説明

内燃機関の駆動制御方法および温室栽培システム

【課題】内燃機関の駆動効率を高く維持しつつ、温室に供給される排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることができる内燃機関の駆動制御方法および温室栽培システムを提供する。
【解決手段】排ガス浄化部18A,18Bを備えた排ガス流路13を介して、二酸化炭素を含む排ガス11aを温室2に供給する内燃機関の駆動制御方法であって、温室2内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、温室2内の窒素酸化物濃度が温室2内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、内燃機関11をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、内燃機関11を希薄燃焼駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して、炭化水素を燃焼させて二酸化炭素を含む排ガスを温室に供給する内燃機関の駆動制御方法および炭化水素を燃料とする燃焼装置から排出される二酸化炭素を含む排ガスを温室空間の植物に供給する排ガス流路を備えた温室栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コジェネレーションが広く採用されるようになってきており、これによりエネルギー効率が向上して、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の低減が図られている。コジェネレーションは、発電時に発生する電力および熱をエネルギー源として利用するものであるが、更に、この時に生成され従来は廃棄されていた二酸化炭素を有効利用するものとして、トリジェネレーションという形態がある。
【0003】
前記排ガスは、重油や灯油のほかLPガスや都市ガス等の炭化水素燃料を燃焼させたものであるから、大気中よりも高濃度の二酸化炭素を含んでいる。トリジェネレーションは、ガスエンジンをはじめとする内燃機関等から排出される排ガスを浄化して、排ガス中に含まれる二酸化炭素を温室内で光合成の原料の一つとして積極的に植物の育成促進等の目的で温室栽培システム等に利用するものである(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201649号公報
【特許文献2】特開2004−344154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温室内の植物の好適な育成環境としては、ある程度高濃度(700ppm〜1500ppm)の二酸化炭素を有するほうが促成栽培等の観点から好ましいといわれている。しかし、内燃機関の駆動効率を良くすべく、希薄燃焼で駆動して、発生する排ガスを温室に供給しようとすると、その希薄燃焼では排出量が少ないものの、排ガスには、植物の成長に好ましくない許容限度を超える窒素酸化物が含有されてしまうという問題があり、排ガスからこのような窒素酸化物を除去するために、触媒を用いても、前記窒素酸化物濃度を十分減少させることが困難であった。また、前記窒素酸化物濃度を十分減少させることを優先して、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動すると、排ガス中に含まれる窒素酸化物を三元触媒によって除去することができるものの、内燃機関の駆動効率が低下してしまうという問題があり、内燃機関の駆動効率の向上と、窒素酸化物濃度の低減とを両立させることは困難である実情であった。
【0006】
本発明の目的は、上記実情に鑑み、内燃機関の駆動効率を高く維持しつつ、温室に供給される排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることができる内燃機関の駆動制御方法および温室栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成〕
上記目的を達成するための本発明の内燃機関の駆動制御方法の特徴構成は、排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して、炭化水素を燃焼させて二酸化炭素を含む排ガスを温室に供給する内燃機関の駆動制御方法として、
前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、前記内燃機関を希薄燃焼駆動する点にある。
【0008】
〔作用効果〕
つまり、内燃機関を駆動する場合に、ストイキ燃焼駆動させると、窒素酸化物の濃度が低い排ガスを供給することができ、逆に、希薄燃焼駆動すると、温室に導入される排ガス中の窒素酸化物の濃度は上昇してしまうが、効率の良い駆動状態で内燃機関を駆動することができる。
【0009】
温室では、植物の二酸化炭素消費や、温室内から温室外への不可避的な換気条件から二酸化炭素濃度が低下する。そして、二酸化炭素濃度が低下した場合、前記内燃機関の排ガスを導入することにより前記温室内の二酸化炭素濃度を上昇させることができる。この際、前記温室内の窒素酸化物濃度も上昇するが、その上昇度が低い場合、やはり、前記内燃機関は駆動効率の高い駆動方法で駆動することが好ましく、即ち、希薄燃焼で駆動することができる。
【0010】
さらに、二酸化炭素の供給を行う場合に、前記温室内の窒素酸化物濃度が上昇してしまうと、前記温室内の窒素酸化物濃度が上昇して植物に悪影響を与え始めることになるので、窒素酸化物濃度の低い排ガスを供給することが好ましい。そこで、前記内燃機関としては、このような環境になった場合にはじめて、駆動効率を犠牲にしても、排ガス中の窒素酸化物濃度が低くなるように運転すればよい。即ち、このとき内燃機関をストイキ燃焼駆動する。
【0011】
このように、前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときにのみ、内燃機関の駆動方法を、ストイキ燃焼駆動とし、それ以外のときに、希薄燃焼駆動させることにより、運転効率低下を最小限に抑えつつ、温室に供給される排ガスの窒素酸化物濃度を低く抑えた内燃機関の運転方法を実現することができる。
【0012】
尚、内燃機関の各燃焼状態において、排ガス中の窒素酸化物濃度は、温室に導入されるまでに可能な範囲で低減させられることが好ましく、現実的にも触媒燃焼、吸着等の作用により窒素酸化物は低減させられる。しかし、一般に、希薄燃焼により発生する排ガスからの窒素酸化物除去のほうが、ストイキ燃焼により発生する排ガスからの窒素酸化物除去を考える場合よりも、適用可能な窒素酸化物除去手段が限られ、能力的にも低くなりがちである。そのため、排ガス中の窒素酸化物の低減処理を行ったとしても、やはり、内燃機関をストイキ燃焼させた場合のほうが希薄燃焼させた場合よりも窒素酸化物の濃度の低い排ガスを供給することができる。
【0013】
〔構成〕
また、上記内燃機関の駆動制御方法を行う場合に、前記内燃機関がストイキ燃焼駆動されているときは、前記内燃機関からの窒素酸化物、一酸化炭素を除去する三元触媒を設けた排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して温室に供給する一方、前記内燃機関が希薄燃焼駆動されているときは、前記内燃機関からの一酸化炭素を除去する酸化触媒を設けた排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して温室に供給することが好ましい。
【0014】
〔作用効果〕
つまり、前記内燃機関の燃焼駆動状態に応じてその内燃機関から発生する排ガスをそれぞれの燃焼状態に適した排ガス浄化触媒の備えられた排ガス流路に流通させており、ストイキ燃焼ではその排ガスから窒素酸化物、一酸化炭素を除去することができ、希薄燃焼ではその排ガスから一酸化炭素を除去することができる。また、希薄燃焼はもともと排ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度が比較的低い燃焼方式である。そのため、前記内燃機関のいずれの燃焼駆動状態であっても、前記温室に供給される排ガスは、窒素酸化物の濃度を十分に低く抑えたものとなっており、各運転駆動状態において温室内の窒素酸化物濃度が上昇しにくい環境での排ガス供給が行える。
【0015】
〔構成〕
また、前記排ガス流路に、前記内燃機関を希薄燃焼駆動したときの排ガスを、温室内以外の空間に放出する排気部を設けてあることが好ましい。
【0016】
〔作用効果〕
上述の構成において、温室では、適正濃度以下の二酸化炭素濃度になったときに内燃機関からの排ガスを供給すると、二酸化炭素濃度を上昇させ、適正値にすることができ、二酸化炭素濃度が適正値よりも上昇した場合、前記排ガスの供給を停止すれば、二酸化炭素の消費に伴い二酸化炭素の濃度が適正値に回復する。
【0017】
したがって、前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲より低くない、十分量の二酸化炭素が温室内に存在するときは、前記温室内には排ガスを導入する必要は無いから、前記内燃機関は駆動効率の高い駆動方法で駆動するとともに排ガスを温室内以外の空間に放出することが好ましく、即ち、内燃機関は、希薄燃焼駆動するとともに、排ガスを排気部から放出することが好ましい。このように内燃機関を運転駆動することにより、前記内燃機関を高効率で運転しつつ、前記温室内の二酸化炭素濃度を適正濃度範囲に維持することができる。
【0018】
〔構成〕
また、本発明の温室栽培システムの特徴構成は、炭化水素を燃料とする内燃機関から排出される二酸化炭素を含む排ガスを、温室空間の植物に供給する排ガス流路を備えた温室栽培システムであって、
前記内燃機関が希薄燃焼運転とストイキ燃焼運転とに切替可能に構成されるとともに、
前記排ガス流路に希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを設け、
前記内燃機関の燃焼運転状態に応じて前記希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを切り換える排ガス流路切替部を設け、
前記希薄燃焼排ガス流路に酸化触媒を設けた排ガス浄化部を備え、ストイキ燃焼排ガス流路に三元触媒を設けた排ガス浄化部を備え、
前記温室に二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部を設けるとともに、
前記二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部からの検知出力に基き、前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、前記内燃機関を希薄燃焼駆動するように切り替える切替制御部を設けた点にある。
【0019】
〔作用効果〕
炭化水素を燃料とする内燃機関から排出される二酸化炭素を含む排ガスを、温室空間の植物に供給する排ガス流路を備えるから、排ガス中の二酸化炭素を供給して、温室内を高濃度に二酸化炭素を含む環境として植物を栽培することができる。
【0020】
このとき、排ガスを供給する際に、前記内燃機関が希薄燃焼運転とストイキ燃焼運転とに切替可能に構成されると、前記内燃機関は、運転効率の高い希薄燃焼運転と、排ガスを比較的清浄にできる、窒素酸化物をほとんど含まないストイキ燃焼運転とに切り換えることができ、排ガスの供給ニーズに応じて前記内燃機関の運転状態を切り換えることができる。
【0021】
また、前記排ガス流路に希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを設けて前記内燃機関の燃焼運転状態に応じて前記希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを切り換える排ガス流路切替部を設けることによって、前記内燃機関の各運転駆動状態において、発生する排ガスをそれぞれ別の流路を介して温室に供給することができ、前記希薄燃焼排ガス流路に酸化触媒を設けた排ガス浄化部を備え、ストイキ燃焼排ガス流路に三元触媒を設けた排ガス浄化部を備えることによって、前記内燃機関の運転駆動状態に応じて適した触媒により、ストイキ燃焼では排ガスから窒素酸化物や一酸化炭素の除去を行い、希薄燃焼では一酸化炭素の除去を行う。さらに希薄燃焼はもともと排ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度が比較的低い燃焼方式であるので、前記内燃機関の各運転駆動状態において窒素酸化物の濃度の低い排ガスを温室に供給することができる。
【0022】
さらに、前記温室に二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部を設けるとともに、前記二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部からの検知出力に基き、前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、前記内燃機関を希薄燃焼駆動するように切り替える切替制御部を設けてあると、上記内燃機関の駆動制御方法が適切に行え、内燃機関の駆動状態を可能な限り高効率に維持しながら、温室内の窒素酸化物濃度を低く維持することができる。
【0023】
〔構成〕
尚、前記内燃機関からの熱を温室内の加熱に用いても良く、
前記内燃機関で発電を行うとともに、前記発電で得られる電力を前記温室で使用しても良い。
【0024】
〔作用効果〕
つまり、これらの構成を採用すると内燃機関の消費するエネルギーを二酸化炭素のみならず、熱や電力としても前記温室で利用することが出来るので、システム全体として独立して効率よくエネルギー利用が出来ることになった。
【発明の効果】
【0025】
従って、前記温室空間内の植物育成条件を容易に適正に維持しつつ内燃機関の運転駆動状態を良好に制御することができるので、植物の育成条件の面からも、トリジェネレーションとしてエネルギーの有効利用の観点からも好適な温室栽培システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】温室栽培システムの概略図である。
【図2】温室栽培システムの栽培制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の温室栽培システムを説明する。以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の温室栽培システムは、コジェネレーション装置1を温室2に備えて構成される。前記コジェネレーション装置1は、内燃機関の一例としてのガスエンジン11に、発電機12を設け、電力を生成するとともに、ガスエンジン11から発生する排ガス11aを流通する排ガス流路13、前記ガスエンジン11および排ガス11aを冷却するエンジン冷却水11bを流通させる冷却水流路14を設け、前記ガスエンジン11および排ガス11aから排ガス熱交換器15により排熱を回収して熱を利用可能に構成している。また、前記ガスエンジン11に対する燃料供給部16には、ガスエンジン11に供給される燃料と空気の比率を調整して前記ガスエンジン11の燃焼駆動状態を変更制御自在にする燃料供給弁16aを備え、後述の制御装置3により流量制御自在に構成してある。
【0029】
前記温室2は、温室空間2aに植物を栽培する栽培部21を備え、さらに前記栽培部21に対する電力駆動の暖房装置22a、換気装置22b、照明(植物育成の光源)等の電力消費機器22を備え、前記発電機12によって生成された電力によって、前記温室空間2aを植物の生育に適した環境にすべく制御可能に構成する。また、温室2には前記ガスエンジン11の排ガス流路13が接続されており、前記ガスエンジン11の駆動に伴い発生する排ガス11a中の二酸化炭素を温室空間2a内に供給可能に構成してある。
【0030】
また、前記温室空間2aには、二酸化炭素濃度を検知する二酸化炭素検知部23および、窒素酸化物濃度を検知する窒素酸化物検知部24を設けてある。
【0031】
前記ガスエンジン11の排ガス流路13は、流路切替部17にて分岐して希薄燃焼排ガス流路13Aおよびストイキ燃焼排ガス流路13Bを設けて構成され、ガスエンジン11の運転状態に応じて前記排ガス流路13を切り換えて排ガス11aを流通させられる構成としてある。前記希薄燃焼排ガス流路13Aには、酸化触媒を充填した排ガス浄化部18A、前記ストイキ燃焼排ガス流路13Bには、三元触媒を充填した排ガス浄化部18B(以下第一、第二排ガス浄化部と称する)を備え、前記ガスエンジン11の各燃焼状態に応じて生成される排ガス11aを、その性状に対応して適した浄化触媒で排ガス浄化(18Aでは窒素酸化物と一酸化炭素、18Bでは一酸化炭素を除去)することができるように構成する。さらに、各排ガス浄化部18A,18Bの下流側には排ガス熱交換器15を備え、前記両排ガス浄化部18A,18Bを通過した高温の排ガス11aを、冷却水11bと熱交換して、温室空間2aに適した温度まで冷却するとともに、前記冷却水11bに熱回収して、熱供給部25としての前記栽培部21に供給できる構成となっている。
【0032】
二酸化炭素検知部23および窒素酸化物検知部24は、前記温室2空間内の二酸化炭素濃度および窒素酸化物濃度を検知して検知出力を制御装置3に伝達する。前記制御装置3では、前記二酸化炭素検知部23および窒素酸化物検知部24の出力に応じて燃料供給弁16aの開度を調節し、前記ガスエンジン11の運転駆動状態を、希薄燃焼駆動とストイキ燃焼駆動とに切替駆動可能に構成してあるとともに、そのガスエンジン11の駆動状態に従って、前記流路切替部17を切り替え制御される。
【0033】
前記ガスエンジン11を希薄燃焼駆動すると、排ガス11aは、前記排ガス流路13を流路切替部17にて分岐して、前記希薄燃焼排ガス流路13Aを流れる。前記希薄燃焼排ガス流路13Aに流入した排ガス11aは、前記第一排ガス浄化部18Aで浄化されるとともに、前記排ガス熱交換器15にて冷却水11bと熱交換して冷却され、温室に達する。尚、後述のガスエンジン11の燃焼駆動制御を行う際に、ガスエンジン11を希薄燃焼駆動させた場合、排ガス11aを温室空間2aに導入しない制御を行う場合があるが、このような場合、前記希薄燃焼排ガス流路13Aの排ガス熱交換器15と温室2との間に設けられる排気部19より、排ガス11aを外部に放出可能に構成してある。
【0034】
また、前記ガスエンジン11をストイキ燃焼駆動すると、排ガス11aは、前記排ガス流路13を流路切替部17にて分岐して、前記ストイキ燃焼排ガス流路13Bを流れる。前記ストイキ燃焼排ガス流路13Bに流入した排ガスは、前記第二排ガス浄化部18Bで浄化されるとともに、前記排ガス熱交換器15にて冷却水11bと熱交換して冷却され、温室に達する。
【0035】
上記ガスエンジン11の燃焼駆動制御は、図2に示すフローに従って行われる。
【0036】
すなわち、温室2に設けた二酸化炭素検知部23からの二酸化炭素検知出力が、二酸化炭素濃度1500ppmを超えている場合(#1)、前記温室2には排ガス11aを導入する必要がなく、前記制御装置3は前記燃料供給弁16aを絞り空燃比を上げ、前記ガスエンジン11は希薄燃焼駆動により高効率で駆動される(#2)。また、排ガス11aは、前記排気部19から外部に放出され、温室2内には導入されない。そのため、前記温室2内の二酸化炭素濃度はこれ以上上昇しない。
【0037】
次に、前記温室2内の植物が光合成により二酸化炭素を消費するなどして、温室2内の二酸化炭素濃度が低下した場合、前記温室2には排ガス11aを導入する必要があるが、窒素酸化物濃度(#4)が低ければ、前記制御装置3は前記ガスエンジン11を、まだ希薄燃焼駆動し、前記制御装置3は前記燃料供給弁16aを絞り、空燃比を上げ、前記ガスエンジン11は高効率で駆動される(#5)とともに、希薄燃焼排ガス流路13Aを介して、温室2に排ガス11aが導入される(#6)。
【0038】
前記希薄燃焼排ガス路13Aから温室2に希薄燃焼排ガス11aを導入し続けると、希薄燃焼の排ガス中の窒素酸化物の濃度がもともと低いとはいえ、ストイキ燃焼の排ガスを排ガス浄化部18Bで除去される窒素酸化物濃度に比べると濃度は高いので、温室2内の窒素酸化物濃度が徐々に上昇する。そこで、温室2内の前記窒素酸化物濃度が2ppm以上になると(#4)、前記制御装置3は、前記ガスエンジン11をストイキ燃焼駆動に駆動状態を変更する(#7)。即ち、前記制御装置3は、前記燃料供給弁16aを開き、空燃比を下げ、ガスエンジン11の駆動状態を、発電効率は低下するが、排ガス11a中の窒素酸化物濃度が低くなるように変更する。これにより前記ガスエンジン11の排ガス11aは、ストイキ燃焼排ガス流路13Aを介して三元触媒の充填される第二排ガス浄化部18Bに達し、窒素酸化物をほとんど含まない清浄な排ガスとして温室2に供給される(#6)。従って、前記温室2では、二酸化炭素の供給を続けつつ、温室2内の窒素酸化物濃度を低下させる運転が行える。
【0039】
尚、上記実例では、二酸化炭素濃度は、植物の促成栽培に適するといわれる700ppm〜1500ppmになるよう前記温室2内を制御している。また、窒素酸化物濃度としては、植物の成長の妨げとならない2ppm未満になるように制御される。これらの温室内に求められる管理数値は、植物の種類などに応じて適宜設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、温室栽培システムの温室内環境の管理が、より的確かつきめ細かく行えるようになるとともに、内燃機関の運転駆動効率を高く維持できるので、少ない労力で、品質管理の行き届いた植物を、エネルギー効率よく生産できるようになった。
【符号の説明】
【0041】
18A,18B 排ガス浄化部
13 排ガス流路
11a 排ガス
2 温室
11 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して、炭化水素を燃焼させて二酸化炭素を含む排ガスを温室に供給する内燃機関の駆動制御方法であって、
前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、前記内燃機関を希薄燃焼駆動する内燃機関の駆動制御方法。
【請求項2】
前記内燃機関がストイキ燃焼駆動されているときは、前記内燃機関からの排ガスを浄化する三元触媒を設けた排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して温室に供給する一方、前記内燃機関が希薄燃焼駆動されているときは、前記内燃機関からの一酸化炭素を除去する酸化触媒を設けた排ガス浄化部を備えた排ガス流路を介して温室に供給する請求項1に記載の内燃機関の駆動制御方法。
【請求項3】
前記排ガス流路に、前記内燃機関を希薄燃焼駆動したときの排ガスを、温室内以外の空間に放出する排気部を設けた請求項1または2に記載の内燃機関の駆動制御方法。
【請求項4】
炭化水素を燃料とする内燃機関から排出される二酸化炭素を含む排ガスを、温室空間の植物に供給する排ガス流路を備えた温室栽培システムであって、
前記内燃機関が希薄燃焼運転とストイキ燃焼運転とに切替可能に構成されるとともに、
前記排ガス流路に希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを設け、
前記内燃機関の燃焼運転状態に応じて前記希薄燃焼排ガス流路と、ストイキ燃焼排ガス流路とを切り換える排ガス流路切替部を設け、
前記希薄燃焼排ガス流路に酸化触媒を設けた排ガス浄化部を備え、ストイキ燃焼排ガス流路に三元触媒を設けた排ガス浄化部を備え、
前記温室に二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部を設けるとともに、
前記二酸化炭素濃度検知部および窒素酸化物検知部からの検知出力に基き、前記温室内の二酸化炭素濃度が温室内に求められる二酸化炭素濃度範囲よりも低く、かつ、前記温室内の窒素酸化物濃度が温室内に求められる窒素酸化物濃度範囲以上のときは、前記内燃機関をストイキ燃焼駆動するとともに、それ以外のときは、前記内燃機関を希薄燃焼駆動するように切り替える切替制御部を設けた温室栽培システム。
【請求項5】
前記内燃機関からの熱を温室内の加熱に用いる請求項4に記載の温室栽培システム。
【請求項6】
前記内燃機関で発電を行うとともに、前記発電で得られる電力を前記温室で使用する請求項4または5に記載の温室栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236750(P2011−236750A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106495(P2010−106495)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】