内燃機関の空燃比制御装置
【課題】下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合においても、エミッションをよりいっそう改善できる空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】触媒下流に配置された下流側空燃比センサの出力値Voxsが減少し且つその出力値Voxsの所定時間あたりの変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。出力値Voxsが増大し且つ前記変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。触媒流出ガスの空燃比の変化に対する下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの変化の応答性が良好でないほど、リーン判定閾値の大きさが小さくなるようにリーン判定閾値を変更し、リッチ判定閾値の大きさが小さくなるようにリッチ判定閾値を変更する。
【解決手段】触媒下流に配置された下流側空燃比センサの出力値Voxsが減少し且つその出力値Voxsの所定時間あたりの変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。出力値Voxsが増大し且つ前記変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。触媒流出ガスの空燃比の変化に対する下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの変化の応答性が良好でないほど、リーン判定閾値の大きさが小さくなるようにリーン判定閾値を変更し、リッチ判定閾値の大きさが小さくなるようにリッチ判定閾値を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に三元触媒を備えた内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排ガスを浄化するために同機関の排気通路に「酸素吸蔵機能を備える三元触媒」が配設されている。この三元触媒は、周知のように、その三元触媒に流入するガス(触媒流入ガス)に過剰の酸素が含まれているとき、その酸素を吸蔵するとともにNOxを浄化する。三元触媒は、触媒流入ガスに過剰な未燃物が含まれているとき、吸蔵している酸素を放出してその未燃物を浄化する。以下、三元触媒は単に「触媒」とも称呼される。
【0003】
従来の空燃比制御装置(従来装置)は、機関の排気通路であって触媒の下流に配設された下流側空燃比センサを備える。従来装置は、その下流側空燃比センサの出力値に基づいて触媒の状態(酸素吸蔵状態)を実質的に判定し、その判定した触媒の状態に基づいて機関に供給される混合気の空燃比(即ち、触媒流入ガスの空燃比)を変更する。機関に供給される混合気の空燃比は、「機関の空燃比」とも称呼される。
【0004】
より具体的に述べると、下流側空燃比センサは図2に示した出力値Voxsを出力する。この下流側空燃比センサは濃淡電池型の酸素濃度センサとも称呼される。
【0005】
下流側空燃比センサの出力値Voxsは、図2に示したように、触媒から流出するガス(触媒流出ガス)の空燃比が理論空燃比よりも小さい場合(理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰な酸素が含まれていない場合、最大値Vmax(例えば、1V)又は最大値Vmax近傍の値となる。この場合、触媒の状態は、一般に、酸素不足状態である(触媒内に酸素が殆ど吸蔵されていない)と判断され得る。
【0006】
下流側空燃比センサの出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい場合(理論空燃比よりもリーン側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれている場合、最小値Vmin(例えば、0V)又は最小値Vmin近傍の値となる。この場合、触媒の状態は、一般に、酸素過剰状態である(触媒内に吸蔵されている酸素の量が、最大酸素吸蔵量Cmaxに近い)と判断され得る。
【0007】
そこで、従来装置は、出力値Voxsと、「最大値Vmaxと最小値Vminとの平均値(中央の値)である中央値Vmid=(Vmax+Vmin)/2」に設定された判定値Vth(目標値)と、に基づいて触媒の状態を実質的に判定し、その判定結果に実質的に基づいて機関の空燃比を制御している。
【0008】
即ち、従来装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合、触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比(リーン空燃比)となるように(触媒に過剰な酸素が流入するように)、機関の空燃比を制御する。更に、従来装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい場合、触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比(リッチ空燃比)となるように(触媒に過剰な未燃物が流入するように)、機関の空燃比を制御する(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−171982号公報
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、実際には、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である場合に下流側空燃比センサの出力値Voxsが明らかな減少を始めた時点においては、触媒流出ガスには過剰の酸素が多量に含まれている。よって、触媒の酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量Cmaxに近い値にあり、この場合に触媒流入ガスの空燃比をリーン空燃比に維持することは、たとえ出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合であっても、多量のNOxが排出される可能性が高まる点において好ましくない。
【0011】
同様に、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合に下流側空燃比センサの出力値Voxsが明らかな増大を始めた時点においては、触媒流出ガスには過剰の未燃物が多量に含まれている。よって、触媒の酸素吸蔵量は「0」に近い値にあり、この場合に触媒流入ガスの空燃比をリッチ空燃比に維持することは、たとえ出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい場合であっても、多量の未燃物が排出される可能性が高まる点において好ましくない。
【0012】
係る知見に基き、本発明による空燃比制御装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、次に述べる空燃比制御を行う。
(1)本発明装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsの所定時間あたりの変化量(以下、「出力変化量ΔVoxs」とも称呼する。)を求める。
(2)本発明装置は、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されているとき(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるとき)、出力値Voxsが減少していて且つ出力変化量ΔVoxsの大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいていると判定し、目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定する。即ち、触媒流入ガスの空燃比を理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比に設定する。
(3)本発明装置は、目標空燃比が目標リッチ空燃比に設定されているとき(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であるとき)、出力値Voxsが増大していて且つ出力変化量ΔVoxsの大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき、触媒の状態が酸素不足状態に近づいていると判定し、目標空燃比を目標リーン空燃比に設定する。即ち、触媒流入ガスの空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比に設定する。
【0013】
しかしながら、下流側空燃比センサの製造上のばらつき(センサの個体差)等により、下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比の変化に対する出力値Voxsの変化は個々のセンサ間で相違する。即ち、下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する出力値Voxsの応答性(「下流側空燃比センサの出力値の応答性」又は「下流側空燃比センサの応答性」とも称呼する。)はセンサ間で一定ではない。この応答性の差は、下流側空燃比センサが備える多孔質の保護層(排ガスが最初に到達する層)の厚さ及び空孔率等がセンサ間において一定ではないこと等に起因すると考えられる。
【0014】
図4は、(A)下流側空燃比センサの出力値Voxs、(B)出力値Voxsの所定時間あたりの変化量である出力変化量ΔVoxs(出力値Voxsの傾き、出力値Voxsの時間微分値d(Voxs)/dtに相当する値)、(C)上記目標空燃比に相当する上流側目標空燃比abyfr、及び、(D)窒素酸化物(NOx)排出量、を示したタイムチャートである。図4において、実線は応答性が基準の応答性である下流側空燃比センサについての各値、破線は応答性が基準の応答性よりも良好な下流側空燃比センサについての各値、一点鎖線は応答性が基準の応答性よりも良好でない下流側空燃比センサについての各値を示している。
【0015】
図4に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比は目標リーン空燃比afLeanであり、時刻t0の近傍にて触媒から酸素が流出し始めたために、図4の(A)に示したように、出力値Voxsは時刻t0から減少し始めている。しかしながら、破線により示した応答性の良好な下流側空燃比センサの出力値Voxsは相対的に速やかに減少するのに対し、一点鎖線により示した応答性の良好でない下流側空燃比センサの出力値Voxsは相対的に緩やかに減少する。
【0016】
従って、図4の(B)に示したように、下流側空燃比センサの応答性が良好な場合には出力変化量ΔVoxsは時刻t1にてリーン判定閾値(図4における第1リーン判定閾値)に達するのに対し、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合には出力変化量ΔVoxsは「時刻t1以降の時刻t3」にてリーン判定閾値に達する。このため、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、目標空燃比を目標リッチ空燃比afRichに設定する時点が遅れる(図4の(C)における時刻t1に対する時刻t3を参照。)。
【0017】
即ち、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、排ガスの空燃比の変化に対して出力値Voxsの変化が遅れるので、出力変化量ΔVoxsの変化も遅れる。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいているとの判定が遅れ、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されている時間が長くなる。この場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である時間が必要以上に長くなるので、NOxの排出量が増大する(図4の(D)における破線及び実線に対する一点鎖線を参照。)。
【0018】
本発明は係る問題に対処するためになされたものであり、その目的は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合においても、エミッションをより一層改善することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【0019】
より具体的に述べると、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の一態様は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
空燃比制御手段と、
目標空燃比設定手段と、
応答性指標値取得手段と、
閾値変更手段と、
を備える。
【0020】
前記空燃比制御手段は、機関の空燃比の目標値(即ち、目標空燃比)が所定の目標リーン空燃比(理論空燃比よりも大きい空燃比)に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する。更に、空燃比制御手段は、目標空燃比が所定の目標リッチ空燃比(理論空燃比よりも小さい空燃比)に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する。
【0021】
前記目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定する。更に、目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する。
【0022】
前記応答性指標値取得手段は、「前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性」を表す「応答性指標値」を下流側空燃比センサの出力値に基いて取得する。応答性指標値は、後述するように、種々の方法により取得することができる。
【0023】
前記閾値変更手段は、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更する。
【0024】
これによれば、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、リーン判定閾値の大きさが小さくなる(図4の(B)の第2リーン判定閾値、矢印を参照。)。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、出力変化量ΔVoxsの大きさは、リーン判定閾値が一定である場合に比べ、大きさが小さく変更されたリーン判定閾値に「より短い時間」にて到達する。従って、本発明装置は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合であっても、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されていて下流側空燃比センサの出力値が減少しているとき、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいていることを遅滞なく検出することができる。よって、目標空燃比を目標リッチ空燃比へと遅滞なく変更することができる。その結果、多量のNOxを含むリーン空燃比のガスが触媒に過剰に流入することを回避できるので、NOxの排出量を低減することができる。
【0025】
本発明装置の一態様においては、
前記閾値変更手段が、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される(図5の(B)の第2リッチ判定閾値、矢印を参照。)。
【0026】
これによれば、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、リッチ判定閾値の大きさが小さくなる。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、出力変化量ΔVoxsの大きさは、リッチ判定閾値が一定である場合に比べ、大きさが小さく変更されたリッチ判定閾値に「より短い時間」にて到達する。従って、本発明装置は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合であっても、目標空燃比が目標リッチ空燃比に設定されていて下流側空燃比センサの出力値が増大しているとき、触媒の状態が酸素不足状態に近づいていることを遅滞なく検出することができる。よって、目標空燃比を目標リーン空燃比へと遅滞なく変更することができる。その結果、多量の未燃物(HC及びCO等)を含むリッチ空燃比のガスが触媒に過剰に流入することを回避できるので、未燃物の排出量を低減することができる。
【0027】
更に、本発明装置の一態様において、前記閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値を第1リーン判定閾値に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値に設定する、
ように構成される(図4を参照。)。
【0028】
同様に、本発明装置の態様において、前記閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を第1リッチ判定閾値に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値に設定する、
ように構成される。
【0029】
更に、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の他の態様は、リーン判定閾値及び/又はリッチ判定閾値を応答性指標値に基いて変更する代わりに(又はその変更に加えて)、目標リッチ空燃比及び/又は目標リーン空燃比を応答性指標値に基いて変更する。
【0030】
より具体的に述べると、前記他の態様は、上記三元触媒と、上記下流側空燃比センサと、上記空燃比制御手段と、上記応答性指標値取得手段と、を備える。更に、前記他の態様は、以下に述べる目標空燃比設定手段を備える。
【0031】
前記目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定する。更に、目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する。
【0032】
更に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リッチ空燃比が小さくなるように、前記目標リッチ空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される。
【0033】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好である場合の触媒流入ガスの空燃比」よりも「よりリッチな(小さい)空燃比」となる。その結果、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でない場合であって目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、触媒の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができる。即ち、触媒の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0034】
更に、本発明の他の態様における前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リーン空燃比が大きくなるように、前記目標リーン空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される。
【0035】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好である場合の触媒流入ガスの空燃比」よりも「よりリーンな(大きい)空燃比」となる。その結果、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でない場合であって目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、触媒の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができる。即ち、触媒の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0036】
更に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を所定の第1目標リッチ空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リッチ空燃比よりも小さい第2目標リッチ空燃比に設定するように構成される。
【0037】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リッチ空燃比に対応した、よりリッチな(小さい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができるので、触媒の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0038】
この場合、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比よりは大きく且つ理論空燃比よりは小さい第3目標リッチ空燃比に設定するように構成され得る。前記所定の時間は、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が極大値となるまでの時間(出力変化量ΔVoxsが極小値になるまでの時間)」、或いは、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsが極小値となり、その後に出力変化量ΔVoxsが所定値以上となるまでの時間」であってもよい。また、第3目標リッチ空燃比は第1目標リッチ空燃比と同じであっても、相違していてもよい。
【0039】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れた場合、目標リッチ空燃比は当初「第2目標リッチ空燃比」に設定され、その後に「第3目標リッチ空燃比」に設定される。よって、目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れることにより触媒の状態が酸素過剰状態に近づいたとしても、触媒の状態を直ちに酸素過剰状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素過剰状態から遠ざかった後には目標空燃比が第3目標リッチ空燃比に設定されるので、逆に、過剰の未燃物が触媒に流入すること(即ち、触媒の状態が一気に酸素不足状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、未燃物の排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0040】
同様に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の前記応答性閾値よりも高いか否かを前記応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比を所定の第1目標リーン空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リーン空燃比よりも大きい第2目標リーン空燃比に設定するように構成される。
【0041】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リーン空燃比に対応した、よりリーンな(大きい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができるので、触媒の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0042】
この場合においても、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比よりは小さく且つ理論空燃比よりは大きい第3目標リーン空燃比に設定するように構成され得る。前記所定の時間は、「前記目標空燃比が前記第2目標リーン空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が極大値となるまでの時間(出力変化量ΔVoxsが極大値になるまでの時間)」、或いは、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsが極大値となり、その後に出力変化量ΔVoxsが所定値以下となるまでの時間」であってもよい。また、第3目標リーン空燃比は第1目標リーン空燃比と同じであっても、相違していてもよい。
【0043】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れた場合、目標リーン空燃比は当初「第2目標リーン空燃比」に設定され、その後に「第3目標リーン空燃比」に設定される。よって、目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れることにより触媒の状態が酸素不足状態に近づいたとしても、触媒の状態を直ちに酸素不足状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素不足状態から遠ざかった後には目標空燃比が第3目標リーン空燃比に設定されるので、逆に、過剰の酸素が触媒に流入すること(即ち、触媒の状態が一気に酸素過剰状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、NOxの排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0044】
ところで、目標空燃比が目標リーン空燃比から目標リッチ空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極小値は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど小さくなる(図4のq4、q5及びq6を参照。)。よって、この極小値は応答性指標値として採用することができる。
【0045】
同様に、目標空燃比が目標リッチ空燃比から目標リーン空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極大値は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる(図5のq4、q5及びq6を参照。)。よって、この極大値は応答性指標値として採用することができる。
【0046】
そこで、前記応答性指標値取得手段は、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値、又は、
前記機関の目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値、
を前記応答性指標値として取得するように構成され得る。
【0047】
これによれば、簡単な構成にて、しかも、下流側空燃比センサの出力値に基く(出力変化量に基く)空燃比のフィードバック中に応答性指標値を取得することができる。
【0048】
更に、目標空燃比が目標リーン空燃比から目標リッチ空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極小値(図4のq4、q5及びq6を参照。)と、その目標空燃比の目標リッチ空燃比への切替直前に現れていた出力値の極大値(図4のq1、q2及びq3を参照。)と、の差(図4のq1とq4との出力値差、q2とq5との出力値差、及び、q3とq6との出力値差)は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。よって、この差(差の大きさ)は応答性指標値として採用することができる。
【0049】
同様に、目標空燃比が目標リッチ空燃比から目標リーン空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極大値(図5のq4、q5及びq6を参照。)と、その目標空燃比の目標リーン空燃比への切替直前に現れていた出力値の極小値(図5のq1、q2及びq3を参照。)と、の差(図5のq1とq4との出力値差、q2とq5との出力値差、及び、q3とq6との出力値差)は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。よって、この差(差の大きさ)は応答性指標値として採用することができる。
【0050】
そこで、前記応答性指標値取得手段は、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極大値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値と、の差の大きさ、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極小値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値と、の差の大きさ、
を前記応答性指標値として取得するように構成され得る。
【0051】
これによれば、簡単な構成にて、しかも、下流側空燃比センサの出力値に基く(出力変化量に基く)空燃比のフィードバック中に応答性指標値を取得することができる。
【0052】
なお、前記応答性指標値取得手段は、
前記機関の運転状態が前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転状態から、同フューエルカット運転状態が終了して前記目標空燃比が所定の目標リッチ空燃比へと変更された後に前記下流側空燃比センサの出力値が所定値に達する(増大する)までの時間、又は、
前記機関の運転状態が前記目標空燃比を前記下流側空燃比センサの出力値に関らず理論空燃比よりも小さい増量リッチ空燃比に設定する増量運転状態から、同増量運転状態が終了して前記目標空燃比が所定の目標リーン空燃比へと変更された後に前記下流側空燃比センサの出力値が所定値に達する(減少する)までの時間、
を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
これらの時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0053】
更に、この場合に取得される時間は、別途算出される触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxに応じて補正され、その補正された値が応答性指標値として採用されてもよい。
【0054】
更に、前記応答性指標値取得手段は、
下流側空燃比センサの出力値に関らず、目標空燃比を一定の目標リッチ空燃比に維持して出力値が最大値Vmaxに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リッチ空燃比から一定の目標リーン空燃比へと変更した場合において、その目標リッチ空燃比と目標リーン空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値又はその目標リーン空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
【0055】
同様に、前記応答性指標値取得手段は、
下流側空燃比センサの出力値に関らず、目標空燃比を一定の目標リーン空燃比に維持して出力値が最小値Vminに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リーン空燃比から一定の目標リッチ空燃比へと変更した場合において、その目標リーン空燃比と目標リッチ空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値又はその目標リッチ空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第1制御装置)を適用した内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した下流側空燃比センサの出力値(出力電圧)と空燃比との関係を示したグラフである。
【図3】図3の(A)は図1に示した下流側空燃比センサの素子部の概略断面図であり、図3の(B)は素子部の拡大概略断面図である。
【図4】第1制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図5】第1制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図6】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】第1制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図12】第1制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図13】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第2制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図14】第2制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図15】第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】第2制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図17】本発明の第3実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第3制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図18】第3制御装置の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図19】本発明の第4実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第4制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図20】第4制御装置の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図21】第3制御装置の別の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図22】第4制御装置の別の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置について図面を参照しながら説明する。
【0058】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される内燃機関10の概略構成を示している。機関10は、4サイクル・火花点火式・多気筒(本例において4気筒)・ガソリン燃料機関である。機関10は、本体部20、吸気系統30及び排気系統40を備えている。
【0059】
本体部20は、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とを備えている。本体部20は、ピストン頂面、シリンダ壁面及びシリンダヘッド部の下面からなる複数(4個)の燃焼室(第1気筒#1乃至第4気筒#4)21を備えている。
【0060】
シリンダヘッド部には、各燃焼室(各気筒)21に「空気及び燃料からなる混合気」を供給するための吸気ポート22と、各燃焼室21から排ガス(既燃ガス)を排出するための排気ポート23と、が形成されている。吸気ポート22は図示しない吸気弁により開閉され、排気ポート23は図示しない排気弁により開閉されるようになっている。
【0061】
シリンダヘッド部には複数(4個)の点火プラグ24が固定されている。各点火プラグ24は、その火花発生部が各燃焼室21の中央部であってシリンダヘッド部の下面近傍位置に露呈するように配設されている。各点火プラグ24は、点火信号に応答して火花発生部から点火用火花を発生するようになっている。
【0062】
シリンダヘッド部には更に複数(4個)の燃料噴射弁(インジェクタ)25が固定されている。燃料噴射弁25は、各吸気ポート22に一つずつ(即ち、一つの気筒に対して一つ)設けられている。燃料噴射弁25は、噴射指示信号に応答し、「その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料」を対応する吸気ポート22内に噴射するようになっている。
【0063】
更に、シリンダヘッド部には、吸気弁制御装置26が設けられている。この吸気弁制御装置26は、インテークカムシャフト(図示せず)とインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備えている。吸気弁制御装置26は、指示信号(駆動信号)に基いて作動し、吸気弁の開弁タイミング(吸気弁開弁タイミング)を変更することができるようになっている。
【0064】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、エアフィルタ33、スロットル弁34及びスロットル弁アクチュエータ34aを備えている。
【0065】
インテークマニホールド31は、各吸気ポート22に接続された複数の枝部と、それらの枝部が集合したサージタンク部と、を備えている。吸気管32はサージタンク部に接続されている。インテークマニホールド31、吸気管32及び複数の吸気ポート22は、吸気通路を構成している。エアフィルタ33は吸気管32の端部に設けられている。スロットル弁34はエアフィルタ33とインテークマニホールド31との間の位置において吸気管32に回動可能に取り付けられている。スロットル弁34は、回動することにより吸気管32が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ34aは、DCモータからなり、指示信号(駆動信号)に応答してスロットル弁34を回動させるようになっている。
【0066】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ(排気管)42、上流側触媒43及び下流側触媒44を備えている。
【0067】
エキゾーストマニホールド41は、各排気ポート23に接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合した集合部(排気集合部)41bと、からなっている。エキゾーストパイプ42は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bに接続されている。エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42及び複数の排気ポート23は、排ガスが通過する通路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド41の集合部41b及びエキゾーストパイプ42により形成される通路を、便宜上、「排気通路」と称呼する。
【0068】
上流側触媒43は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(パラジウムPd及び白金Pt、ロジウムRd等の一種類以上)」及び「酸素吸蔵材であるセリア(CeO2)」を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(酸素吸蔵機能)を有する三元触媒である。上流側触媒43はエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。上流側触媒43は所定の活性温度に到達すると、「未燃物(HC、CO及びH2等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒機能」及び「酸素吸蔵機能」を発揮する。上流側触媒43は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
【0069】
下流側触媒44は、上流側触媒43と同様の三元触媒である。下流側触媒44は、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。下流側触媒44は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。なお、本明細書において、単に「触媒」と言うとき、その「触媒」は上流側触媒43を意味する。
【0070】
本制御装置は、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、機関回転速度センサ53、水温センサ54、上流側空燃比センサ55、下流側空燃比センサ56及びアクセル開度センサ57を備えている。
【0071】
熱線式エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
【0072】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0073】
機関回転速度センサ53は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ53から出力される信号は後述する電気制御装置60により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置60は、機関回転速度センサ53及び図示しないクランク角センサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0074】
水温センサ54は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
【0075】
上流側空燃比センサ55は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bと上流側触媒43との間の位置においてエキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ55は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0076】
上流側空燃比センサ55は、上流側空燃比センサ55の配設位置を流れる排ガスの空燃比(触媒43に流入するガスである「触媒流入ガス」の空燃比、上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを出力する。出力値Vabyfsは触媒流入ガスの空燃比が大きくなるほど(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン側の空燃比になるほど)増大する。
【0077】
電気制御装置60は、出力値Vabyfsと上流側空燃比abyfsとの関係を規定した空燃比変換テーブル(マップ)Mapabyfsを記憶している。電気制御装置60は、出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfsに適用することにより、実際の上流側空燃比abyfsを検出する(検出上流側空燃比abyfsを取得する)ようになっている。
【0078】
下流側空燃比センサ56は、上流側触媒43と下流側触媒44との間の位置においてエキゾーストパイプ42(即ち、排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ56は、周知の濃淡電池型の酸素濃度センサ(O2センサ)である。下流側空燃比センサ56は図2に示した出力値Voxsを出力する。
【0079】
下流側空燃比センサ56は、図3の(A)に示した試験管状の素子部を備える。素子部は、図3の(B)に示したように、固体電解質層56aと、固体電解質層56aの外側に形成された排ガス側電極層56bと、大気室AR(固体電解質層56aの内側)に露呈し且つ固体電解質層56aを挟んで排ガス側電極層(外側電極)56bと対向するように固体電解質層56aの内側に形成された大気側電極層(内側電極)56cと、排ガス側電極層56bを覆うコーティング層56dと、そのコーティング層56dを覆う触媒層56eと、触媒層56eを覆うとともに排ガスExが接触する(図示しない保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入した排ガスEx中に晒されるように配置される)保護層(トラップ層)56fを備える。
【0080】
なお、固体電解質層56a等は板状であってもよい。触媒43から流出するガス(触媒流出ガス)は、保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入し、次いで、保護層56f、触媒層56e及びコーティング層56dを通過して、排ガス側電極層56bに到達する。
【0081】
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは、「排ガス側電極層(外側電極)56bにおける酸素分圧と、大気側電極層(内側電極)56cにおける酸素分圧と、の差」に応じた起電力であって、固体電解質層56aに酸素イオンの移動を生じさせる起電力である。
【0082】
より具体的に述べると、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい場合(理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰な酸素が含まれていない場合、最大値Vmax又は最大値Vmax近傍の値(例えば、約0.9〜1.0V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素不足状態である(触媒内に酸素が殆ど吸蔵されていない)と判断され得る。
【0083】
一方、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい場合(理論空燃比よりもリーン側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれている場合、最小値Vmin又は最小値Vmin近傍の値(例えば、約0〜0.1V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素過剰状態である(触媒内に吸蔵されている酸素の量が、最大酸素吸蔵量Cmaxに近い)と判断され得る。
【0084】
更に、この出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比からリーン側の空燃比へと変化する際に最大値Vmaxから最小値Vminへと急激に減少する。逆に、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比へと変化する際に最小値Vminから最大値Vmaxへと急激に増大する。なお、最小値Vminと最大値Vmaxとの平均値は中央値Vmid(=(Vmax+Vmin)/2)又は理論空燃比相当電圧Vstと称呼される。
【0085】
ところで、前述したように、触媒流出ガスは、保護層56f、触媒層56e及びコーティング層56dを通過して、排ガス側電極層56bに到達する。よって、これらの層(特に、保護層56fの厚さ及び空孔率等)が製造上ばらつくと、触媒流出ガスの空燃比(酸素分圧)の変化に対する出力値Voxsの変化の応答性が個々の下流側空燃比センサ56間で相違する。
【0086】
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ57は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0087】
電気制御装置60は、「CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる「周知のマイクロコンピュータ」を含む電子回路である。
【0088】
電気制御装置60が備えるバックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。即ち、それまでに保持していたデータが消失(破壊)される。
【0089】
電気制御装置60のインターフェースは、前記センサ51〜57と接続され、CPUにセンサ51〜57からの信号を供給するようになっている。更に、そのインターフェースは、CPUの指示に応じて、各気筒の点火プラグ24、各気筒の燃料噴射弁25、吸気弁制御装置26及びスロットル弁アクチュエータ34a等に指示信号(駆動信号)等を送出するようになっている。なお、電気制御装置60は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータ34aに指示信号を送出するようになっている。
【0090】
(第1制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
第1制御装置は、以下に述べるように触媒43の状態(酸素吸蔵状態、触媒状態)を判定する。触媒43は、触媒43が酸素をその最大酸素吸蔵量に近い値まで吸蔵している状態(即ち、酸素過剰状態、リーン状態)、及び、触媒43が酸素を殆ど吸蔵していない状態(即ち、酸素不足状態、還元状態、リッチ状態)の何れかの状態にあると判定される。第1制御装置は、この触媒43の状態の判定のために、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの所定時間(単位時間)あたりの変化量である出力変化量ΔVoxsを用いる。出力変化量ΔVoxsは、微分値dVoxs/dtに相当する値であり、出力値Voxsの傾きでもある。
【0091】
更に、第1制御装置は、判定された触媒43の状態に基づいて「触媒43に流入する排ガス(触媒流入ガス)の空燃比(従って、機関10に供給される混合気の空燃比)」をフィードバック制御する。より具体的には、第1制御装置は、触媒43の状態に応じて「機関の空燃比の目標値である目標空燃比(上流側目標空燃比abyfr)」を目標リッチ空燃比afRichと目標リーン空燃比afLeanとの何れかに設定する。例えば、目標リッチ空燃比afRichは14.2、理論空燃比stoichは14.5、目標リーン空燃比afLeanは14.7である。
【0092】
<目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合>
図4に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanである。よって、触媒流入ガスには過剰の酸素が含まれているので、触媒43の状態は酸素過剰状態へと近づき、その結果、時刻t0又はその直前にて触媒43から酸素が急激に流出し始める。
【0093】
いま、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性(設計値の応答性)であると仮定する。この場合、図4の(A)に実線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。この場合、減少の程度は中程度である。
【0094】
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて且つ出力値Voxsが減少している場合、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が「正の所定値であるリーン判定閾値ΔVLeanth」より大きくなったとき、触媒43の状態が酸素過剰状態に近づいていると判定し、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。なお、リーン判定閾値ΔVLeanthは、当初、第1リーン判定閾値ΔVthL1に設定されている。図4の(B)に実線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は時刻t2にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。これにより、図4の(C)に実線により示したように、第1制御装置は、時刻t2にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。
【0095】
また、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好(高い応答性)であると仮定する。この場合にも、図4の(A)に破線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。但し、出力値Voxsの減少の程度は大きい。即ち、出力値Voxsは迅速に減少する。よって、この場合、図4の(B)に破線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも前の時刻t1」にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。その結果、第1制御装置は、図4の(C)に破線により示したように、時刻t1にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。
【0096】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好でない(低い応答性)であると仮定する。この場合にも、図4の(A)に一点鎖線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。但し、減少の程度は小さい。即ち、出力値Voxsは穏やかに減少する。よって、この場合、図4の(B)に一点鎖線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも後の時刻t3」にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。その結果、第1制御装置は、図4の(C)に一点鎖線により示したように、時刻t3にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。その結果、触媒43にはリーン空燃比の排ガスが過剰に流入するので、図4の(D)に一点鎖線により示したように、NOxの排出量が増大する。
【0097】
その後、出力値Voxsは減少を続け、次いで、増大しはじめる。即ち、出力値Voxsは極小値Voxsminをとる。この極小値Voxsminは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど小さくなる(図4の(A)のq4、q5及びq6を参照。)。これは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど、過剰な酸素が触媒43に流入するためであり、換言すると、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れるためである。更に、触媒43から未燃物が流出し始めたとしても、応答性の良好でない下流側空燃比センサ56の出力値Voxsはその検出が遅れるためである。
【0098】
加えて、その極小値Voxsminの前に現れた極大値Voxsmax(図4の(A)のq1、q2及びq3を参照。)と、その極小値Voxsmin(図4の(A)のq4、q5及びq6を参照。)との差の大きさ、即ち、図4のq1とq4との出力値差の大きさ、q2とq5との出力値差の大きさ、及び、q3とq6との出力値差の大きさは、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。従って、第1制御装置は、この出力値差の大きさDV(=第1応答性指標値DV1)を「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値」として取得する。
【0099】
更に、第1制御装置は、出力値差の大きさDVに基づいて、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを判定する。より具体的に述べると、第1制御装置は、出力値差の大きさDVが「応答性閾値に対応する第1の閾値出力値差DV1th」以上であるか否かを判定し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1thよりも小さいとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であるとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定する。
【0100】
そして、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は許容範囲と見做し、リーン判定閾値ΔVLeanthを第1リーン判定閾値ΔVthL1に維持する。これに対し、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は想定以上に良好でないと判定し、リーン判定閾値ΔVLeanthを「第1リーン判定閾値ΔVthL1の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値ΔVthL2」に変更する。例えば、第2リーン判定閾値ΔVthL2は、第1リーン判定閾値ΔVthL1から正の所定値αを減じた値である。但し、第2リーン判定閾値ΔVthL2も正の値である。
【0101】
これにより、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が想定以上に良好でない場合、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて出力値Voxsが減少しているとき、より早いタイミングにて出力変化量ΔVoxsがリーン判定閾値ΔVLeanth(=第2リーン判定閾値ΔVthL2)に到達する。よって、「過剰な酸素が触媒43に流入し、且つ、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れる事態」の発生を回避することができる。その結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0102】
<目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合>
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合にも、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合と同様な作動を行う。
【0103】
図5に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比は目標リッチ空燃比afRichである。よって、触媒流入ガスには過剰の未燃物が含まれているので、触媒43の状態は酸素不足状態へと近づき、その結果、時刻t0又はその直前にて触媒43から未燃物が急激に流出し始める。なお、図5において、図4と同様、実線は応答性が基準の応答性である下流側空燃比センサについての各値、破線は応答性が基準の応答性よりも良好な下流側空燃比センサについての各値、一点鎖線は応答性が基準の応答性よりも良好でない下流側空燃比センサについての各値を示している。
【0104】
いま、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性(設計値の応答性)であると仮定する。この場合、図5の(A)に実線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。この場合、増大の程度は中程度である。
【0105】
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて且つ出力値Voxsが増大している場合、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が「正の所定値であるリッチ判定閾値ΔVRichth」より大きくなったとき、触媒43の状態が酸素不足状態に近づいていると判定し、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。なお、リッチ判定閾値ΔVRichthは、当初、第1リッチ判定閾値ΔVthR1に設定されている。従って、図5の(B)に実線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は時刻t2にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。よって、第1制御装置は、図5の(C)に実線により示したように、時刻t2にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。
【0106】
また、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好(高い応答性)であると仮定する。この場合にも、図5の(A)に破線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。但し、出力値Voxsの増大の程度は大きい。即ち、出力値Voxsは迅速に増大する。よって、この場合、図5の(B)に破線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも前の時刻t1」にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。その結果、第1制御装置は、図5の(C)に破線により示したように、時刻t1にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。
【0107】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好でない(低い応答性)であると仮定する。この場合にも、図5の(A)に一点鎖線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。但し、増大の程度は小さい。即ち、出力値Voxsは穏やかに増大する。よって、この場合、図5の(B)に一点鎖線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも後の時刻t3」にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。その結果、第1制御装置は、図5の(C)に一点鎖線により示したように、時刻t3にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。その結果、触媒43にはリッチ空燃比の排ガスが過剰に流入するので、図5の(D)に一点鎖線により示したように、未燃物(例えは、HC)の排出量が増大する。
【0108】
その後、出力値Voxsは増大を続け、次いで、減少しはじめる。即ち、出力値Voxsは極大値Voxsmaxをとる。この極大値Voxsmaxは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど大きくなる(図5の(A)のq4、q5及びq6を参照。)。これは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど、過剰な未燃物が触媒43に流入するためであり、換言すると、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れるためである。更に、触媒43から酸素が流出し始めたとしても、応答性の良好でない下流側空燃比センサ56の出力値Voxsはその検出が遅れるためである。
【0109】
更に、その極大値Voxsmaxの前に現れた極小値Voxsmin(図5の(A)のq1、q2及びq3を参照。)と、その極大値Voxsmax(図5の(A)のq4、q5及びq6を参照。)との差の大きさ、即ち、図5のq1とq4との出力値差の大きさ、q2とq5との出力値差の大きさ、及び、q3とq6との出力値差の大きさは、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。従って、第1制御装置は、この出力値差の大きさDV(=第2応答性指標値DV2)を「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値」として取得する。
【0110】
更に、第1制御装置は、出力値差の大きさDVに基づいて、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを判定する。より具体的に述べると、第1制御装置は、出力値差の大きさDVが「応答性閾値に対応する第2の閾値出力値差DV2th」以上であるか否かを判定し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2thよりも小さいとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であるとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定する。
【0111】
そして、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は許容範囲と見做し、リッチ判定閾値ΔVRichthを第1リッチ判定閾値ΔVthR1に維持する。これに対し、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は想定以上に良好でないと判定し、リッチ判定閾値ΔVRichthを「第1リッチ判定閾値ΔVthR1の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値ΔVthR2」に変更する。例えば、第2リッチ判定閾値ΔVthR2は、第1リッチ判定閾値ΔVthR1から正の所定値βを減じた値である。但し、第2リッチ判定閾値ΔVthR2も正の値である。
【0112】
なお、第1リッチ判定閾値ΔVthR1は第1リーン判定閾値ΔVthL1と同一であってもよく、相違していてもよい。更に、所定値βは所定値αと同一であってもよく、相違していてもよい。
【0113】
これにより、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が想定以上に良好でない場合、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大しているとき、より早いタイミングにて出力変化量ΔVoxsがリッチ判定閾値ΔVRichth(=第2リッチ判定閾値ΔVthR2)に到達する。よって、「過剰な未燃物が触媒43に流入し、且つ、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れる事態」の発生を回避することができる。その結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0114】
(作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。
【0115】
<燃料噴射制御>
第1制御装置のCPUは、図6に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度となる毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0116】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ600から処理を開始し、ステップ605にてフューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット開始条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるときにフューエルカット終了条件が成立したときに「0」に設定される。フューエルカットフラグXFCの値は更にイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0117】
フューエルカット開始条件は、スロットル弁開度TAが「0」であり且つ機関回転速度NEがフューエルカット回転閾値速度NEFC以上であるとき成立する。フューエルカット終了条件は、スロットル弁開度TAが「0」でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット終了回転閾値速度NERT以下となったとき、成立する。フューエルカット終了回転閾値速度NERTはフューエルカット回転閾値速度NEFCよりも小さい。
【0118】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定してステップ610に進み、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、機関回転速度センサ53の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc(Ga,NE)」に基いて「燃料噴射気筒に吸入される空気量(即ち、筒内吸入空気量)Mc)」を取得する。筒内吸入空気量Mcは、周知の空気モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0119】
次に、CPUはステップ615に進み、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であるか否かを判定する。このフィードバック制御フラグXFBの値は、フィードバック制御条件が成立しているときに「1」に設定され、フィードバック制御条件が成立していないときに「0」に設定される。フィードバック制御条件は、例えば、以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)上流側空燃比センサ55が活性化している。
(A2)下流側空燃比センサ56が活性化している。
(A3)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A4)フューエルカットフラグXFCの値が「0」である。
【0120】
このとき、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」でなければ、CPUはステップ615にて「No」と判定してステップ620に進み、目標空燃比abyfr(上流側目標空燃比abyfr)を理論空燃比stoich(例えば、14.5)に設定する。
【0121】
次に、CPUは以下に述べるステップ625乃至ステップ640の処理を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0122】
ステップ625:CPUは、筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除することによって基本燃料噴射量Fbaseを算出する。基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。
【0123】
ステップ630:CPUは、図示しないルーチンにより別途計算されているメインフィードバック量KFmainを読み込む。メインフィードバック量KFmainは、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrに一致するように周知のPID制御に基づいて算出される。即ち、簡単に述べると、メインフィードバック量DFmainは、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも大きい(リーンである)とき増大され、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも小さい(リッチである)とき減少される。なお、メインフィードバック量KFmainは、フィードバック制御フラグXFBの値が「0」であるとき「1」に設定される。更に、メインフィードバック量KFmainは常に「1」に設定されてもよい。即ち、メインフィードバック量KFmainを用いたフィードバック制御は本実施形態において必須ではない。
【0124】
ステップ635:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量KFmainにより補正することによって指示燃料噴射量Fiを算出する。より具体的に述べると、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量KFmainを乗じることによって指示燃料噴射量Fiを算出する。
【0125】
ステップ640:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁25」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁25に送出する。
【0126】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な量の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁25から噴射させられる。即ち、ステップ625乃至ステップ640は、「機関の空燃比が目標空燃比abyfrに一致するように指示燃料噴射量Fiを制御する」指示燃料噴射量制御手段及び空燃比制御手段を構成している。
【0127】
一方、CPUがステップ615の処理を行う時点において、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であると、CPUはそのステップ615にて「Yes」と判定してステップ645に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であるか否かを判定する。後述するように、触媒43の状態が酸素不足状態(触媒リッチ状態)であると判定されると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定される。また、触媒43の状態は酸素過剰状態(触媒リーン状態)であると判定されると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定される。触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は後述するルーチンにより設定される。
【0128】
このとき、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であると、CPUはステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リーン空燃比afLean」に設定する。目標リーン空燃比afLeanは理論空燃比stoichよりも大きい所定の空燃比(リーン空燃比)である。この場合、目標リーン空燃比afLeanは第1目標リーン空燃比afLean1であり、例えば、14.7である。その後、CPUはステップ625以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リーン空燃比afLeanに一致させられる。
【0129】
これに対し、CPUがステップ645の処理を実行する時点において、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であると、CPUはステップ645にて「No」と判定してステップ655に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リッチ空燃比afRich」に設定する。目標リッチ空燃比afRichは理論空燃比stoichよりも小さい所定の空燃比(リッチ空燃比)である。この場合、目標リッチ空燃比afRichは第1目標リッチ空燃比afRich1であり、例えば、14.2である。その後、CPUはステップ625以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リッチ空燃比afRichに一致させられる。
【0130】
一方、CPUがステップ605の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはそのステップ605にて「No」と判定してステップ695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ640の処理による燃料噴射が実行されないので、フューエルカット制御(燃料供給停止制御)が実行される。即ち、機関10の運転状態はフューエルカット運転状態となる。
【0131】
<触媒状態(触媒43の酸素吸蔵状態)判定>
CPUは図7にフローチャートにより示した「触媒状態判定ルーチン」を所定時間tsの経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始してステップ705に進み、「現時点の下流側空燃比センサ56の出力値Voxs」から「前回の下流側空燃比センサ56の出力値Voxsold」を減じることにより、所定時間ts(単位時間)あたりの出力値Voxsの変化量ΔVoxs(単に、「出力変化量ΔVoxs」とも称呼する。)を算出する。
【0132】
次に、CPUはステップ710に進み、現時点の出力値Voxsを「前回の出力値Voxsold」として記憶する。このように前回の下流側空燃比センサ56の出力値Voxsoldは、現時点から所定時間tsだけ前の時点の出力値Voxs(本ルーチンが前回実行されたときの出力値Voxs)である。
【0133】
次に、CPUはステップ715に進み、出力値Voxsが、「最小値Vminに微小な正の値γを加えた値(Vmin+γ)」よりも大きく、且つ、「最大値Vmaxから微小な正の値γを減じた値(Vmax−γ)」よりも小さいか否かを判定する。即ち、CPUは、「触媒43の状態が、明らかな酸素過剰状態(Voxs<Vmin+γ)でもなく且つ明らかな酸素不足状態(Voxs>Vmax−γ)でもない」か否かを判定する。値(Vmin+γ)は最小値Vminに極めて近い値であり、従って、中央値Vmidよりも小さい。値(Vmax−γ)は最大値Vmaxに極めて近い値であり、従って、中央値Vmidよりも大きい。
【0134】
いま、下記の条件が総て成立していると仮定する。
(条件1)出力値Voxsが値(Vmin+γ)と値(Vmax−γ)の間である。
(条件2)目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている。
(条件3)出力変化量ΔVoxsが負である(出力値Voxsが減少している。)。
(条件4)出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となった直後である。
【0135】
この場合、CPUはステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanであるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、出力変化量ΔVoxsが負である(「0」より小さい)か否かを判定する。即ち、CPUはステップ725にて出力値Voxsが減少しているか否かを判定する。
【0136】
上記仮定によれば、CPUはステップ725にて「Yes」と判定してステップ730に進み、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|(出力変化量ΔVoxsの絶対値)がリーン判定閾値ΔVLeanth以上であるか否かを判定する。
【0137】
上記仮定によれば、CPUはステップ730にて「Yes」と判定してステップ735に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「0」に設定する。即ち、CPUは、触媒43の状態が、「酸素過剰状態(触媒リーン状態)である、又は、酸素過剰状態に近づいている。」と判定する。その後、CPUはステップ740に進む。
【0138】
CPUは、ステップ740にて、出力値Voxsが「最小値Vminに微小な正の値γを加えた値(Vmin+γ)」以下であるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ740にて「No」と判定してステップ745に進み、出力値Voxsが「最大値Vmaxから微小な正の値γを減じた値(Vmax−γ)」以上であるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ745にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0139】
このように、上記条件1〜4が総て成立すると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定される。よって、CPUは図6のステップ645にて「No」と判定してステップ655に進むので、目標空燃比abyfrは目標リッチ空燃比afRichに設定される。
【0140】
一方、上記条件1〜4のうち、条件2が成立していないと(即ち、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていないと)、CPUはステップ720にて「No」と判定してステップ750に進む。後述するように、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」に変更されることはない(ステップ735を参照。)。
【0141】
更に、上記条件1〜4のうち、条件3が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsが「0」以上であって、換言すると、出力値Voxsが増大していると)、CPUはステップ725にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「1」に維持される)。
【0142】
更に、上記条件1〜4のうち、条件4が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth未満であると)、CPUはステップ730にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合にも、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「1」に維持される)。
【0143】
次に、下記の条件が総て成立していると仮定する。
(条件1)出力値Voxsが値(Vmin+γ)と値(Vmax−γ)の間である。
(条件5)目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている。
(条件6)出力変化量ΔVoxsが正である(出力値Voxsが増大している。)。
(条件7)出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となった直後である。
【0144】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、そのステップ720にて「No」と判定してステップ750に進む。CPUは、そのステップ750にて目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichであるか否かを判定する。
【0145】
上記仮定によれば、CPUはステップ750にて「Yes」と判定してステップ755に進み、出力変化量ΔVoxsが正である(「0」より大きい)か否かを判定する。即ち、CPUはステップ755にて出力値Voxsが増大しているか否かを判定する。
【0146】
上記仮定によれば、CPUはステップ755にて「Yes」と判定してステップ760に進み、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上であるか否かを判定する。
【0147】
上記仮定によれば、CPUはステップ760にて「Yes」と判定してステップ765に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「1」に設定する。即ち、CPUは、触媒43の状態が、「酸素不足状態(触媒リッチ状態)である、又は、酸素不足状態に近づいている。」と判定する。その後、CPUはステップ740に進む。更に、上記仮定によれば、CPUはステップ740及びステップ745の両ステップにて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0148】
このように、上記条件1及び上記条件5〜7が総て成立すると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定される。よって、CPUは図6のステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進むので、目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanに設定される。
【0149】
一方、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件5が成立していないと(即ち、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていないと)、CPUはステップ750にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0150】
更に、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件6が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsが「0」未満あって、換言すると、出力値Voxsが減少していると)、CPUはステップ755にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合も、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0151】
更に、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件7が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth未満であると)、CPUはステップ760にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合にも、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0152】
次に、下記の条件が成立していると仮定する。
(条件8)出力値Voxsが値(Vmin+γ)以下である。
【0153】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「No」と判定してステップ740に直接進む。この場合、触媒43の状態は明らかに酸素過剰状態である。よって、CPUは、ステップ740にて「Yes」と判定し、ステップ770に進んで触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichを「0」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0154】
この結果、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定されるので、CPUは図6のステップ645にて「No」と判定してステップ655に進むので、目標空燃比abyfrは目標リッチ空燃比afRichに設定される。
【0155】
次に、下記の条件が成立していると仮定する。
(条件9)出力値Voxsが値(Vmax−γ)以上である。
【0156】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「No」と判定してステップ740に直接進み、そのステップ740にて「No」と判定してステップ745に進む。この場合、触媒43の状態は明らかに酸素不足状態である。よって、CPUは、ステップ745にて「Yes」と判定し、ステップ775に進んで触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichを「1」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0157】
この結果、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定されるので、CPUは図6のステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進むので、目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanに設定される。
【0158】
なお、CPUは、フィードバック制御フラグXFBの値が「0」であるとき、図7に示したルーチンを実行しないように構成されることができる。また、ステップ715、ステップ740、ステップ745、ステップ770及びステップ775は省略され得る。
【0159】
<極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの取得>
CPUは図8にフローチャートにより示した「極大値・極小値取得ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始してステップ810に進み、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」でなければ、CPUはステップ810からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0160】
一方、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されているか否かを判定する。
【0161】
いま、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていると仮定する。この場合、CPUはステップ820にて「Yes」と判定してステップ830に進み、「現時点が、出力変化量ΔVoxsの符号が負から正へと変化した直後であるか否か」を判定することにより、出力値Voxsが極小値を通過したか否かを判定する。出力値Voxsが極小値を通過していなければ、CPUはステップ830からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0162】
これに対し、現時点が「出力値Voxsが極小値を通過した直後」であると、CPUはステップ830にて「Yes」と判定してステップ840に進み、前回の出力値Voxsoldを極小値Voxsminとして取得する。その後、CPUはステップ895に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
【0163】
これに対し、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されてい場合、CPUはステップ820にて「No」と判定してステップ850に進み、「現時点が、出力変化量ΔVoxsの符号が正から負へと変化した直後であるか否か」を判定することにより、出力値Voxsが極大値を通過したか否かを判定する。出力値Voxsが極大値を通過していなければ、CPUはステップ850からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0164】
これに対し、現時点が「出力値Voxsが極大値を通過した直後」であると、CPUはステップ850にて「Yes」と判定してステップ860に進み、前回の出力値Voxsoldを極大値Voxsmaxとして取得する。その後、CPUはステップ895に進んで、本ルーチンを一旦終了する。以上により、極大値Voxsmaxと極小値Voxsminが更新される。
【0165】
<リーン判定閾値ΔVLeanthの変更>
CPUは図9にフローチャートにより示した「リーン判定閾値変更ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始してステップ910に進み、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」であるか否かを判定する。このとき、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」でなければ、CPUはステップ910にて「No」と判定してステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0166】
一方、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」であると、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進み、最新の極大値Voxsmaxから最新の極小値Voxsminを減じた値を出力値差の大きさDVとして取得する。
【0167】
次に、CPUはステップ930に進み、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であるか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。従って、出力値差の大きさDVは下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値である。換言すると、CPUは、ステップ930にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0168】
このとき、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th未満であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いと)、CPUはステップ930にて「No」と判定してステップ940に進み、リーン判定閾値ΔVLeanthを「所定の正の値である第1リーン判定閾値ΔVthL1」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0169】
これに対し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いと)、CPUはステップ930にて「Yes」と判定してステップ950に進み、リーン判定閾値ΔVLeanthを「所定の正の値である第2リーン判定閾値ΔVthL2」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。第2リーン判定閾値ΔVthL2は、第1リーン判定閾値ΔVthL1から所定の正の値αを減じた値でもあり、第1リーン判定閾値ΔVthL1の大きさよりも小さい大きさを有する正の値である。このように、リーン判定閾値ΔVLeanthは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性を示す応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更される。
【0170】
なお、CPUは、図11に示したように、出力値差の大きさDV(第1の出力値差の大きさDV1)が大きくなるほど(即ち、出力値Voxsの応答性が低下するほど)、リーン判定閾値ΔVLeanthの大きさがより小さくなるように、リーン判定閾値ΔVLeanthを連続的に変更してもよい。
【0171】
<リッチ判定閾値ΔVRichthの変更>
CPUは図10にフローチャートにより示した「リッチ判定閾値変更ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」であるか否かを判定する。このとき、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」でなければ、CPUはステップ1010にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0172】
一方、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」であると、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定してステップ1020に進み、最新の極大値Voxsmaxから最新の極小値Voxsminを減じた値を出力値差の大きさDVとして取得する。
【0173】
次に、CPUはステップ1030に進み、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であるか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。従って、出力値差の大きさDVは下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値である。換言すると、CPUは、ステップ1030にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0174】
このとき、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th未満であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いと)、CPUはステップ1030にて「No」と判定してステップ1040に進み、リッチ判定閾値ΔVRichthを「所定の正の値である第1リッチ判定閾値ΔVthR1」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0175】
これに対し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いと)、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1050に進み、リッチ判定閾値ΔVRichthを「所定の正の値である第2リッチ判定閾値ΔVthR2」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。第2リッチ判定閾値ΔVthR2は、第1リッチ判定閾値ΔVthR1から所定の正の値βを減じた値でもあり、第1リッチ判定閾値ΔVthR1の大きさよりも小さい大きさを有する正の値である。
【0176】
なお、CPUは、図12に示したように、出力値差の大きさDV(第2の出力値差の大きさDV2)が大きくなるほど(即ち、出力値Voxsの応答性が低下するほど)、リッチ判定閾値ΔVRichthの大きさがより小さくなるように、リッチ判定閾値ΔVRichthを連続的に変更してもよい。
【0177】
以上、説明したように、第1制御装置は、
目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されたとき機関の空燃比が同目標リーン空燃比afLeanに一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比afRichに一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段(図6のルーチンを参照。)と、
目標空燃比abyfrが前記目標リーン空燃比afLeanに設定されていて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが減少している(出力変化量ΔVoxs<0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定のリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを前記目標リッチ空燃比afRichに設定し、且つ、前記目標空燃比abyfrが前記目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大している(出力変化量ΔVoxs>0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|所定のリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき前記目標空燃比abyfrを前記目標リーン空燃比afLeanに設定する目標空燃比設定手段(図7のルーチンを参照。)と、
前記下流側空燃比センサ56に到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性を表す応答性指標値(出力値差の大きさDV)を出力値Voxsに基いて取得する応答性指標値取得手段(図8のルーチン、図9のステップ920、図10のステップ1020を参照。)と、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値ΔVLeanthの大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値ΔVLeanthを前記取得された応答性指標値に基いて変更する閾値変更手段(図9のステップ930乃至ステップ950及び、図11を参照。)と、
を備える。
【0178】
更に、前記閾値変更手段は、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値ΔVRichthの大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値ΔVRichthを前記取得された応答性指標値に基いて変更する(図10のステップ1030乃至ステップ1050及び図11を参照。)。
【0179】
更に、第1制御装置の閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値ΔVLeanthを第1リーン判定閾値ΔVthL1に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値ΔVthL2に設定するように構成されている(図9のルーチンを参照。)。
【0180】
更に、第1制御装置の閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値ΔVRichthを第1リッチ判定閾値ΔVthR1に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値ΔVRichthを前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値ΔVthR2に設定するように構成されている(図10のルーチンを参照。)。
【0181】
従って、第1制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が低い場合であっても、触媒43の状態を遅滞なく判定し、目標空燃比abyfrを適切な空燃比に遅滞なく設定することができる。よって、NOxの排出量及び未燃物の排出量を低減することができる。
【0182】
なお、第1制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及びリッチ判定閾値ΔVRichthの何れか一方のみを下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性に基いて変更してもよい。
【0183】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0184】
第2制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、目標リッチ空燃比afRich及び/又は目標リーン空燃比afLeanを応答性指標値に基いて変更する点においてのみ、第1制御装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
【0185】
(第2制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
図13に示したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合、出力変化量ΔVoxsが負であり且つ出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となると、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに変更する。
【0186】
第2制御装置は、この目標リッチ空燃比afRichを、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど、より小さい(よりリッチな)空燃比に設定する。より具体的に述べると、図13の破線及び実線に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合(応答性が応答性指標値よりも高い場合)、第2制御装置は第1制御装置と同様に目標リッチ空燃比afRichを第1目標リッチ空燃比afRich1に設定する。
【0187】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が図13の(A)及び(B)に一点鎖線により示したように良好でない場合(応答性が応答性指標値よりも低い場合)、第2制御装置は、図13の(C)に二点鎖線により示したように、目標リッチ空燃比afRichを「第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい(リッチな)第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定する。
【0188】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合の空燃比(第1目標リッチ空燃比afRich1に対応する空燃比)」よりも「よりリッチな(小さい)空燃比(第2目標リッチ空燃比afRich2に対応する空燃比)」となる。その結果、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができる。即ち、触媒43の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0189】
更に、図14に示したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合、出力変化量ΔVoxsが正であり且つ出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となると、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに変更する。
【0190】
第2制御装置は、この目標リーン空燃比afLeanを、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど、より大きい(よりリーンな)空燃比に設定する。より具体的に述べると、図14に破線及び実線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合(応答性が応答性指標値よりも高い場合)、第2制御装置は第1制御装置と同様に目標リーン空燃比afLeanを第1目標リーン空燃比afLean1に設定する。
【0191】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が図14の(A)及び(B)に一点鎖線により示したように良好でない場合(応答性が応答性指標値よりも低い場合)、第2制御装置は、図14の(C)に二点鎖線により示したように、目標リーン空燃比afLeanを「第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい(リーンな)第2目標リーン空燃比afLean2」に設定する。
【0192】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合の空燃比(第1目標リーン空燃比afLean1に対応する空燃比)」よりも「よりリーンな(大きい)空燃比(第2目標リーン空燃比afLean2に対応する空燃比)」となる。その結果、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができる。即ち、触媒43の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0193】
(作動)
次に、第2制御装置の実際の作動について説明する。第2制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様、図6乃至図8に示したルーチンを実行する。更に、第2制御装置のCPUは、図15に示した「目標リッチ空燃比・目標リーン空燃比設定ルーチン」を実行する。以下、図15に示したルーチンについて説明する。なお、第2制御装置において、リッチ判定閾値ΔVRichthは第1リッチ判定閾値ΔVRichth1に設定(固定)され、リーン判定閾値ΔVLeanthは第1リーン判定閾値ΔVLeanth1に設定(固定)されている。
【0194】
<目標リッチ空燃比afRich及び目標リーン空燃比afLeanの設定>
CPUは図15にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1500から処理を開始してステップ1505に進み、設定完了後フラグXafCNG(以下、「完了後フラグXafCNG」と称呼する。)の値が「0」であるか否かを判定する。
【0195】
この完了後フラグXafCNGは、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。更に、完了後フラグXafCNGの値は、後述するステップ1545にて「1」に設定される。
【0196】
いま、機関10の今回の運転開始後であって完了後フラグXafCNGの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUはステップ1505にて「Yes」と判定してステップ1510に進み、目標リッチ空燃比afRichを第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定する。次に、CPUはステップ1515に進み、目標リーン空燃比afLeanを第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定する。
【0197】
次いで、CPUはステップ1520に進み、今回の機関10の始動後にフィードバック制御フラグXFBの値が「1」の状態において極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの両者が図8のルーチンにより取得されたか否かを判定する。このとき、未だ、少なくとも極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの一方が取得されていなければ、CPUはステップ1520にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0198】
これに対し、極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの両者が取得されていると、CPUはステップ1520にて「Yes」と判定してステップ1525に進み、極大値Voxsmaxから極小値Voxsminを減じた出力値差の大きさDV(応答性指標値)を取得する。
【0199】
次いで、CPUはステップ1530に進み、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも大きいか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。よって、CPUは、ステップ1530にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0200】
このとき、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であって、それ故に出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以下である場合、CPUはステップ1530にて「No」と判定してステップ1535に進み、目標リッチ空燃比afRichを確認的に第1目標リッチ空燃比afRich1に設定する。更に、CPUはステップ1540に進み、目標リーン空燃比afLeanを確認的に第1目標リーン空燃比afLean1に設定する。
【0201】
次いで、CPUはステップ1545に進んで完了後フラグXafCNGの値を「1」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関10の今回の運転開始後において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である(応答性閾値よりも高い)と判定されると、目標リッチ空燃比afRichは第1目標リッチ空燃比afRich1に設定され続け、目標リーン空燃比afLeanは第1目標リーン空燃比afLean1に設定され続ける。
【0202】
これに対し、CPUがステップ1530の処理を実行する時点において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好ではなく、それ故に出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも大きい場合、CPUはステップ1530にて「Yes」と判定してステップ1550に進み、目標リッチ空燃比afRichを「第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい(よりリッチな)第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定する。第2目標リッチ空燃比afRich2は、第1目標リッチ空燃比afRich1から正の値dafrを減じた値でもあり、例えば、13.9である。
【0203】
なお、CPUは、図16に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が悪化するほど(良好でないほど)、即ち、出力値差の大きさDVが大きくなるほど、目標リッチ空燃比afRichを連続的に小さくしてもよい。
【0204】
次に、CPUはステップ1555に進み、目標リーン空燃比afLeanを「第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい(よりリーンな)第2目標リーン空燃比afLean2」に設定する。第2目標リーン空燃比afLean2は、第1目標リーン空燃比afLean1に正の値daflを加えた値であり、例えば、15.0である。
【0205】
なお、CPUは、図16に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が悪化するほど(良好でないほど)、即ち、出力値差の大きさDVが大きくなるほど、目標リーン空燃比afLeanを連続的に大きくしてもよい。
【0206】
次いで、CPUはステップ1545にて完了後フラグXafCNGの値を「1」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関10の今回の運転開始後において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない(応答性閾値よりも低い)と判定されると、目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich1に設定され、且つ、目標リーン空燃比afLeanは第2目標リーン空燃比afLean2に設定される。
【0207】
なお、ステップ1545の処理により、完了後フラグXafCNGの値が「1」に設定されると、次に、CPUがステップ1505の処理を実行する時点において、CPUは「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、目標リッチ空燃比afRich及び目標リーン空燃比afLeanの変更(設定)は、機関10の始動後から運転終了までに1度だけ実行される。換言すると、応答性指標値である出力値差の大きさDVは、目標リッチ空燃比afRichが第1目標リッチ空燃比afRich1であり、目標リーン空燃比afLeanが第1目標リーン空燃比afLeanである場合に限り取得される。
【0208】
以上、説明したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様な空燃比制御手段を備える。更に、第2制御装置は、
目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが減少している(出力変化量ΔVoxs<0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定のリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定し、且つ、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大している(出力変化量ΔVoxs>0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|所定のリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する目標空燃比設定手段(図7のルーチンを参照。)と、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに到達する排ガスの空燃比の変化に対する下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの出力値の応答性を表す応答性指標値(出力値差の大きさDV)を出力値Voxsに基いて取得する応答性指標値取得手段(図8のルーチン、及び、図15のステップ1520及びステップ1525を参照。)と、
を備える。
【0209】
加えて、第2制御装置の目標空燃比設定手段は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど(出力値差の大きさDVが小さいほど)前記目標リッチ空燃比afRichが小さくなるように、前記目標リッチ空燃比afRichを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更するように構成されている(図15のステップ1530、ステップ1535、ステップ1550及び図16を参照。)。
【0210】
より具体的には、その目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて判定し(図15のステップ1530)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比afRichを所定の第1目標リッチ空燃比afRich1に設定し(図15のステップ1535)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比afRichを前記第1目標リッチ空燃比afRichよりも小さい第2目標リッチ空燃比afRich2に設定する(図15のステップ1550)ように構成されている。
【0211】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リッチ空燃比afRich2に対応した、よりリッチな(小さい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができるので、触媒43の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0212】
更に、その目標空燃比設定手段は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど(出力値差の大きさDVが小さいほど)前記目標リーン空燃比afLeanが大きくなるように、前記目標リーン空燃比afLeanを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更するように構成されている(図15のステップ1530、ステップ1540、ステップ1555及び図16を参照。)。
【0213】
より具体的には、その目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて判定し(図15のステップ1530)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比afLeanを所定の第1目標リーン空燃比afLean1に設定し(図15のステップ1540)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リーン空燃比afLeanを前記第1目標リーン空燃比afLeanよりも小さい第2目標リーン空燃比afLean2に設定する(図15のステップ1555)ように構成されている。
【0214】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リーン空燃比afLean2に対応した、よりリーンな(大きい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができるので、触媒43の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0215】
なお、第2制御装置は、目標リッチ空燃比afRichを応答性指標値に関わらず常に第1目標リッチ空燃比afRich1に維持し、目標リーン空燃比afLeanのみを応答性指標値に応じて変更してもよい。更に、第2制御装置は、目標リーン空燃比afLeanを応答性指標値に関わらず常に第1目標リーン空燃比afLean1に維持し、目標リッチ空燃比afRichのみを応答性指標値に応じて変更してもよい。
【0216】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0217】
第3制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない場合、目標リッチ空燃比afRichを第2制御装置とは相違した態様にて制御する。以下、第2制御装置と第3制御装置との相違点を中心に説明する。
【0218】
第3制御装置は、図17に実線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも小さい場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図17の時刻t1を参照。)、目標空燃比abyfrを前記第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定する。そして、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」である限り、目標空燃比abyfrは前記第1目標リッチ空燃比afRich1に維持される。なお、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」である場合、目標空燃比abyfrは前記第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定される。
【0219】
更に、第3制御装置は、図17に二点差線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図17の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい前記第2目標リッチ空燃比afRich2(例えば、13.9)」に設定する。
【0220】
加えて、第3制御装置は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した時点から所定の時間が経過した時刻t2にて、実際には、出力変化量ΔVoxsが極小値になった時点にて(図17のp1を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リッチ空燃比afRich2よりも大きいリッチ空燃比である第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定する。第3目標リッチ空燃比afRich3は、第2目標リッチ空燃比afRich2と理論空燃比stoichとの間の空燃比であればよい(例えば、14.1)。従って、第3目標リッチ空燃比afRich3は、第1目標リッチ空燃比afRich1と一致していてもよく、相違していてもよい。
【0221】
なお、第3制御装置(第3制御装置の変形例)は、図18に示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図18の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リッチ空燃比afRichよりも小さい前記第2目標リッチ空燃比afRich2(例えば、13.9)」に設定する。
【0222】
更に、第3制御装置の変形例は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した時刻t2’にて(実際には、出力変化量ΔVoxsが極小値(p1)を通過した後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定値ΔVthLcになった時点にて(図18のp2を参照。))、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リッチ空燃比afRich2よりも大きいリッチ空燃比である第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定する。
【0223】
この第3制御装置及び第3制御装置の変形例によれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れた場合、目標空燃比abyfrは当初「第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定され、その後に「第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定される。よって、目標リーン空燃比afLeanから目標リッチ空燃比afRichに変更するタイミングが遅れることにより触媒43の状態が酸素過剰状態に近づいたとしても、触媒43にリッチの程度が大きいガスを流入させることができるので、触媒43の状態を直ちに酸素過剰状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素過剰状態から遠ざかった後には目標空燃比abyfrが第3目標リッチ空燃比afRich3に設定されるので、逆に、過剰の未燃物が触媒43に流入すること(即ち、触媒43の状態が一気に酸素不足状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、未燃物の排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0224】
なお、第3制御装置は、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmax(触媒劣化の程度)を周知の手法に基いて別途取得しておき、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth以上の場合には第3制御装置の変形例のように目標リッチ空燃比afRichを設定し、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth未満の場合には第3制御装置のように目標リッチ空燃比afRichを設定してもよい。これによれば、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さい場合に、過剰な未燃物が触媒43に流入することを回避することができる。
【0225】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第4制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0226】
第4制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない場合、目標リーン空燃比afLeanを第2制御装置とは相違した態様にて制御する。以下、第2制御装置と第4制御装置との相違点を中心に説明する。
【0227】
第4制御装置は、図19に実線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも小さい場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図19の時刻t1を参照。)、目標空燃比abyfrを前記第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定する。そして、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」である限り、目標空燃比abyfrは前記第1目標リーン空燃比afLean1に維持される。なお、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」である場合、目標空燃比abyfrは前記第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定される。
【0228】
更に、第4制御装置は、図19に二点差線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図19の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい前記第2目標リーン空燃比afLean2(例えば、15.1)」に設定する。
【0229】
加えて、第4制御装置は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した時点から所定の時間が経過した時刻t2にて、実際には、出力変化量ΔVoxsが極大値になった時点にて(図19のp1を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リーン空燃比afLean2よりも小さいリーン空燃比である第3目標リーン空燃比afLean3」に設定する。第3目標リーン空燃比afLean3は、第2目標リーン空燃比afLean2と理論空燃比stoichとの間の空燃比であればよい(例えば、14.8)。従って、第3目標リーン空燃比afLean3は、第1目標リーン空燃比afLean1と一致していてもよく、相違していてもよい。
【0230】
なお、第4制御装置(第4制御装置の変形例)は、図20に示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図20の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リーン空燃比afLeanよりも小さい前記第2目標リーン空燃比afLean2(例えば、15.1)」に設定する。
【0231】
更に、第4制御装置の変形例は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した時刻t2’にて(実際には、出力変化量ΔVoxsが極大値(p1)を通過した後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定値ΔVthRcになった時点(図20のp2を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リーン空燃比afLean2よりも小さいリーン空燃比である第3目標リーン空燃比afLean3」に設定する。
【0232】
この第4制御装置及び第4制御装置の変形例によれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れた場合、目標空燃比abyfrは当初「第2目標リーン空燃比afLean2」に設定され、その後に「第3目標リーン空燃比afLean3」に設定される。よって、目標リッチ空燃比afRichから目標リーン空燃比afLeanに変更するタイミングが遅れることにより触媒43の状態が酸素不足状態に近づいたとしても、触媒43にリーンの程度が大きいガスを流入させることができるので、触媒43の状態を直ちに酸素不足状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素不足状態から遠ざかった後には目標空燃比abyfrが第3目標リーン空燃比afLean3に設定されるので、逆に、過剰の酸素が触媒43に流入すること(即ち、触媒43の状態が一気に酸素過剰状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、NOxの排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0233】
なお、第4制御装置は、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmax(触媒劣化の程度)を周知の手法に基いて別途取得しておき、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth以上の場合には第4制御装置の変形例のように目標リーン空燃比afLeanを設定し、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth未満の場合には第4制御装置のように目標リーン空燃比afLeanを設定してもよい。これによれば、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さい場合に、過剰な酸素及びNOxが触媒43に流入することを回避することができる。
【0234】
なお、第4制御装置は、第3制御装置及び/又は第3制御装置の変形例と組み合わせて用いることができる。同様に、第4制御装置の変形例は、第3制御装置及び/又は第3制御装置の変形例と組み合わせて用いることができる。
【0235】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性に関わらず、NOx及び/又は未燃物の排出量を低減することができる。
【0236】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0237】
例えば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、目標リッチ空燃比afRichは図21に示したように変更されてもよい。即ち、図21に一点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich2に設定され、その後、所定の時間が経過した時点以降において徐々に増大されてもよい。なお、目標リッチ空燃比afRichが徐々に増大されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ小さい値(第4目標リッチ空燃比afRich4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リッチ空燃比afRich4に維持される。
【0238】
或いは、図21に二点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich2に設定され、その後、直ちに徐々に増大されてもよい。この場合においても、目標リッチ空燃比afRichが徐々に増大されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ小さい値(第4目標リッチ空燃比afRich4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リッチ空燃比afRich4に維持される。
【0239】
同様に、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、目標リッチ空燃比afRichは図22に示したように変更されてもよい。即ち、図22に一点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した直後において目標リーン空燃比afLeanは第2目標リーン空燃比afLean2に設定され、その後、所定の時間が経過した時点以降において徐々に減少されてもよい。なお、目標リーン空燃比afLeanが徐々に減少されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ大きい値(第4目標リーン空燃比afLean4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リーン空燃比afLean4に維持される。
【0240】
或いは、図22に二点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リーン空燃比afLean2に設定され、その後、直ちに徐々に減少されてもよい。この場合においても、目標リーン空燃比afLeanが徐々に減少されて理論空燃比stoichよりも一定値だけ大きい値(第4目標リーン空燃比afLean4)に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リーン空燃比afLean4に維持される。
【0241】
更に、各制御装置は、機関暖機促進のため及び触媒の過熱防止等のために下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに基く空燃比のフィードバック制御を中止し、且つ、目標空燃比abyfrを一定の目標リッチ空燃比に維持する制御(増量制御)を実行してもよい。この場合、各制御装置は、そのような増量制御の終了後において、目標空燃比abyfrを一定の目標リーン空燃比afLeanに設定し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが最大値Vmaxから所定の値(例えば、中央値Vmid又は中央値Vmidの半分)に到達(減少)するまでの時間を下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値として取得してもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0242】
更に、各制御装置は、燃料噴射を停止するフューエルカット運転の終了後に目標空燃比abyfrを一定の目標リッチ空燃比afRichに設定し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが最小値Vminから所定の値(例えば、中央値Vmid又は最大値Vmaxの2/3)に到達(増大)するまでの時間を下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値として取得してもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0243】
更に、各制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの暖機状態(温度)を排ガス温度から推定し、その推定されたセンサ温度に基いて応答性指標値を補正し、補正された応答性指標値に基いて「リーン判定閾値ΔVLeanth、リッチ判定閾値ΔVRichth、第2目標リッチ空燃比afRich、第2目標リーン空燃比afLean等」を変更してもよい。
【0244】
加えて、第3制御装置は、目標空燃比abyfrを第2目標リッチ空燃比afRich2に維持する時間を、周知の手法により別途求められている触媒43の最大酸素吸蔵量Cmaxが大きいほど、或いは、周知の手法により排ガス温度等に基いて推定される触媒43の温度が高くなるほど、長くなるように設定してもよい。
【0245】
同様に、第4制御装置は、目標空燃比abyfrを第2目標リーン空燃比afLean2に維持する時間を、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmaxが大きいほど、或いは、触媒43の温度が高くなるほど、長くなるように設定してもよい。
【0246】
更に、各空燃比制御装置は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに関らず、目標空燃比を一定の目標リッチ空燃比に維持して出力値Voxsが最大値Vmaxに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リッチ空燃比から一定の目標リーン空燃比へと変更した場合において、その目標リッチ空燃比と目標リーン空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値(例えば、中央値Vmid)又はその目標リーン空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0247】
同様に、各空燃比制御装置は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに関らず、目標空燃比を一定の目標リーン空燃比に維持して出力値Voxsが最小値Vminに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リーン空燃比から一定の目標リッチ空燃比へと変更した場合において、その目標リーン空燃比と目標リッチ空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比、)に相当する値(例えば、中央値Vmid)又はその目標リッチ空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0248】
【符号の説明】
【0249】
10…内燃機関、22…吸気ポート、23…排気ポート、25…燃料噴射弁、41…エキゾーストマニホールド、41b…集合部(排気集合部)、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(触媒)、44…下流側触媒、55…上流側空燃比センサ、56…下流側空燃比センサ、60…電気制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に三元触媒を備えた内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排ガスを浄化するために同機関の排気通路に「酸素吸蔵機能を備える三元触媒」が配設されている。この三元触媒は、周知のように、その三元触媒に流入するガス(触媒流入ガス)に過剰の酸素が含まれているとき、その酸素を吸蔵するとともにNOxを浄化する。三元触媒は、触媒流入ガスに過剰な未燃物が含まれているとき、吸蔵している酸素を放出してその未燃物を浄化する。以下、三元触媒は単に「触媒」とも称呼される。
【0003】
従来の空燃比制御装置(従来装置)は、機関の排気通路であって触媒の下流に配設された下流側空燃比センサを備える。従来装置は、その下流側空燃比センサの出力値に基づいて触媒の状態(酸素吸蔵状態)を実質的に判定し、その判定した触媒の状態に基づいて機関に供給される混合気の空燃比(即ち、触媒流入ガスの空燃比)を変更する。機関に供給される混合気の空燃比は、「機関の空燃比」とも称呼される。
【0004】
より具体的に述べると、下流側空燃比センサは図2に示した出力値Voxsを出力する。この下流側空燃比センサは濃淡電池型の酸素濃度センサとも称呼される。
【0005】
下流側空燃比センサの出力値Voxsは、図2に示したように、触媒から流出するガス(触媒流出ガス)の空燃比が理論空燃比よりも小さい場合(理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰な酸素が含まれていない場合、最大値Vmax(例えば、1V)又は最大値Vmax近傍の値となる。この場合、触媒の状態は、一般に、酸素不足状態である(触媒内に酸素が殆ど吸蔵されていない)と判断され得る。
【0006】
下流側空燃比センサの出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい場合(理論空燃比よりもリーン側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれている場合、最小値Vmin(例えば、0V)又は最小値Vmin近傍の値となる。この場合、触媒の状態は、一般に、酸素過剰状態である(触媒内に吸蔵されている酸素の量が、最大酸素吸蔵量Cmaxに近い)と判断され得る。
【0007】
そこで、従来装置は、出力値Voxsと、「最大値Vmaxと最小値Vminとの平均値(中央の値)である中央値Vmid=(Vmax+Vmin)/2」に設定された判定値Vth(目標値)と、に基づいて触媒の状態を実質的に判定し、その判定結果に実質的に基づいて機関の空燃比を制御している。
【0008】
即ち、従来装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合、触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比(リーン空燃比)となるように(触媒に過剰な酸素が流入するように)、機関の空燃比を制御する。更に、従来装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい場合、触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比(リッチ空燃比)となるように(触媒に過剰な未燃物が流入するように)、機関の空燃比を制御する(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−171982号公報
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、実際には、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である場合に下流側空燃比センサの出力値Voxsが明らかな減少を始めた時点においては、触媒流出ガスには過剰の酸素が多量に含まれている。よって、触媒の酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量Cmaxに近い値にあり、この場合に触媒流入ガスの空燃比をリーン空燃比に維持することは、たとえ出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合であっても、多量のNOxが排出される可能性が高まる点において好ましくない。
【0011】
同様に、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合に下流側空燃比センサの出力値Voxsが明らかな増大を始めた時点においては、触媒流出ガスには過剰の未燃物が多量に含まれている。よって、触媒の酸素吸蔵量は「0」に近い値にあり、この場合に触媒流入ガスの空燃比をリッチ空燃比に維持することは、たとえ出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい場合であっても、多量の未燃物が排出される可能性が高まる点において好ましくない。
【0012】
係る知見に基き、本発明による空燃比制御装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、次に述べる空燃比制御を行う。
(1)本発明装置は、下流側空燃比センサの出力値Voxsの所定時間あたりの変化量(以下、「出力変化量ΔVoxs」とも称呼する。)を求める。
(2)本発明装置は、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されているとき(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるとき)、出力値Voxsが減少していて且つ出力変化量ΔVoxsの大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいていると判定し、目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定する。即ち、触媒流入ガスの空燃比を理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比に設定する。
(3)本発明装置は、目標空燃比が目標リッチ空燃比に設定されているとき(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であるとき)、出力値Voxsが増大していて且つ出力変化量ΔVoxsの大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき、触媒の状態が酸素不足状態に近づいていると判定し、目標空燃比を目標リーン空燃比に設定する。即ち、触媒流入ガスの空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比に設定する。
【0013】
しかしながら、下流側空燃比センサの製造上のばらつき(センサの個体差)等により、下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比の変化に対する出力値Voxsの変化は個々のセンサ間で相違する。即ち、下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する出力値Voxsの応答性(「下流側空燃比センサの出力値の応答性」又は「下流側空燃比センサの応答性」とも称呼する。)はセンサ間で一定ではない。この応答性の差は、下流側空燃比センサが備える多孔質の保護層(排ガスが最初に到達する層)の厚さ及び空孔率等がセンサ間において一定ではないこと等に起因すると考えられる。
【0014】
図4は、(A)下流側空燃比センサの出力値Voxs、(B)出力値Voxsの所定時間あたりの変化量である出力変化量ΔVoxs(出力値Voxsの傾き、出力値Voxsの時間微分値d(Voxs)/dtに相当する値)、(C)上記目標空燃比に相当する上流側目標空燃比abyfr、及び、(D)窒素酸化物(NOx)排出量、を示したタイムチャートである。図4において、実線は応答性が基準の応答性である下流側空燃比センサについての各値、破線は応答性が基準の応答性よりも良好な下流側空燃比センサについての各値、一点鎖線は応答性が基準の応答性よりも良好でない下流側空燃比センサについての各値を示している。
【0015】
図4に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比は目標リーン空燃比afLeanであり、時刻t0の近傍にて触媒から酸素が流出し始めたために、図4の(A)に示したように、出力値Voxsは時刻t0から減少し始めている。しかしながら、破線により示した応答性の良好な下流側空燃比センサの出力値Voxsは相対的に速やかに減少するのに対し、一点鎖線により示した応答性の良好でない下流側空燃比センサの出力値Voxsは相対的に緩やかに減少する。
【0016】
従って、図4の(B)に示したように、下流側空燃比センサの応答性が良好な場合には出力変化量ΔVoxsは時刻t1にてリーン判定閾値(図4における第1リーン判定閾値)に達するのに対し、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合には出力変化量ΔVoxsは「時刻t1以降の時刻t3」にてリーン判定閾値に達する。このため、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、目標空燃比を目標リッチ空燃比afRichに設定する時点が遅れる(図4の(C)における時刻t1に対する時刻t3を参照。)。
【0017】
即ち、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、排ガスの空燃比の変化に対して出力値Voxsの変化が遅れるので、出力変化量ΔVoxsの変化も遅れる。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいているとの判定が遅れ、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されている時間が長くなる。この場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である時間が必要以上に長くなるので、NOxの排出量が増大する(図4の(D)における破線及び実線に対する一点鎖線を参照。)。
【0018】
本発明は係る問題に対処するためになされたものであり、その目的は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合においても、エミッションをより一層改善することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【0019】
より具体的に述べると、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の一態様は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
空燃比制御手段と、
目標空燃比設定手段と、
応答性指標値取得手段と、
閾値変更手段と、
を備える。
【0020】
前記空燃比制御手段は、機関の空燃比の目標値(即ち、目標空燃比)が所定の目標リーン空燃比(理論空燃比よりも大きい空燃比)に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する。更に、空燃比制御手段は、目標空燃比が所定の目標リッチ空燃比(理論空燃比よりも小さい空燃比)に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する。
【0021】
前記目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定する。更に、目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する。
【0022】
前記応答性指標値取得手段は、「前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性」を表す「応答性指標値」を下流側空燃比センサの出力値に基いて取得する。応答性指標値は、後述するように、種々の方法により取得することができる。
【0023】
前記閾値変更手段は、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更する。
【0024】
これによれば、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、リーン判定閾値の大きさが小さくなる(図4の(B)の第2リーン判定閾値、矢印を参照。)。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、出力変化量ΔVoxsの大きさは、リーン判定閾値が一定である場合に比べ、大きさが小さく変更されたリーン判定閾値に「より短い時間」にて到達する。従って、本発明装置は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合であっても、目標空燃比が目標リーン空燃比に設定されていて下流側空燃比センサの出力値が減少しているとき、触媒の状態が酸素過剰状態に近づいていることを遅滞なく検出することができる。よって、目標空燃比を目標リッチ空燃比へと遅滞なく変更することができる。その結果、多量のNOxを含むリーン空燃比のガスが触媒に過剰に流入することを回避できるので、NOxの排出量を低減することができる。
【0025】
本発明装置の一態様においては、
前記閾値変更手段が、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される(図5の(B)の第2リッチ判定閾値、矢印を参照。)。
【0026】
これによれば、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、リッチ判定閾値の大きさが小さくなる。よって、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合、出力変化量ΔVoxsの大きさは、リッチ判定閾値が一定である場合に比べ、大きさが小さく変更されたリッチ判定閾値に「より短い時間」にて到達する。従って、本発明装置は、下流側空燃比センサの応答性が良好でない場合であっても、目標空燃比が目標リッチ空燃比に設定されていて下流側空燃比センサの出力値が増大しているとき、触媒の状態が酸素不足状態に近づいていることを遅滞なく検出することができる。よって、目標空燃比を目標リーン空燃比へと遅滞なく変更することができる。その結果、多量の未燃物(HC及びCO等)を含むリッチ空燃比のガスが触媒に過剰に流入することを回避できるので、未燃物の排出量を低減することができる。
【0027】
更に、本発明装置の一態様において、前記閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値を第1リーン判定閾値に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値に設定する、
ように構成される(図4を参照。)。
【0028】
同様に、本発明装置の態様において、前記閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を第1リッチ判定閾値に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値に設定する、
ように構成される。
【0029】
更に、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の他の態様は、リーン判定閾値及び/又はリッチ判定閾値を応答性指標値に基いて変更する代わりに(又はその変更に加えて)、目標リッチ空燃比及び/又は目標リーン空燃比を応答性指標値に基いて変更する。
【0030】
より具体的に述べると、前記他の態様は、上記三元触媒と、上記下流側空燃比センサと、上記空燃比制御手段と、上記応答性指標値取得手段と、を備える。更に、前記他の態様は、以下に述べる目標空燃比設定手段を備える。
【0031】
前記目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定する。更に、目標空燃比設定手段は、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する。
【0032】
更に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リッチ空燃比が小さくなるように、前記目標リッチ空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される。
【0033】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好である場合の触媒流入ガスの空燃比」よりも「よりリッチな(小さい)空燃比」となる。その結果、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でない場合であって目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、触媒の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができる。即ち、触媒の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0034】
更に、本発明の他の態様における前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リーン空燃比が大きくなるように、前記目標リーン空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成される。
【0035】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好である場合の触媒流入ガスの空燃比」よりも「よりリーンな(大きい)空燃比」となる。その結果、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でない場合であって目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、触媒の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができる。即ち、触媒の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0036】
更に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を所定の第1目標リッチ空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リッチ空燃比よりも小さい第2目標リッチ空燃比に設定するように構成される。
【0037】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リッチ空燃比に対応した、よりリッチな(小さい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができるので、触媒の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0038】
この場合、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比よりは大きく且つ理論空燃比よりは小さい第3目標リッチ空燃比に設定するように構成され得る。前記所定の時間は、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が極大値となるまでの時間(出力変化量ΔVoxsが極小値になるまでの時間)」、或いは、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsが極小値となり、その後に出力変化量ΔVoxsが所定値以上となるまでの時間」であってもよい。また、第3目標リッチ空燃比は第1目標リッチ空燃比と同じであっても、相違していてもよい。
【0039】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れた場合、目標リッチ空燃比は当初「第2目標リッチ空燃比」に設定され、その後に「第3目標リッチ空燃比」に設定される。よって、目標リッチ空燃比に設定するタイミングが遅れることにより触媒の状態が酸素過剰状態に近づいたとしても、触媒の状態を直ちに酸素過剰状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素過剰状態から遠ざかった後には目標空燃比が第3目標リッチ空燃比に設定されるので、逆に、過剰の未燃物が触媒に流入すること(即ち、触媒の状態が一気に酸素不足状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、未燃物の排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0040】
同様に、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の前記応答性閾値よりも高いか否かを前記応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比を所定の第1目標リーン空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リーン空燃比よりも大きい第2目標リーン空燃比に設定するように構成される。
【0041】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リーン空燃比に対応した、よりリーンな(大きい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができるので、触媒の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0042】
この場合においても、前記目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比よりは小さく且つ理論空燃比よりは大きい第3目標リーン空燃比に設定するように構成され得る。前記所定の時間は、「前記目標空燃比が前記第2目標リーン空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が極大値となるまでの時間(出力変化量ΔVoxsが極大値になるまでの時間)」、或いは、「前記目標空燃比が前記第2目標リッチ空燃比に設定された後に出力変化量ΔVoxsが極大値となり、その後に出力変化量ΔVoxsが所定値以下となるまでの時間」であってもよい。また、第3目標リーン空燃比は第1目標リーン空燃比と同じであっても、相違していてもよい。
【0043】
これによれば、下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないことに起因して目標空燃比を目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れた場合、目標リーン空燃比は当初「第2目標リーン空燃比」に設定され、その後に「第3目標リーン空燃比」に設定される。よって、目標リーン空燃比に設定するタイミングが遅れることにより触媒の状態が酸素不足状態に近づいたとしても、触媒の状態を直ちに酸素不足状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素不足状態から遠ざかった後には目標空燃比が第3目標リーン空燃比に設定されるので、逆に、過剰の酸素が触媒に流入すること(即ち、触媒の状態が一気に酸素過剰状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、NOxの排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0044】
ところで、目標空燃比が目標リーン空燃比から目標リッチ空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極小値は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど小さくなる(図4のq4、q5及びq6を参照。)。よって、この極小値は応答性指標値として採用することができる。
【0045】
同様に、目標空燃比が目標リッチ空燃比から目標リーン空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極大値は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる(図5のq4、q5及びq6を参照。)。よって、この極大値は応答性指標値として採用することができる。
【0046】
そこで、前記応答性指標値取得手段は、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値、又は、
前記機関の目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値、
を前記応答性指標値として取得するように構成され得る。
【0047】
これによれば、簡単な構成にて、しかも、下流側空燃比センサの出力値に基く(出力変化量に基く)空燃比のフィードバック中に応答性指標値を取得することができる。
【0048】
更に、目標空燃比が目標リーン空燃比から目標リッチ空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極小値(図4のq4、q5及びq6を参照。)と、その目標空燃比の目標リッチ空燃比への切替直前に現れていた出力値の極大値(図4のq1、q2及びq3を参照。)と、の差(図4のq1とq4との出力値差、q2とq5との出力値差、及び、q3とq6との出力値差)は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。よって、この差(差の大きさ)は応答性指標値として採用することができる。
【0049】
同様に、目標空燃比が目標リッチ空燃比から目標リーン空燃比へと変更された時点後に最初に現れる出力値の極大値(図5のq4、q5及びq6を参照。)と、その目標空燃比の目標リーン空燃比への切替直前に現れていた出力値の極小値(図5のq1、q2及びq3を参照。)と、の差(図5のq1とq4との出力値差、q2とq5との出力値差、及び、q3とq6との出力値差)は、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。よって、この差(差の大きさ)は応答性指標値として採用することができる。
【0050】
そこで、前記応答性指標値取得手段は、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極大値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値と、の差の大きさ、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極小値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値と、の差の大きさ、
を前記応答性指標値として取得するように構成され得る。
【0051】
これによれば、簡単な構成にて、しかも、下流側空燃比センサの出力値に基く(出力変化量に基く)空燃比のフィードバック中に応答性指標値を取得することができる。
【0052】
なお、前記応答性指標値取得手段は、
前記機関の運転状態が前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転状態から、同フューエルカット運転状態が終了して前記目標空燃比が所定の目標リッチ空燃比へと変更された後に前記下流側空燃比センサの出力値が所定値に達する(増大する)までの時間、又は、
前記機関の運転状態が前記目標空燃比を前記下流側空燃比センサの出力値に関らず理論空燃比よりも小さい増量リッチ空燃比に設定する増量運転状態から、同増量運転状態が終了して前記目標空燃比が所定の目標リーン空燃比へと変更された後に前記下流側空燃比センサの出力値が所定値に達する(減少する)までの時間、
を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
これらの時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0053】
更に、この場合に取得される時間は、別途算出される触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxに応じて補正され、その補正された値が応答性指標値として採用されてもよい。
【0054】
更に、前記応答性指標値取得手段は、
下流側空燃比センサの出力値に関らず、目標空燃比を一定の目標リッチ空燃比に維持して出力値が最大値Vmaxに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リッチ空燃比から一定の目標リーン空燃比へと変更した場合において、その目標リッチ空燃比と目標リーン空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値又はその目標リーン空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
【0055】
同様に、前記応答性指標値取得手段は、
下流側空燃比センサの出力値に関らず、目標空燃比を一定の目標リーン空燃比に維持して出力値が最小値Vminに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リーン空燃比から一定の目標リッチ空燃比へと変更した場合において、その目標リーン空燃比と目標リッチ空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値又はその目標リッチ空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第1制御装置)を適用した内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した下流側空燃比センサの出力値(出力電圧)と空燃比との関係を示したグラフである。
【図3】図3の(A)は図1に示した下流側空燃比センサの素子部の概略断面図であり、図3の(B)は素子部の拡大概略断面図である。
【図4】第1制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図5】第1制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図6】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】第1制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図12】第1制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図13】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第2制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図14】第2制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図15】第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】第2制御装置の変形例に係るCPUが参照するテーブルである。
【図17】本発明の第3実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第3制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図18】第3制御装置の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図19】本発明の第4実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置(第4制御装置)の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図20】第4制御装置の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図21】第3制御装置の別の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図22】第4制御装置の別の変形例の作動を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置について図面を参照しながら説明する。
【0058】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される内燃機関10の概略構成を示している。機関10は、4サイクル・火花点火式・多気筒(本例において4気筒)・ガソリン燃料機関である。機関10は、本体部20、吸気系統30及び排気系統40を備えている。
【0059】
本体部20は、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とを備えている。本体部20は、ピストン頂面、シリンダ壁面及びシリンダヘッド部の下面からなる複数(4個)の燃焼室(第1気筒#1乃至第4気筒#4)21を備えている。
【0060】
シリンダヘッド部には、各燃焼室(各気筒)21に「空気及び燃料からなる混合気」を供給するための吸気ポート22と、各燃焼室21から排ガス(既燃ガス)を排出するための排気ポート23と、が形成されている。吸気ポート22は図示しない吸気弁により開閉され、排気ポート23は図示しない排気弁により開閉されるようになっている。
【0061】
シリンダヘッド部には複数(4個)の点火プラグ24が固定されている。各点火プラグ24は、その火花発生部が各燃焼室21の中央部であってシリンダヘッド部の下面近傍位置に露呈するように配設されている。各点火プラグ24は、点火信号に応答して火花発生部から点火用火花を発生するようになっている。
【0062】
シリンダヘッド部には更に複数(4個)の燃料噴射弁(インジェクタ)25が固定されている。燃料噴射弁25は、各吸気ポート22に一つずつ(即ち、一つの気筒に対して一つ)設けられている。燃料噴射弁25は、噴射指示信号に応答し、「その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料」を対応する吸気ポート22内に噴射するようになっている。
【0063】
更に、シリンダヘッド部には、吸気弁制御装置26が設けられている。この吸気弁制御装置26は、インテークカムシャフト(図示せず)とインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備えている。吸気弁制御装置26は、指示信号(駆動信号)に基いて作動し、吸気弁の開弁タイミング(吸気弁開弁タイミング)を変更することができるようになっている。
【0064】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、エアフィルタ33、スロットル弁34及びスロットル弁アクチュエータ34aを備えている。
【0065】
インテークマニホールド31は、各吸気ポート22に接続された複数の枝部と、それらの枝部が集合したサージタンク部と、を備えている。吸気管32はサージタンク部に接続されている。インテークマニホールド31、吸気管32及び複数の吸気ポート22は、吸気通路を構成している。エアフィルタ33は吸気管32の端部に設けられている。スロットル弁34はエアフィルタ33とインテークマニホールド31との間の位置において吸気管32に回動可能に取り付けられている。スロットル弁34は、回動することにより吸気管32が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ34aは、DCモータからなり、指示信号(駆動信号)に応答してスロットル弁34を回動させるようになっている。
【0066】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ(排気管)42、上流側触媒43及び下流側触媒44を備えている。
【0067】
エキゾーストマニホールド41は、各排気ポート23に接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合した集合部(排気集合部)41bと、からなっている。エキゾーストパイプ42は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bに接続されている。エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42及び複数の排気ポート23は、排ガスが通過する通路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド41の集合部41b及びエキゾーストパイプ42により形成される通路を、便宜上、「排気通路」と称呼する。
【0068】
上流側触媒43は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(パラジウムPd及び白金Pt、ロジウムRd等の一種類以上)」及び「酸素吸蔵材であるセリア(CeO2)」を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(酸素吸蔵機能)を有する三元触媒である。上流側触媒43はエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。上流側触媒43は所定の活性温度に到達すると、「未燃物(HC、CO及びH2等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒機能」及び「酸素吸蔵機能」を発揮する。上流側触媒43は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
【0069】
下流側触媒44は、上流側触媒43と同様の三元触媒である。下流側触媒44は、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。下流側触媒44は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。なお、本明細書において、単に「触媒」と言うとき、その「触媒」は上流側触媒43を意味する。
【0070】
本制御装置は、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、機関回転速度センサ53、水温センサ54、上流側空燃比センサ55、下流側空燃比センサ56及びアクセル開度センサ57を備えている。
【0071】
熱線式エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
【0072】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0073】
機関回転速度センサ53は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ53から出力される信号は後述する電気制御装置60により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置60は、機関回転速度センサ53及び図示しないクランク角センサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0074】
水温センサ54は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
【0075】
上流側空燃比センサ55は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bと上流側触媒43との間の位置においてエキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ55は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0076】
上流側空燃比センサ55は、上流側空燃比センサ55の配設位置を流れる排ガスの空燃比(触媒43に流入するガスである「触媒流入ガス」の空燃比、上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを出力する。出力値Vabyfsは触媒流入ガスの空燃比が大きくなるほど(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン側の空燃比になるほど)増大する。
【0077】
電気制御装置60は、出力値Vabyfsと上流側空燃比abyfsとの関係を規定した空燃比変換テーブル(マップ)Mapabyfsを記憶している。電気制御装置60は、出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfsに適用することにより、実際の上流側空燃比abyfsを検出する(検出上流側空燃比abyfsを取得する)ようになっている。
【0078】
下流側空燃比センサ56は、上流側触媒43と下流側触媒44との間の位置においてエキゾーストパイプ42(即ち、排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ56は、周知の濃淡電池型の酸素濃度センサ(O2センサ)である。下流側空燃比センサ56は図2に示した出力値Voxsを出力する。
【0079】
下流側空燃比センサ56は、図3の(A)に示した試験管状の素子部を備える。素子部は、図3の(B)に示したように、固体電解質層56aと、固体電解質層56aの外側に形成された排ガス側電極層56bと、大気室AR(固体電解質層56aの内側)に露呈し且つ固体電解質層56aを挟んで排ガス側電極層(外側電極)56bと対向するように固体電解質層56aの内側に形成された大気側電極層(内側電極)56cと、排ガス側電極層56bを覆うコーティング層56dと、そのコーティング層56dを覆う触媒層56eと、触媒層56eを覆うとともに排ガスExが接触する(図示しない保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入した排ガスEx中に晒されるように配置される)保護層(トラップ層)56fを備える。
【0080】
なお、固体電解質層56a等は板状であってもよい。触媒43から流出するガス(触媒流出ガス)は、保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入し、次いで、保護層56f、触媒層56e及びコーティング層56dを通過して、排ガス側電極層56bに到達する。
【0081】
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは、「排ガス側電極層(外側電極)56bにおける酸素分圧と、大気側電極層(内側電極)56cにおける酸素分圧と、の差」に応じた起電力であって、固体電解質層56aに酸素イオンの移動を生じさせる起電力である。
【0082】
より具体的に述べると、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい場合(理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰な酸素が含まれていない場合、最大値Vmax又は最大値Vmax近傍の値(例えば、約0.9〜1.0V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素不足状態である(触媒内に酸素が殆ど吸蔵されていない)と判断され得る。
【0083】
一方、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい場合(理論空燃比よりもリーン側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれている場合、最小値Vmin又は最小値Vmin近傍の値(例えば、約0〜0.1V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素過剰状態である(触媒内に吸蔵されている酸素の量が、最大酸素吸蔵量Cmaxに近い)と判断され得る。
【0084】
更に、この出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比からリーン側の空燃比へと変化する際に最大値Vmaxから最小値Vminへと急激に減少する。逆に、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比へと変化する際に最小値Vminから最大値Vmaxへと急激に増大する。なお、最小値Vminと最大値Vmaxとの平均値は中央値Vmid(=(Vmax+Vmin)/2)又は理論空燃比相当電圧Vstと称呼される。
【0085】
ところで、前述したように、触媒流出ガスは、保護層56f、触媒層56e及びコーティング層56dを通過して、排ガス側電極層56bに到達する。よって、これらの層(特に、保護層56fの厚さ及び空孔率等)が製造上ばらつくと、触媒流出ガスの空燃比(酸素分圧)の変化に対する出力値Voxsの変化の応答性が個々の下流側空燃比センサ56間で相違する。
【0086】
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ57は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0087】
電気制御装置60は、「CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる「周知のマイクロコンピュータ」を含む電子回路である。
【0088】
電気制御装置60が備えるバックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。即ち、それまでに保持していたデータが消失(破壊)される。
【0089】
電気制御装置60のインターフェースは、前記センサ51〜57と接続され、CPUにセンサ51〜57からの信号を供給するようになっている。更に、そのインターフェースは、CPUの指示に応じて、各気筒の点火プラグ24、各気筒の燃料噴射弁25、吸気弁制御装置26及びスロットル弁アクチュエータ34a等に指示信号(駆動信号)等を送出するようになっている。なお、電気制御装置60は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータ34aに指示信号を送出するようになっている。
【0090】
(第1制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
第1制御装置は、以下に述べるように触媒43の状態(酸素吸蔵状態、触媒状態)を判定する。触媒43は、触媒43が酸素をその最大酸素吸蔵量に近い値まで吸蔵している状態(即ち、酸素過剰状態、リーン状態)、及び、触媒43が酸素を殆ど吸蔵していない状態(即ち、酸素不足状態、還元状態、リッチ状態)の何れかの状態にあると判定される。第1制御装置は、この触媒43の状態の判定のために、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの所定時間(単位時間)あたりの変化量である出力変化量ΔVoxsを用いる。出力変化量ΔVoxsは、微分値dVoxs/dtに相当する値であり、出力値Voxsの傾きでもある。
【0091】
更に、第1制御装置は、判定された触媒43の状態に基づいて「触媒43に流入する排ガス(触媒流入ガス)の空燃比(従って、機関10に供給される混合気の空燃比)」をフィードバック制御する。より具体的には、第1制御装置は、触媒43の状態に応じて「機関の空燃比の目標値である目標空燃比(上流側目標空燃比abyfr)」を目標リッチ空燃比afRichと目標リーン空燃比afLeanとの何れかに設定する。例えば、目標リッチ空燃比afRichは14.2、理論空燃比stoichは14.5、目標リーン空燃比afLeanは14.7である。
【0092】
<目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合>
図4に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanである。よって、触媒流入ガスには過剰の酸素が含まれているので、触媒43の状態は酸素過剰状態へと近づき、その結果、時刻t0又はその直前にて触媒43から酸素が急激に流出し始める。
【0093】
いま、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性(設計値の応答性)であると仮定する。この場合、図4の(A)に実線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。この場合、減少の程度は中程度である。
【0094】
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて且つ出力値Voxsが減少している場合、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が「正の所定値であるリーン判定閾値ΔVLeanth」より大きくなったとき、触媒43の状態が酸素過剰状態に近づいていると判定し、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。なお、リーン判定閾値ΔVLeanthは、当初、第1リーン判定閾値ΔVthL1に設定されている。図4の(B)に実線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は時刻t2にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。これにより、図4の(C)に実線により示したように、第1制御装置は、時刻t2にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。
【0095】
また、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好(高い応答性)であると仮定する。この場合にも、図4の(A)に破線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。但し、出力値Voxsの減少の程度は大きい。即ち、出力値Voxsは迅速に減少する。よって、この場合、図4の(B)に破線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも前の時刻t1」にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。その結果、第1制御装置は、図4の(C)に破線により示したように、時刻t1にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。
【0096】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好でない(低い応答性)であると仮定する。この場合にも、図4の(A)に一点鎖線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて減少を開始する。但し、減少の程度は小さい。即ち、出力値Voxsは穏やかに減少する。よって、この場合、図4の(B)に一点鎖線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも後の時刻t3」にてリーン判定閾値ΔVLeanthに到達する。その結果、第1制御装置は、図4の(C)に一点鎖線により示したように、時刻t3にて目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定する。その結果、触媒43にはリーン空燃比の排ガスが過剰に流入するので、図4の(D)に一点鎖線により示したように、NOxの排出量が増大する。
【0097】
その後、出力値Voxsは減少を続け、次いで、増大しはじめる。即ち、出力値Voxsは極小値Voxsminをとる。この極小値Voxsminは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど小さくなる(図4の(A)のq4、q5及びq6を参照。)。これは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど、過剰な酸素が触媒43に流入するためであり、換言すると、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れるためである。更に、触媒43から未燃物が流出し始めたとしても、応答性の良好でない下流側空燃比センサ56の出力値Voxsはその検出が遅れるためである。
【0098】
加えて、その極小値Voxsminの前に現れた極大値Voxsmax(図4の(A)のq1、q2及びq3を参照。)と、その極小値Voxsmin(図4の(A)のq4、q5及びq6を参照。)との差の大きさ、即ち、図4のq1とq4との出力値差の大きさ、q2とq5との出力値差の大きさ、及び、q3とq6との出力値差の大きさは、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。従って、第1制御装置は、この出力値差の大きさDV(=第1応答性指標値DV1)を「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値」として取得する。
【0099】
更に、第1制御装置は、出力値差の大きさDVに基づいて、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを判定する。より具体的に述べると、第1制御装置は、出力値差の大きさDVが「応答性閾値に対応する第1の閾値出力値差DV1th」以上であるか否かを判定し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1thよりも小さいとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であるとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定する。
【0100】
そして、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は許容範囲と見做し、リーン判定閾値ΔVLeanthを第1リーン判定閾値ΔVthL1に維持する。これに対し、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は想定以上に良好でないと判定し、リーン判定閾値ΔVLeanthを「第1リーン判定閾値ΔVthL1の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値ΔVthL2」に変更する。例えば、第2リーン判定閾値ΔVthL2は、第1リーン判定閾値ΔVthL1から正の所定値αを減じた値である。但し、第2リーン判定閾値ΔVthL2も正の値である。
【0101】
これにより、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が想定以上に良好でない場合、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて出力値Voxsが減少しているとき、より早いタイミングにて出力変化量ΔVoxsがリーン判定閾値ΔVLeanth(=第2リーン判定閾値ΔVthL2)に到達する。よって、「過剰な酸素が触媒43に流入し、且つ、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れる事態」の発生を回避することができる。その結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0102】
<目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合>
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合にも、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合と同様な作動を行う。
【0103】
図5に示した例において、時刻t0以前の目標空燃比は目標リッチ空燃比afRichである。よって、触媒流入ガスには過剰の未燃物が含まれているので、触媒43の状態は酸素不足状態へと近づき、その結果、時刻t0又はその直前にて触媒43から未燃物が急激に流出し始める。なお、図5において、図4と同様、実線は応答性が基準の応答性である下流側空燃比センサについての各値、破線は応答性が基準の応答性よりも良好な下流側空燃比センサについての各値、一点鎖線は応答性が基準の応答性よりも良好でない下流側空燃比センサについての各値を示している。
【0104】
いま、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性(設計値の応答性)であると仮定する。この場合、図5の(A)に実線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。この場合、増大の程度は中程度である。
【0105】
第1制御装置は、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて且つ出力値Voxsが増大している場合、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が「正の所定値であるリッチ判定閾値ΔVRichth」より大きくなったとき、触媒43の状態が酸素不足状態に近づいていると判定し、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。なお、リッチ判定閾値ΔVRichthは、当初、第1リッチ判定閾値ΔVthR1に設定されている。従って、図5の(B)に実線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は時刻t2にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。よって、第1制御装置は、図5の(C)に実線により示したように、時刻t2にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。
【0106】
また、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好(高い応答性)であると仮定する。この場合にも、図5の(A)に破線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。但し、出力値Voxsの増大の程度は大きい。即ち、出力値Voxsは迅速に増大する。よって、この場合、図5の(B)に破線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも前の時刻t1」にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。その結果、第1制御装置は、図5の(C)に破線により示したように、時刻t1にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。
【0107】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が基準の応答性よりも良好でない(低い応答性)であると仮定する。この場合にも、図5の(A)に一点鎖線により示したように、出力値Voxsは時刻t0にて増大を開始する。但し、増大の程度は小さい。即ち、出力値Voxsは穏やかに増大する。よって、この場合、図5の(B)に一点鎖線により示したように、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|は「時刻t2よりも後の時刻t3」にてリッチ判定閾値ΔVRichthに到達する。その結果、第1制御装置は、図5の(C)に一点鎖線により示したように、時刻t3にて目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する。その結果、触媒43にはリッチ空燃比の排ガスが過剰に流入するので、図5の(D)に一点鎖線により示したように、未燃物(例えは、HC)の排出量が増大する。
【0108】
その後、出力値Voxsは増大を続け、次いで、減少しはじめる。即ち、出力値Voxsは極大値Voxsmaxをとる。この極大値Voxsmaxは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど大きくなる(図5の(A)のq4、q5及びq6を参照。)。これは、下流側空燃比センサ56の応答性が良好でないほど、過剰な未燃物が触媒43に流入するためであり、換言すると、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れるためである。更に、触媒43から酸素が流出し始めたとしても、応答性の良好でない下流側空燃比センサ56の出力値Voxsはその検出が遅れるためである。
【0109】
更に、その極大値Voxsmaxの前に現れた極小値Voxsmin(図5の(A)のq1、q2及びq3を参照。)と、その極大値Voxsmax(図5の(A)のq4、q5及びq6を参照。)との差の大きさ、即ち、図5のq1とq4との出力値差の大きさ、q2とq5との出力値差の大きさ、及び、q3とq6との出力値差の大きさは、下流側空燃比センサの応答性が良好でないほど大きくなる。従って、第1制御装置は、この出力値差の大きさDV(=第2応答性指標値DV2)を「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値」として取得する。
【0110】
更に、第1制御装置は、出力値差の大きさDVに基づいて、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを判定する。より具体的に述べると、第1制御装置は、出力値差の大きさDVが「応答性閾値に対応する第2の閾値出力値差DV2th」以上であるか否かを判定し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2thよりも小さいとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であるとき下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定する。
【0111】
そして、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は許容範囲と見做し、リッチ判定閾値ΔVRichthを第1リッチ判定閾値ΔVthR1に維持する。これに対し、第1制御装置は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも低いと判定した場合、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性は想定以上に良好でないと判定し、リッチ判定閾値ΔVRichthを「第1リッチ判定閾値ΔVthR1の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値ΔVthR2」に変更する。例えば、第2リッチ判定閾値ΔVthR2は、第1リッチ判定閾値ΔVthR1から正の所定値βを減じた値である。但し、第2リッチ判定閾値ΔVthR2も正の値である。
【0112】
なお、第1リッチ判定閾値ΔVthR1は第1リーン判定閾値ΔVthL1と同一であってもよく、相違していてもよい。更に、所定値βは所定値αと同一であってもよく、相違していてもよい。
【0113】
これにより、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が想定以上に良好でない場合、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大しているとき、より早いタイミングにて出力変化量ΔVoxsがリッチ判定閾値ΔVRichth(=第2リッチ判定閾値ΔVthR2)に到達する。よって、「過剰な未燃物が触媒43に流入し、且つ、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れる事態」の発生を回避することができる。その結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0114】
(作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。
【0115】
<燃料噴射制御>
第1制御装置のCPUは、図6に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度となる毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0116】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ600から処理を開始し、ステップ605にてフューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット開始条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるときにフューエルカット終了条件が成立したときに「0」に設定される。フューエルカットフラグXFCの値は更にイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0117】
フューエルカット開始条件は、スロットル弁開度TAが「0」であり且つ機関回転速度NEがフューエルカット回転閾値速度NEFC以上であるとき成立する。フューエルカット終了条件は、スロットル弁開度TAが「0」でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット終了回転閾値速度NERT以下となったとき、成立する。フューエルカット終了回転閾値速度NERTはフューエルカット回転閾値速度NEFCよりも小さい。
【0118】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定してステップ610に進み、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、機関回転速度センサ53の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc(Ga,NE)」に基いて「燃料噴射気筒に吸入される空気量(即ち、筒内吸入空気量)Mc)」を取得する。筒内吸入空気量Mcは、周知の空気モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0119】
次に、CPUはステップ615に進み、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であるか否かを判定する。このフィードバック制御フラグXFBの値は、フィードバック制御条件が成立しているときに「1」に設定され、フィードバック制御条件が成立していないときに「0」に設定される。フィードバック制御条件は、例えば、以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)上流側空燃比センサ55が活性化している。
(A2)下流側空燃比センサ56が活性化している。
(A3)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A4)フューエルカットフラグXFCの値が「0」である。
【0120】
このとき、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」でなければ、CPUはステップ615にて「No」と判定してステップ620に進み、目標空燃比abyfr(上流側目標空燃比abyfr)を理論空燃比stoich(例えば、14.5)に設定する。
【0121】
次に、CPUは以下に述べるステップ625乃至ステップ640の処理を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0122】
ステップ625:CPUは、筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除することによって基本燃料噴射量Fbaseを算出する。基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。
【0123】
ステップ630:CPUは、図示しないルーチンにより別途計算されているメインフィードバック量KFmainを読み込む。メインフィードバック量KFmainは、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrに一致するように周知のPID制御に基づいて算出される。即ち、簡単に述べると、メインフィードバック量DFmainは、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも大きい(リーンである)とき増大され、上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも小さい(リッチである)とき減少される。なお、メインフィードバック量KFmainは、フィードバック制御フラグXFBの値が「0」であるとき「1」に設定される。更に、メインフィードバック量KFmainは常に「1」に設定されてもよい。即ち、メインフィードバック量KFmainを用いたフィードバック制御は本実施形態において必須ではない。
【0124】
ステップ635:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量KFmainにより補正することによって指示燃料噴射量Fiを算出する。より具体的に述べると、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量KFmainを乗じることによって指示燃料噴射量Fiを算出する。
【0125】
ステップ640:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁25」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁25に送出する。
【0126】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な量の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁25から噴射させられる。即ち、ステップ625乃至ステップ640は、「機関の空燃比が目標空燃比abyfrに一致するように指示燃料噴射量Fiを制御する」指示燃料噴射量制御手段及び空燃比制御手段を構成している。
【0127】
一方、CPUがステップ615の処理を行う時点において、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であると、CPUはそのステップ615にて「Yes」と判定してステップ645に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であるか否かを判定する。後述するように、触媒43の状態が酸素不足状態(触媒リッチ状態)であると判定されると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定される。また、触媒43の状態は酸素過剰状態(触媒リーン状態)であると判定されると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定される。触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は後述するルーチンにより設定される。
【0128】
このとき、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であると、CPUはステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リーン空燃比afLean」に設定する。目標リーン空燃比afLeanは理論空燃比stoichよりも大きい所定の空燃比(リーン空燃比)である。この場合、目標リーン空燃比afLeanは第1目標リーン空燃比afLean1であり、例えば、14.7である。その後、CPUはステップ625以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リーン空燃比afLeanに一致させられる。
【0129】
これに対し、CPUがステップ645の処理を実行する時点において、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であると、CPUはステップ645にて「No」と判定してステップ655に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リッチ空燃比afRich」に設定する。目標リッチ空燃比afRichは理論空燃比stoichよりも小さい所定の空燃比(リッチ空燃比)である。この場合、目標リッチ空燃比afRichは第1目標リッチ空燃比afRich1であり、例えば、14.2である。その後、CPUはステップ625以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リッチ空燃比afRichに一致させられる。
【0130】
一方、CPUがステップ605の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはそのステップ605にて「No」と判定してステップ695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ640の処理による燃料噴射が実行されないので、フューエルカット制御(燃料供給停止制御)が実行される。即ち、機関10の運転状態はフューエルカット運転状態となる。
【0131】
<触媒状態(触媒43の酸素吸蔵状態)判定>
CPUは図7にフローチャートにより示した「触媒状態判定ルーチン」を所定時間tsの経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始してステップ705に進み、「現時点の下流側空燃比センサ56の出力値Voxs」から「前回の下流側空燃比センサ56の出力値Voxsold」を減じることにより、所定時間ts(単位時間)あたりの出力値Voxsの変化量ΔVoxs(単に、「出力変化量ΔVoxs」とも称呼する。)を算出する。
【0132】
次に、CPUはステップ710に進み、現時点の出力値Voxsを「前回の出力値Voxsold」として記憶する。このように前回の下流側空燃比センサ56の出力値Voxsoldは、現時点から所定時間tsだけ前の時点の出力値Voxs(本ルーチンが前回実行されたときの出力値Voxs)である。
【0133】
次に、CPUはステップ715に進み、出力値Voxsが、「最小値Vminに微小な正の値γを加えた値(Vmin+γ)」よりも大きく、且つ、「最大値Vmaxから微小な正の値γを減じた値(Vmax−γ)」よりも小さいか否かを判定する。即ち、CPUは、「触媒43の状態が、明らかな酸素過剰状態(Voxs<Vmin+γ)でもなく且つ明らかな酸素不足状態(Voxs>Vmax−γ)でもない」か否かを判定する。値(Vmin+γ)は最小値Vminに極めて近い値であり、従って、中央値Vmidよりも小さい。値(Vmax−γ)は最大値Vmaxに極めて近い値であり、従って、中央値Vmidよりも大きい。
【0134】
いま、下記の条件が総て成立していると仮定する。
(条件1)出力値Voxsが値(Vmin+γ)と値(Vmax−γ)の間である。
(条件2)目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている。
(条件3)出力変化量ΔVoxsが負である(出力値Voxsが減少している。)。
(条件4)出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となった直後である。
【0135】
この場合、CPUはステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanであるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、出力変化量ΔVoxsが負である(「0」より小さい)か否かを判定する。即ち、CPUはステップ725にて出力値Voxsが減少しているか否かを判定する。
【0136】
上記仮定によれば、CPUはステップ725にて「Yes」と判定してステップ730に進み、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|(出力変化量ΔVoxsの絶対値)がリーン判定閾値ΔVLeanth以上であるか否かを判定する。
【0137】
上記仮定によれば、CPUはステップ730にて「Yes」と判定してステップ735に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「0」に設定する。即ち、CPUは、触媒43の状態が、「酸素過剰状態(触媒リーン状態)である、又は、酸素過剰状態に近づいている。」と判定する。その後、CPUはステップ740に進む。
【0138】
CPUは、ステップ740にて、出力値Voxsが「最小値Vminに微小な正の値γを加えた値(Vmin+γ)」以下であるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ740にて「No」と判定してステップ745に進み、出力値Voxsが「最大値Vmaxから微小な正の値γを減じた値(Vmax−γ)」以上であるか否かを判定する。上記仮定によれば、CPUはステップ745にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0139】
このように、上記条件1〜4が総て成立すると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定される。よって、CPUは図6のステップ645にて「No」と判定してステップ655に進むので、目標空燃比abyfrは目標リッチ空燃比afRichに設定される。
【0140】
一方、上記条件1〜4のうち、条件2が成立していないと(即ち、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていないと)、CPUはステップ720にて「No」と判定してステップ750に進む。後述するように、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」に変更されることはない(ステップ735を参照。)。
【0141】
更に、上記条件1〜4のうち、条件3が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsが「0」以上であって、換言すると、出力値Voxsが増大していると)、CPUはステップ725にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「1」に維持される)。
【0142】
更に、上記条件1〜4のうち、条件4が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth未満であると)、CPUはステップ730にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合にも、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「1」に維持される)。
【0143】
次に、下記の条件が総て成立していると仮定する。
(条件1)出力値Voxsが値(Vmin+γ)と値(Vmax−γ)の間である。
(条件5)目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている。
(条件6)出力変化量ΔVoxsが正である(出力値Voxsが増大している。)。
(条件7)出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となった直後である。
【0144】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、そのステップ720にて「No」と判定してステップ750に進む。CPUは、そのステップ750にて目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichであるか否かを判定する。
【0145】
上記仮定によれば、CPUはステップ750にて「Yes」と判定してステップ755に進み、出力変化量ΔVoxsが正である(「0」より大きい)か否かを判定する。即ち、CPUはステップ755にて出力値Voxsが増大しているか否かを判定する。
【0146】
上記仮定によれば、CPUはステップ755にて「Yes」と判定してステップ760に進み、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上であるか否かを判定する。
【0147】
上記仮定によれば、CPUはステップ760にて「Yes」と判定してステップ765に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「1」に設定する。即ち、CPUは、触媒43の状態が、「酸素不足状態(触媒リッチ状態)である、又は、酸素不足状態に近づいている。」と判定する。その後、CPUはステップ740に進む。更に、上記仮定によれば、CPUはステップ740及びステップ745の両ステップにて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0148】
このように、上記条件1及び上記条件5〜7が総て成立すると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定される。よって、CPUは図6のステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進むので、目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanに設定される。
【0149】
一方、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件5が成立していないと(即ち、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていないと)、CPUはステップ750にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0150】
更に、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件6が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsが「0」未満あって、換言すると、出力値Voxsが減少していると)、CPUはステップ755にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合も、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0151】
更に、上記条件1及び上記条件5〜7のうち、条件7が成立していないと(即ち、出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth未満であると)、CPUはステップ760にて「No」と判定してステップ740、ステップ745、及びステップ795へと進む。よって、この場合にも、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は変更されない(「0」に維持される)。
【0152】
次に、下記の条件が成立していると仮定する。
(条件8)出力値Voxsが値(Vmin+γ)以下である。
【0153】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「No」と判定してステップ740に直接進む。この場合、触媒43の状態は明らかに酸素過剰状態である。よって、CPUは、ステップ740にて「Yes」と判定し、ステップ770に進んで触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichを「0」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0154】
この結果、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に設定されるので、CPUは図6のステップ645にて「No」と判定してステップ655に進むので、目標空燃比abyfrは目標リッチ空燃比afRichに設定される。
【0155】
次に、下記の条件が成立していると仮定する。
(条件9)出力値Voxsが値(Vmax−γ)以上である。
【0156】
この場合、CPUはステップ705及びステップ710に続くステップ715にて「No」と判定してステップ740に直接進み、そのステップ740にて「No」と判定してステップ745に進む。この場合、触媒43の状態は明らかに酸素不足状態である。よって、CPUは、ステップ745にて「Yes」と判定し、ステップ775に進んで触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichを「1」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0157】
この結果、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に設定されるので、CPUは図6のステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進むので、目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanに設定される。
【0158】
なお、CPUは、フィードバック制御フラグXFBの値が「0」であるとき、図7に示したルーチンを実行しないように構成されることができる。また、ステップ715、ステップ740、ステップ745、ステップ770及びステップ775は省略され得る。
【0159】
<極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの取得>
CPUは図8にフローチャートにより示した「極大値・極小値取得ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始してステップ810に進み、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」でなければ、CPUはステップ810からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0160】
一方、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されているか否かを判定する。
【0161】
いま、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていると仮定する。この場合、CPUはステップ820にて「Yes」と判定してステップ830に進み、「現時点が、出力変化量ΔVoxsの符号が負から正へと変化した直後であるか否か」を判定することにより、出力値Voxsが極小値を通過したか否かを判定する。出力値Voxsが極小値を通過していなければ、CPUはステップ830からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0162】
これに対し、現時点が「出力値Voxsが極小値を通過した直後」であると、CPUはステップ830にて「Yes」と判定してステップ840に進み、前回の出力値Voxsoldを極小値Voxsminとして取得する。その後、CPUはステップ895に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
【0163】
これに対し、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されてい場合、CPUはステップ820にて「No」と判定してステップ850に進み、「現時点が、出力変化量ΔVoxsの符号が正から負へと変化した直後であるか否か」を判定することにより、出力値Voxsが極大値を通過したか否かを判定する。出力値Voxsが極大値を通過していなければ、CPUはステップ850からステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0164】
これに対し、現時点が「出力値Voxsが極大値を通過した直後」であると、CPUはステップ850にて「Yes」と判定してステップ860に進み、前回の出力値Voxsoldを極大値Voxsmaxとして取得する。その後、CPUはステップ895に進んで、本ルーチンを一旦終了する。以上により、極大値Voxsmaxと極小値Voxsminが更新される。
【0165】
<リーン判定閾値ΔVLeanthの変更>
CPUは図9にフローチャートにより示した「リーン判定閾値変更ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始してステップ910に進み、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」であるか否かを判定する。このとき、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」でなければ、CPUはステップ910にて「No」と判定してステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0166】
一方、現時点が「極小値Voxsminが更新された直後の時点」であると、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進み、最新の極大値Voxsmaxから最新の極小値Voxsminを減じた値を出力値差の大きさDVとして取得する。
【0167】
次に、CPUはステップ930に進み、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であるか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。従って、出力値差の大きさDVは下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値である。換言すると、CPUは、ステップ930にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0168】
このとき、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th未満であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いと)、CPUはステップ930にて「No」と判定してステップ940に進み、リーン判定閾値ΔVLeanthを「所定の正の値である第1リーン判定閾値ΔVthL1」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0169】
これに対し、出力値差の大きさDVが第1の閾値出力値差DV1th以上であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いと)、CPUはステップ930にて「Yes」と判定してステップ950に進み、リーン判定閾値ΔVLeanthを「所定の正の値である第2リーン判定閾値ΔVthL2」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。第2リーン判定閾値ΔVthL2は、第1リーン判定閾値ΔVthL1から所定の正の値αを減じた値でもあり、第1リーン判定閾値ΔVthL1の大きさよりも小さい大きさを有する正の値である。このように、リーン判定閾値ΔVLeanthは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性を示す応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更される。
【0170】
なお、CPUは、図11に示したように、出力値差の大きさDV(第1の出力値差の大きさDV1)が大きくなるほど(即ち、出力値Voxsの応答性が低下するほど)、リーン判定閾値ΔVLeanthの大きさがより小さくなるように、リーン判定閾値ΔVLeanthを連続的に変更してもよい。
【0171】
<リッチ判定閾値ΔVRichthの変更>
CPUは図10にフローチャートにより示した「リッチ判定閾値変更ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」であるか否かを判定する。このとき、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」でなければ、CPUはステップ1010にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0172】
一方、現時点が「極大値Voxsmaxが更新された直後の時点」であると、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定してステップ1020に進み、最新の極大値Voxsmaxから最新の極小値Voxsminを減じた値を出力値差の大きさDVとして取得する。
【0173】
次に、CPUはステップ1030に進み、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であるか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。従って、出力値差の大きさDVは下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値である。換言すると、CPUは、ステップ1030にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0174】
このとき、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th未満であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いと)、CPUはステップ1030にて「No」と判定してステップ1040に進み、リッチ判定閾値ΔVRichthを「所定の正の値である第1リッチ判定閾値ΔVthR1」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0175】
これに対し、出力値差の大きさDVが第2の閾値出力値差DV2th以上であると(即ち、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いと)、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1050に進み、リッチ判定閾値ΔVRichthを「所定の正の値である第2リッチ判定閾値ΔVthR2」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。第2リッチ判定閾値ΔVthR2は、第1リッチ判定閾値ΔVthR1から所定の正の値βを減じた値でもあり、第1リッチ判定閾値ΔVthR1の大きさよりも小さい大きさを有する正の値である。
【0176】
なお、CPUは、図12に示したように、出力値差の大きさDV(第2の出力値差の大きさDV2)が大きくなるほど(即ち、出力値Voxsの応答性が低下するほど)、リッチ判定閾値ΔVRichthの大きさがより小さくなるように、リッチ判定閾値ΔVRichthを連続的に変更してもよい。
【0177】
以上、説明したように、第1制御装置は、
目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されたとき機関の空燃比が同目標リーン空燃比afLeanに一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比afRichに一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段(図6のルーチンを参照。)と、
目標空燃比abyfrが前記目標リーン空燃比afLeanに設定されていて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが減少している(出力変化量ΔVoxs<0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定のリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを前記目標リッチ空燃比afRichに設定し、且つ、前記目標空燃比abyfrが前記目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大している(出力変化量ΔVoxs>0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|所定のリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき前記目標空燃比abyfrを前記目標リーン空燃比afLeanに設定する目標空燃比設定手段(図7のルーチンを参照。)と、
前記下流側空燃比センサ56に到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性を表す応答性指標値(出力値差の大きさDV)を出力値Voxsに基いて取得する応答性指標値取得手段(図8のルーチン、図9のステップ920、図10のステップ1020を参照。)と、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値ΔVLeanthの大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値ΔVLeanthを前記取得された応答性指標値に基いて変更する閾値変更手段(図9のステップ930乃至ステップ950及び、図11を参照。)と、
を備える。
【0178】
更に、前記閾値変更手段は、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値ΔVRichthの大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値ΔVRichthを前記取得された応答性指標値に基いて変更する(図10のステップ1030乃至ステップ1050及び図11を参照。)。
【0179】
更に、第1制御装置の閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値ΔVLeanthを第1リーン判定閾値ΔVthL1に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値ΔVthL2に設定するように構成されている(図9のルーチンを参照。)。
【0180】
更に、第1制御装置の閾値変更手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値ΔVRichthを第1リッチ判定閾値ΔVthR1に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値ΔVRichthを前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値ΔVthR2に設定するように構成されている(図10のルーチンを参照。)。
【0181】
従って、第1制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が低い場合であっても、触媒43の状態を遅滞なく判定し、目標空燃比abyfrを適切な空燃比に遅滞なく設定することができる。よって、NOxの排出量及び未燃物の排出量を低減することができる。
【0182】
なお、第1制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及びリッチ判定閾値ΔVRichthの何れか一方のみを下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性に基いて変更してもよい。
【0183】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0184】
第2制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、目標リッチ空燃比afRich及び/又は目標リーン空燃比afLeanを応答性指標値に基いて変更する点においてのみ、第1制御装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
【0185】
(第2制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
図13に示したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様、目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されている場合、出力変化量ΔVoxsが負であり且つ出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリーン判定閾値ΔVLeanth以上となると、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに変更する。
【0186】
第2制御装置は、この目標リッチ空燃比afRichを、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど、より小さい(よりリッチな)空燃比に設定する。より具体的に述べると、図13の破線及び実線に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合(応答性が応答性指標値よりも高い場合)、第2制御装置は第1制御装置と同様に目標リッチ空燃比afRichを第1目標リッチ空燃比afRich1に設定する。
【0187】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が図13の(A)及び(B)に一点鎖線により示したように良好でない場合(応答性が応答性指標値よりも低い場合)、第2制御装置は、図13の(C)に二点鎖線により示したように、目標リッチ空燃比afRichを「第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい(リッチな)第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定する。
【0188】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合の空燃比(第1目標リッチ空燃比afRich1に対応する空燃比)」よりも「よりリッチな(小さい)空燃比(第2目標リッチ空燃比afRich2に対応する空燃比)」となる。その結果、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができる。即ち、触媒43の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0189】
更に、図14に示したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されている場合、出力変化量ΔVoxsが正であり且つ出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|がリッチ判定閾値ΔVRichth以上となると、目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに変更する。
【0190】
第2制御装置は、この目標リーン空燃比afLeanを、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど、より大きい(よりリーンな)空燃比に設定する。より具体的に述べると、図14に破線及び実線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合(応答性が応答性指標値よりも高い場合)、第2制御装置は第1制御装置と同様に目標リーン空燃比afLeanを第1目標リーン空燃比afLean1に設定する。
【0191】
これに対し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が図14の(A)及び(B)に一点鎖線により示したように良好でない場合(応答性が応答性指標値よりも低い場合)、第2制御装置は、図14の(C)に二点鎖線により示したように、目標リーン空燃比afLeanを「第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい(リーンな)第2目標リーン空燃比afLean2」に設定する。
【0192】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比は「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である場合の空燃比(第1目標リーン空燃比afLean1に対応する空燃比)」よりも「よりリーンな(大きい)空燃比(第2目標リーン空燃比afLean2に対応する空燃比)」となる。その結果、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができる。即ち、触媒43の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0193】
(作動)
次に、第2制御装置の実際の作動について説明する。第2制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様、図6乃至図8に示したルーチンを実行する。更に、第2制御装置のCPUは、図15に示した「目標リッチ空燃比・目標リーン空燃比設定ルーチン」を実行する。以下、図15に示したルーチンについて説明する。なお、第2制御装置において、リッチ判定閾値ΔVRichthは第1リッチ判定閾値ΔVRichth1に設定(固定)され、リーン判定閾値ΔVLeanthは第1リーン判定閾値ΔVLeanth1に設定(固定)されている。
【0194】
<目標リッチ空燃比afRich及び目標リーン空燃比afLeanの設定>
CPUは図15にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1500から処理を開始してステップ1505に進み、設定完了後フラグXafCNG(以下、「完了後フラグXafCNG」と称呼する。)の値が「0」であるか否かを判定する。
【0195】
この完了後フラグXafCNGは、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。更に、完了後フラグXafCNGの値は、後述するステップ1545にて「1」に設定される。
【0196】
いま、機関10の今回の運転開始後であって完了後フラグXafCNGの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUはステップ1505にて「Yes」と判定してステップ1510に進み、目標リッチ空燃比afRichを第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定する。次に、CPUはステップ1515に進み、目標リーン空燃比afLeanを第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定する。
【0197】
次いで、CPUはステップ1520に進み、今回の機関10の始動後にフィードバック制御フラグXFBの値が「1」の状態において極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの両者が図8のルーチンにより取得されたか否かを判定する。このとき、未だ、少なくとも極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの一方が取得されていなければ、CPUはステップ1520にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0198】
これに対し、極大値Voxsmax及び極小値Voxsminの両者が取得されていると、CPUはステップ1520にて「Yes」と判定してステップ1525に進み、極大値Voxsmaxから極小値Voxsminを減じた出力値差の大きさDV(応答性指標値)を取得する。
【0199】
次いで、CPUはステップ1530に進み、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも大きいか否かを判定する。前述したように、出力値差の大きさDVは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であるほど小さくなり、良好でないほど大きくなる。よって、CPUは、ステップ1530にて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも低いか否かを実質的に判定する。
【0200】
このとき、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好であって、それ故に出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以下である場合、CPUはステップ1530にて「No」と判定してステップ1535に進み、目標リッチ空燃比afRichを確認的に第1目標リッチ空燃比afRich1に設定する。更に、CPUはステップ1540に進み、目標リーン空燃比afLeanを確認的に第1目標リーン空燃比afLean1に設定する。
【0201】
次いで、CPUはステップ1545に進んで完了後フラグXafCNGの値を「1」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関10の今回の運転開始後において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好である(応答性閾値よりも高い)と判定されると、目標リッチ空燃比afRichは第1目標リッチ空燃比afRich1に設定され続け、目標リーン空燃比afLeanは第1目標リーン空燃比afLean1に設定され続ける。
【0202】
これに対し、CPUがステップ1530の処理を実行する時点において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好ではなく、それ故に出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも大きい場合、CPUはステップ1530にて「Yes」と判定してステップ1550に進み、目標リッチ空燃比afRichを「第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい(よりリッチな)第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定する。第2目標リッチ空燃比afRich2は、第1目標リッチ空燃比afRich1から正の値dafrを減じた値でもあり、例えば、13.9である。
【0203】
なお、CPUは、図16に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が悪化するほど(良好でないほど)、即ち、出力値差の大きさDVが大きくなるほど、目標リッチ空燃比afRichを連続的に小さくしてもよい。
【0204】
次に、CPUはステップ1555に進み、目標リーン空燃比afLeanを「第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい(よりリーンな)第2目標リーン空燃比afLean2」に設定する。第2目標リーン空燃比afLean2は、第1目標リーン空燃比afLean1に正の値daflを加えた値であり、例えば、15.0である。
【0205】
なお、CPUは、図16に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が悪化するほど(良好でないほど)、即ち、出力値差の大きさDVが大きくなるほど、目標リーン空燃比afLeanを連続的に大きくしてもよい。
【0206】
次いで、CPUはステップ1545にて完了後フラグXafCNGの値を「1」に設定し、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関10の今回の運転開始後において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない(応答性閾値よりも低い)と判定されると、目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich1に設定され、且つ、目標リーン空燃比afLeanは第2目標リーン空燃比afLean2に設定される。
【0207】
なお、ステップ1545の処理により、完了後フラグXafCNGの値が「1」に設定されると、次に、CPUがステップ1505の処理を実行する時点において、CPUは「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、目標リッチ空燃比afRich及び目標リーン空燃比afLeanの変更(設定)は、機関10の始動後から運転終了までに1度だけ実行される。換言すると、応答性指標値である出力値差の大きさDVは、目標リッチ空燃比afRichが第1目標リッチ空燃比afRich1であり、目標リーン空燃比afLeanが第1目標リーン空燃比afLeanである場合に限り取得される。
【0208】
以上、説明したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様な空燃比制御手段を備える。更に、第2制御装置は、
目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていて下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが減少している(出力変化量ΔVoxs<0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定のリーン判定閾値ΔVLeanth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定し、且つ、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて出力値Voxsが増大している(出力変化量ΔVoxs>0)場合において出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|所定のリッチ判定閾値ΔVRichth以上となったとき目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定する目標空燃比設定手段(図7のルーチンを参照。)と、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに到達する排ガスの空燃比の変化に対する下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの出力値の応答性を表す応答性指標値(出力値差の大きさDV)を出力値Voxsに基いて取得する応答性指標値取得手段(図8のルーチン、及び、図15のステップ1520及びステップ1525を参照。)と、
を備える。
【0209】
加えて、第2制御装置の目標空燃比設定手段は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど(出力値差の大きさDVが小さいほど)前記目標リッチ空燃比afRichが小さくなるように、前記目標リッチ空燃比afRichを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更するように構成されている(図15のステップ1530、ステップ1535、ステップ1550及び図16を参照。)。
【0210】
より具体的には、その目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて判定し(図15のステップ1530)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比afRichを所定の第1目標リッチ空燃比afRich1に設定し(図15のステップ1535)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比afRichを前記第1目標リッチ空燃比afRichよりも小さい第2目標リッチ空燃比afRich2に設定する(図15のステップ1550)ように構成されている。
【0211】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リッチ空燃比afRich2に対応した、よりリッチな(小さい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに減少させることができるので、触媒43の状態が酸素過剰状態に近い期間を短縮することができる。この結果、NOxの排出量を低減することができる。
【0212】
更に、その目標空燃比設定手段は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないほど(出力値差の大きさDVが小さいほど)前記目標リーン空燃比afLeanが大きくなるように、前記目標リーン空燃比afLeanを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて変更するように構成されている(図15のステップ1530、ステップ1540、ステップ1555及び図16を参照。)。
【0213】
より具体的には、その目標空燃比設定手段は、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値(出力値差の大きさDV)に基いて判定し(図15のステップ1530)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比afLeanを所定の第1目標リーン空燃比afLean1に設定し(図15のステップ1540)、
前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リーン空燃比afLeanを前記第1目標リーン空燃比afLeanよりも小さい第2目標リーン空燃比afLean2に設定する(図15のステップ1555)ように構成されている。
【0214】
これによれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れたとしても、その後の触媒流入ガスの空燃比を「第2目標リーン空燃比afLean2に対応した、よりリーンな(大きい)空燃比」に設定することができる。その結果、触媒43の酸素吸蔵量を速やかに増大させることができるので、触媒43の状態が酸素不足状態に近い期間を短縮することができる。この結果、未燃物の排出量を低減することができる。
【0215】
なお、第2制御装置は、目標リッチ空燃比afRichを応答性指標値に関わらず常に第1目標リッチ空燃比afRich1に維持し、目標リーン空燃比afLeanのみを応答性指標値に応じて変更してもよい。更に、第2制御装置は、目標リーン空燃比afLeanを応答性指標値に関わらず常に第1目標リーン空燃比afLean1に維持し、目標リッチ空燃比afRichのみを応答性指標値に応じて変更してもよい。
【0216】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0217】
第3制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない場合、目標リッチ空燃比afRichを第2制御装置とは相違した態様にて制御する。以下、第2制御装置と第3制御装置との相違点を中心に説明する。
【0218】
第3制御装置は、図17に実線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも小さい場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図17の時刻t1を参照。)、目標空燃比abyfrを前記第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定する。そして、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」である限り、目標空燃比abyfrは前記第1目標リッチ空燃比afRich1に維持される。なお、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」である場合、目標空燃比abyfrは前記第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定される。
【0219】
更に、第3制御装置は、図17に二点差線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図17の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リッチ空燃比afRich1よりも小さい前記第2目標リッチ空燃比afRich2(例えば、13.9)」に設定する。
【0220】
加えて、第3制御装置は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した時点から所定の時間が経過した時刻t2にて、実際には、出力変化量ΔVoxsが極小値になった時点にて(図17のp1を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リッチ空燃比afRich2よりも大きいリッチ空燃比である第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定する。第3目標リッチ空燃比afRich3は、第2目標リッチ空燃比afRich2と理論空燃比stoichとの間の空燃比であればよい(例えば、14.1)。従って、第3目標リッチ空燃比afRich3は、第1目標リッチ空燃比afRich1と一致していてもよく、相違していてもよい。
【0221】
なお、第3制御装置(第3制御装置の変形例)は、図18に示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化したとき(図18の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リッチ空燃比afRichよりも小さい前記第2目標リッチ空燃比afRich2(例えば、13.9)」に設定する。
【0222】
更に、第3制御装置の変形例は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した時刻t2’にて(実際には、出力変化量ΔVoxsが極小値(p1)を通過した後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定値ΔVthLcになった時点にて(図18のp2を参照。))、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リッチ空燃比afRich2よりも大きいリッチ空燃比である第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定する。
【0223】
この第3制御装置及び第3制御装置の変形例によれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichに設定するタイミングが遅れた場合、目標空燃比abyfrは当初「第2目標リッチ空燃比afRich2」に設定され、その後に「第3目標リッチ空燃比afRich3」に設定される。よって、目標リーン空燃比afLeanから目標リッチ空燃比afRichに変更するタイミングが遅れることにより触媒43の状態が酸素過剰状態に近づいたとしても、触媒43にリッチの程度が大きいガスを流入させることができるので、触媒43の状態を直ちに酸素過剰状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素過剰状態から遠ざかった後には目標空燃比abyfrが第3目標リッチ空燃比afRich3に設定されるので、逆に、過剰の未燃物が触媒43に流入すること(即ち、触媒43の状態が一気に酸素不足状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、未燃物の排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0224】
なお、第3制御装置は、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmax(触媒劣化の程度)を周知の手法に基いて別途取得しておき、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth以上の場合には第3制御装置の変形例のように目標リッチ空燃比afRichを設定し、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth未満の場合には第3制御装置のように目標リッチ空燃比afRichを設定してもよい。これによれば、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さい場合に、過剰な未燃物が触媒43に流入することを回避することができる。
【0225】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第4制御装置」とも称呼する。)について説明する。
【0226】
第4制御装置は、リーン判定閾値ΔVLeanth及び/又はリッチ判定閾値ΔVRichthを応答性指標値に基いて変更する代わりに、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でない場合、目標リーン空燃比afLeanを第2制御装置とは相違した態様にて制御する。以下、第2制御装置と第4制御装置との相違点を中心に説明する。
【0227】
第4制御装置は、図19に実線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVthよりも小さい場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図19の時刻t1を参照。)、目標空燃比abyfrを前記第1目標リーン空燃比afLean1(例えば、14.7)に設定する。そして、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」である限り、目標空燃比abyfrは前記第1目標リーン空燃比afLean1に維持される。なお、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」である場合、目標空燃比abyfrは前記第1目標リッチ空燃比afRich1(例えば、14.2)に設定される。
【0228】
更に、第4制御装置は、図19に二点差線により示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図19の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リーン空燃比afLean1よりも大きい前記第2目標リーン空燃比afLean2(例えば、15.1)」に設定する。
【0229】
加えて、第4制御装置は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した時点から所定の時間が経過した時刻t2にて、実際には、出力変化量ΔVoxsが極大値になった時点にて(図19のp1を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リーン空燃比afLean2よりも小さいリーン空燃比である第3目標リーン空燃比afLean3」に設定する。第3目標リーン空燃比afLean3は、第2目標リーン空燃比afLean2と理論空燃比stoichとの間の空燃比であればよい(例えば、14.8)。従って、第3目標リーン空燃比afLean3は、第1目標リーン空燃比afLean1と一致していてもよく、相違していてもよい。
【0230】
なお、第4制御装置(第4制御装置の変形例)は、図20に示したように、前記下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合(即ち、出力値差の大きさDVが閾値出力値差DVth以上である場合)、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化したとき(図20の時刻t1を参照。)、先ず、目標空燃比abyfrを「前記第1目標リーン空燃比afLeanよりも小さい前記第2目標リーン空燃比afLean2(例えば、15.1)」に設定する。
【0231】
更に、第4制御装置の変形例は、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した時刻t2’にて(実際には、出力変化量ΔVoxsが極大値(p1)を通過した後に出力変化量ΔVoxsの大きさ|ΔVoxs|が所定値ΔVthRcになった時点(図20のp2を参照。)、目標空燃比abyfrを「前記第2目標リーン空燃比afLean2よりも小さいリーン空燃比である第3目標リーン空燃比afLean3」に設定する。
【0232】
この第4制御装置及び第4制御装置の変形例によれば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が良好でないことに起因して目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLeanに設定するタイミングが遅れた場合、目標空燃比abyfrは当初「第2目標リーン空燃比afLean2」に設定され、その後に「第3目標リーン空燃比afLean3」に設定される。よって、目標リッチ空燃比afRichから目標リーン空燃比afLeanに変更するタイミングが遅れることにより触媒43の状態が酸素不足状態に近づいたとしても、触媒43にリーンの程度が大きいガスを流入させることができるので、触媒43の状態を直ちに酸素不足状態から遠ざけることができる。更に、一旦、酸素不足状態から遠ざかった後には目標空燃比abyfrが第3目標リーン空燃比afLean3に設定されるので、逆に、過剰の酸素が触媒43に流入すること(即ち、触媒43の状態が一気に酸素過剰状態に近づいてしまうこと)を回避することができる。よって、NOxの排出量が増大することを未然に回避することができる。
【0233】
なお、第4制御装置は、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmax(触媒劣化の程度)を周知の手法に基いて別途取得しておき、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth以上の場合には第4制御装置の変形例のように目標リーン空燃比afLeanを設定し、最大酸素吸蔵量Cmaxが閾値最大酸素吸蔵量Cmaxth未満の場合には第4制御装置のように目標リーン空燃比afLeanを設定してもよい。これによれば、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さい場合に、過剰な酸素及びNOxが触媒43に流入することを回避することができる。
【0234】
なお、第4制御装置は、第3制御装置及び/又は第3制御装置の変形例と組み合わせて用いることができる。同様に、第4制御装置の変形例は、第3制御装置及び/又は第3制御装置の変形例と組み合わせて用いることができる。
【0235】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性に関わらず、NOx及び/又は未燃物の排出量を低減することができる。
【0236】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0237】
例えば、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、目標リッチ空燃比afRichは図21に示したように変更されてもよい。即ち、図21に一点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich2に設定され、その後、所定の時間が経過した時点以降において徐々に増大されてもよい。なお、目標リッチ空燃比afRichが徐々に増大されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ小さい値(第4目標リッチ空燃比afRich4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リッチ空燃比afRich4に維持される。
【0238】
或いは、図21に二点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リッチ空燃比afRich2に設定され、その後、直ちに徐々に増大されてもよい。この場合においても、目標リッチ空燃比afRichが徐々に増大されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ小さい値(第4目標リッチ空燃比afRich4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リッチ空燃比afRich4に維持される。
【0239】
同様に、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、目標リッチ空燃比afRichは図22に示したように変更されてもよい。即ち、図22に一点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した直後において目標リーン空燃比afLeanは第2目標リーン空燃比afLean2に設定され、その後、所定の時間が経過した時点以降において徐々に減少されてもよい。なお、目標リーン空燃比afLeanが徐々に減少されて「理論空燃比stoichよりも一定値だけ大きい値(第4目標リーン空燃比afLean4)」に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リーン空燃比afLean4に維持される。
【0240】
或いは、図22に二点鎖線により示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性が応答性閾値よりも低い場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」から「1」へと変化した直後において目標リッチ空燃比afRichは第2目標リーン空燃比afLean2に設定され、その後、直ちに徐々に減少されてもよい。この場合においても、目標リーン空燃比afLeanが徐々に減少されて理論空燃比stoichよりも一定値だけ大きい値(第4目標リーン空燃比afLean4)に到達した時点にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」から「0」へと変化していなければ、目標空燃比abyfrはその第4目標リーン空燃比afLean4に維持される。
【0241】
更に、各制御装置は、機関暖機促進のため及び触媒の過熱防止等のために下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに基く空燃比のフィードバック制御を中止し、且つ、目標空燃比abyfrを一定の目標リッチ空燃比に維持する制御(増量制御)を実行してもよい。この場合、各制御装置は、そのような増量制御の終了後において、目標空燃比abyfrを一定の目標リーン空燃比afLeanに設定し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが最大値Vmaxから所定の値(例えば、中央値Vmid又は中央値Vmidの半分)に到達(減少)するまでの時間を下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値として取得してもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0242】
更に、各制御装置は、燃料噴射を停止するフューエルカット運転の終了後に目標空燃比abyfrを一定の目標リッチ空燃比afRichに設定し、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが最小値Vminから所定の値(例えば、中央値Vmid又は最大値Vmaxの2/3)に到達(増大)するまでの時間を下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの応答性指標値として取得してもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0243】
更に、各制御装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsの暖機状態(温度)を排ガス温度から推定し、その推定されたセンサ温度に基いて応答性指標値を補正し、補正された応答性指標値に基いて「リーン判定閾値ΔVLeanth、リッチ判定閾値ΔVRichth、第2目標リッチ空燃比afRich、第2目標リーン空燃比afLean等」を変更してもよい。
【0244】
加えて、第3制御装置は、目標空燃比abyfrを第2目標リッチ空燃比afRich2に維持する時間を、周知の手法により別途求められている触媒43の最大酸素吸蔵量Cmaxが大きいほど、或いは、周知の手法により排ガス温度等に基いて推定される触媒43の温度が高くなるほど、長くなるように設定してもよい。
【0245】
同様に、第4制御装置は、目標空燃比abyfrを第2目標リーン空燃比afLean2に維持する時間を、触媒43の最大酸素吸蔵量Cmaxが大きいほど、或いは、触媒43の温度が高くなるほど、長くなるように設定してもよい。
【0246】
更に、各空燃比制御装置は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに関らず、目標空燃比を一定の目標リッチ空燃比に維持して出力値Voxsが最大値Vmaxに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リッチ空燃比から一定の目標リーン空燃比へと変更した場合において、その目標リッチ空燃比と目標リーン空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比)に相当する値(例えば、中央値Vmid)又はその目標リーン空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0247】
同様に、各空燃比制御装置は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに関らず、目標空燃比を一定の目標リーン空燃比に維持して出力値Voxsが最小値Vminに到達したことを確認した後に、目標空燃比を目標リーン空燃比から一定の目標リッチ空燃比へと変更した場合において、その目標リーン空燃比と目標リッチ空燃比との中間の空燃比(又は、それらの間を所定の比率で内分した空燃比、)に相当する値(例えば、中央値Vmid)又はその目標リッチ空燃比に相当する値に到達するまでの時間を前記応答性指標値として取得するように構成されてもよい。この時間は、下流側空燃比センサの出力値の応答性が高いほど短くなり、低いほど長くなる。
【0248】
【符号の説明】
【0249】
10…内燃機関、22…吸気ポート、23…排気ポート、25…燃料噴射弁、41…エキゾーストマニホールド、41b…集合部(排気集合部)、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(触媒)、44…下流側触媒、55…上流側空燃比センサ、56…下流側空燃比センサ、60…電気制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比の目標空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比である所定の目標リーン空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である所定の目標リッチ空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定し、且つ、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する目標空燃比設定手段と、
を備えた内燃機関の空燃比制御装置であって、
前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性を表す応答性指標値を同出力値に基いて取得する応答性指標値取得手段と、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更する閾値変更手段と、
を備えた空燃比制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値を第1リーン判定閾値に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を第1リッチ判定閾値に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比の目標空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比である所定の目標リーン空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である所定の目標リッチ空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定し、且つ、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する目標空燃比設定手段と、
を備えた内燃機関の空燃比制御装置であって、
前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性を表す応答性指標値を同出力値に基いて取得する応答性指標値取得手段を備え、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リッチ空燃比が小さくなるように、前記目標リッチ空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リーン空燃比が大きくなるように、前記目標リーン空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を所定の第1目標リッチ空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リッチ空燃比よりも小さい第2目標リッチ空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比よりは大きく且つ理論空燃比よりは小さい第3目標リッチ空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の前記応答性閾値よりも高いか否かを前記応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比を所定の第1目標リーン空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リーン空燃比よりも大きい第2目標リーン空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比よりは小さく且つ理論空燃比よりは大きい第3目標リーン空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記応答性指標値取得手段が、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値、
を前記応答性指標値として取得するように構成された空燃比制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記応答性指標値取得手段が、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極大値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値と、の差の大きさ、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極小値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値と、の差の大きさ、
を前記応答性指標値として取得するように構成された空燃比制御装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比の目標空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比である所定の目標リーン空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である所定の目標リッチ空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定し、且つ、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する目標空燃比設定手段と、
を備えた内燃機関の空燃比制御装置であって、
前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性を表す応答性指標値を同出力値に基いて取得する応答性指標値取得手段と、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リーン判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リーン判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更する閾値変更手段と、
を備えた空燃比制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記リッチ判定閾値の大きさが小さくなるように、前記リッチ判定閾値を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リーン判定閾値を第1リーン判定閾値に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リーン判定閾値を前記第1リーン判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リーン判定閾値に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記閾値変更手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を第1リッチ判定閾値に設定し、前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記リッチ判定閾値を前記第1リッチ判定閾値の大きさよりも小さい大きさを有する第2リッチ判定閾値に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比の目標空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比である所定の目標リーン空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リーン空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御し、且つ、前記目標空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である所定の目標リッチ空燃比に設定されたとき同機関の空燃比が同目標リッチ空燃比に一致するように同機関の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されていて前記下流側空燃比センサの出力値が減少している場合において同出力値の所定時間あたりの変化量である出力変化量の大きさが所定のリーン判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比に設定し、且つ、前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されていて前記出力値が増大している場合において前記出力変化量の大きさが所定のリッチ判定閾値以上となったとき前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比に設定する目標空燃比設定手段と、
を備えた内燃機関の空燃比制御装置であって、
前記下流側空燃比センサに到達する排ガスの空燃比の変化に対する前記下流側空燃比センサの出力値の応答性を表す応答性指標値を同出力値に基いて取得する応答性指標値取得手段を備え、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リッチ空燃比が小さくなるように、前記目標リッチ空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が良好でないほど前記目標リーン空燃比が大きくなるように、前記目標リーン空燃比を前記取得された応答性指標値に基いて変更するように構成された空燃比制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の応答性閾値よりも高いか否かを前記取得された応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を所定の第1目標リッチ空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リッチ空燃比よりも小さい第2目標リッチ空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リッチ空燃比よりは大きく且つ理論空燃比よりは小さい第3目標リッチ空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が所定の前記応答性閾値よりも高いか否かを前記応答性指標値に基いて判定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも高いと判定された場合には前記目標リーン空燃比を所定の第1目標リーン空燃比に設定し、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合には前記目標リッチ空燃比を前記第1目標リーン空燃比よりも大きい第2目標リーン空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記目標空燃比設定手段が、
前記下流側空燃比センサの出力値の応答性が前記応答性閾値よりも低いと判定された場合、前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと切り替えたとき、前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比に設定し、その後所定の時間が経過した時点にて前記目標空燃比を前記第2目標リーン空燃比よりは小さく且つ理論空燃比よりは大きい第3目標リーン空燃比に設定するように構成された空燃比制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記応答性指標値取得手段が、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値、
を前記応答性指標値として取得するように構成された空燃比制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記応答性指標値取得手段が、
前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極大値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リーン空燃比から前記目標リッチ空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極小値と、の差の大きさ、又は、
前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比に設定されている場合の下流側空燃比センサの出力値の極小値と、その後に前記目標空燃比が前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比へと変更された後に最初に現れる前記下流側空燃比センサの出力値の極大値と、の差の大きさ、
を前記応答性指標値として取得するように構成された空燃比制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−64384(P2013−64384A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204512(P2011−204512)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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