説明

光学異性体の光学分割方法、及び光学分割装置

【課題】 分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、さらに工業的スケールに好適に応用可能な光学異性体混合物の光学分割方法、及び光学分割装置を提供する。
【解決手段】 光学分割を行う対象である光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含み、かつ前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な不斉源含有溶媒相の中を移動させることを特徴とする光学異性体の光学分割方法である。該光学異性体の光学分割方法に用いられる光学分割装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性体を選択的に分離する光学異性体の光学分割方法、及び該光学分割方法に用いられる光学分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの化合物、特に有機化合物には光学異性体が存在し、該光学異性体の間で生理活性が顕著に異なる場合があるため、医薬、食品、農薬、及び香料などの分野では、所望の活性を有する一方の光学異性体を得ることが重要である。特に、医薬品においては、二つの光学異性体の一方にのみ薬理活性があり、他方には毒性がみられる例があるため、副作用や薬害防止のために、純粋な光学活性体を得ることが極めて重要である。
【0003】
また、光学異性体の混合物は、該混合物中の光学異性体同士の組み合わせにより円偏光が異なるため、その光透過率も異なるという性質を有する。このため、高速応答性液晶や高誘電性材料等のエレクトロニクスやフォトニクス分野においても、所望の光学材料を得るために、光学活性体の分離技術が求められている。
【0004】
従来より、光学異性体混合物から、光学活性体を選択的に分離する光学分割方法としては、例えば、優先晶出法、酵素法、及び液体クロマトグラフィー法などが知られている。
前記優先晶出法は、光学異性体混合物の過飽和溶液に、純粋な光学活性体の結晶を種結晶として加え、これと同種の光学活性体のみを選択的に析出させる方法である。しかしながら、光学活性化合物が、光学活性体混合物過飽和溶液に溶解しないことが必要であるため、汎用性が低いという問題がある。
前記酵素法は、酵素の高い選択性を利用して、光学異性体混合物中の一方の光学異性体のみと相互作用させることにより、所望の光学活性体を製造する方法である。しかしながら、所望の相互作用に好適な酵素を選択することは困難であるとともに、汎用性が低く、また分割効率に限界があるという問題がある。
【0005】
前記液体クロマトグラフィー法は、光学異性体と相互作用させる不斉源(キラル化合物)を固定相に用い、光学異性体混合物中の各光学異性体と不斉源との不斉分子間における相互作用性の差を利用して、一方の光学活性体を分離する方法である(非特許文献1及び2参照)。特に、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いた方法は、キラルHPLC法と総称され、操作性に優れ、有用であることが知られている。しかしながら、固定相は一般的に、前記キラル化合物をシリカゲル等の吸着剤に結合させてなる固体の担体から構成されるため、吸着性の強いシリカゲルに光学異性体が吸着されて回収率が低下することがあり、また、固定相自体が劣化しやすいという問題がある。
前記キラルHPLCにより新規化合物の光学分割を行う場合、複数種の不斉源から好適なものを選択する必要があるが、上市されている固定相(例えば、シリカゲルカラム等)は一般に高価であるため、低コストの固定相が求められている。
【0006】
ところで、工業スケールの光学分割を行うためには、汎用性が高く、大量に使用可能で、再利用可能な不斉源を選択することが重要である。一般に、光学分割に用いられる不斉源は、基質となる光学異性体に対する相互作用性と、基質特異性とは相反することが知られている。すなわち、様々な化合物に対して相互作用性を有する不斉源は、相互作用する各化合物に対して相互作用が弱くなるという問題があり、また、特定の光学活性体にのみ高い選択性を有する不斉源は、他の光学異性体の分離には適用できないという問題がある。
【0007】
したがって、分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、さらに工業的スケールに好適に応用可能な光学異性体の光学分割方法、及び光学分割装置は、未だ満足なものは提供されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
【0008】
【非特許文献1】Ward,T.J.Chiralseparations using the macrocyclic antibiotics.J Chromatography A. 2001,2,73‐89.
【非特許文献2】Armstrong,D.W.,Zhang,B.Chiral stationary phases for HPLC.Anal Chem.2001,19,557‐561.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、さらに工業的スケールに好適に応用可能な光学異性体の光学分割方法、及び光学分割装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 光学分割を行う対象である光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含み、かつ前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な不斉源含有溶媒相の中を移動させることを特徴とする光学異性体の光学分割方法である。該<1>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記光学異性体混合物を含む前記試料含有溶媒相を、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含み、かつ前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な不斉源含有溶媒相の中を移動させるため、前記光学活性体混合物に含まれる一の光学異性体と、他の光学異性体とが、前記不斉源との相互作用の強弱差により効率よく光学分割される。さらに、液相で光学分割が行われるため、吸着等による前記光学異性体の損失(ロス)が防止される。
<2> 不斉源含有溶媒相に、光学分割を行う対象である光学異性体混合物を導入し、次いで前記試料含有溶媒相の溶媒を供給し、前記光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を形成し、該試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させる前記<1>に記載の光学異性体の光学分割方法である。該<2>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源含有溶媒相に、前記光学異性体混合物を導入し、次いで前記試料含有溶媒相の溶媒を供給し、前記光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を形成し、該試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させるため、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体と他の光学異性体とが、前記不斉源との相互作用の強弱により生じた前記試料含有溶媒相の溶媒に対する分配係数の違いにより、効率よく光学分割される。
<3> 試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中を移動させる前記<1>から<2>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<3>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記試料含有溶媒相を液滴の状態で前記不斉源含有溶媒相の中を移動させるため、前記光学異性体と前記不斉源との相互作用場である前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相との境界面の面積が大きくなり、効率よく光学異性体の光学分割が行われる。
<4> 試料含有溶媒相の不斉源含有溶媒相の中での移動が、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<4>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記試料含有溶媒相の前記不斉源含有溶媒相の中での移動が、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで行われるため、前記試料含有溶媒が重力により移動される。
<5> 試料含有溶媒相の不斉源含有溶媒相の中での移動が、遠心力が加えられた状態で行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<5>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記試料含有溶媒相の前記不斉源含有溶媒相の中での移動が、遠心力が加えられた状態で行われるため、例えば、前記試料含有溶媒相のエマルジョン化を防止し、液滴を形成することができ、その結果、効率よく光学異性体の光学分割が行われる。
<6> 不斉源含有溶媒相を移動不能に固定し、該不斉源含有溶媒相の中を試料含有溶媒相を移動させる前記<1>から<5>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<6>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源含有溶媒相を移動不能に固定し、該不斉源含有溶媒相の中を、前記試料含有溶媒相を移動させるため、安定した光学分割が行われる。
<7> 不斉源含有溶媒相が、分配セル中に充填させた前記<6>に記載の光学異性体の光学分割方法である。
<8> 試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中を複数回繰り返し移動させる前記<1>から<7>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<8>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記試料含有溶媒相を前記不斉源含有溶媒相の中を複数回繰り返し移動させるため、前記光学異性体混合物から、一の光学異性体が高純度に分割される。
<9> 不斉源含有溶媒相が充填された分配セルを複数用い、各分配セル中に充填された不斉源含有溶媒相の内の少なくとも2つが、異なる不斉源を含む前記<7>から<8>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<9>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源含有溶媒相が充填された分配セルを複数用い、各分配セル中に充填された前記不斉源含有溶媒相の内の少なくとも2つが、異なる不斉源を含むため、前記光学異性体が、異なる前記不斉源との多様な相互作用性に基づいて分割され、前記光学異性体混合物から、一の光学異性体が極めて高純度に分割される。
【0011】
<10> 不斉源が、試料含有溶媒相に対し不溶性乃至難溶性である前記<1>から<9>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<10>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源が、試料含有溶媒相に対し不溶性乃至難溶性であるため、前記不斉源含有溶媒相中の前記不斉源が前記試料含有溶媒相に溶出せず、濃度が維持される。この結果、例えば、前記不斉源含有溶媒相が長期間使用可能となり、再利用可能となる。
<11> 不斉源が、四級アンモニウム基を有する化合物である前記<1>から<10>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<11>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源が、四級アンモニウム基を有する化合物であるため、光学異性体に対する不斉認識が、前記四級アンモニウム基と前記光学異性体の酸性官能基との間の静電相互作用により行われる。この結果、汎用性の高い光学分割が実現される。
<12> 不斉源が、四級アンモニウム基、及び芳香環を有する化合物である前記<1>から<11>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。該<12>に記載の光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源が、四級アンモニウム基及び芳香環を有する化合物であるため、光学異性体に対する不斉認識が、前記四級アンモニウム基と前記光学異性体の酸性官能基との間の静電相互作用、並びに前記芳香環とのπ−π相互作用及びCH−π相互作用により行われる。この結果、分子の自由度が高い中心不斉化合物に対する不斉認識の精度が向上し、汎用性の高い光学分割が実現される。
<13> 不斉源が、N−ベンジル−シンコニジニウムクロライドである前記<1>から<12>のいずれかに記載の光学異性体混合物の光学分割方法である。
【0012】
<14> 不斉源含有溶媒相の溶媒が、酸含有水溶液であり、試料含有溶媒相の溶媒が、前記酸含有水溶液と2層系溶媒を形成可能な溶媒である前記<1>から<13>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法である。
【0013】
<15> 光学分割を行う対象である光学異性体混合物に含まれる、一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含む不斉源含有溶媒相を収容する収容手段と、
前記光学異性体混合物を含み、かつ前記不斉源含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な試料含有溶媒相を前記収容手段内に供給する供給手段とを少なくとも有することを特徴とする光学異性体の光学分割装置である。該<15>に記載の光学分割装置においては、前記収容手段が、光学分割を行う対象である光学異性体混合物に含まれる、一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含む不斉源含有溶媒相を収容し、前記供給手段が、前記光学異性体混合物を含み、かつ前記不斉源含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な試料含有溶媒相を前記収容手段内に供給する。この結果、前記光学活性体混合物に含まれる一の光学異性体と、他の光学異性体とが、前記不斉源との相互作用の強弱差により効率よく光学分割される。さらに、液相で光学分割が行われるため、吸着等による前記光学異性体の損失(ロス)が防止される。
<16> 供給手段が、試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中に供給し移動させる前記<15>に記載の光学異性体の光学分割装置である。該<16>に記載の光学分割装置においては、前記供給手段が、試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中に供給し移動させる。この結果、前記光学異性体と前記不斉源との相互作用の場である前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相との境界面の面積が大きくなり、効率よく光学異性体の光学分割が行われる。
<17> 供給手段が、試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中に、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで供給し移動させる前記<15>から<16>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割装置である。該<17>に記載の光学分割装置においては、前記供給手段が、前記試料含有溶媒相を前記不斉源含有溶媒相の中に、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで供給し移動させる。この結果、前記試料含有溶媒が重力により移動される。
<18> 供給手段が、試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中に、遠心力が加えられた状態で供給し移動させる前記<15>から<16>のいずれかに記載の光学異性体の光学分割装置である。該<18>に記載の光学分割装置においては、前記供給手段が、前記試料含有溶媒相を前記不斉源含有溶媒相の中に、遠心力が加えられた状態で供給し移動させる。この結果、例えば、前記試料含有溶媒相のエマルジョン化を防止し、液滴を形成することができ、その結果、効率よく光学異性体の光学分割が行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、さらに工業的スケールに好適に応用可能な光学異性体の光学分割方法、及び光学分割装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(光学異性体の光学分割方法、及び光学分割装置)
本発明の光学異性体の光学分割方法は、光学分割を行う対象である光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含み、かつ前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な不斉源含有溶媒相の中を移動させることを含み、必要に応じて適宜その他の工程を含む。
【0016】
本発明の光学異性体の光学分割装置は、光学分割を行う対象である光学異性体混合物に含まれる、一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含む不斉源含有溶媒相を収容する収容手段と、前記光学異性体混合物を含み、かつ前記不斉源含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な試料含有溶媒相を前記収容手段内に供給する供給手段とを少なくとも有する。
【0017】
本発明の光学異性体の光学分割方法は、本発明の光学分割方法を用いて好適に実施することができる。本発明の光学異性体の光学分割装置の説明は、本発明の光学異性体の光学分割方法の説明を通じて明らかにすることとする。
なお、本発明において、「光学分割」とは、前記光学異性体混合物よりも、少なくとも一の光学異性体の過剰率が高い化合物、すなわち光学純度が高い化合物を分離することを表す。また、前記光学異性体混合物を光学分割して得た、前記光学異性体混合物よりも光学純度の高い化合物を「光学活性体」と表すことがある。
【0018】
<光学異性体の光学分割方法>
本発明の光学異性体の光学分割方法は、前記不斉源含有溶媒中の前記不斉源と、前記試料含有溶媒相中に含まれる前記光学異性体との相互作用の強弱により、前記光学異性体に前記試料含有溶媒相中における分配係数に差が生じ、その結果、前記試料含有溶媒相中の移動速度に差が生じることにより各光学異性体が分割される。例えば、前記不斉源と強く相互作用する一の光学異性体は、他の光学異性体と比べ、前記試料含有溶媒相中の分配係数が小さくなり、前記試料含有溶媒相中における移動速度が遅くなる。
【0019】
前記不斉源と前記光学異性体との前記相互作用としては、例えば、分子間の静電相互作用、π−π相互作用、及びCH−π相互作用などが挙げられる。
【0020】
−試料含有溶媒相の移動方法−
前記試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させる方法としては、前記試料含有溶媒相を供給することにより行われ、例えば、前記不斉源含有溶媒相に、前記光学異性体混合物を添加し、次いで前記試料含有溶媒相の溶媒を供給し、前記光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を形成して、形成された該試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させる方法が好適に挙げられる。
前記光学異性体混合物を前記不斉源含有溶媒相に添加する際に、前記不斉源含有溶媒相を、予め前記試料含有溶媒相の溶媒を添加することにより平衡化しておくことが好ましい。
【0021】
前記試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させる状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記試料含有溶媒相を、液滴の状態で移動させることが好ましい。
前記光学異性体と前記不斉源との相互作用場は、前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相との境界面であるため、前記試料含有溶媒相を、液滴の状態とすることにより、前記試料含有溶媒相中の前記光学異性体と、前記不斉源含有溶媒相中の前記不斉源との相互作用場の面積が大きくなり、分配平衡が速やかに成立し、効率よく光学分割が行われる。
【0022】
前記試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を液滴の状態で移動させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中に供給し移動させる前記供給手段を備えた前記光学分割装置を使用する方法が挙げられ、具体的には、前記試料含有溶媒相の供給量を制御可能なポンプ等を備えた前記光学分割装置を使用する方法が挙げられる。
前記ポンプとしては、例えば、高圧デュアルプランジャーポンプ等が好適に挙げられる。
【0023】
前記試料含有溶媒相の前記不斉源含有溶媒相の中での移動態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで行われる態様、及び遠心力が加えられた状態で行われる態様などが好適に挙げられる。
なお、前記試料含有溶媒相が、前記不斉源含有溶媒相中でエマルジョン化するのを防止し、前記液滴を形成しやすくする観点から、前記遠心力が加えられた状態で行われる態様がより好ましい。
これらの移動態様において、前記不斉源含有溶媒相は、移動不能に固定し、固定された前記不斉源含有溶媒相の中を、前記試料含有溶媒相を移動させる態様が好ましい。
【0024】
また、前記光学異性体の光学分割方法としては、得られる前記光学活性体の純度を高める目的で、前記試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を複数回繰り返し移動させてもよい。
【0025】
前記試料含有溶媒相の前記不斉源含有溶媒相の中での移動が、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで行われる態様としては、前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相との比重差に基づき、重力により前記試料含有溶媒相が前記不斉源含有溶媒相の中で移動可能な方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記供給手段として、前記試料含有溶媒相を前記不斉源含有溶媒相の中に、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで供給し移動させる前記光学分割装置を用いる方法が挙げられ、具体的には、向流分配クロマトグラフィー、液滴向流分配クロマトグラフィー等が挙げられる。
【0026】
前記試料含有溶媒相の前記不斉源含有溶媒相の中での移動が、遠心力が加えられた状態で行われる態様としては、前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相との比重差に基づき、遠心力により前記試料含有溶媒相が前記不斉源含有溶媒相の中で移動可能な方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記供給手段として、前記試料含有溶媒相を前記不斉源含有溶媒相の中に、遠心力が加えられた状態で供給し移動させる前記光学分割装置を使用する方法が挙げられ、具体的には、遠心液液分配クロマトグラフィー、高速向流分配クロマトグラフィー等が挙げられる。
これらの中でも、前記遠心液液分配クロマトグラフィーが好ましい。
【0027】
−−遠心液液分配クロマトグラフィー−−
前記遠心液液分配クロマトグラフィーとしては、例えば、前記不斉源含有溶媒相を、前記分配セル中に充填し、前記分配セルを回転させながら該分配セル中に前記試料含有溶媒相を送液し、遠心力により前記不斉源含有溶媒相を固定するとともに前記不斉源含有溶媒相中を移動させ、前記光学異性体混合物に含まれる光学異性体のうち、前記不斉源と強く相互作用する一の光学異性体と、他の光学異性体とを分離する方法が挙げられる。
【0028】
前記遠心液液分配クロマトグラフィーに用いられる前記光学分割装置としては、少なくとも回転可能な分配セルを備え、比重の異なる二種類の液体を遠心力を利用して分離可能な装置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遠心ローター内に複数の分配セルが形成された収容手段と、該分配セルに前記試料含有溶媒相を供給する供給手段とを少なくとも有するものが挙げられ、例えば、図1に示される遠心液液分配クロマトグラフ装置が好適に挙げられる。
【0029】
以下、前記遠心液液分配クロマトグラフ装置の一例を、図1を参照しながら説明する。前記遠心液液分配クロマトグラフ装置は、内部に前記試料含有溶媒相が流通可能な導入流路31及び排出流路32が設けられた回転軸20、及び前記回転軸20と継手40により取付けられ、前記回転軸20と一体的に回転するローター(分配セル集合体)10とを備えている。前記導入流路31は、一端が前記供給手段(図示せず)に連通し、他端が複数の前記ローター(分配セル集合体)10のうち、一の前記ローター(分配セル集合体)の内部に連通している。また、前記排出流路32は、一端が前記回転軸20外部に設けられた前記試料含有溶媒相を分取する任意の手段(図示せず)に連通し、他端が複数の前記ローター(分配セル集合体)10のうち、一のローターの内部に連通している。
光学異性体の光学分割方法においては、前記不斉源含有溶媒相が、前記ローター(分配セル)10内に充填され、前記回転軸20の回転に伴い、前記ローター(分配セル集合体)内に固定される。前記導入流路31から前記ローター(分配セル集合体)10に供給された前記試料含有溶媒相は、一の前記ローター(分配セル集合体)10内で、遠心力を加えられた状態で前記不斉源含有溶媒相中を移動した後、他の前記ローター(分配セル集合体)10内へ接続流路33を通って流入し、さらに前記不斉源含有溶媒相中を移動し、前記排出流路32を通って排出される。
【0030】
前記ローター(分配セル集合体)10内部の断面図の一例を、図2に示す。前記ローター(分配セル集合体)10は、複数の分配セル(図2では4個)が、シールプレート12及び仕切板13により画成され、一端に前記試料含有溶媒相が導入される開口部、他端に前記不斉源含有溶媒相中を移動した前記試料含有溶媒相が排出される開口部を有する。
【0031】
前記分配セルの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を複数回繰り返し移動させることが可能となる観点から、複数であることが好ましく、例えば、前記光学分割装置内の合計数として400以上が好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上が特に好ましい。
【0032】
また、前記遠心液液分配クロマトグラフィーにおいては、前記不斉源含有溶媒相が充填された分配セルを複数用い、各分配セル中に充填された前記不斉源含有溶媒相の内の少なくとも2つが、異なる不斉源を含む構成としてもよい。異なる不斉源を含むことにより、前記光学異性体が異なる前記不斉源との多様な相互作用性に基づいて分割され、前記光学異性体混合物から、一の光学異性体が極めて高純度に分割されるため、好ましい。
【0033】
−不斉源含有溶媒相−
前記不斉源含有溶媒相としては、前記不斉源を含有する液相であり、前記試料含有溶媒相に対して相溶性を示さないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
−−不斉源−−
前記不斉源としては、少なくとも、光学異性体のうち一の光学異性体を識別し、相互作用可能な化合物であれば、特に制限はなく、光学分割を行う対象である前記光学異性体混合物等に応じて適宜選択することができるが、前記試料含有溶媒相に対し不溶性乃至難溶性である化合物が好ましい。
【0035】
また、前記不斉源としては、不斉を有する化合物であることが好ましく、四級アンモニウム基を有する化合物がより好ましい。前記四級アンモニウム基を有する化合物による前記光学異性体との相互作用は、光学活性を有する前記四級アンモニウム基と、前記光学異性体の酸性官能基との間の静電相互作用により行われる。
前記四級アンモニウム基を含む化合物の中でも、四級アンモニウム基及び芳香環を有する化合物が特に好ましい。前記四級アンモニウム基及び前記芳香族環を有する化合物による前記光学異性体との相互作用は、光学活性を有する前記四級アンモニウム基と酸性官能基との間の静電相互作用、並びに前記芳香環とのπ−π相互作用及びCH−π相互作用により行われる。このような化合物を不斉源として用いることにより、分離対象である前記光学異性体が、軸中心不斉化合物、及び中心不斉化合物のいずれであっても、効率よく分割することができる。
【0036】
前記四級アンモニウム基及び芳香環を有する化合物としては、例えば、下記構造式(1)で表されるN−ベンジルシンコニジウムクロライド(N−BnCCl)等のシンコニジン誘導体、シンコニン誘導体、キニン誘導体、及びキニリン誘導体などが好適に挙げられる。
【0037】
【化1】

【0038】
−−溶媒−−
前記不斉源含有溶媒相の溶媒としては、前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶であり、かつ前記不斉源が溶解乃至分散可能な(親和性を有する)溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光学異性体混合物と前記不斉源との相互作用を阻害しない溶媒等が好ましい。
【0039】
前記不斉源含有溶媒相の溶媒としては、前記不斉源としてN−ベンジルシンコニジウムクロライド(N−BnCCl)等のシンコニジン誘導体を用いる場合、例えば、硫酸水溶液等が好適に挙げられる。
【0040】
−試料含有溶媒相−
前記試料含有溶媒相としては、分離対象である前記光学異性体混合物、及び前記光学異性体混合物を光学分割して得た前記光学活性体を含有する液相であり、前記不斉源含有溶媒相に対して不溶乃至難溶であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
−−試料−−
前記試料含有溶媒相中の試料としては、分離対象である前記光学異性体混合物、及び前記光学活性体の少なくともいずれかである。前記試料含有溶媒相中の試料は、前記不斉源含有溶媒相中を移動した距離に応じて、前記光学活性体の比率が高くなる。
【0042】
前記光学異性体混合物としては、不斉を有する化合物(中心不斉化合物、及び軸不斉化合物)の光学異性体混合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬、農薬、食品、及び香料等の分野で使用される各種化合物等が挙げられる。
前記光学異性体混合物の光学純度としては、100%ee.未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記光学活性体としては、前記光学異性体混合物が光学分割された光学活性体であり、少なくとも前記光学異性体混合物の光学純度よりも高い化合物である。
【0044】
−溶媒−
前記試料含有溶媒相の溶媒としては、前記試料としての光学異性体混合物、及び前記光学活性体を溶解しうる溶媒で、前記不斉源含有溶媒相に対し不溶乃至難溶であれば、特に制限はなく、前記光学異性体混合物の種類等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記不斉源に対して親和性乃至溶解性を示さない溶媒等が好ましい。
【0045】
前記試料含有溶媒相の溶媒としては、前記不斉源としてN−ベンジルシンコニジウムクロライド(N−BnCCl)等のシンコニジン誘導体、前記不斉源含有溶媒相の溶媒として硫酸水溶液を用いる場合、例えば、ヘキサン、並びにヘキサン及びメチル−t−ブチルエーテルなどからなる溶媒が好適に挙げられる。
【0046】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、例えば、前記不斉源含有溶媒相を移動した前記試料含有溶媒相を回収する回収工程、回収された前記試料含有溶媒相中の前記光学活性体を精製する精製工程等が挙げられる。これらの工程を行うことにより、光学純度の高い前記光学活性体を調製することができる。
【0047】
−回収工程−
前記回収工程における回収方法としては、前記不斉源含有溶媒相を移動した前記試料含有溶媒相を、例えば、一定時間毎、又は一定容量毎に分取して回収する方法が挙げられる。
前記試料含有溶媒相を分取する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フラクションコレクター等を使用する方法が挙げられる。
分取された前記試料含有溶媒相は、分取された分画毎に、例えば、UVスペクトル、CDスペクトル等で分析し、前記光学活性体の光学純度等を測定することが好ましい。
【0048】
前記光学純度の測定方法としては、前記試料含有溶媒相中の分画中に含まれる一方の光学異性体(例えば、R体)の質量と、他方の光学異性体(例えば、S体)の質量とをそれぞれ分析チャート等から測定し、全体の質量に対する各光学異性体の質量差の割合を求める方法が挙げられる。例えば、R体の光学純度は、下記式(1)により求められ、S体の光学純度は、下記式(2)により求められる。なお、前記光学異性体が鏡像異性体の場合の単位は、「%ee.」である。
【0049】
【数1】

【0050】
【数2】

【0051】
−精製工程−
前記精製工程における精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記試料含有溶媒相中に含まれる前記光学活性体を、蒸留、液抽出、減圧濃縮、再沈殿、結晶化等により精製する方法が挙げられる。前記精製方法としては、1種単独で行ってもよく、2種以上の方法を組合せて行ってもよい。
【0052】
本発明の光学分割装置を用いた、本発明の光学異性体の光学分割方法は、分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、前記不斉源含有溶媒相が液相であるためスケールアップが容易であり、前記不斉源が溶出することがないため、工業的スケールの光学分割方法として好適に応用可能であり、特に、医薬、食品、農薬、及び香料などの分野における光学分割方法として好適である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(試験例1)
<不斉源含有溶媒相の構築>
前記不斉源として、水−有機溶媒二相系で選択的に水相に分配され、かつ安価で扱いやすいシクロデキストリン(Cyclodextrin)を用い、前記不斉源含有溶媒相の繰返し利用を可能にするための検討を行った。
【0055】
前記光学分割装置としては、遠心液液分配クロマトグラフ(NMF型遠心液々分離クロマトグラフ装置、三鬼エンジニアリング(株)製)を使用した。前記試料含有溶媒相の供給手段として、送液ポンプ(LBP‐V型ポンプ、(株)センシュー科学製)、及び注入装置(FCU−V型インジェクター、三鬼エンジニアリング(株)製)を使用し、前記試料含有溶媒相の回収手段として、検出器(UVIS200型検出器(((株)センシュー科学製))を備えたフラクションコレクター(SF2120、アドバンテック社製)を使用した。
【0056】
α‐Cyclodextrin、β‐Cyclodextrin、及びγ‐Cyclodextrinを不斉源とし、それぞれを水に溶解させて、前記不斉源含有溶媒相を調製し、前記遠心液液分配クロマトグラフの分配セル内に充填した。前記分配セルを回転させて前記不斉源含有溶媒相を固定し、回転による遠心力が加えられた状態で、前記供給手段により、前記試料含有溶媒相の溶媒のみを送液し、前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。
前記試料含有溶媒相の溶媒としては、水と二層系溶媒を構成するヘキサン、エチルアセテート、及びクロロホルムをそれぞれ使用した。
この結果、各Cyclodextrinの前記不斉源含有溶媒相の溶媒に対する溶解性が低下し、Cyclodextrinが析出して前記分配セル内圧が上昇し、前記不斉源含有溶媒相の流出が起こり、前記不斉源含有溶媒相の構築ができなかった。
【0057】
次いで、前記不斉源としてCyclodextrin誘導体を用い、上記と同様にして前記不斉源含有溶媒相の構築を試みた。
前記Cyclodextrin誘導体としては、β‐Cyclodextrinにおける2、3、6位の水酸基が部分的にメチル基に修飾された、Partially−2,3,6−tri−O-methyl−β−cyclodextrin(PMβ−CD)、及びPartially−2,3,6−tri-O−hydroxylpropyl-β-cyclodextrin(HPβ−CD)を使用した。前記不斉源10.0gを、溶媒として水、及びアセトニトリル(MeCN)それぞれ30mLに溶解し、前記不斉源含有溶媒相を調製した。これを上記と同様にして分配セル中に固定し、前記試料含有溶媒相の溶媒として、ヘキサンを流速5mL/分で、合計1500mLを供給し、前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。その後、前記不斉源含有溶媒相を、前記分配セルに充填したのと反対の方向から送液することにより、前記分配セル内の前記不斉源含有溶媒相30mLを分取(反転溶出)し、これを乾固して前記不斉源を回収したところ、PMβ−CD、及びHPβ−CDともに9.9g以上が回収された。この結果、前記不斉源含有溶媒相及び前記不斉源は、分配セル内に固定されて保持され、前記不斉源の溶出もなく、繰り返し利用が可能であることがわかった。
【0058】
(試験例2)
<鏡像異性体(中心不斉化合物)の光学分割>
前記試験例1と同様にして遠心液液分配クロマトグラフを用いて、中心不斉化合物の光学分割を試みた。
下記構造式(2)〜(8)で表される低分子芳香族鏡像異性体の各ラセミ体2.0mgを試料とし、これらをそれぞれヘキサン2mLに溶解して前記試料含有溶媒相を調製した。前記不斉源としてPMβ−CD20gをアセトニトリル(MeCN)約20mLに溶解させて調製した前記不斉源含有溶媒相を、常温、1000rpm、35〜38kg/cmの条件下で分配セルに固定し、前記試料含有溶媒相を流速3mL/分で送液し、上昇法により前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。その後、前記試料含有溶媒相を10mL毎の分画として合計500mL分取した。各分画について、CHIRALCELOJカラム(ダイセル化学工業(株)製)を用いてUV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
【0059】
【化2】

【0060】
この結果、前記構造式(8)のラセミ体のみがわずかに光学分割され、前記構造式(2)〜(7)のラセミ体は、光学分割されなかった。前記構造式(8)の各光学活性体の光学純度は、S体が4%ee.(0.2mg)、R体が3%ee.(0.3mg)であった。
【0061】
(試験例3)
<鏡像異性体(軸不斉化合物)の光学分割>
前記試験例1と同様にして遠心液液分配クロマトグラフを用いて、軸不斉化合物の光学分割を試みた。
下記構造式(9)〜(11)で表される軸不斉化合物のラセミ体2.0mgを試料とし、これらをそれぞれヘキサン(約2mL)に溶解して前記試料含有溶媒相を調製した。
前記不斉源としてHBβ−CD30gを水(約30mL)に溶解させて調製した前記不斉源含有溶媒相を、常温、800rpm、30〜37kg/cmの条件下で分配セルに固定し、前記試料含有溶媒相を流速3mL/分で送液し、上昇法により前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。その後、前記試料含有溶媒相を10mL毎の分画として合計300mL分取した。各分画について、Chiral Ru−2カラム((株)資生堂製)を用いてUV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
【0062】
【化3】

【0063】
この結果、前記構造式(9)の光学純度の最大値は58%ee.、合計値は16%ee.であり、前記構造式(10)の光学純度の最大値は53%ee.、合計値は14%ee.であり、前記構造式(11)の光学純度の最大値は55%ee.、合計値は15%ee.であった。
【0064】
(試験例4)
<分配セルの回転数の検討>
試験例3の前記構造式(9)の光学分割において、分配セルの回転数を700rpm、500rpm、及び300rpmとした以外は、試験例4と同様にして光学分割を行った。
【0065】
この結果、回転数700rpmの光学純度の最大値は45%ee.、合計値は13%ee.であり、回転数500rpmの光学純度の最大値は27%ee.、合計値は8%ee.であり、回転数300rpmの光学純度の最大値は12%ee.、合計値は3%ee.であった。
このことから、前記遠心液液分配クロマトグラフィーによる光学分割における分割能は、前記分配セルの回転数に依存することがわかった。しかしながら、前記分配セルの回転数を800rpmを超える回転数であると、前記分配セルの内圧が耐性の上限を超えるため、分離能の向上は観られないと考えられた。
【0066】
(試験例5)
<不斉源量の検討(1)>
試験例4の前記構造式(9)の光学分割において、前記不斉源であるHPβ−CDの量を2g、5g、及び15gとした以外は、試験例4と同様にして光学分割を行った。得られた光学活性体の光学純度の結果を試験例4の結果とあわせて、図3(合計値)及び図4(最大値)に示す。
図3及び図4から、不斉源量と分離能との間に相関関係が存在することがわかった。
【0067】
(試験例6)
<不斉源量の検討(2)>
試験例5の結果から、不斉源量を増加させることにより、さらに分離能が向上すると考えられたため、試験例4の前記構造式(9)の光学分割において、前記不斉源であるHPβ−CDの量を30gを超える量とした以外は、試験例4と同様にして光学分割を行った。
しかし、HPβ−CDを30gを超える量用いて調製した前記不斉源含有溶媒相は、粘性が強くなり、前記分配セル内圧が上昇し、前記光学分割装置が正常に動作しなくなる現象が起きた。
【0068】
試験例1〜7の結果から、前記不斉源として、シクロデキストリン、及びシクロデキストリン誘導体を用いた光学分割方法は、中心不斉化合物の光学分離が困難であることから汎用性に欠け、またスケールアップした場合の分離能の向上が期待できないことがわかった。そこで、他の不斉源を用い、本発明の光学異性体の光学分割方法を行った。
【0069】
(実施例1)
前記不斉源として、下記構造式(1)に示すN−ベンジルシンコニジウムクロライド(以下、「N−BnCCl」と表す)を用い、前記不斉源含有溶媒相の繰返し利用の可能性を検討した。
まず、N−BnCClの下記表1に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0070】
【化4】

【0071】
【表1】

【0072】
表1から、N−BnCClは、硫酸水溶液には溶解性を示すことがわかった。そこで、前記不斉源含有溶媒相の溶媒を硫酸水溶液とし、前記試料含有溶媒相の溶媒をヘキサンとする系において、以下の方法により評価を行った。
【0073】
前記光学分割装置として、前記分配セルの合計容量が62.5mLの遠心液液分配クロマトグラフ(NMF型遠心液々分離クロマトグラフ装置、三鬼エンジニアリング(株)製)を使用した。前記試料含有溶媒相の供給手段として、送液ポンプ(LBP‐V型ポンプ、(株)センシュー科学製)、及び注入装置(FCU−V型インジェクター、三鬼エンジニアリング(株)製)を使用し、前記試料含有溶媒相の回収手段として、検出器(UVIS200型検出器(((株)センシュー科学製))を備えたフラクションコレクター(SF2120、アドバンテック社製)を使用した。
【0074】
0.5N硫酸水溶液30mL中に、前記不斉源としてN−BnCClを6g溶解させ、前記不斉源含有溶媒相を調製し、常温、1000rpm、35〜38kg/cmの条件下で分配セルに固定し、前記試料含有溶媒相の溶媒のみを流速5mL/分で合計1500mL送液し、上昇法により前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。回収した前記試料含有溶媒相の溶媒を、220nmの波長の紫外光で分析したところ、N−BnCClは検出されなかった。
この結果から、N−BnCClは前記分配セル内に溶出せずに保持されており、N−BnCClを硫酸水溶液に溶解してなる前記不斉源含有溶媒相は、繰り返し利用可能であることが確認された。
【0075】
(実施例2)
<鏡像異性体(軸不斉化合物)の光学分割>
前記実施例1と同様にして遠心液液分配クロマトグラフを用いて、軸不斉化合物の光学分割を試みた。
下記構造式(9)〜(11)で表される軸不斉化合物のラセミ体2.0mgを試料とし、これらをそれぞれヘキサン(約2mL)に溶解して前記試料含有溶媒相を調製した。
前記不斉源として6.0gのN−BnCClを0.5N硫酸水溶液(約30mL)に溶解させて調製した前記不斉源含有溶媒相を、常温、800rpm、29kg/cmの条件下で分配セルに固定し、前記試料含有溶媒相を流速3mL/分で送液し、上昇法により前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。その後、前記試料含有溶媒相を10mL毎の分画として合計300mL分取した。各分画について、Chiral Ru−2カラム((株)資生堂製)を用いてUV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
【0076】
【化5】

【0077】
この結果、前記構造式(9)の光学純度の最大値は33%ee.、合計値は13%ee.であり、前記構造式(10)の光学純度の最大値は31%ee.、合計値は12%ee.であり、前記構造式(11)の光学純度の最大値は32%ee.、合計値は13%ee.であった。
【0078】
(実施例3)
<分配セルの回転数の検討>
実施例2の前記構造式(9)の光学分割において、分配セルの回転数を700rpm、500rpm、及び300rpmとした以外は、実施例2と同様にして光学分割を行った。
【0079】
この結果、回転数700rpmの光学純度の最大値は27%ee.、合計値は12%ee.であり、回転数500rpmの光学純度の最大値は19%ee.、合計値は9%ee.であり、回転数300rpmの光学純度の最大値は10%ee.、合計値は4%ee.であった。これらの結果を、上記試験例5の結果とあわせて、図5に示す。
【0080】
図5から、前記分配セルの回転数の減少に比例して、光学分割における分離能が低下していることがわかった。しかし、試験例5のシクロデキストリン誘導体を不斉源とした場合と比較すると、N−BnCClを不斉源とした場合は、前記分配セルの回転数の影響が微少であることがわかった。このことから、N−BnCClは、回転数の分離能に与える影響が少ないため、スケールアップにより適した不斉源であることがわかった。
【0081】
(実施例4)
<鏡像異性体(中心不斉化合物)の光学分割(1)>
前記実施例1と同様にして遠心液液分配クロマトグラフを用いて、中心不斉化合物として、α-アミノ酸のうちアラニン(Ala)の光学分割を試みた。
アラニンは、ヘキサンのような非極性溶媒には溶解性を示さないことから、下記構造式(12)で表されるN−Cbz体、下記構造式(13)で表されるN−Pht体、及び下記構造式(14)で表されるN−Fmoc体の各アラニン誘導体3mgを試料とし、これらを前記試料含有溶媒相の溶媒として、ヘキサンとメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)との混合溶媒(約2〜3mL)に溶解し、前記試料含有溶媒相を調製した。なお、前記溶媒の混合比率は、下記構造式(12)には(ヘキサン)/(MTBE)=5:12とし、下記構造式(13)及び(14)には(ヘキサン)/(MTBE)=5:1とした。
【0082】
【化6】

【0083】
前記不斉源として、N−BnCCl6gを0.5N硫酸水溶液(約30mL)に溶解して調製した前記不斉源含有溶媒相を、容量62.5mLの分配セルに充填し、常温、800rpm、29kg/cm2の条件下で前記分配セル内に固定し、前記試料含有溶媒相を流速3mLで送液して前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。なお、前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相中の溶媒の比率は、下記構造式(12)の光学分割においては、(ヘキサン)/(MTBE)/(硫酸水溶液)=5:12:17、下記構造式(13)及び(14)の光学分割においては、(ヘキサン)/(MTBE)/(硫酸水溶液)=5:1:5であった。
その後、前記試料含有溶媒相を10mL毎に分画し、合計300mL分取した。各分画について、Chiral Ru−2カラム((株)資生堂製)を用いてUV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
【0084】
この結果、前記構造式(12)の光学純度の合計値は4%ee.であり、前記構造式(13)の光学純度の合計値は14%ee.であり、前記構造式(14)の光学純度の合計値は2%ee.未満であった。
【0085】
(実施例5)
<鏡像異性体(中心不斉化合物)の光学分割(2)>
前記実施例1と同様にして遠心液液分配クロマトグラフを用いて、中心不斉化合物として、α-アミノ酸のうちアラニン(Ala)の光学分割を試みた。
試料として、下記の方法により合成したフタロイル化したフェニルアラニン(Pht−Phe、下記構造式(15))、フタロイル化したトリプトファン(Pht−Trp、下記構造式(16))、フタロイル化したチロシン(Pht−Trp、下記構造式(17))、フタロイル化したバリン(Pht−Val、下記構造式(18))、及びフタロイル化したt−ロイシン(Pht−tert−Leu、下記構造式(19))を用いた。
【0086】
<<Pht−Pheの合成>>
水1mL中に、Nefkens試薬22.5mg(0.1mmoL)、DL−フェニルアラニン16.8mg(0.1mmol)、KCO13.8mg(0.1mmol)を加え、15分攪拌して相互作用液を調製した。その後、前記相互作用液に0.1N塩酸1.1mLを加え、クロロホルム1mLを用いて計5回液液抽出した。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水=5/6/4の溶媒を用い、遠心液液分配クロマトグラフ装置を用い、62.5mLの容量の分配セル中に、常温、600rpm、20kg/cmの条件下で、下降法で精製し、下記構造式(15)の化合物26.8mg(収率87.9%)を得た。分析データを以下に示す。
HR‐MS(ESI-TOF、[M-H]-)calculated for C17H12NO4、294.0845;found,294.0832
また、前記の相互作用を以下に示す。
【0087】
【化7】

【0088】
<<Pht−Trpの合成>>
水1mL中に、Nefkens試薬22.5mg(0.1mmoL)、DL−トリプトファン20.2mg(0.1mmol)、KCO13.8mg(0.1mmol)を加え、15分攪拌して相互作用液を調製した。その後、前記相互作用液に0.1N塩酸1.1mLを加え、クロロホルム1mLを用いて計5回液液抽出した。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水=5/6/4の溶媒を用い、遠心液液分配クロマトグラフ装置を用い、62.5mLの容量の分配セル中に、常温、600rpm、20kg/cmの条件下で、下降法で精製し、下記構造式(16)の化合物17.8mg(収率53.0%)を得た。分析データを以下に示す。
HR‐MS(ESI-TOF、[M-H]-)calculated for C19H13NO、333.0890;found,333.0876
【0089】
<<Pht−Tyrの合成>>
水1mL中に、Nefkens試薬22.5mg(0.1mmoL)、DL−チロシン18.0mg(0.1mmol)、KCO13.8mg(0.1mmol)を加え、15分攪拌して相互作用液を調製した。その後、前記相互作用液に0.1N塩酸1.1mLを加え、クロロホルム1mLを用いて計5回液液抽出した。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水=5/6/4の溶媒を用い、遠心液液分配クロマトグラフ装置を用い、62.5mLの容量の分配セル中に、常温、600rpm、20kg/cmの条件下で、下降法で精製し、下記構造式(17)の化合物26.2mg(収率84.1%)を得た。分析データを以下に示す。
HR‐MS(ESI-TOF、[M-H]-)calculated for C17H12NO、333.0710;found,333.0716
【0090】
<<Pht−Valの合成>>
水1mL中に、Nefkens試薬22.5mg(0.1mmoL)、DL−バリン11.6mg(0.1mmol)、KCO13.8mg(0.1mmol)を加え、15分攪拌して相互作用液を調製した。その後、前記相互作用液に0.1N塩酸1.1mLを加え、クロロホルム1mLを用いて計5回液液抽出した。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水=5/6/4の溶媒を用い、遠心液液分配クロマトグラフ装置を用い、62.5mLの容量の分配セル中に、常温、600rpm、20kg/cmの条件下で、下降法で精製し、下記構造式(18)の化合物23.5mg(収率95.1%)を得た。分析データを以下に示す。
HR‐MS(ESI-TOF、[M-H]-)calculated for C14H14NO、263.0923;found,263.0932
【0091】
<<Pht−tert−Leuの合成>>
水1mL中に、Nefkens試薬22.5mg(0.1mmoL)、DL−tert−ロイシン13.2mg(0.1mmol)、KCO13.8mg(0.1mmol)を加え、15分攪拌して相互作用液を調製した。その後、前記相互作用液に0.1N塩酸1.1mLを加え、クロロホルム1mLを用いて計5回液液抽出した。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水=5/6/4の溶媒を用い、遠心液液分配クロマトグラフ装置を用い、62.5mLの容量の分配セル中に、常温、600rpm、20kg/cmの条件下で、下降法で精製し、下記構造式(19)の化合物24.9mg(収率92.7%)を得た。分析データを以下に示す。
HR‐MS(ESI-TOF、[M-H]-)calculated for C14H14NO、262.1001;found,262.0992
【0092】
【化8】

【0093】
前記合成により得られた各N−Pht化アミノ酸3.0mgを試料とし、これらをそれぞれヘキサンとメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)との混合溶媒約3mLに溶解し、前記試料含有溶媒相を調製した。なお、前記溶媒の混合比率は、(ヘキサン)/(MTBE)=5:1とした。
前記不斉源としてN−BnCCl6gを0.5N硫酸水溶液(約30mL)に溶解して調製した前記不斉源含有溶媒相を、容量62.5mLの分配セルに充填し、常温、800rpm、29kg/cm2の条件下で前記分配セル内に固定し、前記試料含有溶媒相を流速3mLで送液して前記不斉源含有溶媒相中を移動させた。なお、前記試料含有溶媒相と前記不斉源含有溶媒相中の溶媒の比率は、(ヘキサン)/(MTBE)/(硫酸水溶液)=5:1:5であった。
その後、前記試料含有溶媒相を10mL毎に分画し、合計500mL分取した。各分画について、トリメチルシリルジアゾメタンを添加して光学活性体をメチルエステル体とし、Chiral Ru−2カラム((株)資生堂製)を用いてUV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
【0094】
この結果、前記構造式(15)の光学純度の合計値は16%ee.、前記構造式(16)の光学純度の合計値は17%ee.、前記構造式(17)の光学純度の合計値は11%ee.、前記構造式(18)の光学純度の合計値は12%ee.、前記構造式(19)の光学純度の合計値は12%ee.であった。
【0095】
(実施例6)
実施例4及び5の中心不斉化合物の光学分割方法において、定量的に10%ee.以上の分離結果が得られたことから、前記不斉源の量を検討し、スケールアップの検討を行った。
実施例4の前記構造式(13)の光学分割において、前記分配セルの容量を62.5mLから250mLに増大し、前記不斉源であるN−BnCCl量を6gから24gに増量し、常温、500rpm、38kg/cmの条件下とした以外は、実施例4と同様にして光学分割を行った。
前記試料含有溶媒相を20mL毎の分画として合計計1000mL分取した。
各分画については、トリメチルシリルジアゾメタンを添加して光学活性体をメチルエステル体とし、Chiral Ru−2カラム((株)資生堂製)を用いて、UV検出器により各光学活性体量を測定し、前記式1及び式2を用いて光学純度を求めた。
この結果、
その結果、光学純度の合計値は34%ee.に向上し、スケールアップすることにより、中心不斉化合物を完全に光学分離できる可能性が明らかになった。
【0096】
本発明の光学分割装置を用いた、本発明の光学異性体の光学分割方法は、分割効率及び回収率に優れ、汎用性が高く、前記不斉源含有溶媒相が液相であるためスケールアップが容易であり、前記不斉源が溶出することがないため、工業的スケールの光学分割方法として好適に応用可能であり、特に、医薬、食品、農薬、及び香料などの分野における光学分割方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、本発明の光学分割装置(遠心液液分配クロマトグラフ装置)の概略図の一例を示す断面図である。直線の矢印は、前記試料含有溶媒相の移動する方向の一例を表し、曲線の矢印は、回転軸の回転方向の一例を表す。
【図2】図2は、遠心液液分配クロマトグラフのローター(分配セル集合体)の一例を示す断面図である。矢印は、前記試料含有溶媒相の導入方向及び排出方向の例を表す。
【図3】図3は、試験例5の結果である不斉源量と光学純度の合計値との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、試験例5の結果である不斉源量と光学純度の最大値との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3及び試験例5の結果である分配セルの回転数と光学純度との関係を示すグラフである。実施例3の結果を実線で、試験例4の結果を破線で示す。
【符号の説明】
【0098】
10 ローター(分配セル集合体)
11 分配セル
12 シールプレート
13 仕切板
20 回転軸
31 導入流路
32 排出流路
33 接続流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学分割を行う対象である光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を、前記光学異性体混合物に含まれる一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含み、かつ前記試料含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な不斉源含有溶媒相の中を移動させることを特徴とする光学異性体の光学分割方法。
【請求項2】
不斉源含有溶媒相に、光学分割を行う対象である光学異性体混合物を導入し、次いで前記試料含有溶媒相の溶媒を供給し、前記光学異性体混合物を含む試料含有溶媒相を形成し、該試料含有溶媒相を、前記不斉源含有溶媒相の中を移動させる請求項1に記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項3】
試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中を移動させる請求項1から2のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項4】
試料含有溶媒相の不斉源含有溶媒相の中での移動が、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで行われる請求項1から3のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項5】
試料含有溶媒相の不斉源含有溶媒相の中での移動が、遠心力が加えられた状態で行われる請求項1から3のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項6】
不斉源含有溶媒相を移動不能に固定し、該不斉源含有溶媒相の中を試料含有溶媒相を移動させる請求項1から5のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項7】
不斉源含有溶媒相が、分配セル中に充填させた請求項6に記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項8】
試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中を複数回繰り返し移動させる請求項1から7のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項9】
不斉源含有溶媒相が充填された分配セルを複数用い、各分配セル中に充填された不斉源含有溶媒相の内の少なくとも2つが、異なる不斉源を含む請求項7から8のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項10】
不斉源が、試料含有溶媒相に対し不溶性乃至難溶性である請求項1から9のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項11】
不斉源が、四級アンモニウム基を有する化合物である請求項1から10のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項12】
不斉源が、四級アンモニウム基、及び芳香環を有する化合物である請求項1から11のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項13】
不斉源含有溶媒相の溶媒が、酸含有水溶液であり、試料含有溶媒相の溶媒が、前記酸含有水溶液と2層系溶媒を形成可能な溶媒である請求項1から12のいずれかに記載の光学異性体の光学分割方法。
【請求項14】
光学分割を行う対象である光学異性体混合物に含まれる、一の光学異性体に対して他の光学異性体よりも強く相互作用可能な不斉源を含む不斉源含有溶媒相を収容する収容手段と、
前記光学異性体混合物を含み、かつ前記不斉源含有溶媒相に対し不溶乃至難溶な試料含有溶媒相を前記収容手段内に供給する供給手段とを少なくとも有することを特徴とする光学異性体の光学分割装置。
【請求項15】
供給手段が、試料含有溶媒相を液滴の状態で不斉源含有溶媒相の中に供給し移動させる請求項14に記載の光学異性体の光学分割装置。
【請求項16】
供給手段が、試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中に、略上向き及び略下向きのいずれかの向きで供給し移動させる請求項14から15のいずれかに記載の光学異性体の光学分割装置。
【請求項17】
供給手段が、試料含有溶媒相を不斉源含有溶媒相の中に、遠心力が加えられた状態で供給し移動させる請求項14から15のいずれかに記載の光学異性体の光学分割装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−263567(P2006−263567A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85027(P2005−85027)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000173913)財団法人微生物化学研究会 (29)
【Fターム(参考)】