説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】光利用効率及び光走査の安定性を損なうことなく、小型化を図ることができる光走査装置を提供する。
【解決手段】 波長分離デバイス16及び波長分離デバイス17は、それぞれ波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。そして、各波長分離面は、波長λbの光束の透過率が1%以下となるように設計されており、波長分離デバイス17は、波長分離デバイス16で反射された光束の光路上に配置されている。この場合は、波長λaの光束の一部が波長分離デバイス16で反射されても、そのほとんどは波長分離デバイス17を透過し、感光体ドラム2030bに向かうゴースト光の光量を走査光の光量の1%以下とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、複数の被走査面を光走査する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この場合、画像形成装置は光走査装置を備え、感光性を有するドラムの軸方向に光偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いてレーザ光を走査しつつ、ドラムを回転させ、該ドラムの表面に潜像を形成する方法が一般的である。
【0003】
近年、画像形成装置において、カラー化、高速化が進み、感光性を有するドラムを複数(通常は4つ)有するタンデム方式の画像形成装置が普及してきている。
【0004】
タンデム方式ではドラム数の増加に伴い画像形成装置が大型化する傾向にあり、光走査装置を含め小型化が求められている。光走査装置では、光偏向器から各ドラムに向かう複数の走査光の光路を重ね合わせることが小型化に有効である。
【0005】
例えば、特許文献1には、光源手段からの波長の異なる複数の光ビームを同一光路を通過させ、光学手段を介して光偏向器に導光し、該光偏向器で反射偏向させた該複数の光ビームを結像光学系で集光し、該複数の光ビームを波長分離手段で分離した後、各々の光ビームに対応した被走査面上に導光し、該複数の光ビームで該被走査面上を同時に光走査する光走査装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、複数の光源と、光源から発せられた光束を走査する光偏向器と、光偏向器によって走査された光束を走査面上に結像する走査光学系と、走査光学系と走査面との間に配置され各光源からの光束ごとに分離する分離手段とを有し、分離手段によって分離される各光源からの光束が、他の光源からの光束に混在する割合が各光源で異なり、分離手段と走査面との間で一部の光路中に、強度を減衰する減衰手段を配置するとともに、分離手段に入射する各光源からの光束の強度は、割合に応じて異なる光走査装置が開示されている。ここでは、複数の光源は、少なくとも2つの異なる波長帯域の光束を発する光源である。
【0007】
また、特許文献3には、走査手段と、該走査手段によって走査された合成ビームを複数の走査光に分割してそれぞれ感光体に結像させる分割光学系を有し、該分割光学系が、複数の走査光のうちの特定波長の走査光を反射して残りを透過する波長選択特性を有するビーム分割器を備えており、特定波長の走査光の光路に波長選択特性と逆の波長選択特性を有する光学フィルタが配設されているマルチビーム走査光学装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている光走査装置では、波長分離手段で本来透過すべき光ビームが反射されたり、反射すべき光ビームが透過したりすることで生じるゴースト光については考慮されていない。光偏向器で偏向された光は、偏向角に対応して異なる入射角で波長分離手段に入射するので、偏向角によってはゴースト光が発生し、画像形成装置の出力画像の品質を低下させるおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2に開示されている光走査装置では、本来画像を形成するために用いられる信号光自体も減衰手段によって減衰されてしまい、光利用効率が低下するという不都合があった。
【0010】
また、特許文献3に開示されているマルチビーム走査光学装置では、光学フィルタで反射された光が、他の感光体に向かったり、光源側に戻って該光源の出力を不安定にさせるおそれがあった。これは、画像形成装置の出力画像の品質低下を招く。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光利用効率及び光走査の安定性を損なうことなく、小型化を図ることができる光走査装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の観点からすると、第1の波長の光と該第1の波長と異なる第2の波長の光とが混在して射出される光源ユニットと、前記光源ユニットからの前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とが混在した光を偏向する光偏向器と、前記光偏向器で偏向された前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光の一方を透過させ、他方を反射する波長分離面を有する偏向器側波長分離デバイスと、該偏向器側波長分離デバイスの波長分離面と同等の波長選択特性の波長分離面を有し、前記偏向器側波長分離デバイスを透過した光の光路上、及び前記偏向器側波長分離デバイスで反射された光の光路上の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの像面側波長分離デバイスと、を備える光走査装置である。
【0014】
これによれば、光利用効率及び光走査の安定性を損なうことなく、小型化を図ることができる。
【0015】
本発明は、第2の観点からすると、複数の像担持体と、前記複数の像担持体を光束により走査する本発明の光走査装置と、を備える画像形成装置である。
【0016】
これによれば、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1における光走査装置2010を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光走査装置2010を説明するための図(その2)である。
【図4】図2における光源ユニットLU1を説明するための図である。
【図5】光源ユニットLU1における光源を説明するための図(その1)である。
【図6】光源ユニットLU1における光源を説明するための図(その2)である。
【図7】図2における光源ユニットLU2を説明するための図である。
【図8】光源ユニットLU2における光源を説明するための図(その1)である。
【図9】光源ユニットLU2における光源を説明するための図(その2)である。
【図10】波長分離デバイス16の波長分離面を説明するための図である。
【図11】波長分離デバイス17の作用を説明するための図である。
【図12】波長分離デバイス16の波長分離面を説明するための図である。
【図13】波長分離デバイス17の作用を説明するための図である。
【図14】各波長分離デバイスの構成を説明するための図である。
【図15】波長分離面Aの特性を説明するための図(その1)である。
【図16】波長分離面Aの特性を説明するための図(その2)である。
【図17】波長分離面Aの二段構成の効果を説明するための図である。
【図18】波長分離デバイス16と波長分離デバイス17の一体化の例1を説明するための図である。
【図19】波長分離デバイス16と波長分離デバイス17の一体化の例2を説明するための図である。
【図20】波長分離デバイス16と波長分離デバイス17の一体化の例3を説明するための図である。
【図21】走査光学系の変形例1を説明するための図である。
【図22】図21における各波長分離デバイスの構成を説明するための図である。
【図23】図21における波長分離デバイス26の作用を説明するための図である。
【図24】図21における波長分離デバイス26の作用を説明するための図である。
【図25】波長分離面Bの特性を説明するための図(その1)である。
【図26】波長分離面Bの特性を説明するための図(その2)である。
【図27】波長分離面Bの二段構成の効果を説明するための図である。
【図28】走査光学系の変形例2を説明するための図である。
【図29】図28における波長分離デバイス36及び波長分離デバイス37の姿勢を説明するための図である。
【図30】図28における各波長分離デバイスの構成を説明するための図である。
【図31】図28における波長分離デバイス37の作用を説明するための図である。
【図32】図28における波長分離デバイス36及び波長分離デバイス37の姿勢を説明するための図である。
【図33】図28における波長分離デバイス37の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0019】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0020】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0021】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0022】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0023】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0024】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0025】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0026】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0027】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
【0028】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0029】
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
【0030】
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
【0031】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(以下では、「トナー画像」という)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0032】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0033】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
【0034】
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次スタックされる。
【0035】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0036】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0037】
この光走査装置2010は、一例として図2及び図3に示されるように、2つの光源ユニット(LU1、LU2)、2つのシリンドリカルレンズ(12、12)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(15、15)、4つの波長分離デバイス(16、16、17、17)、複数の折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び不図示の走査制御装置などを有している。
【0038】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0039】
光源ユニットLU1は、一例として図4に示されるように、2つの光源(10a、10b)、2つのコリメートレンズ(11a、11b)、及び光合成素子13などを有している。
【0040】
光源10aは、該光源10aを駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10aとともに回路基板10aに実装されている。
【0041】
光源10bは、該光源10bを駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10bとともに回路基板10bに実装されている。
【0042】
光源10aは、一例として図5に示されるように、1つの半導体レーザ101aを含んでいる。該半導体レーザ101aの発光部からは波長λaの光束(光束LBaという)が射出される。
【0043】
光源10bは、一例として図6に示されるように、1つの半導体レーザ101bを含んでいる。該半導体レーザ101bの発光部からは波長λbの光束(光束LBbという)が射出される。
【0044】
コリメートレンズ11aは、光源10aからの光束LBaの光路上に配置され、該光束LBaを略平行光とする。
【0045】
コリメートレンズ11bは、光源10bからの光束LBbの光路上に配置され、該光束LBbを略平行光とする。
【0046】
光合成素子13は、コリメートレンズ11aを介した光束LBa及びコリメートレンズ11bを介した光束LBbの光路上に配置され、光束LBaの光路と光束LBbの光路を重ね合わせる。ここでは、光合成素子13は、波長λaの光束を反射し、波長λbの光束を透過させるダイクロイックミラーを有している。この光合成素子13から射出される光束LBaと光束LBbが、光源ユニットLU1から射出される。なお、図2及び図4では、分かりやすくするため、光源ユニットLU1から射出される光束LBaの光路と光束LBbの光路を互いに離して図示している。
【0047】
光源ユニットLU2は、一例として図7に示されるように、2つの光源(10c、10d)、2つのコリメートレンズ(11c、11d)、及び光合成素子13などを有している。
【0048】
光源10cは、該光源10cを駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10cとともに回路基板10cに実装されている。
【0049】
光源10dは、該光源10dを駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10dとともに回路基板10dに実装されている。
【0050】
光源10cは、一例として図8に示されるように、1つの半導体レーザ101cを含んでいる。該半導体レーザ101cの発光部からは波長λcの光束(光束LBcという)が射出される。
【0051】
光源10dは、一例として図9に示されるように、1つの半導体レーザ101dを含んでいる。該半導体レーザ101dの発光部からは波長λdの光束(光束LBdという)が射出される。
【0052】
コリメートレンズ11cは、光源10cからの光束LBcの光路上に配置され、該光束LBcを略平行光とする。
【0053】
コリメートレンズ11dは、光源10dからの光束LBdの光路上に配置され、該光束LBdを略平行光とする。
【0054】
光合成素子13は、コリメートレンズ11cを介した光束LBc及びコリメートレンズ11dを介した光束LBdの光路上に配置され、光束LBcの光路と光束LBdの光路を重ね合わせる。ここでは、光合成素子13は、波長λcの光束を透過させ、波長λdの光束を反射するダイクロイックミラーを有している。この光合成素子13から射出される光束LBcと光束LBdが、光源ユニットLU2から射出される。なお、図2及び図7では、分かりやすくするため、光源ユニットLU2から射出される光束LBcの光路と光束LBdの光路を互いに離して図示している。
【0055】
なお、λa=λd、λb=λcのように設定すれば、光合成素子13と光合成素子13は、同じ特性のものを使用することができる。
【0056】
図2に戻り、シリンドリカルレンズ12は、光源ユニットLU1から射出された光束LBa及び光束LBbの光路上に配置され、光束LBa及び光束LBbを、ポリゴンミラー14の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0057】
シリンドリカルレンズ12は、光源ユニットLU2から射出された光束LBc及び光束LBdの光路上に配置され、光束LBc及び光束LBdを、ポリゴンミラー14の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0058】
ポリゴンミラー14は、一例として4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー14は、Z軸方向に平行な軸まわりに等速回転し、シリンドリカルレンズ12からの光束LBa及び光束LBb、シリンドリカルレンズ12からの光束LBc及び光束LBdをZ軸に直交する平面内で等角速度的に偏向する。
【0059】
光束LBa及び光束LBbはポリゴンミラー14の−X側に偏向され、光束LBc及び光束LBdはポリゴンミラー14の+X側に偏向される。
【0060】
なお、ポリゴンミラー14の偏向反射面で偏向された光束が経時的に形成する光線束面は、「偏向面」と呼ばれている(特開平11−202252号公報参照)。ここでは、偏向面はXY面に平行である。
【0061】
図3に戻り、走査レンズ15は、ポリゴンミラー14の−X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0062】
波長分離デバイス16は、走査レンズ15の−X側であって、走査レンズ15を介した光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0063】
波長分離デバイス16は、波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。
【0064】
波長分離デバイス16では、一例として図10に示されるように、波長分離面上における光束の入射位置の軌跡は、Y軸に平行となるように設定されている。また、該波長分離面における光束の入射位置の法線は、+X方向に対して時計回りに45°傾斜している。
【0065】
そこで、偏向角0°のときの波長分離面への光の入射角は45°である。偏向角が0°以外のときの波長分離面への光の入射角は偏向角に応じて変化する。例えば、偏向角が+40°及び−40°のとき、波長分離面への光の入射角は57.2°である。
【0066】
波長分離デバイス16を透過した光束は、折り返しミラー18aによって感光体ドラム2030aに向かう方向に折り返され、射出窓19aを介して感光体ドラム2030aの表面に照射され、光スポットを形成する。この光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030aでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030aの回転方向が、感光体ドラム2030aでの「副走査方向」である。
【0067】
このように、走査レンズ15と波長分離デバイス16と折り返しミラー18aは、「Kステーション」の走査光学系である。
【0068】
波長分離デバイス17は、波長分離デバイス16と同等の波長選択特性を有し、波長分離デバイス16で−Z側に反射された光束の光路上に配置されている。
【0069】
2つの波長分離デバイスの波長選択特性が同等であるとは、一方の波長分離デバイスが短波長の光束を反射し長波長の光束を透過させる特性を有する場合、他方の波長分離デバイスも短波長の光束を反射し長波長の光束を透過させる特性を有することをいう。また同様に、一方の波長分離デバイスが短波長の光束を透過させ長波長の光束を反射する特性を有する場合、他方の波長分離デバイスも短波長の光束を透過させ長波長の光束を反射する特性を有することをいう。
【0070】
すなわち、波長分離デバイス17は、波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。
【0071】
波長分離デバイス17は、波長分離面上における光束の入射位置の軌跡が、Y軸に平行となるように設定されている。また、該波長分離面における光束の入射位置の法線は、+X方向に対して反時計回りに45°傾斜している。すなわち、波長分離デバイス16の波長分離面と波長分離デバイス17の波長分離面は、互いに直交している。
【0072】
そこで、偏向角0°のときの波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は45°である。このとき、波長λbの光束は+X方向に反射される。また、偏向角が0°以外のときの波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は、波長分離デバイス16の波長分離面への光の入射角と同じである。例えば、偏向角が+40°のとき、波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は57.2°である。
【0073】
波長分離デバイス17で反射された光束は、折り返しミラー18bによって感光体ドラム2030bに向かう方向に折り返され、射出窓19bを介して感光体ドラム2030bの表面に照射され、光スポットを形成する。この光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030bでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030bの回転方向が、感光体ドラム2030bでの「副走査方向」である。
【0074】
このように、走査レンズ15と波長分離デバイス16と波長分離デバイス17と折り返しミラー18bは、「Cステーション」の走査光学系である。
【0075】
すなわち、走査レンズ15と波長分離デバイス16は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0076】
ここでは、波長分離デバイス16及び波長分離デバイス17の波長分離面は、光束LBbの反射率が最大となるように設計されている。そこで、光束LBaの一部は波長分離デバイス16の波長分離面で反射されることがある。該光束LBaの一部(光束LBa’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBa’の大部分は波長分離デバイス17を透過し、光学ハウジングによって遮光されるため、光束LBa’が感光体ドラム2030bに向かうことを抑制することができる(図11参照)。
【0077】
図3に戻り、走査レンズ15は、ポリゴンミラー14の+X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0078】
波長分離デバイス16は、走査レンズ15の+X側であって、走査レンズ15を介した光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0079】
波長分離デバイス16は、波長λcの光束を透過させ、波長λdの光束を反射する波長分離面を有している。
【0080】
なお、λa=λd、λb=λcのように設定すれば、波長分離デバイス16と波長分離デバイス16は、同じ特性のものを使用することができる。
【0081】
波長分離デバイス16では、一例として図12に示されるように、波長分離面上における光束の入射位置の軌跡は、Y軸に平行となるように設定されている。また、該波長分離面における光束の入射位置の法線は、−X方向に対して反時計回りに45°傾斜している。
【0082】
そこで、偏向角0°のときの波長分離面への光の入射角は45°である。偏向角が0°以外のときの波長分離面への光の入射角は偏向角に応じて変化する。例えば、偏向角が+40°及び−40°のとき、波長分離面への光の入射角は57.2°である。
【0083】
波長分離デバイス17は、波長分離デバイス16と同等の波長選択特性を有し、波長分離デバイス16で−Z側に反射された光束の光路上に配置されている。
【0084】
すなわち、波長分離デバイス17は、波長λdの光束を透過させ、波長λcの光束を反射する波長分離面を有している。
【0085】
波長分離デバイス17は、波長分離面上における光束の入射位置の軌跡が、Y軸に平行となるように設定されている。また、該波長分離面における光束の入射位置の法線は、−X方向に対して時計回りに45°傾斜している。すなわち、波長分離デバイス16の波長分離面と波長分離デバイス17の波長分離面は、互いに直交している。
【0086】
そこで、偏向角0°のときの波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は45°である。このとき、波長λcの光束は−X方向に反射される。また、偏向角が0°以外のときの波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は、波長分離デバイス16の波長分離面への光の入射角と同じである。例えば、偏向角が+40°のとき、波長分離デバイス17の波長分離面への光の入射角は57.2°である。
【0087】
波長分離デバイス17で反射された光束は、折り返しミラー18cによって感光体ドラム2030cに向かう方向に折り返され、射出窓19cを介して感光体ドラム2030cの表面に照射され、光スポットを形成する。この光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030cでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030cの回転方向が、感光体ドラム2030cでの「副走査方向」である。
【0088】
このように、走査レンズ15と波長分離デバイス16と波長分離デバイス17と折り返しミラー18cは、「Mステーション」の走査光学系である。
【0089】
波長分離デバイス16を透過した光束は、折り返しミラー18dによって感光体ドラム2030dに向かう方向に折り返され、射出窓19dを介して感光体ドラム2030dの表面に照射され、光スポットを形成する。この光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030dでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030dの回転方向が、感光体ドラム2030dでの「副走査方向」である。
【0090】
このように、走査レンズ15と波長分離デバイス16と折り返しミラー18dは、「Yステーション」の走査光学系である。
【0091】
すなわち、走査レンズ15と波長分離デバイス16は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0092】
ここでは、波長分離デバイス16及び波長分離デバイス17の波長分離面は、光束LBcの反射率が最大となるように設計されている。そこで、光束LBdの一部は波長分離デバイス16の波長分離面で反射されることがある。該光束LBdの一部(光束LBd’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBd’の大部分は波長分離デバイス17を透過し、光学ハウジングによって遮光されるため、光束LBd’が感光体ドラム2030cに向かうことを抑制することができる(図13参照)。
【0093】
ここで、本実施形態で用いられる波長分離デバイスについて説明する。
【0094】
波長分離デバイスとしては、波長分離面が誘電体多層膜よりなるダイクロイック素子を用いることが好ましい。ところで、波長によって回折角が異なることを利用した回折素子を用いると、温度変化によって波長がシフトすると光路が変化するおそれがある。また、波長によって屈折率が異なることを利用したプリズムを用いると、2つの光束を分離するには、入射する2つの光束の波長差を大きくする必要があり、他の光学素子での結像性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0095】
本実施形態で用いられる各波長分離デバイスは、一例として図14に示されるように、板状の透明な基体における光束の入射側の面(表面)に波長分離面が形成され、裏面に無反射膜が形成されている。無反射膜は、誘電体多層膜で形成されても良い。また、無反射膜に代えて、基体の裏面に入射光の波長以下の凹凸構造を形成しても良い。
【0096】
本実施形態では、λa=λd=780nm、λb=λc=655nmとしている。
【0097】
そこで、波長分離面を透過した波長655nmの光、及び波長分離面で反射された波長780nmの光は、いずれもゴースト光となる。なお、以下では、波長分離面を透過した波長780nmの光、及び波長分離面で反射された波長655nmの光を「信号光」ともいう。
【0098】
発明者らは、感光体ドラムの表面において、ゴースト光の光強度が走査光の光強度の1%以下であれば、出力画像の品質を所望の品質とすることができることを種々の実験から確認している。
【0099】
すなわち、波長分離面は、有効入射角範囲内において、波長655nmの光に対する透過率が1%以下であり、波長780nmの光に対する透過率が99%以上であれば良い。ここでは、波長分離面は、特に波長655nmの光に対する透過率が1%以下となることを優先して設計されている。そこで、以下では、波長780nmの光に対する透過率が99%以上であるか否か、換言すれば波長780nmの光に対する反射率が1%以下であるか否かに注目する。
【0100】
図15には、一例として、屈折率が2.20の誘電体材料(例えば、TiOをベースにした酸化物)と屈折率が1.47の誘電体材料(例えば、SiO)とを交互に合計30層積層して形成された波長分離面(便宜上、「波長分離面A」という)において、入射光の入射角が45°のときと、入射光の入射角が57°のときとについて、入射光の波長と透過率との関係の計算結果が示されている。なお、入射角45°は偏向角0°に、入射角57°は偏向角40°にほぼ対応している。
【0101】
図15によれば、入射角が45°のときの透過率は、655nmの光に対して1%以下であり、780nmの光に対して99%以上である。一方、入射角が57°のときの透過率は、655nmの光に対して1%以下であるものの、780nmの光に対して98%であり、目標に達していない。すなわち、波長分離面Aは、入射角が45°のときは必要な波長分離特性を満たしているが、入射角が57°のときは必要な波長分離特性を満たしていない。
【0102】
図16には、波長分離面Aにおいて、入射角と波長655nmの光に対する透過率及び波長780nmの光に対する反射率との関係が、それぞれ示されている。なお、波長655nmの光に対する透過率及び波長780nmの光に対する反射率は、ゴースト光の光強度に対応する。
【0103】
図16から、入射角が増加するにつれゴースト光が増加する傾向にあることがわかる。入射角57°において、波長655nmの光に対する透過率は1%以下であるが、波長780nmの光に対する反射率は2%前後である。
【0104】
次に、波長分離面Aで反射された波長780nmの光(ゴースト光)の光路上に、さらに波長分離面Aを配置し、波長分離面Aを二段構成としたときの、波長780nmの光に対する2つの波長分離面Aの合成反射率を計算した。その計算結果が図17に示されている。この場合は、波長780nmの光に対する合成反射率は、入射角が57°であっても0.1%以下であった。
【0105】
また、波長655nmの光に対する波長分離面Aの単体反射率は99.2%であり、合成反射率は98.3%であり、信号光の強度低下はほとんど問題ない。
【0106】
すなわち、波長分離面Aを二段構成とすることにより、有効入射角範囲内において、波長780nmの光に対する透過率を99%以上とすることが可能である。
【0107】
本実施形態では、波長分離デバイス16と波長分離デバイス17、及び波長分離デバイス16と波長分離デバイス17のように、2つの波長分離デバイスを二段構成としているため、波長780nmの光に対する透過率を99%以上とすることができる。
【0108】
そこで、各感光体ドラムの表面において、ゴースト光の光強度を走査光の光強度の1%以下とすることができる。
【0109】
ところで、波長分離面Aの波長780nmの光に対する透過率特性を改善する他の方法として、誘電体層の積層数を増やすことが考えられる。しかしながら、この場合は、波長分離面の形成に起因する応力の増大を招き、波長分離デバイスにソリが生じやすくなる。
【0110】
なお、ここでは、波長分離面における誘電体層の積層数が30層の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、2つの光源ユニット(LU1、LU2)、2つのシリンドリカルレンズ(12、12)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(15、15)、4つの波長分離デバイス(16、16、17、17)、複数の折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)などを有している。
【0112】
波長分離デバイス16及び波長分離デバイス17は、それぞれ波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。そして、各波長分離面は、波長λbの光束の透過率が1%以下となるように設計されており、波長分離デバイス17は、波長分離デバイス16で反射された光束の光路上に配置されている。この場合は、波長λaの光束の一部が波長分離デバイス16で反射されても、そのほとんどは波長分離デバイス17を透過し、感光体ドラム2030bに向かうゴースト光の光量を走査光の光量の1%以下とすることができる。
【0113】
波長分離デバイス16及び波長分離デバイス17は、それぞれ波長λdの光束を透過させ、波長λcの光束を反射する波長分離面を有している。そして、各波長分離面は、波長λcの光束の透過率が1%以下となるように設計されており、波長分離デバイス17は、波長分離デバイス16で反射された光束の光路上に配置されている。この場合は、波長λdの光束の一部が波長分離デバイス16で反射されても、そのほとんどは波長分離デバイス17を透過し、感光体ドラム2030cに向かうゴースト光の光量を走査光の光量の1%以下とすることができる。
【0114】
そこで、光利用効率及び光走査の安定性を損なうことなく、小型化を図ることができる。
【0115】
そして、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010を備えているため、結果として、画像品質の低下を招くことなく、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0116】
なお、上記実施形態において、一例として図18に示されるように、波長分離デバイス16と波長分離デバイス17を一体化させても良い。
【0117】
図18では、断面形状が直角三角形である三角柱状の基体の互いに直交する2つの面に、波長分離デバイス16の波長分離面(第1の波長分離面)と波長分離デバイス17の波長分離面(第2の波長分離面)が形成されている。そして、2つの光束が入射する面に無反射膜が形成されている。ここでは、第1の波長分離面に入射する光の入射面と、第2の波長分離面で反射された光の射出面とは同一の面である。
【0118】
この場合、第1の波長分離面を透過した光束は、第1の波長分離面と空気との界面で屈折し、光路がX軸方向に対して傾斜した方向に曲げられる。そこで、一例として図19に示されるように、第1の波長分離面を透過した光束の光路をX軸方向に平行にするため、第1の波長分離面を透過した光束の光路上に、屈折補正用プリズムを設けても良い。これにより、光束LBaについて、入射光と射出光の平行関係を維持することができる。
【0119】
また、一例として図20に示されるように、第1の波長分離面と屈折補正用プリズムを接合しても良い。また、第2の波長分離面と空気との界面をなくすため、屈折補正用プリズムと同等のプリズムを波長分離特性補償用プリズムとして第2の波長分離面に接合しても良い。この場合は、感光体ドラム表面での走査線曲がりを抑制することができる。なお、第1の波長分離面と第2の波長分離面は、同じ構造で良いが、空気界面がないため、上記実施形態における波長分離面の構造とは異なる。
【0120】
また、同様にして、波長分離デバイス16と波長分離デバイス17を一体化させても良い。
【0121】
走査光学系の変形例1が図21に示されている。この変形例1は、2つの走査レンズ(15、15)、2つの波長分離デバイス(26、26)、複数の折り返しミラー(18a、18b、18b、18c、18c、18d)を有している。
【0122】
各波長分離デバイスは、一例として図22に示されるように、板状の基体の一側の面に第1の波長分離面が形成され、他側の面に第2の波長分離面が形成されている。なお、ここでは、各波長分離デバイスは、第1の波長分離面が2つの光束の入射側になるように配置されているものとする。
【0123】
波長分離デバイス26は、走査レンズ15の−X側であって、走査レンズ15を介した光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0124】
波長分離デバイス26の各波長分離面は、波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する特性を有している。
【0125】
波長分離デバイス26の第1の波長分離面及び第2の波長分離面を透過した光束は、折り返しミラー18aによって感光体ドラム2030aに向かう方向に折り返される。
【0126】
波長分離デバイス26の第1の波長分離面で反射された光束は、折り返しミラー18bと折り返しミラー18bとによって感光体ドラム2030bに向かう方向に折り返される。
【0127】
ここでは、波長分離デバイス26の第1の波長分離面及び第2の波長分離面は、波長λaの光束の透過率が99%以上となるように設計されている。そこで、光束LBbの一部は第1の波長分離面を透過することがある。該光束LBbの一部(光束LBb’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBb’のほとんどは第2の波長分離面で反射されるため、光束LBb’が感光体ドラム2030aに向かうことを抑制することができる(図23参照)。
【0128】
波長分離デバイス26は、走査レンズ15の+X側であって、走査レンズ15を介した光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0129】
波長分離デバイス26の各波長分離面は、波長λcの光束を反射し、波長λdの光束を透過させる特性を有している。
【0130】
波長分離デバイス26の第1の波長分離面で反射された光束は、折り返しミラー18cと折り返しミラー18cとによって感光体ドラム2030cに向かう方向に折り返される。
【0131】
波長分離デバイス26の第1の波長分離面及び第2の波長分離面を透過した光束は、折り返しミラー18dによって感光体ドラム2030dに向かう方向に折り返される。
【0132】
ここでは、波長分離デバイス26の第1の波長分離面及び第2の波長分離面は、波長λdの光束の透過率が99%以上となるように設計されている。そこで、光束LBcの一部は第1の波長分離面を透過することがある。該光束LBcの一部(光束LBc’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBc’のほとんどは第2の波長分離面で反射されるため、光束LBc’が感光体ドラム2030dに向かうことを抑制することができる(図24参照)。
【0133】
ここで、波長分離デバイス26及び波長分離デバイス26について説明する。なお、λa=λd=780nm、λb=λc=655nmとする。そこで、波長分離デバイス26及び波長分離デバイス26は、同等の波長分離デバイスであり、それらを総称して「波長分離デバイス26」という。
【0134】
波長分離デバイス26としては、各波長分離面が誘電体多層膜よりなるダイクロイック素子を用いることが好ましい。
【0135】
各波長分離面は、特に波長780nmの光に対する透過率が99%以下となることを優先して設計されている。そこで、以下では、波長655nmの光に対する透過率が1%以下であるか否か、換言すれば波長655nmの光に対する反射率が99%以上であるか否かに注目する。
【0136】
図25には、一例として、屈折率が2.20の誘電体材料(例えば、TiOをベースにした酸化物)と屈折率が1.47の誘電体材料(例えば、SiO)とを交互に合計30層積層して形成された波長分離面(便宜上、「波長分離面B」という)において、入射光の入射角が45°のときと、入射光の入射角が57°のときとについて、入射光の波長と透過率との関係の計算結果が示されている。なお、入射角45°は偏向角0°に、入射角57°は偏向角40°にほぼ対応している。
【0137】
図25によれば、入射角が45°のときの透過率は、655nmの光に対して1%以下であり、780nmの光に対して99%以上である。一方、入射角が57°のときの透過率は、780nmの光に対して99%以上であるものの、655nmの光に対して2.5%前後であり、目標に達していない。すなわち、波長分離面Bは、入射角が45°のときは必要な波長分離特性を満たしているが、入射角が57°のときは必要な波長分離特性を満たしていない。
【0138】
図26には、波長分離面Bにおいて、入射角と波長655nmの光に対する透過率及び波長780nmの光に対する反射率との関係が、それぞれ示されている。なお、波長655nmの光に対する透過率及び波長780nmの光に対する反射率は、ゴースト光の光強度に対応する。
【0139】
図26から、入射角が増加するにつれゴースト光が増加する傾向にあることがわかる。入射角57°において、波長780nmの光に対する反射率は1%以下であるが、波長655nmの光に対する透過率は2.5%前後である。
【0140】
次に、波長分離面Bを透過した波長655nmの光(ゴースト光)の光路上に、さらに波長分離面Bを配置し、波長分離面Bを二段構成としたときの、波長655nmの光に対する2つの波長分離面Bの合成透過率を計算した。その計算結果が図27に示されている。この場合は、波長655nmの光に対する合成透過率は、入射角が57°であっても0.1%以下であった。
【0141】
一方、波長780nmの光に対する、波長分離面Bの単体透過率及び合成透過率は、99.9%及び99.8%であり、信号光の強度低下はほとんど問題ない。
【0142】
波長分離デバイス26では、板状の基体の両面に30層の誘電体層が同じ条件で形成されるため、波長分離面の形成に起因する応力は両面で略等しくなり、波長分離デバイス26にソリが生じるのを抑制することができる。
【0143】
走査光学系の変形例2が図28に示されている。この変形例2は、2つの走査レンズ(15、15)、4つの波長分離デバイス(36、36、37、37)、複数の折り返しミラー(18a、18b、18b、18c、18c、18d)を有している。
【0144】
波長分離デバイス36は、走査レンズ15の−X側であって、走査レンズ15を介した光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0145】
波長分離デバイス36は、波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。
【0146】
波長分離デバイス36では、一例として図29に示されるように、波長分離面における光束の入射位置の法線は、+X方向に対して時計回りに45°傾斜している。
【0147】
波長分離デバイス37は、波長分離デバイス36を透過した光束の光路上に配置されている。
【0148】
波長分離デバイス37は、波長λaの光束を透過させ、波長λbの光束を反射する波長分離面を有している。すなわち、波長分離デバイス36の波長分離面と波長分離デバイス37の波長分離面は、同等の波長選択特性を有している。
【0149】
波長分離デバイス37では、一例として図29に示されるように、波長分離面における光束の入射位置の法線は、+X方向に対して反時計回りに45°傾斜している。
【0150】
また、波長分離デバイス36を透過した光束の波長分離デバイス36における入射角と、波長分離デバイス36を透過した光束の波長分離デバイス37への入射角は同じである。
【0151】
波長分離デバイス36及び波長分離デバイス37は、一例として図30に示されるように、板状の透明な基体における光束の入射側の面(表面)に波長分離面が形成され、裏面に無反射膜が形成されている。無反射膜は、誘電体多層膜で形成されても良い。また、無反射膜に代えて、基体の裏面に入射光の波長以下の凹凸構造を形成しても良い。
【0152】
波長分離デバイス36の波長分離面及び波長分離デバイス37の波長分離面を透過した光束は、折り返しミラー18aによって感光体ドラム2030aに向かう方向に折り返される。
【0153】
波長分離デバイス36の波長分離面で反射された光束は、折り返しミラー18bと折り返しミラー18bとによって感光体ドラム2030bに向かう方向に折り返される。
【0154】
ここでは、波長分離デバイス36の波長分離面及び波長分離デバイス37の波長分離面は、波長λaの光束の透過率が99%以上となるように設計されている。そこで、光束LBbの一部は波長分離デバイス36の波長分離面を透過することがある。該光束LBbの一部(光束LBb’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBb’のほとんどは波長分離デバイス37の波長分離面で反射されるため、光束LBb’が感光体ドラム2030aに向かうことを抑制することができる(図31参照)。
【0155】
波長分離デバイス36は、走査レンズ15の+X側であって、走査レンズ15を介した光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0156】
波長分離デバイス36は、波長λcの光束を反射し、波長λdの光束を透過させる波長分離面を有している。
【0157】
波長分離デバイス36では、一例として図32に示されるように、波長分離面における光束の入射位置の法線は、−X方向に対して反時計回りに45°傾斜している。
【0158】
波長分離デバイス37は、波長分離デバイス36を透過した光束の光路上に配置されている。すなわち、波長分離デバイス36の波長分離面と波長分離デバイス37の波長分離面は、同等の波長選択特性を有している。
【0159】
波長分離デバイス37は、波長λcの光束を反射し、波長λdの光束を透過させる波長分離面を有している。
【0160】
波長分離デバイス37では、一例として図32に示されるように、波長分離面における光束の入射位置の法線は、−X方向に対して時計回りに45°傾斜している。
【0161】
また、波長分離デバイス36を透過した光束の波長分離デバイス36における入射角と、波長分離デバイス36を透過した光束の波長分離デバイス37への入射角は同じである。
【0162】
波長分離デバイス36及び波長分離デバイス37は、板状の透明な基体における光束の入射側の面(表面)に波長分離面が形成され、裏面に無反射膜が形成されている。
【0163】
波長分離デバイス36の波長分離面で反射された光束は、折り返しミラー18cと折り返しミラー18cとによって感光体ドラム2030cに向かう方向に折り返される。
【0164】
波長分離デバイス36の波長分離面及び波長分離デバイス37の波長分離面を透過した光束は、折り返しミラー18dによって感光体ドラム2030dに向かう方向に折り返される。
【0165】
ここでは、波長分離デバイス36の波長分離面及び波長分離デバイス37の波長分離面は、波長λdの光束の透過率が99%以上となるように設計されている。そこで、光束LBcの一部は波長分離デバイス36の波長分離面を透過することがある。該光束LBcの一部(光束LBc’とする)はゴースト光である。しかしながら、光束LBc’のほとんどは波長分離デバイス37の波長分離面で反射されるため、光束LBc’が感光体ドラム2030dに向かうことを抑制することができる(図33参照)。
【0166】
また、上記実施形態では、光源が1つの発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光源が複数の発光部を有していても良い。
【0167】
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、記録紙に直接転写されても良い。
【0168】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
【0169】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で転写対象物としての印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0170】
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
【0171】
要するに、上記光走査装置2010を備えた画像形成装置であれば、結果として、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上説明したように、本発明の光走査装置によれば、光利用効率及び光走査の安定性を損なうことなく、小型化を図るのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、画像品質を低下させることなく、小型化を図るのに適している。
【符号の説明】
【0173】
10a,10b,10c,10d…光源、11a,11b,11c,11d…コリメートレンズ、12,12…シリンドリカルレンズ、14…ポリゴンミラー(光偏向器)、15,15…走査レンズ(走査光学系の一部)、16,16,17,17,26,26,36,36,37,37…波長分離デバイス、18a,18b,18b,18b,18c,18c,18c,18d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、19a〜19d…射出窓、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2010…光走査装置、LU1,LU2…光源ユニット。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0174】
【特許文献1】特開平5−142489号公報
【特許文献2】特開2002−14294号公報
【特許文献3】特開平9−113829号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光と該第1の波長と異なる第2の波長の光とが混在して射出される光源ユニットと、
前記光源ユニットからの前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とが混在した光を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光の一方を透過させ、他方を反射する波長分離面を有する偏向器側波長分離デバイスと、
該偏向器側波長分離デバイスの波長分離面と同等の波長選択特性の波長分離面を有し、前記偏向器側波長分離デバイスを透過した光の光路上、及び前記偏向器側波長分離デバイスで反射された光の光路上の少なくとも一方に配置された少なくとも1つの像面側波長分離デバイスと、を備える光走査装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの像面側波長分離デバイスの波長分離面に入射する光の入射角は、該光の前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面での入射角と等しいことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの像面側波長分離デバイスは、1つの像面側波長分離デバイスであり、
該像面側波長分離デバイスは、前記偏向器側波長分離デバイスで反射された光の光路上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面と前記像面側波長分離デバイスの波長分離面は、直交することを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記偏向器側波長分離デバイスと前記像面側波長分離デバイスは、一体化されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記一体化された波長分離デバイスは、前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面が形成される面と前記像面側波長分離デバイスの波長分離面が形成される面とを有する多角柱状の基体を有し、
該基体における前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面に入射する光の入射面と、前記像面側波長分離デバイスの波長分離面で反射された光の射出面とは同一の面であることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記一体化された波長分離デバイスは、前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面を透過する光について、該光が射出される光の光路を該光が入射する際の光路と略一致させる光学部材を有することを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの像面側波長分離デバイスは、1つの像面側波長分離デバイスであり、
該像面側波長分離デバイスは、前記偏向器側波長分離デバイスを透過した光の光路上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記偏向器側波長分離デバイスと前記像面側波長分離デバイスは、一体化されていることを特徴とする請求項8に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記一体化された波長分離デバイスは、平行平板状の基体を有し、該基体の一側の面に前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面が形成され、他側の面に前記像面側波長分離デバイスの波長分離面が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記偏向器側波長分離デバイスは、平行平板状の基体の一側の面に波長分離面が形成され、前記像面側波長分離デバイスは、平行平板状の基体の一側の面に波長分離面が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記偏向器側波長分離デバイスの波長分離面及び前記像面側波長分離デバイスの波長分離面は、いずれも副走査方向に関して光の入射方向に対して傾斜しており、その傾斜の向きが互いに逆向きであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記各波長分離面は、誘電体多層膜が形成された面であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項14】
複数の像担持体と、
前記複数の像担持体を光束により走査する請求項1〜13のいずれか一項に記載の光走査装置と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−168214(P2012−168214A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26713(P2011−26713)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】