説明

光書込装置および画像形成装置

【課題】 回転多面鏡を備えた場合の騒音防止と排熱とが両立できる構成を備えた光書込装置を提供する。
【解決手段】 光源からの光ビームを回転多面鏡142により光偏向させて走査する構成を備えた光書込装置8において、回転多面鏡142を回転自在に支持可能であって、一部が開放された空間201で構成されている回転多面鏡囲繞部200と、回転多面鏡囲繞部200の開放部201に対して着脱可能であって、装着時に連通する開口部210Aが形成されているダクト部210とを備え、回転多面鏡囲繞部200側の開放部201とダクト210側の開口部210Aとはこれら連通部を外部と遮蔽する遮蔽部材211を介して連続させた構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書込装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、発熱部からの排熱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置などの画像形成装置においては、潜像担持体として用いられる感光体への静電潜像を形成する装置の一つとしてレーザ光などの光ビームを用いる光書込装置が用いられる場合がある(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
一方、光書込装置には、複数のレーザ光源を用いてこれら光源から出射された光ビームを偏向手段として用いられる回転多面鏡およびfθレンズや面倒れ補正レンズさらにはミラーなどを備えた結像手段を介してそれぞれ複数設けられた感光体に導き、各感光体上にて画像情報に応じた画像を形成することができる多色画像形成装置も提案されている(例えば、特許文献3)。
【0004】
近年、画像形成処理速度の高速化や記録密度の高密度化が要求されるようになってきており、これを実現するための方法として、書込光学系に用いられる回転多面鏡の回転速度を高速化することがある。
【0005】
回転多面鏡を高速化した場合、これに伴い多面鏡の風切り音が顕著となり、さらには、多面鏡を軸支している軸受け部での発熱も顕著となる。
このため、従来では、回転多面鏡の設置部からの騒音が漏洩するのを防止する構成や回転多面鏡の支持部からの熱を放熱する構成を備えた光書込装置が提案されている(例えば、特許文献4〜7)。
【0006】
回転多面鏡の設置部からの騒音防止のための構成としては、特許文献4乃至7に開示されているように、回転多面鏡をほぼ密閉できる空間内に配置する構成が知られており、また放熱のための構成としては、密閉空間内に位置する回転多面鏡に一部が接触する放熱部材を密閉空間外部に露呈させて放熱する構成や密閉空間内に気流を生じさせる構成が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−148553号公報
【特許文献2】特開平10−232360号公報
【特許文献3】特開2002−137450号公報
【特許文献4】特開平11−271662号公報
【特許文献5】特許第3550008号
【特許文献6】特開平11−119138号公報
【特許文献7】特開2001−337291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
密閉構造の空間内に回転多面鏡を設けた場合には騒音の漏洩を防止できる反面、内部で滞熱しやすくなる虞がある。
密閉空間の外部に放熱部材を露呈させる構成の場合には放熱部材の熱吸収能力が限定されてしまうことが原因となって回転多面鏡の回転上昇に見合う放熱量を確保することが困難となる虞がある。さらに、密閉空間内で気流を生じさせる構成の場合には熱気の滞留を確実に防止しなければ空間内の温度上昇を抑えられなくなることで軸受け部での潤滑剤の変性などが生じる虞があるばかりでなく、気流の設定によっては空間構造が複雑化する虞がある。
【0009】
空間内近傍に向けて排気する構成とした場合には回転多面鏡を備えた光書込装置内で回転多面鏡近傍に排気されると周辺部の温度上昇により光学系に用いられている樹脂製のレンズなどの変形を生じさせて結像光路が変化する虞があるばかりでなく、外部との連通位置で空間が開口しているとその開口から騒音が漏洩してしまう虞もある。
また、密閉空間近傍の光書込装置内に排気するのでなく光書込装置の外部で画像形成装置内に排気する場合には画像形成装置内の温度上昇を招き、これにより画像形成装置内に用いられている部品の熱的な劣化を招く虞がある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の光書込装置における問題、特に回転多面鏡を備えた場合の騒音防止と排熱とが両立できる構成を備えた光書込装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、光源からの光ビームを回転多面鏡により光偏向させて走査する構成を備えた光書込装置において、回転自在の回転多面鏡の周辺部に位置し、一部が開放された空間で構成されている回転多面鏡囲繞部と、前記回転多面鏡囲繞部の開放部に対して着脱可能であって、装着時に連通する開口部が形成されているダクト部とを備え、前記回転多面鏡囲繞部側の開放部と前記ダクト側の開口部とはこれら連通部を外部と遮蔽する遮蔽部材を介して連続させた構成であることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光書込装置において、前記遮蔽部材は、前記連通位置で前記回転多面鏡囲繞部側に設けられている補強用突起部と接触した状態で配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光書込装置において、前記ダクト部には、前記回転多面鏡囲繞部側の開放部と連通可能な開口部とは異なる位置に排気部および吸気部が設けられ、これら排気部および吸気部の途中に前記開口部が形成されるとともに前記排気部もしくは吸気部のいずれかに気流発生手段が備えられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のうちの一つに記載の光書込装置において、前記遮蔽部材として発泡部材が用いられることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の光書込装置において、前記ダクト部における前記排気部と吸気部との間には、該ダクト部の内部空間の一部を開放して気流の通過を許容した状態で仕切る発泡部材からなる吸音部材が複数設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の光書込装置において、前記吸音部材は、前記排気部と吸気部とのいずれかに設けられる気流発生手段の近傍に配置されることを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のうちの一つに記載の光書込装置を画像形成装置に用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、回転多面鏡囲繞部側に形成された開放部とこれに連通する開口部を備えたダクト部を備えることにより回転多面鏡囲繞部内での熱がダクト部側に排出され、しかも連通部でが遮蔽部材により外部と遮蔽され手いることにより回転多面鏡から発生する騒音を外部に漏洩させないようにすることが可能となる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、遮蔽部材が回転多面鏡囲繞部側に設けられている補強用突起に接触させてあるので、遮蔽部材に対する回転多面鏡囲繞部側の接触圧力を利用して遮蔽部材対の密着性を高めて排熱および騒音防止特性を確保することが可能となる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、ダクト部において強制的な気流が生起されるので回転多面鏡囲繞部内で発生した熱が強制的に排出されることになり、回転多面鏡囲繞部内での放線熱特性の向上に加えて、連通部での遮蔽部材の設置により強制的な気流が生じる際の気流音も含めて騒音が外部に漏洩するのも確実に防止することが可能となる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、遮蔽部材が発泡部材であるので、吸音特性の向上を得ることが可能となる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、ダクト内に気流の通過を許容した状態で仕切る発泡部材からなる吸音部材が設けられているので、気流が吸音部材に衝突しながら迂回して移動することにより騒音の伝搬が弱められると共に衝突による振動吸収によって騒音の発生を抑制することが可能となる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、気流発生手段の近傍に吸音部材を設けているので、気流音に加えて気流発生手段からの騒音も抑制することが可能となる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、回転多面鏡囲繞部内で発生した熱を効率よく排出できることにより周辺部での温度上昇による光学素子の熱的な劣化が原因する書込不良などの不具合を解消できると共に騒音の発生も確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に示した実施例により本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明実施例による平板部材として反射ミラーを用いる光書込装置が適用される画像形成装置を示しており、同図に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0027】
図1において画像形成装置100の概略構成を説明すると、画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
図1に示す構成の画像形成装置100は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる転写紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0028】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、いま、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを対象として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk,現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、後述するように、光書込装置8が用いられる。
【0029】
転写ベルト11に対する重畳転写は、基体の厚さが50〜600μm程度の樹脂フィルムあるいはゴムで構成された転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0030】
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0031】
画像形成装置100は、各色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置8とを有している。
本実施例における光書込装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備しており、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(図1では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である)を出射して感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkに静電潜像を形成する構成とされている。なお、光書込装置8に関する構成については後で詳述する。
【0032】
画像形成装置100には、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される転写紙Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとが設けられている。
【0033】
画像形成装置100には、トナー像が転写された転写紙Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置6と、定着済みの転写紙Sを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ7と、画像形成装置100の本体上部に配設され排出ローラ7により画像形成装置100の本体外部に排出された転写紙Sを積載する排紙トレイ17と、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkとが備えられている。
【0034】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
【0035】
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
【0036】
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の転写紙Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
【0037】
定着装置6は、熱源を内部に有する定着ローラ62と、定着ローラ62に圧接された加圧ローラ63とを有しており、トナー像を担持した転写紙Sを定着ローラ62と加圧ローラ63との圧接部である定着部に通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0038】
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。クリーニング装置13はまた転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。なお、図1に示す構成の画像形成装置100では、転写ベルト11に対して各感光体ドラムで形成された画像を順次転写することで色画像が重畳されたものを2次転写ローラ5により転写紙Sに一括転写する方式であるが、これに代えて、転写ベルト11に転写紙Sを担持し、この転写紙Sを各感光体ドラムに対峙させて各色の画像を直接転写紙S上で重畳する方式とすることも可能である。
【0039】
図2は、光書込装置8を示す図であり、同図において光書込装置8は、筐体131と、保持部材としての光学素子保持部材132とを有している。
【0040】
筐体131は、後述する光学素子を防塵する機能を発揮するもので、上面開口の筐体本体131aと、筐体本体131aの開口部分を閉止する蓋カバー131b(図3参照)とから構成されている。
筐体本体131a及び蓋カバー131bは、樹脂製であり、安価で軽量な構造とされている。
蓋カバー131bには、図3において符号Lbで示すレーザー光が通過する4つの開口133が形成されており、これらの開口133にはレーザー光Lbの透過を許容して塵挨の侵入を規制する防塵部材134が取り付けられている。この防塵部材134としては、例えば、平板ガラスを用いることができる。
図2において、筐体本体131aの側面には、筐体131を本体のフレームに連結するための連結部135が形成され、この連結部135をフレームに形成された凹部(図示されず)に嵌合させることにより、光書込装置8が本体に連結される。
【0041】
光学素子保持部材132は、本体のフレームと同じ材料である金属製、具体的には鉄で形成された枠状部材であり、略平行に対向する一対の端部保持部材としての側面部132aと、側面部132aの略中央部において各側面部132aを連結する連結部材としてのステー132bとを有している。光学素子保持部材132は金属製、具体的には鉄製であるため、その線膨張係数は樹脂で形成された筐体131の線膨張係数より小さい。
光学素子保持部材132は、筐体131内に収容され、図示しないネジにより、筐体131に、その同一内側面の2箇所において固定されている。
【0042】
光書込装置8は、各色の書込光たる光ビームを発振する4つの光源としてのLDユニットたる光源ユニット141Y、141C、141M、141Bkと、各光源ユニット141Y、141C、141M、141Bkから出射されたビームを対称な2方向に振り分けて偏向し走査する偏向手段として光偏向器である光偏向器142と、回転多面鏡142が偏向走査した光ビームを感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk(図3参照)の被走査面上で所望の大きさに結像させる一対のfθレンズである走査レンズ143とを有している。
【0043】
また、光源ユニット141Y、141C、141M、141Bkと回転多面鏡142との間には、面倒れ補正用のアパーチャ152、シリンダレンズ153が配置されている。
【0044】
本実施例においては、回転多面鏡142における片側から2つの光ビームを独立してそれぞれ入射させるための構成として、片側に対応する光源ユニットから回転多面鏡142に至る光ビームの入射路に、折返しミラー145aを設ける入射路と折り返しミラー145aを設けない入射路とが設定されている。これにより、回転多面鏡142に対する主走査方向での入射角度を片側に入射する光ビーム同士で異ならせることができ、光ビームを成形してスポット照射位置である感光体ドラムに対する結像手段をなすfθレンズを用いた走査レンズ143からの光ビームを発散させるようになっている。この結果、光偏向器145aに対して入射する2つの光ビームが主走査方向で互いに分離されることとなる。このように、回転多面鏡142に対する片側に対応する2つの光ビームを分離させることにより、fθレンズからなる走査レンズ143を厚さ方向に重ねた場合でもそれぞれの走査レンズ143に対して光ビームを発散させることが可能となる。従って、走査レンズ143を高さ方向に間隔を置いて独立した光ビームを出射させる場合と違って、走査レンズ143の厚さ方向での設置スペースを低減することができる。
【0045】
しかも、走査レンズ143と同様に、厚さ方向で各光ビームを独立して入射する回転多面鏡142においても同じ入射面での入射角を異ならせるだけの簡単な構成により異なる方向に光ビームを発散させることができるので、回転多面鏡142の厚さ方向の丈を大きくする必要がなくなる。これにより、厚さ方向での丈を大きくした場合に発生する駆動モータへの回転負荷の増大化を防止して高速回転を可能にすることができる。
【0046】
一方、折り返しミラーは、上述した回転多面鏡142への入射路のみを対象とするのでなく、これ以外にも感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkへの入射路にも、図2において符号145bで示すように設けられている。
従って、アパーチャ152、シリンダレンズ153、走査レンズ143、折返しミラー145a、145bは、各ビームが経る各組において、当該ビームを感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの被走査面に結像させるための光学素子群を形成している。
【0047】
光学素子保持部材132は、光書込装置8に備えられた光学部材すなわち光源ユニット141Y、141C、141M、141Bk、アパーチャ152、シリンダレンズ153、回転多面鏡142、走査レンズ143、折返しミラー145a、145b、同期検知光学系素子144のうち、折返しミラー145bのみを保持し、その他の光学部材は、筐体131に保持されている。
【0048】
これにより、光学素子保持部材132は、上述した光学素子群を構成する複数の光学素子たるアパーチャ152、シリンダレンズ153、走査レンズ143、折返しミラー145a、145bのうち、折返しミラー145bのみを、被保持光学素子として保持している。
各折り返しミラー145bは長尺形状のミラーであり、光学素子保持部材132は、側面部132aにおいて、各折り返しミラー145bの各端部を保持している。
【0049】
筐体131は、保持部131cの上面に、上述の光学部材のうちアパーチャ152、シリンダレンズ153、回転多面鏡142、走査レンズ143、折り返しミラー145a、同期検知光学系素子144を保持している。
【0050】
筐体131は、光書込装置8に備えられた光学部材すなわち光源ユニット141Y、141C、141M、141Bk、アパーチャ152、シリンダレンズ153、回転多面鏡142、走査レンズ143、折返しミラー145a、145b、145c、同期検知光学系素子144のすべてを収容し、これらを防塵している。なお、光源ユニット141Y、141C、141M、141Bkにおいて符号147で示す部材は、半導体レーザから射出された発散光を略平行化するコリメートレンズを示している。
【0051】
光偏向器として用いられる回転多面鏡142は、2段に分割して設けられ、20,000〜50,000rpmの高速で回転させる駆動手段としてのポリゴンモータ150により駆動されるようになっており、ポリゴンモータ150は図示しない駆動回路により回転制御されるようになっている。回転多面鏡142の上方で、回転多面鏡142に対向する位置には、ステー132bが位置している。
【0052】
回転多面鏡142の周囲は、後述するが、30,000rpmを超える高速回転時に発生する騒音漏洩防止のための防音ガラス等で構成された回転多面鏡囲繞部材200によって底面部を除いた範囲が密封されている。
【0053】
同期検知光学系素子144はそれぞれ、同期検知用ミラー144aと、結像レンズ144bと、光電素子144cと、光電素子144cを一体に有する電気回路基板144dと、これら同期検知用ミラー144a、結像レンズ144b、光電素子144cおよび光電素子144を保持する図示しない検知光学系保持部材とを有している。
【0054】
このような構成の光書込装置8においては、画像形成装置100の外部、たとえばパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、ファクシミリの受信部等の画像データ出力装置から受信し入力された、画像情報に対応する色分解された画像データを光源駆動用の信号に変換し、それに従い各光源ユニット41Y、41C、41M、41Bk内の半導体レーザ46を駆動してビームを出射する。なお、画像形成装置100がスキャナー等の原稿読取装置を備えている場合には、原稿読取装置において読み取った画像に基づき、その画像情報に対応する色分解された画像データを光源駆動用の信号に変換し、各半導体レーザを駆動してビームを出射する。
【0055】
各光源ユニット141Y、141C、141M、141Bkから出射された光ビームは、アパーチャ152、シリンダレンズ153、折返しミラー145a(光源ユニット141Y、141Kから出射されたビームのみ)を介して回転多面鏡142に至り、ポリゴンモータ150で等速かつ高速に回転されている回転多面鏡142によって対称な2方向に偏向走査される。このとき、片側に位置する2つの光源ユニットからの光ビームは、折り返しミラー145aにより反射されるビームがこのミラー145aを介さないで回転多面鏡142に入射する光ビームと主走査方向での入射角を異ならせることで異なる方向に発散させることになる。
【0056】
回転多面鏡142で2ビームずつ2方向に偏向走査された光ビームは、走査レンズ143をそれぞれ通過し、折返しミラー145bにより折り返され、さらに光源ユニット141C、141Mから出射されたビームのみ折返しミラー145cにより折り返され、防塵部材134を透過して、レーザー光Lとして感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk上にスポット照射されて静電潜像を書き込む。このとき、4つのレーザー光Lの感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対する照射角度は、ほぼ同一である。
【0057】
一方、書込み開始のタイミングを決定するための同期検知光学系素子144は、走査レンズ143を通過したビームを同期検知用ミラー144aで折り返して結像レンズ144bを経て光電素子144cにて受光し、走査開始の同期信号を出カする。ここで、同期検知の本来の意味は、走査光のタイミングを取ることであるので、同期検知光学系素子44は、通常走査に先立ってビームを受光するように設置されていれば良いが、更に、1走査の速度あるいは時間の変動を検知するために、走査後端においても検知するようにしても良く、本実施例では、そのような、走査の前後で同期を取る構成を採用している。
【0058】
本実施例では、回転多面鏡142の支持部に特徴がある。以下、この構成について説明する。
図4は、回転多面鏡142を抽出して示す模式図であり、同図において、回転多面鏡142は、底面を除く空間を密閉可能なハウジングで構成された回転多面鏡囲繞部200の内部に配置されており、回転多面鏡囲繞部200は、底面が光学素子保持部材132に載置された状態で一体化されている。
【0059】
回転多面鏡囲繞部200の底面側は開放されており、この開放面に対向する光学素子保持部材132の底面および筐体131の底面には、ポリゴンモータ150の支持用架橋部を除く範囲で図4を示す紙面の上方側から見た平面視において環状とされた貫通孔201が形成されており、これにより回転多面鏡保持部材200は、一部が開放された空間を構成している。
【0060】
回転多面鏡囲繞部200における開放部をなす貫通孔201には、着脱可能なダクト部材210が対面できるようになっている。
ダクト部材210は、貫通部201に連通可能な平面視において環状の開口部210aを備えるとともに、開口部210aとは別の位置で開口部210aに沿って移動する方向に相当する気流方向両端に排気部210bおよび吸気部210cをそれぞれ備えた空洞部材で構成されている。
【0061】
ダクト部材210における開口部210aと、これに対峙する貫通孔201との間には、遮蔽部材211が配置されており、開口部210aと貫通孔201との連通部が遮蔽部材211を介して外部と遮断された状態で連結されている。
本実施例では、遮蔽部材211として回転多面鏡囲繞部200の振動を吸収緩和して音波の伝搬を阻止できる発泡部材が用いられている。
【0062】
ダクト部材210は、図5に示すように、光書込装置8における回転多面鏡囲繞部200の貫通孔201に対して開口部210aが対峙する状態となるように挿入され、このとき、遮蔽部材211を貫通孔201と開口部210aとの対向面近傍およびポリゴンモータ150の支持用架橋部に配置することで連通部と外部とが遮蔽されることになる。なお、図5においては、ダクト部材210における開口部210aが、回転多面鏡囲繞部200における貫通部201の形態に対応させてポリゴンモータ150の支持用架橋部に対応する位置を除く開口部の形態としているが、これに限らず、支持用架橋部に対応する部分を持たないで環状ではなく円形の孔形状とすることも可能である。
【0063】
遮蔽部材211は、図6に示すように、回転多面鏡囲繞部200が装填されている筐体本体131aの底面に設けてあるリブなどの補強用突起部のうちで、貫通孔201の周縁近傍あるいはポリゴンモータ150の支持用架橋部に位置する突起部131dに接触した状態で配置され、ダクト部材210側で受け止められるようになっている。このため、補強用突起131dが遮蔽部材211に食い込むように筐体130側を配置することで連通部において回転多面鏡囲繞部200が装填されている側である筐体131と遮蔽部材211との密着性が高められて外部との遮蔽効果が高められることになる。
【0064】
なお、図7はダクト部材211を回転多面鏡囲繞部200が装填されている筐体120から取り外した状態を示している。
【0065】
本実施例は以上のような構成であるから、図4に示すように光書込装置8の外部からダクト部材210が光書込装置8に設けられている貫通孔201に対して開口部201Aが対峙する状態で画像形成装置100の内部に挿入され、図5に示すように、貫通部201が遮蔽部材211を介して開口部210aと連結される。これにより、回転多面鏡囲繞部200の内部で発生した熱気は貫通部201を介してダクト部材210内に排出できる流路が構成されるのでダクト部材210内に排出されることができる。この結果、回転多面鏡囲繞部200の内部での温度上昇が抑えられることにより軸受け部での温度上昇による潤滑剤の熱的劣化などの不具合を未然に防止することができる。
【0066】
一方、ダクト部材210における開口部210aが回転多面鏡囲繞部200における貫通孔201に対して遮蔽部材211を用いて連結していることにより回転多面鏡囲繞部200内で発生した回転多面鏡142の風切り音が外部に漏洩するのを防止することができる。
【0067】
ところで、ダクト部材210における開口部210aに対して遮蔽部材211を介して回転多面鏡囲繞部200の貫通孔201と連結しただけの場合には、回転多面鏡囲繞部200の内部からの熱気の流れ出し状態がダクト部材210内に存在する空気との密度の違い、つまり温度による膨張度合いによる空気密度の違いのみに依存する。このため、回転多面鏡囲繞部200内の熱気が円滑に流れにくい場合も考えられる。そこで、本実施例では、回転多面鏡囲繞部200内の熱気を強制的に排出する構成を備えることがある。
【0068】
図4においてダクト部210には、その排気部210bおよび吸気部210cのうちのいずれかに相当する排気部210bにファン212が設けられており、ファン212の回転により、図5において矢印で示すように、ダクト部210内に強制的な気流を生起させるようになっている。なお、ファン212は、排気部210b側に配置される場合にはダクト210内の空気を吐出する形式が用いられる、吸気部210c側に配置される場合には外気を取り込む形式が用いられる。
【0069】
本実施例では、ダクト部材210における排気部210bおよび吸気部210cは、外部との連通部であることから、回転多面鏡囲繞部200内からの騒音が漏洩するのを防止するための発泡部材からなる吸音部材213,214がそれぞれ設けられている。
【0070】
ダクト部材210は、内部空間内での空気を整流させるのではなく迂回させた状態で移動させるために気流の流動方向に沿ってダクト部材210の内部空間の一部を開放して気流の通過を許容した状態で仕切ることができる仕切壁用吸音部材215が気流方向に沿って複数設けられており、仕切壁用吸音部材215は発泡部材で構成されている。
仕切壁用吸音部材215は、気流の通過を許容する部分が気流の移動方向と直角な方向で相対する位置となる配置構成とされており、これによりダクト部材210の内部を流れる空気は仕切壁用吸音部材215に衝突することで緩衝されて振動波の伝搬が弱められて騒音の漏洩が抑制されることになる。しかも、ダクト部材210の内部に吐出ファン12による強制的な気流を生起させているので、ダクト部材210の内部圧と回転多面鏡囲繞部200の内部圧との違いにより回転多面鏡囲繞部200内の熱気が強制的にダクト部材210内に流れ出ることになる。つまり、ダクト部材210の内部に流速が発生することで回転多面鏡囲繞部200内が負圧化傾向となるので、回転多面鏡囲繞部200の内部からの空気が円滑に流出できるようになる。
【0071】
次の本実施例の要部変形例について説明する。
図8は、ダクト部材210に設けられている吐出ファン212の配置位置を図4に示した場合と異なる例を示しており、同図において、吐出ファン(便宜上符号212’で示す)は、排気部210bではなく、開口部210aの近傍に配置されている。
この構成においては、排気部210bにおいて外部への騒音の漏洩を防止するための開口部用吸音部材(便宜上、符号213’で示す)が配置されている。
【0072】
この構成によれば、回転多面鏡囲繞部200に近い位置で吐出ファン212’による排気が行われるので、回転多面鏡囲繞部200内からの排気がより円滑に行われ、しかも、ダクト部材210における排気部210bよりも内側に騒音源となる吐出ファン212’が配置されることで排気部210Bに設けられている開口部用吸音部材213’により吐出ファン212’からの騒音を外部に漏洩させる機会を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】発明の実施例による光書込装置が適用される画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明実施例による光書込装置に装備されている部材を説明するための図である。
【図3】本発明実施例による光書込装置に用いられる筐体の構成を説明するための図である。
【図4】本実施例による光書込装置の要部構成を説明するための模式図である。
【図5】図4に示した光書込装置における要部に用いられるダクト部材の一態様を説明するための模式図である。
【図6】図5中、符号(6)で示す方向の模式的な矢視図である。
【図7】図6に示した矢視図におけるダクト部材を取り外した状態を示す図である。
【図8】図5に示した構成の一部変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
8 光書込装置
100 画像形成装置
131 筐体
131d 補強用突起
132 光学素子保持部材
142 回転多面鏡
200 回転多面鏡囲繞部材
201 開放部である貫通孔
210 遮蔽部材
210a 開口部
210b 排気部
210c 吸気部
211 遮蔽部材
212’、212’ 吐出ファン
213,214 吸音部材
213’ 開口両吸音部材
215 仕切壁用吸音部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光ビームを回転多面鏡により光偏向させて走査する構成を備えた光書込装置において、
回転自在の回転多面鏡の周辺部に位置し、一部が開放された空間で構成されている回転多面鏡囲繞部と、
前記回転多面鏡囲繞部の開放部に対して着脱可能であって、装着時に連通する開口部が形成されているダクト部とを備え、
前記回転多面鏡囲繞部側の開放部と前記ダクト側の開口部とはこれら連通部を外部と遮蔽する遮蔽部材を介して連続させた構成であることを特徴とする光書込装置。
【請求項2】
請求項1記載の光書込装置において、
前記遮蔽部材は、前記連通位置で前記回転多面鏡囲繞部側に設けられている補強用突起部と接触した状態で配置されていることを特徴とする光書込装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光書込装置において、
前記ダクト部には、前記回転多面鏡囲繞部側の開放部と連通可能な開口部とは異なる位置に排気部および吸気部が設けられ、これら排気部および吸気部の途中に前記開口部が形成されるとともに前記排気部もしくは吸気部のいずれかに気流発生手段が備えられていることを特徴とする光書込装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの一つに記載の光書込装置において、
前記遮蔽部材として発泡部材が用いられることを特徴とする光書込装置。
【請求項5】
請求項4記載の光書込装置において、
前記ダクト部における前記排気部と吸気部との間には、該ダクト部の内部空間の一部を開放して気流の通過を許容した状態で仕切る発泡部材からなる吸音部材が複数設けられていることを特徴とする光書込装置。
【請求項6】
請求項5記載の光書込装置において、
前記吸音部材は、前記排気部と吸気部とのいずれかに設けられる気流発生手段の近傍に配置されることを特徴とする光書込装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちの一つに記載の光書込装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−195288(P2006−195288A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8281(P2005−8281)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】