説明

光学部材のプリント配線板用樹脂組成物及び銅張積層板

【課題】 耐熱性が高く、可視光領域において光反射率が高く、また、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下が少ない光学部材用プリント配線板を形成可能な樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 熱硬化性樹脂と、白色顔料と、硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、上記白色顔料の含有量が、上記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、上記樹脂組成物からなる硬化物を200℃で24時間放置した場合の白色度が75以上である、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)実装用プリント配線板等の光学部材用プリント配線板に用いられる樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた銅張積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LED実装用プリント配線板には、二酸化チタンを含有したエポキシ樹脂をガラス織布に含浸させた後、加熱硬化させた積層板や、二酸化チタンに加えてアルミナを含有するエポキシ樹脂を使用した積層板等を用いることが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−202789号公報
【特許文献2】特開2003−60321号公報
【特許文献3】特開2008−1880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されているような従来のエポキシ樹脂積層板は、積層板段階での反射率は概ね満足できるレベルではあっても、プリント配線板の製造工程やLED実装工程における加熱処理、或いはLED実装後の使用時における加熱や光照射によって、反射率の低下が大きくなることがある。そのため、LED実装後の使用時において発熱による変形が発生し、光半導体装置として使用される場合に信頼性の低下が懸念されており、更なる改善が必要であった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性が高く、可視光領域において光反射率が高く、また、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下が少ない光学部材用プリント配線板(LED実装用プリント配線板等)を形成可能な樹脂組成物及び銅張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、熱硬化性樹脂と、白色顔料と、硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、上記白色顔料の含有量が、上記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、上記樹脂組成物からなる硬化物を200℃で24時間放置した場合の白色度が75以上である、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を提供する。
【0007】
かかる光学部材のプリント配線板用樹脂組成物によれば、上述した組成を有するとともに、上述した白色度の条件を満たすことにより、該樹脂組成物を用いて形成された層をプリント配線板の銅箔の下に配置することで、優れた耐熱性と、可視光領域における優れた光反射率とを有し、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下を十分に抑制することができる光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0008】
ここで、上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、エポキシ樹脂と、白色顔料と、酸無水物系硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、上記白色顔料の含有量が、上記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、上記エポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂と上記酸無水物系硬化剤とからなる硬化物が、厚さ1mmにおいて波長365nmの光に対する透過率が75%以上となるものである、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を提供する。
【0010】
かかる光学部材のプリント配線板用樹脂組成物によれば、上述した組成を有するとともに、上述した透過率の条件を満たすエポキシ樹脂を用いることにより、該樹脂組成物を用いて形成された層をプリント配線板の銅箔の下に配置することで、優れた耐熱性と、可視光領域における優れた光反射率とを有し、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下を十分に抑制することができる光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0011】
上述した本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物において使用するエポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂又はイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂として脂環式エポキシ樹脂又はイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂を用いることにより、加熱や光照射による光反射率の低下をより十分に抑制することができる光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0012】
また、本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物において、上記白色顔料は、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの白色顔料を用いることにより、可視光領域においてより優れた光反射率を有する光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0013】
また、本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物において、上記白色顔料の平均粒径は、0.1〜50μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲内である白色顔料を用いることにより、可視光領域においてより優れた光反射率を有する光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0014】
本発明は更に、上記本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を用いて形成された白色樹脂層と、該白色樹脂層上に積層された銅箔と、を備える銅張積層板を提供する。
【0015】
かかる銅張積層板によれば、上記本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を用いて形成された白色樹脂層が銅箔の下に配置された構造を有することで、優れた耐熱性と、可視光領域における優れた光反射率とを有し、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下を十分に抑制することができる光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性が高く、可視光領域において光反射率が高く、また、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下が少ない光学部材用プリント配線板(LED実装用プリント配線板等)を形成可能な樹脂組成物及び銅張積層板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の銅張積層板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
(光学部材のプリント配線板用樹脂組成物)
本発明の第一実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、白色顔料と、硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、上記白色顔料の含有量が、上記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、上記樹脂組成物からなる硬化物を200℃で24時間放置した場合の白色度が75以上である、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物である。
【0020】
上記白色度は、以下の式(1)で求められるものである。白色度は、分光測色計を用いて測定することができる。
W=100−sqr〔(100−L)+(a+b)〕 (1)
(W:白色度、L:明度、a:色相、b:彩度)
【0021】
また、上記樹脂組成物からなる硬化物の硬化条件は、樹脂組成物を十分に硬化させることができる条件であれば特に限定されないが、130〜180℃で0.5〜10時間の条件とすることが好ましい。
【0022】
本発明の第一実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物において、上記白色度は、75以上であることが必要であるが、80以上であることがより好ましく、90以上であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明の第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、白色顔料と、酸無水物系硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、上記白色顔料の含有量が、上記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、上記エポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂と上記酸無水物系硬化剤とからなる硬化物が、厚さ1mmにおいて波長365nmの光に対する透過率が75%以上となるものである、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物である。
【0024】
上記透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。
【0025】
上記エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とからなる硬化物において、エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤との配合比は、本発明の第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤との配合比と同一である。
【0026】
また、上記エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とからなる硬化物の硬化条件は、エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤との混合物を十分に硬化させることができる条件であれば特に限定されないが、130〜180℃で0.5〜10時間の条件とすることが好ましい。
【0027】
本発明の第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物において、上記透過率は、75%以上であることが必要であるが、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
【0028】
上記本発明の第一及び第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物によれば、該樹脂組成物を用いて形成された層をプリント配線板の銅箔の下に配置することで、優れた耐熱性と、可視光領域における優れた光反射率とを有し、加熱処理や光照射処理による光反射率の低下を十分に抑制することができる光学部材用プリント配線板を形成することができる。
【0029】
以下、上記本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物に使用される各成分について説明する。
【0030】
本発明で使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、これらの変性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましく、脂環式エポキシ樹脂及びイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、エポキシ樹脂は、光照射による光反射率の低下をより十分に抑制する観点から、可能な限り芳香環を有しないものであることが好ましい。更に、熱硬化性樹脂は、比較的着色の少ないものが好ましい。なお、本発明の第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物においては、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることが必要である。
【0031】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート{商品名:セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P(以上、ダイセル化学工業株式会社製)、ERL4221、ERL4221D、ERL4221E(以上、ダウケミカル日本株式会社製)}、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート{商品名:ERL4299(ダウケミカル日本株式会社製)、EXA7015(大日本インキ化学工業株式会社製)}、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、エピコートYX8000、エピコートYX8034、エピコートYL7170(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、セロキサイド2081、セロキサイド3000、エポリードGT301、エポリードGT401、EHPE3150(以上、ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらの中でも、好ましい脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エピコートYX8000、エピコートYX8034、エポリードGT301、エポリードGT401、EHPE3150が挙げられる。
【0032】
イソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート(商品名:TEPIC、日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
上記以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には、例えばエピコート828、YL980(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YSLV120TE(東都化成株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0035】
樹脂組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%未満であると、流動性が低下し不均一な硬化物となりやすい傾向があり、30質量%を超えると、反射率が低下する傾向がある。
【0036】
本発明で使用される硬化剤としては、上記熱硬化性樹脂と反応するものであれば特に制限なく用いることができるが、比較的着色の少ないものが好ましい。硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、フェノール系硬化剤などが挙げられる。なお、本発明の第二実施形態に係る光学部材のプリント配線板用樹脂組成物においては、硬化剤は酸無水物系硬化剤であることが必要である。
【0037】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、メチルノルボルネンジカルボン酸無水物、ノルボルナンジカルボン酸無水物、メチルノルボルナンジカンルボン酸無水物等が挙げられる。
【0038】
イソシアヌル酸誘導体としては、例えば、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、上述した硬化剤の中でも、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。
【0040】
硬化剤は、その分子量が100〜400のものが好ましく、また、無色ないし淡黄色のものが好ましい。
【0041】
硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
樹脂組成物における硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、100〜150質量部であることがより好ましい。この含有量が50質量部未満であると、充分に硬化が進まない傾向があり、200質量部を超えると、硬化物がもろく着色しやすくなる傾向がある。
【0043】
本発明で使用される硬化触媒(硬化促進剤)としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどのリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0044】
樹脂組成物における硬化触媒(硬化促進剤)の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が、0.01質量部未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、また、8質量部を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0045】
本発明で使用される白色顔料としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、無機中空粒子等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、白色顔料としては、熱伝導性、光反射特性、成型性、難燃性の点から、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選択される1種又は2種以上の混合物が好ましい。また、無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス等が挙げられる。
【0046】
白色顔料の粒径は、平均粒径が0.1〜50μmの範囲にあることが好ましく、0.1〜10μmの範囲にあることがより好ましい。この平均粒径が0.1μm未満であると、粒子が凝集しやすく分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると、反射特性が十分に得られにくくなる傾向がある。白色顔料の平均粒径は、レーザ光式粒度分布計、例えばBeckman Coulter LS 13 320により測定されるものである。
【0047】
また、難燃効果の観点からは、白色顔料としては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムが好ましい。また、これらの難燃剤は、白色であり、反射率に与える影響が無い点で好ましい。また、耐湿信頼性の観点からは、イオン性不純物の少ない水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムが好ましく、例えば、Na化合物の含有量が0.2質量%以下のものが好ましい。
【0048】
水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの平均粒径は、特に制限はないが、難燃性及び流動性の観点から、0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。
【0049】
樹脂組成物における水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムの含有量は、白色顔料全量を基準として10〜30質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。この含有量が10質量%未満では、難燃効果が十分に得られにくくなる傾向があり、30質量%を超えると、流動性や硬化性に悪影響を与える傾向がある。
【0050】
樹脂組成物における白色顔料の含有量(充填量)は、樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であることが必要であり、15〜70体積%であることがより好ましく、20〜50体積%であることが特に好ましい。この含有量が10体積%未満であると、光反射特性が低下する傾向があり、85体積%を超えると、成型性が悪くなり基板の作製が困難となる傾向がある。
【0051】
また、本発明の樹脂組成物には、白色顔料の分散性を向上させる目的で、カップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等が挙げられるが、着色の観点から、エポキシシラン系のカップリング剤が好ましい。エポキシシラン系のカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
樹脂組成物におけるカップリング剤の含有量は、白色顔料100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
【0053】
また、本発明の樹脂組成物には、その他の添加剤として、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、イオン捕捉剤、可撓化材等を添加してもよい。可撓化剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン・カプロラクトンブロック共重合体などが適している。
【0054】
更に、本発明の樹脂組成物には、溶剤を添加してもよい。溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルエチルケトン等が挙げられる。但し、上記組成を有する本発明の樹脂組成物は、無溶剤でも液状であり、溶剤を添加することなく成膜することが可能である。無溶剤の場合には、成膜時にBステージ化する工程を省略することができるため、工程の簡略化が可能であるとともに、Bステージ化に伴う光反射率の低下等の問題を解消することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、25℃において粘度が5〜2000Pa・sであることが好ましく、10〜100Pa・sであることがより好ましい。樹脂組成物の粘度は、E型粘度計により測定されるものである。粘度が5Pa・s未満であると、樹脂厚みにムラが出来やすい傾向があり、2000Pa・sを超えると、流動性が低下し板厚精度が低下する傾向がある。
【0056】
(銅張積層板)
本発明の銅張積層板は、上述した本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を用いて形成された白色樹脂層と、該白色樹脂層上に積層された銅箔と、を備えるものである。
【0057】
図1は、本発明の銅張積層板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、銅張積層板100は、基材1と、該基材1上に積層された白色樹脂層2と、該白色樹脂層2上に積層された銅箔3と、を備えている。ここで、白色樹脂層2は、上述した本発明の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を用いて形成されている。
【0058】
基材1としては、銅張積層板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板、光半導体搭載用基板などが挙げられる。
【0059】
銅張積層板100は、例えば、本発明の樹脂組成物を基材1表面に塗布し、銅箔3を重ね、加熱加圧硬化して上記樹脂組成物からなる白色樹脂層2を形成することにより作製することができる。
【0060】
加熱加圧の条件としては、特に限定されないが、例えば、130〜180℃、0.5〜4MPa、30〜600分間の条件で加熱加圧を行うことが好ましい。
【0061】
上記本発明の銅張積層板を使用し、LED実装用等の光学部材用のプリント配線板が作製される。
【0062】
(光半導体装置)
図2は、本発明の銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。図2に示すように、光半導体装置200は、光半導体素子10と、該光半導体素子10が封止されるように設けられた透明な封止樹脂4とを備える表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置200において、半導体素子10は、接着層8を介して銅箔3に接着されており、ワイヤー9により銅箔3と電気的に接続されている。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、図1に示した銅張積層板100は、基材1の片面に白色樹脂層2及び銅箔3を積層したものであるが、本発明の銅張積層板は、基材1の両面に白色樹脂層2及び銅箔3をそれぞれ積層したものであってもよい。
【0064】
また、図1に示した銅張積層板100は、基材1上に白色樹脂層2及び銅箔3を積層したものであるが、本発明の銅張積層板は、基材1を用いることなく、白色樹脂層2及び銅箔3のみで構成されていてもよい。この場合、白色樹脂層2が基材としての役割をはたすこととなる。この場合、例えば、ガラスクロス等に本発明の樹脂組成物を含浸させ、硬化させたものを白色樹脂層2とする。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)としてトリグリシジルイソシアヌレート(商品名:TEPIC−S、日産化学工業株式会社製)100質量部と、硬化剤(酸無水物系硬化剤)としてメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(商品名:HN−5500F、日立化成工業株式会社製)150質量部と、白色顔料として酸化チタン(商品名:FTR−700、堺化学工業株式会社製、平均粒径:0.2μm)470質量部と、硬化触媒(硬化促進剤)としてテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(商品名:PX−4ET、日本化学工業株式会社製)1.5質量部とを混合し、混練温度20〜30℃、混練時間10分の条件でロール混練して樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で10Pa・sであった。
【0067】
[実施例2]
熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として脂環式エポキシ樹脂であるセロキサイド2021P(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)100質量部と、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(商品名:HN−5500F、日立化成工業株式会社製)120質量部と、酸化チタン(商品名:FTR−700、堺化学工業株式会社製)410質量部と、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(商品名:PX−4ET、日本化学工業株式会社製)1.5質量部とを混合し、混練温度20〜30℃、混練時間10分の条件でロール混練して樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で8Pa・sであった。
【0068】
[実施例3]
トリグリシジルイソシアヌレート(商品名:TEPIC−S、日産化学工業株式会社製)50質量部と、セロキサイド2021P(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)50質量部と、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(商品名:HN−5500F、日立化成工業株式会社製)135質量部と、酸化チタン(商品名:FTR−700、堺化学工業株式会社製)440質量部と、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(商品名:PX−4ET、日本化学工業株式会社製)1.5質量部とを混合し、混練温度20〜30℃、混練時間10分の条件でロール混練して樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で12Pa・sであった。
【0069】
[実施例4]
エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート)をビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YL980、ジャパンエポキシレジン株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で8Pa・sであった。
【0070】
[実施例5]
エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート)をビスフェノールS型エポキシ樹脂(商品名:YSLV120TE、東都化成株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で10Pa・sであった。
【0071】
[比較例1]
エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート)をビフェニル型エポキシ樹脂(商品名:YX4000、ジャパンエポキシレジン株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の粘度は、25℃で12Pa・sであった。
【0072】
(光透過率の測定)
実施例1〜5及び比較例1でそれぞれ作製した樹脂組成物と同一の配合比にてエポキシ樹脂及び硬化剤のみを混合した。この混合物をキャスト法により離型処理PET型上に塗布し、150℃で120分間加熱硬化させ、離型処理PETを剥離して、エポキシ樹脂及び硬化剤からなる厚さ1mmの硬化膜を作製した。この硬化膜の波長365nmの光に対する透過率を、分光光度計(商品名:V−570型分光光度計、日本分光株式会社製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】



【0074】
(白色度の測定)
実施例1〜5及び比較例1でそれぞれ作製した樹脂組成物を、キャスト法によりAl箔付き型上に塗布し、150℃で120分間加熱硬化させ、Al箔を剥離して、樹脂組成物からなる厚さ1mmの硬化膜を作製した。この硬化膜について、初期及び200℃で24時間放置後のL(明度)、a・b(色相・彩度)、白色度及び波長460nmの光の反射率を、分光測色計(商品名:CM−508d、ミノルタ社製)を用いて測定した。その結果を表2(初期)及び表3(200℃で24時間放置後)に示す。
【0075】
【表2】



【0076】
【表3】



【0077】
(銅張積層板の作製)
実施例1〜5及び比較例1の樹脂組成物を、それぞれエポキシ樹脂積層板(商品名:E−679FG、日立化成工業株式会社製)の両側に、硬化後の厚さが100μmとなるように印刷法により塗布し、更に銅箔を重ね、170℃、60分間、1MPaの条件で加熱加圧硬化した。これにより、エポキシ樹脂積層板の両面に白色樹脂層及び銅箔が積層されてなる銅張積層板を得た。
【0078】
(着色の有無及び光反射率の評価)
上記で作製した銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去し、白色樹脂層の着色の有無を目視により確認した。着色が無い(白色である)場合は「A」、着色が有る場合は「B」とした。また、白色樹脂層の波長460nmの光の反射率を、分光測色計(商品名:CM−508d、ミノルタ社製)を用いて測定した。それらの結果を表4に示す。
【0079】
(熱・光処理後の着色の有無及び光反射率の評価)
上記で作製した銅張積層板に対し、200℃の温度で、波長240〜380nmの光を0.22W/cmの放射照度で2時間照射した。この熱・光処理後、銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去し、白色樹脂層の着色の有無を目視により確認した。着色が無い(白色である)場合は「A」、着色が有る場合は「B」とした。また、白色樹脂層の波長460nmの光の反射率を、分光測色計(商品名:CM−508d、ミノルタ社製)を用いて測定した。それらの結果を表4に示す。
【0080】
【表4】



【0081】
表4に示すように、実施例1〜5の樹脂組成物は、加熱処理や光照射処理による着色がなく、光反射率の低下が十分に抑制されていることが確認された。よって、本発明の樹脂組成物を基板表面に形成した光学部材用のプリント配線板によれば、熱や光劣化が十分に抑制された長寿命の光学部材を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…基材、2…白色樹脂層、3…銅箔、4…封止樹脂、8…接着層、9…ワイヤー、10…光半導体素子、100…銅張積層板、200…光半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、白色顔料と、硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、
前記白色顔料の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、
前記樹脂組成物からなる硬化物を200℃で24時間放置した場合の白色度が75以上である、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂と、白色顔料と、酸無水物系硬化剤と、硬化触媒と、を含有する光学部材のプリント配線板用樹脂組成物であって、
前記白色顔料の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全体積を基準として10〜85体積%であり、
前記エポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂と前記酸無水物系硬化剤とからなる硬化物が、厚さ1mmにおいて波長365nmの光に対する透過率が75%以上となるものである、光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、脂環式エポキシ樹脂又はイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂である、請求項2又は3に記載の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項5】
前記白色顔料が、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項6】
前記白色顔料の平均粒径が0.1〜50μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学部材のプリント配線板用樹脂組成物を用いて形成された白色樹脂層と、該白色樹脂層上に積層された銅箔と、を備える銅張積層板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100800(P2010−100800A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12993(P2009−12993)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】