説明

光電気複合配線モジュールおよびその製造方法

【課題】
性能、量産性ともに優れた光電気複合配線モジュールおよびこれを用いた伝送装置を提供する。
【解決手段】
光素子2a、2bを、回路基板1に形成された光導波路11と光結合できるように、回路基板上1に配置し、光素子の側面または/およびその上部に形成されたバンプの側面にフィレット状に樹脂を形成し、その上層から樹脂フィルムを圧着して絶縁層31を形成し、電気配線層3を光素子2の電極と電気配線層3の配線が電気的に接続されるように積層し、さらにその上に半導体素子4を実装した構造とすることで、チャネル当たりの伝送速度を高しかつ消費電力の増大を防ぐ。また、水分の影響で光素子の劣化を起こさない構造とし、高い信頼性を実現する。さらに、伝送装置への接続方式が簡便で高い生産性を生み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置内において送受信される大容量の光信号を一括処理する光電気融合配線モジュールとそれを用いた伝送装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信分野において、光信号による通信トラフィックの整備が急速に行われつつあり、これまで基幹、メトロ、アクセス系といった数km以上の比較的長い距離について光ファイバ網が展開されてきた。今後はさらに、伝送装置間(数m〜数百m)、或いは装置内(数cm〜数十cm)といった近距離も大容量データを遅延なく処理するために光信号を用いることが有効であり、ルータ、サーバ等の情報機器内部のLSI間またはLSI−バックプレーン間伝送の光化が進められている。
【0003】
光信号伝送構造を構築する際、重要となるのが光電変換素子(光素子)と光導波路や光ファイバ等の光伝送路との結合部分である。発光素子からの光を光配線に伝搬させる、または光伝送路から伝搬した光を受光素子に入射させるとき、充分に効率よく光結合させるために、光素子と光伝送路との位置合わせを高精度に行う必要がある。一方で、量産性や実用性を考慮すると、光結合部や、情報機器に用いられるLSIは、容易に取り外し・交換できることが望ましい。
例えば、特開2006−133763号公報(特許文献1)においては、光素子と光伝送路との結合をガイドピンで位置合わせし、ソケットピンを用いて光素子とLSIを実装する構造としている。これにより、比較的容易に光素子と光伝送路の位置合わせが可能となり、またソケットピンで実装することにより、LSIの着脱が容易になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−133763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構造では、以下の問題点が生じる。まず、光素子とLSIとの距離を短くできない点が挙げられる。当構造では、光素子はLSIの直下ではなく外側に配置される。従って、光素子に信号を伝搬させるためには、この間を電気配線で接続しなければならない。LSIからの信号の伝送速度を速くしても、この部分が律速となって充分な伝送速度が得られない。また、電気配線が長くなる分損失も増大し、その結果消費電力が増大する懸念がある。また、実装密度を充分に高くすることができず、基板の大型化を招く。さらに、信頼性面でも問題がある。光素子と光伝送路を精度よく位置合わせしようとすると、各ガイドピン、各ソケットピンに相当の位置公差があることから接合部に大きな応力がかかり、信頼性が著しく劣ることが予想される。また、光素子に封止がされておらず、水分などの影響を直に受けて素子の特性が劣化する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、LSIと光素子との距離をできる限り短くし、チャネルあたりの伝送速度を高くでき、かつ消費電力を小さくできる構造とすること、ならびに実用性を考慮して、LSIや部品の着脱が容易でかつ高信頼な光電気融合配線モジュールそれを用いた伝送装置と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、光素子と、半導体素子と、光素子および前記半導体素子に接続されるための電気配線と光導波路を具備した回路基板を有する光電気複合配線モジュールであり、回路基板に形成された光導波路と光結合できるように回路基板上に配置された光素子の側面を液状樹脂により覆って硬化させてフィレット状樹脂とし、光素子の上から樹脂シートを圧着して絶縁層を形成し、光素子の電極パッドの上に電気配線層を形成してバンプと電気配線層の配線が電気的に接続された構造とし、電気配線層上に半導体素子を実装して電気的に接続した構造とした光電気複合配線モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体素子と、光素子との間を短距離の配線により電気的に接続することができ、チャネル当たりの伝送速度を高くすることができ、かつ消費電力の増大を防ぐことができる。また、絶縁層形成時に光素子側面と樹脂層との間に間隙が形成されるのを回避できるため、間隙への水分等の滞留による実装信頼性低下などの光素子への影響を阻止することができる。また、光素子が基板上により強固に固定されるため、実装信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による第一の実施の形態を示す模式図である。
【図2】本発明による第一の実施の形態を示す模式図の光素子部拡大図である。
【図3】本発明による第一の実施の形態についての製造方法を示す模式図である。
【図4】本発明による第一の実施の形態を示す模式図である。
【図5】本発明による第二の実施の形態を示す模式図である。
【図6】本発明による第二の実施の形態を示す模式図である。
【図7】本発明による第三の実施の形態を示す模式図である。
【図8】本発明による第三の実施の形態を示す模式図である。
【図9】本発明による第三の実施の形態を示す模式図である。
【図10】本発明による第三の実施の形態を示す模式図である。
【図11】本発明による第四の実施の形態を示す模式図である。
【図12】本発明による第四の実施の形態を示す模式図である。
【図13】本発明による第四の実施の形態を示す模式図である。
【図14】本発明による第四の実施の形態を示す模式図である。
【図15】本発明による第五の実施の形態を示す模式図である。
【図16】本発明による第六の実施の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を用いて、本発明の実施の形態を詳細に述べる。
【実施例1】
【0011】
まず、図1に、本発明の第一の実施の形態を示す。本図は、本発明による光電気融合配線モジュールの断面図である。回路基板1は、光伝送路である光導波路11が設けられ、その上層または下層に電気配線12が設けられている。回路基板1の表層13には、電気配線12に電気的に接続されている電極パッド14が具備されている。光導波路11の端部15はおよそ45°の傾斜がついており、光信号の向きをおよそ90°上方に曲げることができる構造になっている。本実施例では、実装密度を向上されるために光導波路11を2層にしているが、1層あるいは3層以上でも構わない。
【0012】
光素子2a、2bは、回路基板1の表層13に実装されている。本実施例においては、光素子2aは面発光型の半導体レーザ(発光素子)、光素子2bは、面入射型のフォトダイオード(受光素子)である。光素子2aは、回路基板1側に発光部位がある発光面を有し、光素子2bも回路基板2b側に受光部位がある受光面を有している。これら光素子2a,2bは、実装密度の観点からは複数の発光点/受光面が集積されているアレイ型のものが望ましいが、1チャネルのものでも構わない。
【0013】
図2に光素子2a周辺部の拡大断面図を示す。光素子2aに電流を流すための電極21a、22aは、本実施例においては回路基板1とは反対側(本図では上側)に具備される。これらの電極21a、22aにはそれぞれ導体バンプ23a、24aが形成されている。バンプは、該光素子2aの上層に形成されている薄膜配線層3の電気配線31に電気的に接続されている。光素子2aおよびバンプ23a、24aの側壁にはフィレット状の樹脂25が形成されている。光素子2aの上層にある絶縁層31は、Bステージ状態の絶縁シートを圧着により光素子を埋め込む形で形成したものである。このとき、光素子およびバンプ側壁に形成されたフィレット状の樹脂25は、圧着時に絶縁シートが周り込みきらずに光素子やバンプの側壁に空孔が形成されるのを回避する役割を果たしている。これにより高信頼な光電気混合配線モジュールが提供できる。
【0014】
図1に示すように、薄膜配線層3は、Bステージ状態の絶縁シートから形成された絶縁層31を含む、電気配線層33、35および絶縁層31、34および表層の複数の電極パッド36から構成されており、光素子2a、2bの上層に形成され、ビア32を解して光素子の各バンプおよび回路基板1の電極パッド14を薄膜配線の表層電極パッド36に電気的につなぐ構造になっている。薄膜配線層3の上にはLSI4が配置されている。LSI4には複数の電極パッド41が備わり、この電極パッド41と薄膜配線層の電極パッド36とが、バンプ42を介してそれぞれ電気的に接続している。バンプ42は、はんだボールやAuのスタッドバンプ、あるいはめっきによるバンプ等でも構わない。LSI4には、本実施例では半導体レーザ用の駆動回路、フォトダイオード用の増幅回路が集積されている。もちろん、LSIとこれら駆動/増幅回路ICを独立させた構造としても構わない。本実施例においては、光素子2a、2bは、LSI4の真下、すなわちLSI4を回路基板1に投影した投影面内に配置することにより、光素子2からLSI4までの距離を小さくし、伝送速度を大きく、消費電力を小さくしている。また、配線の距離が小さいので、製造も簡易になる。
【0015】
次に、図3に従って、図1および図2の製造方法の一例を説明する。まず、図3(a)は、二本の光導波路11、電気配線12、電極パッド14を有する回路基板1を表す図である。この表層13に光素子2を光導波路15と光結合するように搭載する(図3(b))。光素子2を固着する手段として、本実施例では、光素子2が発光または受光する光の波長に対して透明な接着剤51を用いた。接着剤51の塗布方法としては、固着前の接着剤を光素子2の接着面に転写し、その状態で基板1上に搭載する方式を用いたが、基板上に接着剤を滴下する方法でも構わない。光素子2を搭載する際は、光導波路15と光素子2が効率よく光結合するために、光導波路15の端部と位置合わせする必要がある。従って、光素子の搭載装置(マウンタまたはボンダ)は、必要な搭載精度を確保できる装置を使用した。アレイ型の光素子を用いると、発光点または受光面が増えるため、搭載精度は厳しい方向になるが、発光点間/受光面間の位置ずれは、ウェハプロセスで一括に形成しているため無視できるほど小さいこと、光導波路間の端部に関しても、フォトリソグラフィ等で一括形成するため同様に小さいため、実質は1チャネル品とほとんど同じ搭載精度で実装可能である。また、光素子と光導波路とは、光導波路の上部クラッド部分のみ、もしくは表層に形成される樹脂層分の距離、すなわち数〜数十μmを介して光結合されるため、光結合効率を高くとることができる。
【0016】
なお、光素子の固定方法に関しては、光路を妨げないのであれば、透明でない接着剤を用いても構わない。また、光素子の回路基板側にメタライズを形成できれば、図7に示すように、はんだ接合を用いても構わない。このときは当然はんだが光路を妨げないようにする必要がある。また、はんだが発光/受光点の周囲全周を囲むように形成できれば、光路を妨げる物質の侵入を回避することができる。
【0017】
次に、光素子2の電極パッド21、22上にバンプ23、24を形成する。本実施例では、バンプボンダを用いてAuのスタッドバンプ23,24を形成した。スタッド形成後、レベリングを行い各バンプ23,24の高さがほぼ同じになるようにした。バンプの形成方法としては、上記以外の、例えばめっきによるものでも構わない。バンプを形成する順番に関しても、本実施例のように光素子2を基板1に搭載してからではなく、光素子単体、あるいはウェハレベルの状態のときに実施しても構わない。
【0018】
次に、光素子2とバンプ23,24の側面にフィレット状の樹脂25を形成する。まず、ディスペンサで液状の樹脂を光素子2及びバンプ23,24の側面に塗布されるように滴下し、その後加熱等により樹脂25を硬化させる。これにより、図に示すようにフィレット状に樹脂25が形成される。樹脂に求められる条件としては、電子回路基板や光素子によく密着し、側面に水分が溜まるような空孔を形成しないようにできることである。さらに、光素子2に過大な応力が掛からないようヤング率が小さいものが望ましい。接着剤などが光素子2と回路基板1の間への侵入を妨げるので、樹脂25は、光に対して透明でも不透明でもよい。具体的にはメチル系シリコーン、フェニル系シリコーン、シリコーンとエポキシのハイブリッド樹脂のいずれかを主成分とするものが好適である。
【0019】
次に、光素子2の上層に、Bステージ状態の絶縁フィルムを圧着させる。Bステージ状態とは、熱硬化樹脂における反応の中間段階であり、材料は加熱により軟化して膨張するが、ある種の液体と接触しても、完全には溶融又は溶解しない段階のことである。すると図3(d)のように、光素子は絶縁層に埋め込まれた形状になる。このとき光素子およびバンプの側面にフィレット状の樹脂が存在することにより、圧着時に光素子やバンプの側壁周辺に空孔が形成されるのを回避することができる。もし空孔ができると、装置使用時に空孔内に水分がたまり光素子の特性に悪影響が発生する恐れがある。つまり、本発明による構造をとることにより、高信頼な光電気複合配線モジュールを提供することができる。
【0020】
Bステージ状態の絶縁シートとしては、ポリアミドイミド樹脂やポリイミド樹脂が好適である。具体的には日立化成工業製のKS6600や、東レ製のLPN-1400である。東レのLPN-1400は感光性を有するので、圧着後のパターン形成の方法に幅が広がる。
【0021】
絶縁層31を圧着した後、配線層3を形成する。本実施例では、絶縁層31に感光性樹脂を用い、フォトリソプロセスにより絶縁層31にスルーホール32を形成している。その後加熱工程により樹脂を本硬化させる。その後、めっき等のプロセスによりスルーホール32内に導体33を形成する。このとき上層の電気配線層3をめっきにより同時に形成してもよい。
【0022】
スルーホール32の別の形成方法としては、研磨による形成がある。絶縁層31を圧着し、本硬化させた後、絶縁層31の上層からポリシング等の研磨工程を用いて平坦に研磨する。光素子に形成されたバンプが表面に露出したところで研磨を終了すると、光素子のバンプがスルーホールとなる。
【0023】
次に、配線層33を形成する。ビア充填・配線形成には電気めっきを用いた。以下、図示していないが、電気めっきによる配線層形成方法を説明する。まず、スパッタリングにより基板表面全体にシード膜を形成する。シード膜の構成は、接着層Cr膜とCu膜の積層構造とした。次に、Cuの電気めっきを施し、ビアホールにCuを充填する。本実施例ではフィルドビアの構造としたが、中心部に導体の存在しない、コンフォーマルタイプの構造でも構わない。また、配線層の形成方法に関しても、めっきを用いずに、スパッタリング成膜のみとしても構わない。これにより、基板表面全体にCu膜が形成される。次にフォトリソグラフィにより配線パターンの分離を行い、図3(e)に示す構造に至る。
【0024】
さらにこの上に絶縁層と配線層の形成を行うことで、配線層3は完成する(図3(f))。最上層は、LSIを接合するためのバンプに見合った材料を用いた電極パッド36を形成する。本実施例では、図示していないが、はんだ接続電極用として、Ni/Au膜を形成した。なお、本実施例では、薄膜配線層3は2層としたが、これは、LSIと光素子や、回路基板1との電気配線の形態によっては、1層あるいは3層以上としてもよい。また、薄膜配線層3の形成方法に関しても、本実施例以外の公知の手法も用いても構わない。
【0025】
最後に、薄膜配線層3の上にLSI4を実装する(図3(g))。本実施例では、半導体レーザの駆動回路およびフォトダイオードの増幅回路が集積されたLSI4を適用した。接合方法は、Sn系のはんだを用いたバンプを用い、LSIを搭載した後リフロー接合を行った。LSI4に関しては、先にも述べた通り、LSI4から駆動回路や増幅回路を独立させ、それぞれ個別に実装したものでも構わない。また、バンプ接合方式に関しても、例えばAuバンプによる超音波接合、Auバンプとはんだによる接合、さらにはめっきバンプを形成し、はんだ接合するなど他の方式を用いても構わない。はんだバンプ接合方式のメリットとしては、はんだ融点以上の温度に上げることで、容易にLSIを取り外すあるいは交換することが容易に行える点である。
【0026】
なお、本実施例では光素子2にバンプを形成して光素子とバンプ双方の側面に樹脂を塗布する構造を採ったが、図4に示すようにバンプのない電極パッド構造とし、樹脂25は光素子2の側面にのみ塗布するという構造としても構わない。
【0027】
本発明による光電気融合配線モジュールの量産性をさらに向上させる手段として、冗長性を付与するという手段がある。具体的には、実際に使用するよりも多い数の光素子と光導波路との組み合わせを具備するものである。もし、光素子とLSIとをつなぐ薄膜配線に不良が発生した場合、あるいは光素子や光導波路に不良が発生した場合、予備として用意した配線・光素子・光導波路を使用する。もし、欠陥なく形成できた場合は、回路的あるいは物理的に予備回路を使用できない状態にする。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態について図5を用いて説明する。図5と図2との違いは、光素子2にレンズ2cが搭載されているという点である。光素子2にレンズ2cを搭載する目的は、光ビームを収束させ光素子2と光導波路11との光結合効率を向上させるのが目的である。レンズ2cはレンズの媒質とレンズ表面に接する部分の媒質との屈折率差でその仕様が決まる。従って、レンズと電子回路基板表面の媒質に何を選定するかでレンズ2cの仕様が変わる。本実施例では、電子回路基板表面には、実施例1と同様の透明樹脂(接着剤)が存在する構造になっている。この樹脂の屈折率(n=1.4)を踏まえて所望の特性になるようにレンズの構造を設計している。接着剤がレンズに触れないように搭載すれば、媒質は空気(屈折率n=1)として所望の集光特性が出せるようなレンズ設計をすればよい。その後のプロセスは実施例1と同様である。これにより、高信頼で生産性が高く、かつ光結合効率のよい光電気混合配線モジュールが提供できる。光結合効率が高くなることにより光素子の駆動電流を低減できるメリットもあり、省電力化・温暖化防止という効果ももたらす。
【0029】
なお、本実施例では光素子2にバンプ24を形成して光素子2とバンプ24双方の側面に樹脂25を塗布する構造を採ったが、実施例1と同様に、図6に示すようにバンプのない電極パッド構造とし、樹脂25は光素子の側面にのみ塗布するという構造としても構わない。
【実施例3】
【0030】
次に、本発明の第3の実施形態について図7を用いて説明する。図7と図2の違いは、光素子が回路基板にはんだで実装されているという点である。はんだを用いることで、光素子の電子回路基板への接触面にはAu等のメタライズを形成する必要がある。また、はんだは当然光を透過しないので、光ビームが通過する部分にははんだがかからないようにする。光素子の電子回路基板に接触する面の外周全体にメタライズを形成し、電子回路基板へはんだ搭載することで発光/受光部分を完全に封止することができれば、その後の光素子側面へ樹脂滴下する際に発光/受光部分に樹脂が回りこむのを完全に回避することができ、好適である。その後のプロセスについては、実施例1と同様である。
【0031】
はんだによる実装は、レンズが具備された光素子にも適用できる。その形態を図8に示す。図7と同様に、光素子の電子回路に面する面の外周にメタライズ形成してはんだで接合することによりレンズと電子回路基板表面の空間は空気層となり、これに応じて設計したレンズを用いればよい。その後の樹脂滴下でも樹脂がレンズ表面にまで達する恐れはなく、生産性の高い光電気混載配線モジュールを提供することができる。その後のプロセスに関しては、実施例1と同様である。
【0032】
本実施例に関しても、図9および図10のようにバンプのない電極パッド構造として樹脂は光素子の側面にのみ塗布するという構造としても構わない。また、メタライズの代わりに接着剤を光素子外周に設け、光素子と回路基板の間に空気層を形成してもよい。
【実施例4】
【0033】
次に、本発明の第5の実施形態について図11を用いて説明する。図11と図2に示す実施例1との違いは、光素子2がサブマウント27に実装され、サブマウント27を介して回路基板1にはんだ26で実装されているという点である。サブマウント27は、例えば窒化アルミ(AlN)により形成されている。サブマウント27は、凹状(ザグリ形状)になっており、光素子は凹部の中に搭載される。まず、光素子2をサブマウント27の凹部に搭載する。搭載方式としてはAu-Snはんだを用いた。この搭載により、光素子2をサブマウント27に固定するのと同時にサブマウント27に内装されているビア(図示せず)と電気的に接続される。ビアはサブマウント27の光素子2の搭載部分と反対の表面にある電極パッド22と電気的に繋がっている。すなわち、光素子2の電極は搭載によりサブマウント27表面の電極パッド22に電気的に接続された構造となる。
【0034】
次に、サブマウント27を電子回路基板1に搭載する。本実施例でははんだ26を用いた。もちろん、実施例1のように接着剤を用いて実装しても構わない。その後は実施例1と同様のプロセスにより形成するが、本実施例では光素子2がサブマウント27に置き換わる。すなわち、バンプ24の形成はサブマウント表面の電極パッド22上に形成し、フィレット状の樹脂25は、サブマウント27の側壁およびサブマウント27上のバンプ22の側壁に形成する。
【0035】
このような構造をとることにより、上述のメリットに加えて光素子の検査工程やハンドリング方式の自由度が増え、生産性がさらに向上する。
【0036】
本実施例に関しても、レンズ2cを具備した光素子を適用することができる。その形態を図12に示す。サブマウント17の、電子回路基板1への実装面のメタライズを外周全周に形成する構造とすればレンズと電子回路基板表面の空間は空気層となり、樹脂25の侵入を防ぐことができる。また、本実施例も図13や図14のようにサブマウント27表面にバンプのない電極パッド構造として樹脂25は光素子の側面にのみ塗布するという構造としても構わない。
【実施例5】
【0037】
次に、本発明の第四の実施の形態について、図15を用いて説明する。実施例1〜4において、光素子2の放熱は、主に光素子2の電極22に接続したバンプ21および配線層3の電気配線によって行われるが、本実施例では、光素子2からの発熱をより効率よく放熱するための構造が付与されている。まず、回路基板1の光素子が搭載される近傍には、導体パッド17が形成されている。光素子2a、2bは、この導体パッド17上に搭載される。接合方法は放熱性を良くするために、熱伝導率の高い接合材を用いる。本実施例では、はんだを使用した。光素子の回路基板側には、はんだを接続するための表面がAuからなるメタルパッド27を具備させた。導体パッド17は、電子回路基板1の表層に広く形成された導体層18に繋がっており、この導体層18基板の周辺もしくは端部まで延び、ヒートスプレッダの役割を果たす。また、導体層18は、回路基板1に形成された放熱ビア19に接続しており、回路基板の下側にも放熱できる構造になっている。さらに、導体層17は、薄膜配線層3に形成された放熱用のビア37にも接続されており、これにも熱が伝わる構造となっている。放熱用ビア37は、薄膜配線層表層にて放熱部材である放熱フィン71にはんだ熱伝導のよい接合材で接続され、この部分からも放熱される。これにより、光素子からの発熱が効率よく放熱され、光電気融合配線モジュールの動作特性が安定する。
【0038】
本実施例では、放熱経路を導体層(基板の端部)、回路基板の放熱ビア19、薄膜配線層の放熱ビア37と3つの経路をとっているが、モジュール全体構造や、光素子の発熱量などに応じてこれらの中の1つまたは2つのみを形成する構造としても構わない。さらに、放熱フィン71は、なくてもよいし、フィンのない導体ブロックや水冷ジャケットなど別の形態でもよいし、あるいはLSI4の冷却構造と一体形成してもよい。
【実施例6】
【0039】
最後に、本発明による光電気融合配線モジュールが伝送装置に適用される形態を、図16を用いて説明する。なお、回路基板1および親回路基板82は、簡略のため電気配線を図示していない。
【0040】
図16において、電源回路等の電気の入力は、回路基板1の裏面側から供給される。本実施例では、はんだバンプ81によって親回路基板82とバンプで接合する構造となっているが、これはピンを挿入する形態のもの、あるいは電気コネクタでも構わない。一方、高速光信号は光コネクタ83により結合されている。外部からの光信号は、ここでは光ファイバ84としているが、それ以外の、光導波路フィルムや、光伝送路が形成された回路基板などでも適用可能である。
【0041】
なお、本実施例では、光電気複合配線モジュールとして、図1に示される実施例1の形態を適用しているが、それ以外の実施例2〜5の形態についても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の実施により、高速伝送が可能で消費電力が小さく、かつ高信頼で生産性の高い光電気融合配線モジュールおよびこれを用いた伝送装置が実現可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・回路基板、11・・・光導波路、12・・・回路基板の電気配線、13・・・回路基板の表層、14・・・回路基板の電極パッド、15・・・光導波路の端部(45°ミラー)、16・・・電極パッド、17・・・導体パッド、18・・・導体層、19・・・回路基板の放熱ビア、2・・・光素子、2a・・・発光素子(面発光型半導体レーザ)、2b・・・受光素子(面入射型フォトダイオード)、21a、21b、22a、22b・・・光素子の電極、23a、23b、24a、24b・・・スタッドバンプ、3・・・薄膜配線層、31、34・・・薄膜配線層の薄膜絶縁層、32・・・薄膜配線層のビア、33、35・・・薄膜配線層の電気配線層、36・・・薄膜配線層の電極パッド、37・・・薄膜配線層の放熱ビア、4・・・LSI、41・・・LSIの電極パッド、42・・・LSI接合バンプ、51・・・接着剤、52・・・樹脂、6・・・第二の回路基板、61・・・第二の回路基板の絶縁基板、62、62・・・第二の回路基板の配線、64・・・第二の回路基板のスルーホール、65・・・はんだ、71・・・放熱部材(放熱フィン)、81・・・はんだバンプ、82・・・親回路基板、83・・・光コネクタ、84・・・光伝送路(光ファイバ)、91・・・光信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝搬する光導波路を有する回路基板と、
前記回路基板上に設けられ、前記光導波路と光結合する光素子と、
前記回路基板及び前記光素子上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた配線パッドと、
前記光素子と前記配線パッドを電気的に接続する電気配線と、
前記配線パッド上に設けられて電気的に接続される半導体素子とを備え、
前記光素子の側面には、フィレット状の樹脂が設けられ、
前記絶縁膜は、前記回路基板及び前記フィレット上の樹脂上に設けられた絶縁フィルムにより形成されていることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記光素子上の電極パッドと、前記電気配線を接続するバンプを備え、
前記バンプの側面に、前記フィレット上の樹脂が設けられていることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記フィレット状の樹脂は、液状の樹脂を前記光素子側面に塗布後に硬化させたものであり、
前記絶縁フィルムは、フィルムを前記回路基板及び前記フィレット状の樹脂上に貼り合わせたものであることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記光素子は、前記回路基板に接着剤により接着ざれ、
当該接着剤は、前記光素子の発光面または受光面に接し、前記光素子が発光するまたは受光する光に対して透明であり、
前記フィレット状の樹脂は、前記光に対して透明ではないことを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記光素子は、回路基板側の面にレンズが具備されていることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記フィレット状の樹脂は、メチル系シリコーン、フェニル系シリコーン、シリコーン/エポキシハイブリッド樹脂のいずれかを主成分とした樹脂であることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項7】
請求項1〜3、5、6のいずれかにおいて、
前記光素子は、回路基板を向いた面に周状のメタライズまたは接着剤を有して前記回路基板に設けられており、
前記光素子と前記回路基板との間であり、前記周状のメタライズまたは接着剤の内周側に空気層を有していることを特徴とする光電気配線モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記光素子は、凹状のサブマウントと、当該凹状内に設けられ、発光又は受光を行う素子とを備えたことを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項9】
光信号を伝搬する光導波路を有する回路基板上に、当該光導波路に光結合するように、光素子を設ける工程と、
前記回路基板上でありかつ前記光素子の側面に、樹脂を塗布し、硬化させる工程と、
前記回路基板及び前記硬化させた樹脂上に、フィルム状の絶縁フィルムを貼り合わせて絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記光素子と電気的に接続される配線パッドを形成する工程と、
前記配線パッドに半導体素子を接続する工程と、
を含む光電気複合配線モジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記光素子上にバンプを有し、
前記樹脂は、前記光素子の側面及び前記バンプの側面に塗布されて硬化されることを特徴とする光電気複合配線モジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の光電気複合配線モジュールの製造方法において、
前記樹脂シートがBステージ状態で、前記樹脂シートを圧着し、その後本硬化させて形成することを特徴とする光電気複合配線モジュールの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の光電気複合配線モジュールを有し、
前記光導波路は、その前記光素子と光結合していない側の端部が、光コネクタでモジュール外部の光導波路または光ファイバで光結合され、
前記回路基板の電気配線が、モジュール外部の電気配線と、電気的に接続されていることを特徴とする伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−13587(P2011−13587A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159409(P2009−159409)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】