説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】各被走査面によって反射して発生する光線が走査結像光学系に届かないようにし、走査結像光学系による反射光が他の被走査面に届くことによる画像不良の発生を防止できる光走査装置を提供する。
【解決手段】走査結像光学系を構成する光学素子のうち、副走査方向に屈折力を持ち被走査面5aに最も近い光学素子(長尺トロイダルレンズ10)から出射した主走査方向中心近傍の光線LB1と、光線LB1が被走査面で反射した後の光線LB2とのなす角度をθ1、光線LB1と、長尺トロイダルレンズ10における副走査方向の端10aと光線LB1が被走査面で反射する反射点5bを結んだ線とのなす角度をθ2、とするとき、各被走査面による反射光が、θ1>θ2の条件を満足し、且つ、光偏向器の回転軸に垂直な面から遠ざかるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、該光走査装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ等に用いられる光走査装置は、一般に、光源側からの光ビームを光偏向器により偏向させ、fθレンズ等の走査結像光学系により被走査面に向けて集光して被走査面上に光スポットを形成する。
この光スポットで被走査面を光走査(主走査)するように構成されている。
被走査面の実体をなすものは、光導電性の感光体等である感光媒体の感光面である。
【0003】
フルカラー画像形成装置の一例として、4つの感光体(以下、「感光体ドラム」ともうい)を記録紙の搬送方向に配列し、各感光体に対応した複数の光源装置から放射された光ビームの光束を1つの偏向手段(光偏向器)により偏向走査する構成が知られている。
この装置では、各感光体に対応する複数の走査結像光学系により各感光体に同時に露光して潜像を形成する。
これらの潜像はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化される。
【0004】
これらの可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写し、定着することで、カラー画像が得られる。
光走査装置と感光体の組み合わせを2組以上用いて、2色画像や多色画像、カラー画像等を得るようにした画像形成装置は「タンデム式画像形成装置」として知られている。
フルカラー画像形成装置においては、高画質化のニーズが高くなっており、画像不良の原因の一つとして、ゴースト光による濃度変動、画像不良が課題となっている。
【0005】
被走査面としての感光体により反射した光ビームが、再び走査結像光学系へ達し、光学面やリブ構造部分に当たることで再び反射し、その光がゴースト光として再度感光体を照射してしまうことがある。
これにより、意図しない像が発生したり、ゴースト光照射部分の光量が変化して濃度変化が生じるなど画像品質に大きな影響を及ぼす。
特に、タンデム式画像形成装置など、複数の色に対応する光ビームで、光偏向器を共用するタイプの画像形成装置に用いられる光走査装置においては問題がある。
【0006】
すなわち、従来のモノクロ機に比べ、ゴースト光が発生した色とは異なる色の感光体にゴースト光が入射する可能性も高く、大きな課題となっている。
この場合、モノクロ機とは異なり、色むらという現象も発生し、画像不良が更に目立つこととなる。
【0007】
タンデム式画像形成装置に適した低コストな走査光学系の方式として、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度をもって入射する斜入射方式がある。
この方式では、複数の光束を偏向反射面の副走査断面中心に向けて斜入射させるようになっている。
これにより、高コストの2段ポリゴンミラーや厚肉ポリゴンミラーではなく、偏向反射面の副走査方向高さを低減した低コストな光偏向器を採用できるというメリットがある。
【0008】
しかしながら、斜入射方式では、異なる感光体に向かう光ビームが光偏向器の偏向反射面上で副走査方向に近接していることが多い。
ゴースト光が光偏向器に入射すると、他の色の感光体に到達しやすく、上記画像品質劣化の問題が発生しやすい。
ゴースト像を除去する光走査装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0009】
この光走査装置では、図9に示すように、光偏向器3に入射する光束の光軸と、fθレンズを有する走査結像光学系4の光軸とがなす角αに対して、被走査面5aの有効走査幅Wと、走査結像光学系4の主点から被走査面5aまでの距離Dとに応じて一定の制約を加えている。
これにより、ゴースト像Pgを被走査面5aの有効走査幅W外に形成するようにしている。
【0010】
特許文献1に開示された光学系によれば、光偏向器3により主走査方向に生じるゴースト像を防止することができる。
しかしながら、図10に示すように、光偏向器3以降の光学系により生じるゴースト像、特に副走査方向に生じるゴースト像を防止することは困難である。
図9、図10において、符号Lは感光体5への入射光束、Pは入射点、Lgは反射光束、10は走査結像光学系の光学素子を示している。
【0011】
副走査方向に生じるゴースト像を防止する光走査装置として、例えば特許文献2に記載のものが知られている。
この光走査装置では、感光体からの反射光が防塵ガラスに向わないように規定する内容となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の装置では、感光体の法線に対する入射角が大きくなる。
このため、感光体上に結像した光ビームのビーム径が副走査方向に大きくなったり、走査線が湾曲するなどの弊害が発生しやすい。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、被走査面で反射した光が走査結像光学系に入射し、走査結像光学系による反射光が走査がなされた被走査面あるいは他の被走査面にゴースト光として入射することによる画像不良の発生を防止できる光走査装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、光源装置を複数備え、各光源装置からの光ビームは光偏向器により偏向された後、走査光学系により各々異なる被走査面に集光される光走査装置において、前記走査光学系のうち最も被走査面側に位置する走査レンズの主走査方向中心近傍を通る光ビームの、前記走査レンズから射出され被走査面に到達する第1の光ビームと、前記第1の光ビームが被走査面での反射点で反射され生じる第2の光ビームとのなす角度をθ1とし、前記第1の光ビームと、前記反射点と前記走査レンズの主走査方向中心近傍における副走査端部とを結ぶ線とのなす角度をθ2としたとき、
θ1>θ2
の条件を満足し、且つ、被走査面での反射光は、前記光偏向器から被走査面の間に配置され、副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーでの反射を考慮せず展開した場合、前記光偏向器の回転軸に垂直な面から遠い方向に向かうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被走査面からの反射光束が走査結像光学系に入射して反射し、被走査面に再結像することを防止することができるので、被走査面(感光体ドラム)の副走査方向にゴースト像が生じることも抑制することができ、高品位で、かつ高画質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成の概要を示す斜視図である。
【図2】被走査面で反射した光束の進路を規定するための条件を説明するための副走査方向における断面図である。
【図3】被走査面へ入射する光ビームの、被走査面の法線に対する角度の絶対値が同じである例の副走査方向における断面図である。
【図4】反射ミラーを用いたコンパクト構成の例を示す副走査方向における断面図である。
【図5】反射ミラーを用いたコンパクト構成の他例を示す副走査方向における断面図である。
【図6】対向走査方式の例での副走査方向における断面図である。
【図7】被走査面で反射した光束の進路を規定するための条件を説明するための他例での副走査方向における断面図である。
【図8】画像形成装置の概要構成図である。
【図9】従来の光走査装置の主走査平面における構成図である。
【図10】従来における問題点を説明するための図である。
【図11】光偏光器に近い光学素子が副走査方向にパワーを有する場合のゴースト像の発生を説明するための副走査方向における断面図である。
【図12】光偏光器に近い光学素子が副走査方向にパワーを有しない場合のゴースト像の発生を説明するための副走査方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態に係る光走査装置の構成の概要を説明する。
光源としての半導体レーザ1から放射された発散性の光束(光ビーム)は、結像光学系2のカップリングレンズ6において、以後の光学系に適した光束形態に変換される。
【0018】
カップリングレンズ6により変換された光束形態は、平行光束であることも、弱い発散性あるいは弱い集束性の光束であることもできる。
カップリングレンズ6は、光軸方向および主走査対応方向・副走査対応方向に調整可能であり、調整により光束の収束状態を所望の光束形態に変換する。
前記光束は、アパーチャ7を通り、シリンドリカルレンズ8により副走査方向のみ集光した状態(主走査方向に長い線像の状態)で光偏向器(以下、「ポリゴンミラー」ともいう)3の偏向反射面に入射させている。
【0019】
これは、走査結像光学系4により偏向面の面倒れを補正できるようにするためである。
なお、「主走査方向」とは、光偏向器3の偏向反射面が像担持体としての感光体ドラム5上のビームを走査する方向を、「副走査方向」は光偏向器3の回転軸に平行な方向をそれぞれ表すものとする。
結像光学系2の光学素子(カップリングレンズ、シリンドリカルレンズ)は、走査光束のビームウェスト径・ビームウェスト位置が走査領域内でバランスがとれるようにその位置を調整している。
【0020】
偏向反射面により反射された光束は、ポリゴンミラー3の等速回転とともに等角速度的に偏向され、fθレンズ9と長尺トロイダルレンズ10からなる走査結像光学系4を透過する。
そして、被走査面5aを有する感光体ドラム5に直接、又は折返しミラー11を介して入射する。
符号13は同期検知部を示す。
【0021】
本実施形態では、折返しミラー11により光路を折り返されて、最終的に被走査面5a上(感光体ドラム上)に集光する。
これにより、偏向光束は被走査面上に光スポットを形成し、被走査面の光走査を行う。
【0022】
ここで、本発明の特徴を説明する前に、本発明の条件設定がなされない場合の問題点を斜入射光学系を例として説明する。
図11、図12は、光偏向器から被走査面までを副走査断面で描いたものであり、被走査面による反射光がゴースト光となる原因を説明したものである。
図11では、走査結像光学系のうち、光偏向器3に近いレンズ(ここではfθレンズ9とする)が2つの被走査面に対して共通に使用するいわゆる共用レンズとなっている。
【0023】
共用レンズとしてのfθレンズ9は、主走査方向と副走査方向にパワーを有している。以下、fθレンズ9を「共用レンズ9」ともいう。
被走査面に近いレンズ(ここでは長尺トロイダルレンズ10とする)は被走査面の数に対応して存在し、主として副走査方向にパワーを有し、面倒れ補正機能を有している。
偏向反射面により反射された光束(図中実線で表示)は、走査結像光学系を透過し、最終的に被走査面5a上(感光体ドラム5上)に集光する。
【0024】
しかしながら、破線で示すように、被走査面での反射により光束が再び走査結像光学系の方へ向う場合がある。
まず、最も被走査面側に位置する長尺トロイダルレンズ10を通過することで副走査方向の屈折力の影響を受け、光偏向器に近い共用レンズ9へ向うことになる。
その時、共用レンズ9の光学面またはリブ部構造分に当たった光が表面で反射する。図では共用レンズ9の第2面で反射した光は図中の上側へ向けられた様子が示してある。
【0025】
一方、共用レンズ9の第1面で反射した光は図中の下側へ向けられ、他の被走査面へ入射している。
すなわち、感光体ドラム5Aで反射した光は、感光体ドラム5Bにゴースト光として結像している。符号5A、5Bは単に異なる被走査面であることを示すものであり、色との関係性はない(他の例において同じ)。
【0026】
図12では、走査結像光学系のうち光偏向器3に近いfθレンズ9が2つの被走査面に対して共通に使用するいわゆる共用レンズで、主走査方向のみにパワーを有している。
被走査面に近い長尺トロイダルレンズ10は被走査面の数に対応して存在し、主として副走査方向にパワーを有し、面倒れ補正機能を有している。
光偏向器3の偏向反射面により反射された光束は、走査結像光学系を透過し、最終的に被走査面上(感光体上)に集光する。
【0027】
そして、被走査面での反射により光束が再び走査結像光学系へ向う。
被走査面で反射した光はまず被走査面に近い長尺トロイダルレンズ10を通過することで副走査方向の屈折力の影響を受け、光偏向器に近い共用レンズ9へ向う場合がある。
その後、共用レンズ9の光学面またはリブ構造部分に当たった光が表面で反射し、他の被走査面(図中の下側)へ入射している。
すなわち、感光体ドラム5Aで反射した光は、感光体ドラム5Bにゴースト光として結像している。
【0028】
図11、図12で説明したように、被走査面での反射光が再び被走査面に近いレンズに入射すると、光偏向器に近い側の走査レンズ(共用レンズ)に達する可能性が高くなる。
そして、共用レンズの光学面またはリブ構造部分に当たった光が表面で反射し、他の被走査面へゴースト像(ゴースト光)として入射する可能性が高くなる。
光偏向器の偏向反射面と被走査面は共役の関係にあるが、光偏向器に近い共用レンズでも共役に近い関係にある。
【0029】
このため、共用レンズにより反射して被走査面へ向う光線は集光しやすく、ゴースト像の強度が強くなるので画像へ悪影響となりやすい。
ここでの説明は、斜入射光学系(斜入射方式)に基づいている。
ゴースト光が他の感光体ドラムに向かう可能性は斜入射光学系の方が高い。
【0030】
しかしながら、通常の水平入射光学系においても、被走査面としての感光体ドラムからの反射角度により、ゴースト光が反射した感光体ドラム自体、もしくは、他の色の感光体ドラムに向かう可能性は十分あり、課題は同一であることは言うまでも無い。
【0031】
以下に、本発明の特徴を説明する。
図2は、光偏向器3から被走査面5aまでを副走査断面で描いたものである。
実際には後述する仮想面L0に対称(線対称)に他の被走査面としての感光体ドラムに向かうもう一組の走査光学系が配置されるが図示していない。
この時、光偏向器に近いfθレンズ9は仮想面L0を挟み、上下の光ビームで共用される。
最も被走査面側に位置する長尺トロイダルレンズ10は、被走査面に対応して個別に配置される。
【0032】
走査結像光学系4のうち、光偏向器3に近いレンズ(光学素子;fθレンズ9)は2つの被走査面に対して共通に使用することになるいわゆる共用レンズで、主走査方向にのみパワーを有し、副走査方向にはパワーを持たない。
走査結像光学系4のうち被走査面に近いレンズ(光学素子;長尺トロイダルレンズ10)は被走査面の数に対応して存在し、主として副走査方向にパワーを有し、面倒れ補正機能を有している。
【0033】
光偏向器3に近いレンズに副走査方向のパワーをほとんど持たせないのは、副走査方向の像面湾曲補正を被走査面に近いレンズのみで行わせることにより、像面湾曲補正と光軸方向の湾曲量低減とを両立させるためである。
被走査面5aに最も近い長尺トロイダルレンズ10は、副走査方向の屈折力を有する光学素子のことである。
【0034】
本実施形態では、副走査断面内における角度であって、走査結像光学系4を構成する光学素子のうち、副走査方向に屈折力を持ち被走査面5aに最も近い光学素子(走査レンズ)としての長尺トロイダルレンズ10から出射した主走査方向中心近傍の光線LB1(第1の光ビーム)と、該光線LB1が被走査面5aで反射した後の光線LB2(第2の光ビーム)とのなす角度をθ1、
同じく副走査断面内における角度であって、光線LB1と、長尺トロイダルレンズ10の主走査方向中心近傍における副走査方向の端10aと、光線LB1が被走査面5aで反射する反射点5bとを結んだ線Lとのなす角度をθ2、
とするとき、
各被走査面による反射光が、
θ1>θ2
の条件を満足するように設定されている。
但し、走査結像光学系4を、折返しミラー11等の反射部材を除いた光学系とする。
【0035】
更に、被走査面による反射光(第2の光ビーム)は、光偏向器の回転軸方向において、光偏向器の回転軸に垂直な面から遠い方向、換言すれば、副走査方向に離れる方向に向かうように設定されている。
光偏向器の回転軸に垂直な面を、ここでは仮想面L0としている。
仮想面L0は、図2に記載の通り、高さ方向(光偏向器の回転軸方向)において、光偏向器3の偏向反射面の高さh内に位置する。
本実施形態では、仮想面L0は、複数の光ビームの光偏向器での偏向反射点の中心を通っている。これに限定される趣旨ではなく、偏向反射面の高さhの中心を通っていても良い。
【0036】
被走査面による反射光が、仮想面L0側に向かう場合、走査光学系の内側に反射光が入っていくことにより、被走査面に最も近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子以外の光学素子へ入射する可能性が高い。
具体的には、副走査方向に隣り合う他の色に対応する光学素子に入射する可能性が高く、他の光学素子での反射により感光体に到達する可能性が高くなる。
【0037】
フルカラー対応の光走査装置においては、複数の感光体に対応する光走査装置を配置しているため、光学素子を配置している光学箱内の光学素子の数が多く、更に、副走査方向に並び配置される。
このため、反射光が戻る方向がフルカラー対応の光走査装置においては重要なポイントとなるため、本実施形態の如く、反射光が仮想面L0から離れる方向(副走査方向に離れる方向)とすることが重要となる。
本実施形態の如く、仮想面L0から遠い方向に反射光が向かう場合は、他の光学素子で更に反射される可能性は低い。
【0038】
反射された場合においても、走査光学系の内側に入り、他の色に対応する感光体に向かうことを抑制可能となる。
本発明では、反射光を光学箱の中で除去している点も特徴となる。
光学箱外で反射光を除去する場合、光走査装置が配置される光学箱外の他のモジュールのレイアウトにより反射光が感光体に到達する可能性があるからである。他のモジュールの説明に関しては後述する。
【0039】
なお、被走査面に最も近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子における副走査方向端部とは、該光学素子の光学面のみを意味するのではなく、光学面の外周を覆うようなリブ構造等も含まれるものとする。
ここでは走査結像光学系4を、走査レンズが2枚構成のものとして例示したが、1枚構成や3枚構成なども考えられる。
上記のような構成とすることで、各被走査面による反射光が被走査面に最も近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子に入射するのを防止できる。
【0040】
このため、該光学素子に入射した際に発生するゴースト光を防ぐことができるとともに、該光学素子での反射により発生した光線が感光体ドラムに再度入射することがない。
その結果、副走査方向の位置にゴースト像を生じない。
特に共用レンズは、図12に示したように、副走査方向に屈折力を持たない構成とすることが多く、被走査面からの反射光が到達すると他の感光体へゴースト像を結びやすくなる。
しかしながら、上記の構成とすることでゴースト像の発生を抑制することができる。図2において、符号3aはポリゴンミラーの回転軸を示す。
【0041】
更に、被走査面へ入射する光ビームの、被走査面の法線に対する角度の絶対値は同じであることが望ましい。
上記の如く反射光を設定するためには、感光体への入射角を適切に設定する必要がある。
感光体への入射角は、上記説明の条件を満足するための設定角度以上であれば良い。
【0042】
しかしながら、その入射角度は小さい方が走査線の曲がりを抑制でき、ビームスポット径の副走査方向の大きさも小さくできる。
図3に示すように、各色に対応する感光体で入射角の絶対値を等しくすることで、被走査面上でのビームスポット径を各色で均一とすることが可能となる。
図3では、感光体ドラム5Aと、5Bでは、点線で示す反射光の無機は入射光の右側と左側で向きは逆であるが、入射する光ビームの被走査面の法線に対する角度の絶対値は同じである。
【0043】
各色でのビームスポット径のばらつきが小さい方がよいことは言うまでも無く、画像品質の向上のためにも被走査面の法線に対する角度の絶対値は同じであることが望ましい。
【0044】
図4は、折り返しミラーを配設した走査光学系を示した他例図である。
走査結像光学系から被走査面までの間に折り返しミラーを配設することで装置の小型化を可能にしている。
図4に示す例では、被走査面に近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子10と被走査面との間に折り返しミラー11を配設している。
なお、斜入射光学系では走査線曲がりが発生するが、タンデム光学系の場合には各被走査面上にできる走査線の曲がりが略同一にならなければならない。
【0045】
図中で隣り合う被走査面へ向う光学系を比較すると、折り返しミラー11の枚数が異なっているのは走査線曲がりの方向を揃えるためである。
複数の光源装置からの光ビームは、光偏向器の同一偏向反射面、もしくは、副走査方向に並ぶ同一位相の偏向反射面で偏向される。
また、副走査方向において、複数の光ビームの光偏向器での偏向反射点の中心を通り、且つ、光偏向器の偏向反射面に垂直な仮想面L0に対し、偏向された光ビームの副走査方向上段側と下段側で、対応する被走査面に導くために副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーの枚数が奇数枚と偶数枚で異なることが望ましい。
【0046】
感光体への光ビームの入射角の絶対値が、各色に対応する被走査面で同じであることがよいことは上述のとおりである。
さらに、上記構成とすることで、感光体に入射する光ビームの入射角の方向を各色感光体で一致させることが可能となる。
この結果、光学系以外の帯電、現像など様々なモジュールの感光体周りへのレイアウトにおいて、感光体の間隔を同じにすることが容易となる。
【0047】
更に、各色で共通な感光体周りのレイアウトを実現することが可能となる。
また、各色毎に感光体に到達する光ビームの通るスペースを確保する必要が無く、最小限のスペース確保が容易となることで画像形成装置の小型化にも有利となる。
一般的なブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色でフルカラーを形成する画像形成装置においては、図4に示す光走査装置を2つ採用することで実現可能となる。
【0048】
図5に示す他例では、被走査面に近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子10と、光偏向器3に近い側の走査結像素子9との間に折り返しミラー11を配設している。
図4と同様に、図中で隣り合う被走査面へ向う光学系を比較すると、折り返しミラーの枚数が異なっているのは走査線曲がりの方向を揃えるためである。
【0049】
さらに別の実施形態として、4色で共通の光偏向器を用いた例を、図6に示す。
本実施の形態によれば、同一の光偏向器で対向する2つの異なる偏向反射面により副走査方向で上下段に偏向され、各々対応する4つの感光体に光ビームが導かれる。
この時、一方の偏向反射面で偏向される上段、及び、他方の偏向反射面で偏向される下段の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数と、一方の偏向反射面で偏向される下段、及び、他方の偏向反射面で偏向される上段の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数は、奇数枚と偶数枚で異なることが望ましい。
【0050】
各々の偏向反射面で反射される光ビームは、上記の通り、副走査方向で複数の光ビームの光偏向器での偏向反射点の中心を通り、且つ、光偏向器の偏向反射面に垂直な仮想面L0に対し、偏向された光ビームの副走査方向上段側と下段側で、対応する被走査面に導くために副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーの枚数が奇数枚と偶数枚で異なる構成としている。
しかしながら、図6に示すような対向方向に振り分ける方式においては、一方の偏向反射面で偏向される上段、及び、他方の偏向反射面で偏向される下段の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数と、一方の偏向反射面で偏向される下段、及び、他方の偏向反射面で偏向される上段の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数は、奇数枚と偶数枚で異ならせることで、全ての感光体への光ビームの入射角の方向を一致させることができる。
【0051】
図7は、被走査面からの反射光が光偏向器に近い光学素子に届かないようにするための条件を説明したものである。
被走査面からの反射光が被走査面に近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子10を通過すると、光偏向器3に近い光学素子9に届く可能性が高くなるので、それを外すための条件となっている。
つまり、被走査面上の反射点5bと被走査面に近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子の上側端部10aを結んだ線Lの延長線の内側に収まるように光偏向器に近い光学素子9のサイズを収める条件となっている。
【0052】
上述のとおり、ここでいう上側端部とは、光偏向器の偏向反射点の法線(仮想面L0)を含む走査平面に対し、副走査方向の反対側(上側)となる方向の光学素子10の端部を意味する。
符号Xは、仮想面L0を基準とした光学素子10の片側の高さを示している。
【0053】
図8に基づいて、本発明に係る上記光走査装置を適用した画像形成装置の構成を説明する。
同図において、符号21は帯電チャージャ、20は光走査装置、22は現像装置、23は転写チャージャ、24はクリーニング装置、25は給紙カセット、26は給紙ローラ、27は搬送ローラ、28はレジストローラ対、29は搬送ベルト、30、31はベルト支持ローラ、32はベルト帯電チャージャ、33はベルト分離チャージャ、34は除電チャージャ、35はベルトクリーニング装置、36は定着装置、37は排紙ローラ対、38は排紙トレイをそれぞれ示す。
本実施形態は、本発明に係る光走査装置20をタンデム型フルカラーレーザプリンタに適用した例である。
【0054】
装置内の下部側には、水平方向に配設された給紙カセット25から給紙される転写紙Sを搬送する搬送ベルト29が設けられている。
搬送ベルト29上にはイエローY用の感光体5Y、マゼンタM用の感光体5M、シアンC用の感光体5C、およびブラックK用の感光体5Kが、転写紙Sの搬送方向上流側から順に等間隔で配設されている。
なお、以下、符号に対する添字Y、M、C、Kを適宜付けて区別するものとする。
【0055】
これらの感光体5Y、5M、5C、5Kは全て同一径に形成されたもので、その周囲には、電子写真プロセスにしたがって各プロセスを実行するプロセス部材が順に配設されている。
感光体5Kを例に採れば、帯電チャージャ21K、光走査光学系20K、現像装置22K、転写チャージャ23K、クリーニング装置24K等が順に配設されている。
他の感光体5Y、5M、5Cに対しても同様である。
【0056】
すなわち、本実施形態では、感光体5Y、5M、5C、5Kの表面を各色毎に設定された被走査面ないしは被照射面とするものであり、各々の感光体に対して各光走査光学系(光走査装置20Y、20M、20C、20K)が1対1の対応関係で設けられている。
図面上では、これらの光走査光学系をまとめて1つの光走査装置20として示している。
【0057】
光走査装置20において、図中左側の走査レンズは9K、9Cで、右側の走査レンズは9M、9Yで共通使用している。
なお、被走査面に近い副走査方向に屈折力を持つ光学素子は、図4で示したように、各感光体に個別のものが配設されている。
搬送ベルト29の周囲には、感光体5Yよりも上流側に位置させてレジストローラ対28と、ベルト帯電チャージャ32が設けられている。
感光体5Kよりも搬送ベルト29の回転方向下流側に位置させてベルト分離チャージャ33、除電チャージャ34、ベルトクリーニング装置35等が順に設けられている。
【0058】
ベルト分離チャージャ33よりも転写紙搬送方向下流側には定着装置36が設けられ、排紙トレイ38に向けて排紙ローラ対37で結ばれている。
定着装置36は、定着ローラ36aと、加圧ローラ36bを有している。
【0059】
このような概略構成において、例えば、フルカラーモード(複数色モード)時であれば、各感光体5Y、5M、5C、5Kに対してY、M、C、K用の各色の画像信号に基づき各々の光走査装置20Y、20M、20C、29Kによる光ビームの光走査で、各感光体表面に、各色信号に対応した静電潜像が形成される。
これらの静電潜像は各々の対応する現像装置で色トナーにより現像されてトナー像となり、搬送ベルト29上に静電的に吸着されて搬送される転写紙S上に順次転写されることにより重ね合わせられ、転写紙S上にフルカラー画像が形成される。
このフルカラー像は定着装置36で定着された後、排紙ローラ対37により排紙トレイ38に排紙される。
【0060】
同図は説明のための模式図であり、小型化に最適なレイアウトは取られていない。
しかし、本発明の形態の光走査装置を用いることで、色ずれが無く、高品位な画像再現性が確保でき、低消費電力、低コストで小型な画像形成装置、およびフルカラー画像形成装置を実現することができる。
【0061】
本発明によれば、感光体からの反射光が再度その反射した感光体自体、もしくは他の感光体に入射することを防ぐことができる。
これにより、色むら、濃度むら、異常画像の生じない高品質な画像形成装置を提供できる。
また、光走査装置外からの反射光を除去するために、反射光は光走査装置を配置する光学箱内で除去可能としている。
【0062】
すなわち、光学箱外で他のモジュールなどの反射による感光体への照射を考えず、光走査装置内で解決可能としている。
更に、反射光除去のため、折り返しミラーの枚数を各色間で限定することで、他のモジュールのレイアウトの自由度、各色でのレイアウトの統一が可能となり、部品共通化による低コスト化、画像形成装置の小型化にも有利となる。
【符号の説明】
【0063】
3 光偏向器
3a 回転軸
4 走査結像光学系
5 像担持体としての感光体ドラム
5a 被走査面
5b 反射点
10 走査レンズとしての長尺トロイダルレンズ
11 返しミラー
20 光走査装置
22 現像装置
L 延長線
LB1 第1の光ビーム
LB2 第2の光ビーム
L0 光偏向器の回転軸に垂直な面としての仮想面
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特公平3−5562号公報
【特許文献2】特許第3699741号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置を複数備え、各光源装置からの光ビームは光偏向器により偏向された後、走査光学系により各々異なる被走査面に集光される光走査装置において、
前記走査光学系のうち最も被走査面側に位置する走査レンズの主走査方向中心近傍を通る光ビームの、前記走査レンズから射出され被走査面に到達する第1の光ビームと、前記第1の光ビームが被走査面での反射点で反射され生じる第2の光ビームとのなす角度をθ1とし、
前記第1の光ビームと、前記反射点と前記走査レンズの主走査方向中心近傍における副走査端部とを結ぶ線とのなす角度をθ2としたとき、
θ1>θ2
の条件を満足し、且つ、被走査面での反射光は、
前記光偏向器から被走査面の間に配置され、副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーでの反射を考慮せず展開した場合、前記光偏向器の回転軸に垂直な面から遠い方向に向かうことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、
被走査面へ入射する前記第1の光ビームの、被走査面の法線に対する角度の絶対値は同じであることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光走査装置において、
複数の光源装置からの光ビームは、前記光偏向器の同一偏向反射面、もしくは、副走査方向に並ぶ同一位相の偏向反射面で偏向され、
前記光偏向器の回転軸に垂直な面に対し、偏向された光ビームの副走査方向上段側と下段側で、対応する被走査面に導くために副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーの枚数が奇数枚と偶数枚で異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光走査装置において、
複数の光源装置からの光ビームは、同一の光偏向器の2つの異なる偏向反射面で、それぞれ前記光偏向器の回転軸に垂直な面に対し副走査方向上段側と下段側に偏向され、
偏向された光ビームをそれぞれ対応する被走査面に導くために副走査方向に光路を折り曲げる折り返しミラーを有し、
一方の偏向反射面で偏向される上段側及び他方の偏向反射面で偏向される下段側の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数と、
一方の偏向反射面で偏向される下段側及び他方の偏向反射面で偏向される上段側の光ビームに対応する折り返しミラーの枚数は、奇数枚と偶数枚で異なることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記光偏向器の回転軸に垂直な面が前記光偏向器の偏向反射点を通り、
各被走査面による反射光が、前記光偏向器の回転軸に垂直な面とは副走査方向で反対側に向って反射することを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記被走査面上の反射点と前記光学素子の副走査方向の端とを結んだ延長線よりも、前記走査結像光学系における他の光学素子の副走査方向高さが低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
光走査装置により前記被走査面を有する複数の像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像装置によりトナー像として可視像化し、該トナー像を記録媒体に記録する画像形成装置において、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の光走査装置を具備したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−76995(P2013−76995A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198497(P2012−198497)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】