説明

光発電装置及びその製造方法

【課題】安価な材料を用いても高い発電効率を得ることができる光発電装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属基板1は、例えば圧延再結晶集合組織を有する銅又は銅合金基板である。この銅又は銅合金基板では、数十μmの大きさの複数の単結晶が、その表面の結晶方位を揃えて並んでいる。この結晶方位のずれは5度以内である。金属電極2は、例えばニッケル膜、ニッケル合金膜、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜である。この金属電極2は、めっき法により金属電極1上に形成する。n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4は、エピタキシャル成長法により金属電極2上に形成する。金属基板1の表面における結晶方位のずれが5度以内であるため、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4の結晶方位のずれも極めて小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等に好適な光発電装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の一種として、薄膜シリコン太陽電池とよばれるものがある。図5は、従来の薄膜シリコン太陽電池の構造を示す断面図である。
【0003】
この従来の薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板101上に透明電極102が形成され、その上にn型アモルファスSi薄膜103及びp型アモルファスSi薄膜104がこの順で形成されている。更に、p型アモルファスSi薄膜104上に透明電極105及び金属電極106が形成され、金属電極106上に保護層107が形成されている。
【0004】
このような薄膜シリコン太陽電池では、n型アモルファスSi薄膜103及びp型アモルファスSi薄膜104が光電変換層として機能し、太陽光等の光から発電を行う。
【0005】
しかしながら、十分な発電効率を得ることができず、発電効率の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−357660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安価な材料を用いても高い発電効率を得ることができる光発電装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0009】
本発明に係る第1の光発電装置の製造方法は、表面の結晶方位のずれが5度以内の金属基板上に金属電極を形成する工程と、前記金属電極上に光電変換層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第1の光発電装置は、表面の結晶方位のずれが5度以内の金属基板と、前記金属基板上に形成された金属電極と、前記金属電極上に形成された光電変換層と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第2の光発電装置は、{100}<001>集合組織を有し、鉄、鉄合金、銅、若しくは銅合金からなる配向金属テープ、又は{110}<001>集合組織を有し、鉄合金からなる配向金属テープと、前記配向金属テープ上に形成された導電性酸化物層と、前記導電性酸化物層上に形成された半導体を含む光電変換層と、前記光電変換層上に形成された透明導電性物質層と、前記透明導電性物質層上に形成された表面集電電極と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る第2の光発電装置の製造方法は、{100}<001>集合組織を有し、鉄、鉄合金、銅、若しくは銅合金からなる配向金属テープ上、又は{110}<001>集合組織を有し、鉄合金からなる配向金属テープ上に導電性酸化物層を形成する工程と、前記導電性酸化物層上に半導体を含む光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層上に透明導電性物質層を形成する工程と、前記透明導電性物質層上に表面集電電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価な金属基板等を用いたとしても、光電変換層の結晶性を良好なものとすることができるため、高い発電効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池の構造及び製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池の構造及び製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池の構造及び製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池の構造及び製造方法を示す断面図である。
【図5】従来の薄膜シリコン太陽電池の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池(光発電装置)の構造及び製造方法を示す断面図である。
【0017】
本実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池では、金属基板1上に金属電極2が形成され、その上にn型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4がこの順で形成されている。更に、p型多結晶Si薄膜4上に透明電極5が形成され、その上に保護層6が形成されている。
【0018】
金属基板1は、例えば圧延再結晶集合組織を有する銅若しくは銅合金基板、又は鉄又は鉄合金基板である。この銅若しくは銅合金基板、又は鉄又は鉄合金基板では、数十μmの大きさの複数の単結晶が、その表面の結晶方位を揃えて並んでいる。このような金属基板1としては、例えば結晶方位が2軸方向とも所定の範囲内、例えば5度以内で揃った2軸配向金属テープを用いることができる。
【0019】
金属電極2は、例えばニッケル膜、ニッケル合金膜、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜である。この金属電極2は、めっき法により金属電極1上に形成する。金属電極2の厚さは、例えば100nm乃至500nmである。金属電極2を構成する結晶粒は、金属基板1を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。従って、金属電極2は2軸配向めっき層となっている。
【0020】
n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4は、エピタキシャル成長法により金属電極2上に形成する。n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4の厚さは、例えばいずれも50nm乃至1000nmである。n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4を構成する複数の単結晶体は、金属電極2を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。つまり、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4を構成する複数の単結晶体は、金属基板1を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。従って、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4は2軸配向多結晶シリコン膜となっている。金属基板1の表面における結晶方位のずれが5度以内であるため、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4の結晶方位のずれも極めて小さくなる。なお、金属電極2がニッケル膜又はニッケル合金膜である場合、n型多結晶Si薄膜3の形成の際に、一旦シリサイドが生成された後に、このシリサイドが分解されるため、比較的低温の熱処理で良質の薄膜を得ることができる。
【0021】
透明電極5は、例えばSn0.95Sb0.052からなる。透明電極5の厚さは、例えば100nm乃至1000nmであるが、特に限定されない。なお、透明電極5の材料として、酸化インジウムスズ(ITO)、又はAlがドーピングされたZnOを用いてもよい。
【0022】
保護層6の厚さは、例えば窒化珪素からなり、その厚さは200nm程度である。保護膜6の形成では、例えば、透明電極5の表面を化学エッチングしてテクスチャ構造を形成した後、この上に室温で反応性スパッタリング法により窒化珪素膜を形成する。
【0023】
このように構成された太陽電池では、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4が光電変換層として機能し、光起電力を得ることができる。また、n型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4の結晶方位のずれが極めて小さく、結晶性が良好であるため、キャリアの再結合が生じにくく、高い発電効率を得ることができる。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池(光発電装置)の構造及び製造方法を示す断面図である。
【0025】
第2の実施形態では、第1の実施形態におけるn型多結晶Si薄膜3及びp型多結晶Si薄膜4の間に、i型多結晶Si薄膜7が形成されている。i型多結晶Si薄膜7の厚さは、例えば100nm乃至10000nmであり、好ましくは1000nm乃至2000nmである。i型多結晶Si薄膜7を構成する複数の単結晶体は、金属電極2を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。つまり、i型多結晶Si薄膜7を構成する複数の単結晶体は、金属基板1を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。従って、i型多結晶Si薄膜7は2軸配向多結晶シリコン膜となっている。金属基板1の表面における結晶方位のずれが5度以内であるため、i型多結晶Si薄膜7の結晶方位のずれも極めて小さくなる。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0026】
このように構成された太陽電池では、n型多結晶Si薄膜3、i型多結晶Si薄膜7及びp型多結晶Si薄膜4が光電変換層として機能し、光起電力を得ることができる。また、n型多結晶Si薄膜3、i型多結晶Si薄膜7及びp型多結晶Si薄膜4の結晶方位のずれが極めて小さく、結晶性が良好であるため、キャリアの再結合が生じにくく、高い発電効率を得ることができる。
【0027】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図3は、本発明の第3の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池(光発電装置)の構造及び製造方法を示す断面図である。
【0028】
第3の実施形態では、第2の実施形態における金属電極2に代えて導電性酸化物層12が形成されている。導電性酸化物層12の厚さは、例えば10nm乃至1000nmであり、好ましくは10nm乃至50nmである。導電性酸化物層12の材料としては、例えば、(In1-XSnX23+X(0≦X≦0.2)、(Ti1-XNbX)O2+X/2(0≦X≦0.3)、Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2(0≦X≦0.3)、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2(0≦X≦0.3、0≦Y≦1)、及び(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H(X+Y+Z=1、0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、A+B+C+D+E+F+G=1、0≦A≦1、0≦B≦1、0≦C≦1、0≦D≦1、0≦E≦1、0≦F≦1、0≦G≦1、−0.1≦H≦0.1)等が挙げられる。導電性酸化物層12は、金属基板1を構成する結晶粒の方位を引き継いでいる。従って、金属基板1の表面における結晶方位のずれが5度以内であるため、導電性酸化物層12の結晶方位のずれも極めて小さくなる。このため、n型多結晶Si薄膜3、i型多結晶Si薄膜7及びp型多結晶Si薄膜4の結晶方位のずれも極めて小さくなる。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0029】
このような第3の実施形態によっても第2の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0030】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図4は、本発明の第4の実施形態に係る薄膜シリコン太陽電池(光発電装置)の構造及び製造方法を示す断面図である。
【0031】
第4の実施形態では、第2の実施形態における金属電極2とn型多結晶Si薄膜3との間に導電性酸化物層12が形成されている。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0032】
このような第4の実施形態によっても第2の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0033】
なお、金属基板1の表面は完全に揃っている必要はないが、その結晶方位のずれは、結晶のx軸方向、y軸方向及びz軸方向のいずれの方向においても、5度以内であることが好ましい。これは、20%以上の高い発電効率を得るためであり、ずれが5度を超えると、発電効率が10%程度まで低下することがある。
【0034】
また、光電変換層の材料として、Siに代えて、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、又はCuInS2を用いてもよい。
【0035】
また、これらの実施形態における金属電極2及び導電性酸化物層12の双方が設けられていなくてもよい。
【0036】
次に、本願発明者が実際に行った種々の実験について説明する。
【0037】
[実験1]
純度が99質量%のFeの単結晶を、{100}面が上下面に、長手方向に[001]方向が平行となるように切り出し、25℃において、中間焼鈍なしで85%の圧延加工を施して、厚さが0.1mmの圧延テープを作製した。次いで、この圧延テープを還元雰囲気中、1000℃で20時間熱処理して、{100}<001>集合組織を有する配向鉄テープ(試料No.1)を得た。
【0038】
Fe:97質量%−Si:3質量%合金の単結晶を、{100}面が上下面に、長手方向に[001]方向が平行となるように板状に切り出し、25℃において、中間焼鈍なしで85%の圧延加工を施して、厚さが0.1mmの圧延テープを作製した。次いで、この圧延テープを還元雰囲気中、1000℃で20時間熱処理して、{100}<001>集合組織を有する配向鉄合金テープ(試料No.2)を得た。
【0039】
Fe:97%−Si:3%合金の単結晶を、{110}面が上下面に、長手方向に[001]方向が平行となるように板状に切り出し、25℃において、中間焼鈍なしで85%の圧延加工を施して、厚さが0.1mmの圧延テープを作製した。次いで、この圧延テープを還元雰囲気中、950℃で20時間熱処理して、{110}<001>集合組織を有する配向鉄合金テープ(試料No.3)を得た。
【0040】
純度が99.9質量%のCuの板を、25℃において、中間焼鈍なしで97%の圧延加工を施して、厚さが0.1mmの圧延テープを作製した。次いで、この圧延テープを還元雰囲気中、700℃で5時間熱処理して、{100}<001>集合組織を有する配向銅テープ(試料No.4)を得た。
【0041】
Cu:90質量%−Ni:10質量%合金の板を、100℃において、中間焼鈍なしで97%の圧延加工を施して、厚さが0.1mmの圧延テープを作製した。次いで、この圧延テープを還元雰囲気中、800℃で5時間熱処理して、{100}<001>集合組織を有する配向銅合金テープ(試料No.5)を得た。
【0042】
その後、このようにして得られた試料No.1〜5上に、プラズマ化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法により、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を形成した。このときの形成条件としては、SiH4/H2流量比を1/20とし、配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とし、パワー密度を0.5W/cm2とし、圧力を0.3Torrとした。
【0043】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、又は200℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、ほとんど結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を300℃、400℃、又は500℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、多結晶シリコン膜となっていた。多結晶シリコンの構成要素である単結晶体は、下地となる配向金属テープの結晶方位に少し影響を受けていた。即ち、試料No.1〜3を用いた場合には、鉄又は鉄合金の結晶の{110}面に対して、50%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行となるような方向に多結晶シリコンが配向していた(以下、このような結晶配向状態を1軸配向と呼ぶことがある)。また、試料No.4及び5を用いた場合には、銅又は銅合金の結晶の{100}面に対して、50%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行となるような方向に多結晶シリコンが配向していた。
【0044】
その一方で、配向金属テープの長手方向に対して、シリコン結晶粒の方向が揃ってはいないことが、X線回折法の一種であるX線ポールフィギュア法により確認できた。また、成膜温度を600℃以上とした試料では、シリコン膜が鉄又は銅と反応したことも確認できた。
【0045】
これらの実験結果から、配向金属テープ上に直接、シリコン膜を形成した場合には、単結晶のように結晶方位が2軸とも揃った多結晶シリコン膜は得られないことが分かる。
【0046】
また、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、又は500℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化したが、得られたシリコン膜は1軸配向しているのみで、2軸配向はしていなかった。
【0047】
[実験2]
実験1で作製した試料No.1〜5(配向金属テープ)上に、厚さが1μmのNi層を鍍金して5種類のNi鍍金配向金属テープを得た。試料No.1〜5から得たNi鍍金配向金属テープを、順に試料No.6〜10とする。鍍金液にはワット溶液を使用した。得られたNi鍍金層は下地の配向金属テープからエピタキシャル成長していて、95%以上のNi結晶が同じ方向を向いて揃っていることが確認できた。
【0048】
その後、このようにして得られた試料No.5〜10上に、プラズマCVD法により、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を形成した。このときの形成条件としては、SiH4/H2流量比を1/20とし、Ni鍍金配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とし、パワー密度を0.5W/cm2とし、圧力を0.3Torrとした。
【0049】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、又は200℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、ほとんど結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を300℃、400℃、又は500℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、多結晶シリコン膜となっていた。多結晶シリコンの構成要素である単結晶体は、下地となるNi鍍金配向金属テープの結晶方位に少し影響を受けていた。即ち、Ni鍍金層のNi結晶の{100}面に対して、50%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行となるような方向に多結晶シリコンが配向していた。
【0050】
その一方で、Ni鍍金配向金属テープの長手方向に対して、シリコン結晶の方向が揃ってはいないことが、X線ポールフィギュア法により確認できた。また、成膜温度を600℃として形成したシリコン膜の結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、Ni鍍金配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。Ni鍍金配向金属テープの温度を700℃以上としてシリコン膜を形成した試料では、シリコン膜がNi又は鉄若しくは銅と反応したことも確認できた。
【0051】
これらの実験結果から、配向金属テープ上に金属鍍金層を形成し、その上にシリコン膜を形成した場合には、600℃の成膜温度以外では、単結晶のように結晶方位が2軸とも揃った多結晶シリコン層は得られないことが分かる。
【0052】
[実験3]
実験1において、配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃〜500℃としてシリコン膜を形成した試料を、水素ガス雰囲気中で1時間、600℃に保持した。
【0053】
その後に観察を行ったところ、いずれの試料においても、配向金属テープとシリコン膜とが反応したことが確認された。
【0054】
[実験4]
実験2において、Ni鍍金配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃〜500℃としてシリコン膜を形成した試料を、水素ガス雰囲気中で1時間、600℃に保持した。
【0055】
その後に走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの試料においても、シリコン膜を構成しているシリコン結晶粒の粒径が100nm〜10μmと大きく成長したことが確認できた。また、X線ポールフィギュア法により評価したところ、95%以上のシリコン結晶粒の向きが5度以内で、単結晶のように同一の方向を向いていることが確認できた。
【0056】
[実験5]
実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)及び実験2で得た5種類の試料(試料No.6〜10)上に、RFマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの(In1-XSnX23+X層(X=0,0.1,0.2,0.3)を形成して40種類の(In1-XSnX23+X層付き配向金属テープを得た。このとき、ターゲットとして、(In1-XSnX23+X焼結体(X=0,0.1,0.2,0.3)を用いた。また、スパッタリングガスとして、アルゴン:97体積%及び水素:3体積%の混合ガスを用い、圧力を3Pa、パワー密度を15W/cm2、各試料の温度(成膜温度)を400℃とした。形成された(In1-XSnX23+X層の組成を化学分析したところ、使用したターゲットと同一組成であることが確認できた。
【0057】
その後、このようにして得られた40種類の試料上に、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このとき、シリコン原料として、半導体グレードのノンドープシリコンウェハを粉砕したものを用いた。また、真空度を2×10-7Paの超高真空とし、(In1-XSnX23+X層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とした。
【0058】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を500℃、600℃、又は700℃として形成したシリコン膜は結晶化していたものの、シリコン結晶粒は1軸配向のみしている状態であった。成膜温度を800℃、900℃、又は1000℃として形成したシリコン膜のシリコン結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、(In1-XSnX23+X層付き配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。
【0059】
[実験6]
実験5において、(In1-XSnX23+X層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化し、シリコン結晶粒が2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。
【0060】
[実験7]
実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)及び実験2で得た5種類の試料(試料No.6〜10)上に、RFマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの(Ti1-XNbX)O2+X/2層(X=0,0.1,0.2,0.3)を形成して40種類の(Ti1-XNbX)O2+X/2層付き配向金属テープを得た。このとき、ターゲットとして、(Ti1-XNbX)O2+X/2焼結体(X=0,0.1,0.2,0.3)を用いた。また、スパッタリングガスとして、アルゴン:97体積%及び水素:3体積%の混合ガスを用い、圧力を3Pa、パワー密度を15W/cm2、各試料の温度(成膜温度)を600℃とした。形成された(Ti1-XNbX)O2+X/2層の組成を化学分析したところ、使用したターゲットと同一組成であることが確認できた。
【0061】
その後、このようにして得られた40種類の試料上に、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このとき、シリコン原料として、半導体グレードのノンドープシリコンウェハを粉砕したものを用いた。また、真空度を2×10-7Paの超高真空とし、(Ti1-XNbX)O2+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とした。
【0062】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を500℃、600℃、又は700℃として形成したシリコン膜は結晶化していたものの、シリコン結晶粒は1軸配向のみしている状態であった。成膜温度を800℃、900℃、又は1000℃として形成したシリコン膜のシリコン結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、(Ti1-XNbX)O2+X/2層付き配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。
【0063】
[実験8]
実験7において、(Ti1-XNbX)O2+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化し、シリコン結晶粒が2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。
【0064】
[実験9]
実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)及び実験2で得た5種類の試料(試料No.6〜10)上に、RFマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmのSr(Ti1-XNbX)O3+X/2層(X=0,0.1,0.2,0.3)を形成して40種類のSr(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープを得た。このとき、ターゲットとして、Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2焼結体(X=0,0.1,0.2,0.3)を用いた。また、スパッタリングガスとして、アルゴン:97体積%及び水素:3体積%の混合ガスを用い、圧力を3Pa、パワー密度を15W/cm2、各試料の温度(成膜温度)を750℃とした。形成されたSr(Ti1-XNbX)O3+X/2層の組成を化学分析したところ、使用したターゲットと同一組成であることが確認できた。
【0065】
その後、このようにして得られた40種類の試料上に、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このとき、シリコン原料として、半導体グレードのノンドープシリコンウェハを粉砕したものを用いた。また、真空度を2×10-7Paの超高真空とし、Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とした。
【0066】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を500℃、600℃、又は700℃として形成したシリコン膜は結晶化していたものの、シリコン結晶粒は1軸配向のみしている状態であった。成膜温度を800℃、900℃、又は1000℃として形成したシリコン膜のシリコン結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。
【0067】
[実験10]
実験9において、Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化し、シリコン結晶粒が2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。
【0068】
[実験11]
実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)及び実験2で得た5種類の試料(試料No.6〜10)上に、RFマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層(X=0,0.1,0.2,0.3、Y=0.2,0.4,0.6,0.8)を形成して160種類の(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープを得た。このとき、ターゲットとして、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2焼結体(X=0,0.1,0.2,0.3、Y=0.2,0.4,0.6,0.8)を用いた。また、スパッタリングガスとして、アルゴン:97体積%及び水素:3体積%の混合ガスを用い、圧力を3Pa、パワー密度を15W/cm2、各試料の温度(成膜温度)を700℃とした。形成された(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層の組成を化学分析したところ、使用したターゲットと同一組成であることが確認できた。
【0069】
その後、このようにして得られた160種類の試料上に、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このとき、シリコン原料として、半導体グレードのノンドープシリコンウェハを粉砕したものを用いた。また、真空度を2×10-7Paの超高真空とし、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とした。
【0070】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を500℃、600℃、又は700℃として形成したシリコン膜は結晶化していたものの、シリコン結晶粒は1軸配向のみしている状態であった。成膜温度を800℃、900℃、又は1000℃として形成したシリコン膜のシリコン結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。
【0071】
[実験12]
実験11において、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化し、シリコン結晶粒が2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。
【0072】
[実験13]
実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)及び実験2で得た5種類の試料(試料No.6〜10)上に、RFマグネトロンスパッタリング法により、厚さが30nmの(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H層(X+Y+Z=1、0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、A+B+C+D+E+F+G=1、0≦A≦1、0≦B≦1、0≦C≦1、0≦D≦1、0≦E≦1、0≦F≦1、0≦G≦1、−0.1≦H≦0.1)を形成して110種類の(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H付き配向金属テープを得た。このとき、ターゲットとして、(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H焼結体を用いた。表1に、この焼結体の11種類の組成を示す。また、スパッタリングガスとして、アルゴン:97体積%及び水素:3体積%の混合ガスを用い、圧力を3Pa、パワー密度を15W/cm2、各試料の温度(成膜温度)を700℃とした。形成された(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H層の組成を化学分析したところ、使用したターゲットと同一組成であることが確認できた。
【0073】
【表1】

【0074】
その後、このようにして得られた110種類の試料上に、厚さが約1μmの非ドープシリコン膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このとき、シリコン原料として、半導体グレードのノンドープシリコンウェハを粉砕したものを用いた。また、真空度を2×10-7Paの超高真空とし、(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃とした。
【0075】
形成されたシリコン膜の観察を行ったところ、成膜温度を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したシリコン膜は、試料の種類に拘わらず、結晶化しておらず、アモルファス状態となっていた。成膜温度を500℃、600℃、又は700℃として形成したシリコン膜は結晶化していたものの、シリコン結晶粒は1軸配向のみしている状態であった。成膜温度を800℃、900℃、又は1000℃として形成したシリコン膜のシリコン結晶粒は2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。つまり、(LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H層付き配向金属テープの{100}面と95%以上のシリコン結晶粒の{100}面が平行で、かつテープ長手方向に対して95%以上のシリコン結晶粒の[001]方向が平行に揃っていた。
【0076】
[実験14]
実験13において、(Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープの温度(成膜温度)を25℃、100℃、200℃、300℃、又は400℃として形成したアモルファス状のシリコン膜の表面に、波長が248nmの紫外線レーザ光をその照射面を移動させながら照射した。この結果、全てのシリコン膜が結晶化し、シリコン結晶粒が2軸配向していることが確認され、95%以上のシリコン結晶粒の方位が5度以内に揃っていることが確認できた。
【0077】
[実験15(比較例1)]
図5に示す従来技術に沿ってpn型アモルファスシリコン太陽電池を作製した。ここでは、ガラス基板101として石英ガラス基板を用い、その上にRFスパッタリング法で透明電極102として厚さが6μmのSnO2膜を形成した。次いで、透明電極102上にプラズマ励起周波数を81.56MHzとしたプラズマCVD法によりn型アモルファスシリコン膜103及びp型アモルファスシリコン膜104をこの順で形成した。その後、p型アモルファスシリコン膜104上にRFスパッタリング法で金属電極105として厚さが1μmの結晶方位がランダムなNi層を形成した。続いて、電流取り出し用の金電極を形成し、次いで、厚さが0.5μmのSiO2膜を保護層106として形成した。
【0078】
そして、n型アモルファスシリコン膜103及びp型アモルファスシリコン膜104を光電変換層として用いてpn型アモルファスシリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、セル面積1cm2において、開放電圧が0.5V、光電変換効率が4.0%であった。
【0079】
[実験16(比較例2)]
pin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。ここでは、石英ガラス上にRFスパッタリング法で厚さが1μmの結晶方位がランダムなNi層を形成した。次いで、Ni層上にプラズマ励起周波数を81.56MHzとしたプラズマCVD法によりp型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてp型多結晶シリコン膜を形成した。その後、p型多結晶シリコン膜上にプラズマCVD法によりi型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてi型多結晶シリコン膜を形成した。続いて、i型多結晶シリコン膜上にプラズマCVD法によりn型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてn型多結晶シリコン膜を形成した。次いで、n型多結晶シリコン膜上に透明電極として、厚さが6μmのSnO2膜を形成した。その後、電流取り出し用の金電極を形成し、次いで、厚さが0.5μmのSiO2膜を保護層として形成した。
【0080】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、セル面積1cm2において、開放電圧が0.47V、光電変換効率が4.5%であった。
【0081】
[実験17(比較例3)]
pin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。ここでは、結晶方位がランダムとなっている厚さが0.1mmのNiテープの上に、プラズマ励起周波数を81.56MHzとしたプラズマCVD法によりp型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてp型多結晶シリコン膜を形成した。次いで、p型多結晶シリコン膜上にプラズマCVD法によりi型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてi型多結晶シリコン膜を形成した。その後、i型多結晶シリコン膜上にプラズマCVD法によりn型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてn型多結晶シリコン膜を形成した。続いて、n型多結晶シリコン膜上に透明電極として、厚さが6μmのSnO2膜を形成した。次いで、電流取り出し用の金電極を形成し、その後、厚さが0.5μmのSiO2膜を保護層として形成した。
【0082】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、セル面積1cm2において、開放電圧が0.47V、光電変換効率が4.4%であった。
【0083】
[実験18(比較例4)]
pn型多結晶シリコン太陽電池を作製した。ここでは、結晶方位がランダムとなっている厚さが0.1mmのNiテープの上に、プラズマ励起周波数を81.56MHzとしたプラズマCVD法によりp型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてp型多結晶シリコン膜を形成した。次いで、p型多結晶シリコン膜上にプラズマCVD法によりn型アモルファスシリコン膜を形成し、これをレーザアニール法によって結晶化させてn型多結晶シリコン膜を形成した。その後、n型多結晶シリコン膜上に透明電極として、厚さが6μmのSnO2膜を形成した。続いて、電流取り出し用の金電極を形成し、次いで、厚さが0.5μmのSiO2膜を保護層として形成した。
【0084】
そして、p型多結晶シリコン膜及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpn型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、セル面積1cm2において、開放電圧が0.45V、光電変換効率が4.2%であった。
【0085】
[実験19(実施例1)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験1で得た5種類の試料(試料No.1〜5)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。試料No.1〜5のいずれを用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は1軸配向であった。
【0086】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いて5種類のpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、5種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は6.0%〜6.5%の範囲内にあった。
【0087】
[実験20(実施例2)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験2で得た5種類の試料No.6〜10(Ni鍍金配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。試料No.6〜10のいずれを用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0088】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、5種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は9%〜10%の範囲内にあった。
【0089】
[実験21(実施例3)]
実験18(比較例4)のNiテープに代えて、実験5で得た40種類の試料((In1-XSnX23+X層付き配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験18(比較例4)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpn型多結晶シリコン太陽電池を作製した。いずれの試料を用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0090】
そして、p型多結晶シリコン膜及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpn型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、40種類のpn型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は10%〜11%の範囲内にあった。
【0091】
[実験22(実施例4)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験7で得た40種類の試料((Ti1-XNbX)O2+X/2層付き配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。いずれの試料を用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0092】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、40種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は10%〜11%の範囲内にあった。
【0093】
[実験23(実施例5)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験9で得た40種類の試料(Sr(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。いずれの試料を用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0094】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、40種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は10%〜11%の範囲内にあった。
【0095】
[実験24(実施例6)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験11で得た160種類の試料((Sr1-YCaY)(Ti1-XNbX)O3+X/2層付き配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。いずれの試料を用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0096】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、40種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は10%〜11%の範囲内にあった。
【0097】
[実験25(実施例7)]
実験17(比較例3)のNiテープに代えて、実験13で得た110種類の試料((LaXSrYCaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H付き配向金属テープ)を用い、これらの上に、実験17(比較例3)と同様の方法で、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜等を形成してpin型多結晶シリコン太陽電池を作製した。いずれの試料を用いた場合にも、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜は2軸配向していることが確認できた。
【0098】
そして、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、及びn型多結晶シリコン膜を光電変換層として用いてpin型多結晶シリコン太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、40種類のpin型多結晶シリコン太陽電池の光電変換効率は9%〜11%の範囲内にあった。
【0099】
これらの比較例1〜4及び実施例1〜7の結果から、1軸配向又は2軸配向したシリコン膜を光電変換層に有するシリコン太陽電池の光電変換効率は、アモルファスシリコン膜又は無配向多結晶シリコン膜を光電変換層に有する太陽電池より大幅に高いことが分かる。
【0100】
[実験26(実施例8)]
実験2で得た5種類の試料No.6〜10(Ni鍍金配向金属テープ)上に、Cu(In,Ga)Se2を含む光電変換層等を形成して太陽電池を作製した。そして、この太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、5種類の太陽電池の光電変換効率は10.5%〜11%の範囲内にあった。
【0101】
[実験27(実施例9)]
実験2で得た5種類の試料No.6〜10(Ni鍍金配向金属テープ)上に、Cu(In,Ga)(Se,S)2を含む光電変換層等を形成して太陽電池を作製した。そして、この太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、5種類の太陽電池の光電変換効率は10.5%〜11%の範囲内にあった。
【0102】
[実験28(実施例10)]
実験2で得た5種類の試料No.6〜10(Ni鍍金配向金属テープ)上に、CuInS2を含む光電変換層等を形成して太陽電池を作製した。そして、この太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性を測定した。この結果、5種類の太陽電池の光電変換効率は9.5%〜10%の範囲内にあった。
【符号の説明】
【0103】
1:金属基板
2:金属電極
3:n型多結晶Si薄膜
4:p型多結晶Si薄膜
5:透明電極
6:保護層
7:i型多結晶Si薄膜
12:導電性酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の結晶方位のずれが5度以内の金属基板上に金属電極を形成する工程と、
前記金属電極上に光電変換層を形成する工程と、
を有することを特徴とする光発電装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属基板として、圧延再結晶集合組織を有する銅又は銅合金基板を用いることを特徴とする請求項1に記載の光発電装置の製造方法。
【請求項3】
表面の結晶方位のずれが5度以内の金属基板と、
前記金属基板上に形成された金属電極と、
前記金属電極上に形成された光電変換層と、
を有することを特徴とする光発電装置。
【請求項4】
前記金属基板は、圧延再結晶集合組織を有する銅又は銅合金基板であることを特徴とする請求項3に記載の光発電装置。
【請求項5】
結晶方位が2軸方向とも所定の範囲内で揃った2軸配向金属テープと、
前記2軸配向金属テープ上に形成され、前記2軸配向金属テープの配向を引き継いだ結晶方位を有する複数の単結晶体から構成された2軸配向多結晶シリコン膜と、
を有し、
前記2軸配向金属テープを構成する金属結晶の結晶方位が5度以内に揃っていることを特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項6】
前記2軸配向金属テープは、銅又は銅合金から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の薄膜太陽電池。
【請求項7】
結晶方位が2軸方向とも所定の範囲内で揃った2軸配向金属テープと、
前記2軸配向金属テープ上にめっき法により形成された2軸配向めっき層と、
前記2軸配向めっき層上に形成された半導体層と、
を有し、
前記2軸配向めっき層を構成する結晶粒は、その直下に位置する前記2軸配向金属テープを構成する結晶粒と同一の方位を向いており、
前記半導体層を構成する結晶粒は、その直下に位置する前記2軸配向めっき層を構成する結晶粒と同一の配向を向いていることを特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項8】
前記2軸配向めっき層は、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されていることを特徴とする請求項7に記載の薄膜太陽電池。
【請求項9】
前記半導体層は、シリコンから構成されていることを特徴とする請求項8に記載の薄膜太陽電池。
【請求項10】
前記2軸配向金属テープを構成する金属結晶の結晶方位が5度以内に揃っていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池。
【請求項11】
{100}<001>集合組織を有し、鉄、鉄合金、銅、又は銅合金からなる配向金属テープと、
前記配向金属テープ上に形成された導電性酸化物層と、
前記導電性酸化物層上に形成された半導体を含む光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された透明導電性物質層と、
前記透明導電性物質層上に形成された表面集電電極と、
を有することを特徴とする光発電装置。
【請求項12】
{110}<001>集合組織を有し、鉄合金からなる配向金属テープと、
前記配向金属テープ上に形成された導電性酸化物層と、
前記導電性酸化物層上に形成された半導体を含む光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された透明導電性物質層と、
前記透明導電性物質層上に形成された表面集電電極と、
を有することを特徴とする光発電装置。
【請求項13】
前記配向金属テープの表面に形成された金属鍍金層を有し、
前記導電性酸化物層は、前記金属鍍金層上に形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の光発電装置。
【請求項14】
前記導電性酸化物層は、
(In1-X1SnX123+X1(0≦X1≦0.2)、
(Ti1-X2NbX2)O2+X2/2(0≦X2≦0.3)、
Sr(Ti1-X3NbX3)O3+X3/2(0≦X3≦0.3)、
(Sr1-Y1CaY1)(Ti1-X4NbX4)O3+X4/2(0≦X4≦0.3、0≦Y1≦1)、及び
(LaX5SrY2CaZ)(TiACrBMnCFeDCoENiFCuG)O3+H(X5+Y2+Z=1、0≦X5≦1、0≦Y2≦1、0≦Z≦1、A+B+C+D+E+F+G=1、0≦A≦1、0≦B≦1、0≦C≦1、0≦D≦1、0≦E≦1、0≦F≦1、0≦G≦1、−0.1≦H≦0.1)
からなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の光発電装置。
【請求項15】
前記光電変換層は、p型半導体層及びn型半導体層を有することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の光発電装置。
【請求項16】
前記光電変換層は、前記p型半導体層及び前記n型半導体層の間に位置するi型半導体層を有することを特徴とする請求項15に記載の光発電装置。
【請求項17】
前記光電変換層は、前記半導体として、Siを含有することを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の光発電装置。
【請求項18】
前記光電変換層は、前記半導体として、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、及びCuInS2からなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の光発電装置。
【請求項19】
{100}<001>集合組織を有し、鉄、鉄合金、銅、又は銅合金からなる配向金属テープ上に導電性酸化物層を形成する工程と、
前記導電性酸化物層上に半導体を含む光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層上に透明導電性物質層を形成する工程と、
前記透明導電性物質層上に表面集電電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする光発電装置の製造方法。
【請求項20】
{110}<001>集合組織を有し、鉄合金からなる配向金属テープ上に導電性酸化物層を形成する工程と、
前記導電性酸化物層上に半導体を含む光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層上に透明導電性物質層を形成する工程と、
前記透明導電性物質層上に表面集電電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする光発電装置の製造方法。
【請求項21】
{100}<001>集合組織を有し、鉄、鉄合金、銅、又は銅合金からなる配向金属テープと、
前記配向金属テープ上に形成された半導体を含む光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された透明導電性物質層と、
前記透明導電性物質層上に形成された表面集電電極と、
を有することを特徴とする光発電装置。
【請求項22】
{110}<001>集合組織を有し、鉄合金からなる配向金属テープと、
前記配向金属テープ上に形成された半導体を含む光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された透明導電性物質層と、
前記透明導電性物質層上に形成された表面集電電極と、
を有することを特徴とする光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183070(P2010−183070A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295595(P2009−295595)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】