説明

光関連デバイス封止用樹脂組成物およびその硬化物ならびに半導体素子の封止方法

【課題】光関連デバイスの封止に有用な、耐熱性、耐紫外線性、光学的透明性、靭性および接着性に優れた被膜を形成する光関連デバイス封止用組成物を提供する。
【解決手段】(イ)平均組成式(1):
1a(OX)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1はアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり;Xは式:−SiR234(R2、R3およびR4は1価炭化水素基)で表される基と、アルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基もしくはアシル基またはこれらの二種以上の基との組み合わせであり;aは1.00〜1.5の数;bは0<b<1.5を満たす数、但し、a+bは1.00<a+b<2)
で表される、ポリスチレン換算重量平均分子量が3×104〜50×104であるシリル化オルガノポリシロキサン、
(ロ)縮合触媒、並びに、
(ハ)溶剤
を含有する光関連デバイス封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用材料に関するものであり、更に詳しくは、高い耐熱性と耐紫外線性を有し、光学的透明性が高く、さらに高い靭性を有するLED素子等の光関連デバイスの封止用樹脂組成物およびその硬化物ならびに該組成物を用いた半導体素子の封止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED素子等の光関連デバイスの封止材としては、透明性の高いエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が作業性のよさや扱いやすさから幅広く使用されている。最近では、青色LED、紫外LED等の短波長をもったLEDが開発され急速にその用途が広がっている(例えば、特許文献1)。このような状況にあって、従来のエポキシ樹脂やシリコーン樹脂では強い紫外光により樹脂の黄変や、極端な場合は樹脂骨格が切断されるといった不具合が発生し、使用することが困難になっている。特に、紫外LED用途では樹脂による封止が困難であり、ガラス封止に頼らざるを得ないのが現状である。
【0003】
そこで、封止材に要求される優れた耐熱性、靭性および接着性を保持しつつ、さらに上記不具合を解消し、優れた光学的透明性および耐紫外線性を有する樹脂組成物の開発が期待されている。
【特許文献1】特開2001−207019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、硬化して優れた耐熱性、耐紫外線性、光学的透明性、靭性および接着性を有する被膜等を形成することができ、LED素子等の光関連デバイスの封止に有用な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、本発明を成すに至った。即ち、本発明は第一に、
(イ)下記平均組成式(1):
1a(OX)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり;
Xは式:−SiR234(ここで、R2、R3およびR4は独立に、非置換または置換の1価炭化水素基である。)で表される基と、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルコキシアルキル基もしくは炭素原子数2〜6のアシル基またはこれらの二種以上の基との組み合わせであり;
aは1.00〜1.5の数であり;
bは0<b<1.5を満たす数であり、
但し、a+bは1.00<a+b<2である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104〜50×104であるシリル化オルガノポリシロキサン、
(ロ)縮合触媒、並びに、
(ハ)溶剤
を含有する光関連デバイス封止用樹脂組成物を提供する。
【0006】
本発明は第二に、前記組成物を硬化させてなる透明な硬化物、を提供する。
【0007】
本発明は第三に、前記組成物を半導体素子に塗布することと、該半導体素子に塗布された組成物を硬化させることとを有する半導体素子の封止方法、を提供する。
【0008】
本発明は第四に、半導体素子と、該半導体素子を封止する上記組成物の硬化物とを有してなる樹脂封止型半導体装置、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、耐熱性、耐紫外線性、光学的透明性、靭性および接着性に優れ、さらに複屈折率が小さい硬化物の作製に有用である。その上、本発明の組成物は保存安定性も著しく優れている。したがって、LED素子等の光関連デバイスの封止用として特に有用である。さらに、本発明の組成物を用いた封止方法により半導体素子を封止すると、例えば、上記の優れた特性を有する光関連デバイスの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「室温」とは、24±2℃を意味する。また、「ポリスチレン換算の重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析(GPC)により得られた分子量分布から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0011】
<樹脂組成物>
本発明の組成物は、(イ)成分および(ロ)成分、(ハ)成分を含有してなるものである。以下、本発明の組成物に配合される成分について詳述する。
【0012】
〔(イ)シリル化オルガノポリシロキサン〕
(イ)成分は、上記平均組成式(1)で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104〜50×104、典型的には3×104〜5×104、より典型的には3×104〜4.5×104であるシリル化オルガノポリシロキサンである。重量平均分子量が3×104未満の場合には、高分子量オルガノポリシロキサンを後述の縮合触媒と混合して被膜を作製した際にクラックが入りやすく、10μm以上の厚さの被膜が得られないことがあり、50×104を超えると接着性が著しく低下するという問題が発生する。
【0013】
上記平均組成式(1)中、R1で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、例えば、アリル基、ビニル基等が挙げられ、炭素原子数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。R1としては、メチル基が特に好ましい。
【0014】
上記平均組成式(1)中、R2、R3およびR4は独立に、非反応性の置換または非置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数が1〜6、より好ましくは1〜3のものである。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、アリル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、それらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン置換したもの等が例示される。また、Xで表されるアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基およびアシル基は、それぞれ前述の炭素原子数を有するものである。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、例えば、アリル基、ビニル基等が挙げられる。炭素原子数2〜6のアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。炭素原子数2〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
【0015】
上記平均組成式(1)中、Xで表される[式:−SiR234(ここで、R2、R3およびR4は上述のとおりである。)で表される基]:[前記のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基もしくはアシル基またはこれらの二種以上の基]の割合は、モル比で、1:1〜8:1が好ましく、2:1〜4:1がより好ましい。かかる範囲を満たすと、硬化性に優れた組成物が得られ、さらに硬化して得られた硬化物は、良好な接着性のような被膜特性を有する。
【0016】
上記平均組成式(1)中、aは1.00〜1.5の数であり、好ましくは1.05〜1.3、特に好ましくは1.1〜1.2の数であり、bは0<b<1.5を満たす数であり、好ましくは0.01〜1.0、特に好ましくは0.05〜0.3の数である。aが1.00未満である場合には、被膜はクラックが入り易いものとなることがあり、1.5を超える場合には、被膜は靭性が低く、脆くなり易いものとなることがある。bが0である場合には、被膜の基体(例えば、半導体素子)に対する接着性が劣ることがあり、1.5を超えた場合には、硬化被膜が得られないことがある。また、a+bは1.00<a+b<2を満たす数であり、好ましくは1.00〜1.5、特に好ましくは1.1〜1.3の数である。
【0017】
(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサンは、得られる硬化物の耐熱性がより優れたものとなるためには、該シリル化オルガノポリシロキサン中のメチル基等に代表されるR1の比率(質量基準)を少なくすることが好ましく、具体的には32質量%以下、典型的には15〜30質量%、より典型的には20〜27質量%とすることが好ましい。また、(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。なお、(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサンは、UV紫外線照射等の用途に適用されるものである場合には、分子中にフェニル基等のアリール基を含有すると、UVによる劣化が大きくなる場合がある。そのため、上記平均組成式(1)中のR1、Xあるいは後述の一般式(2)中のR5、R6はフェニル基等のアリール基以外のものであることが好ましい。
【0018】
−製造方法−
(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサンは、如何なる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、通常の加水分解縮合で得られたオルガノポリシロキサンをシリル化することによって製造することができる。
【0019】
・シリル化に付すオルガノポリシロキサンの製造方法
シリル化に付すオルガノポリシロキサンは、具体的には、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物、好ましくは下記一般式(2):
SiR5c(OR6)4-c (2)
(式中、R5は独立に、前記で定義したR1と同じであり、R6は独立に、前記で定義したXのうち式:−SiR234で表される基を除くものと同じであり(即ち、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルコキシアルキル基もしくは炭素原子数2〜6のアシル基あり)、cは0〜3の整数である。)
で表されるシラン化合物(c=1〜3)ならびにシリケート(c=0)、ならびに該シリケートの縮重合物(即ち、ポリシリケート)(以下、シリケートとポリシリケートを併せて「(ポリ)シリケート」という。)を、加水分解および縮合させることにより得られる。上記加水分解性基を有するシラン化合物は、好ましくは上記一般式(2)で表されるシラン化合物(c=1〜3)のみであるが、上記一般式(2)で表されるシラン化合物(c=1〜3)と上記(ポリ)シリケートとの組み合わせであってもよい。これらの一般式(2)で表されるシラン化合物および(ポリ)シリケートは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0020】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等のトリオルガノアルコキシシランが挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)で表されるシリケートしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシラン等のテトラアルコキシシラン(即ち、アルキルシリケート)等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるシラン化合物(c=1〜3)またはシリケート(c=0)として好ましいのは、メチルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランである。また、上記ポリシリケートとしては、例えばメチルポリシリケートおよびエチルポリシリケートのような、アルキルシリケートの重縮合物(アルキルポリシリケート)が挙げられる。
【0022】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、加水分解性基を一分子中に3個有するシラン化合物(即ち、上記一般式(2)で表されるシラン化合物の場合にはc=1のシラン化合物)を合計で50モル%以上(50〜100モル%)、特に70〜95モル%、とりわけ75〜85モル%含有するものであることが好ましい。加水分解性基を一分子中に3個有するシラン化合物の具体例としては、上記オルガノトリアルコキシシラン等のオルガノトリヒドロカルビルオキシシラン等が挙げられる。前記加水分解性基を一分子中に3個有するシラン化合物は、オルガノトリアルコキシシランであることが特に好ましい。
【0023】
特に、耐クラック性および耐熱性が優れた硬化物を得るためには、上記のシリル化に付すオルガノポリシロキサンは、メチルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン50〜100モル%とジメチルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン50〜0モル%とからなるものが好ましく、メチルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン75〜85モル%とジメチルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン25〜15モル%とからなるものがより好ましい。
【0024】
・シリル化に付すオルガノポリシロキサンの製造方法(好ましい実施形態)
好ましい実施形態では、上記シリル化に付すオルガノポリシロキサンは、加水分解性基を有するシラン化合物を一次加水分解縮合と二次加水分解縮合の二段階の加水分解縮合反応に付すことにより得ることができる。例えば、以下の条件を適用することができる。
【0025】
具体的には、例えば、
(i)加水分解性基を有するシラン化合物を第一次の加水分解および縮合に供してオルガノポリシロキサンを得る工程(工程(i))と、
(ii)該オルガノポリシロキサンをさらに第二次の加水分解および縮合に供する工程(工程(ii))と、
を含む方法により製造することが好ましい。
【0026】
工程(i)で出発物質として用いる加水分解性基を有するシラン化合物の詳細は、上記で加水分解性基を有するシラン化合物として説明・例示したとおりである。
【0027】
工程(i)の加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解および縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば、酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒を使用する場合の使用量は、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基の合計1モル当り、0.0001〜0.01モル、好ましくは0.0005〜0.005モル程度とすることができる。上記範囲を満足する使用量の場合、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0028】
工程(i)の加水分解および縮合の際に添加される水の量は、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(通常、アルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基)の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.5モルであり、好ましくは1.0〜1.2モルである。この添加量が0.9〜1.5モルの範囲を満たすと、組成物は作業性が優れ、その硬化物は靭性が優れたものとなる。
【0029】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤に溶解して使用することが好ましい。具体的には、該有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類が好ましく、組成物の硬化性および硬化物の靭性が優れたものとなる点で、イソブチルアルコールがより好ましい。
【0030】
工程(i)の加水分解および縮合の反応温度は、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜80℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に使用可能な分子量の加水分解縮合物が得られる。
【0031】
こうして工程(i)で目的とするオルガノポリシロキサンが得られる。このオルガノポリシロキサンは、上記有機溶剤を使用した場合には溶液の状態で得られる。該オルガノポリシロキサンは溶液の状態で工程(ii)に用いても、溶剤を留去して不揮発分のみとしてから工程(ii)に用いてもよいが、通常、工程(ii)に供するには、溶剤等の揮発分が5質量%以上であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。揮発分が5質量%未満では該オルガノポリシロキサンはゲル化し易くなることがあり、35質量%を超えると反応性が低下することがある。
工程(i)で得られるオルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5×103〜2×104、より好ましくは1×104〜2×104、特に好ましくは1×104〜1.5×104である。かかる範囲を満たすと、工程(ii)において、該オルガノポリシロキサンは高分子量化し易くなり、目的とする適切な高分子量のオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0032】
工程(ii)は、工程(i)で得られた上記オルガノポリシロキサンをさらに第二次の加水分解および縮合に供するものである。
【0033】
この第二次の加水分解および縮合は加水分解縮合触媒である陰イオン交換樹脂の存在下で行われることが好ましい。この陰イオン交換樹脂としては、ポリスチレン系陰イオン交換樹脂が好ましい。この陰イオン交換樹脂は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。ポリスチレン系陰イオン交換樹脂としては、商品名で、ダイヤイオン(三菱化学(株)製)が好適に使用される。具体的な商品名としては、ダイヤイオンSAシリ−ズ(SA10A,SA11A,SA12A,NSA100,SA20A,SA21A)、ダイヤイオンPAシリ−ズ(PA308,PA312,PA316,PA406,PA412,PA418)、ダイヤイオンHPAシリ−ズ(HPA25)、ダイヤイオンWAシリ−ズ(WA10,WA20,WA21J,WA30)等が挙げられる。
【0034】
前記陰イオン交換樹脂の中でも、下記構造式(3):
【0035】
【化1】

(3)
で表される分子構造を有する水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂が好ましく、この樹脂中に30〜70質量%、とりわけ40〜50質量%の水分を含有するポリスチレン系陰イオン交換樹脂が特に好ましい。上記具体例のうち、SA10Aは上記構造式(3)で表される分子構造を有し、樹脂中に43〜47質量%の水分を含有するポリスチレン系陰イオン交換樹脂であるので、特に好適に使用される。水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂等の陰イオン交換樹脂を用いた場合には、該触媒中の水分が作用して反応が進行する。なお、水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂とは、最も一般的には、ゲル型のイオン交換樹脂であり、該樹脂粒子内部が均一な架橋高分子で構成されているもので、透明感のある外観を有する。該樹脂粒子の内部は橋架けされた高分子が均一な網目状の構造となっており、この網目の隙間を通って水分等が粒子内部まで自由に拡散しているものである。水分含有系の陰イオン交換樹脂を用いない場合には、別途、水を添加する必要がある。その際の水の使用量は、樹脂中に30〜70質量%の割合となるように添加することが好ましく、水がない場合や少なすぎる場合には陰イオン交換樹脂の塩基性が弱くなり、反応性が低下する場合がある。上記適切な割合の水分が存在することによって該陰イオン交換樹脂の塩基性が強くなり、反応が良好に進行する。
【0036】
この陰イオン交換樹脂の使用量は、工程(ii)の出発物質であるオルガノポリシロキサンの不揮発分に対して、通常、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。かかる範囲を満たすと、工程(ii)の加水分解および縮合の反応速度が良好であり、かつシリル化に付すオルガノポリシロキサンとしてより安定したものが得られる。
【0037】
工程(ii)の加水分解および縮合の反応温度は、10〜60℃が好ましく、特に25〜45℃であるとより良好に反応が進行する。反応温度がかかる範囲を満たすと、反応速度が良好であり、かつシリル化に付すオルガノポリシロキサンとしてより安定したものが得られる。
【0038】
工程(ii)の加水分解および縮合は、溶剤中で行うことが好ましく、有機固形成分の濃度が、特には50〜95質量%、とりわけ65〜90質量%の条件で行うことが好ましい。かかる範囲を満たすと、反応速度が良好であり、かつシリル化に付すオルガノポリシロキサンとしてより安定したものが得られる。
【0039】
工程(ii)における前記溶剤は、特に限定されないが、沸点が64℃以上であるものが好ましい。該溶剤として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、更にセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチロセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ジグライム、トリグライム等の沸点150℃以上の有機溶媒等が挙げられ、好ましくはキシレン、イソブチルアルコール、ビス(2−メトキシエチル)エ−テル、トリグライム、特に好ましくはイソブチルアルコールである。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0040】
こうして工程(ii)の目的とする上記のシリル化に付すオルガノポリシロキサンが得られる。ここで得られたシリル化に付すオルガノポリシロキサンは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上であることが好ましい。工程(ii)の加水分解および縮合を溶剤中で行った場合には、該シリル化に付すオルガノポリシロキサンは溶液の状態で得られる。該オルガノポリシロキサンは溶液の状態でシリル化に付してもよいし、溶媒を留去して不揮発分のみとしてからシリル化に付してもよい。しかし、溶媒がない状態では、該オルガノポリシロキサンは容易にゲル化する傾向が強くなるため、保存安定性の点から、溶液の状態で保存することが好ましく、特に、溶液の状態で5℃以下の温度で保存することがより好ましい。
【0041】
・オルガノポリシロキサンのシリル化
上記のいずれの方法によって得られたシリル化に付すオルガノポリシロキサンも、高分子量であるため、残存する水酸基の縮合により、容易にゲル化しやすい。そこで、このオルガノポリシロキサン中に残存する水酸基をシリル化(即ち、シリル化反応)することにより、安定化することができる。このシリル化反応の反応温度は、通常、0〜150℃であり、好ましくは0〜60℃である。
【0042】
シリル化反応の方法としては、例えば、前記オルガノポリシロキサンを、非反応性の置換基と結合したシリル基を有する化合物と反応させる方法が挙げられる。具体的には、該オルガノポリシロキサンをトリアルキルハロシランと反応させる方法;ヘキサアルキルジシラザン、N,N-ジエチルアミノトリアルキルシラン、N-(トリアルキルシリル)アセトアミド、N-メチル(トリアルキルシリル)アセトアミド、N,O-ビス(トリアルキルシリル)アセトアミド、N,O-ビス(トリアルキルシリル)カーバメート、N-トリアルキルシリルイミダゾール等の窒素含有シリル化剤を用いる方法;該オルガノポリシロキサンをトリアルキルシラノールと反応させる方法;該オルガノポリシロキサンをヘキサアルキルジシロキサンと弱酸性下で反応させる方法等が挙げられる。トリアルキルハロシランを用いる場合には、塩基を共存させて、副生するハロゲン化水素を中和してもよい。窒素含有シリル化剤を用いる場合は、トリメチルクロロシラン、硫酸アンモニウム等の触媒を添加してもよい。具体的には、トリメチルクロロシランを、トリエチルアミンとの共存下で、シリル化剤として使用する方法が好適である。
【0043】
これらのシリル化反応は溶媒中で行ってもよいが、溶媒を使用せずに行ってもよい。溶媒を使用する場合には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;クロロホルム、トリクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が使用できる。
【0044】
こうして本発明の目的とする、上記平均組成式(1)で表され、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上であるシリル化オルガノポリシロキサンが得られる。シリル化反応を溶媒中で行った場合には、シリル化オルガノポリシロキサンは溶液の状態で得られるが、溶液の状態で保存・使用してもよいし、溶媒を留去して不揮発分のみとしてから保存・使用してもよい。
【0045】
〔(ロ)縮合触媒〕
(ロ)成分の縮合触媒は、(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサンを硬化させるために必要とされる成分である。該縮合触媒としては、特に限定されないが、有機金属系触媒、ルイス酸またはアルミニウム化合物が使用し得る。シリル化オルガノポリシロキサンの安定性が優れ、そして得られる硬化物が硬度、無黄変性等に優れる観点から、通常、有機金属系触媒が用いられる。この有機金属系触媒としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、チタン、錫、コバルト等の金属原子を含有するものが挙げられ、好ましくは、錫、亜鉛、アルミニウム、若しくはチタンの原子、またはこれらの原子の1種若しくは2種以上の組み合わせを含有するものが挙げられる。有機金属系触媒としてより具体的には、例えば、有機酸亜鉛、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、有機酸錫化合物、有機酸コバルト化合物等が好適に用いられ、特に、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫等が例示される。これらの中でも、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が好ましく使用される。縮合触媒として使用し得る上記ルイス酸としては、具体的にはフッ化ホウ素(BF)、塩化ホウ素(BCl)、フッ化アンチモン(SbF、SbF)等が挙げられる。また縮合触媒として使用し得る上記アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウムまたはリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0046】
縮合触媒の添加量は、(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサン100質量部に対して、通常、0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。かかる範囲を満たすと、組成物の硬化性が良好であり、安定したものとなる。(ロ)成分の縮合触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0047】
〔(ハ)溶剤〕
(ハ)成分である溶剤は、本発明の組成物を基体である半導体素子の表面に塗布し硬化させて被膜を形成したときに、厚さが均一で表面が平滑である被膜を広がりのある状態で(即ち、大面積で)形成する上で有効である。
(ハ)成分の溶剤としては、沸点が、好ましくは150℃以上、より好ましくは155〜230℃、特に好ましくは160℃〜170℃の有機溶剤が使用されるが、沸点150℃未満の有機溶剤も一定範囲で混合して使用することができる。
【0048】
沸点が150℃以上の有機溶媒としては、例えば、セロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ビス(2−メトキシエチル)エ−テル、トリグライム等が挙げられ、好ましくはビス(2−メトキシエチル)エ−テルである。
【0049】
また、沸点が150℃未満の有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒(特に、塩化炭化水素系溶媒);メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン系溶媒が挙げられる。
【0050】
有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよいが、沸点が150℃未満の有機溶剤は通常沸点が150℃以上の有機溶媒との混合溶媒の形で使用される。このような混合溶媒では、沸点が150℃未満の有機溶媒の割合が30質量%以下で沸点が150℃以上の有機溶媒が70質量%以上であることが好ましい。
【0051】
即ち、一般に、(ハ)成分として用いられる溶剤は、沸点が150℃以上の有機溶媒70〜100質量%からなることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。このような条件の下で、本発明の組成物を硬化させる際に泡によるブツ(ボイド)の発生を抑制することができ均質で平滑性に優れた硬化被膜を形成することができ、さらに基体への接着性が良好な成形物が得られる。
【0052】
(ハ)成分の配合量は、前記(イ)成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは5〜40質量部、特に好ましくは10〜30質量部である。即ち、(イ)成分と(ハ)成分の合計に対する(イ)成分の含有量が好ましくは67質量%以上、より好ましくは71〜95質量%、特に好ましくは77〜91質量%である。かかる範囲を満たすと、硬化物の成形性がより良好なものとなり、さらに該硬化物の厚さを、乾燥状態で、典型的には10μm〜3mm、より典型的には20μm〜1mmとなるように加工することが容易になる。
【0053】
〔その他の任意成分〕
本発明の組成物には、上記(イ)成分および(ロ)成分、(ハ)成分以外にも、本発明の作用・効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を配合することができる。その他の任意成分としては、例えば、無機フィラー、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、有機溶媒等が挙げられる。これらの任意成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0054】
無機フィラーを配合すると、得られる硬化物の光の散乱や組成物の流動性が適切な範囲となったり、該組成物を利用した材料が高強度化されたりする等の効果がある。無機フィラーとしては、特に限定されないが、光学特性を低下させない微粒子状のものが好ましく、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0055】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体等が挙げられる。
【0056】
最も単純な実施形態において、本発明の組成物は、前記(イ)成分および(ロ)成分、(ハ)成分を含有し、シリカ充填剤等の無機フィラーを含有しない組成物であり、特には前記(イ)成分、(ロ)成分、および(ハ)成分のみから実質的になる組成物である。ここで「のみから実質的になる」とは、(イ)成分、(ロ)成分及び(ハ)成分以外の成分の量が組成物全体の5質量%未満、好ましくは3質量%未満、特には1質量%未満であることを意味する。
【0057】
〔組成物の調製〕
本発明の組成物は、前記(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分、および場合により含有される任意成分を任意の方法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分および場合によっては含まれる任意成分を、通常、市販の攪拌機(例えば、THINKY CONDITIONING MIXER((株)シンキー製)等)に入れて、1〜5分間程度、均一に混合することによって、本発明の組成物を調製することができる。
【0058】
〔硬化物の作製〕
前記組成物を硬化させることにより透明な硬化物を作製することができる。この硬化物の厚さは、特に限定されないが、下限が好ましくは10μm、特に好ましくは20μmであり、上限が好ましくは3mm(3000μm)、特に好ましくは1mm(1000μm)であり、典型的には10μm〜3mmである。
【0059】
硬化条件としては、例えば、前記組成物を25〜200℃で1〜12時間程度加熱すればよいが、25〜200℃の範囲において温度の異なる複数の段階で硬化させる(即ち、ステップキュアする)ことが好ましい。ステップキュアは、例えば、2段階または3段階以上を経て、好ましくは次に説明する3段階を経て行うことができる。まず、組成物を60〜120℃で低温硬化させる。硬化時間は0.5〜2時間程度の範囲でよい。次いで、低温硬化させた組成物を120〜160℃で加熱硬化させる。硬化時間は0.5〜2時間程度の範囲でよい。最後に、加熱硬化させた組成物を160〜200℃でさらに加熱硬化させる。硬化時間は1〜5時間程度の範囲でよい。より具体的には、例えば、該組成物を80℃で0.5時間低温硬化させ、次いで150℃で1時間加熱硬化させ、さらに180℃で4時間加熱硬化させることが好ましい。
【0060】
これらの段階を経た硬化工程により、硬化物は硬化状態が良好となり、気泡の発生も適切に抑制される。更に、ステップキュアにより、上記の厚さを有する無色透明の硬化物を得ることができる。特に、100℃以上の温度で加熱硬化させる段階を含むことにより厚さ10μm〜3mmの硬化物を作製することが可能である。また、かかるステップキュア工程により、残存するシリル基、アルコキシ基等を反応性の差に従って硬化反応を起こさせるため、得られる硬化物の硬化ひずみ(内部応力)が少なくなるので好ましい。
【0061】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物は、高強度で、かつ可撓性、接着性が良好である。また、本発明の組成物から厚膜(例えば、50μm以上)の作製も可能である。
【0062】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物のガラス転移点(Tg)は、通常、市販の測定器(例えば、真空理工(株)製の熱機械試験器(商品名:TM-7000、測定範囲:25〜200℃))では検出されないほど高いので、硬化物は極めて耐熱性に優れたものである。
【0063】
〔組成物の用途〕
本発明の組成物は、LED素子等の光関連デバイスの封止用、特には青色LEDや紫外LEDの素子封止用として有用なものである。本発明の組成物は、その他にも、優れた耐熱性、耐紫外線性、透明性等の特性を有することから、下記のディスプレイ材料、光記録材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途にも用いることができる。
【0064】
−1.ディスプレイ材料−
ディスプレイ材料としては、例えば、液晶ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料;次世代フラットパネルディスプレイであるカラープラズマディスプレイ(PDP)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等;有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;フィールドエミッションディスプレイ(FED)の各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
【0065】
−2.光記録材料−
光記録材料としては、例えば、VD(ビデオディスク)、CD、CD−ROM、CD−R/CD−RW、DVD±R/DVD±RW/DVD−RAM、MO、MD、PD(相変化ディスク)もしくは光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等が挙げられる。
【0066】
−3.光学機器材料−
光学機器材料としては、例えば、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部等;ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー等;プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等;光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等が挙げられる。
【0067】
−4.光部品材料−
光部品材料としては、例えば、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等;光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等;光受動部品・光回路部品である、レンズ、導波路、LED素子の封止材、接着剤等;光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【0068】
−5.光ファイバー材料−
光ファイバー材料としては、例えば、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等;工業用のセンサー類、表示・標識類等;通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー等が挙げられる。
【0069】
−6.半導体集積回路周辺材料−
半導体集積回路周辺材料としては、例えば、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料等が挙げられる。
【0070】
−7.光・電子機能有機材料−
光・電子機能有機材料としては、例えば、有機EL素子周辺材料;有機フォトリフラクティブ素子;光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料;ファイバー材料;これらの素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【0071】
〔半導体素子の封止方法〕
LED素子等の半導体素子は、本発明の組成物の硬化物を用いて封止することができる。具体的には、例えば、該組成物を半導体素子に塗布することと、該半導体素子に塗布された該組成物を硬化させることとを含む方法で封止を行うことができる。該組成物の塗布は、上記の有機溶媒を含む組成物としてワニスの状態で行ってもよいが、有機溶媒を含まない組成物の状態で行ってもよい。また、塗布は、コーティングにより行っても、浸漬法により行ってもよく、スピンコート法、ロールコーター法、フローコーター法、ナイフコーター法、スキージング法等が適用できる。塗布された組成物は、例えば、上記のステップキュア工程を用いて硬化させることができる。
【0072】
〔樹脂封止型半導体装置〕
本発明の樹脂封止型半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子を封止する上記組成物の硬化物とを有するものである。
【0073】
上記組成物の硬化物で封止される半導体素子としては、例えば、発光ダイオード、フォトダイオード、CCD、CMOS、イメージセンサー、フォトトランジスター、IRセンサー、レーザーダイオード等が挙げられる。
【0074】
上記半導体素子を封止するための組成物の硬化物の厚さは、10μm〜3mm(3000μm)の厚さが可能であり、特に20μm〜1mm(1000μm)程度の厚さが好適である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、合成例で用いたメチルトリメトキシシランは信越化学工業(株)製のKBM13(商品名)であり、ジメチルジメトキシシランは信越化学工業(株)製のKBM22(商品名)である。
また、以下の記載において「ポリスチレン換算の重量平均分子量」は、東ソー(株)製の高速GPC装置(商品名HLC-8220GPC)を用い、THF溶液(0.6ml/min)で測定して求めた値である。
【0076】
<合成例1>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン109g(0.8モル)とジメチルジメトキシシラン24g(0.2モル)とイソブチルアルコ−ル106gとを入れ、撹拌しながら氷冷した。系中の温度を0℃〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液60.5gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を80℃の還流温度で11時間攪拌した。次いで、得られた反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、希釈した反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより水を留去し、揮発分を30質量%に調整して、下記式(4):
(CH3)1.2(OX)0.25SiO1.28 (4)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=7.0:1.0:0.9(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は91.1モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が15000のオルガノポリシロキサンA溶液を113g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)得た。
【0077】
次に、得られたオルガノポリシロキサンA溶液113g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)とポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)15.8gをフラスコに入れて、36℃で32時間、攪拌混合して反応させた。32時間の反応終了後、反応液にキシレン27gを入れて、ろ過することにより下記式(5):
(CH3)1.2(OX)0.12SiO1.34 (5)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=3.0:0.5:0.6(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は95.7モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が34000のオルガノポリシロキサンB溶液を135g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)得た。
【0078】
更に、得られたオルガノポリシロキサンB溶液135g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)とトリエチルアミン36gとキシレン120gとをフラスコに入れた後、攪拌しながら、25〜60℃でトリメチルシリルクロライド26gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を2時間室温で反応させた後、水を200g滴下した。その後、反応液を分液ロートに入れて分離した後、水200gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水で水を留去し、ろ過、および溶剤ストリップを行うことにより、下記式(6):
(CH3)1.2(OX)0.10SiO1.35 (6)
(式中、Xは、−Si(CH3)3で表される基:メチル基:イソブチル基=2.7:0.4:0.5(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は96.4モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が38000のシリル化オルガノポリシロキサンC溶液を71g(有機溶媒を含み、不揮発分92質量%である。)得た。参考データとして MW=38000の場合のGPCデ−タを図1に示す。
【0079】
<合成例2>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン68.1g(0.5モル)とジメチルジメトキシシラン60.1g(0.5モル)とイソブチルアルコ−ル118gとを入れ、撹拌しながら氷冷した。系中の温度を0℃〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液54gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を80℃の還流温度で11時間攪拌した。次いで、得られた反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、希釈した反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより水を留去し、揮発分を30質量%に調整して、下記式(7):
(CH3)1.5(OX)0.28SiO1.11 (7)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=7.1:2.0:2.1(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は88.8モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が9000のオルガノポリシロキサンD溶液を109g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)得た。
【0080】
次に、得られたオルガノポリシロキサンD溶液109g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)とポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)15.2gをフラスコに入れて、36℃で32時間、攪拌混合して反応させた。32時間の反応終了後、反応液にキシレン25gを入れて、ろ過することにより、下記式(8):
(CH3)1.5(OX)0.21SiO1.15 (8)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=6.1:1.1:1.2(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は91.6モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が30000のオルガノポリシロキサンE溶液を133g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)得た。
【0081】
更に、得られたオルガノポリシロキサンE溶液133g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)とトリエチルアミン36gとキシレン120gとをフラスコに入れた後、攪拌しながら、25〜60℃でトリメチルシリルクロライド26gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を2時間室温で反応させた後、水を200g滴下した。その後、反応液を分液ロートに入れて分離した後、水200gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水で水を留去し、ろ過および溶剤ストリップを行うことにより、下記式(9):
(CH3)1.5(OX)0.19SiO1.16 (9)
(式中、Xは、−Si(CH3)3で表される基:メチル基:イソブチル基=5.4:1.1:1.1(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は92.4モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が31000のシリル化オルガノポリシロキサンF溶液を70g(有機溶媒を含み、不揮発分91質量%である。)得た。
【0082】
<合成例3>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン136.2g(1.0モル)とイソブチルアルコ−ル106gとを入れ、撹拌しながら氷冷した。系中の温度を0℃〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液81gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を80℃の還流温度で11時間攪拌した。次いで、得られた反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、希釈した反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより水を留去し、揮発分を30質量%に調整して、下記式(10):
(CH3)1.0(OX)0.24SiO1.38 (10)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=5.5:1.3:1.2(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は92.0モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が21000のオルガノポリシロキサンG溶液を105g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)得た。
【0083】
次に、得られたオルガノポリシロキサンG溶液105g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)とポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)14.7gをフラスコに入れて、36℃で32時間、攪拌混合して反応させた。32時間の反応終了後、反応液にキシレン24gを入れて、ろ過することにより、下記式(11):
(CH3)1.0(OX)0.12SiO1.44 (11)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=3.1:0.4:0.5(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は96.0モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が40000のオルガノポリシロキサンH溶液を124g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)得た。
【0084】
更に、得られたオルガノポリシロキサンH溶液124g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)とトリエチルアミン33gとキシレン120gとをフラスコに入れた後、攪拌しながら、25〜60℃でトリメチルシリルクロライド24gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を2時間室温で反応させた後、水を200g滴下した。その後、反応液を分液ロートに入れて分離した後、水200gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水で水を留去し、ろ過および溶剤ストリップを行うことにより、下記式(12):
(CH3)1.0(OX)0.10SiO1.45 (12)
(式中、Xは、−Si(CH3)3で表される基:メチル基:イソブチル基=2.6:0.3:0.4(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は96.7モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が41000のシリル化オルガノポリシロキサンI溶液を69g(有機溶媒を含み、不揮発分92質量%である。)得た
【0085】
<比較合成例1>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン40.9g(0.3モル)とジメチルジメトキシシラン84.1g(0.7モル)とイソブチルアルコ−ル113gとを入れ、撹拌しながら氷冷した。系中の温度を0℃〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液52gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を80℃の還流温度で11時間攪拌した。次いで、得られた反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、希釈した反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより水を留去し、揮発分を30質量%に調整して、下記式(13):
(CH3)1.7(OX)0.25SiO1.03 (13)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=9.2:2.7:2.8(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は85.3モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が7100のオルガノポリシロキサンJ溶液を108g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)得た。
【0086】
次に、得られたオルガノポリシロキサンJ溶液108g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)とポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)15.1gをフラスコに入れて、36℃で32時間、攪拌混合して反応させた。32時間の反応終了後、反応液にキシレン25gを入れて、ろ過することにより、下記式(14):
(CH3)1.7(OX)0.22SiO1.04 (14)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=8.5:2.2:2.2(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は87.1モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8600のオルガノポリシロキサンK溶液を129g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)得た。
【0087】
更に、得られたオルガノポリシロキサンK溶液129g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)とトリエチルアミン33gとキシレン120gをフラスコに入れた後、攪拌しながら、25〜60℃でトリメチルシリルクロライド24gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を2時間室温で反応させた後、水を200g滴下した。その後、反応液を分液ロートに入れて分離した後、水200gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水で水を留去し、ろ過および溶剤ストリップを行うことにより、下記式(15):
(CH3)1.7(OX)0.21SiO1.05 (15)
(式中、Xは、−Si(CH3)3で表される基:メチル基:イソブチル基=8.2:2.1:2.1(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は87.6モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8700のシリル化オルガノポリシロキサンL溶液を70g(有機溶媒を含み、不揮発分92質量%である。)得た。
【0088】
<比較合成例2>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン40.9g(0.3モル)とジフェニルジメトキシシラン170.8g(0.7モル)とイソブチルアルコ−ル106gとを入れ、撹拌しながら氷冷した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液55.1gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を80℃の還流温度で11時間攪拌した。次いで、得られた反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、希釈した反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の電気伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより水を留去し、揮発分を30質量%に調整して、下記式(16):
(CH3)0.3(C65)1.4(OX)0.26SiO1.02 (16)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=10.1:2.5:2.7(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は84.7モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が6700のオルガノポリシロキサンM溶液を124g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)得た。
【0089】
次に、得られたオルガノポリシロキサンM溶液124g(有機溶媒を含み、不揮発分70質量%である。)とポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)17.4gをフラスコに入れて、36℃で32時間、攪拌混合して反応させた。32時間の反応終了後、反応液にキシレン25gを入れて、ろ過することにより、下記式(17):
(CH3)0.3(C65)1.4(OX)0.21SiO1.05 (17)
(式中、Xは、水素原子:メチル基:イソブチル基=9.5:1.4:1.5(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は87.6モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8400のオルガノポリシロキサンN溶液を142g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)得た。
【0090】
更に、得られたオルガノポリシロキサンN溶液142g(有機溶媒を含み、不揮発分57質量%である。)とトリエチルアミン39gとキシレン120gをフラスコに入れた後、攪拌しながら、25〜60℃でトリメチルシリルクロライド28gを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を2時間室温で反応させた後、水を200g滴下した。その後、反応液を分液ロートに入れて分離した後、水200gで洗浄し、洗浄後の洗浄水の伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水で水を留去し、ろ過および溶剤ストリップを行うことにより、下記式(18):
(CH3)0.3(C65)1.4(OX)0.20SiO1.05 (18)
(式中、Xは、−Si(CH3)3で表される基:メチル基:イソブチル基=8.9:1.4:1.5(モル比)の組み合わせであり、加水分解率は88.2モル%である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8500のシリル化オルガノポリシロキサンO溶液を78g(有機溶媒を含み、不揮発分92質量%である。)得た。
【0091】
<実施例1〜3、比較例1〜5>
合成例1〜3および比較合成例1〜2で得られたオルガノポリシロキサンおよびシリル化オルガノポリシロキサンと縮合触媒であるアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、溶剤を表1に示す種類・配合量(単位:質量部)で混合した。こうして調製された組成物を、下記の評価方法に従って硬化させ、得られた硬化物(被膜)の耐クラック性、接着性、耐熱性、保存安定性および外観を測定・評価し、さらにUV照射試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0092】
−評価方法−
1.耐クラック性
組成物を縦50mm×横50mm×深さ2mmのテフロン(登録商標)コートを施した金型に入れ、80℃で0.5時間、150℃で1時間、180℃で4時間の順番でステップキュアを行うことにより、厚さ1mmの硬化膜を作製した。この硬化膜のクラックの有無を目視で観察した。前記硬化膜にクラックが認められない場合を「良好」と評価してAと示し、クラックが認められる場合を「不良」と評価してBと示す。また、前記硬化膜が作製できなかった場合を「測定不可」と評価してCと示す。
【0093】
2.接着性
ガラス基板に組成物を浸漬法で塗布し、その後、80℃で0.5時間、150℃で1時間、180℃で4時間の順番でステップキュアを行うことにより、ガラス基板上に厚さ2〜3μmの硬化物を形成させた。ゴバン目テストにより、該硬化物の該ガラス基板に対する接着性を調べた。また、該硬化物にクラックが発生して接着性が測定できなかった場合には、表中に×と示す。
【0094】
3.耐熱性
組成物を縦50mm×横50mm×深さ2mmのテフロン(登録商標)コートを施した金型に入れ、80℃で0.5時間、150℃で1時間、180℃で4時間の順番でステップキュアを行うことにより、厚さ1mmの硬化膜を作製し、その質量を測定した。次いで、この硬化膜を250℃のオーブンに入れ、500時間経過後の質量を測定した。作製直後の硬化膜の質量に対する500時間経過後の硬化膜の質量の割合を求め、残存質量率(%)とした。この値が100%に近いほど耐熱性が良好であると評価される。また、前記硬化膜が作製できなかった場合には、表中に×と示す。
【0095】
4.硬化物の外観
組成物を縦50mm×横50mm×深さ300μmのテフロン(登録商標)コートを施した金型に入れ、80℃で0.5時間、150℃で1時間、180℃で4時間の順番でステップキュアを行うことにより、厚さ200μmの硬化膜を作製した。この硬化膜の表面を目視で観察した。なお、クラックが認められた場合には、クラックがない部分の表面を目視で観察した。
【0096】
5.UV照射試験
ガラス基板に組成物をスポイトで0.1g滴下し、80℃で0.5時間、150℃で1時間、180℃で4時間の順番でステップキュアを行うことにより、ガラス基板上に硬化物を形成させた。その硬化物に対して、UV照射装置(商品名:アイ紫外硬化用装置、アイグラフィックス(株)製)によりUV照射(30mW)を24時間行った。UV照射後の硬化物の表面を目視により観察した。前記硬化物の表面に全く劣化が認められない場合を「良好」と評価しAと示し、やや劣化が認められる場合を「やや劣化あり」と評価しBと示し、著しい劣化が認められる場合を「劣化」と評価しCと示した。
【0097】
6.保存安定性
組成物を25℃で保存して、12時間後の状態を観察した。組成物に全く増粘等の変化が認められない場合を「良好」と評価しAと示し、やや粘度変化が認められる場合を「やや粘度変化あり」と評価しBと示し、ゲル化した場合を「劣化」と評価しCと示した。
【0098】
【表1】

【0099】
〔表1の注〕
・(A)〜(C)成分の配合量の単位:質量部
*表中のオルガノポリシロキサンおよびシリル化オルガノポリシロキサンの配合量は、有機溶媒を含まない不揮発分の量(120℃/5mmHgで3時間のストリッピングに供した後に測定)である。
※1 メチル基含有量:有機溶媒を含まないオルガノポリシロキサンまたはシリル化オルガノポリシロキサン(不揮発分)中のメチル基の理論値である。
※2 使用したオルガノポリシロキサンまたはシリル化オルガノポリシロキサン中のフェニル基の有無である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】合成例1で製造した、本発明の組成物の(A)成分として用いられるシリル化オルガノポリシロキサンのGPCにより得られた結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)下記平均組成式(1):
1a(OX)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり;
Xは式:−SiR234(ここで、R2、R3およびR4は独立に、非置換または置換の1価炭化水素基である。)で表される基と、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルコキシアルキル基もしくは炭素原子数2〜6のアシル基またはこれらの二種以上の基との組み合わせであり;
aは1.00〜1.5の数であり;
bは0<b<1.5を満たす数であり、
但し、a+bは1.00<a+b<2である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104〜50×104であるシリル化オルガノポリシロキサン
(ロ)縮合触媒、並びに、
(ハ)溶剤
を含有する光関連デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記R2、R3およびR4がメチル基である請求項1に係る組成物。
【請求項3】
前記R1が炭素原子数1〜6のアルキル基である請求項1または2に係る組成物。
【請求項4】
前記R1がメチル基である請求項3に係る組成物。
【請求項5】
前記(イ)成分のシリル化オルガノポリシロキサン中の前記R1の比率が32質量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に係る組成物。
【請求項6】
前記(ロ)成分の縮合触媒が有機金属系触媒である請求項1〜5のいずれか一項に係る組成物。
【請求項7】
前記有機金属系触媒が錫、亜鉛、アルミニウムもしくはチタンまたはこれらの二種以上の原子を含有する請求項6に係る組成物。
【請求項8】
前記有機金属系触媒がアルミニウムキレート化合物である請求項7に係る組成物。
【請求項9】
前記アルミニウムキレート化合物がアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)である請求項8に係る組成物。
【請求項10】
前記(ハ)成分の溶剤が沸点150℃以上の有機溶媒を少なくとも1種含有し、かつ該有機溶剤の配合量が前記(イ)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して50質量部以下である請求項1〜9のいずれか1項に係る組成物。
【請求項11】
前記の沸点150℃以上の有機溶媒がビス(2−メトキシエチル)エ−テルである請求項10に係る組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に係る組成物を硬化させてなる透明な硬化物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に係る組成物を100℃以上の温度で硬化させて得られる、厚さが10μm〜3mmである透明な被膜状硬化物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に係る組成物を半導体素子に塗布することと、該半導体素子に塗布された組成物を硬化させることとを有する半導体素子の封止方法。
【請求項15】
半導体素子と、該半導体素子を封止する請求項1〜11のいずれか一項に係る組成物の硬化物とを有してなる樹脂封止型半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−280534(P2008−280534A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101865(P2008−101865)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】