説明

光学素子の成形方法及び導光板

【課題】ヒケを防ぐことができる光学素子の成形方法及び導光板を提供する。
【解決手段】金型30及び基板10のうち少なくともいずれか一方を弾性体で形成する。金型30と基板10との間にUV硬化型樹脂20Aを充填し、充填されたUV硬化型樹脂20Aが硬化した後、金型30を離すことによって導光板等の光学素子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光学素子の成形方法及び導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
金型と基板との間にUV硬化型樹脂を充填し、充填されたUV硬化型樹脂を硬化させたとき、UV硬化型樹脂がその表面から硬化することに起因してヒケ(成形品の表面にできるへこみ)が発生することがある。特に、金型とUV硬化型樹脂との密着性が低く、金型と基板との隙間が小さい場合、金型と基板との間に充填されたUV硬化型樹脂が金型の凹部へ流入し難いのでヒケが発生しやすい。ヒケが発生すると、成形品、例えば導光板では導光路が許容量以上変形して導光路の途中で光の漏れが多くなる。
【特許文献1】特開2002−96338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば導光板を製造する際、ヒケが発生し難くするために、金型と基板との隙間を大きくすると、導光板のベース層(導光路以外の樹脂薄膜部分)から光が外部へ漏れ、光量損失が発生するという問題がある。
【0004】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はヒケを防ぐことができる光学素子の成形方法及び導光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、金型と基板との間に樹脂を充填する工程と、この充填された樹脂が硬化した後、前記金型を離す工程とを備え、前記金型及び前記基板のうち少なくともいずれか一方が弾性体で形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光学素子の成形方法において、前記樹脂は光硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の光学素子の成形方法によって製造されたことを特徴とする導光板である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、光量損失を防ぐことができるとともに、ヒケを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1(a)はこの発明の第1実施形態に係る成形方法によって製造された導光板の平面図、図1(b)は図1(a)のA矢視図、図1(c)はB矢視図である。
【0011】
導光板(光学素子)1は基板10とUV硬化樹脂層20とからなる。
【0012】
基板10は四角形の板である。基板10の材料としてはシリコンゴム、石英が用いられる。
【0013】
UV硬化樹脂層20は円盤状の樹脂層21と円盤状の樹脂層21の直径方向へ延びる導光路22とを有する。導光路22の長さ、高さ及び幅は、20mm、0.05mm及び0.05mmである。樹脂層21は基板10より薄い。樹脂層21の膜厚は数μm程度である。
【0014】
基板10の裏面から入射した光(矢印aで示す)は基板10、樹脂層21を透過し、導光路22の一方の傾斜面22aで反射されて矢印bに示すように導光路22内を進む。光は導光路22の他方の傾斜面22bで反射され、樹脂層21、基板10を透過して矢印cに示すように基板10の裏面から出射される(図1(b)参照)。
【0015】
次に、導光板1の成形方法を説明する。
【0016】
図2はこの発明の第1実施形態に係る成形方法を説明するための導光板の断面を示す概念図である。
【0017】
この実施形態では、金型30、基板10及びUV硬化型樹脂層20の材料としてそれぞれ以下のものを用いた。
【0018】
金型30の材料は弾性体であるシリコンゴム(弾性率:0.00015〜0.0005Pa)である(金型30の材料としては弾性率が1000Pa以下が望ましい)。
【0019】
UV硬化型樹脂層20としてUV硬化型樹脂(光硬化型樹脂)20A(nd=1.574)を用いるのであれば基板10としてはnd≦1.461が必要になる。そこで、nd=1.457である石英を基板10の材料として用いた。ndは屈折率である。
【0020】
更に、UV硬化型樹脂20Aはウレタンアクリレートとアクリル酸エステルとの変成樹脂であり、その樹脂の硬化収縮率は6%である。なお、従来よりUV硬化型樹脂の材料にはウレタンアクリレートオリゴマー、多官能モノマー、光重合開始剤の混合物が用いられている。
【0021】
以下、成形方法を説明する。
【0022】
まず、基板10の表面に必要とされる膜厚に相当する重量のUV硬化型樹脂20Aを塗布する。
【0023】
次に、導光路22に対応する形状の凹部31を有する金型30を、UV硬化樹脂20Aを塗布した面に押し付ける。このとき、基板10の表面と金型30の底面との間のUV硬化樹脂20Aの一部分(ベース層20Bという)の厚さは光の漏れを防止するためできるだけ薄くするのが好ましい。凹部31の長さ、深さ及び幅は、ほぼ20mm、0.05mm及び0.05mmである。
【0024】
その後、基板10の裏面側から10000mJ/cm2の紫外光を照射してUV硬化樹脂20Aを硬化させる。ここで、金型30は伸縮性を有するので、UV硬化型樹脂20Aの硬化の際の収縮を吸収する(金型30がUV硬化型樹脂20Aの収縮に追随して変形する)ことができる。
【0025】
次に、金型30を基板10から引き離す。金型30にあらかじめ離型性をよくする表面処理をしておくことによって金型30を引き離し易くなる。
【0026】
以上のようにして、基板10の表面に均一な厚さ(数μm)の樹脂層21と導光路22とからなるUV硬化樹脂層20を有する導光板1が完成する(図1参照)。
【0027】
この実施形態によれば、UV硬化型樹脂20Aの硬化の際、金型30がUV硬化型樹脂20Aの凸部の収縮に追随するように変形して金型30とUV硬化樹脂層20とが密着するので、ヒケを防ぐことができ、高アスペクト比の導光路22の成形も容易となり、光量損失を防ぐことができる。また、離型性の向上によって離型時のUV硬化型樹脂層20のちぎれや導光路22の変形が防止される。
【0028】
図3はこの発明の第2実施形態に係る成形方法を説明するための導光板の断面を示す概念図である。なお、第1実施形態と共通する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
この実施形態では、金型130、基板110及びUV硬化樹脂層20の材料としてそれぞれ以下のものを用いた。
【0030】
金型130の材料はアクリル(弾性率:3238Pa)である。なお、アクリルの弾性率はシリコンゴムの弾性率の10兆分の1である。
【0031】
また、基板110の材料は弾性体であるシリコンゴム(弾性率:0.00015〜0.0005Pa)である。なお、基板110としては厚さの非常に薄い石英(nd=1.457)ガラス板でもよい。
【0032】
更に、UV硬化樹脂20Aはウレタンアクリレートとアクリル酸エステルとの変成樹脂である。この樹脂の硬化収縮率は6%である。
【0033】
以下、成形方法を説明する。
【0034】
まず、基板110の表面に必要とされる膜厚に相当する重量のUV硬化型樹脂20Aを塗布する。
【0035】
次に、導光路122に対応する形状の凹部131を有する金型130を、UV硬化樹脂20Aを塗布した面に押し付ける。このとき、ベース層20Bの厚さは光の漏れを防止するためできるだけ薄くするのが好ましい。凹部131の長さ、深さ及び幅は、ほぼ20mm、0.05mm及び0.05mmである。
【0036】
その後、基板110の裏面側から10000mJ/cm2の紫外光を照射してUV硬化型樹脂20Aを硬化させる。基板110は伸縮性を有するので、UV硬化型樹脂20Aの硬化の際の収縮を吸収する(基板110がUV硬化型樹脂20Aの収縮に追随して変形する)ことができる。
【0037】
次に、金型130を基板110から引き離す。金型130にあらかじめ離型性をよくする表面処理をしておくことによって金型130を引き離し易くなる。
【0038】
以上のようにして、基板110の表面に均一な厚さ(数μm)のベース層20BとUV硬化型樹脂20AとからなるUV硬化型樹脂層20を有する導光板が完成する。
【0039】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
なお、図示しないが、金型と基板との両方を弾性体で形成してもよい。
【0041】
また、光硬化型樹脂に代えて熱硬化型樹脂を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(a)はこの発明の第1実施形態に係る成形方法によって製造された導光板の平面図、図1(b)は図1(a)のA矢視図、図1(c)はB矢視図である。
【図2】図2はこの発明の第1実施形態に係る成形方法を説明するための導光板の断面を示す概念図である。
【図3】図3はこの発明の第2実施形態に係る成形方法を説明するための導光板の断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1:導光板、10,110:基板、20A:UV硬化樹脂(光硬化樹脂)、30,130:金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と基板との間に樹脂を充填する工程と、この充填された樹脂が硬化した後、前記金型を離す工程とを備え、
前記金型及び前記基板のうち少なくともいずれか一方が弾性体で形成されていることを特徴とする光学素子の成形方法。
【請求項2】
前記樹脂は光硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光学素子の成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光学素子の成形方法によって製造されたことを特徴とする導光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326331(P2007−326331A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160616(P2006−160616)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】