説明

円環状測定物の軸方向形状測定用治具及び軸方向形状測定装置

【課題】円環状測定物の測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を正確に測定するための円環状測定物の軸方向形状測定用治具及び軸方向形状測定装置を提供すること。
【解決手段】円環状測定物8の軸方向形状測定用治具1は、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置及び内周位置の各軸方向形状をそれぞれ測定する際に用い、架台2、回動軸3、回動ベース4及び保持する複数の保持クランプ41を備えている。複数の保持クランプ41は、回動軸3の回動中心Aに円環状測定物8の測定点Pを合わせて円環状測定物8を保持する。回動ベース4は、回動軸3の回動中心Aを中心に回動することによって測定点Pを中心に回動して、測定点Pの外周位置を所定の測定方向に向けた第1回動位置401と、測定点Pの内周位置を所定の測定方向に向けた第2回動位置とに回動停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状測定物の周方向の一点としての測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状をそれぞれ測定する際に用いる治具及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の動力伝達手段として用いる円環状のループ材等は、円筒状素材から所定幅に切断して製造している。そして、この切断は、円筒状素材の内周側と外周側とに配置する一対の刃具の各切刃の間に円筒状素材の周方向の一部を挟み込み、一対の刃具に対して円筒状素材の全周を相対的に回転移動させて行っている。
このような回転切断装置としては、例えば、特許文献1に開示された金属製薄板ドラムの切断装置がある。この切断装置においては、山形形状の一対のローリングカッターをドラムの外周面及び内周面に当接させ、サーボモータを駆動して圧接部材に保持するドラムを回転させる。そして、一対のローリングカッターがドラムと連れ回りしながら、ドラムを切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、円筒状素材から切断を行ったループ材等の円環状測定物の軸方向形状(切断幅)を測定するためには、所定の測定装置が必要とされる。
しかしながら、このような円環状測定物の軸方向形状を、外周位置と内周位置との両方において正確に測定するためには、測定装置の構造に工夫が必要となる。特に、山形形状の一対のローリングカッター等によって切断され、円環状測定物の軸方向端面が山型断面形状に形成されている場合には、上記外周位置及び内周位置の軸方向形状を正確に測定することが困難である。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、円環状測定物の測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を正確に測定するための円環状測定物の軸方向形状測定用治具及び軸方向形状測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、円環状測定物の周方向の一点としての測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状をそれぞれ測定する際に用いる治具であって、
測定装置の測定台に固定する架台と、該架台に回動可能に支持した回動軸と、該回動軸と一体的に回動する回動ベースと、該回動ベースに設けられ、上記円環状測定物を保持する複数の保持クランプとを備えており、
該複数の保持クランプは、上記回動軸の回動中心に上記測定点を合わせて上記円環状測定物を保持するよう構成してあり、
上記回動ベースは、上記回動軸によって上記測定点を中心に回動して、該測定点の外周位置を所定の測定方向に向けた第1回動位置と、上記測定点の内周位置を上記所定の測定方向に向けた第2回動位置とに回動停止させるよう構成してあることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定用治具にある(請求項1)。
【0007】
第2の発明は、円環状測定物の軸方向形状測定用治具を固定する測定台と、上記円環状測定物の上記測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を測定する測定子とを備えた測定装置であって、
上記回動ベースを上記第1回動位置に固定した状態で上記測定子によって上記外周位置の軸方向形状を測定し、かつ、上記回動ベースを上記第2回動位置に固定した状態で上記測定子によって上記内周位置の軸方向形状を測定するよう構成してあり、
上記測定台に対する上記軸方向形状測定用治具の載置状態を維持するとともに、上記複数の保持クランプによる上記円環状測定物の保持状態を維持したまま、上記回動軸によって上記測定点を中心に上記回動ベースを上記第1回動位置と上記第2回動位置との間で回動させて、上記外周位置の軸方向形状の測定と上記内周位置の軸方向形状の測定とを行うよう構成してあることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定装置にある(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明の軸方向形状測定用治具は、円環状測定物に対して接触又は非接触で測定を行う測定装置に対して用いる治具であり、測定装置によって、円環状測定物の測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状をそれぞれ正確に測定するためのものである。
具体的には、軸方向形状測定用治具は、各軸方向形状の測定を行うための測定装置等の測定台に載置する架台に対して、回動軸、回動ベース及び複数の保持クランプを配設してなる。また、保持クランプは、回動軸の回動中心に測定点を合わせて円環状測定物を保持するよう構成してある。
【0009】
そして、円環状測定物の測定点における外周位置の軸方向形状を測定する際には、回動ベースを第1回動位置に固定する。このとき、測定点の外周位置が、所定の測定方向である測定装置における測定部位に向けられる。これにより、測定装置によって、円環状測定物の測定点における外周位置の軸方向形状を正確に測定することができる。
【0010】
また、円環状測定物の測定点における内周位置の軸方向形状を測定する際には、複数の保持クランプによって円環状測定物を保持したままで、回動軸によって回動ベースを回動させる。このとき、円環状測定物は、その測定点を回動軸の回動中心に合わせて回動ベースに保持されているため、円環状測定物はその測定点を中心に表裏が反転され、測定点の内周位置が、所定の測定方向である測定装置における測定部位に向けられる。これにより、外周位置の軸方向形状の測定から内周位置の軸方向形状の測定に切り替える際に、円環状測定物は、軸方向形状測定用治具に対して付け替えが行われることがなく、また、軸方向形状測定用治具に対して軸方向に位置ずれを起こすこともない。そのため、測定装置によって、円環状測定物の測定点における内周位置の軸方向形状も正確に測定することができる。
なお、外周位置の軸方向形状の測定を行う前に、内周位置の軸方向形状の測定を行うこともできる。いずれの軸方向形状の測定を先に行っても、正確に測定を行うことができる。
【0011】
それ故、第1の発明の円環状測定物の軸方向形状測定用治具によれば、測定装置によって、円環状測定物の測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を正確に測定することができる。
また、第2の発明の円環状測定物の軸方向形状測定装置によれば、上記軸方向形状測定用治具を用いることによって、円環状測定物の測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例にかかる、回動ベースを第1回動位置にした軸方向形状測定用治具を、回動軸の軸方向から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例にかかる、回動ベースを第2回動位置にした軸方向形状測定用治具を、回動軸の軸方向から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、軸方向形状測定用治具を、側方から見た状態で示す断面説明図。
【図4】実施例にかかる、軸方向形状測定用治具における保持クランプの形成部分を、側方から見た状態で示す断面説明図。
【図5】実施例にかかる、軸方向形状測定装置を示す説明図。
【図6】実施例にかかる、測定子によって円環状測定物の測定点における外周位置の軸方向形状を測定する状態を示す断面図。
【図7】実施例にかかる、測定子によって円環状測定物の測定点における内周位置の軸方向形状を測定する状態を示す断面図。
【図8】実施例にかかる、ループ材を用いたCVT用ベルトを示す説明図。
【図9】実施例にかかる、測定装置によって測定した測定点における外周位置の軸方向形状を模式的に示す説明図。
【図10】実施例にかかる、測定装置によって測定した測定点における外周位置及び内周位置の軸方向形状から作成した測定点における断面輪郭形状を模式的に示す説明図。
【図11】実施例にかかる、一対の刃具によって円筒状素材に切断加工を行って、ループ材を形成する状態を示す斜視図。
【図12】実施例にかかる、一対の刃具によって切断してループ材を形成した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した第1、第2の発明の円環状測定物の軸方向形状測定用治具及び軸方向形状測定装置における好ましい実施の形態につき説明する。
第2の発明において、上記円環状測定物は、その軸方向一端面及び軸方向他端面が山型断面形状に形成されたものであり、上記測定点における外周位置の軸方向形状として、上記軸方向一端面の上記山型断面形状における外周側の基端側角部と、上記軸方向他端面の上記山型断面形状における外周側の基端側角部との間の軸方向幅を測定し、上記測定点における内周位置の軸方向形状として、上記軸方向一端面の上記山型断面形状における内周側の基端側角部と、上記軸方向他端面の上記山型断面形状における内周側の基端側角部との間の軸方向幅を測定するよう構成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、山型断面形状の軸方向両端面を有する円環状測定物について、測定点の外周位置における軸方向形状と測定点の内周位置における軸方向形状とを正確に測定することができる。
【0014】
また、上記円環状測定物は、無段変速機に用いるループ材であり、かつ、山型断面形状の外周刃先部を有する一対の刃具によって円筒状素材を挟み込んで、該円筒状素材の全周を上記一対の刃具に対して相対的に回転移動させて、該円筒状素材を所定幅に切断してなるものとすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、ループ材の製造を迅速に行うとともに、製造したループ材の周方向を横切る断面における内外周方向の対称性を正確に測定することができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の円環状測定物の軸方向形状測定用治具及び軸方向形状測定装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の円環状測定物8の軸方向形状測定用治具1(以下、単に測定用治具1という。)は、図1〜図3に示すごとく、円環状測定物8の周方向Cの一点としての測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状をそれぞれ測定する際に用いる治具である。軸方向形状測定用治具1は、軸方向形状測定装置5(以下、単に測定装置5という。)の測定台51に載置する架台2と、架台2に対して回動可能に支持した回動軸3と、回動軸3と一体的に回動する回動ベース4と、回動ベース4に設けられ、円環状測定物8を保持する複数の保持クランプ41とを備えている。
【0016】
複数の保持クランプ41は、回動軸3の回動中心Aに円環状測定物8の測定点Pを合わせて円環状測定物8を保持するよう構成してある。回動ベース4は、回動軸3の回動中心Aを中心に回動することによって測定点Pを中心に回動して、測定点Pの外周位置82を所定の測定方向に向けた第1回動位置401(図1参照)と、測定点Pの内周位置83を所定の測定方向に向けた第2回動位置402(図2参照)とに回動停止させるよう構成してある。
【0017】
以下に、本例の円環状測定物8の測定用治具1及び測定装置5につき、図1〜図12を参照して説明する。
本例の測定用治具1は、測定装置5の測定台51に載置して円環状測定物8の軸方向形状を測定するために用いるものである。
図8に示すごとく、本例の円環状測定物8は、無段変速機(ベルト式CVT(Continuously Variable Transmission))に用いるループ材8である。無段変速機は、一対のプーリと、一対のプーリ間に掛け渡したCVT用ベルト7とにより構成され、ループ材8は、CVT用ベルト7に用いられる。CVT用ベルト7は、複数枚積層したループ材8の全周に対して、摩擦部品であるエレメント81を多数装着して形成される。また、複数枚積層したループ材8は、各エレメント81の両側に一対に掛け渡される。
【0018】
また、図11に示すごとく、本例のループ材8は、山型断面形状の外周刃先部611を有する一対の刃具61によって円筒状素材80を挟み込んで、円筒状素材80の全周を一対の刃具61に対して相対的に回転移動させて、円筒状素材80を所定幅に切断してなるものである。そして、円環状測定物8の軸方向一端面81A及び軸方向他端面81Bは、円環状測定物8を軸方向Lに直交して切断したときの断面形状として山型断面形状に形成されている。
【0019】
図6は、測定子52によって外周位置82の軸方向形状を測定する状態を拡大して示し、図7は、測定子52によって内周位置83の軸方向形状を測定する状態を拡大して示す。図10は、円環状測定物8の測定点Pにおける断面輪郭形状を模式的に示す図である。
本例においては、図6、図10に示すごとく、測定点Pにおける外周位置82の軸方向形状として、軸方向一端面81Aの山型断面形状における外周側の基端側角部821と、軸方向他端面81Bの山型断面形状における外周側の基端側角部821との間の軸方向幅W1を測定する。また、図7、図10に示すごとく、測定点Pにおける内周位置83の軸方向形状として、軸方向一端面81Aの山型断面形状における内周側の基端側角部831と、軸方向他端面81Bの山型断面形状における内周側の基端側角部831との間の軸方向幅W2を測定する。
【0020】
図3に示すごとく、測定用治具1において、回動軸3は、架台2に設けた軸受部21によって回動可能に軸支されている。架台2には、軸受部21の回動中心(軸中心)Aから所定の径方向位置であって、軸受部21の回りに位相が180°異なる位置に、位置固定部22がそれぞれ形成されている。また、回動ベース4には、回動軸3の回動中心Aから位置固定部22と同じ所定の径方向位置に、位置固定部22に係合させることができる位置固定係合部42が形成されている。本例の位置固定部22は、架台2の2箇所に設けた係合穴であり、本例の位置固定係合部42は、回動ベース4に設けた係合穴である。そして、回動ベース4を、第1回動位置401にしたときと、第2回動位置402にしたときには、位置固定部22としての係合穴に対して位置固定係合部42としての係合穴が対向する。これらの状態において、位置固定係合部42としての係合穴から位置固定部22としての係合穴へ係合ピン43を差し込むことにより、架台2に対する回動軸3及び回動ベース4の回動を固定することができる。
【0021】
本例の保持クランプ41は、回動軸3の回動中心Aに対する左右両側の位置において円環状測定物8を保持するよう構成されている。保持クランプ41は、円環状測定物8の内周側に位置する突出受部411と、円環状測定物8の外周側に位置して突出受部411との間に円環状測定物8を挟み込むために設けたクランプ部412とによって構成されている。本例のクランプ部412は、トグルクランプによって構成されている。
また、本例の回動ベース4には、測定者が手動によって回動ベース4及び回動軸3を回動させるためのハンドル44が設けてある。そして、測定用治具1は、第1回動位置401と第2回動位置402とに手動で切り替えて、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を測定するよう構成されている。これに対し、測定用治具1は、モータ、シリンダー等のアクチュエータを用いて、第1回動位置401と第2回動位置402とに切り替えるよう構成することもできる。
【0022】
図1は、測定用治具1における回動ベース4が第1回動位置401にある状態を示し、図2は、測定用治具1における回動ベース4が第2回動位置402にある状態を示す。
回動ベース4が第1回動位置401にあるときには、回動軸3の下方に円環状測定物8が位置し、回動軸3の上方に保持クランプ41のクランプ部412が位置する。一方、回動ベース4が第2回動位置402にあるときには、回動軸3の上方に円環状測定物8が位置し、回動軸3の下方に保持クランプ41のクランプ部412が位置する。
【0023】
本例においては、図5に示すごとく、測定用治具1を、測定装置5の測定台51に載置し、測定装置5の測定子52によって、測定用治具1における複数の保持クランプ41に保持した円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状の測定を行う。
測定装置5は、測定用治具1を載置して固定する測定台51と、測定用治具1に保持した円環状測定物8に接触して測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を測定する測定子52と、測定子52を測定台51に対する任意の部位に移動させる移動手段53と、測定子52による測定情報を収集して測定箇所の寸法、形状等を算出する算出手段54と、測定結果を表示する表示手段55とを備えている。
【0024】
同図に示すごとく、測定子52は、アーム531の先端部において、測定先端部521を下方に垂下して設けてあり、測定先端部521が被測定対象である円環状測定物8に接触するときに上下に振れるよう構成されている。算出手段54は、測定子52の測定先端部521の軌道変化を検出するよう構成されている。そして、算出手段54は、測定子52の高さ位置が急激に変化する位置が基端側角部821、831の位置であるとして、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を算出することができる。移動手段53は、測定子52を移動させる移動装置によって構成されており、算出手段54は、コンピュータによって構成されている。
【0025】
測定装置5は、図1、図6に示すごとく、回動ベース4を第1回動位置401に固定した状態で測定子52によって外周位置82の軸方向形状を測定し、かつ、図2、図7に示すごとく、回動ベース4を第2回動位置402に固定した状態で測定子52によって内周位置83の軸方向形状を測定するよう構成してある。そして、測定装置5は、測定台51に対する測定用治具1の載置状態を維持するとともに、複数の保持クランプ41による円環状測定物8の保持状態を維持したまま、回動軸3によって測定点Pを中心に回動ベース4を第1回動位置401と第2回動位置402とに回動させて、外周位置82の軸方向形状の測定と内周位置83の軸方向形状の測定とを行うよう構成してある。
【0026】
また、算出手段54は、測定点Pにおける外周位置82の軸方向形状と測定点Pにおける内周位置83の軸方向形状とを照合比較し、これらの形状の違いを検出して、円環状測定物8における軸方向一端面81Aの山型断面形状と円環状測定物8における軸方向他端面81Bの山型断面形状との対称性を判定することができる。
また、測定装置5においては、測定用治具1における複数の保持クランプ41によって保持する円環状測定物8の周方向Cの位置を適宜変更して、円環状測定物8の周方向Cの複数箇所を測定点Pとして、各測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を測定することができる。
【0027】
図9は、測定装置5によって測定した測定点Pにおける外周位置82の軸方向形状を、表示手段55によって表示する状態を模式的に示し、図10は、測定装置5によって測定した測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の軸方向形状から作成した測定点Pにおける断面輪郭形状を、表示手段55によって表示する状態を模式的に示す。
図10に示すごとく、算出手段54は、測定点Pの外周位置82の軸方向形状を測定したデータと、測定点Pの内周位置83の軸方向形状を測定したデータとを、いずれかのデータを180°反転するとともに円環状測定物8の設計上の板厚分だけ板厚方向に平行移動して、1つの形状データとして合わせることにより、測定した円環状測定物8の周方向Cの測定点Pにおける断面輪郭形状を求めることができる。そして、表示手段55は、この断面形状を表示することができる。
【0028】
また、算出手段54は、上記形状データから、円環状測定物8の板厚t、円環状測定物8の軸方向最大幅W、軸方向両端面81A、81Bにおける山型断面形状の山型の角度θを得ることができる。
また、上記形状データに加工することにより、円環状測定物8の軸方向両端面81A、81Bにおける山型断面形状の頂点部84の輪郭も表すことができる。
【0029】
本例においては、測定装置5によって、円環状測定物8の外周位置82の軸方向形状と内周位置83の軸方向形状との誤差を検出し、これらの誤差が所定値を超えたときには、円環状測定物8としてのループ材8を切断加工している切断加工装置6の補正を行う。
図11、図12に示すごとく、切断加工装置6は、山型断面形状の外周刃先部611を有する刃具61を一対に備え、一対の刃具61の各外周刃先部611によって円筒状素材80の内外周を挟み込んで、一対の刃具61に対して円筒状素材80の全周を相対的に回転移動させて、円筒状素材80を所定幅に切断するよう構成されている。そして、上記誤差が所定値を超えたときには、一対の刃具61の位置関係を微調整して、円環状測定物8としてのループ材8の軸方向一端面81Aと軸方向他端面81Bとの形状の対称性を確保する。なお、ループ材8は、切断加工装置6によって切断された後には、研磨装置によって軸方向両端面81A、81Bを所定形状に研磨して製品とされる。
【0030】
本例の測定用治具1及び測定装置5を用いて、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82の軸方向形状を測定する際には、回動ベース4を第1回動位置401に固定する。このとき、測定点Pの外周位置82が、所定の測定方向として測定子52が位置する上方に向けられる。これにより、測定装置5によって、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82の軸方向形状を正確に測定することができる。
【0031】
また、円環状測定物8の測定点Pにおける内周位置83の軸方向形状を測定する際には、複数の保持クランプ41によって円環状測定物8を保持したままで、回動軸3によって回動ベース4を回動させる。このとき、円環状測定物8は、その測定点Pを回動軸3の回動中心Aに合わせて回動ベース4に保持されているため、円環状測定物8はその測定点Pを中心に表裏が反転され、測定点Pの内周位置83が、所定の測定方向として測定子52が位置する上方に向けられる。
【0032】
これにより、外周位置82の軸方向形状の測定から内周位置83の軸方向形状の測定に切り替える際に、円環状測定物8は、測定用治具1に対して付け替えが行われることがなく、また、測定用治具1に対して軸方向Lに位置ずれを起こすこともない。つまり、測定用治具1においては、測定用治具1を測定台51に対して固定し直す際に生ずる測定誤差、及び円環状測定物8を持ち替える際に生ずる測定誤差がほとんど生じない。そのため、測定装置5によって、円環状測定物8の測定点Pにおける内周位置83の軸方向形状も正確に測定することができる。
なお、外周位置82の軸方向形状の測定を行う前に、内周位置83の軸方向形状の測定を行うこともできる。また、いずれの軸方向形状の測定を先に行っても、正確に測定を行うことができる。
【0033】
また、測定用治具1を用いた測定装置5においては、円環状測定物8の付け替えをせずに測定点Pの外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を測定することができるため、これらの測定に要する時間を短縮することができる。これにより、同一の円環状測定物8における周方向Cの複数箇所の外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状の測定を迅速に行うことができる。
【0034】
それ故、本例の円環状測定物8の測定用治具1及び測定装置5によれば、円環状測定物8の測定点Pにおける外周位置82及び内周位置83の各軸方向形状を正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 軸方向形状測定用治具
2 架台
3 回動軸
4 回動ベース
401 第1回動位置
402 第2回動位置
41 保持クランプ
5 軸方向形状測定装置
51 測定台
52 測定子
6 切断加工装置
61 一対の刃具
8 円環状測定物(ループ材)
81A 軸方向一端面
81B 軸方向他端面
82 外周位置
83 内周位置
C 周方向
L 軸方向
P 測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状測定物の周方向の一点としての測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状をそれぞれ測定する際に用いる治具であって、
測定装置の測定台に固定する架台と、該架台に回動可能に支持した回動軸と、該回動軸と一体的に回動する回動ベースと、該回動ベースに設けられ、上記円環状測定物を保持する複数の保持クランプとを備えており、
該複数の保持クランプは、上記回動軸の回動中心に上記測定点を合わせて上記円環状測定物を保持するよう構成してあり、
上記回動ベースは、上記回動軸によって上記測定点を中心に回動して、該測定点の外周位置を所定の測定方向に向けた第1回動位置と、上記測定点の内周位置を上記所定の測定方向に向けた第2回動位置とに回動停止させるよう構成してあることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の円環状測定物の軸方向形状測定用治具を固定する測定台と、上記円環状測定物の上記測定点における外周位置及び内周位置の各軸方向形状を測定する測定子とを備えた測定装置であって、
上記回動ベースを上記第1回動位置に固定した状態で上記測定子によって上記外周位置の軸方向形状を測定し、かつ、上記回動ベースを上記第2回動位置に固定した状態で上記測定子によって上記内周位置の軸方向形状を測定するよう構成してあり、
上記測定台に対する上記軸方向形状測定用治具の載置状態を維持するとともに、上記複数の保持クランプによる上記円環状測定物の保持状態を維持したまま、上記回動軸によって上記測定点を中心に上記回動ベースを上記第1回動位置と上記第2回動位置との間で回動させて、上記外周位置の軸方向形状の測定と上記内周位置の軸方向形状の測定とを行うよう構成してあることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の円環状測定物の軸方向形状測定装置において、上記円環状測定物は、その軸方向一端面及び軸方向他端面が山型断面形状に形成されたものであり、
上記測定点における外周位置の軸方向形状として、上記軸方向一端面の上記山型断面形状における外周側の基端側角部と、上記軸方向他端面の上記山型断面形状における外周側の基端側角部との間の軸方向幅を測定し、上記測定点における内周位置の軸方向形状として、上記軸方向一端面の上記山型断面形状における内周側の基端側角部と、上記軸方向他端面の上記山型断面形状における内周側の基端側角部との間の軸方向幅を測定するよう構成してあることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の円環状測定物の軸方向形状測定装置において、上記円環状測定物は、無段変速機に用いるループ材であり、かつ、山型断面形状の外周刃先部を有する一対の刃具によって円筒状素材を挟み込んで、該円筒状素材の全周を上記一対の刃具に対して相対的に回転移動させて、該円筒状素材を所定幅に切断してなるものであることを特徴とする円環状測定物の軸方向形状測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−122826(P2012−122826A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273327(P2010−273327)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(503158017)株式会社シーヴイテック (11)
【Fターム(参考)】