキル基,アリール基またはトリフルオロメチル基を示す。mは0〜2の整数を表す。Xは,ハロゲン原子,IO,ClO,OTfまたはHSOを示す。)
【0014】
(7)前記一般式(7)および(8)で示されるN上のベンジル基のアリール3および5位に置換したR12がトリフルオロメチル基もしくは、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である請求項1または2記載の製造法。
【0015】
(8) 前記溶媒が,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,クロロホルム,ジクロロメタン,ジクロロエタン,トルエン,テトラヒドロフラン,ヘキサン,ベンゼン、ジエチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1,2のいずれか1項に記載の製造法。

【発明の効果】
【0016】
従来、前記一般式(3)または(4)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を製造する際には、酵素を用いた不斉反応による手法かジアステレオ選択的な方法が知られている。しかし、入手困難な基質を用いる点や化学量論量の不斉補助基を利用することによって大量の廃棄物が生成する点などが問題として挙げられる。さらに、現在知られているエナンチオ選択的反応は、煩雑な合成ステップを必要とし、潮解性が高い光学活性アンモニウムフロリドが主に用いられるため、反応操作に手間がかかることや触媒の取り扱いが問題視されていた。そこで本発明における製造方法は、従来法と比較して、短ステップで合成可能で潮解性が軽減した光学活性アンモニウムブロミドと塩基との組み合わせ触媒が、ペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応して立体選択的にペルフルオロ基を導入することを可能とし、前記一般式(3)または(4)に示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を得ることに成功したことから、工業的に利用価値は高い。

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は塩基、光学活性な相間移動触媒存在下、ペルフルオロアルキルシラン類とアルデヒド化合物を反応して、前記一般式(3)または(4)に示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を得ることを特徴とする製造方法である。
【0018】

前記一般式(1)中のアルキル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が3〜10のシクロアルキル基がさらに好ましい。アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
【0019】

前記一般式(1)中のアルケニル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルケニル基または炭素数が3〜20のシクロアルケニル基が好ましく、炭素数が1〜10のアルケニル基または炭素数が3〜10のシクロアルケニル基がさらに好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、シクロヘキセニ基、アリル基などが挙げられる。アルケニル基はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
【0020】

前記一般式(1)中のアラルキル基は、例としてベンジル基、ペンタフルオロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、p−ニトロベンジル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、α−フェネチル基等が挙げられる。
【0021】

前記一般式(1)中のアルキニル基は、例としてエチニル基、フェニルエチニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
【0022】

前記一般式(1)中のアリール基は炭素数が6〜20のアリール基が好ましく、炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。アリール基はアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
【0023】

前記一般式(1)中のアルコキシ基は炭素数が1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数が1〜10のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の場合も上記のアルキル基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
【0024】

前記一般式(1)中のアリールオキシ基は炭素数が1〜20のアリールオキシ基が好ましく、炭素数が1〜10のアリールオキシ基がさらに好ましい。アリールオキシ基の場合も上記のアリール基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
【0025】

前記一般式(1)中のアシル基は炭素数が1〜20のアシル基が好ましく、炭素数が1〜10のアシル基がさらに好ましい。特に制限するわけではないが、例としてホルミル基、アセチル基、マロニル基、ベンゾイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0026】

前記一般式(1)中のアルコキシカルボニル基は炭素数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数が2〜10のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の場合も上記のアルコキシ基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
【0027】

前記一般式(1)中のアリールオキシカルボニル基は炭素数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましく、炭素数が7〜15のアリールオキシカルボニル基がさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の場合も上記のアリールオキシ基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
【0028】

前記一般式(1)で示されるカルボニル化合物としては特に制限するわけではないが、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキサルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、シクロペンタンカルボキサルデヒド、シクロヘキサンカルボキサルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、2−ベンゼンスルホニルアルデヒド、2-ベンゼンスルフィニルアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。
【0029】

前記一般式(2)中のペルフルオロアルキル基は、枝分かれがあっても良い炭素数が1〜10のペルフルオロアルキル基または炭素数が3〜20のペルフルオロシクロアルキル基が好ましく、場合によってはハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0030】

前記一般式(2)中のアルキル基は、置換基を有していても良く、直鎖または分岐した炭素数が1〜20のアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が3〜10のシクロアルキル基がさらに好ましい。
【0031】

前記一般式(2)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく、炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。
【0032】

前記一般式(2)で示されるペルフルオロアルキルシラン類としては、例えばトリフルオロメチルトリメチルシラン、ペンタフルオロエチルトリメチルシラン、ヘプタフルオロプロピルトリメチルシラン、ノナフルオロブチルトリメチルシラン、ヘプタデカフルオロオクチルトリメチルシラン、トリフルオロメチルトリエチルシラン、トリフルオロメチルトリプロピルシラン、トルフルオロメチルトリフェニルシランが挙げられる。
【0033】

前記一般式(3)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体としては、例えばトリメチル(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエトキシ)シラン、トリメチル[2,2,2−トリフルオロ−1−(2−ナフタレニル)エトキシ]シラン、トリメチル[2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メチルフェニル)エトキシ]シラン、トリメチル[2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メトキシフェニル)エトキシ]シラン、トリメチル[2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ニトロフェニル)エトキシ]シラン、[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエトキシ]トリメチルシラン、トリメチル[[(2E)−3−フェニル−1−(トリフルオロメチル)−2−プロペニル]オキシ]シラン、トリメチル(1−トリフルオロメチルオクチロキシ)シラン、トリメチル(2,2,2−トリフルオロ−1−フラン−2-イル−エトキシ)シラン、トリメチル(2,2,2−トリフルオロ−1−チオフェン−2-イル−エトキシ)シラン等が挙げられる。
【0034】

前記一般式(4)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体としては、例えば2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(2−ナフタレニル)エタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メチルフェニル)エトタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ニトロフェニル)エタノール、1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノール、(2E)−3−フェニル−1−(トリフルオロメチル)−2−プロペノール、1−トリフルオロメチルオクタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−フラン−2-イル−エタノール、2,2,2−トリフルオロ−1−チオフェン−2-イル−エタノール等が挙げられる。
【0035】

前記一般式(5)または(6)中のアルキル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルキル基が好ましく、炭素数が1〜8の枝分かれがあっても良いアルキル基がさらに好ましい。
【0036】

前記一般式(5)または(6)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく、炭素数が6〜15の置換または無置換のアリール基がさらに好ましい。
【0037】

前記一般式(5)または(6)中のアルコキシ基は炭素数が1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数が1〜10のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の場合も上記のアルキル基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。
【0038】
前記塩基触媒として特に制限するわけではないが,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなど用いることができる。なお,前記一般式(5)で示される塩基も,特に制限するわけではないが,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム,水酸化セシウム等が挙げられる。また前記一般式(6)で示される4級アンモニウム塩も、特に制限するわけではないがテトラブチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムフロリド、テトラメチルアンモニウムフロリド等が挙げられる。
【0039】
これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0040】

前記一般式(7),(8)中のアルキル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルキル基が好ましく,炭素数が1〜8の枝分かれがあっても良いアルキル基がさらに好ましい。
【0041】

前記一般式(7),(8)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく,炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。
【0042】

前記一般式(7),(8)中のアシル基は炭素数が1〜20のアシル基が好ましく,炭素数が1〜10のアシル基がさらに好ましい。特に制限するわけではないが,例としてホルミル基,アセチル基,マロニル基,ベンゾイル基,シンナモイル基等が挙げられる。
【0043】

前記一般式(7)、(8)中のペルフルオロアルキル基は炭素数が1〜10の、水素がフッ素で置換された枝分かれがあっても良いアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく、場合によってはハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0044】

前記光学活性な相間移動触媒として,特に制限するわけではないが,光学活性4級アンモニウム塩,光学活性チオニウム塩,光学活性オキソニオウム塩,光学活性ホスホニウム塩などが挙げられる。好ましくは,キナアルカロイドの4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0045】

本発明の反応は,溶媒として低極性有機溶媒としては,ヘプタン,ヘキサン,キシレン,トルエン,クロロホルム,ジクロロメタン,ジイソプロピルエーテルが好ましく,クロロホルム,ジクロロメタン,トルエン,ベンゼンが好ましい。非プロトン性溶媒としては,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,テトラヒドロフラン,ジメトキシエタン,ジエチレングリコールジメチルエーテル,ヘキサメチルリン酸トリアミドが好ましく,N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン,ジメチルスルホキシド,テトラヒドロフランがさらに好ましい。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0046】


反応後,前記一般式(3)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体は一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ,例えば反応液を濃縮した後,蒸留精製またはシリカゲル,アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製,塩析,再結晶等が挙げられる。
【0047】

本発明で用いられる試薬はあらゆる慣用の方法に従って導入することができ、触媒をカルボニル化合物、ペルフルオロアルキルシラン類、溶媒から成る混合物に投入することができる。またカルボニル化合物、ペルフルオロアルキルシラン類を同時にまたは混合物として、溶媒および触媒から成る混合物に投入することができる。またアルデヒド化合物を溶媒、触媒、ペルフルオロアルキルシラン類からなる三成分の混合物中に投入すること、あるいはペルフルオロアルキルシラン類を溶媒、触媒、カルボニル化合物から成る三成分の混合物中に投入することも可能である。
【0048】

本発明で使用する試薬の量は、カルボニル化合物1molに対してペルフルオロアルキルシラン類0.1〜10molであるのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3molである。またカルボニル化合物1molに対して触媒は0.001〜2molであるのが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.2molである。溶媒量は特に制限するわけではないが、使用するα−ケトエステル化合物1gに対して溶媒0.1〜100gが好ましく、1〜30gがさらに好ましい。
【0049】

反応温度は特に限定されるものではないが、通常−80℃〜120℃であり、より好ましくは−40℃〜60℃である。反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。反応圧力は大気圧下、または加圧下のいずれも可能である。反応時間は特に限定されるものではないが、通常0.5〜24時間で反応は完結する。
【0050】

反応後、前記一般式(3)で示される光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を含有する反応液は直接脱シリル化、または精製分離した後に脱シリル化を行うことが可能である。
【0051】

脱シリル化反応は、シリル基を脱離できる任意の条件を選択することができ、塩酸、硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等を用いた酸加水分解、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いたアルカリ加水分解等が挙げられる。
【0052】

脱シリル化により得られた前記一般式(4)で示されるペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体は、一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ、例えば反応液から溶剤抽出、乾燥、濃縮した後、蒸留精製またはシリカゲル、アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製、塩析、再結晶等が挙げられる。
【0053】

以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
一般的な製造法(触媒に3,5−ビス[3、5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンジルキニジニウムブロミドを使用した実施例]
【0055】
【化2】




【0056】
【化3】

【0057】
(R)−2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノール
3,5−ビス[3、5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンジルキニジニウムブロミド(23 mg、0.025 mmol)とテトラメチルアンモニウムフロリド(4.6 mg、0.05 mmol)をトルエン・ジクロロメタンの混合溶媒(2/1=v/v、 0.5 mL)に溶かし,−60℃で1時間攪拌し,トリフルオロメチルトリメチルシラン(95 μL, 0.64 mmol)を加えさらに1時間攪拌した。
【0058】
その後、2−ナフトアルデヒド(39.0 mg、 0.25 mmol)を加えて13時間攪拌した後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,THFに溶解させて,1N HClで1時間処理して後,酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/n-hexane = 90/10)で精製し,生成物を収率82%,67% eeを得た。
【0059】
1H NMR (CDCl3) δ 2.59 (br. d, OH), 5.11-5.29 (m, 1H), 7.51-7.59 (m, 3H), 7.85-7.95 (m, 4H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.1 (d, J = 7.0 Hz, 3F). The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τR = 18.4 min, τS = 29.4 min); [α] D25 = -20.0 (c = 0.6 , CHCl3) , 67% ee.
【実施例2】
【0060】
一般的な製造法(触媒に3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルキニジニウムブロミドを使用した実施例]
【0061】
【化4】

【0062】
3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルキニジニウムブロミド(15.8 mg、 0.025 mmol)と水酸化ナトリウム(1.5 mg、0.038 mmol)をジエチルエーテル(0.5 mL)に溶解し、2−ナフトアルデヒド(39.0 mg、 0.25 mmol)を加えて−20℃に冷却した。その後、トリフルオロメチルトリメチルシラン(74μL、 0.5 mmol)を添加させて3時間攪拌後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,THFに溶解させて,1N HClで1時間処理して後,酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/n-hexane = 90/10)で精製し,生成物を収率89%,58% eeを得た。
【0063】
実施例1と同様、3,5−ビス[3、5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンジルキニジニウムブロミド(23 mg、0.025 mmol)とテトラメチルアンモニウムフロリド(4.6 mg、0.05 mmol)をトルエン・ジクロロメタンの混合溶媒(2/1=v/v、 0.5 mL)に溶かし,−60℃で1時間攪拌し,トリフルオロメチルトリメチルシラン(95 μL, 0.64 mmol)を加えさらに1時間攪拌した。その後、種々のアルデヒド化合物(0.25 mmol)、を加えて攪拌した後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,THFに溶解させて,1N HClで1時間処理して後,酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/n-hexane = 90/10)で精製し,光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を得た。
【0064】
実施例2と同様、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルキニジニウムブロミド(15.8 mg、 0.025 mmol)と水酸化ナトリウム(1.5 mg、0.038 mmol)をジエチルエーテル(0.5 mL)に溶解し、種々のアルデヒド化合物(0.25 mmol)
を加えて−20℃に冷却した。
【0065】
その後、トリフルオロメチルトリメチルシラン(74μL、 0.5 mmol)を添加させて反応終了後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,THFに溶解させて,1N HClで1時間処理して後,酢酸エチルで抽出し,飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/n-hexane = 90/10)で精製し,光学活性ペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を得た。


【0066】
【化5】

【0067】
2,2,2−トリフルオロ−1−(2−メトキシナフタレン−6−イル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.61 (d, J=4.6 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 5.14 (m, 1H),7.12-7.20(m, 2H), 7.51 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.74 (d, J=8.6Hz, 1H), 7.76 (d, J=8.4Hz, 1H), 7.85 (s, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ -77.9 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 55.8, 73.3 (q, J = 31.5 Hz), 105.9, 119.6, 124.6 (q, J = 281.0 Hz), 125.1, 127.3, 127.5, 128.5, 129.3, 129.9, 135.2, 158.4; IR (KBr) 3468, 2975, 1633, 1608, 1508, 1487, 1395, 1351, 1271, 1208, 1195, 1175, 1124, 1064, 1025, 901, 856, 828, 787, 729, 691 cm-1; MS (EI, m/z) 256 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel AD-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τR = 11.4 min, τS = 12.5 min); [α] D 25 = -18.3 (c = 0.8 , CHCl3), 64% ee.
【0068】
【化6】

【0069】
2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノール
1H NMR (CDCl3) δ 3.10 (brs, 1H), 4.93 (q, J =6.8 Hz, 1H), 7.35-7.45 (m, 5H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.7 (d, J = 7.0 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.7 (q, J = 31.9 Hz), 124.0 (q, J = 281.3 Hz), 127.2, 128.4, 129.3, 133.7; IR (neat) 3399, 3069, 2923, 1496, 1457, 1358, 1267, 1206, 1172, 1127, 1063, 1029, 867, 834, 761, 706, 633 cm-1; MS (EI, m/z) 176 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 210 nm, τmaj = 10.9 min, τmin = 14.4 min);[α]D 25 = -5.1 (c = 0.6 , CHCl3) , 55% ee
【0070】
【化7】



【0071】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−イソピルフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 1.25 (d, J=7.0 Hz, 6H), 2.58 (brd, J= 4.4 Hz, 1H), 2.92 (hept, J=7.0 Hz 1H), 4.96 (m, 1H), 7.11 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.38 (d, J=8.0Hz, 2H) ; 19F NMR (CDCl3) δ -78.3 (d, J = 6.0 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 24.0, 34.0, 72.7 (q, J = 31.9 Hz), 124.1 (q, J = 281.0 Hz), 126.5, 127.2, 131.1, 150.1; IR (neat) 3397, 2964, 1616, 1517, 1463, 1421, 1364, 1269, 1210, 1171, 1129, 1072, 1019, 874, 850, 818, 751, 694 cm-1; MS (EI, m/z) 206 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 0.5 mL/min, λ = 230 nm, τmaj = 18.7 min, τmin = 21.2 min); [α] D 25 = -13.8 (c = 1.1 , CHCl3), 41% ee.
【0072】
【化8】

【0073】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.42 (d, J=4.4 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 4.97 (dd, J=4.4, 6.5 Hz, 1H), 6.92 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.39 (d, J=8.4 Hz, 2H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.6 (d, J = 6.0 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 55.3, 72.5 (q, J=31.9 Hz), 113.9, 124.1 (q, J=281.0 Hz), 125.9, 128.6, 160.1; MS (EI, m/z) 206 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 19.5 min, τmin = 21.6 min); [α]D 25 = -14.8 (c = 0.6 , CHCl3) , 42% ee.
【0074】
【化9】

【0075】
2,2,2−トリフルオロ−1−(3−メトキシフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.52 (d, J=4.6 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 5.26 (m, 1H), 6.93 (ddd, J=1.4, 2.8, 8.2 Hz, 1H), 7.01-7.25 (brd, 2H), 7.32 (t, J=8.0 Hz, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.3 (d, J = 6.8 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.8 (q, J=31.9 Hz), 112.8, 115.0, 119.6, 124.0 (q, J=281.0), 129.5, 135.2, 159.4
MS (EI, m/z) 206 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 13.3 min, τmin = 15.4 min); [α] D25 = -17.7 (c = 1.1 , CHCl3) , 70% ee.
【0076】
【化10】



【0077】
2,2,2−トリフルオロ−1−(2−メトキシフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 3.65 (d, J=8.0 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 5.26 (quint, J=7.4 Hz, 1H), 6.94 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.02 (d, J=8.4 Hz, 1H),7.33 (d, J =7.6 Hz, 1H) 7.38 (d, J=7.0 Hz, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ -77.9 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 69.8 (q, J=32.7 Hz), 111.1, 120.8, 121.9, 124.4 (q, J=282.1), 129.1, 130.3, 157.2 ; MS (EI, m/z) 206 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OD-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 220 nm, τmaj = 6.5 min, τmin = 7.6 min); [α]D 25 = -5.6 (c = 0.9 , CHCl3) , 42% ee.
【0078】
【化11】

【0079】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−クロロフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.65 (d, J=3.4 Hz, 1H), 5.01 (m, 1H), 7.34-7.44 (m, 4H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.4 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.1 (q, J = 32.3 Hz), 123.8 (q, J = 281.0 Hz), 128.6, 135.3; IR (KBr) 3391, 1910, 1791, 1600, 1496, 1457, 1410, 1350, 1262, 1173, 1130, 1092, 1071, 1015, 950, 868, 856, 803, 734 cm-1; MS (EI, m/z) 210 (M+) 212 (M++2); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 220 nm, τmaj= 13.7 min, τmin = 17.2 min); [α] D 25 = -9.6 (c = 0.4 , CHCl3) , 41% ee.
【0080】
【化12】



【0081】
2,2,2−トリフルオロ−1−(3−クロロフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.7 (brs, 1H), 5.00 (q, J= 6.6 Hz, 1H), 7.31-7.38 (m, 3H), 7.48 (s, 1H)
19F NMR (CDCl3) δ -78.2 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.1 (q, J = 31.9 Hz), 123.7 (q, J=281.3), 125.4, 127.4, 129.5, 129.7, 134.4, 135.4; MS (EI, m/z) 210 (M+) 212 (M++2); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 210 nm, τmaj = 12.1 min, τmin = 14.8 min); [α] D25 = -15.0 (c = 0.6 , CHCl3) , 55% ee.

【0082】
【化13】



【0083】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール
.1H NMR (CDCl3) δ 2.57 (brs, 1H), 5.01 (m, 1H), 7.34 (d, J =8.2 Hz, 2H), 7.54 (d, J=8.6 Hz, 2H), 19F NMR (CDCl3) δ -78.6 (d, J = 7.0 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.2 (q, J = 32.3 Hz),123.6, 123.7 (q, J = 280.9 Hz), 128.9, 131.6, 132.6; IR (KBr) 3379, 1493, 1457, 1404, 1358, 1247, 1174, 1126, 1077, 1011, 950, 866, 855, 798, 728, 673 cm-1; MS (EI, m/z) 254 (M++1), 256 (M+-1); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 8.2 min, τmin = 9.8 min); [α] D25 = -5.8 (c = 0.9 , CHCl3) , 42% ee.

【0084】
【化14】



【0085】
2,2,2−トリフルオロ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール
IR (neat) 3421, 1706, 1576, 1475, 1430, 1377, 1268, 1175, 1130, 1068, 892, 838, 785, 718, 677 cm-1; MS (EI, m/z) 254 (M++1), 256 (M+-1); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 210 nm, τmaj = 7.7 min, τmin = 9.4 min); [α]D 25 = -11.3 (c = 1.1 , CHCl3) , 58% ee.

【0086】
【化15】



【0087】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メチルフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.37 (s, 3H), 2.56 (d, J=2.4 Hz, 1H), 4.97 (m, 1H), 7.20 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J=8.0 Hz, 2H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.3 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.6 (q, J = 31.9 Hz), 124.1 (q, J = 280.9 Hz), 127.1, 129.1, 130.8, 139.3; MS (EI, m/z) 190 (M+);The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 210 nm, τmaj = 10.5 min, τmin = 13.3 min); 60% ee.

【0088】
【化16】



【0089】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メチルフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.38 (s, 3H), 2.55(brs, 1H), 4.96 (q, J=6.6 Hz, 1H), 7.19 (m, 4H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.3 (d, J = 6.8 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.9 (q, J = 31.9 Hz), 124.1 (q, J = 280.9 Hz), 124.3, 127.8, 128.3, 130.1, 133.7, 138.2; IR (neat) 3420, 3024, 2925, 1706, 1612, 1491, 1358, 1267, 1162, 1128, 1071, 915, 845, 788, 760, 712 cm-1; MS (EI, m/z) 190 (M+);The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 210 nm, τmaj = 30.1 min, τmin = 36.5 min); [α] D25 = -16.7 (c = 0.7 , CHCl3) , 63% ee.
【0090】
【化17】



【0091】
1−(5−ベンゾ[d][1,3]ジオキソリル)−2,2,2−トリフルオロエタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.48 (brs, 1H), 4.93 (q, J=6.6 Hz, 1H), 5.99 (s, 2H), 6.81 (d, J=7.8 Hz, 1H), 6.92 (brd, J=8.0 Hz, 1H), 6.97 (brs, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.6 (d, J = 6.0 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 72.6 (q, J = 31.9 Hz), 101.3, 107.5, 108.1, 121.4, 124.0 (q, J = 280.9 Hz), 127.5, 147.7, 148.3; IR (KBr) 3467, 2906, 1701, 1612, 1506, 1492, 1448, 1362, 1251, 1172, 1123, 1040, 930, 848, 810, 730, 705, 654 cm-1; MS (EI, m/z) 220 (M+);The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 16.5 min, τmin = 18.4 min); [α] D25 = -16.7 (c = 0.8 , CHCl3) , 63% ee.

【0092】
【化18】

【0093】
1−(アントラセニル)−2,2,2−トリフルオロエタノール

IR (KBr) 3560, 3055, 1625, 1523, 1448, 1343, 1263, 1162, 1123, 1093, 1024, 898, 876, 858, 787, 735, 695 cm-1; MS (EI, m/z) 276 (M+); The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OJ-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 17.5 min, τmin = 21.1 min); [α] D25 = -14.3 (c = 0.6 , CHCl3) , 50% ee.

【0094】
【化19】



【0095】
2,2,2−トリフルオロ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)エタノール
1H NMR (CDCl3) δ 2.67 (brs, 1H), 3.88 (s, 6H), 4.92-4.98 (m, 1H), 6.86 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.97-6.99 (m, 2H); 19F NMR (CDCl3) δ -78.2 (d, J = 6.6 Hz, 3F); 13C NMR (CDCl3) δ 55.92, 55.94, 72.5 (q, J = 31.9), 110.1, 110.7, 120.1, 124.1 (q, J = 280.9), 126.4, 148.7, 149.6; IR (KBr) 3456, 3005, 2844, 1610, 1596, 1518, 1470, 1444, 1425, 1375, 1335, 1288, 1260, 1234, 1158, 1115, 1067, 1021, 877, 858, 810, 748, 712 cm-1; MS (EI, m/z) 236 (M+);The ee of the product was determined by HPLC using Daicel Chiralcel OD-H column (n-hexane/i-PrOH = 90/10, flow rate 1.0 mL/min, λ = 230 nm, τmaj = 12.7 min, τmin = 21.6 min); [α]D 25 = -13.8 (c = 0.6 , CHCl3) , 50% ee.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中、塩基および光学活性な相間移動触媒存在下、一般式(1)
CHO (1)
(式中、Rは水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基またはアリール基である。)
で示されるアルデヒド化合物を、一般式(2)
SiR (2)
(式中、Rはペルフルオロアルキル基であり、R、RまたはRはそれぞれ互いに独立し、同一または異なってもよいアルキル基またはアリール基を示す。)
で示されるペルフルオロアルキルシラン類と反応させることを特徴とする一般式(3)
CH(OSiR)R (3)
(式中、R、R、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法。

【請求項2】
溶媒中、塩基および光学活性な相関移動触媒存在下、一般式(1)
CHO (1)
(式中、Rは前記定義に同じ。)
で示されるカルボニル化合物を、一般式(2)
SiR (2)
(式中、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示されるペルフルオロアルキルシラン類と反応させ、一般式(3)
CH(OSiR)R (3)
(式中、R、R、R、R、Rは前記定義に同じ。)
で示されるペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体を含有する反応液を直接脱シリル化、または精製分離した後に脱シリル化することを特徴とする一般式(4)
CH(OH)R (4)
(式中、R、Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性なペルフルオロアルキル第2級アルコール誘導体の製造方法。

【請求項3】
前記一般式(2)で示されるペルフルオロアルキルシラン類がトリフルオロメチルトリメチルシランである請求項1または2に記載の製造法。

【請求項4】
前記塩基は,一般に市販されているアミン類、無機塩一般式(5)もしくは4級アンモニウム塩一般式(6)から選ばれる少なくとも1種類の塩基であることを特徴とする請求項1および2に記載の製造法。
アミンとしては,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなどを用いることができる。無機塩は一般式(5)
(X)nM (5)
(式中,Mは,希土類を含む遷移金属,リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウムから選ばれた元素,nは,Mの原子価と同数の整数を表す。Xはフロリド、アルコシド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)アンモニウム塩一般式(6)
NX (6)
(式中、R、R、RまたはRはそれぞれ互いに独立し、同一または異なってもよいアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を示す。Xはフロリド、クロリド、ブロミド、イオダイドもしくはアルコシド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)

【請求項5】
前記一般式(5)がNaOHもしくは一般式(6)がテトラメチルアンモニウムフロリドである請求項1または2に記載の製造法。

【請求項6】
前記光学活性な相間移動触媒は,光学活性4級アンモニウム塩類から選ばれる少なくとも1種類の塩であることを特徴とする請求項1および2のいずれか1項に記載の製造方法。
光学活性な相間移動触媒としては,一般式(7),(8)
【化1】



(式中,Rは水素,置換もしくは未置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。もしくはOR13で表せるR13はアルキル基を示す。R10は,エチル基もしくはビニル基を示す。R11は,水素,アルキル基,アリール基またはアシル基を示す。R12は,水素,ハロゲン原子,トリフルオロメチル基または置換もしくは未置換のアルキル基,アリール基またはトリフルオロメチル基を示す。mは0〜2の整数を表す。Xは,ハロゲン原子,IO,ClO,OTfまたはHSOを示す。)

【請求項7】
前記一般式(7)および(8)で示されるN上のベンジル基のアリール3および5位に置換したR12がトリフルオロメチル基もしくは、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である請求項1または2記載の製造法。

【請求項8】
前記溶媒が,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,クロロホルム,ジクロロメタン,ジクロロエタン,トルエン,テトラヒドロフラン,ヘキサン,ベンゼン、ジエチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1,2のいずれか1項に記載の製造法。

【公開番号】特開2009−215196(P2009−215196A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59020(P2008−59020)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】