説明

内燃機関

【課題】シリンダヘッド内において動弁系を駆動するカム軸と、クランク軸を転がり軸受を介して支持するクランクケースと、クランク軸の動力をカム軸に伝えるカムチェーンと、オイル溜めを有するオイルロック式カムチェーンリフタと、を備えた内燃機関において、オイルロック式カムチェーンテンショナーのオイル溜め側部閉塞用プレートとプッシュプラグ押さえプレートとを1部品で兼用して部品点数の削減、製作コストの低減を図る。
【解決手段】クランクケースはガイド筒を一体に備え、ガイド筒はその頂部にオイル溜めを備え、オイル溜めはクランクケース鋳造時に設けられたオイル溜め凹部の型抜き方向側の開口をオイル溜めプレートで塞いで形成され、オイル溜めプレートはクランク軸を支持する転がり軸受を押圧するプッシュプラグの押さえプレートを兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルロック式カムチェーンリフタと、クランク軸の転がり軸受のガタ吸収用プッシュプラグと、を備えた内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、カムチェーンテンショナーのプッシュロッドの油圧確保のため、右クランクケースに設けられた凹所の一側部の開口をプレートで塞ぐことによってオイル溜めを形成し、カムチェーンテンショナーのプッシュロッド内に給油する構成が示されている。この構成では、クランク軸の転がり軸受のガタを吸収するプッシュプラグは設けられていない。
【0003】
一方、特許文献2においては、クランク軸の転がり軸受のガタを吸収するプッシュプラグは備えているが、カムチェーンリフタは上記特許文献1とは別形式のものが離れた位置に設けてある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−309960号公報
【特許文献2】特開2003−083080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カムチェーンリフタとプッシュプラグとを別々に作って組付けると、部品点数および組付け工数が増大する。本発明はオイル溜めを有するオイルロック式カムチェーンテンショナーを備えると共に、クランク軸の転がり軸受のガタを吸収するプッシュプラグを備え、オイルロック式カムチェーンテンショナーのオイル溜め側部閉塞用プレートとプッシュプラグ押さえプレートとを1部品で兼用して部品点数の削減、製作コストの低減を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
シリンダヘッド内において動弁系を駆動するカム軸と、
クランク軸を転がり軸受を介して回転自在に支持するクランクケースと、
クランク軸の動力をカム軸に伝えるカムチェーンと、
上部にオイル溜めを有するガイド筒に摺動自在に支持されたプッシュロッドを上方に突出させてカムチェーンに張力を加えるオイルロック式カムチェーンリフタと、
を備えた内燃機関において、
上記クランクケースは上記ガイド筒を一体に備え、
上記ガイド筒はその頂部にオイル溜めを備え、
上記オイル溜めはクランクケース鋳造時に設けられたオイル溜め凹部の型抜き方向側の開口をオイル溜めプレートで塞いで形成され、
上記オイル溜めプレートはクランク軸を支持する転がり軸受を押圧するプッシュプラグの押さえプレートを兼ねることを特徴とする内燃機関に関するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関において、
シリンダが、略水平に近い状態まで大きく前傾した姿勢で配置され、
プッシュプラグはクランク軸の下方に配置され、オイル溜めは上記プッシュプラグの後方近傍に配置されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の内燃機関において、
上記オイル溜めプレートは、クランクケースに締結固定されるものであって、その締結部は、クランクケースに設けられたオイル溜めの側部開口を塞ぐ部位と、プッシュプラグを押さえる部位の間に配置されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の内燃機関において、
クランクケースにおいて、オイル溜め凹部の側部開口面とオイル溜め凹部のプレート締結面とを同一平面内に設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関において、
プッシュプラグを転がり軸受側へ付勢するコイルスプリングのオイル溜めプレート側の端部が位置する面を、クランクケースのオイル溜めプレートの締結面と同一面とするよう設定したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関において、
オイル溜めプレートは、水平方向に長い形状であり、オイル溜めプレートのプッシュプラグ押さえ部は、オイル溜め側部開口を塞ぐ部分より上方に設けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明において、
クランクケースに一体に設けた凹部をプレートで塞ぐだけでオイルロック式カムチェーンリフタのオイル溜めを形成することができるので、部品点数の削減、製作コストの削減が可能となる。
クランク軸を支える転がり軸受のガタ防止のためのプッシュプラグを設けるに当たり、プッシュプラグの押さえ板を、オイル溜めプレートと兼用としたので、部品点数の増加を避けることができ、部品コスト、組立コストを削減することができる。
【0013】
請求項2の発明において、
略水平に配置されたシリンダのクランク軸の下方にプッシュプラグが配置されているので、ピストンが受ける最大圧力(爆発圧力)の方向からずれた位置となるので、最大圧力は受けず、その結果プッシュプラグの小型化が可能になり、材料選定の自由度が向上する。
また、オイル溜めはスプロケットの近くにおいて、スプロケットやチェーンから飛散するオイルが入りやすい位置に配置されることになるので、効果的である。
更に、オイル溜めプレートを小型化することができる。
【0014】
請求項3の発明において、
オイル溜めプレートのほぼ中央部を締結固定することができるので、バランス良く安定して固定することができる。
【0015】
請求項4の発明において、
オイル溜めプレートを平板とすることができるので、板金加工を省くことができ、寸法管理が不要となり、且つオイル溜めの密閉性を確保することができる。
【0016】
請求項5の発明において、
オイル溜めプレートを平板で構成することが可能になる。
【0017】
請求項6の発明において、
オイル溜めプレートのプッシュプラグ押さえ部に掛かったオイルが、オイル溜めプレートを伝わってオイル溜めに流れ込み易くなるので、カムチェーンリフタへの給油量が確保し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。この自動二輪車1では、車体フレーム2は、車体前部のヘッドパイプ3と、同ヘッドパイプ3から後方へ斜め下向きに傾斜して延出する1本のメインフレーム4と、同メインフレーム4の後部に下方へ向けて延出固着されている左右一対のピボットブラケット5、5と、メインフレーム4の後部でピボットブラケット5、5の固着位置の前付近から後方へ斜め上向きに延出して途中で屈曲して後端に至っている左右一対のシートレール6、6と、このシートレール6、6の中央部とピボットブラケット5、5との間に介装されているミドルフレーム7、7と、から構成されている。
【0019】
上記の車体フレーム2の左右一対のシートレール6、6間に収納ボックス8等が架設され、収納ボックス8等の上方を乗車用シート9が開閉自在に覆っている。車体前部上方に、ヘッドパイプ3に軸支されたハンドル10が設けられ、下方にフロントフォーク11が延びてその下端に前輪12が軸支されている。車体中央のピボットブラケット5、5にピボット軸13によりリヤフォーク14が前端を軸支されて後方に延びており、リヤフォーク14の後端部に後輪15が軸支されている。ピボット軸13を中心に上下に揺動するリヤフォーク14の後部とシートレール6、6との間にリヤクッション16、16が介装されている。
【0020】
メインフレーム4の下方でかつピボットブラケット5、5の前方にパワーユニット17が懸架されている。パワーユニット17の上部は、メインフレーム4の中央部に垂設された支持ブラケット18に支軸19を介して吊り下げられている。パワーユニット17の後部は、ピボットブラケット5、5に支軸20、21を介して2箇所で固定されている。これらの支持によって、メインフレーム4の下方、かつピボットブラケット5、5の前方において、パワーユニット17が車体フレーム2に固定されている。車体フレーム2は、各部に分割された合成樹脂製のカバー部材22により覆われている。
【0021】
パワーユニット17は前部の内燃機関25と後部の動力伝達装置26から構成されている。動力伝達装置26は、主にVベルト無段変速機と歯車減速機構とからなっている。内燃機関25は、単気筒の4サイクル内燃機関で、クランクケース27の前面からシリンダブロック28、シリンダヘッド29およびシリンダヘッドカバー30が重ねられて略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で突出している。シリンダヘッド29の上方に延出した吸気管31にスロットルボディ32が接続されている。また、シリンダヘッド29の下方に延出し後方へ屈曲した排気管33は、後方へ延びて後輪15の右側のマフラー34に接続されている。上記パワーユニット17の出力軸35に嵌着された動力伝達チェーン駆動スプロケット36と後輪15に一体に設けられた動力伝達チェーン従動スプロケット37との間に動力伝達チェーン38が架渡され、パワーユニット17の回転駆動力が後輪15に伝達される。
【0022】
図2は上記内燃機関25の要部側面図である。クランクケース27は左右割形式であり、図には左クランクケース27Lが示されている。クランクケース27の前方に、略水平方向に、シリンダブロック28が突設され、その前方にシリンダヘッド29とシリンダヘッドカバー30が接続され、これらがクランクケース27と一体に結合されている。左右クランクケース27L、27Rに車幅方向に指向したクランク軸40が左右の転がり軸受41L、41Rを介して回転自在に軸支されている。図には、左転がり軸受41Lが示されている。
【0023】
左クランクケース27L、シリンダブロック28、およびシリンダヘッド29、およびシリンダヘッドカバー30の左側には連続するカムチェーン室42が形成されている。クランク軸40の、カムチェーン室42内への突出部には駆動スプロケット43が嵌着されている。シリンダヘッド29とシリンダヘッドカバー30の境界部に設けられた動弁機構のカム軸44はカムチェーン室42内へ突出しており、同突出部には、従動スプロケット45が嵌着されている。クランク軸40の駆動スプロケット43と上記従動スプロケット45には無端状のカムチェーン46が架渡されている。
【0024】
左クランクケース27Lには、カムチェーンリフタ装置47が設けられ、上記カムチェーン46に適度の緊張を与えている。左クランクケース27Lの壁体部27aのクランク軸40より上方に、カムチェーンリフタ装置47のテンショナーアーム48が支軸49によって揺動自在に枢支されている。このテンショナーアーム48は支軸49の前後に延出している。テンショナーアーム48の後方斜め下方に伸びた後アーム48rの後端は、カムチェーンリフタ装置47のオイルロック式カムチェーンリフタ51のプッシュロッド52の頂部に当接し、上方へ付勢されている。前方に伸びた前アーム48fの前端にはテンションスプロケット50が軸支され、駆動スプロケット43から送り出されるカムチェーン46を上から押さえるようにしてカムチェーン46に噛合している。
【0025】
シリンダブロック28からカムチェーン室42内に突出する支軸53に、ガイドホイール54が回転自在に設けられ、上下のカムチェーン46に係合して、カムチェーン46の揺れを防いでいる。また、左クランクケース27Lのクランク軸40の下方斜め前方からカムチェーン室42に突出する支軸55に、補助スプロケット56が回転自在に設けられ、駆動スプロケット43に引き込まれる側のカムチェーン46を上方へ押し上げている。
【0026】
図3は、図2のIII−III断面図である。クランクケース27は、左クランクケース27Lと右クランクケース27Rとから成り、クランク軸40を左右の転がり軸受41L、41Rによって回転自在に支持している。図には、駆動スプロケット43、テンションスプロケット50、テンショナーアーム48、テンショナーアーム48の支軸49、及びオイルロック式カムチェーンリフタ51が示してある。
【0027】
図4は、図2、図3に示したオイルロック式カムチェーンリフタ51の外観図である。オイルロック式カムチェーンリフタ51は、ガイド筒63と、同ガイド筒63に摺動自在に挿入されているプッシュロッド52とを備えている。ガイド筒63は、左クランクケース27のカムチェーン室42の周壁部27bの下部を斜めに貫通して穿設され、外部に突出するその下端部はシーリングボルト66が螺着されて閉鎖されている。
【0028】
ガイド筒63の上部にはオイル溜め60が形成されている。オイル溜め60はオイル溜め凹部61と、同オイル溜め凹部61の側部開口面61aを塞ぐオイル溜めプレート62とからなっている。オイル溜め凹部61は左クランクケース27の鋳造時の型抜き方向側の側面が開口状態になるので、その開口面をオイル溜めプレート62で塞いで、オイルが溜まるようにしてある。図4には、オイル溜めプレート62を除去した状態が示してあり、除去したオイル溜めプレート62は二点鎖線で示してある。
【0029】
図4には、オイル溜め凹部61のプレート締結面61bがクロスハッチングで示してある。この面は平面であり、ここに平板で作られたオイル溜めプレート62が当接する。オイル溜めプレート62は上記締結面61bに設けられたネジ孔67にボルト68(図2)によって締結される。オイル溜め凹部61の側部開口面61aとオイル溜め凹部61のプレート締結面61bとは同一平面となるように設けてあるので、オイル溜めプレート62を平板で製作することが可能となり、板金加工を省くことができ、寸法管理が不要となり、且つオイル溜め60の密閉性を確保することができる。
【0030】
図5はオイルロック式カムチェーンリフタ51の断面図である。図5において、ガイド筒63は左クランクケース27Lに穿設されて形成されており、上部にはオイル溜め凹部61が左クランクケース27L鋳造時に形成されている。ガイド筒63の円孔63aにプッシュロッド52が摺動自在に挿入されている。この円孔63aはオイル溜め凹部61に開口している。プッシュロッド52はオイル溜め60の底面から上方の外部へ露出している。
【0031】
図6は、図2のVI−VI断面図である。図には、ガイド筒63の円孔63a、オイル溜め凹部61、オイル溜めプレート62、オイル溜めプレート取付ボルト68が示してある。
【0032】
図5において、プッシュロッド52は円筒状をなし、中央部に複数の連通孔69が穿孔され、上端にはロッドヘッド70が嵌着され、ロッドヘッド70の近傍に複数の通気孔71が形成されている。プッシュロッド52の下端開口には、バルブシート72とバルブキャップ73が設けられ、その間にボール74が遊嵌されている。バルブシート72とバルブキャップ73には、それぞれボールより小径の開口72a、73aが形成され、ボール74がバルブシート72の開口72aの開閉を行うチェックバルブを構成している。上記開口72a、73aは通常は開放されているので、上下の空間は連通している。
【0033】
ガイド筒63の下端に螺着されているシーリングボルト66と、プッシュロッド52の下端のバルブキャップ73との間にコイルばね64が介装され、プッシュロッド52を上方へ付勢している。バルブシート72より下方の、上記コイルばね64が装着されている空間が油圧室76を構成している。プッシュロッド52はガイド筒63に略半分ほど挿入されており、プッシュロッド中央部の複数の連通孔69のいずれかがオイル溜め60内に位置するように設定されており、オイル溜め60に流入したオイルは、連通孔69を経てプッシュロッド52の中へ流入するので、プッシュロッド52内部の下半部と油圧室76にはオイルが充満している。カムチェーン室42内のオイルレベルは、上記オイル溜め60の位置より低いが、カムチェーン46の回動などによって飛散したオイルが、ガイド筒63の上端に開口しているオイル溜め60に捕集されて、プッシュロッド52内の下半部と油圧室76には絶えずオイルが補充される。
【0034】
図2において、カムチェーンリフタ装置47は、オイルロック式カムチェーンリフタ51のコイルばね64によってプッシュロッド52を上方へ付勢し、テンショナーアーム48を支軸を支点として揺動させ、テンションスプロケット50をカムチェーン46に押圧させて、カムチェーン46を適度に緊張させるものである。カムチェーン46が伸びた場合でも、コイルばね64の付勢力によってプッシュロッド52は前進するので、カムチェーン46を緊張させることができる。
【0035】
図5において、カムチェーン46が過度に緊張して、プッシュロッド52がカムチェーン46から押圧力を受け、コイルばね64の付勢力に抗して後退する場合は、プッシュロッド52と共にバルブシート72が後退して、通常状態では連通しているバルブシート72の開口72aがボールによって閉塞され、油圧室76にオイルが閉じ込められるので、プッシュロッド52の必要以上の後退が阻止される。
【0036】
図3にクランクケース27の断面が示されている。クランクケース27は、左クランクケース27と右クランクケース27からなる左右半割りの構成となっている。クランク軸40は左右別々に作られた左クランク軸40Lと右クランク軸40Rとがクランクピン40Pによって結合されて一体化されている。クランク軸40は上記クランクケース27に左右の転がり軸受41L、41Rを介して回転自在に支持されている。上記転がり軸受41L、41Rの外輪41Lx、41Rxは、クランクケース鋳造時に鋳込まれた鋼製ブッシュ58L、58Rに当接している。
【0037】
上記のように左右を一体化したクランク軸40を左右のクランクケース27L、27Rに嵌め込んだ後、左右のクランクケース27L、27Rを一体化する組立工程の都合上、クランクケース27内でクランク軸40を支持するために用いられる2個の転がり軸受41L、41Rの各内外面4面のうち、3面は圧入であるが、残りの1面は緩やかな挿入となっている。本実施形態では、接触面A、B、Cは圧入面であるが、接触面Dは緩やかな挿入面となっている。
【0038】
図6において、左クランクケース27Lの壁体部27aに一体化されている左鋼製ブッシュ58Lと左転がり軸受41Lの外輪41Lxとの間の接触面Dは緩やかに挿入されている。この緩やかに挿入されている左転がり軸受41Lにクランク軸40方向のガタつきが生じる可能性がある。このガタつきを防止するために、左クランクケース27L内に、左転がり軸受41Lを押すプッシュプラグ77が設けられている。同プッシュプラグ77はその中に装着されたコイルスプリング78を介してオイル溜めプレート62のオイル溜め60とは反対側へ伸びるプッシュプラグ押さえ部62aで押されている。プッシュプラグ77はその先端部の傾斜面で左転がり軸受41Lの外輪41Lxの肩部を押して、左右方向のガタつきを防止している。
【0039】
図5に示されるように、上記プッシュプラグ押さえ部62aは、オイル溜め凹部61の側部開口面61aを塞ぐ部分より上方に設けられている。したがって、オイル溜めプレート62のプッシュプラグ押さえ部62aに掛かったオイルが、オイル溜めプレート62を伝わってオイル溜め60に流れ込み易くなるので、オイルロック式カムチェーンリフタ51への給油量が確保しやすくなっている。
【0040】
図6において、上記オイル溜めプレート62の締結部62bは、オイル溜め凹部61の側部開口を塞ぐ部位62cと、プッシュプラグ押さえ部62aの間に配置され、オイル溜めプレート62のほぼ中央部を締結固定することができるので、オイル溜めプレート62はバランス良く安定して固定される。また、オイル溜めプレート62に接する側のコイルスプリング78の端部78aが位置する面を、クランクケース27のオイル溜め凹部61のプレート締結面61bと同一面とするよう設定したので、オイル溜めプレート62をプッシュプラグ押さえ部62aを含めて平板で構成することが可能になっている。
【0041】
以上詳述したように、上記実施形態においては、次の効果がもたらされる。
(1)クランクケース27に一体に設けたオイル溜め凹部61をオイル溜めプレート62で塞ぐだけでオイルロック式カムチェーンリフタ51のオイル溜め60を形成することができるので、部品点数の削減、製作コストの削減が可能となる。また、クランク軸40を支える転がり軸受41のガタ防止のためのプッシュプラグ77を設けるに当たり、プッシュプラグ77の押さえ板を、オイル溜めプレート62と兼用としたので、部品点数の増加を避けることができ、部品コスト、組立コストを削減することができる。
(2)略水平に配置されたシリンダのクランク軸の下方にプッシュプラグが配置されているので、ピストンが受ける最大圧力(爆発圧力)の方向からずれた位置となるので、最大圧力は受けず、その結果プッシュプラグの小型化が可能になり、材料選定の自由度が向上する。
また、オイル溜めはスプロケットの近くにおいて、スプロケットやチェーンから飛散するオイルが入りやすい位置に配置されることになるので、効果的である。
更に、オイル溜めプレートを小型化することができる。
(3)オイル溜めプレート62の締結部62bは、プッシュプラグ押さえ部62aとオイル溜め凹部61の側部開口を塞ぐ部位62cとの間に設けてあるので、オイル溜めプレート62のほぼ中央部を締結固定することができ、バランス良く安定して固定することができる。
(4)オイル溜め凹部61の側部開口面61aとオイル溜め凹部61のプレート締結面61bとを同一平面内に設けたので、オイル溜めプレート62を平板で作ることができ、板金加工を省くことができ、寸法管理が不要となり、且つオイル溜め60の密閉性を確保することができる。
(5)コイルスプリング78のオイル溜めプレート62側の端部が位置する面を、左クランクケース27のオイル溜め凹部61のプレート締結面61bと同一面としているので、プッシュプラグ押さえ部62aを含むオイル溜めプレート62を、平板で構成することが可能になっている。
(6)オイル溜めプレート62のプッシュプラグ押さえ部62aは、オイル溜め凹部61の側部開口を塞ぐ部位62cより上方に設けてあるので、オイル溜めプレート62のプッシュプラグ押さえ部62aに掛かったオイルが、オイル溜めプレート62を伝わってオイル溜め60に流れ込み易くなるので、オイルロック式カムチェーンリフタ51への給油量が確保し易くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。
【図2】内燃機関25の要部側面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図2のオイルロック式カムチェーンリフタ51の外観図である。
【図5】オイルロック式カムチェーンリフタ51の断面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【符号の説明】
【0043】
27L…左クランクケース、27R…右クランクケース、28…シリンダブロック、29…シリンダヘッド、30…シリンダヘッドカバー、40…クランク軸、41…転がり軸受、41L…左転がり軸受、41R…右転がり軸受、41x…転がり軸受の外輪、42…カムチェーン室、43…駆動スプロケット、44…カム軸、45…従動スプロケット、46…カムチェーン、47…カムチェーンリフタ装置、48…テンショナーアーム50…テンションスプロケット、51…オイルロック式カムチェーンリフタ、52…プッシュロッド、58L…左鋼製ブッシュ、58R…右鋼製ブッシュ、60…オイル溜め、61…オイル溜め凹部、61a…オイル溜め凹部の側部開口面、61b…オイル溜め凹部のプレート締結面、62…オイル溜めプレート、62a…プッシュプラグ押さえ部、62b…締結部、63…ガイド筒、63a…ガイド筒の円孔、64…コイルばね、65…油圧装置、68…ボルト、69…連通孔、71…通気孔、72…バルブシート、73…バルブキャップ、74…ボール、76…油圧室、77…プッシュプラグ、78…コイルスプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド内において動弁系を駆動するカム軸と、
クランク軸を転がり軸受を介して回転自在に支持するクランクケースと、
クランク軸の動力をカム軸に伝えるカムチェーンと、
上部にオイル溜めを有するガイド筒に摺動自在に支持されたプッシュロッドを上方に突出させてカムチェーンに張力を加えるオイルロック式カムチェーンリフタと、
を備えた内燃機関において、
上記クランクケースは上記ガイド筒を一体に備え、
上記ガイド筒はその頂部にオイル溜めを備え、
上記オイル溜めはクランクケース鋳造時に設けられたオイル溜め凹部の型抜き方向側の開口をオイル溜めプレートで塞いで形成され、
上記オイル溜めプレートはクランク軸を支持する転がり軸受を押圧するプッシュプラグの押さえプレートを兼ねることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
シリンダが、略水平に近い状態まで大きく前傾した姿勢で配置され、
プッシュプラグはクランク軸の下方に配置され、オイル溜めは上記プッシュプラグの後方近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
上記オイル溜めプレートは、クランクケースに締結固定されるものであって、その締結部は、クランクケースに設けられたオイル溜めの側部開口を塞ぐ部位と、プッシュプラグを押さえる部位の間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
クランクケースにおいて、オイル溜め側部開口面とオイル溜めプレート締結面とを同一平面内に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
プッシュプラグを転がり軸受側へ付勢するコイルスプリングのオイル溜めプレート側の端部の位置を、クランクケースのオイル溜めプレートの締結面位置と一致させるよう設定したことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
オイル溜めプレートは、水平方向に長い形状であり、オイル溜めプレートのプッシュプラグ押さえ部は、オイル溜め側部開口を塞ぐ部分より上方に設けられることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−197769(P2009−197769A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43557(P2008−43557)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】