説明

光情報再生方法及び光情報記録再生装置

【課題】ホログラムメモリシステムにおいて、光学ヘッドの小型化やコストダウンを実現する。
【解決手段】記録媒体116におけるホログラムが記録されている情報記録層に記録再生用の緑色レーザ光を照射するとともに、サーボ制御用の赤色レーザ光を記録媒体116の反射膜に照射する光学系と、緑カラーフィルタを積層した第一の画素群と赤カラーフィルタを積層した第2の画素群とを有する受光素子119と、記録媒体116からのホログラム再生光とサーボ情報戻り光とを受光素子119に入射させる光学系とを設け、受光素子119においてホログラム再生光とサーボ情報戻り光とを分離して検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報光と参照光とをホログラム記録媒体に照射して干渉縞を形成し、その干渉縞により情報を記録媒体に記録し、また、記録媒体から情報を再生する光情報再生方法及び光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録は、一般的に、画像情報を有する情報光とそのような画像情報を有しない参照光とを記録媒体の内部で重ね合わせ、その時にできる干渉縞を記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された画像情報は、その記録媒体に参照光を照射し、干渉縞によって参照光を回折させること再生される。記録すべき情報に応じて画像情報を変調すれば、任意の情報を高密度に記録媒体に記録することができる。
【0003】
ホログラフィックメモリについては、例えば非特許文献1において解説がなされている。図14は、ホログラフィックメモリによる従来の記録再生装置であって、コリニア方式と呼ばれる同軸タイプのホログラフィックメモリシステム(光情報記録再生装置)の光学系を説明している。
【0004】
この光情報記録再生装置は、例えばディスク状であるホログラム記録媒体216に対して情報の記録及び再生を行うものである。具体的には、情報によって変調された信号光と情報によっては変調されていない参照光とを同時に記録媒体216に照射して干渉させることによって、記録媒体216内に体積ホログラムを形成し、情報を記録する。また、弱い参照光を記録媒体216に照射することによって、体積ホログラムの再生像を取得し、情報を再生する。なお、体積ホログラムとは、記録媒体の体積ホログラムとは、記録媒体の厚み方向も積極的に利用し、3次元的に干渉縞を書き込む方式であり、厚みを増やすことで、回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量を増大する方式である。デジタル体積ホログラムとは、体積ホログラムと同様の記録方式を用いつつも、記録する画像情報は2値化したデジタルパターンに限定したホログラム記録方式である。
【0005】
図示された光学系は、情報の記録及び再生に用いるレーザ光を発生する第1の光源201と、信号光を変調するための空間光変調素子(spacial light modulator;以下、SLMと略記する)204と、再生光を検出するための2次元の受光素子219を備えている。
【0006】
[記録]
まず、上記光学系を用いて、ディスク状の記録媒体216に対して記録を行う場合について説明する。
【0007】
緑色レーザ等からなる第1の光源201から出射された光束は、コリメータ202によって平行光束とされ、ミラー203を経由し、空間光変調素子204を照明する。図14に示したものでは、SLM204として、DMD(Deformable Mirror Device)が使用されている。このようなSLM204は、2次元に配置された多数の光変調素子(画素)を有し、各画素ごとに「0」、「1」を表わすことができるようになっている。SLM204において、「1」の情報を表わす画素で反射された光は、記録媒体216の方向へ反射され、「0」の情報を表わす画素で反射された光は記録媒体216の方向へ反射されない。コリニア方式のホログラフィックメモリシステムで用いられるSLM204では、その中央部分が、情報光206を変調する部分とされており、それを環状に取り巻く部分は、参照光205を変調する部分となっている。
【0008】
SLM204において「1」の情報を表わす画素で反射された情報光206及び参照光205は、いずれも、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと略記する)207をP偏光で透過する。そして、第1のリレーレンズ208、ミラー209、第2のリレーレンズ210、ダイクロイックビームスプリッタ(以下、DBSと略記する)211を経由して記録媒体216に向けられる。DBS211の通過後、1/4波長板(以下、QWPと略記する)212を透過して円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された参照光205と情報光206は、ミラー213で反射されて、焦点距離Fの対物レンズ214に入射する。SLM204上に表示されたパターンは、第1及び第2のリレーレンズ208、210により、対物レンズ214からFだけ手前に中間像を形成する。これにより、SLM204上のパターン像(図示せず)、対物レンズ214、記録媒体216がいずれもFの距離だけ離れて配置される、4F光学系が構成される。
【0009】
ディスク状の記録媒体(ホログラムディスク)216は、スピンドルモータ215上に回転可能に保持されている。対物レンズ214によって、参照光205と情報光206は記録媒体216に集光され、干渉して干渉縞を形成する。記録媒体216中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、その結果、デジタル体積ホログラムが形成される。SLM204により、記録すべき情報に応じて情報光206を変調すれば、記録媒体216に、その情報に応じたデジタル体積ホログラムが形成される。特に、SLM204の情報光領域において、記録すべき情報に応じて画素ごとに変調を行えば、記録媒体216に、そのような画素数に応じた情報量を有するデジタル体積ホログラムが形成されることとなる。なお、記録媒体216中には、反射膜が設けられている。
【0010】
光情報記録再生装置には、ホログラム化された光情報の記録再生を行う第1の光源201以外に、記録媒体216に対する感光性のない赤色レーザ等からなる第2の光源220が設けられている。この第2の光源220を用いて、記録媒体216の反射膜を基準面として、記録媒体216の変位を高精度に検出することが可能である。これより、記録媒体216に面ブレや偏心が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターンを記録することができる。以下、このようなトラッキングについて、簡単に説明する。
【0011】
赤色レーザ等からなる第2の光源220から出射された直線偏光光束は、ビームスプリッタ(以下、BSと略記する)221を透過し、レンズ222で平行光束とされ、ミラー223とDBS211で反射されて、記録媒体216に向けられる。QWP212を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー213で反射されて対物レンズ214に入射して、記録媒体216の反射膜に微小な光スポットとして集光される。反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされ、ミラー213で反射されてQWP212を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束に変換される。DBS211で反射された光束は、往路と同様にミラー223、レンズ222を経由し、BS221で反射されて、光検出器224に導かれる。光検出器224は、複数の受光面を有していて、反射面の位置情報を検知する、この検知結果に基づいて対物レンズ214のフォーカスとトラッキングを行うことができる。このようなフォーカス及びトラッキングは、CDやDVDなどを用いる従来からよく知られた光情報記録再生装置において行われるものと同様のものである。
【0012】
[再生]
次に、上記光学系を用いて、記録媒体216に記録されている情報の再生を行う場合について説明する。第1の光源201から出射された光束は、記録時と同様にSLM204を照明する。再生時は、SLM204の参照光205を変調する部分のみが「1」の情報を表示し、情報光206を変調する部分はすべて「0」の情報を表示する。したがって、参照光205の部分の画素で反射された光だけが、記録媒体216の方向へ反射され、情報光206は記録媒体216の方向へ反射されない。
【0013】
記録時と同様に参照光205は、円偏光(例えば、右回りの円偏光)となって記録媒体216に集光され、記録されている干渉縞(デジタル体積ホログラム)から情報光を再生する。記録媒体216中の反射膜で反射された情報光は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされ、ミラー213で反射されてQWP212を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束(S偏光)に変換される。この時、対物レンズ214からFの距離に再生されたSLM204の表示パターンの中間像が形成される。
【0014】
DBS211を透過した光束は、第2のリレーレンズ210、ミラー209、第1のリレーレンズ208を経由してPBS207に向けられる。PBS207で反射された光束は、空間光変調素子SLM204と共役の位置に、SLM204の表示パターンの中間像として再結像される。この位置には開口217が予め置かれていて、情報光の周辺部にある不要な参照光が遮蔽される。そして、レンズ218により、再結像された中間像は、CMOSセンサ等の受光素子219上に、情報光の部分のみのSLM204の表示パターンを形成する。これにより、不要な参照光205が受光素子219に入射しないので、S/N(信号対ノイズ比)の良い再生信号が得られる。
【0015】
結局、この光情報記録再生装置では、記録すべき情報を2次元デジタルパターン情報に展開し、この2次元デジタルパターン情報によって情報光が変調される。この処理により、記録情報が2次元空間の光強度分布画像情報となった情報光が生成される。そして情報光と参照光とを干渉させることによって、その干渉縞が記録媒体に記録される。再生時には、参照光を照射することで再生される光強度分布画像情報から2次元デジタルパターン情報を抽出し、デコードする。このデジタル処理により、S/N比の劣化による再生誤り率の低下を抑えることが可能となり、また、2値化データをコード化してエラー訂正を行うことで、極めて忠実に、記録情報を再現することが可能となる。
【0016】
また、上述したコリニア式のホログラフィックメモリシステムは、ホログラムの記録再生を行うための相対的に短い波長のレーザ光(第1の光源からの緑色レーザ光)の他に、記録媒体が感光性を有しない相対的に長い波長のレーザ光(第2の光源からの赤色レーザ光)を用いてトラッキングなどのサーボ制御を行うようにしている。このため、光サーボを実施しているときでもホログラム記録材料が感光することがなく、記録再生特性を劣化させない。また、記録媒体の偏心、面振れなどの外乱に対しても、ダイナミックに追従し、高精度に記録再生を行うことができる。
【非特許文献1】堀米 秀嘉ほか、「離陸間近のホログラフィック媒体 2006年に200Gバイトを実現」、日経エレクトロニクス第891号、第105〜114頁、2005年1月17日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した従来の光情報記録再生装置においては、サーボ情報を含むサーボ用赤色レーザ戻り光と記録情報を含む記録再生用緑色レーザ戻り光を、別々のセンサで受光しなければならない。そのため、部品点数の増加によるコストアップならびに光学ヘット小型化の妨げとなり、システム全体のコストアップ、装置全体の大型化の原因となっていた。
【0018】
本発明の目的は、サーボ情報を含むサーボ用のレーザ戻り光と記録情報を含む記録再生用のレーザ戻り光を同一の受光素子で受光でき、これによって光学ヘッドの小型化やコストダウンを実現できる光情報再生方法を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、サーボ情報を含むサーボ用のレーザ戻り光と記録情報を含む記録再生用のレーザ戻り光を同一の受光素子で受光でき、これによって光学ヘッドの小型化やコストダウンを実現できる光情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の光情報記録再生方法は、ホログラムを利用して情報が記録される情報記録層とサーボ情報が記録された反射膜とを有するホログラム記録媒体から情報を再生する光情報再生方法において、ホログラムが記録されている情報記録層に第1の波長の光を照射するとともに、第1の波長とは異なる第2の波長の光を反射膜に照射し、第1の波長の光により情報記録層から発生するホログラム再生光と、第2の光により反射膜から発生するサーボ情報戻り光とを、同一の受光素子に入射させ、受光素子においてホログラム再生光とサーボ情報戻り光とを分離して検出することを特徴とする。
【0021】
本発明の光情報再生方法において、受光素子として、第1の波長の光を透過させる第1のフィルタが積層された画素と第2の波長の光を透過させる第2のフィルタが積層された画素とを有するものを使用することが好ましい。
【0022】
本発明の光情報記録再生装置は、ホログラムを利用して情報が記録される情報記録層とサーボ情報が記録された反射膜とを有するホログラム記録媒体に対して、情報を記録・再生する光情報記録再生装置において、ホログラムが記録されている情報記録層に第1の波長の光を照射するとともに、第1の波長とは異なる第2の波長の光を反射膜に照射する光学系と、第1の波長の光を透過させるフィルタを積層した第一の画素群と第2の波長の光を透過させるフィルタを積層した第2の画素群とを有する受光素子と、第1の波長の光により情報記録層から発生するホログラム再生光と、第2の光により反射膜から発生するサーボ情報戻り光とを、受光素子に入射させる光学系と、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の光情報記録再生装置において、受光素子は単板のエリアセンサとして構成されていることが好ましい。そのような単板のエリアセンサは、例えば、CMOSセンサである。
【0024】
本発明においては、第1の画素群(第1のカラーフィルタが積層された画素群)でホログラム再生光を光電変換して生成された2次元情報に基づいて、記録媒体に記録された2次元デジタルパターン情報を復元すればよい。また、第2の画素群(第2のカラーフィルタが積層された画素群)でサーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報の和に基づいて、記録媒体におけるサーボピットを示す信号を検出すればよく、第2の画素群でサーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、フォーカスエラー信号を検出すればよく、さらに、第2の画素群でサーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、トラッキングエラー信号を検出すればよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サーボ用レーザ戻り光と記録再生用レーザ戻り光とを同一チップの受光素子(CMOSセンサなど)で受光し、再生することができる。このため従来のものに比べると、情報再生用の受光素子とサーボ用の受光素子と別々に設ける必要がなくなって、光学ヘッドの部品点数を削減することができるとともに、光情報記録再生装置における大幅なコストダウンと光学ヘッドの小型化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の一形態の光情報記録再生装置の光学系の構成を示す図である。
【0027】
図1に示す光学系は、同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)のものであり、例えばディスク状であるホログラム記録媒体116に対して情報の記録及び再生を行うものである。そして、図14に示した構成と同様に、情報の記録及び再生に用いるレーザ光を発生する第1の光源(緑色レーザ)101と、信号光を変調するための空間光変調素子SLM104と、再生光を検出するための受光素子119を備えている。受光素子119は、単板のエリアセンサとして、二次元に配列された複数の画素を有する。このような受光素子119として、CMOSイメージセンサなどが好ましく使用される。さらにこの光情報記録再生装置は、光サーボのための第2の光源(赤色レーザ)120を備えている。図1に示す光情報記録再生装置が図14に示したものと異なるところは、ダイクロイックビームスプリッタ(DBS)の代わりにダイクロイック偏光ビームスプリッタ(以下、DPBSとする)111を備えるとともに、臨界角プリズム118を備えている点である。臨界角プリズム118は、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSとする)107と、CMOSセンサなどからなる受光素子119に間に配置されている。また、ビームスプリッタ(以下、BSとする)121に対して第2の光源120が、図14に示すものとは異なり、反射側に設けられている。
【0028】
まず、上記光学系を用いて、記録媒体(ホログラムディスク)116に記録を行う場合について説明する。
【0029】
緑色レーザ等からなる第1の光源101から出射された光束は、コリメータ102によって平行光束とされ、ミラー103を経由し、SLM104を照明する。図1に示したものでは、SLM104として、DMDが使用されている。SLM104において、「1」の情報を表わす画素で反射された光は、記録媒体116の方向へ反射され、「0」の情報を表わす画素で反射された光は記録媒体116の方向へ反射されない。この装置はコリニア方式のものであるので、SLM104では、その中央部分が、情報光106を変調する部分とされており、それを環状に取り巻く部分は、参照光105を変調する部分となっている。
【0030】
SLM104において「1」の情報を表わす画素で反射された情報光106及び参照光105は、いずれも、PBS107をP偏光で透過する。そして、第1のリレーレンズ108、ミラー109、第2のリレーレンズ110、DPBS111を経由して記録媒体116に向けられる。DPBS111の通過後、1/4波長板(以下、QWPと略記する)112を透過して円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された参照光105と情報光106は、ミラー113で反射されて、焦点距離Fの対物レンズ114に入射する。SLM104上に表示されたパターンは、2つのリレーレンズ108、110により、対物レンズ114からFだけ手前に中間像を形成する。これにより、SLM104上のパターン像(図示せず)、対物レンズ114、記録媒体116がいずれもFの距離だけ離れて配置される、4F光学系が構成される。
【0031】
ディスク状の記録媒体(ホログラムディスク)116は、スピンドルモータ(不図示)上に回転可能に保持されている。対物レンズ114によって、参照光105と情報光106は記録媒体116に集光され、干渉して干渉縞を形成する。記録媒体116中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、その結果、デジタル体積ホログラムが形成される。また、記録媒体116中には、反射膜が設けられている。
【0032】
ホログラム化された光情報の記録再生を行う第1の光源101以外に、記録媒体116に対する感光性のない赤色レーザ等からなる第2の光源120が設けられている。この第2の光源120を用いて、記録媒体116の反射膜を基準面として、記録媒体116の変位を高精度に検出することが可能である。これより、記録媒体116に面ブレや偏心が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターンを記録することができる。以下、本実施形態におけるトラッキングについて、説明する。
【0033】
第2の光源120から出射された直線偏光光束は、ビームスプリッタ(以下、BSと略記する)121をS偏光で反射し、レンズ122で平行光束とされ、ミラー123とDPBS111で反射されて、記録媒体116に向けられる。QWP112を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー113で反射されて対物レンズ114に入射して、記録媒体116の反射膜に微小な光スポットとして集光される。反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ114に再入射して平行光束とされ、ミラー113で反射されてQWP112を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束に変換される。DBSP111を透過した光束は、リレーレンズ110、ミラー109、リレーレンズ108を経由し、PBS107と臨界角プリズム118で反射されて、受光素子119に導かれる。
【0034】
次に、上記光学系を用いて、記録媒体116に記録されている情報の再生を行う場合について説明する。第1の光源101から出射された光束は、記録時と同様にSLM104を照明する。再生時は、SLM104の参照光105を変調する部分のみが「1」の情報を表示し、情報光106を変調する部分はすべて「0」の情報を表示する。したがって、参照光105の部分の画素で反射された光だけが、記録媒体116の方向へ反射され、情報光106は記録媒体116の方向へ反射されない。
【0035】
記録時と同様に参照光105は、円偏光(例えば、右回りの円偏光)となって記録媒体116に集光され、記録されている干渉縞(デジタル体積ホログラム)から情報光を再生する。記録媒体116中の反射膜で反射された情報光は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ114に再入射して平行光束とされ、ミラー113で反射されてQWP112を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束(S偏光)に変換される。この時、対物レンズ114からFの距離に再生されたSLM104の表示パターンの中間像が形成される。
【0036】
PDBS111を透過した光束は、リレーレンズ110、ミラー109、リレーレンズ108を経由してPBS107に向けられる。PBS107で反射された光束は、臨界角プリズム118で反射され、受光素子119上に、情報光の部分のみのSLM表示パターンを形成する。
【0037】
このように本実施形態では、光サーボのための赤色レーザ光と情報の再生のための緑色レーザ光とを同一の受光素子119で受光するようにしている。なお、本実施形態において、第2の光源120からの赤色レーザ光を用いた光サーボは、当然のことながら、情報の再生を行うときだけでなく、情報を記録媒体116に対して記録するときにも行われる。情報の記録時にも、少なくとも赤色レーザ光は、上述と同様にして受光素子119に到達するので、この到達した赤色レーザ光に基づいてサーボ制御を行えばよい。
【0038】
次に、本実施形態でのホログラム記録媒体の構成を図2を用いて説明する。
【0039】
このホログラム記録媒体50は、光情報記録再生装置に装着されたときの対物レンズの側から見て順に、透明基板のカバー層56、ホログラム記録層55、波長選択反射膜54、ギャップ層53、プリフォーマット基板51とが積層されて構成されている。プリフォーマット基板51は、ポリカーボネート、ガラス等によって形成された円板状の基板である。
【0040】
プリフォーマット基板51には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレスサーボエリア57が所定の角度間隔で設けられており、隣り合うアドレスサーボエリア間の扇形の区間がデータエリア58になっている。プリフォーマット基板上51には、金や白金等でコーティングされた反射膜52が設けられている。波長選択反射膜54を透過した赤色レーザ光が、プリフォーマット基板17上に形成されているアドレスサーボエリア57の位相ピット、グルーブ、ランド形成部上の反射膜52で反射され、戻り光となるようになっている。この位相ピット、グルーブ、ランドの有無によって、光の回折による反射光量の大幅な増減が発生する。この戻り光の変化を信号としてとらえることができ、後述するフォーカスエラー信号、トラキングエラー信号、アドレス信号を生成し、光学ヘッドの位置決め制御及びホログラム記録情報の記録位置制御を行う。波長選択反射膜54は、アドレスサーボ情報を得るための赤色レーザ光は透過し、記録、再生を寄与する青色レーザ光は反射する。
【0041】
ホログラム記録層55のホログラム材料は、赤色の光には感光しないようになっているので、サーボ用赤色レーザ光がホログラム記録層55を通過したり、反射膜52で乱反射したとしても、ホログラム記録層55には影響が及ばない。ホログラム記録層55は、情報光と参照光の干渉によって生じる干渉縞の光強度分布によって、屈折率、誘電率、反射率等の光学的特性が変化するホログラム材料によって形成される。すなわちホログラム記録層55は、記録情報光より生成された干渉縞を、光学特性の変化として保持する。ギャップ層53は反射膜52を保護するとともに、ホログラム記録層55と反射膜52間にギャップを設け、ホログラム記録層55内の干渉領域をある程度の大きさに保つ役割を有する。
【0042】
上述したようにこの光情報記録再生装置では、受光素子119は、例えば赤色光である光サーボのための光と、例えば緑色光である情報再生のための光とを同時に受光する。ここで光サーボのための得られる信号と、情報再生のための信号とは別個に取得する必要があるから、二次元の受光素子において、赤色フィルタを有する画素と緑色フィルタを有する画素とを配置し、両者の信号を分けて取得できるようにしている。
【0043】
本実施形態における受光素子(CMOSセンサ)119の受光画素エリアのカラーフィルタの配置の一例について、図3を用いて説明する。図3は、受光素子219の水平方向に4画素、垂直方向に4画素分の受光エリアを拡大して示す図であり、図中の四角の領域60は、それぞれ、1画素分の受光エリアを示している。光を受光して光電変換し、光電荷を蓄積するフォトダイオードの受光部の上には、光の波長の違いにより選択的に光を通すカラーフィルタが積層されており、図3は、カラーフィルタの2次元的配置を示している。R10,R30,R21,R41,R12,R32のR画素群は、赤の波長の光を透過するRカラーフィルタが積層されている受光部である。R画素群では、ホログラム記録媒体のプリフォーマット基板上の反射膜で反射されたサーボ用赤色レーザの戻り光が透過し、波長選択反射膜で反射された記録再生用緑色レーザの戻り光は、遮断される。ゆえに、R画素群からは、サーボ用赤色レーザ戻り光の画素信号のみが出力される。これに対しG20,G40,G11.G31,G22,G42のG画素群は、緑の波長の光を透過するGカラーフィルタが積層されている受光部である。G画素群では、ホログラム記録媒体のホログラム記録層を透過し、波長選択反射膜で反射された記録再生用緑色レーザの戻り光が透過し、反射膜で反射されたサーボ用赤色レーザの戻り光は、遮断される。ゆえに、G画素群からは、記録再生用緑色レーザ戻り光の画素信号のみが出力される。
【0044】
図3で示したカラーフィルタの配置は、上下左右が、他色のカラーフィルタが配置されたモザイク配置となっているが、本発明は、これに限るものではにない。図4、図5にカラーフィルタ配置の別の例を示す。図4のカラーフィルタの配置は、各行毎にカラーフィルタの透過する色を変えた配置であり、各水平ラインからは、同色の色成分の画素信号が再生される。図5は、各列毎にカラーフィルタの透過する色を変えた配置であり、各垂直ラインからは、同色の色成分の画素信号が再生される。
【0045】
次に、受光素子119の構造についてさらに詳しく説明する。図6は、カラーフィルタを含む画素部の構成を示す縦方向の断面図である。
【0046】
受光素子119は、例えばシリコン半導体基板に2次元イメージセンサとして形成されたものであり、ここでは、N型半導体基板が用いられているものとする。N型基板30上に、1画素部を形成する領域であるPウェル層29が形成され、Pウェル層29内に、フォトダイオード領域となるべきN領域27が形成される。N領域27とPウェル層29とのPN接合部によって、フォトダイオードPD1、PD2が形成される。フォトダイオーPD1、PD2では、受光した光に応じて光電荷が発生し、これがPN接合部に蓄積される。転送用MOSトランジスタのゲート25は、N領域28とともに、フォトダイオードPD1、PD2に蓄積された光電荷をフローティングディフュージョン領域(図示せず)に転送させるために設けられている。フローティングディフュージョン領域に転送された光電荷は、画素信号に変換され読み出されることになる。
【0047】
フォトダイオードPD1,PD2の受光部以外に光が入光しないように、アルミ等で形成された遮光膜24が酸化膜26上に形成されている。遮光膜24は、フォトダイオード受光部には入射光を透過させるが、それ以外の部分では光を反射する。遮光膜24の上には、パッシベーション層23を介して、平坦化層22が設けられている。
【0048】
平坦化層22上に、カラーフィルタやマイクロレンズ20が形成される。符号61は、赤色の光を透過するRカラーフィルタを示している。Rカラーフィルタ61は、赤色以外の波長の光を反射するため、サーボ用赤色レーザ戻り光を透過され、フォトダイオードPD1に光スポットを形成する。符号62は、緑色の光を透過するGカラーフィルタを示している。Gカラーフィルタ62は、緑色以外の波長の光を反射するため、記録再生用緑色レーザ戻り光を透過させ、フォトダイオードPD2に光スポットを形成する。
【0049】
マイクロレンズ20は、画素部に入射した光を効率よくフォトダイオード上に集光する役割を有する。マイクロレンズ20で集光され、Rカラーフィルタ61を透過したサーボ用赤色レーザ戻り光は、フォトダイオード部PD1で受光され蓄積後、読み出される。マイクロレンズ20で集光され、Gカラーフィルタ62を透過した記録再生用緑色レーザ戻り光は、フォトダイオード部PD2で受光され蓄積後、読み出される。このように本実施形態では、オンチップ上の画素部の上に、赤及び緑のカラーフィルタを設けている。これにより、シングルチップの受光素子119において、複雑な光学系を必要とせず、サーボ用赤色レーザ戻り光と記録再生用緑色レーザ戻り光を分離して再生することが可能となる。
【0050】
次に、CMOSセンサからなる受光素子119の等価回路を図7に示し、画素信号の読み出し動作について説明する。画素信号を読み出すべき水平ラインを選択する駆動パルスを発生する垂直シフトレジスタ(VSR)11により、ライン単位で、リセット、蓄積、読み出し制御が行われる。VSR11は、信号線Φs1,Φt1,Φr1をアクティブにすることにより、一行目の画素のリセット、蓄積、読み出し制御を行い、次に信号線Φs2,Φt2,Φr2,をアクティブにすることにより、2行目の画素のリセット、蓄積、読み出し制御を行う。図7は、説明の便宜上、水平2画素、垂直2画素の場合を示しているが、画素数はこれに限られるものではない。VSR11は、一行目に配置されているフォトダイオード1a,1bに蓄積された光電荷を読み出すため、Φs1をアサートし、セレクト用MOSトランジスタ5a,5bをオンにし、読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4a,4bをアクティブにする。次に、Φr1をアサートし、リセット用MOSトランジスタ3a,3bをオンし、フローティングディフュージョン領域(容量)7a,7bを電源電圧6にリセットする。リセット動作終了後、Φr1をディアサートする。このとき発生するリセットノイズは、ランダムノイズとともに、フローティングディフュージョン領域7a,bに蓄積される。このノイズ成分を読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4a,4bを介して読み出し、アンプ8a,8bに保持する。次に、Φt1をアサートし、転送用MOSトランジスタ2a,2bをオンにして、フォトダイオード1a,1bに蓄積された光電荷を、フローティングディフュージョン領域7a,7bに転送する。光電荷が転送されたことによるフローティングディフュージョン領域7a,7bの電圧は、転送された光電荷の量に応じて、変化する。この変化量が画素信号であり、読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4a,4bを介して、アンプ8a,8bに保持される。アンプ8a,8bでは、画素信号から、先に保持したノイズ信号を差し引くことで、リセットノイズ、ランダムノイズをキャンセルした高S/Nの画素信号が生成する。
【0051】
水平シフトレジスタ(HSR)10は、信号線S1、S2を順番にアサートし、スイッチ9a,9bを順次オンにし、これによって、アンプ8a,8bの画素信号出力を、順次、出力線Voutに出力する。この動作により、選択された1行目の画素は、順次、出力線Voutから取り出される。ここで、フォトダイオード1a上にRカラーフィルタが、フォトダイオード1b上にGカラーフィルタが積層されているものとする。HSR10により、順次、アンプ8aのサーボ用赤レーザ戻り光の値すなわちサーボ信号と、アンプ8bの記録再生用緑レーザ戻り光の値すなわち記録再生信号とが読み出され、出力線Vオウtに出力される。
【0052】
1行目の画素信号をすべて、出力線Voutから読み出した後、2行目のフォトダイオード1c,1dに蓄積された光電荷を読み出すため、VSR11は、Φs2,Φt2,Φr2をアクティブする。そしてVSR11は、Φs2をアサートし、セレクト用MOSトランジスタ5c,5dをオンにし、読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4c,4dをアクティブにする。次に、Φr2をアサートし、リセット用MOSトランジスタ3c,3dをオンし、フローティングディフュージョン領域7c,7dを電源電圧6にリセットする。リセット動作終了後、Φr2をディアサートする。この時、発生するリセットノイズは、ランダムノイズとともに、フローティングディフュージョン領域7c,7dに蓄積される。このノイズ成分を読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4c,4dを介して読み出し、アンプ8a,8bに保持する。次に、VSR11は、Φt2をアサートし、転送用MOSトランジスタ2c,2dをオンにして、フォトダイオード1c,1dに蓄積された光電荷を、フローティングディフュージョン領域7c,7dに転送する。光電荷が転送されたことによるフローティングディフュージョン領域7c,7dの電圧は、転送された光電荷の量に応じて、変化する。この変化量が画素信号であり、読み出し用ソースフォロアMOSトランジスタ4c,4dを介して、アンプ8a,8bに保持される。アンプ8a,8bでは、画素信号から、先に保持したノイズ信号を引くことで、リセットノイズ、ランダムノイズをキャンセルした高S/Nの画素信号を生成する。
【0053】
2行目の場合も1行目の場合と同様にして、HSR10により、アンプ8a,8bの画素信号出力が、順次、出力線Voutに出力される。この動作により、選択された1行目の画素は、順次、出力線Voutから取り出される。ここで例えば、フォトダイオード1c上にRカラーフィルタが、フォトダイオード1d上にGカラーフィルタが積層されているとする。すると、HSR10により、順次、アンプ8aのサーボ用赤レーザ戻り光の値すなわちサーボ信号と、アンプ8bの記録再生用緑レーザ戻り光の値すなわち記録再生信号とが出力線Voutに読み出され、その結果が出力される。
【0054】
図8は、緑色レーザ参照光を記録媒体のホログラム記録層に照射し、回折により再生された2次元空間光強度分布の画像情報から記録した2次元デジタルパターンを再現し、記録した情報をデコードする記録情報デコードシステムを示している。
【0055】
記録媒体のホログラム記録層に記録された干渉縞に記録再生用緑色レーザ光による参照光を照射することにより、デジタル体積ホログラムの再生像が得られる。この再生像は、2次元デジタル符号の「1」「0」に対応した光強度変調を受けた2次元画像として、受光素子119の受光エリア300に到達する。受光エリア300を構成する全画素を構成する画素のうち、Gカラーフィルタが積層され、記録再生用緑色レーザ戻り光のみを光電変換した画素をG画素とする。また、Rカラーフィルタが積層され、サーボ用赤色レーザ戻り光のみを光電変換した画素をR画素とする。すると、記録情報光の再生には、G画素のみを使用することになる。受光エリア300のうち、G画素のみが出力線42から逐次読み出され、AD(アナログ/デジタル)変換器46において、「1」又は「0」の情報に量子化され、再生デジタル信号43となる。再生デジタル信号43は、1画像分、フレームメモリ40に蓄えられ、2次元デジタル符号イメージ44として再構築される。再構築された2次元デジタル符号イメージ44は、デコーダ41により復号処理され、その結果、記録媒体における記録情報が「1」「0」のデジタル情報として再現されることになる。
【0056】
次に、本実施形態におけるフォーカス制御の原理を図9を用いて説明する。フォーカス制御を行うための方式としては、非点収差法、ナイフエッジ法、臨界角法等が知られている。本実施形態では非点収差法を用いるものとするが、他の方式のフォーカス制御を用いることも可能である。
【0057】
ホログラム記録媒体のホログラム記録層を通過し、プリフォーマット基板の反射層で反射した赤色レーザー光は、シリンドリカルレンズを通って、受光素子119で受光される。シリンドリカルレンズを透過することで、非点収差を持たせることができる。受光素子119の受光エリア300の全体を、図示するようにA、B、C、Dの4つの領域に分割して、それぞれの領域でのR画素信号の総和を、各受光エリアの出力とする。
【0058】
受光素子119上の非点収差を有するのサーボ用赤色レーザ光の結象スポットの形状は、ディスク位置が対物レンズの焦点位置にある時(フォーカス)は、図9(1)の一点鎖線aに示すようになる。これに対し、対物レンズから遠すぎる時(デフォーカス)は、図9(2)の一点鎖線bの示すようになり、対物レンズに近すぎる時(デフォーカス)は、図9(3)の一点鎖線cに示すようになる。よって、受光エリアAとCのR画素信号の総和と受光エリアBとDのR画素信号の総和の差をゼロになるように対物レンズの位置を制御することで、フォーカス状態を保つことが可能となる。
【0059】
図10は、このように対物レンズの位置の制御を行うために用いられるフォーカスエラー信号Efを生成するためのシステムを示している。このフォーカスエラー信号生成システムでは、累算器301において、受光エリアA内のR画素信号の総和を算出し、累算器303において受光エリアC内のR画素信号の総和を算出し、加算器305において、累算器301と累算器303の出力を加算する。また、累算器302において受光エリアB内のR画素信号の総和を算出し、累算器304において受光エリアD内のR画素信号の総和を算出し、加算器306において、累算器302と累算器304の出力を加算する。差動演算器307は、加算器305と加算器306の出力の差を算出する。差動演算器307の出力308がフォーカスエラー信号Efとなる。このフォーカスエラー信号Efは、対物レンズとディスク位置の相対的な位置関係に関し、いわゆるS字特性を有する。フォーカスエラー信号Efの極性や大きさに応じて対物レンズ駆動用フォーカスコイルの電流を制御することで、ディスク位置に対して、対物レンズが常に焦点位置になるように制御することができる。具体的には、対物レンズの位置は、フォーカスエラー信号Efがゼロになるようにサーボループで制御される。
【0060】
次に、本実施形態におけるトラッキング制御の原理について、図11を用いて説明する。
【0061】
ホログラム記録媒体のプリフォーマット基板上には、情報を記録するトラック部であるランドが、円板状のホログラム記録媒体上に、スパイラル状に形成されている。さらにプリフォーマット基板には、このランドを挟む形で案内溝であるグルーブが形成されている。トラッキング制御は、レーザビームスポットが正確にランド上をトレースするようにするための制御である。本実施形態では、プッシュプル法を用いたトラッキング制御を実施している。
【0062】
本実施形態におけるプッシュプル法は、グルーブで反射回折されたサーボ用赤色レーザ光を受光する受光素子119の受光エリア全体300を、受光エリアE、Fのように2分割する。そして、それぞれの受光エリアでのR画素信号の総和の差を求めることにより、トラッキングエラー信号Etを生成する。記録媒体においてホログラム記録層、波長選択反射膜を通過したサーボ用赤色レーザ光は、プリフォーマット基板の記録トラック部に結像する。ランド、グルーブ部で反射された戻り光は、正反射光である0次回折光と、+1次及び−1次回折光とになって受光素子119に到達する。この0次回折光と±1次回折とは受光素子119の受光面上で干渉を起こし、干渉部分の光強度を減少させる。その結果、0次回折光を中心として線対称の位置に、それぞれ干渉部分が発生する。受光エリアEにおいては、0次回折光のみが存在する領域S0Lと、−1次回折光との干渉部分である領域S1Lが形成される。同様に、受光エリアFにおいて、0次回折光のみが存在する領域S0Rと、+1次回折光との干渉部分である領域S1Rが形成される。結像スポットがランド(記録トラック部)の中心に位置している場合は、それぞれの干渉部分S1L、S1Rの光の強度バランスが維持される。すなわち、線対称の中心線を境にとする2つの受光エリアE,Fの光強度は等しくなる。この場合、受光エリアEのR画素信号の総和と受光エリアFのR画素信号の総和は等しくなり、その差はゼロとなる。これに対し、結像スポットがランド中心部分からずれた場合には、干渉部分S1LとS1Rの光強度のバランスが崩れ、受光エリアEとFのそれぞれのR画素信号の総和の差は、ゼロとはならない。この差成分が、記録トラックからのずれを示すトラッキングエラー信号Etとなる。
【0063】
図12は、このようなトラッキングエラー信号Etを生成するためのシステムを示している。このトラッキングエラー信号生成システムでは、累算器309において受光エリアE内のR画素信号の総和を算出し、累算器310において受光エリアF内のR画素信号の総和を算出し、差動演算器311において累算器309と累算器310の出力の差を求める。差動演算器311の出力312がトラッキングエラー信号Etとなる。トラッキングエラー信号Et312の極性や大きさに応じて対物レンズ駆動用トラッキングコイルの電流を制御することで、ホログラム記録媒体上の結像スポットが常に記録トラック中心上に追従してトレースするように制御される。具体的には、対物レンズの位置は、トラッキングエラー信号Etがゼロになるように、サーボループで制御される。
【0064】
次に、本実施形態におけるアドレス情報再生の方式に関して、図13を用いて説明する。ホログラム記録媒体のプリフォーマット基板には、あらかじめトラックアドレス情報が書き込まれており、このトラックアドレス情報を読み出すことで、記録媒体における所望の位置へアクセスすることが可能になる。トラックアドレス情報は、アドレスサーボエリアの位相ピット(記録トラック上に、掘り込まれている溝)に書き込まれている。
【0065】
サーボ用赤色レーザ光のスポットは、上述したフォーカス制御及びトラッキング制御により、高精度に記録トラック上をトレースすることが可能となっているものとする。このような赤色レーザ光のスポットが、トラックアドレス情報が書き込まれている位相ピット上をトレースすると、レーザ光は回折により散乱し、位相ピットが存在するところで、戻り光が急激に減少する。この光の増減を信号として検出することによって、プリフォーマット基板上に予め書き込まれているアドレスマーク、トラックアドレス情報、データ書き込み位置決定クロックを再生する。アドレスマークは、アドレスの先頭に埋め込まれているパターンで、このアドレスマークを検出することで、アドレス情報の存在位置を確定することができる。
【0066】
アドレスマーク検出後、所定の位置にあるアドレス情報を再生する。アドレス情報の後には、基準クロックが所定の数だけあり、この基準クロックを再生してPLL(位相同期ループ)で同期をとることで、データエリアのホログラム記録の位置を正確に制御することができる。図13は、このようなアドレス信号を生成するシステムを示している。アドレス信号生成システムでは、受光素子119の受光エリア300のうち、R画素のみを読み出し、累算器313において、1画像分の総和を求める。すなわち、受光部300上のサーボ用赤色レーザの光スポット全体の光量の増減からアドレス情報を特定する。累積器313のR画素出力の総和314が再生アドレス信号Erfとなる。
【0067】
以上、説明したように本実施形態では、サーボ情報を含むサーボ用赤色レーザ戻り光と記録情報を含む記録再生用緑色レーザ戻り光を同一の受光素子で受光するようにしている。ここでサーボ情報には、例えば、フォーカスエラー信号、トラキングエラー信号、再生アドレス信号が含まれる。記録情報は、ホログラム記録層に参照光を照射した時に再生される2次元光強度分布画像である。そして受光素子の受光画素上のオンチップカラーフィルタで、サーボ用赤色レーザ戻り光と記録再生用緑色レーザ戻り光を分離している。これにより、単一の受光素子を用いて、サーボ用赤色レーザ戻り光からサーボ情報やアドレズ情報を、記録再生用緑色レーザ戻り光から記録情報を抽出することを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の一形態の光情報記録再生装置の光学系を示す図である。
【図2】ホログラム記録媒体の構成を示す概略断面図である。
【図3】受光素子の受光画素エリアにおけるカラーフィルタの配置を示す図である。
【図4】受光素子の受光画素エリアにおけるカラーフィルタの配置の別の例を示す図である。
【図5】受光素子の受光画素エリアにおけるカラーフィルタの配置のさらに別の例を示す図である。
【図6】受光素子におけるカラーフィルタを含む画素部の構成を示す断面図である。
【図7】受光素子の等価回路図である。
【図8】記録情報でコードシステムを示すブロック図である。
【図9】フォーカス制御の原理を示す図である。
【図10】フォーカスエラー信号生成システムを示すブロック図である。
【図11】トラッキング制御の原理を示す図である。
【図12】トラッキングエラー信号生成システムを示すブロック図である。
【図13】アドレス信号生成システムを示すブロック図である。
【図14】ホログラフィックメモリを用いる従来の光情報記録装置装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10 水平シフトレジスタ
11 垂直シフトレジスタ
20 マイクロレンズ
50 ホログラム記録媒体
51 プリフォーマット基板
52 反射膜
53 ギャップ層
54 波長選択反射膜
55 ホログラム記録層
56 カバー層
57 アドレスサーボエリア
58 データエリア
61 R(赤)カラーフィルタ
62 G(緑)カラーフィルタ
101,201 第1の光源(緑色レーザ)
102,202 コリメータ
103,109,113,123,203,209,213,223 ミラー
104,204 空間光変調素子(SLM)
105,205 参照光
106,206 情報光
107,207 偏光ビームスプリッター(PBS)
108,110,208,210 リレーレンズ
111 ダイクロイック偏光ビームスプリッタ(PDBS)
112,212 1/4波長板(QWP)
114,214 対物レンズ
116,216 記録媒体
117,217 開口
118 臨界角プリズム
119,219 受光素子
120,220 第2の光源(赤色レーザ)
121,221 ビームスプリッタ(BS)
122,218,222 レンズ
211 ダイクロイックビームスプリッタ(DBS)
224 光検出器
300 受光エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムを利用して情報が記録される情報記録層とサーボ情報が記録された反射膜とを有するホログラム記録媒体から情報を再生する光情報再生方法において、
ホログラムが記録されている前記情報記録層に第1の波長の光を照射するとともに、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を前記反射膜に照射し、
前記第1の波長の光により前記情報記録層から発生するホログラム再生光と、前記第2の光により前記反射膜から発生するサーボ情報戻り光とを、同一の受光素子に入射させ、
前記受光素子において前記ホログラム再生光と前記サーボ情報戻り光とを分離して検出することを特徴とする、光情報再生方法。
【請求項2】
前記受光素子は、前記第1の波長の光を透過させる第1のフィルタが積層された画素と前記第2の波長の光を透過させる第2のフィルタが積層された画素とを有することを特徴とする、請求項1に記載の光情報再生方法。
【請求項3】
前記第1のフィルタが積層された画素群で前記ホログラム再生光を光電変換して生成された2次元情報に基づいて、前記記録媒体に記録された2次元デジタルパターン情報を復元することを特徴とする、請求項2に記載の光情報再生方法。
【請求項4】
前記第2のフィルタが積層された画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報の和に基づいて、前記記録媒体におけるサーボピットを示す信号を検出することを特徴とする、請求項2に記載の光情報再生方法。
【請求項5】
前記第2のフィルタが積層された画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、フォーカスエラー信号を検出することを特徴する、請求項2に記載の光情報再生方法。
【請求項6】
前記第2のフィルタが積層された画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、トラッキングエラー信号を検出することを特徴とする、請求項2に記載の光情報再生方法。
【請求項7】
ホログラムを利用して情報が記録される情報記録層とサーボ情報が記録された反射膜とを有するホログラム記録媒体に対して、情報を記録・再生する光情報記録再生装置において、
情報の記録・再生に用いられる第1の波長の光を前記情報記録層に対して照射するとともに、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を前記反射膜に照射する光学系と、
前記第1の波長の光を透過させるフィルタを積層した第一の画素群と前記第2の波長の光を透過させるフィルタを積層した第2の画素群とを有する受光素子と、
前記第1の波長の光により前記情報記録層から発生するホログラム再生光と、前記第2の光により前記反射膜から発生するサーボ情報戻り光とを、前記受光素子に入射させる光学系と、
を有することを特徴とする、光情報記録再生装置。
【請求項8】
前記情報を前記ホログラム記録媒体に記録する場合に、少なくとも前記サーボ情報戻り情報が前記受光素子に入射される、請求項7に記載の光情報記録再生装置。
【請求項9】
前記受光素子は単板のエリアセンサとして構成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の光情報記録再生装置。
【請求項10】
前記単板のエリアセンサがCMOSセンサであることを特徴とする、請求項9に記載の光情報記録再生装置。
【請求項11】
前記第1の画素群で前記ホログラム再生光を光電変換して生成された2次元情報に基づいて、前記記録媒体に記録された2次元デジタルパターン情報を復元する手段を有することを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項12】
前記第2の画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報の和に基づいて、前記記録媒体におけるサーボピットを示す信号を検出する手段を有することを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項13】
前記第2の画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、フォーカスエラー信号を検出する手段を有することを特徴する、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項14】
前記第2の画素群で前記サーボ情報戻り光を光電変換して生成された画素情報に基づいて、トラッキングエラー信号を検出する手段を有することを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−149262(P2007−149262A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344370(P2005−344370)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】